JP2833052B2 - ポリエステル複合糸条 - Google Patents

ポリエステル複合糸条

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明はソフトで柔軟かつ上品なドライタッチと適度
なはり、腰、優雅な光沢と深色感に優れた新規なポリエ
ステル複合糸条に関する。
(従来の技術) これまでポリエステルマルチフィラメントはそのすぐ
れた特性を生かし衣料用途をはじめ工業資材用としても
各種の用途に使用されている。衣料用途としては絹様風
合はその一つのターゲットとして各社で検討が進められ
一部の分野では絹を凌駕する特性風合が得られている。
例えば熱収縮特性を異にする複数本のポリエステルマル
チフィラメントからなる複合糸条はふくらみ、嵩高、ウ
ォーム感などすぐれた特性、風合を示し広く使用されて
いる。しかし糸情を構成するマルチフィラメントが全て
熱により収縮する場合には、織物の組織の拘束力のた
め、糸のもっている収縮率差が充分確保出来ないととも
に糸の収縮のため織物が硬くなる傾向にあり、このため
目付を小さくして収縮代をもたせたり、風合を確保する
ためにアルカリ減量率を大きくするなどの対策を実施し
て来た。しかし熱収縮率の大きなフィラメントは一般に
熱処理すると硬化し風合面で充分に満足出来るものは得
られていない。これに対して熱処理により伸長するポリ
エステルフィラメントと収縮するフィラメントの混合糸
も知られており、例えば特開昭55−62240号公報、特開
昭56−112537号公報、特開昭60−28515号公報などがあ
る。これらのものは前記の収縮糸同士のものに比べると
はるかにソフトで柔軟な風合が得られたものの、後工程
でしごかれたり、熱処理されると糸が分離し工程通過性
に問題があった。
(発明が解決しようとする問題点) 本発明はポリエステルフィラメントにおける前記従来
の欠点を解消したものであってソフト、柔軟さ、上品な
ドライタッチと適度なはり、腰、優雅な光沢と深色感に
優れしかも後工程通過性に問題のない新規なポリエステ
ル複合糸条を提供することを目的とする。
(問題点を解決するための手段) 本発明はかかる問題点を解決するために次のような構
成を有する。すなわち糸物性が下記範囲を満足するマル
チフィラメントAおよびマルチフィラメントBから構成
されたポリエステル複合糸条であって、該複合糸条は交
絡度20〜100コ/mで絡合されていることを特徴とするポ
リエステル複合糸条。
マルチフィラメントA:単繊維繊度か7デニール以下で
短軸と長軸の比が1:3以上、且つ長軸の略直線部分の長
さが実質的に10μm以上のフィラメントからなるマルチ
フィラメント(複合糸条の含有率20〜80%〔デニール比
率〕)…(A) マルチフィラメントB:破断強度が4g/デニール以上で
あるマルチフィラメント(複合糸条中の含有率80〜20%
〔デニール比率〕)…(B) SHW(A)≧0% SHD(A)≦0% SHW(B)≧0% SHD(B)−SHD(A)≧5% SHW:熱水(100℃)収縮率(%) SHD:乾熱(160℃)収縮率(%) 以下、本発明を更に詳細に説明する。
第1図は本発明のポリエステル複合糸条を熱処理して
糸長差を発現せしめた後のモデル図である。第1図にお
いてAは主として鞘部を構成するマルチフィラメントで
あって、高温熱処理により実質的に伸長している(自発
伸長後のマルチフィラメント)。Bは芯部を構成するマ
ルチフィラメントであって、熱処理により収縮したマル
チフィラメントである(熱収縮後のマルチフィラメン
ト)。
まず本発明で最も重要な要件である構成マルチフィラ
メントの熱収縮特性について述べる。本発明のポリエス
テル複合糸条を構成するマルチフィラメントAは通常の
サイジングなどの工程では、マルチフィラメントBとの
収縮率差は小さくし、しかも実質的に収縮挙動を示す。
このため布帛で同じ糸長差を発現させるときにも糸段階
ではサイジングしても糸長差(ふくらみ、ループ等)は
余り発現せず通常の全て熱収縮する異収縮混繊糸に比べ
ても製織時にははるかに取扱性、製織製が良好となるの
である。すなわち糸の状態で糸長差(ループ)が発現す
ると当然のことながらビーミング製織の際ループがこす
れ合ってガイド、コームなどにひっかかったり、開口が
悪くなり工程通過性が著しく低下する。更に通常の熱収
縮マルチフィラメントはサイジングなどで熱処理をうけ
ると、それでほぼ熱セットが固定されファイナルセット
などで160〜180℃程度の高温熱処理をうけても糸長差は
最初の熱セット時以上あまり発現しないが、本発明の複
合糸条の如く、熱水では収縮するがファイナルセットに
相当する高温熱処理で伸長するマルチフィラメントを含
むことにより、全体として収縮した布表面より高温での
仕上加工によりマルチフィラメントAがループ状に突出
し、あたかもピーチの表面のようにソフトで柔軟なタッ
チが得られるのである。このためにSHW(A)≧0%、S
HD(A)≦0%が必須である。更にふくらみ、嵩高性を
もたせるためにSHD(B)−SHD(A)≧5%が必須であ
り、5%未満ではふくらみ、嵩高性が劣るので本発明か
らは除外される。ただ余り大きいと表面からの突出ルー
プが大きくなりすぎアイロンなどの際“てかり”などの
問題が発生し易いので50%以下が好ましい。又同様の理
由でSHW(A)は5%以下、SHD(A)は−15%以上が好
ましい。
次にマルチフィラメントAの短軸と長軸の比は1:3以
上であることが必要であり、1:3未満では長軸方向の曲
げ特性に大きな差がなく、又端部の効果も小さくソフト
で柔軟かつドライタッチな本発明特有の風合が得られな
いので、本発明からは除外される。但し、短軸と長軸の
比があまりに大きすぎるとクエンチでの糸切れ、ローラ
ータッチでの糸通の不安定さに加え、フィラメント単位
に開繊しやすいので、紡糸操業性及び後加工通過性に問
題が出てくるため、1:7以下であることが好ましい。こ
こで本発明の短軸と長軸の比が1:3以上のマルチフィラ
メントAの横断面は第3図に示す如く、基本的には長円
又は矩形であり、この場合長軸をa、短軸をbとしたと
きa/bで表す。
更に優雅な光沢と深色感を得るためには、長軸の略直
線部分の長さは10μm以上、好ましくは20μm以上であ
れば良い。この場合、長軸の略直線部分とは、第3図に
示すlで表わし、この場合収縮にともなう通常の曲線部
は、直線部とする。
次にマルチフィラメントAの破断伸度が50%以上であ
ればソフトで柔軟な風合を得る点で好ましい。
一般にポリエステルではソフトな風合を得るためには
フィラメントのSHWは小さく、破断伸度が大きい方が得
られ易い。これまでに詳述した如く布帛の表面をループ
を形成して覆うのは自発伸長マルチフィラメントであ
り、このマルチフィラメントのタッチが布帛のタッチを
決めるからである。しかしあまり破断伸度が大きすぎる
と取扱性が悪くなるので100%以下、更に好ましくは80
%以下が良い。
次にマルチフィラメントBの破断進度は40%以下が好
ましく、捲返し、製編織などの後工程で複合糸条が伸長
されることによる糸斑が発生しないためである。更に布
帛にしたあと製品でのひざ抜けなどの問題を防止するた
めである。又複合糸条の破断強力も熱収縮マルチフィラ
メントにほぼ依存するので熱収縮、マルチフィラメント
の破断強力は、少なくとも4g/デニールで且つ複合糸条
でのデニール比率で20%以上でなければならない。もち
ろん破断強力が高ければマルチフィラメントBの比率は
若干低くてもよいが20%未満ではマルチフィラメントB
の収縮力が小さくなり糸長差によるふくらみが発現され
ないので本発明からは除外される。尚、マルチフィラメ
ントBの熱水収縮率および160℃乾熱収縮率はそれぞれ
5〜60%、7〜80%が好ましい。
また、マルチフィラメントBの繊維軸方向に太さムラ
を有する所謂シックアンドシン糸であってもよい。但
し、その場合、熱水収縮率は5〜30%であればよい。
シックアンドシン糸は、後加工後の糸物性の保持とい
った面から考えると配向度(Δn)はシン部が15〜60×
10-3、さらに好ましくは20〜40×10-3、シック部が90×
10-3以上、さらに好ましくは160×10-3以上がよい。一
般にシックアンドシン糸を染色すると濃淡差を呈する
が、その濃淡差が強過ぎるといった欠点があったが、か
かる発明の混織糸は熱処理することによりシックアンド
シン糸が内層部に、マルチフィラメントAは外層部に配
され、シックアンドシン糸の強過ぎる濃淡差がほどよく
マルチフィラメントA糸にかくされてナチュラルな糸調
差となる。次にマルチフィラメントAは、単糸デニール
は7デニール以下のものから構成される必要がある。7
デニールを越えると破断進度が大きく、ヤング率が低く
ても風合が粗硬になるので本発明からは除外される。し
かしあまり細くなると、はり、腰光沢がなくなるため0.
5デニール以上、更に3デニール以上が好ましい。但
し、7デニール以上のものが混じっていてもよく(デニ
ールミックス)平均で7デニール以下ならばよい。又フ
ィラメント本数は5本以上が好ましく、5本未満であれ
ば偏平糸の効果が減少するので好ましくない。
一般的に破断伸度が大きいフィラメントはヌメリ感が
出易いが、本発明の複合糸条では、マルチフィラメント
Aの単糸断面長軸方向に規則性がないため点接触部が増
加し、ヌメリ感がなくなる。更にフィラメントは、断面
の長軸面に少なくとも1つの凸部を有する第3図2、3
の如き偏平断面形状であってもよい。
本発明でもちいるフィラメントAの断面形状の代表例
を第3図に示す。
次に本複合糸条は実質的に芯/鞘構造をとるのはマル
チフィラメントAが複合糸条の表層部に多く存在するこ
とにより、布帛表面よりループが突出し易いからであ
る。また、ここでいう実質的に芯/鞘構造をとるとは、
複合糸条の或る界面で芯部と鞘部に即ちマルチフィラメ
ントBとマルチフィラメントAとに二分されている構造
のみを意味しているではなく、複合糸条全体に特に境界
面付近で両成分が混在しており、マルチフィラメントB
が主として芯部に自発、マルチフィラメントAが主とし
て鞘部に配する構造をも意味しており該複合糸条の中心
から半径1/3内は重量比率でマルチフィラメントBがマ
ルチフィラメントAより大きく、複合糸条の表面から半
径1/3内はマルチフィラメントAがマルチフィラメント
Bより大きいものは本発明の範囲内である。尚、芯/鞘
構造および前述したデニール比率の測定は該複合糸条を
エポキシ樹脂で固定し、ランダムに100回断面を切断し
たものを光学顕微鏡で観測し、これより平均値および状
態を求める。又交絡度20〜100で絡合されていることも
必須である。交絡度が20未満ではマルチフィラメント同
士、糸長差で糸が分離し易く、工程通過性を著しく阻害
する。
逆に交絡度が100を越えると布帛でインターレース斑
が目立つとともに、マルチフィラメントAのモノフィラ
メントが切断し、毛羽にもなることもあり好ましくない
のである。
次にマルチフィラメントBの断面は特に限定はない
が、嵩高性をもたせるためには中空糸を、ソフトさ、ド
ライタッチ、光沢、深色感をさらに強調するためにはマ
ルチフィラメントAと同様に断面形状を偏平にするのも
好ましい。
更に本発明のポリエステル複合糸条にはマルチフィラ
メントA成分とマルチフィラメントB成分の両方又は一
方に必要に応じ5−ナトリウムスルホン酸金属塩、イソ
フタル酸などの共重合物や微粉不活性物質を含んだポリ
エステル繊維を含んでもよい。
次に本複合糸条を加撚すると、ソフトではり、腰があ
り、シャリ味のあるものが得られる。しかし、あまり強
撚されると糸長差が発現し難いので15000/√D(T/m)
以下であることが好ましいが、ソフト、柔軟さ、光沢を
要求しない場合は必ずしもこれら限定されない。
なお、本発明で実施した測定方法は以下の通りであ
る。
(1) 破断伸度 JIS−L−1013(1981)に準じ、東洋ボールドウィン
社製テンシロンを用いて試料長(ゲージ長)200mm、引
張速度200mm/分でS−S曲線を測定し、破断伸度を算定
した。
(2) 熱収縮率(SHW)、乾熱収縮率(SHD) JIS−L−1073に準じ、次によった。即ち適当な枠周
のラップリールで初荷重1/10g/デニールで8回捲のカセ
をとり、カセに1/30g/デニールの荷重をかけその長さl0
(mm)を測定する。ついでその荷重をとり除き、1/1000
g/デニールの荷重をかけた状態でカセを沸騰水中に30分
間浸漬する。その後カセを沸騰水から取り出し、冷却後
再び1/30g/デニールの荷重をかけてその時の長さl1(m
m)を測定する。SHDはSHWと同様の方法でかせをとりl0
ついで60℃で30分乾燥した後1/1000g/デニールの荷重を
かけた状態で乾熱160℃のオーブン中で熱処理する。つ
いで冷却後再び1/30g/デニールの荷重をかけてそのとき
の長さl2(mm)を測定する。熱水収縮率(SHW)、乾熱
収縮率(SHD)は次式により算出される。
(3) 交絡度 適当な長さの糸をとり出し、下端に1/10g/デニールの
荷重をかけて垂直につり下げる。ついで適当な針を糸中
につき出し、ゆっくり持ち上げ荷重が持ち上がるまでに
移動する距離l(cm)を100回測定し、これより平均値
l(cm)を求める次式により算出する。
(4) 扁平度 アクリル系樹脂で処理した試料フィラメントからミク
ロトームで切り出した切片を400倍の倍率で撮影し、第
3図に示すb:aで表す。
以下の実施例により本発明の構成および作用効果を説
明するが、本発明はもとより下記実施例により制約を受
けるものではない。
(実施例) 熱伸長マルチフィラメントとして通常のポリエチレン
テレフタレートを常法により紡速3000m/minで紡糸捲取
り、偏平断面の32デニール18フィラメントの未延伸糸を
得た。この時の偏平率は1:5であった。この未延伸糸を
第2図に示す装置により延伸、リラックス熱処理を行
い、引きつづき、熱収縮マルチフィラメント糸Bとし
て、エチレンイソフタレートを10モル%共重合させたポ
リエチレンテレフタレートマルチフィラメント糸で、SH
W(B)=65%、SHD(B)=75%の30デニール18フィラ
メントと混繊を行い複合糸条を捲き取った。
この時熱伸長マルチフィラメントの延伸条件は延伸倍
率1.6、延伸温度82℃としリラックス条件としてリラッ
クス率45%でリラックス温度190℃(非接触ヒーター長5
0cm)でデリベリー速度500m/minにて作成し、29デニー
ル18フィラメントでSHW(A)=0.5%、SHD(A)=−
4.0%、DE80%であった。
又、混繊はエアーノズル7としてファイバーガイド社
製エアージェットFG−1を使用しフィー?上記により得
られた59デニール36フィラメントの複合糸条にS撚400T
/mの追撚を施し、経糸として無糊で整経した。緯糸にも
経糸と同じ59デニール36フィラメントの複合糸条にS400
T/mの追撚を施し、ウォータージェットルーム(津田駒
社製ZW−200、回転数550rpm)で経糸密度165本/inch緯
糸密度85本/inchに織り上げ、通常の異収縮混繊糸使い
の織物と同じ条件で、加工し、経糸密度185本/inch緯糸
密度97本/inchの仕上布とした。この時の減量率は20%
で実施した。又、比較として熱伸長マルチフィラメント
を丸断面とする以外は実施例と同法にて織物を得た。
本発明のポリエステル複合糸条を使用したものは、製
織準備、製織工程で良好な通過性を示すとともにドライ
タッチでかつソフトな風合、はり、腰にすぐれたもので
あった。それに対し、比較例のものは、風合が粗硬で、
織物光沢も充分なものでなかった。
(発明の効果) 以上の様に本発明のポリエステル複合糸条は、従来の
幾収縮混織糸(熱伸長糸も含む)に比べてソフト、柔軟
性があり、かつドライタッチと適度なハリ、腰を有し、
しかも優雅な光沢と深色感に優れ、さらに工程通過性も
すぐれているという顕著な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のポリエステル複合糸条を熱処理して糸
長差を発現させたモデル図。第2図は製造装置の一例を
示す略側図面である。 第3図は本発明のマルチフィラメントAの断面形状の代
表例を示す。 第4図は、本発明のポリエステル複合糸条のフィラメン
トの分布状態を示す代表例である。 A:熱伸長マルチフィラメント B:熱収縮マルチフィラメント C:本発明のポリエステル複合糸条 3:ホットローラー 5:非接触ヒーター 7:エアージェットノズル

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】糸物性が下記範囲を満足するマルチフィラ
    メントA及びマルチフィラメントBから構成されたポリ
    エステル複合糸条であって、該複合糸条は交絡度20〜10
    0コ/mで絡合されていることを特徴とするポリエステル
    複合糸条。 マルチフィラメントA:単繊維繊度が7デニール以下で短
    軸と長軸の比が1:3以上、且つ長軸の略直線部分の長さ
    が実質的に10μm以上のフィラメントからなるマルチフ
    ィラメント(複合糸条中の含有率20〜80%〔デニール比
    率〕)…(A) マルチフィラメントB:破断強度が4g/デニール以上であ
    るマルチフィラメント(複合糸条中の含有率80〜20%
    〔デニール比率〕)…(B) SHW(A)≧0% SHD(A)≦0% SHW(B)≧0% SHD(B)−SHD(A)≧5% SHW:熱水(100℃)収縮率(%) SHD:乾熱(160℃)収縮率(%)
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