JP7310249B2 - 複合材料の解析方法、及び複合材料の解析用コンピュータプログラム - Google Patents

複合材料の解析方法、及び複合材料の解析用コンピュータプログラム Download PDF

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本発明は、コンピュータを用いた分子動力学法による複合材料の解析方法、及び複合材料の解析用コンピュータプログラムに関する。
従来より、ゴム材料等の複合材料のナノ構造の破壊のメカニズムを解明するために、分子動力学による数値解析が種々提案されている。
分子動力学による数値解析において、例えばゴム材料の変形に伴うナノ構造の破壊を解析する場合、ゴム材料中のポリマー粒子の粒子間結合を破断して消去する必要がある。これに対して、この粒子間結合の破断を消去することなく破壊を解析する手法が提案されている(特許文献1)。
上記手法によれば、粒子間結合で結合された少なくとも一対の粒子の粒子間距離に設定された閾値以上の場合に、粒子間距離が閾値未満の場合に対して粒子間結合の結合エネルギー及び結合力の少なくとも一方を低下させる破断結合演算用関数を用いて、解析用モデルの数値解析を実行する。したがって、破断に伴う粒子間結合の物理的な消滅を防ぐことができるので、粒子間結合を物理的に消滅させずに疑似的な破断を再現することが可能となり、数値解析時に破断した粒子間結合の破断箇所を特定することが可能となる、とされている。
特開2019-39774号公報
ところで、タイヤの耐摩耗性能を向上させるゴム材料の開発を加速させるためには、ゴム材料の変形に伴うナノ構造の破壊のメカニズムを明らかにすることが一助となる。変形前後のゴム材料のナノ構造の破壊を解析することにより、実際のタイヤに用いられるフィラー充填ゴムの破断強度向上の材料開発を加速させることができる。
上記手法では、ゴム材料の変形に伴うナノ構造の破壊を解析するためには、ゴム材料中のポリマー粒子の粒子間結合の破断箇所を特定することはできるが、粒子間結合の破断箇所を特定できたとしても、ゴム材料全体における破断を予測することはできない。すなわち、ナノ構造におけるポリマー粒子の粒子間結合の破断の有無を予測することはできるが、ゴム材料全体における破断の有無とその破断特性を評価することはできない。
そこで、本発明の目的は、分子動力学法を用いて複合材料の破断特性を評価することのできる複合材料の解析方法及び複合材料の解析用コンピュータプログラムを提供することを目的とする。
本発明の一態様は、コンピュータが、分子動力学法により複合材料の解析を行う方法である。当該方法は、
前記複合材料中の第1物質をモデル化した第1物質モデル、及び前記複合材料中の第2物質をモデル化した第2物質モデルを含む複合材料の解析用モデルを作成する第1ステップと、
前記解析用モデルに伸張、圧縮、及びせん断の少なくともいずれか1つの変形をさせるように前記解析用モデルに入力を与えたときの前記解析用モデルの応答解析をする第2ステップと、
前記応答解析で得られる前記解析用モデルから散逸するエネルギーの散逸の程度に関する情報に基づいて、前記複合材料の破断特性を評価する第3ステップと、を備える。
前記第2ステップでは、前記解析用モデルを引っ張って一定の伸びを維持するように前記入力を与えることにより、伸張時の前記解析用モデルの緩和応答を解析する、ことが好ましい。
前記散逸の程度に関する情報は、前記解析用モデル発生する応力、及び、前記入力を与えることで前記解析用モデルに与えられる入力エネルギー量に対する前記解析用モデルに蓄積されるエネルギー量の比の少なくとも一方を含む、ことが好ましい。
前記複合材料は、前記第1物質を母材として、前記第2物質が前記母材中に粒子として分布する構成を有し、
前記散逸の程度に関する情報は、少なくとも前記第1物質モデル発生する応力、及び、少なくとも前記第1物質モデルに与えられる入力エネルギー量に対する前記第1物質モデルに蓄積されるエネルギー量の比の少なくとも一方を含む、ことが好ましい。
前記第3ステップでは、前記散逸の程度が大きいほど前記破断特性に優れる評価を与える、ことが好ましい。
前記第3ステップでは、前記破断特性の評価として、前記複合材料の破断伸びあるいは破断エネルギーを算出する、ことが好ましい。
前記第2ステップでは、前記解析用モデルに与える前記入力の大きさを変更して前記応答解析を複数回行い、
前記第3ステップでは、複数回の前記応答解析で得られる前記散逸の程度に基づいて前記破断特性を評価する、ことが好ましい。
前記第1ステップでは、少なくとも、前記第1物質モデル及び前記第2物質モデルの配置を変更した複数のモデルを前記解析用モデルとして作成し、
前記複合材料の解析方法は、さらに、前記解析用モデルのそれぞれにおいて、前記第2ステップ及び前記第3ステップを行うことによって得られた前記解析用モデルのそれぞれに対応した前記破断特性の評価を1つに統合する第4ステップを備える、ことが好ましい。
前記第2ステップでは、前記解析用モデルに与える前記入力として入力1及び前記入力1と異なる条件の入力2を別々に与えて互いに異なる応答解析を行い、
前記第3ステップでは、前記入力1に対応した前記破断特性の評価と、前記入力2に対応した前記破断特性の評価とを統合することにより、前記破断特性を評価する、ことが好ましい。
前記第1ステップでは、前記解析用モデルの他に、前記複合材料の一部を修正した材料を対象として、前記解析用モデルの一部を修正した修正解析用モデルを作成し、
前記修正解析用モデルを用いて前記第2ステップ及び前記第3ステップを行うことにより、前記解析用モデルを用いた前記破断特性の評価に対する前記修正解析用モデルを用いた前記破断特性の変化を求める、ことが好ましい。
さらに、本発明の他の一態様は、前記複合材料の解析方法をコンピュータに実行させる複合材料の解析用コンピュータプログラムである。
上述の複合材料の解析方法及び複合材料の解析用コンピュータプログラムによれば、複合材料の破断特性を評価することができる。
一実施形態の複合材料の解析方法のフローの一例を示す図である。 一実施形態の複合材料の解析方法で用いる複合材料の解析用モデルの一例を示す概念図である。 一実施形態の複合材料の解析方法で用いる架橋結合鎖の一例を示す図である。 一実施形態の複合材料の解析方法で行う解析用モデルの応答解析の一例を説明する図である。 一実施形態の複合材料の解析方法において用いる複合材料の破断の判定の有無を説明する図である。 一実施形態の複合材料の解析方法を行う解析装置の機能ブロック図である。
以下、本発明の実施形態の複合材料の解析方法及び複合材料の解析用コンピュータプログラムを添付の図に基づいて説明する。
図1は、一実施形態の複合材料の解析方法のフローの一例を示す図である。図1に示す解析方法は、コンピュータを用いた分子動力学法による複合材料の解析方法である。すなわち、複合材料の解析は、コンピュータによって実行される。この複合材料の解析方法は、図1に示すように、複合材料の解析用モデルを作成するステップ(ST10)と、解析用モデルに入力を与えて分子動力学による応答解析を行うステップ(ST12)と、解析用モデルにおけるエネルギーの散逸の程度に関する情報に基づいて、複合材料における破断特性を評価するステップ(ST14)と、を主に備える。
ここで、複合材料は、第1物質と第2物質を含む。第1物質は、例えば、ポリマー(高分子材料)である。第2物質は、例えば素材原料に添加するフィラー粒子である。複合材料は、第1物質を母材として、第2物質が母材中に分布している構造を有することが好ましい。以下の説明では、第1物質はポリマーであり、第2物質はフィラー粒子である場合を例にして説明する。なお、複合材料の形態は、以下に説明する形態の他に、複合材料として、複数種のポリマーで構成されるブレンドポリマーの形態を挙げることができる。例えば、海島構造、ラメラ構造をとるブレンドポリマーが挙げられる。海島構造の場合、第1物質を海島構造の海部分を構成する高分子とし、第2物質を海島構造の島部分を構成する高分子として扱うとよい。ブレンドポリマーは、結晶性高分子と非結晶性高分子からなるものであってもよい。この場合、第1物質を非結晶性高分子とし、第2物質を結晶性高分子として扱うとよい。さらに、複合材料の形態は、熱可塑性エラストマーのように一分子中にハードセグメントの相とソフトセグメントの相を有する形態も挙げることができる。この場合、第1物質をソフトセグメントの相とし、第2物質をハードセグメントの相として扱うことができる。
(解析用モデルの作成)
複合材料の解析用モデルを作成するステップでは、複合材料中の第1物質をモデル化した第1物質モデル、及び複合材料中の第2物質をモデル化した第2物質モデルを含む複合材料の解析用モデルを作成する。
図2は、複合材料の解析用モデルの一例を示す概念図である。図2に示すように、解析用モデル1は、例えば、略立方体形状の仮想空間であるモデル作成領域内に粒子モデルが作成される。モデル作成領域は、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸方向に広がる三次元空間となっている。解析用モデル1は、複数のフィラー粒子11aでモデル化された4つのフィラーモデル11A,11B,11C,11Dと、複数のポリマー粒子21a及び結合鎖21bがモデル化された4つのポリマーモデル21と、を含んでいる。フィラーモデル11A,11B,11C,11Dは、総称して説明する場合フィラーモデル11として説明する。なお、図2に示す例では、解析用モデル1が、4つのフィラーモデル11A,11B,11C,11Dがモデル化された例について説明するが、モデル化されるフィラーモデルの数に制限はない。解析用モデル1は、3つ以下のフィラーモデル11を含んでいてもよく、4つを超えるフィラーモデル11を含んでいてもよい。また、図2においては、4つのポリマーモデル21のみを示しているが、解析用モデル1では、複数のポリマーモデル21がモデル作成領域内の全域に亘って存在している。図2に示す例では、モデル作成領域が、略直方体形状の仮想空間である例について示しているが、球状、楕円状、直方体形状、多面体形状など任意の形状であってもよい。
フィラーモデル11は、複数のフィラー粒子11aがそれぞれ略球状体に集合した状態でモデル化されている。また、フィラーモデル11は、互いに所定間隔をあけて離れた状態で配置されている。なお、複数のフィラーモデル11同士は、相互に凝集した状態で外縁部が共有結合鎖によって相互に連結されていてもよい。
モデル化されるフィラー粒子としては、例えば、カーボンブラック粒子、シリカ粒子、及びアルミナ粒子などが含まれる。フィラー粒子11aは、フィラーを構成する複数の原子が集合したものをモデル化したものである。また、複数のフィラー粒子11aが集合したフィラー粒子群がフィラーモデル11A,11B,11C,11Dとして形成される。
フィラー粒子11aは、複数のフィラー粒子11a間の結合鎖(不図示)によって相対位置が特定されている。この結合鎖は、フィラー粒子11a間の結合距離である平衡長とばね定数とが定義されたバネとしての機能を有し、各フィラー粒子11a間を拘束している。結合鎖は、フィラー粒子11aの相対位置及び捻り、曲げなどによって力が発生するポテンシャルが定義されている。フィラーモデル11は、フィラーを分子動力学で取り扱うためのフィラー粒子11aの質量、体積、直径及び初期座標、集合した個数などを含む数値データで定義される。フィラーモデル11の数値データは、コンピュータに入力される。
ポリマーモデル21にモデル化されるポリマーとしては、例えば、ゴム、樹脂、及びエラストマーなどが含まれる。ポリマー粒子21aは、複数のポリマーの原子が集合したものをモデル化したものである。また、複数のポリマー粒子21aが結合鎖により連結したポリマー粒子群がポリマーモデル21として形成される。すなわち、ポリマーモデル21は、複数のポリマー原子及び複数のポリマー原子の集合体であるポリマー粒子21a同士が互いに結合鎖で連結した構成を有し、このポリマーモデル21が、モデル作成領域内に所定密度で配置されている。結合鎖は、例えば平衡長とばね定数とが定義されたバネとしての機能を有する。ポリマー粒子21aは、複数のポリマー粒子21a間の結合鎖21bによって結合されて相対位置が特定されている。この結合鎖21bは、ポリマー粒子21a間の結合距離である平衡長とばね定数とが定義されたバネとしての機能を有し、各ポリマー粒子21a間を拘束している。結合鎖21bは、ポリマー粒子21aの相対位置及び捻り、曲げなどによって力が発生するポテンシャルが定義されている。図3は、実施形態で用いる架橋結合の一例を示す図である。図3に示すように、3つのポリマーモデル21がポリマー粒子21a間で架橋結合鎖21cが与えられる。この架橋結合鎖21cは、ポリマー粒子21a間の結合距離である平衡長とばね定数とが定義されたバネとしての機能を有し、各ポリマー粒子21a間を拘束している。
また、ポリマーには、フィラーとの親和性を高める変性剤が必要に応じて配合される。この変性剤としては、例えば、水酸基、カルボニル基、及び原子団の官能基などが含まれる。この変性剤に対応して、ポリマーモデル21とフィラーモデル11の間に変性剤粒子をモデル化した粒子モデルと、結合鎖(不図示)が配置される。
このポリマーモデル21は、ポリマーを分子動力学で取り扱うための数値データ(ポリマー粒子21aの質量、体積、直径及び初期座標などを含む)で定義される。ポリマーモデル21の数値データは、パラメータとしてコンピュータに入力される。
なお、解析用モデル1では、フィラー粒子11a同士の粒子間、ポリマー粒子21a間、フィラー粒子11aとポリマー粒子21aの粒子間の少なくとも一部の粒子間に相互作用を与える。場合によっては、全ての粒子間に力のやり取りを行う相互作用力を与えてもよい。フィラー粒子11aとポリマー粒子21a間の相互作用として、化学的な相互作用(引力)を与えてもよく、物理的な相互作用(ボンド結合)を与えてもよい。
図示される結合鎖21b及び架橋結合鎖21cを含む結合鎖、さらには、結合鎖で連結されていない粒子モデル間にも後述するポテンシャルが与えられることで、相互作用が付与される。これにより、相互作用により定まる力が粒子モデル間に働く。
複合材料においてポリマーは複数の種類のポリマーで構成されてもよく、この場合、解析用モデル1における異なる種類のポリマー粒子21a間に相互作用を与えてよい。この場合のフィラー粒子11 aとポリマー粒子21aの間の相互作用は、種類の異なるポリマー粒子21a間で異ならせてよい。
粒子間の相互作用は、例えば、下記式に示すレナード-ジョーンズポテンシャルで規定される。このとき、下記式のσ、εの値が適宜調整される。ポテンシャルを計算する上限距離(カットオフ距離)を大きくすることで、遠距離まで働く力を調整することができる。なお、フィラー粒子11a間の相互作用及びポリマー粒子21a間の相互作用が一定値になるまで順次、フィラー粒子11a間の相互作用及びポリマー粒子21a間の相互作用のパラメータを小さくすることが好ましい。レナード・ジョーンズポテンシャルのσ、εを大きな値から徐々に本来の値に近づけることにより、分子を不自然な状態に導かない穏やかな速度で粒子の接近を行うことができる。また、カットオフ距離も徐々に小さくすることにより、適正な範囲で相互作用における力を調整できる。
Figure 0007310249000001
(応答解析)
解析用モデル1に入力を与えて行う分子動力学による応答解析は、解析用モデル1の応答が時間の経過に伴ってどのように変化するかを調べる解析であり、例えば、解析用モデル1を伸張させるように入力を与えたときの解析用モデル1の挙動に関する応答解析である。図4は、一実施形態で行う解析用モデル1の応答解析の一例を説明する図である。
図4に示す応答解析の例では、解析用モデル1に上下方向に伸張するように入力を与え、このときに、ポリマーモデル21及びフィラーモデル11A~11Dがどのように時間とともに移動していくかを時系列に解析をする。
ポリマーモデル21及びフィラーモデル11A~11Dのそれぞれは、質量を有するので、解析用モデル1に与えられた入力に起因する力を受けることにより、運動方程式に従って移動を開始するが、このとき、相互作用や結合鎖により移動の制限を受けながら移動をする。このような移動を、所定の時間間隔毎に計算することにより、時間的な応答を計算する。
例えば、解析用モデル1に与える入力として、変位を階段状に与えた後、伸張させた状態を維持させた場合、ポリマーモデル21及びフィラーモデル11A~11Dは時間とともに移動し、やがてある一定の状態で略静止する。変位を階段状に与える場合、大きな伸張速度が与えられる。変位は、解析用モデル1に、例えば200%、300%の伸びを実現するように与える。したがって、応答解析では、ポリマーモデル21及びフィラーモデル11A~11Dのそれぞれが移動を介してから略静止するまでの過程を時系列で解析することができる。このときのポリマーモデル21及びフィラーモデル11A~11Dに作用する力を計算することにより解析用モデル1に発生する応力を計算することができる。また、解析用モデル1に蓄積されるエネルギーを計算することができる。さらに、与えた入力に対応する入力エネルギーから蓄積されるエネルギーを差し引くことにより、解析用モデル1から散逸するエネルギー量を計算することもできる。すなわち、応力の緩和過程を計算することができる。
このような伸張は、解析用モデル1に一軸変形、あるいは二軸変形の伸長を含む。
また、上記実施形態の応答解析は、伸張変形の解析であるが、伸張変形の解析に制限されない。例えば、応答解析ができる限りは、解析用モデル1を圧縮あるいはせん断させる解析であってもよい。また、伸張、圧縮、及びせん断の少なくともいずれか2つの変形を組み合わせた解析であってもよい。
また、応答解析は、階段状の入力を与えて、緩和応答を解析する形態に制限されず、三角波や正弦波の入力(変位)を与えて、そのときの解析用モデル1の振動を解析(繰返し伸長解析)する形態であってもよい。三角波や正弦波の入力(変位)の場合、入力する振動数は、複合材料が用いられる構造体の実際の使用状況における振動数に対応するように設定されることが好ましく、また、入力のレベルも、複合材料が用いられる構造体の実際の使用状況における最大歪み、亀裂先端での歪み、あるいはみかけ歪みに対応するように設定されることが、実際の構造体の実際の使用状況における複合材料の破断特性を評価する点から好ましい。
なお、応答解析において、ポリマーモデル21の結合鎖21b及びや架橋結合鎖21cを含む結合鎖は、破断する値として予め定めた閾値以上の長さになる場合もある。粒子間距離が閾値以上の長さになる場合、一実施形態によれば、上述の従来技術で説明したように、粒子間距離が閾値未満の場合に対して粒子間結合の結合エネルギー及び結合力の少なくとも一方を低下させる破断結合演算用関数を、結合鎖に適用してもよい。また、上記破断結合演算用関数を適用しなくてもよい。
(破断特性を評価)
破断特性の評価では、上記応答解析で得られる解析用モデル1から散逸するエネルギーの散逸の程度に関する情報に基づいて、複合材料の破断特性を評価する。上述の応答解析では、ポリマーモデル21及びフィラーモデル11A~11Dは、モデル合計のポテンシャルが低減するように移動するので、入力により解析用モデル1に付与された入力エネルギーは、上記緩和応答により、ポリマーモデル21及びフィラーモデル11A~11Dの移動により散逸する。この散逸するエネルギー量が大きいほど、ポリマーモデル21及びフィラーモデル11A~11Dは入力されたエネルギーの蓄積量は少ないので、破断を生じさせ難い。したがって、解析用モデル1から散逸するエネルギーの散逸の程度に関する情報に基づいて、複合材料の破断特性を評価することができる。例えば、解析用モデル1において、モデルの一部を変更した場合のエネルギーの散逸の程度と、変更前のエネルギーの散逸の程度と、を比較することにより、破断特性の優劣を評価することができる。
エネルギーの散逸の程度に関する情報は、上述の緩和応答の解析の場合、解析用モデル1に発生する応力の低下、あるいは、解析用モデル1に入力された入力エネルギー量に対するエネルギーの蓄積量の比を含む。また、振動の解析の場合、ヒステリシス、入力に対する応力の位相差、損失弾性率、及び貯蔵弾性率に対する損失弾性率の比等を含む。解析用モデル1が発生する応力は、ポリマーモデル21及びフィラーモデル11A~11Dの移動により緩和するので、応力の値は、時間ともに低下する。応力は、ポリマーモデル21及びフィラーモデル11A~11Dを対象として発生する力を計算することによって求めてもよいし、実際の複合材料の破断ではポリマーの破断が主要因となることから、ポリマーモデル21のみを対象として発生する力を計算することによって求めてもよい。
複合材料の破断特性の評価は、比較する複合材料の破断特性の優劣に関する相対評価でもよいし、複合材料の破断伸び、破断エネルギー等の算出値による評価を含む。破断伸びや破断エネルギーは、例えば解析用モデル1の伸びの大きさを種々変化させて応答解析を複数回行い、解析用モデル1に入力を与えることにより与えられた入力エネルギー量に対する解析用モデル1に蓄積されるエネルギーの蓄積量の比が予め定めた値を通過する場合に破断すると判定することにより、破断伸びや破断エネルギーを求めることができる。
このように、上述の実施形態によれば、解析用モデル1を伸張、圧縮、及びせん断の少なくともいずれか1つの変形をさせるように入力を与えたときの解析用モデル1の応答解析をし、この応答解析で得られる解析用モデル1から散逸するエネルギーの散逸の程度に関する情報を算出することができるので、解析用モデル1の応答解析から複合材料の破断特性を評価することができる。
一実施形態では、上述したように、ST12において、解析用モデル1を引っ張って一定の伸びを維持するように入力(変位)を与えることにより、伸張時の解析用モデル1の緩和応答を解析することが、ポリマーモデル21及びフィラーモデル11A~11Dの移動により複合材料の緩和過程を精度よく再現することができるので、複合材料の静的破断特性の評価の点から好ましい。この場合、解析用モデル1が発生する応力の低下あるいは解析用モデル1に貯蓄されるエネルギーの蓄積量の低下によって緩和過程が大きいか小さいかを知ることができる。応力の低下が小さい場合、緩和過程が小さく、散逸するエネルギーの散逸の程度が小さくなることを意味するので、伸びを種々変えて応答解析を行ったとき、伸びに対する応力の比の低下量が所定の閾値を越えなくなるときの伸びを破断伸びと判定する。また、散逸するエネルギーの散逸の程度が小さくなる程、解析用モデル1に蓄積されるエネルギーの蓄積量が多くなるので、伸びのために解析用モデル1に与えた入力エネルギー量に対するエネルギーの蓄積量の比が予め定めた値を通過する場合に破断すると判定する。図5に示すように、緩和応答によって物理量の比が低減する場合、解析用モデル1から算出される物理量の入力に対する比を閾値と比較し、閾値を横切るか否かを判定することで複合材料の破断の有無を判定することが好ましい。また、図5に示すように、緩和中の物理量の比の応答初期の変化の傾きを用いて、複合材料の破断の有無を判定してもよい。図5は、一実施形態において用いる複合材料の破断の判定の有無を説明する図である。
この場合、エネルギーの散逸の程度に関する情報は、解析用モデル1が発生する応力、及び、解析用モデル1に入力を与えることにより与えられる入力エネルギー量に対する解析用モデル1に蓄積されるエネルギー量の比の少なくとも一方を含むことが、解析用モデル1の緩和過程を用いて精度の高い破断特性を評価する点から好ましい。応力は、上述したように、緩和過程で低下する物理量なので、エネルギーの散逸の程度が大きくなる程小さくなる。解析用モデル1から散逸するエネルギーの散逸の程度は、解析用モデル1に与えられた入力に対応する入力エネルギー量に対する蓄積されるエネルギー量の比を1から差し引くことにより求めることができる。
一実施形態によれば、複合材料は、母材(第1物質)中に粒子(第2物質)が分布する構成を有する場合、エネルギーの散逸の程度に関する情報は、少なくとも母材のモデル(第1物質モデル)が発生する応力、及び、少なくとも母材のモデルに与えられる入力エネルギー量に対する(第1物質モデル)母材のモデルに蓄積されるエネルギー量の比、の少なくとも一方を含むことが、破断特性を精度よく評価する点から好ましい。複合材料の破断は、母材自体の破断あるいは、母材と粒子との境界面からの剥離が多い。例えば、フィラーが分散したゴム材料の破断では、母材であるゴム自体の破断あるいは、母材であるゴムと粒子であるフィラーとの境界面からの剥離等が多い。
一実施形態によれば、解析用モデル1から散逸するエネルギーの散逸の程度が大きいほど破断特性に優れる評価を与える、ことが好ましい。これにより、複数の複合材料における破断特性の優劣を相対評価することができる。
また、一実施形態によれば、複合材料の破断伸びあるいは破断エネルギーを算出することが好ましい。これにより、複合材料の破断特性を数値により評価をすることができる。破断伸びあるいは破断エネルギーの算出では、例えば、解析用モデル1に蓄積するエネルギーの蓄積量の、入力によって解析用モデル1に与えられた入力エネルギー量に対する比が大きくなって閾値を越えるときに複合材料は破断すると判定して、そのときの解析用モデル1に与えた伸びによって破断伸びを求める。また、このときの解析用モデル1に蓄積されたエネルギーを破断エネルギーとして求める。
解析用モデル1の応答解析を行うとき、解析用モデル1に与える入力の大きさ、例えば、伸びの大きさを種々変更して応答解析が複数回行う。破断特性を評価するとき、複数回の応答解析で得られるエネルギーの散逸の程度に基づいて破断特性を評価することが好ましい。例えば、入力の大きさが伸びの大きさである場合、予め設定した伸びの間隔で応答解析を複数回行い、応答解析で得られるエネルギーの散逸の程度に基づいて、複合材料の破断の有無を判定することができる。
一実施形態によれば、解析用モデル1を作成するとき、少なくとも、ポリマーモデル21及びフィラーモデル11の配置を変更した複数のモデルを解析用モデル1として作成してもよい。この場合、図1に示すステップに加えて、さらに、解析用モデル1のそれぞれにおいて、解析用モデル1の応答解析及び破断特性の評価を行うことによって得られた解析用モデル1のそれぞれに対応した破断特性の評価を1つに統合するステップを備える、ことが好ましい。これにより、フィラーモデル11及びポリマーモデル21の配置のばらつきによる破断特性の評価のばらつきを抑制することができる。評価のばらつきを抑制するには、3つ以上の複数のモデルを作成して破断特性を評価することが好ましい。破断特性の評価の統合は、評価が数値である場合、平均値、中央値、最頻値を用いるとよい。破断特性の評価が、優劣の順位の場合、順位の平均値、中央値、あるいは順位の最頻値によって順位付けを行ってもよい。
また、一実施形態によれば、解析用モデル1の応答解析を行うとき、解析用モデル1に与える入力として入力1及び入力1と異なる条件の入力2を別々に与えて互いに異なる応答解析を行ってもよい。このとき、解析用モデル1は共通とする。破断特性を評価するとき、入力1に対応した破断特性の評価と、入力2に対応した破断特性の評価とを統合することにより、破断特性を評価することが好ましい。これにより、破断特性を総合的に評価することができる。
例えば、振動解析による破断特性の評価と、上述した緩和過程による破断特性の評価とを、統合して1つの評価を与えてもよい。また、統合する場合、評価が破断伸びや破断エネルギーのような数値である場合、重み付けを行って1つの値を求めてもよい。
異なる条件は、異なる条件で解析用モデル1の応答解析の計算ができる限りにおいて、温度条件の相違、静歪みと動歪みの相違、伸張速度の相違、振動解析における振動数の相違、負荷(除荷)の相違、付加する圧力の相違、一軸伸張及び二軸伸張等の変形モードの相違等を含む。
一実施形態によれば、解析用モデル1を作成するとき、解析用モデル1の他に、複合材料の一部を修正した材料を対象として、解析用モデルの一部を修正した修正解析用モデルを作成してもよい。この場合、修正解析用モデルを用いて、応答解析及び破断特性の評価を行うことにより、解析用モデル1を用いた破断特性の評価に対する修正解析用モデルを用いた破断特性の変化を求めることが好ましい。これにより、破断特性が向上する複合材料を探索することができる。
複合材料の一部の修正は、架橋密度、架橋分布、架橋結合の強さ(相互作用の強さ)、フィラーの有無、フィラーの分布や形状、フィラーの体積分率、フィラーの大きさ、フィラーとポリマー間の相互作用、ポリマーの種類(例えば、長さ、ねじり、2面角エネルギーの変更)、及び、ポリマーの構造(長さ等)、及び、ブレンドポリマーにおけるポリマーの種類等の修正を含む。したがって、修正解析用モデルは、複合材料の一部の修正に対応して、モデルの各種パラメータ等が変更される。
図6は、一実施形態の複合材料の解析方法を行う解析装置の機能ブロック図である。
図6に示すように、解析装置50は、処理部52と記憶部54とを含むコンピュータで構成される。解析装置50は、マウスやキーボードを備えた入力操作系53及びモニタ55と電気的に接続されている。入力操作系53は、複合材料の解析用モデルの作成対象であるポリマー及びフィラーに関する情報、応答解析の種類、応答解析における境界条件、及び解析用モデル1に与える入力の条件等のデータを設定する。これらの入力したデータは、処理部52又は記憶部54へ送られる。
処理部52は、例えば、中央演算装置(CPU:Central Processing Unit)及びメモリを含む。処理部52は、各種処理を実行する際にコンピュータプログラムを記憶部54から読み込んで起動させる。コンピュータプログラムは、各種処理を実行する。例えば、処理部52は、記憶部54から予め記憶された各種処理に関するデータを必要に応じて適宜メモリ上の自身に割り当てられた領域に展開し、展開したデータに基づいて複合材料の解析用モデル1の作成、及び解析用モデル1を用いた複合材料の応答解析に関する各種処理を実行する。
処理部52は、モデル作成部52aと、条件設定部52bと、解析部52cと、評価部52dと、を含む。
モデル作成部52aは、予め記憶部54に記憶されたデータ及び入力された各種条件に基づいて、分子動力学法に適した解析用モデル1を作成する。図2に示すようなフィラー及びポリマーなどの複合材料をモデル化した解析用モデル1を作成する場合、モデル作成部52aは、フィラー及びポリマーの分子数、分子量、分子鎖長、分子鎖数、分岐、形状、大きさ、及び作成する解析用モデル1に含まれる分子数である目標分子数などの構成要素の配置、設定及び計算ステップ数などのモデルの設定を行う。また、モデル作成部52aは、フィラー粒子11a間、ポリマー粒子21a間及びフィラー・ポリマー粒子の水素結合、分子間力などの相互作用などの各種計算パラメータの初期条件の設定を行う。また、モデル作成部52aは、必要に応じて図3に示す架橋結合鎖21c等を作成する。
フィラー粒子11a間の相互作用及びポリマー粒子21a間の相互作用を含む粒子間の相互作用を調整する計算パラメータとしては、上述したレナード・ジョーンズポテンシャルの場合、σ、εの値が設定される。
条件設定部52bは、伸張解析、振動解析、せん断解析などの応答解析に用いる各種条件を設定する。条件は、例えば、伸張解析の場合、解析用モデル1の伸び率や一軸伸張、二軸伸張、及び伸張速度等の条件を含む。
解析部52cは、条件設定部52bによって設定された解析条件に基づいて解析用モデル1の数値解析を実行する。また、解析部52cは、モデル作成部52aによって作成された複合材料の解析用モデル1を用いて分子動力学法による数値解析を実行して物理量を取得する。ここでは、解析部52cは、数値解析として、伸張解析、せん断解析などの変形解析や振動解析を実行する。また、解析部52cは、数値解析の結果として得られるポリマー粒子21a及びフィラー粒子11における変位などの値又は得られた値に所定の演算処理を実行した歪み、解析用モデル1に蓄積されたエネルギーの蓄積量、解析用モデル1から散逸したエネルギーの散逸量などの物理量を算出する。
また、解析部52cは、数値解析の結果から得られる運動変位及び公称応力を演算して得られる公称歪みなどの各種物理量を取得してもよい。これにより、解析時間毎に変化する解析用モデル全体のポリマー分子の結合長及びポリマー粒子速度、架橋点間と自由末端の速度又は結合長、配向などの物理量などの解析用モデル全体の状態変化を表す数値と歪みとの関係などを求めることができる。また、解析時間毎に変化するポリマー粒子21aの結合長及びポリマー粒子21aの移動速度などの状態変化を表す数値と圧力又は解析時間との関係などを求めてもよい。さらに、解析時間毎に変化するポリマー粒子21aの結合長及びポリマー粒子21aの速度などの状態変化を表す数値と温度又は解析時間との関係などを求めてもよい。これにより、ポリマー粒子21aの局所的な分子状態の変化のより詳細な解析が可能となる。
解析部52cは、解析した複合材料の解析結果を記憶部54に記憶させる。
評価部52dは、解析部52cの数値解積(応答解析)で得られる解析用モデル1から散逸するエネルギーの散逸の程度に関する情報に基づいて、複合材料の破断特性を評価する。破断特性の評価方法は、上述したとおりである。
記憶部54は、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、フラッシュメモリ及びCD-ROMなどの読み出しのみが可能な記録媒体である不揮発性のメモリ、並びに、RAM(Random Access Memory)のような読み出し及び書き込みが可能な記録媒体である揮発性のメモリが適宜組み合わせられる。
記憶部54には、入力操作系53を介して解析対象となる複合材料の解析用モデルを作成するためのデータ、例えば、カーボンブラック、シリカ、及びアルミナなどのフィラーのデータ、ゴム、樹脂、及びエラストマーなどのポリマーのデータなどが記憶されている。また、記憶部54には、複合材料の解析方法を実現するためのコンピュータプログラムなどが記憶されている。このコンピュータプログラムは、コンピュータ又はコンピュータシステムに既に記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、本実施の形態に係る複合材料の解析方法を実現できるものであってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)及び周辺機器などのハードウェアを含むものとする。
モニタ55は、例えば、液晶表示装置等の表示用デバイスである。モニタ55は、上述した数値解積(応答解析)を実行するための条件及び解析用モデル1に与える入力を設定するための設定画面が表示され、また、解析部52cにおける解析途中あるいは解析終了時の解析用モデル1の状態を表示し、さらに、評価部52で求めた破断特性の評価を表示する。なお、記憶部54は、データベースサーバなどの他の装置内にあってもよい。例えば、解析装置50は、入力操作系53及びモニタ55を備えた端末装置から通信により処理部52及び記憶部54にアクセスするものであってもよい。
このように、コンピュータプログラムは、複合材料の解析方法をコンピュータに実行させることができる。
(実施例、比較例)
上記実施形態の効果を確認するために、複合材料として、ゴムを母材としてゴム中にカーボブラックン粒子をフィラー粒子として含むフィラー含有ゴム材料をモデル化した図2に示すような解析用モデルと、フィラーを含まない純ゴムからなるゴム材料をモデル化した解析用モデルを作成した。各結合鎖及び粒子間の相互作用に、レナード-ジョーンズポテンシャルを用い、σ、εの値を適宜調整して解析用モデルに付与した。解析用モデルは、フィラーモデル11及びポリマーモデル21の合計数を変更することなく、配置を種々変えた3つのモデルを作成して破断特性を1つにまとめて評価した。
解析用モデルに階段状に変化する変位を一軸伸張で与えて伸張歪みを与えたときの緩和応答の応答解析を行って、解析用モデルに蓄積するエネルギーの入力されるエネルギーに対する比が所定の閾値を横切る時点で破断が発生するとし、そのときの伸びを破断伸びEbとして求めた(実施例)。
また、解析用モデルに一軸伸張の条件で伸張を与えて緩和応答の解析を行ったとき、解析用モデル内では、ポリマーモデル21の結合鎖21aの破断によりボイドが生じ、このボイドの体積は伸張の増大にしたがって増大する。このボイドの体積の増大の情報を用いて材料の破断を判定することができる。したがって、解析用モデルのボイド体積の増大速度が、所定の閾値を横切る(閾値以上になる)時点で破断が発生するとし、そのときの伸びを破断伸びEbとして求めた(比較例)。
実施例及び比較例ともに、上述した3つのモデルにおける破断伸びEbの値の平均値を実施例及び比較例の破断特性の評価値として求めた。
また、解析用モデルとしてモデル化される対象のゴム材料の破断伸びEbを、伸張試験により計測した(計測値)。下記表には、計測結果、実施例における評価結果、及び比較例における評価結果を示す。評価結果は、純ゴムからなるゴム材料における評価値を基準(指数100)として、フィラー含有ゴム材料の評価値の指数で表している。指数が上がるほど、破断特性が優れることを意味する。
Figure 0007310249000002
表1からわかるように、実施例の緩和応答の応答解析による、純ゴムに対するフィラー含有ゴム材料の破断特性の変化率は、比較例における変化率に比べて、計測値における変化率に近いことがわかる。すなわち、本実施形態の応答解析は、フィラー含有ゴム材料の破断特性を精度よく評価している、といえる。
以上、本発明の、複合材料の解析方法、及び複合材料の解析用コンピュータプログラムについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
1 解析用モデル
11,11A,11B,11C,11D フィラーモデル
11a フィラー粒子
21,21A,21B,21C ポリマーモデル
21a ポリマー粒子
21b 結合鎖
21c 架橋結合鎖
50 解析装置
51 入出力装置
52 処理部
52a モデル作成部
52b 条件設定部
52c 解析部
52d 評価部
53 入力操作系
54 記憶部
55 モニタ


Claims (11)

  1. コンピュータが、分子動力学法により複合材料の解析を行う方法であって、
    前記複合材料中の第1物質をモデル化した第1物質モデル、及び前記複合材料中の第2物質をモデル化した第2物質モデルを含む複合材料の解析用モデルを作成する第1ステップと、
    前記解析用モデルに伸張、圧縮、及びせん断の少なくともいずれか1つの変形をさせるように前記解析用モデルに入力を与えたときの前記解析用モデルの応答解析をする第2ステップと、
    前記応答解析で得られる前記解析用モデルから散逸するエネルギーの散逸の程度に関する情報に基づいて、前記複合材料の破断特性を評価する第3ステップと、を備えることを特徴とする、複合材料の解析方法。
  2. 前記第2ステップでは、前記解析用モデルを引っ張って一定の伸びを維持するように前記入力を与えることにより、伸張時の前記解析用モデルの緩和応答を解析する、請求項1に記載の複合材料の解析方法。
  3. 前記散逸の程度に関する情報は、前記解析用モデル発生する応力、及び、前記入力を与えることで前記解析用モデルに与えられる入力エネルギー量に対する前記解析用モデルに蓄積されるエネルギー量の比の少なくとも一方を含む、請求項2に記載の複合材料の解析方法。
  4. 前記複合材料は、前記第1物質を母材として、前記第2物質が前記母材中に粒子として分布する構成を有し、
    前記散逸の程度に関する情報は、少なくとも前記第1物質モデル発生する応力、及び、少なくとも前記第1物質モデルに与えられる入力エネルギー量に対する前記第1物質モデルに蓄積されるエネルギー量の比の少なくとも一方を含む、請求項1又は2に記載の複合材料の解析方法。
  5. 前記第3ステップでは、前記散逸の程度が大きいほど前記破断特性に優れる評価を与える、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合材料の解析方法。
  6. 前記第3ステップでは、前記破断特性の評価として、前記複合材料の破断伸びあるいは破断エネルギーを算出する、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合材料の解析方法。
  7. 前記第2ステップでは、前記解析用モデルに与える前記入力の大きさを変更して前記応答解析を複数回行い、
    前記第3ステップでは、複数回の前記応答解析で得られる前記散逸の程度に基づいて前記破断特性を評価する、請求項1~6のいずれか1項に記載の複合材料の解析方法。
  8. 前記第1ステップでは、少なくとも、前記第1物質モデル及び前記第2物質モデルの配置を変更した複数のモデルを前記解析用モデルとして作成し、
    前記複合材料の解析方法は、さらに、前記解析用モデルのそれぞれにおいて、前記第2ステップ及び前記第3ステップを行うことによって得られた前記解析用モデルのそれぞれに対応した前記破断特性の評価を1つに統合する第4ステップを備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の複合材料の解析方法。
  9. 前記第2ステップでは、前記解析用モデルに与える前記入力として入力1及び前記入力1と異なる条件の入力2を別々に与えて互いに異なる応答解析を行い、
    前記第3ステップでは、前記入力1に対応した前記破断特性の評価と、前記入力2に対応した前記破断特性の評価とを統合することにより、前記破断特性を評価する、請求項1~8のいずれか1項に記載の複合材料の解析方法。
  10. 前記第1ステップでは、前記解析用モデルの他に、前記複合材料の一部を修正した材料を対象として、前記解析用モデルの一部を修正した修正解析用モデルを作成し、
    前記修正解析用モデルを用いて前記第2ステップ及び前記第3ステップを行うことにより、前記解析用モデルを用いた前記破断特性の評価に対する前記修正解析用モデルを用いた前記破断特性の変化を求める、請求項1~9のいずれか1項に記載の複合材料の解析方法。
  11. 請求項1~10のいずれか1項に記載の複合材料の解析方法をコンピュータに実行させることを特徴とする、複合材料の解析用コンピュータプログラム。
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