本発明の一実施形態において、前記制御装置は、前記第1回転速度差と前記第2回転速度差とのいずれもが前記所定範囲内にある場合は、予め定められた設定回転速度差と前記第1回転速度差との差、および前記設定回転速度差と前記第2回転速度差との差のうち小さいほうの差になるように前記第1回転速度差または前記第2回転速度差を選択して、その選択した回転速度差になる前記副駆動輪を前記制御カップリングによって前記中央車軸に連結する。このため、前記駆動力源側噛合歯と前記副駆動輪側噛合歯との回転速度差が前記設定回転速度差に比較的近い前記副駆動輪を前記制御カップリングによって前記中央車軸に連結することができるので、車両の旋回走行時に前記噛合式クラッチを前記非噛合状態から前記噛合状態により円滑に切り替えることができる。
また、本発明の一実施形態において、前記制御装置は、前記第1回転速度差と前記第2回転速度差とのいずれもが前記所定範囲内にない場合であっても、前記噛合式クラッチを緊急に前記非噛合状態から前記噛合状態へ切り替える必要があると判定される場合には、前記第1回転速度差と前記第2回転速度差とのうち大きい方の回転速度差になる前記副駆動輪を前記制御カップリングによって前記中央車軸に連結する。このため、前記噛合式クラッチを緊急に前記非噛合状態から前記噛合状態へ切り替える必要がある場合に、前記噛合式クラッチを前記非噛合状態から前記噛合状態に切り替えることができる。
また、本発明の一実施形態において、(a)前記噛合式クラッチは、前記駆動力源と前記動力伝達部材との間の動力伝達経路を選択的に切断または接続し、(b)前記動力伝達部材と前記中央車軸との間の動力伝達経路には、その動力伝達経路を選択的に切断または接続する第1クラッチが設けられており、(c)前記制御装置は、前記制御カップリングによって前記副駆動輪が前記中央車軸に連結されると、前記噛合式クラッチを制御して前記駆動力源と前記動力伝達部材との間の動力伝達経路を接続し、前記第1クラッチを制御して前記動力伝達部材と前記中央車軸との間の動力伝達経路を接続する。このため、走行時に車輪間に速度差がある時であっても前記4輪駆動車両を前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態に円滑に切り替えることができる。
また、本発明の一実施形態において、(a)前記第1クラッチには、前記動力伝達部材に動力伝達可能に連結された第1回転部材の回転速度と前記中央車軸に動力伝達可能に連結された第2回転部材の回転速度とを同期させる第1同期機構が備えられており、(b)前記制御装置は、前記制御カップリングによって前記副駆動輪が前記中央車軸に連結され、前記第1同期機構によって前記第1回転部材の回転速度と前記第2回転部材の回転速度とが同期させられると、前記噛合式クラッチを前記非噛合状態から前記噛合状態に切り替える。このため、走行時に車輪間に速度差がある時であっても前記4輪駆動車両を前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態により円滑に切り替えることができる。
また、本発明の一実施形態において、(a)前記噛合式クラッチは、前記動力伝達部材と前記中央車軸との間の動力伝達経路を選択的に切断または接続し、(b)前記駆動力源と前記動力伝達部材との間の動力伝達経路には、その動力伝達経路を選択的に切断または接続する第2クラッチが設けられており、(c)前記制御装置は、前記制御カップリングによって前記副駆動輪が前記中央車軸に連結されると、前記噛合式クラッチを制御して前記動力伝達部材と前記中央車軸との間の動力伝達経路を接続し、前記第2クラッチを制御して前記駆動力源と前記動力伝達部材との間の動力伝達経路を接続する。このため、走行時に車輪間に速度差がある時であっても前記4輪駆動車両を前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態に円滑に切り替えることができる。
また、本発明の一実施形態において、(a)前記第2クラッチには、前記駆動力源に動力伝達可能に連結された第3回転部材の回転速度と前記動力伝達部材に動力伝達可能に連結された第4回転部材の回転速度とを同期させる第2同期機構が備えられており、(b)前記制御装置は、前記制御カップリングによって前記副駆動輪が前記中央車軸に連結され、前記第2同期機構によって前記第3回転部材の回転速度と前記第4回転部材の回転速度とが同期させられると、前記噛合式クラッチを前記非噛合状態から前記噛合状態に切り替える。このため、走行時に車輪間に速度差がある時であっても前記4輪駆動車両を前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態により円滑に切り替えることができる。
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が好適に適用された4輪駆動車両10の構成を概略的に説明する骨子図である。図1において、4輪駆動車両10は、エンジン12を駆動力源とし、そのエンジン12の駆動力を主駆動輪に対応する左右一対の前輪14L、14Rに伝達する第1の動力伝達経路と、エンジン12の駆動力を副駆動輪に対応する左右一対の後輪16L、16Rに伝達する第2の動力伝達経路とを備えているFFベースの4輪駆動装置を備えている。この4輪駆動車両10の2輪駆動状態では、エンジン12から自動変速機18を介して伝達された駆動力が前輪用駆動力配分ユニット20および左右一対の前輪車軸22L、22Rを通り左右一対の前輪14L、14Rへ伝達される。この2輪駆動状態では、少なくとも第1噛合式クラッチ(噛合式クラッチ)24が解放され、トランスファ26、プロペラシャフト(動力伝達部材)28、後輪用駆動力配分ユニット30、および後輪16L、16Rへはエンジン12からの駆動力が伝達されない。しかし、4輪駆動状態では、上記2輪駆動状態に加えて、第1噛合式クラッチ24および第2噛合式クラッチ(第1クラッチ)32が共に係合されるとともに、左制御カップリング(制御カップリング)34Lにより後輪車軸36Lおよび後輪16Lへの伝達トルクが制御され、且つ右制御カップリング(制御カップリング)34Rにより後輪車軸36Rおよび後輪16Rへの伝達トルクが制御されるようになっている。なお、図1では図示されていないが、エンジン12と自動変速機18との間には、流体伝動装置であるトルクコンバータ或いはクラッチが設けられている。
差動歯車装置から構成される前輪用駆動力配分ユニット20は、図1に示すように、第1回転軸線C1まわりに回転可能に設けられ、自動変速機18の出力歯車18aに噛み合うリングギヤ20rと、リングギヤ20rに固定されたデフケース(デファレンシャルケース)20cと、デフケース20c内に収容された差動歯車機構20dと、を備えている。このように構成された前輪用駆動力配分ユニット20では、リングギヤ20rにエンジン12からの駆動力が伝達されると、左右の前輪車軸22L、22Rの差回転を許容しつつ前輪14L、14Rへ駆動力を伝達する。なお、デフケース20cには、トランスファ26に設けられた入力軸38の軸端部に形成された第1外周スプライン歯38aと嵌合する内周噛合歯20aが形成されている。これにより、エンジン12からデフケース20cを介して左右の前輪14Lおよび14Rへ伝達する駆動力の一部が、入力軸38を介してトランスファ26に入力されるようになっている。
トランスファ26は、図1および図2に示すように、円筒状の入力軸38と、プロペラシャフト28の前輪14L、14R側の端部に連結されたドリブンピニオン40(図1参照)に噛み合う円筒状の第1リングギヤ42と、エンジン12からプロペラシャフト28への動力伝達経路において、エンジン12に動力伝達可能に連結された入力軸38とプロペラシャフト28に動力伝達可能に連結された第1リングギヤ42との間を選択的に切断または接続する第1噛合式クラッチ24と、を備えている。トランスファ26では、第1噛合式クラッチ24が係合して入力軸38と第1リングギヤ42との間の動力伝達経路が接続されると、エンジン12から左右一対の前輪14L、14Rに伝達される駆動力の一部が、プロペラシャフト28を介して左右一対の後輪16L、16Rへ出力されるようになっている。
円筒状の第1リングギヤ42は、図2に示すように、例えば斜歯又はハイポイドギヤが形成された傘歯車であり、その第1リングギヤ42の内周部から前輪14R側に略円筒状に突出する軸部42aが形成されている。また、円筒状の第1リングギヤ42は、第1ユニットケース44内に設けられた軸受46を介して第1ユニットケース44により軸部42aが支持されることによって第1回転軸線C1まわりに回転可能に片持状に支持されている。
円筒状の入力軸38は、図2に示すように、円筒状の第1リングギヤ42の内側を貫通して、その入力軸38の一部が第1リングギヤ42の内側に配置されている。また、円筒状の入力軸38は、第1ユニットケース44内に設けられた一対の軸受48a、48bを介して第1ユニットケース44に両端部が支持されることによって、入力軸38が第1回転軸線C1まわりに回動可能にすなわち入力軸38が第1リングギヤ42と同心に回転可能に支持されている。また、円筒状の入力軸38には、入力軸38の前輪14L側の端部の外周面に形成された第1外周スプライン歯38aと、入力軸38の中央部の外周面に形成された第2外周スプライン歯38bと、入力軸38の前輪14R側の端部の外周面に形成された第3外周スプライン歯38cと、が形成されている。
第1噛合式クラッチ24には、図2に示すように、第1リングギヤ42の軸部42aの前輪14L側の側面42bに形成された複数の第1噛合歯(副駆動輪側噛合歯)42cと、第1回転軸線C1方向に移動することにより第1噛合歯42cとの噛み合いが可能な複数の第1噛合歯(駆動力源側噛合歯)50aが形成された円筒状の第1可動スリーブ50と、第1可動スリーブ50を第1回転軸線C1方向に移動させて、第1可動スリーブ50を第1噛合位置と第1非噛合位置とに移動させる第1移動機構52と、が備えられている。なお、前記第1噛合位置は、第1可動スリーブ50が第1回転軸線C1方向に移動し第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aが第1リングギヤ42の第1噛合歯42cと噛み合う位置であり、前記第1噛合位置では、第1リングギヤ42と入力軸38との相対回転が不能となり、第1噛合式クラッチ24が係合させられる。また、前記第1非噛合位置は、第1可動スリーブ50が第1回転軸線C1方向に移動し第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aが第1リングギヤ42の第1噛合歯42cと噛み合わない位置であり、前記第1非噛合位置では、第1リングギヤ42と入力軸38との相対回転が可能となり、第1噛合式クラッチ24が解放させられる。また、第1可動スリーブ50には、入力軸38に対して第1回転軸線C1まわりの相対回転が不能且つ入力軸38に対して第1回転軸線C1方向の移動が可能にその入力軸38に形成された第2外周スプライン歯38bに噛み合う内周噛合歯50bが形成されている。
第1移動機構52には、図2に示すように、第1ボールカム54と、第1アクチュエータ56と、第1スプリング58と、第1ラチェット機構60と、が備えられている。第1アクチュエータ56は、第1補助クラッチ62とその第1補助クラッチ62に回転制動トルクを発生させる第1電磁コイル64とを備えており、第1アクチュエータ56は第1ユニットケース44に一体的に固定されている。第1ボールカム54は、第1アクチュエータ56により第1補助クラッチ62を介して後述する環状の第2カム部材66に回転制動トルクが発生させられると、入力軸38の回転力を入力軸38の第1回転軸線C1方向の推力に変換する装置である。第1ラチェット機構60は、第1ボールカム54により変換された推力によって第1回転軸線C1方向に移動させられた第1可動スリーブ50の移動位置を保持する。第1スプリング58は、軸受48aと第1可動スリーブ50との間に介在されており、第1スプリング58は、第1可動スリーブ50を前記第1非噛合位置から前記第1噛合位置に向かって常時付勢すなわち第1可動スリーブ50を第1回転軸線C1方向において前輪14R側に常時付勢する。このため、第1移動機構52では、第1アクチュエータ56において第1電磁コイル64と第1補助クラッチ62とによって第2カム部材66に回転制動トルクを付与すると、第1ボールカム54の後述する第1カム部材68に第1回転軸線C1方向の推力が発生させられて、第1カム部材68によって第1ラチェット機構60を介して第1可動スリーブ50を第1スプリング58の付勢力に抗して第1回転軸線C1方向に移動させる。
第1ラチェット機構60は、図2に示すように、第1アクチュエータ56の第1電磁コイル64が円板状の可動片70を吸着したり可動片70を吸着しないことにより第1ボールカム54によって所定のストロークで第1回転軸線C1方向に往復移動させられる環状の第1ピストン68aと、入力軸38に対して相対回転可能に設けられ、第1回転軸線C1方向に移動する第1ピストン68aによって第1スプリング58の付勢力に抗して第1回転軸線C1方向に移動させられる環状の第2ピストン72と、掛止歯74a(図3参照)を有して入力軸38に対して相対回転不能且つ入力軸38に対して第1回転軸線C1方向の移動が不能に設けられ、その掛止歯74aで第1ピストン68aにより移動させられた第2ピストン72を掛け止める環状のホルダー74と、を備えている。第1ラチェット機構60では、第1ピストン68aが第1回転軸線C1方向に往復移動させられることで、第2ピストン72によって第1可動スリーブ50が前記第1非噛合位置へ第1スプリング58の付勢力に抗して移動させられ、第2ピストン72がホルダー74の掛止歯74aに掛け止められる。そして、さらに、第1ピストン68aが第1回転軸線C1方向に往復移動させられると、第2ピストン72がホルダー74の掛止歯74aから掛け外されて第1スプリング58の付勢力によって第1可動スリーブ50が前記第1噛合位置へ移動させられる。なお、第1ボールカム54の第1カム部材68には、図2に示すように、第1ラチェット機構60の第1ピストン68aが一体に設けられており、第1ラチェット機構60は、第1ボールカム54の第2カム部材66と第1可動スリーブ50との間に配設されている。
第1ボールカム54は、図2に示すように、第1ラチェット機構60の第2ピストン72と軸受48bとの間において第1回転軸線C1方向で重なるように介挿された環状の一対の第1カム部材68および第2カム部材66と、第1カム部材68に形成されたカム面68bと第2カム部材66に形成されたカム面66aとに挟まれた複数個の球状転動体76と、を備えており、第1ボールカム54では、第1カム部材68と第2カム部材66とが相対回転させられると、第1カム部材68と第2カム部材66とが第1回転軸線C1方向に離隔させられる。なお、第1カム部材68および第2カム部材66に形成された一対のカム面68b、66aは、それら第1カム部材68と第2カム部材66とにおいて周方向の複数箇所(たとえば3箇所)に形成され、周方向で第1回転軸線C1方向における深さが変化する互いに対向する溝状の面である。これによって、第1ボールカム54により第1カム部材68すなわち第1ピストン68aが第1回転軸線C1方向において前輪14L側、前輪14R側へ1回往復移動させられると、図2に示す第1回転軸線C1に対して上側すなわちエンジン12側のトランスファ26に示すように、第1可動スリーブ50が第1ラチェット機構60を介して前記第1非噛合位置へ第1スプリング58の付勢力に抗して移動させられる。そして、第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aと第1リングギヤ42の第1噛合歯42cとの噛み合いが解かれて第1噛合式クラッチ24が解放する。また、第1ボールカム54によって第1ピストン68aが2回往復移動すなわち第1可動スリーブ50が前記第1非噛合位置に配置された状態でさらに第1ピストン68aが1回往復移動させられると、図示しないが、第2ピストン70がホルダー74の掛止歯74aから掛け外され第1可動スリーブ50が第1スプリング58の付勢力によって前記第1噛合位置へ移動させられる。そして、第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aと第1リングギヤ42の第1噛合歯42cとが噛み合わされ第1噛合式クラッチ24が係合する。
また、第1アクチュエータ56において第1電磁コイル64と可動片70との間には、図2に示すように、第1電磁コイル64と可動片70との間に配設され、第1ユニットケース44に対して第1回転軸線C1まわり回転が不能且つ第1ユニットケース44に対して第1回転軸線C1方向の移動が可能に第1ユニットケース44に形成された内周スプライン歯44aに係合する円板状の一対の第1摩擦板78、80と、一対の第1摩擦板78、80の間に配設され、第2カム部材66に対して第1回転軸線C1まわりの回転が不能且つ第2カム部材66に対して第1回転軸線C1方向の移動が可能に第2カム部材66に形成された外周スプライン歯66bに係合する円板状の第2摩擦板82と、を有する第1補助クラッチ62が備えられている。なお、環状の第1カム部材68と環状の第2カム部材66との間の周方向の複数箇所に形成された凹溝状のカム面68b、66aは、その周方向に向かうに連れてそれらカム面68b、66aの間の第1回転軸線C1方向における距離が短くなるように傾斜している。また、第1カム部材68の内周面には、入力軸38に対して相対回転不能且つ入力軸38に対して第1回転軸線C1方向の移動可能に入力軸38に形成された第3外周スプライン歯38cに噛み合う内周噛合歯68cが形成されている。
上記のように構成された、第1アクチュエータ56である第1電磁コイル64および第1補助クラッチ62と第1ボールカム54とでは、例えば、車両走行中で入力軸38が回転している状態において、後述する電子制御装置(制御装置)100(図1参照)から第1電磁コイル64に第1駆動電流I1(A)が供給されて第1電磁コイル64によって可動片70が吸着されると、可動片70によって第1補助クラッチ62の第1摩擦板78、80および第2摩擦板82が可動片70と第1電磁コイル64との間で挟圧されて第2摩擦板82に回転制動トルクが伝達される。すなわち、第1電磁コイル64によって可動片70が吸着されると第1補助クラッチ62の第2摩擦板82を介して第2カム部材66に回転制動トルクが伝達される。このため、前記回転制動トルクによってそれら第1カム部材68と第2カム部材66とが相対回転し、第1カム部材68に一体に形成された第1ピストン68aは、球状転動体76を介して第2カム部材66に対して第1回転軸線C1方向において第1スプリング58の付勢力に抗して前輪14L側へ移動し、入力軸38の回転力が第1回転軸線C1方向の推力に変換される。また、電子制御装置100から第1電磁コイル64に第1駆動電流I1(A)が供給されず第1電磁コイル64に可動片70が吸着されない時には、第2カム部材66に前記回転制動トルクが伝達されないので、第2カム部材66が球状転動体76を介して第1カム部材68と連れまわって第2カム部材66と第1カム部材68とが一体的に回転する。これによって、第1ボールカム54では前記推力が発生しなくなるので、第1ピストン68aが第1スプリング58の付勢力によって前輪14R側へ移動する。
図3は、第1ラチェット機構60の作動原理を説明する模式図であり、環状の第1ピストン68a、環状の第2ピストン72、および環状のホルダー74をそれぞれ展開した状態を示している。第1ラチェット機構60は、前述したように、環状の第1ピストン68aと環状の第2ピストン72と環状のホルダー74とを備え、第2ピストン72を掛け止める掛止め機構として機能するものである。環状の第2ピストン72には、ホルダー74側に突設された突起72aが形成されている。また、環状のホルダー74には、第2ピストン72の突起72aを掛け止めるための円周方向に連なる鋸歯状の掛止歯74aが周期的に形成されており、ホルダー74は、入力軸38に位置固定に配設されている。また、環状の第1ピストン68aには、ホルダー74の掛止歯74aと同様の鋸歯形状であるが周方向に半位相ずれた形状で周方向に連なり、第2ピストン72の突起72aを受け止める受止歯68dが周期的に形成されている。環状の第1ピストン68aは、ホルダー74に対して相対回転不能且つホルダー74に対して第1回転軸線C1方向の移動可能にホルダー74に係合させられ、第1スプリング58の付勢力に抗して第2ピストン72を第1ボールカム54の1ストローク分だけ移動させる。なお、第1ピストン68aの受止歯68dの先端の斜面およびホルダー74の掛止歯74aの先端の斜面には、第2ピストン72の突起72aの滑りを止めるストッパ68e、74bがそれぞれ設けられている。
図3の(a)および(e)は、第1可動スリーブ50が前記第1噛合位置にある時を示している。図3の(a)および(e)に示すように、第2ピストン72から突設された突起72aがホルダー74の掛止歯74aに掛け止められた位置に位置している状態では、第1ピストン68aがそのベース位置に位置させられている。図3の(b)は、第1ピストン68aが第1アクチュエータ56および第1ボールカム54の作動により移動ストロークST分だけ第1スプリング58の付勢力に抗してそのベース位置から移動させられた状態を示している。この過程では、第1ピストン68aにより第2ピストン72が移動させられてホルダー74から離されるとともに、第2ピストン72が第1ピストン68aの斜面を滑り落ちる。なお、図3の(b)に示されている一点鎖線は、上記移動ストロークSTを説明するために図3の(a)の第1ピストン68aの元位置(ベース位置)を示すものである。図3の(c)は、第1ピストン68aが第1アクチュエータ54および第1ボールカム54の非作動により第1スプリング58および第3スプリング84の付勢力に従って移動ストロークST分だけ戻されてベース位置に位置させられた状態を示している。この過程では第2ピストン72がホルダー74の掛止歯74aの上に掛け止められ、前記第1非噛合位置に保持される。なお、第3スプリング84は、図2に示すように、第1回転軸線C1方向において、第1カム部材68において第1ピストン68aを除く部分と第2ピストン72との間に設けられるものであり、その第3スプリング84の付勢力は第1スプリング58の付勢力より小さい。図3の(d)は、再び第1ピストン68aが第1アクチュエータ56および第1ボールカム54の作動により移動ストロークST分だけ第1スプリング58の付勢力に抗してそのベース位置から移動させられた状態を示している。この過程では、第2ピストン72が更に第1スプリング58側に移動させられる。次いで、図3の(e)に示すように、第1ピストン68aが第1アクチュエータ56および第1ボールカム54の非作動により第1スプリング58および第3スプリング84の付勢力に従って移動ストロークST分だけ戻されてベース位置に位置させられると、第2ピストン70が前記第1噛合位置へ位置させられて、第1リングギヤ42の第1噛合歯42cと第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aとが噛み合わされる。
これにより、第1ラチェット機構60では、第1ボールカム54による第1ピストン68aの往復移動で第2ピストン72を周方向へ送り第1可動スリーブ50を前記第1非噛合位置、前記第1噛合位置へ向かって移動させる。第2ピストン72が1回往復移動させられると、第1可動スリーブ50が前記第1非噛合位置に位置させられる。また、第2ピストン72が2回往復移動すなわち第1可動スリーブ50が前記第1非噛合位置にある状態においてさらに第2ピストン72が1回往復移動させられると、第2ピストン72がホルダー74の掛止歯74aから掛け外されて第1スプリング58の付勢力により第1可動スリーブ50が前記第1噛合位置に位置させられる。
後輪用駆動力配分装置30は、図1および図4に示すように、プロペラシャフト28から左右の後輪16L、16Rへの動力伝達経路において、プロペラシャフト28の後輪16L、16R側の端部に一体的に設けられたドライブピニオン90に噛み合う第2リングギヤ(第1回転部材)92と、第2回転軸線C2まわりに回転可能に軸受94a、94bを介して後輪用駆動力配分装置30の第2ユニットケース96に支持された円筒状の中央車軸98と、中央車軸98から後輪車軸36Lへ伝達される伝達トルクを制御する左制御カップリング34L(図1参照)と、中央車軸98から後輪車軸36Rへ伝達される伝達トルクを制御する右制御カップリング34R(図1参照)と、第2リングギヤ92と中央車軸98との間の動力伝達経路を選択的に切断または接続する第2噛合式クラッチ32と、を備えている。なお、左制御カップリング34Lは、例えば、図示しない電磁コイルに電子制御装置100から左カップリング駆動電流Icpl(A)が供給されることによって、その左カップリング駆動電流(トルク指令値)Icpl(A)に応じた前記伝達トルクを伝達するようになっており、左制御カップリング34Lは、電子制御装置100から前記電磁コイルに左カップリング駆動電流Icpl(A)が供給されると、中央車軸98に後輪16Lを動力伝達可能に連結する。同様に、右制御カップリング34Rは、例えば、図示しない電磁コイルに電子制御装置100から右カップリング駆動電流Icpr(A)が供給されることによって、その右カップリング駆動電流(トルク指令値)Icpr(A)に応じた前記伝達トルクを伝達するようになっており、右制御カップリング34Rは、電子制御装置100から前記電磁コイルに右カップリング駆動電流Icpr(A)が供給されると、中央車軸98に後輪16Rを動力伝達可能に連結する。なお、右制御カップリング34Rは、後輪車軸36Rを介して後輪16Rに連結されており、左制御カップリング34Lは、後進車軸36Lを介して後輪16Lに連結されている。また、中央車軸98は、右制御カップリング34Rと左制御カップリング34Lとの間すなわち後輪16Rと後輪16Lとの間に配設されており、中央車軸98は、右制御カップリング34Rに設けられたカップリングカバー34Ra(図1参照)と左制御カップリング34Lに設けられたカップリングカバー34La(図1参照)とに連結されている。
円筒状の第2リングギヤ92は、図4に示すように、例えば斜歯又はハイポイドギヤが形成された傘歯車であり、第2リングギヤ92の内周部から後輪16L側に略円筒状に突出する軸部92aが形成されている。また、円筒状の第2リングギヤ92は、第2ユニットケース96内に設けられた軸受102を介して第2ユニットケース96により軸部92aが支持されることによって、第2回転軸線C2まわりに回転可能に片持状に支持されている。
円筒状の中央車軸98は、図4に示すように、円筒状の第2リングギヤ92の内側を貫通して、中央車軸98の一部が第2リングギヤ92の内側に配置されている。また、円筒状の中央車軸98は、第2ユニットケース96内に設けられた一対の軸受94a、94bに両端部が支持されることによって、中央車軸98が第2回転軸線C2まわりに回動可能にすなわち第2リングギヤ92と同心に回転可能に支持されている。
第2噛合式クラッチ32には、図4に示すように、第2リングギヤ92の内周面に形成された第2噛合歯92bと、第2噛合歯92bとの噛み合いが可能な第2噛合歯104aが形成された円筒状の第2可動スリーブ(第2回転部材)104と、第2可動スリーブ104を第2回転軸線C2方向に移動させて、第2可動スリーブ104を第2噛合位置と第2非噛合位置とに移動させる第2移動機構106と、が備えられている。なお、前記第2噛合位置は、第2可動スリーブ104が第2回転軸線C2方向に移動し第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aが第2リングギヤ92の第2噛合歯92bに噛み合う位置であり、前記第2噛合位置では、第2リングギヤ92と中央車軸98との相対回転が不能となり、第2噛合式クラッチ32が係合させられる。また、前記第2非噛合位置は、第2可動スリーブ104が第2回転軸線C2方向に移動し第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aが第2リングギヤ92の第2噛合歯92bに噛み合わない位置であり、前記第2非噛合位置では、第2リングギヤ92と中央車軸98との相対回転が可能となり、第2噛合式クラッチ32が解放させられる。また、第2可動スリーブ104には、中央車軸98に対して第2回転軸線C2まわりの相対回転が不能且つ中央車軸98に対して第2回転軸線C2方向の移動が可能にその中央車軸98に形成された外周スプライン歯98aに噛み合う内周噛合歯104bが形成されている。なお、第2噛合式クラッチ32では、第1噛合式クラッチ24が解放されている2輪駆動状態において、図1に示すように、第2移動機構106によって第2可動スリーブ104が前記第2非噛合位置に移動させられて、プロペラシャフト28と後輪16Lおよび16Rとの間すなわち第2リングギヤ92と中央車軸98との間が解放されると、エンジン12および左右一対の後輪16L、16Rからプロペラシャフト28が切り離されて、プロペラシャフト28等の回転抵抗による車両の走行抵抗が低減される。すなわち、本実施例の4輪駆動車両10は、2輪駆動状態では4輪駆動状態において左右一対の後輪16L、16Rへ駆動力を伝達するためのプロペラシャフト28をエンジン12および左右一対の後輪16L、16Rから切り離すディスコネクト機能付4輪駆動車両である。
第2移動機構106には、図4に示すように、第2ボールカム108と、第2アクチュエータ110と、第2スプリング112と、第2ラチェット機構114と、同期機構(第1同期機構)116と、が備えられている。第2アクチュエータ110は、可動片118とその可動片118を吸着する第2電磁コイル120とを備えており、第2アクチュエータ110では、可動片118が非回転部材である第2電磁コイル120に吸着されることによって、第2ボールカム108の後述する第2カム部材122に回転制動トルクが発生するようになっている。第2ボールカム108は、第2アクチュエータ110によって環状の第2カム部材122に回転制動トルクが発生させられると、中央車軸98の回転力を中央車軸98の第2回転軸線C2方向の推力に変換する装置である。第2ラチェット機構114は、第2ボールカム108により変換された推力によって第2回転軸線C2方向に移動させられた第2可動スリーブ104の移動位置を保持する。第2スプリング112は、軸受94aと第2可動スリーブ104との間に介在されており、第2スプリング112は、第2可動スリーブ104を前記第2非噛合位置から前記第2噛合位置に向かって常時付勢すなわち第2可動スリーブ104を第2回転軸線C2方向において後輪16R側に常時付勢する。このため、第2移動機構106では、第2アクチュエータ110によって第2カム部材122に回転制動トルクが付与されると、第2ボールカム108の後述する第1カム部材124に第2回転軸線C2方向の推力が発生させられて、第1カム部材124によって第2ラチェット機構114を介して第2可動スリーブ104を第2スプリング112の付勢力に抗して第2回転軸線C2方向に移動させる。
第2ラチェット機構114は、図4に示すように、第2アクチュエータ110の第2電磁コイル120が円板状の可動片118を吸着したり可動片118を吸着しないことにより第2ボールカム108によって所定のストロークで第2回転軸線C2方向に往復移動させられる環状の第1ピストン124aと、中央車軸98に対して相対回転可能に設けられ、第2回転軸線C2方向に移動する第1ピストン124aによって第2スプリング112の付勢力に抗して第2回転軸線C2方向に移動させられる環状の第2ピストン126と、掛止歯128a(図3参照)を有して中央車軸98に対して相対回転不能且つ中央車軸98に対して第2回転軸線C2方向の移動が不能に設けられ、その掛止歯128aで第1ピストン124aにより移動させられた第2ピストン126を掛け止める環状のホルダー128と、を備えている。第2ラチェット機構114では、第1ピストン124aが第2回転軸線C2方向に往復移動させられることで、第2ピストン126によって第2可動スリーブ120が前記第2非噛合位置へ第2スプリング112の付勢力に抗して移動させられ、第2ピストン126がホルダー128の掛止歯128aに掛け止められる。そして、さらに、第1ピストン124aが第2回転軸線C2方向に往復移動させられると、第2ピストン126がホルダー128の掛止歯128aから掛け外されて第2スプリング112の付勢力によって第2可動スリーブ104が前記第2噛合位置へ移動させられる。なお、第2ボールカム108の第1カム部材124には、図4に示すように、第2ラチェット機構114の第1ピストン124aが一体に設けられており、第2ラチェット機構114は、第2ボールカム108の第2カム部材122と第2可動スリーブ104との間に配設されている。
第2ボールカム108は、図4に示すように、第2ラチェット機構114の第2ピストン126と軸受94bとの間において第2回転軸線C2方向で重なるように介挿された環状の一対の第1カム部材124および第2カム部材122と、第1カム部材124に形成されたカム面124bと第2カム部材122に形成されたカム面122aとに挟まれた複数個の球状転動体130と、を備えており、第2ボールカム108では、第1カム部材124と第2カム部材122とが相対回転させられると、第1カム部材124と第2カム部材122とが第2回転軸線C2方向に離隔させられる。なお、第1カム部材124および第2カム部材122に形成された一対のカム面124b、122aは、それら第1カム部材124と第2カム部材122とにおいて周方向の複数箇所(たとえば3箇所)に形成され、周方向で第2回転軸線C2方向における深さが変化する互いに対向する溝状の面である。これによって、第2ボールカム108により第1カム部材124すなわち第1ピストン124aが第2回転軸線C2方向において後輪16L側、後輪16R側へ1回往復移動させられると、図4に示す第2回転軸線C2に対して上側すなわちプロペラシャフト28側の後輪用駆動力配分ユニット30に示すように、第2可動スリーブ104が第2ラチェット機構114を介して前記第2非噛合位置へ第2スプリング112の付勢力に抗して移動させられる。そして、第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aと第2リングギヤ92の第2噛合歯92bとの噛み合いが解かれて第2噛合式クラッチ32が解放する。また、第2ボールカム108によって第1ピストン124aが2回往復移動すなわち第2可動スリーブ104が前記第2非噛合位置に配置された状態でさらに第1ピストン124aが1回往復移動させられると、図示しないが、第2ピストン126がホルダー128の掛止歯128aから掛け外され第2可動スリーブ104が第2スプリング112の付勢力によって前記第2噛合位置へ移動させられる。そして、第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aと第2リングギヤ92の第2噛合歯92bとが噛み合わされ第2噛合式クラッチ32が係合する。なお、第1カム部材124の内周面には、図示されていないが、中央車軸98に対して相対回転不能且つ中央車軸98に対して第2回転軸線C2方向の移動可能に中央車軸90に形成された外周スプライン歯(図示せず)に噛み合う内周噛合歯が形成されている。
上記のように構成された、第2ボールカム108と第2アクチュエータ110とでは、例えば、車両走行中で中央車軸98が回転している状態において、電子制御装置100から第2電磁コイル120に第2駆動電流I2(A)が供給されて非回転部材である第2電磁コイル120に可動片118が吸着されると、可動片118を介して第2カム部材126に回転制動トルクが伝達される。このため、前記回転制動トルクによってそれら第1カム部材124と第2カム部材122とが相対回転し、第1カム部材124に一体に形成された第1ピストン124aは、球状転動体130を介して第2カム部材122に対して第2回転軸線C2方向において第2スプリング112の付勢力に抗して後輪16L側へ移動し、中央車軸98の回転力が第2回転軸線C2方向の推力に変換される。また、電子制御装置100から第2電磁コイル120に第2駆動電流I2(A)が供給されず第2電磁コイル120に可動片118が吸着されない時には、第2カム部材122に前記回転制動トルクが伝達されないので、第2カム部材122が球状転動体130を介して第1カム部材122と連れまわって第2カム部材122と第1カム部材124とが一体的に回転する。これによって、第2ボールカム108では前記推力が発生しなくなるので、第1ピストン124aが第2スプリング112の付勢力によって後輪16R側へ移動する。
図3は、第2ラチェット機構114の作動原理を説明する模式図であり、環状の第1ピストン124a、環状の第2ピストン126、および環状のホルダー128をそれぞれ展開した状態を示している。第2ラチェット機構114は、前述したように、環状の第1ピストン124aと環状の第2ピストン126と環状のホルダー128とを備え、第2ピストン126を掛け止める掛止め機構として機能するものである。環状の第2ピストン126には、ホルダー128側に突設された突起126aが形成されている。また、環状のホルダー128には、第2ピストン126の突起126aを掛け止めるための円周方向に連なる鋸歯状の掛止歯128aが周期的に形成されており、ホルダー128は、中央車軸98に位置固定に配設されている。また、環状の第1ピストン124aには、ホルダー128の掛止歯128aと同様の鋸歯形状であるが周方向に半位相ずれた形状で周方向に連なり、第2ピストン126の突起126aを受け止める受止歯124cが周期的に形成されている。環状の第1ピストン124aは、ホルダー128に対して相対回転不能且つホルダー128に対して第2回転軸線C2方向の移動可能にホルダー128に係合させられ、第2スプリング112の付勢力に抗して第2ピストン126を第2ボールカム108の1ストローク分だけ移動させる。なお、第1ピストン124aの受止歯124cの先端の斜面およびホルダー128の掛止歯128aの先端の斜面には、第2ピストン126の突起126aの滑りを止めるストッパ124d、128bがそれぞれ設けられている。
図3の(a)および(e)は、第2可動スリーブ104が前記第2噛合位置にある時を示している。図3の(a)および(e)に示すように、第2ピストン126から突設された突起126aがホルダー128の掛止歯128aに掛け止められた位置に位置している状態では、第1ピストン124aがそのベース位置に位置させられている。図3の(b)は、第1ピストン124aが第2アクチュエータ110および第2ボールカム108の作動により移動ストロークST分だけ第2スプリング112の付勢力に抗してそのベース位置から移動させられた状態を示している。この過程では、第1ピストン124aにより第2ピストン126が移動させられてホルダー128から離されるとともに、第2ピストン126が第1ピストン124aの斜面を滑り落ちる。なお、図3の(b)に示されている一点鎖線は、上記移動ストロークSTを説明するために図3の(a)の第1ピストン124aの元位置(ベース位置)を示すものである。図3の(c)は、第1ピストン124aが第2アクチュエータ110および第2ボールカム108の非作動により第2スプリング112および第4スプリング132の付勢力に従って移動ストロークST分だけ戻されてベース位置に位置させられた状態を示している。この過程では第2ピストン126がホルダー128の掛止歯128aの上に掛け止められ、前記第2非噛合位置に保持される。なお、第4スプリング134は、図4に示すように、第2回転軸線C2方向において、第1カム部材124において第1ピストン124aを除く部分とホルダー128との間に設けられるものであり、その第4スプリング134の付勢力は第2スプリング112の付勢力より小さい。図3の(d)は、再び第1ピストン124aが第2アクチュエータ110および第2ボールカム108の作動により移動ストロークST分だけ第2スプリング112の付勢力に抗してそのベース位置から移動させられた状態を示している。この過程では、第2ピストン126が更に第2スプリング112側に移動させられて第2可動スリーブ104が前記第2非噛合位置を超えて軸受94a側に移動させられるので、同期機構116によって第2リングギヤ92の回転速度と第2可動スリーブ104の回転速度すなわち中央車軸98の回転速度とが回転同期させられる。次いで、図3の(e)に示すように、第1ピストン124aが第2アクチュエータ110および第2ボールカム108の非作動により第2スプリング112および第4スプリング134の付勢力に従って移動ストロークST分だけ戻されてベース位置に位置させられると、第2ピストン126が前記第2噛合位置へ位置させられて、第2リングギヤ92の第2噛合歯92bと第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aとが噛み合わされる。
これにより、第2ラチェット機構114では、第2ボールカム108による第1ピストン124aの往復移動で第2ピストン126を周方向へ送り第2可動スリーブ104を前記第2非噛合位置、前記第2噛合位置へ向かって移動させる。第2ピストン126が1回往復移動させられると、第2可動スリーブ104が前記第2非噛合位置に位置させられる。また、第2ピストン126が2回往復移動すなわち第2可動スリーブ104が前記第2非噛合位置にある状態においてさらに第2ピストン126が1回往復移動させられると、第2ピストン126がホルダー128の掛止歯128aから掛け外されて第2スプリング112の付勢力により第2可動スリーブ104が前記第2噛合位置に位置させられる。
同期装置116には、図4に示すように、第2可動スリーブ104と第2ピストン126との間に介在された環状の環状部材136と、環状部材136と第2リングギヤ92との間に配設された一対の第1摩擦係合部材138および第2摩擦係合部材140と、が備えられている。なお、環状の一対の第1摩擦係合部材138および第2摩擦係合部材140は、環状部材136の外周に形成され第2回転軸線C2に対して僅かに傾斜した円錐状外周摩擦面136aと、第2リングギヤ92の第2ピストン126側の端部の内周に形成され第2回転軸線C2に対して僅かに傾斜した円錐状内周摩擦面92cと、の間にそれぞれ配設されている。また、環状部材136は、中央車軸98に対して相対回転不能且つ中央車軸98に対して第2回転軸線C2方向に移動可能に中央車軸98に支持されている。また、環状部材136の一部は、第2スプリング112の付勢力によって第2可動スリーブ104と第2ピストン126とに挟まれているので、環状部材136は、第2可動スリーブ104および第2ピストン126の第2回転軸線C2方向の移動に連動して第2回転軸線C2方向に移動するようになっている。また、第1摩擦係合部材138には、第2摩擦係合部材140の内周面に形成され第2回転軸線C2に対して僅かに傾斜した第2円錐状内周摩擦面140aに摺接可能な第1円錐状外周摩擦面138aと、環状部材136の円錐状外周摩擦面136aに摺接可能な第1円錐状内周摩擦面138bと、が形成されている。また、第2摩擦係合部材140には、前述した第2円錐状内周摩擦面140aと、第2リングギヤ92の円錐状内周摩擦面92cに摺接可能な第2円錐状外周摩擦面140bと、が形成されている。
このため、第2可動スリーブ104が前記第2非噛合位置で第2ピストン126が第2ボールカム108の第1カム部材124によって1回往復移動させられる時において、第1カム部材124が往動して第2可動スリーブ104が前記第2非噛合位置を超えて移動させられると、第2摩擦係合部材140の第2円錐状外周摩擦面140bが第2リングギヤ92の円錐状内周当接面92cに当接し、環状部材136の円錐状外周摩擦面136aが、第1摩擦係合部材138および第2摩擦係合部材140を介して第2リングギヤ92の円錐状内周摩擦面92cを押し付けるので、環状部材136が相対回転不能に設けられた中央車軸98の回転速度すなわち第2可動スリーブ104の回転速度と第2リングギヤ92の回転速度とを同期させる同期動作が行われる。なお、第1カム部材124が復動すると、第2リングギヤ92の円錐状内周摩擦面92cから第2摩擦係合部材140の第2円錐状外周当接面140bが離れるので、前記同期動作が停止させられる。
図5は、第1噛合式クラッチ24および第2噛合式クラッチ32がそれぞれ解放された2輪駆動状態から、第1噛合式クラッチ24および第2噛合式クラッチ32をそれぞれ係合させて4輪駆動状態へ切り替える場合において、第2噛合式クラッチ32の同期機構116を作動させ第2可動スリーブ104の回転速度と第2リングギヤ92の回転速度とを略同期させて、第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aと第1リングギヤ42の第1噛合歯42cとを噛み合わせる状態を示す図である。なお、図5では、2輪駆動状態から4輪駆動状態に切り替えられるときには、左制御カップリング34Lまたは右制御カップリング34Rによって中央車軸98が左右の後輪16L、16Rのいずれか一方に連結させられる。また、図5は、4輪駆動車両10の前進走行時の状態を示す図である。なお、第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aは、エンジン12に動力伝達可能に連結されており、第1リングギヤ42の第1噛合歯42cは、第2噛合式クラッチ32に設けられた同期機構116が作動した状態または第2噛合式クラッチ32が係合した状態、且つ左制御カップリング34Lまたは右制御カップリング34Rが係合した状態において後輪16Lまたは後輪16Rに動力伝達可能に連結されている。
第1可動スリーブ50に形成された第1噛合歯50aは、図5に示すように、円筒状の第1可動スリーブ50の外周部に複数形成されている。また、第1可動スリーブ50に形成された複数の第1噛合歯50aは、それぞれ、第1回転軸線C1方向に長手状に形成され、且つ円筒状の第1可動スリーブ50の周方向にそれぞれの第1噛合歯50aの間の間隔D1が一定になるように形成されている。なお、間隔D1は、第1可動スリーブ50に形成された複数の第1噛合歯50aが第1リングギヤ42に形成された複数の第1噛合歯42cの間に入り込めるように設定されている。
図5に示すように、2輪駆動状態から4輪駆動状態への切り替え時において、第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aの回転速度は、第1リングギヤ42の第1噛合歯42cの回転速度より大きく、第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aと第1リングギヤ42の第1噛合歯42cとは、第1回転軸線C1まわり矢印A1、A2方向に回転すなわちそれぞれ同じ方向に回転している。このため、第1移動機構52によって第1可動スリーブ50が前記第1非噛合位置から前記第1噛合位置へ移動すなわち第1移動機構52によって第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aが第1リングギヤ42の第1噛合歯42cに接近する方向へ移動すると、第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aは、第1リングギヤ42の第1噛合歯42cに対して矢印F1方向に相対移動する。なお、本実施例では、プロペラシャフト28が回転している直進走行時において、第1リングギヤ42の回転速度が第2リングギヤ92の回転速度より所定値遅くなるように、すなわち、プロペラシャフト28に設けられたドリブンピニオン40と第1リングギヤ42とのギヤ比と、プロペラシャフト28に設けられたドライブピニオン90と第2リングギヤ92とのギヤ比と、に差すなわち前後リングギヤ比差Gが生じるように、第1リングギヤ42および第2リングギヤ92等が設計されている。つまり、プロペラシャフト28が回転している時において、第1リングギヤ42の回転速度が第2リングギヤ92の回転速度より遅くなると、2輪駆動状態から4輪駆動状態への切り替え時において、第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aの回転速度が第1リングギヤ42の第1噛合歯42cの回転速度より大きく成り易くなる。
また、第1可動スリーブ50に形成された複数の第1噛合歯50aには、図5に示すように、それぞれ、その第1噛合歯50aの第1噛合歯42c側の端面であって第1噛合歯42cに当接する当接面に、第1噛合歯50aの歯幅全体にわたって一方向に傾斜した面取部分すなわち片チャンファCF1が設けられている。また、第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aに片チャンファCF1が設けられることによって、その第1噛合歯50aの第1噛合歯42c側の端面であって第1噛合歯42cと当接する当接面には、4輪駆動車両10の前進走行時に第1噛合歯50aが回転する矢印A1方向に対し、第1噛合歯50aの第1回転軸線C1方向の長さが増加するように傾く第1傾斜面50cが形成されている。なお、第1可動スリーブ50に形成された複数の第1噛合歯50aには、その第1噛合歯50aの矢印A1方向の両側に第1回転軸線C1に対して略平行な平行面50d、50eがそれぞれ形成されている。
第1リングギヤ42の第1噛合歯42cは、図5に示すように、第1リングギヤ42の円筒状の軸部42aの側面42bに複数形成されている。また、第1リングギヤ42に形成された複数の第1噛合歯42cは、それぞれ、第1回転軸線C1方向に長手状に形成され、且つその第1リングギヤ42の軸部42aの周方向にそれぞれ第1噛合歯42cの間の間隔D2が一定になるように形成されている。なお、間隔D2は、第1可動スリーブ50に形成された複数の第1噛合歯50aが第1リングギヤ42に形成された複数の第1噛合歯42cの間に入り込めるように設定されている。
第1リングギヤ42に形成された複数の第1噛合歯42cには、図5に示すように、それぞれ、その第1噛合歯42cの第1噛合歯50a側の端面であって第1噛合歯50aに当接する当接面に、第1噛合歯42cの歯幅全体にわたって一方向に傾斜した面取部分すなわち片チャンファCF2が設けられている。また、第1リングギヤ42の第1噛合歯42cに片チャンファCF2が設けられることによって、その第1噛合歯42cの第1噛合歯50a側の端面であって第1噛合歯50aに当接する当接面には、矢印A1、A2方向に対し、第1噛合歯42cの第1回転軸線C1方向の長さが減少するように傾く第1傾斜面42dが形成されている。なお、第1リングギヤ42に形成された複数の第1噛合歯42cには、その第1噛合歯42cの矢印A1方向の両側に第1回転軸線C1に対して略平行な平行面42e、42fがそれぞれ形成されている。
すなわち、第1リングギヤ42に形成された第1噛合歯42cおよび第1可動スリーブ50に形成された第1噛合歯50aは、図5に示すように、第1移動機構52によって第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aが第1リングギヤ42の第1噛合歯42cに接近する方向へ移動して第1噛合歯50aの第1噛合歯42c側の端部が第1噛合歯42cの第1噛合歯50a側の端部に当接した場合において、第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aの回転速度が第1リングギヤ42の第1噛合歯42cの回転速度よりも大きいときに、第1噛合歯50aと第1噛合歯42cとが噛み合うように片チャンファCF1、CF2が形成されている。
以上のように構成された4輪駆動車両10では、例えば、第1噛合式クラッチ24および第2噛合式クラッチ32が共に係合されている4輪駆動状態において、電子制御装置100で2輪駆動走行モードが選択されると、第1移動機構52によって第1可動スリーブ50が前記第1噛合位置から前記第1非噛合位置に移動して第1噛合式クラッチ24が解放され、第2移動機構106によって第2可動スリーブ104が前記第2噛合位置から前記第2非噛合位置に移動して第2噛合式クラッチ32が解放されて、プロペラシャフト28をエンジン12および左右一対の後輪16L、16Rからそれぞれ切り離したディスコネクト状態となる。また、前記ディスコネクト状態から、電子制御装置100で4輪駆動走行モードが選択されると、第2移動機構106の同期機構116によって第2リングギヤ92の回転速度と第2可動スリーブ104の回転速度とが同期させられて、第1移動機構52によって第1可動スリーブ50が前記第1非噛合位置から前記第1噛合位置に移動して第1噛合式クラッチ24が係合される。そして、第1噛合式クラッチ24の係合後に、第2移動機構106によって第2可動スリーブ104が前記第2非噛合位置から前記第2噛合位置に移動して第2噛合式クラッチ32が係合されて、前記ディスコネクト状態が解除される。
図6は、電子制御装置100に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図6に示すように、電子制御装置100には、4輪駆動車両10に設けられた各センサにより検出される各種入力信号が供給されるようになっている。例えば、第1車輪速センサ142により検出される前輪14L、14Rの回転速度Vwfl、Vwfr(rpm)を表す信号と、第2車輪速センサ144により検出される後輪16L、16Rの回転速度Vwrl、Vwrr(rpm)を表す信号と、4WD走行モード切替スイッチ146から検出される4輪駆動走行モードが選択されたか否かを表すON、OFF信号と、車速センサ148から検出される4輪駆動車両10の車速V(km/h)を表す信号と、第1回転速度センサ150により検出されるプロペラシャフト28の回転速度Vps(rpm)を表す信号と、第2回転速度センサ152により検出されるカップリングカバー34La、34Raの回転速度Vcp(rpm)すなわち中央車軸98の回転速度を表す信号と、第1ポジションセンサ154により検出される第1噛合式クラッチ24が係合しているか否かを表すON、OFF信号、すなわち第1可動スリーブ50が前記第1噛合位置にいるか否かを表すON、OFF信号と、第2ポジションセンサ156により検出される第2噛合式クラッチ32が係合しているか否かを表すON、OFF信号、すなわち第2可動スリーブ104が前記第2噛合位置にいるか否かを表すON、OFF信号と、が電子制御装置100に入力される。
また、電子制御装置100から、4輪駆動車両10に設けられた各装置に各種出力信号が供給されるようになっている。例えば、第1噛合式クラッチ24を係合させるために第1アクチュエータ56の第1電磁コイル64に供給される第1駆動電流I1(A)と、第2噛合式クラッチ32を係合させるために第2アクチュエータ110の第2電磁コイル120に供給される第2電磁コイル電流I2(A)と、後輪16Lと中央車軸98との間で伝達する伝達トルクを制御するために左制御カップリング34Lの電磁コイル(図示しない)に供給される左カップリング駆動電流Icpl(A)と、後輪16Rと中央車軸98との間で伝達する伝達トルクを制御するために右制御カップリング34Rの電磁コイル(図示しない)に供給される右カップリング駆動電流Icpr(A)と、が電子制御装置100から各部へ供給される。
図6に示すように、電子制御装置100には、走行モード切替判定部160と、カップリング制御部162と、第1噛合式クラッチ制御部164と、第2噛合式クラッチ制御部166と、が備えられている。走行モード切替判定部160は、エンジン12から左右一対の前輪14L、14Rへ駆動力を伝達する2輪駆動状態が実行される2輪駆動走行モードから、エンジン12から左右一対の後輪16L、16Rへも駆動力を伝達する4輪駆動状態が実行される4輪駆動走行モードに切り替えられたか否かを判定、すなわち第1噛合式クラッチ24において第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aと第1リングギヤ42の第1噛合歯42cとが噛み合わない第1非噛合状態から第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aと第1リングギヤ42の第1噛合歯42cとが噛み合う第1噛合状態に切り替える切替要求があったか否かを判定する。例えば、走行モード切替判定部160は、4WD走行モード切替スイッチ146が運転者によって操作されると、前記2輪駆動走行モードから前記4輪駆動走行モードに切り替えられたと判定、すなわち第1噛合式クラッチ24において前記第1非噛合状態から前記第2噛合状態に切り替える切替要求があったと判定する。
カップリング制御部162には、図6に示すように、回転速度差演算部162aと、4WD切替判定部162bと、車輪選択部162cと、が備えられている。カップリング制御部162は、左制御カップリング34Lの電磁コイルに供給する左カップリング駆動電流Icpl(A)と右制御カップリング34Rの電磁コイルに供給する右カップリング駆動電流Icpr(A)とを制御して、左制御カップリング34Lによって中央車軸98から後輪16Lへの伝達トルクまたは後輪16Lから中央車軸98への伝達トルクを制御すると共に、右制御カップリング34Rによって中央車軸98から後輪16Rへの伝達トルクまたは後輪16Rから中央車軸98への伝達トルクを制御する。
回転速度差演算部162aは、走行モード切替判定部160で前記2輪駆動走行モードから前記4輪駆動走行モードに切り替えられたと判定、すなわち第1噛合式クラッチ24において前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に切り替える切替要求があったと判定されると、左制御カップリング34Lによって後輪16Lを中央車軸98に連結させた場合における第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aの回転速度V1kl(rpm)と第1リングギヤ42の第1噛合歯42cの回転速度V1rl(rpm)との差(V1kl−V1rl)すなわち第1回転速度差Vs1(rpm)と、右制御カップリング34Rによって後輪16Rを中央車軸98に連結させた場合における第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aの回転速度V1kr(rpm)と第1リングギヤ42の第1噛合歯42cの回転速度V1rr(rpm)との差(V1kr−V1rr)すなわち第2回転速度差Vs2(rpm)と、を演算する。
なお、左制御カップリング34Lによって後輪16Lを中央車軸98に連結された場合における第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aの回転速度V1klと、右制御カップリング34Rによって後輪16Rを中央車軸98に連結された場合における第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aの回転速度V1krとは、走行モード切替判定部160で前記2輪駆動走行モードから前記4輪駆動走行モードに切り替えられたと判定された時の第1車輪速センサ142から検出される前輪14Lの回転速度Vwfl(rpm)と前輪14Rの回転速度Vwfr(rpm)とから算出される。すなわち、回転速度V1klおよび回転速度V1krは、前輪14Lの回転速度Vwfl(rpm)と前輪14Rの回転速度Vwfr(rpm)との平均回転速度Vwfav((Vwfl+Vwfr)÷2)(rpm)である。また、左制御カップリング34Lによって後輪16Lを中央車軸98に連結された場合における第1リングギヤ42の第1噛合歯42cの回転速度V1rlは、走行モード切替判定部160で前記2輪駆動走行モードから前記4輪駆動走行モードに切り替えられたと判定された時の第2車輪速センサ144から検出される後輪16Lの回転速度Vwrl(rpm)と予め設定された前後リングギヤ比差Gとから算出される。なお、回転速度V1rlは、第2噛合式クラッチ32が係合して第1リングギヤ42の第1噛合歯42cが後輪16Lに動力伝達可能に連結された場合における第1リングギヤ42の第1噛合歯42cの回転速度である。また、右制御カップリング34Rによって後輪16Rを中央車軸98に連結された場合における第1リングギヤ42の第1噛合歯42cの回転速度V1rrは、走行モード切替判定部160で前記2輪駆動走行モードから前記4輪駆動走行モードに切り替えられたと判定された時の第2車輪速センサ144から検出される後輪16Rの回転速度Vwrr(rpm)と予め設定された前後リングギヤ比差Gとから算出される。なお、回転速度V1rrは、第2噛合式クラッチ32が係合して第1リングギヤ42の第1噛合歯42cが後輪16Rに動力伝達可能に連結された場合における第1リングギヤ42の第1噛合歯42cの回転速度である。
4WD切替判定部162bは、回転速度差演算部162aで第1回転速度差Vs1と第2回転速度差Vs2とが演算されると、その演算された第1回転速度差Vs1および第2回転速度差Vs2と走行モード切替判定部160で前記2輪駆動走行モードから前記4輪駆動走行モードに切り替えられたと判定された時の車速センサ148から検出された車速V(km/h)とに基づいて、2輪駆動状態から4輪駆動状態に円滑に切り替えられるか否か、すなわち第1噛合式クラッチ24を前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に円滑に切り替えられるか否かを判定する。例えば、4WD切替判定部162bは、回転速度差演算部162aで演算された第1回転速度差Vs1(rpm)と車速センサ148から検出された車速V(km/h)とにより求められる第1点P1と、回転速度差演算部162aで演算された第2回転速度差Vs2(rpm)と車速センサ148から検出された車速V(km/h)とにより求められる第2点P2と、の少なくとも一方が、図7に示す予め設定された切替可能領域(所定範囲)Sok内にある場合には、2輪駆動状態から4輪駆動状態に円滑に切り替えられる、すなわち第1噛合式クラッチ24を前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に円滑に切り替えられると判定する。図7に示すマップには、切替可能領域Sokの他に、切替音大領域Sng1と、切替不可領域Sng2と、切替狙い差回転導出線Ltと、が予め記憶されている。なお、切替音大領域Sng1は、回転速度差演算部162aで演算された回転速度差Vsが切替音大領域Sng1内となる後輪16L、16Rを制御カップリング34L、34Rによって中央車軸98に連結すると、例えば第1噛合式クラッチ24を前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に切り替える場合において第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aの回転速度が第1リングギヤ42の第1噛合歯42cの回転速度より比較的大きくなり過ぎて、第1噛合歯50aが第1噛合歯42cに噛み合った時に運転者に分かる程度の異音すなわち切替音或いは振動が発生してしまう領域である。また、切替不可領域Sng2は、回転速度差演算部162aで演算された回転速度差Vsが切替不可領域Sng2内となる後輪16L、16Rを制御カップリング34L、34Rによって中央車軸98に連結すると、例えば第1噛合式クラッチ24を前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に切り替える場合において第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aの回転速度が第1リングギヤ42の第1噛合歯42cの回転速度より遅くなって、第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aに形成された片チャンファCF1が第1リングギヤ42の第1噛合歯42cに形成された片チャンファCF2に当接しても、第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aと第1リングギヤ42の第1噛合歯42cとが互いに噛み合わなくなる領域である。また、切替可能領域Sokは、回転速度差演算部162aで演算された回転速度差Vsが切替可能領域Sok内となる後輪16L、16Rを制御カップリング34L、34Rによって中央車軸98に連結すると、例えば第1噛合式クラッチ24を前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に切り替える場合において第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aの回転速度が第1リングギヤ42の第1噛合歯42cの回転速度より適度に大きくなり、第1噛合歯50aが第1噛合歯42cに噛み合った時に運転者に分かる程度の異音すなわち切替音が発生しない領域である。また、切替狙い差回転導出線Ltは、車速センサ148から検出される車速V(km/h)によって、例えば第1噛合式クラッチ24を前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に切り替える場合において第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aと第1リングギヤ42の第1噛合歯42cとが最も円滑に噛み合わせられるように設定された、第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aの回転速度と第1リングギヤ42の第1噛合歯42cの回転速度との理想回転速度差(設定回転速度差)Vstを導き出す線である。
4WD切替判定部162bは、図8に示すように、車速センサ148から検出された車速V(km/h)が例えばV4(km/h)である場合において、第1点P1と第2点P2とのいずれもが切替可能領域Sok内にある場合には、2輪駆動状態から4輪駆動状態に円滑に切り替えられると判定、すなわち第1噛合式クラッチ24を前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に円滑に切り替えられると判定する。なお、図8において破線で示されている第1外輪線L1lは、例えば車幅方向に作用する横方向加速度が所定加速度A(G)で右側へ4輪駆動車両10が車速V(km/h)で旋回する車両旋回走行時において、外輪である後輪16Lに中央車軸98が連結された時における第1回転速度差Vs1(rpm)を示す線である。なお、前述した「A」は予め設定された値である。また、図8において破線で示されている第1内輪線L1rは、例えば車幅方向に作用する横方向加速度が所定加速度A(G)で右側へ4輪駆動車両10が車速V(km/h)で旋回する車両旋回走行時において、内輪である後輪16Rに中央車軸98が連結された時における第2回転速度差Vs2(rpm)を示す線である。また、図8において破線で示されている第2外輪線L2lは、例えば車幅方向に作用する横方向加速度が所定加速度2A(G)で右側へ4輪駆動車両10が車速V(km/h)で旋回する車両旋回走行時において、外輪である後輪16Lに中央車軸98が連結された時における第1回転速度差Vs1(rpm)を示す線である。また、図8において破線で示されている第2内輪線L2rは、例えば車幅方向に作用する横方向加速度が所定加速度2A(G)で右側へ4輪駆動車両10が車速V(km/h)で旋回する車両旋回走行時において、内輪である後輪16Rに中央車軸98が連結された時における第2回転速度差Vs2(rpm)を示す線である。また、図8において破線で示されている第3外輪線L3lは、例えば車幅方向に作用する横方向加速度が所定加速度3A(G)で右側へ4輪駆動車両10が車速V(km/h)で旋回する車両旋回走行時において、外輪である後輪16Lに中央車軸98が連結された時における第1回転速度差Vs1(rpm)を示す線である。また、図8において破線で示されている第3内輪線L3rは、例えば車幅方向に作用する横方向加速度が所定加速度3A(G)で右側へ4輪駆動車両10が車速V(km/h)で旋回する車両旋回走行時において、内輪である後輪16Rに中央車軸98が連結された時における第2回転速度差Vs2(rpm)を示す線である。また、図8において破線で示されている第4外輪線L4lは、例えば車幅方向に作用する横方向加速度が所定加速度4A(G)で右側へ4輪駆動車両10が車速V(km/h)で旋回する車両旋回走行時において、外輪である後輪16Lに中央車軸98が連結された時における第1回転速度差Vs1(rpm)を示す線である。また、図8において破線で示されている第4内輪線L4rは、例えば車幅方向に作用する横方向加速度が所定加速度4A(G)で右側へ4輪駆動車両10が車速V(km/h)で旋回する車両旋回走行時において、内輪である後輪16Rに中央車軸98が連結された時における第2回転速度差Vs2(rpm)を示す線である。また、図8および図9において1点鎖線で示されている第1直進線L1sは、4輪駆動車両10が車速Vで直進走行する車両直進走行時において、後輪16Lまたは後輪16Rが中央車軸98に連結された時における第1回転速度差Vs1と第2回転速度差Vs2とを示す線である。なお、車両直進走行時には、第1回転速度差Vs1と第2回転速度差Vs2とは同じ値になる。
また、4WD切替判定部162bは、図9に示すように、車速センサ148から検出された車速V(km/h)が例えばV1(km/h)である場合において、第1点P1と第2点P2とのいずれもが切替可能領域Sok内にない場合すなわち第1点P1と第2点P2とが切替音大領域Sng1内にある場合には、2輪駆動状態から4輪駆動状態に円滑に切り替えられないと、すなわち第1噛合式クラッチ24を前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に円滑に切り替えられないと判定する。なお、図9において1点鎖線で示されている第1径差線L1dは、前輪14L、14Rの直径が後輪16L、16Rの直径よりも所定値DA1(%)だけ小さい前輪14L、14Rを装着して車速Vで直進走行する車両直進走行時において、後輪16Lまたは後輪16Rが中央車軸98に連結された時における第1回転速度差Vs1と第2回転速度差Vs2とを示す線である。また、図9において1点鎖線で示されている第2径差線L2dは、前輪14L、14Rの直径が後輪16L、16Rの直径よりも所定値DA2(%)だけ小さい前輪14L、14Rを装着して車速Vで直進走行する車両直進走行時において、後輪16Lまたは後輪16Rが中央車軸98に連結された時における第1回転速度差Vs1と第2回転速度差Vs2とを示す線である。また、図9において1点鎖線で示されている第3径差線L3dは、前輪14L、14Rの直径が後輪16L、16Rの直径よりも所定値DA3(%)だけ小さい前輪14L、14Rを装着して車速Vで直進走行する車両直進走行時において、後輪16Lまたは後輪16Rが中央車軸98に連結された時における第1回転速度差Vs1と第2回転速度差Vs2とを示す線である。なお、所定値DA1、DA2、DA3の大小関係は、DA1<DA2<DA3である。また、図9において1点鎖線で示されている第4径差線L4dは、前輪14L、14Rの直径が後輪16L、16Rの直径よりも所定値DB1(%)だけ大きい前輪14L、14Rを装着して車速Vで直進走行する車両直進走行時において、後輪16Lまたは後輪16Rが中央車軸98に連結された時における第1回転速度差Vs1と第2回転速度差Vs2とを示す線である。また、図9において1点鎖線で示されている第5径差線L5dは、前輪14L、14Rの直径が後輪16L、16Rの直径よりも所定値DB2(%)だけ大きい前輪14L、14Rを装着して車速Vで直進走行する車両直進走行時において、後輪16Lまたは後輪16Rが中央車軸98に連結された時における第1回転速度差Vs1と第2回転速度差Vs2とを示す線である。また、図9において1点鎖線で示されている第6径差線L6dは、前輪14L、14Rの直径が後輪16L、16Rの直径よりも所定値DB3(%)だけ大きい前輪14L、14Rを装着して車速Vで直進走行する車両直進走行時において、後輪16Lまたは後輪16Rが中央車軸98に連結された時における第1回転速度差Vs1と第2回転速度差Vs2とを示す線である。また、図9において1点鎖線で示されている第7径差線L7dは、前輪14L、14Rの直径が後輪16L、16Rの直径よりも所定値DB4(%)だけ大きい前輪14L、14Rを装着して車速Vで直進走行する車両直進走行時において、後輪16Lまたは後輪16Rが中央車軸98に連結された時における第1回転速度差Vs1と第2回転速度差Vs2とを示す線である。なお、所定値DB1、DB2、DB3、DB4の大小関係は、DB1<DB2<DB3<DB4である。また、車両直進走行時には、第1回転速度差Vs1と第2回転速度差Vs2とは同じ値になる。
車輪選択部162cは、4WD切替判定部162bで2輪駆動状態から4輪駆動状態に円滑に切り替えられるとすなわち第1噛合式クラッチ24を前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に円滑に切り替えられると判定されると、左右一対の後輪16Lおよび後輪16Rの一方の後輪を中央車軸98に連結する左右一対の左制御カップリング34Lおよび右制御カップリング34Rの一方の制御カップリングを選択する。例えば、車輪選択部162cは、図8に示すように、4WD切替判定部162bで求められた第1点P1と第2点P2とのいずれもが切替可能領域Sokにある場合には、車速センサ148から検出される車速V(km/h)例えばV4(km/h)と切替狙い差回転導出線Ltとから理想回転速度差Vst(rpm)を導出して、その理想回転速度差Vst(rpm)と第1点P1すなわち第1回転速度差Vs1(rpm)との差S1(rpm)、および理想回転速度差Vst(rpm)と第2点P2すなわち第2回転速度差Vs2(rpm)との差S2のうち小さいほうの差すなわち差S2になるように第2点P2を選択して、第2点P2が切替可能領域Sok内となる後輪16Rを中央車軸98に連結する右制御カップリング34Rを選択する。
また、例えば、車輪選択部162cは、図7に示すように、車速センサ148から検出された車速V(km/h)が例えばV3(km/h)である場合において、4WD切替判定部162bで求められた第2点P2が切替可能領域Sokにあり、4WD切替判定部162bで求められた第1点P1が切替不可領域Sng2にある場合には、第2点P2すなわち第2回転速度差Vs2が切替可能領域Sok内となる後輪16Rを中央車軸98に連結する右制御カップリング34Rを選択する。また、例えば、車輪選択部162cは、図7に示すように、車速センサ148から検出された車速V(km/h)が例えばV2(km/h)である場合において、4WD切替判定部162bで求められた第1点P1が切替可能領域Sokにあり、4WD切替判定部162bで求められた第2点P2が切替音大領域Sng1にある場合には、第1点P1すなわち第1回転速度差Vs1が切替可能領域Sok内となる後輪16Lを中央車軸98に連結する左制御カップリング34Lを選択する。
また、車輪選択部162cは、図7に示すように、車速センサ148から検出された車速V(km/h)が例えばV1(km/h)であり、4WD切替判定部162bで求められた第1点P1が切替不可領域Sng2にあり、4WD切替判定部162bで求められた第2点P2が切替音大領域Sng1にある場合、すなわち第1点P1と第2点P2とのいずれもが切替可能領域Sokになく4WD切替判定部162bで2輪駆動状態から4輪駆動状態に円滑に切り替えられないと判定されていても、例えば前輪14L、14Rおよび後輪16L、16Rの少なくとも1つがスリップ等して、緊急に2輪駆動状態から4輪駆動状態に切り替える必要すなわち第1噛合式クラッチ24を前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に切り替える必要があると判定されると、第1点P1すなわち第1回転速度差Vs1と第2点P2すなわち第2回転速度差Vs2とのうち大きい方の回転速度差Vsになる第2点P2を選択して、第2点P2が切替音大領域Sng1内となる後輪16Rを中央車軸98に連結する右制御カップリング34Rを選択する。
カップリング制御部162は、車輪選択部162cで右制御カップリング34Rおよび左制御カップリング34Lのいずれかの制御カップリングが選択されると、その選択された制御カップリングの電磁コイルにカップリング駆動電流を供給する。例えば、カップリング制御部162は、車輪選択部162cで右制御カップリング34Rが選択されると、右制御カップリング34Rの電磁コイルに予め設定された所定値Icpr1(A)の右カップリング駆動電流Icpr(A)を供給する。また、カップリング制御部162は、車輪選択部162cで左制御カップリング34Lが選択されると、左制御カップリング34Lの電磁コイルに予め設定された所定値Icpl1(A)の左カップリング駆動電流Icpl(A)を供給する。なお、所定値Icpr1(A)は、右制御カップリング34Rが完全係合するようにすなわち後輪16Rと中央車軸98とが一体回転するように、予め設定された右カップリング駆動電流Icpr(A)である。また、所定値Icpl1(A)は、左制御カップリング34Lが完全係合するようにすなわち後輪16Lと中央車軸98とが一体回転するように、予め設定された左カップリング駆動電流Icpl(A)である。
カップリング制御部162は、車輪選択部162cで右制御カップリング34Rおよび左制御カップリング34Lのいずれもが選択されないと、右制御カップリング34Rの電磁コイルと左制御カップリング34Lの電磁コイルとのいずれにもカップリング駆動電流を供給せず、前記2輪駆動走行モードから前記4輪駆動走行モードへの切替、すなわち第1噛合式クラッチ24を前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に切り替える切替を禁止する。
第1噛合式クラッチ制御部164は、図6に示すように、第1クラッチ係合完了判定部164aを備えている。第1噛合式クラッチ制御部164は、走行モード切替判定部160で前記2輪駆動走行モードから前記4輪駆動走行モードに切り替えられたと判定され、且つ、車輪選択部162cで選択された右制御カップリング34Rまたは左制御カップリング34Lの一方の電磁コイルにカップリング駆動電流が供給されると、第1アクチュエータ56の第1電磁コイル64に第1駆動電流I1(A)を供給する。これによって、第1可動スリーブ50が、第1スプリング58の付勢力に抗して第2ピストン72の突起72aがホルダー74の掛止歯74aに掛け止められている前記第1非噛合位置を超えて軸受48a側に移動させられる。
第2噛合式クラッチ制御部166は、図6に示すように、同期完了判定部166aと、第2クラッチ係合完了判定部166bと、を備えている。第2噛合式クラッチ制御部166は、走行モード切替判定部160で前記2輪駆動走行モードから前記4輪駆動走行モードに切り替えられたと判定され、且つ、車輪選択部162cで選択された右制御カップリング34Rまたは左制御カップリング34Lの一方の電磁コイルにカップリング駆動電流が供給されると、第2アクチュエータ110の第2電磁コイル120に第2駆動電流I2(A)を供給する。これによって、第2可動スリーブ104が、第2スプリング112の付勢力に抗して第2ピストン126の突起126aがホルダー128の掛止歯128aに掛け止められている前記第2非噛合位置を超えて軸受94a側に移動させられると、同期機構116によって第2リングギヤ92の回転速度と第2可動スリーブ104の回転速度すなわち中央車軸98の回転速度とが回転同期させられる。
同期完了判定部166aは、第2噛合式クラッチ制御部166で第2駆動電流I2(A)が供給されると、第2リングギヤ92の回転速度と第2可動スリーブ104の回転速度とが同期したか否かを判定する。例えば、同期完了判定部166aは、第1回転速度センサ150により検出されるプロペラシャフト28の回転速度Vps(rpm)と、プロペラシャフト28に一体的に設けられたドライブピニオン90と第2リングギヤ92とのギヤ比と、から第2リングギヤ92の回転速度を算出すると共に、第2回転速度センサ152により検出されるカップリングカバー34La、34Raの回転速度Vcp(rpm)すなわち中央車軸98の回転速度から第2可動スリーブ104の回転速度を算出して、算出された第2リングギヤ92の回転速度と第2可動スリーブ104の回転速度との差回転が所定の同期判定範囲内になると、第2リングギヤ92の回転速度と第2可動スリーブ104の回転速度とが同期したと判定する。
第1噛合式クラッチ制御部164は、同期完了判定部166aで第2リングギヤ92の回転速度と第2可動スリーブ104の回転速度とが同期したと判定されると、第1アクチュエータ56の第1電磁コイル64に供給している第1駆動電流I1(A)の大きさを小さくして第1電磁コイル64に供給されていた第1駆動電流I1の供給を停止する。これによって、第1可動スリーブ50が第1スプリング58の付勢力によって前記第1噛合位置に移動する。
第1クラッチ係合完了判定部164aは、第1噛合式クラッチ制御部164で第1アクチュエータ56の第1電磁コイル64に供給している第1駆動電流I1の大きさが小さくなると、第1噛合式クラッチ24が係合完了したか否か、すなわち第1噛合式クラッチ24が前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に切り替えられたか否かを判定する。例えば、第1クラッチ係合完了判定部164aは、第1ポジションセンサ154によって第1可動スリーブ50が前記第1噛合位置にあると検出されると、第1噛合式クラッチ24が前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に切り替えられたと判定する。
第2噛合式クラッチ制御部166は、第1クラッチ係合完了判定部164aで第1噛合式クラッチ24が前記第1非噛合位置から前記第1噛合位置に切り替えられたと判定されると、第2アクチュエータ110の第2電磁コイル120に供給している第2駆動電流I2(A)の大きさを小さくして第2電磁コイル120に供給されていた第2駆動電流I2の供給を停止する。これによって、第2可動スリーブ104が第2スプリング112の付勢力によって前記第2噛合位置に移動する。
第2クラッチ係合完了判定部166bは、第2噛合式クラッチ制御部166で第2アクチュエータ110の第2電磁コイル120に供給している第2駆動電流I2の大きさが小さくなると、第2噛合式クラッチ32が係合完了したか否か、すなわち第2噛合式クラッチ32において第2リングギヤ92の第2噛合歯92bと第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aとが噛み合わない第2非噛合状態から第2リングギヤ92の第2噛合歯92bと第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aとが噛み合う第非噛合状態に切り替えられたか否かを判定する。例えば、第2クラッチ係合完了判定部166bは、第2ポジションセンサ156によって第2可動スリーブ104が前記第2噛合位置にあると検出されると、第2噛合式クラッチ32が前記第2非噛合状態から前記第2噛合状態に切り替えられたと判定する。
カップリング制御部162は、第2クラッチ係合完了判定部166bで第2噛合式クラッチ32が前記第2非噛合状態から前記第2噛合状態に切り替えられたと判定されると、車輪選択部162cで選択された右制御カップリング34Rと左制御カップリング34Lのいずれかの制御カップリングに供給されていたカップリング駆動電流の供給を停止して、その後、車両走行状態に応じて、右制御カップリング34Rの電磁コイルに供給する右カップリング駆動電流Icpr(A)と、左制御カップリング34Lの電磁コイルに供給する左カップリング駆動電流Icpl(A)と、を制御する。
図10は、電子制御装置100において、2輪駆動走行中においてエンジン12から前輪14L、14Rへ駆動力を伝達する2輪駆動状態から、エンジン12から後輪16L、16Rへも駆動力を伝達する4輪駆動状態に、切り替えられるまでの作動の一例を説明するフローチャートである。
先ず、走行モード切替判定部160の機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、前記2輪駆動状態が実行される2輪駆動走行モードから、前記4輪駆動状態が実行される4輪駆動走行モードに切り替えられたか否かが判定される。S1の判定が否定されると、再度S1が実行されるが、S1の判定が肯定されると、回転速度差演算部162aの機能に対するS2が実行される。S2では、左輪である後輪16Lを中央車軸98に連結させた場合における第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aの回転速度V1klと第1リングギヤ42の第1噛合歯42cの回転速度V1rlとの差すなわち第1回転速度差Vs1と、右輪である後輪16Rを中央車軸98に連結させた場合における第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aの回転速度V1krと第1リングギヤ42の第1噛合歯42cの回転速度V1rrとの差すなわち第2回転速度差Vs2(rpm)と、が演算される。
次に、4WD切替判定部162bの機能に対応するS3において、S2で演算された第1回転速度差Vs1および第2回転速度差Vs2と車速センサ148から検出された車速Vとに基づいて、前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態に円滑に切り替えられるか否か、すなわち第1噛合式クラッチ24を前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に円滑に切り替えられるか否かが判定される。S3の判定が肯定されると、車輪選択部162cの機能に対応するS4が実行されるが、S3の判定が否定されると、車輪選択部162cの機能に対応するS5が実行される。S4では、左輪すなわち後輪16Lと右輪すなわち後輪16Rとのうち回転速度差Vsが切替可能領域Sok内になる車輪が選択され、その選択された車輪を中央車軸98に連結する制御カップリングが選択される。S5では、緊急に前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態に切り替える必要すなわち第1噛合式クラッチ24を前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に切り替える必要があるか否かが判定される。S5の判定が否定される場合には、本ルーチンが終了させられるが、S5の判定が肯定される場合には、車輪選択部162cの機能に対応するS6が実行される。
S6では、左輪すなわち後輪16Lと右輪すなわち後輪16Rとのうち回転速度差Vsが切替音大領域Sng1内になる車輪が選択され、その選択された車輪を中央車軸98に連結する制御カップリングが選択される。次に、カップリング制御部162、第1噛合式クラッチ制御部164、および第2噛合式クラッチ制御部166等の機能に対応するS7が実行される。S7では、S4またはS6で選択された後輪が制御カップリングによって中央車軸98に連結されて、前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態へ切り替える切替制御シーケンスが実行される。
図11は、図10のフローチャートに示すS7が実行された場合、すなわち前記切替制御シーケンスが実行された場合のタイムチャートである。なお、図11のタイムチャートでは、S4で左輪である後輪16Lが選択され、その選択された後輪16Lを中央車軸98に連結する左制御カップリング34Lが選択されている。図11に示すように、S4で左制御カップリング34Lが選択(図11の第1時点t1)されると、その選択された左制御カップリング34Lの電磁コイルに所定値Icpl1(A)の左カップリング駆動電流Icplが供給されると共に、第1駆動電流I1と第2駆動電流I2とが第1アクチュエータ56の第1電磁コイル64と第2アクチュエータ110の第2電磁コイル120とに供給される。なお、第2駆動電流I2が第2電磁コイル120に供給されると、第2噛合式クラッチ32の同期機構116が作動して第2噛合式クラッチ32において第2リングギヤ92の回転速度と第2可動スリーブ104の回転速度とが同期させられる。
次に、図11に示すように、第2リングギヤ92の回転速度と第2可動スリーブ104の回転速度とが同期(図11の第2時点t2)させられると、第1電磁コイル64に供給されていた第1駆動電流I1(A)の大きさを小さくして第1駆動電流I1の供給を停止する。なお、第1駆動電流I1(A)の大きさが小さくなると第1スプリング58の付勢力によって第1可動スリーブ50が前記第1噛合位置へ移動する。そして、次に、第1噛合式クラッチ24が前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に切替えられると(図11の第3時点t3)、第2電磁コイル120に供給されていた第2駆動電流I2(A)の大きさを小さくして第2駆動電流I2の供給を停止する。なお、第2駆動電流I2(A)の大きさが小さくなると第2スプリング112の付勢力によって第2可動スリーブ104が前記第2噛合位置へ移動する。そして、次に、第2噛合式クラッチ32が前記第2非噛合状態から前記第2噛合状態に切替えられると(図11の第4時点t4)、左制御カップリング34Lの電磁コイルに供給されていた左カップリング駆動電流Icpl(A)の供給を停止する。これによって、第1噛合式クラッチ24によってエンジン12とプロペラシャフト28との間の動力伝達経路が接続されると共に、第2噛合式クラッチ32によってプロペラシャフト28と中央車軸98との間の動力伝達経路が接続されるので、前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態へ切り替えられる。
上述のように、本実施例の4輪駆動車両10によれば、電子制御装置100は、第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aと第1リングギヤ42の第1噛合歯42cとが噛み合わない前記第1非噛合状態から第1噛合歯50aと第1噛合歯42cとが噛み合う前記第1噛合状態に切り替える切替要求があったときにおいて、左制御カップリング34Lによって後輪16Lを中央車軸98に連結させた場合における第1噛合歯50aと第2噛合歯42cとの第1回転速度差Vs1と、右制御カップリング34Rによって後輪16Rを中央車軸98に連結させた場合における第1噛合歯50aと第1噛合歯42cとの第2回転速度差Vs2と、を演算し、電子制御装置100は、演算された第1回転速度差Vs1と第2回転速度差Vs2との少なくとも一方の回転速度差Vsが予め設定された切替可能領域Sok内にある場合には、回転速度差Vsが切替可能領域Sok内となる後輪16Lまたは後輪16Rを左制御カップリング34Lまたは右制御カップリング34Rによって中央車軸98に連結して、第1噛合式クラッチ24を前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に切り替え、演算された第1回転速度差Vs1と第2回転速度差Vs2とのいずれもが切替可能領域Sok内にない場合には、第1噛合式クラッチ24を前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に切り替える切替を禁止する。このため、第1噛合式クラッチ24を前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に切り替える時には、第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aと第1リングギヤ42の第1噛合歯42cとの回転速度差Vsが切替可能領域Sok内となる後輪16Lまたは後輪16Rを左制御カップリング34Lまたは右制御カップリング34Rによって中央車軸98に連結することができるので、第1噛合歯50aと第1噛合歯42cとを噛み合わせる時に第1噛合歯50aと第1噛合歯42cとの回転速度差Vsが、切替可能領域Sok内になり第1噛合式クラッチ24を前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に円滑に切り替えることが可能な回転速度差Vsとなる。これにより、走行時に車輪間に速度差がある時例えば車両旋回時または前輪14L、14Rと後輪16L、16Rとで直径が異なるタイヤを装着している時等であっても第1噛合式クラッチ24を前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に円滑に切り替えることができる。
また、本実施例の4輪駆動車両10によれば、電子制御装置100は、第1回転速度差Vs1と第2回転速度差Vs2とのいずれもが切替可能領域Sok内にある場合は、予め定められた理想回転速度差Vstと第1回転速度差Vs1との差S1、および理想回転速度差Vstと第2回転速度差Vs2との差S2のうち小さいほうの差になるように第1回転速度差Vs1または第2回転速度差Vs2を選択して、その選択した回転速度差Vsになる後輪16Lまたは後輪16Rを左制御カップリング34Lまたは右制御カップリング34Rによって中央車軸98に連結する。このため、第1可動スリーブ50の第1噛合歯50aと第1リングギヤ42の第1噛合歯42cとの回転速度差Vsが理想回転速度差Vstに比較的近い後輪16Lまたは後輪16Rを左制御カップリング34Lまたは右制御カップリング34Rによって中央車軸98に連結することができるので、特に車両の旋回走行時に第1噛合式クラッチ24を前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態により円滑に切り替えることができる。
また、本実施例の4輪駆動車両10によれば、電子制御装置100は、第1回転速度差Vs1と第2回転速度差Vs2とのいずれもが切替可能領域Sok内にない場合であっても、第1噛合式クラッチ24を緊急に前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態へ切り替える必要があると判定される場合には、第1回転速度差Vs1と第2回転速度差Vs2とのうち大きい方の回転速度差Vsになる後輪16Lまたは後輪16Rを左制御カップリング34Lまたは右制御カップリング34Rによって中央車軸98に連結する。このため、第1噛合式クラッチ24を緊急に前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態へ切り替える必要がある場合に、第1噛合式クラッチ24を前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に切り替えることができる。
また、本実施例の4輪駆動車両10によれば、電子制御装置100は、左制御カップリング34Lまたは右制御カップリング34Rによって後輪16Lまたは後輪16Rが中央車軸98に連結されると、第1噛合式クラッチ24を制御してエンジン12とプロペラシャフト28との間の動力伝達経路を動力伝達可能に接続し、第2噛合式クラッチ32を制御してプロペラシャフト28と中央車軸98との間の動力伝達経路を動力伝達可能に接続する。このため、走行時に車輪間に速度差がある時例えば車両旋回時または前輪14L、14Rと後輪16L、16Rとで直径が異なるタイヤを装着している時等であっても4輪駆動車両10を前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態に円滑に切り替えることができる。
また、本実施例の4輪駆動車両10によれば、第2噛合式クラッチ32には、プロペラシャフト28に動力伝達可能に連結された第2リングギヤ92の回転速度と中央車軸98に動力伝達可能に連結された第2可動スリーブ104の回転速度とを同期させる同期機構116が備えられており、電子制御装置100は、左制御カップリング34Lまたは右制御カップリング34Rによって後輪16Lまたは後輪16Rが中央車軸98に連結され、同期機構116によって第2リングギヤ92の回転速度と第2可動スリーブ104の回転速度とが同期させられると、第1噛合式クラッチ24を前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に切り替える。このため、走行時に車輪間に速度差がある時例えば車両旋回時または前輪14L、14Rと後輪16L、16Rとで直径が異なるタイヤを装着している時等であっても4輪駆動車両10を前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態により円滑に切り替えることができる。
続いて、本発明の他の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施例の4輪駆動車両170には、第1噛合式クラッチ(第2クラッチ)24に同期機構(第2同期機構)172が備えられている点と、第2噛合式クラッチ(噛合式クラッチ)32から同期機構116が外されている点と、で相違しており、その他の点は、前述の4輪駆動車両10と略同じである。また、本実施例の4輪駆動車両170の電子制御装置(制御装置)200は、カップリング制御部162の一部の機能が変更すなわち回転速度差演算部162d、4WD切替判定部162d、および車輪選択部162fの機能が変更されている点と、第1噛合式クラッチ制御部164の一部の機能が変更すなわち同期完了判定部164bが第1噛合式クラッチ制御部164に追加されている点と、第2噛合式クラッチ制御部166の一部の機能が変更すなわち同期完了判定部166aが第2噛合式クラッチ制御部166から削除されている点と、で相違しており、その他の点は、前述の4輪駆動車両10の電子制御装置100と略同じである。
図13に示すように、同期機構172は、第1可動スリーブ(第3回転部材)50に対して相対回転不能且つ第1可動スリーブ50に対して第1回転軸線C1方向の移動可能に第1可動スリーブ50に形成された外周スプライン歯50fに噛み合わされた第1摩擦係合部材174と、第1リングギヤ(第4回転部材)42に対して相対回転不能且つ第1リングギヤ42に対して第1回転軸線C1方向の移動可能に第1リングギヤ42に形成された内周スプライン歯42gに噛み合わされた第2摩擦係合部材176と、を備えている。このように構成された同期機構172では、第1可動スリーブ50が前記第1非噛合位置あり入力軸38が回転している場合において、第1アクチュエータ56の第1電磁コイル64に第1駆動電流I1(A)が供給されて、第1可動スリーブ50が第1スプリング58の付勢力に抗して第2ピストン72の突起72aがホルダー74の掛止歯74aに掛け止められている前記第1非噛合位置を超えて軸受48a側に移動させられると、第1可動スリーブ50に動力伝達可能に連結された第1摩擦係合部材174と第1リングギヤ42に動力伝達可能に連結された第2摩擦係合部材176とが摩擦係合して、第1可動スリーブ50の回転速度と第1リングギヤ42の回転速度とが同期させられる。また、図14に示すように、第2噛合式クラッチ32には、前述した同期機構116の第1摩擦係合部材138と第2摩擦係合部材140とが取り外されており、第2噛合式クラッチ32には、第2可動スリーブ104の第2噛合歯(副駆動輪側噛合歯)104aの回転速度と第2リングギヤ92の第2噛合歯(駆動力源側噛合歯)92bの回転速度とを同期させる前述した同期機構116の機能を有していない。
図15は、第1噛合式クラッチ24および第2噛合式クラッチ32がそれぞれ解放された2輪駆動状態から、第1噛合式クラッチ24および第2噛合式クラッチ32をそれぞれ係合させて4輪駆動状態へ切り替える場合において、第1噛合式クラッチ24の同期機構172を作動させ第1可動スリーブ50の回転速度と第1リングギヤ42の回転速度とを略同期させて、第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aと第2リングギヤ92の第2噛合歯92bとを噛み合わせる状態を示す図である。なお、図15では、2輪駆動状態から4輪駆動状態に切り替えられると、左制御カップリング34Lまたは右制御カップリング34Rによって中央車軸98が左右の後輪16L、16Rのいずれか一方に連結させられる。また、図15は、4輪駆動車両170の前進走行時の状態を示す図である。なお、第2リングギヤ92の第2噛合歯92bは、第1噛合式クラッチ24に設けられた同期機構172が作動した状態または第1噛合式クラッチ24が係合した状態において例えばプロペラシャフト28等を介してエンジン12に動力伝達可能に連結されており、第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aは、左制御カップリング34Lまたは右制御カップリング34Rが係合した状態において例えば中央車軸98を介して後輪16Lまたは後輪16Rに動力伝達可能に連結されている。
第2可動スリーブ104に形成された第2噛合歯104aは、図15に示すように、円筒状の第2可動スリーブ104の外周部に複数形成されている。また、第2可動スリーブ104に形成された複数の第2噛合歯104aは、それぞれ、第2回転軸線C2方向に長手状に形成され、且つ円筒状の第2可動スリーブ104の周方向にそれぞれの第2噛合歯104aの間の間隔D3が一定になるように形成されている。なお、間隔D3は、第2可動スリーブ104に形成された複数の第2噛合歯104aが第2リングギヤ92に形成された複数の第2噛合歯92bの間に入り込めるように設定されている。
図15に示すように、2輪駆動状態から4輪駆動状態への切り替え時において、第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aの回転速度は、第2リングギヤ92の第2噛合歯92bの回転速度より小さく、第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aと第2リングギヤ92の第2噛合歯92bとは、第2回転軸線C2まわり矢印A3、A4方向に回転すなわちそれぞれ同じ方向に回転している。このため、第2移動機構106によって第2可動スリーブ104が前記第2非噛合位置から前記第2噛合位置へ移動すなわち第2移動機構106によって第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aが第2リングギヤ92の第2噛合歯92bに接近する方向へ移動すると、第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aは、第2リングギヤ92の第2噛合歯92bに対して矢印F2方向に相対移動する。なお、本実施例では、前述の実施例1と同様に、プロペラシャフト28が回転している時において、第1リングギヤ42の回転速度が第2リングギヤ92の回転速度より遅くなるように、すなわち、プロペラシャフト28に設けられたドリブンピニオン40と第1リングギヤ42とのギヤ比と、プロペラシャフト28に設けられたドライブピニオン90と第2リングギヤ92とのギヤ比と、に差すなわち前後リングギヤ比差Gが生じるように、第1リングギヤ42および第2リングギヤ92等が設計されている。このため、2輪駆動状態から4輪駆動状態への切り替え時において、第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aの回転速度が第2リングギヤ92の第2噛合歯92bの回転速度より遅く成り易くなる。
また、第2可動スリーブ104に形成された複数の第2噛合歯104aには、図15に示すように、それぞれ、その第2噛合歯104aの第2噛合歯92b側の端面であって第2噛合歯92bに当接する当接面に、第2噛合歯104aの歯幅全体にわたって一方向に傾斜した面取部分すなわち片チャンファCF3が設けられている。また、第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aに片チャンファCF3が設けられることによって、その第2噛合歯104aの第2噛合歯92b側の端面であって第2噛合歯92bと当接する当接面には、4輪駆動車両170の前進走行時に第2噛合歯104aが回転する矢印A3方向に対し、第2噛合歯104aの第2回転軸線C2方向の長さが減少するように傾く第2傾斜面104cが形成されている。なお、第2可動スリーブ104に形成された複数の第2噛合歯104aには、その第2噛合歯104aの矢印A3方向の両側に第2回転軸線C2に対して略平行な平行面104d、104eがそれぞれ形成されている。
第2リングギヤ92の第2噛合歯92bは、図15に示すように、第2リングギヤ92の内周部に複数形成されている。また、第2リングギヤ92に形成された複数の第2噛合歯92bは、それぞれ、第2回転軸線C2方向に長手状に形成され、且つその第2リングギヤ92の周方向にそれぞれ第2噛合歯92bの間の間隔D4が一定になるように形成されている。なお、間隔D4は、第2可動スリーブ104に形成された複数の第2噛合歯104aが第2リングギヤ92に形成された複数の第2噛合歯92bの間に入り込めるように設定されている。
第2リングギヤ92に形成された複数の第2噛合歯92bには、図15に示すように、それぞれ、その第2噛合歯92bの第2噛合歯104a側の端面であって第2噛合歯104aに当接する当接面に、第2噛合歯92bの歯幅全体にわたって一方向に傾斜した面取部分すなわち片チャンファCF4が設けられている。また、第2リングギヤ92の第2噛合歯92bに片チャンファCF4が設けられることによって、その第2噛合歯92bの第2噛合歯104a側の端面であって第2噛合歯104aに当接する当接面には、矢印A3、A4方向に対し、第2噛合歯92bの第2回転軸線C2方向の長さが増加するように傾く第2傾斜面92dが形成されている。なお、第2リングギヤ92に形成された複数の第2噛合歯92bには、その第2噛合歯92bの矢印A3方向の両側に第2回転軸線C2に対して略平行な平行面92e、92fがそれぞれ形成されている。
すなわち、第2リングギヤ92に形成された第2噛合歯92bおよび第2可動スリーブ104に形成された第2噛合歯104aは、図15に示すように、第2移動機構106によって第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aが第2リングギヤ92の第2噛合歯92bに接近する方向へ移動して第2噛合歯104aの第2噛合歯92b側の端部が第2噛合歯92bの第2噛合歯104a側の端部に当接した場合において、第2リングギヤ92の第2噛合歯92bの回転速度が第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aの回転速度よりも大きいときに、第2噛合歯92bと第2噛合歯104aとが噛み合うように片チャンファCF3、CF4が形成されている。
カップリング制御部162には、図16に示すように、回転速度差演算部162dと、4WD切替判定部162eと、車輪選択部162fと、が備えられている。回転速度差演算部162dは、走行モード切替判定部160で前記2輪駆動走行モードから前記4輪駆動走行モードに切り替えられたと判定、すなわち第2噛合式クラッチ32において前記第2非噛合状態から前記第2噛合状態に切り替える切替要求があったと判定されると、左制御カップリング34Lによって後輪16Lを中央車軸98に連結させた場合における第2リングギヤ92の第2噛合歯92bの回転速度V2rl(rpm)と第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aの回転速度V2kl(rpm)との差(V2rl−V2kl)すなわち第3回転速度差(第1回転速度差)Vs3(rpm)と、右制御カップリング34Rによって後輪16Rを中央車軸98に連結させた場合における第2リングギヤ92の第2噛合歯92bの回転速度V2rr(rpm)と第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aの回転速度V2kr(rpm)との差(V2rr−V2kr)すなわち第4回転速度差(第2回転速度差)Vs4(rpm)と、を演算する。
なお、左制御カップリング34Lによって後輪16Lを中央車軸98に連結された場合における第2リングギヤ92の第2噛合歯92bの回転速度V2rlと、右制御カップリング34Rによって後輪16Rを中央車軸98に連結された場合における第2リングギヤ92の第2噛合歯92bの回転速度V2rrとは、前輪14L、14Rの平均回転速度Vwfav(rpm)と予め設定された前後リングギヤ比差Gとから算出される。なお、回転速度V2rlおよび回転速度V2rrは、第1噛合式クラッチ24が係合して第2リングギヤ92の第2噛合歯92bがエンジン12に動力伝達可能に連結された場合における第2リングギヤ92の第2噛合歯92bの回転速度である。また、左制御カップリング34Lによって後輪16Lを中央車軸98に連結された場合における第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aの回転速度V2klは、走行モード切替判定部160で前記2輪駆動走行モードから前記4輪駆動走行モードに切り替えられたと判定された時の第2車輪速センサ144から検出される後輪16Lの回転速度Vwrl(rpm)から求められる。また、右制御カップリング34Rによって後輪16Rを中央車軸98に連結された場合における第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aの回転速度V2krは、走行モード切替判定部160で前記2輪駆動走行モードから前記4輪駆動走行モードに切り替えられたと判定された時の第2車輪速センサ144から検出される後輪16Rの回転速度Vwrr(rpm)から求められる。
4WD切替判定部162eは、回転速度差演算部162dで第3回転速度差Vs3と第4回転速度差Vs4とが演算されると、その演算された第3回転速度差Vs3および第4回転速度差Vs4と走行モード切替判定部160で前記2輪駆動走行モードから前記4輪駆動走行モードに切り替えられたと判定された時の車速センサ148から検出された車速V(km/h)とに基づいて、2輪駆動状態から4輪駆動状態に円滑に切り替えられるか否か、すなわち第2噛合式クラッチ32を前記第2非噛合状態から前記第2噛合状態に円滑に切り替えられるか否かを判定する。例えば、4WD切替判定部162eは、回転速度差演算部162dで演算された第3回転速度差Vs3(rpm)と車速センサ148から検出された車速V(km/h)とにより求められる第3点P3と、回転速度差演算部162dで演算された第4回転速度差Vs4(rpm)と車速センサ148から検出された車速V(km/h)とにより求められる第4点P4と、の少なくとも一方が、図17に示す予め設定された切替可能領域(所定範囲)Sok内にある場合には、2輪駆動状態から4輪駆動状態に円滑に切り替えられる、すなわち第2噛合式クラッチ32を前記第2非噛合状態から前記第2噛合状態に円滑に切り替えられると判定する。なお、図17に示すマップは、前述した実施例1の図7に示したマップと同じである。
車輪選択部162fは、4WD切替判定部162eで前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態に円滑に切り替えられるとすなわち第2噛合式クラッチ32を前記第2非噛合状態から前記第2噛合状態に円滑に切り替えられると判定されると、左右一対の後輪16Lおよび後輪16Rの一方の後輪を中央車軸98に連結する左右一対の左制御カップリング34Lおよび右制御カップリング34Rの一方の制御カップリングを選択する。例えば、車輪選択部162fは、図17に示すように、4WD切替判定部162eで求められた第3点P3と第4点P4とのいずれもが切替可能領域Sokにある場合には、車速センサ148から検出される車速V(km/h)例えばV4(km/h)と切替狙い差回転導出線Ltとから理想回転速度差Vst(rpm)を導出して、その理想回転速度差Vst(rpm)と第3点P3すなわち第3回転速度差Vs3(rpm)との差S3(rpm)、および理想回転速度差Vst(rpm)と第4点P4すなわち第4回転速度差Vs4(rpm)との差S4のうち小さいほうの差すなわち差S4になるように第4点P4を選択して、第4点P4が切替可能領域Sok内となる後輪16Rを中央車軸98に連結する右制御カップリング34Rを選択する。
また、車輪選択部162fは、図17に示すように、車速センサ148から検出された車速V(km/h)が例えばV1(km/h)であり、4WD切替判定部162eで求められた第3点P3が切替不可領域Sng2にあり、4WD切替判定部162eで求められた第4点P4が切替音大領域Sng1にある場合、すなわち第3点P3と第4点P4とのいずれもが切替可能領域Sokになく4WD切替判定部162eで前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態に円滑に切り替えられないと判定されても、例えば前輪14L、14Rおよび後輪16L、16Rの少なくとも1つがスリップ等して、緊急に前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態に切り替える必要すなわち緊急に第2噛合式クラッチ32を前記第2非噛合状態から前記第2噛合状態に切り替える必要があると判定されると、第3点P3すなわち第3回転速度差Vs3と第4点P4すなわち第4回転速度差Vs4とのうち大きい方の回転速度差Vsになる第4点P4を選択して、第4点P4が切替音大領域Sng1内となる後輪16Rを中央車軸98に連結する右制御カップリング34Rを選択する。
第1噛合式クラッチ制御部164は、図16に示すように、同期完了判定部164bと、第1クラッチ係合完了判定部164aと、を備えている。第1噛合式クラッチ制御部164は、走行モード切替判定部160で前記2輪駆動走行モードから前記4輪駆動走行モードに切り替えられたと判定され、且つ、車輪選択部162fで選択された右制御カップリング34Rまたは左制御カップリング34Lの一方の電磁コイルにカップリング駆動電流が供給されると、第1アクチュエータ56の第1電磁コイル64に第1駆動電流I1(A)を供給する。これによって、第1可動スリーブ50が、第1スプリング58の付勢力に抗して第2ピストン72の突起72aがホルダー74の掛止歯74aに掛け止められている前記第1非噛合位置を超えて軸受48a側に移動させられると、同期機構172によって第1リングギヤ42の回転速度と第1可動スリーブ50の回転速度とが回転同期させられる。
同期完了判定部164bは、第1噛合式クラッチ制御部164で第1駆動電流I1(A)が供給されると、第1リングギヤ42の回転速度と第1可動スリーブ50の回転速度とが同期したか否かを判定する。例えば、同期完了判定部164bは、第1回転速度センサ150により検出されるプロペラシャフト28の回転速度Vps(rpm)と、プロペラシャフト28に一体的に設けられたドリブンピニオン40と第1リングギヤ42とのギヤ比と、から第1リングギヤ42の回転速度を算出すると共に、第1車輪速センサ142から検出される前輪14L、14Rの平均回転速度Vwfav(rpm)から第1可動スリーブ50の回転速度を算出して、算出された第1リングギヤ42の回転速度と第1可動スリーブ50の回転速度との差回転が所定の同期判定範囲内になると、第1リングギヤ42の回転速度と第1可動スリーブ50の回転速度とが同期したと判定する。
第2噛合式クラッチ制御部166は、走行モード切替判定部160で前記2輪駆動走行モードから前記4輪駆動走行モードに切り替えられたと判定され、且つ、車輪選択部162fで選択された右制御カップリング34Rまたは左制御カップリング34Lの一方の電磁コイルにカップリング駆動電流が供給されると、第2アクチュエータ110の第2電磁コイル120に第2駆動電流I2(A)を供給する。これによって、第2可動スリーブ104が、第2スプリング112の付勢力に抗して第2ピストン126の突起126aがホルダー128の掛止歯128aに掛け止められている前記第2非噛合位置を超えて軸受94a側に移動させられる。
第2噛合式クラッチ制御部166は、同期完了判定部164bで第1リングギヤ42の回転速度と第1可動スリーブ50の回転速度とが同期したと判定されると、第2アクチュエータ110の第2電磁コイル120に供給している第2駆動電流I2(A)の大きさを小さくして第2電磁コイル120に供給されていた第2駆動電流I2の供給を停止する。これによって、第2可動スリーブ104が第2スプリング112の付勢力によって前記第2噛合位置に移動する。
第2クラッチ係合完了判定部166bは、第2噛合式クラッチ制御部166で第2アクチュエータ110の第2電磁コイル120に供給している第2駆動電流I2の大きさが小さくなると、第2噛合式クラッチ32が係合完了したか否か、すなわち第2噛合式クラッチ32が前記第2非噛合状態から前記第2噛合状態に切り替えられたか否かを判定する。例えば、第2クラッチ係合完了判定部166bは、第2ポジションセンサ156によって第2可動スリーブ104が前記第2噛合位置にあると検出されると、第2噛合式クラッチ32が前記第2非噛合状態から前記第2噛合状態に切り替えられたと判定する。
第1噛合式クラッチ制御部164は、第2クラッチ係合完了判定部166bで第2噛合式クラッチ32が前記第2非噛合位置から前記第2噛合位置に切り替えられたと判定されると、第1アクチュエータ56の第1電磁コイル64に供給している第1駆動電流I1(A)の大きさを小さくして第1電磁コイル64に供給していた第1駆動電流I1の供給を停止する。これによって、第1可動スリーブ50が第1スプリング58の付勢力によって前記第1噛合位置に移動する。
第1クラッチ係合完了判定部164aは、第1噛合式クラッチ制御部164で第1アクチュエータ56の第1電磁コイル64に供給している第1駆動電流I1の大きさが小さくなると、第1噛合式クラッチ24が係合完了したか否か、すなわち第1噛合式クラッチ24が前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に切り替えられたか否かを判定する。例えば、第1クラッチ係合完了判定部164aは、第1ポジションセンサ154によって第1可動スリーブ50が前記第1噛合位置にあると検出されると、第1噛合式クラッチ24が前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に切り替えられたと判定する。
カップリング制御部162は、第1クラッチ係合完了判定部164aで第1噛合式クラッチ24が前記第1非噛合状態から前記第1噛合状態に切り替えられたと判定されると、車輪選択部162fで選択された右制御カップリング34Rと左制御カップリング34Lのいずれかの制御カップリングに供給されていたカップリング駆動電流の供給を停止して、その後、車両走行状態に応じて、右制御カップリング34Rの電磁コイルに供給する右カップリング駆動電流Icpr(A)と、左制御カップリング34Lの電磁コイルに供給する左カップリング駆動電流Icpl(A)と、を制御する。
図18は、電子制御装置200において、2輪駆動走行中において前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態に切り替えられるまでの作動の一例を説明するフローチャートである。
先ず、走行モード切替判定部160の機能に対応するS11において、前記2輪駆動状態が実行される2輪駆動走行モードから、前記4輪駆動状態が実行される4輪駆動走行モードに切り替えられたか否かが判定される。S11の判定が否定されると、再度S11が実行されるが、S11の判定が肯定されると、回転速度差演算部162dの機能に対するS12が実行される。S12では、左輪である後輪16Lを中央車軸98に連結させた場合における第2リングギヤ92の第2噛合歯92bの回転速度V2rlと第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aの回転速度V2klとの差すなわち第3回転速度差Vs3と、右輪である後輪16Rを中央車軸98に連結させた場合における第2リングギヤ92の第2噛合歯92bの回転速度V2rrと第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aの回転速度V2krとの差すなわち第4回転速度差Vs4(rpm)と、が演算される。
次に、4WD切替判定部162eの機能に対応するS13において、S12で演算された第3回転速度差Vs3および第4回転速度差Vs4と車速センサ148から検出された車速Vとに基づいて、前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態に円滑に切り替えられるか否か、すなわち第2噛合式クラッチ32を前記第2非噛合状態から前記第2噛合状態に円滑に切り替えられるか否かが判定される。S13の判定が肯定されると、車輪選択部162fの機能に対応するS14が実行されるが、S13の判定が否定されると、車輪選択部162fの機能に対応するS15が実行される。S14では、左輪すなわち後輪16Lと右輪すなわち後輪16Rとのうち回転速度差Vsが切替可能領域Sok内になる車輪が選択され、その選択された車輪を中央車軸98に連結する制御カップリングが選択される。S15では、緊急に前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態に切り替える必要すなわち緊急に第2噛合式クラッチ32を前記第2非噛合状態から前記第2噛合状態に切り替える必要があるか否かが判定される。S15の判定が否定される場合には、本ルーチンが終了させられるが、S15の判定が肯定される場合には、車輪選択部162fの機能に対応するS16が実行される。
S16では、左輪すなわち後輪16Lと右輪すなわち後輪16Rとのうち回転速度差Vsが切替音大領域Sng1内になる車輪が選択され、その選択された車輪を中央車軸98に連結する制御カップリングが選択される。次に、カップリング制御部162、第1噛合式クラッチ制御部164、および第2噛合式クラッチ制御部166等の機能に対応するS17が実行される。S17では、S14またはS16で選択された後輪が制御カップリングによって中央車軸98に連結されて、前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態へ切り替える切替制御シーケンスが実行される。
上述のように、本実施例の4輪駆動車両170によれば、電子制御装置200は、第2リングギヤ92の第2噛合歯92bと第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aとが噛み合わない第2非噛合状態から第2噛合歯92bと第2噛合歯104aとが噛み合う第2噛合状態に切り替える切替要求があったときにおいて、左制御カップリング34Lによって後輪16Lを中央車軸98に連結させた場合における第2リングギヤ92の第2噛合歯92bと第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aとの第3回転速度差Vs3と、右制御カップリング34Rによって後輪16Rを中央車軸98に連結させた場合における第2噛合歯92bと第2噛合歯104aとの第4回転速度差Vs4と、を演算し、電子制御装置200は、演算された第3回転速度差Vs3と第4回転速度差Vs4との少なくとも一方の回転速度差Vsが予め設定された切替可能領域Sok内にある場合には、回転速度差Vsが切替可能領域Sok内となる後輪16Lまたは後輪16Rを左制御カップリング34Lまたは右制御カップリング34Rによって中央車軸98に連結して、第2噛合式クラッチ32を前記第2非噛合状態から前記第2噛合状態に切り替え、演算された第3回転速度差Vs3と第4回転速度差Vs4とのいずれもが切替可能領域Sok内にない場合には、第2噛合式クラッチ32を前記第2非噛合状態から前記第2噛合状態に切り替える切替を禁止する。このため、第2噛合式クラッチ32を前記第2非噛合状態から前記第2噛合状態に切り替える時には、第2リングギヤ92の第2噛合歯92bと第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aとの回転速度差Vsが切替可能領域Sok内となる後輪16Lまたは後輪16Rを左制御カップリング34Lまたは右制御カップリング34Rによって中央車軸98に連結することができるので、第2リングギヤ92の第2噛合歯92bと第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aとを噛み合わせる時に第2噛合歯92bと第2噛合歯104aとの回転速度差Vsが、切替可能領域Sok内になり第2噛合式クラッチ32を前記第2非噛合状態から前記第2噛合状態に円滑に切り替えることが可能な回転速度差Vsとなる。これにより、走行時に車輪間に速度差がある時例えば車両旋回時または前輪14L、14Rと後輪16L、16Rとで直径が異なるタイヤを装着している時等であっても第2噛合式クラッチ32を前記第2非噛合状態から前記第2噛合状態に円滑に切り替えることができる。
また、本実施例の4輪駆動車両170によれば、電子制御装置200は、第3回転速度差Vs3と第4回転速度差Vs4とのいずれもが切替可能領域Sok内にある場合は、予め定められた理想回転速度差Vstと第3回転速度差Vs3との差S3、および理想回転速度差Vstと第4回転速度差Vs4との差S4のうち小さいほうの差になるように第3回転速度差Vs3または第4回転速度差Vs4を選択して、その選択した回転速度差Vsになる後輪16Lまたは後輪16Rを左制御カップリング34Lまたは右制御カップリング34Rによって中央車軸98に連結する。このため、第2リングギヤ92の第2噛合歯92bと第2可動スリーブ104の第2噛合歯104aとの回転速度差Vsが理想回転速度差Vstに比較的近い後輪16Lまたは後輪16Rを左制御カップリング34Lまたは右制御カップリング34Rによって中央車軸98に連結することができるので、特に車両の旋回走行時に第2噛合式クラッチ32を前記第2非噛合状態から前記第2噛合状態により円滑に切り替えることができる。
また、本実施例の4輪駆動車両170によれば、電子制御装置200は、第3回転速度差Vs3と第4回転速度差Vs4とのいずれもが切替可能領域Sok内にない場合であっても、第2噛合式クラッチ32を緊急に前記第2非噛合状態から前記第2噛合状態へ切り替える必要があると判定される場合には、第3回転速度差Vs3と第4回転速度差Vs4とのうち大きい方の回転速度差Vsになる後輪16Lまたは後輪16Rを左制御カップリング34Lまたは右制御カップリング34Rによって中央車軸98に連結する。このため、第2噛合式クラッチ32を緊急に前記第2非噛合状態から前記第2噛合状態へ切り替える必要がある場合に、第2噛合式クラッチ32を前記第2非噛合状態から前記第2噛合状態に切り替えることができる。
また、本実施例の4輪駆動車両170によれば、電子制御装置200は、左制御カップリング34Lまたは右制御カップリング34Rによって後輪16Lまたは後輪16Rが中央車軸98に連結されると、第2噛合式クラッチ32を制御してプロペラシャフト28と中央車軸98との間の動力伝達経路を接続し、第1噛合式クラッチ24を制御してエンジン12とプロペラシャフト28との間の動力伝達経路を接続する。このため、走行時に車輪間に速度差がある時例えば車両旋回時または前輪14L、14Rと後輪16L、16Rとで直径が異なるタイヤを装着している時等であっても4輪駆動車両170を前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態に円滑に切り替えることができる。
また、本実施例の4輪駆動車両170によれば、第1噛合式クラッチ24には、エンジン12に動力伝達可能に連結された第1可動スリーブ50の回転速度とプロペラシャフト28に動力伝達可能に連結された第1リングギヤ42の回転速度とを同期させる同期機構172が備えられており、電子制御装置200は、左制御カップリング34Lまたは右制御カップリング34Rによって後輪16Lまたは後輪16Rが中央車軸98に連結され、同期機構172によって第1可動スリーブ50の回転速度と第1リングギヤ42の回転速度とが同期させられると、第2噛合式クラッチ32を前記第2非噛合状態から前記第2噛合状態に切り替える。このため、走行時に車輪間に速度差がある時例えば車両旋回時または前輪14L、14Rと後輪16L、16Rとで直径が異なるタイヤを装着している時等であっても4輪駆動車両170を前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態により円滑に切り替えることができる。