以下、本発明の各実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施可能である。なお、以下においては、解析対象となる複合材料がポリマー及びフィラーを含む例について説明しているが、本発明は、2種類の以上の物質を含有する複合材料にも適用可能である。また、本発明は、フィラー及びポリマー以外の物質を含有する複合材料にも適用可能である。
図1は、本実施形態に係る複合材料の解析方法の概略を示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態に係る複合材料の解析方法は、第1ステップST11と、第2ステップST12と、第3ステップST13とを含む、コンピュータを用いた分子動力学法による複合材料の解析方法である。
第1ステップST11では、コンピュータは、ポリマーをモデル化したポリマーモデル及びフィラーをモデル化したフィラーモデルを含む複合材料の解析用モデルを作成する。
第2ステップST12では、コンピュータは、解析対象となる第1物質モデル又は第2物質モデルに属し、粒子間結合で結合された少なくとも一対の粒子の粒子間距離に閾値を設定する。具体的には、第2ステップST12では、コンピュータは、粒子間結合の結合種に応じた閾値を設定する。より具体的には、第2ステップST12では、コンピュータは、主鎖と、架橋結合とで異なる閾値を設定する。
第3ステップST13では、コンピュータは、粒子間距離が粒子間結合の結合種に応じた閾値以上の場合に、粒子間結合を破断処理する。
図2は、本実施形態に係る複合材料の解析用モデル1の一例を示す概念図である。図2に示すように、解析用モデル1は、例えば、一辺の長さが距離Lの略立方体形状の仮想空間であるモデル作成領域A内でモデル化される。モデル作成領域Aは、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸方向に広がる三次元空間となっている。解析用モデル1は、複数のフィラー粒子11aがモデル化された4つのフィラーモデル11A,11B,11C,11Dと、複数のポリマー粒子21a及び結合鎖21bがモデル化された4つのポリマーモデル21とを含む。なお、図2に示す例では、解析用モデル1が、4つのフィラーモデル11A,11B,11C,11Dがモデル化された例について説明するが、モデル化されるフィラーモデルの数に制限はない。解析用モデル1は、4未満のフィラーモデル11を含んでいてもよく、4つを超えるフィラーモデル11を含んでいてもよい。また、図2においては、4つのポリマーモデル21のみを示しているが、解析用モデル1では、複数のポリマーモデル21がモデル作成領域A内の全域に亘って存在している。さらに、図2に示す例では、モデル作成領域Aが、略直方体形状の仮想空間である例について示しているが、球状、楕円状、直方体形状、多面体形状など任意の形状であってもよい。
フィラーモデル11は、複数のフィラー粒子11aがそれぞれ略球状体に集合した状態でモデル化される。また、フィラーモデル11は、互いに所定間隔をとって離れた状態で配置されている。なお、フィラーモデル11とは、相互に凝集した状態で外縁部が共有結合によって相互に連結されていてもよい。
フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、シリカ、及びアルミナなどが含まれる。フィラー粒子11aは、複数のフィラーの原子が集合されてモデル化される。また、フィラー粒子11aは、複数のフィラー粒子11aが集合してフィラー粒子群を構成する。フィラー粒子11aは、複数のフィラー粒子11a間の結合鎖(不図示)によって相対位置が特定されている。この結合鎖(不図示)は、フィラー粒子11a間の結合距離である平衡長とばね定数とが定義されたバネとしての機能を有し、各フィラー粒子11a間を拘束している。結合鎖は、フィラー粒子11aの相対位置及び捻り、曲げなどによって力が発生するポテンシャルが定義されているボンドである。フィラーモデル11は、フィラーを分子動力学で取り扱うためのフィラー粒子11aの質量、体積、直径及び初期座標などを含む数値データである。フィラーモデル11の数値データは、コンピュータに入力される。
ポリマーとしては、例えば、ゴム、樹脂、及びエラストマーなどが含まれる。ポリマー粒子21aは、複数のポリマーの原子が集合されてモデル化される。また、ポリマー粒子21aは、複数のポリマー粒子21aが集合してポリマー粒子群を構成する。ポリマーには、フィラーとの親和性を高める変性剤が必要に応じて配合される。この変性剤としては、例えば、水酸基、カルボニル基、及び原子団の官能基などが含まれる。ポリマーモデル21は、複数のポリマー原子及び複数のポリマー原子の集合体であるポリマー粒子21aがモデル作成領域A内に所定密度で充填されてモデル化される。ポリマー粒子21aは、複数のポリマー粒子21a間の結合鎖21bによって結合されて相対位置が特定されている。この結合鎖21bは、ポリマー粒子21a間の結合距離である平衡長とばね定数とが定義されたバネとしての機能を有し、各ポリマー粒子21a間を拘束している。結合鎖21bは、ポリマー粒子21aの相対位置及び捻り、曲げなどによって力が発生するポテンシャルが定義されているボンドである。また、結合鎖21bは、複数のポリマー粒子21aが直列状に連結されてなるポリマーモデル21間にも架橋結合(不図示)として結合されている。このポリマーモデル21は、ポリマーを分子動力学で取り扱うための数値データ(ポリマー粒子21aの質量、体積、直径及び初期座標などを含む)である。ポリマーモデル21の数値データは、コンピュータに入力される。
解析用モデル1は、分子動力学法による数値解析により各種物理量が取得される。数値解析としては、例えば、伸張解析、せん断解析などの変形解析及び緩和解析などの運動解析が挙げられる。これらの運動解析で取得する物理量は、運動解析の結果得られた変位などの値を用いてもよく、所定の演算処理を実行した歪みであってもよい。これらの中でも、運動解析としては、複合材料のコンパウンドの力学特性を解析可能となる観点から、変形解析が好ましい。
次に、本実施形態に係る複合材料の解析方法について詳細に説明する。第1ステップST11では、複数のフィラー粒子11aが集合してモデル化されたフィラーモデル11及び複数のポリマー粒子21aが結合鎖21bを介して連結されてモデル化されたポリマーモデル21を含む複合材料の解析用モデル1(図2参照)を作成する。
また、第1ステップST11では、作成したフィラーモデル11とポリマーモデル21との間に相互作用を設定する。フィラーモデル11とポリマーモデル21との間の相互作用としては、例えば、分子間力及び水素結合などの引力及び斥力などの化学的な相互作用、及び共有結合などの物理的な相互作用が挙げられる。なお、フィラーモデル11とポリマーモデル21との間の相互作用は、フィラー粒子11a間、ポリマー粒子21a間及びフィラー粒子11aとポリマー粒子21aとの間に必要に応じて設定されるものである。そのため、必ずしも全てのフィラー粒子11a及びポリマー粒子21aに設定されるものではない。また、ポリマーモデル21が複数の種類のポリマー粒子21aで構成されている場合には、複数の種類のポリマー粒子21aにそれぞれ相互作用を設定してもよい。また、複数の種類の各ポリマー粒子21aとフィラーモデル11との相互作用は同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、ポリマー粒子Aとフィラー粒子11aの相互作用とポリマー粒子Bとフィラー粒子11aの相互作用とは異なる相互作用を設定してもよい。
次に、第2ステップST12では、ポリマー粒子21aの粒子間距離に所定の閾値を設定する。粒子間距離としては、ポリマー粒子21aを連結する結合鎖21bの長さを用いてもよく、一対のポリマー粒子21a間の直線距離を用いてもよい。そして、第2ステップST12では、ポリマー粒子21aの結合の種類に応じて、異なる閾値を設定する。結合の種類とは、分子の主鎖、架橋などのことを意味する。なお、本実施形態においては、第2ステップST12において、解析対象となる一対のポリマー粒子21aの粒子間距離に所定の閾値を設定する例について説明するが、これに限定されるものではない。粒子間距離の閾値は、解析対象となる複合材料に応じて一対のフィラー粒子11a間の粒子間距離に設定してもよい。
次に、第3ステップST13では、一対のポリマー粒子21aの粒子間距離が所定の閾値以上の場合に、一対のポリマー粒子21aの粒子間の結合を破断処理する。本実施形態では、第2ステップST12において、ポリマー粒子21aの結合の種類に応じて異なる閾値が設定されている。そのため、第3ステップST13では、例えば、主鎖と、架橋結合とでは、切断される条件が異なっている。
また、第2ステップST12では、一対のポリマー粒子21aの粒子間距離が閾値以上の場合に、ポリマー粒子21aの粒子間結合の破断処理が実行される確率を設定してもよい。これにより、第3ステップST13では、設定された確率に基づいて粒子間結合が結合エネルギー又は結合力の低下した疑似的な破断状態として演算できるので、閾値以上でも粒子間結合が維持された状態で解析用モデル1の数値解析を継続することができる。この結果、一対のポリマー粒子21a間の粒子間結合を維持しつつ粒子間結合の破断を再現することが可能となる。
具体的には、粒子間距離が閾値以上となった場合に、一対のポリマー粒子21a間の粒子間結合の結合エネルギー及び結合力の少なくとも一方を低下させる疑似破断処理を実行する確率を設定する。そして、設定された確率に基づいて疑似破断処理をして数値解析することにより、一対のポリマー粒子21aの粒子間結合を維持した状態で粒子間結合の破断を再現できる。
具体的には、本実施形態においては、一対のポリマー粒子21aの粒子間距離に所定の閾値を設定し、粒子間距離が閾値以上の場合には、粒子間距離が閾値S未満の場合に対して、粒子間結合の結合エネルギー及び結合力を低下させる破断結合演算用関数を用いて粒子間結合を演算する。当該破断結合演算用関数としては、例えば、下記式(1)に示すものが挙げられる。この破断結合演算用関数を用いることにより、ポリマー粒子間距離が所定の閾値未満の場合には、一対のポリマー粒子21a間の粒子間距離に応じて結合エネルギー及び結合力が増減し、粒子間距離が所定の閾値S以上の場合には、結合エネルギー及び結合力がゼロとなる。なお、下記式(1)については、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更可能である。なお、以下においては、結合エネルギーを低下させ例について説明するが、結合力を低下させる場合にも同様に実施可能である。
このように、上記実施形態によれば、粒子間距離が閾値以上の領域においては、粒子間結合の結合エネルギー及び結合力の少なくとも一方が低下するので、粒子間結合を破断することなく解析用モデルの数値解析を継続することが可能となる。これにより、破断に伴う粒子間結合の物理的な消滅を防ぐことができるので、粒子間結合を物理的に消滅させずに疑似的な切断を再現することが可能となる。したがって、数値解析時に破断した粒子間結合の破断箇所を特定することが可能となる複合材料の解析方法を実現できる。
また、上述した実施形態では、ポリマー粒子21aの粒子間距離が閾値以上となると所定の破断結合演算用関数を適用して粒子間結合を演算する例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、粒子間距離の時間平均値が閾値以上となった場合に、粒子間結合の結合エネルギー及び結合力を低下させる破断結合演算用関数を用いて解析用モデル1の数値解析を実行してもよい。これにより、例えば、ブラウン運動などによって、一時的に粒子間距離が閾値以上となった一対のポリマー粒子21aにおける粒子間結合の結合エネルギー及び結合力を低下させる破断結合演算用関数を用いた演算を除外することができる。この結果、実際の複合材料における粒子間結合の破断を精度よく再現することが可能となる。
また、上述した実施の形態では、第3ステップST13において、数値解析を粒子間距離が閾値S以上となった粒子間結合毎に設定した確率に基づいて実行することが好ましい。これにより、疑似破断処理が、閾値S以上となった時点で各粒子間結合毎に個別に設定した確率に基づいて実行されるので、粒子間結合が閾値S以上となった全ての粒子間結合に対して疑似破断処理をする場合と比較して演算処理の負荷を軽減でき、数値解析の高速化が実現できる。
また、上述した実施の形態では、第3ステップST13において、数値解析を予め設定した解析時間間隔毎に粒子間距離が閾値S以上となった粒子間結合の集団毎に実行することが好ましい。これにより、解析時間間隔毎に粒子間距離が閾値S以上となった粒子間結合の集団に対して疑似破断処理を実行するので、各粒子間結合に対して個別に疑似破断処理をする場合と比較して粒子間結合の破断処理数の制御が容易となる。
また、上述した実施の形態では、第3ステップST13において、数値解析を予め設定した解析時間範囲で閾値S以上となった粒子間結合毎に実行することが好ましい。また、上述した実施の形態では、第3ステップST13において、数値解析を予め設定した解析時間範囲で閾値S以上となった粒子間結合の集団毎に実行することが好ましい。これらにより、一定の解析時間範囲で粒子間距離が閾値S以上に達した粒子間結合毎又は粒子間結合の集団毎に疑似破断処理を実行できるので、特定の解析時間で破断処理を実行する場合と比較して疑似破断処理のゆらぎの影響を低減することができる。これらの場合の解析時間範囲は、例えば、解析時間の最大値である最大瞬間値としてもよく、粒子間結合毎の時間平均長に基づいて設定してもよい。
また、上述した実施の形態では、第3ステップST13において、セグメント毎に前記破断処理を実行する前記粒子間結合の最大値が定められていることが好ましい。これにより、数値解析をポリマーモデル21に属する粒子間結合毎に疑似破断処理をする粒子間結合数の最大値以下の範囲で実行することができる。その結果、疑似破断処理される粒子間結合の数を一定数以下に制限することができるので、例えば、ポリマーモデル21に属する各粒子間結合が閾値以上となった場合であっても、粒子間結合の過剰な破断を防ぐことができる。
また、上述した実施の形態では、第3ステップST13において、設定した確率に基づいた破断処理を実行しなかった粒子間結合を破断処理の演算から除外することが好ましい。これにより、数値解析の再現性を維持しつつ破断処理の判断の対象となる粒子間結合を削減できるので、演算処理を軽減することができる。この場合、破断処理の演算の除外は、全解析時間中に実行してもよく、予め設定した所定解析時間実行してもよい。
ところで、粒子間結合によって連結された一対のポリマー粒子21aが複数存在する場合には、解析用モデル1の数値解析後、複数の一対のポリマー粒子21aの粒子間距離が順次閾値S以上となる。そして、粒子間結合の結合エネルギー及び結合力の少なくとも一方が順次低下した状態となる。この場合、粒子間結合の結合エネルギー及び結合力の少なくとも一方が低下したポリマーモデル21の座標をそれぞれ特定しても、必ずしも十分にそれぞれの正確な破断位置を評価することができない場合がある。
そこで、上記実施形態においては、粒子間距離が閾値以上となった時点の粒子間結合の座標を破断位置として特定して評価してもよい。図3A~図3Cは、モデル作成領域A内での粒子間結合の破断位置の説明図である。なお、図3Aにおいては、第1解析時間T1の状態を示し、図3Bにおいては、第2解析時間T2の状態を示し、図3Cにおいては、第3解析時間T3の状態を示している。
本実施形態では、複数の解析時間について、それぞれ粒子間結合の結合エネルギー及び結合力が低下した粒子間結合の位置を特定する。図3Aに示す例では、第1解析時間T1では、ポリマーモデル21Aは、フィラーモデル11の近傍で粒子間距離が閾値S以上となり、結合エネルギー又は結合力が低下した破断結合鎖21bxが生じている。フィラーモデル11の近傍に存在するポリマーモデル21B,21Cは、ポリマー粒子21aの粒子間距離が閾値S未満となり結合鎖21bが残存している。この第1解析時間T1では、ポリマーモデル21Aの座標を破断座標X1として特定する。
次に、所定時間経過後の第2解析時間T2では、ポリマーモデル21Bは、フィラーモデル11の近傍で粒子間距離が閾値S以上となり、結合エネルギー又は結合力が低下した破断結合鎖21bxが生じている。フィラーモデル11の近傍に存在するポリマーモデル21Cは、ポリマー粒子21aの粒子間距離が閾値S未満となり結合鎖21bが残存している。一方、移動によりフィラーモデル11から離れたポリマーモデル21Aは、結合エネルギー又は結合力が低下した破断結合鎖21bxが維持されている。この第2解析時間T2では、ポリマーモデル21Bの座標を新たな破断座標X2として特定し、第1解析時間T1で既に破断結合鎖21bxが生じたポリマーモデル21Aの現座標は破断座標として新たに特定しない。
さらに、所定時間経過後の第3解析時間T3では、ポリマーモデル21Cは、フィラーモデル11の近傍で粒子間距離が閾値S以上となり、結合エネルギー又は結合力が低下した破断結合鎖21bxが生じている。移動によりフィラーモデル11表面から離れたポリマーモデル21A,21Bは、ポリマー粒子21aの粒子間結合が閾値S以上となり破断結合鎖21bxが維持されている。この第3解析時間T3では、ポリマーモデル21Cの座標を破断座標X3として新たに特定する。そして、第1解析時間T1で既に破断結合鎖21bxが生じたポリマーモデル21Aの現座標及び第2解析時間T2で既に破断結合鎖21bxが生じたポリマーモデル21Bの現座標は破断座標として特定しない。
このように、連続する第1解析時間T1~第3解析時間T3中に粒子間距離が閾値S以上となった破断座標X1~X3を順次特定することにより、例えば、フィラーモデル11表面からの距離と破断座標の座標分布とが得られる。これにより、図3A~図3Cに示した解析用モデル1の数値解析では、フィラーモデル11からの距離が近くなるにつれて破断座標X1~X3の座標分布が増大することが分かる。この結果から、図4に示すように、粒子間結合の破断されやすい場所を評価することができるので、フィラーモデル11表面からの距離と破断確率の関係などを評価することが可能となる。
なお、図3A~図3Cに示した例では、粒子間結合に代表点を設定して破断位置(破断座標)を特定してもよい。例えば、図3Aに示した例では、粒子間結合である結合鎖21bにおける一対のポリマー粒子21aとの重心(中点)又はポリマー粒子21aの座標と重なる端点などを代表点として破断位置として特定する。これにより、長さが増大した粒子間結合の代表点の座標を破断位置として評価することができるので、破断位置の評価が容易となる。
また、図3A~図3Cに示した例では、粒子間距離が所定値以上となった粒子間結合を可視化してもよい。これにより、疑似的に破断した一対のポリマー粒子21a間の粒子間結合である破断結合鎖21bxを目視で確認することができるので、数値解析時に破断した粒子間結合の破断箇所の特定が容易となる。同様に、粒子間結合が破断して破断結合鎖21bxが生じた破断座標X1~X3を可視化してもよい。これにより、破断しやすい場所を目視で評価できるので、破断しやすい場所の評価が容易となる。また、代表点を可視化してもよい。これにより、長さが増大した粒子間結合の全体を可視化せずに代表点を可視化するので、破断した粒子間結合の確認が容易となる。粒子間結合の可視化は、例えば、破断結合鎖21bx以外の結合鎖21bを非表示としてもよく、結合鎖21bの透明度を高めてもよく、破断結合鎖21bxの色及び太さを結合鎖21bと変更して表示してもよい。これにより、破断結合鎖21bxを強調することができ、目視で容易に確認することが可能となる。
また、上述した実施の形態においては、可視化を数値解析中の複数の解析時間において実行してもよい。図5A~図5Cは、第1解析時間T1~第3解析時間T3の3つの解析時間での可視化の例の説明図である。図5A~図5Cにおいては、一対のポリマー粒子21aの粒子間距離が疑似的な破断状態となった破断座標X1~X3を略球状に模式的に示している。
図5A~図5Cに示す例では、図5Aに示すように、第1解析時間T1でフィラーモデル11の近傍に破断座標X1が発生して可視化される。そして、図5Bに示すように、第2解析時間T2では、第1解析時間T1で発生した破断座標X1がフィラーモデル11との相対位置が保たれた状態でフィラーモデル11と共に移動すると共に、第2解析時間T2で発生した破断座標X2がフィラーモデル11の近傍で新たに可視化される。さらに、第3解析時間T3では、第1解析時間T1で発生した破断座標X1及び第2解析時間T2で発生した破断座標X2がフィラーモデル11との相対位置が保たれた状態でフィラーモデル11と共に移動すると共に、第3解析時間T3で発生した破断座標X3がフィラーモデル11近傍で新たに可視化される。このように可視化することにより、フィラーモデル11の位置を第1解析時間T1~第3解析時間T3での座標に応じて変化させた場合であっても、フィラーモデル11の周囲で発生した破断座標X1~X3の相対座標を保って表示することが可能となる。この結果、フィラーモデル11の周囲のポリマーモデル21の粒子間結合の破断を再現することが可能となる。
また、上記実施の形態においては、数値解析を解析用モデル1中に含まれる複数のポリマーモデル21又はフィラーモデル11についてそれぞれ実行し、得られた複数の数値解析の結果を集約して可視化して評価してもよい。図6A及び図6Bは、第1解析時間T1及び第2解析時間T2の2つの解析時間を集約して可視化する例の説明図である。本実施の形態では、モデル作成領域A内には、第1フィラーモデル11A及び第2フィラーモデル11Bが存在し、第1フィラーモデル11A及び第2フィラーモデル11Bのそれぞれに対して数値解析を実行する。図6A及び図6Bにおいては、一対のポリマー粒子21aの粒子間距離が疑似的な破断状態となった破断座標X1~X3を略球状に模式的に示している。
図6Aに示すように、第1解析時間T1では、第1フィラーモデル11Aの近傍でポリマーモデル21の粒子間結合の破断が発生し、第1フィラーモデル11Aの近傍に1つの破断座標X1が可視化される。また、図6Bに示すように、第2解析時間T2では、第1フィラーモデル11A及び第2フィラーモデル11Bがそれぞれモデル作成領域A内で移動する。また、第2解析時間T2では、第1フィラーモデル11Aの近傍及び第2フィラーモデル11Bの近傍でそれぞれ1つのポリマーモデル21の粒子間結合の破断が発生し、第1フィラーモデル11Aの近傍に破断座標X2が可視化されて新たに追加され、第2フィラーモデル11Bの近傍に破断座標X3が新たに可視化される。この結果、第2解析時間T2では、第1フィラーモデル11Aの近傍で発生した2つの破断座標X1,X2及び第2フィラーモデル11Bの近傍で発生した1つの破断座標X3の3つの破断座標X1~X3が集約して表示される。
このように、本実施の形態では、解析用モデル1中の2つの第1フィラーモデル11A及び第2フィラーモデル11Bを1つのモデル作成領域A内に集約して表示できるので、解析結果が迅速に得られると共に解析結果の理解が容易となる。
また、図6A及び図6Bに示す例においては、数値解析を解析用モデル1中に含まれる複数のポリマーモデル21又はフィラーモデル11についてそれぞれ実行し、得られた複数の数値解析の結果を解析用モデル1中に指定した特定の第1フィラーモデル11Aに集約して可視化して評価してもよい。
このように、本実施の形態では、解析用モデル1中の2つの第1フィラーモデル11A及び第2フィラーモデル11Bを特定の1つの代表フィラーモデル11Eとしてモデル作成領域A内に集約して表示できるので、解析結果が迅速に得られると共に解析結果の理解が容易となる。代表フィラーモデル11Eとしては、解析用モデル1に含まれる任意のフィラーモデル11を特定してもよく、また解析用モデル1とは別個に作成した新たなフィラーモデル11などのその他のモデルを特定してもよい。また、代表フィラーモデル11Eに破断座標の情報を集約するフィラーモデル11としては、解析用モデル1中の全フィラーモデル11としてもよく、解析用モデル1中に指定した複数のフィラーモデル群としてもよい。複数のフィラーモデル群としては、例えば、特定のフィラーモデル11を基準として他のフィラーモデル11との間の距離が所定の閾値以上離れた分散フィラーモデル群としてもよく、特定のフィラーモデル11を基準として他のフィラーモデル11との間の距離が所定の閾値未満の凝集フィラーモデル群としてもよい。
また、上述した実施の形態では、1つの解析モデル1中に含まれる複数のフィラーモデル11の周囲に発生した破断座標X1~X3の数値解析の解析結果を集約して表示する例について説明したが、複数の解析用モデル1(例えば、10個の解析用モデル)を用いて別途演算した解析結果を1つの解析用モデル1の解析結果に投影したアンサンブル結果を可視化してもよい。これにより、多数のフィラーモデル11の周囲で発生する多数の破断座標の解析結果を集約して表示できるので、効率良く演算結果を解析することが可能となる。
図7と、図8とを用いて、本実施形態に係る破断処理について説明する。図7は、粒子間距離と、粒子間結合の結合エネルギーの関係を示す図である。図8は、粒子間距離と、粒子間結合の結合力との関係を示す図である。
図7に示すように、解析用モデル1を用いた数値解析では、結合鎖21bによって粒子間結合された一対のポリマー粒子21aは、粒子間距離が変化することにより粒子間結合の結合エネルギーが増減する。具体的には、粒子間結合の結合エネルギーは、ポリマー粒子21aの粒子間距離が長くなるにつれて減少して最小値をとった後、更に粒子間距離が長くなるにつれて増大してゆく(図7の破線L1参照)。
図7において、実線L2は、ポリマー粒子21a間の粒子間結合の結合種が主鎖である場合の、破断処理を示している。具体的には、ポリマー粒子21a間の粒子間結合の結合種が主鎖である場合には、閾値S1が設定されている。この場合、実線L2に示すように、粒子間距離が閾値S1以上となった場合に、ポリマー粒子21a間の粒子間結合の結合エネルギーを低下させる疑似破断処理が実行される。
図7において、鎖線L3は、ポリマー粒子21a間の粒子間結合の結合種が架橋結合である場合の、破断処理を示している。具体的には、ポリマー粒子21a間の粒子間結合の結合種が架橋結合である場合には、閾値S1よりも小さい閾値S2が設定されている。この場合、鎖線L3に示すように、粒子間距離が閾値S2以上となった場合に、ポリマー粒子21a間の粒子間結合の結合エネルギーを低下させる疑似破断処理が実行される。
また、図8に示すように、解析用モデル1を用いた数値解析では、結合鎖21bによって粒子間結合されたポリマー粒子21aは、粒子間距離が変化することにより粒子間結合の結合力が増減する。粒子間結合の結合力は、ポリマー粒子21aの粒子間距離が長くなるにつれて増大し、変曲点を過ぎた後、更に増大してゆく(図8の破線L11参照)。
図8において、実線L12は、ポリマー粒子21a間の粒子間結合の結合種が主鎖である場合の、破断処理を示している。具体的には、ポリマー粒子21a間の粒子間結合の結合種が主鎖である場合には、閾値S11が設定されている。この場合、実線L12に示すように、粒子間距離が閾値S11以上となった場合に、ポリマー粒子21a間の粒子間結合の結合力を低下させる疑似破断処理が実行される。
図8において、鎖線L13は、ポリマー粒子21a間の粒子間結合の結合種が架橋結合である場合の、破断処理を示している。具体的には、ポリマー粒子21a間の粒子間結合の結合種が架橋結合である場合には、閾値S11よりも小さい閾値S12が設定されている。この場合、鎖線L13に示すように、粒子間距離が閾値S12以上となった場合に、ポリマー粒子21a間の粒子間結合の結合力を低下させる疑似破断処理が実行される。
図7と、図8とに示すように、本実施形態では、ポリマー粒子21a間の粒子間結合の結合種が、主鎖と、架橋結合との場合とでは、異なる条件で疑似破断処理が実行される。これにより、破断に伴う力学応答性の再現性が向上するので、より精度よくゴム材料のナノ構造の破壊のメカニズムの解析することができる。
また、本実施形態では、粒子間距離が閾値以上となった場合に、ポリマー粒子21a間の粒子間結合の結合エネルギー及び結合力の少なくとも一方を低下させる疑似破断処理を実行する確率を設定してもよい。これにより、ポリマー粒子21a間の粒子間距離が長くなり閾値以上となっても、設定した確率に基づいて粒子間結合が結合エネルギー又は結合力の低下した疑似的な破断状態として演算することができる。そのため、閾値以上でも粒子間結合が維持された状態で解析用モデル1の数値解析を継続することができる。この結果、一対のポリマー粒子21a間の粒子間結合を維持しつつ粒子間結合の破断を再現することが可能となる。
なお、上述した実施形態においては、図9に示すように、複合材料をモデル化した複合材料モデルを含む複合材料の解析用モデルを作成する第1ステップST21と、ポリマーモデル21を架橋させる第2ステップST22と、解析用モデル内の解析対象となる複合材料モデルに属し、粒子間結合で結合された少なくとも一対の粒子の粒子間距離に粒子間結合の結合種に応じた閾値を設定する第3ステップST23と、粒子間距離が結合種に応じた閾値以上の場合に、粒子間結合を破断処理して解析用モデルの数値解析を実行する第4ステップST24とを含むようにしてもよい。これにより、複合材料の解析方法は、架橋反応を介してポリマーモデルを予め架橋した状態で解析用モデルの数値解析をできるので、ポリマーモデルの架橋が粒子間結合の破断に及ぼす影響をより正確に解析可能となる。
次に、本実施形態に係る複合材料の解析方法、複合材料の解析用モデルの作成用コンピュータプログラム、複合材料の解析方法及び複合材料の解析用コンピュータプログラムについてより詳細に説明する。図10は、本実施形態に係る複合材料の解析方法及び複合材料の解析方法を実行する解析装置の機能ブロック図である。
図10に示すように、本実施の形態に係る複合材料の解析方法は、処理部52と記憶部54とを含むコンピュータである解析装置50が実現する。この解析装置50は、入力手段53を備えた入出力装置51と電気的に接続されている。入力手段53は、複合材料の解析用モデルの作成対象であるポリマー及びフィラーの各種物性値、ポリマー及びフィラーを含有する複合材料を用いた伸張試験結果の実測結果、及び解析における境界条件などを処理部52又は記憶部54へ入力する。入力手段53としては、例えば、キーボード、マウスなどの入力デバイスが用いられる。
処理部52は、例えば、中央演算装置(CPU:Central Processing Unit)及びメモリを含む。処理部52は、各種処理を実行する際にコンピュータプログラムを記憶部54から読み込んでメモリに展開する。メモリに展開されたコンピュータプログラムは、各種処理を実行する。例えば、処理部52は、記憶部54から予め記憶された各種処理に係るデータを必要に応じて適宜メモリ上の自身に割り当てられた領域に展開し、展開したデータに基づいて複合材料の解析用モデルの作成及び複合材料の解析用モデルを用いた複合材料の解析に関する各種処理を実行する。
処理部52は、モデル作成部52aと、条件設定部52bと、解析部52cとを含む。モデル作成部52aは、予め記憶部54に記憶されたデータに基づき、分子動力学法により複合材料の解析用モデル1を作成する際のフィラー及びポリマーなどの複合材料の粒子数、分子数、分子量、分子鎖長、分子鎖数、分岐、形状、大きさ、反応時間、反応条件及び作成する解析用モデルに含まれる分子数である目標分子数などの構成要素の配置、設定及び計算ステップ数などの粗視化モデルの設定を行う。また、モデル作成部52aは、フィラー粒子11a間、ポリマー粒子21a間及びフィラー・ポリマー粒子の水素結合、分子間力などの相互作用などの各種計算パラメーターの初期条件の設定を行う。また、モデル作成部52aは、必要に応じてポリマーモデル21の架橋による架橋結合21eの作成などの架橋解析などを作成してもよい。
フィラー粒子11a間の相互作用及びポリマー粒子21a間の相互作用を調整する計算パラメーターとしては、下記式(2)で表されるレナード・ジョーンズポテンシャルのσ、εを用い、これらが調整される。ポテンシャルを計算する上限距離(カットオフ距離)を大きくすることで、遠距離まで働いた引力、斥力を調整できる。なお、フィラー粒子11a間の相互作用及びポリマー粒子21a間の相互作用が一定値になるまで順次、フィラー粒子11a間の相互作用及びポリマー粒子21a間の相互作用のパラメーターを小さくすることが好ましい。レナード・ジョーンズポテンシャルのσ、εを大きな値から徐々に本来の値に近づけることにより、分子を不自然な状態に導かない穏やかな速度で粒子の接近を行うことができる。また、カットオフ距離も徐々に小さくすることにより、適正な範囲で引力、斥力を調整できる。
条件設定部52bは、変温解析及び変圧解析などの数値解析、伸張解析、せん断解析などの変形解析及び緩和解析などの運動解析などの各種数値解析条件を設定する。
解析部52cは、条件設定部52bによって設定された解析条件に基づいて解析用モデル1の各種数値解析を実行する。また、解析部52cは、モデル作成部52aによって作成された複合材料の解析用モデル1を用いて分子動力学法による数値解析を実行して物理量を取得する。ここでは、解析部52cは、数値解析として、伸張解析、せん断解析などの変形解析及び緩和解析などの運動解析などを実行する。また、解析部52cは、数値解析の結果得られた変位などの値又は得られた値に所定の演算処理を実行した歪みなどの物理量を取得する。
また、解析部52cは、数値解析による運動解析の結果得られる運動変位及び公称応力又は運動変位を演算して得られる公称歪みなどの各種物理量を取得する。このような数値解析及び運動解析により、解析時間毎に変化する解析用モデル全体のポリマー粒子の結合長及びポリマー粒子速度、架橋点間と自由末端の速度又は結合長、配向などの物理量などのセグメントの状態変化を表す数値と歪みとの関係などを評価できる。また、解析時間毎に変化するポリマー粒子の結合長及びポリマー粒子速度などのセグメントの状態変化を表す数値と圧力又は解析時間との関係などを評価できる。さらに、解析時間毎に変化するポリマー粒子の結合長及びポリマー粒子速度などのセグメントの状態変化を表す数値と温度又は解析時間との関係などを評価できる。これにより、ポリマー粒子の局所的な分子状態変化のより詳細な解析が可能となる。
また、解析部52cは、数値解析によって得られたポリマーモデル21の破断座標を特定し、特定した破断座標を評価する。ここでは、解析部52cは、破断した粒子間結合を可視化して評価してもよく、破断座標を可視化して評価してもよい。さらに、解析部52cは、複数のフィラーモデル11の周囲に発生した破断座標を集約して評価してもよく、複数のフィラーモデル11の周囲に発生した破断座標を1つの代表フィラーモデルに集約して評価してもよい。また、解析部52cは、複数の解析用モデル1を用いて別途解析した解析結果を集約して評価してもよい。解析部52cは、解析した複合材料の解析結果を記憶部54に格納する。
また、解析部52cは、粒子間距離が閾値以上となった粒子間結合に対して破断処理を実行する確率を設定する。また、解析部52cは、設定した確率に基づいて粒子間結合の破断処理又は疑似破断処理を実行する。また、解析部52cは、数値解析の結果得られた変位などの値又は得られた値に所定の演算処理を実行した歪みなどの物理量を取得する。
記憶部54は、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、フラッシュメモリ及びCD-ROMなどの読み出しのみが可能な記録媒体である不揮発性のメモリ、並びに、RAM(Random Access Memory)のような読み出し及び書き込みが可能な記録媒体である揮発性のメモリが適宜組み合わせられる。
記憶部54には、入力手段53を介して解析対象となる複合材料の解析用モデルを作成するためのデータであるゴムカーボンブラック、シリカ、及びアルミナなどのフィラーのデータ、ゴム、樹脂、及びエラストマーなどのポリマーのデータなどが格納されている。また、記憶部54には、予め設定した物理量履歴である応力歪み曲線及び本実施の形態に係る複合材料の解析方法、複合材料の解析方法を実現するためのコンピュータプログラムなどが格納されている。このコンピュータプログラムは、コンピュータ又はコンピュータシステムに既に記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、本実施の形態に係る複合材料の解析方法を実現できるものであってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)及び周辺機器などのハードウェアを含むものとする。
表示手段55は、例えば、液晶表示装置等の表示用デバイスである。なお、記憶部54は、データベースサーバなどの他の装置内にあってもよい。例えば、解析装置50は、入出力装置51を備えた端末装置から通信により処理部52及び記憶部54にアクセスするものであってもよい。
図11を用いて、本実施形態の実施例に係る複合材料の解析方法について説明する。図11は、本実施形態の実施例に係る複合材料の解析方法の一例を示すフローチャートである。なお、以下では、各ステップは、図10に図示の解析装置50が実行するものとして説明する。
まず、解析装置50は、数値解析を実行するための解析用モデルを作成する(ステップST31)。そして、解析装置50は、ステップST32に進む。
次に、解析装置50は、解析用モデルに含まれるポリマーモデルの架橋を作成する(ステップST32)。そして、解析装置50は、ステップST33に進む。
次に、解析装置50は、解析用モデルに含まれるフィラーと、ポリマーとの間に相互作用を設定する(ステップST33)。そして、解析装置50は、ステップST34に進む。
次に、解析装置50は、解析用モデルに含まれる切断を考慮する材料(結合鎖)や、結合種を選定する(ステップST34)。そして、解析装置50は、ステップST35に進む。
次に、解析装置50は、設定した材料に含まれるポリマー粒子間の結合の結合エネルギーを設定する(ステップST35)。なお、解析装置50は、ステップST35において、ポリマー粒子間の結合の結合力を設定してもよい。そして、解析装置50は、ステップST36に進む。
次に、解析装置50は、ステップST34で選定した、結合種毎に切断条件を設定する(ステップST36)。具体的には、解析装置50は、ステップS36において、結合種に応じて異なる閾値を設定する。この場合、解析装置50は、例えば、数の少ない結合種ほど、小さな閾値を設定する。具体的には、主鎖よりも架橋結合に小さな閾値を設定する。そして、解析装置50は、ステップST37に進む。
次に、解析装置50は、ステップST31~ステップST36で設定した条件に従って数値解析を実施する(ステップST37)。そして、解析装置50は、ステップST38に進む。
次に、解析装置50は、ステップST37で実施した数値解析の結果に基づいて、解析用モデルの破断特性を算出する(ステップST38)。具体的には、解析装置50は、例えば、解析用モデル1の破断点を算出する。そして、解析装置50は、図11の処理を終了する。
図12は、本実施例に係る応力歪曲線を示す図である。図12に示すように、実施例に係る複合材料の解析方法を用いた場合(実施例1:グラフL21参照)には、実際の複合材料を用いて応力歪曲線を測定した場合(実験例1:グラフL24参照)と同様に、応力と共に歪みが一定値まで上昇した後、応力は略一定に維持される結果となった。これに対して、従来の数値解析を実行した場合(比較例1:グラフL22参照)には、応力が上昇して歪みが一定値まで上昇した後、応力が著しく減少する結果が得られた。また、結合鎖21bの破断を考慮しない場合(比較例2:グラフL23参照)は、応力の上昇に伴い歪みが連続的に上昇した。この結果は、実施例1では、結合種ごとに異なる切断条件を与えたことでポリマーモデル21の分子鎖の収縮速度を低減できたために、実験例1と同様の結果が得られたものと考えられる。