JPH0986381A - 4輪駆動車のトラクション制御装置 - Google Patents

4輪駆動車のトラクション制御装置

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JPH0986381A
JPH0986381A JP7251575A JP25157595A JPH0986381A JP H0986381 A JPH0986381 A JP H0986381A JP 7251575 A JP7251575 A JP 7251575A JP 25157595 A JP25157595 A JP 25157595A JP H0986381 A JPH0986381 A JP H0986381A
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浩二 松野
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穣 樋渡
Akira Takahashi
明 高橋
Munenori Matsuura
宗徳 松浦
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Abstract

(57)【要約】 【課題】過大なスリップの防止と、コーナリング等の際
の車両安定性を向上させることができる4輪駆動車のト
ラクション制御装置を提供する。 【解決手段】4輪の各車輪速度、車速、操舵角、実ヨー
レートを検出し、目標ヨーレート算出部28で車速と操
舵角を基に目標ヨーレートを算出し、ヨーレート偏差算
出部29でヨーレート偏差を算出する。また4輪スリッ
プ量算出部30で4輪のスリップ量を算出し、4輪目標
スリップ量設定部31で車速と実ヨーレートとヨーレー
ト偏差とに基づき4輪の目標スリップ量をそれぞれ独立
に設定する。制御作動判断部32でトラクション制御作
動を判断した際、4輪目標制動力算出部33は4輪それ
ぞれについて目標制動力を算出し、制動信号出力部34
からブレーキ駆動部16へ信号出力し、目標エンジント
ルク算出部35は、目標エンジントルクを算出しエンジ
ン制御部15に信号出力する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、4輪の駆動力を制
御して車両安定性を向上させる4輪駆動車のトラクショ
ン制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、車両のコーナリング等の際の車両
にはたらく力の関係から、コーナリング中に制動力を適
切な車輪に加え、車両安定性を向上させる制動力制御装
置が開発されている。例えば、特開平2−70561号
公報には、車両重心を通る鉛直軸を中心とする回転運
動、すなわちヨーイングの角速度であるヨーレートを基
に制御する制動力制御装置が示されている。この技術で
は、目標ヨーレートと実際のヨーレート(実ヨーレー
ト)とを比較し、車両の運動状態が目標ヨーレートに対
しアンダーステアの傾向かオーバーステアの傾向かを求
め、実ヨーレートと目標ヨーレートとが一致するよう
に、アンダーステア傾向の場合には内側車輪に制動力を
加え補正し、オーバーステア傾向の場合には外側車輪に
制動力を加え補正して車両の走行安定性を向上させるよ
うになっている。
【0003】ところで、4輪駆動車(4WD車)におい
て、トラクション制御を採用すれば、特に、スプリット
μ路での脱出性、4輪スリップを生じるような限界領域
での車両安定性の向上を図ることができ、さらに、この
ようなトラクション制御を備えた4WD車の、コーナリ
ング等の際の車両安定性を向上させるために、前記制動
力制御を用いることが考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、トラクション
制御と制動力制御の両方が動作するような車両運動が生
じて、例えば、トラクション制御の作動中に制動力制御
による制動力が加えられた場合、駆動スリップ輪に加え
られた制動力により車輪のグリップが回復し、狙いどお
りの効果が得られなかったり、トラクション性能の低下
を招くといった問題がある。
【0005】本発明は上記事情に鑑みてなされたもの
で、車両の必要なヨーモーメントを考慮して各車輪の目
標とするスリップ量が設定でき、過大なスリップの防止
と、コーナリング等の際の車両安定性を向上させること
ができる4輪駆動車のトラクション制御装置を提供する
ことを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
請求項1記載の本発明による4輪駆動車のトラクション
制御装置は、4輪の各車輪速度を検出する車輪速度検出
手段と、車速を検出する車速検出手段と、操舵角を検出
する操舵角検出手段と、車両の実際のヨーレートを検出
する実ヨーレート検出手段と、車速と操舵角を基に目標
とするヨーレートを算出する目標ヨーレート算出手段
と、実ヨーレートから目標ヨーレートを減算しヨーレー
ト偏差を算出するヨーレート偏差算出手段と、4輪の実
際のスリップ量を算出するスリップ量算出手段と、車速
と実ヨーレートとヨーレート偏差とに基づき4輪の目標
スリップ量をそれぞれ独立に設定する目標スリップ量設
定手段と、実際のスリップ量と目標スリップ量とを比較
してトラクション制御作動を判断する制御作動判断手段
と、トラクション制御作動の際に、4輪それぞれについ
て実際のスリップ量と目標スリップ量とに基づき目標制
動力を算出する目標制動力算出手段と、上記目標制動力
算出手段で算出した4輪の目標制動力をそれぞれの制動
輪に加えるようにブレーキ駆動部へ信号出力する制動信
号出力手段と、トラクション制御作動の際に、目標エン
ジントルクを算出しエンジン制御部に信号出力する目標
エンジントルク算出手段とを備えたものである。
【0007】上記請求項1記載の4輪駆動車のトラクシ
ョン制御装置は、車輪速度検出手段で4輪の各車輪速度
を、車速検出手段で車速を、操舵角検出手段で操舵角
を、実ヨーレート検出手段で車両の実際のヨーレートす
なわち実ヨーレートをそれぞれ検出する。また、目標ヨ
ーレート算出手段で上記車速検出手段からの車速と上記
操舵角検出手段からの操舵角を基に目標とするヨーレー
トを算出し、ヨーレート偏差算出手段で実ヨーレートか
ら目標ヨーレートを減算しヨーレート偏差を算出する。
スリップ量算出手段では4輪の実際のスリップ量を算出
し、目標スリップ量設定手段は車速と実ヨーレートとヨ
ーレート偏差とに基づき4輪の目標スリップ量をそれぞ
れ独立に設定する。そして、制御作動判断手段で実際の
スリップ量と目標スリップ量とを比較してトラクション
制御作動を判断し、目標制動力算出手段はトラクション
制御作動の際に、4輪それぞれについて実際のスリップ
量と目標スリップ量とに基づき目標制動力を算出し、制
動信号出力手段は上記目標制動力算出手段で算出した4
輪の目標制動力をそれぞれの制動輪に加えるようにブレ
ーキ駆動部へ信号出力する。また、目標エンジントルク
算出手段は、トラクション制御作動の際に、目標エンジ
ントルクを算出しエンジン制御部に信号出力する。
【0008】次に、請求項2記載の本発明による4輪駆
動車のトラクション制御装置は、請求項1記載の4輪駆
動車のトラクション制御装置において、上記目標スリッ
プ量設定手段は、車速に応じて前後輪の目標スリップ量
を設定し、さらに、実ヨーレートとヨーレート偏差の符
号が異なる場合は旋回方向内側前輪の目標スリップ量を
低くすることと、旋回方向外側後輪の目標スリップ量を
高くすることの少なくとも一方の補正を行ない、実ヨー
レートとヨーレート偏差の符号が同じ場合は旋回方向内
側前輪の目標スリップ量を高くすることと、旋回方向外
側後輪の目標スリップ量を低くすることの少なくとも一
方の補正を行なって4輪の目標スリップ量をそれぞれ独
立に設定するものである。
【0009】上記請求項2記載の本発明による4輪駆動
車のトラクション制御装置は、請求項1記載の4輪駆動
車のトラクション制御装置において、目標スリップ量設
定手段は、車速に応じて前後輪の目標スリップ量を設定
し、さらに、実ヨーレートとヨーレート偏差の符号が異
なる場合、すなわち、車両がアンダーステア傾向の場合
は旋回方向内側前輪の目標スリップ量を低くし駆動力を
低くすることと、旋回方向外側後輪の目標スリップ量を
高くし駆動力を高くすることの少なくとも一方の補正を
行ない、車両をニュートラルステア方向へと補正する。
また、実ヨーレートとヨーレート偏差の符号が同じ場
合、すなわち、車両がオーバーステア傾向の場合は旋回
方向内側前輪の目標スリップ量を高くし駆動力を高くす
ることと、旋回方向外側後輪の目標スリップ量を低くし
駆動力を低くすることの少なくとも一方の補正を行な
い、車両をニュートラルステア方向へと補正する。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実
施の形態を説明する。図1〜図7は本発明の実施の形態
を示し、図1はトラクション制御装置の機能ブロック
図、図2はトラクション制御装置の概略構成を示す説明
図、図3は回頭モーメントの制御の説明図、図4は目標
スリップ量マップの補正の説明図、図5は目標スリップ
量マップの説明図、図6はトラクション制御のフローチ
ャート、図7は目標スリップ量マップ設定のフローチャ
ートである。
【0011】図2において、符号1はエンジンを示し、
このエンジン1は、クラッチ2、変速機3を介してセン
ターディファレンシャル4に連結されている。このセン
ターディファレンシャル4は、例えば、複合プラネタリ
ギヤ式で歯車諸元により等トルク配分または不等トルク
配分する。
【0012】上記センターディファレンシャル4のピニ
オン軸5は、リダクションギヤ6、フロントドライブ軸
7、フロントディファレンシャル8、車軸9を介して、
左前輪10flと右前輪10frとに連結され、さらに、出
力軸11は、プロペラ軸12、リヤディファレンシャル
13、車軸14を介して、左後輪10rlと右後輪10rr
とに連結され、4輪駆動可能に構成されている。
【0013】上記エンジン1は、エンジン制御部15で
燃料噴射制御、スロットル制御、点火時期制御、気筒カ
ット制御、過給圧制御等の各制御が行なわれて、このエ
ンジン制御部15によりエンジン出力の低下、上昇も行
なわれる。
【0014】一方、符号16は車両のブレーキ駆動部を
示し、このブレーキ駆動部16には、ドライバにより操
作されるブレーキペダル17と接続されたマスターシリ
ンダ18が接続されており、ドライバがブレーキペダル
17を操作するとマスターシリンダ18により、上記ブ
レーキ駆動部16を通じて、4輪(左前輪10fl,右前
輪10fr,左後輪10rl,右後輪10rr)の各ホイール
シリンダ(左前輪ホイールシリンダ19fl,右前輪ホイ
ールシリンダ19fr,左後輪ホイールシリンダ19rl,
右後輪ホイールシリンダ19rr)にブレーキ圧が導入さ
れ、これにより4輪にブレーキがかかって制動されるよ
うになっている。
【0015】上記ブレーキ駆動部16は、加圧源、減圧
弁、増圧弁等を備えたハイドロリックユニットで、入力
信号に応じて、上記各ホイールシリンダ19fl,19f
r,19rl,19rrに対して、それぞれ独立にブレーキ
圧を導入自在に形成されている。
【0016】上記各車輪10fl,10fr,10rl,10
rrは、それぞれの車輪速度ω1,ω2,ω3,ω4 が車輪速度
検出手段としての車輪速度センサ20(左前輪速度セン
サ20fl,右前輪速度センサ20fr,左後輪速度センサ
20rl,右後輪速度センサ20rr)により検出されるよ
うになっている。また、車両のハンドル部には、ハンド
ルの回転角θを検出するハンドル角センサ21が設けら
れている。
【0017】また、符号25は、マイクロコンピュータ
とその周辺回路で形成された制御装置を示し、この制御
装置25には、上記各車輪速度センサ20(20fl,2
0fr,20rl,20rr)および上記ハンドル角センサ2
1と、例えば、加速度センサを組み合わせて形成した実
ヨーレート検出手段としてのヨーレートセンサ22とが
接続され、上記エンジン制御部15に対しエンジン出力
信号を出力するとともに、上記ブレーキ駆動部16に駆
動信号を出力する。尚、上記ヨーレートセンサ22から
の信号は、例えば、7Hzのローパスフィルタを介して
上記制御装置25に入力される。
【0018】上記制御装置25は、図1に示すように、
車速算出部26,操舵角算出部27,目標ヨーレート算
出部28,ヨーレート偏差算出部29,4輪スリップ量
算出部30,4輪目標スリップ量設定部31,制御作動
判断部32,4輪目標制動力算出部33,制動信号出力
部34および目標エンジントルク算出部35から主要に
構成されている。
【0019】上記車速算出部26は、前記各車輪速度セ
ンサ20(20fl,20fr,20rl,20rr)からの車
輪速度ω1,ω2,ω3,ω4 の信号が入力され、これらの信
号を予め設定しておいた数式で演算して(例えば、上記
各車輪速度センサ20fl,20fr,20rl,20rrから
の速度信号の平均値を算出して)車速Vを求め、上記目
標ヨーレート算出部28,4輪スリップ量算出部30お
よび上記4輪目標スリップ量設定部31に出力する車速
検出手段としての回路に形成されている。
【0020】また、上記操舵角算出部27は、前記ハン
ドル角センサ21からの信号が入力され、ハンドル操舵
角θをステアリングギア比Nで除して実舵角δf (=θ
/N)を算出し、上記目標ヨーレート算出部28に出力
する操舵角検出手段としての回路に形成されている。
【0021】さらに、上記目標ヨーレート算出部28
は、上記車速算出部26からの車速Vと、上記操舵角算
出部27からの実舵角δf を基に、車両の諸元と応答遅
れを考慮して目標ヨーレートγ' を算出し、この目標ヨ
ーレートγ' を上記ヨーレート偏差算出部29に出力す
る目標ヨーレート算出手段としての回路に形成されてい
る。
【0022】目標ヨーレートγ' の算出は、時定数を
T,ラプラス演算子をsとして、 γ' ={1/(1+T・s)}・Gγδf(0)・δf …(1) で得られる。上記(1)式中のGγδf(0)は、車両
の定常円旋回時の実舵角δf に対するヨーレートの値
(ヨーレート定常ゲイン)で、ホイールベースをL,車
両の諸元で決まるスタビリティファクタをA0 とする
と、ヨーレート定常ゲインGγδf(0)は以下の式で
算出される。 Gγδf(0)={1/(1+A0 ・V2 )}・V/L …(2) また、上記スタビリティファクタA0 は、車両質量を
m,前軸と重心間の距離をLf ,後軸と重心間の距離を
Lr ,前輪の等価コーナリングパワーをCPf ,後輪の
等価コーナリングパワーをCPr とすると次式で求めら
れる。 A0 ={−m・(Lf ・CPf −Lr ・CPr )} /(2・L2 ・CPf ・CPr ) …(3) 尚、上記(1)式は、2次系で表現される車両の応答遅
れを1次系に近似した式であり、また時定数Tは、例え
ば下式で得られる。 T=m・Lf ・V/(2・L・CPr ) …(4) 上記ヨーレート偏差算出部29では、前記ヨーレートセ
ンサ22で検出した実ヨーレートγから、上記目標ヨー
レート算出部28より出力された目標ヨーレートγ' を
減算し、ヨーレート偏差Δγ(=γ−γ' )を求め、こ
のヨーレート偏差Δγを上記4輪目標スリップ量設定部
31に出力するヨーレート偏差算出手段としての回路で
ある。
【0023】また、上記4輪スリップ量算出部30は、
上記前記各車輪速度センサ20(20fl,20fr,20
rl,20rr)からの車輪速度ω1,ω2,ω3,ω4 と、上記
車速算出部26からの車速Vとが入力され、これらの信
号から4輪の実際のスリップ量(左前輪スリップ量SL
1,右前輪スリップ量SL2,左後輪スリップ量SL3,右
後輪スリップ量SL4)を算出し、上記制御作動判断部3
2,4輪目標制動力算出部33および上記目標エンジン
トルク算出部35に出力するスリップ量算出手段として
の回路である。4輪の実際のスリップ量SL1,SL2,S
L3,SL4は、車輪速度ω1,ω2,ω3,ω4 から車速Vを減
算して算出される。 SL1=ω1 −V …(5) SL2=ω2 −V …(6) SL3=ω3 −V …(7) SL4=ω4 −V …(8) さらに、上記4輪目標スリップ量設定部31は、車速V
に基づき、後述する目標スリップ量マップを参照して、
4輪のトラクション制御が必要なスリップ量、すなわち
目標スリップ量(左前輪目標スリップ量SL1',右前輪目
標スリップ量SL2',左後輪目標スリップ量SL3',右後輪
目標スリップ量SL4' )をそれぞれ独立に設定し、上記
制御作動判断部32,4輪目標制動力算出部33および
上記目標エンジントルク算出部35に出力する目標スリ
ップ量設定手段としての回路である。
【0024】上記目標スリップ量マップは、図5(a)
あるいは図5(b)に示すように、車両が略直進してい
る場合や、旋回していても略ニュートラルステアの傾向
にある場合が、トラクション制御の通常制御時として予
め設定されており、このトラクション制御の通常制御時
は、目標スリップ量が、例えば4.0km/h以上に設定さ
れている。
【0025】また、極低速では、大転舵することがあ
り、この旋回時に4輪の軌跡差に基づいて車輪速度ω1,
ω2,ω3,ω4 に比較的大きい差が生じることがある。さ
らに、前記各車輪速度センサ20(20fl,20fr,2
0rl,20rr)の電磁ピックアップの出力が弱くて精度
が低くなる等の点を考慮して、目標スリップ量が大きい
値に定められ、これにより誤動作を防止するようになっ
ている。また、低速では、目標スリップ量が最低値一定
に設定され、中速以上では、車速Vの増加に対するスリ
ップ量の割合、すなわちスリップ率を考慮して、このス
リップ率を一定化するように、車速Vの増加に応じて目
標スリップ量が順次大きく設定されている。
【0026】さらに、トラクション制御作動時の車両の
対スピン安定性を向上するため、破線の前輪の目標スリ
ップ量SL1',SL2' に対して後輪の目標スリップ量SL
3',SL4' が、実線で示すように低く設定されている。
【0027】そして、上記目標スリップ量マップは、上
記通常制御時の特性を基準として、以下説明する補正
が、後述する目標スリップ量マップ設定のプログラムに
従って、実ヨーレートγとヨーレート偏差Δγとに基づ
き行なわれる。この補正は、車両の旋回方向とステア傾
向が、実ヨーレートγとヨーレート偏差Δγの符号の組
み合わせにより判定され、車両がニュートラルステア傾
向で安定して旋回できるように行なわれるものである。
【0028】例えば、図3(a)に示すように、車両が
左旋回でオーバーステア傾向であることが検出された場
合、左前輪の駆動力を増加し横力を減少させるとともに
右後輪の駆動力を減少し横力を増加させることにより、
回頭モーメントを減少させることができる。すなわち、
左前輪のスリップ量を高く補正するとともに右後輪のス
リップ量を低く補正することにより回頭モーメントの減
少が図れる。また、図3(b)に示すように、車両が左
旋回でアンダーステア傾向であることが検出された場
合、左前輪の駆動力を減少し横力を増加させるとともに
右後輪の駆動力を増加し横力を減少させることにより、
回頭モーメントを増加させることができる。すなわち、
左前輪のスリップ量を低く補正するとともに右後輪のス
リップ量を高く補正することにより回頭モーメントの増
加が図れる。
【0029】このため、上記目標スリップ量マップの補
正は、以下の5通りとなる(図4)。尚、実ヨーレート
γと目標ヨーレートγ' の符号は共に、車両の左旋回方
向を+、右旋回方向を−で与えられる。また、車両の直
進状態を判定するため、εを予め実験あるいは計算等か
ら求めた略0に近い正の数として設定し、車両が目標ヨ
ーレートγ' に対し略ニュートラルステアの状態を判定
するため、εΔγを予め実験あるいは計算等から求めた
略0に近い正の数として設定し、 (ケース1).γ>ε,Δγ<−εΔγ…左旋回で目標
ヨーレートγ' に対しアンダーステア傾向…左前輪目標
スリップ量低下(図5(b)破線→一点鎖線)、右後輪
目標スリップ量増加(図5(b)実線→二点鎖線) (ケース2).γ>ε,Δγ>εΔγ…左旋回で目標ヨ
ーレートγ' に対しオーバーステア傾向…左前輪目標ス
リップ量増加(図5(a)破線→一点鎖線)、右後輪目
標スリップ量低下(図5(a)実線→二点鎖線) (ケース3).γ<ε,Δγ<−εΔγ…右旋回で目標
ヨーレートγ' に対しオーバーステア傾向…右前輪目標
スリップ量増加(図5(a)破線→一点鎖線)、左後輪
目標スリップ量低下(図5(a)実線→二点鎖線) (ケース4).γ<ε,Δγ>εΔγ…右旋回で目標ヨ
ーレートγ' に対しアンダーステア傾向…右前輪目標ス
リップ量低下(図5(b)破線→一点鎖線)、左後輪目
標スリップ量増加(図5(b)実線→二点鎖線) (ケース5).|γ|<|ε|…略直進状態、あるい
は、|Δγ|≦|εΔγ|…目標ヨーレートγ' に対し
略ニュートラルステアの状態…補正なし。
【0030】そして、上記各ケースに基づく処理が行な
われた上記目標スリップ量マップを参照して、車速Vに
基づき目標スリップ量SL1',SL2',SL3',SL4' をそれ
ぞれ独立に設定すれば、車速Vに応じて目標スリップ量
SL1',SL2',SL3',SL4' を設定し、さらに、実ヨーレ
ートγ' とヨーレート偏差Δγの符号に基づいた補正が
行なわれることになる。このように、車両が安定して走
行するヨーモーメントを考慮して、4輪独立に目標とす
るスリップ量を設定することで、過大なスリップの防止
と、コーナリング等の際の車両安定性を向上させること
ができるようになっている。尚、本発明の実施の形態で
は、ヨーモーメントを効果的に発生させられるように、
車両の前輪と後輪のスリップ率を補正するようにしてい
るが、前輪のスリップ率のみの補正あるいは後輪のスリ
ップ率のみの補正で十分なモーメントが得られる車両で
あれば、1輪のスリップ率の補正のみで良い。
【0031】上記制動作動判断部32は、上記4輪スリ
ップ量算出部30から実際のスリップ量SL1,SL2,S
L3,SL4が、上記4輪目標スリップ量設定部31から目
標スリップ量SL1',SL2',SL3',SL4' が入力され、こ
れらをそれぞれ比較(SL1とSL1',SL2とSL2',SL3と
SL3',SL4とSL4' を比較)し、スリップ量SL1,SL
2,SL3,SL4の1つでも目標スリップ量SL1',SL2',
SL3',SL4' を越えた場合にトラクション制御作動を判
断する。また、4輪とも目標スリップ量SL1',SL2',S
L3',SL4' 以下になり、かつ4輪のすべてのブレーキ液
圧がゼロとなり、エンジン出力も通常状態に復帰した時
点でトラクション制御不作動を判断する。そして、トラ
クション制御作動あるいはトラクション制御不作動の信
号は、上記4輪目標制動力算出部33および上記目標エ
ンジントルク算出部35に出力される。すなわち、この
制動作動判断部32は、制御作動判断手段としての回路
である。
【0032】上記4輪目標制動力算出部33は、トラク
ション制御作動の際に、4輪それぞれについてスリップ
量SL1,SL2,SL3,SL4と目標スリップ量SL1',SL
2',SL3',SL4' との偏差を算出し、これら4輪の偏差
に応じて4輪の目標制動力(目標ブレーキ液圧)BF
1,BF2,BF3,BF4を算出して、上記制動信号
出力部34に出力する制動信号出力手段としての回路で
ある。また、スリップ量が少なくなると、ブレーキ減圧
を定めて上記制動信号出力部34に出力する。
【0033】また、上記制動信号出力部34は、前記ブ
レーキ駆動部16に対して、上記各車輪へ、上記4輪目
標制動力算出部33で算出された4輪目標液圧BF1,
BF2,BF3,BF4を加えるように信号出力する制
動信号出力手段としての回路である。
【0034】さらに、上記目標エンジントルク算出部3
5は、トラクション制御作動時に、最も回転の速い車輪
についてスリップ量と目標スリップ量を比較し、両者の
偏差の分だけエンジン出力低下した目標エンジントルク
Tq を設定し、前記エンジン制御部15に出力する目標
エンジントルク算出手段としての回路である。またスリ
ップ量が少なくなると、エンジン出力復帰を定めて、上
記エンジン制御部15に出力する。
【0035】次に、4輪駆動走行でのトラクション制御
を、図6のフローチャートで説明する。プログラムがス
タートすると、まず、ステップ(以下Sと略称)101
で、各車輪速度センサ20fl,20fr,20rl,20rr
から車輪速度ω1,ω2,ω3,ω4 が検出、読込まれ、S1
02に進み、車速算出部26で上記各車輪速度ω1,ω2,
ω3,ω4 から車速Vが算出され、さらに、S103に進
み、4輪スリップ量算出部30で車輪速度ω1,ω2,ω3,
ω4 から車速Vを減算して4輪の実際のスリップ量SL
1,SL2,SL3,SL4を求める。
【0036】その後、S104に進み、4輪目標スリッ
プ量設定部31で、車速Vに基づき、目標スリップ量マ
ップを参照して、4輪の各目標スリップ量SL1',SL2',
SL3',SL4' が設定され、S105へ進む。
【0037】上記S105では、制動作動判断部32に
おいて、スリップ量SL1,SL2,SL3,SL4と目標スリ
ップ量SL1',SL2',SL3',SL4' とをそれぞれ比較し
て、トラクション制御が必要か否かの判定が行なわれ
る。そして、例えば、4輪が高μの路面を走行し、ドラ
イバのアクセル操作によるエンジン出力とともに、4輪
の駆動力が必要以上に大きくない場合は、4輪のタイヤ
が所定の少ないスリップ量の範囲内で十分にグリップし
て必要な駆動力を生じる。この場合は、スリップ量SL
1,SL2,SL3,SL4が目標スリップ量SL1',SL2',SL
3',SL4' より少なくなってトラクション制御の不要を
判断しプログラムを終了する。
【0038】一方、ドライバのアクセル操作によりエン
ジン出力が過大になったり、または、雪道等により路面
μが大幅に低下すると、車輪の駆動力が路面μの限界に
近付いて車輪スリップを生じ易くなる。そこで、ドライ
バのアクセル操作によりエンジン出力が過大となり、4
輪のスリップ量SL1,SL2,SL3,SL4の1つでも目標
スリップ量SL1',SL2',SL3',SL4' を越えるように急
増してスリップすると、トラクション制御の必要を判断
し、S106に進む。
【0039】上記S106に進むと、4輪目標制動力算
出部33で、4輪それぞれについてスリップ量SL1,S
L2,SL3,SL4と目標スリップ量SL1',SL2',SL3',S
L4'との偏差を算出し、これら4輪の偏差に応じて4輪
の目標ブレーキ液圧BF1,BF2,BF3,BF4を
算出して制動信号出力部34に出力し、この制動信号出
力部34からブレーキ駆動部16に対して、各車輪へ、
上記4輪目標制動力算出部33で算出された4輪目標液
圧BF1,BF2,BF3,BF4を加えるように信号
出力される。
【0040】そして、さらにS107に進み、目標エン
ジントルク算出部35で、最も回転の速い車輪について
スリップ量と目標スリップ量を比較し、両者の偏差の分
だけエンジン出力低下した目標エンジントルクTq を設
定してエンジン制御部15に出力がなされる。
【0041】こうしてエンジン出力が強制的に低下さ
れ、4輪ブレーキ制御によりスリップ車輪の駆動力が制
限されて、スリップ量を減少するようにトラクション制
御される。そして4輪の各スリップ量が、図5(a)あ
るいは図5(b)に示す目標スリップ量マップに追従す
るように制御され、過大なスリップの防止を図ることが
でき、車両の安定性を向上することができる。
【0042】また、ドライバのアクセル操作により、エ
ンジン出力が低下すると、スリップ量が直ちに少なくな
って、4輪のブレーキ液圧がゼロになり、エンジン出力
も通常状態に復帰する。そこでこの時点でトラクション
制御の不要を判断して、通常の4輪駆動走行に戻る。
【0043】次に、目標スリップ量マップの設定プログ
ラムを、図7のフローチャートで説明する。プログラム
がスタートすると、S201で、ハンドル角センサ21
からハンドル操舵角θ,各車輪速度センサ20fl,20
fr,20rl,20rrから車輪速度ω1,ω2,ω3,ω4 ,ヨ
ーレートセンサ22から実ヨーレートγが読み込まれ、
S202に進む。
【0044】上記S202では、操舵角算出部27で上
記ハンドル操舵角θから実舵角δf(=θ/N)が算出
され、車速算出部26で上記各車輪速度ω1,ω2,ω3,ω
4 から車速Vが算出される。
【0045】次いで、S203に進み、目標ヨーレート
算出部28で前記(1)式により目標ヨーレートγ' が
演算され、S204に進み、ヨーレート偏差算出部29
でヨーレート偏差Δγ(=γ−γ' )が演算され、S2
05へ進む。
【0046】上記S205では、実ヨーレートγがεよ
りも大きいか否か、すなわち、ある程度大きな左旋回状
態か否かの判定が行なわれ、実ヨーレートγがε以下の
場合には、S206に進み、実ヨーレートγが−εより
も小さいか否か、すなわち、ある程度大きな右旋回状態
か否かの判定が行なわれる。このS206で、ある程度
大きな右旋回状態ではないと判定される実ヨーレートγ
の範囲(ε≧γ≧−ε)では、運動状態が略直進運動状
態であるのでS219に進み、目標スリップ量マップは
補正せずそのまま設定される。尚、上記S205で、γ
>εで、ある程度大きな左旋回状態と判定されるとS2
07に進み、ヨーレート偏差Δγが|Δγ|≦|εΔγ
|で0に近く、略ニュートラルステアであるか否かの判
定が行なわれる。
【0047】そして、上記S207で、|Δγ|≦|ε
Δγ|であり、略ニュートラルステアと判定されるとS
219に進み、これ以外の場合(アンダーステア傾向あ
るいはオーバーステア傾向の場合)はS208に進む。
【0048】このS208は、アンダーステア傾向かオ
ーバーステア傾向であるかを判定するステップで、Δγ
<−εΔγかΔγ>εΔγかの判定が行なわれ、Δγ<
−εΔγでありヨーレート偏差Δγの符号が、実ヨーレ
ートγの符号と異なる負の場合は、目標ヨーレートγ'
に対してアンダーステア傾向と判定してS209に進
み、左前輪の目標スリップ量を低く補正するとともに、
S210で、右後輪の目標スリップ量を高く補正する。
また、Δγ>εΔγでありヨーレート偏差Δγの符号
が、実ヨーレートγの符号と同じ正の場合は、目標ヨー
レートγ' に対してオーバーステア傾向と判定してS2
11に進み、左前輪の目標スリップ量を高く補正すると
ともに、S212で、右後輪の目標スリップ量を低く補
正する。
【0049】一方、上記S206で、γ<−εで、ある
程度大きな右旋回状態と判定されるとS213に進み、
ヨーレート偏差Δγが|Δγ|≦|εΔγ|で0に近
く、略ニュートラルステアであるか否かの判定が行なわ
れる。
【0050】そして、上記S213で、|Δγ|≦|ε
Δγ|であり、略ニュートラルステアと判定されるとS
219に進み、これ以外の場合(アンダーステア傾向あ
るいはオーバーステア傾向の場合)はS214に進む。
【0051】このS214は、アンダーステア傾向かオ
ーバーステア傾向であるかを判定するステップで、Δγ
>εΔγかΔγ<−εΔγかの判定が行なわれ、Δγ>
εΔγでありヨーレート偏差Δγの符号が、実ヨーレー
トγの符号と異なる正の場合は、目標ヨーレートγ' に
対してアンダーステア傾向と判定してS215に進み、
右前輪の目標スリップ量を低く補正するとともに、S2
16で、左後輪の目標スリップ量を高く補正する。ま
た、Δγ<−εΔγでありヨーレート偏差Δγの符号
が、実ヨーレートγの符号と同じ負の場合は、目標ヨー
レートγ' に対してオーバーステア傾向と判定してS2
17に進み、右前輪の目標スリップ量を高く補正すると
ともに、S218で、左後輪の目標スリップ量を低く補
正する。
【0052】以上のように、車両の旋回方向とステア傾
向により目標スリップ量マップに補正が行なわれ、この
補正し設定されたマップに追従して車両のトラクション
制御が行なわれるため、トラクション制御で得られる効
果に加え、さらにコーナリング等の際の車両安定性を向
上させることも可能になるのである。
【0053】
【発明の効果】以上、説明したように本発明によれば、
車両の必要なヨーモーメントを考慮して、4輪独立に各
車輪の目標とするスリップ量を設定できるようにしたの
で、過大なスリップの防止と、コーナリング等の際の車
両安定性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態によるトラクション制御装
置の機能ブロック図
【図2】本発明の実施の形態によるトラクション制御装
置の概略構成を示す説明図
【図3】本発明の実施の形態による回頭モーメントの制
御の説明図
【図4】本発明の実施の形態による目標スリップ量マッ
プの補正の説明図
【図5】本発明の実施の形態による目標スリップ量マッ
プの説明図
【図6】本発明の実施の形態によるトラクション制御の
フローチャート
【図7】本発明の実施の形態による目標スリップ量マッ
プ設定のフローチャート
【符号の説明】
10fl,10fr,10rl,10rr 車輪 15 エンジン制御部 16 ブレーキ駆動部 20(20fl,20fr,20rl,20rr) 車輪速度セ
ンサ 21 ハンドル角センサ 22 ヨーレートセンサ 25 制御装置 26 車速算出部 27 操舵角算出部 28 目標ヨーレート算出部 29 ヨーレート偏差算出部 30 4輪スリップ量算出部 31 4輪目標スリップ量設定部 32 制御作動判断部 33 4輪目標制動力算出部 34 制動信号出力部 35 目標エンジントルク算出部 ω1,ω2,ω3,ω4 車輪速度 δf 実舵角 V 車速 γ 実ヨーレート γ' 目標ヨーレート Δγ ヨーレート偏差 SL1,SL2,SL3,SL4 スリップ量 SL1',SL2',SL3',SL4' 目標スリップ量 BF1,BF2,BF3,BF4 目標ブレーキ液圧
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松浦 宗徳 東京都三鷹市大沢3丁目9番6号 株式会 社スバル研究所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 4輪の各車輪速度を検出する車輪速度検
    出手段と、車速を検出する車速検出手段と、操舵角を検
    出する操舵角検出手段と、車両の実際のヨーレートを検
    出する実ヨーレート検出手段と、車速と操舵角を基に目
    標とするヨーレートを算出する目標ヨーレート算出手段
    と、実ヨーレートから目標ヨーレートを減算しヨーレー
    ト偏差を算出するヨーレート偏差算出手段と、4輪の実
    際のスリップ量を算出するスリップ量算出手段と、車速
    と実ヨーレートとヨーレート偏差とに基づき4輪の目標
    スリップ量をそれぞれ独立に設定する目標スリップ量設
    定手段と、実際のスリップ量と目標スリップ量とを比較
    してトラクション制御作動を判断する制御作動判断手段
    と、トラクション制御作動の際に、4輪それぞれについ
    て実際のスリップ量と目標スリップ量とに基づき目標制
    動力を算出する目標制動力算出手段と、上記目標制動力
    算出手段で算出した4輪の目標制動力をそれぞれの制動
    輪に加えるようにブレーキ駆動部へ信号出力する制動信
    号出力手段と、トラクション制御作動の際に、目標エン
    ジントルクを算出しエンジン制御部に信号出力する目標
    エンジントルク算出手段とを備えたことを特徴とする4
    輪駆動車のトラクション制御装置。
  2. 【請求項2】 上記目標スリップ量設定手段は、車速に
    応じて前後輪の目標スリップ量を設定し、さらに、実ヨ
    ーレートとヨーレート偏差の符号が異なる場合は旋回方
    向内側前輪の目標スリップ量を低くすることと、旋回方
    向外側後輪の目標スリップ量を高くすることの少なくと
    も一方の補正を行ない、実ヨーレートとヨーレート偏差
    の符号が同じ場合は旋回方向内側前輪の目標スリップ量
    を高くすることと、旋回方向外側後輪の目標スリップ量
    を低くすることの少なくとも一方の補正を行なって4輪
    の目標スリップ量をそれぞれ独立に設定することを特徴
    とする請求項1記載の4輪駆動車のトラクション制御装
    置。
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