JPH0552267A - 金属製ガスケツトおよびその製造方法 - Google Patents

金属製ガスケツトおよびその製造方法

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JPH0552267A
JPH0552267A JP3232450A JP23245091A JPH0552267A JP H0552267 A JPH0552267 A JP H0552267A JP 3232450 A JP3232450 A JP 3232450A JP 23245091 A JP23245091 A JP 23245091A JP H0552267 A JPH0552267 A JP H0552267A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、折返し縁部をシリンダボア孔とす
る周縁を折り返す前に、折返し部を形成する所定の領域
の板厚を薄肉化し、折返し部の厚さを減少して所望の段
差を有する金属製ガスケット及びその製造方法を提供す
る。 【構成】 この金属製ガスケットは、シリンダボア孔2
A,2Bより内径が小さいシリンダボア孔の周縁におい
て、少なくとも折り返し部分7と該折り返し部分が重な
る弾性金属板の部分8とが弾性金属板3の板厚以下から
半分以上までの板厚に薄肉に形成し、折り返し部分7
は、薄肉化されていない領域に形成されたビード4の凸
面側に折り曲げ加工されて折返し部5となり、折り返し
後に熱処理されて硬さ調節される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、内燃機関、特に、多
気筒内燃機関において、シリンダヘッドとシリンダブロ
ックとの対向取付面間をシールするために使用される金
属製ガスケット及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、シリンダヘッドとシリンダブロッ
クとの間のような内燃機関の構造部材の対向取付面間を
シールするために金属材料から製作した金属製ガスケッ
トが使用されている。最近の内燃機関は、高出力化と共
に軽量化が求められ、その一環としてシリンダヘッド及
びシリンダブロック等を従来の比重の大きい鋼、鋳物に
代えて比重の小さいアルミニウム材料で製作する傾向に
ある。アルミニウム材料は軽量である反面、剛性が低い
ので内燃機関の運転時にシリンダブロックに対するシリ
ンダヘッドの相対変位が大きくなる傾向にある。そし
て、金属製ガスケットは、前記構造部材のシリンダボ
ア、水、油の通路に対応する貫通孔の周囲近傍にビード
を有しており、ボルト等によりシリンダヘッドとシリン
ダブロックとを締め付けて固定するときに、対向取付面
に対してビードが弾性的な環状接触部を形成して対向取
付面間をシールするものである。
【0003】かかる金属製ガスケットにおいて、本出願
人は、既に、内燃機関のシリンダヘッドとシリンダブロ
ックとの対向取付面間に配置され、締め付けられる単板
の金属製ガスケットとその製造方法に関して出願をして
いる(特願平2−306295号)。この金属製ガスケ
ットにおいては、弾性金属板に形成したシリンダボア
孔、該シリンダボア孔の周縁から半径方向外側に隔置し
て前記シリンダボア孔に沿って形成したビード、及び前
記シリンダボア孔の周囲において前記ビードの凸面側で
半径方向外側に折り返して形成した折返し部を有し、前
記金属板の前記折返し部は予め設定した厚さに成形され
且つ熱処理されているので、前記対向取付面間で締め付
けて押圧状態にすると、前記ビードが対向取付面に対し
て環状のシール部を形成すると同時に、板厚が約2倍あ
る前記折返し部がシリンダボア孔の周囲において別のシ
ール部を形成し、前記ビードや折返し部が対向取付面の
不整を吸収すと共に、燃焼サイクルの繰り返しで発生す
るシリンダヘッドの歪み量を抑制しそして変動負荷応力
を軽減し、更に前記ビードの全圧縮を防止する働きをす
る。
【0004】そしてかかる金属製ガスケットにおいて、
前記シリンダボア孔間を除く前記ビードの半径方向外側
でかつ前記ビードが凸面側に前記金属板より薄い金属板
を積層して、折返し部と前記ビードよりも半径方向外側
の領域との段差の調節を行う構造のもの、前記段差が必
要な段差以下になる場合に前記折返し部に軟質金属板を
挟んで折り返したもの、前記折返し部がシリンダボア孔
間で厚く且つ前記シリンダボア孔間以外で薄く形成して
高いシール性能が要求されるシリンダボア孔間の領域で
強い押圧力を得るもの、及び、ガスケットの両面に耐熱
性及び耐油性のゴム又は樹脂等の非金属材料を塗布して
対向取付面との金属対金属の直接的な接触を回避し金属
表面の腐食や汚損を防止し且つ対向取付面の凹凸に係わ
らずシール機能を確保するものをも同時に提案してい
る。
【0005】上記先願に開示している金属製ガスケット
の製造方法は、弾性金属板にシリンダボア孔を形成する
工程、該シリンダボア孔の周縁から半径方向外側に隔置
して前記周縁に沿ってビードを成形加工する工程、前記
シリンダボア孔の周囲において前記ビードの凸側で半径
方向外側に折り曲げ加工を施して折返し縁部をシリンダ
ボア孔とする折返し部を形成する工程、該折返し部に圧
縮力を付与して予め設定された厚さに成形する工程、及
び前記折返し部を成形した前記金属板を熱処理して該金
属板の硬さを調節する工程から成る。上記方法におい
て、前記折返し部を成形する工程で軟質金属板を挟み込
む工程を付加する方法も開示している。
【0006】更に、本出願人は、上記先願とは別に、シ
リンダヘッドとシリンダブロックとの対向取付面間に配
置され、締め付けられる金属製ガスケットに関して出願
をしている(特願平3−156189号)。この金属製
ガスケットは、弾性金属板に形成したシリンダボア孔、
該シリンダボア孔の周縁から半径方向外側に隔置して前
記シリンダボア孔に沿って形成したビード、及び前記シ
リンダボア孔の周囲において前記ビードの凸面側で半径
方向外側に折り返して形成した折返し部を有し、前記ビ
ードの凸側の面に積層すると共に前記ビードの半径方向
外側領域に伸びる調整板を設けて前記弾性金属板の強度
調整をしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような金属製ガスケットについては、次のような技術的
な解決すべき問題点がある。即ち、一般的に、一枚の弾
性金属板から形成される金属製ガスケットにあっては、
板厚が0.25mmの弾性金属板が用いられているが、
かかる弾性金属板をそのままシリンダボア孔の周囲にお
いて折り返して折返し部を形成すると、シリンダボア孔
の周囲とそれよりも半径方向外側の領域との間で板厚に
相当する段差が形成されることになる。ビードの高さに
もよるが、段差は0.10乃至0.17mm程度が良好
であると考えられる。即ち、段差が大きすぎると、シリ
ンダヘッドとシリンダブロックと対向取付面間で金属製
ガスケットを締め付けたときに、その段差の領域で弾性
金属板が無理に変形されることになる。かかかる変形領
域では弾性金属板が屈曲することになるため、元来、応
力的に不利であり、内燃機関の燃焼サイクルに応じた負
荷変動により更に無理な応力が作用して亀裂を生じる等
の恐れがある。また、ビードを形成した部位もシールの
役割を担うものであるが、折返し部の板厚が大きいと締
め付け時に強いシール線が形成されてシリンダボア孔か
ら腐食性の高温燃焼ガスが漏洩するのを防止する。従っ
て、その分担が折返し部に偏りすぎることになり、ビー
ド部と比較してシリンダボア孔の折返し部にシール性能
が集中するために、折返し部が長期の使用中に欠損を生
じた場合には、二段構えのビード部のシールがそれほど
強力でないために燃焼ガスの漏洩を防止するのが有効に
機能しなく恐れもある。
【0008】上記折返し部による弾性金属板の段差が所
望の高さよりも大きな高さを有する場合に、前記先願で
提案した金属製ガスケットでは、板厚調整板を弾性金属
板に積層することで折返し部の段差の高さを減少する方
向に調整しているが、かかる調整の仕方では調整板を別
途用意しておく必要があるので、金属製ガスケットの製
造コストが上昇すると共に、調整板を製作するに際して
は弾性金属板のビード等の加工形状と合致する形状を持
たせる必要があり、また弾性金属板との積層工程及びそ
のための設備を必要とするなどの煩わしさや経済的な不
利がある。
【0009】また、折返し部を有する金属製ガスケット
を製造するに際して、折返し部の形成後であって、シリ
ンダヘッドとシリンダブロックとの対向取付面間での締
め付け前に、折返し部の全部を一様に圧縮するか、又は
その一部を圧縮して折返し部の板厚や折り返し幅をシリ
ンダボア孔周縁位置に応じて変化させる、所謂予圧縮を
施すものがあるが、このような方法では、折り返してか
ら板厚を減じるから、折り返し端において材料工学的に
急激で且つ大きな変化がもたらされ、折返し端で亀裂を
生じたり、或いは亀裂の原因を持って長期の使用によっ
て折返し部のシリンダボア孔端縁で亀裂を生じる虞があ
る。
【0010】そこで、この発明の目的は、上記の課題を
解決することであり、折返し部を形成するに当たって、
折返し縁部をシリンダボア孔とする先設リンダボア孔の
周縁を折り返す前に、折返し部を形成するための所定の
領域の板厚を薄肉化することにより、折返し部の厚さを
減少して所望の段差を有する形状に形成し、また、折返
し部を形成するに当たって上記の工程を踏むことによ
り、簡単な工程の付加によって品質良く且つ安価に得る
ことができる金属製ガスケット及びその製造方法を提供
することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の目的
を達成するために、次のように構成されている。即ち、
この発明は、シリンダボア孔の周縁から半径方向外側に
隔置して前記シリンダボア孔に沿って形成したビード
と、折返し縁部が前記シリンダボア孔となるように前記
ビードの凸面側で折り返し且つ前記ビードの内側に位置
する折返し部とを備えた弾性金属板から成る金属製ガス
ケットにおいて、前記折返し部は折り返し部分と該折り
返し部分が重なる弾性金属板の部分とが弾性金属板の板
厚以下から半分以上までの予め設定した板厚に加工さ
れ、且つ折り返し後に熱処理されていることを特徴とす
る金属製ガスケットに関する。
【0012】また、この金属製ガスケットは、ガスケッ
トの両面に耐熱性及び耐油性のゴム、樹脂等の非金属材
料を塗布したものである。
【0013】また、この金属製ガスケットは、前記折返
し部を前記シリンダボア孔間の領域で厚く且つ前記シリ
ンダボア孔間以外の領域で薄く形成したものである。
【0014】或いは、この発明は、弾性金属板にシリン
ダボア孔を形成する工程、該シリンダボア孔の周縁から
半径方向外側に延びる環状領域を前記弾性金属板の板厚
以下から半分以上までの予め設定した板厚に加工する工
程、前記シリンダボア孔の周縁から半径方向外側に隔置
した領域において前記シリンダボア孔に沿ってビードを
加工する工程、前記シリンダボア孔の周囲において前記
ビードの凸面側で半径方向外側に折り曲げ加工を施して
折返し縁部をシリンダボア孔とする折返し部を形成する
工程、及び該折返し部を形成した前記弾性金属板を熱処
理して硬さを調整する工程を有する金属製ガスケットの
製造方法に関する。
【0015】また、この金属製ガスケットの製造方法
は、前記折返し部に圧縮力を付与して前記折返し部を予
め設定した厚さに成形加工する工程を有するものであ
る。
【0016】
【作用】この発明による金属製ガスケット及びその製造
方法は、以上のように構成されており、次のように作用
する。即ち、この金属製ガスケットは、折返し部が折り
返し部分と該折り返し部分が重なる弾性金属板の部分と
が弾性金属板の板厚以下から半分以上までの予め設定し
た板厚に加工され、且つ折り返し後に熱処理されている
ので、対向取付面を有する二つの構造部分であるシリン
ダヘッドとシリンダブロックとの間で金属製ガスケット
を締め付けて押圧状態にすると、まず、上記先願に開示
した金属製ガスケットと同様に、前記ビードはその押圧
力によって変形するが、シリンダボア孔の周縁から半径
方向外側に隔置した位置において対向取付面に対して環
状シール部を形成する。それと同時に、前記折返し部
は、薄肉化の程度が弾性金属板の板厚の半分の板厚以上
になる程度であるから、折り返し部分と該折り返し部分
が折り曲げ加工によって折り重ねられる部分との合計厚
さが弾性金属板の板厚以上になるので、シリンダボア孔
の周囲において別の環状シール部を形成する。この締め
付け時に二つの構造部分の対向取付面に不整が生じても
前記ビードと前記折返し部が歪みに対応して変形し、当
接面間の不揃いな間隙を吸収する。そして、環状シール
部の増加は上記対向取付面の不整の吸収との相乗作用に
よって内燃機関の燃焼サイクルの繰り返しで発生する変
動負荷及び熱負荷を分担して支持するので、シリンダヘ
ッドの歪み量を抑制する。
【0017】また、前記弾性金属板のシリンダボア孔の
周縁から半径方向外側に隔置した位置において前記シリ
ンダボア孔に沿ってビードを形成し、前記シリンダボア
孔の周囲部分において前記ビードとの間で半径方向外側
に折り返した折返し部を形成するだけでは、前記折返し
部と前記ビード以遠の半径方向外側に位置する領域との
間に、弾性金属板の厚さに相当する段差を生じ、この段
差が必要以上の段差である場合には、先に記載したよう
な不都合を生じる虞があるが、この金属製ガスケットに
よれば、前記折返し部は、少なくとも折り返し部分と該
折り返し部分が重なる弾性金属板の部分とが弾性金属板
の板厚の半分以上の板厚まで薄肉化されて構成されてい
るので、前記折返し部の厚さは、弾性金属板の板厚以上
であるが該板厚の2倍未満の厚さを有することになる。
また、折返し部の厚さは薄肉化の度合いに応じて上記範
囲内の任意の厚さに設定することができる。
【0018】更に、この金属製ガスケットは、前記金属
製ガスケットの外面に耐熱性及び耐油性のゴム又は樹脂
等の非金属材料を塗布したので、ガスケットとシリンダ
ヘッド及びシリンダブロックとの間での金属対金属の直
接的な接触が回避され、金属表面の腐食や汚損を防止す
ると共に、シリンダヘッドとシリンダブロック及び金属
製ガスケット自体の表面の凹凸(機械加工面)を埋め
て、充分なシール機能を確保することができる。
【0019】また、この金属製ガスケットは、前記折返
し部が前記シリンダボア孔間の領域で厚く且つ前記シリ
ンダボア孔間以外の領域で薄く形成したので、締め付け
時のシリンダヘッド側の湾曲により隣合うシリンダボア
同士の間において歪みが最も大きく生じやすいが、前記
シリンダボア孔間の領域で厚さを大きくした前記折返し
部が効果的にかかる歪みを変位吸収し、シール効果の低
下を阻止して高温高圧の燃焼ガスの侵入による金属製ガ
スケットのビードの腐食、汚損を防止する。
【0020】或いは、この発明は、シリンダボア孔の周
縁から半径方向外側に延びる環状領域を弾性金属板の板
厚以下から半分以上までの予め設定した板厚に加工し、
前記ビードの凸面側で半径方向外側に折り曲げ加工を施
して折返し縁部をシリンダボア孔とする折返し部を形成
し、且つ該折返し部を形成した前記弾性金属板を熱処理
して硬さを調整する各工程を有するので、前記折返し部
の形成工程の前に、前記折返し部を予定する領域の板厚
を予め減少させるという薄肉化を施すため、折り曲げ加
工の工程が終了した時点で必要な厚さを有する折返し部
を得ることになる。また、前記弾性金属板の熱処理を各
加工工程の終了後に施すので、前記弾性金属板の硬さを
所望の硬さに自在に調節することができる。
【0021】また、この金属製ガスケットの製造方法に
おいて、前記折返し部を成形加工する工程の後に、該折
返し部に圧縮力を付与して、予め設定した厚さにまで微
小変形させる工程を付加した場合には、折り曲げ加工で
折返し部の成形を大部分完了させ、更に前記折返し部の
厚さや幅を最終製品に合致するように、所望に応じて自
在に微調整することができる。即ち、前記折返し部の厚
さを前記シリンダボア孔の周囲及び幅方向において一様
とするときの厚さの設定は勿論のこと、同じシリンダボ
ア孔の周囲に形成する前記折返し部であっても場所に応
じて厚さを微調整することができる。例えば、隣合うシ
リンダボア孔が互いに接近しているところではシリンダ
ヘッド等の歪みを考慮して折返し部の厚さを厚くし、上
記接近したところから遠ざかるに従って厚さを次第に薄
くするか一定の薄い厚さにすることができる。
【0022】
【実施例】以下、図面を参照して、この発明による金属
製ガスケットの実施例を説明する。図1はこの発明によ
る金属製ガスケットの一実施例を示す部分平面図、及び
図2は図1のシリンダボア孔間の領域を詳細に示す拡大
平面図である。
【0023】図1及び図2において、金属製ガスケット
1は、多気筒エンジンにおけるシリンダヘッドとシリン
ダブロック(いずれも図示せず)との対向取付面をシー
ルするために使用されるものである。金属製ガスケット
1は、単板の弾性金属板3を例えば、析出硬化処理とし
てSUS630やSUS631、窒化処理としてSUS
304、SUS301或いはSK材(SK1乃至SK
7)、焼き入れ・焼き戻し処理としてSUS420J2
やSUS440A、或いは固溶化熱処理としてチタン合
金、アルミニウム合金等の金属材料から、例えば、厚さ
tを0.2mm乃至0.25mm(図示の実施例では
0.25mmである)の間の値に形成されており、ビー
ド加工前の素材の硬さは、例えば、Hv 200以下の素
材である。
【0024】上記金属材料を各熱処理した場合の硬さの
具体的な一例は次のとおりである。SUS304、SU
S301或いはSK材(SK1乃至SK7)を窒化処理
した場合には、SUS304、SUS301については
熱処理前がHv200以下(但し、表面のみ)である
が、熱処理後がHv 500以上であり、また、SK材
(SK1乃至SK7)については熱処理前がHv 200
以下であるが、熱処理後はHv 500以上であった。S
US630やSUS631を析出硬化処理した場合には
熱処理前がHv 200以下であるが、熱処理後はHv 3
50以上であった。SUS420J2 やSUS440A
を焼き入れ・焼き戻し処理した場合には、熱処理前がH
v 200以下であるが、熱処理後はHv 350以上であ
った。更に、チタン合金、アルミニウム合金(6Al−
2Sn−4Zr−6Mo)を固溶化熱処理した場合に
は、熱処理前がHv 200以下のものであったが、熱処
理後はHv 350以上であった。
【0025】図2において、左右の実線はシリンダボア
孔2A,2Bを示す線であり、その内側の太い鎖線は折
返し部の端縁6を示す線であり、そのすぐ内側に沿って
描かれている細い鎖線は薄肉限界9を示す線であり、一
点鎖線はビード4の中心線を示す線であって、そして、
前記一点鎖線の両側の短く細い鎖線はビード4の両裾を
定める境界線である。
【0026】金属製ガスケット1における弾性金属板3
には、多気筒エンジンの気筒数即ちシリンダボア数に対
応する数の孔であるシリンダボア孔2A,2B,2C・
・2F(図示せず)が形成されている(これらのシリン
ダボア孔を総称する時には符号2を用いる)。更に、金
属製ガスケットの弾性金属板1には、冷却水を通す水穴
13、ノック孔14、ボルト孔15、オイルを通すオイ
ル穴やオイル戻り穴等が複数個穿設されているが、これ
らについては、金属製ガスケットの技術分野においてそ
れぞれ周知の技術であるので、ここでは詳細な説明を省
略する。
【0027】また、図示していないが、金属製ガスケッ
ト1の表裏両面に対しては、耐熱性及び耐油性のゴム
(例えば、フッ素ゴム)、樹脂等の非金属材料で、例え
ば、厚さが10μm〜50μm程度のコーティングを施
すことによって、シリンダヘッド及びシリンダブロック
に対して金属対金属の接触状態を回避し、ガスケットと
しての耐腐食性や耐久性及び強度を確保することができ
る。また、金属製ガスケット1自体及びシリンダヘッド
やシリンダブロックの対向取付面等の機械加工面に凹凸
が存在していても上記非金属材料が凹凸をカバーして充
分なシール機能を果たすことができる。
【0028】図3は図1の線A−Aにおける断面図、図
4は図3の一部である折返し部を拡大して示す図及び図
5は図1の線B−Bにおける断面図である。図3には、
弾性金属板3に形成したそれぞれ隣接するシリンダボア
孔2A,2Bの境界部分をそのシリンダボア孔2A,2
Bの中心を結ぶ線で切断した金属製ガスケット1の断
面、即ち、シリンダボア孔2間での断面が示されている
が、他の隣接するシリンダボア孔2の境界部分において
も同様の断面構造をしているのは勿論である。また、図
5において、シリンダボア孔2Aと金属製ガスケット1
の端部即ち縁部分とを結ぶ線で切断した金属製ガスケッ
ト1の断面が示されているが、反対位置にあるシリンダ
ボア孔2Dについても縁部分との間で同様の断面構造を
有し、また,これらに限らずシリンダボア孔2間以外の
シリンダボア孔2の回りでも同様の断面構造を有してい
るのは勿論である。更に、図6において、金属製ガスケ
ット1を対向取付面間に締め付けるボルトが挿通するボ
ルト孔15を通る断面が示されているが、他の水孔やオ
イルを通すオイル孔やオイル戻り孔、ノック孔、リベッ
ト孔等においても、同様の断面構造を有している。
【0029】これらの図面から理解されるように、金属
製ガスケット1のシリンダボア孔2の周囲近傍部分にシ
リンダボア孔2と同心に且つ環状に取り巻く断面山形の
ビード4が形成されている(符号4は、シリンダボア孔
2と同様ビードに対する総称を示す)。図示の金属製ガ
スケットの寸法上の一例としては、ビード4はシリンダ
ボア孔2の内周縁からの距離L2 (例えば、約2.5m
m)のところから始まり、半径方向で見て所定の幅L3
はシリンダボア孔間の領域で約2mmであり、シリンダ
ボア孔間以外の領域で約2.5mmである。シリンダボ
ア孔2間以外の領域でのビード4は、5mmの幅で凸部
頂部を実質的に平らに形成し、ばね定数を若干下げるも
ののビード4と対向取付面との接触を安定化させてい
る。ビード4の高さHは弾性金属板3の板厚である0.
25mm程度である。シリンダボア孔の直径は87mm
であり、隣接するシリンダボア孔2間の距離L1 は、例
えば、約6.0mmである。図2から判るように、シリ
ンダボア孔2Aの周囲のビード4Aと、隣接するシリン
ダボア孔2Bの周囲のビード4Bとは、シリンダボア孔
2A,2Bの接近部分において重なっている。即ち、ビ
ード4はシリンダボア孔間の領域で会合して一本のビー
ド4となっている。会合部ではシリンダボア孔2からの
距離が次第に短くなる一方で、上記のとおりビード4の
幅は狭くなっている。しかしながら、シリンダボア孔2
間の距離が充分取れる時には隣接するビード4同士を重
ねることなく、わずかの間隙をおいて互いに配置しても
よい。更に、図6に示すように、ボルト孔15における
金属製ガスケット1の断面構造は、ボルト孔15と同心
上に周囲の部分が他の平面的な部分から僅かに窪み状
(或いは山形)になるように変形してあり、締め付け時
に、ボルト孔15の周囲においてシール性が得られるよ
うにしてある。金属製ガスケット1に形成される他の孔
についても、孔の断面形状は概略同様であるので詳しい
説明を省略する。
【0030】また、弾性金属板3に形成したシリンダボ
ア孔2の周縁には、ビード4の凸面側で且つビード4の
半径方向内側においてビード4と重なることのないよう
に折返し部5A,5Bが形成されている(以下、折返し
部を称するときは符号5を用いる)。折返し部5の半径
方向幅、即ち、折り返し幅L4 は、例えば、約1.2m
mである。
【0031】この発明による金属製ガスケット1は、上
記のような構成を有しているが、該金属製ガスケット1
の製造方法は、次の各工程によって金属製ガスケット1
を製作することができる。
【0032】先ず、弾性金属板3に、折り返し加工によ
って折返し部5の端縁6となる所定のシリンダボア孔2
よりも所定の長さだけ小さい半径にシリンダボア孔(以
下、シリンダボア孔2と区別するため先設孔6と呼ぶ)
を形成する。ここで、シリンダボア孔2と先設孔6とは
孔中心が同じである。また、シリンダボア孔2以外のボ
ルト孔15等の種々の孔を穿孔して形成する。次に、図
7に示すように、先設孔6の周縁から半径方向外側に延
びて少なくとも折り返し幅L4の2倍の幅を有する境界
である薄肉限界9に達するまでの環状領域を板厚におい
て弾性金属板3の板厚t1 の半分以上の板厚を有するま
で薄肉に加工する。言い換えれば、折返し部5は弾性金
属板3の板厚t1 以下から半分以上までの予め設定した
板厚t2に加工する。即ち、弾性金属板3の先設孔6の
周囲近傍において、折り返し幅L4 とかかる折り返し幅
4 よりも幅が広くその半径方向外側に位置する領域幅
5 (図示の例ではL5 は、例えば、1.5mmであ
る)とを合わせた幅の環状領域を、深さd(図示の例で
は、例えば、0.06mmである)だけ薄肉化して板厚
2 (=t1 −d,図示の例では、例えば、0.38m
m)とする。薄肉化は、プレス成形、エッチング加工、
又は切削加工等のいずれの加工方法を採用してもよい。
プレス成形の時は、弾性金属板3の先設孔6の周囲が押
し潰されるため先設孔6の内径がさらに縮小するので、
折り返し幅L4 の設計に当たって考慮する必要がある
が、先設孔6の抜き打ちと同時にプレス成形することも
できる。
【0033】次に、図8に示すように、先設孔6の周縁
から半径方向外側に隔置した非薄肉領域において先設孔
6に沿ってビード4を成形加工する。次に先設孔6の周
囲において折り返し幅L4 の折り返し部分7をビード4
の凸面側で半径方向外側に折り曲げ加工を施して、薄肉
化された部分8に折り重ねる。幅L5 は折り返し幅L4
より広く設定してあるから、折り返し部分7は板厚t1
を有する非薄肉化部分と重なることはない。折り曲げ加
工の工程が終了すると、折り返した折返し縁部をシリン
ダボア孔2とした折返し部5が形成される。最後に、折
返し部5を形成した弾性金属板3を熱処理して弾性金属
板3の硬さを調整して金属製ガスケット1を得る。
【0034】更に、折返し部5を成形する折り曲げ加工
工程の後であって、金属製ガスケット1を熱処理する前
に、折返し部5に板厚方向に圧縮力を付与して、予め設
定した厚さにまで微小変形する工程を行う。即ち、シリ
ンダヘッドはシリンダブロックに比べて剛性が低く、多
気筒エンジンにおいては、隣接するシリンダボア孔2間
の部分が内燃機関の爆発行程及び膨張行程の燃焼サイク
ルにおける負荷変動により最も大きな歪みを生じ易いと
ころである。従って、この部分が金属製ガスケットによ
るシール機能が最も低下し易いところであるので、折返
し部5のシリンダボア孔2間の領域でのシール性能をシ
リンダボア孔2間以外の領域でのシール性能よりも強力
にするために、シリンダボア孔2間の領域に位置する折
返し部5の板厚をシリンダボア孔2間以外の領域に位置
する折返し部5の板厚よりも厚くすることが考えられ
る。このため、折返し部5の折り曲げ加工工程の後に、
シリンダボア孔2間以外の領域に位置する折返し部5を
シリンダボア孔2間に位置する折返し部5よりも大きな
量だけ変形させるための圧縮力を付与する工程を設けて
よい。具体的には、図9及び図10に示されているよう
に、シリンダボア孔2間の領域aにおいては厚さが0.
37mmに成形され、領域aの両側に延びる領域bにお
いては厚さが次第に減少していき、更に、その両側に延
びる円弧部分の領域cについては厚さが、例えば、0.
32mmに形成されている。なお、折返し部5を形成し
た弾性金属板3は、熱処理して硬さを調節するが、この
時、ビード形成前でHv200以下であるのを、熱処理
後には弾性金属板1の種類に応じた硬度を有するように
硬化する。
【0035】金属製ガスケット1は、シリンダヘッドと
シリンダブロックとの間に介装されて、例えば、ボルト
孔15を通したボルトにより締め付けて押圧状態にする
と、弾性金属板3のシリンダボア孔2の近傍周囲部分に
設けたビード4が、対向取付面に対して接触して環状シ
ール部を形成する。また、折返し部5はもう一方の対向
取付面に対してビード4による環状シール部の半径方向
内側で別の環状シール部を形成する。これらの二段構え
の環状シール部によって、シリンダボア孔2からの高温
高圧の燃焼ガスが両対向取付面に漏れ出るのを阻止する
ことができる。
【0036】また、シリンダヘッドとシリンダブロック
との締め付け時に、シリンダヘッドとシリンダブロック
との対向取付面に不整が生じても、折返し部5と、ビー
ド4がこれに対応して変形し、上記のように環状シール
部の増加と相まって不揃いな間隙を吸収する。このよう
に環状シール部の増加と上記対向取付面の不整の吸収に
より、内燃機関の爆発・膨張行程の燃焼サイクル時の繰
り返しで発生するシリンダヘッドの歪み量が抑制され
る。折返し部5も、ビード4に加えて対向取付面に当接
するので、締付け力がビード4と折返し部5とに分担し
て支持され、更に折返し部5の板厚が充分な板厚まで減
少されているので、内燃機関の運転時における負荷変動
によって金属製ガスケット1に上記のような抑制された
繰り返し応力が働いたとしても折返し部5にのみ負担が
かかることなく、ビード4と折返し部5とに発生する負
荷応力が軽減されるのでビードのヘタリやシール部の亀
裂の発生を防止することができる。
【0037】この発明の各実施例は、六気筒内燃機関に
ついて示したけれども、この発明はこの形式の内燃機関
に限ることはなく、例えば、三気筒又は四気筒の内燃機
関の場合等に適用することができ、更に、この出願の特
許請求の範囲に記載された事項によって構成される技術
的思想の範囲内において種々の修正や変更が可能であ
る。
【0038】
【発明の効果】この発明による金属製ガスケット及びそ
の製造方法は、以上のように構成されているので、次に
記載の効果を有する。即ち、この発明による金属製ガス
ケットは、ビードを形成した弾性金属板の折返し部が、
折り返し部分と該折り返し部分が重なる弾性金属板の部
分とが弾性金属板の板厚以下から半分以上までの予め設
定した板厚に加工され、且つ折り返し後に熱処理されて
いるので、対向取付面を有する二つの構造部分、即ち、
シリンダヘッドはシリンダブロックとの間で金属製ガス
ケットを締め付けて押圧状態にすると、シリンダボア孔
近傍周囲部分に設けた前記ビードはその押圧力によって
変形して前記二つの構造部材の対向取付面に対して環状
シール部を形成する。それと同時に、前記折返し部は、
薄肉化の程度が弾性金属板の板厚の半分の板厚以上にな
る程度であるから、折り返し部分と該折り返し部分が折
り曲げ加工によって折り重ねられる部分との合計厚さが
弾性金属板の板厚以上になるので、シリンダボア孔の周
囲において別の環状シール部を形成する。従って、構造
部材の対向取付面間に二段の環状シール部が形成される
ため、この締め付け時に二つの構造部分の対向取付面に
不整が生じても前記ビードと前記折返し部が歪みに対応
して変形し、当接面間の不揃いな間隙を吸収する。そし
て、二段の環状シール部は上記対向取付面の不整の吸収
との相乗作用によって内燃機関の燃焼サイクルの繰り返
しで発生する変動負荷及び熱負荷を分担して支持するの
で、シリンダヘッドの歪み量を抑制する。
【0039】前記折返し部と、該折返し部の半径方向以
遠の領域との間において、前記折返し部の薄肉化した部
分は、両者に必要な段差が得られるように調節をする手
段として機能する。即ち、構造部材の一方、即ち、シリ
ンダヘッドのシリンダボア孔間に位置する接合面は、そ
の剛性の低下等によってシリンダヘッドの締め付け時に
不整が生じやすいが、ビードの高さを前記折返し部の板
厚が弾性金属板の板厚を超える分だけは厚さだけは軽減
できるから、ビード部材に対しては全圧縮が防止される
と共に、上記必要な段差を容易に得ることができる。そ
して、上記段差が適正なものとされると、内燃機関の始
動、運転、停止等の作動状態に伴って発生するシリンダ
ヘッドの歪み量が抑制され、それに基づく変動負荷応力
も軽減することができるから、ビードのヘタリやシール
部の亀裂の発生の防止に役立ち、ビードやシール部の耐
久性が向上する。
【0040】この金属製ガスケットによれば、前記折返
し部は、少なくとも折り返し部分と該折り返し部分が重
なる弾性金属板の部分とが弾性金属板の板厚の半分以上
の板厚まで薄肉化されて構成されているので、前記折返
し部の厚さは、弾性金属板の板厚以上であるが該板厚の
2倍未満の厚さを有することになる。また、折返し部の
厚さは薄肉化の度合いに応じて上記範囲内の任意の厚さ
に設定することができる。従って、金属製ガスケットの
折返し部と該折返し部以外の弾性金属板の部分との間で
段差が大きすぎることがなく、対向取付面間での締め付
け時に、その段差の領域で弾性金属板に無理な変形が加
わるのが回避され、弾性金属板の屈曲による元来の応力
的な不利に加えて内燃機関の燃焼サイクルによる負荷変
動が作用しても、亀裂を生じる等の恐れがない。
【0041】また、折返し部は締め付け時にシール線が
形成されてシリンダボア孔から腐食性の高温燃焼ガスが
漏洩するのを防止するが、ビードを形成した部位もシー
ルの役割を担うものである。この発明によれば、折返し
部の厚さは、減じてあるから、何ら他の構造部材を用意
することなく、シール力、即ち、締め付け力の分担を折
返し部に偏らせ過ぎることを回避できる。したがって、
ビード部にも応分のシール力を分担させることができ、
万一、折返し部が長期の使用中に欠損を生じた場合であ
っても、二段構えのビード部が燃焼ガスの漏洩を有効に
防止することができる。
【0042】また、この金属製ガスケットにおいて、ガ
スケットの両面に耐熱性及び耐油性のゴム又は樹脂等の
非金属材料を塗布したものにあっては、シリンダヘッド
及びシリンダブロックに対して金属対金属の直接的な接
触状態が回避されると共に、腐食性の燃焼ガスに対抗す
る対蝕性と耐久性及び精度が確保され、金属表面の腐食
や汚損を防止すると共に、シリンダヘッドとシリンダブ
ロック、及び金属製ガスケット自体の表面の凹凸(機械
加工面)があってもこれを埋めて充分なシール機能を確
保することができる。
【0043】更に、この金属製ガスケットにおいて、シ
リンダブロックに対して比較的剛性が低いシリンダヘッ
ドが複数のシリンダボア孔を持つ内燃機関に適用する場
合、隣接するシリンダボア孔間の領域に位置する領域で
の前記折返し部の厚さをその他の領域での折返し部の厚
さよりも厚くしたものにあっては、前記折返し部は、隣
接するシリンダボア孔間の領域でのシリンダヘッドの撓
み変形に対して効果的に対応してかる領域でのシール性
能を有効に維持することができる。さらに前記折返し部
は基板のビードと重ならない限りその折返し範囲を任意
に設定することができるから、設計上、ビード部と折返
し部との面圧配分を調節することができる。
【0044】或いは、この金属製ガスケットの製造方法
は、素材としての軟質金属板を穿孔加工、薄肉加工、ビ
ード加工及び折り曲げ加工し、最後に熱処理をしてい
る。即ち、この金属製ガスケットの製造方法は、弾性金
属板に形成したシリンダボア孔の周縁から半径方向外側
に延びる環状領域を前記弾性金属板の板厚以下から半分
以上までの予め設定した板厚に加工し、前記シリンダボ
ア孔の周縁から半径方向外側に隔置した領域において前
記シリンダボア孔に沿ってビードを加工し、前記前記ビ
ードの凸面側で半径方向外側に折り曲げ加工を施して折
返し縁部を所定の径のシリンダボア孔とする折返し部を
形成し、且つ該折返し部を形成した前記弾性金属板を熱
処理して硬さを調整する各工程を有するので、折返し部
が弾性金属板に対して有する段差の形成が簡単であり、
且つ低コストに製造でき、しかも品質良好に製作するこ
とができる。
【0045】更に、この金属製ガスケットの製造方法
は、前記折返し部による弾性金属板の高すぎる段差を減
少する方向に調整するのに、弾性金属板に板厚調整板を
積層することで解決することはしないので、弾性金属板
のビード等の加工形状と合致する形状を持たせた調整板
を別途用意する必要や、調整板と弾性金属板との積層工
程とそれに伴う付加的な設備を用意する必要がなく、弾
性金属板の穿孔工程に若干の工程の付加で済むために金
属製ガスケットの製造コストを大きく上昇させることは
なく経済的である。
【0046】また、この金属製ガスケットの製造方法に
よれば、所謂予圧縮、即ち、前記折返し部の形成後であ
って、シリンダヘッドとシリンダブロックとの対向取付
面間での締め付け前に、折返し部の全部を一様に圧縮す
るか、又はその一部を圧縮して折返し部の板厚や折り返
し幅をシリンダボア孔周縁位置に応じて変化させる方法
のように、折り返してから板厚を減じるのではなく、板
厚を殆ど又は全部を減少させてから折り返しているか
ら、折り返し端において材料工学的に急激で且つ大きな
変化がもたらされることがなく、折り返し端で亀裂を生
じたり又は亀裂の原因を持つことにもならず、長期の使
用によっても折返し部のシリンダボア孔端縁で亀裂を生
じる恐れがない。
【0047】更に、この金属製ガスケットの製造方法に
おいて、折返し部を成形加工する工程の後に、該折返し
部に圧縮力を付与して、予め設定した厚さにまで微小変
形する工程を有する方法にあっては、折り曲げ加工で折
返し部の成形が既に大部分完了しているので、更に前記
折返し部の厚さや幅を最終製品に合致するように、所望
に応じて自在に微調整することができる。即ち、折返し
部の厚さをシリンダボア孔の周囲及び幅方向において一
様とするときの厚さの設定は勿論のこと、同じシリンダ
ボア孔の周囲に形成する折返し部であっても場所に応じ
て、折返し縁部材に過大な応力変化を与えない範囲で、
厚さを微調整することができる。例えば、隣合うシリン
ダボア孔が互いに接近しているところではシリンダヘッ
ド等の歪みを考慮して折返し部の厚さを厚くし、上記接
近したところから遠ざかるに従って厚さを次第に薄くす
るか一定の薄い厚さにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による金属製ガスケットの一実施例を
示す部分平面図である。
【図2】図1のシリンダボア孔間の領域を示す拡大平面
図である。
【図3】図1の線A−Aにおける断面図である。
【図4】図3の一部である折返し部を拡大して示す図で
ある。
【図5】図1の線B−Bにおける断面図である。
【図6】図1の線C−Cにおける断面図である。
【図7】金属製ガスケットの製造一工程である薄肉化工
程を示す図である。
【図8】金属製ガスケットのビード成形工程を示す図で
ある。
【図9】金属製ガスケットの両端に位置するシリンダボ
ア孔の周りにおける折返し部の厚さの分布を示す説明図
である。
【図10】金属製ガスケットの両端以外に位置するシリ
ンダボア孔の周りにおける折返し部の厚さの分布を示す
説明図である。
【符号の説明】
1 金属製ガスケット 2 シリンダボア孔 3 弾性金属板 4 ビード板 5 折返し部 6 折返し端縁となるシリンダボア孔 7 折り返し部分 8 折り返し部分が折り重ねられる部分
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 井上 國利 大阪府東大阪市加納248番地 日本ガスケ ツト株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シリンダボア孔の周縁から半径方向外側
    に隔置して前記シリンダボア孔に沿って形成したビード
    と、折返し縁部が前記シリンダボア孔となるように前記
    ビードの凸面側で折り返し且つ前記ビードの内側に位置
    する折返し部とを備えた弾性金属板から成る金属製ガス
    ケットにおいて、前記折返し部は折り返し部分と該折り
    返し部分が重なる弾性金属板の部分とが弾性金属板の板
    厚以下から半分以上までの予め設定した板厚に加工さ
    れ、且つ折り返し後に熱処理されていることを特徴とす
    る金属製ガスケット。
  2. 【請求項2】 ガスケットの両面に耐熱性及び耐油性の
    ゴム、樹脂等の非金属材料を塗布したことを特徴とする
    請求項1に記載の金属製ガスケット。
  3. 【請求項3】 前記折返し部を前記シリンダボア孔間の
    領域で厚く且つ前記シリンダボア孔間以外の領域で薄く
    形成したことを特徴とする請求項1に記載の金属製ガス
    ケット。
  4. 【請求項4】 弾性金属板にシリンダボア孔を形成する
    工程、該シリンダボア孔の周縁から半径方向外側に延び
    る環状領域を前記弾性金属板の板厚以下から半分以上ま
    での予め設定した板厚に加工する工程、前記シリンダボ
    ア孔の周縁から半径方向外側に隔置した領域において前
    記シリンダボア孔に沿ってビードを加工する工程、前記
    シリンダボア孔の周囲において前記ビードの凸面側で半
    径方向外側に折り曲げ加工を施して折返し縁部を所定の
    径のシリンダボア孔とする折返し部を形成する工程、及
    び該折返し部を形成した前記弾性金属板を熱処理して硬
    さを調整する工程を有する金属製ガスケットの製造方
    法。
  5. 【請求項5】 前記折返し部に圧縮力を付与して前記折
    返し部を予め設定した厚さに成形加工する工程を有する
    請求項4に記載の金属製ガスケットの製造方法。
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