JP7336826B2 - 車両構造 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車などの車両構造、より詳しくは、車両のリヤホイールハウスおよびその周辺部の構造に関する。
車両構造の具体例を図3に示す。
図3に示す車両構造Aeは、後輪9の上方に位置して後輪9を覆うリヤホイールハウス1を備えている。なお、同図(a),(c)は、同図(b)の仮想線で示すサイドアウタパネル4を省略した図である。
リヤホイールハウス1は、車幅方向内方側および外方側にそれぞれ位置するインナパネル10およびアウタパネル11を備え、かつこれらは、上向き突出状のホイールハウスフランジ部10a,11aどうしを対向接触させ、かつ溶接することにより接合されている。
このようなリヤホイールハウス1は、車両走行時に後輪9から上向きの突き上げ力Fを受ける場合がある。そこで、その対応手段として、ホイールハウスフランジ部10a,11aとピラー部2の途中部に設けられた受け部20とを、ブレース3Eを介して橋渡し接続し、前記した突き上げ力Fをピラー部2の受け部20に伝達させる構造が採用されている。ブレース3Eは、軽量かつ剛性が高いものとすることが望ましく、断面略ハット状部材を用いて構成されている。
しかしながら、前記従来の車両構造Aeにおいては、次に述べるように改善すべき余地がある。
すなわち、ブレース3Eは、一対のフランジ板部30の下部がホイールハウスフランジ部10a,11aに対向接触した状態に設定され、かつこれらの部分にスポット溶接が施されている。このため、ブレース3Eの剛性が高い主壁部32の下部は、ホイールハウスフランジ部10a,11aからは適当な寸法Lbだけ離間した配置となっている。これでは、後輪9から上向きの突き上げ力Fが発生した際に、この突き上げ力Fはブレース3Eの主壁部32を介してピラー部2の受け部20に効果的に伝達されない。突き上げ力Fは、一対のフランジ板部30を介して伝達するものの、これら一対のフランジ板部30は、一対の側壁部31を両端に有する主壁部32と比較すると、剛性が低いからである。また、一対のフランジ板部30とホイールハウスフランジ部10a,11aとの当接面積(接合面積)は小さく、その連結強度を高めることも難しいからである。このようなことから、リヤホイールハウス1の突き上げ力Fに対する機械的強度は十分であるとはいえず、改善の余地がある。
これを解消する手段としては、ブレース3Eの厚肉化や大型化を図ることが考えられるが、このような手段を採用したのでは、車両重量の増加、これに起因する燃費性能の低下、および製造コストの上昇などを招いてしまう。
特開2007-62590号公報 特開平11-192973号公報
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、車両重量の増加や製造コストの上昇などを抑制しつつ、後輪からリヤホイールハウスへの突き上げ力に対する機械的強度を優れたものとすることが可能な車両構造を提供することを、その課題としている。
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
本発明により提供される車両構造は、後輪の上方の車幅方向内方側および外方側にそれぞれ位置するインナパネルおよびアウタパネルの上部に連設され、かつ互いに対向して接合されている上向き突出状のホイールハウスフランジ部を有しているリヤホイールハウスと、前記ホイールハウスフランジ部に下部が接合され、かつ上部が前記リヤホイールハウスの上方に位置する車体構成部材に接合されており、先端に一対のフランジ板部が繋がった一対の側壁部が主壁部の両端に連設されているとともに、前記主壁部は前記各フランジ板部よりも幅広である断面略ハット状部材を用いて構成されたブレースと、を備えている、車両構造であって、前記ブレースは、前記主壁部の下部が前記ホイールハウスフランジ部に対向接触するように重ねられて接合されており、前記車体構成部材として、前記リヤホイールハウスの前部またはその近傍から上方に起立するピラー部を具備し、かつこのピラー部の上下高さ方向途中部分には、車両後方側に突出する受け部が設けられているとともに、この受け部には、前記ピラー部の車両後方側に位置して車両前後方向に延びるクォータパネルインナの一部が重ねられて連結されており、前記ブレースの前記主壁部の上部は、前記受け部および前記クォータパネルインナの前記一部に重ねられた状態で接合されており、前記ブレースの前記主壁部は、前記ホイールハウスフランジ部との接合箇所から前記受け部および前記クォータパネルインナの前記一部との接合箇所までの間を直状に延びていることを特徴としている。
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、ホイールハウスフランジ部には、断面略ハット状部材を用いて構成されたブレースの主壁部が対向接触して接合されているため、これらの接合面積を大きくとり、これらの機械的な連結強度を高めることができる。また、ブレースは、剛性が高い主壁部がホイールハウスフランジ部の位置からその上方に延びた構成となるため、後輪からの上向きの突き上げ力を、前記主壁部を介してリヤホイールハウスの上方に位置する車体構成部材に対して効果的に伝達させることができる。このようなことから、前記構成によれば、後輪からリヤホイールハウスへの突き上げ力に対する機械的強度を優れたものとすることが可能である。
ブレースの全体を厚肉化したり、大型化する必要はないため、重量の増加や製造コストの上昇も適切に抑制することが可能である。
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
(a)は、本発明に係る車両構造の一例を示す要部斜視図であり、(b)は、(a)のIb-Ib断面図であり、(c)は、(a)のIc-Ic断面図である。 (a)は、車両構造の他の例を示す要部斜視図であり、(b)は、(a)のIIb-IIb断面図であり、(c)は、(a)のIIc-IIc断面図であり、(d)は、(a)に示すブレースの部分斜視図である。 (a)は、従来技術の一例を示す要部斜視図であり、(b)は、(a)のIIIb-IIIb断面図であり、(c)は、(a)のIIIc-IIIc断面図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
なお、理解の容易のため、以下の説明においては、図3に示した従来技術と同一または類似の要素には、前記従来技術と同一の符号を適宜付している。
図1に示す車両構造Aは、車両の後輪9の上方に位置するリヤホイールハウス1、このリヤホイールハウス1の前部またはその近傍から上方に起立するピラー部2(Cピラー部)、およびリヤホイールハウス1用のブレース3を備えている。
なお、図1(a),(c)は、先に述べた図3(a),(c)と同様に、図1(b)に示すサイドアウタパネル4を省略した図である。この点は、後述する図2(a),(c)も同様である。
リヤホイールハウス1は、後輪9の上方の車幅方向内方側および外方側にそれぞれ位置するインナパネル10およびアウタパネル11を互いに接合させたものである。この接合は、インナパネル10およびアウタパネル11にそれぞれ設けられた上向き突出状のホイールハウスフランジ部10a,11aを対向接触させ、かつスポット溶接などの溶接を施すことにより図られている。
ブレース3は、リヤホイールハウス1の取付け強度を高めるなどの役割を果たす部材であり、金属製の断面略ハット状部材3’を用いて構成されている。本実施形態のブレース3は、その全体が断面略ハット状部材3’により構成されている。図1(c)によく表れているように、断面略ハット状部材3’は、一対のフランジ板部30が繋がった一対の側壁部31が、主壁部32の両端に起立状態で連設された構造である。
ブレース3は、車両の上下高さ方向に延び、かつリヤホイールハウス1の上部と、ピラー部2の途中部に設けられて車両後方側に部分的に突出した受け部20とを橋渡し接続するように設定されている。ただし、この設定に際しては、ブレース3の主壁部32の下部が、ホイールハウスフランジ部10a,11aの一方に対向接触し、一対のフランジ板部30がホイールハウスフランジ部10a,11aよりも車幅方向外方側に離間する構成、すなわちブレース3(断面略ハット状部材3’)が車幅方向外方側を向いて開口する向きであり、図3に示したブレース3とは反対の向きに設定されている。主壁部32の下部は、ホイールハウスフランジ部10a,11aに対して溶接部Wを介して接合されており、主壁部32は、この接合箇所からその上方に起立している。
ブレース3の主壁部32の上部は、ピラー部2の受け部20に重ねられて溶接されている(溶接部の図示は省略)。なお、受け部20には、ピラー部2の車両後方側に位置して車両前後方向に延びるクォータパネルインナ5の一端部が連結されており、強度の向上が図られている。ブレース3の上部と接合されているピラー部2は、本発明でいう車体構成部材の一例に相当する。
本実施形態の車両構造Aによれば、次の作用が得られる。
まず、ホイールハウスフランジ部10a,11aには、ブレース3の主壁部32が対向接触して接合されている。このため、これらの接合面積を大きくとり、ホイールハウスフランジ部10a,11aとブレース3との機械的な連結強度を高めることが可能である。また、ブレース3は、剛性が高い主壁部32がホイールハウスフランジ部10a,11aとの接合箇所からその上方に延びた構成となる。したがって、後輪9からリヤホイールハウス1に上向きの突き上げ力Fが作用した場合に、この突き上げ力Fを、主壁部32を介してピラー部2の受け部20に対して効果的に伝達させることが可能である。このようなことから、本実施形態の車両構造Aにおいては、前記した突き上げ力Fに対する機械的強度を優れたものにすることが可能である。
一方、ブレース3の全体を厚肉化したり、大型化する必要はない。このため、車両重量の増加や製造コストの上昇も適切に抑制することが可能である。
図2は、車両構造の他の実施形態を示している。同図において、前記実施形態と同一または類似の構成要素には、前記実施形態と同一の符号を付し、重複説明は省略する。
図2に示す車両構造Aaにおいては、ブレース3Aが湾曲した形態とされており、このブレース3Aの上下高さ方向途中部は、上部および下部よりも適当な寸法Laだけ車幅方向外方側に位置するようにされている。また、ブレース3Aの下部は、このブレース3Aの下端開口部34を塞ぐ終端壁部35を有する形態とされている。図2(d)は、ブレース3Aが、図2(a)とは相違する向き(上下反対)で示されており、この図2(d)に示すように、ブレース3Aは、断面略ハット状部材3A’を用いて構成されている。本来的には、このブレース3Aの終端は下端開口部34として開口しているものの、本実施形態においては、この部分を塞ぐ終端壁部35を有し、ブレース3Aの終端は、部分的にボックス断面構造とされている。また、終端壁部35に繋がった左右一対の接合用フランジ部36も設けられている。好ましくは、終端壁部35および接合用フランジ部36は、ブレース3Aの他の部分と一体形成されており、ブレース3Aの全体は、単一部材によって構成されている。
ブレース3Aは、このブレース3Aの下部に相当する終端壁部35および接合用フランジ部36が、ホイールハウスフランジ部10a,11aに対向接触するように設定された上で、このホイールハウスフランジ部10a,11aに溶接部Waを介して接合されている。本実施形態(図2(a)に示す構成)においては、終端壁部35の上側に主壁部32が繋がるように設定されているが、これとは逆に終端壁部35の下側に主壁部32が繋がるように設定してもよい。
ホイールハウスフランジ部10a,11aの一部には、他の部分よりも上下幅が大きくされた拡幅部を設け、かつこの拡幅部に終端壁部35や接合用フランジ部36を接合させる構成とすることが可能である。
一方、ブレース3Aの上部は、前記実施形態と同様に、ピラー部2の受け部20に溶接されている。図2(a)においては、ブレース3Aの上端が受け部20に突き当てられた状態に設定された上で溶接されているが、これに限定されない。
本実施形態によれば、次の作用が得られる。
まず、ブレース3Aは、断面略ハット状部材3A’を用いて構成されているが、その下部は、下端開口部34が終端壁部35によって塞がれた部分的なボックス断面構造とされている。このため、ブレース3Aの下部とホイールハウスフランジ部10a,11aとの対向接触面積(接合面積)を大きくとるなどして、これらの機械的な連結強度を高めることができる。また、終端壁部35をホイールハウスフランジ部10a,11aに対向接触させた構成によれば、ブレース3Aの主壁部32の下端もホイールハウスフランジ部10a,11aに実質的に当接することとなる。このため、後輪9からリヤホイールハウス1に上向きの突き上げ力Fが発生した場合に、この突き上げ力Fをブレース3Aの主壁部32に適切に作用させ、ピラー部2の受け部20に効果的に伝達させることも可能となる。このようなことから、本実施形態の車両構造Aaにおいても、前記した突き上げ力Fに対する機械的強度を優れたものにすることができる。
さらに、前記実施形態と同様に、ブレース3Aの全体を厚肉化したり、大型化する必要はなく、車両重量の増加や製造コストの上昇も適切に抑制することが可能である。
その他、本実施形態によれば、ブレース3Aが車幅方向外方側に湾曲しているため、このブレース3Aの車幅方向内方側の車室内側には空間部を確保することが可能である。したがって、前記空間部を利用し、車室内側に、たとえば物入れ用の凹部を形成したり、あるいはアームレストなどの部材を設置することが可能となる。
さらに、ブレース3Aを湾曲させたことにより、終端壁部35や接合用フランジ部36を車幅方向外方側に露見させることができ、それらの部位にスポット溶接などの溶接が施し易くなる利点も得られる。
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る車両構造の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
本発明でいう接合は、スポット溶接の他、アーク溶接などの各種の溶接に加え、ボルト締結などをも含む概念である
A,Aa 車両構造
1 リヤホイールハウス
10 インナパネル(リヤホイールハウスの)
10a ホイールハウスフランジ部
11 アウタパネル(リヤホイールハウスの)
11a ホイールハウスフランジ部
2 ピラー部(車体構成部材)
3,3A ブレース
3’,3A’ 断面略ハット状部材
30 フランジ板部(断面略ハット状部材の)
31 側壁部(断面略ハット状部材の)
32 主壁部(断面略ハット状部材の)
34 下端開口部(ブレースの)
35 終端壁部(ブレースの)
9 後輪

Claims (1)

  1. 後輪の上方の車幅方向内方側および外方側にそれぞれ位置するインナパネルおよびアウタパネルの上部に連設され、かつ互いに対向して接合されている上向き突出状のホイールハウスフランジ部を有しているリヤホイールハウスと、
    前記ホイールハウスフランジ部に下部が接合され、かつ上部が前記リヤホイールハウスの上方に位置する車体構成部材に接合されており、先端に一対のフランジ板部が繋がった一対の側壁部が主壁部の両端に連設されているとともに、前記主壁部は前記各フランジ板部よりも幅広である断面略ハット状部材を用いて構成されたブレースと、
    を備えている、車両構造であって、
    前記ブレースは、前記主壁部の下部が前記ホイールハウスフランジ部に対向接触するように重ねられて接合されており、
    前記車体構成部材として、前記リヤホイールハウスの前部またはその近傍から上方に起立するピラー部を具備しており、かつこのピラー部の上下高さ方向途中部分には、車両後方側に突出する受け部が設けられているとともに、この受け部には、前記ピラー部の車両後方側に位置して車両前後方向に延びるクォータパネルインナの一部が重ねられて連結されており、
    前記ブレースの前記主壁部の上部は、前記受け部および前記クォータパネルインナの前記一部に重ねられた状態で接合されており、
    前記ブレースの前記主壁部は、前記ホイールハウスフランジ部との接合箇所から前記受け部および前記クォータパネルインナの前記一部との接合箇所までの間を直状に延びていることを特徴とする、車両構造。
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