JP6492440B2 - 特定物質の解析結果の評価方法、特定物質の解析結果の評価用コンピュータプログラム、特定物質の解析方法、特定物質のシミュレーション方法及び特定物質のシミュレーション用コンピュータプログラム - Google Patents

特定物質の解析結果の評価方法、特定物質の解析結果の評価用コンピュータプログラム、特定物質の解析方法、特定物質のシミュレーション方法及び特定物質のシミュレーション用コンピュータプログラム Download PDF

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Description

本発明は、特定物質の解析結果の評価方法、特定物質の解析結果の評価用コンピュータプログラム、特定物質の解析方法、特定物質のシミュレーション方法及び特定物質のシミュレーション用コンピュータプログラムに関し、特に、特定物質の材料特性のシミュレーション結果を評価する特定物質の解析結果の評価方法、特定物質の解析結果の評価用コンピュータプログラム、特定物質の解析方法、特定物質のシミュレーション方法及び特定物質のシミュレーション用コンピュータプログラムに関する。
従来、自動車用タイヤなどに用いられる変性ポリマーとフィラーとを含む高分子材料のモデルの作成方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このモデルの作成方法では、変性ポリマーとフィラーとの間の相互作用を他の粒子間の相互作用より大きくして変性ポリマーとフィラーとを高分子材料中に分散させる。そして、変性ポリマーとフィラーとの間の相互作用を他の粒子間の相互作用より小さくして変性ポリマーの末端とフィラーとを反応させて高分子材料の解析用モデルを作成する。
特開2012−177609号公報
ところで、ポリマー及びフィラーを含むゴムなどの2種類以上の物質を含有する複合材料においては、フィラーの周囲に存在するポリマーの分子運動がコンパウンドの材料特性に大きな影響を与えることが予測される。このような複合材料の材料特性の発現のメカニズムを解明するためには、複合材料の解析用モデルを用いて取得した様々な条件下でのシミュレーション値と複合材料を用いて取得した材料特性の実測値とを比較して評価することが有効である。
しかしながら、従来の複合材料の解析結果の評価方法では、複合材料を用いて取得した材料特性の実測値と、実測値を取得した複合材料に条件を合わせて作成した複合材料の解析用モデルを用いて取得したシミュレーション値とが乖離する場合がある。このため、複合材料の材料特性の実測値とシミュレーション値とを高い精度で一致させて比較して評価できる複合材料の解析結果の評価方法が望まれている。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、特定物質の材料特性の実測値と特定物質の材料特性のシミュレーション値とを精度良く一致させて比較して評価できる特定物質の解析結果の評価方法、特定物質の解析結果の評価用コンピュータプログラム、特定物質の解析方法、特定物質のシミュレーション方法及び特定物質のシミュレーション用コンピュータプログラムを提供することを目的とする。
本発明の特定物質の解析結果の評価方法は、コンピュータを用いて分子動力学法により作成した特定物質の解析用モデルを用いて解析した解析結果の評価方法であって、特定物質を用いて取得した材料特性の実測結果及び特定物質の解析用モデルを用いて取得した材料特性のシミュレーション結果に基づいてマッピングパラメーターを算出する第1ステップと、前記マッピングパラメーターを用いて前記第1ステップで用いていない特定物質を用いて取得した材料特性の実測結果をシミュレーション結果に変換し、及び/又は、前記第1ステップで用いていない特定物質の解析用モデルを用いて取得した材料特性のシミュレーション結果を実測結果に変換する第2ステップと、前記第2ステップで変換した前記実測結果及び前記シミュレーション結果を比較して前記特定物質の解析用モデルのパラメーターを決定する第3ステップと、を含むことを特徴とする。
本発明の特定物質の解析結果の評価方法によれば、特定物質の材料特性の実測結果及び特定物質の解析用モデルを用いたシミュレーション結果に基づいてマッピングパラメーターを決定する。そして、決定したマッピングパラメータを用いて複合材料の解析用モデルのパラメータを決定するので、特定物質の材料特性の実測値と特定物質の材料特性のシミュレーション値とを精度良く一致させて比較して評価できる特定物質の解析結果の評価方法を実現できる。
本発明の特定物質の解析結果の評価方法においては、前記第1ステップにおいて、前記特定物質の材料特性の特性曲線を用いて前記実測結果と前記シミュレーション結果とを対比して前記マッピングパラメーターを算出することが好ましい。この方法により、特定物質の材料特性のコンパウンド特性に基づいてマッピングパラメーターを算出することが可能となる。
本発明の特定物質の解析結果の評価方法においては、前記第1ステップにおいて、前記特定物質として未加硫ゴムを用いて前記マッピングパラメーターを算出することが好ましい。この方法により、特定物質の材料特性の実測値とシミュレーション値とを用いて特定物質の架橋密度などの架橋構造を評価することが可能となる。
本発明の特定物質の解析結果の評価方法においては、前記第1ステップにおいて、前記特定物質としてフィラー未配合のゴムを用いて前記マッピングパラメーターを算出することが好ましい。この方法により、特定物質の材料特性の実測値とシミュレーション値とを用いてフィラーとポリマーとの間の相互作用を評価することが可能となる。
本発明の特定物質の解析結果の評価用コンピュータプログラムは、上記特定物質の解析結果の評価方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
本発明の特定物質の解析結果の評価用コンピュータプログラムによれば、特定物質の材料特性の実測結果及び特定物質の解析用モデルを用いたシミュレーション結果に基づいてマッピングパラメーターを決定するので、特定物質の材料特性の実測値と特定物質の材料特性のシミュレーション値とを精度良く一致させて比較して評価できる。
本発明の特定物質の解析方法は、上記特定物質の解析結果の評価方法で得られた特定物質の解析用モデルのパラメーターを用いて特定物質の架橋構造を解析することを特徴とする。
本発明の特定物質の解析方法によれば、特定物質のシミュレーション値を用いて特定物質の実測時の架橋構造を解析することが可能となる。
本発明の特定物質の解析方法は、上記特定物質の解析結果の評価方法で得られた特定物質の解析用モデルのパラメーターを用いて特定物質に含まれる第1物質と第2物質との間の相互作用を解析することを特徴とする。
本発明の特定物質の解析方法によれば、特定物質のシミュレーション値を用いて特定物質の実測時の第1物質と第2物質との間の相互作用を解析することが可能となる。
本発明の特定物質のシミュレーション方法は、上記特定物質の解析方法により解析した架橋構造を用いて分子動力学法を用いた計算を実施することを特徴とする。
本発明の特定物質のシミュレーション方法によれば、特定物質の実測時の架橋構造を再現したシミュレーションを実行することができる。
本発明の特定物質のシミュレーション方法は、上記特定物質の解析方法により解析した第1物質と第2物質との間の相互作用を用いて分子動力学法を用いた計算を実施することを特徴とする。
本発明の特定物質のシミュレーション方法によれば、特定物質の実測時の第1物質と第2物質との間の相互作用を再現したシミュレーションを実行することができる。
本発明の特定物質のシミュレーション用コンピュータプログラムは、上記特定物質のシミュレーション方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
本発明の特定物質のシミュレーション用コンピュータプログラムによれば、特定物質の実測時の材料特性を再現したシミュレーションを実行させることができる。
本発明によれば、特定物質の材料特性の実測値と特定物質の材料特性のシミュレーション値とを精度良く一致させて比較して評価できる特定物質の解析結果の評価方法、特定物質の解析結果の評価用コンピュータプログラム、特定物質の解析方法、特定物質のシミュレーション方法及び特定物質のシミュレーション用コンピュータプログラムを実現できる。
図1は、本実施の形態に係る特定物質の解析結果の評価方法で使用される解析用モデルの一例を示す概念図である。 図2Aは、本実施の形態に係る解析用モデルを用いた伸張解析の説明図である。 図2Bは、本実施の形態に係る解析用モデルを用いた伸張解析の説明図である。 図3は、未架橋の複合材料を用いた伸張試験結果と伸張解析結果とを示す図である。 図4は、加硫後の複合材料を用いた伸張試験結果と伸張解析結果とを示す図である。 図5は、本発明の実施の形態に係る特定物質の解析結果の評価方法及び特定物質のシミュレーション方法を実行する解析装置の機能ブロック図である。 図6は、本実施の形態に係る特定物質の解析結果の評価方法の一例の概略を示すフロー図である。
以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施可能である。
本実施の形態に係る特定物質の解析結果の評価方法は、コンピュータを用いて分子動力学法により作成した特定物質の解析用モデルを用いて解析した解析結果の評価方法であって、特定物質を用いて取得した材料特性の実測結果及び特定物質の解析用モデルを用いて取得した材料特性のシミュレーション結果に基づいてマッピングパラメーターを算出する第1ステップと、マッピングパラメーターを用いて第1ステップで用いていない特定物質を用いて取得した材料特性の実測結果をシミュレーション結果に変換し、及び/又は、マッピングパラメーターを用いて第1ステップで用いていない特定物質の解析用モデルを用いて取得した材料特性のシミュレーション結果を実測結果に変換する第2ステップと、第2ステップで変換して実測結果及びシミュレーション結果を比較して特定物質の解析用モデルのパラメーターを決定する第3ステップと、を含む。まず、本実施の形態に係る特定物質の解析結果の評価方法に用いられる解析用モデルについて説明する。
図1は、本実施の形態に係る特定物質の解析結果の評価方法で使用される解析用モデル1の一例を示す概念図である。図1に示すように、本実施の形態に係る特定物質の解析用モデル1は、仮想空間内に設けられたモデル化領域内に作成された複数のフィラーモデル11及び複数のポリマーモデル12が略球状体に集合して解析対象となる特定物質がモデル化されたものである。なお、本実施の形態では、解析対象となる特定物質がフィラー(第1物質)及び高分子材料であるポリマー(第2物質)を含有する複合材料である例について説明するが、本発明は、2種類の物質を含有する複合材料以外にも各種材料に適用可能である。
フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、シリカ、及びアルミナなどが含まれる。フィラーモデル11は、複数のフィラー原子及び複数のフィラー原子の集合体としてのフィラー粒子11aが集合した略球状体としてモデル化される。フィラーモデル11は、フィラー粒子11a間の結合鎖13によって各フィラー粒子11aの相対位置が特定される。この結合鎖13は、フィラーモデル11の各フィラー粒子11a間を拘束している。このフィラーモデル11は、フィラーを分子動力学で取り扱うための数値データ(フィラー粒子11aの質量、体積、直径及び初期座標などを含む)である。フィラーモデル11の数値データは、コンピュータに入力される。
ポリマーとしては、例えば、ゴム、樹脂、及びエラストマーなどが含まれる。ポリマーには、フィラーとの親和性を高める変性剤が必要に応じて配合される。この変性剤としては、例えば、水酸基、カルボニル基、及び原子団の官能基などが含まれる。ポリマーモデル12は、複数のポリマー原子及び複数のポリマー原子の集合体であるポリマー粒子12aが結合鎖を介して連結されたものである。ポリマーモデル12は、フィラーモデル11と同様に、ポリマー粒子12a間の結合鎖14によって各ポリマー粒子12aの相対位置が特定される。この結合鎖14は、ポリマーモデル12の各ポリマー粒子12a間を拘束している。このポリマーモデル12は、ポリマーを分子動力学で取り扱うための数値データ(ポリマー粒子12aの質量、体積、直径及び初期座標などを含む)である。ポリマーモデル12の数値データは、コンピュータに入力される。
フィラーモデル11及びポリマーモデル12は、フィラー粒子11aとポリマー粒子12aとの間の結合鎖15によって各フィラー粒子11a、及び各ポリマー粒子12aの相対位置が特定される。この結合鎖15は、各フィラー粒子11a及び各ポリマー粒子12aを拘束している。
結合鎖13、14、15は、平衡長とばね定数とが定義されたバネとしての機能を有する。また、結合鎖13、14、15は、フィラー粒子11a及びポリマー粒子12aの相対位置及び捻り、曲げなどによって力が発生するポテンシャルが定義されているボンドである。このように、結合鎖13、14、15を含めてモデル化することにより、結合鎖13、14、15の影響も考慮してフィラーモデル11及びポリマーモデル12を解析できるので、特定材料を形成するフィラーモデル11及びポリマーモデル12のフィラー粒子11a、及びポリマー粒子12aの解析の精度が向上する。なお、本実施の形態では、結合鎖13、14、15をモデル化した例について説明するが、結合鎖13、14、15は必ずしもモデル化する必要はない。
次に、本実施の形態に係る解析用モデル1を用いた複合材料の材料特性の解析について説明する。なお、以下においては、解析用モデル1を用いた複合材料の伸張解析について説明するが、材料特性の解析は伸張解析に制限されるものではなく、各種材料特性の解析に適用可能である。
図2A及び図2Bは、本実施の形態に係る解析用モデル1を用いた伸張解析の説明図である。図2Aに示すように、図1に示した初期状態から伸張解析を開始して所定時間が経過すると、フィラーモデル11の周囲のポリマーモデル12が引き伸ばされて徐々にフィラーモデル11から離れた状態となる。そして、図2Bに示すように、図2Aに示した状態から更に時間が経過すると、ポリマーモデル12が更に分散してフィラーモデル11から大きく離れた状態となる。このように、解析用モデル1を用いた伸張解析を行うことにより、フィラーモデル11の近傍に存在していたポリマーモデル12の所定時間後における位置を特定できるので、フィラーモデル11とポリマーモデル12との相互作用の強度を解析することが可能となる。
図3は、未架橋の複合材料を用いた伸張試験結果と伸張解析結果とを示す図である。なお、図3においては、横軸にひずみを示し、左の縦軸に伸張試験結果の応力の実測値を示し、右の縦軸に伸張解析結果の応力のシミュレーション値を示している。また、未架橋の複合材料を用いた伸張試験結果を実線L1に示し、未架橋の複合材料を用いた伸張解析結果を実線L2に示している。
図3に示すように、本実施の形態では、未架橋の複合材料の伸張試験結果(以下、「実測結果」ともいう)と未架橋の複合材料の伸張解析結果(以下、「シミュレーション結果」ともいう)とを対比し、実測結果とシミュレーション結果とを対比してマッピングパラメーターを算出する。例えば、図3に示す例では、実線L1の値と実線L2の値とを対比し、実測結果からシミュレーション結果へ変換するためのマッピングパラメーターが0.16として算出される。このマッピングパラメーターとは、複合材料を用いて取得した材料特性の実測結果と複合材料の解析用モデルを用いて取得した材料特性のシミュレーション結果を関係付けるパラメーターである。マッピングパラメーターは、実測結果に対して積算することにより実測結果の実測値をシミュレーション値に変換することを可能とする。また、マッピングパラメーターは、マッピングパラメーターの逆数をシミュレーション結果に積算することにより、シミュレーション値を実測値に変換することを可能とする。
マッピングパラメーターは、伸張試験結果の実測値と伸張解析結果のシミュレーション値との誤差が最小になる値を用いて算出してもよく、特定条件での物理量がほぼ一致する値を用いて算出してもよい。例えば、図3に示す例では、マッピングパラメーターは、ひずみが0から1.5となる範囲の伸張試験結果の実測値と伸張解析結果のシミュレーション値との誤差が最小になる値を用いて算出してもよく、ひずみが1から1.5となる特定範囲での伸張試験結果の実測値と伸張解析結果のシミュレーション値との誤差が最小になる値を用いて算出してもよい。
また、マッピングパラメーターは、伸張試験結果の実測値と伸張解析結果のシミュレーション値とを演算処理した値で算出してもよい。例えば、図3に示す例では、ひずみの値を用いて算出しているが、このひずみに応力を積算したエネルギーの値で伸張試験結果の実測値と伸張解析結果のシミュレーション値とを対比してマッピングパラメーターを算出してもよい。また、マッピングパラメーターを算出する際には、伸張試験結果の実測値と伸張解析結果のシミュレーション値とを数値で対比して算出してもよく、グラフ化した伸張試験結果の実測値と伸張解析結果のシミュレーション値との差を目視で比較して算出してもよい。
また、マッピングパラメーターを算出する際には、伸張試験結果の実測値と伸張解析結果のシミュレーション値との力学的な特性曲線を用いて算出してもよい。これにより、複合材料の材料特性のコンパウンド特性に基づいてマッピングパラメーターを算出することが可能となる。特性曲線としては、マッピングパラメーターの算出に用いることができるものであれば特に制限はなく、例えば、応力ひずみ曲線(SS曲線:stress−strain curve)、周波数特性曲線、ヒステリシス曲線、粘弾性曲線などの力学的な応答曲線が挙げられる。
このように算出したマッピングパラメーターを用いることにより、複合材料の解析用モデルのパラメーターを決定することが可能となる。この複合材料の解析用モデルのパラメーターとは、例えば、架橋密度及びフィラーポリマー間の相互作用のパラメーターである。この複合材料の解析用モデルのパラメーターを用いることにより、例えば、複合材料としてフィラー未配合のゴムを用いた材料特性のシミュレーション結果のシミュレーション値と複合材料の材料特性の実測結果の実測値とを対比して評価することが可能となる。これにより、例えば、フィラーとポリマーとの間の相互作用を評価することが可能となるので、得られた複合材料の解析用モデルのパラメーターを用いて実際の複合材料をモデル化することにより、フィラーの形状及びフィラー−ポリマー間の結合位置などの探索及びフィラー近傍のポリマーの運動の再現ができる。
図4は、加硫後の複合材料を用いた伸張試験結果と伸張解析結果とを示す図である。なお、図4においては、図3と同様に、横軸にひずみを示し、左の縦軸に伸張試験結果の応力の実測値を示し、右の縦軸に伸張解析結果の応力のシミュレーション値を示している。また、加硫後の複合材料を用いた伸張試験結果を実線L3に示し、架橋点数が低い複合材料を用いた伸張解析結果を実線L4に示し、架橋点数が中程度の複合材料を用いた伸張解析結果を実線L5に示し、架橋点数が高い複合材料を用いた伸張解析結果を実線L6に示している。
図4に示す例では、まず所定の架橋密度の複合材料を用いて伸張試験を実施して実測値を取得した後、取得した実測値に算出したマッピングパラメーターを積算してシミュレーション値を取得する。そして、取得した実測値と算出したシミュレーション値とを比較してマッピングパラメーターを決定する。次に、決定したマッピングパラメーターを用いて複合材料の解析用モデルのパラメーターを決定する。そして、架橋点数が異なる3つの複合材料を作成して伸張解析によりシミュレーション値を取得する。次に、複合材料の解析用モデルのパラメーターを用いて、伸張解析結果に基づいて取得したシミュレーション値と伸張試験結果の実測値とを対比することにより、加硫済みの複合材料のひずみの実測値を再現するために必要な架橋点数を探索することが可能となる。図3に示す例では、実線L5で示した中程度の架橋点数とすることにより、複合材料のひずみの実測値を再現できる複合材料の解析用モデルの架橋点数を判定することが可能となる。
また、複合材料を用いた材料特性の実測結果としては、未加硫ゴム及びフィラー未配合のゴムの材料特性の実測結果を用いることが好ましい。これにより、複合材料の材料特性の実測値とシミュレーション値とを用いて複合材料の架橋密度などの架橋構造及びフィラーポリマー間の相互作用を評価することが可能となる。この場合、シミュレーションに用いる未加硫ゴムとしては、架橋結合を含まない解析用モデルを用いる。
なお、図4に示した例では、3つのサンプルを用いて架橋形態を探索する例について説明したが、サンプル数を増やして繰り返し計算を実行して最適化することにより、最適解を得ることもできる。また、架橋密度及び架橋形態を探索する場合には、モデル化した複合材料の全体を探索の対象としてもよい。また、例えば、フィラーモデルの近傍などモデル化した複合材料の一部を探索対象としてもよい。
また、本実施の形態に係る複合材料のシミュレーション方法は、上述した複合材料の解析用モデルを用いた解析方法により解析した架橋構造又はフィラーとポリマーとの間の相互作用を用いて分子動力学法を用いた計算により特定物質の材料特性を解析する。これにより、複合材料でのフィラーとポリマーとの相互作用及び架橋構造を再現したシミュレーションを実施することができる。この場合、フィラーモデル11と全ポリマーモデル12との間の相互作用を設定してもよく、ポリマーモデル12の一部とフィラーモデル11との間には異なる相互作用を設定してもよい。これにより、末端変性ポリマーなどの一部のポリマーと及びフィラーとの間の相互作用、並びに、2種類のポリマーA、Bとの間の相互作用などを実測することが可能となる。
次に、本実施の形態に係る特定物質の解析結果の評価方法及び特定物質のシミュレーション方法について詳細に説明する。図5は、本発明の実施の形態に係る特定物質の解析結果の評価方法及び特定物質のシミュレーション方法を実行する解析装置の機能ブロック図である。
図5に示すように、本実施の形態に係る特定物質の解析結果の評価方法及び特定物質のシミュレーション方法は、処理部52と記憶部54とを含むコンピュータである解析装置50が実現する。この解析装置50は、入力手段53を備えた入出力装置51と電気的に接続されている。入力手段53は、複合材料の解析用モデルの作成対象であるポリマー及びフィラーの各種物性値、ポリマー及びフィラーを含有する複合材料を用いた伸張試験結果の実測結果、及び解析における境界条件などを処理部52又は記憶部54へ入力する。入力手段53としては、例えば、キーボード、マウスなどの入力デバイスが用いられる。
処理部52は、例えば、中央演算装置(CPU:CentraL1 Processing Unit)及びメモリを含む。処理部52は、各種処理を実行する際にコンピュータプログラムを記憶部54から読み込んでメモリに展開する。メモリに展開されたコンピュータプログラムは、各種処理を実行する。例えば、処理部52は、記憶部54から予め記憶された各種処理に係るデータを必要に応じて適宜メモリ上の自身に割り当てられた領域に展開し、展開したデータに基づいて複合材料の解析用モデルの作成及び複合材料の解析用モデルを用いた複合材料のシミュレーションに関する各種処理を実行する。
処理部52は、モデル作成部52aと、条件設定部52bと、解析部52cとを含む。モデル作成部52aは、予め記憶部54に記憶されたデータに基づき、分子動力学法により特定物質の解析用モデルを作成する際のフィラー及びポリマーなどの特定物質の粒子数、分子数、分子量、分子鎖長、分子鎖数、分岐、形状、大きさ、反応時間、反応条件及び作成する解析用モデルに含まれる分子数である目標分子数などの構成要素の配置、設定及び計算ステップ数などの粗視化モデルの設定、分子鎖間などの相互作用などの各種計算パラメーターの初期条件の設定を行う。
フィラー粒子11a間の相互作用及びポリマー粒子12a間の相互作用を調整する計算パラメーターとしては、下記式(1)で表されるレナード・ジョーンズポテンシャルのσ、εを用い、これらが調整される。ポテンシャルを計算する上限距離(カットオフ距離)を大きくすることで、遠距離まで働いた引力、斥力を調整できる。なお、フィラー粒子11a間の相互作用及びポリマー粒子12a間の相互作用が一定値になるまで順次、フィラー粒子11a間の相互作用及びポリマー粒子12a間の相互作用のパラメーターを小さくすることが好ましい。レナード・ジョーンズポテンシャルのσ、εを大きな値から徐々に本来の値に近づけることにより、分子を不自然な状態に導かない穏やかな速度で粒子の接近を行うことができる。また、カットオフ距離も徐々に小さくすることにより、適正な範囲で引力、斥力を調整できる。
Figure 0006492440
モデル作成部52aは、初期条件の設定の後、平衡化計算を行う。平衡化計算では、所定の温度、密度及び圧力で、初期設定後の各種構成要素が平衡状態に到達する所定の時間、分子動力学計算を行う。そして、モデル作成部52aは、初期条件の設定及び平衡化の計算処理後に、計算領域内に設定した複合材料の解析用モデルを作成するモデル作成領域内にポリマーモデル12及びフィラーモデル11を作成する。また、モデル作成部52aは、必要に応じてポリマーにフィラーとの親和性を高める水酸基、カルボニル基、及び原子団の官能基などの変性剤を配合してもよい。
条件設定部52bは、モデル作成部52aで作成した複合材料の解析用モデルを用いた分子動力学法による運動シミュレーション(解析)を実行するための各種条件を設定する。条件設定部52bは、入力手段53からの入力及び記憶部54に記憶されている情報に基づいて各種条件を設定する。各種条件としては、解析を実行するフィラーモデル11の位置及び数、フィラー原子、フィラー原子団、フィラー粒子11a及びフィラー粒子群の位置及び数、フィラー粒子11a番号、ポリマーの分子鎖の位置及び数、ポリマー原子、ポリマー原子団、ポリマー粒子12a及びポリマー粒子群の位置及び数、ポリマー粒子番号、予め設定した物理量履歴である応力ひずみ曲線及び条件を変更しない固定値などが含まれる。
解析部52cは、モデル作成部52aにより作成されたフィラーモデル11及びポリマーモデル12を含む特定物質の解析用モデルを用いた分子動力学法による緩和計算、伸張解析、せん断解析などの変形解析などの運動シミュレーションを実行して各種物理量を取得する。ここでの物理量としては、シミュレーションの結果得られる運動変位及び公称応力又は運動変位を演算して得られる公称ひずみなどが挙げられる。
解析部52cは、入力手段53によって入力された未加硫ゴム及びフィラー未配合のゴムなどの複合材料を用いて取得した材料特性の実測結果及び複合材料の解析用モデルを用いて取得した材料特性のシミュレーション結果に基づいてマッピングパラメーターを算出する。材料特性としては、応力ひずみ特性、粘弾性特性、周波数特性及びヒステリシス特性などが挙げられる。ここでは、解析部52cは、複合材料の材料特性の特性曲線を用いて実測結果とシミュレーション結果とを対比してマッピングパラメーターを算出してもよい。
また、解析部52cは、算出したマッピングパラメーターを用いて当該マッピングパラメーターの算出に用いた以外の複合材料の材料特性の実測結果をシミュレーション結果に変換する。また、解析部52cは、算出したマッピングパラメーターを用いて当該マッピングパラメーターの算出に用いた以外のシミュレーション結果を実測結果に変換する。ここでは、解析部52cは、複数の実測結果及び複数のシミュレーション結果を相互に変換してもよい。
また、解析部52cは、変換した実測結果とシミュレーション結果とを比較して複合材料の解析用モデルのパラメーターを決定する。ここでは、解析部52cは、例えば、変換した実測結果とシミュレーション結果との誤差を測定し、測定した誤差が予め設定した基準値以下であるか否かを判定して複合材料の解析用モデルのパラメーターを決定する。
また、解析部52cは、決定した複合材料の解析用モデルのパラメーターを用いて複合材料の材料特性の実測結果とシミュレーション結果とを対比して複合材料の架橋構造を解析する。さらに、解析部52cは、決定した複合材料の解析用モデルのパラメーターを用いて複合材料の材料特性の実測結果とシミュレーション結果とを対比してフィラーとポリマーとの間の相互作用を解析する。
また、解析部52cは、解析した架橋構造を用いて分子動力学法を用いた計算を実行する。また、解析部52cは、解析したフィラーとポリマーとの間の相互作用を用いて分子動力学法を用いた計算を実行する。
記憶部54は、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、フラッシュメモリ及びCD−ROMなどの読み出しのみが可能な記録媒体である不揮発性のメモリ、並びに、RAM(Random Access Memory)のような読み出し及び書き込みが可能な記録媒体である揮発性のメモリが適宜組み合わせられる。
記憶部54には、入力手段53を介して解析対象となる複合材料の解析用モデルを作成するためのデータであるゴムカーボンブラック、シリカ、及びアルミナなどのフィラーのデータ、ゴム、樹脂、及びエラストマーなどのポリマーのデータ、予め設定した物理量履歴である応力ひずみ曲線及び本実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法、複合材料のシミュレーション方法及び複合材料の解析結果の評価方法を実現するためのコンピュータプログラムなどが格納されている。このコンピュータプログラムは、コンピュータ又はコンピュータシステムに既に記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、本実施の形態に係る複合材料のシミュレーション方法を実現できるものであってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)及び周辺機器などのハードウェアを含むものとする。
表示手段55は、例えば、液晶表示装置等の表示用デバイスである。なお、記憶部54は、データベースサーバなどの他の装置内にあってもよい。例えば、解析装置50は、入出力装置51を備えた端末装置から通信により処理部52及び記憶部54にアクセスするものであってもよい。
次に、図6を参照して本実施の形態に係る特定物質の解析結果の評価方法の具体例について説明する。図6は、本実施の形態に係る特定物質の解析結果の評価方法の一例の概略を示すフロー図である。
図6に示すように、開始時には、モデル作成部52aが、入力手段53を介して予め記憶部54に記憶されたフィラー及びポリマーをモデル化するためのデータであるフィラー及びポリマーなどの特定物質の粒子数、分子数、分子量、分子鎖長、分子鎖数、分岐、形状、大きさ、反応時間、反応条件及び作成する解析用モデルに含まれる分子数である目標分子数などの構成要素の配置、予め設定した物理量履歴である応力ひずみ曲線及び条件を変更しない固定値などのフィラー及びポリマーをモデル化するための各種データを読込む。続いて、モデル作成部52aは、各種データに基づいて、初期条件の設定及び分子動力学計算により平衡化計算を行う。
次に、モデル作成部52aは、仮想空間である計算領域内に複合材料のフィラーモデル11及びポリマーモデル12を作成する。次に、条件設定部52bは、入力手段53からの入力又は記憶部54に記憶されている情報に基づいて、フィラーの解析用モデルを用いた分子動力学法による運動シミュレーション(解析)の条件を設定する。
次に、解析部52cは、入力手段53によって入力された複合材料を用いた伸張試験の実測結果のうち、少なくとも一つを選定する(ステップST11)。また、解析部52cは、モデル作成部52aによって作成された複合材料の解析用モデルを用いた伸張解析のシミュレーション結果のうち、少なくとも一つ選定する(ステップST12)。続いて、解析部52cは、選定した伸張試験の実測結果及び選定したシミュレーション結果に基づいてマッピングパラメーターを算出して設定する(ステップST13)。
次に、解析部52cは、設定したマッピングパラメーターを用いて当該マッピングパラメーターの算出に用いた以外の伸張試験の実測結果を伸張解析のシミュレーション結果に変換して実測値とシミュレーション値との間の誤差を算出する(ステップST21)。ここでは、解析部52cは、設定したマッピングパラメーターを用いて当該マッピングパラメーターの算出に用いた以外の伸張解析のシミュレーション結果を伸張試験の実測結果に変換して実測値とシミュレーション値との間の誤差を算出してもよい(ステップST21)。
続いて、解析部52cは、算出した誤差が予め設定された誤差の基準値以下であるか否かを判定する(ステップST31)。そして、解析部52cは、最小二乗法などにより算出した誤差が基準値を超えている場合(ステップST31:No)には、複合材料を用いた伸張試験の実測結果及び複合材料の解析用モデルを用いた伸張解析のシミュレーション結果に基づいてマッピングパラメーターを更新する(ステップST41)。ここでは、解析部52cは、基準値を超えた誤差に所定の係数を積算してマッピングパラメーターを更新してもよい。解析部52cは、最小二乗法などにより算出した誤差が予め設定された誤差の基準値以下である場合(ステップST31:Yes)には、設定したマッピングパラメーターを用いて当該マッピングパラメーターの算出に用いた以外の複合材料を用いた伸張試験の実測結果の実測値と複合材料の解析用モデルを用いた伸張解析のシミュレーション値とを比較し、マッピングパラメーターを決定する(ステップST51)。
そして、解析部は、得られたマッピングパラメーターを用いて当該マッピングパラメーターの算出に用いていない特定物質を用いて取得した材料特性の実測結果をシミュレーション結果に変換する。また、解析部52cは、得られたマッピングパラメーターを用いて当該マッピングパラメーターの算出に用いていない特定物質の解析用モデルを用いて取得した材料特性のシミュレーション結果を実測結果に変換する。続いて解析部52cは、変換した実測結果とシミュレーション結果とを比較して特定物質の解析用モデルのパラメーターを決定する。その後、解析部52cは、決定した特定物質の解析用モデルのパラメーターを用いて各種複合材料の解析用モデルのシミュレーション値を解析する。最後に、解析部52cは、得られた解析結果を記憶部54に格納して解析を終了する。
以上説明したように、上記実施の形態に係る複合材料の解析結果の評価方法によれば、複合材料の材料特性の実測結果、及びフィラーモデル11、ポリマーモデル12などの複合材料の解析用モデルを用いたシミュレーション結果に基づいてマッピングパラメーターを決定する。そして、決定したマッピングパラメーターを用いて複合材料の解析用モデルのパラメーターを決定するので、複合材料の材料特性の実測値と複合材料の材料特性のシミュレーション値とを精度良く一致させて比較して評価できる複合材料の解析結果の評価方法を実現できる。
1 解析用モデル
11 フィラーモデル
11a フィラー粒子
12 ポリマーモデル
12a ポリマー粒子
13、14、15 結合鎖
50 解析装置
51 入出力装置
52 処理部
52a モデル作成部
52b 条件設定部
52c 解析部
53 入力手段
54 記憶部
55 表示手段

Claims (10)

  1. コンピュータを用いて分子動力学法により作成した複数の物質を含む特定物質の解析用モデルを用いて解析した解析結果の評価方法であって、
    特定物質を用いて取得した材料特性の実測結果及び特定物質の解析用モデルを用いて取得した材料特性のシミュレーション結果に基づいて、前記特定物質の一部の物質のマッピングパラメーターを算出する第1ステップと、
    前記マッピングパラメーターを用いて前記第1ステップで用いていない特定物質を用いて取得した材料特性の実測結果をシミュレーション結果に変換し、及び、前記第1ステップで用いていない特定物質の解析用モデルを用いて取得した材料特性のシミュレーション結果を実測結果に変換する第2ステップと、
    前記第2ステップで一部の特定物質について、前記シミュレーション結果から変換した前記実測結果と、前記第2ステップで一部の特定物質について、前記実測結果から変換した前記シミュレーション結果とを比較して、実測結果とシミュレーション結果との誤差を測定し、測定した誤差が予め設定した基準値以下となる値で、前記特定物質の解析用モデルのパラメーターを決定する第3ステップと、
    を含み、
    前記マッピングパラメーターは、実測結果に対して積算することにより実測結果の実測値をシミュレーション値に変換できる値、または、マッピングパラメーターの逆数をシミュレーション結果に積算することにより、シミュレーション値を実測値に変換できる値であることを特徴とする、特定物質の解析結果の評価方法。
  2. 前記第1ステップにおいて、前記特定物質の材料特性の特性曲線を用いて前記実測結果と前記シミュレーション結果とを対比して前記マッピングパラメーターを算出する、請求項1に記載の特定物質の解析結果の評価方法。
  3. 前記第1ステップにおいて、前記特定物質として未加硫ゴムを用いて前記マッピングパラメーターを算出する、請求項1又は請求項2に記載の特定物質の解析結果の評価方法。
  4. 前記第1ステップにおいて、前記特定物質としてフィラー未配合のゴムを用いて前記マッピングパラメーターを算出する、請求項1又は請求項2に記載の特定物質の解析結果の評価方法。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の特定物質の解析結果の評価方法をコンピュータに実行させることを特徴とする、特定物質の解析結果の評価用コンピュータプログラム。
  6. 請求項3に記載の特定物質の解析結果の評価方法で得られた特定物質の解析用モデルのパラメーターを用いて特定物質の架橋構造を解析することを特徴とする、特定物質の解析方法。
  7. 前記特定物質は、フィラー及びポリマーを含有する複合材料であり、
    請求項4に記載の特定物質の解析結果の評価方法で得られた特定物質の解析用モデルのパラメーターを用いて特定物質に含まれるフィラーとポリマーとの間の相互作用を解析することを特徴とする、特定物質の解析方法。
  8. 請求項6に記載の特定物質の解析方法により解析した架橋構造を用いて分子動力学法を用いた計算を実施することを特徴とする、特定物質のシミュレーション方法。
  9. 請求項7に記載の特定物質の解析方法により解析したフィラーとポリマーとの間の相互作用を用いて分子動力学法を用いた計算を実施することを特徴とする、特定物質のシミュレーション方法。
  10. 請求項8又は請求項9に記載の特定物質のシミュレーション方法をコンピュータに実行させることを特徴とする、特定物質のシミュレーション用コンピュータプログラム。
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