JPH08126467A - 糠漬用発酵漬液の製造法 - Google Patents

糠漬用発酵漬液の製造法

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JPH08126467A
JPH08126467A JP28930794A JP28930794A JPH08126467A JP H08126467 A JPH08126467 A JP H08126467A JP 28930794 A JP28930794 A JP 28930794A JP 28930794 A JP28930794 A JP 28930794A JP H08126467 A JPH08126467 A JP H08126467A
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bran
fermented
vegetables
flavor
pickled
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JP28930794A
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Masatake Imai
正武 今井
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Morinaga and Co Ltd
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Morinaga and Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 糠、食塩、グルタミン酸を主成分とするアミ
ノ酸混合物につくろうとする糠漬の種類に応じ、キャベ
ツ、キューリ、大根、大根葉などから選んだ野菜の磨砕
物又は搾汁及び水を混合し、酵素で処理した後、糠床か
ら分離培養した乳酸菌及び酵母を接種し、発酵させたて
から固形分を除去した発酵香味液を配合した糠漬用発酵
漬液の製造法。 【目的】 糠漬用発酵漬液に野菜を数時間漬けるだけ
で、糠漬や沢庵漬などの糠漬類が得られ、しかも得られ
た糠漬類の香味が長い年月かけて熟成した糠床で漬けた
糠漬のように好ましい香味をしている、香味の優れた糠
漬類が得られる糠漬用発酵漬液を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、野菜を浸漬して糠漬
類とするのに用いる糠漬用発酵漬液に関するものであ
り、詳しくは、糠漬や沢庵漬などの野菜の糠漬類を作る
のに適し、しかも得られた糠漬類の香味が長い年月かけ
て熟成した糠床で漬けた漬物と同じように好ましい香味
をしている、香味の優れた糠漬類となる糠漬用発酵漬液
の製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】糠漬類は、米食生活と各地の気候、風土
に適合した農業生産物と発酵工程により、各々の地域や
家庭に特有の風味を有するものが作られてきた。すなわ
ち、それぞれの地方により、また同じ地域でもそれぞれ
の家により、特徴ある風味のものとなり、それぞれの地
域や家の伝統ある味覚のものとなっていた。しかし、こ
れらの糠漬類は、新たに漬けた後1〜数カ月発酵過程を
経ないと好ましい風味のものとはならず、しかも糠床か
ら取り出した後はこの好ましい風味が保たれる期間が短
く、時間の経過と共に品質が変化するのが普通である。
このような糠漬類は、一度に大量の生産物を作って大量
に販売する現在の市場の流通機構では、いつも品質の一
定な商品を安定に供給することが困難なため、調味料な
どを溶解した調味液で漬けた糠漬類が用いられている。
【0003】このような糠漬類に用いられるている調味
液は、食塩とアミノ酸系調味料、有機酸系調味料、甘味
料などを溶解しただけのものであり、これに野菜を入れ
て商品としている。また、糠を用いても、このような漬
物用の調味液と糠を混合したものを、大根などの野菜に
まぶすだけでそのまま商品として出荷しているのが現状
である。すなわち、発酵過程を経ない糠漬や沢庵漬など
の糠漬類が市販されている。
【0004】なお、この発明の発明者らは、糠に食塩、
蛋白質分解物を加え、これに糠床から分離した乳酸菌、
酵母などの菌を接種して発酵させた発酵糠を濃縮、乾燥
したものを配合した漬物の素を用いて好ましい風味を有
する糠漬とする方法を特許出願(特願昭55-12197)し、
更にこれに好ましい風味の糠床から分離した香気成分と
同じ成分を加えることも特許出願(特願昭56-120739)
し、いずれも特許となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来の調味液を用いた
糠漬類は、発酵過程を経てないため、発酵により醸し出
される糠漬類に特有の風味に乏しく、本来の糠漬類の風
味と全く異なったものとなり、風味に欠けるものが販売
される原因ともなっている。また、発酵糠を用いた漬物
の素を用いた漬物は従来の調味液を用いた漬物に比べ風
味の好ましい漬物が得られたが、発酵糠を濃縮、乾燥す
るとき一部の揮発性香気成分が揮散するためか、十分な
効果をが得られなかった。
【0006】この発明の発明者らは、試験例1に記した
ように糠と食塩水を混合しただけの糠床と、これに毎日
野菜を漬け続けた糠床とを各々用意し、その熟成過程を
観察した結果、始め土壌由来のグラム陰性菌が主体であ
った菌叢が1カ月以内に変化し、乳酸菌主体となり、野
菜を漬けた糠床では酵母も見られるようになった。さら
に、熟成期間が2カ月を過ぎると野菜を漬けた糠床は、
糠床特有の香りが生じたが、野菜を漬けない糠床にはそ
のような香りは認められなかった。また、この間糠床に
含まれる有機酸の量を測定した結果、両方の糠床共1カ
月後では乳酸が多くみられたが、野菜を漬けた糠床では
その後乳酸が少なくなり、60日以降はプロピオン酸の
生成が見られるようになった。また、野菜を漬けた糠床
では、日数の経過に従い増加する未知の脂肪酸が検出さ
れ、これを同定した結果、オクタデカン酸−10,13
オキサイド(以後ODAXと記述する。)と10−ヒド
ロキシオクタデカン酸(以後HODAと記述する。)で
あった(図3参照)。なお、ODAXとHODAは、野
菜を漬けなかった糠床では、全く認められなかった。ま
た、野菜を漬けた糠床におけるオレイン酸、リノール酸
などの不飽和脂肪酸は、図1及び図2に見られるよう
に、経過日数に比例して減少したが、野菜を漬けなかっ
た糠床ではこれらの不飽和脂肪酸の量は、ほとんど減少
しなかった。
【0007】なお、野菜を漬け続けた糠床では、時間の
経過と共に糠床特有の好ましい香気が生じ、段々熟成さ
れた糠床の香気になって行ったが、野菜を漬けなかった
糠床では麹臭は認められたが、熟成された糠床のような
香気は認められなかった。更に、130年間代々受け継
がれた糠床を調べた結果、多くの成分が検出されたが、
有機酸としてプロピオン酸が主力をなしていた。また、
香気成分として多くのエステル類、ラクトン類などが見
られたが、ラクトン類が重要な成分と考えられる。
【0008】糠漬の香りには、酢酸プロピルやプロピオ
ン酸エステルなどのエステル類や、酢酸や酪酸などの揮
発性の有機酸など低沸点の化合物が鼻孔から感じる成分
として重要であるが、食べたとき感じる独特の香りやコ
クは、ラクトン類のような、揮発性有機酸より沸点の高
い物質が関与していると思われる。十分な熟期間を経て
生じた香気成分の中のラクトン類として、γ−ドデカラ
クトン、γ−ノナラクトン、γ−オクタラクトン、γ−
デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ブタラクト
ンなどがみられ、γ−ウンデカラクトンは糠漬の香りの
キー物質の一つと考えられる。また、γ−ノナラクトン
は、最も量が多いラクトンであった。一般に、ラクトン
はヒドロキシ脂肪酸の分子内エステル化により生成され
ると考えらており、J.E.Kinsella(Chem.Ind.,11,36(196
9))は乳製品の香りの総説の中で、ラクトンの前駆物質
は、ヒドロキシ酸であると述べている。これらのことか
ら、不飽和脂肪酸がHODA、ODAXなどのヒドロキ
シ脂肪酸に変わり、このヒドロキシ脂肪酸の分子内エス
テル化によりラクトンが生じると推定される。
【0009】さらに、野菜の成分が香気形成に重要な働
きをしているが、その作用は、野菜の持つ香り成分が溶
け込む直接的作用と、野菜の酵素が糠の成分に作用して
香り成分に影響を与える間接的作用とがある。間接作用
の場合、野菜などにはリポキシゲナーゼやリアーゼなど
の酵素が存在し、脂質の酸化、分解に関与しているが、
これらの酵素は糠との間でも脂質の酸化、分解に関与
し、ラクトン形成に役立っていると考えられる。更に、
発明者の実験によると、糠漬類の香気には、キュウリや
キャベツなどの野菜が有効であり、沢庵漬の香気には大
根や大根の葉が必要であった。このことは、野菜の種類
により酵素の作用が異なり、そのことが得られた漬物の
種類による独特な香気の生成に関係していると推測され
る。
【0010】すなわち、野菜を漬けた糠床では、不飽和
脂肪酸がODOXやHODAに変わり、更にこれがラク
トンに変化して、熟成した糠床の好ましい香気となると
推測される。今後、本特許の説明において、HODAを
香気成分の前駆物質として見て行くこととする。これら
の内容については、農芸化学会誌(第57巻,1105頁,1983
年、第57巻,1113頁、1983年第58巻,545頁,1984年)、Ag
ric. Biol. Chem.誌(第55巻,2209頁,1991年)などに発
表した。
【0011】しかし、現在の漬物業界を見てみると、糠
漬に限らず、その他の漬物も漬物用の調味液と野菜をビ
ニール袋などの容器に詰め、発酵工程を経ることなくそ
のまま出荷している。また、例えば沢庵漬けでは調味液
に糠を加え、それを大根の周囲に塗っただけという製品
が多く、このような即席の漬物は味気無いものとなり、
発酵による好ましい風味を有する漬物が見られなくなっ
た。その結果、どこで買っても同じようなものしか手に
入らず、美味しい糠漬けを求める消費者の要望に応じら
れないのが現状である。この発明の発明者は、このよう
な状況が漬物業界の発展を阻害することを懸念し、糠漬
類が本来持っている発酵により生じる特徴ある風味を有
し、しかも工業的な生産ができ、現在の流通機構で販売
可能な糠漬類を得るべく種々研究し、前記研究結果を利
用した本発明を完成させた。
【0012】すなわち、この発明の発明者は、食塩を加
えた糠にグルタミン酸又はグルタミン酸を主成分とする
アミノ酸混合物や野菜を加えて発酵すること、しかも野
菜を磨砕又は搾汁として糠混合物に加えることにより工
業的に処理できるようにしたこと、香味の優れた糠床か
ら分離した乳酸菌及び酵母を接種して発酵すること、し
かもこのとき用いる乳酸菌と酵母は、好ましい糠漬の香
味の指標物質であるHODAを生じる組合せであること
などの知見を得て、この発明を完成させた。
【0013】
【課題を解決するための手段】この発明は、糠、食塩、
野菜、グルタミン酸又はグルタミン酸を主成分とするア
ミノ酸混合物及び水を混合した糠混合物に、乳酸菌及び
酵母を接種し、発酵させた後、固形分を除去した発酵香
味液を使用した糠漬用発酵漬液の製造法に関するもので
あり、このとき用いる野菜は磨砕又は搾汁として用いる
ことにより、短期間に好ましい香味をした糠漬用発酵漬
液としている。更に、乳酸菌としてラクトバチルス プ
ランタルム、ペデイオコッカス ペントサセウスから、
酵母としてサッカロミコプシス属、ピキア属、キャンデ
ィダ属から各々1種又は2種以上選んだものを用いるこ
とにより、長期間熟成した糠床と同じような、好ましい
香味の糠漬用発酵漬液とするものである。更にまた、野
菜として、キャベツ及びキュウリを用いることにより糠
漬の香味を有する糠漬用発酵漬液とし、また大根及び大
根の葉を用いることにより沢庵の香味を有する糠漬用発
酵漬液とするなど目的に応じた糠漬用発酵漬液とするも
のである。
【0014】この発明では、糠として生糠又はいり糠が
用いられる。また、野菜は、野菜が本来持っている酵素
の活性がみられる生又は冷凍保存としものが用いられ、
これを磨砕若しくは搾汁して使用するようにする。従っ
て、磨砕若しくは搾汁した野菜を凍結保存したものを用
いてもよい。さらに、グルタミン酸又はグルタミン酸を
主成分とするアミノ酸混合物やこんぶのようなグルタミ
ン酸を多く含む天然物が用いられる。
【0015】この発明を実施するには、先ず糠、食塩、
野菜、グルタミン酸又はグルタミン酸を主成分とするア
ミノ酸混合物及び水を混合して糠混合物を調製する。こ
の糠混合物に対する糠の量は、糠固形分に換算して10
〜30%とする。また、食塩の量は、3%以上、10%
以下、好ましくは3〜8%、最も好ましい状態として5
〜6%とする。野菜は生のものを小さく刻んで用いても
よいが、短時間の発酵で好ましい風味を出させるために
磨砕したものを用いるのがよい。また、磨砕し、又は磨
砕しない野菜を搾汁した汁液を用いてもよい。糠混合物
に対する野菜(の磨砕物又は搾汁)の量は、0.1〜1
0%、好ましくは0.5〜2%とする。このとき用いる
野菜としては、一般に糠漬に用いる葉菜や根菜などを任
意に用いることができるが、糠床の熟成された風味とす
るにはキュウリ及びキャベツを加える必要があり、沢庵
漬の風味とするには大根及び大根の葉を用いる必要があ
る。なお、グルタミン酸又はグルタミン酸を主成分とす
るアミノ酸混合物は、呈味成分として加えるのではな
く、微生物による代謝の結果生ずるプロピオン酸やプロ
ピルアルコールなどの低沸点の脂肪酸類やアルコール類
の生成を目的に加えており、糠混合物の0.01〜1%
加えるのがよい。糠又は糠混合物は、必要に応じ、殺菌
又は滅菌処理して用いるようにする。
【0016】糠混合物は、そのまま乳酸菌及び酵母を接
種し、発酵するが、発酵に先立ってアミラーゼ、プロテ
アーゼ、リパーゼなどの酵素を加え、処理するのが望ま
しい。すなわち、酵素の添加は、でんぷん類の糖化によ
る乳酸菌や酵母の活性化、脂質の分解によるオレイン
酸、リノール酸などの不飽和脂肪酸の生成とそれによる
ラクトン類の産生の促進、米蛋白質の分解による構成ア
ミノ酸として多いグルタミン酸量の増加などの理由で、
特に工業的に大量の糠を処理するときには、好ましい結
果をもたらした。
【0017】次いで、糠混合物に、乳酸菌及び酵母を接
種し、発酵させる。接種する乳酸菌及び酵母は、試験例
2にもみられるように、130年間代々受け継がれてき
た風味の優れた糠床など多くの糠床から分離し、熟成香
の指標物質であるHODAを生成する菌叢を用いるよう
にする。すなわち、乳酸菌としてラクトバチルス プラ
ンタルム、ペデイオコッカス ペントサセウスから、酵
母としてサッカロミコプシス属、ピキア属、キャンディ
ダ属から各々1種又は2種以上選んだものを用いるよう
にする。発酵は、静置して行うと腐敗するおそれがある
ので、攪拌しながら行うようにする。しかし、連続して
攪拌を行うと香気成分が揮散するおそれがあるので、例
えば一日の内半日は静置して発酵し、後の半日は攪拌し
ながら発酵するなど、時々攪拌しながら発酵するのが望
ましい。発酵の温度は、各々の菌に最も適した温度、又
はそれより少し低めの温度で行うのが好ましく、例えば
15〜32℃で行うようにする。発酵時間は、目的とす
る香味の強さや質により異なるが、30日間から50日
間行うようにする。なお、接種する乳酸菌及び酵母は、
保存菌をそのまま用いるよりも、例えば3%の食塩と1
0%の糠を加えた培地を用い、1〜2日間前培養を行っ
て菌を活性化した後、用いるようにする方が好ましい結
果が得られる。また、磨砕又は搾汁した野菜及びグルタ
ミン酸又はグルタミン酸を主成分とするアミノ酸混合物
は、例えば発酵を始めてから2〜4週間位経過したとき
追加して加えるなど、発酵の途中で更に追加することに
より、香味のより優れた発酵糠とすることができる。こ
のとき追加する野菜の量は、所望により任意に定められ
るが、発酵中の糠混合物の0.1〜10%とするのが好
ましい。
【0018】次いで、発酵した糠混合物から固形分を除
き、発酵香味液とする。発酵した糠混合物から固形分を
除くには、漉し袋を用いたり、フィルタープレスや遠心
分離機で処理するなど公知の方法が用いられる。なお、
フィルタープレスなどで瀘過するとき、セライトなどの
瀘過助剤を用いることが可能である。このときの瀘過助
剤の量は、発酵した糠混合物の10%以下、5〜7%と
する。なお、固形分を除く前又は後で、加熱処理などに
より殺菌したり、また、固形分を除く前又は後で、乳酸
や酢酸を加え、pHを低くしたり、食塩を加えたりして
処理中の変質を防ぎ、その後の保存性を高めるようにす
るのが望ましい。加熱処理は、例えばプレートヒーター
やチューブラーヒーターなどで連続して処理するのが好
ましく、例えば70〜85℃で30秒前後処理するよう
にする。
【0019】このようにして得た発酵香味液は、そのま
ま又は濃縮して野菜を漬ける糠漬用発酵漬液に配合す
る。このようにして得た糠漬用発酵漬液に野菜を漬ける
と、従来の漬物用調味液を用いた漬物に比べ、熟成した
糠床に漬けた糠漬のように芳醇な風味を有する風味の優
れた糠漬や沢庵漬などの糠漬類が得られた。
【0020】
【実施例】
実施例1 生糠10部に6%食塩水70部を加え、これに野菜とし
て家庭用のミキサーで磨砕したキュウリ及びキャベツを
各々1部ずつ加え混合し、更に昆布の粉末0.1部、ア
ミノ酸系調味料(味の素(株)製、商品名「アミリッ
チ」)0.2部を混ぜた。更に、酵素(液化型アミラー
ゼ及び糖化型アミラーゼを各々0.05部ずつ)を加
え、糠混合物とした。この糠混合物を20℃としてか
ら、食塩を加えた糠を培地としてあらかじめ培養してお
いた乳酸菌及び酵母を接種した。乳酸菌としてラクトバ
チルス プランタルムを、酵母としてサッカロミセス属
並びにキャンディダ属を用いた。乳酸菌及び酵母を接種
した糠混合物は、一日の内半日は撹拌し、後の半日は静
置することを繰り返しながら発酵した。発酵中の糠混合
物は、およそ一週間でpH4.7となり、糠漬特有の香
気が感じられるようになった。約1カ月後、磨砕したキ
ュウリ及びキャベツを各々1部づつと、アミノ酸調味料
0.05部を追加添加し、更に1カ月発酵を続け、好ま
しい香味の発酵した糠混合物を得た。この発酵した糠混
合物に、濾過助剤として糠混合物重量の5%のセライト
を加えてから、フィルタープレスを用いて濾過して固形
分を除き、わずかに濁った発酵香味液を得た。これに食
塩を加え、食塩濃度を15%に調整した後、65℃で1
0分間の加熱殺菌処理を行い、更に濾過して透明にし
た。この発酵香味液を容器に充填して糠漬用発酵漬液と
した。この糠漬用発酵漬液にナス及びキュウリを8時間
漬けた漬物は、熟成した糠床に漬けた糠漬と同じように
芳醇で好ましい香味の大変おいしいものとなった。
【0021】実施例2 生糠30部に食塩8部及び水70部を加え、これに野菜
として家庭用のミキサーで磨砕した大根の葉1部と大根
おろし3部を添加し、更に昆布の粉末0.2部、粉末ア
ミノ酸系調味料0.3部を混ぜた。これに酵素(液化型
アミラーゼ、糖化型アミラーゼ及びリパーゼを各々0.
05部づつ)を加え、糠混合物とした。この糠混合物に
あらかじめ培養しておいた乳酸菌及び酵母を接種した。
乳酸菌としてラクトバチルス プランタルムを、又酵母
としてサッカロミセス属及びキャンディダ属の菌を用い
た。発酵は、一日の内半日は撹拌し、後の半日は静置す
ることを繰り返しながら60日間行い、発酵した糠混合
物を得た。この発酵した糠混合物をフィルタープレスを
用いて濾過して発酵香味液を得た。これに食塩を加え、
食塩濃度を15%に調整した後、65℃で10分間の加
熱殺菌処理を行い、更に濾過して透明な発酵香味液を得
た。この発酵香味液を容器に充填して糠漬用発酵漬液と
した。この糠漬用発酵漬液30部と炒り糠20部を混ぜ
たものと日干しした大根をビニール袋に入れ、3日間保
存した沢庵漬は、大変香りがよく、風味の優れたものと
なった。
【0022】実施例3 生糠30部に5%食塩水65部を加え、これに磨砕した
キュウリ、キャベツ及びダイコンの葉を各々1部ずつ加
えた。更に、粉末アミノ酸調味料(アミリッチ)0.5
部を加え、これに糖化型アミラーゼ0.1部、プロテア
ーゼ0.1部及びリパーゼ0.1部を加え糠混合物を調
製した。この糠混合物に、別に糠を加えた培地で培養し
ておいたラクトバチルス プランタルム、ペディオコッ
カス ペントサセウスからなる乳酸菌及びサッカロミコ
プシス属、ピキア属、キャンディダ属からなる酵母を接
種し、25℃で発酵した。発酵は、間欠的に攪拌しなが
ら行った。発酵を開始してから1週間経過したとき、ホ
ワイトリカー(アルコール分25%)4部を加えた。更
に、5週間発酵した後、醸造乳酸(50%)、醸造酢酸
(5%)の2:5に混合したものを添加して1/10規
定の水酸化ナトリウム溶液で滴定したときの酸度が30
となるように調整してから、数日間冷蔵した後、遠心分
離して固形分を除き、糠漬用発酵漬液を得た。この糠漬
用発酵漬液に、半分に割ったキュウリを6時間漬け糠漬
を得た。この糠漬は、長年糠漬に用いてきた糠床で漬け
た糠漬と同じような好ましい香味がする、好ましい風味
の物となった。
【0023】実施例4 炒糠に6%食塩水を加え、糠濃度12%の糠混合物と
し、80℃に加熱して糠由来の微生物を殺菌した。これ
を40℃以下に冷却してから、糠混合物100部に対し
て冷凍保存しておいた磨砕生キュウリ及び磨砕生キャベ
ツを凍結状態で2部ずつ加えた。緩っくり攪拌しながら
凍結した磨砕野菜を解凍すると同時に、粉末アミノ酸調
味料を1部加え、混合した。更に、糖化型アミラーゼ及
び酸性プロテアーゼをそれぞれ0.05部ずつ加え、3
0℃で24時間酵素処理して糠混合物とした。この糠混
合物に別に培養しておいたラクトバチルス プランタル
ム、ペディオコッカス ペントサセウス、サッカロミコ
プシス属、ピキア属及びキャンディダ属からなる乳酸菌
及び酵母を接種し、25℃で1カ月間時々攪拌しながら
発酵させた。発酵後、濾過助剤としてセライトを4%加
え、フィルタープレスにより固形分を除去した。固形分
を除去した発酵香味液に食塩を加え、食塩濃度10%と
した後、50%醸造乳酸と5%醸造酢酸を加えてpH
4.3に調整した。pHを調整後、チューブラヒーター
にて80℃で30秒間加熱殺菌し、一昼夜放置し、生じ
たオリを取り除いて糠漬用発酵漬液を得た。この糠漬用
発酵漬液に日干しした大根を2日間漬け、香味の優れた
沢庵漬を得た。また、これとは別に、この糠漬用発酵漬
液にナスビ及びキュウリを24時間漬けて、風味の優れ
た糠漬を得た。この糠漬は、茶漬けにすると香味が大変
よく、おいしいものとなった。
【0024】試験例1 糠50部と7%食塩水30部を混合した糠床を2組作
り、1組の糠床ではキュウリ、キャベツ、なすなどの野
菜を毎日漬け続け、他の1組の糠床ではなにも漬けず毎
日同じように手で混合する手入れを行なった。この間、
糠床における不飽和脂肪酸とODAX及びHODAの量
を経時的に測定した結果、図1〜図3のようになった。
なお、野菜を漬けなかった糠床におけるODAX及びH
ODAは、経過日数に関係なく認められなかった。
【0025】この結果から、野菜を漬けた糠床ではオレ
イン酸、リノール酸などの不飽和脂肪酸の量が経過日数
に比例して減少し、ODAX及びHODAが生じ、増加
したが、野菜を漬けなかった糠床ではこれらの不飽和脂
肪酸の量は、ほとんど減少せず、ODAX及びHODA
も生じなかった。
【0026】試験例2 150年間継続して用いられてきた熟成された糠床など
各地の家庭で使用されている糠床や、実験室で作成した
糠床で好ましい香味の糠漬が得られた糠床から分離した
乳酸菌及び酵母を、1種又は複数種を実施例1に記載の
糠混合物に接種し、20℃にて50日間発酵させたと
き、発酵糠混合物に生じた遊離の脂肪酸の組成を測定し
た結果、表1のようになった。
【0027】
【表1】
【0028】表1における脂肪酸組成の欄の16、1
8、20はパルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸の
飽和脂肪酸を、また18:1、18:2、18:3はオレイン酸、リ
ノール酸、リノレン酸の不飽和脂肪酸を各々表してい
る。また、ODOX及びHODAは、、オクタデカン酸
−10,13オキサイド及び10−ヒドロキシオクタデ
カン酸を表している。
【0029】また、微生物の種類の欄のa、b、c、
d、f、g、hは、各々トルロプシス属、キャンディダ
属、サッカロミコプシス属、ピキア属、サッカロミセス
属、ラクシバチルス プランタルム、ペディオコッカス
ペントサセウス、クレブシエラ属の菌を接種して発酵
したことを示し、対照では菌を接種せずに発酵したもの
である。また、f+gのように+記号でつないであるの
は、ラクシバチルス プランタルムとペディオコッカス
ペントサセウスを併用するなど、それぞれの菌を併用
したことを示している。
【0030】表1の結果に見られように、試験した菌
は、単体で用いた場合、ペディオコッカス ペントサセ
ウスでわずかに検出された他は、いずれも糠床の香味成
分の指標物質であるHODAの生成が認められなかっ
た。しかし、乳酸菌のラクトバチルス プランタルム、
ペデイオコッカス ペントサセウス、及び酵母のサッカ
ロミコプシス属、ピキア属、キャンディダ属などを併用
した場合、HODAの生成が認められた。
【0031】なお、ODOXやHODAが検出された発
酵糠混合物には、オレイン酸、リノレイン酸、リノール
酸などの不飽和脂肪酸の量が少なかった。この結果か
ら、不飽和脂肪酸から糠床の指標物質であるHODAな
どが生じたことが推測される。この推測は、試験例3の
結果とも一致する。
【0032】試験例3 実施例1に記載の本発明による糠漬用発酵漬液及び市販
の漬物用調味液に各々キュウリを4時間漬けた漬物を2
0名の専門パネラーに試食してもらい、どちらの漬物の
風味が優れているかの官能検査を行った結果表2のよう
になった。なお、市販の漬物用調味液は、その原料表示
から有機酸、アミノ酸、有機酸塩、食塩、甘味料などを
溶解したものと推測される。
【0033】
【表2】 この結果から、有意差1%で「本発明の糠漬用発酵漬液
を用いた方が風味がすぐれている」といえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】糠床におけるオレイン酸量の経時変化を示すグ
ラフ。●印は野菜を漬け続けた糠床の、○印は野菜を漬
けない糠床のオレイン酸量。
【図2】糠床におけるリノール酸量の経時変化を示すグ
ラフ。●印は野菜を漬け続けた糠床の、○印は野菜を漬
けない糠床のリノール酸量。
【図3】野菜を漬け続けた糠床におけるHODA及びO
DAXの量の経時変化を示すグラフ。●印はHODAの
量、○印はODAXの量。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 糠、食塩、野菜、グルタミン酸又はグル
    タミン酸を主成分とするアミノ酸混合物及び水を混合し
    た糠混合物を酵素で処理した後に、乳酸菌及び酵母を接
    種し、発酵させた後、固形分を除去した発酵香味液を配
    合することを特徴とする糠漬用発酵漬液の製造法。
  2. 【請求項2】 糠混合物の食塩濃度を3%以上10%以
    下とすることを特徴とする請求項1に記載の糠漬用発酵
    漬液の製造法。
  3. 【請求項3】 野菜として生野菜の磨砕物若しくは搾
    汁、又はこれらを凍結保存したものから選んだものを用
    いることを特徴とする請求項1に記載の糠漬用発酵漬液
    の製造法。
  4. 【請求項4】 生野菜の磨砕物若しくは搾汁、又はこれ
    らの凍結保存したものを糠混合物の0.1〜10%、好
    ましくは0.5〜2%加えることを特徴とする請求項1
    又は3に記載の糠漬用発酵漬液の製造法。
  5. 【請求項5】 乳酸菌としてラクトバチルス プランタ
    ルム、ペデイオコッカス ペントサセウスから、酵母と
    してサッカロミコプシス属、ピキア属、キャンディダ属
    から各々1種又は2種以上選んだものを用いることを特
    徴とする請求項1に記載の糠漬用発酵漬液の製造法。
  6. 【請求項6】 野菜としてキューリ及びキャベツを含む
    野菜を用いることにより、糠床風味の発酵香味液とする
    ことを特徴とする請求項1、3又は4に記載の糠漬用発
    酵漬液の製造法。
  7. 【請求項7】 野菜として大根及び大根葉を含む野菜を
    用いることにより、沢庵風味の発酵香味液とすることを
    特徴とする請求項1、3又は4に記載の糠漬用発酵漬液
    の製造法。
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