JP4574142B2 - 速醸糠床組成物 - Google Patents

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本発明は、糠床として用い得る組成物に関する。また、本発明は、当該組成物を用いて製造される糠漬けに関する。
糠漬け(糠みそ漬け)は、江戸時代から関東、中部、関西、四国、九州地方にいたる気候温暖な地域に親しまれてきた漬物で、その独特な香りと爽やかな酸味が大きな特徴である。この糠漬けは、「糠床」と呼ばれる床に日々新たに野菜を入れては取り出すことによってつくられ、一方で、そのことによって次第に糠床の風味も熟成されていき、糠漬けとしてのいっそう独特な美味しさが付与されるという、他の漬物には見られない特徴がある。つまり、このような糠漬けの独特の美味しさは、糠床を新しく調製しても直ちに出来上がるわけでなく、糠床独自の熟成が進行し、糠漬けに当該独特の風味が与えられるようになるには、毎日野菜を漬けては取り出すことを繰り返しても、最低、1ヶ月半から2ヶ月を必要とすることが知られている。
とりわけ、今井による詳細な研究により(日本食品低温保蔵学会誌、Vol.21、No.3、pp.161〜171(1995))、糠床の熟成には、微妙な成分変化と複雑な菌叢による精緻な発酵過程が関与していることが明らかとなっている。具体的に、今井等(日本農芸化学会誌)、57巻、p.1105(1983))によれば、生糠、食塩および水からなる新しく調製した糠床に、日々一定の野菜を漬けては取り出した場合に、調製当初は、土壌由来と考えられるエンテロバクター(Enterobacter)やクレブシエラ(Klebsiella)等のグラム陰性菌が約60%を占め、乳酸菌が15%程度、酵母は全く検出されない糠床の菌叢が、30日後には乳酸菌が優勢となり且つ僅かな酵母が検出されるようになり、60日後には、酵母が糠床の総菌数の30%程度を示すまでに変化することを示した。そして、そのような糠床の菌叢の変化に伴い、60日後の糠床では、糠床独特の香気が検出されるようになり、一方で、上記のように野菜を漬けなかった糠床においては、その菌叢の変化が全く異なり、糠床独特の香気の形成が認められなかったことを報告している。また、そのような菌叢の変化に伴う、糠床内の有機酸組成の変化について、前記野菜を日々漬けては取り出した糠床においては、最初の30日間で乳酸が一挙に生成されて、糖源不足になった糠床で飢餓状態となった微生物群がヘテロ型発酵を行って酢酸等を生成するようになり、特に、60日を経ると、明らかな酵母群の台頭とともにプロピオン酸の生成が顕在化し、そのようなプロピオン酸生成は、野菜を漬けては取り出した糠床においてのみ顕著であったことおよび2年或いは120年もの間良好に維持されてきた糠床においてもプロピオン酸が高濃度で検出されたことから、当該プロピオン酸の生成と糠床の熟成の関連が強く示唆されている。
更には、他の漬物との比較における糠漬けの大きな特徴は、それが糠床由来の脂肪分を含んでいるという点にある。まず、糠床から取り出した野菜を水洗した際にわかるように、糠漬けの表面には水をはじくような脂肪が存在し、当該脂肪の感触も糠漬けに独特の風味を与えている。また、糠床の脂質は、それ自体が分解して香気成分となると同時に、糠床中に形成された他の香気成分をも溶解し、従って、糠粒子と野菜の接触においては、野菜自身が持っているワックス層との間での香気成分の授受の場を提供する。今井等(農芸化学会誌、57巻、p.1113(1983))は、糠床の熟成過程における当該糠脂質の変化を精査し、野菜を日々漬けては取り出した糠床では、米糠のトリグリセリドが当初の30日間では顕著には分解されないが、60日以降では、前記の酵母、特に、サッカロミコプシス(Saccharomycopsis)属等の酵母由来のリパーゼによって急速に分解され、一方で野菜を漬けない糠床においてはそのような変化が観察されなかったと報告している。加えて、糠床の遊離脂肪酸についても、米糠本来の脂肪酸は、C18:1、C18:2やC16脂肪酸が優勢であるが、野菜を日々漬けた糠床においては、オレイン酸やリノール酸が60日〜120日目位までの間に急速に資化されて、熟成が進むにつれ糠床独特の遊離脂肪酸が新たに生成されることが見出された。とりわけ、これらの新生脂肪酸は、野菜を漬けない糠床では生成せず、一方で、120年以上も維持されてきた糠床についても特徴的な脂肪酸であったことから、今井等は、当該新生脂肪酸についても解析し、それらを、オクダデカン酸−10,13−オキサイドおよび10−ヒドロキシオクタデカン酸と同定している。これらの脂肪酸もまた、糠床を新たに調製し、野菜を日々漬けては取り出した後、60日を境に顕著に見出されるようになることから、当該新生脂肪酸も、糠床の熟成と密接に関連しているものと考えられている。
最後に、今井等は、およそ130年ものあいだ入念に「手入れ」されてきた糠床の香気成分の研究において、当該糠床では、前記LacrobacillusやPediococcusを含む乳酸菌や、Saccharomycopsis、Pichia、Candida等の酵母が関与して、実に39種のエステルと、13種の酸、23種のアルコール、9種のラクトン、8種のフェノール、2種のカルボニル化合物、13種の炭化水素および4種の含硫含窒素化合物等を含む特徴的な香気成分が各種の生合成過程を通して生成されることを解明している。
上記のとおり、糠漬けに独特の芳醇な風味を与える糠床は、短期間且つ容易に形成されるものではない。また、一旦、糠床独特の風味が形成された後でも、夏季などに「手入れ」を怠ると、糠表面に生育した腐敗性細菌等により「不精香」といわれる回復不能な悪臭が着臭するという難しい面を有している。
従って、従来、糠漬けは「家庭の漬物」であったが、今日の家庭環境の変化等に起因して、糠床の適切な維持、管理が出来なくなっている状況の下、家庭から消えつつある漬物といっても過言ではない。しかしながら、独特な香りと爽やかな酸味を有する糠漬けに対する需要は依然として大きく、現在、工業的に生産された糠漬けが市販されてはいるものの、それらの糠漬けは、単に糠風味の調味液漬けに糠をまぶした「糠まぶし」などの商品が圧倒的で、本格的な糠床による糠漬けは皆無といってよい状況である。
そのような実情において、より本格的な糠漬けを提供すべく数多くの研究がなされており、例えば、特許文献1には、糠に食塩、蛋白質分解物を加え、これに糠床から分離した乳酸菌、酵母などの菌を接種して発酵させた発酵糠を濃縮、乾燥したものを配合した糠漬けの素を用いて好ましい風味を有する糠漬とする方法が記載されている。また、特許文献2には、更に、上記のような漬物の素に、好ましい風味の糠床から分離した香気成分と同じ成分を加えて、当該漬物の風味を改良することが開示されている。加えて、特許文献3には、糠、食塩、グルタミン酸を主成分とするアミノ酸混合物に、キャベツ、胡瓜、大根、大根葉などから選んだ野菜の磨砕物又は搾汁及び水を混合し、酵素で処理した後、糠床から分離培養した乳酸菌及び酵母を接種し、発酵させてから固形分を除去した発酵風味液を配合した糠漬用発酵液の製造法が開示されている。また、特許文献4には、乳酸を生産する能力を有する微生物およびプロピオン酸を生産する能力を有する微生物と、γ−ドデカラクトンおよび/またはγ−ドデセラクトンを生産する能力を有するコリネバクテリウム属の特定の微生物で発酵させる糠漬け風味液の製造方法が開示されている。
しかしながら、上記のような米糠発酵液等は、野菜の青臭みをマスキングしたり、糠床独特の風味を生かして、より本格的な発酵風味を糠漬けに付与することに一定の成功を収めたが、それは、長期間、例えば数年以上も入念に手入れされた糠床の、より芳醇で独特な風味を醸し出すというまでには至らないのが現状である。とりわけ、特許文献3にも記載のとおり、そのような風味を引き出すには、やはり30乃至50日間程度の発酵を要するものであった。
特開昭56−109548号公報 特開昭56−121452号公報 特開平8−126467号公報 国際公開公報WO99/62347号パンフレット
従って、本発明は、糠漬けの製造に用いることのできる、独特でいっそう本格的な風味を有する糠床組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。特に、工業的な生産に適した、極めて短期間のうちに且つ簡便に本格的な糠床の風味を熟成し得る、速醸性の糠床組成物の製造方法を提供することを目的とするものである。更に、本発明は、当該速醸糠床組成物を用いた糠漬けの製造方法をも提供する。
上記のとおり、従来の米糠発酵液等は、糠床としての適切な発酵を実現するために、主原料である糠と副原料である蛋白質分解物や野菜の磨砕物/搾汁等との複雑な混合物、或いはその酵素分解物に対し、乳酸菌および酵母を接種し、しかるのちに長期間の発酵を行って得られるものであった。本発明者等は、驚くべきことに、そのような発酵期間が、予め調製した米糠発酵液に対して新鮮な米糠を新たに混合し、更に、乳酸菌単独、或いは乳酸菌と酵母を同時に接種することで、僅か2乃至3日程度に短縮できることを見出し、且つそのようにして得られた組成物が、従来の米糠発酵液よりも優れた糠床独特の風味を醸し得ることを見出した。
従って、本発明の第1の側面は、米糠発酵液と米糠を含む混合物に対して、少なくとも1種以上の乳酸菌か、少なくとも1種以上の乳酸菌と少なくとも1種以上の酵母を接種して発酵させることにより得られる糠床組成物である。つまり、本発明の糠床組成物の好ましい製造方法は、
(1)米糠発酵液と米糠を混合し、
(2)工程(1)で得られた混合物に対して、少なくとも1種以上の乳酸菌、或いは少なくとも1種以上の乳酸菌と少なくとも1種以上の酵母を接種し、
(3)工程(2)で得られた接種物を15℃乃至37℃で、少なくとも2日以上培養する、
工程を含むことを特徴とする。
前記米糠発酵液と米糠を含む混合物中の、米糠発酵液と米糠の重量比が、1:1乃至1:5であることが好ましい。また、一般に、そのような混合物はペースト状であって、それに対して得られる組成物もペースト状であるが、当該混合物に対して、混合物全体の水分含量が80乃至85重量%となるように水を追加し、混合物を懸濁液状態として発酵を行うことも可能であり、また、そのようにして得られた糠床組成物もやはり液状の性状を有して、特に工業的な糠床組成物や糠漬けの製造において有利である。つまり、ペースト状の混合物を用いて、本発明のペースト状の糠床組成物を得るには、その発酵期間中、発酵物を少なくとも1日1回以下程度の頻度で慎重に攪拌(手入れ)する必要があるが、混合物を懸濁液状にしておけば、発酵期間中、単に発酵タンク内で緩やかに攪拌するだけで本発明の組成物を得ることができ、更に得られた液状組成物は、糠漬けの漬け込みにおいても簡便に用いることができる。
なお、発酵の基材となる前記米糠発酵液と米糠を含む混合物には、風味の調製等を目的として、所望により、グルタミン酸や昆布エキス等の呈味成分および/または唐辛子、生姜、陳皮、葫等の香辛料を添加することもでき、特に、食塩を添加するのも好ましい態様である。
また、発酵は、本来の糠床同様に、乳酸菌および酵母が主体で進行することが好ましく、特に、よく手入れされ、長期間維持されてきた糠床で優勢の、ラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス コリニフォルミス(Lactobacillus coryniformis)、ラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス ビリデッセンス(Lactobacillus vilidescens)、ラクトバチルス アリメンタリウス(Lactobacillus alimentarius)、ラクトバチルス ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ペディオコッカス ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ペディオコッカス アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、テトラジェノコッカス ハロフィラス(Tetragenococcus halophilus)、ロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、ロイコノストック デキストラニカム(Leuconostoc dextranicum)およびロイコノストック ラクティス(Leuconostoc lactis)から選択される乳酸菌、およびキャンディダ(Candida)属、トルロプシス(Torulopsis)属、ピキア(Pichia)属、ハイフォピキア(Hyphopichia)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、サッカロミコプシス(Saccharomycopsis)属およびにハンセヌラ(Hansennula)属に属する種から選択される酵母により行われるのが好ましい。従って、前記混合物に接種する微生物は、これらの菌叢からなり得る。特に好ましい乳酸菌としては、ラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)を挙げることができ、特に好ましい酵母としてはキャンディダ クルゼイ(Candida crusei)、トルロプシス エッチェルシイ(Torulopsis etchellsii)およびハイフォピキア バートニイ(Hyphopichia burtonii)が挙げられる。ただし、当該発酵における酵母或いはその酵母風味については、前記米糠発酵液からも十分に供給される場合があり、本発明の組成物の製造にあたっては、必ずしも上記のような酵母をスターターとして添加する必要がない。勿論、スターターとして乳酸菌と同時に酵母を接種するのは、上記のごとく、本発明の特に好ましい態様の一つである。
本発明の別の側面では、上記のようにして得られた糠床組成物を用いて漬け込まれた糠漬けが提供される。当該糠漬けは、極めて良好で、本格的な糠漬け独特の風味を有するにも拘わらず、簡便でより工業的な方法により製造することができる。具体的に、本発明の糠漬けは、前記のようにして得られた本発明の糠床組成物に対して、所望の青果類、例えば胡瓜や茄子、大根等を漬け込むだけで得ることができ、好適には、上記のような青果類を、1℃乃至35℃の温度で、1/3日乃至3日間、本発明の糠床組成物中に浸漬等すればよい。特に好適には、単に当該青果類を、本発明の糠床組成物とともに適切な包装材内に密封し、上記のような条件下で放置した後、そのまま包装形態の糠漬けとして流通させることができる。なお、そのような密封包装形態の糠漬けでは、発酵に用いた米糠発酵液/米糠含有混合物中の栄養源が十分に消費し尽くされていないと、流通中での乳酸菌や酵母の追加的発酵による過剰のガス生成で、密封包装された製品が膨張することがある。しかしながら、本発明においては、本発明の糠床組成物の発酵期間を、その独特の風味が十分に生成する期間よりは若干長め、例えば4日以上に設定することで、そのようなガス生成による包装体の膨張も抑制することができ、これは、当該密封包装製品を、常温で長期間流通させる場合において、特に有利な態様である。
本発明によれば、糠漬けの製造に用いることのできる、独特でいっそう本格的な風味を有する糠床組成物およびその製造方法が提供される。特に、工業的な生産に適した、極めて短期間のうちに且つ簡便に本格的な糠床の風味を熟成し得る、速醸性の糠床組成物の製造方法が提供される。更に、本発明によれば、当該速醸糠床組成物を用いた本格的な風味の糠漬けが提供される。
本発明の糠床組成物は、従来の米糠発酵液にはない糠床本来の優れた風味を醸成し得るという点と、当該優れた風味の付与が、僅か2日間程度と、工業的に十分許容できる期間と簡便な工程で達成し得るという点において、特筆すべき効果を有している。そして、当該、極めて優れた風味の短期間での付与は、従来技術のごとく米糠に各種栄養成分などを添加して、単にそれを長期間にわたり漫然と発酵させるのではなく、既に一度発酵された従来の米糠発酵液を用いて、別途、そこに新たな米糠を混合し、当該混合物において、乳酸菌および酵母の追加発酵を行わしめることで達成されるのである。
従って、本発明において用いられる米糠発酵液とは、従来技術で用いられてきた公知の米糠発酵液等を含むものであり、通常は1週間以上、好ましくは3週間以上に及ぶまで米糠を乳酸菌および酵母で発酵させて得られた糠床からの抽出液や、米糠を主体とする水性培養基材をもとにして、乳酸菌および酵母により発酵させた糠床様発酵液を指す。また、場合よっては、ペースト形態の米糠発酵物も、本発明に使用できる米糠発酵液に含み得、従って、本発明の米糠発酵液は、必ずしも液体性状のものに限定されないことが理解されるであろう。
当該米糠発酵液の非限定的な例としては、生糠10重量部に対して、水80.9重量部を添加し、更に所望により麦芽エキス0.1重量部、黒糖液0.5重量部、アミノ酸混合物0.5重量部、生野菜破砕物3.0重量部、食塩3.0重量部を混合し、そこに乳酸菌および酵母原としてそれらの菌の培養液(スターター前培養液)2.0重量部を添加して、30℃で1乃至3週間発酵を行ったもの(糠床様発酵液)を挙げることができる。或いは、当該発酵液の保存性を高める必要がある場合には、当該発酵液に対して10重量%程度の食塩を添加してもよく、更には、それを75℃前後まで加熱することにより静菌したものを用いてもかまわない。勿論、前記特許文献3等に記載の糠漬用発酵漬液(糠床抽出液)等を用いることも可能であり、当該文献に記載の内容も、引用することにより本明細書に組み込まれる。
本発明においては、上記のとおり、まず、上記米糠発酵液と米糠が混合される。本発明に用いる米糠としては、いずれも市販されているいわゆる生糠やいり糠を用いることができるが、生糠を用いるのが特に好ましい。本発明における米糠発酵液と米糠は、単純にそれらを攪拌等することにより容易に混合可能であり、当該混合自体は、当業者において周知慣用のいずれの方法を用いてもかまわない。例えば、米糠発酵液と米糠がペースト状の混合物を与える場合、それらをニーダー型ミキサーのような慣用の攪拌機により混合してもよく、また単に手作業により混合しても差し支えない。或いは、後述のように、米糠発酵液と米糠に過剰の水を加えて、本発明の糠床組成物を液状物として得る場合においては、発酵用のタンク内に米糠発酵液、米糠および当該過剰の水分を投入し、それらを該タンク内で攪拌すればよい。
本発明の糠床組成物の製造においては、前記米糠発酵液と米糠の混合比についての特に厳格な制限はないが、それらの混合物を基材とした乳酸菌および酵母のより短期間での発酵を達成する上で、該混合比を適切な範囲に設定することがより好ましく、一般的に、当該米糠発酵液と米糠との混合物中の重量比を、1:1乃至1:5前後の範囲に設定することが好ましい。
前記のように、本発明の糠床組成物の製造において使用できる米糠発酵液は、糠床抽出液や糠床様発酵液或いはペースト状の米糠発酵物からも任意に選択することができるが、一方で当該抽出液或いは発酵液/発酵物の水分含量は、その由来や製法等により大きく変化し得る。従って、生糠などの水分含量は比較的一定であるとしても、用いる米糠発酵液の水分含量およびそれと生糠との混合比によっては、それらの混合物の水分も結果として変化することになり、よって、本発明の糠床組成物の製造においては、当該混合物の水分含量を調整することが好ましい場合がある。特に、一般的な糠床は、その水分含量がほぼ60乃至75%程度のペースト状であり、従って、本発明の糠床組成物もそのようなペーストとして製造する場合、前記混合物の配合によっては、一定量の水が当該混合物に添加され得る。
例えば、ペースト状の本発明の糠床組成物を製造する場合、水性の米糠発酵液と米糠を重量比で1:1程度の割合で混合し、そこに米糠とほぼ等重量の水を添加することができる(米糠発酵液:米糠:水≒1:1:1)。或いは、水性の米糠発酵液の約1重量部に対して、米糠を約2重量部混合する場合には、やはり水を約2重量部程度添加することも好ましい(米糠発酵液:米糠:水≒1:2:2)。
更に、前述のように、本発明の糠床組成物が水性のものとして製造される場合においては、当該組成物自体の製造のみならず、当該組成物を用いた糠漬け自体の製造も極めて簡略化し得る。そのような水性糠床組成物は、前記混合物に対して更に過剰の水分を添加し、それを懸濁液状にして、続く発酵を行わせることで製造することができる。例えば、そのような水性の糠床組成物は、過剰の水を加えることで、その水分含量を80乃至85重量%程度の懸濁液と成した米糠発酵液/米糠混合物をもとにして発酵させ、製造することができる。当該懸濁液状の混合物は、例えば、米糠発酵液の約8重量部に対して米糠を約12重量部混合し、そこに約70重量部程度の水を添加することにより簡便に調製することができる。
加えて、本発明の糠床組成物を製造する際の米糠発酵液と米糠の混合物には、所望により、各種の呈味成分および/または香辛料を添加することができる。特にグルタミン酸やグルタミン酸等のアミノ酸を含む天然の呈味成分、とりわけ昆布由来の呈味成分の添加は興味深い。昆布粉或いは昆布片としても添加され得る昆布由来の呈味成分には、乳酸菌や酵母の発酵にとって必要なミネラル分が豊富に含まれている他、糠床独特の風味形成に効果的なグルタミン酸を中心とする各種のアミノ酸が含まれており、それらの供給源としての意味合いは大きい。前掲の今井の総説(日本食品低温保蔵学会誌、Vol.21、No.3、pp.161〜171(1995))においても説明されているように、よく熟成した糠床においてはプロピオン酸が優勢であり、その他、酪酸等の低級脂肪酸や低級アルコールも糠床独特な風味の形成に貢献すると考えられている。当該プロピオン酸は、グルタミン酸からクエン酸−オキザロ酢酸回路を経て、アスパラギン酸からホモセリン、トレオニン、α−ケト酪酸、プロピオンアルデヒドの化合物を経由し、最終的にプロピルアルコールとともに生成されると考えられる。また、酪酸やブチルアルコールも、α−ケト吉草酸経由で遊離アミノ酸から生成されると考えられており、加えて、イソ酪酸とイソブチルアルコールはバリンから、イソ吉草酸とイソアミルアルコールはロイシンから、2−メチル酪酸と2−メチルブチルアルコールはイソロイシンから形成されるとされている。更には、当該酪酸やプロピオン酸等の低級脂肪酸、そしてこれらに対応する低級アルコールは、糠床特有の好ましい香気の重要な因子である各種エステル類の生成へとつながり、プロピオン酸プロピル、酢酸プロピル、酪酸プロピルおよびイソ酪酸プロピル等に代表される香気成分を提供するのである。いずれにしても、グルタミン酸を中心としたアスパラギン酸、バリン、ロイシン或いはイソロイシン等の各種アミノ酸の糠床香味付与への寄与は大きく、従って、昆布片等は、家庭での一般的な糠床においても重要な要素となっている。また、糠床の風味を更に修飾する目的で、所望により、付加的な香辛料類、例えば、唐辛子、生姜、陳皮、葫等を添加するのも好ましい態様である。
特に好ましくは、本発明の米糠発酵液/米糠の混合物に対し食塩を添加する。食塩は、製造された糠床組成物の浸透圧を適切に維持する上で重要であり、且つ当該糠床組成物を用いて漬けられた糠漬けの風味を向上させるためにも重要である。更には、得られた本発明の糠床組成物において有害な腐敗菌の生育を阻止する上でも食塩添加の役割は大きい。ただし、当該目的からすれば、食塩を発酵前の米糠発酵液/米糠混合物に一時に添加する必要は必ずしもなく、また、当該発酵終了後に添加することも可能である。発酵前の米糠発酵液/米糠混合物に食塩を添加する場合、当該食塩の濃度は、混合物全体の4乃至6重量%程度に設定されるのが好ましい。
本発明においては、上記のようにして調製した米糠発酵液と米糠を含む混合物が、少なくとも1種以上の乳酸菌を接種することで発酵される。乳酸菌は、通常のよく手入れされた糠床において見出されるものならばいずれの種を用いてもかまわないが、代表的には、ラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス コリニフォルミス(Lactobacillus coryniformis)、ラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス ビリデッセンス(Lactobacillus vilidescens)、ラクトバチルス アリメンタリウス(Lactobacillus alimentarius)、ラクトバチルス ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ペディオコッカス ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ペディオコッカス アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、テトラジェノコッカス ハロフィラス(Tetragenococcus halophilus)、ロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、ロイコノストック デキストラニカム(Leuconostoc dextranicum)およびロイコノストック ラクティス(Leuconostoc lactis)等の種が用いられる。
また、本発明の米糠発酵液/米糠混合物の発酵においては、上記の乳酸菌とともに少なくとも1種以上の酵母も同時に接種されるのが好ましい。繰り返し述べたように、本来の糠床においては乳酸菌と酵母が主体となって発酵過程が進行する。従って、前記混合物においても、乳酸菌と酵母を同時に接種するのが好適であることが容易に理解されるであろう。にも拘わらず、本発明において必ずしもそのような酵母の積極的な接種が必須ではないのは、混合される米糠発酵液が既に十分発酵しており、糠床独特の発酵をなさしめる酵母を十分に含んでいる場合があるからである。一方で、上記のとおり、本発明の糠床組成物の製造においては、主に有機酸生成の観点から、乳酸菌の接種が必須である。おそらくは、混合すべきよく熟成された米糠発酵液中での、乳酸菌と酵母のバイアビリティーの相違に関連があると推測される。とはいえ、やはり安定的な発酵を達成するには、酵母を同時に接種しておくに越したことはなく、それ故、酵母の同時接種は、本発明の好適な態様と言い得る。
接種すべき好適な酵母としては、キャンディダ(Candida)属、トルロプシス(Torulopsis)属、ピキア(Pichia)属、ハイフォピキア(Hyphopichia)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、サッカロミコプシス(Saccharomycopsis)属およびにハンセヌラ(Hansennula)属に属する種からなるものが挙げられ、特に、キャンディダ クルゼイ(Candida crusei)、トルロプシス エッチェルシイ(Torulopsis etchellsii)およびハイフォピキア バートニイ(Hyphopichia burtonii)を非限定的に例示できる。
上記のような乳酸菌または乳酸菌と酵母の接種は、単にそれらの菌体製剤、例えば菌体の凍結乾燥物を添加する形で行なってもよく、或いは、それらの菌を別個にまたは一緒に適切な培地内で前培養し、栄養増殖体の形で当該培養液として接種してもよい。当該菌体製剤の調製や前培養は、当業者に周知慣用のいずれの方法で行ってもよく、従って、それらの調製等は、当業者において容易であろう。好ましくは、接種される菌が、米糠組成物と米糠を含む混合物中に、10乃至10個/gの割合、より好ましくは10乃至10個/gの割合で接種されるのがよい。
かくして、乳酸菌或いは乳酸菌と酵母を接種された混合物は、適切な温度、例えば15℃乃至37℃の温度、より好ましくは30℃前後の温度で発酵させられる。発酵期間中の過度の攪拌は、乳酸生成などの好ましい糠床発酵を阻害する怖れがあるために避けられるべきである。例えば、ペースト状の発酵物の場合、攪拌は、1日1回以下程度の頻度で緩やかに行われるべきである。水性混合物における発酵では、培養タンク内において、緩やかな攪拌がなされるべきであり、過度の高速攪拌は好ましくない。
本発明の糠床組成物の特徴の一つには、その発酵期間が極めて短期間であることが挙げられる。しかして、本発明の糠床組成物は、上記の混合物を、若干、2乃至3日間程度発酵させるだけで得ることができる。勿論、場合によっては、それ以上の長い期間発酵させることもできるが、風味の点においては、そのような長期間の発酵で得るところは少ないと思われる。
むしろ、長期間、例えば4日間を越え、場合によっては3週間にも渉るような発酵では、米糠発酵液/米糠混合物中の残余の資化源が消尽されるという点において大きなメリットがある場合がある。つまり、本発明に係る糠床組成物は、糠漬けの工業的な製造において好適に使用されるのであるが、当該工業的な製造の一態様として、本発明の糠床組成物と青果などを予め一緒に流通用のプラスチックバッグに詰め、脱気後、密封シールして、10℃前後の冷蔵室に24時間前後放置し、それにより糠漬けの製造を行わしめると同時に、当該漬け終えた製品を、そのまま、略常温にて流通させることができる。その際、糠床組成物中に、乳酸菌および酵母のための資化源が残存していると、該常温流通時に、それらの乳酸菌および/または酵母の追加的な発酵が進行し、場合によっては過剰のガスが生成される場合がある。当該ガスの生成は、袋詰された糠漬け製品の外観を、膨張により著しく損ねるばかりか、場合によっては袋詰製品の破裂を生じかねず、好ましくない。そこで、そのような密封糠漬けの製造に製しては、本発明の糠床組成物中の乳酸菌および/または酵母の資化源が消費され尽くしていることが好ましく、比較的長期間、例えば4日間以上の発酵を経た本発明の糠床組成物は当該目的において極めて有利である。
以上、説明したとおり、本発明の糠床組成物は、極めて良好な風味を有する糠漬けの製造において各種の特筆すべき利点を提供する。ここで、本発明に係る糠床組成物を利用した糠漬けは、簡単には、本発明の糠床組成物と、漬物とされるべき青果類を十分に接触させるだけで製造できる。上記、袋詰態様をも含む非限定的な本発明の糠漬け製造方法の例は、胡瓜、茄子、大根、カブ、ミョウガ、キャベツ、瓜、人参等の青果類を、当該青果類を被覆するのに十分量の本発明の糠床組成物に、接触、埋没或いは浸漬させ、それを、1乃至30℃、好ましくは5乃至30℃、より好ましくは25℃前後で、少なくとも8時間程度、好ましくは12時間、いっそう好ましくは24時間前後放置することからなり得る。勿論、該漬け置き時間は、その際の温度に依存して適宜変更することもできるが、一般的には、前記の青果を、本発明の糠床組成物に、1℃乃至30℃の温度で、1/3日乃至3日間浸漬する。かくして、本発明の優れた風味を有する本格的な糠漬けが提供されるが、当該糠漬けの製造における、当業者に周知の製法の改変および/または修飾、例えば漬けるべき食材や、温度、期間の変更、追加の呈味成分等の添加等が、本発明の精神を逸脱しない限りにおいて、本発明に包含されることは言うまでもない。
更に説明せずとも、これまでの説明を与えられた当業者は、本発明を充分に活用し得る。以下、説明のみの目的で実施例を与える。
本実施例は、本発明の各種態様の糠床組成物の製造例を与えるものである。実施例中、特に断りのない限り濃度(%)は重量%を表す。
製造例1
表1の原料をニーダー型ミキサーにより混合して、米糠発酵液および米糠を含む混合物を調製した。該混合物に対し、スターターとして、糠床より分離され、ラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)およびペディオコッカス ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)と同定された2種の乳酸菌の凍結乾燥菌体製剤と、同じくキャンディダ属の酵母1種の凍結乾燥菌体製剤を、混合物1gに対しそれぞれの菌数が10乃至10個となるように添加することで、当該菌を接種した。その後、毎日1回、発酵中の混合物を攪拌し、30℃で2日間発酵させた。
Figure 0004574142
なお、表1中、(注1)の糠床用シーズニングは、昆布、唐辛子を主体とし、生姜パウダー・陳皮パウダー等を混合したものである(商品名:「糠床シーズニング」、MCフードテック株式会社製、以下の製造例について同じ)。また、同表中、米糠発酵液は、生糠10重量部に対して、水80.9重量部を添加し、更に麦芽エキス0.1重量部、黒糖液0.5重量部、アミノ酸混合物(商品名「酵味ペースト」、武田キリン株式会社製)0.5重量部、生野菜(胡瓜)破砕物3.0重量部、食塩3.0重量部を混合し、そこに前記と同様の乳酸菌および酵母原の前培養液2.0重量部を添加して、30℃で2週間発酵を行ったものである(以下の製造例において同じ)。
製造例2
表2の原料により米糠発酵液と米糠を含む混合物を調製した。当該混合物において、上記製造例1で用いた乳酸菌および酵母の前培養液(2種の乳酸菌と酵母が各々10個/g(乳酸菌)および107個/g(酵母)のレベルになるまで前培養)の3.0重量部を発酵スターター(スターター溶液)として添加した。その他の条件につき、発酵を3日間継続する以外は、製造例1と同様にして本発明の糠床組成物を得た。
Figure 0004574142
製造例3
表3の原料により本発明の水性の糠床組成物を得た。原料を発酵タンク内で混合し、製造例2と同様のスターター溶液3.0重量部を添加して発酵を開始した。発酵は、タンク内で培養物を緩やかに攪拌することにより行い、30℃で4日間実施した。
Figure 0004574142
製造例4
表4の原料により、更に発酵を長期化して、乳酸菌および/または酵母の栄養源を消費させ尽くした、常温流通のための密封包装される糠漬け用糠床組成物を得た。表4の原料は表2と同一であり、発酵を30℃で3週間継続し、発酵4、7、14、21日目で、発酵物を穏やかに攪拌した。
Figure 0004574142
本実施例は、本発明の糠床組成物による糠漬けの優れた風味を実証する官能評価結果を示す。
方法
本発明の糠床組成物で漬けた胡瓜の糠漬け(基準品)をもとにして、市販の糠漬け、市販の糠床により漬けた糠漬け、市販の米糠発酵調味液により漬けた糠漬け(比較品)との官能対比を行い、本発明による糠漬けとの官能評価値の相対差により、本発明の糠漬けの優れた風味を示す。
基準品:本発明の糠床組成物(製造例2のもの。以下、「速醸糠床」と略す。)で漬けた胡瓜の糠漬け。
比較品:「市販糠漬け製品」、「市販糠床」で漬けた胡瓜の糠漬け、「市販米糠発酵調味液A」を使用した胡瓜の糠漬け、「市販米糠発酵調味液B」を使用した胡瓜の糠漬け。
準基準品:本発明の糠床組成物(製造例3のもの。以下、「速醸糠床(液状タイプ)」と略す。)で漬けた胡瓜の糠漬け。
胡瓜の漬け込み方法
(1)「速醸糠床」、「市販糠床」、「速醸糠床(液状タイプ)」については、糠床:胡瓜=0.7:1(重量比)で袋詰めし、脱気シール後、10℃で24時間漬け込む。
(2)「市販米糠発酵調味液A」、「市販米糠発酵調味液B」については5%食塩濃度になるように希釈液を調整し、調味液:胡瓜=0.7:1(重量比)で袋詰めし、脱気シール後、10℃で24時間漬け込む。
試食官能評価
上記の方法で漬け込んだ糠漬けおよび「市販糠漬け製品」を試食して官能評価する。官能評価は、基準品とした本発明の「速醸糠床」による糠漬けと、上記比較品の各1種について、パネラー1人に対しそれぞれ3切れずつ準備し、それらを試食・比較してもらう(7点評価法)。パネラーはn=10とする。
評価については以下のような質問項目を記入した調査書を準備し、評価結果を点数として記入してもらう。
Figure 0004574142
記入する点数は、比較品が基準品、即ち本発明の糠漬けに対して良いか悪いかを示す。比較品が基準品と同等の場合が0点、比較品が基準品より悪い場合は−1〜−3点(より悪い方が低い)、比較品が基準品より良い場合は+1〜+3点(より良い方が高い)とした。以下のテスト区による組み合わせで比較した。
Figure 0004574142
結果
以下の表5はパネラー10人の上記官能評価結果の平均点(n=10)を示す。
Figure 0004574142
また、上記の結果を、プロファイル図形として、図1乃至5に示した。これらの結果から以下のことが示された。
<テスト区I>:市販の糠漬け製品より本発明の「速醸糠床」で漬けた糠漬けは、糠漬けとして香りも味も優れていた。
<テストII>:市販糠床で漬けた糠漬けは、糠床で漬けたために胡瓜の青臭さがないという点ではほぼ同等であったが、それ以外の味や風味等、他の5要因に関しては本発明の「速醸糠床」のほうが有意に優れていた。
<テスト区III>:市販米糠発酵調味液Aは、本発明の「速醸糠床」を調製するする際の原料として用いた米糠発酵液(製造例1参照)であり、市販米糠発酵調味液Aで漬けた糠漬けもバランスが良い結果であったが、それを用いた本発明の「速醸糠床」は明らかに市販米糠発酵調味液Aより優れていた。
<テスト区IV>:市販米糠発酵調味液Bで漬けた糠漬けより本発明の「速醸糠床」で漬けた糠漬けは、糠漬けとして香りも味も優れていた。
<テスト区V>:本発明の「速醸糠床」とこれを液状タイプにしたものでは、わずかに液状タイプの方が味、風味で劣るものの、ほとんど変わらず、液状タイプにした糠床でも糠漬けとして十分であると判断された。
以上のとおり、全てのテスト区において、本発明の糠床組成物である「速醸糠床」で漬けた糠漬けは味のバランス、風味のバランス、総合的な美味しさの面で優れており、またほとんどのテスト区において香りの面でも優れていた。よって、本発明に係る糠床組成物で漬けた糠漬けは、糠漬けとして美味しさ、香りで優れており、且つそのような本格的な風味が、工業的にも十分に許容できる短期間かつ簡便な方法で提供され得ることが示された。
今日、家庭から消えつつ本格的な糠漬けを工業的に、しかも極めて短期間かつ簡便な工程で供給し得ることの産業的な意味は、その文化的な側面とともに、大きい。
図1は、本発明の糠床組成物(基準)による糠漬けと、市販糠漬け製品(比較)の官能検査結果を示す。 図2は、本発明の糠床組成物(基準)による糠漬けと、市販糠床による糠漬け(比較)の官能検査結果を示す。 図3は、本発明の糠床組成物(基準)による糠漬けと、市販発酵調味液Aによる糠漬け(比較)の官能検査結果を示す。 図4は、本発明の糠床組成物(基準)による糠漬けと、市販発酵調味液Bによる糠漬け(比較)の官能検査結果を示す。 図5は、本発明の糠床組成物(基準)による糠漬けと、本発明の液状タイプの糠床組成物による糠漬け(比較)の官能検査結果を示す(参考例)。

Claims (5)

  1. 米糠発酵液と新鮮な米糠を含む混合物に対して、少なくとも1種以上の乳酸菌を接種して発酵させることにより得られる糠床組成物。
  2. 更に、少なくとも1種以上の酵母を接種して発酵させることにより得られる請求項1に記載の糠床組成物。
  3. 前記混合物中の米糠発酵液と新鮮な米糠の重量比が、1:1乃至1:5である請求項1または2に記載の組成物。
  4. 青果を、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の糠床組成物に漬け込むことを特徴とする、糠漬けの製造方法。
  5. 青果を、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の糠床組成物とともに密封包装することによる請求項4に記載の糠漬けの製造法であって、但し、該糠床組成物は、少なくとも4日以上発酵させた糠床組成物であり、該糠漬けが、糠床組成物とともに密封包装されたまま流通される、前記方法。
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