本明細書中では、CD47と特異的に結合する抗体、PD-L1と特異的に結合する抗体、ならびにCD47およびPD-L1と特異的に結合する二重特異性抗体を提供する。共通軽鎖を共有する二重特異性抗体を、本明細書中でさらに提供する。また、関連核酸、組成物、ならびに抗体を作製および使用する方法も本明細書中に提供する。
一般技法
本発明の実施には、別段に指定しない限りは、当分野の技術範囲内にある、分子生物学(組換え技法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の慣用技術を用いる。そのような技法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Sambrookら、1989)Cold Spring Harbor Press、Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984)、Methods in Molecular Biology、Humana Press、Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、1998)Academic Press、Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、1987)、Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts、1998)Plenum Press、Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.Griffiths、およびD.G.Newell編、1993~1998)J.Wiley and Sons、Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.)、Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編)、Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987)、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、1987)、PCR:The Polymerase Chain Reaction、(Mullisら編、1994)、Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991)、Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons、1999)、Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers、1997)、Antibodies(P.Finch、1997)、Antibodies:a practical approach(D.Catty.編、IRL Press、1988~1989)、Monoclonal antibodies:a practical approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000)、Using antibodies:a laboratory manual(E.HarlowおよびD.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999)、The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995)などの文献中、ならびに必要に応じて上記参考文献のその後の版および対応するウェブサイトに、詳述されている。
本発明を以下、以下の定義および実施例を参考として使用して詳述する。特許および刊行物中に開示されるすべての配列を含めた、本明細書中に引用するすべての特許および刊行物は、参考として明確に組み込まれている。
定義
別段に定義しない限りは、本明細書中で使用するすべての専門用語、表記法、および他の科学用語または用語法は、本発明が属する分野の技術者によって一般的に理解される意味を有することを意図する。たとえば、本明細書中で「Aおよび/またはB」などの語句中で使用される用語「および/または」は、AおよびB、AまたはBの両方、A(単独)、ならびにB(単独)を含むことを意図する。同様に、「A、B、および/またはC」などの語句中で使用される用語「および/または」は、以下の実施形態のそれぞれを包含することを意図する:A、B、およびC、A、B、またはC、AまたはC、AまたはB、BまたはC、AおよびC、AおよびB、BおよびC、A(単独)、B(単独)、ならびにC(単独)。一部の事例では、一般的に理解される意味を持つ用語は、明瞭性および/または即時参照のために本明細書中に定義されており、そのような定義を本明細書中に包含することは、必ずしも当分野において一般的に理解されているものとの実質的な差異を表すと解釈されるべきでない。
本明細書中で使用する単数形「a」、「an」、および「the」は、内容により明確にそうでないと指示されない限りは、その対応する複数の指示対象を含む。
本明細書中で使用する数値範囲は、範囲を定義する数値を包括する。
本明細書中における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体、およびそのパラメータについて記述した数値を10%も下回るまたは上回る場合がある値またはパラメータを対象とする実施形態を含む(かつそれを説明する)。たとえば、「約5mg/kg」の用量は5mg/kgを含み、4.5mg/kg~5.5mg/kgの任意の値も含む。用語「約」を期間(年、月、週、日など)のコンテキスト内で使用する場合、用語「約」とは、その期間±次の下位期間の1定量(たとえば、約1年間とは11~13カ月間を意味し、約6カ月間とは6カ月±1週間を意味し、約1週間とは6~8日間を意味するなど)または示した値の10パーセント以内の、いずれか長い方を意味する。
本明細書中で使用するように、それぞれ、核酸は左から右に5’から3’の方向に記載され、アミノ酸配列は左から右にアミノからカルボキシの配向で記載される。従事者は、当分野の定義および用語のために特にSambrookら、1989およびAusubel FMら、1993を参照されたい。記載した具体的な方法論、プロトコル、および試薬は変動し得るため、本発明はそれらに限定されないことを理解されたい。
用語「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は本明細書中で互換性があるように使用され、任意の長さのアミノ酸の鎖を指す。たとえば、鎖は比較的短いもの(たとえば10~100個のアミノ酸)またはより長いものであり得る。鎖は、直鎖状もしくは分枝状であってよく、修飾アミノ酸を含んでよく、および/または非アミノ酸によって中断されてよい。この用語は、天然にまたは介入によって修飾されたアミノ酸鎖、たとえば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識構成成分とのコンジュゲーションなどの任意の他の操作もしくは修飾も包含する。また、この定義内には、たとえば、アミノ酸の1つまたは複数の類似体(たとえば非天然アミノ酸などを含む)および当分野で知られている他の修飾を含有するポリペプチドも含まれる。ポリペプチドは単鎖または会合した鎖として生じることができることが理解されよう。
「抗体」とは、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的と、免疫グロブリン分子の可変領域中に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を通じて、特異的結合することができる免疫グロブリン分子である。本明細書中で使用するこの用語は、インタクトなポリクローナルまたはモノクローナル抗体だけでなく、別段に指定しない限りは、特異的結合についてインタクトな抗体と競合するその任意の抗原結合部分、抗原結合部分を含む融合タンパク質、および、抗原認識部位を含む、免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された立体配置も包含する。抗原結合部分としては、たとえば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、ドメイン抗体(dAb、たとえばサメおよびラクダ抗体)、相補性決定領域(CDR)を含む断片、単鎖可変断片抗体(scFv)、マキシボディ、ミニボディ、細胞内抗体、ジアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR、およびビス-scFv、ならびに、ポリペプチドに特異的抗原結合を与えるために十分である免疫グロブリンの少なくとも一部分を含有するポリペプチドが挙げられる。抗体は、IgG、IgA、もしくはIgMなどの任意のクラス(またはそのサブクラス)の抗体を含み、抗体は任意の特定のクラスのものである必要はない。その重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを様々なクラスへと割り当てることができる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2へとさらに分け得る。免疫グロブリンの様々なクラスに対応する重鎖定常領域は、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれる。免疫グロブリンの様々なクラスのサブユニット構造および三次元立体配置は周知である。
抗体の「可変領域」とは、単独または組み合わせたもののどちらかの、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を指す。当分野で知られているように、重鎖および軽鎖の可変領域はそれぞれ、3つの超可変領域としても知られる相補性決定領域(CDR)によって接続された4つのフレームワーク領域(FR)からなり、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。対象可変領域の変異体、特にCDR領域外(すなわちフレームワーク領域中)のアミノ酸残基に置換を有するものが所望される場合、対象可変領域を、対象可変領域と同じカノニカルクラスのCDR1およびCDR2配列を含有する他の抗体の可変領域と比較することによって、適切なアミノ酸置換、好ましくは保存的アミノ酸置換を同定することができる(ChothiaおよびLesk、J Mol Biol、196(4):901~917、1987)。
ある特定の実施形態では、CDRの決定的な描写および抗体の結合部位を含む残基の同定は、抗体の構造を解像することおよび/または抗体-リガンド複合体の構造を解像することによって達成される。ある特定の実施形態では、これは、X線結晶構造解析などの当業者に知られている様々な技法のうちの任意のものによって達成することができる。ある特定の実施形態では、様々な分析方法を用いてCDR領域を同定または近似することができる。そのような方法の例としては、それだけには限定されないが、Kabat定義、Chothia定義、AbM定義、接触定義、およびコンホメーション定義が挙げられる。Kabat定義は、抗体中の残基に付番するための標準であり、典型的にはCDR領域を同定するために使用される。たとえばJohnsonおよびWu、2000、Nucleic Acids Res.、28:214~8を参照されたい。Chothia定義はKabat定義と似ているが、Chothia定義は特定の構造的ループ領域の位置を考慮に入れる。たとえば、Chothiaら、1986、J.Mol.Biol.、196:901~17、Chothiaら、1989、Nature、342:877~83を参照されたい。AbM定義は、抗体構造をモデリングする、Oxford Molecular Groupによって作成されたコンピュータプログラムの統合スイートを使用する。たとえば、Martinら、1989、Proc Natl Acad Sci(USA)、86:9268~9272、「AbM(商標),A Computer Program for Modeling Variable Regions of Antibodies」、英国Oxford、Oxford Molecular,Ltd.を参照されたい。AbM定義は、知識データベースおよびSamudralaら、1999、「Ab Initio Protein Structure Prediction Using a Combined Hierarchical Approach」、PROTEINS,Structure,Function and Genetics補遺、3:194~198によって記載されているものなどのアブイニシオ方法の組合せを使用して、一次配列から抗体の三次構造をモデリングする。接触定義は、利用可能な複合体結晶構造分析に基づく。たとえばMacCallumら、1996、J.Mol.Biol.、5:732~45を参照されたい。本明細書中でCDRの「コンホメーション定義」と呼ぶ別の手法では、CDRの位置は、抗原結合にエンタルピーの寄与を行う残基として同定され得る。たとえばMakabeら、2008、Journal of Biological Chemistry、283:1156~1166を参照されたい。さらに他のCDR境界定義は、上記手法のうちの1つに厳密に従わない場合があるが、それにもかかわらずKabat CDRの少なくとも一部分と重複するであろう。ただし、これらは、特定の残基または残基群が抗原結合に有意に影響を与えないという予測または実験的発見に鑑みて、短縮または延長されている場合がある。本明細書中で使用するCDRとは、手法の組合せを含めた、当分野で知られている任意の手法によって定義されるCDRを指し得る。本明細書中で使用する方法は、これらの手法のうちの任意ものに従って定義されたCDRを利用し得る。複数のCDRを含有する任意の所定の実施形態について、CDRは、Kabat、Chothia、延長、AbM、接触、および/またはコンホメーション定義のうちの任意のものに従って定義し得る。
本明細書中で使用する用語「Fc鎖」とは抗体重鎖のC末端領域を指し、アイソタイプに応じて2~3個の定常ドメインを含む。本明細書中で使用するFc鎖は、ネイティブまたは変異Fc配列を含み得る。本明細書中で別段に指定しない限りは、Fc鎖または定常領域中のアミノ酸残基の付番は、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、メリーランド州Bethesda、1991に記載されている、EUインデックスとも呼ばれるEU付番システムに従うものである。
本明細書中で使用する用語「Fcドメイン」とは、2本のFc鎖を含む抗体の領域を指す。たとえば、標準のIgG形式では、抗体は2本の重鎖を有しており、それらはどちらも1本のFc鎖を有する。合わせて、2本のFc鎖は本明細書中で「Fcドメイン」と呼ばれる。
「野生型Fc鎖」は、自然で見つかるFc鎖のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を含む。「野生型」ヒトIgG Fcとは、ヒト集団内で天然に生じるアミノ酸の配列を意味する。もちろん、個体間で若干変動し得ることと同様に、1つまたは複数の変更を野生型配列へ行っても、依然として本発明の範囲内にとどまり得る。
「変異Fc鎖」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾が理由で野生型Fc鎖のものとは異なるが、それでも野生型Fc鎖の少なくとも1つのエフェクター機能を保持しているアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、変異Fc鎖は、野生型Fc鎖と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を有する、たとえば、野生型Fc鎖中に約1~約10個のアミノ酸置換、好ましくは約1~約5個のアミノ酸置換を有する。本明細書中における変異Fc鎖は、好ましくは野生型Fc鎖と少なくとも約80%の配列同一性、最も好ましくはそれと少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくはそれと少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、Fc鎖は野生型ヒンジ領域の一部または全部を(一般的にそのN末端に)含む。一部の実施形態では、Fcポリペプチドは機能的または野生型ヒンジ領域を含まない。
本明細書中で使用する用語「ヒンジ領域」は、たとえば、Janewayら、ImmunoBiology:the immune system in health and disease、Elsevier Science Ltd.、NY(第4版、1999)、Bloomら、Protein Science、6:407~415、1997、およびHumphreysら、J.Immunol.Methods、209:193~202、1997に例示されている、当分野で知られている意味を含む。
本明細書中で使用する用語「連結した」、「融合した」、および「融合」とは、互換性があるように使用され、さらに2つの要素または構成成分を、化学的コンジュゲーションまたは組換え手段を含めた任意の手段によって一緒に合わせることを指す。
本明細書中で使用する用語「共有連結した」とは、指定した部分が、互いに直接共有結合しているか、連結ペプチドもしくは部分などの介在部分もしくは複数の部分を通じて互いに間接的に共有的に一緒になっているかどちらかであることを意味する。
本明細書中で使用する用語「遺伝子融合した」および「遺伝子融合」とは、2つ以上のタンパク質、ポリペプチド、またはその断片の、その個々のペプチド主鎖を介した、これらのタンパク質、ポリペプチド、または断片をコードしている単一のポリヌクレオチド分子の遺伝子発現を通じた、同一直鎖状の共有連結または付着を指す。そのような遺伝子融合は、単一の連続した遺伝子配列の発現をもたらす。
本明細書中で使用する用語「修飾」とは、ポリペプチド配列中のアミノ酸の置換、挿入、および/もしくは欠失、タンパク質と化学的に連結した部分への変更、またはタンパク質、たとえば抗体の機能の改変を指す。たとえば、修飾は、抗体の機能の変更、またはタンパク質に付着した炭水化物構造の変更であり得る。本明細書中で使用する「アミノ酸修飾」とは、抗体中の1つまたは複数のアミノ酸残基の突然変異(置換)、挿入(付加)、または欠失を指す。用語「アミノ酸突然変異」とは、少なくとも1つの既存のアミノ酸残基を別の異なるアミノ酸残基で置換すること(たとえばアミノ酸残基を置き換えること)を示す。用語「アミノ酸欠失」とは、アミノ酸配列中の事前に決定された位置での少なくとも1つのアミノ酸残基の除去を示す。たとえば、突然変異L234Aは、抗体Fc領域中の位置234のアミノ酸残基リシンが、アミノ酸残基アラニンによって置換されていることを示す(リシンをアラニンで置換)(付番はEUインデックス付番システムに従う)。
本明細書中で使用する用語「薬剤」とは、生体高分子、生体物質から作製した抽出物、生体高分子の混合物、化学物質、化学物質の混合物、および/または化学物質と生体高分子の混合物を示す。用語「治療剤」とは、生物活性を有する薬剤を指す。
「ヒト化」抗体とは、非ヒト超可変領域由来のアミノ酸残基およびヒトフレームワーク領域由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。好ましくは、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性、および容量を有するマウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種のCDR由来の残基(ドナー抗体)によって置き換えられている。ヒト化抗体は、レシピエント抗体中にもインポートされたCDRまたはフレームワーク配列中にも見つからないが、抗体の性能をさらに洗練および最適化するために含められる残基を含み得る。
「ヒト抗体」とは、ヒトによって産生された抗体のものに対応するアミノ酸配列、および/または本明細書中に開示するヒト抗体を作製する技法のうちの任意のものを使用して作製されたアミノ酸配列を保有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に排除する。
用語「キメラ抗体」とは、可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体などの、可変領域配列が1つの種に由来し、定常領域配列が別の種に由来する抗体を指すことを意図する。
「単一特異性抗体」とは、抗体の任意かつすべての結合部位が抗原上の同一のエピトープを特異的に認識するように、1個の分子あたり1つまたは複数の抗原結合部位を含む抗体を指す。したがって、単一特異性抗体が複数の抗原結合部位を有する場合、結合部位は、1つの抗原分子との結合について互いに競合する。
本明細書中で使用する「二重特異性抗体」とは、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する分子である。一部の実施形態では、二重特異性抗体は、2つの異なる抗原と同時に結合することができる。他の実施形態では、2つの異なるエピトープは同じ抗原上に存在し得る。
本明細書中で使用する「標的抗原」、「標的細胞抗原」、「腫瘍抗原」、または「腫瘍特異的抗原」とは、標的細胞、たとえば、癌細胞または腫瘍間質の細胞などの腫瘍中の細胞の表面上に提示される抗原決定基を指す。
本明細書中で使用する「単離抗体」とは、同定され、その天然環境の少なくとも1つの構成成分から分離および/または回収された抗体を意味する。たとえば、生物の少なくとも1つの構成成分から、または抗体が天然に存在するもしくは天然に産生される組織もしくは細胞から分離または除去された抗体は、本発明の目的のために「単離抗体」である。単離抗体はまた、組換え細胞内にin situの抗体も含む。単離抗体は、少なくとも1つの精製または単離ステップに供された抗体である。特定の実施形態によれば、単離抗体は、他の細胞物質および/または化学薬品を実質的に含まない場合がある。
本明細書中で使用する用語「リンカー」とは、2つ以上のアミノ酸の長さのアミノ酸配列を指す。リンカーは、中性の極性または無極性のアミノ酸からなることができる。リンカーは、たとえば、2~50個のアミノ酸の長さ、たとえば、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50個のアミノ酸の長さなどの、2~100個のアミノ酸の長さであり得る。リンカーは、たとえば、自己切断、または酵素的もしくは化学的な切断によって、「切断可能」であり得る。アミノ酸配列中の切断部位ならびにそのような部位で切断する酵素および化学薬品は当分野で周知であり、本明細書中にも記載されている。
本明細書中で使用する用語「ジスルフィド結合」または「システイン-システインジスルフィド結合」とは、2つのシステイン間の共有的相互作用を指し、システインの硫黄原子が酸化されてジスルフィド結合を形成する。水素結合の1~2kcal/molと比較して、ジスルフィド結合の平均結合エネルギーは約60kcal/molである。本発明のコンテキストにおいて、ジスルフィド結合を形成するシステインは単鎖抗体のフレームワーク領域内にあり、抗体のコンホメーションを安定化する役割を果たす。システイン残基は、安定化ジスルフィド結合を分子内に作製することができるように、たとえば部位特異的突然変異誘発によって導入することができる。
抗体に関して本明細書中で使用する用語「競合する」とは、第1の抗体またはその抗原結合断片(もしくは一部分)が第2の抗体またはその抗原結合部分の結合と十分に類似した様式でエピトープと結合し、その結果、第1の抗体とそのコグネイトエピトープとの結合の結果が、第2の抗体の非存在下における第1の抗体の結合と比較して、第2の抗体の存在下において検出可能に減少することを意味する。第2の抗体とそのエピトープとの結合も第1の抗体の存在下において検出可能に減少しているその代替は、そうである場合があるが、必ずしもそうではない。すなわち、第1の抗体は、第2の抗体が第1の抗体とその対応するエピトープとの結合を阻害することなしに、第2の抗体とそのエピトープとの結合を阻害することができる。しかし、それぞれの抗体が、他方の抗体とそのコグネイトエピトープまたはリガンドとの結合を、同程度、より多い程度、または少ない程度までかにかかわらず、検出可能に阻害する場合、抗体は、そのそれぞれのエピトープの結合について互いに「交叉競合する」と言われる。競合および交叉競合抗体はどちらも本発明に包含される。そのような競合または交叉競合が起こる機構にかかわらず(たとえば、立体障害、コンホメーション変化、または共通エピトープもしくはその一部分との結合)、当業者には、本明細書中で提供する教示に基づいて、そのような競合および/または交叉競合抗体が包含され、本明細書中に開示した方法に有用である可能性があることが理解されたい。
本明細書中で使用する「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」または「ADCC」とは、Fc受容体(FcRs)を発現する非特異的細胞毒性細胞(たとえば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が標的細胞上の結合抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす、細胞媒介性反応を指す。目的分子のADCC活性は、米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載されているものなどのin vitro ADCCアッセイを使用して評価することができる。そのようなアッセイのために有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核球(PBMC)およびNK細胞が挙げられる。その代わりに、またはそれに加えて、目的分子のADCC活性は、in vivoで、たとえばClynesら、PNAS(USA)、95:652~656、1998中に開示されているものなどの動物モデルにおいて評価し得る。
本明細書中で使用する「補体依存性細胞傷害」または「CDC」とは、補体の存在下における標的の溶解を指す。補体活性化経路は、補体系の第1の構成成分(C1q)と、コグネイト抗原と複合体形成した分子(たとえば抗体)との結合によって開始される。補体活性化を評価するために、たとえばGazzano-Santoroら、J.Immunol.Methods、202:163、1996に記載されているCDCアッセイを行い得る。
本明細書中で使用する用語「免疫特異的に結合する」、「免疫特異的に認識する」、「特異的に結合する」、「特異的に認識する」、および類似の用語は、抗原(たとえばエピトープまたは免疫複合体)と特異的に結合し、別の分子と特異的に結合しない分子、たとえば結合ドメインを指す。抗原と特異的に結合する分子は、当分野で知られているアッセイ、たとえば、免疫アッセイ、BIACORE(商標)、または他のアッセイによって決定して、より低い親和性で他のペプチドまたはポリペプチドと結合し得る。好ましくは、抗原と特異的に結合する分子は、他のタンパク質と交叉反応しない。
用語「エピトープ」とは、パラトープとして知られる抗体の抗原結合領域のうちの1つまたは複数で、抗体が認識、接触、および/または結合し得る、分子の一部分を指す。単一の抗原は複数のエピトープを有し得る。したがって、様々な抗体が抗原上の様々な領域と結合してよく、様々な生物学的効果を有し得る。エピトープはしばしば、アミノ酸または糖側鎖などの化学活性のある表面分子群からなり、特異的三次元構造的特徴および特異的電荷特徴を有する。本明細書中で使用するエピトープは、立体構造的または直鎖状のどちらかであり得る。コンフォメーションエピトープは、直鎖状ポリペプチド鎖の様々なセグメントからの空間的に並置されたアミノ酸によって生じる。直線状エピトープとは、ポリペプチド鎖中の隣接アミノ酸残基によって生じるものである。ある特定の実施形態では、エピトープは、抗原上のサッカライドの部分、ホスホリル基、またはスルホニル基を含み得る。
本明細書中で使用する用語「抗原エピトープ」とは、当分野で周知の任意の方法、たとえば慣例の免疫アッセイによって決定して抗体が特異的に結合することができる、ポリペプチドの一部分として定義される。「非線形エピトープ」または「コンフォメーションエピトープ」は、エピトープに特異的な抗体が結合する抗原タンパク質内の、連続していないポリペプチド(またはアミノ酸)を含む。抗原上の所望のエピトープが決定された後、そのエピトープに対する抗体を、たとえば本明細書中に記載の技法を使用して作製することが可能である。
抗体とタンパク質またはペプチドとの相互作用を参照して使用する用語「特異的結合」または「特異的に結合する」とは、タンパク質上の特定の構造(すなわち抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存する相互作用を指す。言い換えれば、抗体は、タンパク質一般ではなく特異的タンパク質構造を認識してそれと結合する。たとえば、抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識した「A」および抗体を含有する反応中における、エピトープAを含有するタンパク質(または遊離した未標識のA)の存在は、抗体と結合した標識したAの量を減らすであろう。
ある特定の実施形態では、「特異的に結合する」とは、たとえば、抗体が、約0.1nM以下、より一般的には約1μM未満のKDでタンパク質と結合することを意味する。ある特定の実施形態では、「特異的に結合する」とは、抗体が、ある時には少なくとも約0.1μM以下、またある時には少なくとも約0.01μM以下、またある時には少なくとも約1nM以下のKDで標的と結合することを意味する。様々な種中の相同タンパク質間の配列同一性が理由で、特異的結合は、複数の種中のタンパク質(たとえばヒトCD47およびマウスCD47)を認識する抗体を含むことができる。同様に、様々なタンパク質のポリペプチド配列の特定の領域内の相同性が理由で、特異的結合は、複数のタンパク質を認識する抗体を含むことができる。ある特定の実施形態では、第1の標的と特異的に結合する抗体または結合部分は、第2の標的と特異的に結合してもしなくてもよいことを理解されたい。したがって、「特異的結合」は、排他的結合、すなわち単一の標的との結合を必ずしも必要としない(ただし、含むことはできる)。したがって、一部の実施形態では、抗体は複数の標的と特異的に結合し得る。ある特定の実施形態では、複数の標的が抗体上の同じ抗原結合部位と結合し得る。たとえば、特定の事例では、抗体は2つの同一の抗原結合部位を含んでよく、そのそれぞれが2つ以上のタンパク質上の同じエピトープと特異的に結合する。特定の代替実施形態では、抗体は多特異性であってよく、異なる特異性を有する少なくとも2つの抗原結合部位を含む。非限定的な例として、二重特異性抗体は、1つのタンパク質上のエピトープを認識する1つの抗原結合部位を含んでよく、第2のタンパク質上の異なるエピトープを認識する第2の異なる抗原結合部位をさらに含んでよい。一般的に、必ずしもではないが、結合への言及は特異的結合を意味する。
抗原と特異的に結合する抗体は、当分野で知られているアッセイ、たとえば、免疫アッセイ、BIACORE(商標)、または他のアッセイによって決定して、より低い親和性で他のペプチドまたはポリペプチドと結合し得る。好ましくは、抗原と特異的に結合する抗体は他のタンパク質と交叉反応しない。
抗体とタンパク質またはペプチドとの相互作用を参照して使用する用語「非特異的結合」または「バックグラウンド結合」とは、特定の構造の存在に依存しない相互作用を指す(すなわち、抗体は、エピトープなどの特定の構造ではなくタンパク質一般と結合している)。
本明細書中で使用する用語「kon」または「ka」とは、抗体と抗原との会合の速度定数を指す。
本明細書中で使用する用語「koff」または「kd」とは、抗体の抗体/抗原複合体からの解離の速度定数を指す。
本明細書中で使用する用語「KD」とは、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指す。
KDおよび他の比を決定するための、会合および解離速度定数konおよびkoffのそれぞれの決定は、たとえば、表面プラズモン共鳴に基づくバイオセンサーを使用して、分析物/リガンドの相互作用を特徴づけるために、捕捉試薬を介して低容量でセンサー表面上に固定されたリガンドの結合に関して分析物が一価である条件下で行い得る。分析は、たとえば、Karlssonら、Anal.Biochem、349、136~147、2006に記載の動力学的滴定方法を使用して、またはマルチサイクル動力学的分析を使用して行い得る。所定のアッセイで用いるセンサーチップ、捕捉試薬、およびアッセイ緩衝剤は、Myszka、J.Mol.Recognit、12、279~284、1999における推奨のように、リガンドのセンサー表面上への安定した捕捉を与えるため、分析物と表面との非特異的結合を最小限にするため、動力学的分析に適切な分析物結合応答を得るために選択する。分析物/リガンドの相互作用あたりの分析物結合応答は二重参照を行い、MyszkaおよびMortonら、Biophys.Chem、64、127~137(1997)中に記載のようにka、kd、およびRmaxをグローバルパラメータとして用いた1:1ラングミュアー「物質輸送限定モデル(mass transport limited model)」に当てはめた。平衡解離定数KDは運動速度定数の比から推定し、KD=koff/konである。そのような決定は、好ましくは25℃または37℃で行う。典型的には、速度定数(kon/kaおよびkoff/kd)ならびに平衡解離定数は、全抗体および単量体(たとえばCD47タンパク質またはPD-L1タンパク質)を使用して測定する。
本明細書中で使用する用語「結合親和性」とは、一般的に、分子(たとえば抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(たとえば抗原)との非共有的相互作用の合計の強度を指す。別段に指摘しない限りは、本明細書中で使用する「結合親和性」とは、結合対のメンバー(たとえば抗体および抗原)間の1:1の相互作用を反映する、内因性の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般的に解離定数(KD)によって表すことができる。たとえば、KDは、約200nM、150nM、100nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、8nM、6nM、4nM、2nM、1nM、またはより強力であり得る。親和性は、本明細書中に記載したものを含めた、当分野で知られている一般方法によって測定することができる。低親和性抗体は、一般的に抗原とゆっくり結合し、容易に解離する傾向にある一方で、高親和性抗体は、一般的に抗原とより速く結合し、より長く結合したまま保たれる傾向にある。結合親和性を測定する様々な方法が当分野で知られており、これらのうちの任意ものを、本発明の目的のために使用することができる。具体的には、用語「結合親和性」とは、特定の抗原-抗体の相互作用の解離速度を指すことを意図する。KDは、「オフ速度(koff)」とも呼ばれる解離速度対会合速度または「オン速度(kon)」の比である。したがって、KDはkoff/konに等しく、モル濃度(M)として表される。したがって、KDが小さければ小さいほど、結合の親和性がより強力になるということになる。したがって、1μMのKDは、1nMのKDと比較して弱い結合親和性を示す。抗体のKD値は、当分野で十分に確立された方法を使用して決定することができる。抗体のKDを決定するための一方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用すること、典型的にはBIACOREシステムなどのバイオセンサーシステムを使用することによるものである。BIACORE動力学的分析は、固定された分子(たとえばエピトープ結合ドメインを含む分子)をその表面上に有するチップからの、抗原の結合および解離を分析することを含む。抗体のKDを決定するための別の方法は、バイオ層干渉法を使用すること、典型的にはOCTET(登録商標)技術(Octet QKeシステム、ForteBio)を使用することによるものである。
抗体、断片、またはその誘導体などの本発明の二重特異性抗体に関して「生物活性のある」、「生物活性」、および「生物学的特徴」とは、そうでないと指定されない限りは、生体分子と結合する能力を有することを意味する。
本明細書中で使用する用語「ポリヌクレオチド」、「核酸」、および「ヌクレオチド配列」としては、DNA分子(たとえばcDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(たとえばmRNA)、DNAおよびRNA分子の組合せまたはハイブリッドDNA/RNA分子、およびDNAまたはRNA分子の類似体が挙げられる。そのような類似体は、たとえば、それだけには限定されないがイノシンまたはトリチル化塩基を含むヌクレオチド類似体を使用して作製することができる。そのような類似体は、たとえばヌクレアーゼ耐性または細胞膜を横切る能力の増加などの有益な特質を分子に添える修飾された主鎖を含むDNAまたはRNA分子も含むことができる。核酸またはヌクレオチド配列は、一本鎖、二本鎖であり得、また、一本鎖および二本鎖部分をどちらも含有してよく、三重鎖部分を含有してよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
本明細書中で使用する用語「単離した」とは、その元の環境(たとえば、天然に存在するものであれば天然環境)から取り出された物質を指す。たとえば、生きた動物中に存在する、天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されていないが、天然系において共存する物質の一部または全部から分離された、同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されている。そのようなポリヌクレオチドはベクターの一部であり得る、および/あるいは、そのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、組成物、たとえば、混合物、溶液、もしくは懸濁液の一部である、または、ポリヌクレオチドもしくはポリペプチドを含む単離細胞もしくは培養細胞を含むことができ、それでも、ベクターまたは組成物がその天然環境の一部ではないという点で依然として単離されている。本明細書中で提供する任意の分子を単離し得る。
本明細書中で使用する用語「作動可能に連結した」とは、記載した構成成分が、それらがその意図される様式で機能することを許可する関係性にある状況を指す。たとえば、コード配列と「作動可能に連結した」制御配列は、制御配列に適したまたは適合性のある条件下でコード配列の発現が達成されるような様式でライゲーションされる。一般的に、「作動可能に連結した」とは、連結されるDNA配列が連続していること、分泌リーダーの場合は連続しておりかつ読取り相が一致していることを意味する。しかし、エンハンサーは連続している必要がない。連結は、好都合な制限部位でのライゲーションによって達成される。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを慣用の実施に従って使用する。
本明細書中で使用する「ベクター」とは、1つまたは複数の目的の遺伝子または配列を宿主細胞中に送達すること、かつ好ましくは発現させることが可能な構築体を意味する。ベクターの例としては、それだけには限定されないが、ウイルスベクター、裸DNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、陽イオン性縮合剤と会合させたDNAまたはRNA発現ベクター、リポソーム中にカプセル封入したDNAまたはRNA発現ベクター、およびプロデューサー細胞などの特定の真核細胞が挙げられる。
本明細書中で使用する用語「発現制御配列」または「制御配列」とは、それがライゲーションされているコード配列の発現をもたらすために必要なポリヌクレオチド配列を指す。そのような制御配列の性質は宿主生物に応じて異なる。たとえば、原核生物では、そのような制御配列は一般的にプロモーター、リボソーム結合部位、およびターミネーターを含み、一部の例ではエンハンサーを含む。したがって、用語「制御配列」とは、最小限でも、その存在が発現に必要であるすべての構成成分を含むことを意図し、その存在が有利である追加の構成成分、たとえばリーダー配列も含み得る。
「宿主細胞」は、ポリヌクレオチド挿入物を取り込むためのベクターレシピエントとなることができる、またはそうであった、個々の細胞または細胞培養物を含む。宿主細胞は単一の宿主細胞の子孫を含み、子孫は、天然、偶発的、または意図的な突然変異が原因で、必ずしも元の親細胞と完全に同一でなくてよい(形態学またはゲノムDNA補体において)。宿主細胞は、本発明のポリヌクレオチドをin vivoでトランスフェクトした細胞を含む。
本明細書中で使用する「哺乳動物細胞」は、ヒト、ラット、マウス、ハムスター、モルモット、チンパンジー、またはマカクを含めた哺乳動物に由来する細胞への言及を含む。細胞はin vivoまたはin vitroで培養し得る。
本明細書中で使用する用語「精製生成物」とは、生成物が通常会合している細胞構成物および/または目的試料中に存在し得る他の種類の細胞から単離された生成物の調製物を指す。
本明細書中で使用する「実質的に純粋」とは、少なくとも50%純粋(すなわち汚染物質を含まない)、より好ましくは少なくとも90%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、さらにより好ましくは少なくとも98%純粋、最も好ましくは少なくとも99%純粋である材料を指す。
本明細書中で使用する用語「癌」または「癌性」とは、異常な制御されない細胞の成長から生じる調節されない細胞成長、新生物、または腫瘍によって典型的に特徴づけられる、哺乳動物における生理的条件を指すまたはそれを説明する。一部の態様では、癌とは、局所的に留められている、転移のない悪性原発性腫瘍を指す。他の態様では、癌とは、隣接する身体構造に浸潤しそれを破壊し、遠位にまで拡大している、悪性腫瘍を指す。一部の態様では、癌は特異的癌抗原に関連している。
本明細書中で使用する用語「悪性細胞」または「悪性腫瘍」とは、侵襲性であるおよび/または転移を受けることができる腫瘍または腫瘍細胞、すなわち癌細胞を指す。
本明細書中で使用する用語「処置する」、「処置すること」、または「処置」とは、有益または所望の臨床結果を得るための手法である。本発明の目的のために、処置は、抗CD47、抗PD-L1、または抗CD47/抗PD-L1抗体分子(たとえば、CD47モノクローナル抗体、PD-L1モノクローナル抗体、またはCD47/PD-L1二重特異性抗体)を、対象、たとえば患者に投与することとして定義される。そのような投与は、たとえば、対象への直接投与によるもの、または対象に戻される、対象由来の単離した組織もしくは細胞への施用によるものであり得る。抗CD47、抗PD-L1、またはCD47/PD-L1抗体分子は、単独で、または1つもしくは複数の薬剤と組み合わせて投与することができる。処置は、障害、障害の症状、または障害、たとえば癌に対する素因を治す、治癒する、緩和させる、解放する、変更する、救済する、軽快させる、和らげる、改善させる、またはそれに影響を与えるためのものであり得る。
本明細書中で使用する用語「対象」とは、特定の処置のレシピエントとなる、それだけには限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯動物などを含めた任意の動物(たとえば哺乳動物)を含むことを意図する。たとえば、対象は癌を有する患者(たとえばヒト患者または獣医学的患者)であり得る。典型的には、用語「対象」、「個体」、および「患者」は、ヒト対象への言及に関して本明細書中で互換性があるように使用される。
本発明の用語「非ヒト動物」は、別段に注記しない限りは、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類、マウス、ラット、ウサギ、またはヤギなどの、すべての非ヒト脊椎動物、たとえば非ヒト哺乳動物および非哺乳動物を含む。
本明細書中で使用する用語「薬学的に許容できる」とは、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって認可された(もしくは認可可能な)、または米国薬局方もしくはヒトを含めた動物における使用について他の一般的に認識されている薬局方中に列挙されている生成物または化合物を指す。
本明細書中で使用する用語「薬学的に許容できる賦形剤、担体、もしくはアジュバント」または「許容される医薬担体」とは、対象に、本開示の少なくとも1つの抗体と一緒に投与することができ、抗体の活性を破壊しない、賦形剤、担体、またはアジュバントを指す。賦形剤、担体、またはアジュバントは、治療効果を送達するために十分な用量で抗体と共に投与した場合に無毒性であるべきである。
本明細書中で使用する用語「軽快させること」とは、本発明の抗体分子を投与しないことと比較して1つまたは複数の症状減らすまたは改善させることを意味する。また、「軽快させること」は、症状の持続期間の短縮または低下も含む。
本明細書中で使用する用語「防止する」、「防止すること」、および「防止」とは、予防剤または治療剤の投与の結果の、対象における、障害の1つまたは複数の症状の再発または発症の防止を指す。
本明細書中で使用する「有効量」、「治療上有効な量」、「治療上十分な量」、または「有効投与量」とは、対象に単一または複数の用量で投与した際に、疾患、障害、もしくは副作用を防止する、治癒する、軽快させる、処置する、もしくは管理することにおいて、または疾患もしくは障害の進行速度を減少することにおいて、または本明細書中に記載の障害を有する対象の状態を、そのような処置の非存在下において予想されるものを超えて、治癒を延長する、緩和させる、解放する、もしくは改善させることにおいて有効または十分な、任意の量の治療剤を指す。この用語はまた、その範囲内に、正常な生理的機能を増強させるために有効な量も含む。有効量は1つまたは複数の治療剤を投与するコンテキストにおいて考慮されることがあり、1つまたは複数の他の薬剤と併せて望ましい結果が達成され得るまたは達成される場合は、単一の薬剤を有効量で与えることが考慮されることがある。
本明細書中で使用する、腫瘍または癌の「成長を阻害すること」とは、その成長および/または転移を遅くする、中断させる、静止させる、または停止させることを指し、必ずしも腫瘍成長の完全排除を示さない。
作用強度とは、所定の強度の効果を生じるために必要な量の観点から表す、治療剤の活性の測度である。低濃度でより小さな応答を引き起こすより低い作用強度の薬剤と比較して、非常に強力な薬剤は低濃度でより大きな応答を引き起こす。作用強度は親和性および有効性の関数である。有効性とは、標的リガンドと結合した際に生物学的応答を生じる治療剤の能力、およびこの応答の定量的規模を指す。本明細書中で使用する用語「最大半量有効濃度(EC50)」とは、ベースラインと指定した曝露時間後の最大との真ん中の応答を引き起こす治療剤の濃度を指す。治療剤は阻害または刺激を引き起こし得る。EC50値は、作用強度の測度として一般的に使用される、および本明細書中で使用する。
本明細書中で使用する「組合せ療法」または「と組み合わせた」投与とは、複数の予防剤および/または治療剤の使用を指す。用語「組合せ療法」または「組み合わせて」の使用は、予防剤および/または治療剤を障害を有する対象に投与する順序を制限しない。言い換えれば、組合せ療法は、別々、順次、または同時に治療剤で処置することによって行い得る。「順次投与」の場合、第2の薬剤を投与した際またはそれが対象において活性となった際に、第1の投与した薬剤は対象に対して何らかの生理的効果を発揮している場合がある。
予防剤および/または治療剤の投与に関して本明細書中で使用する用語「同時投与」とは、個々の薬剤が対象内に同時に存在するように薬剤を投与することを指す。同時投与は、分子を単一の組成物中で、または同じもしくは近い時間に投与する別々の組成物中で配合することによってもたらし得る(affected)。順次投与は必要に応じて任意の順序であり得る。
本明細書中で使用する「CD47」とは、哺乳動物表面抗原分類47(CD47)タンパク質、好ましくはヒトCD47タンパク質を指す。ヒトCD47のアミノ酸配列および関連情報は、たとえば、すべての目的のために本明細書中に参考として組み込まれているUniProtKB番号A0A0A1TSG4の下で提供されている。
典型的には、CD47の天然に存在する対立遺伝子変異体は、UniProtKB番号A0A0A1TSG4に記載されているタンパク質と少なくとも95%、97%、または99%同一であるアミノ酸配列を有する。CD47タンパク質は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属しており、シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)、トロンボスポンジン-1(TSP-1)、および膜インテグリンなどの様々なリガンドと相互作用する膜貫通タンパク質として特徴づけられている。CD47は様々な種類の癌細胞によって過剰発現される。CD47リガンドSIRPαは、マクロファージおよび樹状細胞(DC)などの先天性免疫系の様々な細胞上で発現される。CD47とSIRPαとの結合はSIRPαを発現する免疫細胞の活性を抑制し、したがって、腫瘍細胞が先天性免疫系監視を回避することを可能にする。
本明細書中で使用する「CD47と結合する抗体」、「CD47を認識する抗体」、「抗CD47抗体」、「抗CD47抗体分子」、「CD47と特異的に結合する抗体」、「CD47抗体」などは、CD47と特異的に結合する少なくとも1つの結合ドメインを含有する分子を含む。本発明のCD47抗体分子は、CD47、たとえば、ヒトCD47、マウスCD47、ラットCD47、カニクイザルCD47と相互作用するまたはそれを認識する、たとえば結合する(たとえば特異的に結合する)その抗体を含む。
本明細書中で使用する「PD-L1」とは、哺乳動物プログラム死リガンド1(PD-L1)タンパク質、好ましくはヒトPD-L1タンパク質を指す。PD-L1はCD274またはB7-H1としても知られる。ヒトPD-L1のアミノ酸配列および関連情報は、たとえば、すべての目的のために本明細書中に参考として組み込まれているUniProtKB番号Q9NZQ7の下で提供されている。
典型的には、PD-L1の天然に存在する対立遺伝子変異体は、UniProtKB番号Q9NZQ7に記載されているタンパク質と少なくとも95%、97%、または99%同一であるアミノ酸配列を有する。PD-L1タンパク質は、たとえばPD-1との結合によって、免疫系の適応アームの抑制に関与している膜貫通タンパク質として特徴づけられている。PD-L1は様々な種類の癌細胞によって過剰発現される。PD-L1は、T細胞などの適応免疫系の細胞上で発現される受容体PD-1のリガンドである。PD-L1とPD-1との結合はPD-1を発現する免疫細胞の活性を抑制し、したがって、腫瘍細胞が免疫細胞(たとえばエフェクターT細胞)を発現するPD-1を回避することを可能にする。
本明細書中で使用する「PD-L1と結合する抗体」、「PD-L1を認識する抗体」、「抗PD-L1抗体」、「抗PD-L1抗体分子」、「PD-L1と特異的に結合する抗体」、「PD-L1抗体」などは、PD-L1と特異的に結合する少なくとも1つの結合ドメインを含有する分子を含む。本発明のPD-L1抗体分子は、PD-L1、たとえば、ヒトPD-L1、マウスPD-L1、ラットPD-L1、カニクイザルPD-L1と相互作用するまたはそれを認識する、たとえば結合する(たとえば特異的に結合する)その抗体を含む。
本明細書中で使用する用語「CD47/PD-L1二重特異性抗体」とは、CD47およびPD-L1と特異的に結合するように設計された分子を指す。
本明細書中で使用する「第1のポリペプチド」とは、第2のポリペプチドと会合させる任意のポリペプチドである。第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは界面で対面する。界面に加えて、第1のポリペプチドは、「結合ドメイン」(たとえば、抗体可変ドメイン、受容体結合ドメイン、リガンド結合ドメイン、もしくは酵素ドメイン)、またはCH2、CH1、およびCLドメインを含む抗体定常ドメイン(もしくはその部分)などの、1つまたは複数の追加のドメインを含み得る。通常、第1のポリペプチドは、抗体に由来する少なくとも1つのドメインを含む。このドメインは、好都合には抗体のCH3ドメインなどの定常ドメインであり、第1のポリペプチドの界面を形成することができる。例示的な第1のポリペプチドとしては、抗体重鎖ポリペプチド、抗体定常ドメインを異種ポリペプチドの結合ドメインと組み合わせたキメラ、受容体ポリペプチド、リガンドポリペプチド、および抗体可変ドメインポリペプチド(たとえば二重特異性抗体)が挙げられる。
界面に加えて、第2のポリペプチドは、「結合ドメイン」(たとえば、抗体可変ドメイン、受容体結合ドメイン、リガンド結合ドメイン、もしくは酵素ドメイン)、またはCH2、CH1、およびCLドメインを含む抗体定常ドメイン(もしくはその部分)などの追加のドメインを含み得る。通常、第2のポリペプチドは、抗体に由来する少なくとも1つのドメインを含む。このドメインは、好都合には抗体のCH3ドメイン定常領域であり、第2のポリペプチドの界面を形成することができる。例示的な第2のポリペプチドとしては、抗体重鎖ポリペプチド、抗体定常ドメインを異種ポリペプチドの結合ドメインと組み合わせたキメラ、および抗体可変ドメインポリペプチド(たとえば二重特異性抗体)が挙げられる。
本明細書中で使用する用語「複合体」または「複合体形成した」とは、ペプチド結合ではない結合および/または力(たとえば、ファンデルワールス、疎水性、親水性の力)を通じて互いに相互作用する2つ以上の分子の会合を指す。一実施形態では、複合体はヘテロ多量体である。本明細書中で使用する用語「タンパク質複合体」または「ポリペプチド複合体」は、タンパク質複合体中にタンパク質とコンジュゲーションした非タンパク質実体を有する複合体を含むことが、理解されよう(たとえば、それだけには限定されないが毒素または検出剤などの化学的分子を含む)。
本明細書中に記載したものに類似または等価な任意の材料および方法を本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい材料および方法を以下に記載する。
材料および方法
抗体を産生するための様々な技法が記載されており、モノクローナル抗体を作製するための従来のハイブリドーマ方法、抗体(キメラ抗体、たとえばヒト化抗体を含む)を作製するための組換え技法、トランスジェニック動物中における抗体産生、および「完全ヒト」抗体を調製するための最近記載されたファージディスプレイ技術が挙げられる。
本明細書中で提供する抗体のうちの任意のものを作製する方法を、本明細書中で提供する。本発明の抗体は、当分野で知られている手順によって作製することができる。ポリペプチドは、抗体のタンパク質分解もしくは他の分解によって、上述の組換え方法(すなわち単一もしくは融合ポリペプチド)によって、または化学合成によって生成することができる。抗体のポリペプチド、特に約50個までのアミノ酸のより短いポリペプチドは、化学合成によって好都合に作製される。化学合成の方法は当分野で知られており、市販されている。たとえば、抗体は、固相方法を用いた自動ポリペプチド合成器によって生成することができる。米国特許第5,807,715号、第4,816,567号、および第6,331,415号も参照されたい。
二重特異性抗体を調製するための任意の適切な方法を使用して、本明細書中で提供する二重特異性抗体を調製し得る(たとえば抗体の特長および構成成分の選択に応じて)。
二重特異性抗体を作製する一手法によれば、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常領域配列と融合する。融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2、およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常領域とのものである。一部の実施形態では、軽鎖結合の部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)が、融合体のうちの少なくとも1つ中に存在することができる。一部の実施形態では、免疫グロブリン重鎖融合体および所望する場合は免疫グロブリン軽鎖をコードしているポリヌクレオチドを別々の発現ベクター内に挿入してよく、適切な宿主生物内にコトランスフェクトしてよい。他の実施形態では、少なくとも2本のポリペプチド鎖の等比での発現が高収率をもたらす場合、または比が特に有意差をもたらさない場合は、2本または3本すべてのポリペプチド鎖のコード配列を1つの発現ベクター内に挿入し得る。
一手法では、二重特異性抗体は、一方のアーム中に第1の結合特異性を有し、他方のアーム中にハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖の対(第2の結合特異性を提供する)を有する、ハイブリッド免疫グロブリン重鎖から構成される。二重特異性分子の半分にのみ免疫グロブリン軽鎖を有するこの不斉構造は、所望の二重特異性化合物を、望まない免疫グロブリン連鎖反応から分離することを容易にする。この手法はPCT公開WO94/04690号中に記載されている。
別の手法では、二重特異性抗体は、1つのアーム中の第1のヒンジ領域中のアミノ酸修飾から構成されており、第1のヒンジ領域中の置換されたアミノ酸は、別のアーム中の第2のヒンジ領域中の対応するアミノ酸とは逆の電荷を有する。この手法は国際特許出願PCT/US2011/036419号(WO2011/143545号)中に記載されている。
別の手法では、所望のヘテロ多量体またはヘテロ二量体タンパク質(たとえば二重特異性抗体)の形成は、第1および第2のFc鎖の間の界面を変更または操作設計することによって増強される。この手法では、二重特異性抗体はCH3領域から構成されていてよく、CH3領域は、一緒に相互作用してCH3界面を形成する第1のCH3ポリペプチドおよび第2のCH3ポリペプチドを含み、CH3界面内の1つまたは複数のアミノ酸はホモ二量体形成を不安定化し、ホモ二量体形成にとって静電気的に不利ではない。この手法は国際特許出願PCT/US2011/036419号(WO2011/143545号)中に記載されている。一部の実施形態では、二重特異性抗体の一方Fc鎖は、ヒンジ領域中の位置223および228(たとえば(C223EまたはC223R)および(P228EまたはP228R))ならびにヒトIgG2のCH3領域中の位置409(たとえばK409R(EU付番スキーム))にアミノ酸修飾を含むことができ、二重特異性抗体の他方のFc鎖は、ヒンジ領域中の位置223、225、および228(たとえば、(C223EまたはC223R)、(E225R)、および(P228EまたはP228R))ならびにヒトIgG2のCH3領域中の位置368(たとえばL368E(EU付番スキーム))にアミノ酸修飾を含むことができる。他の実施形態では、二重特異性抗体の一方Fc鎖は、ヒンジ領域中の位置223および228(たとえば(C223EまたはC223R)および(P228EまたはP228R))ならびにヒトIgG2のCH3領域中の位置368(たとえばL368E(EU付番スキーム))にアミノ酸修飾を含むことができ、二重特異性抗体の他方のFc鎖は、ヒンジ領域中の位置223、225、および228(たとえば、(C223EまたはC223R)、(E225R)、および(P228EまたはP228R))ならびにヒトIgG2のCH3領域中の位置409(たとえばK409R(EU付番スキーム))にアミノ酸修飾を含むことができる。一部の実施形態では、二重特異性抗体は、ヒンジ領域中の位置221および228(たとえば(D221RまたはD221E)および(P228RまたはP228E))ならびにヒトIgG1のCH3領域中の位置409または368(たとえばK409RまたはL368E(EU付番スキーム))にアミノ酸修飾を含むことができる。一部の実施形態では、二重特異性抗体は、ヒンジ領域中の位置228(たとえば(P228EまたはP228R))およびヒトIgG4のCH3領域中の位置409または368(たとえばR409またはL368E(EU付番スキーム))にアミノ酸修飾を含むことができる。
一部の実施形態では、二重特異性抗体はFc鎖中にノブ-イン-ホール突然変異を有し得る。たとえば、一部の実施形態では、ノブ-イン-ホール突然変異を有する二重特異性抗体において、抗体Fcドメインの第1のFc鎖は「ノブ」を形成するための1つもしくは複数の突然変異を有しており、抗体Fcドメインの第2のFc鎖は「ホール」を形成するための1つもしくは複数の突然変異を有している(またはその逆)。例示的な抗体のノブ-イン-ホール操作設計は、米国特許第5,731,168号、PCT公開WO2009089004号、米国公開第20090182127号、MarvinおよびZhu、Acta Pharmacologica Sincia(2005)26(6):649~658、ならびにKontermann(2005)Acta Pharacol.Sin.、26:1~9中に記載されている。
「ノブ」とは、第1のポリペプチド(たとえば第1のFc鎖)の界面から突出しており、したがって隣接する第2のポリペプチド(たとえば第2のFc鎖)中の埋め合わせをするホール中に配置してヘテロ二量体を安定化することができ、それによってホモ二量体形成よりもヘテロ二量体形成を支持する、少なくとも1つのアミノ酸側鎖を指す。ノブは元の界面中に存在していてよく、または合成により導入してもよい(たとえば界面をコードしている核酸を変更することによって)。通常、第1のポリペプチドの界面をコードしている核酸は、ノブをコードするように変更されている。これを達成するために、第1のポリペプチド中の少なくとも1つの元のアミノ酸残基をコードしている核酸を、元のアミノ酸残基よりも長い側鎖体積を有する少なくとも1つの「インポート」アミノ酸残基をコードしている核酸で置き換える。ノブを形成するための特定のインポート残基は、一般的には天然に存在するアミノ酸残基であり、好ましくはアルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、およびトリプトファン(W)から選択される。
「ホール」とは、第2のポリペプチド(たとえば第2のFc鎖)の界面からくぼんでおり、したがって隣接する第1のポリペプチド(たとえば第1のFc鎖)中の対応するノブを収容する、少なくとも1つのアミノ酸側鎖を指す。ホールは元の界面中に存在していてよく、または合成により導入してもよい(たとえば界面をコードしている核酸を変更することによって)。通常、第2のポリペプチドの界面をコードしている核酸は、ホールをコードするように変更されている。これを達成するために、第2のポリペプチド中の少なくとも1つの元のアミノ酸残基をコードしている核酸を、元のアミノ酸残基よりも小さい側鎖体積を有する少なくとも1つの「インポート」アミノ酸残基をコードしているDNAで置き換える。ホールを形成するための特定のインポート残基は、通常は天然に存在するアミノ酸残基であり、好ましくはアラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、およびバリン(V)から選択される。
本明細書中で使用する用語「界面」とは、典型的には、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとの接触に関与する場合があるドメイン中に存在する任意のアミノ酸残基を指す。「元のアミノ酸」残基とは、「インポートアミノ酸」残基によって置き換えられるものであり、これは元の残基よりも小さいまたは大きい側鎖体積を有することができる。インポートアミノ酸残基は天然に存在するまたは天然に存在しないアミノ酸残基であり得るが、好ましくは前者である。「天然に存在する」アミノ酸残基とは、遺伝暗号によってコードされている残基である。「天然に存在しない」アミノ酸残基とは、遺伝暗号によってコードされていないが、ポリペプチド鎖中の隣接アミノ酸残基と共有結合することができる残基を意味する。天然に存在しないアミノ酸残基の例は、ノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン、およびEllmanら、Meth.Enzym.、202:301~336(1991)中に記載されているものなどの他のアミノ酸残基類似体である。
一部の実施形態では、二重特異性抗体は、WO2016166629号中に提供される二重特異性抗体のうちの任意のものの特長または特徴のうちの任意のものを有し得る。
任意選択の二重特異性抗体形式は、共有連結した二重特異性ヘテロ二量体ジアボディ構造に基づくFv由来の戦略であり、二重親和性再標的化(DART(登録商標))タンパク質としても知られており、これは、たとえば、米国特許公開第2007/0004909号、第2009/0060910号、および第2010/0174053号中に記載されている。
本発明の分子(すなわち結合ドメイン)をコードしている核酸配列が得られた後、分子を生成するためのベクターを当分野で周知の技法を使用して、組換えDNA技術によって生成させ得る。
本発明の抗体(たとえば、抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、またはCD47/PD-L1二重特異性抗体)結合ドメインをコードしているポリヌクレオチドは、当分野で知られている天然において会合しているまたは異種のプロモーター領域を含めた、抗体コード配列と作動可能に連結した発現制御ポリヌクレオチド配列を含み得る。発現制御配列は、真核宿主細胞を形質転換させるまたはそれにトランスフェクトすることができるベクター中の真核プロモーター系であってよいが、原核宿主のための制御配列も使用し得る。ベクターが適切な宿主細胞系内に取り込まれた後、宿主細胞を、ヌクレオチド配列を発現させるため、かつ所望に応じて抗体を収集および精製するために適した条件下で繁殖させる。真核細胞系としては、CHO細胞系、様々なCOS細胞系、HeLa細胞、骨髄腫細胞系、形質転換B細胞、またはヒト胎児腎臓細胞系が挙げられる。
一実施形態では、本発明の抗体をコードしているDNAは、慣用の手順を使用して(たとえば抗体の重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子と特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)単離および配列決定する。単離した後、DNAを発現ベクター内に入れてよく、その後、これをそうでなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しないサルCOS細胞、CHO細胞、または骨髄腫細胞などの宿主細胞内にトランスフェクトして、組換え宿主細胞中でのモノクローナル抗体の合成を得る。また、DNAは、たとえば対応する抗体の1つまたは複数の特性(たとえば結合親和性、免疫原性など)を改善させるために修飾してもよい。
抗CD47抗体
一部の実施形態では、抗CD47抗体を本明細書中で提供する。
一態様では、(a)配列番号1、3、7、8、もしくは9に示すVH配列のVH相補性決定領域1(VH CDR1)、VH相補性決定領域2(VH CDR2)、およびVH相補性決定領域3(VH CDR3)を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに/または(b)配列番号2もしくは6に示すVL配列のVL相補性決定領域1(VL CDR1)、VL相補性決定領域2(VL CDR2)、およびVL相補性決定領域3(VL CDR3)を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、抗CD47抗体を提供する。
別の態様では、表1に列挙したVHのうちの任意の1つおよび/またはVL配列のうちの任意の1つを有する抗CD47抗体を提供する。表1では、下線を引いた配列はKabatによるCDR配列であり、太字のものはChothiaによるものである。一実施形態では、本発明は、VHおよび/またはVLを含む抗体であって、(a)VHは配列番号1、3、7、8、もしくは9を含む、および/または(b)VLは配列番号2もしくは6を含む抗体を提供する。
一部の実施形態では、本明細書中で提供する抗CD47抗体はVHおよびVLを含み、VHは配列番号1の配列を含み、VLは配列番号2の配列を含む。一実施形態では、本明細書中で提供する抗CD47抗体はVHおよびVLを含み、VHは配列番号3の配列を含み、VLは配列番号2の配列を含む。一実施形態では、本明細書中で提供する抗CD47抗体はVHおよびVLを含み、VHは配列番号7の配列を含み、VLは配列番号2の配列を含む。一実施形態では、本明細書中で提供する抗CD47抗体はVHおよびVLを含み、VHは配列番号9の配列を含み、VLは配列番号2の配列を含む。一実施形態では、本明細書中で提供する抗CD47抗体はVHおよびVLを含み、VHは配列番号8の配列を含み、VLは配列番号6の配列を含む。
一部の実施形態では、本明細書中で提供する抗CD47抗体は、様々な結合特異性を有する複数の様々な抗体と同じVLアミノ酸配列を有する。したがって、本明細書中で提供する様々な抗体において、抗体は、異なるVH配列であるが同じVL配列を有し得る。これらの抗体は同じVL配列を有するが、異なるVH配列を有することが原因で、これらは互いに異なる結合親和性および/または特異性を有する。一部の実施形態では、同じVL配列を共有する本明細書中で提供する抗体は、様々な抗原と特異的に結合する。たとえば、同じアミノ酸配列を共有するVLを有する抗CD47および抗PD-L1抗体を本明細書中で提供する。複数の抗体によって共有される、本明細書中で提供するVL配列は、本明細書中で「共通軽鎖」と呼ぶ。表1は、本明細書中で提供する抗体の一部である様々な共通軽鎖の配列情報を提供する。たとえば、「共通軽鎖1」VLは、以下の様々な抗CD47および抗PD-L1抗体によって共有される:CD47_P01A11_75、CD47_P01A11_497、CD47_P01A11_親、CD47_P01A08_親、PDL1_P06B05_245、PDL1_P06B05_親、PDL1_P06A09_親。別の例では、「共通軽鎖2」VLは、以下の様々な抗CD47および抗PD-L1抗体によって共有される:CD47_P14D04_親、PDL1_D04D09_親VL。
本発明はまた、CD47に対する抗体のCDR部分も提供する。
一態様では、表2に列挙したVH CDR配列のうちの任意の1つおよび/またはVL CDR配列のうちの任意の1つを有する抗CD47抗体を提供する。一態様では、本発明は、CD47と特異的に結合する抗体であって、(a)(i)配列番号13、14、15、22、23、25、26、27、31、32、33、37、38、もしくは39を含むVH CDR1、(ii)配列番号16、17、28、29、34、もしくは35を含むVH CDR2、および(iii)配列番号18、24、30、36、もしくは40を含むVH CDR3を含むVH、ならびに/または(b)(i)配列番号19もしくは53を含むVL CDR1、(ii)配列番号20もしくは54を含むVL CDR2、および(iii)配列番号21もしくは55を含むVL CDR3を含むVLを含む抗体を提供する。
一部の実施形態では、抗CD47抗体を本明細書中で提供し、VHは、配列番号1、3、7、8、もしくは9の配列、または配列中に1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のアミノ酸置換を有するその変異体を含む、および/あるいは、VLは、配列番号2もしくは6の配列、または配列中に1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のアミノ酸置換を有するその変異体を含む。置換は保存的アミノ酸置換であってもよい。置換はCDR領域中でなくてもよい。
本発明はまた、本明細書中で提供する抗CD47抗体のscFvも包含する。単鎖可変領域断片は、たとえば、それだけには限定されないが、短い連結ペプチドを使用することによって軽および/または重鎖可変領域を遺伝子融合させることによって作製される(Birdら、Science、242:423~426、1988)。ジアボディまたはミニボディなどの単鎖抗体の他の形態も包含される。
一部の実施形態では、本明細書中で提供する抗CD47抗体はモノクローナル抗体である。抗CD47抗体はヒト抗体またはヒト化抗体であってもよい。
抗PD-L1抗体
一部の実施形態では、抗PD-L1抗体を本明細書中で提供する。
一態様では、(a)配列番号4、5、10、11、または12に示すVH配列のVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含むVH、ならびに/または(b)配列番号2または6に示すVL配列のVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含むVLを含む、抗PD-L1抗体を提供する。
別の態様では、表3に列挙したVHのうちの任意の1つおよび/またはVL配列のうちの任意の1つを有する抗PD-L1抗体を提供する。表3では、下線を引いた配列はKabatによるCDR配列であり、太字のものはChothiaによるものである。一実施形態では、本発明は、VHおよび/またはVLを含む抗体であって、(a)VHは配列番号4、5、10、11、もしくは12を含む、および/または(b)VLは配列番号2もしくは6を含む抗体を提供する。
一部の実施形態では、本明細書中で提供する抗PD-L1抗体はVHおよびVLを含み、VHは配列番号4のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号2のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、本明細書中で提供する抗PD-L1抗体はVHおよびVLを含み、VHは配列番号5のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号6のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、本明細書中で提供する抗PD-L1抗体はVHおよびVLを含み、VHは配列番号10のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号6のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、本明細書中で提供する抗PD-L1抗体はVHおよびVLを含み、VHは配列番号11のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号2のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、本明細書中で提供する抗PD-L1抗体はVHおよびVLを含み、VHは配列番号12のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号2のアミノ酸配列を含む。
本発明はまた、PD-L1に対する抗体のCDR部分も提供する。
一態様では、表4に列挙したVH CDR配列のうちの任意の1つおよび/またはVL CDR配列のうちの任意の1つを有する抗PD-L1抗体を提供する。一態様では、本発明は、PD-L1と特異的に結合する抗体であって、(a)(i)配列番号41、42、43、47、48、もしくは49を含むVH CDR1、(ii)配列番号44、45、50、51、58、もしくは59を含むVH CDR2、および(iii)配列番号46、52、56、57、もしくは60を含むVH CDR3を含むVH、ならびに/または(b)(i)配列番号19もしくは53を含むVL CDR1、(ii)配列番号20もしくは54を含むVL CDR2、および(iii)配列番号21もしくは55を含むVL CDR3を含むVLを含む抗体を提供する。
一部の実施形態では、抗PD-L1抗体を本明細書中で提供し、VHは、配列番号4、5、10、11、もしくは12の配列、または配列中に1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のアミノ酸置換を有するその変異体を含む、および/あるいは、VLは、配列番号2もしくは6の配列、または配列中に1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のアミノ酸置換を有するその変異体を含む。置換は保存的アミノ酸置換であってもよい。置換はCDR領域中でなくてもよい。
本発明はまた、本明細書中で提供する抗PD-L1抗体のscFvも包含する。ジアボディまたはミニボディなどの単鎖抗体の他の形態も包含される。
一部の実施形態では、本明細書中で提供する抗PD-L1抗体はモノクローナル抗体である。抗PD-L1抗体はヒト抗体またはヒト化抗体であってもよい。
CD47/PD-L1二重特異性抗体
一部の実施形態では、CD47/PD-L1二重特異性抗体を本明細書中で提供する。
CD47/PD-L1二重特異性抗体は、少なくとも第1の抗原結合部分(CD47と特異的に結合する)および第2の抗原結合部分(PD-L1と特異的に結合する)を含む。一部の実施形態では、第1の抗原結合部分は第1のVHを含み、第2の抗原結合部分は第2のVHを含む。一部の実施形態では、第1の抗原結合部分は第1のVHおよび第1のVLを含み、第2の抗原結合部分は第2のVHおよび第2のVLを含む。一部の実施形態では、第1のVLおよび第2のVLのアミノ酸配列は同じである。
本明細書中で提供するCD47/PD-L1二重特異性抗体は、本明細書中で提供する抗CD47抗体のうちの任意もの(たとえば第1の抗原結合部分として)および本明細書中で提供する抗PD-L1抗体のうちの任意のもの(たとえば第2の抗原結合部分として)を含有し得る。
一部の実施形態では、CD47と特異的に結合する第1の抗原結合部分およびPD-L1と特異的に結合する第2の抗原結合部分を含むCD47/PD-L1二重特異性抗体であって、第1の抗原結合部分がVHおよび/またはVLを含み、(a)VHが配列番号1を含み、(b)VLが配列番号2を含み、ならびに、第2の抗原結合部分がVHおよび/またはVLを含み、(a)VHが配列番号4を含み、(b)VLが配列番号2を含む、CD47/PD-L1二重特異性抗体を提供する。
一部の実施形態では、CD47と特異的に結合する第1の抗原結合部分およびPD-L1と特異的に結合する第2の抗原結合部分を含むCD47/PD-L1二重特異性抗体であって、第1の抗原結合部分がVHおよび/またはVLを含み、(a)VHが配列番号3を含み、(b)VLが配列番号2を含み、ならびに、第2の抗原結合部分がVHおよび/またはVLを含み、(a)VHが配列番号4を含み、(b)VLが配列番号2を含む、CD47/PD-L1二重特異性抗体を提供する。
一部の実施形態では、CD47と特異的に結合する第1の抗原結合部分およびPD-L1と特異的に結合する第2の抗原結合部分を含むCD47/PD-L1二重特異性抗体であって、第1の抗原結合部分が表2に列挙したVH CDR配列のうちの任意の1つを含み、第2の抗原結合部分が表4に列挙したVH CDR配列のうちの任意の1つを含む、CD47/PD-L1二重特異性抗体を提供する。
一部の実施形態では、CD47と特異的に結合する第1の抗原結合部分およびPD-L1と特異的に結合する第2の抗原結合部分を含むCD47/PD-L1二重特異性抗体を本明細書中で提供し、二重特異性抗体は、表5に示す抗CD47抗体のうちの任意のVHおよびVLまたはそのCDRを含有し、二重特異性抗体は、表5に示す抗PD-L1抗体のうちの任意のVHおよびVLまたはそのCDRを含有する。
一部の実施形態では、CD47および/またはPD-L1と結合し、対応する抗原との結合について本明細書中に記載の抗体と競合する、たとえば、CD47との結合についてCD47_P01A11_75、CD47_P01A11_497、CD47_P01A11_親、CD47_P14D04_親、もしくはCD47_P01A08_親と競合する、またはPD-L1との結合についてPDL1_P06B05_245、PDL1_P04D09_113、PDL1_P04D09_親、PDL1_P06B05_親、もしくはPDL1_P06A09_親と競合する抗体を本明細書中で提供する。
本明細書中に記載の抗体のCD47またはPD-L1に対する結合親和性(KD)は、約0.001nM~約6500nMであり得る。一部の実施形態では、結合親和性は、約6500nM、6000nM、5500nM、4500nM、4000nM、3500nM、3000nM、2500nM、2000nM、1500nM、1000nM、750nM、500nM、400nM、300nM、250nM、200nM、150nM、100nM、75nM、50nM、45nM、40nM、35nM、30nM、25nM、20nM、19nM、17nM、16nM、15nM、10nM、8nM、7.5nM、7nM、6.5nM、6nM、5.5nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.5nM、0.3nM、0.1nM、0.01nM、0.002nM、または0.001nMのうちの任意のものである。一部の実施形態では、結合親和性は、約6500nM、6000nM、5500nM、5000nM、4000nM、3000nM、2000nM、1000nM、900nM、800nM、500nM、250nM、200nM、100nM、50nM、30nM、20nM、10nM、7.5nM、7nM、6.5nM、6nM、5nM、4.5nM、4nM、3.5nM、3nM、2.5nM、2nM、1.5nM、1nM、0.5nM、0.1nM、0.05nM、0.01nM、またはそれより低いnMのうちの任意のもの未満である。
一部の実施形態では、本明細書中で提供するCD47/PD-L1二重特異性抗体は、CD47よりもPD-L1に対して高い親和性を有する(たとえば、PD-L1に対する抗体の第2の抗原結合部分の親和性が、CD47に対する抗体の第1の抗原結合部分の親和性よりも高い)。理論に束縛されずに、CD47よりもPD-L1に対して高い親和性を有するCD47/PD-L1二重特異性抗体は、抗体の抗CD47抗体結合部分によって潜在的に引き起こされる潜在的な副作用または毒性を減らすために望ましい場合がある。様々な癌細胞上で発現されることに加えて、CD47は広範囲の健康なヒト細胞(赤血球(RBC)を含む)中で発現され、抗CD47抗体と健康な細胞との結合が原因の、抗CD47抗体からの顕著な望ましくない副作用の潜在性が存在する。比較的低い親和性の抗CD47抗原結合部分を含有するCD47/PD-L1二重特異性抗体は、そのような二重特異性抗体の、RBCなどの健康な細胞(CD47タンパク質を発現するがPD-L1タンパク質は発現しないもの)に対する比較的低い親和性、およびそのような二重特異性抗体の、癌細胞(しばしばCD47およびPD-L1をどちらも発現する)に対する比較的高い親和性が原因で、健康な細胞よりも癌細胞と優先的に結合し得る。一部の実施形態では、CD47よりもPD-L1に対して高い親和性を有する、本明細書中で提供するCD47/PD-L1二重特異性抗体において、抗体の抗PD-L1結合部分は、抗体の抗CD47結合部分がCD47に対して有するよりも、PD-L1に対して少なくとも2×(すなわち2倍)、3×、5×、10×、20×、50×、100×、200×、500×、1000×、2000×、または5000×高い親和性を有する。一部の実施形態では、CD47よりもPD-L1に対して高い親和性を有する、本明細書中で提供するCD47/PD-L1二重特異性抗体において、抗体の抗PD-L1結合部分は、およそ10nM、5nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、または0.1nM以下の、PD-L1に対する結合親和性(KD)を有し、抗体の抗CD47結合部分は、およそ1000nM、600nM、500nM、400nM、300nM、200nM、100nM、50nM、20nM、または10nM以下の、CD47に対する結合親和性(KD)を有し、PD-L1に対する抗体の抗PD-L1結合部分の親和性は、CD47に対する抗体の抗CD47結合部分の親和性よりも少なくとも2×、3×、5×、10×、20×、50×、100×、200×、500×、1000×、2000×、または5000×高い(すなわちnMの値が小さい(より高い親和性はより低いnM値によって示されるため))。
一部の実施形態では、本明細書中で提供するCD47/PD-L1二重特異性抗体は、CD47およびPD-L1の両方に対して同様の親和性を有する。
本明細書中で提供するCD47/PD-L1二重特異性抗体は、任意の適切な形式を有することができる。一部の実施形態では、本明細書中で提供する二重特異性抗体は完全長ヒト抗体を含む。一部の実施形態では、ヒト抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプを有する。一部の実施形態では、抗体は免疫学的に不活性なFc鎖を含む。
一部の実施形態では、本明細書中で提供する二重特異性CD47/PD-L1抗体は、Suurs,F.V.ら、Pharmacology & Therapeutics、201(2019)ページ103~119中に記載の形式を有することができる。
二重特異性抗体は、VHとVLの間に、V領域の鎖間対合は達成されるが鎖内対合は達成されないように短いリンカー(たとえば約3~10個の残基)を用いてscFv断片を構築し、二価断片、すなわち2つの抗原結合部位を有する断片をもたらすことによって調製してもよい。二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体断片に由来することができる(たとえばF(ab’)2二重特異性抗体)。ジアボディは、たとえば、EP404,097号、WO93/11161号、およびHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444~6448、1993中により完全に記載されている。
本発明は、Fc鎖もしくはドメイン、またはその一部分を含む二重特異性抗体を包含する。一部の実施形態では、Fc鎖またはその一部分は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFc鎖の1つまたは複数の定常ドメイン(たとえばCH2またはCH3ドメイン)を含む。別の実施形態では、本発明は、Fc鎖またはその一部分を含む分子を包含し、Fc鎖またはその一部分は、匹敵する野生型Fc鎖またはその一部分と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾(たとえば置換)を含む。変異Fc鎖は当分野で周知であり、当分野で周知の結合活性またはエフェクター機能アッセイ、たとえば、ELISA、SPR分析、またはADCCのうちの任意のものにおいてアッセイして、変異Fc鎖を含む抗体の表現型を変更するために主に使用される。そのような変異Fc鎖またはその一部分は、Fc鎖またはその一部分を含む本発明の二重特異性抗体によって示される血漿半減期および安定性を延長させ得る。別の実施形態では、本発明は、当分野で知られている任意のFc変異体の使用を包含する。
一部の実施形態では、1つまたは複数の修飾をFc鎖のアミノ酸に行って、Fc鎖、したがって本発明の二重特異性抗体分子の、1つまたは複数のFcγR受容体に対する親和性および結合力を低下させる。具体的な実施形態では、本発明は、変異Fc鎖またはその一部分を含む二重特異性抗体であって、変異Fc鎖が、野生型Fc鎖と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、1つのFcγRとのみ結合し、FcγRがFcγRIIIAである抗体を包含する。別の具体的な実施形態では、本発明は、変異Fc鎖またはその一部分を含む二重特異性抗体であって、変異Fc鎖が、野生型Fc鎖と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、1つのFcγRとのみ結合し、FcγRがFcγRIIAである抗体を包含する。別の具体的な実施形態では、本発明は、変異Fc鎖またはその一部分を含む二重特異性抗体であって、変異Fc鎖が、野生型Fc鎖と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、1つのFcγRとのみ結合し、FcγRがFcγRIIBである抗体を包含する。別の実施形態では、本発明は、変異Fc鎖を含む分子を包含し、変異体は、当業者に知られており本明細書中に記載されている方法を使用して測定して、Fc鎖を含まないまたは野生型Fc鎖を含む分子と比較して、ADCC活性(もしくは他のエフェクター機能)の減少および/またはFcγRIIB(CD32B)との結合の増加を与えるまたは媒介する。
本発明はまた、2つ以上のIgGアイソタイプ由来のドメインまたは領域を含むFc鎖の使用も包含する。当分野で知られているように、Fc鎖のアミノ酸修飾は、Fc媒介性エフェクター機能および/または結合活性に大きな影響を与え得る。しかし、機能的特徴のこれらの変更は、選択したIgGアイソタイプのコンテキストにおいて実装した場合に、さらに洗練および/または操作し得る。同様に、アイソタイプFcのネイティブ特徴は、1つまたは複数のアミノ酸修飾によって操作し得る。複数のIgGアイソタイプ(すなわち、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)は、そのヒンジおよび/またはFc鎖アミノ酸配列中の相違が原因で、血清半減期、補体結合、FcγR結合親和性、およびエフェクター機能活性(たとえば、ADCC、CDC)を含めた異なる物理的および機能的特性を示す。
一部の実施形態では、アミノ酸修飾およびIgG Fc鎖は、所望の特徴を有する二重特異性抗体を操作設計するために、そのそれぞれの、別々の結合および/またはエフェクター機能活性について独立して選択される。特定の実施形態では、アミノ酸修飾およびIgGヒンジ/Fc鎖は、本明細書中に記載されているまたはIgG1のコンテキストにおいて当分野で知られているように、結合および/またはエフェクター機能活性について別々にアッセイされている。一実施形態では、アミノ酸修飾およびIgGヒンジ/Fc鎖は、二重特異性抗体または他のFc含有分子(たとえば、免疫グロブリン)のコンテキストにおいて、同様の機能性、たとえば、ADCC活性(もしくは他のエフェクター機能)の減少および/またはFcγRIIBとの結合の増加を示す。別の実施形態では、本発明は、新規特性を示す当分野で知られているアミノ酸修飾および選択したIgG領域の組合せを含む変異Fc鎖を包含し、特性は、修飾および/または領域を本明細書中に記載のように独立してアッセイした場合は検出可能でなかったものである。
一部のそのような実施形態では、本発明の二重特異性抗体は、第1のポリペプチド鎖上の第1のヘテロ二量体促進ドメインおよび第2のポリペプチド鎖上の第2のヘテロ二量体促進ドメインを含む。一緒になって、第1および第2のヘテロ二量体促進ドメインは、ヘテロ二量体化を駆動する、および/または二重特異性抗体を安定化する(たとえば、相補的ヘテロ二量体促進ドメイン上のノブとホールとの相互作用によって)、および/または二重特異性抗体を安定化させる役割を果たす。
一部の実施形態では、本明細書中で提供する二重特異性抗体のFcドメインは第1のFc鎖および第2のFc鎖を含み、第1および第2のFc鎖のそれぞれは、野生型Fc鎖と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾を含んで、ノブまたはホールを形成する。一部の実施形態では、第1のFc鎖がノブを含み、第2のFc鎖がホールを含む。一部の実施形態では、第1のFc鎖は、ノブまたはホールのどちらかを含むように修飾されたCH2および/またはCH3ドメインを含み得る。一部の実施形態では、第1のFc鎖は、突然変異Y349Cおよび/またはT366Wを含んでノブを形成し、第2のFc鎖は、突然変異S354C、T366S、L368A、および/またはY407Vを含んでホールを形成する(付番はEUインデックスに従う)。一部の具体的な実施形態では、突然変異はエフェクター機能の低下をもたらす。
前述のもののそれぞれの特定の実施形態において、第1のFc鎖は配列番号65の配列を含んでノブを形成し(ノブ突然変異を有するヒトIgG1 Fc鎖)、第2のFc鎖は配列番号66の配列を含んでホールを形成する(ホール突然変異を有するヒトIgG1 Fc鎖)。
本明細書中で提供する抗CD47 VHを配列番号65または配列番号66のアミノ酸配列と遺伝子融合させて二重特異性抗体の第1の重鎖を形成してもよく、本明細書中で提供する抗PD-L1 VHを配列番号65または配列番号66のアミノ酸配列と遺伝子融合させて二重特異性抗体の第2の重鎖を形成してもよく、一方が配列番号65と遺伝子融合しており、他方が配列番号66と遺伝子融合している。配列番号65または配列番号66のアミノ酸配列を含有する本明細書中で提供する抗CD47または抗PD-L1重鎖は、配列番号65または配列番号66のC末端リシンを欠いていてもよい。言い換えれば、一部の状況においては、本明細書中で提供する抗体の重鎖のC末端リシンは抗体から切断されていてよく、C末端リシンを欠くそのような抗体は、本明細書中で提供する抗体重鎖の範囲内に含まれる。
一部の実施形態では、表6A中に提供される抗CD47重鎖および抗PD-L1重鎖のアミノ酸配列を有するCD47/PD-L1二重特異性抗体を提供する。表6A中の抗CD47重鎖はどちらもFc鎖中にホール突然変異を有しており、抗PD-L1重鎖はFc鎖中にノブ突然変異を有する。一部の実施形態では、配列番号61に示すアミノ酸配列を含む抗CD47重鎖と、配列番号64に示すアミノ酸配列を含む抗PD-L1重鎖とを含むCD47/PD-L1二重特異性抗体を本明細書中で提供する。CD47/PD-L1二重特異性抗体は、配列番号62に示すアミノ酸配列を含む軽鎖を2コピーさらに含んでいてもよい。配列番号62に示すアミノ酸配列を含む軽鎖は共通軽鎖であり、これは抗CD47重鎖および抗PD-L1重鎖と対合することができる。一部の実施形態では、配列番号63に示すアミノ酸配列を含む抗CD47重鎖と、配列番号64に示すアミノ酸配列を含む抗PD-L1重鎖とを含むCD47/PD-L1二重特異性抗体を本明細書中で提供する。CD47/PD-L1二重特異性抗体は、配列番号62に示すアミノ酸配列を含む軽鎖を2コピーさらに含んでいてもよい。
重鎖を有する抗体を含む本明細書中で提供する任意の実施形態において、重鎖中にC末端リシンを有さない抗体が実施形態の範囲内に含まれる。したがって、たとえば、配列番号61に示すアミノ酸配列を有する重鎖を含む本明細書中で提供する抗体について、配列番号61のC末端リシン以外の配列番号61に示すアミノ酸配列を有する抗体も提供する。別の例では、配列番号63に示すアミノ酸配列を有する重鎖を含む本明細書中で提供する抗体について、配列番号63のC末端リシン以外の配列番号63に示すアミノ酸配列を有する抗体も提供する。別の例では、配列番号64に示すアミノ酸配列を有する重鎖を含む本明細書中で提供する抗体について、配列番号64のC末端リシン以外の配列番号64に示すアミノ酸配列を有する抗体も提供する。一部の実施形態では、配列番号61に示すアミノ酸配列を有する第1の重鎖および配列番号64に示すアミノ酸配列を有する第2の重鎖を含むCD47/PD-L1二重特異性抗体を本明細書中で提供し、重鎖のうちの一方もしくは両方がそれぞれの重鎖配列のC末端リシンを欠く、またはどちらも欠かない。一部の実施形態では、配列番号63に示すアミノ酸配列を有する第1の重鎖および配列番号64に示すアミノ酸配列を有する第2の重鎖を含むCD47/PD-L1二重特異性抗体を本明細書中で提供し、重鎖のうちの一方もしくは両方がそれぞれの重鎖配列のC末端リシンを欠く、またはどちらも欠かない。
一態様では、CD47/PD-L1二重特異性抗体を本明細書中で提供し、二重特異性抗体は、CD47に特異的な第1の重鎖、PD-L1に特異的な第2の重鎖、および共通軽鎖を含み、第1の重鎖は、ATCC受託番号PTA-126910を有する、ATCCに寄託されたプラスミドの挿入物の核酸配列によってコードされているアミノ酸配列を有し、第2の重鎖は、ATCC受託番号PTA-126911を有する、ATCCに寄託されたプラスミドの挿入物の核酸配列によってコードされているアミノ酸配列を有し、共通軽鎖は、ATCC受託番号PTA-126912を有する、ATCCに寄託されたプラスミドの挿入物の核酸配列によってコードされているアミノ酸配列を有する。
抗体を生成する、特徴づける、および修飾するためのポリヌクレオチドおよび方法
本発明はまた、抗体のポリペプチドおよび結合領域を含む、本発明の抗体をコードしているポリヌクレオチドも含む。本発明の分子をコードしているポリヌクレオチドを得て、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を、当分野で知られている任意の方法によって決定し得る。
本発明の抗体をコードしているポリヌクレオチドは、以下を含み得る:変異体のコード配列のみ、変異体のコード配列および機能的ポリペプチドなどの追加のコード配列、またはシグナルもしくは分泌配列、または前駆タンパク質配列、抗体のコード配列およびイントロンまたは抗体のコード配列の5’および/もしくは3’側の非コード配列などの非コード配列。用語「抗体をコードしているポリヌクレオチド」は、変異体の追加のコード配列を含むポリヌクレオチドを包含するが、追加のコードおよび/または非コード配列を含むポリヌクレオチドも包含する。特定の宿主細胞/発現系について最適化されているポリヌクレオチド配列は、所望のタンパク質のアミノ酸配列から容易に得ることができることが、当分野で知られている(GENEART(登録商標)AG、ドイツRegensburgを参照)。
一部の実施形態では、本明細書中の他の箇所(たとえば表1、2、3、4、または5のうちの任意のもの中)で提供されている抗CD47または抗PD-L1抗体のアミノ酸配列のうちの任意のものをコードしているヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを本明細書中で提供する。また、ポリヌクレオチドを含む関連するベクターおよび宿主細胞も本明細書中で提供する。
一部の実施形態では、CD47と特異的に結合する抗体のVHをコードしているポリヌクレオチドを本明細書中で提供し、ポリヌクレオチドは配列番号67または69に示すヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、CD47およびPD-L1と特異的に結合する抗体の共通軽鎖のVLをコードしているポリヌクレオチドを本明細書中で提供し、ポリヌクレオチドは配列番号68に示すヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、PD-L1と特異的に結合する抗体のVHをコードしているポリヌクレオチドを本明細書中で提供し、ポリヌクレオチドは配列番号70に示すヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、CD47と特異的に結合する抗体の重鎖をコードしているポリヌクレオチドを本明細書中で提供し、ポリヌクレオチドは配列番号71または73に示すヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、CD47およびPD-L1と特異的に結合する抗体の共通軽鎖をコードしているポリヌクレオチドを本明細書中で提供し、ポリヌクレオチドは配列番号72に示すヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、PD-L1と特異的に結合する抗体の重鎖をコードしているポリヌクレオチドを本明細書中で提供し、ポリヌクレオチドは配列番号74に示すヌクレオチド配列を含む。また、配列番号67~74のいずれかに示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含む、関連するベクターおよび宿主細胞も本明細書中で提供する。
一部の実施形態では、表6Bに示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを本明細書中で提供する。
任意のそのような配列に相補的なポリヌクレオチドも本発明によって包含される。ポリヌクレオチドは一本鎖(コードもしくはアンチセンス)または二本鎖であってよく、DNA(ゲノム、cDNA、もしくは合成)またはRNA分子であってよい。RNA分子としては、成熟および前駆体mRNA(プレmRNA)またはヘテロ核mRNA(hnRNA)などの未成熟mRNAならびに成熟mRNAが挙げられる。追加のコードまたは非コード配列が、必ずしもでは必要ではないが、本発明のポリヌクレオチド内に存在していてよく、ポリヌクレオチドは、必ずしも必要ではないが、他の分子および/または支持物質と連結されていてよい。
当業者には、遺伝暗号の縮重の結果、本明細書中で提供するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列が多く存在することが理解されよう。コドン使用頻度の相違が原因で変動するポリヌクレオチドは、本発明によって具体的に企図される。
一態様では、CD47と特異的に結合する抗体の少なくともVHをコードしている単離核酸を本明細書中で提供し、核酸は、ATCC受託番号PTA-126910を有する、ATCCに寄託されたプラスミドの挿入物の核酸配列を含む。また、ATCC受託番号PTA-126910を有する、ATCCに寄託されたプラスミドの挿入物の核酸配列によってコードされているアミノ酸配列を有するポリペプチドも、本明細書中で提供する。
一態様では、CD47およびPD-L1と特異的に結合する抗体の共通軽鎖の少なくともVLをコードしている単離核酸を本明細書中で提供し、核酸は、ATCC受託番号PTA-126912を有する、ATCCに寄託されたプラスミドの挿入物の核酸配列を含む。また、ATCC受託番号PTA-126912を有する、ATCCに寄託されたプラスミドの挿入物の核酸配列によってコードされているアミノ酸配列を有するポリペプチドも、本明細書中で提供する。
一態様では、PD-L1と特異的に結合する抗体の少なくともVHをコードしている単離核酸を本明細書中で提供し、核酸は、ATCC受託番号PTA-126911を有する、ATCCに寄託されたプラスミドの挿入物の核酸配列を含む。また、ATCC受託番号PTA-126911を有する、ATCCに寄託されたプラスミドの挿入物の核酸配列によってコードされているアミノ酸配列を有するポリペプチドも、本明細書中で提供する。
一態様では、本発明は、本明細書中に記載するポリヌクレオチドのうちの任意のものを作製する方法を提供する。たとえば、本発明のポリヌクレオチドは、化学合成、組換え方法、またはPCRを使用して得ることができる。化学的ポリヌクレオチド合成の方法は当分野で周知であり、本明細書中に詳述する必要はない。当業者は、本明細書中で提供する配列および市販のDNA合成器を使用して、所望のDNA配列を生成することができる。
組換え方法を使用してポリヌクレオチドを調製するために、所望の配列を含むポリヌクレオチドを適切なベクター内に挿入することができ、立ち代って、ベクターを、本明細書中にさらに記述されているように、複製および増幅のために適切な宿主細胞内に導入することができる。ポリヌクレオチドは、当分野で知られている任意の手段によって宿主細胞内に挿入し得る。細胞は、直接取り込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F接合、または電気穿孔によって外因性ポリヌクレオチドを導入することによって、形質転換させる。導入された後、外因性ポリヌクレオチドは、非組込みベクター(プラスミドなど)として細胞内で維持されることも、または宿主細胞ゲノム内に組み込まれることもある。このようにして増幅されたポリヌクレオチドは、当分野内で周知の方法によって宿主細胞から単離することができる(たとえばSambrookら、1989)。
あるいは、PCRがDNA配列の複製を可能にする。PCR技術は当分野で周知であり、米国特許第4,683,195号、第4,800,159号、第4,754,065号、および第4,683,202号、ならびにPCR:The Polymerase Chain Reaction、Mullisら編、Birkauswer Press、Boston、1994中に記載されている。
RNAは、単離DNAを適切なベクター中で使用し、それを適切な宿主細胞内に挿入することによって得ることができる。細胞が複製され、DNAがRNAへと転写される際に、たとえばSambrookら、1989、上記に記載されているように、当業者に周知の方法を使用して、RNAをその時に単離することができる。
適切なクローニングベクターは、標準技法に従って構築し得る、または当分野で利用可能な多数のクローニングベクターから選択し得る。選択したクローニングベクターは使用を意図する宿主細胞に応じて変動し得るが、有用なクローニングベクターは、一般的に、自己複製する能力を有する、特定の制限エンドヌクレアーゼに対して単一の標的を有し得る、および/またはベクターを含有するクローンの選択に使用することができるマーカーの遺伝子を保有し得るであろう。適切な例としては、プラスミドおよび細菌ウイルス、たとえば、pUC18、pUC19、Bluescript(たとえばpBS SK+)およびその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびにpSA3およびpAT28などのシャトルベクターが挙げられる。これらおよび多くの他のクローニングベクターが、BioRad、Strategene、およびInvitrogenなどの商業供給業者から利用可能である。
発現ベクターは、一般的に、本発明によるポリヌクレオチドを含有する複製可能なポリヌクレオチド構築体である。発現ベクターは、エピソームとしてまたは染色体DNAの一体部分としてのいずれかで、宿主細胞中で複製可能でなければならないことが暗示されている。適切な発現ベクターとしては、それだけには限定されないが、PCT公開WO87/04462号中に開示されている、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスを含めたウイルスベクター、コスミド、および発現ベクターが挙げられる。ベクターの構成成分としては、一般的に、それだけには限定されないが、以下のうちの1つまたは複数を挙げ得る:シグナル配列、複製起点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、適切な転写制御要素(プロモーター、エンハンサー、およびターミネーターなど)。発現(すなわち翻訳)には、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、およびストップコドンなどの1つまたは複数の翻訳制御要素も通常は必要である。
目的ポリヌクレオチドを含有するベクターは、電気穿孔、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、または他の物質を用いたトランスフェクション、微粒子銃、リポフェクション、および感染(たとえば、ベクターがワクシニアウイルスなどの感染性因子である場合)を含めた、いくつかの適切な手段のうちの任意のものによって宿主細胞内に導入することができる。ベクターまたはポリヌクレオチドを導入する選択肢は、多くの場合は宿主細胞の特長に依存する。
異種DNAを過剰発現することができる任意の宿主細胞を、目的の抗体、ポリペプチド、またはタンパク質をコードしている遺伝子を発現する目的のために使用することができる。哺乳動物宿主細胞の非限定的な例としては、それだけには限定されないが、COS、HeLa、およびCHO細胞が挙げられる。PCT公開WO87/04462号も参照されたい。適切な非哺乳動物宿主細胞としては、原核生物(大腸菌(E.coli)または枯草菌(B.subtillis)など)および酵母(出芽酵母(S.cerevisae)、分裂酵母(S.pombe)、またはケー・ラクチス(K.lactis)など)が挙げられる。目的の抗体またはタンパク質を過剰発現している細胞は、既知のスクリーニング方法によって同定することができる。
本発明はまた、その特性に有意な影響を与えない機能的に等価な抗体ならびに増強または減少した活性および/または親和性を有する変異体を含めた、本明細書中で提供する抗体への修飾も包含する。たとえば、アミノ酸配列を突然変異させて、CD47および/またはPD-L1に対して所望の結合親和性を有する抗体が得られ得る。修飾ポリペプチドの例としては、アミノ酸残基の保存的置換を有するポリペプチド、機能的活性を大きく有害に変化させないアミノ酸の1つもしくは複数の欠失もしくは付加、またはポリペプチドのそのリガンドに対する親和性を成熟(増強)させるもの、あるいは化学的類似体の使用が挙げられる。
アミノ酸配列挿入物としては、1個の残基から数百個以上の残基を含有するポリペプチドの範囲の長さのアミノおよび/またはカルボキシル末端融合体、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入物が挙げられる。末端挿入物の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体またはエピトープタグと融合した抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入変異体としては、血液循環中の抗体の半減期を増加させる酵素またはポリペプチドの、抗体のNまたはC末端との融合が挙げられる。
置換変異体では、抗体分子中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去されており、異なる残基がその代わりに挿入される。置換突然変異誘発において最も興味深い部位としては超可変領域が挙げられるが、FRの変更も企図される。保存的置換は、表7中に、見出し「保存的置換」の下で示されている。そのような置換が生物活性の変化をもたらす場合、表7中に「例示的な置換」と命名するまたはアミノ酸クラスに言及して以下にさらに記載するより実質的な変化を導入し、生成物をスクリーニングし得る。
抗体の生物学的特性の実質的な改変は、(a)置換領域中のポリペプチド主鎖の、たとえばシートもしくはヘリックスコンホメーションとしての構造、(b)標的部位での分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩を維持することに対するその効果が有意に異なる置換を選択することによって、達成される。天然に存在するアミノ酸残基は、共通側鎖の特性に基づいて群分けされる:
(1)非極性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
(2)電荷なしの極性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
(3)酸性(負荷電):Asp、Glu、
(4)塩基性(正荷電):Lys、Arg、
(5)鎖の配向に影響を与える残基:Gly、Pro、および
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe、His。
非保存的置換は、これらのクラスのうちのメンバーを別のクラスと交換することによって行われる。
抗体の適切なコンホメーションの維持に関与していない任意のシステイン残基も、一般的にセリンで置換して、分子の酸化安定性を改善させ、異常架橋連結防止し得る。逆に、特に抗体がFv断片などの抗体断片である場合は、その安定性を改善させるためにシステイン結合を抗体に付加し得る。
アミノ酸修飾は、1つまたは複数のアミノ酸を変化または修飾することから、可変領域などの領域を完全に再設計することに及ぶことができる。可変領域中の変化は結合親和性および/または特異性を変更することができる。一部の実施形態では、1~5個を超えない保存的アミノ酸置換をCDRドメイン内で行う。他の実施形態では、1~3個を超えない保存的アミノ酸置換をCDRドメイン内で行う。さらに他の実施形態では、CDRドメインはVH CDR3および/またはVL CDR3である。
修飾としては、グリコシル化および非グリコシル化ポリペプチド、ならびにたとえば様々な糖を用いたグリコシル化、アセチル化、およびリン酸化などの他の翻訳後修飾を有するポリペプチドも挙げられる。抗体は、その定常領域中の保存的位置でグリコシル化される(JefferisおよびLund、Chem.Immunol.、65:111~128、1997、WrightおよびMorrison、TibTECH、15:26~32、1997)。免疫グロブリンのオリゴ糖側鎖は、タンパク質の機能(Boydら、Mol.Immunol.、32:1311~1318、1996、WittweおよびHoward、Biochem.、29:4175~4180、1990)ならびに糖タンパク質のコンホメーションおよび提示される三次元表面に影響を与える場合がある糖タンパク質の部分間の分子内相互作用(JefferisおよびLund、上記、WyssおよびWagner、Current Opin.Biotech.、7:409~416、1996)に影響を与える。オリゴ糖は、特異的認識構造に基づいて所定の糖タンパク質を特定の分子に標的化する役割も果たし得る。抗体のグリコシル化は抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)に影響を与えることも報告されている。特に、二分岐GlcNAcの形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼであるβ(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)のテトラサイクリン調節性発現を有するCHO細胞は、改善されたADCC活性を有することが報告されている(Umanaら、Mature Biotech.、17:176~180、1999)。
抗体のグリコシル化は、典型的にはN連結またはO連結のどちらかである。N連結とは、炭水化物部分とアスパラギン残基の側鎖との付着を指す。トリペプチド配列のアスパラギン-X-セリン、アスパラギン-X-スレオニン、およびアスパラギン-X-システイン[式中、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である]が、炭水化物部分とアスパラギン側鎖との酵素的付着の認識配列である。したがって、これらのトリペプチド配列のいずれかがポリペプチド中に存在することで、潜在的なグリコシル化部位が作られる。O連結グリコシル化とは、糖であるN-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つと、最も一般的にはセリンまたはスレオニンであるが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリシンも使用し得るヒドロキシアミノ酸との付着を指す。
抗体へのグリコシル化部位の付加は、上述のトリペプチド配列のうちの1つまたは複数を含有するようにアミノ酸配列を変更することによって好都合に達成される(N連結グリコシル化部位用)。変更は、元の抗体の配列に1つまたは複数のセリンまたはスレオニン残基を付加するまたはそれによって置換することによっても行い得る(O連結グリコシル化部位用)。
根底にあるヌクレオチド配列を変更せずに抗体のグリコシル化パターンも変更し得る。グリコシル化は、抗体を発現させるために使用する宿主細胞に大部分が依存する。組換え糖タンパク質、たとえば抗体の、潜在的な治療剤としての発現に使用する細胞種がネイティブ細胞であることは稀であるため、抗体のグリコシル化パターンの変動を予想することができる(たとえばHseら、J.Biol.Chem.、272:9062~9070、1997を参照)。
宿主細胞の選択肢に加えて、抗体の組換え産生中にグリコシル化に影響を与える要因としては、成長様式、培地の配合、培養密度、酸素化、pH、精製スキームなどが挙げられる。特定の宿主生物において達成されるグリコシル化パターンを変更するために様々な方法が提案されており、オリゴ糖産生に関与する特定の酵素を導入するまたは過剰発現させることが挙げられる(米国特許第5,047,335号、第5,510,261号、および第5,278,299号)。グリコシル化、または特定の種類のグリコシル化は、たとえば、エンドグリコシダーゼH(エンドH)、N-グリコシダーゼF、エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、エンドグリコシダーゼF3を使用して、糖タンパク質から酵素的に除去することができる。さらに、組換え宿主細胞を、特定の種類の多糖のプロセシングに欠陥があるように遺伝子操作することができる。これらおよび同様の技法が当分野で周知である。
他の修飾方法は、当分野で知られているカップリング技法を使用することを含み、それだけには限定されないが、酵素的手段、酸化的置換、およびキレート化が挙げられる。修飾は、たとえば、免疫アッセイのための標識の付着に使用することができる。修飾ポリペプチドは当分野において確立された手順を使用して作製され、その一部が以下および実施例中に記載されている、当分野で知られている標準アッセイを使用してスクリーニングすることができる。
本発明の一部の実施形態では、抗体は、ヒトFcガンマ受容体に対して増加した親和性を有するもの、免疫学的に不活性または部分的に不活性である、たとえば、補体媒介性溶解を始動させない、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)を刺激しない、もしくはマクロファージを活性化させないもの、あるいは、補体媒介性溶解を始動させること、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)を刺激すること、またはミクログリアを活性させることのうちの任意の1つまたは複数において低下した活性を有するもの(未修飾の抗体と比較して)などの、修飾された定常領域を含む。定常領域の様々な修飾を使用して、エフェクター機能の最適レベルおよび/または組合せを達成し得る。たとえば、Morganら、Immunology、86:319~324、1995、Lundら、J.Immunology、157:4963~9
157:4963~4969、1996、Idusogieら、J.Immunology、164:4178~4184、2000、Taoら、J.Immunology、143:2595~2601、1989、およびJefferisら、Immunological Reviews、163:59~76、1998を参照されたい。一部の実施形態では、定常領域は、Eur.J.Immunol.、29:2613~2624、1999、PCT出願PCT/GB99/01441号、および/またはUK出願第9809951.8号に記載のように修飾される。さらに他の実施形態では、定常領域は、N連結グリコシル化について脱グリコシル化されている。一部の実施形態では、定常領域は、定常領域中のN-グリコシル化認識配列の一部であるグリコシル化されたアミノ酸残基または隣接残基を突然変異させることによって、N連結グリコシル化について脱グリコシル化されている。たとえば、N-グリコシル化部位N297をA、Q、K、またはHへと突然変異させ得る。Taoら、J.Immunology、143:2595~2601、1989およびJefferisら、Immunological Reviews、163:59~76、1998を参照されたい。一部の実施形態では、定常領域は、N連結グリコシル化について脱グリコシル化されている。定常領域は、N連結グリコシル化について、酵素的に(酵素PNGaseによって炭水化物を除去することなど)、またはグリコシル化欠損宿主細胞中での発現によって脱グリコシル化させ得る。
他の抗体修飾としては、PCT公開WO99/58572号中に記載のように修飾された抗体が挙げられる。これらの抗体は、標的分子に向けられた結合ドメインに加えて、ヒト免疫グロブリン重鎖の定常領域の全体または一部と実質的に相同的なアミノ酸配列を有するエフェクタードメインを含む。これらの抗体は、標的の顕著な補体依存性溶解または細胞媒介性破壊を始動させずに、標的分子と結合することができる。一部の実施形態では、エフェクタードメインは、FcRnおよび/またはFcγRIIbと特異的に結合することができる。これらは、典型的には、2つ以上のヒト免疫グロブリン重鎖CH2ドメインに由来するキメラドメインに基づく。この様式で修飾された抗体は、慢性抗体療法における使用において、慣用の抗体療法に対する炎症性および他の有害な反応を回避するために、特に適している。
一部の実施形態では、本明細書中で提供する抗体のFc鎖を、エフェクター機能を除去するために修飾し得る。たとえば、FcγRIIIとの結合が原因のエフェクター機能を除去するために、ヒトIgG1のFc鎖を、標準のプライマーダイレクトPCR突然変異誘発を使用して突然変異L234A、L235A、およびG237Aを導入して修飾し、エフェクター機能ヌル表現型を提供し得る(Canfieldら、J.Exp.Med(1991)173:1483~1491、Shieldsら、J.Biol.Chem.(2001)276:6591~604)。
一部の実施形態では、本明細書中で提供する二重特異性抗体は、本発明の別のポリペプチド鎖上の対応システイン残基と相互作用して鎖間ジスルフィド結合を形成し得る、少なくとも1つのシステイン残基を含むように操作設計し得る。鎖間ジスルフィド結合は、二重特異性抗体を安定化し、組換え系における発現および回収を改善させ、安定かつ一貫した形成をもたらす、ならびに単離および/または精製生成物のin vivoの安定性を改善させる役割を果たし得る。システイン残基または複数の残基は、単一のアミノ酸として、またはより大きなアミノ酸配列、たとえばヒンジ領域の一部として、ポリペプチド鎖の任意の部分中に導入し得る。特定の態様では、少なくとも1つのシステイン残基は、ポリペプチド鎖のC末端で起こるように操作設計する。
組成物、方法、およびキット
一部の実施形態では、本発明は、本明細書中に記載の、または本明細書中に記載の方法によって作製しその特徴を有する、本発明の抗体を含む医薬組成物を含めた、組成物を包含する。本明細書中で使用する医薬組成物は、CD47と結合する1つもしくは複数の抗体、PD-L1と結合する1つもしくは複数の抗体、CD47およびPD-L1と結合する1つもしくは複数の二重特異性抗体、ならびに/または1つもしくは複数のこれらの抗体をコードしている配列を含む1つもしくは複数のポリヌクレオチドを含み得る。これらの組成物は、当分野で周知である緩衝剤を含めた薬学的に許容できる賦形剤などの適切な賦形剤をさらに含み得る。
本明細書中で提供する本発明は、治療上有効な量の本明細書中で提供する抗CD47、抗PD-L1、または二重特異性CD47/PD-L1抗体を対象に投与することを含む、対象において癌を処置、防止、または管理するための方法および組成物をさらに包含する。抗CD47、抗PD-L1、およびCD47/PD-L1二重特異性抗体は、原発性腫瘍および癌細胞の転移の防止、阻害、成長低下、および/または回帰において特に有用であり得る。
一態様では、本発明は、対象においてCD47および/またはPD-L1の発現に関連する状態を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、対象においてCD47および/またはPD-L1の発現に関連する状態を処置する方法は、それを必要としている対象に、有効量の、本明細書中に記載のそれぞれの抗CD47、抗PD-L1、および/またはCD47/PD-L1二重特異性抗体を含む組成物(たとえば医薬組成物)を投与することを含む。CD47および/またはPD-L1の発現に関連する状態としては、それだけには限定されないが、異常なCD47および/またはPD-L1の発現、変更されたまたは異常なCD47および/またはPD-L1の発現、CD47および/またはPD-L1を発現する悪性細胞、ならびに増殖性障害(たとえば癌)が挙げられる。具体的な実施形態では、癌は、膀胱癌、乳癌、明細胞腎臓癌、頭部/頸部扁平細胞癌[頭頸部の扁平細胞癌(SCCHN)]、肺扁平細胞癌、肺腺癌、悪性黒色腫、非小細胞肺癌(NSCLC)、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、腎細胞癌、小細胞肺癌(SCLC)、三重陰性乳癌、尿路上皮癌、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、多発性骨髄腫(MM)、骨髄細胞白血病-1タンパク質(Mcl-1)、脊髄形成異常症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、子宮内膜癌、B細胞急性リンパ芽球性白血病、結腸直腸癌、膠芽細胞腫、子宮癌、子宮頸癌、陰茎癌、または非黒色腫皮膚癌である。
一態様では、本発明は、本明細書中に記載の抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、および/もしくはCD47/PD-L1二重特異性抗体、または、治療において使用するための、そのような抗体を含む医薬組成物を提供する。特定の実施形態では、本発明はまた、CD47および/またはPD-L1に関連する障害の処置において使用するための、抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、および/またはCD47/PD-L1二重特異性抗体も提供する。具体的な実施形態では、CD47および/またはPD-L1に関連する障害は本明細書中に定義する癌である。
本発明は、本明細書中に記載の抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、および/もしくはCD47/PD-L1二重特異性抗体、または、治療において使用するための医薬品の製造において使用するための、そのような抗体を含む医薬組成物をさらに提供する。一部の実施形態では、治療は、CD47および/またはPD-L1に関連する障害の処置である。具体的な実施形態では、CD47および/またはPD-L1に関連する障害は癌である。
特定の態様では、本明細書中で提供する抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、および/またはCD47/PD-L1二重特異性抗体は、癌細胞の成長を、抗体または二重特異性抗体の非存在下における癌細胞の成長よりも、少なくとも99%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも45%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも35%、少なくとも30%、少なくとも25%、少なくとも20%、または少なくとも10%阻害するまたは低下させる。
特定の態様では、本明細書中で提供する抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、および/またはCD47/PD-L1二重特異性抗体は、抗体または二重特異性抗体の非存在下よりも少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%良好に、細胞を死滅させる、または癌細胞の成長を阻害するもしくは低下させる。
一部の実施形態では、本明細書中に記載の方法および使用は、対象を、追加の形態の治療で処置するステップをさらに含む。一部の実施形態では、追加の形態の治療は追加の抗癌治療であり、それだけには限定されないが、化学療法、放射線照射、手術、ホルモン療法、および/または追加の免疫療法が挙げられる。
本発明は、本発明の分子を、それだけには限定されないが、現在の標準および実験的な化学療法、生物療法、免疫療法、放射線療法、または手術を含めた、癌を処置または防止するために当業者に知られている他の治療と組み合わせてと投与することをさらに包含する。一部の態様では、本発明の分子は、治療上または予防上有効な量の1つまたは複数の薬剤、治療的抗体、または癌の処置および/もしくは防止について当業者に知られている他の薬剤と組み合わせて投与し得る。
したがって、癌を処置するための方法および使用は、それを必要としている対象に、有効量の本発明の抗体または二重特異性抗体を、化学療法剤と組み合わせて投与することを含む。そのような組合せ処置は、別々に、順次に、または同時に投与し得る。適切な化学療法剤としては、それだけには限定されないが、ベバシズマブ、セツキシマブ、シロリムス、パニツムマブ、5-フルオロウラシル(5-FU)、カペシタビン、チボザニブ、イリノテカン、オキサリプラチン、シスプラチン、トリフルリジン、チピラシル、ロイコボリン)、ゲムシタビン、および/または塩酸エルロチニブなどの少なくとも1つの追加の薬剤が挙げられる。
本明細書中で提供する投与の投与量および頻度は、治療上有効および予防上有効に関して包含される。投与の量および頻度は、それぞれの患者に特異的な要因次第で、投与した特定の治療剤または予防剤、癌の重篤度および種類、投与経路、ならびに患者の年齢、体重、応答、および過去の病歴に応じて、さらに変動し得る。適切なレジメンは、そのような要因を考慮することによって、ならびにたとえば文献中に報告され、Physician’s Desk Reference(第56版、2002)中に推奨される投与量に従うことによって、当業者によって選択され得る。
本発明の抗体または二重特異性抗体は、選択した投与様式に適切であるように配合された投与用の医薬組成物、および緩衝剤、界面活性剤、保存料、可溶化剤、等張化剤、安定化剤、担体などの薬学的に許容できる希釈剤または賦形剤の形態であり得る。Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、ペンシルバニア州Easton、第18版、1995は、従事者に一般的に知られている配合技法の概論を提供する。
これらの医薬組成物は、癌を処置する一般的に意図される目的を達成する、当分野で知られている任意の手段によって投与し得る。投与経路は、本明細書中において、それだけには限定されないが、経食道、腫瘍内、経結腸内視鏡、経皮、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、および関節内の注射および輸液を含む投与様式を指すと定義される、非経口であり得る。本発明による分子(たとえば、抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、CD47/PD-L1二重特異性抗体、関連医薬組成物)の投与および投薬の様式は、闘う疾患の種類、必要に応じてその段階、制御する抗原、存在する場合は同時発生的処置の種類、処置の頻度、所望する効果の性質、ならびに患者の体重、年齢、健康、食習慣、および性別に依存する。したがって、実際に用いる投薬レジメンは幅広く変動する場合があり、したがって、本明細書中に記載した投薬レジメンから逸脱する場合がある。
本発明の抗体(たとえば、抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、CD47/PD-L1二重特異性抗体)の様々な配合物を投与に使用し得る。一部の実施形態では、抗体はニートで投与し得る。一部の実施形態では、抗体および薬学的に許容できる賦形剤は様々な配合物中であり得る。薬学的に許容できる賦形剤は当分野で知られており、薬理学的に有効な物質の投与を容易にする比較的不活性な物質である。たとえば、賦形剤は、形もしくは稠度を与える、または希釈剤として作用することができる。適切な賦形剤としては、それだけには限定されないが、安定化剤、湿潤剤および乳化剤、様々な容積モル浸透圧濃度のための塩、カプセル封入剤、緩衝剤、および皮膚浸透促進剤が挙げられる。賦形剤ならびに非経口および非経口でない薬物送達のための配合物は、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、第21版、Mack Publishing、2005に記載されている。
一部の実施形態では、これらの薬剤は、注射による投与(たとえば、腹腔内、静脈内、皮下、筋肉内など)用に配合される。したがって、これらの薬剤は、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液などの薬学的に許容できるビヒクルと組み合わせることができる。具体的な投薬レジメン、すなわち、用量、タイミング、および反復は、具体的な個体およびその個体の病歴に依存する。
本明細書中に記載の抗体(たとえば、抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、CD47/PD-L1二重特異性抗体)は、注射によるもの(たとえば、腹腔内、静脈内、皮下、筋肉内など)を含めた任意の適切な方法を使用して投与することができる。抗体、たとえばモノクローナル抗体または二重特異性抗体は、本明細書中に記載のように吸入を介しても投与される。一般的に、本抗体の投与では、投与量は処置する宿主および具体的な投与様式に依存する。一実施形態では、本発明の抗体の用量範囲は、約0.001μg/kgの体重~約20,000μg/kgの体重である。用語「体重」は、患者を処置する場合に適応可能である。単離細胞を処置する場合は、本明細書中で使用する「体重」とは「全細胞体重」を指す。用語「全体重」を、単離細胞および患者の処置の両方に適用するために使用し得る。すべての濃度および処置レベルは、本出願中において「体重」または単に「kg」として表され、また、類似の「全細胞体重」および「全体重」濃度をカバーするとみなされる。しかし、当業者は、様々な投与量範囲、たとえば、0.01μg/kgの体重~20,000μg/kgの体重、0.02μg/kgの体重~15,000μg/kgの体重、0.03μg/kgの体重~10,000μg/kgの体重、0.04μg/kgの体重~5,000μg/kgの体重、0.05μg/kgの体重~2,500μg/kgの体重、0.06μg/kgの体重~1,000μg/kgの体重、0.07μg/kgの体重~500μg/kgの体重、0.08μg/kgの体重~400μg/kgの体重、0.09μg/kgの体重~200μg/kgの体重、または0.1μg/kgの体重~100μg/kgの体重の有用性を認識するであろう。さらに、当業者は、様々な投与量レベル、たとえば、0.0001μg/kg、0.0002μg/kg、0.0003μg/kg、0.0004μg/kg、0.005μg/kg、0.0007μg/kg、0.001μg/kg、0.1μg/kg、1.0μg/kg、1.5μg/kg、2.0μg/kg、5.0μg/kg、10.0μg/kg、15.0μg/kg、30.0μg/kg、50μg/kg、75μg/kg、80μg/kg、90μg/kg、100μg/kg、120μg/kg、140μg/kg、150μg/kg、160μg/kg、180μg/kg、200μg/kg、225μg/kg、250μg/kg、275μg/kg、300μg/kg、325μg/kg、350μg/kg、375μg/kg、400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、750μg/kg、800μg/kg、900μg/kg、1μg/kg、5μg/kg、10μg/kg、12μg/kg、15mg/kg、20mg/kg、および/または30mg/kgが役に立つことを認識するであろう。これらの投与量はすべて例示的であり、これらの点の間の任意の投与も、本発明において役立つことが予想される。上記の投与量範囲または投与量レベルのうちの任意のものを本発明の抗体に用い得る。数日間またはそれより長くにわたる繰り返し投与では、状態に応じて、症状の所望の抑制が起こるまで、または、たとえば腫瘍の成長/進行もしくは癌細胞の転移を阻害もしくは遅延させるために十分な治療レベルが達成されるまで、処置を持続させる。
一般的に、本明細書中で提供する抗体の投与では、候補投与量を、1日1回、週に1回、隔週、3週間毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、8週間毎、10週間毎、12週間毎、または12週間毎より長くに投与することができる。
一部の実施形態では、候補投与量は、上で言及した要因に応じて、1日1回、約1μg/kg、30μg/kgまで、300μg/kgまで、3mg/kgまで、30mg/kgまで、100mg/kgまで、またはそれより多くのうちの任意のものの範囲の投与量で投与する。たとえば、約0.01mg/kg、約0.03mg/kg、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、および約25mg/kgの1日投与量を使用し得る。
一部の実施形態では、候補投与量は、上で言及した要因に応じて、週に1回、約1μg/kg、30μg/kgまで、300μg/kgまで、3mg/kgまで、30mg/kgまで、100mg/kgまで、またはそれより多くのうちの任意のものの範囲の投与量で投与する。たとえば、約0.01mg/kg、約0.03mg/kg、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約25mg/kg、および約30mg/kgの週1回の投与量を使用し得る。
一部の実施形態では、候補投与量は、上で言及した要因に応じて、2週間毎に、約1μg/kg、30μg/kgまで、300μg/kgまで、3mg/kgまで、30mg/kgまで、100mg/kgまで、またはそれより多くのうちの任意のものの範囲の投与量で投与する。たとえば、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約25mg/kg、および約30mg/kgの2週間毎の投与量を使用し得る。
一部の実施形態では、候補投与量は、上で言及した要因に応じて、3週間毎に、約1μg/kg、30μg/kgまで、300μg/kgまで、3mg/kgまで、30mg/kgまで、100mg/kgまで、またはそれより多くのうちの任意のものの範囲の投与量で投与する。たとえば、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、および約50mg/kgの3週に1回の投与量を使用し得る。
一部の実施形態では、候補投与量は、上で言及した要因に応じて、1カ月毎または4週間毎に、約1μg/kg、30μg/kgまで、300μg/kgまで、3mg/kgまで、30mg/kgまで、100mg/kgまで、またはそれより多くのうちの任意のものの範囲の投与量で投与する。たとえば、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、および約50mg/kgの月1回の投与量を使用し得る。
他の実施形態では、候補投与量は、上で言及した要因に応じて、1日1回、約0.01mg~約1200mgまたはそれより多い範囲の投与量で投与する。たとえば、約0.01mg、約0.1mg、約1mg、約10mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、または約1200mgの1日投与量を使用し得る。
他の実施形態では、候補投与量は、上で言及した要因に応じて、週に1回、約0.01mg~約2000mgまたはそれより多い範囲の投与量で投与する。たとえば、約0.01mg、約0.1mg、約1mg、約10mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、約1800mg、約1900mg、または約2000mgの週1回の投与量を使用し得る。
他の実施形態では、候補投与量は、上で言及した要因に応じて、2週間毎に、約0.01mg~約2000mgまたはそれより多い範囲の投与量で投与する。たとえば、約0.01mg、約0.1mg、約1mg、約10mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、約1800mg、約1900mg、または約2000mgの2週間毎の投与量を使用し得る。
他の実施形態では、候補投与量は、上で言及した要因に応じて、3週間毎に、約0.01mg~約2500mgまたはそれより多い範囲の投与量で投与する。たとえば、約0.01mg、約0.1mg、約1mg、約10mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、約1800mg、約1900mg、約2000mg、約2100mg、約2200mg、約2300mg、約2400mg、または約2500mgの3週に1回の投与量を使用し得る。
他の実施形態では、候補投与量は、上で言及した要因に応じて、4週間または1カ月毎に、約0.01mg~約3000mgまたはそれより多い範囲の投与量で投与する。たとえば、約0.01mg、約0.1mg、約1mg、約10mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、約1800mg、約1900mg、約2000mg、約2100mg、約2200mg、約2300mg、約2400mg、約2500、約2600mg、約2700mg、約2800mg、約2900mg、または約3000mgの月1回の投与量を使用し得る。
従事者が達成を望む薬物動態学的崩壊のパターン次第では、他の投薬レジメンも有用であり得る。一実施形態では、本発明の抗体は、初期のプライム用量、次いでより高いおよび/または連続的な、実質的に一定した投与量で投与する。一部の実施形態では、週に1~4回の投薬が企図される。他の実施形態では、月に1回または隔月または3カ月に1回の投薬が企図される。この治療の進行は慣用技術およびアッセイによって容易にモニタリングされる。投薬レジメンは時間に伴って変動する場合がある。
本発明の目的のために、抗体(たとえば、抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、CD47/PD-L1二重特異性抗体)の適切な投与量は、用いる抗体またはその組成物、処置する症状の種類および重篤度、薬剤を治療目的で投与するのかどうか、以前の治療、患者の病歴および薬剤に対する応答、投与した薬剤に対する患者のクリアランス速度、ならびに担当医の裁量に依存する。典型的には、臨床家は、所望の結果を達成する投与量に到達するまで抗体を投与する。用量および/または頻度は処置の経過中に変動する場合がある。半減期などの経験的考慮事項が、投与量の決定に一般的に寄与する。たとえば、抗体の半減期を延ばすため、および抗体が宿主の免疫系によって攻撃されることを防止するために、ヒト化抗体または完全ヒト抗体などのヒト免疫系に適合性のある抗体を使用し得る。投与の頻度は、治療の経過中に決定および調整してよく、必ずしもではないが、一般的に、症状の処置および/または抑制および/または軽快および/または遅延、たとえば、腫瘍成長の阻害または遅延などに基づく。あるいは、抗体の持続的連続放出配合物が適切であり得る。持続放出を達成するための様々な配合物および装置が当分野で知られている。
一実施形態では、抗体(たとえば、抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、CD47/PD-L1二重特異性抗体)の投与量は、抗体の1回または複数回の投与を与えられた個体において経験的に決定し得る。個体には、抗体の増加する投与量を与える。有効性を評価するためには、疾患の指標に従うことができる。
一部の実施形態では、本明細書中で提供する抗体(たとえば、抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、CD47/PD-L1二重特異性抗体)は、疾患(たとえば癌)の処置のために抗PD-1または抗PD-L1抗体治療剤を以前に受けた対象に投与し得る。一部の実施形態では、本明細書中で提供する抗体を、疾患の処置のために抗PD-1または抗PD-L1抗体治療剤を以前に受けており、以前の抗PD-1または抗PD-L1抗体治療剤が対象において限られた有効性しかないまたは有効性をもたない(たとえば、対象の疾患が以前の抗PD-1または抗PD-L1治療剤を用いた処置に耐性である)、対象に投与し得る。
一部の実施形態では、本明細書中で提供する抗体(たとえば、抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、CD47/PD-L1二重特異性抗体)は、PD-L1の発現の試験において陽性となる癌を有する対象に投与し得る。一部の実施形態では、本明細書中で提供する抗体は、PD-L1の発現の試験において陽性とならない癌を有する対象に投与し得る。
本明細書中で使用する「PD-L1の発現」とは、細胞表面上のPD-L1タンパク質または細胞もしくは組織内のPD-L1 mRNAの、任意の検出可能な発現レベルを指す。PD-L1タンパク質の発現は、診断的抗PD-L1抗体を用いて、腫瘍組織切片の免疫組織化学(IHC)アッセイにおいてまたはフローサイトメトリーによって検出し得る。細胞によるPD-L1の発現は、PETイメージングによって、PD-L1と特異的に結合する結合剤(たとえば抗体)を使用しても検出し得る。PD-L1 mRNAの発現を検出および測定するための技法としては、たとえば、RT-PCRおよびリアルタイム定量的RT-PCRが挙げられる。
いくつかの手法が、腫瘍組織切片のIHCアッセイにおいてPD-L1の発現を定量するために記載されている。たとえば、Thompson,R.H.ら、PNAS、101(49)、17174~17179(2004)、Thompson,R.H.ら、Cancer Res.、66:3381~3385(2006)、Gadiot,J.ら、Cancer、117:2192~2201(2011)、Taube,J.M.ら、Sci Transl Med、4、127ra37(2012)、およびToplian,S.L.ら、New Eng.JAed、366(26):2443~2454(2012)を参照されたい。
一手法は、PD-L1の発現について陽性または陰性の単純なバイナリエンドポイントを用い、陽性結果は、細胞表面膜染色の組織学的証拠を示す腫瘍細胞の百分率の観点から定義される。腫瘍組織切片は、特定の百分率の腫瘍細胞がPD-L1の発現について陽性である場合に、PD-L1の発現について陽性として数え得る。たとえば、腫瘍組織切片は、腫瘍細胞の少なくとも0.5%、1%、5%、10%、20%、30%、50%、75%、90%、または95%がPD-L1の発現について陽性である場合に、PD-L1の発現について陽性として数え得る。
別の手法では、腫瘍組織切片中のPD-L1の発現は、主にリンパ球を含む腫瘍細胞中および浸潤性免疫細胞中において定量する。膜染色を示す腫瘍細胞および浸潤性免疫細胞の百分率を、<5%、5~9%、その後は10%の増分ずつ100%までなどで、別々に定量し得る。腫瘍細胞では、PD-L1の発現は、それぞれ、スコアがたとえば1%、2%、または5%未満である場合に陰性として、およびスコアが1%、2%、または5%より高い場合に陽性として数え得る。浸潤性免疫細胞中のPD-L1の発現は、膜染色細胞のパーセントを、なし(0)、軽度(スコア1、稀なリンパ球)、中等度(スコア2、リンパ組織球性凝集体による腫瘍の限局性浸潤)、または重篤(スコア3、びまん性浸潤)として等級付けされる浸潤の強度と乗算することによって決定される、調整炎症スコア(AIS)と呼ばれる半定量的測定値として報告し得る。腫瘍組織切片は、AISが5よりも高い場合に、免疫浸潤物によるPD-L1の発現について陽性として数え得る。
PD-L1 mRNAの発現のレベルは、ユビキチンCなどの定量的RT-PCRにおいて頻繁に使用される1つまたは複数の参照遺伝子のmRNAの発現レベルと比較し得る。
一部の実施形態では、腫瘍内の悪性細胞および/または浸潤性免疫細胞によるPD-L1の発現(タンパク質および/またはmRNA)のレベルは、適切な対照によるPD-L1の発現(タンパク質および/またはmRNA)のレベルとの比較に基づいて、「過剰発現されている」または「上昇している」と決定される。たとえば、対照PD-L1タンパク質またはmRNAの発現レベルは、同じ種類の非悪性細胞または一致した正常組織由来の切片において定量されたレベルであり得る。一部の実施形態では、腫瘍試料中におけるPD-L1の発現は、試料中のPD-L1タンパク質(および/またはPD-L1 mRNA)が対照中におけるものよりも少なくとも10%、20%、または30%高い場合に、上昇していると決定される。
一部の実施形態では、癌におけるPD-L1の発現は、診断的抗PD-L1抗体を使用して、患者から取り出した腫瘍試料の組織切片上の免疫組織化学(IHC)アッセイにおいて検出する。典型的には、本明細書中で提供する抗体を用いた処置の前にPD-L1の発現を決定するために腫瘍の試料を試験するが、処置の開始後に試験することもできる。
腫瘍組織切片中におけるPD-L1の発現のIHC検出のための診断的mAbとして有用な診断的抗ヒトPD-L1 mAbの具体的な例は、WO2014/100079号中に記載されている抗体20C3および抗体22C3である。例示的なPD-L1 IHC試験としては、PD-L1 IHC 22C3 PharmDx(Daco)およびVentana PD-L1 SP263アッセイが挙げられる。
ある特定の実施形態では、抗体(たとえば、抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、CD47/PD-L1二重特異性抗体)の投与は、腫瘍成長の阻害、腫瘍回帰、腫瘍のサイズの低下、腫瘍細胞数の低下、腫瘍成長の遅延、アブスコパル効果、腫瘍転移の阻害、経時的な転移性病変の低下、化学療法剤または細胞毒性剤の使用の低下、腫瘍量の低下、無進行生存の増加、全生存の増加、完全応答、部分応答、および安定疾患からなる群から選択される少なくとも1つの効果をもたらす。
本発明における方法に従った抗体(たとえば、抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、CD47/PD-L1二重特異性抗体)の投与は、たとえば、レシピエントの生理的条件、投与の目的が治療的であるか予防的であるか、および当業者に知られている他の要因に応じて、連続的または断続的であり得る。抗体の投与は、事前に選択された期間にわたって本質的に連続的であり得る、または一連の間隔を空けた用量であり得る。
本発明に従って使用する抗体(たとえば、抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、CD47/PD-L1二重特異性抗体)の治療的配合物は、所望の度合の純度を有する抗体を、任意選択の薬学的に許容できる担体、賦形剤、または安定化剤(Remington、The Science and Practice of Pharmacy、第21版、Mack Publishing、2005)と、凍結乾燥配合物または液剤の形態で混合することによって、貯蔵用に調製される。許容される担体、賦形剤、または安定化剤は、用いる投与量および濃度でレシピエントに対して無毒性であり、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝剤、塩化ナトリウムなどの塩、アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤、保存料(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール、メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レソルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、およびm-クレゾールなど)、低分子量(約10個未満の残基)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリシンなどのアミノ酸、グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む単糖、二糖、および他の炭水化物、EDTAなどのキレート化剤、スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖、ナトリウムなどの塩形成対イオン、金属錯体(たとえばZn-タンパク質複合体)、ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含み得る。
一部の実施形態では、本明細書中で提供する抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、またはCD47/PD-L1二重特異性抗体は、1つまたは複数の追加の治療剤の投与と組み合わせて投与し得る。追加の治療剤は、追加の抗癌剤を含んでいてもよい。これらとしては、それだけには限定されないが、ワクチン、CAR-T細胞に基づく治療、放射線療法、サイトカイン治療、CD3二重特異性抗体、他の免疫抑制経路の阻害剤、血管形成の阻害剤、T細胞活性化剤、代謝経路の阻害剤、mTOR阻害剤、アデノシン経路の阻害剤、それだけには限定されないがInlyta、ALK阻害剤、およびスニチニブを含むチロシンキナーゼ阻害剤、BRAF阻害剤、後成的モディファイヤー、IDO1阻害剤、JAK阻害剤、STAT阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、生物治療剤(それだけには限定されないが、VEGF、VEGFR、EGFR、Her2/neu、他の成長因子受容体、CD40、CD-40L、CTLA-4、OX-40、4-1BB、TIGIT、およびICOSに対する抗体を含む)、免疫原性剤(たとえば、弱毒化癌細胞、腫瘍抗原、腫瘍由来の抗原または核酸をパルスした樹状細胞などの抗原提示細胞、免疫刺激サイトカイン(たとえば、IL-2、IFNα2、GM-CSF)、およびそれだけには限定されないがGM-CSFなどの免疫刺激サイトカインをコードしている遺伝子をトランスフェクトした細胞)などの生物治療剤および/または化学療法剤の投与が挙げられるが、それだけには限定されない。
生物治療剤の例としては、治療的抗体、免疫調節剤、および治療的免疫細胞が挙げられる。
治療的抗体は、様々な異なる抗原に対して特異性を有し得る。たとえば、治療的抗体は、抗体と抗原との結合が、抗原を発現する細胞の死を促進するように、腫瘍関連抗原に向けられていてよい。他の例では、治療的抗体は、抗体の結合が、抗原を発現する細胞の活性の下方調節を防止する(したがって抗原を発現する細胞の活性を促進する)ように、免疫細胞上の抗原(たとえばPD-1)に向けられていてよい。一部の状況では、治療用抗体は複数の異なる機構を通じて機能し得る(たとえば、これは、i)抗原を発現する細胞の死を促進すること、ii)抗原が、抗原を発現する細胞と接触している免疫細胞の活性の下方調節を引き起こすことを防止することの両方を行い得る)。
治療的抗体は、たとえば、以下に列挙する抗原に向けられていてよい。一部の抗原では、抗原に向けられた例示的な抗体も以下に挙げられる(抗原の後の角括弧/括弧中)。以下の抗原は、本明細書中において「標的抗原」などとも呼び得る。本明細書中における治療的抗体に対する標的抗原としては、たとえば、4-1BB(たとえばウトミルマブ)、5T4、A33、アルファ-葉酸受容体1(たとえばミレベツキシマブ ソラブタンシン)、Alk-1、BCMA[たとえばPF-06863135(US9969809号を参照)]、BTN1A1(たとえばWO2018222689号を参照)、CA-125(たとえばアバゴボマブ)、炭酸脱水酵素IX、CCR2、CCR4(たとえばモガムリズマブ)、CCR5(たとえばレロンリマブ)、CCR8、CD3[たとえば、ブリナツモマブ(CD3/CD19二重特異性)、PF-06671008(CD3/P-カドヘリン二重特異性)、PF-06863135(CD3/BCMA二重特異性)、CD19(たとえば、ブリナツモマブ、MOR208)、CD20(たとえば、イブリツモマブチウキセタン、オビヌツズマブ、オファツムマブ、リツキシマブ、ウブリツキシマブ)、CD22(イノツズマブオゾガマイシン、モキセツムモマブパスドトクス)、CD25、CD28、CD30(たとえばブレンツキシマブ ベドチン)、CD33(たとえばゲムツズマブオゾガマイシン)、CD38(たとえば、ダラツムマブ、イサツキシマブ)、CD40、CD-40L、CD44v6、CD47、CD52(たとえばアレムツズマブ)、CD63、CD79(たとえばポラツズマブ ベドチン)、CD80、CD123、CD276/B7-H3(たとえばオムブルタマブ)、CDH17、CEA、ClhCG、CTLA-4(たとえば、イピリムマブ、トレメリムマブ)、CXCR4、デスモグレイン4、DLL3(たとえばロバルピツズマブ テシリン)、DLL4、E-カドヘリン、EDA、EDB、EFNA4、EGFR(たとえば、セツキシマブ、デパツキシズマブ マホドチン、ネシツムマブ、パニツムマブ)、EGFRvIII、エンドシアリン、EpCAM(たとえばオポルツズマブ モナトクス)、FAP、胎児性アセチルコリン受容体、FLT3(たとえばWO2018/220584号を参照)、GD2(たとえば、ジヌツキシマブ、3F8)、GD3、GITR、GloboH、GM1、GM2、GUCY2C(たとえばPF-07062119)、HER2/neu[たとえば、マルゲツキシマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ、アド-トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブ デュオカルマジン、PF-06804103(US8828401号を参照)]、HER3、HER4、ICOS、IL-10、ITG-AvB6、LAG-3(たとえばレラトリマブ)、ルイス-Y、LG、Ly-6、M-CSF[たとえばPD-0360324(US7326414号を参照)]、MCSP、メソテリン、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5AC、MUC5B、MUC7、MUC16、Notch1、Notch3、ネクチン-4(たとえばエンホルツマブ ベドチン)、OX40[たとえばPF-04518600(US7960515号を参照)]、P-カドヘリン[たとえばPF-06671008(WO2016/001810号を参照)]、PCDHB2、PD-1[たとえば、BCD-100、カムレリズマブ、セミプリマブ、ゲノリムズマブ(genolimzumab、CBT-501)、MEDI0680、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、RN888(WO2016/092419号を参照)、シンチリマブ、スパルタリズマブ、STI-A1110、チスレリズマブ、TSR-042]、PD-L1(たとえば、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、BMS-936559(MDX-1105)、またはLY3300054)、PDGFRA(たとえばオララツマブ)、形質細胞抗原、ポリSA、PSCA、PSMA、PTK7[たとえばPF-06647020(US9409995号を参照)]、Ror1、SAS、SCRx6、SLAMF7(たとえばエロツズマブ)、SHH、SIRPa(たとえば、ED9、Effi-DEM)、STEAP、TGF-ベータ、TIGIT、TIM-3、TMPRSS3、TNF-アルファ前駆体、TROP-2(たとえばサシツズマブ ゴビテカン)、TSPAN8、VEGF(たとえば、ベバシズマブ、ブロルシズマブ)、VEGFR1(たとえばラニビズマブ)、VEGFR2(たとえば、ラムシルマブ、ラニビズマブ)、Wue-1が挙げられる。
本明細書中で提供する抗体と組み合わせて投与する治療的抗体は、任意の適切な形式を有し得る。たとえば、治療的抗体は、本明細書中に他の箇所で記載した任意の形式を有し得る。一部の実施形態では、治療用抗体は裸抗体であり得る。一部の実施形態では、治療用抗体は、薬物または他の薬剤と連結していてよい(「抗体-薬物コンジュゲート」(ADC)としても知られる)。一部の実施形態では、特定の抗原に対する治療用抗体を多特異性抗体(たとえば二重特異性抗体)内に取り込ませ得る。
一部の実施形態では、本明細書中で提供する抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、またはCD47/PD-L1二重特異性抗体は、パターン認識受容体(PRR)作用剤、免疫賦活性サイトカイン、および癌ワクチンと組み合わせて投与し得る。複数クラスのPRR分子が存在し、トール様受容体(TLR)、RIG-I様受容体(RLR)、ヌクレオチド-結合オリゴマー化ドメイン(NOD)様受容体(NLR)、C型レクチン受容体(CLR)、およびインターフェロン遺伝子の刺激因子(STING)タンパク質が挙げられる。他のPRRとしては、たとえば、IFN調節因子のDNA依存性活性化剤(DNA-dependent Activator of IFN-regulatory factors、DAI)、および黒色腫中に非存在(Absent in Melanoma)2(AIM2)が挙げられる。
一部の実施形態では、本明細書中で提供する抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、またはCD47/PD-L1二重特異性抗体は、本明細書中で「TLR作用剤」と呼ぶ、1つまたは複数のTLRを活性化させる分子と組み合わせて投与し得る。TLR作用剤としては、たとえば、低分子(たとえば約1000ダルトン未満の分子量を有する有機分子)ならびに大分子(たとえばオリゴヌクレオチドおよびタンパク質)を挙げることができる。一部のTLR作用剤は単一種類のTLR(たとえばTLR3またはTLR9)に特異的である一方で、一部のTLR作用剤は2種類以上のTLR(たとえばTLR7およびTLR8の両方)を活性化させる。本明細書中で提供する例示的なTLR作用剤としては、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、およびTLR9の作用剤が挙げられる。例示的な低分子TLR作用剤としては、たとえば、米国特許第4,689,338号、第4,929,624号、第5,266,575号、第5,268,376号、第5,346,905号、第5,352,784号、第5,389,640号、第5,446,153号、第5,482,936号、第5,756,747号、第6,110,929号、第6,194,425号、第6,331,539号、第6,376,669号、第6,451,810号、第6,525,064号、第6,541,485号、第6,545,016号、第6,545,017号、第6,573,273号、第6,656,938号、第6,660,735号、第6,660,747号、第6,664,260号、第6,664,264号、第6,664,265号、第6,667,312号、第6,670,372号、第6,677,347号、第6,677,348号、第6,677,349号、第6,683,088号、第6,756,382号、第6,797,718号、第6,818,650号、および第7,7091,214号、米国特許公開第2004/0091491号、第2004/0176367号、および第2006/0100229号、ならびに国際公開WO2005/18551号、WO2005/18556号、WO2005/20999号、WO2005/032484号、WO2005/048933号、WO2005/048945号、WO2005/051317号、WO2005/051324号、WO2005/066169号、WO2005/066170号、WO2005/066172号、WO2005/076783号、WO2005/079195号、WO2005/094531号、WO2005/123079号、WO2005/123080号、WO2006/009826号、WO2006/009832号、WO2006/026760号、WO2006/028451号、WO2006/028545号、WO2006/028962号、WO2006/029115号、WO2006/038923号、WO2006/065280号、WO2006/074003号、WO2006/083440号、WO2006/086449号、WO2006/091394号、WO2006/086633号、WO2006/086634号、WO2006/091567号、WO2006/091568号、WO2006/091647号、WO2006/093514号、およびWO2006/098852号中に開示されているものが挙げられる。低分子TLR作用剤のさらなる例としては、特定のプリン誘導体(米国特許第6,376,501号および6,028,076号中に記載されているものなど)、特定のイミダゾキノリンアミド誘導体(米国特許第6,069,149号中に記載されているものなど)、特定のイミダゾピリジン誘導体(米国特許第6,518,265号中に記載されているものなど)、特定のベンズイミダゾール誘導体(米国特許第6,387,938号中に記載されているものなど)、五員の窒素含有複素環と融合した4-アミノピリミジンの特定の誘導体(米国特許第6,376,501号、第6,028,076号、および第6,329,381号、ならびにWO02/08905号中に記載されているアデニン誘導体など)、特定の3-ベータ-D-リボフラノシルチアゾロ[4,5-d]ピリミジン誘導体(米国公開第2003/0199461号中に記載されているものなど)、ならびに、たとえば米国特許公開第2005/0136065号中に記載されているものなどの特定の低分子免疫賦活化合物が挙げられる。例示的な大分子TLR作用剤としては、オリゴヌクレオチド配列が挙げられる。一部のTLR作用性オリゴヌクレオチド配列はシトシン-グアニンジヌクレオチド(CpG)を含有し、たとえば、米国特許第6,194,388号、第6,207,646号、第6,239,116号、第6,339,068号、および第6,406,705号中に記載されている。一部のCpG含有オリゴヌクレオチドとしては、たとえば米国特許第6,426,334号および第6,476,000号中に記載されているものなどの合成免疫調節構造モチーフを挙げることができる。他のTLR作用性ヌクレオチド配列はCpG配列を欠いており、たとえば国際公開公報WO00/75304号中に記載されている。さらに他のTLR作用性ヌクレオチド配列としては、たとえばHeilら、Science、第303巻、ページ1526~1529、2004年3月5日中に記載されているものなどのグアノシンおよびウリジンに富んだ一本鎖RNA(ssRNA)が挙げられる。他のTLR作用剤としては、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート(AGP)などの生体分子が挙げられ、たとえば、米国特許第6,113,918号、第6,303,347号、第6,525,028号、および第6,649,172号中に記載されている。TLR作用剤としては、複数の異なる種類のTLR受容体を活性化させ得る、失活させた病原体またはその画分も挙げられる。例示的な病原体由来のTLR作用剤としては、BCG、マイコバクテリウム・オブエンセ(mycobacterium obuense)抽出物、タリモジン ラヘルパレプベク(T-Vec)(HSV-1に由来)、およびPexa-Vec(ワクシニアウイルスに由来)が挙げられる。一部の実施形態では、本明細書中で提供する抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、またはCD47/PD-L1二重特異性抗体は、SPM-105(オートクレーブしたマイコバクテリウムに由来)、OM-174(脂質A誘導体)、OmpS1(チフス菌(Salmonella typhi)由来のポリン)、OmpS1(チフス菌(Salmonella typhi)由来のポリン)、OspA(ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)に由来)、MALP-2(マイコプラズママクロファージ活性化リポペプチド-2kD)、STF(可溶性結核因子)、CU-T12-9、Diprovocim、ならびにPAM2CSK4、PAM3CSK4、およびPAM3Cysなどの細胞壁構成成分に由来するリポペプチド類と組み合わせて投与し得る。本発明の処置方法、医薬品、および使用において有用なTLR2作用剤の例としては、たとえば、SPM-105(オートクレーブしたマイコバクテリウムに由来)、OM-174(脂質A誘導体)、OmpS1(チフス菌(Salmonella typhi)由来のポリン)、OmpS1(チフス菌(Salmonella typhi)由来のポリン)、OspA(ボレリア・ブルグドルフェリに由来)、MALP-2(マイコプラズママクロファージ活性化リポペプチド-2kD)、STF(可溶性結核因子)、CU-T12-9、Diprovocim、Amplivant、ならびにPAM2CSK4、PAM3CSK4、およびPAM3Cysなどの細胞壁構成成分に由来するリポペプチド類などの細菌リポタンパク質(たとえばジアシル化リポタンパク質)およびその誘導体が挙げられる。本発明の処置方法、医薬品、および使用において有用なTLR3作用剤の例としては、合成dsRNA、ポリイノシン酸-ポリシチジル酸[「ポリ(I:C)」](たとえばInvivoGenから高分子量(HMW)および低分子量(LMW)の調製物として入手可能)、ポリアデニル酸-ポリウリジル酸[「ポリ(A:U)」](たとえばInvivoGenから入手可能)、ポリICLC(Levyら、Journal of Infectious Diseases、第132巻、第4号、ページ434~439、1975を参照)、Ampligen(Jasaniら、Vaccine、第27巻、第25~26号、ページ3401~3404、2009を参照)、Hiltonol、リンタトリモド、およびRGC100(Naumannら、Clinical and Developmental Immunology、第2013巻、論文ID283649を参照)などのTLR3リガンドが挙げられる。本発明の処置方法、医薬品、および使用において有用なTLR4作用剤の例としては、たとえば、B:0111(Sigma)、モノホスホリル脂質A(MPLA)、3DMPL(3-O-脱アシル化MPL)、GLA-AQ、G100、AS15、ASO2、GSK1572932A(GlaxoSmithKline、英国)などの細菌リポ多糖(LPS)およびその誘導体が挙げられる。本発明の処置方法、医薬品、および使用において有用なTLR5作用剤の例としては、たとえば、枯草菌(B.subtilis)から精製された細菌フラゲリン、緑膿菌(P.aeruginosa)から精製されたフラゲリン、ネズミチフス菌(S.typhimurium)から精製されたフラゲリン、および組換えフラゲリン(すべてInvivoGenから入手可能)、エントリモド(CBLB502、薬理学的に最適化されたフラゲリン誘導体)が挙げられる。本発明の処置方法、医薬品、および使用において有用なTLR6作用剤の例としては、TLR2およびTLR6はヘテロ二量体を形成することができるため、たとえば、上記提供したTLR2作用剤の多くが挙げられる。TLR6はTLR4ともヘテロ二量体を形成することができ、TLR6作用剤としては、上記提供した様々なTLR4作用剤を挙げることができる。本発明の処置方法、医薬品、および使用において有用なTLR7作用剤の例としては、組換え一本鎖(「ss」)RNA、イミキモド(R837)、ガルジキモド、およびレシキモド(R848)などのイミダゾキノリン化合物、ロキソリビン(7-アリル-7,8-ジヒドロ-8-オキソ-グアノシン)および関連化合物、7-チア-8-オキソグアノシン、7-デアザグアノシン、および関連グアノシン類似体、ANA975(Anadys Pharmaceuticals)および関連化合物、SM-360320(Sumimoto)、3M-01、3M-03、3M-852、および3M-S-34240(3M Pharmaceuticals)、GSK2245035(GlaxoSmithKline、8-オキソアデニン分子)、AZD8848(Astrazeneca、8-オキソアデニン分子)、MEDI9197(Medimmune、以前は3M-052)、ssRNA40、ならびにUC-1V150(Jinら、Bioorganic Medicinal Chem Lett(2006)16:4559~4563、化合物4)などのアデノシン類似体が挙げられる。多くのTLR7作用剤はTLR8作用剤でもある。
本発明の処置方法、医薬品、および使用において有用なTLR8作用剤の例としては、組換え一本鎖ssRNA、イミキモド(R837)、ガルジキモド、レシキモド(R848)、3M-01、3M-03、3M-852、および3M-S-34240(3M Pharmaceuticals)、GSK2245035(GlaxoSmithKline、8-オキソアデニン分子)、AZD8848(Astrazeneca、8-オキソアデニン分子)、MEDI9197(Medimmune、以前は3M-052)、ポリ-G10、モトリモド、ならびに上記提供した様々なTLR7作用剤(既に注記したように、多くのTLR7作用剤はTLR8作用剤でもある)が挙げられる。本発明の処置方法、医薬品、および使用において有用なTLR9作用剤の例としては、非メチル化CpG含有DNA、免疫賦活性オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、たとえばCpG含有ODN、たとえば、CpG24555、CpG10103、CpG7909(PF-3512676/アガトリモド)、CpG1018、AZD1419、ODN2216、MGN1703、SD-101、1018ISS、およびCMP-001が挙げられる。TLR9作用剤としては、合成シトシン-リン酸-2’-デオキシ-7-デアザグアノシンジヌクレオチド(CpR)(Hybridon,Inc.)、dSLIM-30L1、および免疫グロブリン-DNA複合体を含有するヌクレオチド配列も挙げられる。例示的なTLR9作用剤は、それぞれがすべての目的のために本明細書中に参考として組み込まれている、WO2003/015711号、WO2004/016805号、WO2009/022215号、PCT/US95/01570号、PCT/US97/19791号、ならびに米国特許第8552165号、第6194388号、および第6239116号中に開示されている。
本発明の処置方法、医薬品、および使用において有用なRLR作用剤の例としては、たとえば、キャップのない5’三リン酸を有する短い二本鎖RNA(RIG-I作用剤)、ポリI:C(MDA-5作用剤)、およびBO-112(MDA-A作用剤)が挙げられる。
本発明の処置方法、医薬品、および使用において有用なNLR作用剤の例としては、たとえばリポソームムラミルトリペプチド/ミファムルチド(NOD2作用剤)が挙げられる。
CLRとしては、たとえば炭水化物および糖タンパク質を検出する様々なPRRが挙げられる。CLRは膜貫通CLRおよび分泌CLRをどちらも含む。CLRの例としては、たとえば、DEC-205/CD205、マクロファージマンノース受容体(MMR)、デクチン-1、デクチン-2、ミンクル(mincle)、DC-SIGN、DNGR-1、およびマンノース-結合レクチン(MBL)が挙げられる。
本発明の処置方法、医薬品、および使用において有用なCLR作用剤の例としては、たとえば、MD画分(マイタケ(Grifola frondosa)由来の精製した可溶性ベータ-グルカン抽出物)およびインプライムPGG(酵母由来のベータ1,3/1,6-グルカンPAMP)が挙げられる。
本発明の処置方法、医薬品、および使用において有用なSTING作用剤の例としては、合成二本鎖DNA、環状ジ-GMP、環状-GMP-AMP(cGAMP)、MK-1454およびADU-S100(MIW815)などの合成環状ジヌクレオチド(CDN)、ならびにP0-424などの低分子などの様々な免疫賦活性核酸が挙げられる。
本発明の処置方法、医薬品、および使用において有用な免疫賦活性サイトカインの例としては、GM-CSF、G-CSF、IFN-アルファ、IFN-ガンマ、IL-2(たとえばデニロイキンジフィティトクス)、IL-6、IL-7、IL-11、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、およびTNF-アルファが挙げられる。
本発明の処置方法、医薬品、および使用において有用な癌ワクチンの例としては、たとえばシプリューセル-Tおよびタリモジン ラヘルパレプベク(T-VEC)が挙げられる。
本発明の処置方法、医薬品、および使用において有用な免疫細胞治療の例としては、たとえば腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)およびキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)が挙げられる。
化学療法剤の例としては、チオテパおよびシクロホスファミドなどのアルキル化剤、ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファンなどのスルホン酸アルキル、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、およびウレドーパなどのアジリジン、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、およびトリメチロールメラミンを含むエチレンイミンおよびメチラメラミン(methylamelamine)、アセトゲニン(特にブラタシンおよびブラタシノン)、カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む)、ブリオスタチン、カリスタチン、CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、およびビゼレシン合成類似体を含む)、クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8)、ドラスタチン、デュオカルマイシン(合成類似体KW-2189およびCBI-TMIを含む)、エリュテロビン、パンクラチスタチン、サルコジクチン、スポンジスタチン、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビシン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロソウレア、エネジイン抗生物質(たとえばカリチアマイシン、特にカリチアマイシンガンマ1IおよびカリチアマイシンファイI1、たとえばAgnew、Chem.Intl.Ed.Engl.、33:183~186(1994)を参照、ダイネミシンAを含むダイネミシン、クロドロネートなどのビスホスホネート、エスペラミシン、ならびにネオカルジノスタチン発色団および関連色素タンパク質エネジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、およびデオキシドキソルビシンを含む)、peg化リポソームドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生物質、メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキセートなどの葉酸類似体、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフル、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジンなどのピリミジン類似体、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤、フォリン酸などの葉酸補充液、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン、ベストラブシル、ビサントレン、エダトラキセート、デフォファミン、デメコルシン、ジアジコン、エルフォミチン、酢酸エリプチニウム、エポチロン、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシ尿素、レンチナン、ロニダミン、メイタンシンおよびアンサミトシンなどのメイタンシノイド、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダモール、ニトラクリン、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ロソキサントロン、ポドフィリン酸、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、ラゾキサン、リゾキシン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、テヌアゾン酸、トリアジコン、2、2’、2’’-トリクロロトリエチルアミン、トリコテセン(特にT-2毒素、ベラキュリンA、ロリジンA、およびアングイジン)、ウレタン、ビンデシン、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、ガシトシン、アラビノシド(「Ara-C」)、シクロホスファミド、チオテパ、タキソイド、たとえばパクリタキセルおよびドキセタキセル、クロラムブシル、ゲムシタビン、6-チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキサート、シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金類似体、ビンブラスチン、白金、エトポシド(VP-16)、イホスファミド、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ノバントロン、テニポシド、エダトレキサート、ダウノマイシン、アミノプテリン、ゼローダ、イバンドロネート、CPT-11、トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000、ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)、レチノイン酸などのレチノイド、カペシタビン、ならびに上記のうちの任意のものの薬学的に許容できる塩、酸、または誘導体が挙げられる。また、たとえば、タモキシフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびトレミフェン(Fareston)を含む、抗エストロゲンおよび選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)などの腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤、たとえば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール、エキセメスタン、フォルメスタン、ファドロゾール、ボロゾール、レトロゾール、およびアナストロゾールなどの、副腎中のエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、およびゴセレリンなどの抗アンドロゲン、KRAS阻害剤、MCT4阻害剤、MAT2a阻害剤、スニチニブ、アキシチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤、クリゾチニブ、ロルラチニブなどのalk/c-Met/ROS阻害剤、テムシロリムス、ゲダトリシブなどのmTOR阻害剤、ボスチニブなどのsrc/abl阻害剤、パルボシクリブ、PF-06873600などのサイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤、ダコミチニブなどのerb阻害剤、タラゾパリブなどのPARP阻害剤、グラスデギブ、PF-5274857などのSMO阻害剤、PF-06747775などのEGFR T790M阻害剤、PF-06821497などのEZH2阻害剤、PF-06939999などのPRMT5阻害剤、PF-06952229などのTGFRβr1阻害剤、ならびに上記のうちの任意のものの薬学的に許容できる塩、酸、または誘導体も挙げられる。具体的な実施形態では、そのような追加の治療剤は、ベバシズマブ、セツキシマブ、シロリムス、パニツムマブ、5-フルオロウラシル(5-FU)、カペシタビン、チボザニブ、イリノテカン、オキサリプラチン、シスプラチン、トリフルリジン、チピラシル、ロイコボリン、ゲムシタビン、レゴラフェニブ、または塩酸エルロチニブである。
一部の実施形態では、抗CD47、抗PD-L1、またはCD47/PD-L1二重特異性抗体療法は、他の薬剤の処置と同時投与し得る、または数分間から数週間までの範囲の間隔によって他の薬剤の処置の前もしくは後に順次投与し得る。他の薬剤および/またはタンパク質もしくはポリヌクレオチドを別々に投与する実施形態では、薬剤および本発明の組成物が、対象に対して有利に組み合わされた効果を依然として発揮することができるように、それぞれの送達間で長い期間が経過しないことを一般的に確実にするであろう。そのような事例では、両方のモダリティを互いに約12~24時間以内、より好ましくは互いに約6~12時間以内に投与し得ることが企図される。しかし、一部の状況では、それぞれの投与の間に数日間(2、3、4、5、6、または7)から数週間(1、2、3、4、5、6、7、または8)が経過する、投与の期間の顕著な延長が望ましい場合がある。
一部の実施形態では、抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、またはCD47/PD-L1二重特異性抗体療法組成物を、手術、放射線療法、化学療法、標的化治療、免疫療法、ホルモン療法、血管形成阻害、および緩和ケアからなる群から選択される従来の治療をさらに含む治療レジメンと組み合わせる。
キット
本発明のさらなる態様は、本明細書中で上記開示した抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、またはCD47/PD-L1二重特異性抗体と、本明細書中に記載の本発明の方法のうちの任意のものに従った使用説明書とを含むキットである。一般的に、これらの指示は、上述した治療処置のための、抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、またはCD47/PD-L1二重特異性抗体の投与の説明を含む。本キットは、本明細書中に開示した任意の医薬組成物を含む。医薬組成物および他の試薬は、たとえば液剤または粉末の形態などの任意の好都合な形態でキット中に存在し得る。
別の態様では、キットは、癌の処置に有用な1つまたは複数の他の予防剤または治療剤を、1つまたは複数の容器中にさらに含む。一実施形態では、他の予防剤または治療剤は化学療法剤である。他の態様では、予防剤または治療剤は生物学的またはホルモン治療剤である。
本発明の医薬組成物、予防剤、または治療剤の一部の態様は、好ましくは、ヒトにおける使用の前に、in vitro、細胞培養系中、およびげっ歯動物の動物モデル系などの動物モデル生物中で、所望の治療活性のために試験する。
本発明の予防的および/または治療的プロトコルの毒性および有効性は、たとえばLD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%に治療上有効な用量)を決定するための、細胞培養物または実験動物における標準の医薬的手順によって決定し得る。毒性効果と治療効果との間の用量比が治療指数であり、比LD50/ED50として表し得る。高い治療指数を示す予防剤および/または治療剤が好ましい。
さらに、当業者に知られている任意のアッセイを使用して、癌を処置または防止するための本明細書中に開示した治療またはコンビナトリアル治療の予防的および/または治療的有用性を評価し得る。
本明細書中に記載の抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、またはCD47/PD-L1二重特異性抗体の使用に関する指示は、一般的に、意図する処置の投与量、投薬スケジュール、および投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(たとえば複数用量パッケージ)または部分単位用量であり得る。本発明のキット中に供給する指示は、典型的には標識または添付文書(たとえばキットに含まれる紙シート)上の書面の指示であるが、機械で読取り可能な指示(たとえば磁気または光学的記憶ディスク上に保持される指示)も許容される。
本発明のキットは適切なパッケージング中に存在する。適切なパッケージングとしては、それぞれの医薬組成物および医薬組成物を対象に投与することにおいて使用するための他の含まれる試薬、たとえば緩衝剤、平衡塩類溶液などについて、それだけには限定されないが、バイアル、アンプル、チューブ、ボトル、瓶、ソフトパッケージング(たとえば密封したマイラーまたはプラスチックバッグ)などが挙げられる。また、吸入器、経鼻投与装置(たとえば噴霧器)、またはミニポンプなどの輸液装置などの特定の装置と組み合わせて使用するためのパッケージも企図される。キットは無菌的なアクセスポートを有し得る(たとえば、容器は、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内液剤バッグまたはバイアルであり得る)。容器も無菌的なアクセスポートを有し得る(たとえば、容器は、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内液剤バッグまたはバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性薬剤は抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、またはCD47/PD-L1二重特異性抗体である。容器は、第2の医薬的に活性のある薬剤をさらに含み得る。
通常、キットは、容器と容器上またはそれに関連付けられた標識または添付文書とを含む。
米国仮特許出願第62/949,120号(2019年12月17日に出願)および第63/110,693号(2020年11月6日に出願)の内容が、すべての目的のために本明細書中に参考として組み込まれている。
生物学的受託
本発明の代表的な材料は、アメリカ培養細胞系統保存機関、米国バージニア州Manassas、University Boulevard 10801、20110-2209に、2020年12月8日に受託した。ATCC受託番号PTA-126910を有するベクター「CD47_P01A11_75重鎖」は、「CD47_P01A11_75重鎖」と命名した抗CD47重鎖をコードしているDNA挿入物を含み、ATCC受託番号PTA-126911を有するベクター「PDL1_P06B05_245重鎖」は、「PDL1_P06B05_245重鎖」と命名した抗PD-L1重鎖をコードしているDNA挿入物を含み、ATCC受託番号PTA-126912を有するベクター「共通軽鎖1完全軽鎖」は、「共通軽鎖1完全軽鎖」と命名した抗CD47および抗PD-L1共通軽鎖をコードしているDNA挿入物を含む。
受託は、特許手続きのための微生物寄託の国際認識に関するブダペスト条約およびそれに従う規制(ブダペスト条約)の規定の下で行った。これは、受託日から30年間の間、受託物の生存可能な培養物の維持を保証する。受託物はブダペスト条約の条件下でATCCによって入手可能となり、Pfizer Inc.およびATCCとの間の合意に従い、これは、関連する米国特許の発行の際または任意の米国もしくは外国特許出願の公共への公開の際のいずれか早い方に、受託物の培養物の子孫の、公共への永久的かつ無制限の利用可能性を保証し、また、米国特許法第122条およびそれに関連する長官の規則(米国特許法施行規則1.14を含み、886 OG 638に具体的に言及)に従って、米国特許商標庁長官によってその権利を有すると決定された者に子孫の利用可能性を保証するものである。
本出願の譲受人は、受託されている材料の培養物が適切な条件下で培養された際に死滅または喪失または破壊された場合は、通知された際に材料を別の同じものと即座に交換することに同意している。受託された材料の利用可能性は、任意の政府の権限下で、その特許法に従って与えられた権利に違反して本発明を実施する許可として解釈されるべきでない。
本発明を実施するための具体的な態様の以下の実施例は、例示目的のみで提供し、いかなる様式でも本発明の範囲を限定することを意図しない。
(実施例1)
例示的な抗CD47抗体
抗CD47共通軽鎖(CLC)抗体P14D04、P01A11、P01A08、およびその変異体に関する情報を以下に提供する。P14D04は配列番号6に示す軽鎖アミノ酸配列を有する。P01A11およびP01A08は配列番号2に示す軽鎖アミノ酸配列を有する。
以下の表11Aは、2つの追加の抗CD47 CLC抗体の特性を要約する。
表11Bは、親P01A11抗体の変異体、ならびに変異体とヒトCD47(「hCD47」)およびカニクイザルCD47(「cyCD47」)タンパク質との結合のKDデータを提供する。表11B中のアミノ酸の付番は、CD47_P01A11_親VHアミノ酸配列(配列番号7)を参照したものである。たとえば、「Y27G」とは配列番号7の位置27の「Y」残基を指し、Y残基が「G」残基へと突然変異していることを示す。表11Bに示すように、位置27、30、31、53、54、55、100、105、108に突然変異を有するP01A11の様々な変異体は、50nM未満のKDでhCD47と結合し、複数位置での突然変異を組み合わせることもできる。位置27、30、および31はCDR1中にあり、位置50、52、53、54、および55はCDR2中にあり、位置99、100、105、108、113、および114はCDR3中にある。
(実施例2)
例示的な抗PD-L1抗体
抗PD-L1共通軽鎖(CLC)抗体P04D09、P06B05、およびP06A09、ならびにその変異体に関する情報を以下に提供する。P04D09は配列番号6に示す軽鎖アミノ酸配列を有する。P06B05およびP06A09は配列番号2に示す軽鎖アミノ酸配列を有する。
2つの追加の抗PD-L1抗体、P04D09_113およびP06B05_245の特性を以下の表15A中に要約する。
表15Bは、親P06B05クローンのさらなる変異体、突然変異体タンパク質とヒトPD-L1(「hPD-L1」)、カニクイザルPD-L1(「cyPD-L1」)、およびマウスPD-L1(「mPD-L1」)タンパク質との結合のKDデータを提供する。表15B中のアミノ酸の付番はPDL1_P06B05_親VHアミノ酸配列(配列番号11)を参照したものである。たとえば、「S104A」とは、配列番号11の位置104の「S」残基を指し、「S」残基が「A」残基へと突然変異していることを示す。表15Bに示すように、位置103、104、105、107、112、113、61、および62に突然変異を有するP06B05の様々な変異体は、50nM未満のKDでhPD-L1と結合し、複数位置での突然変異を組み合わせることもできる。位置56、57、61、および62はCDR2中にあり、位置103、104、105、107、109、112、および113はCDR3中にある。
(実施例3)
例示的なCD47/PD-L1二重特異性抗体の調製
様々なCD47/PD-L1二重特異性抗体を、上述の特定の抗CD47および抗PD-L1抗体を二重特異性形式へと組み合わせることによって調製した。
CD47/PD-L1二重特異性抗体1(本明細書中で「BsAb1」とも呼ぶ)を、抗CD47抗体P01A11_75(VHアミノ酸配列は配列番号1に示す)を抗PD-L1抗体P06B05_245(VHアミノ酸配列は配列番号4に示す)と二重特異性抗体形式で組み合わせることによって調製した。これら2つの抗体は、どちらも同じ軽鎖VLアミノ酸配列(配列番号2に示す)を有しており、したがって、抗CD47/抗PD-L1 BsAb1は、抗CD47可変領域および抗PD-L1可変領域の両方について同じ軽鎖アミノ酸配列を有する(すなわち共通軽鎖)。BsAb1は、ノブ-イン-ホール突然変異を有するヒトIgG1 Fcドメインを有する。IgG1は、(先天性および適応チェックポイント遮断に加えて)抗腫瘍有効性を駆動する抗体の作用機構の一部としてADCPおよびADCCを含むロバストなエフェクター機能のために選択された。抗CD47重鎖のアミノ酸配列、抗PD-L1重鎖、およびBsAb1の共通軽鎖を以下の表16に示す。「ノブ」または「ホール」構造のどちらかを生じるための、それぞれの鎖中のFc鎖中の突然変異に下線が引いてある。
ノブ抗PD-L1重鎖(「GGGGSHHHHHH」)(配列番号76)のC末端への「GGGGS」(配列番号75)リンカー、次いで6×ヒスチジンタグの付加以外はBsAb1と同一であるCD47/PD-L1二重特異性抗体も調製した。この抗体は、BsAb1のタグ付けされていないバージョンと本質的に同じ、CD47およびPD-L1に対する結合親和性ならびに他の特性を有しており、本明細書中で提供するBsAb1に関与する実験のほとんどにおいて使用した。
CD47/PD-L1二重特異性抗体2(本明細書中で「BsAb2」とも呼ぶ)を、抗CD47抗体P01A11_497(VHアミノ酸配列は配列番号3に示す)を抗PD-L1抗体P06B05_245(VHアミノ酸配列は配列番号4に示す)と組み合わせることによって調製した。これら2つの抗体は、どちらも同じ軽鎖VLアミノ酸配列(配列番号2に示す)を有しており、したがって、BsAb2は、抗CD47可変領域および抗PD-L1可変領域の両方について同じ軽鎖アミノ酸配列を有する(すなわち共通軽鎖)。BsAb2は、ノブ-イン-ホール突然変異を有するヒトIgG1 Fcドメインを有する。抗CD47重鎖のアミノ酸配列、抗PD-L1重鎖、およびBsAb2の共通軽鎖を以下の表17に示す。「ノブ」または「ホール」構造のどちらかを生じるためのFc鎖中の突然変異に下線が引いてある。
ノブ抗PD-L1重鎖(「GGGGSHHHHHH」)(配列番号76)のC末端への「GGGGS」(配列番号75)リンカー、次いで6×ヒスチジンタグの付加以外はBsAb2と同一であるCD47/PD-L1二重特異性抗体も調製した。この抗体は、BsAb2のタグ付けされていないバージョンと本質的に同じ、CD47およびPD-L1に対する結合親和性ならびに他の特性を有しており、本明細書中で提供するBsAb2に関与する実験のほとんどにおいて使用した。
CD47/PD-L1二重特異性抗体BsAb1およびBsAb2は、CHO細胞に、3つの別々のポリペプチド、すなわち、それぞれの抗CD47重鎖、抗PD-L1重鎖、および共通軽鎖をコードしている核酸配列を含有するポリヌクレオチドをトランスフェクトすることによって、それぞれ調製した。それぞれのCD47/PD-L1二重特異性抗体がこれらの細胞中で発現され、カラムクロマトグラフィーを介して精製した。したがって、注目すべきことに、本明細書中で提供するCD47/PD-L1二重特異性抗体は標準のIgG mAbと同様の様式で産生および精製することができるため、CD47/PD-L1二重特異性抗体は、二重特異性抗体の多くの他の種類および形式よりも産生は顕著に容易である。標準のIgG mAbと比較した本明細書中で提供する二重特異性抗体での主な相違は、標準のIgG mAbでは、宿主細胞に、2本のポリペプチド鎖[すなわちi)mAb重鎖およびii)mAb軽鎖]をコードしているポリヌクレオチドをトランスフェクトするが、本明細書中で提供するCD47/PD-L1二重特異性mAbでは、宿主細胞に、3本のポリペプチド鎖[すなわち、i)抗CD47重鎖、ii)抗PD-L1重鎖、およびiii)共通軽鎖]をコードしているポリヌクレオチドをトランスフェクトすることである。
マウス代用CD47/PD-L1二重特異性抗体は、マウスCD47およびマウスPD-L1タンパク質との結合について選択された抗体を使用して調製し、本明細書中で「BsAb3」と呼ぶ。
(実施例4)
CD47およびPD-L1タンパク質に対するCD47/PD-L1二重特異性抗体の結合親和性
CD47/PD-L1 BsAb1、BsAb2、およびBsAb3(上記実施例3中に記載)を、ヒト、カニクイザル、およびマウスのCD47およびPD-L1タンパク質に対する結合親和性について評価した。親和性を以下の表18中に要約する。
BsAb1、BsAb2、陽性対照抗体(抗CD47抗体P01A11_75)、および陰性対照抗体(抗PD-L1抗体P06B05_245)と細胞表面上のヒトCD47との結合は、ヒトCD47を安定して過剰発現するように作製されたCHO細胞を使用したフローサイトメトリーによって評価した。生じたEC50値(すなわちCD47タンパク質の50%に抗体が結合する濃度)は、BsAb1:11.8nM、BsAb2:101.2nM、抗体P01A11_75:0.98nM、および抗体P06B05_245:該当なし(N/A)であった。
BsAb1およびBsAb2と細胞表面上のヒトPD-L1との結合は、ヒトPD-L1を異所的に過剰発現するように作製されたCHO細胞を使用したフローサイトメトリーによって評価した。生じたEC50値(すなわちPD-L1タンパク質の50%に抗体が結合する濃度)はBsAb1:0.38nMおよびBsAb2:0.24nMであった。
(実施例5)
CD47/PD-L1二重特異性抗体と腫瘍細胞および赤血球との結合
抗CD47単一特異性抗体と比較したCD47/PD-L1二重特異性抗体の潜在的な利点は、CD47/PD-L1二重特異性抗体が、CD47のみを発現する血液細胞(たとえば赤血球)と比較して腫瘍微小環境中の腫瘍細胞および/または免疫細胞(どちらもCD47およびPD-L1を同時発現し得る)に対してより高い選択性を潜在的に有することである。腫瘍微小環境中の細胞に対して抗CD47単一特異性抗体よりも高い選択性を潜在的に有することによって、CD47/PD-L1二重特異性抗体は、抗CD47単一特異性抗体と比較して低下した毒性を潜在的に有する。
1:10の比の腫瘍細胞(すなわちCD47およびPD-L1の発現をどちらも有するHT1080細胞)と赤血球(RBC)(CD47の発現のみ)とからなる混合物中において、BsAb1およびBsAb2とヒトCD47との結合を、単一特異性抗CD47 mAb 5F9[Liu,Jら、PLoS One.、2015、10(9)]および2A1(米国公開第20140140989号)とのそれと比較した。抗CD47 5F9および2A1の腫瘍およびRBCとの結合のEC50はどちらも0.1nM未満であり、選択性がない。対照的に、BsAb1およびBsAb2はどちらも腫瘍細胞の100%と<0.1nMで結合したが、RBC結合のEC50は>10nMであり、これは腫瘍細胞対RBCについて少なくとも100倍の選択性を示唆している。
(実施例6)
CD47-SIRPaおよびPD-L1-PD-1相互作用に対するCD47/PD-L1二重特異性抗体の遮断活性
本実施例はBsAb1およびBsAb2の遮断能力を例示する。
SIRPaタンパク質とCHO細胞によって過剰発現されたヒトCD47(「CHO-hCD47」)との結合に対するBsAb1およびBsAb2の影響を試験するための、細胞に基づくSIRPa遮断IC50アッセイを実施した。同様に、SIRPαタンパク質とCHO細胞によって過剰発現されたマウスCD47(「CHO-マウスCD47」)との結合に対するBsAb3の影響を試験するための、細胞に基づくSIRPa遮断IC50アッセイを実施した。本アッセイの結果を以下の表19に示す。
さらに、PD-1タンパク質とCHO細胞によって過剰発現されたヒトPD-L1(「CHO-hPD-L1」)との結合に対するBsAb1およびBsAb2の影響を試験するための、細胞に基づくPD-1遮断IC50アッセイを実施した。具体的には、PD-L1遮断活性では、PD-1/PD-L1の相互作用は、キット(Promega #J1250)を介してPD-L1 aAPC/CHO-K1をPD-1エフェクター細胞と同時培養した際にTCR媒介性ルミネセンスを阻害する。PD-1/PD-L1の相互作用はPD-1遮断mAbによって乱され、TCRの活性化はNFAT経路の活性化を介してルミネセンスを誘導する。PD-1タンパク質とCHO細胞によって過剰発現されたマウスPD-L1(「CHO-マウスPD-L1」)との結合に対する二重特異性BsAb3の影響を試験するための、同様の細胞に基づくPD-1遮断IC50アッセイも実施した。本アッセイの結果も以下の表19に示す。
表19に示すように、BsAb1、BsAb2、およびBsAb3のそれぞれは、SIRPαとCD47との間の相互作用を遮断した。さらに、BsAb1、BsAb2、およびBsAb3のそれぞれは、PD-1とPD-L1との間の相互作用を遮断した。
(実施例7)
CD47/PD-L1二重特異性抗体の抗体依存性細胞貪食(ADCP)増強活性
ADCPアッセイ
抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を試験するために、ヒトマクロファージを、2人のドナー由来のPBMCから単離した単球から分化させ、二重特異性CD47/PD-L1 BsAb1の存在下で、CD47およびPD-L1をどちらも発現する腫瘍細胞(NCI-H292細胞、肺気管支粘表皮癌)と共に同時培養した。図1に示すように、BsAb1を用いた処置は、CD47およびPD-L1の発現をどちらも有するヒト標的細胞NCI-H292のマクロファージ貪食を増強させる。さらに、図1に示すように、BsAb1は、腫瘍細胞の貪食を増強させることにおいて、抗CD47単一特異性抗体(P01A11_75)または抗PD-L1単一特異性抗体(P06B05_245)のいずれかよりも有効である。たとえば、0.32nMの濃度で、BsAb1の全腫瘍細胞の貪食%は約60%である一方で、抗CD47単一特異性抗体(P01A11_75)および抗PD-L1単一特異性抗体(P06B05_245)の両方では、これは約30%でしかない(図1)。
(実施例8)
マウス代用CD47/PD-L1二重特異性抗体のin vivo有効性研究
本実施例は、3つの同系マウス腫瘍モデル[CT26-強度(hot)腫瘍モデル(マウス結腸癌細胞)、MC38-中度(warm)腫瘍モデル(マウス結腸癌細胞)、B16F10-軽度(cold)腫瘍モデル(マウス黒色腫細胞)]におけるCD47/PD-L1二重特異性抗体の抗腫瘍有効性を例示する。
CT26腫瘍モデルでは、CD47/PD-L1二重特異性抗体BsAb3を用いた処置後の有効性および体重の変化を、単一特異性抗mCD47および単一特異性抗mPD-L1 mAbの単独および組合せと比較した(図2A、2B、および2C)。さらに、BsAb3活性に対するFc媒介性エフェクター機能の寄与を評価するために、BsAb3のFcヌルバージョンを調製して実験に含めた。3または4日間隔で投与した合計3回用量の100μg(約5mg/kg)での腹腔内(IP)処置の後、BsAb3 CD47/PD-L1二重特異性抗体の有効性は、抗CD47または抗PD-L1単独よりも統計的に良好であった[図2A、BsAb3(黒菱形)の処置が、試験したすべての抗体または抗体の組合せの中で最も小さい腫瘍体積をもたらした]。さらに、体重減少によって証明されるように抗CD47 mAbはこの用量で許容されなかった一方で(図2B)、BsAb3は処置全体にわたって良好に許容された。[図2Bでは、抗CD47単一特異性抗体(白四角)および抗PD-L1単一特異性抗体と合わせた抗CD47単一特異性抗体(白逆三角形)のデータ点は大部分が重複する。またh、抗PD-L1単一特異性抗体(黒三角形)および二重特異性CD47/PD-L1 BsAb3(黒菱形)のデータ点は大部分が重複する。Fcヌル二重特異性CD47/PD-L1 BsAb3(白丸)のデータは図2B中には存在しない。]BsAb3を用いた処置は、抗CD47および抗PD-L1 mAbの組合せで達成されたものに類似の腫瘍成長阻害をもたらしたが、単一特異性抗体の組合せは>10%の体重減少を引き起こした。IgGエフェクター機能を有するおよび有さないBsAb3の有効性の比較では、mG2a野生型と比較してmG2aFcヌルで低下した有効性が示された(図2Aおよび図2C)。試験した化合物の中で、mG2a野生型エフェクター機能を有するBsAb3を用いた処置(黒菱形)は最良の生存結果をもたらした(図2C)。図2Cに示すように、mG2a野生型エフェクター機能を有するBsAb3で処置した動物(黒菱形)は、処置の28日後に約75%の生存を有していた。対照的に、抗PD-L1単一特異性抗体と合わせた抗CD47単一特異性抗体で処置した動物(白逆三角形)は、処置の28日後に約65%の生存を有していた。mG2a Fcヌルを有するBsAb3で処置した動物(白丸)は、処置の28日後に約25%の生存を有していた。
MC38腫瘍モデルでは、様々な用量の二重特異性BsAb3を、腫瘍の成長を阻害することにおける有効性について評価した。MC38腫瘍を保有するマウスを、10、20、または40mg/kgのBsAb3を用いて、週に2回を3週間、合計6用量、腹腔内処置した。このモデルでは、10、20、または40mg/kgの処置の観察された有効性は、それぞれ約25.7%、52.6%、および75.8%の腫瘍成長阻害であった(すなわちアイソタイプ対照抗体と比較した)(図3A)。これらの用量はすべて、体重減少なしで良好に許容された(図3B)。
B16F19腫瘍モデルでは、20mg/kgのBsAb3を抗腫瘍有効性について評価した。B16F19腫瘍を保有するマウスを、20mg/kgの二重特異性BsAb3を用いて、週に3回を3週間、合計9用量、腹腔内処置した。このモデルでは、20mg/kgの処置の観察された有効性は約68%の腫瘍成長阻害であった(すなわちアイソタイプ対照抗体と比較した)(図4A)。この用量は、体重の実質的な減少なしで良好に許容された(図4B)。
(実施例9)
マウス代用CD47/PD-L1二重特異性抗体の作用機構の研究
本実験では、どの免疫細胞種がマウス代用CD47/PD-L1二重特異性抗体の抗腫瘍有効性に必要かを決定するためにアッセイを行った。
CD8 T細胞を枯渇させることが知られている抗体(抗CD8、抗体:2.43)、CD4 T細胞(抗CD4、抗体:GK1.5)、NK細胞(抗NK1.1、抗体:PK136)、および腫瘍関連マクロファージ(抗CSF1R)を、MC38腫瘍を保有するマウスに、マウスCD47/PD-L1二重特異性BsAb3(40mg/kg、週に2回を3週間)と共に同時投与した。図5A、5C、および5Dに示すように、データは、有効性が、CD8 T細胞単独の非存在下(図5A)およびCD8+CD4 T細胞の組合せ(図5A)では損なわれていたが、CD4 T細胞単独の非存在下(図5A)、NK細胞の非存在下(図5D)、または腫瘍関連マクロファージの非存在下(図5C)においては損なわれていなかったことを示唆している。さらに、この研究を、野生型C57BL/6マウスと比較して古典的1型樹状細胞(DC1)の部分組(CD8α+およびCD103+)を欠くBATF3-/-マウスにおいても行った(Hildner,K.ら、Science、2008、322(5904):ページ1097~100。)。図5Bに示すように、有効性は、cDC1の非存在下では失われていた。[図5Bでは、対照抗体で処置した野生型マウス(黒丸)、対照抗体で処置したBATF3-/-マウス(白四角)、およびBsAb3で処置したBATF3-/-マウス(黒三角形)のデータ点が、特に25日目に密に重複している。]
(実施例10)
CD47/PD-L1二重特異性抗体の薬力学的効果
本実験の目的は、CD47/PD-L1二重特異性抗体のin vivoの薬力学的効果を理解することであった。
MC38腫瘍を保有するマウスを、5mg/kg、10mg/kg、または20mg/kgの二重特異性BsAb3を用いて、腫瘍移植後11、14、および18日目に処置した。腫瘍移植の3週間後、腫瘍および脾臓をマウスから収穫し、様々な細胞種について分析した。表20a~20eに示すように、CD8+CD11c+DCなどの一部の脾臓樹状細胞(DC)の部分組において用量依存的な増加が存在した(表20a)。さらに、CD11c+間のDEC205+CD8+CD103+DCの百分率は、脾臓中で有意に増加していた(表20b)。腫瘍に関しては、T細胞(Thy1.2+)(表20c)およびCD8+T細胞(表20d)の増加はあったが、CD4+T細胞(表20e)の増加はなく、これは、先天性および適応の免疫細胞の両方が、二重特異性BsAb3を用いて処置の後にモジュレートされたことを示唆している。
(実施例11)
CD47/PD-L1 BsAb1のin vivo有効性研究
本実験の目的は、CD47/PD-L1 BsAb1およびBsAb2のin vivo有効性を試験することであった。
NSG免疫不全マウスを、2×106個のMDA-MB-231トリプルネガティブヒト乳癌細胞を用いて右脇腹に皮下接種した。これらの細胞は、CD47およびPD-L1をどちらも内在的に過剰発現する。腫瘍が標的サイズに達した際、マウスを処置群へとランダム化した。処置はランダム化と同じ日に開始した。マウスを、10mg/kgのhIgG1アイソタイプmAb(対照)、または1、5、もしくは10mg/kgのCD47/PD-L1 BsAb1またはBsAb2を用いて、週に1回、6週間の間処置した。腫瘍サイズはカリパスを使用して二次元において様々な間隔で測定し、体積は以下の式を使用して立方ミリメートルで計算した:V=0.5L×W2[式中、Lは腫瘍の最長直径であり、WはLに垂直な直径である]。
結果を図6に示す。図6に示すように、5または10mg/kgのhisタグ付けしたCD47/PD-L1 BsAb1またはBsAb2を用いた処置は、アイソタイプ対照と比較してMDA-MB-231腫瘍成長を実質的に遅延させた。具体的には、BsAb1では、アイソタイプ抗体と比較した腫瘍成長阻害(TGI)は、1mg/kg、5mg/kg、および10mg/kgの用量でそれぞれ16.8%、68.4%、および78.7%であった。BsAb2では、アイソタイプ抗体と比較した腫瘍成長阻害(TGI)は1mg/kg、5mg/kg、および10mg/kgの用量でそれぞれ6.9%、62.8%、および74.1%であった。[図6では、対照アイソタイプ抗体(黒丸)、1mg/kgのBsAb1(黒三角形)、および1mg/kgのBsAb2(白丸)のデータ点は、一般的に互いに近いまたは重複する。同様に、5mg/kgのBsAb1(白菱形)、10mg/kgのBsAb1(白三角形)、5mg/kgのBsAb2(黒菱形)、および10mg/kgのBsAb2(黒四角)のデータ点は、一般的に互いに近く、10mg/kgのBsAb1が最も低い値を有する。]
(実施例12)
カニクイザルにおける抗CD47/抗PD-L1 BsAb1およびBsAb2の毒性研究
本実験の目的は、カニクイザルにおいてhisタグ付けしたBsAb1およびhisタグ付けしたBsAb2を用いた探索毒性研究(ETS)を行うことであった。BsAb1およびBsAb2は、ヒトおよびカニクイザルのCD47およびPD-L1部分に対して同様の結合親和性を有しており、ヒト赤血球および血小板と同様の親和性でカニクイザル赤血球および血小板と結合する。したがって、これらのデータは、CD47/PD-L1 BsAb1およびBsAb2の毒性評価のための関連種としてのカニクイザルの使用を支持する。
BsAb1およびBsAb2のそれぞれについて、1匹のサルに10mg/kgの用量を投与し、1匹のサルに30mg/kgの用量を投与し、3匹のサルに100mg/kgの用量を投与した。mAbは1および8日目に静脈内投与した。15日目に、それぞれのサルからの試料を、様々な免疫細胞部分組およびサイトカインについて分析し、以下の表21~24に示す。表21および23は、様々な用量のBsAb1またはBsAb2をサルに投与した後の様々な免疫細胞部分組の活性化および/または増殖に関するデータを提供する。表22および24は、様々な用量のBsAb1またはBsAb2をサルに投与した後の様々なサイトカインの増加に関するデータを提供する。
以下の表中で、NC=変化なし、IL=インターロイキン、IFN=インターフェロン、MCP=単球化学誘引物質タンパク質、IP=インターフェロン誘導タンパク質である。比(たとえば「1/1」または「2/3」)は、処置群中のサルの合計数を超えるパラメータの変化を経験したサルの数を指す。たとえば、「2/3」は、処置中の3匹うち2匹のサルが関連パラメータの変化を有していたことを示す。括弧内に提供した値[たとえば「(4.9×)」]はベースラインと比較した変化の倍数を提供し、2つ以上のサルからのデータがある場合は括弧内に値の範囲を提供する[たとえば「(4.0×~9.2×)」]。
表21および23に示すように、BsAb1およびBsAb2を投与したカニクイザルにおいてT細胞の活性化および/または増殖ならびに単球の活性化の証拠が存在していた。さらに、表22および24に示すように、IL6、INFg、CCL2、CXCL10を含む単球/マクロファージ/DCまたはT細胞関連サイトカインの緩和な一過的増加の証拠が存在していた。合わせて、このデータは、カニクイザルにおける抗CD47/抗PD-L1 BsAb1およびBsAb2の投与での、薬理活性および免疫系の活性化を支持する。
(実施例13)
組合せ処置:CD47/PD-L1二重特異性mAbとTLR9作用剤
本実施例は、TLR9作用剤と組み合わせた抗CD47/抗PD-L1 mAbの治療活性を例示する。
マウス代用CD47/PD-L1二重特異性BsAb3は上述されている。二重特異性BsAb3は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の10mg/kgの有効量未満の用量を週に2回、2週間投与した(4回の合計用量)。
TLR9作用剤はCpG24555であり、これはクラスB CpGオリゴヌクレオチド(ODN)である。CpG ODNは、特定の配列構成の非メチル化CpGジヌクレオチド(CpGモチーフ)を含有する合成ODNである。CpG24555は、たとえば、すべての目的のために本明細書中に組み込まれている米国特許第8552165号中に記載されている。CpG24555は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Life Technologies)中の5mg/kg、腫瘍内(it)、1回用量で、腫瘍接種の11日後に投薬した。
6~8週齢の雌のC57BL/6マウスはJackson Laboratoriesから購入した。すべての動物はPfizerの無病原体動物施設に収容し、実験は施設動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee、IACUC)指針に従ったプロトコルに従って実施した。
MC38結腸癌細胞系はアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)から購入した。指数増殖期で増殖中の無病原体細胞を収穫して腫瘍接種に使用した。
C57BL/6マウスを、0.1mLのPBS中の0.5×105個のMC38細胞を用いて、右脇腹に皮下接種した。腫瘍が標的サイズに達した際、マウスを処置群へとランダム化した。処置はランダム化と同じ日に開始した。腫瘍サイズはカリパスを使用して二次元において様々な間隔で測定し、体積は以下の式を使用して立方ミリメートルで計算した:V=0.5L×W2[式中、Lは腫瘍の最長直径であり、WはLに垂直な直径である]。体重も記録した。
結果を図7に示す。図7に示すように、CD47/PD-L1二重特異性BsAb3(白四角)およびTLR9作用剤(黒逆三角形)の処置はどちらも、アイソタイプ対照(黒丸)と比較してMC38結腸癌腫瘍成長を遅延させ、CD47/PD-L1二重特異性BsAb3+TLR9作用剤(白三角形)の組合せは、CD47/PD-L1二重特異性BsAb3およびTLR9の薬剤の個々よりも高い有効性を有していた。[図7では、CD47/PD-L1二重特異性BsAb3(白四角)およびTLR9作用剤(黒逆三角形)のデータ点は大部分が重複する。]
CD47/PD-L1二重特異性mAbとTLR9作用剤との組合せ処置で観察された有効性の増加は、TLR3、TLR7/8、TLR9、またはSTING作用剤の腫瘍内投与に応答した、B16F10腫瘍細胞中におけるCD47およびPD-L1の発現の増加を示したバルク腫瘍RNAシーケンシングデータと一致している(データ示さず)。
(実施例14)
組合せ処置:CD47/PD-L1二重特異性mAbとCDK2/4/6阻害剤
本実施例は、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)2/4/6阻害剤と組み合わせたCD47/PD-L1 mAbの治療活性を例示する。
マウス代用CD47/PD-L1二重特異性BsAb3は上述されている。二重特異性BsAb3は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の20mg/kgを週に3回、3週間投薬した。
CDK2/4/6阻害剤はPF-06873600であった。PF-06873600、すなわち6-(ジフルオロメチル)-8-((1R,2R)-2-ヒドロキシ-2-メチルシクロペンチル)-2-(1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イルアミノ)ピリド[2,3-d]ピリミジン-7(8H)-オンは、CDK2、CDK4、およびCDK6の強力かつ選択的な阻害剤であり、以下の構造を有する。
PF-06873600および薬学的に許容できるその塩は、2018年2月22日に公開の国際公開WO2018/033815号中に開示されている。この参考文献の内容は、その全体が本明細書中に参考として組み込まれている。
6~8週齢の雌のC57BL/6マウスはJackson Laboratoriesから購入した。すべての動物はPfizerの無病原体動物施設に収容し、実験は施設動物実験委員会(IACUC)指針に従ったプロトコルに従って実施した。
B16F10黒色腫細胞系はアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)から購入した。指数増殖期で増殖中の無病原体細胞を収穫して腫瘍接種に使用した。
C57BL/6マウスを、0.1mLのPBS中の0.5×105個のB16F10細胞を用いて、右脇腹に皮下接種した。腫瘍が標的サイズに達した際、マウスを処置群へとランダム化した。処置はランダム化と同じ日に開始した。腫瘍サイズはカリパスを使用して二次元において様々な間隔で測定し、体積は以下の式を使用して立方ミリメートルで計算した:V=0.5L×W2[式中、Lは腫瘍の最長直径であり、WはLに垂直な直径である]。体重も記録した。
結果を図8に示す。図8に示すように、CD47/PD-L1二重特異性BsAb3(黒三角形)およびCDK2/4/6阻害剤PF-06873600(白四角)の処置はどちらも、アイソタイプ対照(黒丸)と比較してB16F10黒色腫腫瘍成長を遅延させ、CD47/PD-L1二重特異性mAbとPF-06873600(白菱形)との組合せは、CD47/PD-L1二重特異性mAbおよびPF-06873600の薬剤の個々よりも高い有効性を有していた。
CD47/PD-L1二重特異性mAbとCDK2/4/6阻害剤との組合せ処置で観察された有効性の増加は、PF-06873600の投与に応答した、フローサイトメトリーによってB16F10腫瘍細胞上のCD47およびPD-L1の発現の増加を示したデータと一致している(データ示さず)。
開示した教示は様々な応用、方法、キット、および組成物を参照して記載されているが、本明細書および以下の特許請求した発明の教示から逸脱せずに様々な変化および改変を行うことができることが理解されよう。前述の実施例は、開示した教示をより良好に例示するために提供し、本明細書中に提示する教示の範囲を制限することを意図しない。本教示をこれらの例示的な実施形態の観点から記載したが、当業者は、これらの例示的な実施形態の数々の変形および改変が必要以上の実験を行わずに可能であることを容易に理解するであろう。すべてのそのような変形および改変が本教示の範囲内にある。
特許、特許出願、論文、教科書など、およびそれ中に引用されている参考文献を含む、本明細書中に引用したすべての参考文献は、既に組み込まれていない場合に限り、その全体が本明細書中に参考として組み込まれている。それだけには限定されないが定義した用語、用語の用法、記載した技法などを含めた、組み込まれた文献および同様の資料のうちの1つまたは複数が本出願とは異なるまたは矛盾する場合は、本出願が支配する。
前述の説明および実施例は本発明の特定の具体的な実施形態を詳述し、本発明者らによって企図される最良の形態を記載する。しかし、前述の説明が文面上はいかに詳細であるように見えようとも、本発明を多数の方法で実施してよく、本発明は添付の特許請求の範囲およびその任意の均等物に従って解釈されるべきであることが理解されたい。
実施形態が言葉「含む(comprising)」を用いて本明細書中に記載されている場合はいつでも、「からなる(consisting of)」および/または「から本質的になる」に関して記載されるその他の類似の実施形態も提供されることを理解されよう。
本発明の態様または実施形態がマーカッシュ群または他の代替物の群分けの観点から記載されている場合、本発明は、全体として列挙される群全体だけでなく、群のそれぞれのメンバー個々および主群のすべての可能な部分群、および群メンバーのうちの1つまたは複数が存在しない主群も包含する。本発明はまた、特許請求した発明中の群メンバーの任意の1つまたは複数の明確な排除も想定する。
本明細書中に記載の処置の方法に言及する実施形態では、そのような実施形態は、その処置において使用するため、またはその処置において使用するための医薬品の製造のための更なる実施形態でもある。
別段に定義しない限りは、本明細書中で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の技術者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。矛盾する場合は、定義を含めて本明細書が支配する。本明細書および特許請求の範囲全体にわたって、単語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」などの変形は、記述した整数または整数群の包含を暗示するが、任意の他の整数または整数群の排除を暗示しないことを理解されたい。内容によりそうでないことが必要でない限りは、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。用語「たとえば(e.g.)」または「たとえば(for example)」に続く任意の例は、網羅的または限定的であることを意味しない。複数の選択肢の列挙(たとえば「A、B、またはC」)のコンテキストにおいて使用する場合の用語「または」は、内容により明らかにそうでないと指示されない限りは、選択肢のうちの任意の1つまたは複数を含むと解釈されるべきである。
例示的な方法および材料を本明細書中に記載するが、本明細書中に記載のものに類似または等価な方法および材料も、本発明の実施または試験において使用することができる。材料、方法、および実施例は例示的のみであり、限定することを意図しない。