本発明は、車輌の駆動トルク制御装置に係り、更に詳細には車輪の駆動スリップを抑制する駆動トルク制御装置に係る。
一般に、自動車等の車輌に於けるスリップ率に基づく車輪のスリップの制御に於いては、スリップ率又はスリップ量の正確な把握が必要であり、そのためには正確な車体速の推定が必要であるが、車輌のあらゆる走行状況に於いて車体速を正確に推定することは非常に困難である。
この問題に対処する車輪のスリップ制御装置の一つとして、例えば本願出願人の出願にかかる下記の特許文献1に記載されている如く、前輪側目標車輪速度と前輪側実車輪速度との偏差を演算し、該偏差と前輪側実車輪速度とに基づいて前輪側目標制動トルクを演算する手段と、該前輪側目標制動トルクに基づいて後輪側目標制動トルクを設定し、前輪側目標制動トルク及び後輪側目標制動トルクに基づいて前輪及び後輪の制動圧を制御する制動制御装置が従来より知られている。かかる制動制御装置によれば、スリップ率を演算することなく車輪の制動スリップを抑制することができる。
特開平9−30392号公報
上述の如きスリップ率に基づかない制動スリップ制御を駆動スリップの抑制に適用することが考えられるが、上述の如きスリップ制御装置に於いては車種毎に適合が必要であり、あらゆる車輌に普遍的に適用することができず、また駆動スリップを抑制する制動力が過剰になると車輌の加速性能が悪化し、従って制動力の過不足なく車輪の駆動スリップを確実に且つ効果的に低減することが困難であるという問題がある。
本発明は、従来のスリップ制御装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、車輪が路面に付与する走行駆動トルクを推定し、車輪間の走行駆動トルクの差に基づく制動トルクにて駆動スリップ状態にある車輪の走行駆動トルクを制御することにより、車種毎の適合を要することなく、換言すれば制動トルクの過不足を生じることなく駆動スリップを確実に且つ効果的に抑制することである。
上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ち駆動源の駆動トルクを左右の車輪に付与する駆動トルク付与手段と、前記左右の車輪に相互に独立に制動トルクを付与する制動トルク付与手段とを有し、前記左右の車輪が路面に付与する走行駆動トルクを制御する車輌の駆動トルク制御装置に於いて、前記左右の車輪の走行駆動トルクを推定する手段と、前記左右の車輪の一方が駆動スリップしたときには当該車輪とは左右反対側の車輪の走行駆動トルクより当該車輪の走行駆動トルクを減算した値を目標値として当該車輪の制動トルクを制御する制御手段とを有することを特徴とする車輌の駆動トルク制御装置によって達成される。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記駆動トルク付与手段は前記駆動源より駆動トルク伝達手段を経て前記左右の車輪に均等に駆動トルクを付与し、前記駆動源の駆動トルクをTdとし、前記駆動トルク伝達手段の慣性モーメント及び回転加速度をそれぞれId、Vddとし、前記駆動トルク伝達手段のギヤ比をRgとし、車輪の慣性モーメント及び回転加速度をそれぞれIw、Vwdとし、車輪の制動トルクをTbとして、前記走行駆動トルクを推定する手段は
Twr=(Td−IdVdd)Rg/2−IwVwd−Tb
に従って走行駆動トルクTwrを推定するよう構成される(請求項2の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1又は2の構成に於いて、前記駆動トルク付与手段は前記駆動源より駆動トルク伝達手段を経て左右前輪及び左右後輪に均等に駆動トルクを付与し、前記制御手段は何れかの車輪が駆動スリップしたときには四つの車輪のうちの最大の走行駆動トルクより当該車輪の走行駆動トルクを減算した値を目標値として当該車輪の制動トルクを制御するよう構成される(請求項3の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項3の構成に於いて、前記制御手段は左右前輪及び左右後輪のうちの一輪が駆動スリップしたときには四つの車輪のうちの最大の走行駆動トルクより当該車輪の走行駆動トルクを減算した値を目標値として当該車輪の制動トルクを制御し、左右前輪の一方及び左右後輪の一方が駆動スリップしたときには左右前輪の他方の走行駆動トルクより前記左右前輪の一方の走行駆動トルクを減算した値を目標値として前記左右前輪の一方の制動トルクを制御すると共に、左右後輪の他方の走行駆動トルクより前記左右後輪の一方の走行駆動トルクを減算した値を目標値として前記左右後輪の一方の制動トルクを制御するよう構成される(請求項4の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項3又は4の構成に於いて、前記駆動源の駆動トルクをTdとし、前記駆動トルク伝達手段の慣性モーメント及び回転加速度をそれぞれId、Vddとし、前記駆動トルク伝達手段のギヤ比をRgとし、車輪の慣性モーメント及び回転加速度をそれぞれIw、Vwdとし、車輪の制動トルクをTbとして、前記走行駆動トルクを推定する手段は
Twr=(Td−IdVdd)Rg/4−IwVwd−Tb
に従って走行駆動トルクTwrを推定するよう構成される(請求項5の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1又は2の構成に於いて、前記駆動トルク付与手段は前後輪の駆動トルク配分を変化可能に前記駆動源より駆動トルク伝達手段を経て左右前輪及び左右後輪に駆動トルクを付与し、前記制御手段は左右前輪の一方が駆動スリップしたときには当該車輪とは左右反対側の車輪の走行駆動トルクより当該車輪の走行駆動トルクを減算した値を目標値として当該車輪の制動トルクを制御し、左右後輪の一方が駆動スリップしたときには当該車輪とは左右反対側の車輪の走行駆動トルクより当該車輪の走行駆動トルクを減算した値を目標値として当該車輪の制動トルクを制御するよう構成される(請求項6の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項6の構成に於いて、前記駆動トルク付与手段は左右の車輪に均等に駆動トルクを付与し、前記駆動源の駆動トルクをTdとし、前記駆動トルク伝達手段の慣性モーメント及び回転加速度をそれぞれId、Vddとし、前記駆動トルク伝達手段のギヤ比をRgとし、前後輪の駆動トルク配分比をRdとし、車輪の慣性モーメント及び回転加速度をそれぞれIw、Vwdとし、車輪の制動トルクをTbとして、前記走行駆動トルクを推定する手段は
Twr=(Td−IdVdd)RgRd/2−IwVwd−Tb
に従って走行駆動トルクTwrを推定するよう構成される(請求項7の構成)。
上記請求項1の構成によれば、左右の車輪の走行駆動トルクが推定され、左右の車輪の一方が駆動スリップしたときには当該車輪とは左右反対側の車輪の走行駆動トルクより当該車輪の走行駆動トルクを減算した値を目標値として当該車輪の制動トルクが制御されるので、「駆動スリップした車輪の走行駆動トルクと駆動トルク制御の制動トルクとの和」が「駆動スリップしていない車輪の走行駆動トルク」と等しくなるので、車種毎の適合を要することなく駆動スリップした車輪に付与される制動トルクに過不足が生じることを防止して駆動スリップを確実に且つ効果的に抑制することができる。
一般に、車輌が非減速状態にある場合に於いて、駆動輪100に駆動源よりの駆動トルク及び制動トルクが作用しているときには、駆動輪100が路面102に対し付与する駆動トルク、即ち走行駆動トルク、駆動源よりの駆動トルク、駆動系の慣性によるトルク、車輪の慣性によるトルク、制動トルクは図7に示されている関係にある。従って走行駆動トルクは駆動源より駆動輪100に付与される駆動トルクより駆動系の慣性によるトルク、車輪の慣性によるトルク、制動トルクを減算した値である。
上記請求項2の構成によれば、駆動源より駆動トルク伝達手段を経て左右の車輪に均等に駆動トルクが付与され、上記式に従って走行駆動トルクTwrが推定されるので、左右の車輪の走行駆動トルクTwrを正確に推定することができる。
また上記請求項3の構成によれば、駆動源より駆動トルク伝達手段を経て左右前輪及び左右後輪に均等に駆動トルクが付与され、何れかの車輪が駆動スリップしたときには四つの車輪のうちの最大の走行駆動トルクより当該車輪の走行駆動トルクを減算した値を目標値として当該車輪の制動トルクが制御されるので、「駆動スリップ状態にある車輪の走行駆動トルクと駆動トルク制御の目標制動トルクとの和」が「四つの車輪の走行駆動トルクのうちの最大値」と等しくなり、従って車種毎の適合を要することなく駆動スリップ状態にある車輪に付与される制動トルクに過不足が生じることを防止して駆動スリップ状態になった車輪の駆動スリップを確実に且つ効果的に抑制することができると共に、走行駆動トルクが最大である車輪以外の車輪が同時に駆動スリップ状態になることを効果的に防止することができる。
また上記請求項4の構成によれば、左右前輪及び左右後輪のうちの一輪が駆動スリップしたときには四つの車輪のうちの最大の走行駆動トルクより当該車輪の走行駆動トルクを減算した値を目標値として当該車輪の制動トルクが制御され、左右前輪の一方及び左右後輪の一方が駆動スリップしたときには左右前輪の他方の走行駆動トルクより左右前輪の一方の走行駆動トルクを減算した値を目標値として左右前輪の一方の制動トルクが制御されると共に、左右後輪の他方の走行駆動トルクより左右後輪の一方の走行駆動トルクを減算した値を目標値として左右後輪の一方の制動トルクが制御されるので、左右前輪及び左右後輪のうちの一輪が駆動スリップしたときには、上記請求項3の構成の場合と同一の要領にて駆動スリップ状態になった車輪の駆動スリップを確実に且つ効果的に抑制することができ、また左右前輪の一方及び左右後輪の一方が駆動スリップしたときには、上記請求項1の構成の場合と同一の要領にて駆動スリップ状態になった車輪の駆動スリップを確実に且つ効果的に抑制することができる。
また上記請求項5の構成によれば、上記式に従って走行駆動トルクTwrが推定されるので、駆動源より駆動トルク伝達手段を経て左右前輪及び左右後輪に均等に駆動トルクが付与される四輪駆動車に於いて、各車輪の走行駆動トルクTwrを正確に推定することができる。
また上記請求項6の構成によれば、前後輪の駆動トルク配分を変化可能に駆動源より駆動トルク伝達手段を経て左右前輪及び左右後輪に駆動トルクが付与され、左右前輪の一方が駆動スリップしたときには当該車輪とは左右反対側の車輪の走行駆動トルクより当該車輪の走行駆動トルクを減算した値を目標値として当該車輪の制動トルクが制御され、左右後輪の一方が駆動スリップしたときには当該車輪とは左右反対側の車輪の走行駆動トルクより当該車輪の走行駆動トルクを減算した値を目標値として当該車輪の制動トルクが制御されるので、前後輪の駆動トルク配分が制御される四輪駆動車の場合にも、上記請求項1の構成の場合と同一の要領にて駆動スリップ状態になった車輪の駆動スリップを確実に且つ効果的に抑制することができる。
また上記請求項7の構成によれば、上記式に従って走行駆動トルクTwrが推定されるので、前後輪の駆動トルク配分を変化可能に制御される四輪駆動車の場合にも、各車輪の走行駆動トルクTwrを正確に推定することができる。
[課題解決手段の好ましい態様]
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は5の構成に於いて、駆動トルク付与手段は左右の車輪に均等に駆動トルクを付与するよう構成される(好ましい態様1)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は2の構成に於いて、駆動トルク付与手段は駆動源より駆動トルク伝達手段を経て左右前輪に均等に駆動トルクを付与し、制御手段は左右前輪の一方が駆動スリップしたときには当該車輪とは左右反対側の車輪の走行駆動トルクより当該車輪の走行駆動トルクを減算した値を目標値として当該車輪の制動トルクを制御する制御手段するよう構成される(好ましい態様2)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は2の構成に於いて、駆動トルク付与手段は駆動源より駆動トルク伝達手段を経て左右後輪に均等に駆動トルクを付与し、制御手段は左右後輪の一方が駆動スリップしたときには当該車輪とは左右反対側の車輪の走行駆動トルクより当該車輪の走行駆動トルクを減算した値を目標値として当該車輪の制動トルクを制御する制御手段するよう構成される(好ましい態様3)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項3乃至7の構成に於いて、駆動トルク付与手段は各車輪に共通の一つの駆動源と駆動源よりの駆動トルクを各車輪へ伝達する駆動トルク伝達手段とを有するよう構成される(好ましい態様4)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は2の構成に於いて、駆動トルク付与手段は左右前輪に共通の一つの前輪用駆動源と、前輪用駆動源よりの駆動トルクを左右前輪へ伝達する前輪用駆動トルク伝達手段と、左右後輪に共通の一つの後輪用駆動源と、後輪用駆動源よりの駆動トルクを左右後輪へ伝達する後輪用駆動トルク伝達手段とを有するよう構成される(好ましい態様5)。
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施例について詳細に説明する。
図1は前輪駆動車に適用された本発明による車輌の駆動トルク制御装置の実施例1を示す概略構成図である。
図1に於いて、10FL及び10FRはそれぞれ操舵輪である左右の前輪を示し、10RL及び10RRはそれぞれ非操舵輪である左右の後輪を示している。また12は電動機又はエンジン及びトランスミッションを含む駆動装置を示しており、駆動装置12の駆動トルクTdは前輪ディファレンシャル14により左前輪車軸16L及び右前輪車軸16Rへ均等に伝達され、これにより左右の前輪10FL及び10FRが回転駆動される。従って前輪ディファレンシャル14及び車軸16L、16Rは駆動装置12より左右の前輪10RL、10RRへ均等に駆動トルクを伝達する駆動トルク伝達手段を構成している。
駆動装置12の駆動トルクTdはアクセル開度センサ18により検出されるアクセルペダル20の踏み込み量としてのアクセル開度φに基づき駆動力制御用電子制御装置22により制御される。駆動力制御用電子制御装置22には車輪速度センサ24FL〜24RRより対応する車輪の車輪速度Vwi(i=fl、fr、rl、rr)を示す信号が入力され、また回転速度センサ26より駆動装置12の回転速度Vdが入力される。
左右の前輪10FL、10FR及び左右の後輪10RL、10RRの制動力は制動装置28の油圧回路30により対応するホイールシリンダ32FL、32FR、32RL、32RRの制動圧が制御されることによって制御される。図には示されていないが、油圧回路30はリザーバ、オイルポンプ、種々の弁装置等を含み、各ホイールシリンダの制動圧力は通常時には運転者によるブレーキペダル34の踏み込み量及びブレーキペダル34の踏み込みに応じて駆動されるマスタシリンダ36の圧力に応じて制御され、また必要に応じてオイルポンプや種々の弁装置が制動力制御用電子制御装置38によって制御されることにより、運転者によるブレーキペダル34の踏み込み量に関係なく制御される。
制動力制御用電子制御装置38には圧力センサ40よりマスタシリンダ圧力Pmを示す信号、圧力センサ42FL〜42RRより対応する車輪の制動圧(ホイールシリンダ圧力)Pbi(i=fl、fr、rl、rr)を示す信号が入力される。駆動力制御用電子制御装置22及び制動力制御用電子制御装置38は必要に応じて相互に信号の授受を行う。
尚図1には詳細に示されていないが、駆動力制御用電子制御装置22及び制動力制御用電子制御装置38はそれぞれマイクロコンピュータと駆動回路とよりなり、マイクロコンピュータは例えばCPUと、ROMと、RAMと、入出力ポート装置とを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続された一般的な構成のものであってよい。
駆動力制御用電子制御装置16は、通常時には運転者の加減速操作量であるアクセル開度φに基づき駆動装置12の出力トルクTdを制御し、制動力制御用電子制御装置38は通常時には運転者の制動操作量であるマスタシリンダ圧力Pmに基づき各車輪の目標制動圧Pbtiを制御し、各車輪の制動圧Pbiがそれぞれ対応する目標制動圧Pbtiになるよう制御し、何れかの車輪についてアンチスキッド制御の開始条件が成立すると、アンチスキッド制御の終了条件が成立するまで当該車輪の制動スリップを抑制する当技術分野に於いて公知のアンチスキッド制御を行う。
また駆動力制御用電子制御装置16は、図2に示されたフローチャートに従って駆動トルク制御の目標制動トルクTbdtfl、Tbdtfrを演算する。特に駆動力制御用電子制御装置16は、車輌が左右の路面の摩擦係数が大きく異なる走行路を加速走行する場合の如く、駆動輪である左右前輪の一方が駆動スリップ状態にあり且つ左右前輪の他方が駆動スリップ状態にないときには、駆動スリップ状態にある車輪の駆動トルク制御の目標制動トルクを駆動スリップ状態にない他方の車輪の走行駆動トルクより駆動スリップ状態にある車輪の走行駆動トルクを減算した値に演算し、駆動トルク制御の目標制動トルクを示す信号を制動力制御用電子制御装置38へ出力する。
制動力制御用電子制御装置38は駆動力制御用電子制御装置16より駆動トルク制御の目標制動トルクを示す信号を受信しているときには、駆動トルク制御の目標制動トルクに基づいて制動圧の増大補正量を演算し、駆動スリップ状態にある車輪の目標制動圧に増大補正量を加算し、駆動スリップ状態にある車輪については加算補正後の目標制動圧に基づいて当該車輪の制動圧を制御し、駆動スリップを確実に且つ効果的に抑制すると共に、左右前輪に不必要な駆動トルク差が生じることに起因する車輌運動の不安定化を確実に防止する。
次に図2に示されたフローチャートを参照して図示の実施例1に於ける駆動トルク制御について説明する。尚図2に示されたフローチャートによる制御は駆動力制御用電子制御装置16が起動されることにより開始され、図には示されていないイグニッションスイッチがオフに切り換えられるまで所定の時間毎に繰返し実行される。
まずステップ10に於いてはアクセル開度センサ18により検出されたアクセル開度φを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ20に於いては車輌が非減速中であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ140へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ30へ進む。
ステップ30に於いては車輪速度Vwfl及びVwfrの時間微分値として左右前輪の回転加速度Vwdfl及びVwdfrが演算され、回転加速度Vwdfl及びVwdfrに基づいて左右前輪の駆動トルク伝達手段の回転加速度Vddfl及びVddfrが推定されると共に、駆動トルク伝達手段の慣性モーメントをIdfとし、駆動トルク伝達手段のギヤ比をRgfとし、左右前輪の慣性モーメントをIwfとし、左右前輪の制動トルクをTbfl及びTbfrとして、下記の式1及び2に従って左右前輪の走行駆動トルクTwrfl及びTwrfrが演算される。
Twrfl=(Td−IdfVddfl)Rgf/2−IwfVwdfl−Tbfl……(1)
Twrfr=(Td−IdrVddfr)Rgf/2−IwfVwdfr−Tbfr……(2)
ステップ40に於いては左前輪に駆動スリップが生じているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ80へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ50へ進む。
ステップ50に於いては右前輪に駆動スリップが生じているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ60へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ140へ進む。
ステップ60に於いては左前輪の駆動トルク制御の目標制動トルクTbdtflが右前輪の走行駆動トルクTwrfrより左前輪の走行駆動トルクTwrflを減算した値(Twrfr−Twrfl)として演算され、ステップ70に於いては右前輪の駆動トルク制御の目標制動トルクTbdtfrが0に設定される。
ステップ80に於いてはステップ50の場合と同様右前輪に駆動スリップが生じているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ140へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ90へ進む。
尚ステップ40、50、80に於ける駆動スリップが生じているか否かの判別は当技術分野に於いて公知の任意の要領にて行われてよく、例えば車輪速度に基づく駆動スリップ量又は駆動スリップ率や車輪の回転加速度に基づいて判定されてよい(このことは後述の他の実施例についても同様である)。
ステップ90に於いては右前輪の駆動トルク制御の目標制動トルクTbdtfrが左前輪の走行駆動トルクTwrflより右前輪の走行駆動トルクTwrfrを減算した値(Twrfl−Twrfr)として演算され、ステップ100に於いては左前輪の駆動トルク制御の目標制動トルクTbdtflが0に設定される。
ステップ140に於いては左右前輪の駆動トルク制御の目標制動トルクTbdtj(j=fl、fr)が0に設定され、ステップ70、100、140が完了すると、ステップ230に於いて左右前輪の駆動トルク制御の目標制動トルクTbdtjを示す信号が駆動力制御用電子制御装置16より制動力制御用電子制御装置38へ出力される。
かくして図示の実施例1によれば、ステップ20に於いて車輌が非減速中ではないと判別されると、ステップ30に於いて左右前輪の走行駆動トルクTwrfl及びTwrfrが演算され、左前輪が駆動スリップ状態にあり且つ右前輪が駆動スリップ状態にないときにはステップ40に於いて肯定判別が行われると共にステップ50に於いて否定判別が行われ、これによりステップ60に於いて左前輪の駆動トルク制御の目標制動トルクTbdtflが右前輪の走行駆動トルクTwrfrより左前輪の走行駆動トルクTwrflを減算した値(Twrfr−Twrfl)として演算され、ステップ70に於いて右前輪の駆動トルク制御の目標制動トルクTbdtfrが0に設定される。
逆に左前輪が駆動スリップ状態にはなく且つ右前輪が駆動スリップ状態にあるときにはステップ40に於いて否定判別が行われると共にステップ80に於いて肯定判別が行われ、これによりステップ90に於いて右前輪の駆動トルク制御の目標制動トルクTbdtfrが左前輪の走行駆動トルクTwrflより右前輪の走行駆動トルクTwrfrを減算した値(Twrfl−Twrfr)として演算され、ステップ100に於いて左前輪の駆動トルク制御の目標制動トルクTbdtflが0に設定される。
従って図示の実施例1によれば、左右前輪の一方が駆動スリップ状態にあり且つ左右前輪の他方が駆動スリップ状態にないときには、駆動スリップ状態にある車輪の駆動トルク制御の目標制動トルクが駆動スリップ状態にない他方の車輪の走行駆動トルクより駆動スリップ状態にある車輪の走行駆動トルクを減算した値に制御され、これにより図8に示されている如く、「路面の摩擦係数が低い側の車輪の走行駆動トルクと駆動トルク制御の目標制動トルクとの和」が「路面の摩擦係数が高い側の車輪の走行駆動トルク」と等しくなるので、車種毎の適合を要することなく路面の摩擦係数が低い側の車輪に付与される制動トルクに過不足が生じることを防止して駆動スリップを確実に且つ効果的に抑制することができると共に、車輌が左右の路面の摩擦係数が異なる路面にて加速する場合の加速性能を確実に向上させることができる。
特に図示の実施例1によれば、左右前輪の走行駆動トルクTwrfl及びTwrfrはステップ30に於いて上記式1及び2に従って演算されるので、左右前輪が駆動スリップ状態にあるか否かに関係なく左右の前輪が路面に付与する駆動トルクとして走行駆動トルクTwrfl及びTwrfrを正確に推定することができる。
また図示の実施例1によれば、左右前輪の両方に駆動スリップが生じているときには、ステップ60又は90による駆動トルク制御の目標制動トルクの演算は行われないので、左右前輪の両方に駆動スリップが生じている状況に於いて左右前輪に駆動トルク制御の目標制動トルクに基づく不必要に過大な制動トルクが付与されることを防止することができる。
尚図示の実施例1に於いては、フローチャートとしては示されていないが、左右前輪の両方に駆動スリップが生じているときには、当技術分野に於いて公知のトラクション制御により左右前輪の駆動スリップが抑制されてよい。
図3は四輪に均等に駆動トルクが付与される四輪駆動車に適用された本発明による車輌の駆動トルク制御装置の実施例2を示す概略構成図である。尚図3に於いて図1に示された部材と同一の部材には図1に於いて付された符号と同一の符号が付されている。
この実施例2に於いては、駆動装置12の駆動トルクTdはセンターディファレンシャル50により前輪プロペラシャフト52及び後輪プロペラシャフト54へ均等に伝達される。前輪プロペラシャフト52へ伝達された駆動トルクは前輪ディファレンシャル14により左前輪車軸16L及び右前輪車軸16Rへ均等に伝達され、これにより左右の前輪10FL及び10FRが回転駆動される。従ってセンターディファレンシャル50、前輪プロペラシャフト52、前輪ディファレンシャル14、車軸16L、16Rは駆動装置12より左右の前輪10FL、10FRへ均等に駆動トルクを伝達する前輪用駆動トルク伝達手段を構成している。
また後輪プロペラシャフト54へ伝達された駆動トルクは後輪ディファレンシャル56により左後輪車軸58L及び右後輪車軸58Rへ均等に伝達され、これにより左右の後輪10RL及び10RRが回転駆動される。従ってセンターディファレンシャル50、後輪プロペラシャフト54、後輪ディファレンシャル56、車軸58L、58Rは駆動装置12より左右の後輪10RL、10RRへ均等に駆動トルクを伝達する後輪用駆動トルク伝達手段を構成している。
次に図4に示されたフローチャートを参照して実施例2に於ける駆動トルク制御ルーチンについて説明する。尚図4に於いて図2に示されたステップと同一のステップには図2に於いて付されたステップ番号と同一のステップ番号が付されている。
この実施例2に於いては、ステップ10、20、140、230は上述の実施例1と同様に実行され、ステップ20に於いて肯定判別が行われたときにはステップ110に於いて下記の要領にて各車輪の走行駆動トルクTwriが演算される。
まず車輪速度Vwiの時間微分値として各車輪の回転加速度Vwdiが演算され、回転加速度Vwdiに基づいて各車輪の駆動トルク伝達手段の回転加速度Vddiが推定され、前輪用及び後輪用の駆動トルク伝達手段の慣性モーメントをそれぞれIdf及びIdrとし、駆動トルク伝達手段のギヤ比をRgとし、前輪及び後輪の慣性モーメントをそれぞれIwf及びIwrとし、各車輪の制動トルクをTbiとして、下記の式3乃至6に従って各車輪の走行駆動トルクTwriが演算される。
Twrfl=(Td−IdfVddfl)Rg/4−IwfVwdfl−Tbfl……(3)
Twrfr=(Td−IdfVddfr)Rg/4−IwfVwdfr−Tbfr……(4)
Twrrl=(Td−IdrVddrl)Rg/4−IwrVwdrl−Tbrl……(5)
Twrrr=(Td−IdrVddrr)Rg/4−IwrVwdrr−Tbrr……(6)
ステップ120に於いては何れかの車輪に駆動スリップが生じているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ140へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ130へ進む。
ステップ130に於いては駆動スリップが生じていない車輪があるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときには、即ち駆動スリップが生じていない車輪があると判別されたときにはステップ150へ進み、否定判別が行われたときには、即ち四輪全てに駆動スリップが生じていると判別されたときにはステップ140へ進む。
ステップ150に於いては各車輪の走行駆動トルクTwriの最大値をTwrmaxとして駆動スリップが生じている車輪の駆動トルク制御の目標制動トルクTbdtiが最大値Twrmaxより当該車輪の走行駆動トルクTwriを減算した値(Twrmax−Twri)として演算され、ステップ160に於いては駆動スリップが生じていない車輪の駆動トルク制御の目標制動トルクTbdtiが0に設定され、ステップ140又は160が完了すると、ステップ230に於いて各車輪の駆動トルク制御の目標制動トルクTbdtiを示す信号が駆動力制御用電子制御装置16より制動力制御用電子制御装置38へ出力される。
かくして図示の実施例2によれば、ステップ20に於いて車輌が非減速中ではないと判別されると、ステップ110に於いて各車輪の走行駆動トルクTwriが演算され、何れかの車輪が駆動スリップ状態にあり且つ駆動スリップ状態にない車輪があるときにはステップ120及び130に於いてそれぞれ肯定判別が行われ、ステップ150に於いて駆動スリップが生じている車輪の駆動トルク制御の目標制動トルクTbdtiが四つの車輪の走行駆動トルクTwriのうちの最大値Twrmaxより当該車輪の走行駆動トルクTwriを減算した値(Twrmax−Twri)として演算され、ステップ160に於いて駆動スリップが生じていない車輪の駆動トルク制御の目標制動トルクTbdtiが0に設定される。
従って図示の実施例2によれば、何れかの車輪が駆動スリップ状態にあり且つ駆動スリップ状態にない車輪があるときには、「駆動スリップ状態にある車輪の走行駆動トルクと駆動トルク制御の目標制動トルクとの和」が「四つの車輪の走行駆動トルクのうちの最大値」と等しくなるので、車種毎の適合を要することなく駆動スリップ状態にある車輪に付与される制動トルクに過不足が生じることを防止して駆動スリップ状態になった車輪の駆動スリップを確実に且つ効果的に抑制することができると共に、走行駆動トルクが最大である車輪以外の車輪が同時に駆動スリップ状態になることを効果的に防止することができ、これにより車輌が少なくとも二つの車輪間に於いて路面の摩擦係数が異なる路面にて加速する場合の加速性能を確実に向上させることができる。
特に図示の実施例2によれば、全ての車輪に駆動スリップが生じているときには、ステップ150による駆動トルク制御の目標制動トルクの演算は行われないので、全ての車輪に駆動スリップが生じている状況に於いて各車輪に駆動トルク制御の目標制動トルクに基づく不必要に過大な制動トルクが付与されることを防止することができる。
尚図示の実施例2に於いては、フローチャートとしては示されていないが、全ての車輪に駆動スリップが生じているときには、当技術分野に於いて公知のトラクション制御により各車輪の駆動スリップが抑制されてよい。
図5は四輪に均等に駆動トルクが付与される四輪駆動車に適用され実施例2の修正例として構成された本発明による車輌の駆動トルク制御装置の実施例3に於ける駆動トルク制御ルーチンを示すフローチャートである。尚図5に於いて図2及び図4に示されたステップと同一のステップにはこれらの図に於いて付されたステップ番号と同一のステップ番号が付されている。
この実施例3に於いては、ステップ10、20、110、120、140、230は上述の実施例2と同様に実行され、ステップ120に於いて肯定判別が行われたときにはステップ170へ進む。
ステップ170に於いては左右前輪の一方及び左右後輪の一方に駆動スリップが生じているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ200へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ180へ進む。
ステップ180に於いては上述の実施例1の場合と同様、駆動スリップが生じている車輪の駆動トルク制御の目標制動トルクTbdtiが当該車輪とは左右反対側の車輪の走行駆動トルクTwriより当該車輪の走行駆動トルクTwriを減算した値として演算され、ステップ190に於いては駆動スリップが生じていない車輪の駆動トルク制御の目標制動トルクTbdtiが0に設定され、しかる後ステップ230へ進む。
ステップ200に於いては一つの車輪にのみ駆動スリップが生じているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときには、即ち左右前輪若しくは左右後輪(左右前輪のみ又は左右後輪のみ又は四輪)に駆動スリップが生じていると判別されたときにはステップ140へ進み、肯定判別が行われたときには、即ち駆動スリップが生じている車輪が一輪のみであると判別されたときにはステップ210へ進む。
ステップ210に於いては上述の実施例2に於けるステップ150の場合と同様、各車輪の走行駆動トルクTwriの最大値をTwrmaxとして駆動スリップが生じている車輪の駆動トルク制御の目標制動トルクTbdtiが最大値Twrmaxより当該車輪の走行駆動トルクTwriを減算した値(Twrmax−Twri)として演算され、ステップ230に於いては駆動スリップが生じていない他の三輪の駆動トルク制御の目標制動トルクTbdtiが0に設定され、しかる後ステップ230へ進む。
かくして図示の実施例3によれば、何れかの一輪にのみ駆動スリップが生じているときには、上述の実施例2の場合と同様の要領にて駆動スリップを抑制することができ、この制御にも拘らず左右前輪の一方及び左右後輪の一方に駆動スリップが生じたときには、上述の実施例1の場合と同様の要領にて駆動スリップを抑制することができ、これにより車種毎の適合を要することなく上述の実施例2の場合よりも一層確実に駆動スリップを抑制することができる。
尚図示の実施例2及び3によれば、左右前輪の走行駆動トルクTwriはステップ110に於いて上記式3乃至6に従って演算されるので、車輪が駆動スリップ状態にあるか否かに関係なく各車輪が路面に付与する駆動トルクとして走行駆動トルクTwriを正確に推定することができる。
図6は前後輪の駆動トルクの配分が制御される四輪駆動車に適用された本発明による車輌の駆動トルク制御装置の実施例4に於ける駆動トルク制御ルーチンを示すフローチャートである。尚図6に於いて図2及び図4に示されたステップと同一のステップにはこれらの図に於いて付されたステップ番号と同一のステップ番号が付されている。
この実施例4に於いては、フローチャートとしては示されていないが、駆動力制御用電子制御装置22は当技術分野に於いて公知の任意の要領にて駆動トルクTdの前後輪配分比を制御し、駆動トルクTdの前輪配分比及び後輪配分比をそれぞれRdf及びRdr(=1−Rdf)としてTdRdfが前輪に配分され、TdRdr)が後輪に配分されるようセンターディファレンシャル50を制御する。
またこの実施例4に於いては、ステップ115及び175以外のステップは上述の実施例3と同様に実行され、ステップ20に於いて肯定判別が行われたときにはステップ115に於いて下記の式7乃至10に従って各車輪の走行駆動トルクTwriが演算される。
Twrfl=(Td−IdfVddfl)RgRdf/2−IwfVwdfl−Tbfl……(7)
Twrfr=(Td−IdfVddfr)RgRdf/2−IwfVwdfr−Tbfr……(8)
Twrrl=(Td−IdrVddrl)RgRdr/2−IwrVwdrl−Tbrl……(9)
Twrrr=(Td−IdrVddrr)RgRdr/2−IwrVwdrr−Tbrr……(10)
またこの実施例4に於いては、ステップ120に於いて肯定判別が行われたときにはステップ175に於いて左右前輪の一方若しくは左右後輪の一方に駆動スリップが生じているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ140へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ180へ進む。
かくして図示の実施例4によれば、ステップ20に於いて車輌が非減速中ではないと判別されると、ステップ115に於いて駆動トルクTdの前後輪配分比Rdf及びRdrを考慮して各車輪の走行駆動トルクTwriが演算され、左右前輪の一方若しくは左右後輪の一方に駆動スリップが生じているときには、ステップ180、190230が実行されるので、車種毎の適合を要することなく上述の実施例1の場合と同様の要領にて駆動スリップを抑制することができる。
特に図示の実施例4によれば、各車輪の走行駆動トルクTwriはステップ115に於いて上記式7乃至10に従って演算されるので、前後輪配分比Rdf、Rdrの如何に拘らず、また車輪が駆動スリップ状態にあるか否かに関係なく各車輪が路面に付与する駆動トルクとして走行駆動トルクTwriを正確に推定することができる。
尚図示の実施例4に於いては、駆動トルクTdの前輪配分比Rdf及び後輪配分比Rdrは可変制御されるようになっているが、この実施例4は駆動トルクTdが一定の前後輪配分比にて前輪及び後輪に配分される車輌に適用されてもよい。
以上に於いては本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
例えば上述の実施例1に於いては、車輌は前輪駆動車であるが、実施例1は後輪駆動車に適用されてもよく、その場合には上述の実施例1に於ける「左右前輪」は「左右後輪」に置き換えられ、左右前輪を示す「fl」及び「fr」はそれぞれ左右後輪を示す「rl」及び「rr」に置き換えられる。
また上述の実施例2及び3に於いては、一つの駆動装置12よりの駆動トルクが四輪に均等に付与されるようになっているが、実施例2及び3は前輪用駆動装置よりの駆動トルクが左右前輪に均等に付与され、後輪用駆動装置よりの駆動トルクが左右後輪に均等に付与され、前輪用駆動装置及び後輪用駆動装置の出力トルクが同一に制御されるよう構成された車輌に適用されてもよい。
更に上述の実施例4に於いては、一つの駆動装置12よりの駆動トルクが四輪に付与され前後輪の駆動トルクの配分が制御されるようになっているが、実施例4も前輪用駆動装置よりの駆動トルクが左右前輪に均等に付与され、後輪用駆動装置よりの駆動トルクが左右後輪に均等に付与され、前輪用駆動装置及び後輪用駆動装置の出力トルクが制御されることにより前後輪の駆動トルクの配分が制御されるよう構成された車輌に適用されてもよい。
前輪駆動車に適用された本発明による車輌の駆動トルク制御装置の実施例1を示す概略構成図である。
実施例1に於ける駆動トルク制御ルーチンを示すフローチャートである。
四輪に均等に駆動トルクが付与される四輪駆動車に適用された本発明による車輌の駆動トルク制御装置の実施例2を示す概略構成図である。
実施例2に於ける駆動トルク制御ルーチンを示すフローチャートである。
四輪に均等に駆動トルクが付与される四輪駆動車に適用された本発明による車輌の駆動トルク制御装置の実施例3に於ける駆動トルク制御ルーチンを示すフローチャートである。
前後輪の駆動トルクの配分が制御される四輪駆動車に適用され実施例2の修正例として構成された本発明による車輌の駆動トルク制御装置の実施例4に於ける駆動トルク制御ルーチンを示すフローチャートである。
駆動輪に於ける走行駆動トルク、駆動源の駆動トルク、駆動系の慣性によるトルク、車輪の慣性によるトルク、制動トルクの関係を示す説明図である。
車輪のスリップ率−走行駆動トルクの特性車輌が左右の路面の摩擦係数が異なる路面にて加速する場合に於ける「路面の摩擦係数が低い側の車輪の走行駆動トルク」、「駆動トルク制御の目標制動トルク」、「路面の摩擦係数が低い側の車輪の走行駆動トルク」の関係と共に車輪のスリップ率−走行駆動トルクの特性を示すグラフである。
符号の説明
10FL〜10RR 車輪
12 駆動装置
14 前輪ディファレンシャル
20 アクセルペダル
22 駆動力制御用電子制御装置
38 制動力制御用電子制御装置
50 センターディファレンシャル
52 前輪プロペラシャフト
54 後輪プロペラシャフト
56 後輪ディファレンシャル