JPH0517782A - 高圧縮強度炭素繊維製造用液晶ピツチ及び高圧縮強度炭素繊維の製造方法 - Google Patents

高圧縮強度炭素繊維製造用液晶ピツチ及び高圧縮強度炭素繊維の製造方法

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JPH0517782A
JPH0517782A JP3194723A JP19472391A JPH0517782A JP H0517782 A JPH0517782 A JP H0517782A JP 3194723 A JP3194723 A JP 3194723A JP 19472391 A JP19472391 A JP 19472391A JP H0517782 A JPH0517782 A JP H0517782A
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benzene
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weight
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JP3194723A
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English (en)
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Tsutomu Naito
勉 内藤
Takashi Hino
隆 日野
Masaru Miura
勝 三浦
Kazuyuki Murakami
一幸 村上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Gas Chemical Co Inc
Tonen General Sekiyu KK
Original Assignee
Mitsubishi Gas Chemical Co Inc
Tonen Corp
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    • D01NATURAL OR MAN-MADE THREADS OR FIBRES; SPINNING
    • D01FCHEMICAL FEATURES IN THE MANUFACTURE OF ARTIFICIAL FILAMENTS, THREADS, FIBRES, BRISTLES OR RIBBONS; APPARATUS SPECIALLY ADAPTED FOR THE MANUFACTURE OF CARBON FILAMENTS
    • D01F9/00Artificial filaments or the like of other substances; Manufacture thereof; Apparatus specially adapted for the manufacture of carbon filaments
    • D01F9/08Artificial filaments or the like of other substances; Manufacture thereof; Apparatus specially adapted for the manufacture of carbon filaments of inorganic material
    • D01F9/12Carbon filaments; Apparatus specially adapted for the manufacture thereof
    • D01F9/14Carbon filaments; Apparatus specially adapted for the manufacture thereof by decomposition of organic filaments
    • D01F9/145Carbon filaments; Apparatus specially adapted for the manufacture thereof by decomposition of organic filaments from pitch or distillation residues

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Abstract

(57)【要約】 【目的】 特に圧縮強度の大きい炭素繊維を、安定して
生産性良く連続的に製造するのに適した液晶ピッチ及び
この液晶ピッチを使用した高圧縮強度炭素繊維の製造方
法を提供する。 【構成】 高圧縮強度炭素繊維製造用液晶ピッチは、ベ
ンゼン可溶分(BS)とベンゼン不溶分(BI)からな
り、ピッチのQ値(重量平均分子量/数平均分子量)が
1.7以下であり、且つベンゼン不溶分(BI)のベン
ゼン可溶分(BS)に対する数平均分子量の比が2.2
以下であり、芳香族性(fa)が0.8以上であり、C
/H原子比が1.85以下であり、更に、光学的異方性
相が90%以上である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、一般に高性能炭素繊維
(本明細書にて「炭素繊維」とは特に明記しない場合に
は炭素繊維のみならず黒鉛化繊維を含めて使用する)を
製造するのに適した液晶ピッチ及び炭素繊維の製造方法
に関するものであり、特に高圧縮強度の炭素繊維を製造
するのに適した液晶ピッチ及びこの液晶ピッチを使用し
た高圧縮強度の炭素繊維の製造方法に関するものであ
る。
【0002】本発明にて得られた、高圧縮強度炭素繊維
は、宇宙・航空産業、自動車産業又は建築産業などの種
々の産業分野にて使用される複合材料の強化繊維として
好適に使用し得るものである。
【0003】
【従来の技術】従来より、宇宙・航空機、自動車、建築
分野、その他種々の産業分野にて、軽量且つ高強度、高
弾性の複合材料の強化繊維として、例えば高引張強度、
高引張弾性率を有する、ポリアクリロニトリルを原料と
するPAN系炭素繊維、或はレーヨン系炭素繊維が多く
使用されているが、原料が高価であり、又炭化収率が悪
く、経済性の点で問題を有している。
【0004】これに対して、原料が安価であり且つ炭化
収率がより高いという点から石油系ピッチ或は石炭系ピ
ッチを原料としたピッチ系炭素繊維の研究開発が近年盛
んに行なわれている。しかしながら、ピッチ系炭素繊維
は、PAN系炭素繊維及びレーヨン系炭素繊維に較べ、
引張弾性率では優れているが、圧縮強度が劣るため、用
途が限定されると言われている。
【0005】従来、炭素繊維製造のために、例えば石油
系ピッチ或は石炭系ピッチを原料として製造される液晶
ピッチ及びその製造方法が数多く提案されているが、ピ
ッチ系炭素繊維の圧縮強度の向上を目的とした提案は極
めて少なく、特に光学的異方性相100%の液晶ピッチ
で圧縮強度の向上を目的としたものは皆無に等しい。
【0006】僅かに、特開平2−14023号公報に
は、光学的異方性相40%以下の液晶ピッチを使用して
圧縮強度に優れた炭素繊維及びその製造法を開示してい
るが、液晶ピッチの製造工程が、原料ピッチの水素添加
−水添ピッチの熱処理−光学的異方性ピッチの2段溶剤
抽出といった多くの工程を必要とし、このために製造コ
ストが高くなるものと考えられる。又、この公報には、
得られた炭素繊維の圧縮強度の測定法が明示されておら
ず、その効果は定かではない。
【0007】これに対し、例えば、特公昭64−455
8号公報には、熱処理のみで製造した液晶ピッチを開示
しているが、液晶ピッチの性状を特定している。しか
し、数平均分子量は約800〜900であるものの熱処
理で製造するために分子量分布がかなり広いと推定され
ることから、この公報記載の液晶ピッチからは炭素繊維
の圧縮強度の向上を期待することはできない。
【0008】又、特公平1−57715号公報は、液晶
ピッチの分子量分布を規定しているものの充分に制御さ
れるものでないことから、必ずしも炭素繊維の圧縮強度
の向上を期待することはできない。又、この公報に開示
される実施例を考察するに、液晶ピッチの収率は低く、
得られた液晶ピッチの軟化点も高いものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、従来技
術の熱処理法にて製造した液晶ピッチでは、組成、数平
均分子量、分子量分布などを制御できる範囲が限られる
ため、本出願にて規定するような高圧縮強度の炭素繊維
を製造するのに適した液晶ピッチの製造は不可能であ
る。
【0010】又、熱処理法の他に溶剤抽出法によれば、
液晶ピッチの組成、数平均分子量、分子量分布などを制
御できる可能性はあるが、これらの性状をより精度良く
制御し、特定化するためには、原料の特定化が必要であ
る。
【0011】即ち、従来技術の溶剤抽出法では、原料の
特定化がなされていないために、得られる液晶ピッチは
本出願にて規定するような高圧縮強度の炭素繊維を製造
するのに適した液晶ピッチの性状とは異なるものであ
る。
【0012】本発明者らは、多くの研究実験の結果、特
に、適度の数平均分子量で且つ分子量分布が狭い性状を
有した液晶ピッチにより炭素繊維を製造した場合に、引
張強度、引張弾性率を損なうことなく高圧縮強度の炭素
繊維を得ることができることを見出した。本発明は斯る
新規な知見に基づきなされたものである。
【0013】従って、本発明の目的は、特に圧縮強度の
大きい炭素繊維を、安定して生産性良く連続的に製造す
るのに適した液晶ピッチ及びこの液晶ピッチを使用した
高圧縮強度炭素繊維の製造方法を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的は本発明に係る
高圧縮強度の炭素繊維を製造するのに適した液晶ピッチ
にて達成される。要約すれば、本発明は、ピッチがベン
ゼン可溶分とベンゼン不溶分からなり、ピッチのQ値
(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下であ
り、且つベンゼン不溶分のベンゼン可溶分に対する数平
均分子量の比が2.2以下であり、芳香族性(fa)が
0.8以上であり、C/H原子比が1.85以下であ
り、更に、光学的異方性相が90%以上であることを特
徴とする高圧縮強度炭素繊維製造用液晶ピッチである。
【0015】更に説明すると、上述したように、本発明
者らは、多くの研究実験の結果、特に、適度の数平均分
子量で且つ分子量分布を狭い範囲内にもたらされた液晶
ピッチにより炭素繊維を製造した場合に高圧縮強度の炭
素繊維を得ることができることを見出した。
【0016】つまり、炭素繊維の圧縮強度を向上するた
めの液晶ピッチの特定化について研究及び実験をした結
果、液晶ピッチの性状として、 (1)数平均分子量が適度な範囲で、且つ小さい。 (2)低分子量成分及び高分子量成分のいずれも少な
く、分子量分布が狭い。 (3)芳香族性が高い。 (4)キノリン不溶分が少なく、粘度及び軟化点が比較
的低い。 などが重要であることを見出した。このような特性を有
する液晶ピッチを紡糸し、炭化して得られる炭素繊維が
高い圧縮強度を発現する理由は、液晶ピッチが特に、適
度な数平均分子量で且つ分子量分布が狭いために、得ら
れる炭素繊維の結晶構造も結晶サイズの分布が狭くな
り、引張弾性率に対する圧縮強度が向上するものと思わ
れる。
【0017】本発明者らは、上記(1)、(2)に関す
る液晶ピッチの特定化に当たり、ピッチのQ値(重量平
均分子量/数平均分子量)、及びベンゼン不溶分(B
I)のベンゼン可溶分(BS)に対する数平均分子量の
比の概念を導入した。この点について次に説明する。
【0018】なお、本発明でいうベンゼン不溶分及びキ
ノリン不溶分とは、粉末ピッチを1μmの平均孔径を有
する円筒フィルターに入れ、ソックスレー抽出器を用い
てベンゼンで20時間熱抽出して得られるベンゼン可溶
分を除去した成分をベンゼン不溶分とし、キノリンを溶
剤として遠心分離法(JIS K=2455)により分
離して得られる成分をキノリン不溶分とする。
【0019】上記「Q値」は、重量平均分子量を数平均
分子量で割った値であり、分子量的広がりの尺度を示
す。純物質は1.0であり、分子量分布が広くなる程、
値は大きくなる。
【0020】本発明では、ピッチのベンゼン不溶分(B
I)とベンゼン可溶分(BS)について、GPC(Gel P
ermeation Chromatography) で分子量分布を測定して得
られる重量平均分子量と数平均分子量からベンゼン不溶
分(BI)とベンゼン可溶分(BS)のQ値を求め、更
にベンゼン不溶分(BI)とベンゼン可溶分(BS)の
分子量分布と収率からピッチ全体のQ値を算出した。
【0021】本発明者らの研究の結果、Q値が小さい液
晶ピッチで炭素繊維を製造すると、炭素繊維の圧縮強度
が高くなることが分かった。
【0022】従って、本発明にて、ピッチのQ値(重量
平均分子量/数平均分子量)は1.6以下であり、好ま
しくは、1.5以下とされる。Q値が1.6を超える
と、この液晶ピッチで製造された炭素繊維の圧縮強度の
向上はそれほど望めなくなる。又、本発明で液晶ピッチ
の特定のために使用するベンゼン不溶分(BI)のベン
ゼン可溶分(BS)に対する数平均分子量の比の概念
は、必ずしも一般的に用いられているものではないが、
本発明の液晶ピッチを特定化する上では重要なファクタ
である。
【0023】本発明では、ベンゼン不溶分(BI)とベ
ンゼン可溶分(BS)について、それぞれVPO(Vapor
Pressure Osmometer)にて数平均分子量を測定して、こ
のベンゼン不溶分(BI)の数平均分子量をベンゼン可
溶分(BS)の数平均分子量で割った値で示した。一般
にベンゼン不溶分(BI)はベンゼン可溶分(BS)に
比べて数平均分子量は大きい。従って、この比が大きい
とピッチの構成成分であるベンゼン不溶分(BI)とベ
ンゼン可溶分(BS)の数平均分子量の差が大きく、逆
にこの比が小さいとベンゼン不溶分(BI)とベンゼン
可溶分(BS)の数平均分子量の差が小さいことを意味
する。即ち、この比が小さいことは、低分子量成分及び
高分子量成分の少ない、所謂、分子量分布が狭いことを
意味する。
【0024】本発明者らの研究によると、高圧縮強度の
炭素繊維を得るには液晶ピッチの、ベンゼン不溶分(B
I)のベンゼン可溶分(BS)に対する数平均分子量の
比は2.2以下であり、好ましくは、2.0以下とされ
る。この比が2.2を超えると、この液晶ピッチで製造
された炭素繊維の圧縮強度の向上はそれほど望めなくな
る。
【0025】更に、本発明で液晶ピッチの特定化に用い
る芳香族炭素含有率、即ち、芳香族性(fa)は、炭素
と水素の含有率分析と赤外線吸収法とから測定した芳香
族炭素原子の全炭素原子に対する比率を表わす。分子の
平面構造性は縮合多環芳香族炭化水素分子の大きさ、ナ
フテン環の数、側鎖の数と長さなどにより決まるから、
分子の平面構造性は芳香族性(fa)を指標として考案
することができる。即ち、縮合多環芳香族炭化水素が大
きいほど、ナフテン環の数が少ないほど、パラフィン側
鎖の数が少ないほど、側鎖の長さが短かいほど芳香族性
(fa)は大きくなる。従って、芳香族性(fa)が大
きいほど分子の平面構造性が大きいことを意味する。芳
香族性(fa)の測定計算方法は加藤の方法〔加藤ら、
燃料協会誌55、244(1976)〕によって行っ
た。
【0026】本発明で芳香族性(fa)は0.8以上で
あり、好ましくは0.8〜0.9とされる。芳香族性
(fa)が0.8未満であると、分子の平面構造性が小
さくなり、この液晶ピッチで製造された炭素繊維の圧縮
強度の向上はそれほど望めなくなる。
【0027】又、C/H原子比は、上記芳香族性(f
a)と共に、ピッチ分子の平面構造性を判断する指標と
して使用されるものであり、C/H原子比が大きいほど
分子の平面構造性が大きいことを意味する。しかしなが
ら、C/H原子比が余りにも大きくなると、ピッチ分子
の平面構造性は大きくなるが、ある温度での流体流動性
の低下及び軟化点の増大をきたすものとなる。
【0028】従って、本発明でC/H原子比は1.85
以下とされ、好ましくは1.55〜1.80とされる。
C/H原子比が1.85を超えると、分子の平面構造性
は良くなるが、軟化点が高くなり、又、C/H原子比が
1.55未満となると、分子の平面構造性が小さくな
り、この液晶ピッチで製造された炭素繊維の圧縮強度の
向上はそれほど望めなくなる。
【0029】本発明の液晶ピッチは軟化点が320℃以
下とされる。又、この軟化点は、ASTMD−3104
に準拠したメトラー軟化点の値である。
【0030】本発明の液晶ピッチの光学的異方性相は9
0%以上、好ましくは実質100%とされる。光学的等
方性相を10%以上含有する実質的に不均質な液晶ピッ
チの場合、高粘度の光学的異方性相と低粘度の光学的等
方性相との明らかな二相の混合物であるため、粘度の異
なるピッチの混合物を紡糸することになり、安定紡糸が
でき難く、又光学的等方性相を含有するため引張り強
度、弾性率が発現し難く、結果として高性能炭素繊維が
得られない。
【0031】尚、本発明でいう「光学的異方性相」と
は、ピッチ構成成分の一つであり、常温近くで固化した
ピッチ塊の断面を研摩し、反射型偏光顕微鏡で直交ニコ
ルを回転して光輝が認められる、即ち、光学的異方性で
ある部分を意味し、これに対し、光輝が認められない、
即ち、光学的等方性相である部分は光学的等方性と呼
ぶ。また、本発明における光学的異方性相は、所謂メソ
フェースと同様と考えられるが、メソフェースにはキノ
リン又はピリジンに不溶なものとキノリン又はピリジン
に可溶な成分を多く含むものとの二種類があり、本発明
でいう光学的異方性相は主として、後者のメソフェース
である。
【0032】又、本発明でいう光学的異方性相の含有量
とは、試料を偏光顕微鏡で直交ニコル下で観察写真撮影
して、試料中の光学的異方性相部分の占める面積割合を
測定することにより求めたものである。
【0033】又、本発明の炭素繊維の圧縮強度は、本特
許出願人の出願に係る特願平3−29628号に記載の
方法に従って測定した。図1を参照して、測定方法を簡
単に説明する。
【0034】つまり、一定張力下にある所定のフィラメ
ント数(3000本程度)からなる試料繊維束にエポキ
シ樹脂溶液を含浸させる。樹脂が含浸された試料繊維
束、即ちストランドを硬化用枠(ワインダ)に巻き取
り、試料ストランドを直線状に保持した状態で乾燥器で
加熱硬化する。硬化したストランドは、長さ300mm
に切断する。又、このストランドは直径1mmの円形断
面とされる。
【0035】次いで、ストランド1の両端にエポキシ系
接着剤を用いて、長さ(l)が30mm、内径(d1
が1mm、外径(d2 )が3mmとされるステンレスス
チールパイプにて形成された金属性円筒状タブ2を接着
し、試験片3を作製する。試験片3のストランド露出部
(LS )は5mmとされる。
【0036】このようにして作製した試験片3の両端を
それぞれ、下ホルダー4及び上ホルダー5に取付け、両
ホルダー4、5を円筒状スリーブ6内に挿入する。両ホ
ルダー4、5は外径(DH )が15mm、長さ(LH
が40mmのステンレススチールにて作製し、ステンレ
ススチール製の円筒状スリーブ6中に装着される。
【0037】このように組み立てられた試験装置を、材
料試験機の固定台101に設置し、材料試験機のクロス
ヘッド102にて、点荷重負荷用ボール7及び上ホルダ
ー5を介して、試験片3に圧縮荷重を負荷する。クロス
ヘッド102の移動速度は1mm/分とする。
【0038】繊維の圧縮強度(σf )は、上記圧縮試験
における最大荷重から次式にて算出される。 σf =P/Af =(Pmax +w)×ρ/T×1000 (1) ここで、P :総荷重(kg) Pmax :最大荷重(kg) w :上部治具重量(kg) Af :繊維の全断面積(mm2 ) ρ :繊維の密度(g/cm3 ) T :繊維の繊度(mg/m) 上記圧縮強度測定方法は、従来行なわれているASTM
D3410(Celanese法、IITRI 法)などによる測定
方法と実質的に同じ測定結果を短時間で、正確に且つ再
現性良く得ることができる。
【0039】以下、本発明の液晶ピッチの製造方法につ
いて詳細に説明する。
【0040】本発明者らは、上記性状を有した本発明の
液晶ピッチを研究する過程において、斯る性状の液晶ピ
ッチは、如何なる方法によって製造してもよいが、例え
ば芳香族炭化水素を原料としてその重合条件を制御する
ことにより、又は特定の原料ピッチを溶剤抽出或は減圧
蒸留で軽質分(低分子量成分)を除去することにより、
製造できることを見出した。
【0041】以下に、原料ピッチとして特定の組成、性
状を有する光学的等方性相を主成分とするピッチを使用
し、これを溶剤抽出による低分子量成分の除去、或は、
実質的に重縮合反応が起こらない特定条件下に減圧蒸留
することによって軽質分(低分子量成分)を除去して光
学的異方性相の生成を行ない、該光学的異方性相を回収
することによって、好適に製造する方法を詳細に説明す
る。
【0042】即ち、原料ピッチとして、n−ヘプタン不
溶分80重量%以上(好ましくは85重量%以上)、ベ
ンゼン不溶分10重量%以上(好ましくは20重量%以
上)、キノリン不溶分5重量%以下(好ましくは1重量
%以下)とされ、又、芳香族性(fa)は0.75以上
(好ましくは0.8以上)であり、そして軟化点は28
0℃以下である光学的等方性相を主成分とするピッチが
使用される。
【0043】本発明では、n−ヘプタン不溶分、ベンゼ
ン不溶分、及びキノリン不溶分とは、粉末ピッチを1μ
mの平均孔径を有する円筒フィルターに入れ、ソックス
レー抽出器を用いてn−ヘプタンで20時間熱抽出して
得られるn−ヘプタン可溶分を除去した成分をn−ヘプ
タン不溶分とし、同じくベンゼンで20時間熱抽出して
得られるベンゼン可溶分を除去した成分をベンゼン不溶
分とし、キノリンを溶剤として遠心分離法(JIS K
=2455)により分離して得られる成分をキノリン不
溶分とする。
【0044】更に、ここでいう原料ピッチの軟化点と
は、ピッチの固−液転移温度をいうが、上述したよう
に、この軟化点は、ASTMD−3104に準拠したメ
トラー軟化点の値である。
【0045】原料ピッチについて更に説明すると、原料
ピッチ中のn−ヘプタン不溶分が少ないと、低分子量成
分を除去する場合に、多量の低分子量成分を除去する必
要が生じ、収率が低く効率的でない。従って、n−ヘプ
タン不溶分80重量%以上のものが使用される。ただ、
n−ヘプタン不溶分があまりにも多いと、得られる光学
的異方性ピッチの軟化点及び粘度が高くなりやすいの
で、n−ヘプタン不溶分は95重量%以下とするのが好
ましい。
【0046】また、原料ピッチ中のベンゼン不溶分は、
該ピッチ中のキノリン不溶分が5重量%以下であるの
で、実質的にはベンゼンに不溶でキノリンに可溶な成分
を意味し、これは光学的異方性相を発現する核となる成
分である。従って、ベンゼン不溶分は軟化点、粘度等か
ら許容される範囲内で出来るだけ多く含有されることが
好ましく、該成分が多くなる程光学的異方性相生成も容
易になる。従って、ベンゼン不溶分10重量%以上のも
のが使用される。ベンゼン不溶分が10重量%未満で
は、光学的異方性相が生成しにくく、且つ多量の低分子
量成分の除去が必要となるので効率的でない。ただ、通
常ベンゼン不溶−キノリン可溶成分は単独では加熱した
とき溶融しないので、光学的異方性ピッチを溶融させる
ためには、ベンゼン可溶分を含有していることが好まし
く、従ってベンゼン不溶分は85重量%以下とすること
が好ましい。付言すると、ベンゼン可溶分及びn−ヘプ
タン不溶−ベンゼン可溶分は、各々単独では光学的異方
性を示さないが、光学的異方性ピッチを溶融させ紡糸に
適した粘度とするためには、含まれている必要がある。
【0047】更に、原料ピッチ中のキノリン不溶分も、
光学的異方性を発現する核となる成分であるが、ベンゼ
ン不溶−キノリン可溶成分に比べ、高分子量成分である
ため、低温で安定紡糸できる光学的異方性ピッチを得る
ためには、原料ピッチ中には全く含まれないか、或は含
まれていてもできるだけ少ないことが望ましい。キノリ
ン不溶分が5重量%を越えると、得られる光学的異方性
ピッチの軟化点及び粘度が高くなり、紡糸温度が高温に
なる上に、紡糸性も悪いものになる。なお、高分子量の
キノリン不溶分を含まないピッチの方が、低分子量成分
を除去する許容範囲が広くなり、好ましい。低分子量成
分の除去の程度で光学的異方性ピッチの軟化点、粘度等
が影響を受け、しかもこの除去の程度でピッチ繊維の不
融化性をある程度制御することも出来る。
【0048】更に又、原料ピッチの芳香族性(fa)が
低いと、光学的異方性が形成しにくくなるため、芳香族
性(fa)は高い方が好ましく、芳香族性(fa)が
0.75以上、好ましくは0.8以上のものが使用され
る。ただ、必要以上に高くなると、軟化点、粘度等が高
くなりすぎるので、通常は0.9以下が好ましい。
【0049】更に、原料ピッチの軟化点については、得
られる光学的異方性ピッチが低温で安定紡糸されるため
には、低い方が好ましく、従って、軟化点280℃以下
のものが使用される。ただ、得られる光学的異方性ピッ
チの軟化点がある程度高い方が、ピッチ繊維の不融化性
が良好なため、通常は軟化点190℃以上のものが好ま
しい。
【0050】上記に示す特定の組成、性状をもつ光学的
等方性相を主成分とするピッチは、縮合多環芳香族炭化
水素を含む出発原料或は芳香族炭化水素から、(a)熱
処理或は触媒重合で目的とするピッチを得る方法、
(b)熱処理或は触媒重合で光学的等方性ピッチを得た
後、溶剤抽出或は減圧蒸留によって目的とするピッチを
得る方法、(c)熱処理或は触媒重合で光学的異方性相
を含有するピッチを製造後、比重差分離によって光学的
異方性相を除去して目的とするピッチを得る方法、
(d)熱処理或は触媒重合で光学的異方性相を含有する
ピッチを製造後、溶剤抽出によってキノリン不溶分を除
去して目的とするピッチを得る方法、などによって調製
することができる。
【0051】尚、該光学的等方性相を主成分とするピッ
チの調製方法は(a)〜(d)の方法に限定されるもの
ではない。
【0052】このようにして得られる特定の性状を有し
た前記光学的等方性相を主成分とするピッチは、溶剤抽
出法によって低分子量成分を除去し、或は実質的に熱重
縮合反応が起こらない特定条件下に減圧蒸留することに
よって軽質分(低分子量成分)を除去して、光学的異方
性相の生成が行われる。
【0053】溶剤抽出により低分子量成分を除去して光
学的異方性相の生成を行う場合、予め原料ピッチの粉砕
化を行い、原料ピッチ1部に対し10〜100部程度の
溶剤を希釈し、常圧或は加圧下で、常温或は加温下で行
うことができる。
【0054】以下に説明する本実施例では、n−ヘプタ
ンとベンゼンの混合有機溶剤を使用して行っているが、
これに限定されるものではなく、原料ピッチの低分子量
成分を抽出、分離し、溶剤不溶のピッチに光学的異方性
相を生成することができるものであれば、種々の溶剤を
使用して行うことが可能である。
【0055】例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、
メチルエチルケトン等の有機溶剤を単独で使用して行う
ことができる。又、これらの有機溶剤と例えばn−ヘプ
タン、n−ヘキサン、アセトン等の有機溶剤を混合し、
混合溶剤を使用して行うこともできる。
【0056】尚、溶剤抽出法では、溶剤抽出のみで低分
子量分子を除去することにより、実質的に100%の光
学的異方性相の、目的とする液晶ピッチを得ることが、
又、溶剤抽出法によりピッチ中に20〜70%の光学的
異方性相を含有するピッチを得た後、光学的異方性相を
回収することにより実質的に100%の光学的異方性相
の目的とする液晶ピッチを得ることが、使用する溶剤及
び必要の場合混合溶剤の溶剤混合比の条件を選定するこ
とにより可能である。
【0057】減圧蒸留法により、軽質分(低分子量成
分)の除去と光学的異方性相の生成を行う場合には、該
減圧蒸留処理は実質的にピッチの熱分解重縮合反応が起
こらない温度領域で且つ高真空下に行われる。即ち、こ
の減圧蒸留処理は、400℃以下、好ましくは370℃
以下の温度で且つ10mmHg以下、好ましくは1.0
mmHg以下の圧力下で行い、原料ピッチの性状の選択
により実質的に100%の光学的異方性相の液晶ピッチ
を得ることができるが、好ましくは、ピッチ中に20〜
70%の光学的異方性相を含有するピッチを得た後光学
的異方性相を回収することにより、実質的に100%の
光学的異方性相の、目的とする液晶ピッチを得ることが
できる。
【0058】以下に、ピッチ中に20〜70%の光学的
異方性相を含有するピッチから実質的に100%の光学
的異方性相のピッチを回収する方法について説明する。
【0059】この回収方法としては、公知の種々の分離
法が適宜採用されるが、特に比重差を利用する分離法、
例えば、特公昭61−38755号、同62−2403
6号公報記載の方法を採用するのが好ましく、とりわけ
工業生産においては、遠心分離法を採用するのが好まし
い。
【0060】遠心分離法は、熱処理によって生成した光
学的異方性相含有ピッチに、その溶融状態で、遠心分離
操作を加えることにより、光学的異方性相は光学的等方
性相よりも比重が大きいために迅速に沈降し、合体成長
しつつ下層(遠心力方向の層)へ集積し、下層を上層よ
り分離して取出し、光学的異方性ピッチと光学的等方性
ピッチとを分離する方法である。
【0061】この光学的異方性ピッチ回収処理により、
光学的異方性相含有量が90%以上、実質的に100%
の本発明に係る液晶ピッチが、短時間に、経済的に得ら
れる。
【0062】以上のようにして得られた液晶ピッチを、
公知の方法に従って、溶融紡糸し、得られたピッチ繊維
を不融化し、炭化し、場合により更に黒鉛化することに
より、不融化及び炭化特性が優れ、紡糸安定性が良好
で、高性能の、特に圧縮強度の大きいピッチ系炭素繊維
及び黒鉛化繊維を安定して容易に得ることができる。
【0063】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳細に説明
するが、もちろん本発明の範囲はこれに限定されるもの
ではない。
【0064】実施例1 石油の接触分解工程で副生する重質残渣油を原料として
熱分解重縮合反応を行ない、光学的異方性相約50%含
有するピッチを製造し、このピッチを遠心分離機で遠心
分離を行ない、光学的等方性相を主成分とするピッチ
“A”と、光学的異方性相100%の光学的異方性ピッ
チ“B”を得た。
【0065】ピッチ“A”は、n−ヘプタン不溶分90
重量%、ベンゼン不溶分63重量%、ピリジン不溶分8
重量%、キノリン不溶分0.6重量%、軟化点239
℃、芳香族性(fa)0.86、C/H原子比1.64
で、光学的異方性相約5%含有するものであった。
【0066】このピッチ“A”を粉砕し、250μm以
下の粉末に篩分けし、粉末ピッチ1gに対し、30ml
の割合のn−ヘプタンとベンゼンの混合溶剤(n−ヘプ
タン:ベンゼン=50:50)を加え、室温で2時間抽
出を行なった後、この溶液を5μmフィルターで濾過
し、n−ヘプタン・ベンゼン混合溶剤不溶分を約50重
量%の収率で得た。この溶剤不溶分は、光学的異方性相
約50%のピッチ“C”であった。
【0067】次に、このピッチ“C”をバッチ式遠心分
離機に張込み、窒素雰囲気下で遠心分離を行ない、光学
的異方性相100%の液晶ピッチ“D”と、実質的に光
学的異方性相を含まない光学的等方性のピッチとに分離
した。
【0068】液晶ピッチ“D”は、ベンゼン可溶分3
4.5重量%、ベンゼン不溶分65.5重量%からな
り、Q値(重量平均分子量/数平均分子量)が1.4で
あり、ベンゼン可溶分とベンゼン不溶分の数平均分子量
がそれぞれ750と1230であり、ベンゼン不溶分の
ベンゼン可溶分に対する数平均分子量の比が1.6であ
り、ベンゼン可溶分とベンゼン不溶分のQ値がそれぞれ
1.1と1.3であり、キノリン不溶分2.5重量%、
芳香族性(fa)が0.88であり、軟化点が297℃
であり、C/H原子比が1.64であった。
【0069】次に、この液晶ピッチ“D”を0.3mm
径のノズルを有する紡糸機に充填し、321℃の紡糸温
度においてプランジャーで押圧し、500m/分の引取
り速度で連続1時間以上にわたって糸切れをすることな
く、平均繊維径約13μmのピッチ繊維を得た。
【0070】このピッチ繊維を酸素雰囲気中で、230
℃で1時間不融化処理を行なった後、不活性ガス雰囲気
中で2000℃まで昇温し、炭素繊維を得た。
【0071】得られた炭素繊維の平均繊維径は9.8μ
mで、平均引張強度は3.5GPa、平均引張弾性率は
600GPa、平均圧縮強度は0.70GPaであっ
た。
【0072】比較例1 実施例1で得た液晶ピッチ“B”は、ベンゼン可溶分3
4.5重量%、ベンゼン不溶分65.5重量%からな
り、Q値(重量平均分子量/数平均分子量)が1.8で
あり、ベンゼン可溶分とベンゼン不溶分の数平均分子量
がそれぞれ600と1880であり、ベンゼン不溶分の
ベンゼン可溶分に対する数平均分子量の比が3.1であ
り、ベンゼン可溶分とベンゼン不溶分のQ値がそれぞれ
1.2と1.5であり、キノリン不溶分34重量%、芳
香族性(fa)が0.89であり、軟化点が287℃で
あり、C/H原子比が1.75であった。
【0073】この液晶ピッチ“B”を実施例1と同じ紡
糸機に充填し、325℃の紡糸温度で紡糸し、平均繊維
径13μmのピッチ繊維を得た。
【0074】このピッチ繊維を実施例1と同じく、不融
化、炭化処理を行なった。得られた炭素繊維の平均繊維
径は9.9μmで、平均引張強度は3.4GPa、平均
引張弾性率は510GPa、平均圧縮強度は0.50G
Paであった。
【0075】実施例2 ナフタレンを原料として触媒重合でピッチ“E”を得
た。ピッチ“E”は、n−ヘプタン不溶分92重量%、
ベンゼン不溶分24重量%、ピリジン不溶分6重量%、
キノリン不溶分0重量%、軟化点200℃、芳香族性
(fa)0.84、C/H原子比1.54で、光学的異
方性相は0%であった。
【0076】この光学的等方性ピッチ“E”を実施例1
と同様に、250μm以下の粉末とし、粉末ピッチ1g
に対し、30mlの割合のn−ヘプタンとベンゼンの混
合溶剤(n−ヘプタン:ベンゼン=20:80)を加
え、室温で2時間抽出を行なった後、この溶液を5μm
フィルターで濾過し、n−ヘプタン・ベンゼン混合溶剤
不溶分を約55重量%の収率で得た。この溶剤不溶分
は、光学的異方性相100%の液晶ピッチ“F”であっ
た。
【0077】この液晶ピッチ“F”は、ベンゼン可溶分
46.2重量%、ベンゼン不溶分53.8重量%からな
り、Q値(重量平均分子量/数平均分子量)が1.5で
あり、ベンゼン可溶分とベンゼン不溶分の数平均分子量
がそれぞれ820と1550であり、ベンゼン不溶分の
ベンゼン可溶分に対する数平均分子量の比が1.9であ
り、ベンゼン可溶分とベンゼン不溶分のQ値がそれぞれ
1.2と1.3であり、キノリン不溶分0重量%、芳香
族性(fa)が0.84であり、軟化点が302℃であ
り、C/H原子比が1.60であった。
【0078】この液晶ピッチ“F”を実施例1と同じ紡
糸機に充填し、322℃の紡糸温度で紡糸し、平均繊維
径13μmのピッチ繊維を得た。
【0079】このピッチ繊維を、酸素濃度60%、窒素
濃度40%の酸化ガス雰囲気中で、285℃まで昇温し
て不融化処理を行なった後、不活性ガス雰囲気中で20
00℃まで昇温し、炭素繊維を得た。
【0080】得られた炭素繊維の平均繊維径は9.9μ
mで、平均引張強度は3.0GPa、平均引張弾性率は
610GPa、平均圧縮強度は0.69GPaであっ
た。
【0081】比較例2 実施例2と同じナフタレンを原料として触媒重合で光学
的異方性相100%のピッチ“G”を得た。
【0082】この液晶ピッチ“G”は、ベンゼン可溶分
38.0重量%、ベンゼン不溶分62.0重量%からな
り、Q値(重量平均分子量/数平均分子量)が1.7で
あり、ベンゼン可溶分とベンゼン不溶分の数平均分子量
がそれぞれ460と1850であり、ベンゼン不溶分の
ベンゼン可溶分に対する数平均分子量の比が4.0であ
り、ベンゼン可溶分とベンゼン不溶分のQ値がそれぞれ
1.2と1.4であり、キノリン不溶分35.1重量
%、芳香族性(fa)が0.85であり、軟化点が28
0℃であり、C/H原子比が1.52であった。
【0083】この液晶ピッチ“G”を実施例1と同じ紡
糸機に充填し、307℃の紡糸温度で紡糸し、平均繊維
径13μmのピッチ繊維を得た。
【0084】このピッチ繊維を実施例2と同じ方法で、
不融化、炭化処理を行なった。得られた炭素繊維の平均
繊維径は9.5μmで、平均引張強度は3.3GPa、
平均引張弾性率は580GPa、平均圧縮強度は0.4
9GPaであった。
【0085】比較例3 実施例1と同じ石油の接触分解工程で副生する重質残渣
油を原料として熱分解重縮合反応を行ない、光学的異方
性相を含有しない光学的等方性ピッチ“H”を得た。
【0086】この光学的等方性ピッチ“H”は、n−ヘ
プタン不溶分78重量%、ベンゼン不溶分5重量%、ピ
リジン不溶分3重量%、キノリン不溶分1.2重量%、
軟化点120℃、芳香族性(fa)0.87、C/H原
子比1.39であった。
【0087】この光学的等方性ピッチ“H”を実施例1
と同じように、250μm以下の粉末とし、粉末ピッチ
1gに対し、30mlの割合のベンゼンを加え、室温で
2時間抽出を行なった後、この溶液を5μmフィルター
で濾過し、ベンゼン不溶分を約20重量%の収率で得
た。この溶剤不溶分は、光学的異方性相100%のピッ
チ“I”であった。
【0088】この液晶ピッチ“I”は、ベンゼン可溶分
42重量%、ベンゼン不溶分58重量%からなり、Q値
(重量平均分子量/数平均分子量)が1.7であり、ベ
ンゼン可溶分とベンゼン不溶分の数平均分子量がそれぞ
れ670と1650であり、ベンゼン不溶分のベンゼン
可溶分に対する数平均分子量の比が2.5であり、ベン
ゼン可溶分とベンゼン不溶分のQ値がそれぞれ1.2と
1.4であり、キノリン不溶分4.8重量%、芳香族性
(fa)が0.92であり、軟化点が325℃であり、
C/H原子比が1.88であった。
【0089】この液晶ピッチ“I”を実施例1と同じ紡
糸機に充填し、350〜370℃の紡糸温度で紡糸を行
なったが、糸切れが多く安定した紡糸ができなかった。
【0090】比較例4 比較例3と同じピッチ“H”の粉末1gに対し、30m
lの割合のn−ヘプタンとベンゼンの混合溶剤(n−ヘ
プタン:ベンゼン=75:25)を加え、室温で2時間
抽出を行なった後、この溶液を5μmフィルターで濾過
し、n−ヘプタン・ベンゼン混合溶剤不溶分を約87重
量%の収率で得た。この溶剤不溶分は、光学的異方性相
を約40%含有するピッチ“J”であった。
【0091】次に、このピッチ“J”を実施例1と同じ
遠心分離機で遠心分離を行ない、光学的異方性相100
%の液晶ピッチ“K”を得た。
【0092】この液晶ピッチ“K”は、ベンゼン可溶分
37重量%、ベンゼン不溶分63重量%からなり、Q値
(重量平均分子量/数平均分子量)が1.7であり、ベ
ンゼン可溶分とベンゼン不溶分の数平均分子量がそれぞ
れ580と1590であり、ベンゼン不溶分のベンゼン
可溶分に対する数平均分子量の比が2.7であり、ベン
ゼン可溶分とベンゼン不溶分のQ値がそれぞれ1.2と
1.5であり、キノリン不溶分5.8重量%、芳香族性
(fa)が0.9であり、軟化点が290℃であり、C
/H原子比が1.88であった。
【0093】この液晶ピッチ“K”を実施例1と同じ紡
糸機に充填し、326℃の紡糸温度で紡糸し、平均繊維
径13μmのピッチ繊維を得た。
【0094】このピッチ繊維を実施例1と同じく、不融
化、炭化処理を行なった。得られた炭素繊維の平均繊維
径は9.9μmで、平均引張強度は3.0GPa、平均
引張弾性率は480GPa、平均圧縮強度は0.46G
Paであった。
【0095】比較例5 石油の溶剤抽出で得た重質残渣油を原料として熱分解中
縮合反応を行ない、光学的異方性相を含有しない光学的
等方性ピッチ“L”を得た。
【0096】この光学的等方性ピッチ“L”は、n−ヘ
プタン不溶分37重量%、ベンゼン不溶分14重量%、
ピリジン不溶分2重量%、キノリン不溶分1.1重量
%、軟化点120℃、芳香族性(fa)0.70、C/
H原子比1.18であった。
【0097】この光学的等方性ピッチ“L”を実施例1
と同じように、250μm以下の粉末とし、粉末ピッチ
1gに対し、30mlの割合のn−ヘプタンとベンゼン
の混合溶剤(n−ヘプタン:ベンゼン=50:50)を
加え、室温で2時間抽出を行なった後、この溶液を5μ
mフィルターで濾過し、n−ヘプタン・ベンゼン混合溶
剤不溶分を約33重量%の収率で得た。この溶剤不溶分
は、光学的異方性相98%の液晶ピッチ“M”であっ
た。
【0098】この液晶ピッチ“M”は、ベンゼン可溶分
34重量%、ベンゼン不溶分66重量%からなり、Q値
(重量平均分子量/数平均分子量)が3.8であり、ベ
ンゼン可溶分とベンゼン不溶分の数平均分子量がそれぞ
れ680と2400であり、ベンゼン不溶分のベンゼン
可溶分に対する数平均分子量の比が3.5であり、ベン
ゼン可溶分とベンゼン不溶分のQ値がそれぞれ1.4と
2.0であり、キノリン不溶分3.2重量%、芳香族性
(fa)が0.81であり、軟化点が306℃であり、
C/H原子比が1.52であった。
【0099】この液晶ピッチ“M”を実施例1と同じ紡
糸機に充填し、340〜360℃の紡糸温度で紡糸を行
なったが、糸切れが多く安定した紡糸ができなかった。
【0100】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る液晶
ピッチは、 (1)特定の性状を有するピッチを原料として、実質的
には熱的反応によらず低分子量成分の除去と光学的異方
性相の生成、分離を行なうことにより得られるために、
従来の熱処理反応では得られなかったピッチ組成と、適
度の数平均分子量と、低分子量及び高分子量成分の少な
い狭い分子量分布とを有する。 (2)原料ピッチの性状を特定化したことにより、従来
技術の溶剤抽出法では達成し得ない低い軟化点及び高い
収率を有する。 (3)原料ピッチの性状と溶剤抽出条件を選択すること
により、液晶ピッチの性状をある程度制御することが可
能である。 という特徴を有し、これによって、本発明の液晶ピッチ
を使用すれば、従来技術では得られなかった高い圧縮強
度を有した炭素繊維を製造することができる。又、本発
明の液晶ピッチを使用した場合、紡糸が安定し、長時間
連続紡糸が可能となり、炭素繊維の生産性を向上せしめ
ることができる。
【0101】又、本発明にて得られる炭素繊維は、圧縮
強度が高いと共に、引張強度及び引張弾性率も大である
という特長を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】ストランド圧縮試験試験装置の断面図である。
【符号の説明】
1 :ストランド 2 :金属性円筒状タブ 3 :試験片 4、5 :ホルダー 6 :ガイド手段 7 :点荷重用負荷用ボール
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 日野 隆 埼玉県入間郡大井町西鶴ケ岡1−3−1 東燃株式会社総合研究所内 (72)発明者 三浦 勝 埼玉県入間郡大井町西鶴ケ岡1−3−1 東燃株式会社総合研究所内 (72)発明者 村上 一幸 埼玉県入間郡大井町西鶴ケ岡1−3−1 東燃株式会社総合研究所内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ピッチがベンゼン可溶分とベンゼン不溶
    分からなり、ピッチのQ値(重量平均分子量/数平均分
    子量)が1.6以下であり、且つベンゼン不溶分のベン
    ゼン可溶分に対する数平均分子量の比が2.2以下であ
    り、芳香族性(fa)が0.8以上であり、C/H原子
    比が1.85以下であり、更に、光学的異方性相が90
    %以上であることを特徴とする高圧縮強度炭素繊維製造
    用液晶ピッチ。
  2. 【請求項2】 ベンゼン不溶分とベンゼン可溶分のQ値
    が、それぞれ1.4以下である請求項1の高圧縮強度炭
    素繊維製造用液晶ピッチ。
  3. 【請求項3】 キノリン不溶分が5重量%以下である請
    求項1の高圧縮強度炭素繊維製造用液晶ピッチ。
  4. 【請求項4】 芳香族性(fa)が0.8〜0.9であ
    る請求項1の高圧縮強度炭素繊維製造用液晶ピッチ。
  5. 【請求項5】 軟化点が320℃以下である請求項1の
    高圧縮強度炭素繊維製造用液晶ピッチ。
  6. 【請求項6】 C/H原子比が1.55〜1.80であ
    る請求項1の高圧縮強度炭素繊維製造用液晶ピッチ。
  7. 【請求項7】 請求項1から請求項6のいずれかの項に
    記載の液晶ピッチを、溶融紡糸し、不融化処理し、次い
    で炭化或は黒鉛化することを特徴とする高圧縮強度炭素
    繊維の製造方法。
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