JPH09105463A

JPH09105463A - 金属製ガスケット

Info

Publication number: JPH09105463A
Application number: JP7286355A
Authority: JP
Inventors: Kazukuni Takada; 和邦高田; Hiroshi Uemura; 浩植村; Masahiko Miura; 正彦三浦; Kazuya Nakada; 和哉中田; Zenichi Shinpo; 善一新保
Original assignee: Nippon Gasket Co Ltd; Toyota Motor Corp
Current assignee: Nippon Gasket Co Ltd; Toyota Motor Corp
Priority date: 1995-10-09
Filing date: 1995-10-09
Publication date: 1997-04-22
Anticipated expiration: 2015-10-09
Also published as: KR970021864A; KR100449410B1; DE19638682B4; CN1151492A; DE19638682A1; JP3230966B2; US5791659A; CN1088813C

Abstract

(57)【要約】【課題】本発明は、ビードを形成した一対のビード基
板及び第１と第２の段差を形成した中間板から構成し、
一方にビード基板に補助ビードを形成し、ビードの全圧
縮を防止すると共にシール性をアップする。【解決手段】金属製ガスケットは、孔９に沿ったビー
ド３，４を有するビード基板１，２と、両者間の中間板
５から成る。中間板５には、孔９に沿ってビード３，４
の内側領域にビード基板１に向かって延びる第１段差６
とビード基板２に向かって延びる第２段差７を形成す
る。ビード基板２には第２段差７に向かって延びる補助
ビード８を形成する。補助ビード８は、中間板５に当接
して面圧をアップし、ビード４は勿論のことビード３へ
の高温ガスの漏洩を防止し、中間板の第２段差の袖部の
へたりを防止する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、多気筒エンジンにお
ける対向取付面間をシールするため使用され、孔に沿っ
てビードを形成した一対のビード基板と両者間に介在し
た中間板とから成る金属製ガスケットに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、アルミニウム製のシリンダヘッド
とシリンダブロックとのようなエンジンの構造部材は、
軽量である反面、剛性が低いためにエンジン運転時に両
者の間に相対変位が大きくなる傾向にあるので、両構造
部材の対向面間をシールする金属製ガスケットは、シリ
ンダボア（燃焼室）、水、油等の通路に対応する貫通孔
の周囲近傍にビードを形成した弾性金属板で製作されて
いる。

【０００３】従来の金属製ガスケットとしては、ビード
を形成した弾性金属板から成る一対のビード基板と、前
記ビード基板間に介在させた中間板とから構成されてい
るものが知られている。金属製ガスケットをシリンダヘ
ッドとシリンダブロックとの対向面間に挟んで締め付け
て全屈状態に圧縮した状態にすると、一対のビード基板
の各ビードが押し潰されて変形するときの反作用によ
り、両対向面間でビード基板及び中間板がビードとその
近傍において相互に強く圧接されて、貫通孔を通る流体
が前記対向面から漏出するのを阻止するシール機能が得
られる。中間板は、一枚又は積層した一対の金属板から
成る。金属製ガスケットをシリンダヘッドとシリンダブ
ロックとの間において締め付けた時、中間板は二枚のビ
ード基板の変形を制限するストッパ機能と両対向面間の
間隙の不整を吸収する吸収機能とを有する補償部を備え
ている。

【０００４】上記のような金属製ガスケットとして、特
開昭６２−１５５３７４号公報には、中間板にグロメッ
トを設けた金属ガスケットが開示されており、特開昭６
４−６５３６７号公報には、中間板に段差を形成すると
共にグロメットを設けた積層金属ガスケットが開示され
ている。また、特開昭６３−２９３３６３号公報には、
積層した中間板の間にスペーサを介在させて段差を形成
した積層金属ガスケットが開示されている。更に、実開
平４−６６４５７号公報には、積層した中間板の一方の
金属板には段差を形成し、他方の金属板には折返し部に
よる段差が形成されている金属ガスケットが開示されて
いる。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】これらの金属製ガスケ
ットは、板金加工により中間板の段差を形成することに
なるが、板金加工において段差の高さを任意に、或いは
孔の周囲において段差の高さを完全に一様に形成するこ
とは技術的に困難である。また、グロメット部を形成す
るタイプの金属製ガスケットは、シリンダブロックとシ
リンダヘッドとの間に締め付けて全屈状態に圧縮した状
態でエンジンを駆動し続けた場合に、グロメット部を形
成する段差部や折返し部が、残留応力のある状態で更に
繰り返して作用する曲げ応力を受けるため、グロメット
部に亀裂やへたりが生じ易い。

【０００６】更に、金属製ガスケットとして、中間板を
二枚又はそれ以上の金属板を積層して形成する場合やス
ペーサを介在させる場合には、既にビード基板を二枚の
金属板で構成していること自体も原因の一つになって、
積層金属板の層間に隙間が形成され易くなり、金属製ガ
スケットの貫通孔を通る燃焼ガス等の流体が隙間を通っ
て金属製ガスケットの外部に漏れやすくなる。流体漏れ
を防止する目的で金属板にゴムや樹脂を塗装して積層金
属板間の間隙を埋める考えも提案されているが、ゴムや
樹脂の層が劣化するに伴ってシリンダヘッドとシリンダ
ブロックとを固定するボルトの締結力が次第に小さくな
り、ガスケットとしてのシール性能が低下する。中間板
にグロメットを形成する場合には、シール性能の低下に
加えて、上記の亀裂の発生防止のために、加工程度が厳
しくなるような折曲げ加工を施すことができない制約を
受けること、段差の設定と板厚とは互いに無関係に設定
できないこと、エンジンに使用する場合には圧縮比とガ
スケットの総板厚に制約があること等の技術的背景か
ら、中間板の板厚の設定にも制約を受けるという不都合
がある。積層される金属板の枚数や付属の部品が増加す
ると、各部品毎に設計、製造及び品質管理を必要とし、
全体のコストを上昇させる。

【０００７】従来の金属製ガスケットは、燃焼室孔の周
縁において、二枚のビード基板のビードの変形の制限、
即ち全圧縮防止機能と、締め付け時の対向取付面の不整
吸収機能とを有する補償部を得るためには、基本的に二
枚の中間板を必要としている。また、スペーサのような
別部材を用いたり、中間板を構成する金属板の一部に折
返し部を形成することにより補償部が形成されている。
そのため、補償部には、上記のとおり応力やシールの問
題があり、更に製造上の工程増や品質管理を必要とし、
その結果コスト上昇が避けられない。

【０００８】本出願人は、図１３に示すような中間板の
補償部を改善した金属製ガスケットを開発した（特願平
７−３０２１３号）。該金属製ガスケットは、ビード基
板５１，５２の間に介在される中間板６０をビード基板
５１，５２の板厚よりも厚い板厚を有する金属板とし、
中間板６０には、ビード基板５１，５２の各ビード５
３，５４よりも孔の内側の領域に一方のビード基板５１
に向かってビード５３の高さより低い段差６３と段差６
３よりも孔の内側の領域に他方のビード基板５２に向か
って段差６３以上の高さで且つ段差６３の高さとビード
５４の高さの和よりも低い段差６４とが形成されてい
る。両段差間の環状部が一方のビード基板５１のための
ストッパ部即ち補償部６５となり、段差６４よりも孔５
５側の環状部が他方のビード基板５２のための補償部６
６となっている。金属ガスケットは、別部材を用いたり
折返し部を形成することなく、許容される範囲内で厚み
を任意に設定した補償部６５，６６が得られるので、面
圧バランスを良好にし、ビード基板５１，５２の応力変
動と補償部６５，６６にかかる曲げ応力を軽減し、ビー
ド５３，５４の破損や補償部６５，６６の破損、シール
効果の低減を防止して安定したシール効果を発揮させる
と共に、中間板６０に形成した両補償部６５，６６にビ
ード５３，５４を保護するシール効果を発揮させると共
に、ビード５３，５４の全圧縮を防止してビードを保護
し、しかも両補償部６５，６６を燃焼室孔５５や燃焼ガ
ス孔に沿って各領域で形状を変更し或いは断続して形成
し、孔５５間及びボルトの位置関係で最適状態に形成し
ている。

【０００９】そこで、本出願人は、先に開発した上記金
属ガスケットの目的を達成しつつ、更に中間板と各ビー
ド基板との相互の構造に工夫を凝らすことにより、別部
材を必要とすることなく、折返し部のような応力的に厳
しい部分を形成することなく、貫通孔周りにおけるシー
ル性能を改善するとともに、ビード基板の応力変動を軽
減し、ビードの破損やシール効果の低減を防止して、安
定したシール効果を有する低コストに作製できる金属製
ガスケットを開発した。

【００１０】

【課題を解決するための手段】この発明は、一対のビー
ド基板とその間の調整板である中間板から成り、中間板
の二箇所の段差を形成し且つ一方にビード基板に補助ビ
ードを設けることによって、前記ビード基板の応力変動
を軽減し、ビードの破損を防止し、孔回りの領域におい
て前記ビード基板と前記中間板との間から燃焼ガス等の
流体の漏洩を防止し、安定したシール効果を確保し、耐
久性に富んだ製造コストを低減できる金属製ガスケット
に関する。

【００１１】この発明は、並列する孔に沿ってビードを
形成した弾性金属板から成る第１と第２のビード基板、
及び前記ビードを対向して配置した前記第１と第２のビ
ード基板の間に介在され且つ前記ビード基板の板厚より
も厚い板厚を有する中間板を有し、前記中間板には前記
ビードよりも内側の領域に前記第１ビード基板に向かっ
て前記ビードの高さ未満の高さよりも低い第１段差で形
成される第１ストッパ部と、前記第１段差よりも内側の
領域に前記第２ビード基板に向かって前記第１段差より
も高く且つ前記第１段差の高さと前記ビードの高さの和
よりも低い第２段差で形成される第２ストッパ部とが形
成され、前記第２ビード基板には前記孔の縁部に沿って
前記中間板の前記第２ストッパ部側へ向かった補助ビー
ドが形成されている金属製ガスケットに関する。また、
前記中間板は前記ビード基板より軟質金属で作製されて
いるものである。

【００１２】また、前記補助ビードは前記孔の方向に延
びて傾斜状に屈曲したハーフビードに形成されている。
或いは、前記補助ビードは前記孔の方向に延びてステッ
プ状に屈曲し且つ前記孔の縁部に沿って平ら部を備えた
ハーフビードに形成されている。

【００１３】また、前記補助ビードの高さは前記第２ビ
ード基板の前記ビードの高さのほぼ半分である。

【００１４】また、前記中間板の前記第１段差と前記第
２段差との高さは、前記孔間の第１領域と前記孔間から
９０°離れた第２領域とで高く形成され、前記第１領域
と前記第２領域の中間の第３領域で低く形成され、前記
第１領域と前記第３領域との間及び前記第３領域と前記
第２領域との間の境界領域で滑かな曲面で高さが変化し
ている。

【００１５】また、前記中間板の前記第１段差は前記孔
間で互いに隔置している。また、前記第１と第２のビー
ド基板の前記ビードは前記孔間でそれぞれ隔置している
か又は互いに会合して１つのビードを形成している。

【００１６】また、この金属製ガスケットにおいて、前
記第１ビード基板はシリンダヘッドに面して配置され、
前記第２ビード基板はシリンダブロックに面して配置さ
れるものである。

【００１７】この金属製ガスケットは、前記第２ビード
基板には前記補助ビードが形成されているので、前記補
助ビードの領域の面圧がアップし、前記第２ビード基板
の前記ビードは勿論のこと、前記第１ビード基板の前記
ビードへの高温ガスの侵入を防止して前記ビードを保護
し、しかも前記中間板の前記第２段差のへたり易い前記
孔回りの袖部を補強することができる。しかも、前記第
２ビード基板に前記補助ビードを設けるに当たって、前
記ビード基板の前記ビードの寸法に制限を加えることな
く、前記補助ビードを前記第２ビード基板に形成するこ
とができる。前記第２ビード基板に形成された前記補助
ビードはハーフビードであるので、前記補助ビードによ
って前記ビードの寸法に制約を受けることが低減され
る。

【００１８】この金属製ガスケットは、シリンダヘッド
とシリンダブロックとを締め付けボルト等によって締め
付けたときに、両者の対向取付面間に挟持されている前
記ビード基板が、前記ビードの撓みを伴って前記中間板
に対して漸次接近当接し、締め付けによる圧縮状態にお
いて、前記中間板の第１と第２の段差は、前記ビード基
板との間隙の不整を吸収し、前記ビードの全圧縮を防止
して前記ビードの応力変動を減少させると共に、前記ビ
ード基板の前記ビードへの高温ガスの侵入を防止して前
記ビードを保護することができる。従って、前記各ビー
ド基板は、前記中間板の各面において対応する段差から
成る各ストッパ部に当接した後には変位量が制限され、
前記ビードが完全に潰れる完全圧縮に至るまでは変形せ
ず、前記ビードの弾性作用が残存され、シリンダヘッド
やシリンダブロックの対向面の不整を吸収する機能も残
ることになる。

【００１９】前記ストッパ部を構成する前記中間板の段
差の高さは、前記中間板の主たる表面に対しては前記ビ
ード基板のビードの高さ未満であるから、前記ストッパ
部は段差によって形成されていても剛性は高く、上記締
め付けによって変形することがあっても前記ストッパ部
としての機能を損なわれない。

【００２０】

【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、この発明
による金属製ガスケットの実施例について説明する。こ
の金属製ガスケットは、シリンダヘッドとシリンダブロ
ックとの間に挟持されて対向取付面間をシールする。こ
の金属製ガスケットは、シリンダブロックに形成された
シリンダボアに対応して４気筒や６気筒のような多気筒
エンジンに適用され、シリンダボア孔即ち燃焼室孔の孔
が複数個並列して形成されている。この金属製ガスケッ
トは、孔の周囲にボルト孔の他に、水孔、オイル孔等の
各種の孔が穿設されている。以下で説明する図面におい
て、同一の部品及び同一の機能を有する部品には、同一
の符号を付し、重複する説明を省略する。

【００２１】図１〜図９を参照して、この発明による金
属製ガスケットの一実施例について説明する。図１はこ
の発明による金属製ガスケットの一実施例を示す部分平
面図、図２は図１の金属製ガスケットの孔間領域におけ
る一方のビード基板を示す拡大部分平面図、図３は図１
の金属製ガスケットの孔間領域における中間板を示す拡
大部分平面図、図４は図１の金属製ガスケットの孔間領
域における他方のビード基板を示す拡大部分平面図、図
５は図１の金属製ガスケットの孔間領域を示し且つ図１
の線Ａ−Ａにおける拡大断面図、図６は図１の金属製ガ
スケットの孔間領域を示し且つ図１の線Ｂ−Ｂにおける
拡大断面図、図７は図１の金属製ガスケットにおける中
間板を作製する成形工程における段差形状を示す断面
図、図８は図１の金属製ガスケットにおける中間板を作
製する成形工程における型押し加工の完成時の段差形状
を示す断面図、及び図９は図１の金属製ガスケットにお
ける他方にビード基板のビードと補助ビードとの一実施
例を示す断面図である。

【００２２】この金属製ガスケットは、弾性金属板から
成る第１と第２のビード基板１，２と、ビード基板１，
２の板厚よりも厚い板厚を有し且つビード基板１，２間
に介在された中間板５とを積層した三層の積層形タイプ
である。ビード基板１，２と中間板５には、燃焼室孔９
が同じ位置に形成され、各種の孔は基本的には同様の孔
が穿設されている。中間板５の板厚ｔ₁は、ビード基板
１，２の板厚ｔ₂の２倍以上（ｔ₁／ｔ₂≧２）を前提
として、２〜４倍程度（ｔ₁／ｔ₂≧２〜４）の厚さに
設定されることが好ましい。ビード基板１，２の燃焼室
孔９に沿って燃焼室孔９と略同心に且つ環状に取り巻く
断面凸形のビード３，４が形成されている。ビード３，
４は、中間板５に対して同じ位置において凸部が互いに
対向して形成され、積層挟着したときにビード３，４が
中間板の各表面２５，２６に当接している。

【００２３】中間板５には、ビード３，４と当接する表
面２５，２６が示されている部位よりも燃焼室孔９側の
領域で、一方のビード基板１に向かってビード３の高さ
Ｈよりも低く且つ中間板５の厚みＤ未満の高さＥ（Ｈ＞
Ｅ，Ｄ＞Ｅ）を有する第１段差６から成る第１ストッパ
部が燃焼室孔９を取り囲む環状形状に形成されている。
更に、中間板５には、第１段差６から成るストッパ部よ
りも燃焼室孔９側の内側領域で、ビード基板２に向かっ
て第１段差６の高さＥよりも高く且つ第１段差６の高さ
Ｅとビード４の高さＨの和よりも低い高さＦ（Ｅ＋Ｈ＞
Ｆ＞Ｅ）の第２段差７で形成される第２ストッパ部が燃
焼室孔９を取り囲む環状形状に形成されている。

【００２４】中間板５に段差６，７を形成するには、図
７に示すように、金属板１５に孔１８及び孔１８に沿っ
て隔置状態に同じ値の深さの段差１６，１７を板金加工
によって成形し、次いで金属板１５を型押し加工し、図
８に示すように、段差６，７を形成し、それを熱処理し
て中間板５を作製することができる。この結果、中間板
５には、ビード基板１のビード３のための補償部として
の第１段差６で構成される第１ストッパ部とビード基板
２のビード４のための補償部としての第２段差７で構成
される第２ストッパ部とが形成される。金属製ガスケッ
トの締め付け前の自由状態では、中間板５の第２ストッ
パ部とビード基板１との間には間隙Ｓが形成されてい
る。

【００２５】この金属製ガスケットでは、ビード基板１
はシリンダヘッドに面して配置され、ビード基板２はシ
リンダブロックに面して配置されるものである。ビード
基板１のビード３は、図２に示すように、孔９間で互い
に会合して１つのビードを形成している。また、中間板
５の第１段差６は、図３に示すように、孔９間で互いに
隔置している。更に、ビード基板２のビード４は、図４
に示すように、孔９間で互いに会合して１つのビードを
形成している。場合によっては、図示していないが、ビ
ード基板１，２のビード３，４は、孔９間でそれぞれ隔
置して形成することもできることは勿論である。

【００２６】この金属製ガスケットは、特に、上記構成
において、ビード基板２に孔９の縁部に沿って中間板５
の第２ストッパ部側へ向かった補助ビード８が形成され
ていることを特徴する。この実施例では、補助ビード８
は、図９に示すように、孔９の方向に延びて傾斜状に屈
折点１１で屈曲したハーフビードに形成されている。補
助ビード８の高さｈは、ビード基板２のビード４の高さ
Ｈのほぼ半分になるとうに形成されている。従って、補
助ビード８は、締め付けられた時に、中間板５の第１ス
トッパ部の面に対して、最初に、補助ビード８の先端の
エッジ部１０が円形状の線接触で当接するようになり、
シール性をアップすることができる。

【００２７】金属製ガスケットをシリンダヘッドとシリ
ンダブロックとの対向面間に設置して締結具で締め付け
たときに、ビード基板１，２のビード３，４は弾性変形
して中間板５に対して漸次接近当接するが、ビード基板
１に対しては、中間板５の第１段差６で構成される第１
ストッパ部が、当接後の変位量を制限してビード３の完
全圧縮即ち全圧縮を防止し、ビード３としての機能を維
持するように作用する。ストッパ部を構成する第１段差
６の高さＥの程度は、中間板５の表面２５に対してビー
ド３の高さ未満であるから、第１ストッパ部自体の剛性
は高く、上記締め付けに伴って変形することがあっても
第１ストッパ部としての機能を損なうことはない。第１
ストッパ部は、ビード３の全圧縮状態を防止することが
できるので、良好なシール性を確保できると共に、ビー
ド基板１の応力振幅が小さくなり、第１ストッパ部に大
きな曲げ応力及び応力振幅が発生せず、結果として、ビ
ード基板１に亀裂やヘタリが発生しない。また、第１ス
トッパ部はガスケットの締め付け時におけるシリンダヘ
ッドの対向面に存在する不整を吸収する機能も有する。

【００２８】同様に、ビード基板２に対しては、中間板
５の第２段差７で構成される第２ストッパ部が、当接後
の変位量を制限してビード４の完全圧縮即ち全圧縮を防
止し、ビード４としての機能を維持するように作用す
る。ストッパ部を構成する第２段差７の高さＦの程度
は、中間板５の表面２６に対してビード４の高さ未満で
あるから、第２ストッパ部自体の剛性は高く、上記締め
付けに伴って変形することがあっても第２ストッパ部と
しての機能を損なうことはない。第２ストッパ部は、ビ
ード４の全圧縮状態を防止することができるので、良好
なシール性を確保できると共に、ビード基板２の応力振
幅が小さくなり、第２ストッパ部に大きな曲げ応力及び
応力振幅を発生せず、結果として、ビード基板２に亀裂
やヘタリが発生しない。また、第２ストッパ部はガスケ
ットの締め付け時におけるシリンダブロックの対向面に
存在する不整を吸収する機能も有する。

【００２９】中間板５は、ビード基板１，２より軟質金
属で作製されている。例えば、ビード基板１，２はＳＵ
Ｓ３０１で作製され、調整板である中間板５はＳＥＣＣ
（軟鋼鉄板）で作製されている。また、図１２に示すよ
うに、ビード基板１，２を形成する弾性金属板の表面に
耐熱性及び耐油性の非金属材を、例えば、１０〜５０μ
ｍ程度の厚さにコーティングし、シリンダヘッド及びシ
リンダブロックに対して金属対金属の接触状態を回避
し、金属ガスケットとしての耐腐食性、耐久性及び強度
を確保したものである。例えば、ビード基板１，２の表
裏両面に対して耐熱性及び耐油性を有するフッ素ゴム１
９をコーティングし、更にフッ素ゴム１９上にアクリル
シリコーン系樹脂２０をコーティングしたものである。
また、ビード基板１，２の表面にコーティングした非金
属材は、ビード基板１，２の機械加工時に凹凸が存在し
ても、該凹凸をカバーして充分なシール機能を果たす。

【００３０】次に、図１０を参照して、この発明による
金属製ガスケットの別の実施例を説明する。図１０は図
１の金属製ガスケットにおけるビード基板２の別の実施
例を示す一部断面図である。この実施例は、上記実施例
と比較して補助ビードの形状が相違する以外は、同一の
構成及び機能を有するので、同一の部分には同一の符号
を付し重複する説明は省略する。この実施例では、ビー
ド基板２に形成された補助ビード８は、ビード基板２に
孔９の縁部に沿って中間板５の第２ストッパ部側へ向か
った延びるように形成されている。この実施例では、補
助ビード８は、孔９の方向に延びて傾斜状に屈折点１１
で屈曲し、更に孔９側に近づいて屈折点１２で屈曲して
おり、二箇所でステップ状に屈曲して孔９の縁部に沿っ
て平ら部１３を備えたハーフビードに形成されている。
ハーフビードに形成されている。補助ビード８の高さｈ
は、ビード基板２のビード４の高さＨのほぼ半分になる
とうに形成されている。従って、ビード基板２の補助ビ
ード８は、締め付けられた時、中間板５の第２ストッパ
部の面に対して平ら部１３が最初に当接することにな
り、ビード基板２による中間板５の損傷が低減される。

【００３１】次に、図１１を参照して、この発明による
金属ガスケットの別の実施例を説明する。図１１はこの
発明による金属ガスケットの別の実施例を示す説明図で
ある。中間板５に形成された第１段差６と第２段差７と
は、孔９間の第１領域２１と、各孔９の中心Ｏを通る中
心軸線Ｘに垂直で且つ孔９の中心Ｏを通る軸線Ｙ上の領
域即ち孔９間から９０°離れた第２領域２２とで高く形
成され、それ以外の中間領域即ち第３領域２３で低く形
成されており、第１領域２１と第３領域２３との間及び
第３領域２３と第２領域２２との間の境界領域２４で滑
かな曲面で高さが変化している。例えば、中間板５に形
成した第１段差６と第２段差７の高さは、領域２１及び
領域２２で６０μｍ程度であり、領域２３で３０μｍ程
度に形成されている。これらの第１段差６と第２段差７
の高さの変化は、シリンダブロックにシリンダヘッドを
固定するボルトの締結位置より遠い領域を高く形成し、
ビード基板１，２のビード３，４の面圧を均等にする機
能を有している。場合によっては、第１段差６と第２段
差７は、孔９間の領域２１で高く、孔９間以外の領域で
低く形成することもできる。

【００３２】この発明による金属製ガスケットは、上記
のように、中間板に形成する第１と第２のストッパ部は
孔に沿って上記各実施例のように連続して設けた構造に
構成されているが、上記各実施例に限定されることな
く、図示していないが、場合によっては、中間板に形成
する第１と第２のストッパ部は孔に沿って部分的或いは
断続的に形成することもできる。

【００３３】

【発明の効果】この発明による金属製ガスケットは、上
記のように構成されているので、二枚のビード基板のそ
れぞれのビードが当接する一枚の中間板に二箇所の段差
が形成され、該段差で形成されるストッパ部によって対
向する一方のビード基板のビードに対する完全圧縮を防
止すると共に、対向取付面の不整を吸収する機能と前記
ビードの保護のためのシール機能を有する補償部が形成
される。また、中間板に形成された前記段差は、上記全
圧縮状態のときに中間板と前記ビード基板との間におけ
る間隙が十分吸収され、シール性能を向上させることが
できる。この金属製ガスケットは、特に、シリンダブロ
ック側に位置するビード基板には孔の縁部に沿って前記
中間板の前記ストッパ部側へ向かった補助ビードが形成
されているので、前記中間板の第２段差の孔の縁部の袖
部のへたりを補強することができると共に、中間板とビ
ード基板との間のシール性を向上させ、耐久性を向上で
きる。しかも、前記補助ビードはハーフビードであるの
で、前記ビード基板に形成する前記ビードへの制約を最
小限に低減することができる。

【００３４】この金属製ガスケットは、前記ビード基板
とその間に介在した中間板から成り、前記中間板の板厚
ｔ₁を前記各ビード基板の板厚ｔ₂の２倍以上（ｔ₁／
ｔ₂≧２）を前提として、２〜４倍程度（ｔ₁／ｔ₂≧
２〜４）の厚さに形成し、前記中間板の両側へ異なった
位置で屈曲する第１と第２の段差が前記ビードに沿って
前記ビードの高さ未満の高さに形成され、前記各ビード
基板に対する第１と第２のストッパ部を形成したので、
前記ビードの過圧縮防止による前記ビードのへたり、亀
裂の発生するのを防止でき、前記ストッパ部によって前
記ビード側への燃焼ガスの流入を遮断し、高温ガスによ
る腐食等から前記ビードを保護し、前記ビードの機能の
低下を防止する。

【００３５】上記のように、この金属製ガスケットは、
一対の前記ビード基板と一枚の前記中間板のみで構成で
き、部品点数を減らすことができ、加工工程を低減し、
曲げとビード加工という簡単な加工形状であるので、製
造コストを大幅に低減できるのみならず、部品の加工精
度をアップでき、累積誤差を低減でき、前記ストッパ部
の高さのコントロールが容易になり、層間数の低減によ
ってシール性能をアップさせ、信頼性に富んだ製品を提
供することができる。前記中間板に形成する前記ストッ
パ部は、ガスケット組み付け時のシリンダヘッド側、シ
リンダブロック側或いは両側に設けることができる。更
に、前記ストッパ部の高さは、前記中間板に均一な高さ
に形成することができるが、場合によっては、孔に沿う
周囲の領域によって高低を持たせたり、又はエンジンの
変形、例えば、シリンダヘッドとシリンダブロック、或
いはシリンダヘッドと排気マニホルドとの間への取付面
における面変形、運転時の熱・爆発等による変形に対応
して高低を持たせることができる。

【００３６】また、この金属製ガスケットは、前記中間
板にストッパ部を形成するのにスペーサのような別部材
を用いておらず、別部材を製作する必要もなく、前記中
間板に対して組立てや固定をする必要がなく、コスト低
減ができる。更に、前記中間板に前記ストッパ部を形成
することによって、組立てや固定が不完全である場合に
予想される不具合の問題が無くなる。また、前記中間板
にストッパ部を形成するのに、折返し部を形成すること
なく、また、前記ビード基板の孔側端縁にも折返し部を
設ける構成でないので、折返し部を形成するという製造
上の工程を必要とせず、折返し部に亀裂が発生するとい
う対策を講じる必要がなく、製造コストを低減できる。

【００３７】また、この金属製ガスケットは、前記中間
板の表面からの前記ストッパ部である補償部の高さは、
前記ビードの設定により任意に設定することができるか
ら、前記両ビード基板の対向取付面への面圧バランスも
適宜に変更することができる。前記ビード基板の応力変
動と補償部にかかる曲げ応力を、例えば、前記ビード基
板の特性の違いがある場合等の状況に応じて設定できる
という余裕が生じ、結果的に、前記ビード基板の前記ビ
ードの破損や前記補償部の破損、シール効果の低減を防
止して、安定したシール効果を発揮することができる。
また、前記中間板の両面にそれぞれ対向するビード基板
に対して同じ高さになるように第１と第２の段差を形成
した場合には、一方の前記ビード基板のための第１補償
部が前記中間板の一側平面に対して有する高さは、他方
の前記ビード基板のための第２補償部が前記中間板の他
側平面に対して有する高さと同じになり、力学的特性が
同じ前記各ビード基板に対する前記両補償部の作用に差
異が生じないことが期待できる。この場合、前記両ビー
ド基板は、圧縮に伴う応力状態のバランスもよく、結果
的に、前記ビード基板の応力変動と前記中間板の前記補
償部にかかる曲げ応力を一方の前記ビード基板及び前記
補償部にのみに偏らせることなく、均等に負担すること
により、前記ビード基板の前記ビードのヘタリ及び破
損、補償部の破損、並びにシール効果の低減を防止し
て、安定したシール効果を発揮することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明による金属製ガスケットの一実施例を
示す部分平面図である。

【図２】図１の金属製ガスケットの孔間領域における一
方のビード基板を示す拡大部分平面図である。

【図３】図１の金属製ガスケットの孔間領域における中
間板を示す拡大部分平面図である。

【図４】図１の金属製ガスケットの孔間領域における他
方のビード基板を示す拡大部分平面図である。

【図５】図１の金属製ガスケットの孔間領域を示し且つ
図１の線Ａ−Ａにおける拡大断面図である。

【図６】図１の金属製ガスケットの孔間領域を示し且つ
図１の線Ｂ−Ｂにおける拡大断面図である。

【図７】図１の金属製ガスケットにおける中間板を作製
する成形工程における段差形状を示す断面図である。

【図８】図１の金属製ガスケットにおける中間板を作製
する成形工程における型押し加工の完成時の段差形状を
示す断面図である。

【図９】図１の金属製ガスケットにおけるビード基板２
のビードと補助ビードとの一実施例を示す断面図であ
る。

【図１０】図１の金属製ガスケットにおけるビード基板
２のビードと補助ビードとの別の実施例を示す断面図で
ある。

【図１１】この発明による金属製ガスケットの別の実施
例を示す平面図である。

【図１２】この金属製ガスケットにおけるビード基板と
中間板を説明する分解図である。

【図１３】先行技術の金属製ガスケットの一例を示す断
面図である。

【符号の説明】

１，２ビード基板３，４ビード５中間板６第１段差７第２段差８補助ビード９孔１０エッジ部１１，１２屈折点１３平ら部２１孔間の第１領域２２孔間から９０°の第２領域２３中間領域（第３領域）２４境界領域

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者三浦正彦大阪府東大阪市加納２丁目１番１号日本ガスケット株式会社内 (72)発明者中田和哉愛知県豊田市トヨタ町１番地トヨタ自動車株式会社内 (72)発明者新保善一愛知県豊田市トヨタ町１番地トヨタ自動車株式会社内

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】並列する孔に沿ってビードを形成した弾
性金属板から成る第１と第２のビード基板、及び前記ビ
ードを対向して配置した前記第１と第２のビード基板の
間に介在され且つ前記ビード基板の板厚よりも厚い板厚
を有する中間板を有し、前記中間板には前記ビードより
も内側の領域に前記第１ビード基板に向かって前記ビー
ドの高さ未満の高さよりも低い第１段差で形成される第
１ストッパ部と、前記第１段差よりも内側の領域に前記
第２ビード基板に向かって前記第１段差よりも高く且つ
前記第１段差の高さと前記ビードの高さの和よりも低い
第２段差で形成される第２ストッパ部とが形成され、前
記第２ビード基板には前記孔の縁部に沿って前記中間板
の前記第２ストッパ部側へ向かった補助ビードが形成さ
れている金属製ガスケット。
【請求項２】前記補助ビードは前記孔の方向に延びて
傾斜状に屈曲したハーフビードに形成されている請求項
１に記載の金属製ガスケット。
【請求項３】前記補助ビードは前記孔の方向に延びて
ステップ状に屈曲し且つ前記孔の縁部に沿って平ら部を
備えたハーフビードに形成されている請求項１に記載の
金属製ガスケット。
【請求項４】前記補助ビードの高さは前記第２ビード
基板の前記ビードの高さのほぼ半分である請求項１〜３
のいずれかに記載の金属製ガスケット。
【請求項５】前記中間板の前記第１段差と前記第２段
差との高さは、前記孔間の第１領域と前記孔間から９０
°離れた第２領域とで高く形成され、前記第１領域と前
記第２領域の中間の第３領域で低く形成され、前記第１
領域と前記第３領域との間及び前記第３領域と前記第２
領域との間の境界領域で滑かな曲面で高さが変化してい
る請求項１〜４のいずれかに記載の金属製ガスケット。
【請求項６】前記中間板の前記第１段差は前記孔間で
互いに隔置している請求項１〜５のいずれに記載の金属
製ガスケット。
【請求項７】前記第１と第２のビード基板の前記ビー
ドは前記孔間でそれぞれ隔置しているか又は互いに会合
して１つのビードを形成している請求項１〜６のいずれ
かに記載の金属製ガスケット。
【請求項８】前記第１ビード基板はシリンダヘッドに
面して配置され、前記第２ビード基板はシリンダブロッ
クに面して配置される請求項１〜７項のいずれかに記載
の金属製ガスケット。