JPH0725767B2 - キヌクリジン誘導体 - Google Patents

キヌクリジン誘導体

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JPH0725767B2
JPH0725767B2 JP9842986A JP9842986A JPH0725767B2 JP H0725767 B2 JPH0725767 B2 JP H0725767B2 JP 9842986 A JP9842986 A JP 9842986A JP 9842986 A JP9842986 A JP 9842986A JP H0725767 B2 JPH0725767 B2 JP H0725767B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、新規スピロ(1,3−オキサチオラン−5,3′)
キヌクリジンおよびこれらの新規化合物の製造法、並び
にこのスピロ−化合物を含有している中枢神経系疾患治
療用の薬剤組成物に関するものである。
〔従来の技術および発明が解決すべき問題点〕
米国特許第4,083,985号には、精神的運動刺激剤として
使用できる一連の縮合環キヌクリジンが記載されてお
り、これらは構造的に、シクロヘキサノン、シクロヘキ
セノンまたはδ−ラクトン部分に縮合されたキヌクリジ
ン核とみなすことができる。これらの化合物は、パーキ
ンソン氏病および抑うつ状態の治療に有用であると述べ
られており、確かに抗コリン作用活性を有する。この特
許にはこれらの化合物のいずれかがコリン作用活性を有
することについて述べられていない。
米国特許第4,104,397号には、ジオキソラン環の2−位
に1つまたは2つのアルキルおよび/またはアリール置
換基を持つものであつてもよいスピロ(1,3−ジオキソ
ラン−4,3′)キヌクリジンが記載されている。この特
許には、特にモノメチル、ジメチルおよびジフエニル化
合物が記載されている。モノメチル化合物は、コリン作
用活性を持ち、ジフエニル化合物は抗コリン作用活性を
持つことが示されている。この特許に包含された他の化
合物によつて示される薬理学的活性の特徴については何
ら記載されていない。
中枢コリン機能、即ち、神経伝達物質としてのアセチル
コリンの機能の生体内におけるコリン欠乏症はアルツハ
イマー病タイプの老人性痴呆症(SDAT)、晩発性運動異
常症、ピツク病、ハンチントン舞踏病、ジル・ド・ラ・
トウレツト症候群、フリードリヒ失調症、および染色体
異常症候群を含む、種々の神経系および精神病学上の病
気を招く。診療データは、これらの病気にかかつた人々
はコリン作用伝達が損傷されていたことを示している
(Fisher及びHanin,Life Sciences,27:1615,1980参
照)。
これらの病気のうち、SDATが最も広くいきわたつている
神経精神病である(Schneck et al,Am.J.Psychiatry,13
9:165,182およびCoyle et al,Science 219:1184,1983参
照)。SDATの有効な治療法の開発は、今日の医学が直面
している最も切迫した要求の一つである。この年令に関
係ある病気は、老令人口の平均寿命が累進的に上昇する
のに伴つて老年の人口が成長するので、ますます流行す
るようになつてきた。
SDATは形態学的には特定の頭脳帯域における老化により
プラクの数が増え、生化学的には同じ頭脳帯域特に皮質
および海馬状隆起におけるシプナス前部のコリン作用性
マーカーが著しく低下しているものであり、さらに行動
的には各々の患者が認識機能を失つているということに
なる。
SDATは脳のコリン作用性機能低下を伴うので、SDAT患者
にACh先駆物質(コリンまたはレシチン)、アセチルコ
リンエステラーゼ抑制剤(フイソステイグミンまたはテ
トラヒドロアミノアクリジン)または直接作用するムス
カリン操作用薬(アレコリン)を投与する試みがなされ
ている。これらの薬剤は、脳の中におけるコリン作用性
活性を上昇させ、回復させる能力がある。現在まで、上
記の薬剤による治療の効果は決定的なものでなく、好ま
しくない副作用があつたり、治療範囲が狭かつたり、治
療上の効力が欠けていた。
従つてSDATの治療に有効な薬を早急に開発する必要があ
る。この分野の発展は、、SDATにおいて起るコリン作用
性の異常を直接模倣することのできる適当な動物のモデ
ルがないこと、また感覚器官のサブクラスを識別するこ
とができ、主に認識機能に含まれるサブクラスを活性化
することのできる長期作用性中枢コリン作用薬の不足に
よつてはばまれてきた。公知のコリン性作用薬(ムスカ
リン操作用薬)の、ほとんどは副作用があり好ましくな
い。末梢の副作用のない、長期作用性の中枢活性コリン
薬が最も有効である。そのような薬の研究開発は、SDAT
について適当な動物モデルを使用して評価する必要があ
る。
これに関連して、本発明者等は最近、選択的シナプス前
部のコリン作用性神経毒素、エチルコリンアジリジニウ
ムイオン(AF64A)を開発したが、これをラツトに内部
脳室注射すると外皮および海馬状隆起のコリン作用欠乏
症およびSDATにおいて報告された認識障害を模倣する永
続的コリン作用性機能低下を誘発する。この動物モデル
はSDATについての新規治療法の開発に非常に有用である
といえる(Spiegelste inおよびLevy編「Behavorial」M
odels and the Analysis of Drug Action」1983年、Els
evier,Amsterdamの333頁のFisherらの記述およびFisher
and Hanin,Ann,Rev,Pharmacol.Toxicol.,26:161−81
(1986)参照)。
ラットにおいてAF64Aによつて誘発された認識障害を、
重大な末梢への有害な副作用なしに回復させることので
きる長期作用性の中枢コリン作用活性を持つ主に活性の
ムスカリン系化合物は、SDATおよび上記の関連する疾病
の状態の治療に非常に有効に利用することができる。
治療活性のあるオキサチオラン化合物およびそれらの薬
理学的特性はほとんど知られていない。しかしながら薬
理学上活性のある化学物質中の特定原子または基を、予
想された類似の原子または基に置きかえて、原化合物の
治療効果を改良しようとする試みが数多くなされてきた
が成功していない。このように酸素原子を酸素の原子質
量の2倍の硫黄原子によつて置換した場合、薬理学上の
作用を、正確に予測することは全く不可能である。
ところが、本発明者等は驚くべきことに以下のことを見
出した。この発見は本発明の基礎をなすものである。す
なわち米国特許第4,104,397号のスピロ(ジオキソラ
ン)キヌクリジンの場合、キヌクリジン核からさらに遠
くはなれたジオキソラン環の酸素原子を硫黄原子によつ
て置換し、同時に2位のその置換基の範囲がジアリール
メチロールおよびアリールで置換されたアルキルを含む
まで広がつていれば(i)モノメチル化合物の最も活性
のある異性体は(モルモツト回腸誘発収縮およびムスカ
リン受容体結合テストによつて測定された)、活性は変
らないが、上記の米国特許中に記載された類似物の最も
活性のある異性体の副作用より同一の条件下においてか
なり低い副作用(唾液およびふるえ活性)を示し、また
(ii)モノメチル化合物の最も活性のある異性体は上記
の動物モデルでの実験で示されるように、SDATの治療に
ついて興味ある可能性をもつものである。
他方、上記のように酸素の位置に硫黄を含有している他
の2−置換体の大多数、特に1つ以上の、3以上の炭素
原子を持つアルキル、シクロヘキシル、アリール、ジア
リールメチロールまたはアリールによつて置換されたア
ルキル基の2−置換基を含むこれらの化合物は、モノメ
チル化合物のコリン作用性活性とは異なり、抗コリン作
用性活性を持つものである。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明は、一般式(I) (式中、R1およびR2は同一であつても異なるものであつ
てもよく、各々、アルキル、シクロペンチル、シクロヘ
キシル、アリール、ジアリールメチロールまたは1つ以
上のアリール基で置換されたアルキルであるか、あるい
はR1およびR2の一方が水素であつてもよい。)を有する
キヌクリジン誘導体、およびその幾何異性体、対掌体、
ジアステレオマー、ラセミ体および/または酸付加塩を
提供するものである。
本発明の一つの具体例においては、式(I)中のR1およ
びR2の一方が水素であり、R1およびR2の他方がアルキ
ル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アリール、ジア
リールメチロール、または1つ以上のアリール基によつ
て置換されたアルキルである。
本発明の他の具体例では、式(I)のR1およびR2の一方
はアルキル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルで
あり、R1およびR2の他方がアルキル、シクロペンチル、
シクロヘキシル、アリール、ジアリールメチロール、ま
たは1つ以上のアリール基で置換されたアルキルであ
る。
さらにもう一つの具体例では、式(I)の中のR1および
R2の一方がアリール基であり、R1およびR2の他方がアリ
ール、またはジアリールメチロール、または1つ以上の
アリール基で置換されたアルキルである。
式(I)の化合物は、中枢神経系活性を持つものであ
る。これらの化合物は、2,2−置換スピロ(1,3−オキサ
チオラン−5,3′)キヌクリジンと名付けることができ
る。下記の表にこれらの非限定的具体例を示す。R1およびR2の一方 R1およびR2の他方 水 素 メチル (Ia) 水 素 エチル 水 素 プロピル 水 素 フエニル 水 素 1−ピレンプロピル 水 素 ジフエニルメチル(Ib) 水 素 ジフエニルメチロール メチル フエニル (Ic) エチル フエニル シクロヘキシル フエニル フエニル フエニル 上記のように、本発明には式(I)の化合物の幾何異性
体、対掌体、ジアステレオマー、ラセミ体および/また
は酸付加塩をも含むものである。
幾何異性は、本発明のスピロ−化合物において、R1がキ
ヌクリジン環の窒素原子のようにオキサチオラン環の同
じ側にあるから反対側にあるかにより生ずる。本発明の
スピロ−化合物において、R1とR2が同一である場合、5,
3′(スピロ)炭素で単一非対称があるので、その対掌
体およびラセミ体が生ずる。他方、スピロ化合物中のR1
およびR2が同一でない場合、オキサチオラン環の2位で
さらにもう一つの非対称となるので、すでに述べた幾何
異性体に加えて、そのジアステレオマーおよびラセミ体
が生ずる。さらに本発明の化合物が、3−ヒドロキシ−
3−メルカプトメチルキヌクリジンである場合、幾何異
性体はなく、キヌクリジン環の3位に非対称中心がある
ので、この場合は、対掌体およびラセミ体となる。
式(I)の化合物は、異性体化合物または化合物であつ
ても、各々単離された幾何または光学異性体であつて
も、有機酸または例えば塩酸のような無機酸と安定な付
加塩を形成する。治療法に使用する場合、このような塩
は薬学上使用可能なものであるべきであるが、例えば単
離のために使用する場合、薬学上使用可能でない酸の付
加塩を使用する方が都合のよいこともあり、本発明では
後者の酸付加塩にも関するものである。当該技術分野に
精通した者であれば、例えば製造工程からの単離によつ
て遊離塩のかたちで目的化合物が得られた場合、これら
は適当な酸と反応させることにより酸付加塩に変えるこ
とができ、逆に酸付加塩のかたちで単離された化合物
は、アルカリ属水酸化物のような塩基と反応させること
によつて、対応する遊離塩基に転化することができる。
幾何異性体は、一般に(上記の異性体またはそれらの塩
の)分別結晶、分別蒸留、または(高圧)または低圧液
体クロマトグラフイー法を利用した)カラムクロマトグ
ラフイーのような物理的方法により単離することがで
き、一方光学異性体は、光学活性のある補助試薬(本発
明の場合は光学活性酸で塩混合物をつくり、この混合物
を分別にかけ塩画分から目的とする光学異性体を単離す
る。
具体例において、本発明はR1およびR2の一方が水素であ
り、R1およびR2の他方がメチルである化合物の単離され
た幾何異性体(Ia)を提供するものである。これらの異
性体は、これらの塩酸との塩が全く別の比較的高い融点
および比較的低い融点を持つという事実によつて互いに
異なつている。本発明の製造法から単離された化合物
(Ia)の幾何異性体混合物の塩酸塩も、各々の幾何異性
体の塩酸塩と同様に本発明の範囲内に含まれるものであ
る。
本発明によれば、式(I)の化合物は、3−ヒドロキシ
−3−メルカプトメチルキヌクリジンを、式R1−CO−R2
で示されるカルボニル化合物と反応させ、反応混合物か
ら目的生成物を単離することからなる製造法によつて製
造することができる。製造はルイス酸のような酸触媒、
例えば三弗化ホウ素(ジエチルエーテルとの錯化合物の
かたちで便利に使用されている)の存在下に行うのが好
ましい。
上記の製造は好ましくは不活性有機媒体、例えばクロロ
ホルムまたはジクロロエタンの存在下に行うとよい。本
発明の製造法を行う際の温度は、特に制限はないが、高
温での分解および/または副反応の結果生ずる副生物で
目的生成物が汚染されないようにするため、納得のゆく
収率が達成できる、なるべく低い温度で行うのが明らか
に好ましい。本発明の製造法を、三弗化ホウ素エーテル
錯化合物のような触媒の存在下に行なう場合は、20〜30
℃の範囲の温度が好ましいが、これ以上およびこれ以下
の温度でもよい。約25℃の反応温度が好ましい。酸化に
よる望ましくない汚染をさけるためにも、反応は窒素の
ような不活性ガスの雰囲気下で行うのが好ましい。従つ
て、本発明の具体例では、式(I)の化合物の製造は、
3−ヒドロキシ−3−メルカプトプロピルキヌクリジン
を式R1−CO−R2のカルボニル化合物と20〜30℃の温度範
囲、好ましくは25℃で、触媒としての三弗化ホウ素エー
テル錯化合物の存在下に、有機媒体としてのジクロロメ
タンまたは/およびクロロホルムの存在下に反応させ、
反応混合物から目的生成物を単離することにより行う。
この製法の具体例においては、まず反応成分を窒素雰囲
気下に、−10〜20℃の温度、例えば0℃で混合してお
き、次にこの混合物を反応温度まで上げるのが好まし
い。
3−ヒドロキシ−3−メルカプトメチルキヌクリジン
は、3−メチレンキヌクリジンのエポキシドを硫化水素
とを反応させることにより製造される。反応は水酸化ナ
トリウムのような塩基の存在下、好ましくは水性媒体の
存在下に行うか、または硫化水素との反応を、例えば溶
媒媒体としてのジメチルスルホキシド(DMSO)+(クロ
ロホルムおよび/またはトルエン)中で行つてもよい。
エポキシドは、それ自体、キヌクリジン−3−オンのジ
メチルスルホニウムメチライドとの反応によつて製造す
ることができる。
本発明の、関連出発物質の製造法をも含めた、製造法に
ついては、好ましい実施例中および下記の反応図表中に
示す。
式(I)のスピロ−化合物は中枢神経系活性を持つ。例
えば、化合物(Ia)は、中枢神経系用としてすぐれた特
効のあるムスカリン作用薬である。その薬理学上の特性
により、この化合物はコリン作用系が機能亢進であるよ
うな条件下の活性中枢コリン作用機能を活性化するため
に使用することができる。従つて、この化合物は、アル
ツハイマータイプの老人性痴呆症(SDAT)、晩発性運動
異常症、ピツク病、ハンチントン舞踏病、ジル・ド・ラ
・トウレツト症候群、フリードリヒ失調症および染色体
異常症候群といつた病気の治療に、利用することができ
る。これらの病気はすべて、中枢コリン作用機能亢進に
ある程度関連がある障害である。この化合物は、SDAT用
の適当な動物モデルにおけるAF64A−誘発コリン毒性に
よる記憶の混乱を改復するのに有効であるので、SDATの
治療に特に有用であるようである。特に、その塩酸塩は
比較的低融点を持つものである、化合物(Ia)の幾何異
性体(そのシス−異性体)であつて、AF102Bというコー
ド番号を付したものは、受動的回避テスト、モーリス
スイミング メイズ(1978年発行のMomsによる、Learni
ng and Motivation,12巻,239−61頁参照)および8−−
アームラジアルメイズにおいて示されたように、AF64A
−処理ラツトにおける記憶損傷を回復する〔化合物(I
a)のもう一つの幾何異性体であつて、その塩酸塩は比
較的高い融点を持つものである。これはトランス−異性
体であり、AF102Aのコード番号を付した。〕。ここでAF
64A(3n mol/2μ/side,icv)は、ステップ−スルー受
動的回避テスト、モーリス スイミングメイズおよび8
−アームラジアルメイズにおいてかなりの認識損傷を誘
発する。(ニユーヨーク、Plenum Press発行、Fisher等
の編集によるAlzheimer's and Parkinson's Disease:St
rategies in Research and DevelopmentにおけるBrande
is等の記述および19866年発行のAnn.Rev.Pharmacol.Tox
icol.,26巻、161〜81頁参照)。
受動的回避およびスイミングメイズテストにおけるAF10
2Bの効果は低い投与量(0.1〜1mg/kg.,ipまたは1mg/k
g.,po)で起り、治療指数は各々、78〜780および>156
である。この治療指数は、フイソステイグミンのそれ
(5〜17)よりも広範囲にわたつている。さらに、急性
毒性曲線の傾斜は非常に急勾配であり、唾液分泌または
ふるえといつた副交感神経への影響を含む明白な行動上
の影響は致死量に達するまで認められなかつた。アレコ
リンとかオキソトレモリンとかのような周知のムスカリ
ン作用をSDAT治療に使用した場合には有害な副作用があ
り問題があるが、本発明の化合物はこれらと比較してこ
の点ですぐれている。さらにAF102Bは、上記の記憶テス
トにおいて長期間にわたつて活性を示すものである。
興味あることに、この化合物は経口投与によつて血液中
によく吸収され、その効力の開始は10〜15分である。こ
のことは、下記の薬理学上のテスト中において明らかで
あり、AF102Bによつて誘発された無痛覚症、低体温症お
よび致死の水準量は下記の薬理学テストによつて明らか
である。
フイソステイグミン(0.1mg/kg.,ip)と比較した場合、
AF102B(mg/kg.,ip)は、8−アームラジアルメイズに
おいてAF64A−誘発記憶損傷を改善することができる
が、同じ条件下でフイソステイグミンでは改善すること
ができないので、AF102Bはフイソステイグミンよりすぐ
れているといえる。
AF102Bによる場合、鎮痛テスト(マウス)および低体温
症テスト(ラツト)においても障害となる副作用がない
ことは注目すべきことである。上記の二つの薬理学テス
トは中枢ムスカリン活性を評価するためのテストであ
る。これらのテストにおいて、この化合物を多量に投与
した場合のみ、副作用が生ずる。しかしこのような投与
量は、ラツトにおいて受動的回避テストにおいてAF64A
−誘発記憶損傷を回復させるのに必要な量の少くとも腹
腔内注射(ip)で15〜150倍あり、経口投与(po)で40
倍多い量である。
生物学的に検討したところ、AF102Bは特に中枢活性のあ
るムスカリンM1−タイプの作用であり、本発明者等によ
つて認識された最初のそのような化合物である。この選
択性はラツトの脳のホモジネートからの〔3H〕−プレン
ゼピン、即ち〔3H〕−PNZ(M1−特異性拮抗薬)対
3H〕−キヌクリジニルベンジレート、即ち〔3H〕−QN
B(M1およびM2拮抗薬)の置換で評価した場合に明らか
になる〔1984年1月発行のTrends in Pharmacol.Sci(S
uppl)を参照〕。
この点について、主に皮質および海馬状隆起に見い出さ
れるM1−タイプのムスカリン受容体は、SDATにおいては
あまり変化しないことが判明した。(1985年発行のMash
等によるScience228:115〜117頁参照)SDATにおけるこ
れらの二つの脳帯域は、最も深いシナプス前部のコリン
作用機能亢進および組織学上の異常を示し、主に、SDAT
におい報告されている認識機能不全を伴うものである。
AF102Bのムスカリン受容体一般における、特にM1受容体
における特性は、(ラツトの脳のシノプトサム)からの
高親和コリン輸送における顕著な活性および(ラツトの
脳のホモゲネートからの)コリンアセチルトランフエラ
ード活性がないことからも明らかである。
AF102BM1−作用薬タイプの活性は、少くとも一部は、生
体内および生体外の両方においてAF102Bの高選択性の原
因であり得る(特にAF64Aにより誘発された認識損傷の
回復において)。
生体外におけるAF102Bに関する突然変異誘発について検
討したところ、高濃度に至るまで突然変異を誘発しない
ことが判つた。この化合物は高い治療指数を持つのでSD
ATの患者の治療用の有効な薬として使用できる。
AF102Bは、例えば、適当な希釈剤または担体中で希釈し
て注射によつて、または例えば特開昭61−186317号に示
された装置を使用することによつて、適当な媒体中で皮
膚を通して投与することができる。本発明のこの化合物
は、薬剤によつて誘発されたコリン作用の活性低下を防
ぐのにも使用できる。
化合物(Ia)は、幾何異性体のいずれかのかたちにある
ものでもそのような異性体混合物でも、緩やかな局部活
性の永続的コリン作用剤の利用を必要とする病気の治療
にも使用することができる。このようなコリン作用剤
は、緑内症のような病気に必要とされ、この化合物は、
アセチルコリン、例えばアセチル−およびブチリル−コ
リンエステラーゼを不活性にする酵素によつて破壊され
ない。この化合物は、重症筋無力症、膀胱機能不全、ア
デイ病、イートン−ランブレット病のような神経の末梢
のコリン作用性の病気の治療に使用することもできる。
式(I)のスピロ−化合物において、R1および/または
R2がプロピルまたはそれ以上のアルキル基、シクロペン
チル、シクロヘキシル、アリール、ジアリールメチロー
ルまたはアリールによつて置換されたアルキルである場
合、これらの化合物の薬理学上の活性の特性は、それら
が中枢神経系活性をもつている限りにおいては、変化
し、この活性はコリン作用性の代りにアンチコリン作用
性になる。このようなアンチコリン作用性化合物は、こ
れが一時的であれ、薬に誘発されたものであれ、コリン
作用の機能亢進による病気の治療に利用することができ
る。このような化合物はパーキソ氏病、擬似パーキンソ
ン氏病、精神機能低下の治療に、さらには補助薬とし
て、例えばアトロピンまたはスコポラミンの代りに使用
することができる。これらは、診断または治療のため長
期の散瞳が必要な場合に、眼科で使用することもでき
る。
本発明の詳細な説明および特許請求の範囲において使用
される「薬剤組成物」という用語は、人間および/また
は家蓄の治療用として適するものであるという意味を持
つものと理解さるべきである。
従つて、本発明は、もう一つの観点からは、式(I)の
キヌクリジン誘導体またはその薬剤として使用可能な酸
付加塩と、不活性担体または希釈剤とからなる薬剤組成
物を提供するものである。
本発明において使用される「薬剤として使用可能な酸付
加塩」とは、上記のキヌクリジン誘導体を、相対的に毒
性のない無機または有機酸との組合せに相当する。適当
な酸の具体例としては、硫酸、リン酸、塩酸、臭化水素
酸、沃化水素酸、スルフアミンン酸、メタンスルホン
酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酢
酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、
グルコン酸、アスコルビン酸、安息香酸および桂皮酸が
ある。適当な薬剤担体または希釈剤は、固体および液体
の両方からなるものであつて、コーンスターチ、ラクト
ース、リン酸カルシウム、ステアリン酸、ポリエチレン
グリコール、水、ごま油、ピーナツ油、プロピレングリ
コール等が例示できる。このような薬剤組成物は、経
口、直腸または非経口投与用または吸入による投与に適
した形態にしてもよく、また特に経皮的投与用として適
した形態にしてもよく、さらには組成物を単位投与量の
形態にしてもよい。組成物の形態例としては、錠剤、粉
末、顆粒状、カプセル、分散液、溶液、坐薬、エリキシ
ル剤、軟膏剤等がある。
薬剤組成物は、式(I)のスピロ−化合物として例えば
(Ia)として表示した化合物、そして特に、その塩酸塩
が比較的低い融点を持つ幾何異性体(AF102B)を含んで
いてもよい。
さらに、本発明の薬剤組成物は、式(I)のスピロ−化
合物として、R1およびR2の一方が、3以上の炭素原子を
含有しているアルキル、シクロペンチル、シクロヘキシ
ル、アリールおよびアリールによつて置換されたアルキ
ルからなる群から選択されたものであり、R1およびR2
他方が、3以上の炭素原子を含有しているアルキル、シ
クロペンチル、シクロヘキシル、アリールおよびアリー
ルによって置換されたアルキルからなる群から選択され
たものである化合物を含んでいてもよく、特にこの化合
物は、(Ib)および(Ic)として示されるものの1つで
あつてもよい。
薬剤組成物は、経皮的に投与する場合、特開昭61−1863
17号による薬剤放出システムを使用するのが好ましい
が、本発明による経皮的投与は、このシステムにのみ限
定されるものではない。このように、本発明は式(I)
の化合物またはその薬剤として使用可能な酸付加塩と、
低分子量の脂肪酸とからなる薬剤組成物を経皮的投与用
として提供するものである。
本発明の薬剤組成物は哺乳類(即ち人間および人間以外
の哺乳類)における中枢神経系疾患の治療にもまた中枢
コリン作用系における欠乏症による疾患の治療にも用い
ることができる。
さらに詳しく述べれば、本発明の薬剤組成物による哺乳
類の中枢神経系の病気の治療法は、哺乳類における中枢
コリン作用系における欠乏症による病気の治療にも利用
でき、この場合には哺乳類に、化合物(Ia)さらにはそ
の幾何異性体、対掌体、ジアステレオマー、ラセミ体お
よび/または酸付加塩をも含むものを投与するもので、
この投与は薬剤組成物の形態で投与することもでき、さ
らには所望により上記したように経皮的に投与してもよ
い。
本発明の薬剤組成物は、また哺乳類におけるコリン作用
機能亢進による病気の治療にも利用でき、この場合、式
(I)のスピロ−化合物のうち、R1およびR2の一方が、
3以上の炭素原子を含有するアルキル、シクロペンチ
ル、シクロヘキシル、アリールおよびアリールで置換さ
れたアルキルからなる群から選択されたものであり、R1
およびR2の他方が上述の通りである化合物、例えば化合
物(Ib)および(Ia)の一方、さらにはこのような式
(I)のスピロ−化合物の幾何異性体、対掌体、ジアス
テレオマー、ラセミ体および/または酸付加塩を含むも
のを哺乳類に投与することからなるもので、これらの化
合物は薬剤組成物の形態で投与することもでき、さらに
任意的に、上述したように経皮的投与を行つてもよい。
さらに、この中枢神経系の病気の治療法は、人間におけ
るアルツハイマー病タイプの老人性痴保症の治療にも利
用でき、この場合は、その塩酸塩が相対的に低い融点を
持つ、化合物(Ia)の幾何異性体、さらにはその幾何異
性体、対掌体、ジアステレオマー、ラセミ体および/ま
たは酸付加塩をも含めたものを患者に投与するものであ
り、化合物(Ia)の幾何異性体は、薬剤組成物の形態で
投与してもよく、また必要に応じて、上述したように経
皮的投与を行つてもよい。
本発明において、「中枢神経系の病気の治療法」および
それに類似した表現は、中枢神経系の薬により誘発され
た病気の予防法をも含むものである。
本発明の化合物の投与のための適量投与量については、
生物学的テストから得ることができ、これらについての
結果およびその他の詳細は、以下に記載する。現在のと
ころ、経口投与する場合、60mg/kg・体重以上および0.1
mg/kg・体重以下の一回投与量は不適当であり、0.5〜10
mg/kg・体重の一回投与量、特に1〜5mg/kg・体重の一
回投与量範囲が好ましい。非経口投与(例えば、筋肉注
射、静脈注射および皮下注射投与を含む)の場合、40mg
/kg・体重以上および0.01mg/kg体重以下の一回投与量は
不適当であり、0.05〜5mg/kg・体重、さらに好ましくは
0.1〜2mg/kg・体重の一回投与量が好ましい。上記の特
定の形態および投与割合内でも、医者はもち論、患者の
症状の激しさ、および体調等のような一般的な要素を考
慮に入れる必要がある。
患者の通常の体重範囲、上記の投与量範囲、さらには一
回の投与によるよりも何回に分けて投与するのが好まし
いかもしれない可能性を考慮して、経口または経皮的投
与に適した本発明による製薬組成物は活性成分(そして
特にAF102Bのコード番号によつて特定される化合物)
を、例えば0.5〜500mg、好ましくは5〜100mg、さらに
好ましくは10〜50mgの範囲で含有している。
〔実施例〕
以下、本発明の化合物の製造法および本発明のスピロ−
化合物の生物学的テストに関する実施例について詳記す
る。
実施例 1 2−メチルスピロ(1,3−オキサチオラン−5′,3)キ
ヌクリジン〔AF102(シス:トランス:AF102AおよびAF10
2B〕の製造法。
(a) 3−メチレンキヌクリジンのエポキシド (i)機械的撹拌機および温度計を備えた33ツ口フ
ラスコの中に、水素化ナトリウム(42g、0.88モル、50
%の油中分散液)と300mlの石油エーテル(30〜60゜)
を入れた。この懸濁液を撹拌し、この水素化物を沈降さ
せ、石油エーテルをデカントし、撹拌しながら1200mlの
乾燥DMSOを添加し、トリメチロキシスルホニウムアイオ
ダイド(214g,0.97モル)を15分間かけて一部づゝ添加
し、さらに30分撹拌を続けた。反応フラスコには、300m
lの乾燥DMSOに溶解したキヌクリジン−3−オン(100g,
0.8モル)の入つた密封圧力補正滴下じようごを備え付
けた。反応混合物にこの溶液を15分間かけて添加した。
15分間撹拌した後、反応混合物を、50℃で2時間加熱し
てから、1の冷水の中に注ぎ、混合物を500mlのベン
ゼンで3回抽出した。抽出物を一緒にして、100mlの飽
和塩水溶液で洗浄してから、無水硫酸ナトリウムで乾燥
させ、溶媒を蒸発させた。油状の残分をエーテル中に溶
解させ、ガス状の塩化水素で飽和させたエーテルを加え
て塩酸塩として沈澱させた。エポキシド生成物を濾過に
よつて分離し、エーテルで洗つて乾燥すると、次の工程
で使用するのに充分な純度の生成物の100gが得られた。
0.3中性アルミナ上(酢酸エチル);M=139(VG7035
装置上で質量スペクトルで決定);HCl塩は、200.7〜202
℃の融点を持つものである。
(ii)規模を拡大することのできるもう一つの合成法に
おいては、5フラスコに2.2kgのキヌクリジン−3−
オン(塩酸塩)を加えさらに2の水道水、そして次に
1kgのNaOHを加えた。混合物を固形分が溶解するまで50
℃で機械的に撹拌した。このような条件下で3相が得ら
れ、上の2相は液状で下の1相は固形であつた。
混合物を60℃に保つた。上相を1のトルエンに加え
た。相を含む下の2相は濾過した。固相を1のトルエ
ン中でつきまぜ、このトルエンは、水相をつきまぜるの
にも使用した。このトルエン相を一緒にし、粉末状木炭
で処理して着色物(および不純物)を除去し、硫酸マグ
ネシウムで乾燥し、濾過すると、トルエンを含めた生成
物3.3kgが得られた。
215gの溶液サンプルを蒸発させ、106gのキヌクリジン−
3−オン(遊離塩基)を、白色固体として得た。
このものは実用に供し得るに充分な純度のものであつ
た。(従つて、このような条件下に80〜90%以上の抽出
収率を得ることができる。このトルエン溶液を共沸蒸留
によつて乾燥し、乾燥した溶液は次の工程用として使用
することができるものである。
33ツ口フラスコに、共沸−乾燥トルエンの溶かした
キヌクリジン−3−オン(193g,1.54モル)溶液(563g
の溶液重量)、トリメチルスルホキソニウムアイオダイ
ド(380g,1.72モル)および水素化ナトリウムのパラフ
イン油中50〜60%分散液(70g,1.68モル)を加え、混合
物を機械的に撹拌した。水素の弱い放出があつたが2〜
3分後におさまつた。
反応フラスコを冷水中で冷却してから、ジメチルスルホ
キシド(DMSO)(0.5,モレキュラーシーブ上で1ケ
月乾燥したもの)を、滴下添加した。100mlを1段階で
添加し、残りを撹拌下に、反応混合物を10〜30℃に冷却
しながら、1時間半かけて滴下添加した。次に反応混合
物を、中性アルミナ上のTLC(メタノール:ジクロロメ
タン=5:95)で調べ、反応が完了するまで1時間にわた
つて50〜55℃まで加熱した。反応混合物を1の冷水の
中に注ぎ、混合物を0.5のクロロホルムで抽出した。
各々の抽出時に中間相を濾過によつて除去した。有機相
の2.4を集めて、160gのMgSO4上で乾燥ささせた。NMR
(250MHz)は、120mlのDMSO(DMSO/トルエンの比を基準
とした計算)を示した。このようにこの処理によつて80
%のDMSOが除去された。TLCは、生成物がDMSOおよび他
の化合物によるほんのわずかの不純物を含むことを示し
た。溶媒を1900mlになるまで部分的に蒸発させ、0〜4
℃で5日間変更することなく保つた。この溶液は、次の
工程用として使用するのに充分な純度のものであつた。
(b) 3−ヒドロキシ−3−メルカプトメチルキヌク
リジン i)磁気撹拌器、硫化水素用の入口および出口、さらに
温度計を備えた1用3ツ口フラスコに、80gのNaOHを3
90mlの水を入れた。この溶液を氷の浴で冷却し、ガス状
硫化水素のあわが出はじめるまで撹拌溶液の中に流し
た。次に工程(a)の生成物(80g,0.46モル)を加え、
15分間撹拌を続けた。反応混合物を45℃で硫化水素をゆ
つくり流しながら2時間半加熱した。この溶液を0℃ま
で冷却し、10Nの塩酸を注意深く添加し、pHを8にし
た。この水溶液を次に300mlのクロロホルムで6回抽出
した。抽出液を収集して無水硫酸ナトリウム上で乾燥さ
せ、次に蒸発乾固した。得られた固形物を撹拌器内の五
酸化リン上で乾燥させ、、32.9gの粗生成物を得た。精
製後(TLC,中性アルミナ、ジクロロメタン:メタノール
=10:1)、R0.5;M(第5図参照)=173:塩基ピーク
=140:250MHz(CDCl3)でのMNR(第1図参照)ピークδ
2.8−>二重 二重線、−CH2−SH、AB−タイプスペクト
ル;IRν3 2900−3300cm-1(幅の広い)、この化合物
は、さらに精製をする必要なしに次の工程用として使用
された。
(ii) もう一つの上記にかわる方法では、上記の工程
(a)(ii)のクロロホルム溶液(1520g)を、機械的
撹拌器、H2Sの入口および出口そして過剰のH2Sをトラッ
プするために濃・苛性ソーダ溶液をれた2つのトラツプ
(防具弁)を備えた3三ツ口フラスコの中に入れた。
反応混合物を25±5℃に保ち、硫化水素をその中に8.5
時間バブルさせてから一夜放置させた。次の日、再び硫
化水素をさらに5時間バブルさせ反応が完了した時点
(TLC)で、生成物はさらに精製を行うことなしに次の
工程に使用することができた。
(c) 2−メチルスピロ(1,3−オキサチオラン−5,
3′)キヌクリジン〔AF102シス:トランス〕 (i) 磁気撹拌器、窒素ガス用の入口および出口、さ
らに温度を備えた、0.53ツ口フラスコに、工程
(b)(i)の生成物(32g,0.18モル)、200mlのジク
ロロメタン(モレキュラーシーブ上で乾燥させたもの)
および新たに蒸留したアセトアルデヒド(110ml,1.97モ
ル)を入れた。この溶液を、氷浴中で窒素下に冷却し、
30分間かけて、三弗化ホウ素エーテル錯化合物(60ml,
0.4モル)を添加した。混合物を、25℃で3時間撹拌し
てから、10%の苛性ソーダー水溶液で処理し、リトマス
紙でアルカリ性になるようにした。このアルカリ溶液を
400mlのクロロホルムで4回抽出し、抽出物を集めて無
水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発させた。油状の残
分をエーテルに溶かしガス状塩酸を加えて沈澱させた。
生成物の塩酸塩を濾過によつて分離し、エーテルで洗つ
て乾燥させると、0.8〜1.2:1の比の2種の幾何異性体の
混合物の26.8g(収率:62%)が得られた。R(TCL 中性
アルミナ、クロロホルム)0.7:IR(パーキン−エルマー
(Perkin−Elmer)457格子赤外分光光度計を利用) M=199;高分解能分子量決定、 C10H17NOSについての計算値:199,1020,実測値:199,101
7。
塩酸塩のNMRを第2図に示す。スペクトルの分解能によ
り両方の異性体の存在が認められた。オキソチオラン環
中の−S−の位置は、各々HaおよびHbプロトンの化学シ
フトから明らかである。異性体混合物中および各々の異
性体中のこれらのプロトンは、これらが、類似の1,3−
ジオキソラン構造中におけるように−O−に結合されて
いたならばそれらの可能な化学シフトよりもさらに高い
場であらわれる。この生成物は酢酸エチル(600ml/g)
またはアセトン(220ml/g)から再結晶化させることが
できる。
この塩酸塩の異性体混合物は再蒸留された乾燥アセトン
中で分別再結晶することによつてその成分に分離するこ
とができる。融点および250MHzでのNMRスペクトルによ
つて各々の異性体の純度が明らかになる。このような分
離は、工程(d)中に記載する。
(ii) もう一つの方法においては、遊離塩基の形のAF
102を、直接粗製チオアルコールの溶液から製造する。2
40gのチオアルコール(1.38モル)を含有する工程
(c)(ii)の溶液を、53ツ口フラスコに入れ、冷
水中で10℃まで冷却してから、アセトアルデヒド(680m
l:p−トルエンスルホン酸上で新たに蒸留したもの)
を、30分かけて添加し、この間温度を20±5℃に保つ
た。三弗化ホウ素エーテル錯化合物(450ml)を30分か
けて滴下添加してから溶液を20±5℃に保ち、さらに30
分間撹拌を続けた。20%の苛性ソーダ溶液(1)を滴
下添加し、反応温度をこの添加の間20±5℃に保つた。
混合物を濾過し水溶液を1のクロロホルムで抽出し
た。クロロホルム抽出液を集め、無水硫酸マグネシウム
上で乾燥し、さらに蒸発させた。得られた油を、90℃/1
mmHgで蒸留し、AF102(シス:トランス)を得るか、そ
うでない場合は、2.5のトルエンで希釈した。後者の
場合フラスコの壁に付着した5〜10gの固形分を除去
し、塩化水素(ガス状)を有機溶液がpH紙を酸性にする
までトルエン溶液中にバブルし、固形ケーキ分を濾過
し、トルエンで洗浄し、50〜60℃で0.75のイソプロパ
ノール中に溶解し、溶解しない不純物を除去するために
濾過した。濾液を1のトルエンを加えて蒸発させ、TL
Cによつて示されるようなわずかな不純物物を含む粗生
成物AF102(シス:トランス)(HCl)の168gを得た。こ
の生成物(粗収率51%)は、下記の工程(d)に記載さ
れているようにしてさらに精製することができる。
(d) AF102のAF102AおよびAF102Bへの分離 塩酸付加塩の1:1の異性体混合物を再蒸留乾燥アセトン
の4.71から結晶化させた。沈澱した生成物を再結晶させ
(表を参照)、4回の結晶化の後、融点が240−242℃の
純粋AF102Aの1.9gを得た。
油状生成物となる母液の濃縮物をアルミナカラム(遊離
塩基として、ジクロロメタン中の1%メタノール)で精
製して、主に(10:1)異性体AF102Bを、融点176〜179℃
の塩酸塩として得た。
AF102A(HCl):NMR(第3図参照)、250MHz(CDCl3) δ5.24(四重線 R1のピーク、R2=CH3にカツプル
されているので四重線) AF102B(HCl):NMR(第4図参照),250MHz(CDCl3) δ5.17(四重線 R2のピーク、R1=CH3にカツプル
されているので四重線) 実施例 2 2−ジフエニルメチルスピロ(1,3−オキサチオラン−
5,3′)キヌクリジンの製造 磁気撹拌器、窒素の入口と出口および温度計を備えた10
0ml用3ツ口フラスコに、3−ヒドロキシ−3−メルカ
プトメチルキヌクリジン(8g,0.045モル)、、40mlのジ
クロロメタン(モレキユラーシーブ上で乾燥させたも
の)およびジフエニルアセトアルデヒド(15ml,0.085モ
ル)を入れた。この溶液を氷浴上で冷やし、窒素下に保
つて30分間かけて蒸留三弗化ホウ素エーテル錯体(20m
l,0.13モル)を添加した。混合物を25℃で2時間撹拌し
てから、0℃まで冷却し、溶液がリトマス紙でアルカリ
性になるまで10%の苛性ソーダ水溶液を加えた。この塩
基性溶液を400mlのベンゼンで4回抽出し、抽出物を集
めて、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させた。油
状残分をエーテルに溶解し、ガス状塩化水素を加えて塩
酸塩として沈澱させた。生成物をさらに遊離塩基とし、
溶出剤として1:10の石油エーテル(40〜60℃)/酢酸エ
チルを使用して中性アルミナカラムにかけて精製した。
このような条件下に、2gの表記化合物が単離された。
実施例 3 2−メチル−2−フエニルスピロ(1,3−オキサチオラ
ン−5,3′)キヌクリジン この化合物を、アセトンフエノンと3−ヒドロキシ−3
−メルカプトメチルキヌクリジンとを反応させることよ
って、実施例1および2と同様にして製造した。収率は
かなり低かつた。
式(I)の範囲内の様々な他の化合物は、R1−CHOで示
される適当なアルデヒドまたはR1−CO−R2で示される適
当なケトン(ここでR1およびR2は式(I)に関して限定
したものである)を使用して、上記の実施例と同様にし
て製造することができる。
上述したように、式(I)のスピロ−化合物はそれらの
薬剤として使用可能な酸付加塩をも含めて、慣用の薬剤
用不活性担体、希釈剤、補薬等と共に薬剤組成物にする
ことができ、これらは経口、直腸または非経口投与に適
した形態にしてもよく、経皮的投与用としてもよく、さ
らにこの組成物は、単位投与量の形態にしておいてもよ
い。
式(I)のスピロ−化合物またはこれらを含む薬剤組成
物は齧歯動物、猫、犬および猿のような研究動物に対し
てと同様に人間にも投与でき、例えば、神経の末梢、脳
内または脳室内注射とか吸入法とか皮膚を通してとか経
口とかによつて投与することができる。投与量および投
与経路はどのような動物に使用するかにより、特に治療
される病気または不調の特徴および症状の激しさによつ
て調整する必要がある。
本発明のスピロ−化合物の生物学的テスト AF102AおよびAF102Bに対する一般的な毒性プロフイール
をまず確立した。この研究段階は常法により2つの部分
に分けた。即ち、投与範囲の調査結果およびLD50決定で
ある。投与量範囲は通常何組かのマウスに広範囲の投与
量で投与して、その様子を観察する。病気の襲来までの
時間、および治療作用の持続時間を記録した。LD50決定
は、主に投与量範囲結果に基づくものである。この研究
条件下、テテスト物質溶液を、同性の5匹以上の動物1
グループごとに5種以上の一定間隔の投与量を投与す
る。死亡率を基準として、LD50値および95%信頼区間
(C.I.)をWeil法によつて計算した(1952年発行のWeil
によるBiometrics、8巻249〜283頁参照)。
AF102A (a) LD50マウス:経口投与(po) 試験条件:オスのマウス、20〜24g N=5/グループ 一定容量…20ml/kgの投与量 (b) LD50マウス:静脈注射による投与,(iv) テスト条件:オスのマウス20〜24g N=6/グループ 9.0〜11.5ml/kgの変化容量投与量 静脈注射と経口投与とのLD50値の比が、1:2.5と比較的
狭いので、腸経由によるテスト物質の急速で明らかにか
わりのない吸収を示唆するものである。
(c) 観察された徴候 以下に示すように、マウスにおける治療に対する反応徴
候はほとんど死亡に限られる。これは各々の量を投与さ
れた治療グループの生き残りは部分的な致命率にすぎ
ず、死亡したものに報告すべき影響をほとんど与えない
からである。このことは、テスト物質がかなり急公配の
毒性−致死傾斜となることを示すものである。
さらに経口投与されたマウスと静脈注射されたマウスと
の間で観察される効果には、、効果発現開始時間、持続
時間および死に致る時間以外は顕著の差が認められな
い。どう孔変化を調べる調査は生き残つているマウスに
ついてのみ行つた。
徴候を現われた順に挙げる。
−無意識の運動筋肉の動きのほんの一時的な減少(経口
投与による治療動物においてのみ) −ひどいふるえ、特に頭部における(経口投与または静
脈注射による投与後2〜3分、または10分以内) −呼吸困難 −発作(間代性の) −あえぎ、チアノーゼ −死に致る異常な間代性−強直性のけいれん発作。
ほゞLD50投与量を投与されたマウスの死亡は、経口投与
の場合は、10〜15分後に起り、また静脈注射の場合は約
30秒後に起る。生き残つた動物については、尾をピンと
立てるという一時的部分的無感覚活動が認められた。同
様に、上記した徴候の一つがあらわれた生き残りのもの
についても、完全な回復は極めて急速であつた。この他
に静脈注射を行つたグループの生き残りの動物の中に、
どう孔検査後、緩やかなどう孔散大がわずかに認められ
た。
どのテスト動物においても、副交感神経系またはコリン
擬似作用の特徴とみられる活動、例えば一般にいうふる
え、流涎症、流涙、または下痢およびどう孔縮小といつ
た症状は認められなかつた点は注目すべきことである。
100mg/kgを経口投与されたラットは下記のようであつ
た。
−投与後10分;無意識の運動筋肉の動きがわずかにへつ
た。
−投与後15分;どう孔散大、通常の約3倍のどう孔サイ
ズになつた。
−投与後20分;短時間の間代性のけいれん発作の突然の
開始、5分後に一時的頭部けいれんおよびふるえに変化 −投与後30分;動物はねむけを催したようにみえ同時に
部分的に光反射作用を失つたり、呼吸困難になつたりチ
アノーゼを起したりし、ほんのわずかに涎を流し、涙を
出した。
上記の徴候のすべてはほとんど3匹のグループのうちの
一匹にみとめられたものであり、投与後40分に死亡し
た。残りの二匹のラツトについては、上記した外見は相
対的にずつて少なく、数時間後には完全に回復してしま
つた。
AF102B (a) LD50マウス:経口投与(po) テスト条件:おすのマウス20〜24g N=5匹/グループ 20ml/kgの一定容量投与量 (b) LD50マウス:静脈注射投与 テスト条件:おすのマウス20〜24g N=6匹/グループ 9.0〜11.5mg/kgの変化容量投与量 静脈注射による投与および経口投与によるLD50値の間の
約1:2.5の比較的狭い比率は充分に速い吸収を示すもの
で、腸経由によるテスト物質と明らかに変わりのない吸
収を示唆するものである。
(c) 観察された徴候 AF102Bの静脈注射または経口投与後のLD値は、共にAF10
2Aにより得られるLD値よりもほんのわずか低いが、前者
による治療に対する効果の徴候は、後者に対して報告さ
れたのと本質的に同様であるが、確認されたちがいは、
AF102Bの方がわずかにききめが向上していた点である。
注目すべき点はAF102Aについて、テスト動物はいずれも
副反感神経系−またはコリン擬似活性の特徴とされてい
る効果、即ち連続的な一般的にいうふるえ、流涎症、流
涙、または下痢およびどう孔縮小といつた症状を示さな
かつたことである。このことは、米国特許第4,104,397
号の副交換神経系活性化合物、即ち、シス−2−メチル
スピロ(1,3−ジオキソラン−4,3′)キヌクリジン(以
後AF30のコード番号で示す。)が、このような副作用を
示したのと対照をなすものである。
ラツトにおけるAF102Bの腹腔内毒性について AF102B(HCl)の正確な腹腔内毒性を5匹のメスおよび
5匹のオスの、Charles River血統のラツトの5つのグ
ループについて20.0−187.0mg/kgの範囲の投与量で調査
した。処置による死亡および作用徴候を14日間にわたつ
て観察した。早期に死亡したものおよび15日目に死亡し
たものについて死体解剖行つた。投与後20分以内の死亡
は最も高い3つの投与量水準(即ち61,107,187mg/kg)
で起きた。
死亡した動物および生き残つた動物の両方にみられた処
置に対する作用の主な徴候は、けいれん、強直性けいれ
ん、ふるえ、頻呼吸、呼吸困難、運動筋肉活性の低下、
ほんのわずかのものについての非常に激しい流涎症およ
び排尿作用であつた。生き残つた動物はすべて投与後2
時間以内に処置に対する反応のすべての徴候が消失し
た。生き残つたものは研究の間の予想された体重の増加
が認められた。死亡解剖の際死亡したものについてのみ
処置に伴う詳細な観察を行つた。投与量の多いグループ
の脳の内部に充血した血管が認められた。LD50(95%C.
L)=77.6(60.1〜100.2)、傾斜度=83゜。
ラツトにおけるAF102Bの急性毒性 AF102B(HCl)の急性経口毒性を5匹のオスラツトおよ
び5匹のメスラツト(Charles River CD血統の5つのグ
ループについて調べた。テスト物質は種々の濃度の塩水
溶液をつくり、5ml/kgの一定容量−投与量で投与した。
投与量は、テスト物質の効力によつて選択した。処置に
よる死亡および反応徴候を14日間にわたつて記録した。
初期に死亡したものと生き残つたラツトを15日目に死体
解剖した。死亡は結局4つの投与水準で、投与後3時間
30分以内に起つた。
死亡したものおよび生き残つたものの両方について観察
された処置による主な反応徴候は、間代けいれん、ふる
え、流涎症および性尿器の汚れ、下痢および着色した眼
窩分秘であつた。生き残つたもののうち、処置に対する
反応の臨床徴候はすべて、投与後24時間で解消した。検
死の結果死亡した動物についての主な処置に関係のある
ものは、流涎症であつた。内部的には、1匹についての
み出血内容物(hemorohagic contents)および充血した
胃粘膜が観察された。生き残つたものについての死体解
剖では異常は発見されなかつた。生き残つたものは実験
の期間に予想される体重増加が認められた。AF102Bの経
口LD50は156mg/kg以上であると決定される。
AF102Bのマウス中における鎮痛(抗痛覚)活性 テスト物質AF102−Bの潜在鎮痛活性について、オスお
よびメスのマウスのグループ(5匹)について、2つの
主な鎮痛テスト法、即ちテイル クリツプ(Tail Cli
p)およびフエニルキノン ライテイング(Writhing)
を利用して評価を行つた。テスト物質を3つの異なる投
与量で経口または腹腔内経由によつて投与し、鎮痛効果
を2つの対照化合物のそれと比較した。補助実験とし
て、リン酸コデイン(50mg/kg,テスト1時間前にS.C.投
与)およびオキソトレモリン(テスト1時間前に、0.1m
g/kgをp.o.投与するか、テスト30分前に0.5mg/kgをi.p.
投与する)を、各々鎮痛およびコリン擬似対照化合物と
して選択した。このような実験条件下に、AF102Bはp.o.
で20mg/kg以上、i.p.で10mg/kg以下の投与で抗侵害受容
活性を示した。投与量による抗痛覚効果は、本実験中に
おける最高の非致死投与量である。p.o.では60mg/kg、
i.p.では40mg/kgでは充分に発揮されず、リン酸コデイ
ンおよびオキソトレモリンのそれと比較して明らかに弱
いものであつた。
AF102Bのラツトにおける潜在低体温症誘発活性 テスト物質AF102Bの潜在低体温症誘発活性については、
8匹のオスのラツトのグループについて評価し、2つの
対照物質と比較した。経口または腹腔内注射によつて、
3種類の異なる投与量で、テスト物質を投与する前およ
び投与後の時間経過時における腸の温度を測定した。ま
ず始めに、神経弛緩およびコリン擬似対照物質として、
各々クロロプロマジン(10mg/kgをi.p.投与)およびオ
キソトレモリン(3.2mg/kgをp.o.投与か1.2mg/kgをi.p.
投与)を選んだ。このような実験条件下で、AF102Bは、
40mg/kg以上(p.o.投与)およよび15mg/kg以上(i.p.投
与)の投与量においてのみ低体温症誘発活性を示した。
(テストされた最高投与量でもけいれんは誘発されなか
つた。)AF102Bはクロロプロマジンおよびオキソトレモ
リンにより誘発されたのと同じ程度の腸温度の低下を起
す。このような最高投与量で、AF102Bにより誘発される
唯一のコリン擬似症状発現は、ほんの少しの下痢である
が、オキソトレモリンはこれとi.p.投与した場合、強直
性−間代けいれん性のひきつけを伴うコリン擬似症候群
を誘発してしまう。
AF102Bの突然変異活性 AF102Bの突然変異活性、プレート流し込み効果評定(po
ur−plate assay)によつて、血統TA−1535,TA−100,TA
1538,TA−98およびTA−1537の5種類のサルモネラのヒ
スチジン−依存自己栄養菌について調査した。手順は、
1983年5月に採用されたOECDガイドラインに従つた。実
験はラツトの肝臓(S−9ミツクス)から取り出された
活性系の存在下および不在下に行われ、血統TA−98につ
いての予備毒性テストに従つて選択された量範囲を採用
した。各々のテストを二回くり返し、また2つの別の時
に行つた。突然変異誘発物質として知られている対照物
質として、ナトリウムアジド、4−ニトロ−O−フエニ
レンジアミン(NPD)、ICR−191および2−アミノアン
トラセンを同じ実験条件下に使用した。S−9ミツクス
の存在下でも不在下でも、原栄養に対する隔世遺伝の増
加は、5つのバクテリア血統のいずれにおいてもテスト
した化合物水準で生じなかつた。いずれの血統において
もやせるとかいつた観察できる成長阻害または非突然変
異株のバツクグランドローン(background lawn)は、
プレート毎の1000ugのテスト物質にさらしても生じなか
つた。このことからAF102Bは、この実験条件下では突然
変異活性がないということになる。
ムスカリン受容体に対する推定コリン作用薬の結合親和
力 A.Scatchard plot PNZは特定M1拮抗薬と考えられている。〔1984年1月発
行のTrends Pharmacol.Sci.(増補)中のこのことにつ
いて示した巻を参照のこと。〕ムスカリン受容体に対す
るその親和力は、QNBのそれほどは高くないので、見か
けのKdはQNBのそれよりも高くなるべきである。事実、
発明者等が決定したPPNZのKdは、QNBのKdが0.048nMであ
るのと比較し、13.0nMであつた。PNZに対して発明者等
が決定したKd値は、公開データのものと一致している。
B.結合〔3H〕−PNZのテスト化合物による置換 ピレンゼピン(PNZ)を使用する利点は、M1−受容体に
対する選択性にある。M1受容体に対してもつと選択性の
ある化合物にこれを置換すれば、さらに有効になるであ
ろうことが予測できる。〔3H〕−PNZのムスカリン拮抗
薬のアトロピンおよびムスカリン作用薬のオキソトレモ
リンによる置換で、IC50は各々5×10-10Mおよび8×10
-7Mとなり、これらは〔3H〕−QNBの置換のために必要と
される両方の濃度よりも共に高い。これらの結果は、ピ
レンゼピンのさらに高いKdを考慮すれば当然のことであ
る。〔3H〕−PNZの置換のためのこの二つの化合物のIC
50の〔3H〕−QNBの置換のための同じ化合物のIC50との
比は、ピレンゼピン結合側(M1受容体)の他のテスト化
合物の選択的結合の基準として使用することができる。
下記の表には〔3H〕−PNZまたは〔3H〕−QNBの置換のた
めのテスト化合物のIC50値を示す。テスト化合物は
3H〕−PNZを〔3H〕−QNBよりもより有効に置換したこ
とを示している。しかし、AF102Bは、▲IC 50▼:▲IC
50▼の比によつて示されるように、他の2つのテスト
化合物よりも1ケタ大きく、M1受容体に対する選択性が
すぐれている。
表1および表2から、AF102Bは有用なムスカリン作用薬
であり、その幾何異性体のAF102Aは、ほゞ1ケタ低い活
性をもつにすぎずないことが明らかであり、表1からは
AF102Bは選択的M1作用薬であることが明らかである。
行動実験 結果のまとめ AF64A(3n mol/2μ/サイド)で側部脳室内注射(ic
v)処理されたラツトは、実験により、ステツプ−スル
ー受動的回避テストにおいて明らかに認識機能障害があ
らわれた。このような記憶損傷は、フイソステイグミン
およびAF102Bによつて回復させることができる。
この回復は、下記の表中に示すように、フイステイグミ
ン(0.06mg/kg、ip)およびAF102B(0.1〜1mg/mg、ipそ
して1mg/mg、po)の低投与量で起る。従つて、AF102Bの
治療指数は78〜780である。この治療指数は、フイソス
テイグミン(5〜17)におけるそれよりも明らかに広範
囲にわたるものである。
さらに、AF102Bの急性毒性カーブの勾配は急公配であ
り、流涎症、ふるえといつた副交感神経刺激により生ず
る症状に類似した結果に致る明白な行動徴候は致死量ま
で認められなかつた。このように、徴候なしの投与量範
囲はかなり広く、この薬は、SDATの治療用として有用に
利用できる。
さらにAF64A−処理ラツトにおいて実施された死滅実験
において、AF102Bの非常に長朝にわたる有益な効果が認
められ、この化合物は、認識作用に長期持続効果を持つ
ものである。(第10図および第11図) さらにAF64B(3n mol/2μ/サイド)で誘発されたモ
ーリス スイミング メイズ(Morris,loc.cit)におけ
る記憶損傷は、AF102B(mg/kg,ip)で消せたが、フイソ
ステイグミン(0.1mg/kg、ip)は効果がなかつたことも
注目すべき重要な点である。(第16図および第17図)興
味深いことは、このテストにおけるAF102Bの有効な効果
は、AF64Aによつて誘発された空間記憶機能障害におけ
るものである。しかるにSDAT患者における主な記憶機能
障害は、空間記憶の損傷であることは注目すべきことで
あら。さらに8−アームラジアルアームメイズ(RAM)
におけるAF64A(3n mol/2μ/サイド)によつて誘発
された記憶損傷は、AF102B(5mg/kg、ip)では回復させ
ることができたがフイソスチグミン(0.1mg/kg)では顕
著な効果が得られなかつたこともまた重要なことである
(第18図および第19図)。
実験 ラツトに関して、AF64Bの側部脳室内注射(icv)によつ
て誘発された(a)受動的回避−ステツプスル−テスト
(b)モーリス スイミング メイズおよび(c)ラジ
アルアームメイズにおける認識の損傷およびこのAF64A
−誘発効果の、対照化合物としてのフイソステイグミン
およびAF102Bによる回復の可能性について実験を行つ
た。
AF64Aの準備 AF64Aは、毎日新たに、10mM濃度でつくり、これを、人
工脳脊髄液(CSF)中に希釈して、注射用として適した
濃度にする。この人工CSF pH7.1〜7.3溶液の組成物は、
下記の組成のものであつた。
mM NaCl 147 KCl 2.9 MgCl2・6H2O 1.6 デキストロース 2.2 CaCl2・2H2O 1.7 実験1:受動的回避:ステツプ−スルーテスト AF64AおよびCSFを注射したラツトについて、制止学習
(受動的回避−ステツプ−スル)課題の実行およびその
24時間記憶保持に関するフイソステイグミンの効果を、
訓練後投薬治療例を用いて検討した。
生後90〜100日目の、体重230〜360gの、オスのSprague
−Dawley(Charles Riverにより飼養した)ラツトをす
べて飼料水に自由に近ずけるようにした。AF64AおよびC
SF注射を行なう前に、ラツトにEquithesin(0.3ml/100
g,ip)で麻酔をかけた。左右対称の注射を、AF64Aまた
は賦形薬の定位投与によつて側部脳室内注射(icv)を
行つた。(AP−前頭から0.8mm,L−前頭から1.5mmで、−
頭がい骨表面から4.7mm)23匹のラツトについては、各
々の側部脳室に容量で2uのAF64A3モル(この投与量は
ラツトの受動的回避ステツプ−スルー行動を損傷するの
に有効であることが知られている。)を注射した(グル
ープ1)。さらに20匹のラツトには、同容量のCSFを同
様に注射した。この注射は、28−ga注入カニュールで行
つた。注入速度は0.25μ/分の一定速度に保つた。注
入後脳室内に溶液が拡散するように注入カニユールを4
分間そのまゝにしておいた。
注入後27〜28日目(上記AF64A投与ラツトが受動的回避
行動の損傷をあらわすのに有効なのは27日目であること
がわかつている。)に、各々グループのラツトを10匹づ
つの2つのグループに無差別に分け、サブグループ1に
はフイソステイグミンを投与用とし、サブグループ2に
は塩水を投与用とした。各々のラツトを別々に2つに区
画された箱の、せまいあかりのついた前方区画の中に入
れた。60秒間慣らしてから、2つの区分を分離している
ドアを開き、時間を計りはじめた。そしてその箱の広い
暗い区画に入り込む(ステツプ−スルー)までのラツト
の潜伏期を計つた。暗い区画に入るやいなや、ラツトに
床格子に施した、のがれられない、足をはい上る(電
気)シヨツクを受けさせた。(0.6mA−3秒間)訓練手
段の終りで、シヨツクの終了後60秒に、このラツトをこ
の暗い区画から取り出し、塩水中に溶かしたフイソステ
イグミン(0.06mg/kg)または薬を含まない塩水を腹腔
内投与した。ラツトを各々のケージにもどした。受動的
回避課題の記憶保持は、訓練後、再びこのラツトをこの
あかりのついた区画の中に入れ60秒間慣らしてから、暗
い区画に入るまでの潜伏期を計ることによつて測定し
た。テスト期間は、ラツトが暗い区画に入つた時点また
は、600秒経過後とした。600秒以内に入らなかつたラツ
トは、この装置から取り出してしまいこれらについての
潜伏期は600秒として記録した。
結果:死亡率と体重 AF64A−注射ラツトは、この手術直後は、この環境刺激
によつて影響を受けないようにみえた。ほんのわずかの
ラツト(AF64A−注射グループの20匹のうち2匹と、CSF
−注射グループの20匹のうちの6匹のみ)が、投与の7
日後に体重の減少が認められた。(各々2%と12.5
%)。投与後48時間以内でAF64A−注射グループの死亡
率は13%に達した。
結果:受動的回避テスト 最初の潜伏期測定および記憶保持テストの潜伏期測定
は、2通りのANOVA即ち注射(AF64A/CSF)対処置(フイ
ソステイグミン/塩水)で分析した。
訓練試験の間、テストされたグループのいずれにおいて
も顕著な差は認められなかつた(第8図参照): F(1,36)=0.81 p>0.05 24時間記憶保持テストの間AF64A−注射グループのステ
ツプ−スルー潜伏期は、CSF−注射グループの潜伏より
も短期であつた。F(1,36)=20.18 P<0.01。さら
に、24時間記憶保持テストの間、フイソステイグミン−
処置グループのステツプ−スルー潜伏期は、塩水処置グ
ループの潜伏期よりも長期であつた。F(1,36)=5.9
1、P<0.05。AF64F−注射グループのステツプ−スルー
受動的回避応変の記憶保持は、フイソステイグミン投与
によつて顕著に改良されたが、CSF−注射グループの記
憶保持にフイソステイグミン投与によつて影響を受けな
かつた(第8図参照)。F(1,36)=4.08 P=0.05。
記憶保持テストの間ステツプ−スルー潜伏期測定のShif
fの対比によつて、塩水処置AF64Aと、塩水処置CSF−注
射グループとの間では顕著であることがわかつた(P<
0.05)。他の3つの対比は塩水処置AF64A−注射グルー
プの潜伏期がフイソステイグミン処置AF64A−注射グル
ープのそれより短期であるものの、顕著ではなかつた。
実験2:ステツプ−スルー:受動的回避 AF64AおよびCSFを注射したラツトにおけるAF102Bの、制
止学習(消極的回避−ステツプ−スル−)課題の実行お
よび24時間記憶保持についての効果を、処置後投薬例を
用いて検討した。
注射手順では、(1)ラツトの重量を250〜325gにす
る。(2)20匹のラツトには各々の脳室中に2μの容
量で3n molのAF64Aを注射し(グループ1)、さらに20
匹の対照ラツトには各々の脳室に2μのCSFを注射
(合計40匹のラツトを使用する以外は実施例1と同様に
行つた。
行動テスト手順は4段階で行つた。
予備テスト: 体重270〜310gの生後90〜110日のSprague−Dowleyネイ
ビーラツトのオス28匹を、無差別に7匹づつの4グルー
プに分け、3グループについては塩水中に溶したAF102B
(0.1,1または5g/kg)を投与し、残りの1グループには
塩水を投与した。訓練および記憶テストは、異なる投与
量のAF102B、または薬を含まない塩水を、ip投与する以
外は実験1と同様に行つた。
第1段階: AF64AおよびCSFの注射後27〜28日経過してから、各々の
グループのラツトを各々10匹づつの2つのグループに無
差別に分け、サブグループ1についてはAF102Bを投与
し、もう一つのサブグループ2は塩水を投与した。訓練
および記憶保持テストの手順は、訓練手順の終りに、ラ
ツトを暗い部屋から取り出し、塩水に溶かしたAF102B
(1mg/kg)または塩水の投与をip投与する以外は実験1
と同様に行つた。
第2段階: 記憶保持テストの後6日目に、日に6回の消去手順にか
けた。ラツトをあかりのついた前方区画の中に入れ、暗
い区画に入るまでの潜伏期を測定した。この手順は第1
段階における記憶保持テストの手順と同一であつた。
第3段階: この消去手順の後、ラツトを潜伏消去手順にかけた。こ
のラツトを光をつけた前方区画の中に入れ、60秒の適応
期間の後、暗い部屋の中に押し込み、60秒間そこにとど
めた。この潜伏消去手順を3日間、1日に1度り返し
た。この潜伏消去手順を行つてから、ラツトを「消去+
潜伏消去」手順にかけた。ラツトをあかりのついた前方
区画の中に入れ、60秒間慣れさせてから、暗い区画に入
り込むまでの潜伏期間を計つた。600秒以内にステツプ
−スルーを失敗したものは暗い区画の中に押し込んでし
まいこれらに対しては潜伏期間を600秒とした。この手
順を1日に1回4日間行つた。4番目の期間の終りで次
に暗い区画の中に入つた直後に、第1段階において処置
された2つのサブグループを今度は逆に薬を含まない塩
水で処理する以外、第1段階におけるのと同じような訓
練および記憶テスト手順にかけた(この処置はAF64A/CS
F投与後2ケ月に行われたことを留意する必要があ
る。)。
結果:死亡率および体重 手術の直後には、AF64A−注射ラツトは環境刺激に対し
て影響を受けないようであつた。ほんの少数のラツト
(AF64A−注射グループ中の20匹のうち2匹)が投与後
7日目で体重の2%の低下を示した。投与の48時間以内
に死亡するものはどのグループにもなかつた。
結果:受動的回避テスト 予備テスト: 最初の潜伏期の測定と、記憶テストの潜伏期の測定を一
通りANOVAにより分析した。表(iii)には、最初の潜伏
期を±S.E.Mで示し、表(iv)には記憶保持テストの潜
伏期間を±S.E.Mで示した。
テストされたグループのいずれにおいても訓練段階で
は、顕著の差は認められなかつた。F(3,24)=0.57、
P>0.05。さらに、AF102Bの投与量が0.1mg/kgおよび1m
g/kgのグループの記憶テストの潜伏期は5mg/kgのグルー
プおよび塩水のグループのそれよりも短期ではあるもの
の、AF102Bの投与量が変つても、記憶保持テストの結果
には顕著な差は認められなかつた。F(3.24)=2.61、
p>0.05。
第1段階: 2通りのANOVA、即ち注射(AF64A/CSF)対治療(AF102B
/塩水)によつて最初の潜伏期および記憶保持の潜伏期
を分析した。表(v)に、最初の潜伏期間を±S.E.Mで
示し、表(vi)には記憶保持テストでの潜伏期間を±S.
E.Mで示した。
テストされたグループのいずれにおいても、訓練試験中
顕著な差は見い出されなかつた(第9図参照): 注射を変えることによる(AF64A/CSF)主な効果につい
て、F(1,35)=2.16,P>0.05、他の主な効果(AF102
または塩水で処理されるべき2つのグループ)につい
て、F(1,35)=0.29;p>0.05。
24時間の記憶保持テストの間、AF64A−注射グループの
ステツプ−スルー潜伏期は、CSF−注射グループの潜伏
よりも顕著に短期化していた。F(1,35)=13.89;p<
0.01。さらに24時間の記憶保持テストの間、AF102B−処
置グループのステツプ−スルー潜伏期は、塩水処置グル
ープの潜伏期よりもかなり長期化していた。F(1,35)
=4.98;p<0.05。
AF64A−注射グループのステツプ−スルー受動的回避応
答の記憶保持はAF102B投与によつて顕著に改良された
が、CSF−注射グループのそれは顕著にそこなわれた。
(第9図参照)(1,35)=31.18、p<0.01。記憶保持
テストの間のステツプ−スルー潜伏期測定のShiffeの対
比は、AF64A+AF102B対CSF+AF102Bの差以外はすべての
グループ間の差異は顕著であつた(0.01<p<0.05)こ
とを示した。
第2段階: 消去期間の記憶保持テスト潜伏期を、3通りのANOVA
(6×2×6)、即ち1つの反復変数(試験回数)およ
び2つの非反復変数(注射−AF64A/CSFと治療−AF102B/
CSF)について分析した。第10図は、AF64−注射グルー
プのステツプ−スルー潜伏期は、CSF−注射グループの
潜伏期よりも著しく短期化していることを示している。
F(1,36)=16.83;p<0.01。さらに、AF102B−処置グ
ループのステツプ−スルー潜伏期は、塩水処理グループ
の潜伏期よりも著しく長期化されていた。F(1,36)=
31.45;p<0.01。消去期間のAF64A−およびCSF−注射グ
ループの両方のステツプ−スルー回避応答の記憶保持
は、AF102B投与によつて著しく改良された。F(1,36)
=15.80;p<0.01。消去期間のステツプ−スルー潜伏期
測定のShiffeの対比では、AF64A+AF102B対CSF+AF102B
の差以外はすべてのグループ間の差が著しいことがわか
つた(p<0.01)。
消去の間の試験変数の主な効果は顕著であつた。F(5,
180)=2.68、p<0.05。対比分析の結果は第2回目の
消去試験の記憶保持潜伏期は6回の試験の潜伏期よりも
長期であつたことを示している(p<0.05)。他に著し
い差は認められなかつた。
処置と試験との間の相互作用は顕著であつた。F(5.18
0)=3.30、p<0.05。顕著な単純な主効果の差異が、
第1回の試験以外の全ての消去試験の間中、AF102B処置
グループと塩塩水処置グループとの間に見出された。さ
らに、記憶保持潜伏期消失曲線は、塩水処置グループの
それとは顕著に相異した(p<0.05)。AF102B処置グル
ープの記憶保持潜伏期は第4回の試験から第4回の試験
まで増加し、それから減少した。塩水処置グループの記
憶保持潜伏期は第1回の試験から第6回の試験まで減少
した。
第3段階: A.「消去+潜伏消去」期間の間の記憶保持テストの潜伏
期を、3通りのANOVA(4×2×2)、即ち1つの反復
変数(試験回数)および2つの非反復変数(注射−AF64
A/CSFおよび治療AF102B/CSF)によつて分析した。テス
トされた条件のいずれの間にも、「消去+潜伏消去」期
間の間の記憶テスト潜伏期測定において著しい差は見ら
れなかつたが、塩水処置AF64A注射グループの記憶保持
潜伏期は、3つの他のグループの記憶保持潜伏期よりも
短期ではあつた(第11図参照)。
B.AF102B/塩水の第2投与の記憶保持潜伏期測定を、2
通りのANOVA、即ち注射(AF64A/CSF)対処置(AF102/塩
水)によつて分析した。表(vii)は、記憶保持テスト
の潜伏期の測定の平均±S.E.M.を示すものである。
テストされたグループの間には、第2のAF102B/塩水投
与によつて著しい差は見られなかつた(p>0.05)(第
12図参照)。前回にAF102Bで処置した、塩水−処置した
AF64A−注射グループの記憶保持潜伏期は、同じ水準に
留まつたが、前回に塩水−処置され、AF102B処置された
AF64A−注射グループの記憶保持潜伏期は長くなり、CSF
−注射グループの水準に達した。
行動実験 ここでは、受動的回避課題および他の2つの課題、即ち
モーリススイミングメイズおよび8−アームラジアルメ
イズにおける、AF64A−誘発効果の回復が、AF102Bの投
与量を種々変えることによつてどのようになるかを検討
した。
受動的回避課題 実験1 この実験では、AF64A−およびCSF−注射ラツトにおいて
制止学習(受動的回避−ステツプ−スルー)課題の行動
および24時間記憶保持におけるAF102B(0.1mg/kg、ip)
投与の効果を、訓練後投薬例を使用して研究した。
手術 出後90〜120日の、体重265〜340gの、オスのSprague−D
awley(Charles Riverによる飼養された)ラツトを、ic
v注射した。10匹のラツトに容量2μのAF64Aの2nmol
を両側部脳室内に注射した(グループ1)。そして、も
う10匹のラツトには、CSFを注射した(グループ2)。
合計20匹を使用した。
行動テスト 行動テストの手順は2段階にした。予備訓練手段で、各
々のラツトを、2つの区画に別れた箱の、せまいあかり
のついた前方区画の中に別々に入れた。60秒間慣らして
から、2つの区画を分離するドアを開き、時間を計りは
じめた。箱の広くて暗い区画に入るまで(ステツプ−ス
ルーまで)のラツトの潜伏期を測定した。暗い区画に入
るやいなや、ラツトに床格子に施したのがれらない、足
をはい上るシヨツク(0.6mA2秒間)が与えられるように
しておいた。シヨツクの終了後60秒目、即ちこの訓練手
順の終りに、ラツトを暗い区画から取り出し、薬を含ま
ない塩水をip投与した。そしてこれらをもとのケージに
もどした。訓練後24時間目、このラツトを再びあかりの
ついた前方区画の中に入れ、60秒間慣らした後、暗い区
画に入るまでの潜伏期を測定することによつて、受動的
回避課題の記憶保持をしらべた。テスト期間はラツトが
暗い区画に入つた時または600秒経過後とした。600秒以
内に入らなかつたラツトは装置から取り出し、これらに
ついての潜伏期は600秒とすることにした。
第1段階: AF64AまたはCSF注射後27〜29日目に、各々のグループの
ラツトをa)訓練手順において、ラツトを薬を含まない
塩水で処理したこと、b)シヨツクの持続を3秒にした
こと以外、予備テストにおけるのと同じ訓練および記憶
持続テスト手順にかけた。
第2段階: 上記の記憶保持テスト後13〜20日目(即ちAF64AまたはC
SF注射後40〜47日目)に、ラツトを、第二の受動的回避
テストにかけた。各々のラツトを、明るい前方区画の中
に入れ、60秒慣らしてから、暗い区画に入るまでの潜伏
期を測定した。600秒以内に暗い区画に入らなかつたラ
ツトを、暗い区域の中に押し込んで、これらについての
潜伏期は600秒として記録した。ラツトを塩水で処置し
たグループを新たにAF102B(0.1mg/kg,ip)で処置する
以外、第1段階における手順と同一の、訓練および記憶
保持テストかけた。
結果 死亡率と体重 手術の直後では、AF64A−注射ラツトは環境刺激に影響
を受けないようにみえた。1匹だけ(20匹のAF64A−注
射ラツトのうちの)が、体重の2%減少を示し、2匹が
注射後7日間体重の増加がなかつた。グループのいずれ
においても、死亡は起らなかつた。
受動的回避テスト;予備テスト テストされたグループのいずれの間にも、訓練試験の
間、著しい差は見られなかつた。〔F(3,24)=0.22;p
>0.05〕。
AF102B(0.1mg/kg、ip) AF102B(0.1mg/kg、ip)投与後に見られた記憶保持テス
ト潜伏期(第2運転)と塩水−投与後に得られた記憶保
持テストの潜伏期(第一運転)との間を比較を行つた。
記憶テストの潜伏期測定値は、2通りANOVA(2×
2)、即ち1つの反復変数(処置+運転)および1つの
非反復変数〔注射(AF64A/CSF)〕によつて分析され
た。
AF64A−注射グループの記憶保持潜伏期は、CSF−注射グ
ループの潜伏期よりも、まだかなり短期であつた。〔F
(1,18)=29.48;p<0.001〕(第13図参照)。さらに、
AF102B−処置グループの記憶保持潜伏期(第二運転)は
塩水処置グループの潜伏期(第一運転)よりかなり長期
であつた〔F(1,18)=33.71;p<0.001〕。AF64A−注
射グループのステツプ−スルー受動的回避応答のための
記憶保持は、AF102B投与によつて著しく改良されたが、
〔A(1,18)=33.27;p<0.01〕、一方CSF−注射グルー
プのそれぞれAF102B投与によつても著しい変化がなかつ
た。実際、CSF−処置ラツトの潜伏期はほゞ600秒に近い
ので、変化はほとんど期待できなかつた。Schiffeeの対
比によつて、AF64A+AF102B対AF64A+塩水の差およびAF
64A+塩水対CSF+塩水の差が顕著であつた(p<0.00
1)ことがわかつた。しかしながら、この場合AF64A−注
射グループのAF102B投与による改良は、第2シヨツク
後、記憶保持の改良に影響を与えたという事実を記録し
たことが指摘できる。
実験2: この実験では、AF64A−およびCSF−注射ラツトに関し、
訓練後投薬例を使用して、制止学習(受動的回避ステツ
プ−スルー)課題の実行および24時間記憶保持にAF102B
(po)投与がどのような影響を与えるかについて検討し
た。
方法 手術 手術手順は、i)使用するラツトの体重を265〜320gに
したこと、ii)10匹のラツトにはAF64Aの3n molを2μ
の容量で、各々の側部脳室内に注射し(グループ
1)、また10匹の対照ラツトには、各々の側部脳室内に
CSFの2μの2容量で注射した(グループ2)こと以
外、実験1におけるのと同じ手術手順で行つた。全部で
20匹のラツトについて行つた。
行動テスト 行動テスト手順は2段階で行つた。
第1段階 第1段階の訓練およびテスト保持手順は、1)ラツトの
各々のグループに注射後、サブグループに分けたことお
よび2)訓練手の終りにラツトを暗い区域から取り出し
AF102B(1mg/kg、po)または塩水を投与する以外は実験
1の第1段階と同一にした。
第2段階 記憶テスト後19〜日目(AF64AまたはCSF注射後49日
目)、塩水−処置ラツトだけを第二運転にかけた。訓練
およびテスト−記憶保持手順は、第1段階で塩水で処置
された2つのサブグループを今度はAF102B(1mg/kg、p
o)で処置したこと以外、実験1の第2段階における手
順と同一にした。
結果 第1段階 AF64A−およびCSF−注射グループの最初の潜伏期を、独
立サンプルに対してt−テストによつて分析した。下記
の表(a)には初期潜伏期の平均±S.E.Mおよび(b)
には記憶保持潜伏期の平均±S.E.Mを示した。
訓練試験中、AF64A−およびCSF−注射グループ間には著
しい差は見られなかつた(第14図参照)。t(57)=0.
05;p>0.05。記憶保持潜伏期の測定結果の第1分析は、
24時間目の記憶保持テストのAF64A注射グループのステ
ツプ−スルー潜伏期はCSF−注射グループの潜伏期より
も著しく短かかつたことを示している〔F(1,36)=3
7.01;P<0.001〕(第14図参照)。
記憶保持潜伏期の測定値の第2分析では、AF64−注射グ
ループの24時間記憶保持テストのステツプ−スルー潜伏
期は、CSF−注射グループの潜伏期よりも著しく長期で
あつた。〔F(1,35)=28.46;p<0.0001〕AF64A−注射
グループのステツプ−スルー受動的回避対応の記憶保持
は、AF102B投与によつて著しく改良されたが〔F(1,3
5)=13.94、p<0.0001〕、AF102B−処置−CSF−注射
グループと塩水−処置−CSF−注射グループの間には著
しい差はなかつた。Schiffeeの対比によつてAF64A+AF1
02B対AF64A+塩水の差が著しかつたことがわかる(p<
0.001)。
第2段階 第1分析では第2の試験におけるシヨツク投与前の記憶
保持テストの潜伏期と第1の試験中の記憶保持テスト潜
伏期とを比較した。記憶保持テストの潜伏期は、2通り
のANOVA(2×2)即ち1つの反復変数(試験回数)
と、1つの非反復変数(注射(AF64A/CSF)〕で分析し
た。AF64A−注射グループの記憶保持潜伏期は、第1の
試験後19〜22日目において、CSF−注射グループの潜伏
期よりも、、さらに顕著に短かくなつた〔F(1,18)=
49.51、p<0.001〕(第15図参照)。著しい試験効果も
なく〔F(1,18)=0.91、p>0.05〕、また著しい相互
作用効果もなかつた〔F(1,18)=1.18;p>0.05〕。
第2分析では、第2運転中のシヨツク投与後の記憶保持
テストの潜伏期の測定値を第1の試験中の記憶保持テス
トの潜伏期の測定値を比較した。この記憶保持テストの
潜伏期の測定値を2通りのANOVA(2×2)即ち1つの
反復変数(試験+処置)と1つの非反復変数〔注射(AF
64A/CSF)〕で分析した。AF64A−注射グループの記憶保
持潜伏期は、CSF−注射グループの潜伏期よりも、著し
く短かかつた。〔F(1,18)=40.81;p<0.001)(第15
図参照)さらにAF102Bの処置グループ(第2の試験)の
記憶保持潜伏期は、塩水処置グループ(第1の試験)の
潜伏期よりも著しく長かつた。〔F(1,18)=65.71;p
<0.001〕。AF64A−注射グループのステツプ−スルー受
動的回避応答の記憶保持は、AF102B投与によつて著しく
改良されたが、〔F(1,18)=40.81;p<0.001〕、CSF
−注射グループの応答記憶保持は、AF102B投与では有意
には変化しなかつた。Shiffee対比によつて、AF64A+AF
102B対AF64A+塩水の差が有意であることがわかつた。
モーリス スイミング メイズ 抗コリン作用薬による治療と同様にコリン作用欠乏症は
空間方位に関連した記憶および学習工程に損傷を与える
ことを示した(Sutherlant等によるJ.Comp.Physiol.Psy
chol.,96巻、563〜73ページ、1982年参照)。これに関
し、水−迷路(モーリスによるLearning and Motivatio
n,12巻、239〜61ページ、1978年)は、ラツトにおけるA
F64Aで誘発された認識損傷およびこれらのコリン性作用
薬による回復を探知するのに適した行動例と考えられ
た。フイソステイグミンは、アルツハイマー病患者に最
近使用されている数すくないコリン性作用薬の1つであ
るので、これをAF64A処置ラツトについては第一番の効
果テスト用として選択した。
生後5〜6ケ月で平均体重が500g、Sprague Dawleyラツ
ト(Charles Riverで飼育された)のオス38匹を使用し
た。このラツトを5匹のグループごとのオリに入れ、飼
料および水に自由に近ずけるようにしておいた。テスト
は直径1.4m、深さが0.4mの円形の白い金属槽の中で行つ
た。この槽に粉末乳を不透明にした水を18cmの深さにな
るまで満した。直径12cmで、16cmの高さのプラツトホー
ムをこの槽の中に水面下2cmのところに入れた。プラツ
トホームはガーゼをかけて、ラツトがプラツトホームに
到着した後水の中にすべり落ちたりしないようにしてお
いた。
テストの前にラツトを120秒間このプラツトホームの上
にのせてから、プールの周囲の4つの出発場所(東西南
北)の一つからプールの壁に沿つて水の中に静かに入れ
た。4回の試みの各々のブロツクで各々のラツトは、手
当り次第に選択された出発場所の順序で4つの出発場所
の各々から出発させた。テストは2日連続で行われ、各
々のラツトが1日8回の試みを行うようにした。第1〜
12回の試みの間はプラツトホームを南東の四分円の中央
に置き、第13〜16回の試みの間は北西の四分円の中央に
置いた。特定の試みで、そのラツトがプラツトホームを
発見した場合、次の試みの前に60秒間その上に留まらせ
た。ラツトがプラツトホームを発見できなかつた場合そ
の試みは120秒間の制限時間で終らせ、次に次の試みの
出発前にその上に60秒間留まらせた。プラツトホームを
発見するまでの脱出潜伏期を測定した。
薬によるテストを行うため、ラツトには上記の実験2に
記載したのと同様にして、AF64AまたはCSF(3n mol/2μ
/側部)の注射を行つた。このラツトはまず始めにス
テツプ−スルー学習手順(上記の実験1を参照)にかけ
てから、水迷路でテストしたのは注射後3〜3.5ケ月目
であつた。ラツトを4つのグループに分け、18CSF−注
射ラツトはフイソステイグミン(0.1mg/kg、ip)(10匹
のラツト)または塩水(8匹)で処置した。20匹のAF64
A−注射ラツトも同様に分けた。ラツトには各々の日、
テスト直前にフイソステイグミンを注射した。
結果 脱出潜伏期は3通りのANOVA(4×2×2)即ち1つの
反復変数(試み)および2つの非反復変数(注射−AF64
A/CSFおよび処置−フイソステイグミン/塩水)で分析
された。第16図にはAF64A−注射ラツトは、CSF−注射ラ
ツトと比較し、脱出潜伏期(秒による)の増加を示した
ことを図示してある。この効果は非常に顕著である。F
(1,34)=14.88;p<0.001。すべての4つのグループに
対する最初の脱出潜伏期は同じである。しかし、CSF−
処置ラツトの脱出潜伏期はAF64Aラツトの脱出潜伏期よ
りも速やかに低下する。フイソステイグミンはAF64A−
およびCSF−注射グループの処置をしなかつたものと比
較して、AF64A−およびCSF−注射グループの両方の行動
を明らかに損傷したが、この結果は満足するほど著しい
ものではなかつた。試験効果は満足すべきほぼ有意であ
つた。F(15,510)=5.9;p<0.001。さらに、試みとフ
イソステイグミンの間の相互作用は有意であることが認
められた。F(15,510)=4.3;p≧0.001;フイソステイ
グミンは、注射グループに関係なしに脱出潜伏期曲線の
低下を阻止した。
同様にAF102B(1mg/kg、ip)についてモーリススイミン
グメイズ実験を行つたところ、この化合物は、AF64Aに
よつて誘発された記憶損傷を決定的に改善したが(第17
図参照)、フイソステイグミン(0.1mg/kg、ip)は効果
がなかつた。このテストにおけるAF102Bの有効な効果
は、AF64Aにより誘発された空間記憶機能障害に有効で
あつた。ここで注目すべきことは、SDAT患者における主
な記憶機能障害は、空間記憶の損傷であることである。
これらの実験の詳細については以下に詳しく述べる。
モーリス スイミング メイズ:方法と結果 a)実験材料 この実験の間、実験材料として、Sprague−Dawleyラツ
ト(イギリスのCharles River Breeding研究所から入手
したもの)で、生後5〜6ケ月、体重450〜580gのオス
を50匹使用した。これらのラツトを5匹匹づつのグルー
プでオリに入れ、飼料および水に自由に近ずけるように
しておいた。行動テストの前2.5〜3.5ケ月、ラツトにAF
64A(3n mole/2μ/側部)(20匹−グループ1)また
はCSF(20匹−グループ2)を上述のような手順で注射
した。
b)薬の投与 注射グループの各々は無差別に2つの等しい側部処置グ
ループにさらに区分した。訓練の終りで行動テスト第1
日目および第2日目にAF64A−注射サブグループの一方
およびCSF−注射グループの一方(即ち20匹)には塩水
中に溶かしたAF102B(1mg/kg、ip)を投与し、他の2つ
のサブグループ(n=20)に塩水を投与した。
AF102B(1mg/kg ip) この処置の脱出潜伏期と、3通りのANOVA(4×2×
2)即ち1つの反復変数(試験回数)および2つの非反
復回数〔注射(AF64A/CSF)および処置(AF102B/塩
水)〕とで分析した。第17図はAF64A−注射ラツトが、C
SF−−注射ラツトの脱出潜伏期と比較した脱出潜伏期が
著しく増加したことを示している〔F(1,36)=11.26;
p<0.005〕。さらにAF102B−処置ラツトはどちらを注射
したグループかによらず塩水処置したラツトと比較して
脱出潜伏期において顕著な低下を示した〔F(1,36)=
4.89;p<0.05〕。試験効果は、満足すべきほどに顕著で
あり〔F(5,180)=33.34;p<0.0001〕;さらに試験と
注射の間の相互反応は有意であることがわかり〔F(5,
180)=5.53;p<0.001〕;CSF−注射ラツトの脱出潜伏期
は、AF64A−注射ラツトの脱出潜伏期よりもずつと速く
低下した。
8−アームラジアルアームメイズ 概論 8−アームラジアルアームメイズにおいてAF64A(3n mo
le/2μ/側方)は記憶損傷を誘発する。ここではAF64
A−およびCSF−注射ラツトについてのAF102Bおよびフイ
ソステイグミンの効果を評価した。実験は、AF102B(5m
g/kg、ip)およびフイソステイグミン(0.1mg/kg、ip)
の両方について、共に訓練してから2時間遅れでの効果
を調べた。
方法 すべての実験で、Sprague Dawleyラツト(イギリスのCh
arles River Breeding研究所から得た)を使用した。こ
れらを別々に小室に入れ、自由に食べていた量の85%に
達した時、食物を取り上げた。部屋は、1日当り12時間
(6.00〜18.00)灯火をつけておき、行動訓練およびテ
スト期間は日中に実施した、自由に食べていた飼料の85
%に達した後、ラツトに日に3つの食料ペレツト(Labe
na)を与え、水には自由に近ずけるようにした。訓練が
開始される前の2日間ラツトに、後でメイズにおいて補
給用として使用される、45mgの正確なペレツト(Bioser
v Inc.)慣れさせておいた。
受動的回避およびモーリススイミングメイズテストにお
けると同様にしてAF64AおよびCSFの投与を行つた。
手順 まず受動的回避テストに使用された20匹のラツトのグル
ープを、注射後7週間新しいメイズ中で訓練した。訓練
の次に続く6日間、2時間の遅れの期間を挿入した。ラ
ツトに4つのペレツトを集めさせ、次にこれらをこのメ
イズから各々の小室にもどした。4時間経過後、残りの
4つのペレツトを集めるまでか、5分が経過するまでメ
イズの中に入れておいた。
実験1 同じグループのラツトに、最初の4つを拾い上げた直後
に、AF102B(5mg/kg、ip)または塩水(1mg/kg、ip)を
注射した。行動を与える影響を注射後2時間目にテスト
した。各々のラツトに両方の処置を2度ほどこした。AF
102B処置と塩水処置の間に1日の間をあけ、一組の処置
の間に2日をあけた。
実施例2 1週間後同じグループのラツトに最初の4つを拾い上げ
た直後にフイソステイグミン(0.1mg/kg、ip)または塩
水(1ml/kg、ip)を注射した。行動に与える影響を注射
後2時間目にテストした。
結果およびその検討 実験1: 最初の4つを拾い上げた終了直後にAF102B(5mg/kg、i
p)で処置すると行動に著しい影響が出た。(第18図参
照)2つの因子を混合したデザイン:一つの因子につい
ての反復測定における結果の分析は、AF64A注射ラツト
についてのエラーの平均値は、それらの対照(塩水で処
理したAF64A−注射ラツト)と比較した場合、顕著な減
少を示した。(p<0.01,F=17.5)。試験(AF102B対塩
水処置したもの)および条件(AF64A脳室内注射対CSF脳
室内注射)の間には顕著な影響がみられた。(p<0.00
5、F=14.5)。AF102B処置はラツトが前もつてAF64Aを
脳室内注射されていた場合のみ行動を改善することがで
きる。
実験2: フイソステイグミン投与によつて明らかに改良される傾
向があるものの、フイソステイグミン(0.1mg/kg、ip)
による処置はラツトの行動に顕著な影響は与えてなかつ
た。(第19図参照)しかしAF64A−注射ラツトとCSF−注
射ラツトの間の差は有意なまゝであつた。(p<0.00
5、F=11.4)。
結論 ラジアルアームメイズ手順を行うことによつて、(1)
AF64A−注射ラツトはCSF−注射ラツトと比較すると行動
に有意な差があること、および(2)記憶の損傷はAF10
2B(5mg/mg、ip)によつて回復させることができること
を極めてうまく証明できた。
行動研究のまとめ 以下の表には、AF102B、オキソトレモリンおよびピレン
ゼピンの関連データをまとめたが、この表から、本発明
の化合物が明らかなM1−タイプの作用薬として顕著な特
性を持つことを示している。すべての実験で、同じ種
(マウスまたはラツト)を用い、同じ条件下に行われな
かつたが、相対的活性プロフイールにおける顕著な対応
関係がピレンゼピン(M1−拮抗薬)とAF102B(M1−作用
薬)の間に見い出されている。両方の化合物について、
記憶損傷(ピレンゼピンにより誘発された)およびAF64
A−誘発記憶損傷の回復(AF102Bより生じた)は、(ピ
レンゼピンの場合においては)オキソトレモリンによつ
て誘発された中枢作用を消すのに必要とされる投与量よ
りも、または(AF102Bの場合においては)同様の中枢副
作用を誘発するために必要とされる投与量よりもずつと
少ない投与量で起る。
このようにM1−拮抗薬(ピレンゼピン)またはM1−作用
薬(AF102B)によつて仲介された認識作用は、ふるえと
か抗痛覚とかのような他の中枢作用よりも、このような
コリンク作用性干渉に対してより敏感である。この発見
は非常に重要であり、何故AF102Bがこのようにすぐれた
選択性を持つものであり、さらに何故このAF102BがSDAT
の薬としてすぐれた候補薬を考えることができるかを説
明するのに利用することができるのである。
本発明では、特定の好ましい具体例について記述しただ
けであつて、本発明の技術分野の技術者であれば種々の
変更および改良をなすことができることは明らかであ
る。従つて、本発明は、これらの実施例によつて何ら制
限されるものではなく、特許請求の範囲によつてのみ限
定されるにすぎないと解さるべきである。
【図面の簡単な説明】
第1図は3−ヒドロキシ−3−メチカプトメチルキヌク
リジンのNMR(250MHz)スペクトルであり、 第2図はシス:トランス(Ia)−HCl塩〔AF102〕のNMR
(250MHz)のスペクトルであり、 第3図はAF102Aと命名した(Ia)−HClの幾何異性体のN
MR(250MHz)スペクトルであり、 第4図はAF102Bと命名した(Ia)−HClの幾何異性体のN
MR(250MHz)スペクトルであり、 第5図はAF102Bがシス−異性体であることを示すその異
性体の塩酸塩のX線結晶学によつて決定されたAF102Bの
構造を描いたものであり、 第6図はAF102Aとして命名した(Ia)−HCl塩の幾何異
性体のIRスペクトル(Nicolet 20 XB FTIR)であり、 第7図はAF102Bとして命名した(Ia)−HCl塩の幾何異
性体のIRスペクトルであり、 第8図はAF64A−およびCSF−注射グループの、フイソス
テイグミンまたは塩水の投与前および投与後の、初期お
よび記憶保持テストの潜伏期の測定結果を示すものであ
り、 第9図はAF64A−およびCSF−注射グループの、AF102Bま
たは塩水投与前および投与後の初期および記憶保持テス
トの潜伏期の測定結果を示すものであり、 第10図は消去試験におけるAF102B(inter alia)につい
ての記憶保持テストの潜伏期の測定結果を示すものであ
り、 第11図は「消去+潜伏消去」試験におけるAF102Bについ
ての記憶保持テストの潜伏期の測定結果を示すものであ
り、 第12図はAF64B−およびCSF−注射グループのAF102Bまた
は塩水の第2投与後の記憶保持テストの潜伏期の測定結
果を示すものであり、 第13図はAF64A−およびCSF−注射グループの、AF102B
(0.1mg/kg、ip)または塩水投与後の記憶保持テストの
測定値を示すものであり、 第14図はAF64A−およびCSF−注射グループの、AF102B
(1mg/kg、po)または塩水の投与前および投与後の潜伏
期測定値(秒)を示すものであり、 第15図はAF64A−およびCSF−注射グループのAF102B(1m
g/kg、po)または塩水の投与前および投与後の記憶保持
テストの潜伏期測定値(秒)を示すものであり、 第16図はAF64A−およびCSF−注射グループのフィソステ
ィグミン投与後の2つのトライアルのブロックにおける
脱出潜伏期の測定値を示すものであり、 第17図はAF64A−およびCSF−注射グループのAF102B(1m
g/kg,ip)投与後の2つのトライアルのブロックにおけ
る脱出潜伏期の測定値を示すものであり、 第18図はAF64A−およびCSF−注射ラツトの、AF102B(5m
g/kg、ip)投与後の、8−アームラジアルアームメイズ
における平均エラーを示すものであり、そして 第19図はAF64A−およびCSF−注射ラツトの、塩水または
フイソステイグミン投与後の8−アームラジアルアーム
メイズにおける平均エラーを示すものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 アハロン レヴィ イスラエル国 ハナン モシャヴ ベイス (番地なし) (72)発明者 ヨナ グルンフェルド イスラエル国 レホヴォット スピノザ ストリート 21

Claims (53)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式(I) (式中、R1およびR2は、同一であっても異なるものであ
    ってもよく、各々アルキル、シクロペンチル、シクロヘ
    キシル、アリールまたはジアリールメチロール、または
    1以上のアリール基で置換されたアルキルであって、R1
    とR2のどちらか一方が水素であってもよい。) で表わされるキヌクリジン誘導体、これらの幾何異性
    体、対掌体、ジアステレオマー、ラセミ体または酸付加
    塩。
  2. 【請求項2】R1およびR2の一方が水素、他方がアルキ
    ル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アリール、ジア
    リールメチロール、または1以上のアリール基で置換さ
    れたアルキルである、特許請求の範囲第1項記載のキヌ
    クリジン誘導体。
  3. 【請求項3】R1およびR2の一方がアルキル、シクロペン
    チル、シクロヘキシル、他方がアルキル、シクロペンチ
    ル、シクロヘキシル、アリール、ジアリールメチロー
    ル、または1以上のアリール基で置換されたアルキルで
    ある、特許請求の範囲第1項記載のキヌクリジン誘導
    体。
  4. 【請求項4】R1およびR2の一方がアリール、他方がアリ
    ール、ジアリールメチロール、または1以上のアリール
    基で置換されたアルキルである、特許請求の範囲第1項
    記載のキヌクリジン誘導体。
  5. 【請求項5】R1およびR2の一方が水素、他方がメチルで
    ある、特許請求の範囲第2項記載のキヌクリジン誘導
    体。
  6. 【請求項6】R1およびR2の一方が水素、他方がフェニル
    である、特許請求の範囲第2項記載のキヌクリジン誘導
    体。
  7. 【請求項7】R1およびR2の一方が水素、他方がジフェニ
    ルメチルである、特許請求の範囲第2項記載のキヌクリ
    ジン誘導体。
  8. 【請求項8】R1およびR2の一方が水素、他方がエチル、
    プロピル、1−ピレンプロピルおよびジフェニルメチロ
    ールからなる群から選択される、特許請求の範囲第2項
    記載のキヌクリジン誘導体。
  9. 【請求項9】R1およびR2の一方がメチルであり、他方が
    フェニルである、特許請求の範囲第3項記載のキヌクリ
    ジン誘導体。
  10. 【請求項10】R1およびR2の一方がフェニル、他方がエ
    チルおよびシクロヘキシルからなる群から選択される、
    特許請求の範囲第3項記載のキヌクリジン誘導体。
  11. 【請求項11】R1およびR2の各々がフェニルである、特
    許請求の範囲第4項記載のキヌクリジン誘導体。
  12. 【請求項12】シス異性体である、特許請求の範囲第5
    項記載のキヌクリジン誘導体。
  13. 【請求項13】トランス異性体である、特許請求の範囲
    第5項記載のキヌクリジン誘導体。
  14. 【請求項14】塩酸塩である、特許請求の範囲第5,12ま
    たは13項記載のキヌクリジン誘導体。
  15. 【請求項15】3−ヒドロキシ−3−メルカプトメチル
    キヌクリジンを、式R1−CO−R2で表わされるカルボニル
    化合物と反応させ、反応混合物から目的生成物を単離す
    ることを特徴とする一般式(I) (式中、R1およびR2は、同一であっても異なるものであ
    ってもよく、各々アルキル、シクロペンチル、シクロヘ
    キシル、アリールまたはジアリールメチロール、または
    1以上のアリール基で置換されたアルキルであって、R1
    とR2のどちらか一方が水素であってもよい。) で表わされるキヌクリジン誘導体、これらの幾何異性
    体、対掌体、ジアステレオマー、ラセミ体または酸付加
    塩の製造方法。
  16. 【請求項16】酸触媒の存在下に反応させる、特許請求
    の範囲第15項記載の方法。
  17. 【請求項17】触媒がルイス酸である、特許請求の範囲
    第16項記載の方法。
  18. 【請求項18】ルイス酸が三弗化ホウ素である、特許請
    求の範囲第17項記載の方法。
  19. 【請求項19】反応を、窒素雰囲気中、20〜30℃の温度
    範囲で、触媒としての三弗化ホウ素エーテル錯化合物の
    存在下に、ジクロロメタン、クロロホルムからなる群か
    ら選択された1種以上の溶媒中で実施し、反応混合物か
    ら目的生成物を単離する、特許請求の範囲第15項記載の
    方法。
  20. 【請求項20】反応を約25℃の温度で行う、特許請求の
    範囲第19項記載の方法。
  21. 【請求項21】反応成分を窒素雰囲気中で−10゜〜20℃
    の温度で混合し、次いで得られた混合物を反応温度まで
    上昇させる、特許請求の範囲第19項または第20項記載の
    方法。
  22. 【請求項22】混合温度が約0℃である、特許請求の範
    囲第21項記載の方法。
  23. 【請求項23】単離に続いて、目的生成物を幾何異性体
    に分離する、特許請求の範囲第15項または第19項記載の
    方法。
  24. 【請求項24】その分離を分別結晶により行う、特許請
    求の範囲第23項記載の方法。
  25. 【請求項25】生成物を遊離塩基として単離し、次にそ
    の酸付加塩に転化させる、特許請求の範囲第15項または
    第19項記載の方法。
  26. 【請求項26】生成物を酸付加塩の形で単離し、次にそ
    の遊離塩基に転化させる、特許請求の範囲第15項または
    第19項記載の方法。
  27. 【請求項27】3−ヒドロキシ−3−メルカプトメチル
    キヌクリジンとケトンとの反応を不活性有機溶媒の存在
    下に行う、特許請求の範囲第15項から第18項のいずれか
    1項に記載の方法。
  28. 【請求項28】不活性有機溶媒が、ジクロロメタンおよ
    びクロロホルムからなる群から選ばれた1種以上からな
    るものである、特許請求の範囲第27項記載の方法。
  29. 【請求項29】一般式(I) (式中、R1およびR2は、同一であっても異なるものであ
    ってもよく、各々アルキル、シクロペンチル、シクロヘ
    キシル、アリールまたはジアリールメチロール、または
    1以上のアリール基で置換されたアルキルであって、R1
    とR2のどちらか一方が水素であってもよい。) で表わされるキヌクリジン誘導体またはその薬学上使用
    可能な酸付加塩と、不活性担体または希釈剤とからなる
    中枢神経系疾患治療用の薬剤組成物。
  30. 【請求項30】経口、直腸または非経口投与に適した形
    態、または吸入法による投与に適した形態のものであ
    る、特許請求の範囲第29項記載の薬剤組成物。
  31. 【請求項31】経皮的投与に適した形態のものである、
    特許請求の範囲第29項記載の薬剤組成物。
  32. 【請求項32】単位投与量形態のものである、特許請求
    の範囲第29項〜第31項のいずれか1項に記載の薬剤組成
    物。
  33. 【請求項33】式(1)のキヌクリジン誘導体が、R1
    よびR2一方が、フェニルであり、他方がエチル、シクロ
    ヘキシルおよびフェニルからなる群から選択される式
    (I)の化合物である、特許請求の範囲第29項〜第32項
    のいずれか1項に記載の薬剤組成物。
  34. 【請求項34】式(I)のキヌクリジン誘導体が、R1
    よびR2の一方が水素であり、他方がメチルまたはエチル
    である式(I)の化合物である、特許請求の範囲第29項
    〜第32項のいずれか1項に記載の薬剤組成物。
  35. 【請求項35】式(I)のキヌクリジン誘導体が、R1
    よびR2の一方が水素で、他方がメチルである式(I)の
    化合物のシス−異性体である、特許請求の範囲第29項〜
    第32項のいずれか1項に記載の薬剤組成物。
  36. 【請求項36】式(I)のキヌクリジン誘導体が、R1
    よびR2の一方が、3以上の炭素原子を含有しているアル
    キル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アリール、ジ
    アリールメチロールおよびアリール置換のアルキルから
    選択され、他方が前述したものである式(I)の化合物
    である、特許請求の範囲第29項〜第32項のいずれか1項
    に記載の薬剤組成物。
  37. 【請求項37】式(I)のキヌクリジン誘導体が、R1
    よびR2の一方がメチルであり、他方がフェニルである式
    (I)の化合物である、特許請求の範囲第36項記載の薬
    剤組成物。
  38. 【請求項38】式(I)のキヌクリジン誘導体が、R1
    よびR2の一方が水素であり、他方がジフェニルメチルで
    ある式(I)の化合物である、特許請求の範囲第36項記
    載の薬剤組成物。
  39. 【請求項39】式(I)のキヌクリジン誘導体が、R1
    よびR2の一方が水素であり、他方がプロピル、フェニ
    ル、1−ピレンプロピルおよびジフェニルメチロールか
    らなる群から選択されたものである式(I)の化合物で
    ある、特許請求の範囲第36項記載の薬剤組成物。
  40. 【請求項40】一般式(I) (式中、R1およびR2は、同一であっても異なるものであ
    ってもよく、各々アルキル、シクロペンチル、シクロヘ
    キシル、アリールまたはジアリールメチロール、または
    1以上のアリール基で置換されたアルキルであって、R1
    とR2のどちらか一方が水素であってもよい。) で表わされるキヌクリジン誘導体またはその薬学上使用
    可能な酸付加塩と、低分子量脂肪酸とからなる経皮的投
    与に適した、中枢神経系疾患治療用の薬剤組成物。
  41. 【請求項41】式(I)のキヌクリジン誘導体が、R1
    よびR2の一方が、フェニルであり、他方がエチル、シク
    ロヘキシルおよびフェニルからなる群から選択される式
    (I)の化合物である、特許請求の範囲第40項記載の薬
    剤組成物。
  42. 【請求項42】式(I)のキヌクリジン誘導体が、R1
    よびR2の一方が水素であり、他方がメチルまたはエチル
    である式(I)の化合物である、特許請求の範囲第40項
    記載の薬剤組成物。
  43. 【請求項43】式(I)のキヌクリジン誘導体が、R1
    よびR2の一方が水素で、他方がメチルである式(I)の
    化合物のシス−異性体である、特許請求の範囲第40項記
    載の薬剤組成物。
  44. 【請求項44】式(I)のキヌクリジン誘導体が、R1
    よびR2の一方が、3以上の炭素原子を含有しているアル
    キル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アリール、ジ
    アリールメチロールおよびアリール置換のアルキルから
    選択され、他方が前述したものである、特許請求の範囲
    第40項記載の薬剤組成物。
  45. 【請求項45】式(I)のキヌクリジン誘導体が、R1
    よびR2の一方がメチルであり、R1およびR2の他方がフェ
    ニルである式(I)の化合物である、特許請求の範囲第
    44項記載の薬剤組成物。
  46. 【請求項46】式(I)のキヌクリジン誘導体が、R1
    よびR2の一方が水素であり、他方がジフェニルメチルで
    ある式(I)の化合物である、特許請求の範囲第44項記
    載の薬剤組成物。
  47. 【請求項47】式(I)のキヌクリジン誘導体が、R1
    よびR2の一方が水素であり、他方がプロピル、フェニ
    ル、1−ピレンプロピルおよびジフェニルメチロールか
    らなる群から選択される式(I)の化合物である、特許
    請求の範囲第44項記載の薬剤組成物。
  48. 【請求項48】一般式(I) (式中、R1およびR2は、同一であっても異なるものであ
    ってもよく、各々アルキル、シクロペンチル、シクロヘ
    キシル、アリールまたはジアリールメチロール、または
    1以上のアリール基で置換されたアルキルであって、R1
    とR2のどちらか一方が水素であってもよい。) で表わされるキヌクリジン誘導体またはその薬学上使用
    可能な酸付加塩の0.5〜500mgの量と、不活性担体または
    希釈剤とからなり、単位投与量の形態のものである、中
    枢神経系疾患治療用の薬剤組成物。
  49. 【請求項49】5〜100mgのキヌクリジン誘導体または
    薬学上使用可能な酸付加塩からなる、特許請求の範囲第
    48項記載の薬剤組成物。
  50. 【請求項50】10〜50mgの量のキヌクリジン誘導体また
    はその薬学上使用可能な酸付加温からなる、特許請求の
    範囲第49項記載の薬剤組成物。
  51. 【請求項51】式(I)のキヌクリジン誘導体が、R1
    よびR2の一方は水素で、他方はメチルである式(I)の
    化合物のシス異性体である、特許請求の範囲第48項〜第
    50項のいずれか1項に記載の薬剤組成物。
  52. 【請求項52】経口投与に適した、特許請求の範囲第48
    項〜第51項のいずれか1項に記載の薬剤組成物。
  53. 【請求項53】非経口投与に適した、特許請求の範囲第
    48項〜第51項のいずれか1項に記載の薬剤組成物。
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