JPH1087324A - 酸性水性アルミナゾルの製造法 - Google Patents

酸性水性アルミナゾルの製造法

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JPH1087324A
JPH1087324A JP9192197A JP19219797A JPH1087324A JP H1087324 A JPH1087324 A JP H1087324A JP 9192197 A JP9192197 A JP 9192197A JP 19219797 A JP19219797 A JP 19219797A JP H1087324 A JPH1087324 A JP H1087324A
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吉恭 鹿島
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は従来の水性アルミナゾルにはない粘
度及びチクソトロピー性を有する酸性水性アルミナゾル
の製造法を提供すること。 【解決手段】 電子顕微鏡観察によると、矩形板状1次
粒子が端面−端面間で凝結することにより形成される、
一平面内のみに伸長を有する細長い形状の2次粒子を含
有する安定な酸性水性アルミナゾルの製造法において、
無定形アルミナ水和物の繊維状コロイド粒子を含有する
水性アルミナゾルにアルカリを添加することにより、9
〜12のpHを有する反応混合物を生成させること、次
にこの反応混合物を110〜250℃の温度で水熱処理
することにより、ベーマイト構造を有するアルミナ水和
物を含有する水性懸濁液を生成させること、そしてこの
水性懸濁液を脱塩処理することにより、3〜6のpHを
有する酸性水性アルミナゾルを形成させることを特徴と
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、電子顕微鏡観察
によると、一辺が10〜30nmを有する矩形板状1次
粒子が端面−端面間で凝結することにより形成される、
一平面内のみに伸長を有する50〜300nmの細長い
形状の2次粒子を含有する安定な酸性水性アルミナゾル
の製造法に関する。そして、ベーマイト構造を有するア
ルミナ水和物のコロイド粒子を含有する安定な酸性水性
アルミナゾルの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】 既に種々の製造法で、種々のアルミナ
水和物のコロイド粒子が製造されている。これら製造さ
れたコロイド粒子は、結晶構造としてベーマイト構造又
は擬ベーマイト構造を有するアルミナ水和物、非晶質と
もいわれる無定形を有するアルミナ水和物などがほとん
どであり、そしてその形状としては、板状、リボン状、
紡錘状、針状、繊維状などを有することが知られてい
る。
【0003】特開昭 54-116398号公報、同 55-23034 号
公報、同 55-27824 号公報などには、塩基性アルミニウ
ム塩に酸やアルカリを反応させることにより、又は酸性
アルミニウム塩にアルカリを反応させることにより得ら
れるアルミナゲルを、酸で解膠することにより、 ベー
マイト構造を有すアルミナ水和物の板状コロイド粒子を
含有する水性アルミナゾルを製造する方法が開示されて
いる。
【0004】特開昭 55-116622号公報には、不完全結晶
化の及び(又は)無定形の構造を示す活性アルミナの粉
末を9以下のpHを有する水性媒体中で、120〜22
5℃の温度で処理することにより、板状、リボン状、繊
維状などの各種の形状を示すベーマイト構造を有するア
ルミナ水和物の粒子の懸濁液の製造法が開示されてい
る。
【0005】特開昭 58-176123号公報には、アルミン酸
アルカリに炭酸ガスを反応させることにより得られる無
定形ヒドロキシ炭酸アルミニウムゲルを酸、塩基、塩又
はそれらの混合物の溶液と混合し、その混合物の媒質の
pHを11以下として、90℃以下の温度で、少なくと
も5分間以上加熱し、その後90〜250℃の温度で処
理することにより、板状、リボン状及び繊維状の形状を
示し、擬ベーマイト及びベーマイト構造を有するアルミ
ナ水和物の粒子の懸濁液の製造法が開示されている。
【0006】ビー・イー・ヨルダス(B.E.YOLDAS)の論
文「アメリカン・セラミック・ソサイエティ・ブレティ
ン、第54巻、3号、289頁(1975年)」(Ame
r.Ceram.Soc.Bull.,54 [3] 289 (1975))には、アルミ
ニウムアルコキシドを水で加水分解した後、得られたス
ラリーを酸で解膠するアルミナゾルの製造法が開示され
ている。この方法は、加水分解条件として温度は75℃
で、水はアルミニウムアルコキシド1モルに対して、約
100モルの水を採用することと、そして解膠条件とし
て温度80℃以上で、解膠剤として塩酸、硝酸などを採
用することを特徴としている。得られるゾルは、ベーマ
イト構造を有するアルミナ水和物の板状コロイド粒子を
含有する透明水性アルミナゾルである。
【0007】特公昭 40-14292 号公報及び特開昭 60-16
6220号公報には、有機酸の水溶液と金属アルミニウム粉
末とを加熱下反応させることにより、無定形アルミナ水
和物の繊維状コロイド粒子を含有する水性アルミナゾル
の製造法が開示されている。特開平 5-24824号公報に
は、塩酸等の酸の水溶液と金属アルミニウムとを反応さ
せてアルミナ水和物のコロイド粒子を生成させる際、微
量のケイ酸イオン及び微量の硫酸イオンを共存させるこ
とによって、太さの5〜10倍の程度の長さを有する2
次粒子の水性アルミナゾルの製造法が開示されている。
この2次粒子は無定形アルミナ水和物の微細繊維状1次
粒子の集合体よりなっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】 上記のように、種々
の方法により、得られるアルミナ水和物のコロイド粒子
は、ベーマイト構造、擬ベーマイト構造又は無定形を有
するアルミナ水和物がほとんどであり、そしてその形状
として、板状、リボン状、紡錘状、針状、繊維状などを
有することが知られている。アルミナ水和物のコロイド
粒子が安定に分散した水性アルミナゾルは、繊維及び紙
などの表面処理、精密鋳造、各種耐火物のバインダー、
触媒の製造などに用いられている。
【0009】それぞれの用途に応じて、水性アルミナゾ
ルの粘度及び特有のチクソトロピー性の要求物性が異な
り、より改良された水性アルミナゾルの提供が望まれて
いる。本発明は従来の水性アルミナゾルにはない粘度及
びチクソトロピー性を有する水性アルミナゾルを簡易に
かつ効率よく製造する方法を提供しようとするものであ
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】 本発明の第1製造法で
ある、電子顕微鏡観察によると、一辺が10〜30nm
を有する矩形板状1次粒子が端面−端面間で凝結するこ
とにより形成される、一平面内のみに伸長を有する50
〜300nmの細長い形状の2次粒子を含有する安定な
酸性水性アルミナゾルの製造法は、下記の工程(A)、
(B)及び(C): (A)無定形アルミナ水和物の繊維状コロイド粒子を含
有する水性アルミナゾルに、アルカリを添加することに
より、9〜12のpHを有する反応混合物を生成させる
工程、(B)(A)工程で得られた当該反応混合物を1
10〜250℃の温度で水熱処理することにより、ベー
マイト構造を有するアルミナ水和物を含有する水性懸濁
液を生成させる工程、及び(C)(B)工程で得られた
当該水性懸濁液を、限外濾過法にて水と酸とを添加して
脱塩処理することにより、3〜6のpHを有する酸性水
性アルミナゾルを形成させる工程、からなる。
【0011】次に、本発明の第2製造法である、電子顕
微鏡観察によると、一辺が10〜30nmを有する矩形
板状1次粒子が端面−端面間で凝結することにより形成
される、一平面内のみに伸長を有する50〜300nm
の細長い形状の2次粒子を含有する安定な酸性水性アル
ミナゾルのベーマイト構造を有するアルミナ水和物の製
造法は、下記の工程(a)、(b)及び(c): (a)無定形アルミナ水和物の繊維状コロイド粒子を含
有する水性アルミナゾルに、アルカリを添加することに
より、9〜12のpHを有する反応混合物を生成させる
工程、(b)(a)工程で得られた当該反応混合物を1
10〜250℃の温度で水熱処理することにより、ベー
マイト構造を有するアルミナ水和物を含有する水性懸濁
液を生成させる工程、及び(c)(b)工程で得られた
当該水性懸濁液に、水素型酸性陽イオン交換樹脂と水酸
型強塩基性陰イオン交換樹脂とを接触させることによ
り、3〜6のpHを有する酸性水性アルミナゾルを形成
させる工程、からなる。
【0012】次に、本発明の第3製造法である、電子顕
微鏡観察によると、一辺が10〜30nmを有する矩形
板状1次粒子が端面−端面間で凝結することにより形成
される、一平面内のみに伸長を有する50〜300nm
の細長い形状の2次粒子を含有する安定な酸性水性アル
ミナゾルのベーマイト構造を有するアルミナ水和物の製
造法は、下記の(A’)、(B’)、(C’)及び
(D’): (A’)無定形アルミナ水和物の繊維状コロイド粒子を
含有する水性アルミナゾルに、アルカリを添加すること
により、9〜12のpHを有する反応混合物を生成させ
る工程、(B’)(A’)工程で得られた反応混合物
を、ケーク濾過法にて水を添加して脱塩処理することに
より、9〜12のpHを有する脱塩処理反応混合物を形
成させる工程、(C’)(B’)工程で得られた当該脱
塩処理反応混合物を110〜250℃の温度で水熱処理
することにより、ベーマイト構造を有するアルミナ水和
物を含有する水性懸濁液を生成させる工程、及び
(D’)(C’)工程で得られた当該水性懸濁液に酸を
添加することにより、3〜6のpHを有する酸性水性ア
ルミナゾルを形成させる工程、からなる。
【0013】そして、本発明の第4製造法では、上記の
三つの製造法で得られる安定な酸性水性アルミナゾルを
機械的分散処理後、濃縮することを特徴とする高濃度か
つ安定な酸性水性アルミナゾルの製造法である。
【0014】
【発明の実施の形態】 本発明の第1製造法において、
(A)工程に用いられる無定形アルミナ水和物の繊維状
コロイド粒子を含有する水性アルミナゾルとしては、公
知の製造法により容易に得られ、市販の工業薬品として
も入手することができる。その例としては前に引用した
従来から知られている水性アルミナゾルの製造法によっ
て得られる水性アルミナゾルを挙げることができる。
【0015】この原料となる水性アルミナゾルとして
は、ゲルを形成していないものであれば良く、数mPa
・sの低い粘度を有するものから数十万mPa・sの高
い粘度を有するものまで使用することができる。特に2
〜30重量%の Al2O3濃度及び2〜7のpHを有する水
性アルミナゾルが好ましい。またアルカリの添加方法に
よっては、ゲル状物質の塊の生成や粘度の上昇を引き起
こすため、アルカリの添加時は予め水性アルミナゾルの
Al2O3濃度を2〜4重量%にすることが更に好ましい。
【0016】そして、この原料となる水性アルミナゾル
としては、水性アルミナゾル中の無定形アルミナ水和物
の繊維状コロイド粒子成分の Al2O3量100部に対して
Al2O3量5〜200部の塩基性アルミニウム塩及び(又
は)アルミニウム正塩を溶解さたせた水性アルミナゾル
も包含される。この水性アルミナゾルにおいても、本発
明の目的が達成される。
【0017】用いられる塩基性アルミニウム塩及び(又
は)アルミニウム正塩は公知の製造法により容易に得ら
れ、市販の工業薬品としても入手することができる。塩
基性アルミニウム塩としては、水溶性の塩基性アルミニ
ウム塩として、塩基性塩化アルミニウム、塩基性硝酸ア
ルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム及び塩基性乳酸ア
ルミニウムなどが挙げられる。また用いられるアルミニ
ウム正塩としては、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウ
ム、及び酢酸アルミニウムなどが挙げられる。
【0018】塩基性アルミニウム塩及び(又は)アルミ
ニウム正塩の溶解量比を増加さたせた水性アルミナゾル
を使用することにより、水熱処理で得られるベーマイト
構造を有するアルミナ水和物の矩形板状1次粒子径を増
加させることができる。 同じく、本発明の目的が達成
される限り、任意の成分、例えば水性アルミナゾルの安
定性を維持している陰イオンなどを含有することができ
る。
【0019】(A)工程の反応混合物は、原料となる水
性アルミナゾルに、9〜12のpH、好ましくは9〜1
1のpHを示すような量のアルカリを添加することによ
り得られる。得られる反応混合物は水性スラリーとなっ
ている。この添加されるアルカリとしては、アルカリ金
属水酸化物塩、アルカリ土類金属水酸化物塩、アルミン
酸アルカリ金属塩、アルミン酸アルカリ土類金属塩、水
酸化アンモニウム、水酸化第4級アンモニウム、水酸化
グアニジン、アミン類などが挙げられる。アルカリ金属
水酸化物塩としての水酸化ナトリウム、水酸化カリウム
及び水酸化セシウムなどが好ましく,特に水酸化ナトリ
ウムが好ましい。なお、反応混合物に副生成物として、
不溶性塩が生成するアルカリは当然除かれる。
【0020】このアルカリの添加により、反応混合物中
にアルミナ水和物の巨大なゲル化物の生成を防ぐため
に、アルカリの濃度として、0.01〜20重量%の水
溶液、好ましくは1〜5重量%の水溶液が使用される。
同じく、アルカリの添加は徐々に添加することが好まし
い。(B)工程では、(A)工程の終了後、好ましくは
直ちに、この(A)工程で得られた反応混合物を水熱処
理するのが好ましい。(A)工程で得られた反応混合物
は長時間放置すると、反応混合物はゲル状物と水溶液と
に固液分離するため、好ましくない。この水熱処理によ
り、ベーマイト構造を有するアルミナ水和物を含有する
水性懸濁液が得られる。
【0021】透過型電子顕微鏡の観察によると、一辺が
10〜30nmを有する矩形板状1次粒子が端面−端面
間で凝結することにより形成される、一平面内のみに伸
長を有する50〜300nmの細長い形状の2次粒子が
凝集している。また、この水性懸濁液の動的光散乱法粒
径分布を測定すると、600〜1400nmの流体力学
的平均粒径を有する粒子群が認められる場合と、50〜
400nmの流体力学的平均粒径を有する粒子群と60
0〜1400nmの流体力学的平均粒径を有する粒子群
とが認められる場合がある。透過型電子顕微鏡の観察結
果との対比より、50〜400nmの流体力学的平均粒
径を有する粒子群は一辺が10〜30nmを有する矩形
板状1次粒子(コロイド粒子)が端面−端面間で凝結す
ることにより形成される、一平面内のみに伸長を有する
50〜300nmの細長い形状の2次粒子群(コロイド
粒子群)であり、600〜1400nmの流体力学的平
均粒径を有する粒子群は2次粒子の高次構造凝集物群と
判断される。この水性懸濁液中では、2次粒子の高次構
造凝集物の存在比率が高い。
【0022】(B)工程の水熱処理は温度は110〜2
50℃で行うことができるが、装置の腐食や耐圧構造に
よる装置費用を考慮すると120〜160℃で行うのが
好ましい。水熱処理において、より高温を選択すること
により、水熱処理で得られる矩形板状コロイド1次粒子
径及びその板状粒子の厚さをより増加させることができ
る。
【0023】(B)工程の水熱処理装置としては、公知
の装置である撹拌機付オートクレーブや流通式管状反応
器などの高圧設備を使用する。(C)工程では、(B)
工程で得られた当該水性懸濁液を限外濾過法にて処理す
る。その処理方法には、限外濾過法の変法であるダイア
フィルトレーション法(diafiltration process) を採
用する。ダイアフィルトレーション法においては、水の
添加により(A)工程で添加したアルカリの除去と、酸
の添加により水性アルミナゾルの安定剤である酸の含有
量の調整ができ、アルカリを除去することを目的とする
脱塩処理を円滑に進められる。
【0024】なお、限外濾過法を用い、アルカリを限外
濾過膜透過液側に抜くことで、分離精製を行う場合、回
分式操作では水性アルミナゾルに必ずアルカリが残って
しまう。そこで、採用するダイアフィルトレーション法
では、水性アルミナゾル側に水と酸を添加して、3〜6
のpHを有する酸性水性アルミナゾルを形成させなが
ら、限外濾過膜の透過液量を増していくことにより、ア
ルカリの除去率を上げて、効率よく脱塩処理を進めるこ
ととなる。
【0025】その脱塩処理は、酸性水性アルミナゾルの
Al2O3濃度が10重量%基準で、電気伝導度が1000
μS/cm以下となるまで、好ましくは700〜100
μS/cmとなるまで行う。目的とする酸性水性アルミ
ナゾルの Al2O3濃度が異なる場合、Al2O3濃度と電気伝
導度との相関は、上記記載 Al2O3濃度10重量%基準の
電気伝導度との相関に正比例するとして計算して良い。
そして脱塩処理温度は、通常10〜60℃であり、常温
でよい。
【0026】(C)工程では、酸として、硝酸、塩酸、
硫酸、過塩素酸、酢酸、蟻酸、乳酸などが使用すること
ができる。(C)工程では、ダイアフィルトレーション
法の操作方式は回分式及び連続式を採用することができ
る。そして、ダイアフィルトレーション法の装置は、ク
ロスフロー方式が好ましい。
【0027】使用する限外濾過膜は、市販の工業製品と
して得られる分画分子量として6千から20万の限外濾
過膜が使用できる。また、クロスフローフィルトレーシ
ョン法( cross-flow filtration process)にて利用さ
れる、精密濾過膜上にコロイド粒子からなるゲル層を形
成させたダイナミック膜(限外濾過膜)も使用できる。
【0028】そして、目的とする Al2O3濃度として最大
20重量%となるまで、ダイアフィルトレーション法及
び(又は)限外濾過法にて濃縮することができる。本発
明は、第2製造法によることができる。第2製造法は、
第1製造法の変法である。第2製造法の(a)、及び
(b)工程には前記(A)及び(B)工程と同様の操作
が用いられる。しかし、(c)工程の操作は前記の
(C)工程と異なる操作法が用いられる。
【0029】その(c)工程では、(b)工程で得られ
た当該水性懸濁液を、水素型酸性陽イオン交換樹脂及び
水酸型強塩基性陰イオン交換樹脂にて接触処理する。
(c)工程では、水素型酸性陽イオン交換樹脂の接触処
理により(a)工程で添加したアルカリを除去する。そ
して水酸型強塩基性陰イオン交換樹脂の接触処理によ
り、酸性水性アルミナゾルの安定剤である酸の含有量を
調整する。
【0030】水素型酸性陽イオン交換樹脂としては、市
販されている強酸性陽イオン交換樹脂及び(又は)弱酸
性陽イオン交換樹脂を酸にてイオン交換処理及び水洗処
理して使用する。そして、除去しようとする(a)工程
で添加したアルカリ量に対し、当量ではなく約3倍当量
にあたる水素型酸性陽イオン交換樹脂量を使用するのが
好ましい。その接触処理法は、通常樹脂を充填したカラ
ムに被処理液を下向流若しくは上向流で通液する方法、
又は被処理液中に樹脂を添加し撹拌保持した後、樹脂を
濾別する方法が採用できる。また接触処理液温度は、通
常10〜60℃であり、常温でよい。
【0031】水酸型強塩基性陰イオン樹脂としては、市
販されている強塩基性陰イオン樹脂を水酸化ナトリウム
水溶液にてイオン交換処理及び水洗処理して使用する。
その使用する樹脂量は、脱アルカリ処理された酸性水性
アルミナゾル中の過剰の酸を除去するのが目的であり、
3〜6のpHを有する酸性水性アルミナゾルが得られれ
ばよい。その接触処理方法は被処理液中に樹脂を添加し
撹拌保持した後、樹脂を濾別する方法が簡便で採用でき
る。また接触処理液温度は、通常10〜60℃であり、
常温でよい。
【0032】得られた3〜6のpHを有する酸性水性ア
ルミナゾルは、目的とする Al2O3濃度として最大20重
量%となるまで、公知の濃縮方法である減圧濃縮法、限
外濾過法などにて濃縮することができ、安定な酸性水性
アルミナゾルが得られる。本発明は、第3製造法による
ことができる。第3製造法も、第1製造法の変法であ
る。
【0033】第3製造法の(A’)は前記(A)工程と
同様の操作が用いられる。(B’)工程操作は、前記
(A’)工程で得られた反応混合物の脱塩工程である。
次に続く(C’)工程は、前記(B)工程と同様の操作
であり、(D’)工程は前記(C)工程の操作と異なる
操作法が用いられる。(B’)工程では、(A’)工程
で得られた当該反応混合物をケーク濾過法にて処理す
る。その処理方法には、ケーク濾過法において、クロス
フローフィルトレーション法(cross-flow filtration
process) を採用することが好ましい。
【0034】(B’)工程では、水の添加により
(A’)工程で添加したアルカリにより生成した塩の脱
塩処理を行う。また9〜12のpHを維持するために、
アルカリを必要に応じて加える脱塩処理反応混合物に加
えることもある。なお、ケーク濾過法を用い、アルカリ
をケーク濾過膜透過液側に抜くことで、分離精製を行う
場合、回分式操作では反応混合物に必ず塩が残ってしま
う。そこで、クロスフローフィルトレーション法では、
反応混合物側に水とアルカリを添加して、9〜12のp
Hを有する脱塩処理混合物を形成させながら、ケーク濾
過膜の透過液量を増していくことにより、塩の除去率を
上げて、効率よく脱塩処理を進めることができる。
【0035】その脱塩処理は、脱塩処理混合物の Al2O3
濃度が4重量%基準で、電気伝導度が500μS/cm
以下となるまで、好ましくは300〜100μS/cm
となるまで行う。目的とする脱塩処理混合物の Al2O3
度が異なる場合、Al2O3濃度と電気伝導度との相関は、
上記記載 Al2O3濃度4重量%基準の電気伝導度との相関
に正比例するとして計算して良い。そして脱塩処理温度
は、通常10〜60℃であり、常温でよい。
【0036】(B’)工程では、必要に応じて加えて良
いアルカリとして、アルカリ金属水酸化物塩、アルカリ
土類金属水酸化物塩、アルミン酸アルカリ金属塩、アル
ミン酸アルカリ土類金属塩、水酸化アンモニウム、水酸
化第4級アンモニウム、水酸化グアニジン、アミン類な
どが挙げられる。アルカリ金属水酸化物塩としての水酸
化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化セシウムなど
が好ましく,特に水酸化ナトリウムが好ましい。なお、
脱塩処理反応混合物に副生成物として、不溶性塩が生成
するアルカリは当然除かれる。
【0037】(B’)工程では、クロスフローフィルト
レーション法の操作方式は回分式及び連続式を採用する
ことができる。好ましい工業的装置として、チェコスロ
バキア国立有機合成研究所で開発された連続式ロータリ
フィルタープレスが挙げられる。(詳しくは、K. Miche
l and V. Gruber, Chemie-Ingenieur-Technik 43, 380
(1971) 及び F. M. Tiller, Filtration & Separation
15, 204 (1978)などに記載されている。) ケーク濾過には、公知の濾布が使用できる。濾布として
は、精密濾過膜がより好ましい。その精密濾過膜として
は、市販の工業製品として得られる公称孔径0.05μ
mから10μmの精密濾過膜が使用できる。
【0038】(C’)工程では、前記(B)工程と同様
の操作が行われる。この(C’)工程では、(B’)工
程の終了後、好ましくは直ちに、この(B’)工程で得
られた反応混合物を水熱処理するのが好ましい。
(B’)工程で得られた反応混合物は長時間放置する
と、反応混合物はゲル状物と水溶液とに固液分離するた
め、好ましくない。この水熱処理により、第1製造法の
(B)工程と同じくベーマイト構造を有するアルミナ水
和物を含有する水性懸濁液が得られる。
【0039】(D’)工程では、酸の添加により解膠処
理が行われる。前記(C)工程では、水と酸の添加が必
須であったが、第3製造法では、(B’)工程で既に過
剰の塩類が除去されているので、酸の添加のみでも酸性
水性アルミナゾルを得ることができる。また、必要に応
じて、第1製造法における限外濾過法による脱塩処理又
は第2製造法によるイオン交換樹脂による処理を実施
し、酸性水性アルミナゾル中の電解質濃度を調整するこ
とができる。
【0040】(D’)工程では、酸として、硝酸、塩
酸、硫酸、過塩素酸、酢酸、蟻酸、乳酸などが使用する
ことができる。ここで、(C)工程、(c)工程及び
(D’)工程において、得られた3〜6のpHを有する
酸性水性アルミナゾルの動的光散乱法粒径分布を測定す
ると、50〜400nmの流体力学的平均粒径を有する
粒子群が認められる場合と、50〜400nmの流体力
学的平均粒径を有する粒子群と600〜1400nmの
流体力学的平均粒径を有する粒子群とが認められる場合
がある。但し、この酸性水性アルミナゾル中では、60
0〜1400nmの流体力学的平均粒径を有する粒子群
である2次粒子の高次構造凝集物の存在比率は小さい。
【0041】よって、(C)工程及び(c)工程におけ
る酸添加及び脱塩処理、並びに(D’)工程における酸
添加処理により、2次粒子の高次構造凝集物が2次粒子
(コロイド粒子)へと解膠したものと考えられる。本発
明の第4製造法は、前記の第1製造法、第2製造法又は
第3製造法で得られる安定な酸性水性アルミナゾルを機
械的分散処理後、濃縮することを特徴とする高濃度かつ
安定な酸性水性アルミナゾルの製造法である。
【0042】この方法では、前記の第1製造法、第2製
造法又は第3製造法で得られた当該安定な酸性水性アル
ミナゾルを機械的分散処理することにより、酸性水性ア
ルミナゾル中に微量存在する2次粒子の高次構造凝集物
が破砕されとともに、形成された2次粒子の端面−端面
間結合が切断され2次粒子の伸長方向の長さが短くな
り、よりゾルの分散性が向上するため、高濃度かつ安定
な酸性水性アルミゾルを得ることが可能となる。
【0043】機械的分散処理とは、媒体ミル処理、コロ
イドミル処理、高速剪断撹拌処理及び高圧衝撃分散処理
が挙げられる。媒体ミル処理に使用される具体的装置と
しては、ボールミル、アトライター、サンドミル及びビ
ーズミルなどが挙げられる。コロイドミル処理に使用さ
れる具体的装置としては、コロイドミル、ストーンミ
ル、ケーデーミル及びホモジナイザーなどが挙げられ
る。高速剪断撹拌処理に使用される具体的装置として
は、商品名としてハイスピードディスパーサー、ハイス
ピードインペラー及びデイゾルバーと呼ばれているもの
が挙げられる。高圧衝撃分散処理に使用される具体的装
置としては、高圧ポンプを使用した高圧衝撃分散機及び
超音波高圧衝撃分散機が挙げられる。また機械的分散処
理液温度は、通常10〜60℃であり、常温でよい。
【0044】機械的分散処理した酸性水性アルミナゾル
は、目的とする Al2O3濃度として最大30重量%となる
まで、公知の濃縮方法である減圧濃縮法、限外濾過法な
どにて濃縮することができ、高濃度かつ安定な酸性水性
アルミナゾルが得られる。ここで、高濃度かつ安定な酸
性水性アルミナゾルの動的光散乱法粒径分布を測定する
と、50〜400nmの流体力学的平均粒径を有する粒
子群が認められる場合と、10〜30nmの流体力学的
平均粒径を有する粒子群と50〜400nmの流体力学
的平均粒径を有する粒子群とが認められる場合がある。
透過型電子顕微鏡の観察結果との対比より、10〜30
nmの流体力学的平均粒径を有する粒子群は一辺が10
〜30nmを有する矩形板状1次粒子群であり、50〜
400mの流体力学的平均粒径を有する粒子群は一辺が
10〜30nmを有する矩形板状1次粒子(コロイド粒
子)が端面−端面間で凝結することにより形成される、
一平面内のみに伸長を有する50〜300nmの細長い
形状の2次粒子群(コロイド粒子群)と判断される。
【0045】(A)工程、(a)工程及び(A’)工程
において、アルカリを添加することにより得られる9未
満のpHを有する反応混合物では、次工程の水熱処理を
実施しても目的とするベーマイト構造を有するアルミナ
水和物を含有する酸性水性アルミナゾルを得ることはで
きない。一方過剰のアルカリを添加することにより得ら
れた12を超えるpHを有する反応混合物では、目的と
するベーマイト構造を有するアルミナ水和物を含有する
水性アルミナ懸濁液が得られる。しかし、(C)工程、
(c)工程及び(B’)工程のアルカリ除去処理におい
ては、過剰のアルカリも除去せざるを得ず、好ましくな
い。よって、アルカリの添加によって得られる反応混合
物は9〜11のpHを有することがより好ましい。
【0046】(B)工程、(b)工程及び(C’)工程
において、反応混合物を110℃未満の温度で、水熱処
理すると、水性懸濁液中において無定形アルミナ水和物
の繊維状コロイド粒子からベーマイト構造を有するアル
ミナ水和物の矩形板状1次粒子への結晶構造の生成に長
時間を要して、好ましくない。一方、250℃を超える
水熱処理では、装置的に急冷設備、超高圧容器などを必
要とするので好ましくない。
【0047】(C)工程、(c)工程工程及び(D’)
工程において、ベーマイト構造を有するアルミナ水和物
を含有する水性懸濁液は酸の添加及び(又は)懸濁液中
のアルカリ由来の電解質を除去されることにより、安定
な水性アルミナゾルとなる。そして、当該ゾルは、安定
剤としての酸の添加によりpHを3〜6に、好ましくは
3.5〜5.5に調整されることによりゾルとしての安
定性が向上する。よって、 Al2O3濃度として最大20重
量%迄の任意の Al2O3濃度の安定な酸性水性アルミナゾ
ルが得られる。このゾルは、密閉状態で50℃で1ヶ月
の保存でもゲル化することなく安定である。
【0048】本発明の第4製造法で得られた高濃度かつ
安定な酸性水性アルミナゾルは、 Al2O3濃度として最大
30重量%迄の任意の Al2O3濃度の高濃度かつ安定な酸
性水性アルミナゾルが得られる。このゾルは、密閉状態
で50℃で1ヶ月の保存でもゲル化することなく安定で
ある。本発明で得られるアルミナ水和物のコロイド粒子
は、110℃で乾燥後1100℃迄の示差熱分析によ
り、1.0〜1.2のH20/Al2O3モル比を有すること
と、粉末X線回折法結果より、ベーマイト構造を有する
アルミナ水和物のコロイド粒子と同定される。
【0049】本発明で得られる安定な酸性水性アルミナ
ゾル及び高濃度かつ安定な酸性水性アルミナゾルは、透
過型電子顕微鏡観察によると、コロイド粒子は一辺が1
0〜30nmを有する矩形状1次粒子が端面−端面間で
凝結することにより形成される、一平面内のみに伸長を
有する50〜300nmの細長い形状(リボン状)の2
次粒子である。その1次粒子及び2次粒子の厚さは2.
5〜7.5nmである。
【0050】なお、本発明において採用した分析方法は
下記の通りである。 (1)組成分析 (i) Al2O3濃度 重量法(500℃焼成残分) (ii) Na20濃度 原子吸光光度法(前処理は塩酸
溶解処理) (iii) 酢酸濃度 中和滴定法 (2)pH測定 pH計 M−8AD((株)堀場製作所製)を用いて測
定した。 (3)電気伝導度 電気伝導度計 CM−30S((株)東亜電波工業製)
を用いて測定した。 (4)動的光散乱法粒径 動的光散乱法粒径測定装置 コールターN4(登録商
標)(コールター社製)を用いて測定した。測定解析法
はキュムラント法を採用し、液中の流体力学的平均粒径
を測定した。
【0051】(測定条件) 溶媒 純水(25℃) (5)動的光散乱法粒径分布 動的光散乱法粒径測定装置 コールターN4(登録商
標)(コールター社製)を用いて測定した。測定解析法
はS.D.P.法(マルチモーダル解析プログラム)を
採用し、液中での流体力学的粒径分布を測定した。各々
の粒子群(モード)における流体力学的平均径が測定結
果として得られる。
【0052】(測定条件) 溶媒 純水(25℃) (6)比表面積(BET法) 予め所定の条件で乾燥した試料を窒素吸着法比表面積計
MONOSORBMS−16型(QUANTACHR
OME社製)を用いて測定した。 (7)透過型電子顕微鏡観察 試料を純水で希釈後、銅メッシュ上の親水化処理済カー
ボン被膜コロジオン膜に試料を塗布して、乾燥させ観察
試料を準備した。透過型電子顕微鏡 H−500
((株)日立製作所製)にて、その観察試料の電子顕微
鏡写真を撮影して、観察した。 (8)示差熱分析 示差熱分析装置 TG/DTA320U(セイコー電子
工業(株)製)を用いて測定した。
【0053】 (測定条件)試料 16mg、リファレンス α−アルミナ16mg 測定温度範囲 25〜1100℃ 昇温速度 10℃/分 (9)粉末X線回折 X線回折装置 JEOL JDX−8200T(日本電
子(株)製)を用いて、測定した。
【0054】
【実施例】
実施例1 市販の無定形アルミナ水和物の繊維状コロイド粒子を含
有する水性アルミナゾル481.7g(アルミナゾル−
200(商標)、日産化学工業(株)製、 Al2O3濃度1
0.2重量%、酢酸2.7重量%)に水1926.7g
を加え、強く撹拌した中に5重量%のNaOH濃度を有
する水酸化ナトリウム水溶液184gを約10分で添加
し、更に30分間撹拌を続けた。そして反応混合物(p
H9.27、 Al2O3濃度1.90重量%)を得た。
【0055】この反応混合物2300gをガラスライニ
ング処理ステンレス製オートクレーブ容器に仕込み、1
40℃で12時間水熱処理を行った。得られた水性懸濁
液は、pH6.68、電気伝導度6340μS/cmを
示し、 Al2O3濃度1.90重量%であった。この水性懸
濁液の動的光散乱法粒径分布を測定すると、178nm
の流体力学的平均粒径(標準偏差21nm)を有する粒
子群と950nmの流体力学的平均粒径(標準偏差12
0nm)を有する粒子群とが認められた。
【0056】この水性懸濁液を取り出した後、その水性
懸濁液全量に純水5400gと酢酸6.0gとを加えて
撹拌し、pH5.12に調製した後、限外濾過膜(分画
分子量5万)を取り付けた撹拌機付自動連続加圧濾過装
置にて、脱塩、濃縮して酸性水性アルミナゾル350g
を得た。得られた酸性水性アルミナゾルはpH4.7
0、 Al2O3濃度12.5重量%、Na20濃度287重量p
pm 、電気伝導度803μS/cm、粘度180 mP
a・s、酢酸濃度0.22重量%であり、動的光散乱法
粒径247nm、110℃で乾燥した粉体のBET法に
よる比表面積142m2 /g、300℃で乾燥した粉体
のBET法による比表面積145m2 /gを示した。
【0057】得られた酸性水性アルミナゾルの動的光散
乱法粒径分布を測定すると、240nmの流体力学的平
均粒径(標準偏差57nm)を有する粒子群のみが認め
られた。透過型電子顕微鏡観察によると、得られた酸性
水性アルミナゾルに含有されるアルミナ水和物のコロイ
ド粒子は1次粒子が一辺10〜20nmを有する矩形板
状粒子よりなり、その1次粒子が端面−端面間で凝結し
て、一平面内のみに伸長を有する50〜300nmの細
長い形状(リボン状)の2次粒子を形成していた。その
1次粒子及び2次粒子の厚さは2.5〜7.5nmであ
った。
【0058】また、その酸性水性アルミナゾルを110
℃で乾燥した粉体を1100℃迄熱分析すると、そのア
ルミナ水和物のコロイド粒子は1.13のH20/Al2O3
ル比を有することと、同じくその110℃で乾燥した粉
体の粉末X線回折法結果(第1表)より、ベーマイト構
造を有するアルミナ水和物と同定できた。この酸性水性
アルミナゾルは、密閉状態で50℃で1カ月保持した後
でもゲル化することはなく安定であった。
【0059】
【表1】第1表d(オングストローム) I/I0(相対強度) 6.197 100 3.166 72 2.356 63 1.986 9 1.862 59 1.772 11 1.668 15 1.528 7 1.458 15 1.435 20 1.390 101.316 16 実施例2 市販の無定形アルミナ水和物の繊維状コロイド粒子を含
有する水性アルミナゾル450.0g(アルミナゾル−
200(商標)、日産化学工業(株)製、 Al2O3濃度1
0.7重量%、酢酸3.16重量%)に水1767.0
gを加え、強く撹拌した中に4.9重量%のNaOH濃
度を有する水酸化ナトリウム水溶液211.5gを約1
0分で添加し、更に3時間撹拌を続けた。そして反応混
合物(pH10.05、 Al2O3濃度1.98重量%)を
得た。
【0060】この反応混合物2300gをガラスライニ
ング処理ステンレス製オートクレーブ容器に仕込み、1
40℃で18時間水熱処理を行った。得られた水性懸濁
液は、pH8.38、電気伝導度7955μS/cmを
示し、 Al2O3濃度1.98重量%であった。この水性懸
濁液を取り出した後、その水性懸濁液全量に純水446
7gと酢酸10.5gとを加えて撹拌し、pH4.89
に調製した後、限外濾過膜(分画分子量5万)を取り付
けた撹拌機付自動連続加圧濾過装置にて、脱塩、濃縮し
て酸性水性アルミナゾル364gを得た。
【0061】得られた酸性水性アルミナゾルはpH4.
34、 Al2O3濃度12.0重量%、Na20濃度292重量
ppm 、電気伝導度290μS/cm、粘度168 m
Pa・s、酢酸濃度0.26重量%であり、動的光散乱
法粒径264nm、110℃で乾燥した粉体のBET法
による比表面積135m2 /g、300℃で乾燥した粉
体のBET法による比表面積136m2 /gを示した。
透過型電子顕微鏡観察によると、得られた酸性水性アル
ミナゾルに含有されるアルミナ水和物のコロイド粒子は
1次粒子が一辺10〜20nmを有する矩形板状粒子よ
りなり、その1次粒子が端面−端面間で凝結して、一平
面内のみに伸長を有する50〜300nmの細長い形状
(リボン状)の2次粒子を形成していた。このゾルを密
閉状態で50℃で1カ月保持した後でもゲル化すること
はなく安定であった。
【0062】実施例3 実施例2と同様に反応混合物の調製を行い、反応混合物
2428.5g(pH10.05、 Al2O3濃度1.98
重量%)を得た。この反応混合物2300gをガラスラ
イニング処理ステンレス製オートクレーブ容器に仕込
み、140℃で12時間水熱処理を行った。得られた水
性懸濁液は、pH7.59、電気伝導度7955μS/
cmを示し、 Al2O3濃度1.98重量%であった。
【0063】この水性懸濁液を取り出した後、その水性
懸濁液全量を水素型陽イオン交換樹脂(アンバーライト
IR−120B(登録商標)、ローム・アンド・ハース
社製)300mlの充填カラムに通液し、その後その通
液処理物に水酸型強塩基性陰イオン交換樹脂(アンバー
ライトIRA−410(登録商標)、ローム・アンド・
ハース社製)190gを投げ込み、pH4.03に調製
した後、減圧濃縮して酸性水性アルミナゾル320gを
得た。
【0064】得られた酸性水性アルミナゾルはpH4.
11、 Al2O3濃度13.5重量%、Na20濃度310重量
ppm 、電気伝導度402μS/cmであり、動的光
散乱法粒径670nm、110℃で乾燥した粉体のBE
T法による比表面積160m 2 /g、300℃で乾燥し
た粉体のBET法による比表面積165m2 /gを示し
た。透過型電子顕微鏡観察によると、得られた酸性水性
アルミナゾルに含有されるアルミナ水和物のコロイド粒
子は1次粒子が一辺10〜20nmを有する矩形板状粒
子よりなり、その1次粒子が端面−端面間で凝結して、
一平面内のみに伸長を有する50〜300nmの細長い
形状(リボン状)の2次粒子を形成していた。また、こ
の酸性水性アルミナゾルを密閉状態で50℃で1カ月保
持した後でもゲル化することはなく安定であった。
【0065】実施例4 市販の無定形アルミナ水和物の繊維状コロイド粒子を含
有する水性アルミナゾル500.0g(アルミナゾル−
200(商標)、日産化学工業(株)製、 Al2O3濃度1
0.2重量%、酢酸2.7重量%)に水1800gを加
え、強く撹拌した中に5重量%のNaOH濃度を有する
水酸化ナトリウム水溶液203gを約10分で添加し、
更に30分間撹拌を続けた。そして、反応混合物(pH
10.02、 Al2O3濃度2.04重量%)を得た。
【0066】この反応混合物2300gをガラスライニ
ング処理ステンレス製オートクレーブ容器に仕込み、1
40℃で18時間水熱処理を行った。得られた水性懸濁
液は、pH7.88、電気伝導度7105μS/cmを
示し、 Al2O3濃度2.05重量%であった。この水性懸
濁液を取り出した後、その水性懸濁液全量を水素型陽イ
オン交換樹脂(アンバーライトIR−120B(登録商
標)、ローム・アンド・ハース社製)300mlの充填
カラムに通液し、その後その通液処理物に水酸型強塩基
性陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−410
(登録商標)、ローム・アンド・ハース社製)190g
を投げ込み、pH4.33に調製した後、減圧濃縮して
酸性水性アルミナゾル311gを得た。
【0067】得られ酸性水性アルミナゾルはpH4.0
9、 Al2O3濃度14.5重量%、Na 20濃度301重量p
pm 、電気伝導度464μS/cm、粘度320 mP
a・s、酢酸濃度0.29重量%であり、動的光散乱法
粒径374nm、110℃で乾燥した粉体のBET法に
よる比表面積138m2 /g、300℃で乾燥した粉体
のBET法による比表面積139m2 /gを示した。透
過型電子顕微鏡観察によると、得られた酸性水性アルミ
ナゾルに含有されるアルミナ水和物のコロイド粒子は1
次粒子が一辺10〜20nmを有する矩形板状粒子より
なり、その1次粒子が端面−端面間で凝結して、一平面
内のみに伸長を有する50〜300nmの細長い形状
(リボン状)の2次粒子を形成していた。また、この酸
性水性アルミナゾルを密閉状態で50℃で1カ月保持し
た後でもゲル化することはなく安定であった。
【0068】実施例5 実施例4と同様に反応混合物の調製を行い、反応混合物
2503g(pH10.05、 Al2O3濃度2.04重量
%)を得た。この反応混合物2300gをガラスライニ
ング処理ステンレス製オートクレーブ容器に仕込み、1
40℃で24時間水熱処理を行った。得られた水性懸濁
液は、pH7.98、電気伝導度7330μS/cm、
Al2O3濃度2.04重量%であった。
【0069】この水性懸濁液を取り出した後、その水性
懸濁液全量を水素型陽イオン交換樹脂(アンバーライト
IR−120B(登録商標)、ローム・アンド・ハース
社製)300mlの充填カラムに通液し、その後通液し
たゾルに水酸型強塩基性陰イオン交換樹脂(アンバーラ
イトIRA−410(登録商標)、ローム・アンド・ハ
ース社製)180gを投げ込み、pH4.10に調製し
た後、減圧濃縮して酸性水性アルミナゾル343gを得
た。
【0070】得られた酸性水性アルミナゾルはpH4.
01、 Al2O3濃度13.0重量%、電気伝導度501μ
S/cmであり、動的光散乱法粒径380nm、110
℃で乾燥した粉体のBET法による比表面積133m2
/g、300℃で乾燥した粉体のBET法による比表面
積135m2 /gを示した。透過型電子顕微鏡観察によ
ると、得られた酸性水性アルミナゾルに含有されるアル
ミナ水和物のコロイド粒子は1次粒子が一辺10〜20
nmを有する矩形板状粒子よりなり、その1次粒子が端
面−端面間で凝結して、一平面内のみに伸長を有する5
0〜300nmの細長い形状(リボン状)の2次粒子を
形成していた。また、この酸性水性アルミナゾルを密閉
状態で50℃で1カ月保持した後でもゲル化することは
なく安定であった。
【0071】実施例6 実施例4で得られた酸性水性アルミナゾル800g(p
H4.09、 Al2O3濃度14.5重量%)をコロイドミ
ル(AS−3型ホモジナイザー(商標)、(株)日本精
機製作所製)を用いて10000回転で2時間の機械的分散
処理を行い、その後減圧濃縮して高濃度の酸性水性アル
ミナゾル574gを得た。
【0072】得られた酸性水性アルミナゾルはpH4.
21、 Al2O3濃度20.2重量%であり、動的光散乱法
粒径189nm、110℃で乾燥した粉体のBET法に
よる比表面積136m2 /g、300℃で乾燥した粉体
のBET法による比表面積137m2 /gを示した。得
られた酸性水性アルミナゾルの動的光散乱法粒径分布を
測定すると、181nmの流体力学的平均粒径(標準偏
差22nm)を有する粒子群のみが認められた。透過型
電子顕微鏡観察によると、得られた酸性水性アルミナゾ
ルに含有されるアルミナ水和物のコロイド粒子は1次粒
子が一辺10〜20nmを有する矩形板状粒子よりな
り、その1次粒子が端面−端面間で凝結して、一平面内
のみに伸長を有する50〜300nmの細長い形状(リ
ボン状)の2次粒子を形成していた。また、このゾルを
密閉状態で50℃で1カ月保持した後でもゲル化するこ
とはなく安定であった。
【0073】実施例7 実施例4で得られた酸性水性アルミナゾル400gを、
媒体として直径1〜1.5mmのガラス製ビーズ350
gを有するサンドミル(1AG6H型サンドグラインダ
ー(商標)、アイメックス(株)製)を用いて1500回転
で1時間の機械的分散処理を行い、その後減圧濃縮して
高濃度の酸性水性アルミナゾル260gを得た。
【0074】得られた酸性水性アルミナゾルはpH4.
19、 Al2O3濃度20.1重量%であり、動的光散乱法
粒径211nm、110℃で乾燥したもののBET法に
よる比表面積136m2 /g、300℃で乾燥したもの
のBET法による比表面積137m2 /gを示した。透
過型電子顕微鏡観察によると、得られた酸性水性アルミ
ナゾルに含有されるアルミナ水和物のコロイド粒子は1
次粒子が一辺10〜20nmを有する矩形板状粒子より
なり、その1次粒子が端面−端面間で凝結して、一平面
内のみに伸長を有する50〜300nmの細長い形状
(リボン状)の2次粒子を形成していた。また、このゾ
ルを密閉状態で50℃で1カ月保持した後でもゲル化す
ることはなく安定であった。
【0075】実施例8 実施例2で得られた酸性水性アルミナゾル4000gを
多連式超音波高圧衝撃分散機(MUS600T−3型超
音波ホモジナイザー(商標)、(株)日本精機製作所
製)を用いて室温で400ml/分の流速で3回繰り返
し機械的分散処理を行い、その後減圧濃縮して高濃度の
酸性水性アルミナゾル1890gを得た。
【0076】得られた酸性水性アルミナゾルはpH4.
52、 Al2O3濃度25.3重量%、電気伝導度491μ
S/cm、粘度1093mPa・sであり、動的光散乱
法粒径139nm、110℃で乾燥したもののBET法
による比表面積139m2 /g、300℃で乾燥したも
ののBET法による比表面積141m2 /gを示した。
得られた酸性水性アルミナゾルの動的光散乱法粒径分布
を測定すると、17.1nmの流体力学的平均粒径(標
準偏差4nm)を有する粒子群と134nmの流体力学
的平均粒径(標準偏差34nm)を有する粒子群とが認
められた。透過型電子顕微鏡観察によると、得られた酸
性水性アルミナゾルに含有されるアルミナ水和物のコロ
イド粒子は1次粒子が一辺10〜20nmを有する矩形
板状粒子よりなり、その1次粒子が端面−端面間で凝結
して、一平面内のみに伸長を有する50〜300nmの
細長い形状(リボン状)の2次粒子とその1次粒子を確
認した。また、このゾルを密閉状態で50℃で1カ月保
持した後でもゲル化することはなく安定であった。
【0077】実施例9 市販の無定形アルミナ水和物の繊維状コロイド粒子を含
有する水性アルミナゾル500.0g(アルミナゾル−
200(商標)、日産化学工業(株)製、 Al2O3濃度1
0.2重量%、酢酸2.7重量%)と、塩基性酢酸アル
ミニウム水溶液445g(塩基性塩化アルミニウム溶液
を希釈した後、酢酸型強塩基性陰イオン交換樹脂を用い
たイオン交換にて調製した塩基性酢酸アルミニウム水溶
液: Al2O3濃度5.73重量%、酢酸3.0重量%)に
水2830gを加え、強く撹拌した中に5重量%のNa
OH濃度を有する水酸化ナトリウム水溶液380gを約
10分で添加し、30分間撹拌を続けた。そして反応混合
物(pH9.96、 Al2O3濃度1.84重量%)を得
た。
【0078】この反応混合物2300gをガラスライニ
ング処理ステンレス製オートクレーブ容器に仕込み、1
40℃で18時間水熱処理を行った。得られた水性懸濁
液は、pH8.03、電気伝導度8150μS/cmを
示し、 Al2O3濃度1.84重量%であった。この水性懸
濁液を取り出した後、その水性懸濁液全量を水素型陽イ
オン交換樹脂(アンバーライトIR−120B(登録商
標)、ローム・アンド・ハース社製)300mlの充填
カラムに通液し、その後その通液処理物に水酸型強塩基
性陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−410
(登録商標)、ローム・アンド・ハース社製)220g
を投げ込み、pH4.10に調製した後、減圧濃縮して
酸性水性アルミナゾル289gを得た。
【0079】得られた酸性水性アルミナゾルはpH4.
22、 Al2O3濃度14.0重量%、電気伝導度411μ
S/cmであり、動的光散乱法粒径390nm、110
℃で乾燥した粉体のBET法による比表面積115m2
/g、300℃で乾燥した粉体のBET法による比表面
積117m2 /gを示した。透過型電子顕微鏡観察によ
ると、得られた酸性水性アルミナゾルに含有されるアル
ミナ水和物のコロイド粒子は1次粒子が一辺15〜25
nmを有する矩形板状粒子よりなり、その1次粒子が端
面−端面間で凝結して、一平面内のみに伸長を有する5
0〜300nmの細長い形状(リボン状)の2次粒子を
形成していた。また、このゾルを密閉状態で50℃で1
カ月保持した後でもゲル化することはなく安定であっ
た。
【0080】実施例10 市販の無定形アルミナ水和物の繊維状コロイド粒子を含
有する水性アルミナゾル800g(アルミナゾル−20
0(商標)、日産化学工業(株)製、 Al2O3濃度10.
2重量%、酢酸2.7重量%)に水2895gを加え、
強く撹拌した中に5重量%のNaOH濃度を有する水酸
化ナトリウム水溶液305gを約10分で添加し、更に
30分間撹拌を続けた。そして反応混合物(pH9.5
5、 Al2O3濃度2.04重量%)を得た。
【0081】この反応混合物2300gをガラスライニ
ング処理ステンレス製オートクレーブ容器に仕込み、1
20℃で18時間水熱処理を行った。得られた水性懸濁
液は、pH7.50、電気伝導度6790μS/cmを
示し、 Al2O3濃度2.04重量%であった。この水性懸
濁液を取り出した後、その水性懸濁液全量に純水712
3gと酢酸4.0gとを加えて撹拌し、pH3.88に
調製した後、限外濾過膜(分画分子量5万)を取り付け
た撹拌機付自動連続加圧濾過装置にて、脱塩、濃縮して
酸性水性アルミナゾル360gを得た。
【0082】得られた酸性水性アルミナゾルはpH4.
10、 Al2O3濃度12.5重量%、電気伝導度360μ
S/cmであり、動的光散乱法粒径319nm、110
℃で乾燥した粉体のBET法による比表面積173m2
/g、300℃で乾燥した粉体のBET法による比表面
積270m2 /gを示した。透過型電子顕微鏡観察によ
ると、得られた酸性水性アルミナゾルに含有されるアル
ミナ水和物のコロイド粒子は1次粒子が一辺10〜20
nmを有する矩形板状粒子よりなり、その1次粒子が端
面−端面間で凝結して、一平面内のみに伸長を有する5
0〜300nmの細長い形状(リボン状)の2次粒子を
形成していた。また、このゾルを密閉状態で50℃で1
カ月保持した後でもゲル化することはなく安定であっ
た。
【0083】実施例11 実施例10と同様に反応混合物の調製を行い、反応混合
物4000g(pH9.55、 Al2O3濃度2.04重量
%)を得た。この反応混合物2300gをガラスライニ
ング処理ステンレス製オートクレーブ容器に仕込み、1
60℃で18時間水熱処理を行った。得られた水性懸濁
液は、pH7.20、電気伝導度6900μS/cmを
示し、 Al2O3濃度2.04重量%であった。
【0084】この水性懸濁液を取り出した後、その水性
懸濁液全量に純水7450gと酢酸3.80gとを加え
て撹拌し、pH3.92に調製した後、限外濾過膜(分
画分子量5万)を取り付けた撹拌機付自動連続加圧濾過
装置にて、脱塩、濃縮して酸性水性アルミナゾル281
gを得た。得られた酸性水性アルミナゾルはpH4.3
0、 Al2O3濃度16.0重量%、電気伝導度602μS
/cmであり、動的光散乱法粒径420nm、110℃
で乾燥した粉体のBET法による比表面積88m2
g、300℃で乾燥した粉体のBET法による比表面積
95m2 /gを示した。透過型電子顕微鏡観察による
と、得られた酸性水性アルミナゾルに含有されるアルミ
ナ水和物のコロイド粒子は1次粒子が一辺10〜20n
mを有する矩形板状粒子よりなり、その1次粒子が端面
−端面間で凝結して、一平面内のみに伸長を有する50
〜300nmの細長い形状(リボン状)の2次粒子を形
成していた。また、このゾルを密閉状態で50℃で1カ
月保持した後でもゲル化することはなく安定であった。
【0085】実施例12 実施例2と同様に反応混合物の調製を行い、反応混合物
4550g(pH10.05、電気伝導度6800μS
/cm、 Al2O3濃度1.98重量%)を得た。この反応
混合物に液量が一定になるように水を加えながら、公称
孔径0.2μmの精密濾過膜を取り付けた撹拌機付自動
連続加圧濾過装置を用いて循環しながら脱塩した。脱塩
処理反応混合物はpH9.24、電気伝導度18.35
μS/cm、 Al2O3濃度3.7重量%であった。
【0086】この脱塩処理反応混合物2435gを強く
攪拌した中に5重量%のNaOH濃度を有する水酸化ナ
トリウム水溶液4.7gを約5分で添加し、更に1時間
攪拌を続けた。そして反応混合物(pH9.94、電気
伝導度153.6μS/cm、 Al2O3濃度3.7重量
%)を得た。この脱塩処理反応混合物2300gをガラ
スライニング処理ステンレス製オートクレーブ容器に仕
込み、140℃で8時間水熱処理を行った。得られた水
性懸濁液は、pH9.14、電気伝導度239μS/c
mを示し、 Al2O3濃度3.7重量%であった。
【0087】この水性懸濁液を取り出した後、その水性
懸濁液全量に68重量%の酢酸濃度を有する酢酸水溶液
0.7gを加えて撹拌し、pH6.90に調製した後、
限外濾過膜(分画分子量5万)を用いて脱塩、濃縮して
濃縮水性懸濁液925gを得た。得られた濃縮水性懸濁
液に、68重量%の酢酸濃度を有する酢酸水溶液1.6
gを加えて撹拌し、pH4.36に調製した。この得ら
れた酸性水性アルミナゾルは電気伝導度206μS/c
m、 Al2O3濃度9.2%であり、動的光散乱法粒径23
3nm、110℃で乾燥した粉体のBET法による比表
面積150.2m 2 /g、300℃で乾燥した粉体のB
ET法による比表面積170.3m2 /gを示した。
【0088】得られた酸性水性アルミナゾルをコロイド
ミル(AS−3型ホモジナイザー(商標)、(株)日本
精機製作所製)を用いて10000回転で2時間の機械的分
散処理を行い、酸性水性アルミナゾル920gを得た。
得られた酸性水性アルミナゾルはpH4.45、 Al2O3
濃度9.2重量%であり、動的光散乱法粒径178nm
を示した。得られた酸性水性アルミナゾルの動的光散乱
法粒径分布を測定すると、178nmの流体力学的平均
粒径(標準偏差23nm)を有する粒子群のみが認めら
れた。透過型電子顕微鏡観察によると、得られた酸性水
性アルミナゾルに含有されるアルミナ水和物のコロイド
粒子は1次粒子が一辺10〜20nmを有する矩形板状
粒子よりなり、その1次粒子が端面−端面間で凝結し
て、一平面内のみに伸長を有する50〜300nmの細
長い形状(リボン状)の2次粒子を形成していた。ま
た、このゾルを密閉状態で50℃で1カ月保持した後で
もゲル化することはなく安定であった。
【0089】比較例1 塩基性酢酸アルミニウム水溶液856.5g(塩基性塩
化アルミニウム溶液を希釈した後、酢酸型強塩基性陰イ
オン交換樹脂を用いたイオン交換にて調製した塩基性酢
酸アルミニウム水溶液: Al2O3濃度5.73重量%、酢
酸3.0重量%)に水1597.4gを加え撹拌した中
に5重量%のNaOH濃度を有する水酸化ナトリウム水
溶液335gを約10分で添加し、更に30分間撹拌を
続けた。そして反応混合物(pH9.55、 Al2O3濃度
1.76重量%)を得た。
【0090】この反応混合物2300gをガラスライニ
ング処理ステンレス製オートクレーブ容器に仕込み、1
40℃で12時間水熱処理を行った。得られた水性懸濁
液は、pH6.37、電気伝導度10000μS/cm
を示し、 Al2O3濃度1.76重量%であった。この水性
懸濁液を取り出した後、その水性懸濁液全量に純水40
00gと酢酸2gとを加えて撹拌した後、限外濾過膜
(分画分子量5万)を取り付けた撹拌機付自動連続加圧
濾過装置にて、脱塩、濃縮して酸性水性アルミナゾルゾ
ル259gを得た。
【0091】得られた酸性水性アルミナゾルはpH5.
10、 Al2O3濃度15重量%であり、110℃で乾燥し
た粉体のBET法による比表面積70m2 /g、300
℃で乾燥した粉体のBET法による比表面積80m2
gを示した。透過型電子顕微鏡観察によると、得られた
酸性水性アルミナゾルに含有されるアルミナ水和物のコ
ロイド粒子は長軸径40〜50nmの紡錘状粒子であ
り、その粒子が個々に独立して分散していた。また3日
間室温で静置したところコロイド粒子の沈降が認められ
た。
【0092】比較例2 市販のベーマイト構造を有するアルミナ水和物の六角板
状粒子及び矩形板状粒子を含有する水性アルミナゾル
(アルミナゾル−520、日産化学工業(株)製、 Al2
O3濃度20重量%、硝酸3重量%、粘度9.8mPa・
s、六角板状粒子及び矩形板状粒子の長軸径20〜30
nm)300gに水2700gを加え撹拌した中に5重
量%のNaOH濃度を有する水酸化ナトリウム水溶液2
9gを約10分で添加し、30分間撹拌を続けた。そし
て反応混合物(pH10.3、 Al2O3濃度1.98重量
%)を得た。
【0093】この反応混合物2300gをガラスライニ
ング処理ステンレス製オートクレーブ容器に仕込み、1
40℃で12時間水熱処理を行った。得られた水性懸濁
液は、pH10.39、電気伝導度1485μS/c
m、 Al2O3濃度1.98重量%であった。この水性懸濁
液とり出した後、その水性懸濁液全量に純水6000g
と酢酸12gとを加えて撹拌し、pH5.11に調製し
た後、限外濾過膜(分画分子量5万)を取り付けた撹拌
機付自動連続加圧濾過装置にて、脱塩、濃縮して酸性水
性アルミナゾル215gを得た。
【0094】得られた酸性水性アルミナゾルのpHは
4.55であった。透過型電子顕微鏡観察によると、得
られた酸性水性アルミナゾルに含有されるアルミナ水和
物のコロイド粒子は長軸径40〜50nmの六角板状粒
子及び矩形板状粒子であり、その粒子が個々に独立して
分散していた。 比較例3 市販の無定形アルミナ水和物の繊維状コロイド粒子を含
有する水性アルミナゾル481.7g(商品名アルミナ
ゾル−200、日産化学工業(株)製、 Al2O3濃度1
0.2重量%、酢酸2.7重量%)に水1926.7g
を加え、強く撹拌した中に5重量%のNaOH濃度を有
する水酸化ナトリウム水溶液134gを約10分で添加
し、更に30分間撹拌を続けた。そして反応混合物(p
H8.30、 Al2O3濃度1.93重量%)を得た。
【0095】この反応混合物2300gをガラスライニ
ング処理ステンレス製オートクレーブ容器に仕込み、1
40℃で12時間水熱処理を行った。得られた水性懸濁
液は、pH6.38、電気伝導度6190μS/cmを
示し、 Al2O3濃度1.93重量%であった。この水性懸
濁液を取り出した後、その水性懸濁液全量に純水540
0gと酢酸1.5gとを加えて撹拌し、pH5.22と
した後、限外濾過膜(分画分子量5万)を取り付けた撹
拌機付自動連続加圧濾過装置にて、脱塩、濃縮して酸性
水性アルミナゾルゾル304gを得た。
【0096】得られた酸性水性アルミナゾルはpH4.
18、 Al2O3濃度14.0重量%、電気伝導度803μ
S/cmであり、動的光散乱法粒径340nmを示し
た。透過型電子顕微鏡観察によると、得られた酸性水性
アルミナゾルに含有されるアルミナ水和物のコロイド粒
子は1次粒子が一辺10〜20nmを有する矩形板状粒
子よりなり、その1次粒子が端面−端面間で凝結して、
一平面内のみに伸長を有する50〜300nmの細長い
形状(リボン状)の2次粒子を形成しているものと、繊
維状コロイド粒子とが混在していた。このゾルを密閉状
態で50℃で1カ月保持した後でもゲル化することはな
く安定であった。
【0097】比較例4 市販の無定形アルミナ水和物の繊維状コロイド粒子を含
有する水性アルミナゾル481.7g(商品名アルミナ
ゾル−200、日産化学工業(株)製、 Al2O3濃度1
0.2重量%、酢酸2.7重量%)に水1926.7g
を加え、強く撹拌した中に5重量%のNaOH濃度を有
する水酸化ナトリウム水溶液184gを約10分で添加
し、30分間撹拌を続けた。そして反応混合物(pH
9.27、 Al2O3濃度1.90重量%)を得た。
【0098】この反応混合物2300gをガラスライニ
ング処理ステンレス製オートクレーブ容器に仕込み、1
00℃で18時間水熱処理を行った。得られた水性懸濁
液は、pH6.58、電気伝導度6840μS/cmを
示し、 Al2O3濃度1.90重量%であった。この水性懸
濁液を取り出した後、その水性懸濁液全量を水素型陽イ
オン交換樹脂(アンバーライトIR−120B(登録商
標)、ローム・アンド・ハース社製)300mlの充填
カラムに通液し、その後通液したゾルに水酸型強塩基性
陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−410(登
録商標)、ローム・アンド・ハース社製)289gを投
げ込み、pH4.10に調製した後、減圧濃縮して酸性
水性アルミナゾル397gを得た。
【0099】得られた酸性水性アルミナゾルはpH5.
10、 Al2O3濃度10.5重量%、電気伝導度3150
μS/cmであり、動的光散乱法粒径293nmを示し
た。透過型電子顕微鏡観察によると、得られた酸性水性
アルミナゾルに含有されるアルミナ水和物のコロイド粒
子は繊維状粒子のままであった。
【0100】
【発明の効果】 本発明によって得られる安定な酸性水
性アルミナゾル及び高濃度かつ安定な酸性水性アルミナ
ゾルは、従来の水性アルミナゾルに比較すると、例えば
市販のベーマイト構造を有するアルミナ水和物の分散性
の高い六角板状粒子及び(又は)矩形板状粒子を含有す
る水性アルミナゾルと、市販のベーマイト構造を有する
アルミナ水和物のチクソトロピー性の高い繊維状粒子を
含有する水性アルミナゾルとの中間的挙動をするため、
種々の用途に従来得られなかった改良をもたらす。 組
成物をつくるために従来のアルミナゾルに加えられた成
分は、本発明のアルミナゾルに対しても加えることがで
きる。それは、シリカゾル、アルキルシリケートの加水
分解液、その他の金属酸化物ゾル、水溶性樹脂、樹脂エ
マルジョン、増粘剤、消泡剤、界面活性剤、耐火物粉
末、金属粉末、顔料、カップリング剤などが挙げられ
る。
【0101】従来から用いられている種々の塗料成分と
共に本発明のアルミナゾルを配合することにより、無機
塗料、耐熱塗料、防食塗料、無機−有機複合塗料などを
調製することができる。本発明のアルミナゾルを含有す
る塗料から形成された乾燥塗膜にはピンホールが少な
く、クラックも殆ど見られない。この理由は、塗膜形成
において、アルミナゾルに含有されるの50〜300n
mの細長い形状(リボン状)の2次粒子は一般のコロイ
ド粒子に見られる塗膜中での偏析現象を起こさず、塗膜
中内に2次粒子による架橋構造を形成するためと考えら
れる。
【0102】本発明のアルミナゾルを含有するこれら塗
料、接着剤などは、種々の基材、例えば、ガラス、セラ
ミックス、金属、プラスチックス、木材、繊維、紙など
の表面に適用することができる。本発明のアルミナゾル
は、通常のガラス繊維、セラミック繊維、その他の無機
繊維などのフェルト状物に含浸させることもできる。
【0103】本発明のアルミナゾルは2次粒子が50〜
300nmの細長い形状を有するため、多層配線半導体
デバイスにおける層間絶縁膜、及びアルミニウム、銅、
タングステン又はそれらの合金のようなメタル配線の表
面研磨、及び基材例えば磁気記録媒体用ディスクの上に
設けられたNi−P等のメッキ層の表面研磨剤としても
有用である。
【0104】本発明のアルミナゾルは、高い安定性を示
し、その媒体の除去によって終局的にゲルに変わる性質
を有するが、このゾルに含有される2次粒子は50〜3
00nmの細長い形状(リボン状)を有するので、この
ゾルがゲル化する際に、又は硬化後には、このゾルに由
来する独特の性質を示す。上記用途の他にも種々の用途
に有用であることは容易に理解されよう。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の(A)、(B)及び(C): (A)無定形アルミナ水和物の繊維状コロイド粒子を含
    有する水性アルミナゾルに、アルカリを添加することに
    より、9〜12のpHを有する反応混合物を生成させる
    工程、 (B)(A)工程で得られた当該反応混合物を110〜
    250℃の温度で水熱処理することにより、ベーマイト
    構造を有するアルミナ水和物を含有する水性懸濁液を生
    成させる工程、及び (C)(B)工程で得られた当該水性懸濁液を、限外濾
    過法にて水と酸とを添加して脱塩処理することにより、
    3〜6のpHを有する酸性水性アルミナゾルを形成させ
    る工程、からなる、電子顕微鏡観察によると、一辺が1
    0〜30nmを有する矩形板状1次粒子が端面−端面間
    で凝結することにより形成される、一平面内のみに伸長
    を有する50〜300nmの細長い形状の2次粒子を含
    有する安定な酸性水性アルミナゾルの製造法。
  2. 【請求項2】 下記の(a)、(b)及び(c): (a)無定形アルミナ水和物の繊維状コロイド粒子を含
    有する水性アルミナゾルに、アルカリを添加することに
    より、9〜12のpHを有する反応混合物を生成させる
    工程、 (b)(a)工程で得られた当該反応混合物を110〜
    250℃の温度で水熱処理することにより、ベーマイト
    構造を有するアルミナ水和物を含有する水性懸濁液を生
    成させる工程、及び (c)(b)工程で得られた当該水性懸濁液に、水素型
    酸性陽イオン交換樹脂と水酸型強塩基性陰イオン交換樹
    脂とを接触させることにより、3〜6のpHを有する酸
    性水性アルミナゾルを形成させる工程、からなる、電子
    顕微鏡観察によると、一辺が10〜30nmを有する矩
    形板状1次粒子が端面−端面間で凝結することにより形
    成される、一平面内のみに伸長を有する50〜300n
    mの細長い形状の2次粒子を含有する安定な酸性水性ア
    ルミナゾルの製造法。
  3. 【請求項3】 下記の(A’)、(B’)、(C’)及
    び(D’): (A’)無定形アルミナ水和物の繊維状コロイド粒子を
    含有する水性アルミナゾルに、アルカリを添加すること
    により、9〜12のpHを有する反応混合物を生成させ
    る工程、 (B’)(A’)工程で得られた反応混合物を、ケーク
    濾過法にて水を添加して脱塩処理することにより、9〜
    12のpHを有する脱塩処理反応混合物を形成させる工
    程、 (C’)(B’)工程で得られた当該脱塩処理反応混合
    物を110〜250℃の温度で水熱処理することによ
    り、ベーマイト構造を有するアルミナ水和物を含有する
    水性懸濁液を生成させる工程、及び (D’)(C’)工程で得られた当該水性懸濁液に酸を
    添加することにより、3〜6のpHを有する酸性水性ア
    ルミナゾルを形成させる工程、からなる、電子顕微鏡観
    察によると、一辺が10〜30nmを有する矩形板状1
    次粒子が端面−端面間で凝結することにより形成され
    る、一平面内のみに伸長を有する50〜300nmの細
    長い形状の2次粒子を含有する安定な酸性水性アルミナ
    ゾルの製造法。
  4. 【請求項4】 請求項1、請求項2又は請求項3に記載
    の製造法で得られる安定な酸性水性アルミナゾルを機械
    的分散処理後、濃縮することを特徴とする高濃度かつ安
    定な酸性水性アルミナゾルの製造法。
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