JP2000329232A - 金属製ガスケット - Google Patents

金属製ガスケット

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JP2000329232A
JP2000329232A JP2000087917A JP2000087917A JP2000329232A JP 2000329232 A JP2000329232 A JP 2000329232A JP 2000087917 A JP2000087917 A JP 2000087917A JP 2000087917 A JP2000087917 A JP 2000087917A JP 2000329232 A JP2000329232 A JP 2000329232A
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JP2000087917A
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Shigeru Kawaguchi
茂 川口
Kenji Kubouchi
憲治 窪内
Naoki Ii
直毅 伊井
Kunitoshi Inoue
國利 井上
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Nippon Gasket Co Ltd
Original Assignee
Nippon Gasket Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 この金属製ガスケットは,上ビード板と中間
弾性金属板を整合状態に積層してシリンダヘッド側に配
置し,下ビード板をシリンダブロック側に配置し,ビー
ドの全圧縮を防止し,シリンダヘッド側の応力軽減を図
る。 【解決手段】 この金属製ガスケットは,上ビード板1
0と下ビード板20との間に折返し部35を備えた中間
弾性金属板30を介在させ,上ビード板10と中間弾性
金属板30とをビード11,31を含めて整合状態に積
層した構造に構成されている。折返し部35は,シール
機能とビード11,21,31に対するストッパ機能を
有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,4気筒,6気筒
等の多気筒エンジンにおいて,シリンダヘッドとシリン
ダブロックとの対向取付面間をシールするために使用さ
れる金属製ガスケットに関する。
【0002】
【従来の技術】従来,シリンダヘッドとシリンダブロッ
クとの間のような内燃機関の構造部材の対向取付面間を
シールするために金属材料から製作した金属製ガスケッ
トが使用されている。金属製ガスケットは,シリンダボ
ア,水,油の通路に対応する貫通孔の周囲近傍にビード
を有しており,ボルト等によりシリンダヘッドとシリン
ダブロックとを締め付けて固定するときに,対向取付面
に対してビードが弾性的な環状接触部を形成して対向取
付面間をシールするものである。
【0003】しかしながら,最近の内燃機関は,高出力
化と共に軽量化が求められ,その一環としてシリンダヘ
ッド及びシリンダブロック等を従来の比重の大きい鋼,
鋳物に代えて比重の小さいアルミニウム材料で製作する
傾向にある。アルミニウム材料は軽量である反面,剛性
が低いので内燃機関の運転時にシリンダブロックに対す
るシリンダヘッドの相対変位が大きくなる傾向にある。
そして,これら構造材料間の対向取付面を単板の金属製
ガスケットを介して締付け用ボルトによって締め付ける
時には,締付けボルト位置が金属製ガスケットの外周部
又は比較的に外周部に分散しているために,シリンダボ
ア孔に対してはその周囲に必ずしも均等に分布していな
いので,対向取付面が不整となり易い。その結果,シリ
ンダボア孔間の領域のような歪みの大きい個所の対向取
付面間に高温高圧の燃焼ガスが侵入して,対向取付面間
に介装されている金属製ガスケットのビード部を腐食,
汚損してシール効果を低下させる。
【0004】更に,シリンダヘッドガスケットの場合に
は,内燃機関の燃焼サイクルの間にシリンダヘッドとシ
リンダブロックとの間隔が増減を繰り返し,金属製ガス
ケットにも繰り返し応力即ちメカニカルストレス及びサ
ーマルストレスが作用する。この負荷変動応力は,シリ
ンダブロックやシリンダヘッドの剛性の最も低い部位に
大きな値として発生し,その結果,ビードにヘタリが生
じたり,亀裂が発生してシール性能を劣化させるという
不具合が生じる。
【0005】この種の金属製ガスケットとしては,特開
昭63−293363号公報に開示されている。該公報
に開示されている積層金属ガスケットは,図11に示す
ように,シリンダボア孔71の周縁に沿いビード63,
64を形成した弾性金属板61,62から成る二枚のビ
ード基板の間に二枚の中間板65,66を積層すると共
に,ビード63,64の当接する部位よりもシリンダボ
ア孔71の部位の二枚の中間板65,66間にスペーサ
部材67,68を抱持させてデッキ面間隙の不整を補償
すべく補償部69,70を設けたものである。
【0006】また,特開昭64−65367号公報に開
示されている積層金属ガスケットは,シリンダボア孔の
周縁に沿いビードを形成した弾性金属板からなる二枚の
ビード基板の間に,二枚の中間板を積層したものであ
り,一枚の中間板の縁部を他の一枚の中間板の縁部でグ
ロメット状に抱持して,両面に略同一の段差を形成すべ
く補償用折曲部を設けたものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来の金属製ガスケッ
トについて,前掲特開昭63−293363号公報に開
示されている積層金属ガスケットは,ビード63,64
の当接する部位よりもシリンダボア孔71の部位の二枚
の中間板65,66間にスペーサ部材67,68を抱持
させているから,接面が一面増加し,シール力を分担し
ている。また,スペーサ部材67,68を溶接,接着等
の手段で固定する必要がある。
【0008】また,前掲特開昭64−65367号公報
に開示されている積層金属ガスケットは,一枚の中間板
の縁部を他の一枚の中間板の縁部でグロメット状に抱持
し,両面に略同一の段差を形成して,補償用折曲部を設
けているが,これを両側のビード基板により挟着し,シ
リンダヘッドとシリンダブロック間で全屈状態に圧縮す
ると,グロメット状に抱持した折返し段部がビードのシ
ムとして作用する。その結果,ビード基板に対してはビ
ード基板の応力振幅は低下するが,上下のビード基板の
作動の差から中間板の折返し部に曲げ応力や応力振幅が
発生する。
【0009】
【課題を解決するための手段】この発明の目的は,ビー
ドを有する一対の弾性金属板との間に中間弾性金属板を
介在させ,中間弾性金属板のシリンダボア孔縁部に折返
し部を形成して厚さの厚い折返し部を持たせることによ
って,折返し部が一対の弾性金属板の各ビードの全圧縮
を防止して各ビード部のヘタリを防止すると共に,シリ
ンダボア孔の周縁に補償部を形成し,該補償部の厚みを
任意に設定してシール面圧のバランスを良好にし,ビー
ド部の破損や補償部の破損やシール効果の低減を防止
し,二枚重ねの弾性金属板をシリンダヘッド側に配置
し,シリンダヘッド側の弾性金属板に生じる応力振幅に
よる応力軽減を達成する金属製ガスケットを提供するこ
とである。
【0010】この発明は,複数個の互いに整合するシリ
ンダボア孔及び該シリンダボア孔の外側に沿って凸部を
互いに対向させたビードを備えた一対の弾性金属板,並
びに一対の前記弾性金属板の間で一方の前記弾性金属板
に積層され且つ前記シリンダボア孔と整合するシリンダ
ボア孔の周縁部を前記シリンダボア孔の半径方向外向き
に折り返した後に熱処理した折返し部を備えた中間弾性
金属板を有し,前記中間弾性金属板が積層された前記弾
性金属板がエンジンのシリンダヘッド側に配置され,他
方の前記弾性金属板が前記エンジンのシリンダブロック
側に配置されることから成る金属製ガスケットに関す
る。
【0011】この金属製ガスケットは,前記中間弾性金
属板の前記折返し部を前記シリンダボア孔間の領域で厚
く且つ前記シリンダボア孔間以外の領域で薄く形成した
ものである。
【0012】また,この金属製ガスケットは,前記中間
弾性金属板の前記折返し部を前記シリンダボア孔間の領
域で幅広く且つ前記シリンダボア孔間以外の領域で幅狭
く形成したものである。
【0013】この金属製ガスケットは,前記中間弾性金
属板の前記折返し部に軟質部材を挟んでいるものであ
る。
【0014】この金属製ガスケットは,以上のように構
成したので,シリンダヘッドとシリンダブロックとの間
で金属製ガスケットを締め付けて押圧状態にすると,エ
ンジンの運転時に生じる応力振幅がシリンダブロック側
の弾性金属板よりもシリンダヘッド側の弾性金属板が大
きくなるが,シリンダヘッド側の弾性金属板が二枚の積
層構造であるから,シリンダヘッド側の弾性金属板に発
生する応力を軽減させることができ,また,前記各弾性
金属板はそれぞれ変形するが,前記各弾性金属板の前記
各ビードが,シリンダボア孔の半径方向で見て,ビード
開始及びビード終了の環状部位で強く対向取付面に押し
付けられて二重の強力なシール部を形成し,同時に,前
記中間弾性金属板の折返し部の厚さが他の板厚だけの部
分の約2倍となり,シリンダボア孔の周囲において,前
記各弾性金属板を対向取付面に対して強く押すことにな
り,シール機能を果たすことになる。また,前記中間弾
性金属板の前記折返し部は厚さが厚くなるので,前記各
弾性金属板のビード変形に対するストッパの機能を果た
し,前記各弾性金属板の前記ビードの全圧縮するを防止
する。更に,この締め付け時に二つの構造部分の対向取
付面に不整が生じても,前記ビードの部位は勿論のこ
と,前記中間弾性金属板の前記折返し部が歪みに対応し
て変形するので,前記折返し部は対向取付面間の不揃い
な間隙を補償する補償部としての機能を有する。
【0015】更に,前記中間弾性金属板の前記折返し部
が与える補償部は,SUS631等の材料,即ち,加工
前は柔らかく,加工後熱処理すると硬化,強靱性が与え
られる材料で製作しているので,任意に加工することが
できると共に,応力変動や長期間の繰り返し応力に耐え
ることができる。加工の例としては,前記中間弾性金属
板の前記折返し部を前記シリンダボア孔間の領域で厚く
且つ前記シリンダボア孔間以外の領域で薄く形成でき
る。このように構成した金属製ガスケットは,高温で腐
食性の燃焼ガスが漏洩し易いシリンダボア孔間の領域に
おいて燃焼ガスの漏出に対抗する強いシール部が形成さ
れる。
【0016】また,この金属製ガスケットは,前記折返
し部の折返し量を変更することもできる。即ち,前記中
間弾性金属板の前記折返し部を前記シリンダボア孔間の
領域で幅広く且つ前記シリンダボア孔間以外の領域で幅
狭く形成する。この構造では,燃焼ガスが漏洩し易い前
記シリンダボア孔間の領域で,燃焼ガスの漏出に対抗す
る幅広いシール部を得ることができる。
【0017】また,前記中間弾性金属板の前記折返し部
に軟質部材を介在させると,該軟質部材はビードの高さ
が高すぎる場合にこれを補償すると共に,前記折返し部
自体の変形性を向上できるので,金属製ガスケットの対
向取付面での締め付け時に,前記各弾性金属板の変形に
対応すると共に,対向取付面の不整を巧みに吸収するこ
とができる。また,エンジンの運転に伴いシリンダヘッ
ドとシリンダブロックとの間に発生する振動を吸収する
作用も期待できる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下,図面を参照して,この発明
による金属製ガスケットの実施例を説明する。図1はこ
の発明による金属製ガスケットの一実施例を部分的に示
す平面図,及び図2はシリンダボア孔間の領域における
金属製ガスケットの拡大図である。この金属製ガスケッ
ト1は,例えば,4気筒,6気筒等の多気筒ディーゼル
エンジンにおけるシリンダヘッドとシリンダブロック
(図示せず)との対向取付面をシールするために使用さ
れるものである。金属製ガスケット1は,エンジンの気
筒数即ちシリンダボア数に対応するシリンダボア孔2
A,2B,2C,・・(シリンダボア孔を総称するとき
は符号2を用いる)を有している。
【0019】この実施例では,一対の弾性金属板の一方
をシリンダヘッド側に位置する上ビード板10とし,該
上ビード板10に調整板即ち中間弾性金属板30を重ね
て二枚重ねの弾性金属板に構成し,他方をシリンダブロ
ック側に位置する下ビード板20としているが,このこ
とは,エンジンの運転時にシリンダヘッド側の弾性金属
板に生じる応力振幅がシリンダブロック側の弾性金属板
よりも大きいので,応力軽減の目的から二枚重ねの弾性
金属板をシリンダヘッド側に配置するのが好ましいため
である。即ち,中間弾性金属板30はビード板10,2
0に対して負荷応力を軽減するものであり,従来の2枚
の弾性金属板で負担するものを,3枚の弾性金属板で負
担させるものである。
【0020】弾性金属板である上ビード板10と下ビー
ド板20とは,一般的に,冷間圧延で硬さHv350〜
500の硬度の材料を使用するが,材料がHv350以
下の場合には,熱処理して使用し,材料がHv350以
上の場合には,熱処理しないで使用することもある。ま
た,中間弾性金属板である中間弾性金属板30は,例え
ば,硬さHv200以下の材料を折返し加工及びビード
加工を施した後,熱処理して硬度Hv350以上にして
使用する。熱処理する場合には,析出硬化処理としてS
US630やSUS631,窒化処理としてSUS30
4,SUS301或いはSK材(SK1〜SK7),焼
き入れ・焼き戻し処理としてSUS420J2 やSUS
440A,或いは固溶化熱処理としてチタン合金,アル
ミニウム合金等の金属材料から形成されており,ビード
加工前の素材の硬さは,例えば,Hv 200以下の素材
である。
【0021】ビード板10,20の金属材料を各熱処理
した場合の硬さの具体的な一例は次のとおりである。S
US304,SUS301を窒化処理した場合,熱処理
前がHv 200以下(但し,表面のみ)であるが,熱処
理後がSUS304についてはHv350〜400,S
US301についてはHv350〜500であり,SU
S631をビード加工の後,熱処理即ち析出硬化処理し
た場合には熱処理前がHv 200以下であるが,熱処理
後はHv 350〜500であった。これ以外にSK材
(SK1〜SK7)の熱処理やSUS420J2 の焼き
入れ・焼き戻し処理更に,チタン合金,アルミニウム合
金(6Al−2Sn−4Zr−6Mo)を固溶化熱処理
することもできる。
【0022】上ビード板10,下ビード板20,中間弾
性金属板(30)及び中間板40には,冷却水を通す水
穴3,締め付け用のボルト穴4,オイルを通すオイル穴
5やオイル戻り穴,ノック孔,リベット穴等が同じ位置
で且つ同じ大きさにそれぞれ複数個穿設されているが,
これらについては,金属製ガスケットの技術分野におい
てそれぞれ周知の技術であるので,ここでは詳細な説明
を省略する。
【0023】また,図示していないが,金属製ガスケッ
ト1の表裏両面,即ち燃焼ガスに晒される可能性ある部
位及び互いに金属接触する部位に対して,耐熱性及び耐
油性を有するゴム(例えば,フッ素ゴム),樹脂等の非
金属材料で,厚さが,例えば,10〜50μm程度(好
ましくは25μm)のコーティングが施される。かかる
コーティングによって,シリンダヘッド及びシリンダブ
ロックに対して金属対金属の接触状態を回避し,金属製
ガスケットとしての耐腐食性,耐久性及び強度を確保す
ることができる。また,金属製ガスケットの機械加工面
に凹凸が存在していても,上記非金属材料が凹凸をカバ
ーして充分なシール機能を果たすことができる。
【0024】図3は図1の線A−Aにおける断面図,及
び図4は図1の線B−Bにおける断面図であり,金属製
ガスケット1の第1実施例を示す図である。図3におい
て,シリンダボア孔2Aと金属製ガスケット1の端部即
ち縁部分とを結ぶ線で切断した金属製ガスケットの断面
が示されているが,シリンダボア孔2間(例えば,シリ
ンダボア孔2Aとシリンダボア孔2Bとの間の互いにシ
リンダボア孔2が接近した領域)以外の領域では同様の
断面構造を有する。図4において,それぞれ隣接するシ
リンダボア孔2A,2Bの境界領域を,そのシリンダボ
ア孔2A,2Bの中心を結ぶ線で切断した金属製ガスケ
ット1の断面,即ち,シリンダボア孔2間での断面が示
されているが,他の隣接するシリンダボア孔2の境界領
域においても同様の断面構造をしているのは勿論であ
る。
【0025】この金属製ガスケットについては,一例と
して,以下のように形成することができる。例えば,シ
リンダボア孔2の直径は93mmであり,シリンダボア
孔2間の最小距離L1 は10mm程度である。金属製ガ
スケット1は,シリンダヘッド側からシリンダブロック
側の順に,上ビード板10と,上ビード板10にビード
形状を合わせて積層された中間弾性金属板である中間弾
性金属板30,中間板40及び下ビード板20を積層し
てなる。上ビード板10と下ビード板20は,SUS3
01又はSUS304の材料から製作し,その厚さ
1 ,t2 は0.25mmであり,硬さはHv350以
上とする。中間弾性金属板30は,SUS304の材料
から製作し,その厚さt3 は0.20mmであり,硬さ
はHv350以上とする。また,中間板40は,SA1
C,SUS301,SUS304,Al鋼板又はZn鋼
板から選択された材料から製作し,その厚さt4 は0.
5mmである。
【0026】この金属製ガスケット1における上ビード
板10,下ビード板20及び中間弾性金属板30は,そ
れぞれシリンダボア孔2を形成する内周端面12,2
2,32からシリンダボア孔2の半径方向外側に隔置し
た近傍周囲部分が,シリンダボア孔2と同心に且つ環状
に取り巻く断面山形の凸部を備えたビード11,21,
31に形成されている。各ビード11,21,31は,
各弾性金属板のシリンダボア孔2の半径方向内側から見
て始端13,23,33から終端14,24,34まで
の領域に中間板40に向かう側に形成されている。中間
弾性金属板である中間弾性金属板30のビード31は上
ビード板10のビード11と形状が同じであり,積層し
た状態で上ビード板10と中間弾性金属板30とはビー
ド11,31の部位において重なり合っている。
【0027】図2に示すように,上下のビード板10,
20及び中間弾性金属板30のシリンダボア孔2Aの周
囲のビード11,21,31と,隣接するシリンダボア
孔2Bの周囲のビード11,21,31とは,シリンダ
ボア孔2A,2Bの接近領域において重なっている。即
ち,ビード11,21,31はシリンダボア孔2間の領
域で会合して一本のビード11,21,31となってい
る。しかしながら,隣接するビード同士を重ねることな
く,わずかの間隙をおいて互いに配置してもよい。ビー
ドの中心領域の凸部頂面を実質的に平坦面に形成し,ビ
ードの凸部と中間板40との接触を安定するようにして
もよい。例えば,ビードの半径方向で見た幅L2は約3
mmであり,ビードの高さh1 は約0.25mmであ
る。
【0028】また,中間弾性金属板30のシリンダボア
孔2を形成する内端32の周縁には,ビード31の凸側
で且つビード31の半径方向内側においてビード31と
重なることのない範囲で折返し部35が形成されてい
る。折返し部35の幅L3 は,例えば,約2.5mmで
ある。更に,水穴3等の各穴における金属製ガスケット
1の断面構造は,図示していないが,中間弾性金属板3
0と中間板40とが平坦状に積層しており,上下のビー
ド板10,20の穴3の周囲部分は穴3と同心上に他の
平面的な部分から僅かに窪み状(或いは,山形)になる
ように変形しており,締め付け時に,穴3の周囲におい
て良好なシール性が得られるようにしてある。
【0029】図3及び図4に示された実施例は,中間弾
性金属板30と下ビード板20との間に中間板40を介
装した例である。中間板40は,一様な厚さt4 であっ
て概して平坦に形成されているが,折返し部35が対向
するシリンダボア孔周縁領域45は,それ以外の領域に
対して下ビード板20に向かって屈曲した段差に形成さ
れている。図示の例では,中間板40には,各弾性金属
板のビード11,21,31が形成されている位置より
もシリンダボア孔2の半径方向で僅かに内側の位置にお
いて屈曲して段差43が形成されており,該段差43の
位置から半径方向内側に延びるシリンダボア孔周縁領域
45が,段差43によって中間板40の本体部分から下
ビード板20に向かって偏倚している。従って,シリン
ダボア孔2間の領域では,ビードの両側に段差43,4
3が位置することになる。段差43の高さは,中間弾性
金属板30自体の板厚よりも低く設定してある。
【0030】上下ビード板10,20のビード11,2
1の高さ,段差43の高さ及び中間弾性金属板30の板
厚間の寸法関係を,図5に図示している。上ビード板1
0のビード11のビード高さ,下ビード板20のビード
21のビード高さ,及び中間弾性金属板30のビード3
1のビード高さは,同一高さであり,h1 で表す。中間
板40の段差43の高さをh2 とする。また,中間弾性
金属板30の折返し部35の板厚をt3 とする。中間弾
性金属板30の折返し部35が中間板40の段差を付け
たシリンダボア孔2周縁領域45と接触するまでの間隙
δU は,δU =h1 +h2 −t3 であり,下ビード板2
0が中間板40のシリンダボア孔2周縁領域45と接触
するまでの間隙δLは,δL =h1 −h2 である。間隙
δU は間隙δL に等しいのが好ましい場合は,δU =δ
L であるから,h2 =t3 /2となる。即ち,段差43
の高さは,中間弾性金属板30の折返し部35の板厚の
半分の値となる。段差43の高さh2 が折返し部35の
板厚t3 よりも大きいと,上ビード板10と中間弾性金
属板30の各ビード11,21が完全圧縮するのを阻止
することができないので,段差の高さh2 は折返し部3
5の板厚t3 よりも小さくするべきである。この最後の
制限を除いて,これらの寸法関係は上記の関係のみに限
らず若干の変更が可能である。
【0031】図3及び図4に図示された実施例につい
て,その作用を説明する。金属製ガスケット1をエンジ
ンの対向取付面間に配置して締め付けると,上下のビー
ド板10,20の各ビード11,21が変形を開始し,
対向取付面に対しては,ビード11,21のビード開始
及びビード終了の端部13,14及び23,24の部位
で強く押圧されて,シリンダボア孔2の周囲において二
重のシール部を形成する。水穴3,ボルト穴4及びオイ
ル穴5の周囲においても同様にシール部が形成されて,
これら穴の周囲を良好にシールする。シリンダボア孔2
の周囲においては,中間弾性金属板30の折返し部35
と,下ビード板20のシリンダボア孔2周囲部分がそれ
ぞれ中間板40のシリンダボア孔2周縁領域45の各面
に接触する。折返し部35は段差43の高さを完全に埋
めることはないから,折返し部35の領域でもシール部
を形成する一方,上ビード板10のビード11が完全圧
縮されることがない。従って,各ビードはヘタリを起こ
すことがない。また,下ビード板20も,中間板40の
段差43のためにビード21が完全圧縮することがな
く,ビード11,21のヘタリを防止する。また,折返
し部35は補償部としての機能があり,特に,上ビード
板10の締め付け時に,対向取付面の不整が生じても,
補償部は歪みや締め付け後の負荷変動に伴う変形を吸収
する。中間板40には,屈曲成形による段差を形成して
いるが,折返しを伴う加工をしておらず,中間板40に
作用する繰り返し負荷や変動負荷によって亀裂等の破損
を生じる部位が存在していないので,中間板40を理由
とする金属製ガスケット1の事故を生じる恐れがない。
【0032】中間弾性金属板30の折返し部35を含む
加工は,任意に変更可能である。例えば,ビード板10
と中間弾性金属板30とをそれぞれのビード11,31
の形状を合わせて積層する場合に,中間弾性金属板30
の折返し部35の加工形成後に,中間弾性金属板30を
熱処理するので,中間弾性金属板30は熱硬化されて強
靱性を得て,それ自体,負荷変動や繰り返し応力への耐
久性が向上し,更に,中間弾性金属板30に積層される
上ビード板10に対しては補強機能を持たせることもで
きる。また,中間弾性金属板30の折返し加工の際,折
返し部35の折り返し厚さは一様としてもよいが,シリ
ンダボア孔2間の領域では厚く,シリンダボア孔2間以
外の領域では薄く加工することもできる。このように形
成した金属製ガスケット1にあっては,高温で腐食性の
燃焼ガスが漏洩しやすいシリンダボア孔2間の領域にお
いて強いシール部が形成され,燃焼ガスの漏出に対して
強力にシールする。また,折返し部35の折返し量を変
更することもできる。即ち,中間弾性金属板30の折返
し部35をシリンダボア孔2間の領域で幅広く且つシリ
ンダボア孔2間以外の領域で幅狭く加工形成する。この
場合においては,燃焼ガスが漏洩しやすいシリンダボア
孔2間の領域で,燃焼ガスの漏出に対抗する安定した幅
広いシール領域を得ることができる。
【0033】図6及び図7に図示した実施例は,基本的
には図3及び図4に図示した実施例と同様であるので,
同じ構成要素には同じ符号を付し,重複する説明を省略
する。この金属製ガスケット1において,中間弾性金属
板30は,ビード部を備えていないので,折返し部35
は中間板40に隙間なく積層している。従って,上ビー
ド板10と中間弾性金属板30の折返し部35との間に
は隙間Sが形成されている。中間弾性金属板30は,上
記と同様に,折返し加工の後に熱処理されている。上下
のビード板10,20の各ビード部11,21の完全圧
縮の防止と折返し部35の補償作用については上記実施
例と同様である。
【0034】次に,図8及び図9に図示したこの発明の
実施例について説明する。この実施例は,中間板を省略
した例であり,中間弾性金属板30と下ビード板20と
が直接に接触している。この例においても,同一構成要
素には同一符号を付しており,重複する説明を省略す
る。中間弾性金属板30は,上ビード板10に対してビ
ード形状を合わせたビード板31が形成されており,隙
間なく積層されている場合を示している。中間弾性金属
板30のビード31は,下ビード板20のビード21に
対してビードの凸部同士が接触している。中間弾性金属
板30の折返し部35は,上ビード板10に対する補強
作用が期待できると共に,折返し部35のビード板に対
するビード完全圧縮防止と締め付け時の対向取付面の不
整吸収作用については,上記各実施例と同様である。
【0035】図10に示したこの発明による金属製ガス
ケットの実施例は,中間弾性金属板30の折返し部35
に軟質部材50を挟んで折り返したものである。この実
施例は,中間板を有する実施例にも,中間板を有しない
実施例にも適用可能である。軟質部材50は,軟質金属
板,断熱グラファイトシート,アラミド系ビータシー
ト,樹脂又はゴム等の軟質材料と同じ程度の性質を持つ
ものでよい。軟質部材50は,中間板を有する場合に
は,該中間板の段差が大き過ぎる時,また,中間板の有
無に係わらずビード11,21の高さが高過ぎる時に
は,板厚管理上,これを補償する。軟質部材50は,折
返し部35自体の変形性を向上するので,金属製ガスケ
ット1の対向取付面での締め付け時に,上下のビード板
10,20の変形に対応すると共に,対向取付面の不整
を良好に吸収する。軟質部材50は,エンジンの運転時
にシリンダヘッドとシリンダブロックとの間に発生する
振動を吸収する作用も期待できる。
【0036】
【発明の効果】この発明による金属製ガスケットは,以
上のように構成されているので,対向取付面を有する二
つの構造部分のシリンダヘッドとシリンダブロックとの
間で金属製ガスケットを締め付けて押圧状態にすると,
2枚重ねの弾性金属板がシリンダヘッド側に位置し,1
枚の弾性金属板がシリンダブロック側に位置した状態に
なり,エンジンの運転時にシリンダヘッド側の弾性金属
板に生じる応力振幅がシリンダブロック側の弾性金属板
よりも大きいが,その応力を軽減させることができる。
また,前記各弾性金属板の前記各ビードは,前記シリン
ダボア孔の半径方向で見て,ビード開始及びビード終了
の環状部位で強く対向取付面に押し付けられて二重のシ
ール部を形成し,それと同時に,前記中間弾性金属板の
前記折返し部も前記シリンダボア孔の周囲に前記各弾性
金属板を対向取付面に対して強く押して別のシール部を
形成してシール機能を果たす。更に,前記中間弾性金属
板の前記折返し部は前記各弾性金属板のビード変形に対
するストッパとなり,前記各弾性金属板の前記各ビード
部の全圧縮を防止する。前記各弾性金属板の前記各ビー
ド部の全圧縮が防止されると,前記各弾性金属板として
のばね機能が長期間にわたって保持され,前記各弾性金
属板のヘタリが防止される。また,この締め付け時に,
二つの構造部分の対向取付面に不整が生じても,前記各
ビードの部位は勿論のこと,前記中間弾性金属板の前記
折返し部が歪みに対応して変形するので,前記折返し部
はシール性能が最も厳しく要求される前記シリンダボア
孔周りにおいて,対向取付面間の不揃いな間隙を補償
し,シール機能を充分に発揮させることができる。
【0037】更に,前記中間弾性金属板の前記折返し部
が与える補償部は,加工前は柔らかく,加工後熱処理し
て硬くなる材料を使用することで,寸法及び硬度等を任
意に加工することができる。前記中間弾性金属板の前記
折返し部を前記シリンダボア孔間の領域で厚く且つ前記
シリンダボア孔間以外の領域で薄く形成できる。このよ
うに形成した金属製ガスケットにあっては,シリンダヘ
ッドの剛性に合わせてシール面圧のバランスを良好に設
定することができ,応力振幅が小さく,且つ耐久性に優
れた金属製ガスケットが得られる。また,高温で腐食性
の燃焼ガスが漏洩し易いシリンダボア孔間の領域におい
て,燃焼ガスの漏出に対抗する強力なシール部が形成さ
れ,前記シリンダボア孔周りのシールを確実にすること
ができる。更に,前記折返し部の厚さを,熱処理前に調
整できるので,シリンダヘッドの剛性に合わせて不整値
を補償させることもできる。
【0038】また,前記中間弾性金属板の前記折返し部
の折返し量を,前記シリンダボア孔間の領域で幅広く且
つ前記シリンダボア孔間以外の領域で幅狭く形成するよ
うに変更することもできる。この場合には,シール面の
面圧バランスが良く,耐久性の高い金属製ガスケットを
得ることができ,また,燃焼ガスが漏洩し易い前記シリ
ンダボア孔間の領域で,燃焼ガスの漏出に対抗する幅広
いシール領域を得ることができ,前記シリンダボア孔周
りでの安定したシールを得ることができる。
【0039】更に,前記中間弾性金属板の前記折返し部
に軟質部材を介在させた場合には,前記ビードの高さが
高すぎる場合に,該状態を補償して,面倒な板厚管理を
容易にすると共に,前記折返し部自体の変形性を向上す
るので,金属製ガスケットの対向取付面での締め付け時
に,前記各弾性金属板の変形に対応すると共に,対向取
付面の不整を良好に吸収することができる。また,エン
ジンの運転時に発生する振動を効果的に吸収する効果も
期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による金属製ガスケットの一実施例を
示す部分平面図である。
【図2】図1において,隣接するシリンダボア孔間の部
分を拡大して示す部分平面図である。
【図3】図1において,隣接するシリンダボア孔間の領
域を横断して両シリンダボア孔の中心を結ぶ線A−Aに
おける断面図である。
【図4】図1において,シリンダボア孔間を結ぶ線と直
交し,シリンダボア孔の中心を通る線B−Bにおけるシ
リンダボア孔の周りの領域の断面図である。
【図5】シリンダボア孔周縁における各寸法関係を表す
図4の部分拡大図である。
【図6】この発明による金属製ガスケットの別の実施例
を示す隣接するシリンダボア孔間の領域の断面図であ
る。
【図7】図6に示す実施例に対応するシリンダボア孔周
りの領域の断面図である。
【図8】この発明による金属製ガスケットの更に別の実
施例を示す隣接するシリンダボア孔間の領域の断面図で
ある。
【図9】図8に示す実施例に対応するシリンダボア孔周
りの領域の断面図である。
【図10】この発明の更にまた別の実施例を示し,折返
し部に軟質部材を挟んだ金属製ガスケットの折返し部分
断面図である。
【図11】従来の金属製ガスケットの一例を示す断面図
である。
【符号の説明】
1 金属製ガスケット 2 シリンダボア孔 10 上ビード板 11 ビード 20 下ビード板 21 ビード 30 調整板(中間弾性金属板) 31 ビード 35 折返し部 50 軟質部材
【手続補正書】
【提出日】平成12年3月31日(2000.3.3
1)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 金属製ガスケット
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,4気筒,6気筒
等の多気筒エンジンにおいて,シリンダヘッドとシリン
ダブロックとの対向取付面間をシールするために使用さ
れる金属製ガスケットに関する。
【0002】
【従来の技術】従来,シリンダヘッドとシリンダブロッ
クとの間のような内燃機関の構造部材の対向取付面間を
シールするために金属材料から製作した金属製ガスケッ
トが使用されている。金属製ガスケットは,シリンダボ
ア,水,油の通路に対応する貫通孔の周囲近傍にビード
を有しており,ボルト等によりシリンダヘッドとシリン
ダブロックとを締め付けて固定するときに,対向取付面
に対してビードが弾性的な環状接触部を形成して対向取
付面間をシールするものである。
【0003】しかしながら,最近の内燃機関は,高出力
化と共に軽量化が求められ,その一環としてシリンダヘ
ッド及びシリンダブロック等を従来の比重の大きい鋼,
鋳物に代えて比重の小さいアルミニウム材料で製作する
傾向にある。アルミニウム材料は軽量である反面,剛性
が低いので内燃機関の運転時にシリンダブロックに対す
るシリンダヘッドの相対変位が大きくなる傾向にある。
そして,これら構造材料間の対向取付面を単板の金属製
ガスケットを介して締付け用ボルトによって締め付ける
時には,締付けボルト位置が金属製ガスケットの外周部
又は比較的に外周部に分散しているために,シリンダボ
ア孔に対してはその周囲に必ずしも均等に分布していな
いので,対向取付面が不整となり易い。その結果,シリ
ンダボア孔間の領域のような歪みの大きい個所の対向取
付面間に高温高圧の燃焼ガスが侵入して,対向取付面間
に介装されている金属製ガスケットのビード部を腐食,
汚損してシール効果を低下させる。
【0004】更に,シリンダヘッドガスケットの場合に
は,内燃機関の燃焼サイクルの間にシリンダヘッドとシ
リンダブロックとの間隔が増減を繰り返し,金属製ガス
ケットにも繰り返し応力即ちメカニカルストレス及びサ
ーマルストレスが作用する。この負荷変動応力は,シリ
ンダブロックやシリンダヘッドの剛性の最も低い部位に
大きな値として発生し,その結果,ビードにヘタリが生
じたり,亀裂が発生してシール性能を劣化させるという
不具合が生じる。
【0005】この種の金属製ガスケットとしては,特開
昭63−293363号公報に開示されている。該公報
に開示されている積層金属ガスケットは,図6に示すよ
うに,シリンダボア孔71の周縁に沿いビード63,6
4を形成した弾性金属板61,62から成る二枚のビー
ド基板の間に二枚の中間板65,66を積層すると共
に,ビード63,64の当接する部位よりもシリンダボ
ア孔71の部位の二枚の中間板65,66間にスペーサ
部材67,68を抱持させてデッキ面間隙の不整を補償
すべく補償部69,70を設けたものである。
【0006】また,特開昭64−65367号公報に開
示されている積層金属ガスケットは,シリンダボア孔の
周縁に沿いビードを形成した弾性金属板からなる二枚の
ビード基板の間に,二枚の中間板を積層したものであ
り,一枚の中間板の縁部を他の一枚の中間板の縁部でグ
ロメット状に抱持して,両面に略同一の段差を形成すべ
く補償用折曲部を設けたものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来の金属製ガスケッ
トについて,前掲特開昭63−293363号公報に開
示されている積層金属ガスケットは,ビード63,64
の当接する部位よりもシリンダボア孔71の部位の二枚
の中間板65,66間にスペーサ部材67,68を抱持
させているから,接面が一面増加し,シール力を分担し
ている。また,スペーサ部材67,68を溶接,接着等
の手段で固定する必要がある。
【0008】また,前掲特開昭64−65367号公報
に開示されている積層金属ガスケットは,一枚の中間板
の縁部を他の一枚の中間板の縁部でグロメット状に抱持
し,両面に略同一の段差を形成して,補償用折曲部を設
けているが,これを両側のビード基板により挟着し,シ
リンダヘッドとシリンダブロック間で全屈状態に圧縮す
ると,グロメット状に抱持した折返し段部がビードのシ
ムとして作用する。その結果,ビード基板に対してはビ
ード基板の応力振幅は低下するが,上下のビード基板の
作動の差から中間板の折返し部に曲げ応力や応力振幅が
発生する。
【0009】
【課題を解決するための手段】この発明の目的は,ビー
ドを有する一対の弾性金属板との間に中間弾性金属板を
介在させ,中間弾性金属板のシリンダボア孔縁部に折返
し部を形成して厚さの厚い折返し部を持たせることで,
一対の弾性金属板の各ビードの全圧縮を防止して各ビー
ド部のヘタリを防止すると共に,シリンダボア孔の周縁
に補償部を形成し,該補償部の厚みを任意に設定して,
シール面圧のバランスを良好にすること,及びビード部
の破損や補償部の破損,シール効果の低減を防止し,更
に,エンジンの運転時にシリンダヘッド側の弾性金属板
に生じる応力振幅がシリンダブロック側の弾性金属板よ
りも大きいという現象に対応するため,シリンダヘッド
側に二枚重ねの弾性金属板を配置して応力軽減を図った
金属製ガスケットを提供することである。
【0010】この発明は,複数個の第1シリンダボア孔
の外側に沿ってそれぞれ形成された第1ビードを備えた
第1弾性金属板,前記第1シリンダボア孔と互いに整合
する第2シリンダボア孔の外側に沿ってそれぞれ形成さ
れ且つ前記第1ビードに対して凸部を互いに対向してそ
れぞれ形成された第2ビードを備えた第2弾性金属板,
及び前記第1弾性金属板と前記第2弾性金属板との間に
配置された中間弾性金属板を有し,前記中間弾性金属板
は,前記第1シリンダボア孔と整合する第3シリンダボ
ア孔の外側に沿ってそれぞれ形成され且つ前記第1弾性
金属板の前記第1ビードと整合状態に積層された第3ビ
ード,及び前記第3シリンダボア孔の周縁部を前記第3
シリンダボア孔の半径方向外向きに折り返された折返し
部を有し,前記中間弾性金属板は,締付け前の無負荷状
態において前記第1弾性金属板に対して密着状態に積層
されており,前記折返し部は前記第3ビードの高さより
も薄い厚さに形成されており,前記第1弾性金属板がエ
ンジンのシリンダヘッド側に配置され,前記第2弾性金
属板が前記エンジンのシリンダブロック側に配置されて
いることから成る金属製ガスケットに関する。
【0011】この金属製ガスケットは,以上のように構
成したので,シリンダヘッドとシリンダブロックとの間
で金属製ガスケットを締め付けて押圧状態にすると,エ
ンジンの運転時に生じる応力振幅がシリンダブロック側
の弾性金属板よりもシリンダヘッド側の弾性金属板が大
きくなるが,シリンダヘッド側の弾性金属板が二枚の積
層構造であるから,シリンダヘッド側の弾性金属板の一
枚一枚に付勢される応力を軽減させることができる。ま
た,前記各弾性金属板は,各ビードがそれぞれ変形する
が,前記各ビードがシリンダボア孔の半径方向で見て,
ビード開始及びビード終了の環状部位で強く対向取付面
に押し付けられて二重の強力なシール部を形成し,同時
に,前記中間弾性金属板の折返し部の領域の厚さが他の
領域の板厚の部分の約2倍となり,各シリンダボア孔の
周囲で前記各弾性金属板を対向取付面に対して強く押す
ことになり,シール機能を果たすことになる。また,前
記中間弾性金属板の前記折返し部の領域は厚さが厚くな
るので,前記各弾性金属板のビードの変形に対するスト
ッパの機能を果たし,前記各弾性金属板の前記ビードの
全圧縮するを防止する。更に,この締め付け時に,シリ
ンダヘッドとシリンダブロックとの対向取付面に不整が
生じても,前記ビードの部位は勿論のこと,前記中間弾
性金属板の前記折返し部が歪みに対応して変形するの
で,前記折返し部は対向取付面間の不揃いな間隙を補償
する補償部としての機能を有する。
【0012】また,前記中間弾性金属板の前記折返し部
は,前記第3シリンダボア孔の周縁部を前記第3シリン
ダボア孔の半径方向外向きに折り返した後に熱処理して
形成されている。前記中間弾性金属板の前記折返し部即
ち補償部は,SUS631等の材料,即ち,加工前は柔
らかく,加工後熱処理すると硬化,強靱性が与えられる
材料で製作しているので,任意に加工することができる
と共に,応力変動や長期間の繰り返し応力に耐えること
ができる。折返し部の加工の例として,前記中間弾性金
属板の前記折返し部は,前記第3シリンダボア孔間の領
域で厚く且つ前記第3シリンダボア孔間以外の領域で薄
く形成できる。このように構成した金属製ガスケット
は,高温で腐食性の燃焼ガスが漏洩し易い各シリンダボ
ア孔間の領域において燃焼ガスの漏出に対抗する強いシ
ール部が形成される。
【0013】また,前記中間弾性金属板の前記折返し部
は,前記第3シリンダボア孔間の領域で厚く且つ前記第
3シリンダボア孔間以外の領域で薄く形成されている。
このように構成した金属製ガスケットは,高温で腐食性
の燃焼ガスが漏洩し易いシリンダボア孔間の領域におい
て燃焼ガスの漏出に対抗する強いシール部が形成され
る。
【0014】また,前記中間弾性金属板の前記折返し部
に軟質部材を介在させると,該軟質部材はビードの高さ
が高すぎる場合にこれを補償すると共に,前記折返し部
自体の変形性を向上できるので,金属製ガスケットの対
向取付面での締め付け時に,前記各弾性金属板の変形に
対応すると共に,対向取付面の不整を巧みに吸収するこ
とができる。また,エンジンの運転に伴いシリンダヘッ
ドとシリンダブロックとの間に発生する振動を吸収する
作用も期待できる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下,図面を参照して,この発明
による金属製ガスケットの実施例を説明する。図1はこ
の発明による金属製ガスケットの一実施例を部分的に示
す平面図,及び図2はシリンダボア孔間の領域における
金属製ガスケットの拡大図である。この金属製ガスケッ
ト1は,例えば,4気筒,6気筒等の多気筒ディーゼル
エンジンにおけるシリンダヘッドとシリンダブロック
(図示せず)との対向取付面をシールするために使用さ
れるものである。金属製ガスケット1は,エンジンの気
筒数即ちシリンダボア数に対応するシリンダボア孔2
A,2B,2C,・・(シリンダボア孔を総称するとき
は符号2を用いる)を有している。
【0016】この金属製ガスケットは,特に,エンジン
のシリンダヘッド側に上ビード板10(第1弾性金属
板)と上ビード板10に中間弾性金属板30とを重ねた
二枚重ねの弾性金属板を配置し,他方の下ビード板20
(第2弾性金属板)をシリンダブロック側に位置するよ
うに配置されている。このことは,エンジンの運転時に
シリンダヘッド側の弾性金属板に生じる応力振幅がシリ
ンダブロック側の弾性金属板よりも大きいので,二枚重
ねの弾性金属板をシリンダヘッド側に配置し,応力軽減
のため極めて有効である。また,中間弾性金属板30
は,ビード板10,20に対して負荷応力を軽減するも
のとなる。
【0017】弾性金属板である上ビード板10と下ビー
ド板20とは,一般的に,冷間圧延で硬さHv350〜
500の硬度の材料を使用するが,材料がHv350以
下の場合には,熱処理して使用し,材料がHv350以
上の場合には,熱処理しないで使用することもある。ま
た,調整板即ち中間弾性金属板30は,例えば,硬さH
v200以下の材料を折返し加工及びビード加工を施し
た後,熱処理して硬度Hv350以上にして使用する。
熱処理する場合には,析出硬化処理としてSUS630
やSUS631,窒化処理としてSUS304,SUS
301或いはSK材(SK1〜SK7),焼き入れ・焼
き戻し処理としてSUS420J2 やSUS440A,
或いは固溶化熱処理としてチタン合金,アルミニウム合
金等の金属材料から形成されており,ビード加工前の素
材の硬さは,例えば,Hv 200以下の素材である。
【0018】ビード板10,20の金属材料を各熱処理
した場合の硬さの具体的な一例は次のとおりである。S
US304,SUS301を窒化処理した場合,熱処理
前がHv 200以下(但し,表面のみ)であるが,熱処
理後がSUS304についてはHv350〜400,S
US301についてはHv350〜500であり,SU
S631をビード加工の後,熱処理即ち析出硬化処理し
た場合には熱処理前がHv 200以下であるが,熱処理
後はHv 350〜500であった。これ以外にSK材
(SK1〜SK7)の熱処理やSUS420J2 の焼き
入れ・焼き戻し処理し,更に,チタン合金,アルミニウ
ム合金(6Al−2Sn−4Zr−6Mo)を固溶化熱
処理することもできる。
【0019】上ビード板10,下ビード板20,中間弾
性金属板30には,冷却水を通す水穴3,締め付け用の
ボルト穴4,オイルを通すオイル穴5やオイル戻り穴,
ノック孔,リベット穴等が同じ位置で且つ同じ大きさに
それぞれ複数個穿設されているが,これらについては,
金属製ガスケットの技術分野においてそれぞれ周知の技
術であるので,ここでは詳細な説明を省略する。
【0020】また,図示していないが,金属製ガスケッ
ト1の表裏両面,即ち燃焼ガスに晒される可能性ある部
位及び互いに金属接触する部位に対して,耐熱性及び耐
油性を有するゴム(例えば,フッ素ゴム),樹脂等の非
金属材料で,厚さが,例えば,10〜50μm程度(好
ましくは25μm)のコーティングが施される。上記の
コーティングによって,シリンダヘッド及びシリンダブ
ロックに対して金属対金属の接触状態を回避し,金属製
ガスケットとしての耐腐食性,耐久性及び強度を確保す
ることができる。また,金属製ガスケットの機械加工面
に凹凸が存在していても,上記非金属材料が凹凸をカバ
ーして充分なシール機能を果たすことができる。
【0021】図3は図1の線A−Aにおける断面図,及
び図4は図1の線B−Bにおける断面図である。図3に
おいて,中間弾性金属板30と下ビード板20とが直接
に接触している。中間弾性金属板30は,上ビード板1
0に対してビード形状を合わせたビード板31が形成さ
れており,隙間なく積層されている。中間弾性金属板3
0のビード31(第3ビード)は,上ビード板10のビ
ード11(第1ビード)に密着状態に整合し,下ビード
板20のビード21(第2ビード)に対してビードの凸
部同士が接触している。中間弾性金属板30の折返し部
35は,上ビード板10に対する補強作用が期待できる
と共に,折返し部35のビード板10,20に対するビ
ード11,21の完全圧縮防止と締め付け時の対向取付
面の不整吸収作用を有している。
【0022】金属製ガスケット1は,その端部即ち縁部
分とシリンダボア孔2Aとを結ぶ線で切断した断面が示
されているが,シリンダボア孔2間(例えば,シリンダ
ボア孔2Aとシリンダボア孔2Bとの間の互いにシリン
ダボア孔2が接近した領域)以外の領域では同様の断面
構造を有する。図4において,それぞれ隣接するシリン
ダボア孔2A,2Bの境界領域を,そのシリンダボア孔
2A,2Bの中心を結ぶ線で切断した金属製ガスケット
1の断面,即ち,シリンダボア孔2間での断面が示され
ているが,他の隣接するシリンダボア孔2の境界領域に
おいても同様の断面構造をしているのは勿論である。
【0023】金属製ガスケット1は,例えば,以下のよ
うに形成することができる。シリンダボア孔2の直径は
93mmであり,シリンダボア孔2間の最小距離L1
10mm程度である。金属製ガスケット1は,シリンダ
ヘッド側からシリンダブロック側の順に,上ビード板1
0と,上ビード板10にビード形状を合わせて積層され
た中間弾性金属板30,及び下ビード板20を積層して
なる。上ビード板10と下ビード板20は,SUS30
1又はSUS304の材料から製作し,その厚さは0.
25mmであり,硬さはHv350以上とする。中間弾
性金属板30は,SUS304の材料から製作し,その
厚さは0.20mmであり,硬さはHv350以上とす
る。
【0024】金属製ガスケット1における上ビード板1
0,下ビード板20及び中間弾性金属板30は,シリン
ダボア孔2を形成する内周端面12,22,32からシ
リンダボア孔2の半径方向外側に隔置した近傍周囲部分
が,シリンダボア孔2と同心に且つ環状に取り巻く断面
山形の凸部を備えたビード11,21,31に形成され
ている。各ビード11,21,31は,各弾性金属板の
シリンダボア孔2の半径方向内側から見て始端13,2
3,33から終端14,24,34までの領域に形成さ
れている。中間弾性金属板30のビード31は上ビード
板10のビード11と形状が同じであり,積層した状態
で上ビード板10と中間弾性金属板30とはビード1
1,31の部位において重なり合っている。
【0025】図2に示すように,上下のビード板10,
20及び中間弾性金属板30のシリンダボア孔2Aの周
囲のビード11,21,31と,隣接するシリンダボア
孔2Bの周囲のビード11,21,31とは,シリンダ
ボア孔2A,2Bの接近領域において重なっている。即
ち,ビード11,21,31はシリンダボア孔2間の領
域で会合して一本のビード11,21,31となってい
る。また,中間弾性金属板30のシリンダボア孔2を形
成する内端32の周縁には,ビード31の凸側で且つビ
ード31の半径方向内側においてビード31と重なるこ
とのない範囲で折返し部35が形成されている。折返し
部35の幅L3 は,例えば,約2.5mmである。
【0026】図3及び図4を参照して,この金属製ガス
ケットの実施例を説明する。金属製ガスケット1は,複
数個のシリンダボア孔2(第1シリンダボア孔)の外側
に沿ってそれぞれ形成されたビード11(第1ビード)
を備えた上ビード板10(第1弾性金属板),シリンダ
ボア孔2と互いに整合するシリンダボア孔2(第2シリ
ンダボア孔)の外側に沿ってそれぞれ形成され且つビー
ド11に対して凸部を互いに対向して配置されたビード
21(第2ビード)を備えた下ビード板20(第2弾性
金属板)及び上ビード板10と下ビード板20との間に
配置された中間弾性金属板30を有する。中間弾性金属
板30は,シリンダボア孔2と整合するシリンダボア孔
2(第3シリンダボア孔)の外側に沿ってそれぞれ形成
され且つ上ビード板10のビード11と整合状態に積層
されたビード31(第3ビード)及びシリンダボア孔2
の周縁部を前記第3シリンダボア孔の半径方向外向きに
折り返された折返し部を有する。
【0027】金属製ガスケット1では,中間弾性金属板
30は,締付け前の無負荷状態において上ビード板10
に対して密着状態に積層されており,中間弾性金属板3
0の折返し部35はビード31の高さよりも薄い厚さに
形成されている。金属製ガスケット1をエンジンの対向
取付面間に配置して締め付けると,上下のビード板1
0,20の各ビード11,21が変形を開始し,対向取
付面に対しては,ビード11,21のビード開始及びビ
ード終了の端部13,14及び23,24の部位で強く
押圧されて,シリンダボア孔2の周囲において二重のシ
ール部を形成する。水穴3,ボルト穴4及びオイル穴5
の周囲においても同様にシール部が形成されて,これら
穴の周囲を良好にシールする。シリンダボア孔2の周囲
においては,中間弾性金属板30の折返し部35と,下
ビード板20のシリンダボア孔2周囲部分が接触する。
折返し部35の領域でもシール部を形成する一方,上ビ
ード板10のビード11が完全圧縮されることがない。
従って,各ビードはヘタリを起こすことがない。また,
下ビード板20も,折返し部35のためにビード21が
完全圧縮することがなく,ビード11,21のヘタリを
防止する。また,折返し部35は,上ビード板10の締
め付け時に,対向取付面の不整が生じても,歪みや締め
付け後の負荷変動に伴う変形を吸収する。
【0028】中間弾性金属板30の折返し部35を含む
加工は,任意に変更可能である。例えば,ビード板10
と中間弾性金属板30とをそれぞれのビード11,31
の形状を合わせて積層する場合に,中間弾性金属板30
の折返し部35の加工形成後に,中間弾性金属板30を
熱処理するので,中間弾性金属板30は熱硬化されて強
靱性を得て,それ自体,負荷変動や繰り返し応力への耐
久性が向上し,更に,中間弾性金属板30に積層される
上ビード板10に対しては補強機能を持たせることもで
きる。また,中間弾性金属板30の折返し加工の際,折
返し部35の折り返し厚さは一様としてもよいが,シリ
ンダボア孔2間の領域では厚く,シリンダボア孔2間以
外の領域では薄く加工することもできる。このように形
成した金属製ガスケット1は,高温で腐食性の燃焼ガス
が漏洩しやすいシリンダボア孔2間の領域において強い
シール部が形成され,燃焼ガスの漏出に対して強力にシ
ールする。また,折返し部35の折返し量を変更するこ
ともできる。即ち,中間弾性金属板30の折返し部35
をシリンダボア孔2間の領域で幅広く且つシリンダボア
孔2間以外の領域で幅狭く加工形成する。この場合にお
いては,燃焼ガスが漏洩しやすいシリンダボア孔2間の
領域で,燃焼ガスの漏出に対抗する安定した幅広いシー
ル領域を得ることができる。
【0029】図5に示した金属製ガスケットは,中間弾
性金属板30の折返し部35に軟質部材50を挟んで折
り返したものである。軟質部材50は,軟質金属板,断
熱グラファイトシート,アラミド系ビータシート,樹脂
又はゴム等の軟質材料と同じ程度の性質を持つものでよ
い。軟質部材50は,ビード11,21の高さが高過ぎ
る時には,板厚管理上,これを補償する。軟質部材50
は,折返し部35自体の変形性を向上するので,金属製
ガスケット1の対向取付面での締め付け時に,上下のビ
ード板10,20の変形に対応すると共に,対向取付面
の不整を良好に吸収する。軟質部材50は,エンジンの
運転時にシリンダヘッドとシリンダブロックとの間に発
生する振動を吸収する作用も期待できる。
【0030】
【発明の効果】この発明による金属製ガスケットは,以
上のように構成されているので,対向取付面を有する二
つの構造部分のシリンダヘッドとシリンダブロックとの
間で金属製ガスケットを締め付けて押圧状態にすると,
2枚重ねの弾性金属板がシリンダヘッド側に位置し,1
枚の弾性金属板がシリンダブロック側に位置した状態に
なり,エンジンの運転時にシリンダヘッド側の弾性金属
板に生じる応力振幅がシリンダブロック側の弾性金属板
よりも大きいが,その応力を軽減させることができる。
また,前記各弾性金属板の前記各ビードは,前記シリン
ダボア孔の半径方向で見て,ビード開始及びビード終了
の環状部位で強く対向取付面に押し付けられて二重のシ
ール部を形成し,それと同時に,前記中間弾性金属板の
前記折返し部も前記シリンダボア孔の周囲に前記各弾性
金属板を対向取付面に対して強く押して別のシール部を
形成してシール機能を果たす。更に,前記中間弾性金属
板の前記折返し部は前記各弾性金属板のビード変形に対
するストッパとなり,前記各弾性金属板の前記各ビード
部の全圧縮を防止する。前記各弾性金属板の前記各ビー
ド部の全圧縮が防止されると,前記各弾性金属板として
のばね機能が長期間にわたって保持され,前記各弾性金
属板のヘタリが防止される。また,この締め付け時に,
二つの構造部分の対向取付面に不整が生じても,前記各
ビードの部位は勿論のこと,前記中間弾性金属板の前記
折返し部が歪みに対応して変形するので,前記折返し部
はシール性能が最も厳しく要求される前記シリンダボア
孔周りにおいて,対向取付面間の不揃いな間隙を補償
し,シール機能を充分に発揮させることができる。
【0031】更に,前記中間弾性金属板の前記折返し部
が与える補償部は,加工前は柔らかく,加工後熱処理し
て硬くなる材料を使用することで,寸法及び硬度等を任
意に加工することができる。前記中間弾性金属板の前記
折返し部を前記シリンダボア孔間の領域で厚く且つ前記
シリンダボア孔間以外の領域で薄く形成できる。このよ
うに形成した金属製ガスケットにあっては,シリンダヘ
ッドの剛性に合わせてシール面圧のバランスを良好に設
定することができ,応力振幅が小さく,且つ耐久性に優
れた金属製ガスケットが得られる。また,高温で腐食性
の燃焼ガスが漏洩し易いシリンダボア孔間の領域におい
て,燃焼ガスの漏出に対抗する強力なシール部が形成さ
れ,前記シリンダボア孔周りのシールを確実にすること
ができる。更に,前記折返し部の厚さを,熱処理前に調
整できるので,シリンダヘッドの剛性に合わせて不整値
を補償させることもできる。
【0032】また,前記中間弾性金属板の前記折返し部
の折返し量を,前記シリンダボア孔間の領域で幅広く且
つ前記シリンダボア孔間以外の領域で幅狭く形成するよ
うに変更することもできる。この場合には,シール面の
面圧バランスが良く,耐久性の高い金属製ガスケットを
得ることができ,また,燃焼ガスが漏洩し易い前記シリ
ンダボア孔間の領域で,燃焼ガスの漏出に対抗する幅広
いシール領域を得ることができ,前記シリンダボア孔周
りでの安定したシールを得ることができる。更に,前記
中間弾性金属板の前記折返し部に軟質部材を介在させた
場合には,前記ビードの高さが高すぎる場合に,該状態
を補償して,面倒な板厚管理を容易にすると共に,前記
折返し部自体の変形性を向上するので,金属製ガスケッ
トの対向取付面での締め付け時に,前記各弾性金属板の
変形に対応すると共に,対向取付面の不整を良好に吸収
することができる。また,エンジンの運転時に発生する
振動を効果的に吸収する効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による金属製ガスケットの一実施例を
示す部分平面図である。
【図2】図1の金属製ガスケットにおける隣接するシリ
ンダボア孔間の部分を拡大して示す部分平面図である。
【図3】図1の金属製ガスケットのシリンダボア孔の中
心とを結ぶA−A断面を示す断面図である。
【図4】図1の金属製ガスケットのシリンダボア孔間に
おけるB−B断面を示す断面図である。
【図5】この発明の別の実施例における中間弾性金属板
の折返し部に軟質部材を挟んだ状態を示す断面図であ
る。
【図6】従来の金属製ガスケットを示す断面図である。
【符号の説明】 1 金属製ガスケット 2 シリンダボア孔 10 上ビード板(第1弾性金属板) 11 ビード(第1ビード) 20 下ビード板(第2弾性金属板) 21 ビード(第2ビード) 30 中間弾性金属板 31 ビード(第3ビード) 35 折返し部 50 軟質部材
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正内容】
【図3】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正内容】
【図4】
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正内容】
【図5】
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正内容】
【図6】
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図7
【補正方法】削除
【手続補正7】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図8
【補正方法】削除
【手続補正8】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図9
【補正方法】削除
【手続補正9】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図10
【補正方法】削除
【手続補正10】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図11
【補正方法】削除
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 伊井 直毅 大阪府東大阪市加納248番地 日本ガスケ ット株式会社内 (72)発明者 井上 國利 大阪府東大阪市加納248番地 日本ガスケ ット株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数個の互いに整合するシリンダボア孔
    及び該シリンダボア孔の外側に沿って凸部を互いに対向
    させたビードを備えた一対の弾性金属板,並びに一対の
    前記弾性金属板の間で一方の前記弾性金属板に積層され
    且つ前記シリンダボア孔と整合するシリンダボア孔の周
    縁部を前記シリンダボア孔の半径方向外向きに折り返し
    た後に熱処理した折返し部を備えた中間弾性金属板を有
    し,前記中間弾性金属板が積層された前記弾性金属板が
    エンジンのシリンダヘッド側に配置され,他方の前記弾
    性金属板が前記エンジンのシリンダブロック側に配置さ
    れることから成る金属製ガスケット。
  2. 【請求項2】 前記中間弾性金属板の前記折返し部を前
    記シリンダボア孔間の領域で厚く且つ前記シリンダボア
    孔間以外の領域で薄く形成したことから成る請求項1に
    記載の金属製ガスケット。
  3. 【請求項3】 前記中間弾性金属板の前記折返し部を前
    記シリンダボア孔間の領域で幅広く且つ前記シリンダボ
    ア孔間以外の領域で幅狭く形成したことから成る請求項
    1に記載の金属製ガスケット。
  4. 【請求項4】 前記中間弾性金属板の前記折返し部に軟
    質部材を挟んでいることから成る請求項1〜3のいずれ
    か1項に記載の金属製ガスケット。
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