JPH11118038A - 金属製ガスケット - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は，ビード基板に積層されるストッパ
板のストッパ部を，ストッパ板本体部の板厚よりも板厚
を減じた部分を折り返して形成することにより，ストッ
機能を抑制した部品点数が少ない金属製ガスケットを提
供する。 【解決手段】 金属製ガスケット１のボア孔５Ａ，５Ｂ
の周りをシールする一対の弾性金属板２，３の間には，
ストッパ板４が挟まれている。ストッパ板４のボア孔５
の周囲には，ビード６，７の変形量を抑制するため，ス
トッパ板本体部１０の板厚よりも厚い全板厚を有する折
重ね部１１Ａ，１１Ｂが配置されている。折重ね部１１
Ａ，１１Ｂは，ストッパ板本体部１０の板厚よりも薄い
ベース部分１４と折返し部分１５とを重ねて形成されて
いるので，他の金属板やストッパ片等の他部品を用いる
ことなくストッパ板４の段差（ストッパ量）を抑制でき
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は，エンジンにおけ
るシリンダブロックとシリンダヘッドとの間のような構
造部材の対向面間をシールするため使用され，ボア孔に
沿ってビードが形成されたビード基板を備えた金属製ガ
スケットに関する。

【０００２】

【従来の技術】最近のエンジンは，高出力化と共に軽量
化が求められ，その一環としてシリンダヘッドとシリン
ダブロックとのようなエンジンの構造部材をアルミニウ
ム材料で製作する傾向にある。アルミニウム製のシリン
ダヘッドとシリンダブロックとのようなエンジンの構造
部材は，鉄系材料と比較して軽量ではある反面，剛性が
低いため，エンジン運転時に両者の間で相対変位が大き
くなる傾向にあるので，両構造部材の対向取付面間をシ
ールする金属製ガスケットは，シリンダボア孔，水，油
の通路に対応する貫通孔の周囲近傍にビードを形成した
弾性金属板で製作されている。

【０００３】従来の金属製ガスケットとしては，ビード
を形成した弾性金属板から成る一対のビード基板から構
成されているものが知られている。金属製ガスケットを
シリンダヘッドとシリンダブロックとの対向面間に挟ん
でボルト等によって締め付けて全屈状態に圧縮した状態
にすると，一対のビード基板の各ビードが押し潰されて
変形するときの反作用により，両対向面間でビード基板
及びストッパ板がビードとその近傍において相互に強く
圧接されて，ビードは弾性的な環状接触部を形成し，ボ
ア孔を通る流体が前記対向面から漏出するのを阻止する
シール機能が得られる。

【０００４】更に，シリンダヘッドガスケットの場合に
は，エンジンの燃焼サイクルの間にシリンダヘッドとシ
リンダブロックとの間隔が増減を繰り返し，金属製ガス
ケットにも繰り返し応力即ちメカニカルストレス及びサ
ーマルストレスが作用する。この負荷変動応力は，シリ
ンダブロックやシリンダヘッドの剛性の最も低い部位に
大きな値として発生し，その結果，ビードにへたりが生
じたり，亀裂が発生してシール性能を劣化させるという
不具合が生じる。

【０００５】金属製ガスケットのビードは，エンジン運
転時にシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に生じ
る振動によって変動する応力と変形を受けて，疲労破壊
を生じやすい。かかる疲労破壊を防止するため，弾性金
属板には，ビードの変形の振幅を抑制するためのストッ
パ機能を有するストッパ板が積層される。ストッパ板
は，通常，ビード基板のビードが形成された位置とシリ
ンダボア孔との間の領域の部分に折重ね部を形成して板
厚を増加させており，増加した板厚分だけビードの変形
量が抑制される。ストッパ板は，ビード基板の変形を制
限するストッパ機能に加えて，両対向面間の間隙の不整
を吸収する補償機能も備えている。

【０００６】上記のような金属製ガスケットにおいて，
ストッパ機能を備えるためにストッパ板に折重ね部を形
成するだけでは，折重ね部の板厚はストッパ板の板厚の
２倍の板厚を有するのみである。ストッパ板の折重ね部
の板厚がストッパ板の板厚の２倍であることは，ストッ
パ機能としては十分過ぎる場合があり，却って，ボア孔
の周囲に面圧を極度に集中させてしまうことがある。こ
のような折重ね部での面圧の集中が生じると，ボア孔の
周りの面圧とボア孔周り以外の外周部（水孔や油孔の周
り）の面圧とのバランスが悪くなって水孔や油孔の周り
のシール性能に問題が生じたり，折重ね部の特にボア孔
を定める折重ね縁部に応力集中のために亀裂が生じた
り，或いは，ビード基板のビードの弾性変形が十分与え
られないために確実な環状接触部を形成することができ
ない等の不具合が生じる。したがって，ストッパ板のス
トッパ機能を有効に働かせるために，また，金属製ガス
ケットを一対の構造体の間に挟んで締め付けた状態でボ
ア孔の周囲に面圧を極度に集中させないために，特開昭
６３−２４６５７３号公報又は特開平６−２６５７５号
公報に開示されているようなビードの変形を抑制する程
度を減少させたものが提案されている。

【０００７】特開昭６３−２４６５７３号公報には，弾
性金属板から成る二枚のビード基板の間にストッパ板を
介装した積層金属製ガスケットにおいて，二枚のビード
基板の間に第１ストッパ板と第１ストッパ板よりも厚さ
の薄い第２ストッパ板とを重合させて設け，第１ストッ
パ板のシリンダボア孔側の端縁を第２ストッパ板が位置
する面上に折り返すと共に第２ストッパ板とは離間させ
且つビード基板に重合させて所定の厚さの補償部を設け
た積層金属製ガスケットが開示されている。この積層金
属製ガスケットは，燃焼ガス圧力やエンジンの熱的影響
のためにシリンダブロックとシリンダヘッドのデッキ面
間隙が拡縮するのを防止して，ビードへの交番荷重の作
用を弱化させてビードのへたりを防止することを図って
いる。

【０００８】また，特開平６−２６５７５号公報には，
少なくとも一枚以上の弾性金属板にビードを形成し，ビ
ードの形成位置よりもシリンダボア寄りの平坦部にスト
ッパを備え，ストッパを別体として変形成型した金属板
とすると共に，締結した時に発生するボア回りの隙間寸
法に対応した厚みとした金属製ガスケットが開示されて
いる。この金属製ガスケットは，ストッパが別体として
成型した金属板であるため，ストッパの加工精度が高く
且つストッパの厚み調節が十分できるため，シリンダボ
ア回りでの面圧を均一とし，ボアの真円度を確保して，
シール機能の向上を図ろうとするものである。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】シリンダボア孔の回り
にビードを形成した弾性金属板から成るビード基板とビ
ードの変形を抑制するストッパ機能を備えたストッパ板
とから成る金属ガスケットにおいては，ストッパ板の層
数や部品点数を増加させることなく，ストッパ板が果た
すストッパ機能の程度を変えることが可能となれば，従
来のもののシール性能や面圧バランスを確保しつつ低コ
ストで構造が簡単な金属製ガスケットを提供することが
できるという課題がある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】この発明の目的は，ビー
ドが形成された弾性金属板から成るビード基板と，ビー
ド基板に積層されてビードの変形を抑制するため一部を
折り返して形成した折重ね部を有するストッパ板とから
成る金属製ガスケットにおいて，ビードの全圧縮を抑制
するストッパ機能を折重ね部の板厚を変えることによっ
て安価に設定可能とした金属製ガスケットを提供するこ
とである。

【００１１】本発明は，上記課題を解決するために次の
ように構成されている。即ち，この発明による金属製ガ
スケットは，ボア孔に沿ってビードが形成された弾性金
属板からなる少なくとも一枚のビード基板，及び前記ビ
ード基板に前記ビードの凸部に当接するように積層され
る金属板から成るストッパ板を備え，前記ストッパ板は
ストッパ板本体及び前記ストッパ板本体と一体に形成さ
れ且つ前記ボア孔の周囲に対応した位置に配置される折
重ね部から成り，前記折重ね部は前記ストッパ板本体と
一体であり且つ前記ボア孔の周囲に延びるベース部分及
び前記ベース部分に対して折り返されて重ね合わされた
折返し部分から成り，前記折重ね部の全板厚は前記スト
ッパ板本体の板厚より厚く前記ストッパ板本体の前記板
厚の２倍よりも薄く形成されていることから成る金属製
ガスケットに関する。

【００１２】この発明による金属製ガスケットにおいて
は，ストッパ板の折重ね部の全板厚は，ストッパ板本体
の板厚より厚くストッパ板本体の板厚の２倍よりも薄い
板厚を有しているので，ストッパ板によるストッパ機能
は，一様な板厚を有するストッパ板の一部を折り重ねて
ストッパ部としたものが奏するストッパ機能よりも抑え
ることが可能となる。エンジンのシリンダヘッドとシリ
ンダブロックとの間のような対向取付面間に金属製ガス
ケットを挟んで締め付けると，折重ね部に過度の面圧が
集中することがない。また，ビードに適度の圧縮変形を
もたらすので，ビード基板のビードは十分な弾性的な環
状接触部を形成する。

【００１３】また，この金属製ガスケットにおいて，前
記折重ね部は，ストッパ板本体の板厚より薄く且つスト
ッパ板本体の板厚の半分より厚い板厚を有する板厚減少
部分の一部を折返し部分として折り返すことにより形成
されている。板厚減少部分の板厚は，ストッパ板本体の
板厚より薄く且つストッパ板本体の板厚の半分より厚く
なっているので，板厚減少部分の一部を折返し部分とし
て折り返して板厚減少部分の他部，即ち，ベース部に折
り重ねると，折重ね部の全板厚は，ストッパ板本体の板
厚よりは厚く，ストッパ板本体の板厚の２倍よりも薄く
なる。また，この金属製ガスケットにおいて，前記板厚
減少部分は，金属板のプレス加工，切削加工，又はエッ
チングにより形成される。

【００１４】また，この金属製ガスケットにおいて，前
記板厚減少部分は，一定の板厚に形成されているか，又
はストッパ板本体から離れるに従って厚さが次第に減少
したテーパ状に形成されている。板厚漸減部分の略中間
部分が折重ね縁部を形成してビード基板のボア孔に対応
したストッパ板のボア孔を形成する。一定の板厚に形成
された板厚減少部分は勿論のこと，厚さが次第に減少す
るテーパ状に形成した板厚漸減部分を折り重ねても，ベ
ース部分と折返し部分との板厚が互いに補って折重ね部
の全板厚は略均一な板厚となる。板厚減少部分の板厚加
工は，金属板のプレス加工，切削加工又はエッチングに
より行われる。前記板厚漸減部分は，金属板のプレス加
工又は切削加工により形成するのが好ましい。

【００１５】また，この金属製ガスケットにおいて，一
対の前記ビード基板がストッパ板を挟んでいる。この場
合，ストッパ板は，一対のビード基板に挟まれる中間板
となり，中間板は，どちらのビード基板に対しても，共
通にビードの変形量を抑制したストッパ機能を奏する。

【００１６】

【発明の実施の形態】以下，図面を参照して，この発明
による金属製ガスケットの実施例を説明する。図１はこ
の発明による金属製ガスケットの一実施例の一部を示す
平面図，図２は図１に示した金属製ガスケットの矢視Ａ
−Ａで見た断面図，及び図３は図１に示した金属製ガス
ケットの矢視Ｂ−Ｂで見た断面図である。

【００１７】図１に平面図に示されたこの発明による金
属製ガスケット１は，多気筒エンジンにおけるシリンダ
ヘッドとシリンダブロックのそれぞれの対向取付面間を
シールするために使用されるものである。金属製ガスケ
ット１は，図２及び図３に示す断面図から分かるよう
に，互いに積層された二枚の弾性金属板２，３と両弾性
金属板２，３の間に挟まれた中間板としてのストッパ板
４から構成されている。弾性金属板２，３は，例えばス
テンレスばね鋼板（ＳＵＳ３０１ＣＳＰ−３／４Ｈ）の
金属材料を打ち抜いてビード加工等の成形加工をし，熱
処理と表面処理をして，所定の張り強さ，伸び，及び硬
さを有するものとする。また，ストッパ板４は，ステン
レスばね鋼板（ＳＵＳ３０４）の金属材料を打ち抜いて
折返し等の成形加工をして形成されている。

【００１８】弾性金属板２，３には，シリンダブロック
に形成されたシリンダボアの数と位置に対応してボア孔
５Ａ，５Ｂ（総称する場合には，ボア孔５とする）・・
が並列して形成されている。ボア孔５Ａ，５Ｂ・・は，
弾性金属板２についてはボア孔縁８Ａ，８Ｂ・・（総称
するときは，ボア孔縁８とする）によって，又弾性金属
板３についてはボア孔縁９Ａ，９Ｂ・・（総称するとき
は，ボア孔縁９とする）によって縁取られている。ボア
孔５は，弾性金属板２，３において，同じ位置に且つ同
じ大きさで形成されている。

【００１９】また，弾性金属板２には，ボア孔５Ａ，５
Ｂ・・に沿ってビード６Ａ，６Ｂ，・・（総称するとき
は，ビード６とする）が，また弾性金属板３にも，同様
に，ボア孔５Ａ，５Ｂ・・に沿ってビード７Ａ，７Ｂ・
・（総称するときは，ビード７とする）が，それぞれ環
状に形成されている。ビード６，７は，弾性金属板２と
弾性金属板３において，それぞれボア孔５の孔縁８，９
に沿って且つビード６，７の凸部が互いに対向するよう
に形成されている。ビード６，７の高さや幅は，同じボ
ア孔５の周りであっても，周方向位置に応じて変化させ
ることができる。例えば，小型のエンジンでは，隣接す
るボア孔５間の領域が非常に狭くなっているので，２本
のビード６，６及びビード７，７の幅を，他の領域にお
けるビードの幅よりも狭く設定されている。隣接するボ
ア孔５間の領域から離れるにしたがって，ビードの幅を
次第に広く形成することができる。また，ビードの高さ
についても，隣接するボア孔５間の領域では高いシール
力を得るために他の領域よりも高くする等の形状変化を
施すことができる。図２及び図３に示した弾性金属板
２，３とストッパ板４とを重ね合わせた状態では，他の
隣接するボア間においても同様の断面構造をしているの
は勿論である。

【００２０】金属製ガスケット１がシリンダヘッドとシ
リンダブロックの対向取付面間に挟まれてボルト等によ
って締め付けられた状態では，ビード６，７は，互いに
当接して変形する。ビード６，７が押し潰されて変形す
るときの反作用により，両対向面間ではビード６，７
は，高いシール性能が要求されるボア孔５の周りにおい
て面圧が十分に高くなる弾性的な環状接触部を形成し，
この環状接触部により，ボア孔５を通る燃焼ガス等の流
体が前記対向面から漏出するのを阻止するシール機能が
得られる。また，弾性金属板２，３の各ビード６，７
は，その内外の裾位置で対向取付面に強く接触してシー
ルラインを形成するので，高温の燃焼ガスが漏洩し易い
隣接するボア間でのシール性能を確保することができ
る。隣接するボア孔５間以外のボア孔の周りにおいて
は，隣接するボア間に比較して燃焼ガスの漏洩程度は低
いので，ビード６，７から成る１条のビードが形成され
ている。

【００２１】弾性金属板２，３及びストッパ板４には，
更に，ボルト孔１７，ノック孔１８，水孔１９，或いは
図示しないが，ブローバイ孔，オイル孔が穿設されてい
るが，これらについては，金属製ガスケットの技術分野
においてそれぞれ周知の技術であるので，ここでは詳細
な説明を省略する。これらの孔の回りには，シールする
ため，ハーフビード（図示せず）が形成されている。

【００２２】また，図示していないが，金属製ガスケッ
ト１の表裏両面，即ち，弾性金属板２，３の両外側面及
び互いに対向する内側面の少なくとも一方面には，耐熱
性及び耐油性を有するゴム（例えば，フッ素ゴム），樹
脂等の非金属材料で，厚さが，例えば，１０μ〜２０μ
程度のコーティングが施されている。したがって，シリ
ンダヘッド及びシリンダブロックに対して金属対金属の
接触状態を回避し，金属製ガスケットとしての耐腐食性
や耐久性及び強度を確保することができる。また，弾性
金属板２，３，ストッパ板４，及びシリンダヘッド及び
シリンダブロックの対向取付面の機械加工面に凹凸が存
在していても，上記非金属材料が凹凸をカバーして充分
なシール機能を果たすことができる。

【００２３】次に，図４及び図５を参照して，ストッパ
板４の折重ね部１１の形成について説明する。図４は，
ストッパ板４に折重ね部１１を形成するための折返し加
工を施す前の状態を示すストッパ板４の一部断面図であ
り、図５は図４に示すストッパ板４に折返し加工を施し
て折重ね部１１を形成した後の状態を示す一部断面図で
ある。ストッパ板４は，図４に示すように板厚Ｔ１を有
する母材としてのストッパ板本体１０と，ストッパ板本
体１０と一体に形成され且つ当初に打ち抜き等で形成さ
れた孔縁１６まで板厚Ｔ２に板厚を減じられた板厚減少
部分１２とからなるように形成される。板厚減少部分１
２は，金属板のプレス加工，切削加工，又はエッチング
により形成することができる。板厚減少部分１２は，ス
トッパ板本体１０の板厚Ｔ１より薄く且つストッパ板本
体１０の板厚Ｔ１の半分より厚い板厚Ｔ２を有するよう
に加工されている。

【００２４】折重ね部１１は，板厚減少部分１２の孔縁
１６側の一部を折返し部分１５として図５に示すように
折り返し，板厚減少部分１２の他部であるベース部分１
４に重ね合わせることにより形成される。折重ね部１１
の折返し縁部１３は，弾性金属板２，３に形成されてい
るボア孔５と対応するボア孔を形成している。なお，図
２及び図３においては，ベース部分１４と折返し部分１
５とは，ボア孔５Ａ，５Ｂに対応して，符号Ａ，Ｂを付
して示している。

【００２５】折重ね部１１の全板厚Ｔ３はベース部分１
４の板厚と折返し部分１５の板厚との和（＝２×Ｔ２）
であるが，全板厚Ｔ３は，ストッパ板本体１０の板厚Ｔ
１よりも厚く，且つストッパ板本体１０の板厚Ｔ１の２
倍の板厚よりも薄くなっている。この場合，Ｔ３−Ｔ１
（＝２×Ｔ２−Ｔ１）がストッパ板４の折重ね部１１が
与えるストッパ量，即ち，段差量となる。このストッパ
量は，ストッパ板本体と同一の板厚Ｔ１を有する部分を
折重ねて形成した折重ね部の段差Ｔ１よりも小さく，折
重ね部１１は，かかる段差の差だけ抑制されたストッパ
機能を奏するものとなる。また，折重ね部１１は，ビー
ド基板２，３に当接して一種のシールラインを形成する
ので，腐食性の高温燃焼ガスがビード基板２，３のビー
ド６，７の領域まで侵入するのを防止する。ストッパ量
は，一般的に５０〜１００μｍ程度であるが，同じボア
孔の周囲においても，ボア孔の周方向の位置に応じて折
重ね部１１の径方向幅及びストッパ量を変更することが
できる。例えば，ストッパ量については，隣接するボア
孔５間の領域では大きなストッパ量とし，隣接するボア
孔５間から最も離れた領域では小さなストッパ量とし，
両領域の間の中間領域でのストッパ量は大小の両ストッ
パ量を滑らかに繋ぐように変化させることができる。ま
た，ボルト孔１７に近い領域でのストッパ量は，ボルト
による締付け力が大きいことによる影響を緩和させるた
め，ボルト孔１７から遠い領域でのストッパ量よりも小
さくしてもよい。

【００２６】図６及び図７は，金属製ガスケットに用い
られるストッパ板の一部を示す図であって，図６は折重
ね部を形成する前の状態を示すストッパ板の一部断面図
であり，図７は図６に示したストッパ板の折重ね部を形
成した後の状態を示す一部断面図である。図６に示すよ
うに，ストッパ板２０はストッパ板本体２１とストッパ
板本体２１から孔縁２３に至るに従って厚さを次第に減
少させたテーパ状の板厚減少部分２２とから成る。板厚
減少部分２２の孔縁２３側の半分の領域は，折返し部分
２６として折り返されて，ストッパ板本体２１側のベー
ス部分２５の上に重ね合わせられる。ベース部分２５の
板厚と折返し部分２６の板厚との合計の板厚Ｔ４は，ス
トッパ板本体２１の板厚Ｔ１よりも厚いが，板厚Ｔ１の
２倍の板厚よりも薄く形成される。このストッパ板２０
とビードが形成されたビード基板との重合わせについて
は，図２及び図３に示した態様と同様であるので，再度
の説明を省略する。

【００２７】図８には，この発明による金属製ガスケッ
トの別の実施例が示されている。図８に示す金属製ガス
ケット１Ａは，図１〜図３に示した金属製ガスケット１
の実施例において図３に対応した断面図である。図８に
おいては，同じ機能を奏する構成要素又は部位について
は，図３において付した符号と同じ符号を付しているの
で，再度の説明を省略する。この実施例では，ベース部
分３４と折返し部分３５を重ねた折重ね部３１Ａは，図
４及び図５に示す板厚関係と同様の板厚関係（２×Ｔ２
＝Ｔ３＞Ｔ１＞Ｔ２）を有するが，ストッパ板本体３０
からビード基板２，３のビード６Ａ，７Ａの位置まで延
びるように，ストッパ板本体３０と一体的に形成されて
いる。ビード６Ａ，７Ａの高さを比較的低くしても，ビ
ード６Ａ，７Ａは，締付け状態では十分な面圧を確保す
ることができる。また，折重ね部３１Ａの板厚を適度に
設定することにより，金属製ガスケット１Ａを対向取付
面間で締め付けたときに，折重ね部３１Ａによって，ボ
ア孔周りの面圧とボア孔周り以外の外周部の面圧とのバ
ランスが容易に設定されると共に，金属製ガスケット１
Ａが挟まれる対向取付面（デッキ面）の不整も効果的に
補償される。

【００２８】以上，この発明の金属製ガスケットの一実
施例について説明したが，この発明はこの実施例に限定
されるものではない。また，この実施例についても，種
々の変更が可能である。例えば，金属製ガスケットを適
用するエンジン部品としては，シリンダヘッドとシリン
ダブロックとの間の対向取付面間に限られず，吸気側排
気側のマニホルド用の金属製ガスケットとしても適用可
能である。弾性金属板２，３の各板厚，及びビード６，
７の高さ及び幅等の形状についても，同じ板厚，形状に
することなく，エンジン部品の対向取付面の材質や硬さ
等の物理的な性質，或いはエンジンの仕様等にあわせ
て，対向取付面に発生する不整を補正することができる
ように，金属製ガスケットの仕様決定に際して適宜変更
することができる。また，隣接するボア孔５間でのビー
ド６，７はそれぞれ独立したものとして説明したが，必
要なシール性能を確保することができれば，隣接するボ
ア孔５間で，ビード６，７は会合していてもよい。

【００２９】

【発明の効果】この発明による金属製ガスケットは，以
上のように構成されているので，次のような効果を奏す
る。即ち，本体部分と一様な板厚を有する金属板を単に
折り重ねて折重ね部を形成したストッパ板を有する金属
製ガスケットでは，ストッパ板によるストッパ機能が過
大になることがあるが，この発明による金属製ガスケッ
トによれば，ストッパ板の折重ね部の全板厚はストッパ
板本体の板厚より厚くストッパ板本体の板厚の２倍より
も薄い板厚を有しているので，中間板の枚数を増加した
り或いは別部品としてのストッパ片を用意することな
く，ストッパ板のストッパ機能を抑えた金属製ガスケッ
トを得ることができる。即ち，エンジンのシリンダヘッ
ドとシリンダブロックとの間のような対向取付面間に金
属製ガスケットを挟んで締め付けても，折重ね部に過度
の面圧が集中することがないので折重ね部の特にボア孔
を定める折重ね縁部に亀裂が生じることがない。ボア孔
の周りは，高温で腐食性の燃焼ガスの影響を受けるの
で，ビード基板には耐熱性や耐蝕性の高い高級の金属材
料が使用されるが，折重ね部はストッパ板本体の板厚よ
り厚い板厚を有しているので，このような高温で腐食性
の燃焼ガスが弾性金属板のビードの領域まで進入するの
を十分に防止することができる。また，折重ね部の全板
厚はストッパ板本体の板厚の２倍よりも薄いので，ビー
ドに適度の圧縮変形をもたらし，ビード基板のビードは
十分な弾性的な環状接触部を形成することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明による金属製ガスケットの一実施例の
一部を示す平面図である。

【図２】図１に示した金属製ガスケットの矢視Ａ−Ａで
見た断面図である。

【図３】図１に示した金属製ガスケットの矢視Ｂ−Ｂで
見た断面図である。

【図４】この発明による金属製ガスケットに用いられる
ストッパ板の一例において折重ね部を成形する前の状態
を示す一部断面図である。

【図５】図４に示したストッパ板の折重ね部を成形した
後の状態を示す一部断面図である。

【図６】この発明による金属製ガスケットに用いられる
ストッパ板の別の例において折重ね部を成形する前の状
態を示す一部断面図である。

【図７】図６に示したストッパ板の折重ね部を成形した
後の状態を示す一部断面図である。

【図８】この発明による金属製ガスケットの別の実施例
を示す一部断面図である。

【符号の説明】

１，１Ａ 金属製ガスケット ２，３ ビード基板 ４，２０，２９ ストッパ板 ５ ボア孔 ６，７ ビード １０，２１，３０ ストッパ板本体 １１，２４，３１ 折重ね部 １２，２２ 板厚減少部分 １４，２５ ベース部分 １５，２６ 折返し部分

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ボア孔に沿ってビードが形成された弾性
   金属板からなる少なくとも一枚のビード基板，及び前記
   ビード基板に前記ビードの凸部に当接するように積層さ
   れる金属板から成るストッパ板を備え，前記ストッパ板
   はストッパ板本体及び前記ストッパ板本体と一体に形成
   され且つ前記ボア孔の周囲に対応した位置に配置される
   折重ね部から成り，前記折重ね部は前記ストッパ板本体
   と一体であり且つ前記ボア孔の周囲に延びるベース部分
   及び前記ベース部分に対して折り返されて重ね合わされ
   た折返し部分から成り，前記折重ね部の全板厚は前記ス
   トッパ板本体の板厚より厚く前記ストッパ板本体の前記
   板厚の２倍よりも薄く形成されていることから成る金属
   製ガスケット。
2. 【請求項２】 前記折重ね部は，前記ストッパ板本体の
   前記板厚より薄く且つ前記ストッパ板本体の前記板厚の
   半分より厚い板厚を有する板厚減少部分の一部を前記折
   返し部分として折り返すことにより形成されていること
   から成る請求項１に記載の金属製ガスケット。
3. 【請求項３】 前記板厚減少部分は，一定の板厚に又は
   前記ストッパ板本体から離れるに従って厚さが次第に減
   少したテーパ状に形成されていることから成る請求項２
   に記載の金属製ガスケット。
4. 【請求項４】 前記板厚減少部分は，金属板のプレス加
   工，切削加工又はエッチングにより形成されていること
   から成る請求項２又は３に記載の金属製ガスケット。
5. 【請求項５】 一対の前記ビード基板が前記ストッパ板
   を挟んでいることから成る請求項１〜４のいずれか１項
   に記載の金属製ガスケット。