JPH0630246B2 - ボタン形リチウム有機二次電池 - Google Patents

ボタン形リチウム有機二次電池

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明はボタン形リチウム有機二次電池に関する。
〔従来の技術〕
従来、リチウム有機二次電池の負極には金属リチウムが
単体で用いられていたが、充電時の析出リチウムが非常
に活性で電解液と反応したり、あるいは析出リチウムの
デンドライト成長のため内部短絡を起こすなどの問題が
あった。その改良として、リチウム合金を負極に用いる
ことが提案されている。たとえば特開昭52−5423
号公報、特開昭59−130074号公報、特開昭59
−163755号公報などに上記提案がなされている
が、それらの公報に示されるものは主としてリチウム合
金の材料や合金組成に関するものである。
そこで、本発明者らは、リチウム合金をリチウム二次電
池の負極として使用する際に、リチウム板とアルミニウ
ム板とを重ね合わせて電池に組み込み、電解液の存在下
で電気化学的合金化を行う方法を検討し、冶金学的な合
金化による場合よりも容易な方法でリチウム有機二次電
池を得てきた(たとえば特願昭59−195337
号)。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかしながら、上記のようにリチウム板と、アルミニウ
ム板とを電解液の存在下で電気化学的に合金化させる場
合、使用するアルミニウム板によって充放電特性に大き
な差異が生じるという問題があった。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者らは、上記問題点を解決するとともに、電池の
充放電特性をさらに向上すべく鋭意研究を重ねた結果、
加工硬化、時効硬化などの硬化処理をしたアルミニウム
板または上記硬化処理をしたアルミニウム合金板を用
い、これをリチウム板と重ね合わせ、電解液の存在下で
電気化学的に合金化させたものを負極として用いるとき
は、安定して充放電特性の良好なボタン形リチウム有機
二次電池が得られることを見出し、本発明を完成するに
いたった。
すなわち、加工硬化、時効硬化などの硬化処理をしたア
ルミニウム板やアルミニウム合金板には粒界や転位が多
く存在し、この粒界や転位が多く存在することによって
リチウムとアルミニウムまたはアルミニウム合金との電
気化学的合金化や、リチウムのアルミニウム結晶中への
拡散が速められ、合金化が多量にかつ速く進行して電池
の充放電特性が向上するのである。
ここにおいて、粒界とは材料中の不純物などの集まりに
よって生成するものであるが、加工硬化、時効硬化など
の硬化処理をすると、アルミニウムの結晶は圧縮されて
扁平になり、結晶粒子間に存在する粒界は高密度にな
る。そして、転位と材料を折り曲げるなどの機械的処理
をした場合に生じる原子の欠損状態の集まりであるが、
これら粒界や転位が多く存在すると、電気化学的合金化
はこの粒界と転位を通って起こりやすく、その後、アル
ミニウムの結晶中にリチウムが拡散するので、アルミニ
ウムやアルミニウム合金を硬化処理して粒界や転位を多
く存在させておくと、前述のようにリチウムとの電気化
学的合金化反応やリチウムのアルミニウムの結晶中への
拡散が速くなるのである。
本発明において、加工硬化とは金属材料が常温における
圧延、引抜きなどの冷間加工によって硬化することをい
い、時効硬化とは急冷または冷間加工を受けた金属材料
が常温もしくは高温においてその性質が変化して硬化す
ることをいう。
上記のような硬化処理をしたアルミニウム板やアルミニ
ウム合金板はH材の略称で市販されている。なお、この
H材と相反する性質のアルミニウム板はO材の略称で市
販されており、このO材は完全焼なましをしてつくられ
たものである。
本発明において、負極中におけるリチウムと、アルミニ
ウムまたはアルミニウム合金との使用割合は、原子の量
を基準にした百分率でリチウムが35〜58%になるように
するのが好ましい。これはリチウムが35原子%未満であ
ると、リチウム量の減少により、リチウム−アルミニウ
ム合金の単位体積当りの電気容量が小さくなり、電池の
ような限られたスペースで使用する場合には欠点とな
り、一方、リチウムが58原子%より高くなると充放電サ
イクル試験において、デンドライトが成長しやすくな
り、内部短絡が生じるようになるからである。このリチ
ウムとアルミニウムまたはアルミニウム合金との使用割
合の管理は、通常、用いるリチウム板、アルミニウム板
またはアルミニウム合金板の厚さを管理することによっ
て行われる。
アルミニウム合金としては、たとえばアルミニウム−イ
ンジンウム合金、アルミニウム−マグネシウム合金、ア
ルミニウム−亜鉛合金などが用いられるが、それらアル
ミニウムと合金を形成する金属のアルミニウム合金中に
おける割合は原子%で20%以下にするのが好ましい。
負極作製にあたってのリチウムと硬化処理したアルミニ
ウムまたは硬化処理したアルミニウム合金との電解液の
存在下での電気化学的合金化は、通常、電池内で行われ
るが、合金化を電池外で行い、それを電池内に充填する
ようにしてもよい。
本発明において、正極活物質は、二次電池の正極活物質
として使用可能なものであればいずれも用い得るが、た
とえば二硫化チタン(TiS)、二硫化モリブデン
(MoS)、三硫化モリブデン(MoS)、二硫化
鉄(FeS)、硫化ジルコニウム(ZrS)、二硫
化ニオブ(NbS)、三硫化リンニッケル(NiPS
)、バナジウムセレナイド(VSe)などの遷移金
属のカルコゲン化物が二次電池特性が優れていることか
ら好ましい。特に二硫化チタンは層状構造を有し、その
中でのリチウムの拡散定数が非常に大きいことから、本
発明において好ましい。
電解液としては、この種の電池に通常用いられるリチウ
ムイオン伝導性の有機電解質溶液、たとえば1,2−ジ
メトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、プロピレ
ンカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフ
ラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキ
ソラン、4−メチル−1,3−ジオキソランなどの単独
または2種以上の混合溶媒に、たとえばLiClO
LiPF、LiBF、LiB(Cなどの
電解質を1種または2種以上溶解した有機電解質溶液が
用いられる。また上記有機電解質溶液中にはLiPF
などの安定性に欠ける電解質の分解を抑制するためにヘ
キサメチルホスホリックトリアミドなどの安定剤を含有
させてもよい。
〔実施例〕
つぎに実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1 厚さ0.24mmのリチウム板と厚さ0.25mmの加工硬化処理を
したアルミニウム板(H材)(純度、約99.5%、不純物
は主にケイ素、鉄)とを重ね合わせ、電池組込みにより
電解液と接触させ、電気化学的合金化を行って負極とし
た。このリチウム−アルミニウム合金におけるリチウム
とアルミニウムとの割合は、原子比でリチウム:アルミ
ニウムが42.5:57.5、つまり、リチウムが42.5原子%、
アルミニウムが57.5原子%であり、上記の加工硬化処理
したアルミニウム板はボタン形電池に使用するものであ
る関係上、当然、孔のあいていないものである。
正極には二硫化チタンを活物質とする成形合剤を用い、
電解液としては4−メチル−1,3−ジオキソラン66.6
容量%、1,2−ジメトキシエタン28.2容量%およびヘ
キサメチルホスホリックトリアミド5.2 容量%からなる
混合溶媒にLiPFを1.0 mol/l溶解させた有機電
解質溶液を用い、第1図に示すようなボタン形リチウム
有機二次電池を組み立てた。
第1図において、1は負極缶で、この負極缶1はステン
レス鋼製で表面にニッケルメッキが施されており、2は
ステンレス鋼製の集電網で、上記負極缶1の内面にスポ
ット溶接されている。3は負極で、この負極3は前記の
ようにリチウム板3aと、加工硬化処理したアルミニウム
板3bとを重ね合わせ、電池組込みにより電解液と接触さ
せ、電気化学的合金化を行ったものである。なお、図面
では理解を容易にするために合金化が進行する前の状態
で示しているが、実際の電池では合金化が進行して図示
の状態とは異なった状態になる。たとえばリチウムが約
48原子%以上では合金化により一体化してリチウム−ア
ルミニウム合金となって、図示のような境界線はなくな
る。しかし、リチウムの原子比が本実施例のように約48
原子%より少ない場合にはアルミニウムが一部残り、リ
チウム−アルミニウム合金層とアルミニウム層とにな
る。4は微孔性ポリプロピレンフイルムよりなるセパレ
ータで、5はポリプロピレン不織布よりなる電解液吸収
体であり、6は二硫化チタンを正極活物質とする加圧成
形体よりなる正極である。7はステンレス鋼製の集電網
で、8はステンレス鋼製で表面にニッケルメッキを施し
た正極缶であり、9はポリプロピレン製の環状ガスケッ
トである。
実施例2 加工硬化処理したアルミニウム板に代えて、厚さ0.25mm
の加工硬化処理したアルミニウム−インジウム合金板
(アルミニウム含量約99.5原子%)を用いたほかは実施
例1と同様にしてボタン形リチウム有機二次電池を製造
した。リチウムとアルミニウム−インジウム合金との使
用割合は原子比で約42.5:57.5であり、上記の加工硬化
処理したアルミニウム−インジウム合金板はボタン形電
池に使用されるものである関係上、当然、孔のあいてい
ないものである。
比較例1 厚さ0.24mmのリチウム板と、厚さ0.25mmの完全焼なまし
処理したアルミニウム板(O材)とを重ね合わせて電池
に組み込み、電解液の存在下で電気化学的に合金化さ
せ、負極としたほかは実施例1と同様のボタン形リチウ
ム有機二次電池を製造した。リチウムとアルミニウムと
の使用割合は実施例1の場合と同様に原子比で42.2:5
7.5であり、上記のアルミニウム板はボタン形電池に使
用されるものである関係上、当然、孔のあいていないも
のである。
上記実施例1〜2の電池および比較例1の電池を1mA
の定電流で0.5 mAhの充放電を1.5V〜2.5Vの
電圧範囲でサイクルさせた際の0.5mAh放電終了時
の電池電圧と充放電サイクル数の関係を第2図に示す。
第2図に示すように、本発明の実施例1〜2の電池は、
比較例1の電池に比べて、各サイクルにおける0.5m
Ah放電終了時の電池電圧が高く、また1.5V終了で
見た場合の0.5mAh放電可能なサイクル数も多く、
充放電特性が優れていることがわかる。これは実施例1
で用いたアルミニウム板や実施例2で用いたアルミニウ
ム−インジウム合金板が硬化処理によって粒界を多く有
していたためであると考えられる。
〔発明の効果〕
以上述べたように、本発明によれば充放電特性の優れた
ボタン形リチウム有機二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係るボタン形リチウム有機二次電池の
一例を示す断面図であり、第2図は本発明の実施例1〜
2の電池と比較例1の充放電サイクルに対する0.5m
Ah放電終了時点の電池電圧と充放電サイクル数との関
係を示す図である。 3……負極、3a……リチウム板、3b……硬化処理したア
ルミニウム板、4……セパレータ、6……正極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭53−75434(JP,A) 特開 昭59−146157(JP,A) 特開 昭59−64735(JP,A) 米国特許3981743(US,A)

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】正極、負極および電解液を備えたボタン形
    リチウム有機二次電池において、上記負極が、リチウム
    板と、硬化処理したアルミニウム板または硬化処理した
    アルミニウム合金板とを重ね合わせて、電解液の存在下
    で電気化学的に合金化したものであることを特徴とする
    ボタン形リチウム有機二次電池。
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