JPH09143827A - ポリエステル系マルチフィラメント複合糸および該複合糸を用いた織編物の製法 - Google Patents

ポリエステル系マルチフィラメント複合糸および該複合糸を用いた織編物の製法

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JPH09143827A
JPH09143827A JP7304858A JP30485895A JPH09143827A JP H09143827 A JPH09143827 A JP H09143827A JP 7304858 A JP7304858 A JP 7304858A JP 30485895 A JP30485895 A JP 30485895A JP H09143827 A JPH09143827 A JP H09143827A
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polyester
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denier
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JP7304858A
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Takayoshi Fujita
隆嘉 藤田
Shigeo Nagira
重雄 柳楽
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Toyobo Co Ltd
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Toyobo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 弾ける様な膨らみ感と軽量感、ソフトドライ
な接触感、適度なハリ・腰・ドレープ性を有すると共
に、自然なムラ感を有する織編物を与える新規なポリエ
ステル系マルチフィラメント複合糸、および複合繊維織
編物を提供する。 【解決手段】 所定の糸物性を有するポリエステル系マ
ルチフィラメントAとポリエステル系マルチフィラメン
トBとが、前者:20〜80%、後者80〜20%のデ
ニール比率で複合されると共に、それらが交絡度20〜
100個/mで絡合した複合糸からなるポリエステル系
マルチフィラメント複合糸、およびこの複合糸を用いて
製織もしくは製編した後、染色および仕上げ加工を施
し、織編物表面に前記ポリエステル系マルチフィラメン
トAをループ状に膨出させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、弾ける様な膨らみ
感と軽量感、ソフトドライな接触感、適度なハリ・腰・
ドレープ性を有すると共に、自然なムラ感を有する織編
物を与える新規なポリエステル系マルチフィラメント複
合糸、およびこの複合糸を用いたポリエステル系複合織
編物の製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリエステル系マルチフィラメント糸
は、その優れた特性を生かして衣料分野を始めとする各
種の用途で広く活用されている。殊に最近では、シルク
タッチの合成繊維用としてポリエステル系フィラメント
糸の研究が盛んに進められており、一部では絹を凌駕す
る風合いと特性を持ったポリエステル系繊維織編物も開
発されている。例えば熱収縮特性を異にする複数本のマ
ルチフィラメントからなる複合糸を用いた織編物は、ソ
フト感、嵩高感、ウオーム感等において優れた特性と風
合いを有するものとされている。しかしながらそれらの
織編物では、布帛を低熱収縮糸の収縮率以上に収縮させ
ないと膨らみが発現せず、一方布帛を大きく収縮させる
と表面が荒れたり製品状態でパッカリングが発生すると
いった問題を起こすことがある。また高熱収縮糸と低熱
収縮糸を混合した公知の混繊糸は、ほぼ同じ特性や単糸
デニールを持ったフィラメントを複合したものが大部分
であり、そのため混繊糸の外面側に膨出したフィラメン
トの形態は、均整で単調な外観とタッチを有するものと
なる。
【0003】これに対し、たとえば特開昭62−156
327号、同62−268834号、同63−1201
34号等には、断面形状や単糸デニール、熱水収縮率、
破断伸度などの異なる複数群のマルチフィラメントを複
合した混繊糸が提案されている。これらの公報に記載さ
れた混繊糸を用いて得られる織編物は、自然なムラ感や
嵩高感、キシミ感などにおいてそれなりに優れた特性を
有しているが、弾ける様な膨らみ感と軽量感、ソフトド
ライな接触感、ハリ・腰・ドレープ性などの点では依然
として不十分である。
【0004】また、特開昭60−28515号、同50
−146851号、同56−123419号、同55−
62240号、同56−112537号、同54−93
120号等には、熱処理によって伸長する繊維と収縮す
る繊維を複合した複合糸も提案されている。これらのう
ち、特に特開昭50−148651号や同60−285
15号に開示されている様な複合糸を用いて得られる布
帛は、同程度の収縮率を有するフィラメントからなる複
合糸を用いたものに比べると、はるかに嵩高かつソフト
で柔軟な風合いを有する織編物を与える。ところがこれ
らの複合糸では、織編物としてのソフトな接触感を強調
することの必要上、熱により伸長する繊維(それ自身の
伸長あるいは下記芯糸の熱収縮によって弛みを起こし、
複合糸の外面側にループ状を形成して鞘状に膨出するの
で、以下「鞘糸」と言うことがある)としては単糸デニ
ールが2デニール程度以下の細いフィラメントを使用す
る一方、芯糸を構成する熱収縮糸としては、ヤーンとし
てのハリや腰を持たせるため単糸デニールが3デニール
程度以上といった比較的太径のものを使用しており、そ
のためソフトな接触感は得られるものの、織編物表面側
へループ状に膨出するフィラメントが細径で弾発力不足
となり、本発明で意図する如き弾む様な膨らみ感と軽量
感が得られない。しかも、複合糸自体が比較的均整なも
のであるため、織編物の表面も単調となって自然なムラ
感に欠ける。
【0005】そこで、鞘糸を構成するフィラメントデニ
ールを3デニール程度以上に太くすることによって、ル
ープ状の膨らみの弾発性を高める方法も試みられたが、
従来の複合糸は概して芯糸を構成する高収縮糸の単糸デ
ニールが細いため、満足のいくハリや腰を確保し得るま
でには至っていない。
【0006】また、表面の単調さを改善するものとして
特開平6−25932号などには、熱により伸長するフ
ィラメントを用いてその長手方向に斑を持たせる方法が
提案された。この方法によれば、長手方向で伸長ループ
や染着性にも差が生じ、ムラ感のある自然な外観と接触
感が得られ易いが、反面、伸長性や斑発現の安定性に問
題があり、実用規模で安定した品質の織編物を得ること
が難しい。更に、ソフトで産毛状のパウダータッチを表
現するため、単糸デニールの細いフィラメントを使用し
たり、海島構造の公知のフィラメントや割繊フィラメン
トを使用する方法も知られているが、それらの布帛にし
ても全体としての外観や風合いは単調であり、ナチュラ
ル感という点では依然として改善の余地を残している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこの様な従来
技術の問題点に着目してなされたものであって、その目
的は、弾ける様な膨らみ感と軽量感、ソフトドライな接
触感、適度なハリ・腰・ドレープ性を有すると共に、自
然なムラ感を有する織編物を与える合成複合糸を開発
し、ひいては該合成複合糸を用いたナチュラル感の高い
優れた品質の織編物の製法を提供しようとするものであ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明に係るポリエステル系マルチフィラメン
ト複合糸の構成は、下記の糸物性を有するポリエステル
系マルチフィラメントAとポリエステル系マルチフィラ
メントBとが、前者:20〜80%、後者80〜20%
のデニール比率で複合されると共に、それらが交絡度2
0〜100個/mで絡合した複合糸からなるところに特
徴を有している。
【0009】ポリエステル系マルチフィラメントA: dpfA :3デニール以上、DEA :50%以上であ
り、且つSHWA :−3〜5%またはSHDA :−15
〜0%、 ポリエステル系マルチフィラメントB: dpfB :3デニール以上、DTB :3.5g/d以
上、DEB :40%以下であり、且つSHWB :5〜6
0%またはSHDB :10〜80%、 但し、dpfA およびdpfB は、ポリエステル系マル
チフィラメントAおよびBの単繊維デニール、SHWA
およびSHWB は、ポリエステル系マルチフィラメント
AおよびBの熱水(100℃)収縮率(%)、SHDA
およびSHDB は、ポリエステル系マルチフィラメント
AおよびBの乾熱(160℃)収縮率(%)、DEA
よびDEB は、ポリエステル系マルチフィラメントAお
よびBの破断伸度(%)DTB は、ポリエステル系マル
チフィラメントBの破断強度(g/d)を夫々表わす。
【0010】上記で用いられるマルチフィラメントA,
Bの熱水収縮率の差(SHWB −SHWA )または乾熱
収縮率の差(SHDB −SHDA )は10〜60%の範
囲が好ましく、またマルチフィラメントA,Bのうち、
少なくともポリエステル系マルチフィラメントAとして
は、横断面形状において2以上の突起を有すると共に異
形度が1.1以上であるフィラメントの集合体を使用す
れば、織編物としたときにテカリ等のないナチュラル感
の一段と優れたものとすることができる。
【0011】また、上記マルチフィラメントAおよびB
の全部もしくは一部として、カチオン可染性ポリエステ
ルからなるものを使用すれば、カチオン染色による鮮明
色が与えられると共に、シャンブレー効果も発揮させる
ことができるので好ましく、更に、これらマルチフィラ
メントAおよびBの全部もしくは一部として、微細孔形
成剤を0.5重量%以上含有するポリエステルからなる
ものを使用すれば、ヌメリ感や光沢が抑えられて深色感
を高めることができる。また、少なくともマルチフィラ
メントBとしてウースターノルマル(URn)が15%
以上のものを使用すれば、複合糸のナチュラル感を一層
良好なものとすることができる。
【0012】そして、上記の要件を満たすポリエステル
系マルチフィラメント複合糸を少なくとも一部として使
用し、これを製織もしくは製編した後、染色および仕上
げ加工を施すと、織編物表面に前記ポリエステル系マル
チフィラメントAがループ状に膨出し、弾ける様な膨ら
み感と軽量感、ソフトドライな接触感、適度なハリ・腰
・ドレープ性を有すると共に、自然なムラ感を有する織
編物を得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る複合糸につい
て詳細に説明すると共に、該複合糸を用いて得られる織
編物について説明を進める。本発明で用いられるポリエ
ステル系マルチフィラメント(以下、単にマルチフィラ
メントと言う)A,Bは、実質的に同じ長さのものを使
用することが望ましい。しかして、本発明の如く芯糸、
鞘糸のいずれも単繊維デニールの太いものを複合する場
合、両フィラメントA、B間に糸長差があると、ループ
や弛みが生じた時の解除性が悪くなると共に、それらが
ガイドその他の部品に引掛ってトラブルの原因になるこ
とがあるからである。ここで「実質的に糸長差がない」
とは、相互の糸長差が5%、より好ましくは2%の範囲
に納まることを意味する。
【0014】次に、本発明で重要な構成要素となるマル
チフィラメントA,Bの熱収縮特性について説明する。
まずマルチフィラメントAとしては、熱水(100℃)
収縮率(SHWA )が−3〜5%の範囲であるか、もし
くは乾熱(160℃)収縮率(SHDA )が−15〜0
%の範囲であるものを使用し、一方マルチフィラメント
Bとしては、熱水(100℃)収縮率(SHWB )が5
〜60%の範囲であるか、もしくは乾熱(160℃)収
縮率(SHDB )が10〜80%の範囲であるものを使
用すること必要であり、好ましくは、上記SHWA とS
HDA およびSHWB とSHDB の夫々2つの要件を同
時に満足するマルチフィラメントA,Bを使用すること
が望ましく、更には、上記熱水収縮率の差(SHWB
SHWA)および乾熱収縮率の差(SHDB −SHD
A )がいずれも10〜50%であることが望ましい。
【0015】即ち本発明においては、製織もしくは製編
後の染色および仕上処理における熱水処理もしくは感熱
処理時の熱による収縮率の差によってマルチフィラメン
トBを大きく収縮させ、収縮率の小さいマルチフィラメ
ントAを織編物の表面にループ状に膨出させ、その結果
として、織編物の状態ではたとえば図1に拡大して示す
如く、マルチフィラメントBを芯としその周りにマルチ
フィラメントAがループを形成して鞘状に取り囲んだ状
態とするものであり、そのためには、マルチフィラメン
トAの熱収縮率を相対的に小さく、マルチフィラメント
Bの熱収縮率Bを相対的に大きくすることが必須とな
る。反面、製織編前の段階で複合糸とを構成するマルチ
フィラメントA,Bの熱収縮率に差があり過ぎると、こ
れらフィラメントの複合工程、撚糸セット工程、サイジ
ング工程などでビーミング、ループや弛み等が発生して
ガイドやコーム等への引っ掛かりが起こって工程通過性
を害する。従ってこうした工程通過性の劣化を招くこと
なく、染色および仕上処理後の織編物に前述の様な特性
を与えるための要件として、マルチフィラメントA,B
の収縮率およびその好ましい差を前述の如く規定してい
る。
【0016】そして、実際の織編物の膨らみを決めるの
は、撚糸セット、サイジング、乾燥等の熱処理を受けた
後の収縮であるので、これをモデル的に評価するため、
マルチフィラメントBの熱水(100℃)収縮率(SH
B )および乾熱(160℃)収縮率(SHDB )の影
響を調べたところ、良好な風合いを得るには、該マルチ
フィラメントBのSHWB を5%以上、より好ましくは
10%以上とするか、SHDB を10%以上、より好ま
しくは15%以上とすべきであり、これらの値が低過ぎ
るものでは通常の撚糸セット、サイジング、精練、リラ
ックス処理等の工程で熱を受けたときに、そられの熱で
熱セットが固定され、染色および仕上工程で熱処理をか
けても織編物が収縮しなくなり、風合いの確保ができな
くなる。但し、マルチフィラメントBのSHWBおよび
SHDBが過度に大きくなると、仕上げ織編物製品とし
たときにパッカリングを起こしたり、製織・製編工程や
その準備工程で糸長差が顕著となって引っ掛りを起こし
たり、染色工程でのコントロールが困難になる傾向が生
じてくるので、こうした欠点を回避するには、マルチフ
ィラメントBのSHWB を60%以下、より好ましくは
50%以下、SHDBを80%以下、より好ましくは6
0%以下に抑えるのがよい。
【0017】一方、マルチフィラメントAの熱水収縮率
(SHWA )を−3〜5%、もしくは乾熱収縮率(SH
A )を−15〜0%の範囲に定めたのは、染色および
仕上熱処理後におけるマルチフィラメントBとの糸長差
を有効に発現させて風合いを高めると共に、撚糸、製織
・製編工程およびそれらの準備工程を円滑化するための
要件として定めたものであり、SHWA が5%を超え、
あるいはSHDA が0%を超えるものでは、糸長差によ
って良好な風合いを発現させるのに織編物の状態での収
縮を過度に大きくしなければならなくなって実操業にそ
ぐわなくなり、逆にSHWA が−3%未満、あるいはS
HDA が−15%未満(これらの値がマイナスとは、熱
水処理あるいは乾熱処理によりフィラメントが伸長する
ことを意味する)になると、複合糸の段階で糸長差を生
じる恐れがあり、撚糸、製織・製編あるいはそれらの準
備工程でトラブルを起こし易くなる。この様な観点か
ら、該マルチフィラメントAのより好ましいSHWA
−2〜3%、SHDA は−10〜−2%の範囲である。
【0018】更に、マルチフィラメントA,Bの上記熱
水収縮率の差(SHWB −SHWA)および乾熱収縮率
の差(SHDB −SHDA )が不足する場合は、上記収
縮率差を設けたことの特徴が有効に発揮されにくくなる
ので、その差は好ましくは10%以上、より好ましくは
15%以上とするのがよい。但し、該収縮率差を大きく
するため、マルチフィラメントAの収縮率を過度に小さ
くし、あるいはマルチフィラメントBの収縮率を過度に
大きくすると、織編物表面に膨出するループが過度に大
きくなり、織編物製品としてパッカリングを起こしたり
アイロンかけの際に所謂「テカリ」を起こすといった傾
向が生じてくるので、こうした欠点を回避するには、上
記熱水収縮率の差および乾熱収縮率の差をいずれも60
%以下、より好ましくは50%以下に抑えるのがよい。
【0019】そして、上記の様にマルチフィラメント
A,Bの収縮率を適正に設定してやれば、撚糸セットや
サイジング等を含めた準備工程や製織編工程で障害を起
こすことなく、染色および仕上げ処理工程で行われる熱
水処理もしくは160〜180℃程度の乾熱処理によ
り、マルチフィラメントBの収縮により織編物全体が収
縮すると共にマルチフィラメントAは、該織編物を構成
する個々の複合糸の外面側にループ状に膨出し、弾ける
様な膨らみ感とソフトドライな接触感をもった織編物が
得られる。
【0020】次に、マルチフィラメントAの単糸デニー
ルは、膨出するループに適度の弾発性を与えるため3デ
ニール以上にしなければならない。但し、余り太くなり
すぎると、仕上熱処理工程でループが形成されにくくな
るので、7デニール程度以下に抑えることが望ましい。
ループの形成性とその弾発性の両面を考慮してより好ま
しいマルチフィラメントAの単糸デニールは3.5〜6
デニールの範囲である。
【0021】尚このマルチフィラメントAは、横断面に
突出した2以上、より好ましくは3以上の突起を有する
異形断面形状を有し、且つ異形度が1.1以上、より好
ましくは1.15以上のフィラメントからなり、しかも
2以上の異なる単糸デニールと横断面形状を有するもの
が好ましい。しかして、同じ単糸デニールのものであっ
ても、真円形断面形状のものでは表面反射が大で好まし
くない光沢が出易くなると共に、ループ状に膨出した滑
らかな曲線部が所謂「ぬめり」感を生じる原因になるの
に対し、2以上の突起を有する異形断面でしかも異形度
が1.1以上の横断面形状を有するフィラメントを使用
し、また2以上の異なる単糸デニールと横断面形状のフ
ィラメントを併用すると、膨出したループ自体が乱反射
を起こして嫌な光沢が抑えられてよりナチュラルな外観
が与えられると共に、接触時のぬめり感も抑制されるか
らである。
【0022】マルチフィラメントAを構成する好ましい
フィラメントの横断面形状は例えば図2(1)〜(1
0)に示す通りであり、中実で2以上の突起を有するも
の、内部に任意の形状の空洞を有し表面側に2以上の突
起を有するもの、表面に開口した湾状の空洞を有すると
共に2以上の突起を有するもの等が非限定的に例示され
る。マルチフィラメントAは、全てがこの様な断面形状
のフィラメントからなる集合体であってもよいが、20
%程度以上がその様な横断面形状を有するものであれ
ば、残りのフィラメントは通常の円形断面のものであっ
ても上記の特徴は十分に発揮される。同様の趣旨で、芯
部を構成するマルチフィラメントBについても、その一
部もしくは全部を上記の様な横断面形状のフィラメント
で構成することも有効である。
【0023】尚、マルチフィラメントAとして2種以上
の異なる単糸デニールと横断面形状のフィラメントを併
用する場合、それらフィラメント群のSHWは全て−3
%〜5%の範囲に納まるものが好ましいが、マルチフィ
ラメントA全体としてのSHWA が上記範囲に納まる限
り、上記好適範囲を若干外れる収縮率のものが少量含ま
れていても構わない。
【0024】マルチフィラメントAが複数のフィラメン
ト群からなる場合、マルチフィラメント群間の熱水収縮
率差(ΔSHW)は10%以下に抑えるのがよい。ΔS
HWが大きいということはSHWの大きいものが含まれ
ることを表わし、該当するフィラメントのデニールにも
よるが、複合糸として外面側に突出するフィラメントが
少なくなって膨らみが不十分になる傾向が生じてくるか
らである。
【0025】マルチフィラメントBについても、同様に
2種以上の異なる単糸デニールと横断面形状のフィラメ
ントを併用するのがよく、その場合もマルチフィラメン
トB全体としてのSHWB が上記範囲に納まる限り、上
記好適範囲を若干外れる収縮率のものが少量含まれてい
ても構わない。マルチフィラメントBが複数のフィラメ
ント群からなる場合、マルチフィラメント群間の熱水収
縮率差(ΔSHW)も同様に10%以下に抑えるのがよ
い。ΔSHWが大きいことは、SHWが大きいものと小
さいものが含まれていることを表わし、デニール比率に
もよるがSHWの大きいものが十分に収縮できなくなっ
て膨らみが不十分になる傾向が生じてくるので好ましく
ない。
【0026】但し、マルチフィラメントA,Bとして2
種以上の単糸デニールと横断面形状のフィラメント群を
併用するときの上記ΔSHWは、自然な斑感を与えるた
め2%以上ある方が好ましく、また単糸デニール差はC
Vで5%以上ある方が好ましい。
【0027】次に、マルチフィラメントAの破断伸度
(DEA )は50%以上とすべきである。しかして、ポ
リエステル系マルチフィラメントにおいてソフトで柔軟
な風合いを得るには、フィラメントとしてのSHWが小
さく破断伸度の大きい方が好ましいと考えられており、
本発明の複合糸で上記風合いに強く影響を与えるのは前
述の如くループ状に膨出するマルチフィラメントAであ
り、その破断伸度は高い方が好ましいからである。但
し、破断伸度が過度に大きくなると取扱い性に悪影響が
現われてくるので、該マルチフィラメントAの破断伸度
(DEA )は120%以下、より好ましくは100%以
下に抑えるべきである。
【0028】次に本発明においては、マルチフィラメン
トBとしても単糸デニールが3デニール以上のものを選
択することが必須の要件となる。その理由は次の通りで
ある。即ち、鞘部を構成するマルチフィラメントAの単
糸デニールが3デニール以上である本発明の複合糸にお
いては、芯部を構成するマルチフィラメントBの単糸デ
ニールが細くともある程度の弾力性を得ることができ、
しかも表面に膨出するループの単糸デニールが太いので
ある程度の膨らみ感も発揮される。しかし、こうした特
性が発揮されるのは織編み密度の高い布帛の場合であっ
て、織編み密度が粗である布帛になると、マルチフィラ
メントBの単糸デニールが3デニール未満では、織編物
全体としての張り、腰、弾力性が低下し、満足のいく織
編物特性が得られなくなるからである。但し、該マルチ
フィラメントBの単糸デニールが大きくなり過ぎると、
全体がごわごわしてソフトな接触感が得られなくなるの
で、好ましくは7デニール程度以下に抑えるのが良い。
【0029】また、該マルチフィラメントBの破断伸度
は40%以下であることが必要であり、この特性は、複
合糸としての巻き返し工程や製織・製編工程で複合糸が
伸長して糸斑が発生するのを防止すると共に、織編物製
品とした後の膝抜けなどを防止するために重要な特性と
なる。
【0030】本発明に係る複合糸の強度は、芯部を構成
する該マルチフィラメントBの破断強力に大きく依存し
ており、複合糸として、更には該複合糸を用いた織編物
製品としての必要強度を確保するには、該マルチフィラ
メントBとして少なくとも3.5g/d以上、より好ま
しくは3.7g/d以上とすることが必要であり、ま
た、主として織編物の収縮率を決める該マルチフィラメ
ントBの熱応力は0.3g/d以上、より好ましくは
0.35g/d以上が好ましく、該熱応力が不足する場
合は、たとえ十分な収縮率を有するものであっても、織
編物組織の拘束力によって収縮できなくなり、マルチフ
ィラメントAによるループの形成が不十分になることが
ある。
【0031】マルチフィラメントAのウースターノルマ
ル(URn:%)は、織編物としての外観とタッチにナ
チュラル感を持たせるため10%以上が好ましく、特に
URnが15%以上であるフィラメントをデニール比率
で10%以上含むマルチフィラメントAを使用すれば、
その特徴を一層効果的に発揮させることができるので好
ましい。但し、複合糸としてのURnは10%以下に抑
えるべきであり、その理由は、URnが大きくなり過ぎ
るとムラが過度に強調されて美観が損なわれるからであ
る。
【0032】上記マルチフィラメントA,Bおよび必要
により複合される他のフィラメントは、その一部もしく
は全部がたとえば5−ナトリウムスルホン酸金属塩等を
共重合したカチオン可染性のポリエステルからなるもの
が好ましく、それにより異染性を強調したりトーンを強
調し、更にはシャンブレー効果を与えるなど、幅広い用
途に適用できる複合糸を得ることができる。更に、例え
ばカオリナイト、メタカオリン等の微細孔形成材を原料
ポリマー中に0.5%程度以上含有させて微細空隙を形
成したマルチフィラメントを複合糸の一部もしくは全部
として使用すれば、減量加工によってミクロポーラスを
発現させることができ、それによりヌメリ感や光沢を抑
えて深色感を高めたりドライタッチの接触感を高めるこ
とが可能となる。
【0033】前述したマルチフィラメントA,Bの夫々
の特性を有効に発揮させ、本発明で意図する特性の複合
糸を得るには、マルチフィラメントAとマルチフィラメ
ントBを、前者:20〜80対後者:80〜20%、よ
り好ましくは前者:25〜55対後者:75〜45%の
デニール比率で複合すると共に、それらの交絡度を20
〜100個/m、より好ましくは35〜90個/mとす
ることが重要となる。
【0034】しかして、マルチフィラメントAの複合比
率があまりに少なくなると、言い換えるとマルチフィラ
メントBの複合比率が多くなり過ぎると、フィラメント
Aに期待される前述の様な効果が十分に発揮されなくな
り、複合糸、更にはこれを用いた織編物に前述の様な特
性が与えられなくなり、逆にマルチフィラメントAの複
合比率があまりに多くなると、言い換えるとマルチフィ
ラメントBの複合比率が少なくなり過ぎると、フィラメ
ントBによる熱収縮が不十分になってやはり満足のいく
織編物特性が発揮できなくなる。
【0035】また、それらマルチフィラメントの交絡度
が20個/m未満では、複合糸としての処理工程あるい
は製織・製編工程等で複合糸がばらけ易くなり、取扱い
が困難になるばかりでなく製織・製編工程等でトラブル
を起こし易く且つ布帛としての品質も低廉で不安定なも
のとなる。しかし交絡度が過度に高くなると、交絡処理
工程でマルチフィラメントAのモノフィラメントが切れ
て毛羽立つ恐れが生じてくるので、100個/m以下、
より好ましくは80個/m以下に抑えることが望まし
い。
【0036】更に本発明の複合糸においては、熱処理後
のマルチフィラメントBの収縮によってマルチフィラメ
ントAをループ状にうまく膨出させるため、マルチフィ
ラメントAを鞘部、マルチフィラメントBを芯部とする
芯/鞘構造とすることが好ましい。ここでいう芯/鞘構
造とは、マルチフィラメントAとBが芯部と鞘部に完全
に2分された複合構造のものを言う訳ではなく、複合糸
全体として芯部側はマルチフィラメントBリッチで鞘部
側はマルチフィラメントAがリッチであり、境界部では
両者が混合状態で存在するものも含まれ、通常の複合糸
ではむしろこの様な複合形態を取ることの方が多い。
【0037】尚、本発明の複合糸は上記の交絡処理によ
ってある程度の収斂が与えられているので、無撚りのま
までも使用できるが、適度に撚りを与えることも可能で
ある。しかし、撚りを強くかけ過ぎると、熱収縮による
ループの形成が阻害されるので、好ましくは撚係数(T
√D)で20000程度以下に抑えるのがよい。
【0038】次に、本発明を具現するための具体的な方
法および装置について説明する。図3は、本発明の複合
糸を製造する装置を例示する概略説明図であり、この様
な装置を使用すれば、低熱収縮糸や熱伸長糸(SHWが
負のもの)を用いた場合でも、(弛緩)熱処理した後所
定の高収縮糸と複合し交絡を容易に行なうことが可能と
なる。
【0039】図3において、1はガイド、2はフィード
ローラ、3はホットローラ、4は延伸ローラ、5は非接
触式ヒーター、6は第1デリベリーローラ、7は交絡装
置、7aはエアジェットノズル、8は第2デリベリーロ
ーラ、9はドラム、10はテークアップチーズを示し、
ガイド1からフィードローラ2およびホットローラ3を
経て延伸ローラ4との間で、エマルチフィラメントAは
予熱・延伸された後、非接触式ヒータ5によって熱処理
されて第1デリベリローラ6へ送り込まれる。そして該
第1デリベリローラ6の部分でマルチフィラメントBと
合流し、交絡装置7で適度の交絡処理が施され、第2デ
リベリローラ8で送り出されることによって、本発明の
複合糸Cとされる。得られた複合糸Cはドラム9により
回転するテークアップチーズ10によって連続的に巻取
られる。
【0040】原料として用いられるマルチフィラメント
Aとしては、前述の如く所定範囲の単繊維デニール、熱
水収縮率、乾熱収縮率および破断伸度を有するポリエス
テル繊維を使用する。該マルチフィラメントAの熱水収
縮率、乾熱収縮率、破断伸度は、紡糸延伸時の延伸率、
延伸ローラ温度、延伸後のホットプレート温度等を調整
したり、延伸ローラの後にリラックス状態で熱処理でき
るローラを設置する等によって調整することが可能であ
る。
【0041】熱処理で伸長するマルチフィラメントAを
得るには、まず紡糸速度を1500〜4000m/mi
n程度、好ましくは2000〜4000m/minで紡
糸(このときの単繊維デニールは、紡糸・延伸・弛緩熱
処理後の単繊維デニールで3デニール以上を確保できる
様に紡糸ノズルの大きさを調整)して得た未延伸糸を、
延伸温度Tg(ポリエステルのガラス転移点)〜Tg+
20℃程度で且つ延伸後の破断伸度が30〜45%、複
屈折率(Δn)が0.10〜0.14程度となる様に延
伸する。このときの紡糸速度が1500m/min未満
では、延伸後のフィラメント物性が不安定になり、また
4000m/minを超えると、延伸後の収縮率が低く
且つ自発伸長率も低くなるので好ましくない。延伸温度
は、安定した延伸状態を得るため原料ポリエステルのT
g以上にすべきであるが、Tg+20℃を超える高温に
なると結晶化が進み、自発伸長性が低下傾向を示す様に
なるので好ましくない。延伸倍率も自発伸長性発現にと
って重要であり、延伸時の糸切れ防止など操業面からす
ると破断伸度が30%以上となる様な延伸倍率を採用す
ることが望ましいが、破断伸度が45%を超えると糸斑
が発生し易くなるので注意しなければならない。
【0042】また複屈折率(Δn)の好ましい範囲を
0.10〜0.014の範囲としたのは、この範囲外で
はリラックス熱処理による自発伸長性が不安定になるか
らである。自発伸長性を与えるために行なわれる非接触
式ヒータ−によるリラックス熱処理は、繊維デニールや
処理速度、目標とする伸長率などによっても異なるが、
ヒーター温度は170℃〜(Tm−10℃)(Tm:ポ
リエステルの融点)の範囲が好ましく、ヒーター温度が
(Tm−10℃)を超えると、ドッフィング停台中にヒ
ーターの熱で糸が溶断を起こして再起動性が低下し、実
用化が困難になる。
【0043】自発伸長糸を得る他の方法として、250
0〜4000m/minで溶融紡糸したΔn0.03〜
0.05程度のポリエステルフィラメントを、特定条件
でリラックス熱処理したり、更に高速生産を可能にする
ため、紡糸・延伸処理後に80〜100℃程度に予熱し
てから弛緩熱処理を行なう方法も好ましい方法として採
用できる。
【0044】引取りローラによる引取り速度は、操作
性、操業性の面から100〜1500m/min、ヒー
タ−としては、高弛緩率での引取りを行なうときは非接
触式ヒーターが好ましいが、低収縮化を図るときは接触
式ヒータ−であっても構わない。
【0045】そして、上記マルチフィラメントAとは別
個に製造した高収縮性のマルチフィラメントBと、必要
に応じて複合することのある他のフィラメントを合わせ
て、交絡数が20〜100個/mの範囲となる様にイン
ターレースノズルで交絡すると、本発明の複合糸を得る
ことができる。
【0046】また、この様にして得られる本発明の複合
糸を使用し、常法に従って製織もしくは製編した後、染
色および仕上加工を施すと、該織編物を構成する複合糸
内のマルチフィラメントBが収縮すると共に、収縮率の
小さいマルチフィラメントAは織編物の表面にループ状
に膨出し、弾ける様な膨らみ感と軽量感、ソフトドライ
な接触感、適度なハリ・腰・ドレープ性を有すると共
に、自然なムラ感を有する織編物を得ることができる。
【0047】
【実施例】次に実施例および比較例を挙げて本発明をよ
り具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例に
よって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適
合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論
可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含
まれる。
【0048】尚、下記実施例で採用した各物性の測定法
は下記の通りである。 (1)破断強度、伸度 JIS L 1013(1992)に準拠し、東洋ボー
ルドウイン社製引張り試験機:商品名「テンシロン」を
用いて、試料長(ゲージ長)200mm、引張速度20
0mm/minでS−S曲線を測定し、破断強度と伸度
を算出する。 (2)熱水収縮率(SHW) JIS L 1013(1992)に準拠し、下記の方
法によって測定する。即ち、適当な枠周のラップリール
で初荷重1/10g/デニールで8回卷のカセを取り、
該カセに1/30g/デニールの荷重をかけてその長さ
0 (mm)を測定する。次いでその荷重を取り除き、
1/1000g/デニールの荷重をかけた状態でカセを
100℃の沸騰水中に30分間浸漬する。その後、カセ
を沸騰水から取り出して冷却した後、再び1/30g/
デニールの荷重をかけてその時の長さL1 (mm)を測
定し、下記式によって熱水収縮率(SHW)を算出す
る。 SHW=(L0 −L1 )×100÷L0 (%)
【0049】(3)乾熱収縮率(SHD) JIS L1013に準拠し、SHWと同様の方法で8
回巻きのカセを取り、先ず1/30g/デニールの荷重
をかけてその長さL3 (mm)を測定し、次いでその荷
重を取り除き、1/1000g/デニールの荷重をかけ
た状態でカセをオーブン中に30分間入れ、その後カセ
を取り出して冷却した後再び1/30g/デニールの荷
重をかけてその時の長さL4 (mm)を測定し、下記式
によってSHDを算出する。 SHD=(L3 −L4 )×100÷L3
【0050】(4)交絡度 適当な長さの糸を採取し、下端に1/10g/デニール
の荷重をかけて垂直に吊り下げる。次いで適当なニード
ルを糸に突き刺し、静かに持ち上げてニードルが停止し
た長さL(cm)を100回測定し、該測定値の平均値
(L:mm)から、下記式によって交絡度を算出する。 交絡度=100÷(2×L)
【0051】(5)ウースターノルマル(URn) ツェルベガー社製の「ウースターイーブネステスターC
型」を使用し、糸速度50m/minで走行させて仮撚
を付与しつつ、試料のデニールに応じたスロットにより
ノーマルで2分間、2.5cm/minで測定チャート
を描く。次いでチャートを2.5cmで2分割し、夫々
の最高値(M1,2)/最低値(L1,2)を読み取
り、その値から下記式によって算出する。 URn=[(M1+M2)+(|L1|+|L2|) (6)異形度 適当な倍率でフィラメントの横断面を撮影し、内接円と
外接円の比から算出する。
【0052】実施例1〜4、比較例1〜6 後記表1,2において、マルチフィラメント構成素材の
種類を示す「ポリマー」の列に記載した符号の意味は下
記の通りである。 R:レギュラーポリマーを意味し、TiO2 を0.3%
配合したIV(固有粘度)が0.6のポリエチレンテレ
フタレート、 C:全酸成分に対して2.0重量%の5−ナトリウムス
ルホイソフタル酸を併用すると共に、ポリエステル基準
で2.0重量%のエチレングリコールを用いたカチオン
可染性共重合ポリエステル、 K:カオリン(Engelhard社製、商品名「AS
P−072」:粗粒子を遠心分離機で10%除去した屈
折率1.56、平均粒子径0.3μmの粒子)を2.0
重量%配合したポリエチレンテレフタレート、 I:酸成分としてイソフタル酸を10モル%併用した共
重合ポリエステル。
【0053】上記各原料ポリエステルを使用し、常法に
従って引取速度1800m/minで紡糸し、次いで延
伸した後のデニール、破断強度、熱水収縮率、横断面形
状、異形度が表1に示す特性となる様に、紡糸時の吐出
量、ノズル断面、延伸倍率、ホットプレート温度、2次
セット条件等を変更した。
【0054】また、熱により伸長するフィラメント(S
HWが負のもの)は、特記する以外のものは紡糸引取り
速度を3000m/minとし、あとは熱収縮性のマル
チフィラメントBと同様にして紡糸時の吐出量、ノズル
断面、延伸倍率、セット条件を変更し、更に図3のリラ
ックス−複合機で他の糸と複合した後、インターレーサ
ーで所定の交絡度(Di)が得られる様に、フィード比
とエアージェット圧を調整した。エアーノズルとして
は、ファイバーガイド社製の「エアージェットFG−
1」を用いた。
【0055】得られた各複合糸に通常の方法で撚りを加
えた後低温サイジング(乾燥温度75°)し、次いで緯
糸に市販の東洋紡績社製ポリエステル繊維「エステルE
75−72−729」(実施例2は「E150−96−
729」)を用いて、通常の撚糸機で「SZ3000T
/M」(実施例2では「SZ2800T/M」)を使用
してデシンを製織し、染色仕上した後織物としての風合
いと外観を判定した。また工程通過性として特に撚糸、
捲返し、製織性を調べ、風合いと工程通過性の両面から
みた総合判定結果を表1,2に示した。
【0056】尚実施例2では、マルチフィラメントAと
して表示したマルチフィラメントaと共に下記構成のマ
ルチフィラメントbを併用した。 マルチフィラメントb: dpf×本数=5.5×3、断面=8葉、異形度=1.
1、DT=2.9、DE=80.0、SHW=−0.
5、SHD=−5.0、URn=12.5、ポリマー=
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】表1,2より次の様に考察することができ
る。実施例1〜4は本発明の規定要件を全て満足する例
であり、弾ける様な膨らみ感とソフトな接触感を有する
と共に、適度のハリ・腰・ドレープ性と自然なムラ感を
有しており、しかも工程通過性も非常に良好であった。
これらに対し、本発明で規定するいずれかの要件を外れ
る比較例では、下記の様に複合糸としての品質あるいは
工程通過性のいずれかに問題がある。
【0060】比較例1:マルチフィラメントAの単繊維
デニールが1.7dと細過ぎるため、弾ける様な膨らみ
感が得られず、またマルチフィラメントBの破断強度が
不足するため複合糸としての強力が低くて工程通過性が
悪く、且つ織物特性も満足し得るものとは言えない。更
に、マルチフィラメントBおよび複合糸の破断伸度が大
き過ぎるため、織物製品とした後にパッカリングの発生
が認められた。
【0061】比較例2:マルチフィラメントAのデニー
ル比率が不足すると共にフィラメント本数も2本と少な
く、またマルチフィラメントBのデニール比率が高過ぎ
るため、織物製品表面へのループ膨出量が少なく、満足
な膨らみと弾発性が得られない。
【0062】比較例3:マルチフィラメントBの単繊維
デニールが細過ぎるため、織物としてのハリと腰が不足
している。また、マルチフィラメントAの断面形状が丸
であるため複合糸としての光沢が大きく、織物としてや
や深みに欠けると共にヌメリ感が認められた。
【0063】比較例4:マルチフィラメントAの熱水収
縮率と乾熱収縮率が規定範囲を超えるため、織物表面へ
の膨らみが不十分であり、また破断伸度も低いため、太
デニールフィラメント特有のゴワゴワした外観と接触感
になった。更に、フィラメントBの断面形状が丸である
ため複合糸としての光沢が大きく、織物としてやや深み
に欠けると共にヌメリ感が認められた。
【0064】比較例5:マルチフィラメントBの熱水収
縮率と乾熱収縮率が小さいため、上記比較例4と同様に
織物表面への膨らみが不十分であった。 比較例6:マルチフィラメントBの熱水収縮率と乾熱収
縮率が高過ぎるため、織物表面の荒れが顕著となり、膝
抜けが発生した。
【0065】比較例7:交絡度が低いため、撚糸工程お
よび製織工程でフィラメントの引っ掛かり等が発生し、
工程通過性に問題があると共に得られた織物の外観も不
良であった。 比較例8:交絡度が高過ぎるためモアレが発生し、織物
としての外観が不良であった。
【0066】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、熱
水収縮率、感熱収縮率、単繊維デニール、破断伸度等の
特定された2種のマルチフィラメント糸を、適当なデニ
ール比率で適度に絡合させることにより、製織後の染色
および仕上げ加工によって、弾ける様な膨らみ感と軽量
感、ソフトドライな接触感、適度なハリ・腰・ドレープ
性を有すると共に、自然なムラ感を有する織編物を与え
る新規なポリエステル系マルチフィラメント複合糸を提
供すると共に、この複合糸を用いて製織・製編すること
により、優れた品質のポリエステル系複合繊維織編物を
提供し得ることになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るマルチフィラメント複合糸の熱処
理後の状態を拡大して示す説明図である。
【図2】本発明で用いられるマルチフィラメントを構成
するフィラメントの好ましい横断面形状を示す説明図で
ある。
【図3】本発明に係る複合糸の製造工程を例示する概略
説明図である。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の糸物性を有するポリエステル系マ
    ルチフィラメントAとポリエステル系マルチフィラメン
    トBとが、前者:20〜80%、後者80〜20%のデ
    ニール比率で複合されると共に、それらが交絡度20〜
    100個/mで絡合した複合糸からなることを特徴とす
    るポリエステル系マルチフィラメント複合糸。 ポリエステル系マルチフィラメントA: dpfA :3デニール以上、DEA :50%以上であ
    り、且つSHWA :−3〜5%またはSHDA :−15
    〜0%、 ポリエステル系マルチフィラメントB: dpfB :3デニール以上、DTB :3.5g/d以
    上、DEB :40%以下であり、且つSHWB :5〜6
    0%またはSHDB :10〜80%、 但し、 dpfA およびdpfB は、ポリエステル系マルチフィ
    ラメントAおよびBの単繊維デニール、 SHWA およびSHWB は、ポリエステル系マルチフィ
    ラメントAおよびBの熱水(100℃)収縮率(%)、 SHDA およびSHDB は、ポリエステル系マルチフィ
    ラメントAおよびBの乾熱(160℃)収縮率(%)、 DEA およびDEB は、ポリエステル系マルチフィラメ
    ントAおよびBの破断伸度(%) DTB は、ポリエステル系マルチフィラメントBの破断
    強度(g/d)を夫々表わす。
  2. 【請求項2】 マルチフィラメントA,Bの熱水収縮率
    の差(SHWB −SHWA )または乾熱収縮率の差(S
    HDB −SHDA )が10〜60%である請求項1に記
    載の複合糸。
  3. 【請求項3】 少なくともポリエステル系マルチフィラ
    メントAが、横断面形状において2以上の突起を有する
    と共に異形度が1.1以上であるフィラメントの集合体
    である請求項1または2に記載の複合糸。
  4. 【請求項4】 マルチフィラメントAおよびBの全部も
    しくは一部が、カチオン可染性ポリエステルからなるも
    のである請求項1〜3に記載の複合糸。
  5. 【請求項5】 マルチフィラメントAおよびBの全部も
    しくは一部が、微細孔形成剤を0.5重量%以上含有す
    るポリエステルからなるものである請求項1〜4のいず
    れかに記載の複合糸。
  6. 【請求項6】 少なくともマルチフィラメントBのウー
    スターノルマル(URn)が15%以上である請求項1
    〜5のいずれかに記載の複合糸。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれかに記載されたポ
    リエステル系マルチフィラメント複合糸を少なくとも一
    部として用いて製織もしくは製編した後、染色および仕
    上げ加工を施し、織編物表面に前記ポリエステル系マル
    チフィラメントAをループ状に膨出させることを特徴と
    するポリエステル系複合織編物の製法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11247048A (ja) * 1998-03-02 1999-09-14 Toyobo Co Ltd ポリエステル複合糸織物およびその製造方法
JP2008231598A (ja) * 2007-03-19 2008-10-02 Teijin Fibers Ltd カチオン可染性ポリエステル異型断面糸及びその用途
JP2008231599A (ja) * 2007-03-19 2008-10-02 Teijin Fibers Ltd カチオン可染ポリエステル中空断面糸
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