JPH10500139A - シクロヘキサンの直接酸化及び触媒の再循環によるアジピン酸の調製方法 - Google Patents
シクロヘキサンの直接酸化及び触媒の再循環によるアジピン酸の調製方法Info
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Abstract
(57)【要約】
本発明は、アジピン酸へのシクロヘキサンの直接酸化のための反応においてコバルト含有触媒を再循環させる方法よりなり、而して該再循環プロセスは、下記を特徴とする:− シクロヘキサンをアジピン酸に酸化するための先行操作から得られる反応混合物にして、該反応混合物から、特にシクロヘキサノール及びシクロヘキサノンの如き中間体酸化生成物、或る種のカルボン酸溶媒及び水の少なくともいくらかを分離しておき且つ形成されたアジピン酸の少なくともいくらかを晶出によって回収しておいた反応混合物に、少なくとも一種の補助溶剤を用い或は補助溶剤及びカルボン酸を含む混合物を用いて少なくとも一回の抽出を施し、− 一方で、コバルト触媒の少なくともいくらか、カルボン酸のいくらか及び見込まれる残留量の他の化合物を含有する混合物と、他方で、補助溶剤及び酸化反応で形成されたグルタル酸及びコハク酸の少なくともいくらか並びに或る種のカルボン酸を含有する溶液を分離し、そして− コバルト触媒の少なくともいくらかを含有する混合物を、随意余分なコバルト触媒の添加後、アジピン酸へのシクロヘキサンの酸化のための新規な操作において使用する。
Description
【発明の詳細な説明】
シクロヘキサンの直接酸化及び触媒の
再循環によるアジピン酸の調製方法
本発明は、酸素含有ガスを用い、液相で、且つコバルト含有触媒の存在で、
シクロヘキサンをアジピン酸に1段法酸化させる分野に関する。
シクロヘキサンをアジピン酸に直接酸化させることは、特に、1段法でしか
も硝酸の如きオキシダントを用いずに、シクロヘキサンをアジピン酸に転化させ
る際、この化合物が、いかなる汚染をも避けるために後で処理せねばならない窒
素酸化物を発生するという明らかな利点のために長い間実施されてきた方法であ
る。
かくして、1940年12月に発行された米国特許US−A−2,223,
493は、一般に酢酸を含有する液相中、少なくとも60℃の温度で、酸素含有
ガスを用い、且つコバルト化合物の如き酸化触媒の存在で、環状炭化水素を、対
応するジ酸に酸化させることを記述している。この特許は、結晶化により形成さ
れたアジピン酸を分離するための備えをしているが、新たな酸化操作で触媒を再
循環させる態様については何も教示しておらず、まして、一回以上再循環させた
触媒が有する活性については何も教示していない。
特許出願WO−A−94/07833も同様の方法を記述しているが、溶剤
は環状炭化水素1モル当たり1.5モル未満に相当すること、該溶剤は第一もし
くは第二水素原子のみを有する有機酸よりなること、そして反応は反応混合物1
000グラム当たりコバルトベース触媒少なくとも0.002モルの存在で実施
されることを明記している。反応の終わりに、形成されたジ酸は単離される。
上記特許出願と同日出願された特許出願WO−A−94/07834も亦、
同じ方法を記述しているが、最終反応混合物の処理段階を発展させている。この
処理はは、形成されたジ酸を、該ジ酸の沈殿を生じさせるために反応混合物を冷
却させることにより分離し、またジ酸を2液相から濾過することにより分離する
にある。而して、液相のうち非極性のものは再循環され、また極性のものも、随
意的加水分解及び付加的量のジ酸分離後、再循環される。
これら種々の特許は、工業上受容される選択性を伴った、シクロヘキサンの
、アジピン酸への1段法酸化を許容する解決策を提示しているが、しかしそれら
は、再循環時の触媒の漸進的で且つ比較的迅速な失活という特定問題を扱ってい
ない。
実際、アジピン酸のいくらかを結晶化させるためにシクロヘキサン酸化反応
から得られた反応混合物を冷却させ、次いでこの沈殿したアジピン酸を分別する
ために濾過するとき、かくして得られた濾液は、触媒、残留アジピン酸、反応副
生物(特にグルタル酸、コハク酸、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、ヒ
ドロキシカプロン酸及びシクロヘキシルエステル類)、未反応シクロヘキサン、
酢酸溶剤及び形成水を含有する。
これら種々の化合物の或るものは確かに触媒の失活に影響を及ぼす。特許出
願WO−A−94/07834に記載の方法において、これら種々の化合物の大
半は、随意、更なる量のシクロヘキサン添加後、また随意、混合物中に残留する
追量のアジピン酸分離後、酸化反応に再循環される。結局、触媒及び種々の副生
物が新たな酸化反応に再循環されるとき、触媒の比較的迅速な失活が観察される
と判明する。かくして、WO−A−94/07834の種々の例には、触媒の4
サイクルの後アジピン酸の形成速度が26〜43%まで低下したことが示されて
いる。
かくして、本発明の主題の一つは、失活がほとんどもしくは全くなしでコバ
ルト触媒の再循環を許容することである。
この目的を達成するために、本発明の方法は、アジピン酸へのシクロヘキサ
ンの直接酸化の間得られる反応混合物の処理段階にして、反応の際形成されるグ
ルタル酸及びコハク酸の少なくともいくらかを抽出することからなる処理段階を
包含する。
本発明の最初の主題は先ず、第一もしくは第二水素原子のみを有する脂肪族
カルボン酸少なくとも1種よりなる溶剤中、酸素含有ガスによる、アジピン酸へ
のシクロヘキサンの直接酸化のための反応において、コバルト含有触媒を再循環
させる方法よりなり、而して該再循環プロセスは、
− アジピン酸へのシクロヘキサンの酸化のための先行操作から誘導された反応
混合物が、より揮発性の高い化合物を除去するために、随意、それに含有される
アジピン酸の少なくともいくらかを結晶化し且つ分離した後処理されること、
− 得られた残分が、ケトン、アルコール、エステル、これらの種々の混合物ま
たは炭化水素とカルボン酸との混合物から選ばれる溶剤を用いて抽出され、而し
てこの溶剤は該残分に含有されるジ酸のすべてないし大部分を溶解することがで
きること、
− かくして得られる、コバルト触媒の大半を含有する抽出残分が、シクロヘキ
サン、カルボン酸及び、更にふさわしければ、コバルト触媒、の必要な補充の後
、アジピン酸へのシクロヘキサンの酸化のための新たな操作で用いられること
を特徴とする。
本明細書中、用語「大部分」は、考慮される化合物または化合物類の総量の
少なくとも50重量%を意味する。
反応混合物は、特に、未反応シクロヘキサン、酸化反応で溶剤として役立つ
カルボン酸、形成される水、及びシクロヘキサノール及びシクロヘキサノンの如
き特定の中間体化合物である、より揮発性の高い化合物の、大気圧もしくは減圧
での蒸留によって好都合に処理することができる。既述の如く、この処理は、反
応混合物の冷却を介しての、アジピン酸のいくらかもしくは全部の結晶化及び、
例えば濾過または遠心分離を介してのその分離によって先行されうる。
得られた残分から触媒を抽出するのに用いることのできるケトンは特に、ア
セトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノンであるが、シクロヘキサノン
が好ましい。なぜなら、それは、所要時、本方法の他の工程で再使用され得、例
えば、それを酸化反応に再循環させることができるからである。
得られた残分から触媒を抽出するのに用いることのできるアルコールは、特
に、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、
t−ブタノール及びシクロヘキサノールであるが、シクロヘキサノールが好まし
い。なぜなら、それは、所要時、本方法の他の工程で再使用され得、例えば、そ
れを酸化反応に再循環させることができるからである。
得られた残分から触媒を抽出するのに用いることのできるエステルは、特に
、シクロヘキサン酸化反応で用いられる如き第一もしくは第二水素原子のみを有
する脂肪族カルボン酸と共に上記のアルコールから誘導されるエステルである。
むろん、これら抽出溶剤のいくつかの混合物を用いることができ、特にシク
ロヘキサノールとシクロヘキサノン(時折オロンと呼称)の混合物を用いること
ができる。他の溶剤混合物、例えば、脂肪族ないし脂環式炭化水素及びカルボン
酸の混合物も亦適合しうる。これらについては、後で定義する。
本発明の第二主題も亦、酸素含有ガスによる、アジピン酸へのシクロヘキサ
ンの直接酸化のための反応において、コバルト含有触媒を再循環させる方法より
なり、而して該再循環プロセスは、
− アジピン酸へのシクロヘキサンの酸化のための先行操作から得られる反応混
合物にして、該混合物から、特にシクロヘキサノール及びシクロヘキサノンの如
き、少なくともいくらかの中間体酸化生成物、いくらかのカルボン酸溶剤及び水
が分離されており且つ該混合物から、形成された、少なくともいくらかのアジピ
ン酸が結晶化により回収されている、上記反応混合物が、少なくとも1種の助触
媒を用い或は助触媒とカルボン酸からなる混合物を用いた少なくとも一回の抽出
に付されること、
− 一方で、少なくともいくらかのコバルト触媒、いくらかのカルボン酸及び見
込まれる残留量の他の化合物を含有する混合物と、他方で、補助溶剤及び、酸化
反応で形成される、少なくともいくらかのグルタル酸及びコハク酸並びにいくら
かのカルボン酸を含有する溶液とが分離されること、そして
− 少なくともいくらかのコバルト触媒を含有する溶液が、随意、余分なコバル
ト触媒の添加後、アジピン酸へのシクロヘキサンの酸化のための新たな操作で用
いられること
を特徴とする。
この本発明の第二主題に従った方法で用いることのできる補助溶剤は、一般
に、炭化水素、特に脂肪族ないし脂環式炭化水素、ケトン及びアルコールから選
ばれる。
炭化水素のうち、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデ
カン、ドデカン及びシクロヘキサンを挙げることができる。
ケトンのうち、本発明の最初の主題に従った方法で残分の抽出に関し列挙し
たものを用いることができるが、シクロヘキサノンが好ましい。
アルコールのうち、本発明の最初の主題に従った方法で残分の抽出に関し列
挙したものを用いることができるが、シクロヘキサノールが好ましい。
本発明の第二主題に従った方法で補助溶剤としてシクロヘキサンを用いるこ
とは好ましい。なぜなら、それによって、本方法の間得られる種々の溶液の処理
及びそれらの、酸化反応での可能な再循環が促進されるからである。
特定の分離操作後本発明の方法で用いられる粗反応混合物は、カルボン酸か
らなる液体媒体中、コバルト含有触媒の存在で、酸素含有ガスにより、シクロヘ
キサンの、それ自体知られた酸化から得られる。
この粗反応混合物の調製に関して、従来法、特に前述したUS−A−2,2
23,493に記載の方法を参照することができる。かくして、初期シクロヘキ
サン/カルボン酸重量比は、例えば0.1/1〜10/1範囲であり得、好まし
くは0.5/1〜3/1範囲でありうる。コバルト触媒は、好ましくは、反応媒
体に可溶のコバルト化合物からなり、例えば、カルボン酸コバルト好ましくは酢
酸コバルト四水和物、塩化コバルト、臭化コバルト及び硝酸コバルトから選ばれ
る。
反応混合物に対するコバルトの重量%として表わされる触媒の量は、一般に
0.01%〜5%、好ましくは0.05%〜2%であるが、これらの値は臨界的
でない。しかしながら、それは、後で最終反応混合物から分離し且つ再循環せね
ばならない過剰量の触媒を用いずに十分な活性を有するかどうかの問題である。
コバルトに加えて、触媒は、マンガン及び(または)銅及び(または)セリ
ウム及び(または)バナジウムの如き金属をベースとした他の化合物を含有する
こともできる。
また、酸化反応に、例えばケトンまたはアルデヒドの如き開始剤化合物を用
いることが有利である。特に、反応中間体であるシクロヘキサノンが挙げられる
。開始剤は一般に、用いられる反応混合物の重量の0.01〜20重量%に相当
するが、これらの割合は臨界値を有さない。開始剤は特に、酸化の開始時、また
シクロヘキサンを120℃以下の温度で酸化させるときに有用である。それは反
応開始時に導入することができる。
シクロヘキサン酸化反応で溶剤として作用するカルボン酸は特に、2〜9個
の炭素原子及び第一もしくは第二水素原子のみを有する飽和脂肪族カルボンサン
である。
酢酸は、好ましくは、シクロヘキサン酸化反応の溶剤として使用される。本
記載の残り部分で、酢酸は、便宜上、本方法の種々の段階で用いられるカルボン
酸として言及される。
酸化はまた、本方法の初期段階で導入される水の存在で実施することができ
る。
シクロヘキサン酸化反応は、一般に60〜180℃、好ましくは70〜12
0℃の温度で実施しうる。
圧力は反応の臨界的パラメーターではないが、一般に10kPa(1.1バ
ール)〜10,000kPa(100バール)範囲である。
本発明に従う抽出操作を行う前に、シクロヘキサンの酸化から得られた粗反
応混合物は、その構成成分のいくらかを分離すべく種々の操作に付される。
本発明の第二主題に従った方法の第1変法に依れば、粗反応混合物は先ず、
例えば温度16〜30℃への冷却に付すことができ、それによって、形成される
アジピン酸の少なくともいくらかが結晶化される。かくして、本質上アジピン酸
よりなる固相と、本質上未反応シクロヘキサンを含有する、上部のシクロヘキサ
ン液相と、そして本質上、酢酸、形成水、アジピン酸、シクロヘキサノール、シ
クロヘキサノン及びヒドロキシカプロン酸の如きシクロヘキサン酸化中間体、グ
ルタル酸及びコハク酸の如き副生物並びにコバルト触媒を含有する、下部の酢酸
液相からなる三相媒体が得られる。反応混合物を冷却することにより得られる媒
体は、ふさわしければ、二相媒体でありうる。すなわち、該媒体は、酸化時のシ
クロヘキサンの転化が完全ないしほぼ完全であるなら、沈殿アジピン酸と酢酸相
のみを含有する。
固体の濾過または遠心分離の後、濾液または遠心分離液を構成する液相を沈
降によって分離し、必要あれば、少量のシクロヘキサン酸化生成物を含有するシ
クロヘキサン相を新たな酸化反応において再循環させることができる。
アジピン酸結晶化操作に先立って反応混合物を濃縮することも亦有利であり
うる。次いで、アジピン酸の沈殿時、単一酢酸液相を見出すことができる。
本発明の第二主題に従った方法の第2変法に依れば、最終粗反応混合物は、
例えば、75℃にまで上げうる温度での熱時、除去することができる。次いで、
反応混合物は沈降により、本質上未反応シクロヘキサンを含有する上部シクロヘ
キサン相と、本質上、酢酸、アジピン酸、形成水、シクロヘキサノール、シクロ
ヘキサノン及びヒドロキシカプロン酸の如きシクロヘキサン酸化中間体、グルタ
ル酸及びコハク酸の如き副生物並びにコバルト触媒を含有する下部酢酸液相との
2液相に分離する。
第1変法における如く、2液相は沈降により分離され、少量のシクロヘキサ
ン酸化生成物を含有するシクロヘキサン相は、新たな酸化反応において再循環さ
せることができる。
第1変法に関する上記注解は他の変法にも妥当である。すなわち、酸化に用
いたシクロヘキサンが事実上すべて転化するなら、そこに2液相はあり得ず、単
一酢酸相があるのみである。
可能な濃縮の後、酢酸相は次いで、例えば16℃〜30℃の温度に冷却され
、それにより、形成されたアジピン酸の少なくともいくらかが結晶化せしめられ
、次いで濾過または遠心分離によって分離される。このアジピン酸は、有利には
酢酸または水でありうる適当な溶剤からの再結晶によって精製することができる
。酢酸を再結晶溶剤として用いるとき、次いで、それは上で得られた酢酸相に添
加することができる。
本発明の第二主題に従った方法の第3変法に依れば、酸化反応の間水/シク
ロヘキサン共沸混合物を留去することができ、また沈降によるこの混合物の分離
後、所望なら、シクロヘキサンを反応器に再導入することができる。これは、水
の少なくともいくらかを反応混合物から除去せしめる。次いで、最終粗反応混合
物を上に記述した第1変法に従って、すなわちアジピン酸を沈殿させるための冷
却、濾過または遠心分離により処理することができる。水を除去することの重要
性は、沈降で液体部分が二つの別個の相に分離する可能性を避けることである。
得られた単一液相は次いで、酢酸相と同じ態様で処理される。
これらの三つの変法の一つで或は他で得られた酢酸相は、最終粗反応混合物
の処理のために、沈降による分離後得られた状態のまま(特に水がすでに除去さ
れている場合)か或は、好ましくは、減圧で30℃〜80℃の温度に加熱するこ
とにより濃縮された後、シクロヘキサンによる抽出に付される。この濃縮は、酢
酸のいくらか、水の少なくとも大部分及び、存在しうる、シクロヘキサン、シク
ロヘキサノールもしくはシクロヘキサノンの如き軽質化合物の少なくともいくら
かを除去することを可能にする。かくして酢酸相から分離された化合物類は、全
体として或は、それらが含有する水の少なくともいくらかを分離後、シクロヘキ
サン酸化段階において再循環させることができる。一般に、濃縮は、酢酸相を、
その初期容積の80%〜10%に相当する容積に低下させるが、これらの値は単
に例として示されるに過ぎない。一つの変法は、酢酸相を濃縮乾固させるにあり
、換言すれば該相に含まれる酢酸すべてを除去することにある。
酢酸相の部分的濃縮も、その後、アジピン酸の結晶化で上述した条件下での
冷却が行われるなら、付加的量のアジピン酸を沈殿せしめうる。
濃縮済みの或は未濃縮の酢酸相は、シクロヘキサン単独により或はシクロヘ
キサン/酢酸混合物により抽出される。しかしながら、本質的要点は、抽出に付
される酢酸相とシクロヘキサンからなる混合物が1/1〜50/1好ましくは2
/1〜15/1範囲の全シクロヘキサン/酢酸重量比を有すべきということであ
る。これは、上記した反応混合物の種々の処理後に得られた酢酸相の組成に依り
、かくして画成される組成物をシクロヘキサン/酢酸混合物で抽出するのに要求
される酢酸が部分的ないし全体的に、酢酸相に含まれる酢酸からなり、或は上記
酢酸相の酢酸が除去されている場合シクロヘキサンとともに導入されることを意
味する。
抽出は、通常の工業的技術によって一度若しくはそれ以上で又は連続法で実
施することができる。これは、使用する溶剤の沸点までの範囲にわたる温度にお
いて実施することができる。抽出は、一般には10〜80℃そして好ましくは5
0〜80℃で行われる。
抽出操作は、一方において、分離することが望まれるグルタル酸及びコハク
酸のうちの少なくともいくらか、並びにラクトン、エステル及び過酸化生成物の
如きなお残留する可能性がある他の副生物を残留量で含有する液体、そして他方
において、本質的にコバルトを含有する混合物をもたらす。この混合物は、一般
には、沈降によって分離される。
かくして分離されたコバルト触媒は、新規なシクロヘキサン酸化反応に再循
環され、そして随意として、シクロヘキサン酸化から得られる反応混合物の種々
の処理間にこうむる損失を補うための更なる添加の後に再循環される。
この触媒は、最初のシクロヘキサン酸化操作に使用された新しい触媒と同じ
活性のままであり、かくして酢酸を形成するためのその活性及び反応選択性を大
きく低下させることなく多数回再循環させることができる。
本発明の第三の主題は、カルボン酸を溶剤として含む液状媒体中、且つ少な
くともコバルトを含有する触媒の存在において、酸素含有ガスを用いてシクロヘ
キサンをアジピン酸に酸化する連続方法であって、下記の工程:
a)シクロヘキサンをアジピン酸に事実上酸化させ、
b)アジピン酸へのシクロヘキサンの酸化反応から誘導される反応混合物を、
随意、該反応混合物に含まれるアジピン酸の少なくともいくらかを晶出させて分
離した後、揮発性化合物を除くために処理し、
c)得られた残分を、ケトン、アルコール、エステル、これらの種々の混合物
又は炭化水素とカルボン酸との混合物から選ばれる溶剤を使用して抽出し、この
溶剤は該残分中に含有されるジ酸の全部又は大部分を溶解することができるもの
であり、
d)かくして得られる、コバルト触媒の大部分を含有する抽出残分を新規なシ
クロヘキサン酸化操作a)において使用する
を含むことを特徴とする連続方法よりなる。
この連続法の各工程は先に概略を説明したので、本法の特定の具体例につい
てはこの説明を参照されたい。
本発明の第四の主題は、酢酸を溶剤として含む液状媒体中、且つ少なくとも
コバルトを含有する触媒の存在において、酸素含有ガスを用いてシクロヘキサン
をアジピン酸に酸化する連続方法であって、下記の工程:
a)シクロヘキサンをアジピン酸に事実上酸化し、
b)下記のいずれか:
b1)粗製の最終反応混合物を、随意濃縮後、アジピン酸の少なくともい
くらかを晶出させるために冷却し、該アジピン酸を濾過又は遠心分離によって分
離し、次いで、必要ならば得られた濾液又は遠心分離液を沈降させてシクロヘキ
サン相及び酢酸相にすることによって分離させ、または
b2)粗製の最終反応混合物を熱い間に取り出し、該反応混合物は2相又
は単相になり、沈降させてシクロヘキサン相及び酢酸相にすることによって分離
し、沈降により分離されている酢酸相、又は適する場合には、単一の酢酸相を、
アジピン酸の少なくともいくらかを晶出させるように冷却し、及び濾過又は遠心
分離によって該アジピン酸及び酢酸相を分離することが可能であり、または
b3)酸化工程a)の間に反応混合物から水を、シクロヘキサン/水共沸
混合物を蒸留することによって除去し、蒸留されたシクロヘキサンを必要に応じ
て反応装置中に再導入した後、粗製の最終反応混合物を変法b1)に従って処理
し、該処理は単一の酢酸相をもたらし、
c)変法b3)において行っていなければ、酢酸相から水の少なくとも大部分
を除去するために、酢酸相を濃縮し、
d)酢酸相を、シクロヘキサン又はシクロヘキサン/酢酸混合物をシクロヘキ
サン/酢酸相混合物において、総括のシクロヘキサン/酢酸重量比が1/1〜5
0/1、好ましくは2/1〜15/1になるような量で使用して抽出し、
e)一方で、グルタル酸及びコハク酸の少なくともいくらかを含有するシクロ
ヘキサン溶液と、他方で、本質的にコバルト触媒を含有する混合物とを分離し、
f)コバルト触媒を含有する混合物を新規な酸化反応a)において循環させる
を含むことを特徴とするシクロヘキサンをアジピン酸に酸化する連続方法よりな
る。
この連続法の各工程は先に概略を説明したので、本法の特定の具体例につい
てはこの説明を参照されたい。
次の実施例は、本発明を例示するものである。例1〜5
六枚刃ダブルタービン、並びに反応剤及び流体の導入用又は反応生成物及び
流体の取出用の各開口を備えそして窒素で予備パージされたチタン製スリーブ付
き1.5lオートクレーブに、下記の化合物、
・酢酸コバルト四水和物: 4.0g(16ミリモル)
・酢酸: 359g(5.98モル)
・シクロヘキサン: 289.7g(3.45モル)
・アセトアルデヒド: 1.2g(27.3ミリモル)
を室温で仕込む。
オートクレーブを閉じた後に、窒素圧を20バールにし、攪拌を800回転
/分で開始しそして温度を29分にわたって102℃にする。次いで、窒素を2
0バールの減損空気(5.85%酸素)によって置換する。流出ガスの流量を2
50l/hrに設定する。
約10分の誘導(この間に酸素の消費は全くない)後、温度は突然に106
℃に上昇しそして酸素が消費され始める。オートクレーブ流出口における空気中
の酸素含量が1%に達したときに、5.85%の酸素含量にある減損空気の供給
は、11.35%の酸素含量にある空気の供給によって置き換えられる。反応器
の出口における酸素含量は、試験を通して1%よりも下にとどまる。オートクレ
ーブにおける平均温度は106〜107℃に維持される。
50lの酸素が消費されたときに、出口バルブ及び空気供給口を閉じる。同
時に、オートクレーブの温度を徐々に75℃にする。
次いで、浸漬管に連結された取出バルブを使用して反応混合物を回収し、次
いで約20℃に急速に冷却する。
沈殿した粗アジピン酸(49g)、酢酸相(451.4g)及びシクロヘキ
サン相(143.2g)よりなる三相媒質が得られる。オートクレーブを酢酸で
濯ぎそしてこの濯ぎ液を酢酸相に加える。凝縮器の後に置かれたトラップの内容
物(5.5g)をシクロヘキサン相に加える。
酢酸からの再結晶時に、294.5ミリモルの再結晶アジピン酸、並びに3
8、5ミリモルのアジピン酸、1.6ミリモルのグルタル酸及び1.2ミリモル
のコハク酸(これらは溶解されている)が得られる。アジピン酸の結晶によって
捕捉された約5%の触媒が再結晶からの酢酸中に回収されるが、この酢酸溶液を
酢酸相に加える。
酢酸相及びシクロヘキサン相をガスクロマトグラフィーによって分析する。
例1並びに次の比較試験又は例の結果は、次の方法で表されている。
・シクロヘキサンの転換度(DC):最終反応混合物の各化合物に転換されたシ
クロヘキサンのモル%
・生成物Pに対する選択率(RT):生成物Pのモル数×100/転換されたシ
クロヘキサンモル数
・生成したジ酸の直線度(Lyt):生成したアジピン酸のモル数×100/生
成したアジピン酸、グルタル酸及びコハク酸のモル数の合計
酢酸相は、形成された酸及びラクトンの実質上全部、形成されたシクロヘキ
サノール、シクロヘキサノン及び酢酸シクロヘキシルの大多数、並びに水及び触
媒の実質上全部を含有する。
水、並びに酢酸、シクロヘキサン、シクロヘキサノール及びシクロヘキサノ
ンのいくらかを除去するために、酢酸相を、110gの酢酸及び35gの生成物
(本質的には、ジ酸及びコバルト触媒)を含有する溶液が得られるまで減圧(4
kPa)で50℃に加熱することによって濃縮させる。
この濃縮された酢酸相を1300gのシクロヘキサンで70℃において処理
する。赤色の沈殿及び無色の上澄み液が生じるが、この液を熱い(60℃)間に
除去する。
上澄み液は酸化生成物(ジ酸、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、エ
ステル及びラクトン)の大部分を含有するのに対して、沈殿は、最初の試験に関
して先に記載した割合を回復するのに必要な余分のコバルト、シクロヘキサン及
び酢酸と共に反応に戻されたコバルトの95%以上(試料に対して分析によって
測定された量)を含有する。
触媒は、続けて4回再循環される(例2〜5)。
例1〜5で得られた結果を下記の表1に記載する。
この表では、次の略語が使用される。
・酢酸に対して“AdOH”
・シクロヘキサノール/シクロヘキサノン混合物に対して“olone”
・l/時間単位で消費される酸素の最大量に対して“O2”(この値は酸化の最
大速度を表す)
・g/l.h単位で表される生成したアジピン酸の生産効率に対して“AdOH
のPeff”
触媒活性、アジピン酸に対する選択性、olone(アジピン酸生成性化合
物の混合物)に対する選択性及び直線度が5回の連続酸化にわたって保たれるこ
とが認められる。比較試験a〜e
最初の酸化試験は、例1と同じ量の反応剤及び触媒並びに同じ操作条件で実
施されるが、しかし最終反応混合物の処理が異なる。
例1におけるように、酢酸相は、生成した酸及びラクトンのほとんど全部、
そして生成したシクロヘキサノール、シクロヘキサノン及び酢酸シクロヘキシル
の大多数を含有し、そして水及びアジピン酸の沈殿によって連行された触媒の実
質上全部(触媒の約5%)がアジピン酸の再結晶化に使用した酢酸中に回収され
るが、この酢酸溶液を酢酸相に添加する。
水、並びに酢酸、シクロヘキサン、シクロヘキサノール及びシクロヘキサノ
ンのいくらかを除去するために、酢酸相を、110gの酢酸及び35gの生成物
(本質的には、ジ酸及びコバルト触媒)を含有する溶液が得られるまで減圧(4
kPa)で50℃に加熱することによって濃縮させる。
この濃縮された酢酸溶液は、最初の試験aに関して先に記載した割合を回復す
るのに必要な余分のコバルト、シクロヘキサン及び酢酸と共に反応器に送られる
。
触媒は、続けて4回再循環される(比較試験b、c、d及びe)。
例a〜eで得られた結果を下記の表2に記載する。
アジピン酸及びoloneに対する全選択性並びに直線性は、5回の連続酸
化にわたって保持されることが認められる。他方、触媒の最初の再循環間に活性
が保持される場合には、触媒の漸進的失活が観察される。
加えて、最終反応混合物の冷却間に沈殿する粗アジピン酸は、他の酸化生成
物(この濃度は再循環が続くにつれて上昇する)によって益々汚染されるが、こ
の沈殿されたアジピン酸は益々多くのコバルトを連行する。例6
120gの酢酸、3.7gのコハク酸(31.6ミリモル)、7.3gのグ
ルタル酸(55.3ミリモル)、29.2gのアジピン酸(200ミリモル)及
び4gの酢酸コバルト四水和物(16ミリモル)を含有しそして100℃で均質
な溶液を徐々に室温に冷却する。
濾過によって21gのアジピン酸を含有する固体を分離し、そして116g
の酢酸、3.0gのコハク酸(25.4ミリモル)、7.0gのグルタル酸(5
3ミリモル)、8.2gのアジピン酸(53ミリモル)及び4gの酢酸コバルト
四水和物(16ミリモル)よりなる濾液を回収する。
この濾液を濃縮乾固し、次いで50mlの熱い(56℃)アセトンで二回処
理する。
アセトンエキストラクトと残留する固体残渣との間の化合物の分布を以下の
表3に記載する。
例7
例6と同じ組成の溶液を同じ態様で処理し、そして結晶化及び濾過によって
アジピン酸の大部分を分離した。
得られた濾液は、115gの酢酸、3.7gのコハク酸(31ミリモル)、
7.3gのグルタル酸(55ミリモル)、8.8gのアジピン酸(60ミリモル
)及び4gの酢酸コバルト四水和物(16ミリモル)よりなる。
この濾液を濃縮乾固し、次いで100mlの熱い(70℃)シクロヘキサノ
ン/酢酸混液(82/18重量/重量)で五回処理する。
溶剤混液のエキストラクトと残留する固体残渣との間の化合物の分布を以下の
表4に記載する。
例8
120gの酢酸、3.7gのコハク酸、6.3gのグルタル酸、29.9g
のアジピン酸及び4.1gの酢酸コバルト四水和物を含有しそして100℃で均
質な溶液を徐々に室温に冷却する。
濾過によって21.2gのアジピン酸を含有する固体を分離し、そして11
6gの酢酸、3.2gのコハク酸(27.1ミリモル)、6.2gのグルタル酸
(47ミリモル)、8.7gのアジピン酸(60ミリモル)及び4.1gの酢酸
コバルト四水和物(16.4ミリモル)よりなる濾液を回収する。
この濾液を一部分濃縮して約52gの熱溶液を得る。この熱い濃縮溶液中に
168.5gのアセトンを入れることによってこの熱濃縮溶液を処理する。この
混合物の温度は60℃に安定化する。混合物は固体及び上澄み液からなり、そし
てこれらは熱い間に分離される。
上澄み液と分離された固体残渣との間の化合物の分布を以下の表5に記載す
る。
【手続補正書】
【提出日】1997年3月10日
【補正内容】
請求の範囲
1.アジピン酸へのシクロヘキサンの直接酸化反応においてコバルト含有触媒
を循環させる方法であって、反応で形成されるグルタル酸及びコハク酸の少なく
ともいくらかを抽出することからなる、アジピン酸へのシクロヘキサンの酸化の
間に得られる反応混合物の処理段階を含むことを特徴とする方法。
2.第一もしくは第二水素原子のみを有する脂肪族カルボン酸少なくとも1種
を含む溶剤中、酸素含有ガスによる、アジピン酸へのシクロヘキサンの直接酸化
のための反応において、コバルト含有触媒を循環させるに際し、該循環プロセス
は、
− アジピン酸へのシクロヘキサンの酸化のための先行操作から誘導された反応
混合物が、随意、それに含まれるアジピン酸の少なくともいくらかを晶出させて
分離した後に、揮発性化合物を除くために処理されること、
− 得られた残分が、ケトン、アルコール、エステル、これらの種々の混合物又
は炭化水素とカルボン酸との混合物から選ばれる溶剤を用いて抽出され、而して
この溶剤は該残分に含有されるジ酸の全部又は大部分を溶解することができるこ
と、
− かくして得られる、コバルト触媒の大部分を含有する抽出残分が、シクロヘ
キサン、カルボン酸及び、更に適する場合にはコバルト触媒の必要な補充の後に
、アジピン酸へのシクロヘキサンの酸化のための新規な操作で用いられること
を特徴とする請求項1の方法。
3.酸素含有ガスによるアジピン酸へのシクロヘキサンの直接酸化のための反
応において、コバルト含有触媒を循環させるに際し、該循環プロセスが、
− アジピン酸へのシクロヘキサンの酸化のための先行操作から得られる反応混
合物にして、該反応混合物から、特にシクロヘキサノール及びシクロヘキサノン
の如き、少なくともいくらかの中間体酸化生成物、いくらかのカルボン酸溶剤及
び、水が分離されており且つ、該混合物から、形成された、少なくともいくらか
のアジピン酸が晶出により回収されていり、前記反応混合物が、少なくとも一種
の補助溶剤を用い或は補助溶剤とカルボン酸からなる混合物を用いた少なくとも
一回の抽出に付されること、
− 一方で、少なくともいくらかのコバルト触媒、いくらかのカルボン酸及び見
込まれる残留量の他の化合物を含有する混合物と、他方で、補助溶剤及び、酸化
反応で形成される、少なくともいくらかのグルタル酸及びコハク酸並びにいくら
かのカルボン酸を含有する溶液とが分離されること、そして
− 少なくともいくらかのコバルト触媒を含有する混合物が、随意、余分なコバ
ルト触媒の添加後に、アジピン酸へのシクロヘキサンの酸化のための新規な操作
で用いられること
を特徴とする請求項1の方法。
4.用いられる補助溶剤が、脂肪族及び脂環式炭化水素、ケトン並びにアルコ
ールから選ばれ、好ましくはシクロヘキサンであることを特徴とする請求項3の
方法。
5.粗反応混合物に冷却を施して温度16°〜30℃にして形成されたアジピ
ン酸の少なくともいくらかの晶出を生じさせ、こうして本質的にアジピン酸から
なる固相、上部のシクロヘキサン液相及び下部の酢酸液相を含む3相媒体か或は
本質的にアジピン酸からなる固相及び酢酸相を含む2相媒体のいずれかをもたら
した後に、必要ならば固体を濾過又は遠心分離した後に、沈降後2液相を分離す
ることを特徴とする請求項3及び4のいずれかの方法。
6.反応混合物が、アジピン酸晶出操作に先立って濃縮されることを特徴とす
る請求項3〜5の内の一の方法。
7.最終粗反応混合物が熱い間に取り出され、次いで該反応混合物は2相又は
単相になり、必要ならば、上部のシクロヘキサン液相と下部の酢酸液相との2液
相を沈降後分離し、該下部の酢酸相又は単一の酢酸相を温度16°〜30℃に冷
却して形成されたアジピン酸の少なくともいくらかの晶出を生じさせ、これを次
いで酢酸相の濾過又は遠心分離によって分離することを特徴とする請求項3及び 4
のいずれかの方法。
8.水/シクロヘキサン共沸混合物を酸化反応の間留出させ、次いで、この混
合物を沈降によって分離した後、シクロヘキサンを反応装置中に再導入し、最終
粗反応混合物を処理することを特徴とする請求項2及び3のいずれかの方法。
9.最終粗反応混合物を処理する際に得られる酢酸相に、沈降により分離した
後に得られるままか又は好ましくは減圧において温度30°〜80℃に加熱する
ことによって濃縮した後のいずれかのシクロヘキサンによる抽出を施すことを特
徴とする請求項5〜8の内の一の方法。
10.濃縮された又は非濃縮の酢酸相を、シクロヘキサン単独でか又はシクロ
ヘキサン/酢酸混合物のいずれかによって抽出し、それで抽出に付した酢酸相/
シクロヘキサン混合物が、総括のシクロヘキサン/酢酸相重量比1/1〜50/
1、好ましくは2/1〜15/1を有するようにすることを特徴とする請求項5
〜9の内の一の方法。
11.抽出を1回又はそれ以上或は連続プロセスの関係において、通常の工業
的技術により実施し、また抽出を施用溶剤の沸点までの範囲、好ましくは10°
〜80℃、一層好ましくは50°〜80℃の温度で行うことを特徴とする請求項
10の方法。
12.酢酸を溶剤として含む液状媒体中、且つ少なくともコバルトを含有する
触媒の存在において、酸素含有ガスを用いてシクロヘキサンをアジピン酸に酸化
する連続方法であって、請求項5〜20の内の一に従う下記の工程:
a)シクロヘキサンをアジピン酸に事実上酸化し、
b)下記のいずれか:
b1)粗製の最終反応混合物を、随意濃縮後、アジピン酸の少なくともい
くらかを晶出させるために冷却し、該アジピン酸を濾過又は遠心分離によって分
離し、次いで、必要ならば得られた濾液又は遠心分離液を沈降させてシクロヘキ
サン相及び酢酸相にすることによって分離させ、または
b2)粗製の最終反応混合物を熱い間に取り出し、該反応混合物は2相又
は単相になり、沈降させてシクロヘキサン相及び酢酸相にすることによって分離
し、沈降により分離されている酢酸相、又は適する場合には、単一の酢酸相を、
アジピン酸の少なくともいくらかを晶出させるように冷却し、及び濾過又は遠心
分離によって該アジピン酸及び酢酸相を分離することが可能であり、または
b3)酸化工程a)の間に反応混合物から水を、シクロヘキサン/水共沸
混合物を蒸留することによって除去し、蒸留されたシクロヘキサンを必要に応じ
て反応装置中に再導入した後、粗製の最終反応混合物を変法b1)に従って処理
し、該処理は単一の酢酸相をもたらし、
c)変法b3)において行っていなければ、酢酸相から水の少なくとも大部分
を除去するために、酢酸相を濃縮し、
d)酢酸相を、シクロヘキサン又はシクロヘキサン/酢酸混合物をシクロヘキ
サン/酢酸相混合物において、総括のシクロヘキサン/酢酸重量比が1/1〜5
0/1、好ましくは2/1〜15/1になるような量で使用して抽出し、
e)一方で、グルタル酸及びコハク酸の少なくともいくらかを含有するシクロ
ヘキサン溶液と、他方で、本質的にコバルト触媒を含有する混合物とを分離し、
f)コバルト触媒を含有する混合物を新規な酸化反応a)において循環させる
を含むことを特徴とするシクロヘキサンをアジピン酸に酸化する連続方法。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C07C 51/21 2115−4H C07C 51/21
51/48 2115−4H 51/48
// C07B 61/00 300 7419−4H C07B 61/00 300
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1.アジピン酸へのシクロヘキサンの直接酸化反応においてコバルト含有触媒 を循環させる方法であって、反応で形成されるグルタル酸及びコハク酸の少なく ともいくらかを抽出することからなる、アジピン酸へのシクロヘキサンの酸化の 間に得られる反応混合物の処理段階を含むことを特徴とする方法。 2.第一もしくは第二水素原子のみを有する脂肪族カルボン酸少なくとも1種 を含む溶剤中、酸素含有ガスによる、アジピン酸へのシクロヘキサンの直接酸化 のための反応において、コバルト含有触媒を循環させるに際し、該循環プロセス は、 − アジピン酸へのシクロヘキサンの酸化のための先行操作から誘導された反応 混合物が、随意、それに含まれるアジピン酸の少なくともいくらかを晶出させて 分離した後に、揮発性化合物を除くために処理されること、 − 得られた残分が、ケトン、アルコール、エステル、これらの種々の混合物又 は炭化水素とカルボン酸との混合物から選ばれる溶剤を用いて抽出され、而して この溶剤は該残分に含有されるジ酸の全部又は大部分を溶解することができるこ と、 − かくして得られる、コバルト触媒の大部分を含有する抽出残分が、シクロヘ キサン、カルボン酸及び、更に適する場合にはコバルト触媒の必要な補充の後に 、アジピン酸へのシクロヘキサンの酸化のための新規な操作で用いられること を特徴とする請求項1の方法。 3.反応混合物が、特に、未反応シクロヘキサン、酸化反応において溶剤とし て役立つカルボン酸、形成される水、及びシクロヘキサノール及びシクロヘキサ ノンの如き特定の中間体化合物である、より揮発性の高い化合物の、大気圧もし くは減圧での蒸留によって処理されることを特徴とする請求項2の方法。 4.得られた残分から触媒を抽出するのに役立つ溶剤が、アセトン、メチルエ チルケトン、シクロヘキサノン、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブ タノール、2−ブタノール、t−ブタノール、シクロヘキサノール、前記アルコ ールと第一もしくは第二水素原子のみを有する脂肪族カルボン酸から誘導される エステル、例えばシクロヘキサン酸化反応で使用されるもの、これらの抽出溶剤 のいくつかの混合物及び脂肪族ないし脂環式炭化水素とカルボン酸との混合物か ら選ばれることを特徴とする請求項2の方法。 5.酸素含有ガスによるアジピン酸へのシクロヘキサンの直接酸化のための反 応において、コバルト含有触媒を循環させるに際し、該循環プロセスが、 − アジピン酸へのシクロヘキサンの酸化のための先行操作から得られる反応混 合物にして、該反応混合物から、特にシクロヘキサノール及びシクロヘキサノン の如き、少なくともいくらかの中間体酸化生成物、いくらかのカルボン酸溶剤及 び、水が分離されており且つ、該混合物から、形成された、少なくともいくらか のアジピン酸が晶出により回収されていり、前記反応混合物が、少なくとも一種 の補助溶剤を用い或は補助溶剤とカルボン酸からなる混合物を用いた少なくとも 一回の抽出に付されること、 − 一方で、少なくともいくらかのコバルト触媒、いくらかのカルボン酸及び見 込まれる残留量の他の化合物を含有する混合物と、他方で、補助溶剤及び、酸化 反応で形成される、少なくともいくらかのグルタル酸及びコハク酸並びにいくら かのカルボン酸を含有する溶液とが分離されること、そして − 少なくともいくらかのコバルト触媒を含有する混合物が、随意、余分なコバ ルト触媒の添加後に、アジピン酸へのシクロヘキサンの酸化のための新規な操作 で用いられること を特徴とする請求項1の方法。 6.用いられる補助溶剤が、脂肪族及び脂環式炭化水素、ケトン並びにアルコ ールから選ばれ、好ましくはシクロヘキサンであることを特徴とする請求項5の 方法。 7.用いられる脂肪族カルボン酸が酢酸であることを特徴とする請求項2〜5 の内の一の方法。 8.粗反応混合物に冷却を施して温度16°〜30℃にして形成されたアジピ ン酸の少なくともいくらかの晶出を生じさせ、こうして本質的にアジピン酸から なる固相、上部のシクロヘキサン液相及び下部の酢酸液相を含む3相媒体か或は 本質的にアジピン酸からなる固相及び酢酸相を含む2相媒体のいずれかをもたら した後に、必要ならば固体を濾過又は遠心分離した後に、沈降後2液相を分離す ることを特徴とする請求項5〜7の内の一の方法。 9.反応混合物が、アジピン酸晶出操作に先立って濃縮されることを特徴とす る請求項5〜8の内の一の方法。 10.最終粗反応混合物が熱い間に取り出され、次いで該反応混合物は2相又 は単相になり、必要ならば、上部のシクロヘキサン液相と下部の酢酸液相との2 液相を沈降後分離し、該下部の酢酸相又は単一の酢酸相を温度16°〜30℃に 冷却して形成されたアジピン酸の少なくともいくらかの晶出を生じさせ、これを 次いで酢酸相の濾過又は遠心分離によって分離することを特徴とする請求項5〜 7の内の一の方法。 11.アジピン酸を、酢酸又は水の如き適当な溶剤から再晶出させることによ って精製し、それを次いで随意、上で得られた酢酸相に加えることを特徴とする 請求項8及び10のいずれかの方法。 12.水/シクロヘキサン共沸混合物を酸化反応の間留出させ、次いで、この 混合物を沈降によって分離した後、シクロヘキサンを反応装置中に再導入し、最 終粗反応混合物を処理することを特徴とする請求項2〜5の内の一の方法。 13.最終粗反応混合物を処理する際に得られる酢酸相に、沈降により分離し た後に得られるままか又は好ましくは減圧において温度30°〜80℃に加熱す ることによって濃縮した後のいずれかのシクロヘキサンによる抽出を施すことを 特徴とする請求項7〜12の内の一の方法。 14.酢酸相の濃縮が、この相をその初期容積の80〜10%に相当する容積 に減少させることを特徴とする請求項13の方法。 15.酢酸相を濃縮乾固させる、すなわちそれが含有する酢酸のすべてを除く ことを特徴とする請求項13の方法。 16.酢酸相を濃縮させる間に酢酸相から分離される化合物をシクロヘキサン 酸化工程において、全体としてか又はそれらが含有する水の少なくともいくらか を分離した後のいずれかで循環させることを特徴とする請求項13〜15の内の 一の方法。 17.濃縮された又は非濃縮の酢酸相を、シクロヘキサン単独でか又はシクロ ヘキサン/酢酸混合物のいずれかによって抽出し、それで抽出に付した酢酸相/ シクロヘキサン混合物が、総括のシクロヘキサン/酢酸相重量比1/1〜50/ 1、好ましくは2/1〜15/1を有するようにすることを特徴とする請求項7 〜16の内の一の方法。 18.抽出を1回又はそれ以上或は連続プロセスの関係において、通常の工業 的技術により実施し、また抽出を施用溶剤の沸点までの範囲、好ましくは10° 〜80℃、一層好ましくは50°〜80℃の温度で行うことを特徴とする請求項 17の方法。 19.抽出操作が、一方で、グルタル酸及びコハク酸の少なくともいくらか、 並びに残留する量の他の副生物、及び他方で、本質的にコバルト触媒を含有する 混合物をもたらし、この混合物は沈降により分離させることが可能であることを 特徴とする請求項17及び18のいずれかの方法。 20.分離されたコバルト触媒が、随意、シクロヘキサン酸化から得られる反 応混合物を種々に処理する間に被る損失を補うべく更なる添加後、新規なシクロ ヘキサン酸化反応において循環されることを特徴とする請求項19の方法。 21.カルボン酸を溶剤として含む液状媒体中、且つ少なくともコバルトを含 有する触媒の存在において、酸素含有ガスを用いてシクロヘキサンをアジピン酸 に酸化する連続方法であって、下記の工程: a)シクロヘキサンをアジピン酸に事実上酸化させ、 b)アジピン酸へのシクロヘキサンの酸化反応から誘導される反応混合物を、 随意、該反応混合物に含まれるアジピン酸の少なくともいくらかを晶出させて分 離した後、揮発性化合物を除くために処理し、 c)得られた残分を、ケトン、アルコール、エステル、これらの種々の混合物 又は炭化水素とカルボン酸との混合物から選ばれる溶剤を使用して抽出し、この 溶剤は該残分中に含有されるジ酸の全部又は大部分を溶解することができるもの であり、 d)かくして得られる、コバルト触媒の大部分を含有する抽出残分を新規なシ クロヘキサン酸化操作a)において使用する を含むことを特徴とする連続方法。 22.酢酸を溶剤として含む液状媒体中、且つ少なくともコバルトを含有する 触媒の存在において、酸素含有ガスを用いてシクロヘキサンをアジピン酸に酸化 する連続方法であって、請求項5〜20の内の一に従う下記の工程: a)シクロヘキサンをアジピン酸に事実上酸化し、 b)下記のいずれか: b1)粗製の最終反応混合物を、随意濃縮後、アジピン酸の少なくともい くらかを晶出させるために冷却し、該アジピン酸を濾過又は遠心分離によって分 離し、次いで、必要ならば得られた濾液又は遠心分離液を沈降させてシクロヘキ サン相及び酢酸相にすることによって分離させ、または b2)粗製の最終反応混合物を熱い間に取り出し、該反応混合物は2相又 は単相になり、沈降させてシクロヘキサン相及び酢酸相にすることによって分離 し、沈降により分離されている酢酸相、又は適する場合には、単一の酢酸相を、 アジピン酸の少なくともいくらかを晶出させるように冷却し、及び濾過又は遠心 分離によって該アジピン酸及び酢酸相を分離することが可能であり、または b3)酸化工程a)の間に反応混合物から水を、シクロヘキサン/水共沸 混合物を蒸留することによって除去し、蒸留されたシクロヘキサンを必要に応じ て反応装置中に再導入した後、粗製の最終反応混合物を変法b1)に従って処理 し、該処理は単一の酢酸相をもたらし、 c)変法b3)において行っていなければ、酢酸相から水の少なくとも大部分 を除去するために、酢酸相を濃縮し、 d)酢酸相を、シクロヘキサン又はシクロヘキサン/酢酸混合物をシクロヘキ サン/酢酸相混合物において、総括のシクロヘキサン/酢酸重量比が1/1〜5 0/1、好ましくは2/1〜15/1になるような量で使用して抽出し、 e)一方で、グルタル酸及びコハク酸の少なくともいくらかを含有するシクロ ヘキサン溶液と、他方で、本質的にコバルト触媒を含有する混合物とを分離し、 f)コバルト触媒を含有する混合物を新規な酸化反応a)において循環させる を含むことを特徴とするシクロヘキサンをアジピン酸に酸化する連続方法。
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