以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る接合構造30を含む自動車車体100(以下では、単に「車体100」ともいう。)の一部を示す模式的な斜視図である。図2は、車体100の一部を示す断面図であり、長さ方向Xから見た状態を示している。図1および図2を参照して、車体100は、自動車の車体である。
なお、以下では、図1に示す接合構造30の長手方向を長さ方向Xという。長さ方向Xは、図2の紙面奥側を正とする。また、接合構造30の幅方向を幅方向Yという。幅方向Yは、図1および図2の左右方向であり、紙面左方向を正とする。また、長さ方向Xおよび幅方向Yの双方に直交する方向を高さ方向Zという。高さ方向Zは、図1および図2の紙面上側を正とする。長さ方向X、幅方向Y、および、高さ方向Zは、それぞれ、車体100の車長方向、車幅方向、車高方向とは一致していてもよいし、一致していなくてもよい。以下では、幅方向Yの一方側を「一端側」といい、他方側を「他端側」という。
車体100は、第1部材1と、第2部材2と、を有している。
本実施形態では、第1部材1は、例えば車体100の外装部材であり、自動車の自重およびサスペンションからの外力を受け持つ骨格部材ではない。このような外装部材として、自動車の外板パネル、リアクォーターパネル、ルーフパネル、ドアパネル(ドアインナーパネル、ドアアウターパネル)、ボンネットフード(フードインナーパネル、フードアウターパネル)を例示できる。なお、第1部材1は、上記で例示した部材以外の部材であってもよい。
第2部材2は、例えば車体100の外装部材または骨格部材である。このような骨格部材として、フロントサイドメンバ、Aピラー、Bピラー、Cピラー、サイドシル、リアサイドメンバ、クロスメンバを例示できる。なお、第2部材2は、車体100を構成する部材であればよく、上記で例示した部材以外の部材であってもよい。
第1部材1は、薄板をプレス加工することによって薄板状に形成されている。第1部材1を構成する薄板は、例えば軟鋼板である。第1部材1および第2部材2を構成する材料は、鋼、アルミニウム、マグネシウム、および、繊維強化されたものを含む樹脂製の板、および、管であり、第1部材1と第2部材2の材質や形状が異なってもよい。第1部材1および第2部材2は、それぞれ、単一材料で形成されていてもよいし、複合材料で形成されていてもよい。第1部材1と第2部材2の接合方法は、スポット、レーザ、アーク、シーム等の溶接、リベット、かしめ、ボルト締結等の機械接合、および、接着剤等による接着を含む。
第1部材1は、第1本体11と、第1縦壁12と、第1フランジ13と、を有している。
第2部材2は、第2本体21と、第2縦壁22と、第2フランジ23と、を有している。
第1本体11から、第1縦壁12が延びている。第1縦壁12の他端に第1本体11が連続しており、第1縦壁12の一端に第1フランジ13が連続している。第1フランジ13は、第2部材2の第2フランジ23に接合されている。
第2部材2においては、第2本体21から、第2縦壁22が延びている。第2縦壁22の他端に第2本体21が連続しており、第2縦壁22の一端に第2フランジ23が連続している。第1フランジ13と第2フランジ23は、高さ方向Zに対向配置されている。
車体100には、第1フランジ13および第2フランジ23を含む接合構造30が設けられている。
接合構造30は、第1フランジ13と、第2フランジ23と、空隙形成部31と、接合部32と、接触部33と、を有している。
第1フランジ13は、第1湾曲部41と、第1接触部45と、第1空隙形成部42と、第1エッジ部43と、を有している。
第1湾曲部41は、長さ方向Xから見て湾曲した形状に形成されており、第2部材2に向けて凸となる円弧状に形成されている。第1湾曲部41は、接触部33から他端側に遠ざかるに従い第2フランジ23との距離が増すように高さ方向Zの一方に延びている。第1湾曲部41の他端が第1縦壁12に連続しており、第1湾曲部41の一端が第1接触部45を介して第1空隙形成部42に連続している。
第1空隙形成部42は、第2フランジ23の後述する第2空隙形成部52と協働して空隙34を形成している。第1空隙形成部42と第2空隙形成部52とによって、空隙形成部31が形成されている。第1空隙形成部42は、長さ方向Xから見て例えば略U字状に形成されている。幅方向Yにおける第1空隙形成部42の一端および他端は、第2フランジ23に接触している一方、第1空隙形成部42の中間部は、第2フランジ23とは離隔している。この離隔している部分としての第1空隙形成部42の中間部と第2フランジ23の第2空隙形成部52との間に、空隙34が形成されている。第1空隙形成部42の一端は、第1エッジ部43に連続している。
第1エッジ部43は、幅方向Yにおける第1部材1のエッジ部(端縁部分)である。第1エッジ部43は、幅方向Yにおける第1フランジ13の先端部でもある。第1エッジ部43の他端(基端)が第1空隙形成部42に連続している。第1エッジ部43の一端(先端)は、自由端である。
第2フランジ23は、第2湾曲部51と、第2接触部55と、第2空隙形成部52と、第2エッジ53と、を有している。
第2湾曲部51は、長さ方向Xから見て湾曲した形状に形成されており、第1部材1に向けて凸となる円弧状に形成されている。第2湾曲部51は、接触部33から他端側に遠ざかるに従い第1フランジ13との距離が増すように高さ方向Zの他方に延びている。第2湾曲部51の他端が第2縦壁22に連続しており、第2湾曲部51の一端が第2接触部55を介して第2空隙形成部52に連続している。
第2空隙形成部52は、長さ方向Xから見て例えば略U字状に形成されている。幅方向Yにおける第2空隙形成部52の一端52aおよび他端52bは、第1空隙形成部42に接触している一方、第2空隙形成部52の中間部は、第1フランジ13とは離隔している。前述したように、空隙34は、接合部32と接触部33の間の位置において、第1フランジ13と第2フランジ23(第1空隙形成部42と第2空隙形成部52)とが互いに離隔していることでこれら第1フランジ13と第2フランジ23との間に形成されている。空隙34の幅および高さは、接触部33におけるフランジ13,23同士の目標摩擦力等に応じて適宜設定される。第2空隙形成部52の一端は、第2エッジ53に連続している。
第2エッジ53は、幅方向Yにおける第2部材2のエッジ部分(端縁部分)である。第2エッジ53は、幅方向Yにおける第2フランジ23の先端部でもある。第2エッジ53の一端(基端)が第2空隙形成部52に連続しており、第2エッジ53の一端(先端)は、自由端である。本実施形態では、第2エッジ53は、幅方向Yに沿って延びている。本実施形態では、第1エッジ部43と第2エッジ部53との間には、隙間が形成されている。
接合部32は、第1フランジ13と第2フランジ23とが(後述する第1フランジ素材と第2フランジ素材とが)、少なくとも一方が他方側へ潰された状態で互いに接合されることで形成されている。本実施形態では、接合部32は、第1フランジ13が第2フランジ23側へ潰され、且つ、第2フランジ23が第1フランジ13側へ潰された状態でこれらのフランジ13,23が互いに接合されることで形成されている。この場合の接合として、スポット溶接を例示できる。接合部32は、例えば長さ方向Xに間欠的にスポット溶接が施されることで形成されている。なお、接合部32は、長さ方向Xの全域に亘って第1フランジ13と第2フランジ23とを互いに押し付けた状態で接合することで形成されていてもよい。
接合部32は、第1フランジ13に形成された第1接合部44と、第2フランジ23に形成された第2接合部54と、を有している。
第1接合部44は、本実施形態では、第1空隙形成部42のうち第1エッジ部43寄りの一端42aに設けられており、幅方向Yに延びている。第1空隙形成部42は、第1フランジ13の素材である第1フランジ素材を第2フランジ23の素材である第2フランジ素材側へ潰して塑性変形することで形成されており、第1空隙形成部42の他端42b(第1接触部45)を第2フランジ23の第2接触部55側に押している。第2接合部54は、第2フランジ23のうち第1接合部44と接合によって接合されている部分であり、第2空隙形成部52のうち第2エッジ53寄りの一端52aに形成されており、幅方向Yに延びている。第2空隙形成部52は、第2フランジ23の素材である第2フランジ素材を第1フランジ13の素材である第1フランジ素材側へ潰して変形することで形成されており、第2空隙形成部52の他端52(第2接触部55)を第1フランジ13の第1接触部45側に押している。
接触部33は、接合部32とは離隔した位置において、第1フランジ13と第2フランジ23とが摺動可能に接触することで形成されている。
接触部33は、第1フランジ13に形成された第1接触部45と、第2フランジ23に形成された第2接触部55と、を有している。
第1接触部45は、本実施形態では、第1空隙形成部42のうち第1湾曲部41側の他端42bに設けられており、幅方向Yに延びている。第1接触部45は、第1湾曲部41の一端に形成されているともいえる。前述したように、第1接触部45は、第2フランジ23の第2接触部55側に押し付けられている。第2接触部55は、本実施形態では、第2空隙形成部52のうち第2湾曲部51側の他端52b側に設けられており、幅方向Yに延びている。第2接触部55は、第2湾曲部51の他端に設けられているともいえる。第2接触部55は、第2フランジ23のうち第1接触部45と押し付けられている部分であり、第1接触部45と擦れることで振動エネルギーを熱エネルギーに変換して減衰させる。第1接触部45と第2接触部55とは、接着剤を介さずに直接接触している。この場合の「直接」とは、第1フランジ13を構成する鋼板、この鋼板の表面に形成される塗装層、この鋼板の表面に形成されるめっき層、および、このめっき層の表面に形成される塗料層の何れかと、第2フランジ23を構成する鋼板、この鋼板の表面に形成される塗装層、この鋼板の表面に形成されるめっき層、および、このめっき層の表面に形成される塗料層の何れかと、が互いに接触することをいう。
上述の構成を 有する接合構造30を含む車体100は、エンジンからの振動、サスペンションからの振動や、車両表面における空気の圧力変動によって生じる振動によって、加振力を入力される。この加振力は、車体100の骨格を伝搬して接合構造30に伝達される。接合構造30では、第1接触部45と第2接触部55とが、この加振力によって互いに摺動し、振動を減衰する。すなわち、第1接触部45が第2接触部55に対して摺動することで、上記の加振力が熱エネルギーとして消費されて減衰される。その結果、振動音(パネル振動音)を抑制できる。このように、接合されたフランジ13,23の板間摩擦による振動エネルギー減衰効果を活用することで、第1部材1および第2部材2の板厚を薄くした場合でも、車体振動を抑制できるとともに自動車が発する騒音を抑制できる。
また、本実施形態では、湾曲部41,51の一端に接触部33が設けられている。この構成であれば、フランジ13,23同士の接触力が特に高い箇所としての湾曲部41,51の一端に接触部45,55が設けられていることで、第1接触部45と第2接触部55との摩擦摺動によるエネルギー減衰量をより多くできる。
以上が、車体100の概略構成である。次に、車体100の製造方法の一例を説明する。
図3(A)および図3(B)は、車体100の第1フランジ13を接合により第2フランジ23に接合する工程を説明するための模式的な断面図である。第1フランジ13を第2フランジ23に接合する際には、まず、図3(A)に示されている第1フランジ素材61と第2フランジ素材62とを準備する。第1フランジ素材61は、第1フランジ13の素材であり、第2フランジ素材62は、第2フランジ23の素材である。
第1フランジ素材61は、第1フランジ13のうち第1空隙形成部42の中間部から幅方向Yの一端側に位置している部分が平板状に形成されている点以外は、第1部材1とほぼ同じ形状に形成されている。すなわち、第1フランジ素材61は、第1本体11と、第1縦壁12と、第1フランジ予定部71と、を有している。第1フランジ予定部71は、第1湾曲部41と、第1接触部45と、第1空隙形成部42の他端42bと、第1空隙形成部42の中間部から幅方向Yの一端側に延びる第1平板部72と、を有している。そして、第1空隙形成部42の他端42bと、第1平板部72とによって、第1凹部73が形成されている。この第1凹部73は、第1フランジ素材61と第2フランジ素材62とを当接させた際に第1フランジ素材61と第2フランジ素材62とが離隔した部分となる。
同様に、第2フランジ素材62は、第2フランジ23のうち第2空隙形成部52の中間部から幅方向Yの一端側に位置している部分が平板状に形成されている点以外は、第2部材2と同じ形状に形成されている。すなわち、第2フランジ素材62は、第2本体21と、第2縦壁22と、第2フランジ予定部81と、を有している。第2フランジ予定部81は、第2湾曲部51と、第2接触部55と、第2空隙形成部52の他端52bと、第2空隙形成部52の中間部から幅方向Yの一端側に延びる第2平板部82と、を有している。そして、第2空隙形成部52の他端52bと、第2平板部82とによって、第2凹部83が形成されている。この第2凹部83は、第1フランジ素材61の第1接触部45と第2フランジ素材62の第2接触部55とを当接させた際に第1フランジ素材61と第2フランジ素材62とが離隔した部分となる。
第1フランジ素材61と第2フランジ素材62とを準備した後、これら第1フランジ素材61の第1接触部45と第2フランジ素材62の第2接触部55とを対向させる。このとき、平板部72,82は、平行に、または、対応するエッジ部43,53側に向かって互いの隙間が拡がるように、互いに非平行に配置される。そして、凹部73,83において第1フランジ素材61と第2フランジ素材62とを互いに突き合わせることで、凹部73,83を図3(B)に示すように、変形させる。具体的には、スポット溶接ガン90のクランプが、凹部73,83のうち、接合部32とする箇所を互いに接触するようにフランジ素材61,62を挟み込む。これにより、フランジ素材61,62のうち接合部32となる部分が突き合わせられ、この突き合わせられた部分をスポット溶接等によって接合することで、接合部32が形成される。このとき、接合部32から離隔した位置の接触部33において、平板部72,82の変形によって、第1接触部45と第2接触部55とが摺動可能に押しつけられる。
このように、スポット溶接前に接合部32となる部分の近傍に隙間(凹部73,83)ができるようにフランジ素材61,62を成形し、スポット溶接ガン90によってこのフランジ素材61,62を挟みながらフランジ素材61,62を強制的に接触させながら接合を行う。これにより、第1接触部45と第2接触部55とが接合部32以外の箇所である接触部33で強く接触する。
上述の工程により、第1フランジ13が形成されるとともに、第2フランジ23が形成され、且つ、これらのフランジ13,23が接合部32で互いに接合される。なお、フランジ素材61の凹部73およびフランジ素材62の凹部83の何れか一方が無くてもよい。凹部が設けられないフランジ素材のフランジ予定部は、平坦に形成される。
以上説明したように、本実施形態によると、凹部73,83をスポット溶接ガン90のクランプで挟みながら接合を行うという簡易な作業で、接合部32と、振動エネルギーを減衰可能な接触部33と、を形成できる。
なお、上述の形態では、接触部33が湾曲部41,51の一端に設けられる形態を例に説明したけれども、この通りでなくてもよい。なお、以下では、上述の実施形態と異なる構成について主に説明し、上述の実施形態と同様の構成には図に同様の符号を付して詳細な説明を省略する場合がある。
<第1実施形態の第1変形例>
図4(A)は、第1変形例を示す図であり、長さ方向Xから見た断面を示している。上述の実施形態では、第2部材2に湾曲部(第2湾曲部51)が形成された構成を例に説明したけれども、この通りでなくてもよい。第2部材2に代えて、図4(A)に示すように、湾曲部が設けられていない第2部材2Aが設けられてもよい。第2部材2Aの第2フランジ23Aは、例えば平板状に形成されている。また、上述の実施形態では、第2フランジ23の第2空隙形成部52が長さ方向Xから見てU字状に形成されていた。一方、第1変形例の接合構造30Aでは、第2部材2Aの第2フランジ23Aの第2空隙形成部52が、幅方向Yに沿って真っ直ぐに延びる平板状に形成されている。
<第1実施形態の第2変形例>
図4(B)は、第2変形例を示す図であり、長さ方向Xから見た断面を示している。上記第1変形例では、第2フランジ23Aに湾曲部が設けられていなかった。一方、第2変形例の接合構造30Bでは、第2フランジ23Bに第2湾曲部51と第2縦壁22とが設けられている。
<第1実施形態の第3変形例>
図5(A)は、第3変形例を示す図であり、長さ方向Xから見た断面を示している。第2変形例では、第1部材1に第1湾曲部41および第1縦壁12が設けられた形態を例に説明したけれども、この通りでなくてもよい。第1部材1に代えて、図5(A)に示すように、湾曲部および縦壁が設けられていない第1部材1Cが設けられてもよい。この接合構造30Cにおいて、第1部材1Cの第1本体11は、第1接触部45に直接連続している。
<第1実施形態の第4変形例>
図5(B)は、第4変形例を示す図であり、長さ方向Xから見た断面を示している。上述の実施形態では、幅方向Yの他端から一端に沿って、湾曲部41,51、接触部33、空隙形成部31、接合部32の順に並んでいた。しかしながら、この通りでなくてもよい。図5(B)に示す第4変形例の接合構造30Dでは、幅方向Yの他端から一端に沿って、湾曲部41,51、接合部32、空隙形成部31、接触部33の順に配置されている。この第4変形例では、接触部33が、フランジ13D,23Dのエッジ部43,53に配置されている。幅方向Yにおける接触部33の長さは、第1接触部45と第2接触部55との間の目標摩擦抵抗力の圧力等に応じて適宜設定される。また、接触部33と湾曲部41,51との間に接合部32が配置されている。
以上が、第4変形例の概略構成である。次に、この第4変形例の製造方法の一例を説明する。
図6(A)および図6(B)は、第1フランジ13Dを第2フランジ23Dに接合する工程を説明するための模式的な断面図である。第1フランジ13Dを第2フランジ23Dに接合する際には、まず、図6(A)に示されている第1フランジ素材61Dと第2フランジ素材62Dとを準備する。
第1フランジ素材61Dは、第1フランジ13Dの素材であり、第2フランジ素材62Dは、第2フランジ23Dの素材である。第1フランジ素材61Dは、第1フランジ13Dのうち第1空隙形成部42の中間部から第1湾曲部41までの部分が平板状に形成されている点以外は、第1部材1Dと同じ形状に形成されている。すなわち、第1フランジ素材61Dは、第1本体11と、第1縦壁12と、第1フランジ予定部71Dと、を有している。第1フランジ予定部71Dは、第1空隙形成部42の一端42aと、この一端42a(第1エッジ部43)に形成された第1接触部45と、第1空隙形成部42の中間部から幅方向Yの他端側に延びる第1平板部72Dと、第1湾曲部41と、を有している。そして、第1空隙形成部42の一端42aと、第1平板部72Dとによって、第1凹部73Dが形成されている。この第1凹部73Dは、第1フランジ素材61Dと第2フランジ素材62Dとを当接させた際に第1フランジ素材61Dと第2フランジ素材62Dとが離隔した部分となる。
同様に、第2フランジ素材62Dは、第2フランジ23Dのうち第2空隙形成部52の中間部から第2湾曲部51までの部分が平板状に形成されている点以外は、第2部材2Dと同じ形状に形成されている。すなわち、第2フランジ素材62Dは、第2本体21と、第2縦壁22と、第2フランジ予定部81Dと、を有している。第2フランジ予定部81Dは、第2空隙形成部52の一端52aと、この一端52a(第2エッジ部53)に形成された第2接触部55と、第2空隙形成部52の中間部から幅方向Yの他端側に延びる第2平板部82Dと、第2湾曲部51と、を有している。そして、第2空隙形成部52の一端52aと、第2平板部82Dとによって、第2凹部83Dが形成されている。この第2凹部83Dは、第1フランジ素材61Dと第2フランジ素材62Dとを当接させた際に第1フランジ素材61Dと第2フランジ素材62Dとが離隔した部分となる。
第1フランジ素材61Dと第2フランジ素材62Dとを準備した後、これら第1フランジ素材61Dの第1接触部45と第2フランジ素材62Dの第2接触部55とを対向させる。このとき、平板部72D,82Dは、平行に、または、対応するエッジ部43,53側に向かって互いの隙間が狭くなるように、互いに非平行に、または、エッジ部43,53の近傍に湾曲部を形成した状態で配置される。そして、凹部73D,83Dにおいて第1フランジ素材61Dと第2フランジ素材62Dとを互いに突き合わせることで、図6(B)に示すように、凹部73D,83Dを変形させる。具体的には、スポット溶接ガン90のクランプが、接合部32とする箇所を互いに接触するようにフランジ素材61D,62Dを挟み込む。これにより、フランジ素材61D,62Dのうち接合部32となる部分が突き合わせられ、この突き合わせられた部分をスポット溶接することで、接合部32が形成される。このとき、接合部32から離隔した位置の接触部33において、第1フランジ素材61Dと第2フランジ素材62Dとが摺動可能に押される。
このように、スポット溶接前に接合部32となる部分の近傍に隙間(凹部73D,83Dの隙間)ができるようにフランジ素材61D,62Dを成形し、スポット溶接ガン90によってフランジ素材61D,62Dを挟みながらフランジ素材61D,62Dを強制的に接触させながら接合を行う。これにより、第1接触部45と第2接触部55とが接合部32以外の箇所で強く接触する。
<第1実施形態の第5変形例>
図7(A)は、第5変形例を示す図であり、長さ方向Xから見た断面を示している。上述の第4変形例では、第2部材2Dに湾曲部(第2湾曲部51)が形成された構成を例に説明したけれども、この通りでなくてもよい。第2部材2Dに代えて、図7(A)に示すように、接合構造30Eにおいて、湾曲部が設けられていない平板状の第2部材2Eが設けられてもよい。
<第1実施形態の第6変形例>
図7(B)は、第6変形例を示す図であり、長さ方向Xから見た断面を示している。上述の第5変形例では、第2部材2Eは、湾曲部および縦壁が形成されていない平坦な部材であった。一方、第6変形例の接合構造30Fの第2部材2Fには、第2湾曲部51および第2縦壁22が設けられている。
<第1実施形態の第7変形例>
図8は、第7変形例を示す図であり、長さ方向Xから見た断面を示している。上述の第6変形例では、第1部材1Dは、第1湾曲部41および第1縦壁12を有していた。一方、第7変形例の接合構造30Gの第1部材1Gでは、湾曲部および縦壁が設けられていない。第1部材1Gでは、第1接合部44の他端側に、幅方向Yに沿って他端側に進むに従い高さ方向Zの一方に僅かに上がる傾斜部が形成され、この傾斜部の他端に第1本体11が連続している。
<第1実施形態の第8変形例>
図9は、第8変形例を示す図であり、幅方向Yから見た断面を示している。接合構造30に代えて、図9に示す第8変形例では、接合構造30Hが設けられている。接合構造30Hは、第1フランジ13Hと第2フランジ23Hとに互いに対称形状のエンボス形状部を複数設け、このエンボス形状部の隙間を狭めて接合することで形成されている。
接合構造30Hは、第1フランジ13Hと、第2フランジ23Hと、接合部32と、接合部32を挟んで配置された一対の空隙形成部31,31と、接触部33と、を有している。
第1フランジ13Hおよび第2フランジ23Hは、長さ方向Xを長手方向として延びており、高さ方向Zに対向配置されている。この第8変形例では、長さ方向Xにおいて、2つの接合部32,32の間に接触部33が配置されている。また、長さ方向Xの端部にも、接触部33が配置されている。幅方向Yにおける第1フランジ13Hの端部に、第1縦壁12が連続している。同様に、幅方向Yにおける第2フランジ23Hの端部に、第2縦壁22が連続している。
本実施形態では、長さ方向Xの他端側から一端側にかけて、接触部33、一方の空隙形成部31、接合部32、および、他方の空隙形成部31を一つの組として、この組が複数配置されている。
第1フランジ13Hは、第1接触部45と、一対の第1空隙形成部42,42と、これら第1空隙形成部42,42の間に配置された第1接合部44と、を有している。
第2フランジ23Hは、第2接触部55と、一対の第2空隙形成部52,52と、これら第2空隙形成部52,52の間に配置された第2接合部54と、を有している。
接合部32は、第1フランジ13Hと第2フランジ23Hとが、少なくとも一方が他方側へ潰された状態で互いに接合されることで形成されている。本実施形態では、接合部32は、第1フランジ13Hが第2フランジ23H側へ潰され、且つ、第2フランジ23Hが第1フランジ13H側へ潰された状態でこれらのフランジ13H,23Hが互いに接合されることで形成されている。
実施形態の構成と同様に、第1接触部45は、第1空隙形成部42が素材の変形によって形成されることで第2フランジ23H側に押されている。また、第2接触部55は、第2空隙形成部52が素材の変形によって形成されることで第2フランジ23H側に押されている。このような構成により、第1接触部45は、第2接触部55と擦れることで振動エネルギーを熱エネルギーに変換して減衰させる。
次に、フランジ13H,23Hの接合方法(車体の製造方法)の一例を説明する。
図10は、第1フランジ13Hを第2フランジ23Hに接合する工程を説明するための模式的な斜視図である。図11(A)および図11(B)は、第1フランジ13Hを第2フランジ23Hに接合する工程を説明するための模式的な断面図である。第1フランジ13Hを第2フランジ23Hに接合する際には、まず、図10および図11(A)に示されている第1フランジ素材61Hと第2フランジ素材62Hとを準備する。第1フランジ素材61Hは、第1フランジ13Hの素材であり、第2フランジ素材62Hは、第2フランジ23Hの素材である。
第1フランジ素材61Hは、第1フランジ13Hのうち一対の第1空隙形成部42,42および第1接合部44が形成される部分が全体的に第1接触部45に対して窪んでいる以外の点は、第1フランジ13Hと同じ形状に形成されている。すなわち、第1フランジ素材61Hは、第1接触部45と、第1凹部73Hと、を有している。第1接触部45と第1凹部73とが長さ方向Xに交互に配置されている。この第1凹部73Hは、第1フランジ素材61Hと第2フランジ素材62Hとを当接させた際に第1フランジ素材61Hと第2フランジ素材62Hとが離隔した部分となる。
同様に、第2フランジ素材62Hは、第2フランジ23Hのうち一対の第2空隙形成部52,52および第2接合部54が形成される部分が全体的に第2接触部55に対して窪んでいる以外の点は、第2フランジ23Hと同じ形状に形成されている。すなわち、第2フランジ素材62Hは、第2接触部55と、第2凹部83Hと、を有している。第2接触部55と第2凹部83Hとが長さ方向Xに交互に配置されている。この第2凹部83Hは、第1フランジ素材61Hと第2フランジ素材62Hとを当接させた際に第1フランジ素材61Hと第2フランジ素材62Hとが離隔した部分となる。
第1フランジ素材61Hと第2フランジ素材62Hとを準備した後、これら第1フランジ素材61Hの第1接触部45と第2フランジ素材62Hの第2接触部55とを接触させつつ、凹部73H,83Hにおいて第1フランジ素材61Hと第2フランジ素材62Hとを互いに突き合わせる。これにより、図11(B)に示すように、凹部73H,83Hを変形させる。具体的には、スポット接合ガン90のクランプが、凹部73H,83Hのうち、接合部32とする箇所を互いに接触するようにフランジ素材61H,62Hを挟み込む。これにより、フランジ素材61H,62Hのうち接合部32となる部分が突き合わせられ、この突き合わせられた部分をスポット溶接等によって接合することで、接合部32が形成される。このとき、接合部32から離隔した位置の接触部33において、第1フランジ素材61Hと第2フランジ素材62Hとが摺動可能に押される。
このように、スポット接合前に接合部32となる部分に隙間(凹部73H,83H)ができるようにフランジ素材61H,62Hを成形し、スポット接合ガン90によってフランジ素材61H,62Hを挟みながらフランジ素材61H,62Hを強制的に接触させながら接合を行う。これにより、第1接触部45と第2接触部55とが接合部32以外の箇所(接触部33)で強く接触する。
上述の工程により、第1フランジ13Hが形成されるとともに、第2フランジ23Hが形成され、且つ、これらのフランジ13H,23Hが互いに接合される。
なお、上記の第8変形例においては、幅方向Yの全域において接合部32が形成されてもよいし、一部にのみ接合部32が形成されてもよい。長さ方向Xにおけるフランジ13H,23Hの一部に接合部32が形成される場合、第1フランジ素材61Hおよび第2フランジ素材62Hをスポット接合ガン90で接合する際に、長さ方向Xにおける凹部73H,83Hの一部のみが変形および接合される。
<第2実施形態>
図12は、本発明の第2実施形態に係る自動車車体600(以下では、単に「車体600」ともいう。)の一部を示す模式的な斜視図である。図13は、車体600の一部を示す図であり、長さ方向Xから見た状態を示している。
なお、第2実施形態では、図12に示す車体600の接合構造570の長手方向を長さ方向Xという。長さ方向Xは、図13の紙面奥側を正とする。また、接合構造570の幅方向を幅方向Yという。幅方向Yは、図12および図13の左右方向であり、紙面左方向を正とする。また、長さ方向Xおよび幅方向Yの双方に直交する方向を高さ方向Zという。高さ方向Zは、図12および図13の紙面上側を正とする。長さ方向X、幅方向Y、および、高さ方向Zは、それぞれ、車体600の車長方向、車幅方向、車高方向とは一致していてもよいし、一致していなくてもよい。以下では、幅方向Yの一方側を「一端側」といい、他方側を「他端側」という。
車体600は、パネル501と、骨格部材504と、を有している。
本実施形態では、パネル501は、例えば車体600の外装部材であり、パネル501以外の自動車の自重およびサスペンションからの外力を受け持つ骨格部材ではない。このような外装部材として、自動車の外板パネル、ルーフパネル、リアクォーターパネル、ボンネットフード(フードインナーパネル、フードアウターパネル)、ドアパネル(ドアインナーパネル、ドアアウターパネル)を例示できる。なお、パネル501は、上記で例示した部材以外の外装部材であってもよい。パネル501は、薄板をプレス加工することによって薄板状に形成されている。
骨格部材504は、車体600の骨格部材として設けられている。このような骨格部材504として、フロントサイドメンバ、Aピラー、Bピラー、Cピラー、サイドシル、リアサイドメンバ、クロスメンバを例示できる。なお、骨格部材504は、自動車600のうち当該骨格部材504以外の部品の重量、および、サスペンションからの荷重を受ける部材であればよく、上記で例示した部材以外の部材であってもよい。
パネル501は、パネル本体511と、パネル縦壁512と、第1フランジ513と、を有している。
骨格部材504は、第1半部502と、この第1半部502に組み合わされた第2半部503と、を有している。
第1半部502は、本実施形態では、クランク状断面を有しており、第1本体521と、第1縦壁522と、第2フランジ523と、を有している。
第2半部503は、本実施形態では、クランク状断面を有しており、第2本体531と、第2縦壁532と、第3フランジ533と、を有している。
パネル501を構成する薄板は、例えば軟鋼板である。パネル501、第1半部502、および、第2半部503を構成する材料として、鋼、アルミニウム、マグネシウム、および、繊維強化されたものを含む樹脂製の板、および、管を例示でき、パネル501と第1半部502と第2半部503の材質や形状が異なってもよい。パネル501、第1半部502、および、第2半部503は、それぞれ、単一材料で形成されていてもよいし、複合材料で形成されていてもよい。パネル501と第1半部502の接合方法、および、第1半部502と第2半部503の接合方法は、それぞれ、スポット、レーザ、アーク、シーム等の溶接、リベット、かしめ、ボルト締結等の機械接合、および、接着剤等による接着を含む。
パネル本体511から、パネル縦壁512が延びている。パネル縦壁512の他端にパネル本体511が連続しており、パネル縦壁512の一端に第1フランジ513が連続している。第1フランジ513は、第1半部502の第2フランジ523に接合されている。
第1半部502においては、第1本体521から、第1縦壁522が延びている。第1縦壁522の他端に第1本体521が連続しており、第1縦壁522の一端に第2フランジ523が連続している。第1フランジ513と第2フランジ523は、高さ方向Zに対向配置されている。
車体600には、第1フランジ513、第2フランジ523、および、第3フランジ533を含む接合構造570が設けられている。接合構造570は、パネル501を骨格部材504に接合するために設けられている。
接合構造570は、第1フランジ513と、第2フランジ523と、これらのフランジ513,523によって形成されたパネル空隙形成部571、パネル接合部572およびパネル接触部573と、第3フランジ533と、第2フランジ523および第3フランジ533によって形成された半部接合部575と、を有している。
第1フランジ513は、パネル湾曲部540と、パネル側空隙形成部541と、パネル側接合部542と、パネル側接触部543と、パネルエッジ部544と、を有している。
パネル湾曲部540は、長さ方向Xから見て湾曲した形状に形成されており、第1半部502に向けて凸となる円弧状に形成されている。パネル湾曲部540は、パネル接触部573から他端側に遠ざかるに従い第2フランジ523との距離が増すように高さ方向Zの他方に延びている。パネル湾曲部540の他端がパネル縦壁512に連続しており、パネル湾曲部540の一端がパネル側接触部543を介してパネル側空隙形成部541に連続している。
パネル側空隙形成部541は、第2フランジ523の後述する第1空隙形成部551と協働して空隙574を形成している。パネル側空隙形成部541と第1空隙形成部551とによって、パネル空隙形成部571が形成されている。パネル側空隙形成部541は、長さ方向Xから見て例えば略U字状に形成されている。幅方向Yにおけるパネル側空隙形成部541の一端541aおよび他端541bは、第2フランジ523に接触している一方、パネル側空隙形成部541の中間部は、第2フランジ523とは離隔している。この離隔している部分としてのパネル側空隙形成部541の中間部と第2フランジ523の第1空隙形成部551との間に、空隙574が形成されている。パネル側空隙形成部541の一端541aは、パネル側接合部542を介してパネルエッジ部544に連続している。
パネルエッジ部544は、幅方向Yにおけるパネル501のエッジ部(端縁部分)である。パネルエッジ部544は、幅方向Yにおける第1フランジ513の先端部でもある。パネルエッジ部544の一端(先端)は、自由端である。
第2フランジ523は、第1湾曲部550と、第1空隙形成部551と、第1接合部552と、第1接触部553と、第1エッジ554と、を有している。
第1湾曲部550は、長さ方向Xから見て湾曲した形状に形成されており、第2半部503に向けて凸となる円弧状に形成されている。第1湾曲部550は、パネル接触部573から他端側に遠ざかるに従い第3フランジ533との距離が増すように高さ方向Zの他方に延びている。第1湾曲部550の他端が第1縦壁522に連続しており、第1湾曲部550の一端が第1接触部553を介して第1空隙形成部551に連続している。
第1空隙形成部551は、平坦な形状に形成されている。幅方向Yにおける第1空隙形成部551の一端551aおよび他端551bは、パネル側空隙形成部541に接触している一方、第1空隙形成部551の中間部は、第1フランジ513とは離隔している。前述したように、空隙574は、パネル接合部572とパネル接触部573の間の位置において、第1フランジ513と第2フランジ523(パネル側空隙形成部541と第1空隙形成部551)とが互いに離隔していることでこれら第1フランジ513と第2フランジ523との間に形成されている。空隙574の幅および高さは、パネル接触部573におけるフランジ513,523同士の目標摩擦圧力等に応じて適宜設定される。第1空隙形成部551の一端551aは、第1接合部552を介して第1エッジ554に連続している。
第1エッジ554は、幅方向Yにおける第1半部502のエッジ部分(端縁部分)である。第1エッジ554は、幅方向Yにおける第2フランジ523の先端部でもある。第1エッジ554の一端(先端)は、自由端である。本実施形態では、第1エッジ554は、幅方向Yに沿って延びている。本実施形態では、パネルエッジ部544と第1エッジ部554との間には、隙間が形成されている。
パネル接合部572は、第1フランジ513と第2フランジ523とが(後述する第1フランジ素材と第2フランジ素材とが)、少なくとも一方が他方側へ潰された状態で互いに接合されることで形成されている。本実施形態では、パネル接合部572は、第1フランジ513が第2フランジ523側へ潰された状態でこれらのフランジ513,523が互いに接合されることで形成されている。この場合の接合として、スポット溶接を例示できる。パネル接合部572は、例えば長さ方向Xに間欠的にスポット溶接が施されることで形成されている。なお、パネル接合部572は、長さ方向Xの全域に亘って第1フランジ513と第2フランジ523とを互いに押し付けた状態で接合することで形成されていてもよい。
パネル接合部572は、第1フランジ513に形成されたパネル側接合部542と、第2フランジ523に形成された第1接合部552と、を有している。
パネル側接合部542は、本実施形態では、パネル側空隙形成部541のうちパネルエッジ部544寄りの一端541aに設けられており、幅方向Yに延びている。パネル側空隙形成部541は、第1フランジ513の素材である第1フランジ素材を第2フランジ523の素材である第2フランジ素材側へ潰して塑性変形することで形成されており、パネル側空隙形成部541の他端541b(パネル側接触部543)を第2フランジ523の第1接触部553側に押している。第1接合部552は、第2フランジ523のうちパネル側接合部542と接合によって接合されている部分であり、第1空隙形成部551のうち第1エッジ554寄りの一端551a側に形成されており、幅方向Yに延びている。
パネル接触部573は、パネル接合部572とは離隔した位置において、第1フランジ513と第2フランジ523とが摺動可能に接触することで形成されている。
パネル接触部573は、第1フランジ513に形成されたパネル側接触部543と、第2フランジ523に形成された第1接触部553と、を有している。
パネル側接触部543は、本実施形態では、パネル側空隙形成部541のうちパネル湾曲部540側の他端541bに設けられており、幅方向Yに延びている。パネル側接触部543は、パネル湾曲部540の一端に形成されているともいえる。前述したように、パネル側接触部543は、第2フランジ523の第1接触部553側に押し付けられている。第1接触部553は、本実施形態では、第1空隙形成部551のうち第1湾曲部550側の他端551b側に設けられており、幅方向Yに延びている。第1接触部553は、第1湾曲部550の一端に設けられているともいえる。第1接触部553は、第2フランジ523のうちパネル側接触部543と押し付けられている部分であり、パネル側接触部543と擦れることで振動エネルギーを熱エネルギーに変換して減衰させる。パネル側接触部543と第1接触部553とは、接着剤を介さずに直接接触している。この場合の「直接」とは、第1フランジ513を構成する鋼板、この鋼板の表面に形成されるめっき層、この鋼板の表面に形成される塗装層、および、このめっき層の表面に形成される塗料層の何れかと、第2フランジ523を構成する鋼板、この鋼板の表面に形成される塗装層、この鋼板の表面に形成されるめっき層、および、このめっき層の表面に形成される塗料層の何れかと、が互いに接触することをいう。また、パネル部品は、操縦安定性に影響を及ぼす車体剛性への寄与はほとんどなく、上記接触が引き起こす車体の構造ヒステリシスは無視できるため、上記の接合フランジにおける接触が、操縦安定性やドライバの官能評価を悪化させることはない。
次に、骨格部材504のより詳細な構成を説明する。
骨格部材504において、第1半部502は、高さ方向Zにおける骨格部材504の他方側部分を構成しており、第2半部503は、高さ方向Zにおける骨格部材504の一方側部分を構成している。
骨格部材504は、前述したように、自動車の自重およびサスペンションからの荷重を受ける。このため、第1半部502および第2半部503は、鋼板で形成されていることが好ましい。第1半部502および第2半部503が鋼板で形成される場合、第1半部502よび第2半部503は、それぞれ、鋼板をプレス加工することによって薄板状に形成される。この鋼板は、好ましくは高張力鋼板であり、この鋼板の引張強さは、好ましくは440MPa以上である。この鋼板は、より好ましくは超高張力鋼板であり、この場合の引張強さは、好ましくは590MPa以上であり、より好ましくは780MPa以上である。
第1半部502は、第2半部503と協働することで、長さ方向Xに見たときに閉断面を形成している(図12および図13では、閉断面のうちの一部を図示)。この閉断面は、長さ方向Xに見てU字状に形成されていてもよいし、台形状または矩形状等の形状に形成されていてもよい。また、この閉断面は、本実施形態のように長さ方向Xの全部に形成されていてもよいし、骨格部材504における長さ方向Xの一部に形成されていてもよい。このような構成により、骨格部材504は、中空部材である。
第2半部503の第2本体531は、例えば平板状の部分であり、幅方向Yに沿って延びている。第2本体531から、第2縦壁532が延びている。第2縦壁532の他端に第2本体531が連続しており、第2縦壁532の一端に第3フランジ533が連続している。
第3フランジ533は、第2フランジ523と高さ方向Zに対向配置されている。第2フランジ523と第3フランジ533とは、パネル接合部572と高さ方向Z(パネル501の厚み方向)に重なる位置で互いに接合されることで、半部接合部575を形成している。すなわち、第1フランジ513、第2フランジ523、および、第3フランジ533が重ね合わされた箇所にパネル接合部572および半部接合部575が形成されていることで、パネル接合部572と半部接合部575とがパネル501の厚み方向に重なって配置されている。このように、骨格部材504においては、半部接合部575が設けられている。
半部接合部575における接合方法は、上述した接合方法と同様である。半部接合部575は、第2フランジ523に形成された第1半部接合部561と、第3フランジ533に形成された第2半部接合部562と、を有している。第2半部接合部562は、第3フランジ533のうち第2フランジ523側に窪んだ箇所に形成されている。幅方向Yにおける半部接合部575の両側方において、第2フランジ523と第3フランジ533とが離隔して配置されていることで、フランジ空隙580,580が形成されている。
第2フランジ523と第3フランジ533とは、半部接合部575によって強固に固定されている。この半部接合部575は、骨格部材504に加振力が入力されたときでも、第2フランジ523と第3フランジ533との相対移動(相対摺動)を規制している。また、第2フランジ523と第3フランジ533は接合される半部接合部575以外の範囲において接触することがない。このため、車両の操縦安定性に影響を及ぼす車体剛性に大きく寄与する車体骨格(骨格部材504)において、半部接合部575において接合することで剛性を確保しながら、接合フランジ523,533において摩擦を生じさせることを抑制されているので、構造ヒステリシスを抑制することができる。
上述の構成を 有する接合構造570を含む車体600は、エンジンからの振動や、サスペンションからの振動や、車両表面における空気の圧力変動によって生じる振動によって、加振力を入力される。この加振力は、車体600の骨格部材504を伝搬して接合構造570に伝達される。接合構造570では、パネル接触部573のパネル側接触部543と第1接触部553とが、この加振力によって互いに摺動し、振動を減衰する。すなわち、パネル側接触部543が第1接触部553に対して摺動することで、上記の加振力が熱エネルギーとして消費されて減衰される。その結果、振動音(パネル振動音)を抑制できる。このように、接合されたフランジ513,523の板間摩擦による振動エネルギー減衰効果を活用することで、パネル501および骨格部材504の板厚を薄くした場合でも、車体振動を抑制できるとともに自動車が発する騒音を抑制できる。
また、本実施形態によると、骨格部材504において、半部接合部575によって、第2フランジ523と第3フランジ533との相対変位が規制されている。これにより、上述の加振力が骨格部材504に作用しても、骨格部材504における第1半部502と第2半部503との相対変位を抑制できる。このため、骨格部材504の剛性をより高くできる。その結果、車体600(骨格部材504)の構造ヒステリシスを抑制できる。なお、構造ヒステリシスとは、周期的な荷重を受け変形または変位する機械構造体に多く見られ,荷重と変位の関係において載荷と除荷が異なる経路を描く現象をいう。例えば、自動車が直進状態から旋回し、再び直進状態に戻るときにおいて、ハンドルの操舵角度と車体600の挙動との関係が、直進→旋回のときと、旋回→直進のときとの間で差が小さいと、構造ヒステリシスが小さいといえる。構造ヒステリシスが小さいことで、自動車の操縦安定性およびドライバの官能評価をより高くできる。このように、骨格部材504の第1半部502と第2半部503との接合部分(半部接合部575)では、これらの半部502,503同士の結合力を高めることで上述の加振力に起因する相対変位を抑制して構造ヒステリシスを抑制する一方、パネル501と骨格部材504との接合部分では、パネル接触部573を設けることで、車体600の振動をパネル接触部573で減衰できる。その結果、自動車における操縦安定性およびドライバの官能評価と静粛性の両立を図ることが可能である。
また、本実施形態では、湾曲部540,550の一端にパネル接触部573が設けられている。この構成であれば、フランジ513,523同士の接触力が特に高い箇所としての湾曲部540,550の一端に接触部543,553が設けられていることで、パネル側接触部543と第1接触部553との摩擦摺動によるエネルギー減衰量をより多くできる。
以上が、車体600の概略構成である。次に、車体600の製造方法の一例を説明する。
図14は、車体600の第1フランジ513を第2フランジ523に接合する工程を説明するための模式図である。図13および図14を参照して、第1フランジ513を第2フランジ523に接合する際には、まず、図14に示されている第1フランジ素材601と第2フランジ素材602と第3フランジ素材603とを準備する。第1フランジ素材601は、第1フランジ513の素材であり、第2フランジ素材602は、第2フランジ523の素材であり、第3フランジ素材603は、第3フランジ533の素材である。
第1フランジ素材601は、第1フランジ513のうちパネル側空隙形成部541の中間部から幅方向Yの一端側に位置している部分が平板状に形成されている点以外は、パネル501とほぼ同じ形状に形成されている。すなわち、第1フランジ素材601は、パネル本体511と、パネル縦壁512と、第1フランジ予定部611と、を有している。第1フランジ予定部611は、パネル湾曲部540と、パネル側接触部543と、パネル側空隙形成部541の他端541bと、パネル側空隙形成部541の中間部から幅方向Yの一端側に延びるパネル平板部612と、を有している。そして、パネル側空隙形成部541の他端541bと、パネル平板部612とによって、パネル凹部613が形成されている。このパネル凹部613は、第1フランジ素材601と第2フランジ素材602とを当接させた際に第1フランジ素材601と第2フランジ素材602とが離隔した部分となる。
第2フランジ素材602および第3フランジ素材603は、対応する第1半部502および第2半部503と同じ形状に形成されている。第2フランジ素材602の第2フランジ523の一部は、第1フランジ素材601のパネル側接触部543と第2フランジ素材602の第1接触部553とを当接させた際に第2フランジ素材602と第3フランジ素材603とが離隔した部分となる。
第1フランジ素材601と第2フランジ素材602と第3フランジ素材603とを準備した後、これら第1フランジ素材601のパネル側接触部543と第2フランジ素材602の第1接触部553とを対向させる。さらに、第2フランジ素材602の第2フランジ523と第3フランジ素材603の第3フランジ533とを対向させる。
そして、パネル凹部613が配置されている箇所において第1フランジ素材601と第2フランジ素材602とを互いに突き合わせることで、パネル凹部613を変形させる。具体的には、スポット溶接ガン90のクランプが、第1フランジ素材601と第2フランジ素材602と第3フランジ素材603を挟み込む。すなわち、スポット溶接ガン90は、凹部613のうち、パネル接合部572とする箇所を互いに接触するようにフランジ素材601,602,603を挟み込む。これにより、フランジ素材601,602のうちパネル接合部572となる部分が突き合わせられ、この突き合わせられた部分をスポット溶接等によって接合することで、パネル接合部572および半部接合部575が形成される。このとき、パネル接合部572から離隔した位置のパネル接触部573において、パネル平板部612の変形によって、パネル側接触部543と第1接触部553とが摺動可能に押しつけられる。
このように、スポット溶接前にパネル接合部572となる部分の近傍に隙間(凹部613)ができるようにフランジ素材601,602を成形し、スポット溶接ガン90によってこのフランジ素材601,602を挟みながらフランジ素材601,602を強制的に接触させながら接合を行う。これにより、パネル側接触部543と第1接触部553とが、パネル接合部572以外の箇所であるパネル接触部573で強く接触する。
上述の工程により、第1フランジ513が形成されるとともに、第2フランジ523が形成され、且つ、これら第1フランジ513および第2フランジ523がパネル接合部572で互いに接合される。また、第2および第3フランジ523,533が半部接合部575で互いに接合される。なお、第1フランジ素材601のパネル凹部613に加えて、第2フランジ素材602のうち、パネル凹部613と高さ方向Zに対向する箇所に第1凹部が形成されていてもよい。この場合、パネル凹部613が設けられていなくてもよい。凹部が設けられないフランジ素材のフランジ予定部は、平坦に形成される。
以上説明したように、本実施形態によると、凹部613と第2フランジ素材602をスポット溶接ガン90のクランプで挟みながら接合を行うという簡易な作業で、パネル接合部572と、振動エネルギーを減衰可能なパネル接触部573と、を形成できる。
また、本実施形態では、第1フランジ513、第2フランジ523、および、前記第3フランジ533が重ね合わされた箇所にパネル接合部572および半部接合部575が形成されていることで、パネル接合部572と半部接合部575とがパネル501の厚み方向に重なって配置されている。この構成によると、第1フランジ素材601のパネル凹部613と、第2フランジ素材602の第2フランジ523と、第3フランジ素材603の第3フランジ533と、を重ね合わせてスポット溶接ガン90で挟むことができる。よって、第1フランジ513と第2フランジ523との接合作業、および、第2フランジ523と第3フランジ533との接合作業を一括して行うことができる。
なお、上述の形態では、パネル接触部573が湾曲部540,550の一端に設けられる形態を例に説明したけれども、この通りでなくてもよい。なお、以下では、上述の実施形態と異なる構成について主に説明し、上述の実施形態と同様の構成には図に同様の符号を付して詳細な説明を省略する場合がある。
図15(A)は、第2実施形態の第1変形例を示す図であり、長さ方向Xから見た状態を示している。上述の実施形態では、幅方向Yの他端から一端に沿って、湾曲部540,550、パネル接触部573、パネル空隙形成部571、パネル接合部572の順に並んでいた。しかしながら、この通りでなくてもよい。図15(A)に示す第1変形例では、幅方向Yの他端から一端に沿って、湾曲部540,550、パネル接合部572、パネル空隙形成部571、パネル接触部573の順に配置されている。この第1変形例では、パネル接触部573が、フランジ513A,523Aのエッジ部544,554に配置されている。幅方向Yにおけるパネル接触部573の長さは、パネル側接触部543と第1接触部553との間の目標摩擦抵抗力の圧力等に応じて適宜設定される。また、パネル接触部573と湾曲部540,550との間にパネル接合部572が配置されている。
この第1変形例において、第1フランジ513Aを第2フランジ523Aに接合する際には、図15(B)に示すように、第1フランジ素材601Aと、第2フランジ素材602Aと、第3フランジ素材603Aとを準備する。第1フランジ素材601Aは、パネル側接触部543の他端から延びる部分の一部が第2フランジ素材602Aから遠ざかるように傾斜した後、パネル湾曲部540まで平坦に延びている点以外は、パネル501Aと同じ形状を有している。第2フランジ素材602Aおよび第3フランジ素材603Aは、対応する第1半部502Aおよび第2半部503Aと同じ形状に形成されている。そして、第1フランジ素材601Aと第2フランジ素材602Aの接触部543,553を接触させるとともに、第2フランジ素材602Aの第1半部接合部561と第3フランジ素材603Aとの第2半部接合部562とを接触させる。この状態で、パネル接合部572が形成される箇所をスポット溶接ガン90のクランプで挟む。これにより、パネル接合部572および半部接合部575が形成される。
図16(A)は、第2実施形態の第2変形例を示す図であり、長さ方向Xから見た図を示している。図16(B)は、第2実施形態の第2変形例において、第1フランジ513を第2フランジ523に接合する工程を説明するための模式的な図である。第2変形例では、第2半部503Bについて、第2半部接合部562以外の一端側部分が平板状に形成されている。それ以外の点は、第2実施形態と同じである。
図17(A)は、第2実施形態の第3変形例を示す図であり、長さ方向Xから見た図を示している。図17(B)は、第2実施形態の第3変形例において、第1フランジ513を第2フランジ523に接合する工程を説明するための模式的な図である。第3変形例では、第1半部502Cは、一端側部分の全体が平坦な板を用いて形成されている。それ以外の点は、第2実施形態と同じである。
図18は、第2実施形態の第4変形例を示す図であり、長さ方向Xから見た図を示している。第4変形例では、第2半部503Dの第3フランジ533D全体が平板状に形成されている。それ以外の点は、第2実施形態と同じである。
図19(A)は、第2実施形態の第5変形例を示す図であり、長さ方向Xから見た図を示している。図19(B)は、第2実施形態の第5変形例において、第1フランジ513Eを第2フランジ523Eに接合する工程を説明するための模式的な図である。第5変形例では、パネル接触部573が一対設けられている。この第5変形例では、幅方向Yの他端から一端に順に、一方のパネル接触部573、一方のパネル空隙形成部571、パネル接合部572、パネル空隙形成部571、および、他方のパネル接触部573が並んでいる。第1フランジ513Eのうち、幅方向Yの中間部が、第2フランジ523Eに形成された窪み部に向けて凸となる形状に形成されており、この部分に、パネル側接合部542が形成されている。パネル側接合部542と高さ方向Zに並んだ位置に、第1半部接合部561および第2半部接合部562が設けられている。
第1フランジ513Eを第2フランジ523Eに接合するときは、第1フランジ素材601Eと、第2フランジ素材602Eと、第3フランジ素材603Eと、を準備する。第1フランジ素材601Eは、第1フランジ513Eとなるフランジ部分が平坦である。第2フランジ素材602Eと第3フランジ素材603Eは、対応する第1半部502Eおよび第2半部503Eと同じ形状である。そして、第1フランジ素材601Eのフランジ部分と第2フランジ素材602Eの第2フランジ523Eとを重ね合わせ、さらに、第2フランジ523Eと第3フランジ533Eとを重ね合わせる。この状態で、スポット溶接ガン90が、パネル接合部572および半部接合部575を形成する箇所を挟みながら接合作業を行う。これにより、図19(A)に示すように、第1フランジ513Eが第2フランジ523Eに接合される。
図20(A)は、第2実施形態の第6変形例を示す図であり、長さ方向Xから見た図を示している。図20(B)は、第2実施形態の第6変形例において、第1フランジ513Eを第2フランジ523Eに接合する工程を説明するための模式的な図である。第6変形例では、第3フランジ533Fの全体が平坦に形成されている。この点以外は、第5変形例と同じである。
<第3実施形態>
図21は、本発明の第3実施形態に係る自動車車体800(以下では、単に「車体800」ともいう。)の一部を示す模式的な斜視図である。図22は、第3実施形態の車体800の一部を示す断面図であり、長さ方向Xから見た状態を示している。
なお、第3実施形態では、図21に示す車体800の接合構造770の長手方向を長さ方向Xという。長さ方向Xは、図22の紙面奥側を正とする。また、接合構造770の幅方向を幅方向Yという。幅方向Yは、図21および図22の左右方向であり、紙面左方向を正とする。また、長さ方向Xおよび幅方向Yの双方に直交する方向を高さ方向Zという。高さ方向Zは、図21および図22の紙面上側を正とする。長さ方向X、幅方向Y、および、高さ方向Zは、それぞれ、車体800の車長方向、車幅方向、車高方向とは一致していてもよいし、一致していなくてもよい。以下では、幅方向Yの一方側を「一端側」といい、他方側を「他端側」という。
車体800は、パネル701と、骨格部材704と、を有している。
本実施形態では、パネル701は、例えば車体800の外装部材であり、自動車の自重およびサスペンションからの外力を受け持つ骨格部材ではない。このような外装部材として、自動車の外板パネル、リアクォーターパネル、ルーフパネル、ドアパネル(ドアインナーパネル、ドアアウターパネル)、ボンネットフード(フードインナーパネル、フードアウターパネル)を例示できる。なお、パネル701は、上記で例示した部材以外の外装部材であってもよい。パネル701は、薄板をプレス加工することによって薄板状に形成されている。
骨格部材704は、車体800の骨格部材として設けられている。このような骨格部材704として、フロントサイドメンバ、Aピラー、Bピラー、Cピラー、サイドシル、リアサイドメンバを例示できる。なお、骨格部材704は、自動車800のうち当該骨格部材704以外の部品の重量、および、サスペンションからの荷重を受ける部材であればよく、上記で例示した部材以外の部材であってもよい。
パネル701は、パネル本体711と、パネル縦壁712と、第1フランジ713と、を有している。
骨格部材704は、第1半部702と、この第1半部702に組み合わされた第2半部703と、を有している。
第1半部702は、本実施形態では、ハット形断面を有しており、第1本体721と、一対の第1縦壁722,724と、一対の第2フランジ723,725と、を有している。
第2半部703は、本実施形態では、ハット形断面を有しており、第2本体731と、一対の第2縦壁732,734と、一対の第3フランジ733,735と、を有している。
パネル701を構成する薄板は、例えば軟鋼板である。パネル701、第1半部702、および、第2半部703を構成する材料として、鋼、アルミニウム、マグネシウム、および、繊維強化されたものを含む樹脂製の板、および、管を例示でき、パネル701と第1半部702と第2半部703の材質や形状が異なってもよい。パネル701、第1半部702、および、第2半部703は、それぞれ、単一材料で形成されていてもよいし、複合材料で形成されていてもよい。パネル701と第1半部702の接合方法、および、第1半部702と第2半部703の接合方法は、それぞれ、スポット、レーザ、アーク、シーム等の溶接、リベット、かしめ、ボルト締結等の機械接合、および、接着剤等による接着を含む。
パネル本体711から、パネル縦壁712が延びている。パネル縦壁712の他端にパネル本体711が連続しており、パネル縦壁712の一端に第1フランジ713が連続している。第1フランジ713は、第1半部702の第2フランジ723に接合されている。
第1半部702においては、第1本体721から、一対の第1縦壁722,724が延びている。一方の第1縦壁722の他端に第1本体721が連続しており、第1縦壁722の一端に一方の第2フランジ723が連続している。他方の第1縦壁724の一端に第1本体721が連続しており、第1縦壁724の他端に他方の第2フランジ725が連続している。第1フランジ713と第2フランジ723は、高さ方向Zに対向配置されている。
車体800には、第1フランジ713、第2フランジ723、および、第3フランジ733を含む接合構造770が設けられている。接合構造770は、パネル701を骨格部材704に接合するために設けられている。
接合構造770は、第1フランジ713と、第2フランジ723と、これらのフランジ713,723によって形成されたパネル空隙形成部771、パネル接合部772およびパネル接触部773と、第3フランジ733と、第2フランジ723および第3フランジ733によって形成された一方の半部接合部775と、を有している。
第1フランジ713は、パネル湾曲部740と、パネル側空隙形成部741と、パネル側接合部742と、パネル側接触部743と、パネルエッジ部744と、を有している。
パネル湾曲部740は、長さ方向Xから見て湾曲した形状に形成されており、第1半部702に向けて凸となる円弧状に形成されている。パネル湾曲部740は、パネル接触部773から他端側に遠ざかるに従い第2フランジ723との距離が増すように高さ方向Zの一方に延びている。パネル湾曲部740の他端がパネル縦壁712に連続しており、パネル湾曲部740の一端がパネル側接触部743を介してパネル側空隙形成部741に連続している。
パネル側空隙形成部741は、第2フランジ723の後述する第1空隙形成部751と協働して空隙774を形成している。パネル側空隙形成部741と第1空隙形成部751とによって、パネル空隙形成部771が形成されている。パネル側空隙形成部741は、長さ方向Xから見て例えば略U字状に形成されている。幅方向Yにおけるパネル側空隙形成部741の一端741aおよび他端741bは、第2フランジ723に接触している一方、パネル側空隙形成部741の中間部は、第2フランジ723とは離隔している。この離隔している部分としてのパネル側空隙形成部741の中間部と第2フランジ723の第1空隙形成部751との間に、空隙774が形成されている。パネル側空隙形成部741の一端741aは、パネル側接合部742を介してパネルエッジ部744に連続している。
パネルエッジ部744は、幅方向Yにおけるパネル701のエッジ部(端縁部分)である。パネルエッジ部744は、幅方向Yにおける第1フランジ713の先端部でもある。パネルエッジ部744の一端(先端)は、自由端である。
一方の第2フランジ723は、第1湾曲部750と、第1空隙形成部751と、第1接合部752と、第1接触部753と、第1エッジ754と、を有している。
第1湾曲部750は、長さ方向Xから見て湾曲した形状に形成されており、パネル701に向けて凸となる円弧状に形成されている。第1湾曲部750は、パネル接触部773から他端側に遠ざかるに従い第1フランジ713との距離が増すように高さ方向Zの他方に延びている。第1湾曲部750の他端が第1縦壁722に連続しており、第1湾曲部750の一端が第1接触部753を介して第1空隙形成部751に連続している。
第1空隙形成部751は、長さ方向Xから見て例えば略U字状に形成されている。幅方向Yにおける第1空隙形成部751の一端751aおよび他端751bは、パネル側空隙形成部741に接触している一方、第1空隙形成部751の中間部は、第1フランジ713とは離隔している。前述したように、空隙774は、パネル接合部772とパネル接触部773の間の位置において、第1フランジ713と第2フランジ723(パネル側空隙形成部741と第1空隙形成部751)とが互いに離隔していることでこれら第1フランジ713と第2フランジ723との間に形成されている。空隙774の幅および高さは、パネル接触部773におけるフランジ713,723同士の目標摩擦圧力等に応じて適宜設定される。第1空隙形成部751の一端751aは、第1接合部752を介して第1エッジ754に連続している。
第1エッジ754は、幅方向Yにおける第1半部702のエッジ部分(端縁部分)である。第1エッジ754は、幅方向Yにおける第2フランジ723の先端部でもある。第1エッジ754の一端(先端)は、自由端である。本実施形態では、第1エッジ754は、幅方向Yに沿って延びている。本実施形態では、パネルエッジ部744と第1エッジ部754との間には、隙間が形成されている。
パネル接合部772は、第1フランジ713と第2フランジ723とが(後述する第1フランジ素材と第2フランジ素材とが)、少なくとも一方が他方側へ潰された状態で互いに接合されることで形成されている。本実施形態では、パネル接合部772は、第1フランジ713が第2フランジ723側へ潰され、且つ、第2フランジ723が第1フランジ713側へ潰された状態でこれらのフランジ713,723が互いに接合されることで形成されている。この場合の接合として、スポット溶接を例示できる。パネル接合部772は、例えば長さ方向Xに間欠的にスポット溶接が施されることで形成されている。なお、パネル接合部772は、長さ方向Xの全域に亘って第1フランジ713と第2フランジ723とを互いに押し付けた状態で接合することで形成されていてもよい。
パネル接合部772は、第1フランジ713に形成されたパネル側接合部742と、第2フランジ723に形成された第1接合部752と、を有している。
パネル側接合部742は、本実施形態では、パネル側空隙形成部741のうちパネルエッジ部744寄りの一端741aに設けられており、幅方向Yに延びている。パネル側空隙形成部741は、第1フランジ713の素材である第1フランジ素材を第2フランジ723の素材である第2フランジ素材側へ潰して塑性変形することで形成されており、パネル側空隙形成部741の他端741b(パネル側接触部743)を第2フランジ723の第1接触部753側に押している。第1接合部752は、第2フランジ723のうちパネル側接合部742と接合によって接合されている部分であり、第1空隙形成部751のうち第1エッジ754寄りの一端751aに形成されており、幅方向Yに延びている。第1空隙形成部751は、第2フランジ723の素材である第2フランジ素材を第1フランジ713の素材である第1フランジ素材側へ潰して変形することで形成されており、第1空隙形成部751の他端751b(第1接触部753)を第1フランジ713のパネル側接触部743側に押している。
パネル接触部773は、パネル接合部772とは離隔した位置において、第1フランジ713と第2フランジ723とが摺動可能に接触することで形成されている。
パネル接触部773は、第1フランジ713に形成されたパネル側接触部743と、第2フランジ723に形成された第1接触部753と、を有している。
パネル側接触部743は、本実施形態では、パネル側空隙形成部741のうちパネル湾曲部740側の他端741bに設けられており、幅方向Yに延びている。パネル側接触部743は、パネル湾曲部740の一端に形成されているともいえる。前述したように、パネル側接触部743は、第2フランジ723の第1接触部753側に押し付けられている。第1接触部753は、本実施形態では、第1空隙形成部751のうち第1湾曲部750側の他端751b側に設けられており、幅方向Yに延びている。第1接触部753は、第1湾曲部750の一端に設けられているともいえる。第1接触部753は、第2フランジ723のうちパネル側接触部743と押し付けられている部分であり、パネル側接触部743と擦れることで振動エネルギーを熱エネルギーに変換して減衰させる。パネル側接触部743と第1接触部753とは、接着剤を介さずに直接接触している。この場合の「直接」とは、第1フランジ713を構成する鋼板、この鋼板の表面に形成されるめっき層、この鋼板の表面に形成される塗装層、および、このめっき層の表面に形成される塗料層の何れかと、第2フランジ723を構成する鋼板、この鋼板の表面に形成される塗装層、この鋼板の表面に形成されるめっき層、および、このめっき層の表面に形成される塗料層の何れかと、が互いに接触することをいう。また、パネル部品は、操縦安定性に影響を及ぼす車体剛性への寄与はほとんどなく、上記接触が引き起こす車体の構造ヒステリシスは無視できるため、上記の接合フランジにおける接触が、操縦安定性やドライバの官能評価を悪化させることはない。
次に、骨格部材704のより詳細な構成を説明する。
骨格部材704において、第1半部702は、高さ方向Zにおける骨格部材704の一方側部分を構成しており、第2半部703は、高さ方向Zにおける骨格部材704の他方側部分を構成している。
骨格部材704は、前述したように、自動車の自重およびサスペンションからの荷重を受ける。このため、第1半部702および第2半部703は、鋼板で形成されていることが好ましい。第1半部702および第2半部703が鋼板で形成される場合、第1半部702よび第2半部703は、それぞれ、鋼板をプレス加工することによって薄板状に形成される。この鋼板は、好ましくは高張力鋼板であり、この鋼板の引張強さは、好ましくは440MPa以上である。この鋼板は、より好ましくは超高張力鋼板であり、この場合の引張強さは、好ましくは590MPa以上であり、より好ましくは780MPa以上である。
第1半部702は、第2半部703と協働することで、長さ方向Xに見たときに閉断面を形成している。この閉断面は、本実施形態では、長さ方向Xに見てU字状に形成されているけれども、台形状または矩形状等の形状であってもよい。また、この閉断面は、本実施形態のように長さ方向Xの全部に形成されていてもよいし、骨格部材704における長さ方向Xの一部に形成されていてもよい。このような構成により、骨格部材704は、中空部材である。
第2半部703の第2本体731は、例えば平板状の部分であり、幅方向Yに沿って延びている。第2本体731から、一対の第2縦壁732,734が延びている。一方の第2縦壁732の他端に第2本体731が連続しており、一方の第2縦壁732の一端に一方の第3フランジ733が連続している。他方の第2縦壁734の一端に第2本体731が連続しており、他方の第2縦壁734の他端に他方の第3フランジ735が連続している。
一対の第3フランジ733,735は、一対の第2フランジ723,725と高さ方向Zに対向配置されている。一方の第2フランジ723と一方の第3フランジ733とは、パネル接合部772と高さ方向Z(パネル701の厚み方向)に重なる位置で互いに接合されることで、一方の半部接合部775を形成している。すなわち、第1フランジ713、一方の第2フランジ723、および、一方の第3フランジ733が重ね合わされた箇所にパネル接合部772および一方の半部接合部775が形成されていることで、パネル接合部772と半部接合部775とがパネル701の厚み方向に重なって配置されている。また、他方の第2フランジ725と他方の第3フランジ735とは、互いに接合されることで、他方の半部接合部776を形成している。このように、骨格部材704においては、一対の半部接合部775,776が設けられている。
一対の半部接合部775,776のそれぞれにおける接合方法は、上述した接合方法と同様である。一方の半部接合部775は、一方の第2フランジ723に形成された一方の第1半部接合部761と、一方の第3フランジ733に形成された一方の第2半部接合部762と、を有している。他方の半部接合部776は、他方の第2フランジ725に形成された他方の第1半部接合部763と、他方の第3フランジ735に形成された他方の第2半部接合部764と、を有している。
一対の第2フランジ723,725と一対の第3フランジ733,735とは、一対の半部接合部775,776によって強固に固定されている。これら一対の半部接合部775,776は、骨格部材704に加振力が入力されたときでも、一対の第2フランジ723,725と一対の第3フランジ733,735との相対移動(相対摺動)を規制している。また、第2フランジ723,725と第3フランジ733,735は接合される半部接合部775,776以外の範囲において実質的に接触することがない.このため,車両の操縦安定性に影響を及ぼす車体剛性に大きく寄与する車体骨格(骨格部材704)において、半部接合部775,776において接合することで剛性を確保しながら、接合フランジ723,733;725,735において摩擦摺動を生じさせることを可及的に抑制されているので、構造ヒステリシスを抑制することができる。
上述の構成を 有する接合構造770を含む車体800は、エンジンからの振動や、サスペンションからの振動や、車両表面における空気の圧力変動によって生じる振動によって、加振力を入力される。この加振力は、車体800の骨格部材704を伝搬して接合構造770に伝達される。接合構造770では、パネル接触部773のパネル側接触部743と第1接触部753とが、この加振力によって互いに摺動し、振動を減衰する。すなわち、パネル側接触部743が第1接触部753に対して摺動することで、上記の加振力が熱エネルギーとして消費されて減衰される。その結果、振動音(パネル振動音)を抑制できる。このように、接合されたフランジ713,723の板間摩擦による振動エネルギー減衰効果を活用することで、パネル701および骨格部材704の板厚を薄くした場合でも、車体振動を抑制できるとともに自動車が発する騒音を抑制できる。
また、本実施形態によると、骨格部材704において、一対の半部接合部775,776によって、一対の第2フランジ723,725と一対の第3フランジ733,735との相対変位が規制されている。これにより、上述の加振力が骨格部材704に作用しても、骨格部材704における第1半部702と第2半部703との相対変位を抑制できる。このため、骨格部材704の剛性をより高くできる。その結果、車体800(骨格部材704)の構造ヒステリシスを抑制できる。なお、構造ヒステリシスとは、周期的な荷重を受け変形または変位する機械構造体に多く見られ、荷重と変位の関係において載荷と除荷が異なる経路を描く現象をいう。例えば、自動車が直進状態から旋回し、再び直進状態に戻るときにおいて、ハンドルの操舵角度と車体800の挙動との関係が、直進→旋回のときと、旋回→直進のときとの間で差が小さいと、構造ヒステリシスが小さいといえる。構造ヒステリシスが小さいことで、自動車の操縦安定性およびドライバの官能評価をより高くできる。このように、骨格部材704の第1半部702と第2半部703との接合部分(半部接合部775,776)では、これらの半部702,703同士の結合力を高めることで上述の加振力に起因する相対変位を抑制して構造ヒステリシスを抑制する一方、パネル701と骨格部材704との接合部分では、パネル接触部773を設けることで、車体800の振動をパネル接触部773で減衰できる。その結果、自動車における操縦安定性およびドライバの官能評価と静粛性の両立を図ることが可能である。
また、本実施形態では、湾曲部740,750の一端にパネル接触部773が設けられている。この構成であれば、フランジ713,723同士の接触力が特に高い箇所としての湾曲部740,750の一端に接触部745,755が設けられていることで、パネル側接触部743と第1接触部753との摩擦摺動によるエネルギー減衰量をより多くできる。
以上が、車体800の概略構成である。次に、車体800の製造方法の一例を説明する。
図23(A)および図23(B)は、第2実施形態において、車体800の第1フランジ713を第2フランジ723に接合する工程を説明するための模式的な断面図である。第1フランジ713を第2フランジ723に接合する際には、まず、図23(A)に示されている第1フランジ素材801と第2フランジ素材802と第3フランジ素材803とを準備する。第1フランジ素材801は、第1フランジ713の素材であり、第2フランジ素材802は、第2フランジ723の素材であり、第3フランジ素材803は、第3フランジ733の素材である。
第1フランジ素材801は、第1フランジ713のうちパネル側空隙形成部741の中間部から幅方向Yの一端側に位置している部分が平板状に形成されている点以外は、パネル701とほぼ同じ形状に形成されている。すなわち、第1フランジ素材801は、パネル本体711と、パネル縦壁712と、第1フランジ予定部811と、を有している。第1フランジ予定部811は、パネル湾曲部740と、パネル側接触部743と、パネル側空隙形成部741の他端741bと、パネル側空隙形成部741の中間部から幅方向Yの一端側に延びるパネル平板部812と、を有している。そして、パネル側空隙形成部741の他端741bと、パネル平板部812とによって、パネル凹部813が形成されている。このパネル凹部813は、第1フランジ素材801と第2フランジ素材802とを当接させた際に第1フランジ素材801と第2フランジ素材802とが離隔した部分となる。
同様に、第2フランジ素材802は、第2フランジ723のうち第1空隙形成部751の中間部から幅方向Yの一端側に位置している部分が平板状に形成されている点以外は、第1半部702と同じ形状に形成されている。すなわち、第2フランジ素材802は、第1本体721と、一対の第1縦壁722,724(第1縦壁724は図23(A),図23(B)では図示せず)と、第2フランジ予定部821と、他方の第2フランジ725と、を有している。第2フランジ予定部821は、第1湾曲部750と、第1接触部753と、第1空隙形成部751の他端751bと、第1空隙形成部751の中間部から幅方向Yの一端側に延びる第1平板部822と、を有している。そして、第1空隙形成部751の他端751bと、第1平板部822とによって、第1凹部823が形成されている。この第1凹部823は、第1フランジ素材801のパネル側接触部743と第2フランジ素材802の第1接触部753とを当接させた際に第1フランジ素材801と第2フランジ素材802とが離隔した部分となる。
第3フランジ素材803は、第3フランジ733と同じ形状を有している。すなわち、第3フランジ素材803は、第2本体731と、一対の第2縦壁732,734と、一対の第3フランジ733,735と、を有している。なお、図23(A)および図23(B)では、第2本体731と第2縦壁734の図示は省略している。
第1フランジ素材801と第2フランジ素材802と第3フランジ素材803とを準備した後、これら第1フランジ素材801のパネル側接触部743と第2フランジ素材802の第1接触部753とを対向させる。このとき、平板部812,822は、平行に、または、対応するエッジ部744,754側に向かって互いの隙間が拡がるように、互いに非平行に配置される。さらに、第2フランジ素材802の平板部822と第3フランジ素材803の一方の第3フランジ733とを対向させるとともに、第2フランジ素材802の他方の第2フランジ725と、第3フランジ素材803の第3フランジ735と、を対向させる。
そして、凹部813,823が配置されている箇所において第1フランジ素材801と第2フランジ素材802とを互いに突き合わせることで、凹部813,823を図23(B)に示すように、変形させる。具体的には、スポット溶接ガン790のクランプが、第1フランジ素材801と第2フランジ素材802と第3フランジ素材803を挟み込む。すなわち、スポット溶接ガン790は、凹部813,823のうち、パネル接合部772とする箇所を互いに接触するようにフランジ素材801,802,803を挟み込む。これにより、フランジ素材801,802のうちパネル接合部772となる部分が突き合わせられ、この突き合わせられた部分をスポット溶接等によって接合することで、パネル接合部772および半部接合部775が形成される。このとき、パネル接合部772から離隔した位置のパネル接触部773において、平板部812,822の変形によって、パネル側接触部743と第1接触部753とが摺動可能に押しつけられる。
このように、スポット溶接前にパネル接合部772となる部分の近傍に隙間(凹部813,823)ができるようにフランジ素材801,802を成形し、スポット溶接ガン790によってこのフランジ素材801,802を挟みながらフランジ素材801,802を強制的に接触させながら接合を行う。これにより、パネル側接触部743と第1接触部753とがパネル接合部772以外の箇所であるパネル接触部773で強く接触する。
上述の工程により、第1フランジ713が形成されるとともに、第2フランジ723が形成され、且つ、これら第1フランジ713および第2フランジ723がパネル接合部772で互いに接合される。また、第2および第3フランジ723,733が半部接合部775で互いに接合され、且つ、フランジ725,735が半部接合部776で互いに接合される。なお、フランジ素材801の凹部813およびフランジ素材802の凹部823の何れか一方が無くてもよい。凹部が設けられないフランジ素材のフランジ予定部は、平坦に形成される。
以上説明したように、本実施形態によると、凹部813,823をスポット溶接ガン790のクランプで挟みながら接合を行うという簡易な作業で、パネル接合部772と、振動エネルギーを減衰可能なパネル接触部773と、を形成できる。
また、本実施形態では、第1フランジ713、第2フランジ723、および、第3フランジ733が重ね合わされた箇所にパネル接合部772および半部接合部775が形成されていることで、パネル接合部772と半部接合部775とがパネル701の厚み方向に重なって配置されている。この構成によると、第1フランジ素材801のパネル凹部813と、第2フランジ素材802の第1凹部823と、第3フランジ素材803の第3フランジ733と、を重ね合わせてスポット溶接ガン790で挟むことができる。よって、第1フランジ713と第2フランジ723との接合作業、および、第2フランジ723と第3フランジ733との接合作業を一括して行うことができる。
なお、上述の形態では、パネル接触部773が湾曲部740,750の一端に設けられる形態を例に説明したけれども、この通りでなくてもよい。なお、以下では、上述の実施形態と異なる構成について主に説明し、上述の実施形態と同様の構成には図に同様の符号を付して詳細な説明を省略する場合がある。
図24(A)は、第3実施形態の第1変形例を示す図であり、長さ方向Xから見た断面を示している。上述の第2実施形態では、第1半部702に湾曲部(第2湾曲部752)が形成された構成を例に説明したけれども、この通りでなくてもよい。第1半部702に代えて、図24(A)に示すように、湾曲部が設けられていない第1半部702Aが設けられてもよい。第1半部702Aの第2フランジ723Aは、例えば平板状に形成されている。また、上述の第2実施形態では、第2フランジ723の第2隙間形成部752が長さ方向Xから見てU字状に形成されていた。一方、第1変形例の接合構造770Aでは、第1半部702Aの第2フランジ723Aの第2隙間形成部752が、幅方向Yに沿って真っ直ぐに延びる平板状に形成されている。
図24(B)は、第3実施形態の第2変形例を示す図であり、長さ方向Xから見た断面を示している。上記第1変形例では、第2フランジ723Aに湾曲部が設けられていなかった。一方、本第2変形例の接合構造770Bでは、第2フランジ723Bに第1湾曲部750と第1縦壁722とが設けられている。
図25(A)は、第3実施形態の第3変形例を示す図であり、長さ方向Xから見た断面を示している。第2変形例では、パネル701にパネル湾曲部740およびパネル縦壁712が設けられた形態を例に説明したけれども、この通りでなくてもよい。パネル701に代えて、図25(A)に示すように、湾曲部および縦壁が設けられていないパネル701Cが設けられてもよい。この接合構造770Cにおいて、パネル701Cのパネル本体711は、パネル側接触部743に直接連続している。
図25(B)は、第3実施形態の第4変形例を示す図であり、長さ方向Xから見た断面を示している。上述の実施形態では、幅方向Yの他端から一端に沿って、湾曲部740,750、パネル接触部773、パネル空隙形成部771、パネル接合部772の順に並んでいた。しかしながら、この通りでなくてもよい。図25(B)に示す第4変形例の接合構造770Dでは、幅方向Yの他端から一端に沿って、湾曲部740,750、パネル接合部772、パネル空隙形成部771、パネル接触部773の順に配置されている。この第4変形例では、パネル接触部773が、フランジ713D,723Dのエッジ部744,754に配置されている。幅方向Yにおけるパネル接触部773の長さは、パネル側接触部743と第1接触部753との間の目標摩擦抵抗力の圧力等に応じて適宜設定される。また、パネル接触部773と湾曲部740,750との間にパネル接合部772が配置されている。
以上が、第3実施形態の第4変形例の概略構成である。次に、この第4変形例の製造方法の一例を説明する。
図26(A)および図26(B)は、第1フランジ713Dを第2フランジ723Dに接合する工程を説明するための模式的な断面図である。第1フランジ713Dを第2フランジ723Dに接合する際には、まず、図26(A)に示されている第1フランジ素材801Dと第2フランジ素材802Dと第3フランジ素材803とを準備する。
第1フランジ素材801Dは、第1フランジ713Dの素材であり、第2フランジ素材802Dは、第2フランジ723Dの素材である。第1フランジ素材801Dは、第1フランジ713Dのうちパネル側空隙形成部741の中間部からパネル湾曲部740までの部分が平板状に形成されている点以外は、パネル701Dと同じ形状に形成されている。すなわち、第1フランジ素材801Dは、パネル本体711と、パネル縦壁712と、第1フランジ予定部811Dと、を有している。第1フランジ予定部811Dは、パネル側空隙形成部741の一端741aと、この一端741a(パネルエッジ部744)に形成されたパネル側接触部743と、パネル側空隙形成部741の中間部から幅方向Yの他端側に延びるパネル平板部812Dと、パネル湾曲部740と、を有している。そして、パネル側空隙形成部741の一端741aと、パネル平板部812Dとによって、パネル凹部813Dが形成されている。このパネル凹部813Dは、第1フランジ素材801Dと第2フランジ素材802Dとを当接させた際に第1フランジ素材801Dと第2フランジ素材802Dとが離隔した部分となる。
同様に、第2フランジ素材802Dは、第2フランジ723Dのうち第1空隙形成部751の中間部から第1湾曲部750までの部分が平板状に形成されている点以外は、第1半部702Dと同じ形状に形成されている。すなわち、第2フランジ素材802Dは、第1本体721と、一対の第1縦壁722,724と、第2フランジ予定部821Dと、他方の第2フランジ725と、を有している(図26(A)および図26(B)では、第1縦壁724の図示を省略している)。第2フランジ予定部821Dは、第1空隙形成部751の一端751aと、この一端751a(第2エッジ部754)に形成された第1接触部753と、第1空隙形成部751の中間部から幅方向Yの他端側に延びる第1平板部822Dと、第1湾曲部750と、を有している。そして、第1空隙形成部751の一端751aと、第1平板部822Dとによって、第1凹部823Dが形成されている。この第1凹部823Dは、第1フランジ素材801Dと第2フランジ素材802Dとを当接させた際に第1フランジ素材801Dと第2フランジ素材802Dとが離隔した部分となる。
第1フランジ素材801Dと第2フランジ素材802Dと第3フランジ素材803とを準備した後、これら第1フランジ素材801Dのパネル側接触部743と第2フランジ素材802Dの第1接触部753とを対向させる。このとき、平板部812D,822Dは、平行に、または、対応するエッジ部744,754側に向かって互いの隙間が狭くなるように、互いに非平行に、または、エッジ部744,754の近傍に湾曲部を形成した状態で配置される。さらに、第2フランジ素材802Dの平板部822Dと第3フランジ素材803の一方の第3フランジ733とを対向させるとともに、第2フランジ素材802Dの他方の第2フランジ725と、第3フランジ素材803の第3フランジ735と、を対向させる。
そして、凹部813D,823Dが配置されている箇所において第1フランジ素材801Dと第2フランジ素材802Dとを互いに突き合わせることで、図26(B)に示すように、凹部813D,823Dを変形させる。具体的には、スポット溶接ガン790のクランプが、パネル接合部772とする箇所を互いに接触するようにフランジ素材801D,802D,803を挟み込む。これにより、フランジ素材801D,802Dのうちパネル接合部772となる部分が突き合わせられ、この突き合わせられた部分をスポット溶接することで、パネル接合部772および一方の半部接合部775が形成される。このとき、パネル接合部772から離隔した位置のパネル接触部773において、第1フランジ素材801Dと第2フランジ素材802Dとが摺動可能に押される。
このように、スポット溶接前にパネル接合部772となる部分の近傍に隙間(凹部813D,823Dの隙間)ができるようにフランジ素材801D,802Dを成形し、スポット溶接ガン790によってフランジ素材801D,802Dを挟みながらフランジ素材801D,802Dを強制的に接触させながら接合を行う。これにより、パネル側接触部743と第1接触部753とがパネル接合部772以外の箇所で強く接触する。
上述の工程により、第1フランジ713Dが形成されるとともに、第2フランジ723Dが形成され、且つ、これら第1フランジ713Dおよび第2フランジ723Dがパネル接合部772で互いに接合される。また、第2および第3フランジ725,735が半部接合部775,776で互いに接合される。なお、フランジ素材801Dの凹部813Dおよびフランジ素材802Dの凹部823Dの何れか一方が無くてもよい。凹部が設けられないフランジ素材のフランジ予定部は、平坦に形成される。
図27(A)は、第3実施形態の第5変形例を示す図であり、長さ方向Xから見た断面を示している。上述の第4変形例では、第1半部702Dに湾曲部(第1湾曲部750)が形成された構成を例に説明したけれども、この通りでなくてもよい。第1半部702Dに代えて、図27(A)に示すように、接合構造770Eにおいて、湾曲部が設けられていない平板状の第1半部702Eが設けられてもよい。
図27(B)は、第3実施形態の第6変形例を示す図であり、長さ方向Xから見た断面を示している。上述の第5変形例では、第1半部702Eは、湾曲部および縦壁が形成されていない平坦な部材であった。一方、第6変形例の接合構造770Fの第1半部702Fには、第1湾曲部750および第1縦壁722が設けられている。
図28は、第3実施形態の第7変形例を示す図であり、長さ方向Xから見た断面を示している。上述の第6変形例では、パネル701Dは、パネル湾曲部740およびパネル縦壁712を有していた。一方、第7変形例の接合構造770Gのパネル701Gでは、湾曲部および縦壁が設けられていない。パネル701Gでは、パネル側接合部742の他端側に、幅方向Yに沿って他端側に進むに従い高さ方向Zの一方に僅かに上がる傾斜部が形成され、この傾斜部の他端にパネル本体711が連続している。
図29は、第3実施形態の第8変形例を示す図であり、幅方向Yから見た断面を示している。図30は、第1フランジ713Hを第2フランジ723Hに接合する工程を説明するための模式的な斜視図である。図29および図30を参照して、第3実施形態の第8変形例では、接合構造770に代えて接合構造770Hが設けられている。接合構造770Hは、第1フランジ713Hと第2フランジ723Hとに互いに対称形状のエンボス形状部を複数設け、このエンボス形状部の隙間を狭めて接合することで形成されている。なお、図29に示すパネル701H、第1半部702Hおよび第2半部703Hと、図30に示す第1フランジ素材801H、第2フランジ素材802Hおよび第3フランジ素材803Hとは、第1フランジ713H側の構造(図30の左側の構造)以外は互いに同様の形状を有している。
車体800Hは、パネル701Hと、骨格部材704Hと、を有している。
パネル701Hは、パネル本体711と、パネル縦壁712と、第1フランジ713Hと、を有している。
骨格部材704Hは、第1半部702Hと、この第1半部702Hに組み合わされた第2半部703Hと、を有している。
第1半部702Hは、本変形例では、ハット形断面を有しており、第1本体721と、一対の第1縦壁722,724と、一対の第2フランジ723H,725と、を有している。
第2半部703Hは、本実施形態では、ハット形断面を有しており、第2本体731と、一対の第2縦壁732,734と、一対の第3フランジ733H,735と、を有している。
接合構造770Hは、第1フランジ713Hと、第2フランジ723Hと、これらのフランジ713H,723Hによって形成されたパネル接合部772と、第1フランジ713Hおよび第2フランジ723Hによって形成されパネル接合部772を長さ方向Xに挟んで配置された一対のパネル空隙形成部771,771と、第1フランジ713Hおよび第2フランジ723Hによって形成されたパネル接触部773と、第3フランジ733Hと、第2フランジ23Hおよび第3フランジ33Hによって形成された一方の半部接合部775と、を有している。
第1フランジ713H、第2フランジ723H、および、第3フランジ733Hは、長さ方向Xを長手方向として延びており、高さ方向Zに対向配置されている。この第8変形例では、長さ方向Xにおいて、2つのパネル接合部772,772の間にパネル接触部773が配置されている。また、長さ方向Xの端部にも、パネル接触部773が配置されている。幅方向Yにおける第1フランジ713Hの端部に、パネル縦壁712が連続している。同様に、幅方向Yにおける第2フランジ723Hの端部に、一方の第1縦壁722が連続している。
本実施形態では、長さ方向Xの他端側から一端側にかけて、パネル接触部773、一方のパネル空隙形成部771、パネル接合部772、および、他方のパネル空隙形成部771を一つの組として、この組が複数配置されている。この構成により、2つのパネル接合部772,772の間にパネル接触部773が配置されている。
第1フランジ713Hは、パネル側接触部743と、一対のパネル側空隙形成部741,41と、これらパネル側空隙形成部741,741の間に配置されたパネル側接合部742と、を有している。
第2フランジ723Hは、第1接触部753と、一対の第1空隙形成部751,751と、これら第1空隙形成部751,751の間に配置された第1接合部752と、を有している。
パネル接合部772は、第1フランジ713Hと第2フランジ723Hとが、少なくとも一方が他方側へ潰された状態で互いに接合されることで形成されている。本実施形態では、パネル接合部772は、第1フランジ713Hが第2フランジ723H側へ潰され、且つ、第2フランジ723Hが第1フランジ713H側へ潰された状態でこれらのフランジ713H,723Hが互いに接合されることで形成されている。
実施形態の構成と同様に、パネル側接触部743は、パネル側空隙形成部741が素材の変形によって形成されることで第2フランジ723H側に押されている。また、第1接触部753は、第1空隙形成部751が素材の変形によって形成されることで第2フランジ723H側に押されている。このような構成により、パネル側接触部743は、第1接触部753と擦れることで振動エネルギーを熱エネルギーに変換して減衰させる。
第3フランジ732Hは、第3フランジ平坦部736と、第3フランジ平坦部736から第2フランジ723H側とは反対側(図29の下側)に突出する第3フランジ凸部737と、を有している。
第3フランジ平坦部736と第3フランジ凸部737とは、長さ方向Xに交互に配置されている。第3フランジ凸部737は、第2フランジ723Hとは高さ方向Zに離隔して配置されている。第3フランジ凸部737は、幅方向Yに見てハット形に形成されている。第3フランジ凸部737の基端に、第3フランジ平坦部736が設けられている。
第3フランジ平坦部736は、長さ方向Xに沿って平坦に延びており、第2半部接合部762を有している。この第2半部接合部762は、第2フランジ723Hの第1接合部752とパネル701Hの厚み方向に重なって配置されている。そして、第2フランジ723Hのうち第2半部接合部762と対向している箇所(第1接合部752)に、第1半部接合部761が設けられている。長さ方向Xにおいて、一対のパネル空隙形成部771の間に第2半部接合部762が配置されている。
上記の構成により、長さ方向Xに互いに隣接する2つの半部接合部775,775の間の位置において第2フランジ723Hと第3フランジ733Hとが互いに離隔している。これにより、第2フランジ723Hと第3フランジ733Hとの間に空隙としての半部空隙778が形成されている。
次に、フランジ713H,723H,733Hの接合方法(車体800Hの製造方法)の一例を説明する。
図31(A)および図31(B)は、第3実施形態の第8変形例において第1フランジ713Hを第2フランジ723Hに接合する工程を説明するための模式的な断面図である。第1フランジ713Hを第2フランジ723Hに接合する際には、まず、図30および図31(A)に示されている第1フランジ素材801Hと第2フランジ素材802Hと第3フランジ素材803Hとを準備する。第1フランジ素材801Hは、第1フランジ713Hの素材であり、第2フランジ素材802Hは、第2フランジ723Hの素材であり、第3フランジ素材803Hは、第3フランジ733Hの素材であり、第3フランジ素材803Hは、第3フランジ733Hの素材である。
より具体的に説明すると、第1フランジ素材801Hは、第1フランジ713Hのうち一対のパネル側空隙形成部741,741およびパネル側接合部742が形成される部分が全体的にパネル側接触部743に対して窪んでいる以外の点は、パネル701Hと同じ形状に形成されている。すなわち、第1フランジ素材801Hは、パネル側接触部743と、パネル凹部813Hと、を有している。パネル側接触部743とパネル凹部813Hとが長さ方向Xに交互に配置されている。このパネル凹部813Hは、第1フランジ素材801Hと第2フランジ素材802Hとを当接させた際に第1フランジ素材801Hと第2フランジ素材802Hとが離隔した部分となる。
同様に、第2フランジ素材802Hは、第2フランジ723Hのうち一対の第1空隙形成部751,751および第1接合部752が形成される部分が全体的に第1接触部753に対して窪んでいる以外の点は、第1半部702Hと同じ形状に形成されている。すなわち、第2フランジ素材802Hは、第1接触部753と、第1凹部823Hと、を有している。第1接触部753と第1凹部823Hとが長さ方向Xに交互に配置されている。この第1凹部823Hは、第1フランジ素材801Hと第2フランジ素材802Hとを当接させた際に第1フランジ素材801Hと第2フランジ素材802Hとが離隔した部分となる。
第3フランジ素材803Hは、第2半部接合部762,764が第1半部接合部761,763と分離されている点以外は、第3フランジ733Hと同様の形状を有している。
第1フランジ素材801Hと第2フランジ素材802Hと第3フランジ素材803Hとを準備した後、これらのフランジ素材801H,802H,803Hを高さ方向Zに並べる。
そして、凹部813H,823Hが配置されている箇所において第1フランジ素材801Hと第2フランジ素材802Hとを互いに突き合わせる。これにより、図31(B)に示すように、凹部813H,823Hを変形させる。具体的には、スポット接合ガン790のクランプが、第1フランジ素材801Hと第2フランジ素材802Hと第3フランジ素材803Hを挟み込む。このとき、凹部813H,823Hのうち、パネル接合部772とする箇所を互いに接触するようにフランジ素材801H,802Hを上記クランプが挟み込む。これにより、フランジ素材801H,802Hのうちパネル接合部772となる部分が突き合わせられ、この突き合わせられた部分をスポット溶接等によって接合することで、パネル接合部772および半部接合部775が形成される。このとき、パネル接合部772から離隔した位置のパネル接触部773において、第1フランジ素材801Hと第2フランジ素材802Hとが摺動可能に押しつけられる。
このように、スポット接合前にパネル接合部772となる部分に隙間(凹部813H,823H)ができるようにフランジ素材801H,802Hを成形し、スポット接合ガン790によってフランジ素材801H,802Hを挟みながらフランジ素材801H,802Hを強制的に接触させながら接合を行う。これにより、パネル側接触部743と第1接触部753とがパネル接合部772以外の箇所(パネル接触部773)で強く接触する。
上述の工程により、第1フランジ713Hが形成されるとともに、第2フランジ723Hが形成され、且つ、これらのフランジ713H,723Hがパネル接合部772で互いに接合される。さらに、一方の第2および第3フランジ723H,733Hが一方の半部接合部775で接合され、他方の第2および第3フランジ725,735が他方の半部接合部776で接合される。
なお、上記の第8変形例においては、幅方向Yの全域においてパネル接合部772が形成されてもよいし、一部にのみパネル接合部772が形成されてもよい。長さ方向Xにおけるフランジ713H,723Hの一部にパネル接合部772が形成される場合、第1フランジ素材801Hおよび第2フランジ素材802Hをスポット接合ガン790で接合する際に、長さ方向Xにおける凹部813H,823Hの一部のみが変形および接合される。
以上の次第で、第3実施形態の第8変形例によると、2つの半部接合部775,775間において、第2フランジ723Hと第3フランジ733Hとの間に半部空隙778が形成されている。この構成によると、第1半部702Hと第2半部703Hを接合する半部接合部775において、第1半部接合部761と第2半部接合部762同士をより強く接触させた状態で第2フランジ723Hと第3フランジ733Hとを接合できる。
なお、上述の実施形態および変形例の二種類以上の構造が組み合わされてもよい。
また、上述の実施形態および変形例では、本発明が自動車の車体に適用される場合を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。本発明は、鉄道車両の車体等、他の車両の車体に適用されてもよい。
なお、上述の実施形態および変形例の二種類以上の構造が組み合わされてもよい。
また、上述の実施形態および変形例では、本発明が自動車の車体に適用される場合を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。本発明は、鉄道車両、および、建築物の外装部材等、自動車以外の構造体に適用されてもよい。