JPH0617320A - 高圧縮強度ピッチ系炭素繊維 - Google Patents

高圧縮強度ピッチ系炭素繊維

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JPH0617320A
JPH0617320A JP4196399A JP19639992A JPH0617320A JP H0617320 A JPH0617320 A JP H0617320A JP 4196399 A JP4196399 A JP 4196399A JP 19639992 A JP19639992 A JP 19639992A JP H0617320 A JPH0617320 A JP H0617320A
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pitch
carbon fiber
compressive strength
crystal
fiber
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JP4196399A
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English (en)
Inventor
Hiroshi Toshima
宏 戸島
Tsutomu Naito
勉 内藤
Takashi Hino
隆 日野
Kazuyuki Murakami
一幸 村上
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Tonen General Sekiyu KK
Original Assignee
Tonen Corp
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    • DTEXTILES; PAPER
    • D01NATURAL OR MAN-MADE THREADS OR FIBRES; SPINNING
    • D01FCHEMICAL FEATURES IN THE MANUFACTURE OF ARTIFICIAL FILAMENTS, THREADS, FIBRES, BRISTLES OR RIBBONS; APPARATUS SPECIALLY ADAPTED FOR THE MANUFACTURE OF CARBON FILAMENTS
    • D01F9/00Artificial filaments or the like of other substances; Manufacture thereof; Apparatus specially adapted for the manufacture of carbon filaments
    • D01F9/08Artificial filaments or the like of other substances; Manufacture thereof; Apparatus specially adapted for the manufacture of carbon filaments of inorganic material
    • D01F9/12Carbon filaments; Apparatus specially adapted for the manufacture thereof
    • D01F9/14Carbon filaments; Apparatus specially adapted for the manufacture thereof by decomposition of organic filaments
    • D01F9/145Carbon filaments; Apparatus specially adapted for the manufacture thereof by decomposition of organic filaments from pitch or distillation residues

Abstract

(57)【要約】 【目的】 引張弾性率を高い状態に維持したまま、圧縮
強度が従来のピッチ系炭素繊維に比して大幅に向上し
た、高弾性率で高圧縮強度のピッチ系炭素繊維を提供す
ることである。 【構成】 原料ピッチの分子量分布の均一性及びピッチ
繊維の多段高シェア紡糸による配向の均一性を確保する
ことにより、炭素繊維を構成する結晶フィブリルの全て
がその平均厚みLav. の30%から200%の範囲内に
含まれる均一な結晶構造分布をとるようにした。 【効果】 均一な結晶フィブリルへの応力の均一な分散
が図られるので、圧縮弾性率の非線形性が抑制され、そ
の結果、圧縮強度が大幅に向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ピッチ系炭素繊維に関
し、特に均一な結晶構造を有し、圧縮強度が高いピッチ
系炭素繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えば高引張強度、高引張弾
性率を有する炭素繊維としてはポリアクリロニトリルを
原料とするPAN系炭素繊維、或はレーヨン系炭素繊維
が多く使用されているが、原料が高価であり、又炭化収
率が悪く、経済性の点で問題を有している。又、これら
PAN系炭素繊維、或はレーヨン系炭素繊維にて、60
T/mm2 以上の引張弾性率を有した高弾性率品を製造
するのは極めて困難である。
【0003】これに対して、原料が安価であり且つ炭化
収率がより高いという点から石油系ピッチ或は石炭系ピ
ッチを原料とした炭素繊維の研究開発が近年盛んに行な
われている。石油系ピッチ或は石炭系ピッチなどの炭素
質原料ピッチから、例えば高強度、高弾性率の炭素繊維
を得るには、光学的異方性相が95%以上の、実質的に
100%とされる液晶ピッチを得ることが必要であるこ
とが知られている。例えば、特開昭54−55625号
公報は、不活性ガスのバブリングと撹拌とを併用して、
長時間熱分解重縮合を行ない、光学的異方性相が実質的
に100%とされる液晶ピッチを得る方法を、又、特開
昭54−160427号公報は、溶剤抽出方法により光
学的異方性相が実質的に100%とされる液晶ピッチを
得る方法を開示している。又、特公昭61−38755
号公報は、原料ピッチを熱処理して光学的異方性相含有
ピッチを生成し、その後、比重差分離を行なう方法によ
って、光学的異方性相が実質的に100%とされる液晶
ピッチを得る方法を開示している。この方法によると、
軟化点が230〜320℃程度とされ、上記特開昭54
−55625号公報或は特開昭54−160427号公
報などに記載されるようなピッチ系炭素繊維用液晶ピッ
チに比較すると、極めて低い軟化点を有した光学的異方
性相が実質的に100%とされる液晶ピッチが得られ、
従って、280〜380℃の紡糸温度にて安定して紡糸
することができるという利点を有している。
【0004】このようにして得られた液晶ピッチは、例
えば280〜380℃の温度で溶融紡糸することにより
ピッチ繊維とし、これを酸化性ガス雰囲気下にて200
〜350℃で不融化し、更に不活性ガス雰囲気下にて5
00〜3000℃の温度で高温焼成することによって炭
素化或は黒鉛化し、炭素繊維が製造される。又、必要に
応じて、不融化或は高温焼成などの熱処理工程におい
て、熱処理と同時に延伸処理が施されることもある。
【0005】このようにして製造されたピッチ系炭素繊
維は、溶融紡糸によりピッチを構成する分子の繊維軸配
向性が強化され、それによって結晶の軸方向配向が高度
に達成され、又、高温焼成による液晶ピッチのメチル、
ナフテン基等の重縮合反応による黒鉛化の促進、結晶サ
イズの増大が図られ、高引張強度及び高引張弾性率が達
成される。更には、斯かるピッチ系炭素繊維は、高熱伝
導特性及び高電気伝導特性をも有している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように、ピッチ系
炭素繊維は、高温焼成に伴う炭素繊維の結晶化度の向
上、これに伴う引張物性、特に引張弾性率の著しい向上
がある反面、結晶化度の向上に伴って圧縮強度が非常に
低くなるという大きな問題点を有している。現状のピッ
チ系炭素繊維は、引張弾性率が50T/mm2 程度とさ
れた場合に、圧縮強度は66〜83kg/mm2 とさ
れ、又、引張弾性率が70T/mm2 程度とされる場合
には圧縮強度は58〜66kg/mm2 と非常に低くな
る。
【0007】最近の技術の進歩に伴って、宇宙、航空
機、自動車、建設分野、その他種々の産業分野で、軽量
且つ高強度、高弾性であるばかりでなく、圧縮強度も高
い高性能炭素繊維が、然も低コストの炭素繊維が、複合
材料の素材として希求されている。
【0008】本発明者等は、斯かる要望に合致した、特
に高引張弾性率、高圧縮強度の炭素繊維を得るべく多く
の研究実験を行なった。その結果、従来のピッチ系炭素
繊維では、炭素繊維を構成する結晶フィブリルが、その
結晶の平均厚みLav. の15%〜300%の広範囲内、
場合によっては10〜400%の更に広範囲内に亙った
不均一な結晶構造分布をしており、このため圧縮時の応
力が不均一に集中して圧縮強度が低い値に留まったもの
になっていることが分った。
【0009】従って炭素繊維を構成する結晶フィブリル
がその平均厚みLav. の狭い範囲内に分布し、結晶構造
の均一性が高ければ、圧縮応力を各結晶フィブリルに均
一に分散でき、高圧縮強度を得ることができる。
【0010】本発明者等が解明したところによれば、炭
素繊維の結晶の均一性は、原料ピッチの分子量分布の均
一性及びピッチ繊維の多段シェア紡糸による配向の均一
性に依存し、ピッチ系炭素繊維の圧縮強度は、ピッチ繊
維の熱処理温度による制御のみならず、原料ピッチの分
子量分布とピッチ繊維の紡糸工程の制御によっても向上
可能であることを見出した。
【0011】即ち、本発明は上記知見によりなされもの
で、原料ピッチの分子量分布の均一性及びピッチ繊維の
多段高シェア紡糸による配向の均一性を確保することに
より、炭素繊維の均一な結晶構造を達成し、圧縮強度が
高く、然も高引張弾性率を維持した炭素繊維を実現した
のである。
【0012】従って本発明の目的は、引張弾性率を高い
状態に維持したまま、圧縮強度が従来のピッチ系炭素繊
維に比して大幅に向上した、高弾性率で高圧縮強度のピ
ッチ系炭素繊維を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的は本発明に係る
高圧縮強度ピッチ系炭素繊維にて達成される。要約すれ
ば本発明は、炭素繊維を構成する結晶フィブリルの全て
が結晶フィブリルの平均厚みLav. の30%から200
%の範囲内に含まれる、均一な結晶構造分布を有するこ
とを特徴とする高圧縮強度ピッチ系炭素繊維である。
【0014】好ましくは、炭素繊維を構成する結晶フィ
ブリルの全てが、その平均厚みLav. の50%から18
0%の厚みの範囲内に含まれる。又炭素繊維を構成する
個々の結晶フィブリルの繊維軸方向での厚みの変動率が
その平均値の±20%以内、好ましくは±15%以内で
あり、軸方向の均一性も有している。
【0015】上記の高圧縮強度ピッチ系炭素繊維は、引
張弾性率が50T/mm2 で圧縮強度は100乃至12
0kg/mm2 〜170kg/mm2 、引張弾性率が7
0T/mm2 で圧縮強度は85乃至100kg/mm2
〜135kg/mm2 である。
【0016】以下、本発明の高圧縮強度ピッチ系炭素繊
維について説明する。
【0017】上述したように、本発明者等は、高引張弾
性率で高圧縮強度の炭素繊維を得るべく、鋭意研究実験
を重ねた結果、炭素繊維の結晶構造を均一にすることに
より、高引張強度を維持したまま炭素繊維の圧縮強度を
向上するためには、原料ピッチの分子量分布の均一性及
びピッチ繊維の多段高シェア紡糸による配向の均一性を
確保すれば良いことが分った。
【0018】つまり、圧縮強度の向上に対しては、実質
的に300〜5000、好ましくは320〜4000の
範囲の分子量分布を持つ、つまり分子量分布の狭い液晶
ピッチを使用すること、及びピッチに働く繊維軸方向へ
のシェア(ノズル剪断応力)の増大及びそのシェアの均
一化を図るために、2段以上の多段で7〜50kg/c
2 、好ましくは15〜30kg/cm2 といった超高
シェア(通常、シェアは0.1〜1kg/cm2 であ
る。)を付与しながら紡糸することが有効であることを
見出した。
【0019】即ち、ノズルの断面方向では、ピッチに働
くシェアに分布がある。ノズルの内壁面の部分が最もシ
ェアが大きく、ノズルの中心に行くに従ってシェアは小
さくなる。このシェアの断面方向の不均一性はピッチ繊
維の断面方向及び繊維軸線方向への分子の配向の不均一
性につながり、最終的には炭素繊維の結晶フィブリルの
厚みの不均一性につながる。この不均一性を防ぐ方法と
しては、ノズル通過時にピッチに高シェアを付与するよ
うにすれば良いが、この手法によってもシェアの均一性
付与は不十分である。
【0020】そこで、鋭意検討した結果、上述した分子
量分布の狭いピッチに多段で高シェアをかけることによ
り、1回のノズルの通過時のシェア付与では得られなか
った均一なシェアの付与を実現して、分子の配向及びそ
の均一性を得ることに成功した。その際、2回から4回
の高シェア付与が好ましい。4回以上の高シェア付与で
は、逆に分子の配向が乱れる傾向にある。適度な多段シ
ェアでは、1回のシェア付与では得られにくい高配向度
及び配向の均一性を補う役割がある。
【0021】ノズル通過時にピッチに多段で高シェアを
付与するには、分子量分布の狭いピッチに対し、図1に
示すように、中心部にキャピラリー8a、8b、8cを
持つ複数個の挿入ノズル9を種々組合せてノズル10内
に装着してノズル10を使用し、紡糸すれば良い。この
際、図1において、キャピラリー8a、8b、8cにお
いて、上記の高シェアが付与される。そのキャピラリー
8aと8bの間、8bと8cの間の空隙拡大部8はシェ
ア緩和部であり、これを設けなければ圧力の著しい上昇
により紡糸が不可能になる。又紡糸できたとしても生成
炭素繊維は、ラジアルクラックを持ち、低い物性のもの
しか得られない。この緩和部の径がキャピラリーの径よ
りも著しく大き過ぎると、高シェアにより付与された配
向が過度の緩和を受け、配向状態が損なわれる。従って
キャピラリー径Dcと緩和部の系Drとの関係はDr≦
5Dcであることが好ましい。これにより圧力の著しい
上昇による紡糸不能を防ぎつつ、多段で高シェアを付与
することにより、従来にないピッチ分子の配向の均一性
が得られる。
【0022】又不融化過程においては、酸化性雰囲気下
で繊維の断面方向の酸素固定量がより均一になるような
条件(例えば空気中で4℃/分以下の低い昇温速度)を
選定し、実施することが好ましい。不融化過程で得られ
た繊維内での酸素分布が均一であればあるほど、炭化、
黒鉛化後の繊維断面及び繊維軸方向への結晶の均一性が
保持され、繊維結晶フィブリルの全てがその平均厚みL
av. の30%から200%の範囲内に含まれる均一な結
晶構造分布の炭素繊維がより一層得られ易くなる。
【0023】多段シェア紡糸で得られた均一な結晶構造
を持つ炭素繊維では、結晶フィブリルの厚みの分布の均
一性のみならず、個々の結晶フィブリルの繊維軸方向へ
の厚みの均一性にも優れたものとなる。
【0024】液晶ピッチとしては、光学的異方性相含有
量95%以上、平均分子量1600以下で、実質的な分
子量分布が300〜5000、好ましくは320〜40
00である分子量分布の狭い液晶ピッチを使用すること
が重要である。しかも、斯かる液晶ピッチは800〜1
5000ポイズの超高粘度で紡糸される。
【0025】液晶ピッチとしては、石油系ピッチ或は石
炭系ピッチ、更には芳香族炭化水素類を原料とするピッ
チを使用することができ、該ピッチを、従来の上記諸方
法にて光学的異方性相含有量95%以上、実質的に30
0〜5000という狭い分子量分布からなる液晶ピッチ
が調製される。好ましくは、液晶ピッチは、320〜4
000いう更に狭い分子量分布を持ち、又、光学的異方
性相含有量は98%以上、即ち、実質的に100%とさ
れのが好適である。使用する液晶ピッチの光学的異方性
含有量が95%未満である場合、或は、分子量分布が5
000を超えた場合には、高引張強度、高引張弾性率の
ピッチ系炭素繊維を製造するのが困難となり、好ましく
ない。
【0026】又、液晶ピッチの粘度は、好ましくは、2
000〜7000ポイズとされ、粘度が800ポイズよ
り小さいと、高シェア紡糸ができず、液晶分子の積層の
抑制が実現できず、結晶フィブリルの厚みが大きくなっ
て生成炭素繊維の圧縮強度は低いものとなる。又、粘度
が15000ポイズより大きいと、紡糸時に頻繁に糸切
れを生じ、紡糸が困難となる。
【0027】上述のように、本発明は、特定の分子量分
布の液晶ピッチを用い、これを多段の高シェア紡糸する
ことが必須であるが、液晶ピッチが紡糸ノズル内を通過
する時に付与されるシェア(ノズル剪断応力)は、7〜
50kg/cm2 、好ましくは、15〜30kg/cm
2 という非常に高い値とされる。シェアが7kg/cm
2 未満の場合には、メソフェーズ分子の繊維軸配向が十
分に行なわれない。又、シェアが50kg/cm2 を超
えると、紡糸時に頻繁に糸切れを生じ、紡糸が困難とな
る。又、例え得られたピッチ繊維を熱処理して炭素繊維
を得たとしても、炭素繊維にラジアルクラックが生じ、
高性能の炭素繊維を得ることができない。
【0028】このようにして得られたピッチ繊維は、次
いで、酸化性ガス雰囲気下にて200〜350℃で不融
化し、更に不活性ガス雰囲気下にて500〜3000℃
の温度で高温焼成することによって炭化、即ち、炭素化
或は黒鉛化し、炭素繊維とされる。又、必要に応じて、
不融化或は高温焼成などの熱処理工程において、熱処理
と同時に延伸処理が施される。
【0029】以上のような本発明に係る高圧縮強度ピッ
チ系炭素繊維は、繊維を構成する結晶フィブリルの全て
がその平均厚みLav. の30%から200%の範囲内に
含まれる、均一な結晶構造分布をとり、均一な結晶への
応力の均一な分散が図られるので、圧縮弾性率の非線形
性が抑制され、その結果、圧縮強度が大幅に向上する。
【0030】従来の炭素繊維では、結晶構造が不均一な
ために、結晶への応力の集中が生じ、圧縮歪みの増大と
共に圧縮弾性率が低下するという、所謂圧縮弾性率の非
線形性が生じて低い圧縮強度に留まる。
【0031】具体的には、本発明の炭素繊維では、引張
弾性率が50T/mm2 で圧縮強度は100乃至120
kg/mm2 〜170kg/mm2 、引張弾性率が70
T/mm2 で圧縮強度は85乃至100kg/mm2
135kg/mm2 となる。従来品の場合は、引張弾性
率が50T/mm2 で圧縮強度は75kg/mm2
度、引張弾性率が70T/mm2 で圧縮強度は65kg
/mm2 程度であるので、本発明の炭素繊維は、圧縮強
度が従来の30乃至50%〜120%向上する。
【0032】尚、本明細書で使用される「光学的異方性
相」という語句の意味は、必ずしも学界又は種々の技術
文献において統一して用いられているとは言い難いの
で、本明細書では、「光学的異方性相」とは、ピッチ構
成成分の一つであり、常温近くで固化したピッチ塊の断
面を研摩し、反射型偏光顕微鏡で直交ニコル下で観察し
たとき、試料又は直交ニコルを回転して光輝が認められ
る、即ち光学的異方性である部分を意味し、これに対
し、光輝が認められない、即ち光学的等方性である部分
は光学的等方性相と呼ぶ。
【0033】光学的異方性相は、光学的等方性相に比べ
て多環芳香族の縮合環の平面性がより発達した化学構造
の分子が主成分で、平面を積層した形で凝集、会合して
おり、溶融温度では一種の液晶状態であると考えられ
る。従ってこれを細い口金(紡糸ノズル)から押し出し
て紡糸するときは分子の平面が繊維軸の方向に平行に近
い配列をするために、この光学的異方性ピッチから作っ
た炭素繊維は高強度、高弾性を示すことになる。又、光
学的異方性相の定量は偏光顕微鏡直交ニコル下で観察、
写真撮影して光学的異方性部分の占める面積率を測定し
て行うので、これは実質的に体積%を表わす。
【0034】「分子量分布」の測定法に関して言えば、
ピッチ成分の分子量分布測定は、溶剤に可溶な部分はク
ロロホルム溶媒に溶解してGPC(Gel Permeation Chr
omatography )で測定し、不溶な部分は金属リチウムと
エチレンジアミンを用いる温和な水添反応により可溶化
後、上述のGPCで測定して求めた。
【0035】又、「シェア」の測定は、液晶ピッチの紡
糸ノズル内での流れが円管内層流であるとし、次式によ
り表されるハーゲン−ポアズイユ(Hagen-Poiseulle)式 τ=32μQ/gc・π・D3 ここで、τ:シェア(剪断応力) μ:ピッチ溶融粘度 Q:ピッチ吐出量 gc:重力加速度 D:紡糸ノズル径 を用いて計算した。
【0036】更に、「圧縮強度」は、炭素繊維の繊維軸
方向の圧縮強度とし、圧縮強度の測定はストランド圧縮
試験法にて行なった。即ち、図2にストランド試験装置
の概略が図示されるが、先ず、繊維と樹脂を用いて直径
1mmのストランド試験片1を作製し、このストランド
試験片1を、直径1mm、長さ30mmのステンレス製
タブ2にエポキシ樹脂を用いて装着後、ステンレス製タ
ブホルダー4、5に装着した。このホルダー4、5は、
スリーブ6内に装着され、上部より点荷重用負荷ボール
7を介して圧縮荷重を加えて、ストランド試験片1の圧
縮破断荷重を測定し、下記式 σc =(破断荷重+0.05) ・密度・1000/繊度 ここで、破断荷重:kg 密度:g/cc 繊度:g/km を用いて求めた。
【0037】又、上記の圧縮強度を求める式では、タブ
2の上部に載せるホールダ5及び点荷重用負荷ボール7
の重量合計が50gとされるために、破断荷重に0.0
5kgが加えられている。
【0038】このストランド圧縮試験法は、従来の圧縮
強度測定に使用されているASTMD3410規格に則
って測定した圧縮強度と一致する。
【0039】更に又、本発明でいう炭素繊維の結晶フィ
ブリルの平均厚みLav. は、透過電子顕微鏡(TEM)
による暗視野像の観察、解析により求めた。TEM暗視
野像では、黒鉛結晶の(002)面の積層領域が白く輝
いて撮影されるため、これらの撮影写真における個々の
白く光った結晶の集合体、即ちフィブリルの厚みについ
て測定し、その厚みの平均値と分布を求めた。
【0040】次に、本発明を実施例について更に詳しく
説明する。
【0041】
【実施例】実施例1 光学的異方性含有率100%、軟化温度283℃、分子
量(数平均分子量)の分布が330〜4000である液
晶ピッチ(液晶ピッチAとする)を用いた。
【0042】該液晶ピッチAに対し、図1に示した紡糸
ノズル10内に挿入ノズル9を装着して、温度298℃
にて、液晶ピッチAの粘度2000ポイズ、1段目で2
0kg/cm2 、2段目で10kg/cm2 の2段の高
シェア付与をしながら、液晶ピッチAを紡糸して、直径
約13μmのピッチ繊維を得た。
【0043】その後、酸化性雰囲気下、1℃/分の昇温
速度で室温から285℃まで昇温して、ピッチ繊維を不
融化し、次いで不活性雰囲気下、2000℃にて焼成し
て炭素繊維を得た。
【0044】得られた炭素繊維の各種物性及び透過電子
顕微鏡(TEM)を用いて観察した結晶フィブリルの厚
みの変動率を表1に、TEMの暗視野像を図3に示す。
【0045】
【表1】
【0046】表1に示されるように、本実施例の炭素繊
維は、引張弾性率52T/mm2 で135kg/mm2
の高圧縮強度を達成している。従来品では、引張弾性率
が50T/mm2 程度で圧縮強度が75kg/mm2
度であるので、本発明によれば、圧縮強度を著しく向上
できていることが分る。
【0047】又図3から求められた結晶フィブリルの平
均厚みLav. は350Åで、フィブリル厚みは110Å
〜680Åの範囲で分布しており、平均厚みの30%か
ら200%(つまり105Å〜700Å)の範囲内に全
ての結晶フィブリルが含まれている。又繊維軸方向への
フィブリル厚みの変動率が±20%以下であり、その平
均値が±8.3%と非常に均一な結晶構造になってい
る。尚、フィブリル厚みの変動率は、1つのフィブリル
の平均値に対する変動率を示す(以下、同じ)。
【0048】比較例1 実施例1に用いた液晶ピッチAを用い、直径0.3mm
のノズルにより1.2kg/cm2 の1段のシェアを付
与しながら、温度298℃にて紡糸して、直径約13μ
mのピッチ繊維を得た。
【0049】その後、酸化性雰囲気下で実施例1と同じ
条件の不融化をし、次いで不活性雰囲気下で、温度を2
200℃にして焼成して炭素繊維を得た。
【0050】得られた炭素繊維の各種物性及びTEMを
用いて観察した結晶フィブリルの厚みの変動率を表2に
示す。
【0051】
【表2】
【0052】本比較例では1段のシェア付与で紡糸した
ので、表2に示されるように、得られた炭素繊維は、引
張弾性率が51T/mm2 と高いものの、83kg/m
2の低い圧縮強度になっている。
【0053】又本比較例では、結晶フィブリルの平均厚
みLav. が520Åであり、そのフィブリル厚みの分布
は100Å〜1400Åで、平均厚みの30%から20
0%(つまり156Å〜1040Å)の範囲を超えて広
く分布している。又繊維軸方向へのフィブリル厚みの変
動率が±40%にまで達し、その平均値が±25%と結
晶構造の均一性が保持されていない。
【0054】比較例2 光学的異方性含有率100%、軟化温度285℃、30
0〜10000の分子量分布を有する液晶ピッチ(液晶
ピッチBとする)を用い、温度295℃にて、実施例1
のときと同様に、実施例1と同じノズルにより1段目で
20kg/cm2 、2段目で10kg/cm2 の2段の
高シェア付与をしながら、液晶ピッチBを紡糸して、直
径約13μmのピッチ繊維を得た。
【0055】その後、酸化性雰囲気下で不融化後、不活
性雰囲気下、2200℃にて焼成して炭素繊維を得た。
【0056】得られた炭素繊維の各種物性及び透過電子
顕微鏡(TEM)を用いて観察した結晶フィブリルの厚
みの変動率を表3に、TEMの暗視野像を図4に示す。
【0057】
【表3】
【0058】本比較例では2段のシェア付与で紡糸を行
なったが、分子量分布が広いピッチを使用したので、表
3に示されるように、得られた炭素繊維は、引張弾性率
50T/mm2 で80kg/mm2 の低い圧縮強度にな
っている。
【0059】又本比較例の炭素繊維は、結晶フィブリル
の平均厚みLav. が650Åであり、フィブリル厚みは
100Å〜1800Åの分布で、平均厚みの30%から
200%(つまり195Å〜1300Å)の範囲内を超
えてより広く分布している。又繊維軸方向へのフィブリ
ル厚みの変動率が±70%にまで及び、その平均値が±
45%と非常に不均一な結晶構造になっている。
【0060】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の炭素繊維
は、原料ピッチの分子量分布の均一性及びピッチ繊維の
多段高シェア紡糸による配向の均一性を確保することに
より、繊維を構成する結晶フィブリルの全てがその平均
厚みLav. の30%から200%の範囲内に含まれる均
一な結晶構造分布を実現しているので、高引張弾性率を
維持したまま圧縮強度が向上されて高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の炭素繊維の製造でのピッチ繊維の紡糸
に使用するノズルを示す断面図である。
【図2】本発明において炭素繊維の圧縮強度を求めるた
めに使用したストランド試験装置を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例1で得られた炭素繊維のTEM
による暗視野像を示す図である。
【図4】比較例2で得られた炭素繊維のTEMによる暗
視野像を示す図である。
【符号の説明】
1 ストランド 2 スレンレス製円筒状タブ 4、5 ホルダー 6 スリーブ 7 点荷重用負荷ボール 8 空隙拡大部 8a〜8c キャピラリー 9 挿入ノズル 10 ノズル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 村上 一幸 埼玉県入間郡大井町西鶴ケ岡1−3−1 東燃株式会社総合研究所内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素繊維を構成する結晶フィブリルの全
    てが結晶フィブリルの平均厚みLav. の30%から20
    0%の範囲内に含まれる、均一な結晶構造分布を有する
    ことを特徴とする高圧縮強度ピッチ系炭素繊維。
JP4196399A 1992-06-30 1992-06-30 高圧縮強度ピッチ系炭素繊維 Pending JPH0617320A (ja)

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