本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、層転写装置の全体構成を簡単に説明した後、本願発明の特徴部分の構成について説明する。
以下の説明において、方向は、図1に示す方向で説明する。すなわち、図1の右側を「前」とし、図1の左側を「後」とし、図1の紙面手前側を「左」とし、図1の紙面奥側を「右」とする。また、図1の上下を「上下」とする。
図1(a)に示すように、層転写装置1は、例えばレーザプリンタ等の画像形成装置でシートSにトナー像を形成した後、シートSのトナー像の上にアルミニウム等の箔を転写するための装置である。つまり、層転写装置1は、シートSのトナー像の上に箔を転写することで、シートSに箔の画像を形成している。層転写装置1は、筐体2と、シートトレイ3と、シート搬送部10と、フィルム供給部30と、転写部50とを備えている。
筐体2は、樹脂などからなり、筐体本体21と、カバー22とを備えている。筐体本体21は、上部に開口21A(図2参照)を有している。開口21Aは、筐体本体21に後述するフィルムユニットFUを着脱するための開口である。カバー22は、開口21Aを開閉するための部材である。カバー22の後端部は、筐体本体21に回動可能に支持されている。カバー22は、開口21Aを閉じる閉位置(図1(a)の位置)と、開口21Aを開放する開位置(図2の位置)との間で回動可能となっている。
シートトレイ3は、用紙、OHPフィルム等のシートSが載置されるトレイである。シートトレイ3は、筐体2の後部に設けられている。なお、シートSは、トナー像が形成された面を下向きにしてシートトレイ3上に載置される。
シート搬送部10は、シート供給機構11と、シート排出機構12とを備えている。シート供給機構11は、シートトレイ3上のシートSを一枚ずつ転写部50に向けて搬送する機構である。シート供給機構11は、ピックアップローラ11Aと、リタードローラ11Bと、第1搬送ローラ11Cとを備えている。
ピックアップローラ11Aは、シートトレイ3上のシートSを転写部50に向けて供給するためのローラである。リタードローラ11Bは、ピックアップローラ11Aによって搬送されるシートSを1枚に分離するためのローラである。
リタードローラ11Bは、ピックアップローラ11Aの上に配置されている。リタードローラ11Bは、ピックアップローラ11Aで送り出されるシートSの上に重なっているシートSをシートトレイ3に向けて戻す方向に回転可能となっている。
第1搬送ローラ11Cは、2つのローラからなり、これらのローラの間でシートSを挟んだ状態で各ローラが回転することで、シートSを搬送可能となっている。第1搬送ローラ11Cは、ピックアップローラ11Aと転写部50との間に配置され、ピックアップローラ11Aで送り出されるシートSを転写部50(加圧ローラ51と加熱ローラ61の間のニップ部)に搬送する。
シート排出機構12は、転写部50を通過したシートSを筐体2の外部に排出する機構である。シート排出機構12は、第2搬送ローラ12Aと、排出ローラ12Bとを備えている。
第2搬送ローラ12Aおよび排出ローラ12Bは、それぞれ、2つのローラからなり、これらのローラの間でシートSを挟んだ状態で各ローラが回転することで、シートSを搬送可能となっている。第2搬送ローラ12Aは、転写部50(ニップ部)と排出ローラ12Bとの間に配置されている。第2搬送ローラ12Aは、転写部50から送り出されるシートSが供給され、このシートSを排出ローラ12Bに搬送する。排出ローラ12Bは、シートSの搬送方向において第2搬送ローラ12Aの下流側に配置され、第2搬送ローラ12Aで送り出されるシートSを筐体2の外に排出する。
フィルム供給部30は、シート供給機構11から搬送されたシートSの下面に多層フィルムFを下から重ねるように供給する部分である。フィルム供給部30は、フィルムユニットFUと、駆動源の一例としてのメインモータ80を備えている。
フィルムユニットFUは、図2に示すように、後述する供給リール31の軸方向に直交する方向において、カバー22が開いた状態で開口21Aを通過して筐体本体21に着脱可能となっている。フィルムユニットFUは、供給リール31と、巻取リール35と、第1案内軸41と、第2案内軸42と、第3案内軸43とを備えている。フィルムユニットFUの供給リール31には、多層フィルムFが巻回されている。つまり、フィルムユニットFUは、多層フィルムFを保持している。
図1(b)に示すように、多層フィルムFは、複数の層からなるフィルムである。詳しくは、多層フィルムFは、支持層F1と、被支持層F2とを有する。支持層F1は、高分子材料からなるテープ状の透明な基材であり、被支持層F2を支持している。被支持層F2は、例えば、剥離層F21と、転写層F22と、接着層F23とを有する。剥離層F21は、支持層F1から転写層F22を剥離しやすくするための層であり、支持層F1と転写層F22との間に配置されている。剥離層F21は、支持層F1から剥離しやすい透明な材料、例えばワックス系樹脂を含んでいる。
転写層F22は、トナー像に転写される層であり、箔を含んでいる。箔とは、金、銀、銅、アルミニウム等の金属であって薄く延された金属である。また、転写層F22は、金色、銀色、赤色などの着色材料と、熱可塑性樹脂とを含む。転写層F22は、剥離層F21と接着層F23との間に配置されている。
接着層F23は、転写層F22をトナー像に接着しやすくするための層である。接着層F23は、後述する転写部50によって加熱されたトナー像に付着しやすい材料、例えば塩化ビニル系樹脂やアクリル系樹脂を含んでいる。
供給リール31は、樹脂などからなり、多層フィルムFが巻回される供給軸部31Aを有している。供給軸部31Aには、多層フィルムFの一端が固定されている。
巻取リール35は、樹脂などからなり、多層フィルムFを巻き取るための巻取軸部35Aを有している。巻取軸部35Aには、多層フィルムFの他端が固定されている。
なお、図1等においては、便宜上、供給リール31および巻取リール35の両方に多層フィルムFが最大に巻回された状態を図示することとする。実際には、フィルムユニットFUが新品の状態においては、供給リール31に巻回されたロール状の多層フィルムFの径は最大となっており、巻取リール35には多層フィルムFが巻回されていない、もしくは、巻取リール35に巻回されたロール状の多層フィルムFの径は最小となっている。また、フィルムユニットFUの寿命時(多層フィルムFを使い切ったとき)においては、巻取リール35に巻回されたロール状の多層フィルムFの径は最大となり、供給リール31には多層フィルムFが巻回されていない、もしくは、供給リール31に巻回されたロール状の多層フィルムFの径は最小となる。
第1案内軸41は、供給リール31から引き出される多層フィルムFの進行方向を変更するための軸である。第1案内軸41は、樹脂などからなっている。
第2案内軸42は、第1案内軸41で案内された多層フィルムFの進行方向を変更するための軸である。第2案内軸42は、樹脂などからなっている。
第3案内軸43は、第2案内軸42で案内された多層フィルムFの進行方向を変更して巻取リール35に案内する軸である。第3案内軸43は、樹脂などからなっている。
第1案内軸41は、トナー像を下にした状態で搬送されるシートSに対して、供給リール31から引き出された多層フィルムFを下から重ねるように案内している。第1案内軸41は、供給リール31から引き出された多層フィルムFの搬送方向を変えて、シートSの搬送方向と略平行に多層フィルムFを案内する。
第2案内軸42は、転写部50を通過した多層フィルムFと接触し、転写部50を通過した多層フィルムFの搬送方向をシートSの搬送方向とは異なる方向に変更している。転写部50を通過してシートSと重なった状態で搬送された多層フィルムFは、第2案内軸42を通過する際にシートSとは異なる方向に案内され、シートSから剥離される。
転写部50は、シートSと多層フィルムFを重ねた状態で加熱および加圧することで、シートSに形成されたトナー像の上に転写層F22を転写するための部分である。転写部50は、加圧ローラ51と、加熱ローラ61と、切替機構70とを備えている。転写部50は、加圧ローラ51と加熱ローラ61のニップ部において、シートSと多層フィルムFを重ねて加熱および加圧する。詳しくは、加圧ローラ51と加熱ローラ61との間で多層フィルムFを挟むことで、多層フィルムFと加圧ローラ51の間に、シートSを加圧・加熱してシートSのトナー像に対して転写層を転写するためのニップ部が形成されている。
加圧ローラ51は、円筒状の芯金の周囲をシリコンゴムからなるゴム層で被覆したローラである。加圧ローラ51は、多層フィルムFの上側に配置され、シートSの裏面(トナー像が形成された面と反対側の面)と接触可能となっている。
加圧ローラ51は、両端部がカバー22に回転可能に支持されている。加圧ローラ51は、加熱ローラ61との間でシートSおよび多層フィルムFを挟み、メインモータ80によって回転駆動されることで加熱ローラ61を従動回転させる。このように加圧ローラ51と加熱ローラ61との間でシートSおよび多層フィルムFを挟んだ状態で、加圧ローラ51および加熱ローラ61が回転することで、シートSおよび多層フィルムFが搬送される。
加熱ローラ61は、円筒状に形成された金属管の内部にヒータを配置したローラであり、多層フィルムFおよびシートSを加熱している。加熱ローラ61は、多層フィルムFの下側に配置され、多層フィルムFと接触している。
切替機構70は、加圧ローラ51および加熱ローラ61の状態を、加圧ローラ51と加熱ローラ61で多層フィルムFを挟んだ圧接状態と、少なくとも1つのローラが多層フィルムFから離れた離間状態とに切り替えるための機構である。本実施形態では、切替機構70は、加熱ローラ61を、図6に実線で示す圧接位置と、図6に仮想線で示す離間位置との間で移動させることで、加熱ローラ61を多層フィルムFに対して接触・離間させている。つまり、切替機構70は、加熱ローラ61を多層フィルムFから離すことで、加圧ローラ51および加熱ローラ61の状態を、離間状態にする。また、切替機構70は、加熱ローラ61を多層フィルムFに圧接させることで、加圧ローラ51および加熱ローラ61の状態を、圧接状態にする。
このように構成された層転写装置1では、シートSの表面を下向きにしてシートトレイ3に載置されたシートSが、シート供給機構11により一枚ずつ転写部50に向けて搬送される。シートSは、転写部50のシート搬送方向における上流側で、供給リール31から供給された多層フィルムFと重ねられ、シートSのトナー像と多層フィルムFが接触した状態で転写部50に搬送される。
転写部50においては、シートSと多層フィルムFが加圧ローラ51と加熱ローラ61の間のニップ部を通過する際に、加熱ローラ61と加圧ローラ51により加熱および加圧され、トナー像の上に転写層F22が転写される。なお、以下の説明では、トナー像への転写層F22の転写を、単に「層転写」とも称する。
層転写が行われた後、シートSと多層フィルムFは密着した状態で第2案内軸42まで搬送される。シートSと多層フィルムFが第2案内軸42を通過すると、多層フィルムFの搬送方向がシートSの搬送方向と異なる方向に変わるため、シートSから多層フィルムFが剥離される。
シートSから剥離された多層フィルムFは、巻取リール35に巻き取られていく。一方、多層フィルムFが剥離されたシートSは、シート排出機構12によって、箔が転写された表面を下に向けた状態で、筐体2の外部に排出される。
図3に示すように、フィルムユニットFUは、樹脂などからなるホルダ100と、ホルダ100に着脱可能なフィルムカートリッジ200とを備えている。フィルムカートリッジ200は、前述した多層フィルムFが巻回された供給リール31および巻取リール35と、供給ケース32とを備えている。
供給リール31(詳しくは、供給ケース32)および巻取リール35は、ホルダ100に対して、供給リール31の軸方向に直交する方向に着脱可能となっている。そして、フィルムカートリッジ200は、ホルダ100に取り付けられた状態において、筐体本体21に着脱可能となっている。
供給ケース32は、供給リール31を収容する中空のケースである。供給ケース32は、樹脂などからなり、略円筒状の外周壁32Aと、外周壁32Aの両端に設けられる略円板状の2つの側壁32Bとを有する。供給リール31は、供給ケース32の各側壁32Bに回転可能に支持されている。
ホルダ100は、ベースフレーム110と、ベースフレーム110に回動可能(移動可能)に支持される規制フレーム120とを有している。ベースフレーム110は、第1保持部111と、第2保持部112と、2つの連結部113と、2つの取手114とを有している。
第1保持部111は、供給ケース32を保持する部位である。第1保持部111は、供給ケース32を介して供給リール31を保持している。第1保持部111は、断面視略円弧状の外周壁111Aと、2つの側壁111Bとを有する。
外周壁111Aは、供給ケース32の外周面に沿って配置されている。各側壁111Bは、供給リール31の軸方向において、外周壁111Aの各端部に配置されている。
各側壁111Bは、供給ケース32の着脱時に供給ケース32をガイドする着脱ガイドGを有している。2つのうち一方の側壁111Bには、ギヤ機構130が設けられている。ギヤ機構130は、筐体本体21に設けられる供給側トルクリミッタTL2(図6参照)の負荷を供給リール31に付与するための機構である。なお、ギヤ機構130の構造については、後で説明する。
第2保持部112は、巻取リール35を保持する部位である。詳しくは、第2保持部112は、規制フレーム120とともに、中空のケースを構成しており、中空のケース内に巻取リール35を収容している。
2つの連結部113は、第1保持部111と第2保持部112とを連結する部位である。詳しくは、各連結部113は、供給リール31の軸方向に間隔を開けて配置されている。
このように連結部113が形成されることで、ホルダ100は、供給リール31の軸方向に直交する直交方向に貫通する貫通穴100Aを有している。各取手114は、各連結部113の上に配置されている。各取手114は、ホルダ100のうち巻取リール35の軸方向両端にそれぞれ配置されている。
供給リール31は、軸方向の一端に供給ギヤ31Gを有している。供給ギヤ31Gは、供給ケース32に形成された切欠から外部に露出している。供給ギヤ31Gは、フィルムカートリッジ200がホルダ100に取り付けられた状態において、前述したギヤ機構130と噛み合うように構成されている。
巻取リール35は、前述した巻取軸部35Aと、2つのフランジ35Bと、巻取ギヤ35Cとを有している。フランジ35Bは、巻取軸部35Aに巻回される多層フィルムFの幅方向の移動を規制するための部位である。フランジ35Bは、巻取軸部35Aよりも大径の円板状に形成されており、巻取軸部35Aの両端部に設けられている。
巻取ギヤ35Cは、層転写装置1に設けられるメインモータ80から駆動力を受け、駆動力を巻取軸部35Aに伝達するためのギヤである。巻取ギヤ35Cは、軸方向において、フランジ35Bの外側に配置されている。巻取ギヤ35Cは、巻取軸部35Aと同軸に配置されている。
図4に示すように、供給リール31に負荷を付与するためのギヤ機構130は、フレームギヤ131と、ギヤ列132とを備えている。フレームギヤ131は、筐体本体21に設けられる筐体ギヤ21Gと噛み合うギヤである。フレームギヤ131は、筐体ギヤ21Gを介して後述する供給側トルクリミッタTL2などに連結されている。
ギヤ列132は、フレームギヤ131と供給ギヤ31Gを連結するギヤ列である。ギヤ列132は、第1ギヤ133と、第2ギヤ134とを備えている。第1ギヤ133は、フレームギヤ131に噛み合っている。第2ギヤ134は、2段ギヤであり、大径ギヤ部134Aと、小径ギヤ部134Bとを有する。
大径ギヤ部134Aは、小径ギヤ部134Bよりも大径のギヤである。大径ギヤ部134Aは、第1ギヤ133に噛み合っている。小径ギヤ部134Bは、供給ギヤ31Gに噛み合っている。
図5に示すように、供給リール31の軸方向の他端には、第1負荷付与機構310が設けられている。第1負荷付与機構310は、供給リール31を回転可能に支持する供給ケース32との間で摩擦力を発生させることで供給リール31に第1負荷トルクLT1を付与する機構である。
第1負荷付与機構310は、供給リール31に固定される固定部材311と、固定部材311に対して軸方向に移動可能な可動部材312と、固定部材311と可動部材312との間に配置されるコイルバネ313と、供給ケース32に固定される摩擦パッド314とを備えている。
固定部材311は、円筒状に形成された供給軸部31Aに嵌合されることで、供給軸部31Aに固定されている。可動部材312は、固定部材311によって軸方向に移動可能に支持されている。
そして、可動部材312は、コイルバネ313によって摩擦パッド314に付勢されている。これにより、供給リール31が回転すると、可動部材312と摩擦パッド314との間で摩擦力が生じるので、第1負荷付与機構310によって供給リール31に第1負荷トルクLT1が付与される。
図6に示すように、メインモータ80は、前述したように巻取リール35および加圧ローラ51に駆動力を付与する他、シート搬送部10にも駆動力を付与している。ここで、図6においては、便宜上、層転写装置1の構成を簡略化して図示している。
層転写装置1は、メインモータ80の駆動力を巻取リール35に伝達するための構成として、巻取側トルクリミッタTL1と、ギヤG1とを主に備えている。巻取側トルクリミッタTL1は、メインモータ80から巻取リール35に加わる駆動トルクDTを所定値以下に制限する機能を有している。
巻取側トルクリミッタTL1は、図示せぬギヤを介してメインモータ80に連結されている。また、巻取側トルクリミッタTL1は、ギヤG1を介して巻取ギヤ35Cに連結されている。
層転写装置1は、メインモータ80の駆動力をシート搬送部10に伝達するための構成として、ピックアップクラッチC1と、ギヤG2とを主に備えている。ピックアップクラッチC1は、メインモータ80からピックアップローラ11Aへの駆動力の伝達を切り替えるための電磁クラッチである。
ピックアップクラッチC1は、図示せぬギヤを介してメインモータ80に連結されている。また、ピックアップクラッチC1は、ギヤG2を介してピックアップローラ11Aに連結されている。なお、シート搬送部10を構成する各ローラのうち、ピックアップローラ11A以外のローラは、図示せぬギヤを介してメインモータ80に連結されている。
層転写装置1は、メインモータ80の駆動力を加圧ローラ51に伝達するための構成として、伝達機構TMと、ローラクラッチC5とを主に備えている。伝達機構TMは、メインモータ80からの駆動力を加圧ローラ51に伝達させる機構である。伝達機構TMは、ローラクラッチC5から加圧ローラ51へ駆動力を伝達するためのギヤG3と、メインモータ80からローラクラッチC5へ駆動力を伝達するための図示せぬギヤとを備えている。
ローラクラッチC5は、伝達機構TMの状態を、加圧ローラ51に駆動力を伝達させる伝達状態と、加圧ローラ51への駆動力の伝達を遮断する遮断状態とに切替可能な電磁クラッチである。
層転写装置1は、供給側トルクリミッタTL2と、リールクラッチC2と、接離モータ90と、上流ガイドGD1と、下流ガイドGD2と、開閉センサSBと、操作部の一例としてのタッチパネルTPと、制御部300とをさらに備えている。
供給側トルクリミッタTL2は、第2負荷トルクLT2を供給リール31に付与するための部材である。ここで、第2負荷トルクLT2は、巻取リール35に加わる駆動トルクDTから前述した第1負荷トルクLT1を引いた値よりも大きな値に設定されている。また、前述した第1負荷トルクLT1は、巻取リール35に加わる駆動トルクDTよりも小さな値に設定されている。
供給側トルクリミッタTL2は、リールクラッチC2に連結されている。リールクラッチC2は、供給側トルクリミッタTL2と供給リール31の接続状態を変更可能とする電磁クラッチである。リールクラッチC2が供給側トルクリミッタTL2と供給リール31の接続状態を変更することで、供給リール31に付与される負荷トルクLTの大きさが変更されるようになっている。詳しくは、供給側トルクリミッタTL2と供給リール31との接続が切れた状態においては、供給リール31に付与される負荷トルクLTは、第1負荷トルクLT1となり、駆動トルクDTよりも小さな値となる。また、供給側トルクリミッタTL2と供給リール31とが接続された状態においては、供給リール31に付与される負荷トルクLTは、第1負荷トルクLT1に第2負荷トルクLT2を加えた値となり、駆動トルクDTよりも大きな値となる。
リールクラッチC2は、筐体ギヤ21Gと前述したギヤ機構130(図示略)を介して供給ギヤ31Gに連結されている。また、筐体ギヤ21Gは、検知ギヤG4と噛み合っている。検知ギヤG4は、複数のスリットが形成された回転板を有するギヤである。回転板の各スリットは、検出手段の一例としてのロータリエンコーダREによって検出されることで、供給リール31の回転速度を検出することが可能となっている。
ここで、供給リール31の回転速度は、供給軸部31Aへの多層フィルムFの巻き付き量が少なくなるほど、大きくなる。そのため、供給リール31の回転速度は、供給リール31の供給軸部31Aへの多層フィルムFの巻き付き状態に対応した第1情報に相当する。
ロータリエンコーダREは、供給リール31の回転速度に応じたパルス幅のパルス信号を制御部300に出力する。
接離モータ90は、切替機構70を駆動して、加圧ローラ51および加熱ローラ61の状態を、圧接状態と離間状態とに切り替えるためのモータである。また、切替機構70の近傍には、切替機構70が離間状態であることを検知する離間センサSAが設けられている。ここで、離間センサSAとしては、例えば光センサなどを用いることができる。
また、ピックアップローラ11Aと第1搬送ローラ11Cとの間には、転写部50に向けて搬送されるシートSの通過を検知する第1シートセンサSS1が設けられている。さらに、第2搬送ローラ12Aと排出ローラ12Bとの間には、転写部50から送り出されるシートSの通過を検知する第2シートセンサSS2が設けられている。
ここで、第1シートセンサSS1および第2シートセンサSS2としては、例えば、シートSが接触することで回動するレバーと、レバーの位置を検知する光センサとからなるセンサを用いることができる。このような構成とすることで、第1シートセンサSS1および第2シートセンサSS2のそれぞれにおいて、シートSの先端が通過したこと、シートSの後端が通過したことを検知することが可能となっている。
また、第1シートセンサSS1は、シートSと接触することで第1姿勢となり、シートSから外れることで第2姿勢となるため、シートSが第1シートセンサSS1を通過する間、第1シートセンサSS1は第1姿勢に保たれる。第1姿勢に保持されている時間は、シートSの搬送方向の長さLsに対応しているため、第1シートセンサSS1は、シートSの搬送方向の長さLsも検知可能となっている。
上流ガイドGD1は、多層フィルムFをシートSとともにシートSの搬送方向に沿って案内する部材であり、第1搬送ローラ11Cと加熱ローラ61(ニップ部)との間に配置されている。詳しくは、上流ガイドGD1は、第1案内軸41と加熱ローラ61との間で張られる多層フィルムFの下に配置されている。ここで、第1案内軸41および上流ガイドGD1は、上流側案内部材の一例である。
下流ガイドGD2は、多層フィルムFをシートSとともにシートSの搬送方向に沿って案内する部材であり、加熱ローラ61と第2搬送ローラ12Aとの間に配置されている。詳しくは、下流ガイドGD2は、加熱ローラ61と第2案内軸42との間で張られる多層フィルムFの下に配置されている。
開閉センサSBは、カバー22が閉じたことを検知するセンサである。なお、開閉センサとして、カバー22が開いたことを検知するセンサを使用してもよい。
タッチパネルTPは、ユーザによって操作されるボタンなどを表示するパネルである。詳しくは、タッチパネルTPは、層転写の処理を通常モードで行うための第1ボタンB1と、層転写の処理を使い切りモードで行うための第2ボタンB2を、表示する。ここで、通常モードとは、供給リール31に多少多層フィルムFが残った状態でユーザにエンプティを知らせるモードである。また、使い切りモードとは、供給リール31から多層フィルムFが分離したときにユーザにエンプティを知らせるモードである。ユーザは、タッチパネルTPに表示されたボタンB1,B2を選択することで、通常モードまたは使い切りモードを選択することが可能となっている。なお、タッチパネルTPは、図1に示すように、例えばカバー22の上面に設けられている。
なお、使い切りモードでは、後で詳述するように、搬送中のシートSを、供給リール31から分離した多層フィルムFで搬送する。そのため、このような分離した多層フィルムFによってシートSを搬送できるように、図7に示すように、第1搬送ローラ11C、加熱ローラ61、加圧ローラ51、第1案内軸41および供給軸部31Aの位置が設定されている。詳しくは、加熱ローラ61および加圧ローラ51間のニップ部から第1搬送ローラ11Cまでの距離L1が、ニップ部から供給軸部31Aまでの間において第1案内軸41および上流ガイドGD1に沿って張られる多層フィルムFの長さL2よりも小さくなるように、第1搬送ローラ11C、加熱ローラ61、加圧ローラ51、第1案内軸41および供給軸部31Aの位置が設定されている。
図6に戻って、制御部300は、CPU、RAM、ROMおよび入出力回路を備えており、ROM等に記憶されたプログラムやデータに基づいて各種演算処理を行うことによって、制御を実行する。なお、RAMは、不揮発性メモリとするのが好ましい。また、ROMやRAMには、後述する、閾値TH1~TH4や、第1シートセンサSS1でシート先端(または後端)を検知してからシート先端(または後端)が所定の位置(ニップ部、第2搬送ローラ12A、層転写完了位置等)まで搬送されるのに要する時間や、所定値Lthなどが記憶されている。
次に、制御部300の動作について図8~図11に示すフローチャートを参照して説明する。層転写装置1の電源が投入された後、制御部300は、図8および図11に示す処理を繰り返し実行している。本実施形態において、層転写を開始する際の初期状態においては、加熱ローラ61が離間位置に位置している。
なお、本実施形態では、負荷トルクLTと駆動トルクDTの関係を変更するためのリールクラッチC2の制御については詳細な説明は省略する。リールクラッチC2の制御については、シートSに層転写を行っていない間に、多層フィルムFが無駄に搬送されないように適宜制御すればよい。
図8に示す処理において、制御部300は、まず、タッチパネルTPから層転写開始指令を受けたか否かを判断する(S1)。ここで、タッチパネルTPは、ユーザによって第1ボタンB1または第2ボタンB2が選択されると、通常モードであるか使い切りモードであるかを示す信号を出力するとともに、層転写を開始するための層転写開始指令を出力する。
ステップS1において層転写開始指令がないと判断した場合には(No)、制御部300は、本処理を終了する。ステップS1において層転写開始指令があると判断した場合には(Yes)、制御部300は、加熱ローラ61内のヒータをONにする(S2)。ステップS2の後、詳しくは加熱ローラ61の温度が層転写に適した温度まで上昇した後、制御部300は、メインモータ80をONにする(S3)。
ステップS3の後、制御部300は、ピックアップクラッチC1を接続して、シートSの供給を開始する(S4)。ステップS4の後、詳しくはシートSの先端がニップ部に近づいたときに、制御部300は、切替機構70を離間状態から圧接状態に切り替えて、加熱ローラ61を多層フィルムFに圧接させる(S5)。この際、制御部300は、ローラクラッチC5を接続させて加圧ローラ51の駆動を開始することで、多層フィルムFの搬送を開始する。
ステップS5の後、制御部300は、ロータリエンコーダREによって供給リール31に残っている多層フィルムFの巻き付き量(残量)を検出する(S6)。詳しくは、ステップS6において、制御部300は、ロータリエンコーダREからパルス信号を取得し、単位時間当たりのパルス信号の数Npを取得する(S6)。
ステップS6の後、制御部300は、タッチパネルTPから受信した信号に基づいて、使い切りモードが選択されているか否かを判断する(S7)。ステップS7において使い切りモードが選択されていると判断した場合には(Yes)、制御部300は、使い切りモードを実行して(S8)、本処理を終了する。また、ステップS7において使い切りモードが選択されていない、すなわち通常モードが選択されていると判断した場合には(No)、制御部300は、通常モードを実行して(S9)、本処理を終了する。
図9に示す使い切りモードにおいて、制御部300は、まず、パルス信号の数Npが第1閾値TH1未満であるか否かを判断する(S21)。ここで、第1閾値TH1は、0に近い値、具体的には1以下の値に設定されている。これにより、制御部300は、ステップS21において、ロータリエンコーダREからハイレベルまたはローレベルの一定レベルの出力を所定時間以上継続して取得したかを判断している。そして、制御部300は、このような判断を行うことで、供給軸部31Aへの多層フィルムFの巻き付き量が第2所定量以下であるか、詳しくは、巻き付き量が0であるか、つまり多層フィルムFが供給軸部31Aから分離したかを判断している。
ステップS21においてNp<TH1であると判断した場合には(Yes)、制御部300は、供給リール31から多層フィルムFが無くなったと判断して、エンプティを報知するとともに、次のシートSの供給(搬送)を禁止する(S22)。具体的には、層転写指令において複数枚のシートSを所定の間隔をおいて連続して層転写する指示がなされている場合に、制御部300は、ステップS22においてエンプティを報知すると、現在搬送中のシートSの次に搬送する予定のシートトレイ3上のシートSの供給を禁止する。ここで、例えば、制御部100は、層転写指令を受け付けると、ピックアップローラ11Aとリタードローラ11Bの手前のシートトレイ3上のシートセンサSCでシートSを検知しなくなるまで、シートSの搬送と層転写を続けるように構成することができる。この場合、制御部300は、多層フィルムFが供給リール31から無くなったと判断したときに、シートトレイ3に配置されたシートセンサSCでシートSを検知している場合、検知しているシートSの供給を禁止する。
ステップS22の後、制御部300は、エンプティ状態であることを示すフラグFeを立てる、例えばFe=1とする(S23)。ステップS23の後、制御部300は、シートSの搬送方向の長さLsが所定値Lthよりも大きいか否かを判断する(S24)。ここで、所定値Lthは、第1搬送ローラ11Cから第2搬送ローラ12Aまでの距離に設定されている。
ステップS24においてLs>Lthであると判断した場合には(Yes)、制御部300は、切替機構70を離間状態にして、加熱ローラ61を多層フィルムFから離間させる(S25)。また、ステップS24においてLs>Lthでないと判断した場合には(No)、制御部300は、シートSの先端が第2搬送ローラ12Aに到達するまで加熱ローラ61を圧接位置のままに維持し、シートSの先端が第2搬送ローラ12Aに到達した後に加熱ローラ61を多層フィルムFから離間させる(S26)。ここで、「シートSの先端が第2搬送ローラ12Aに到達したか」の判断は、第1シートセンサSS1でシートSの先端または後端を検知してからの経過時間に基づいて判断すればよい。
ステップS25またはステップS26の後、詳しくは、シートSがニップ部から抜けた後に、制御部300は、加熱ローラ61内のヒータをOFFにし(S27)、シートSの排出が完了したか否かを判断する(S28)。ここで、ステップS28の処理は、搬送中のシートSを筐体2の外に排出するシート排出処理に相当する。ステップS28においてシートSの排出が完了したと判断した場合には(Yes)、制御部300は、メインモータ80をOFFにして(S29)、本処理を終了する。なお、「シートSの排出が完了したか」の判断は、第2シートセンサSS2でシートSの先端または後端を検知してからの経過時間に基づいて判断すればよい。
ステップS21においてNp<TH1でないと判断した場合には(No)、制御部300は、パルス信号の数Npが第2閾値TH2より多いか否かを判断する(S30)。ここで、第2閾値TH2は、供給リール31への多層フィルムFの巻き付き量が少ない状態のときの供給リール31の回転速度に対応したパルス数に設定されている。
ステップS30においてNp>TH2であると判断した場合には(Yes)、制御部300は、多層フィルムFの残量が少ないと判断して、ニアエンプティを報知する(S31)。ステップS31の後、または、ステップS30でNoと判断した場合には、制御部300は、例えばシートSの後端がニップ部を通過したか否かを判断することで、トナー像への層転写が完了したか否かを判断する(S32)。ステップS32において層転写が完了したと判断した場合には(Yes)、制御部300は、加熱ローラ61を多層フィルムFから離間して(S33)、ステップS27の処理に進む。
図10に示す通常モードにおいて、制御部300は、まず、パルス信号の数Npが第3閾値TH3よりも多いか否かを判断する(S41)。ここで、第3閾値TH3は、供給リール31への多層フィルムFの巻き付き量が極めて少ない状態のときのパルス数に設定されている。具体的には、第3閾値TH3は、例えば、前述した第2閾値TH2よりも大きな値に設定することができる。
これにより、制御部300は、ステップS41において、単位時間当たりに受けるパルス信号の数Npが所定数以上であるかを判断することで、供給軸部31Aへの多層フィルムFの巻き付き量が、前述した第2所定量(0)よりも多い第1所定量以下であるかを判断している。
ステップS41においてNp>TH3であると判断した場合には(Yes)、制御部300は、供給リール31への多層フィルムFの巻き付き量が極めて少ない状態であると判断して、エンプティを報知するとともに、次のシートSの供給を禁止する(S42)。ステップS42の後、制御部300は、フラグFeを1にして(S43)、ステップS46の処理に進む。
ステップS41においてNp>TH3でないと判断した場合には(No)、制御部300は、パルス信号の数Npが第4閾値TH4よりも多いか否かを判断する(S44)。ここで、第4閾値TH4は、例えば、第3閾値TH3よりも小さい値や、第2閾値TH2以下の値に設定することができる。
ステップS44においてNp>TH4であると判断した場合には(Yes)、制御部300は、多層フィルムFの残量が少ないと判断して、ニアエンプティを報知する(S45)。ステップS43,S45の後、または、ステップS44でNoと判断した場合には、制御部300は、トナー像への層転写が完了したか否かを判断する(S46)。ステップS46において層転写が完了したと判断した場合には(Yes)、制御部300は、加熱ローラ61を多層フィルムFから離間して(S47)、ヒータをOFFにする(S48)。
ステップS48の後、制御部300は、シートSの排出が完了したか否かを判断する(S49)。ここで、ステップS49の処理は、搬送中のシートSを筐体2の外に排出するシート排出処理に相当する。ステップS49においてシートSの排出が完了したと判断した場合には(Yes)、制御部300は、メインモータ80をOFFにして(S50)、本処理を終了する。
図11に示す処理において、制御部300は、まず、フィルムユニットFUの交換の可能性があるか否かを判断する(S61)。具体的に、ステップS61において、制御部300は、開閉センサSBからカバー22が閉じたことを示す信号を受信した場合に、交換の可能性ありと判断する。また、ステップS61において、制御部300は、層転写装置1の電源がOFFの状態からONになったと判断すると、交換の可能性ありと判断する。
ステップS61において交換の可能性なしと判断した場合には(No)、制御部300は、本処理を終了する。ステップS61において交換の可能性ありと判断した場合には(Yes)、制御部300は、フラグFeが立っているか、つまりFe=1であるか否かを判断する(S62)。制御部300が、開閉センサSBからカバー22が閉じたことを示す信号を受信した場合、また、層転写装置1の電源がOFFの状態からONになったと判断した場合、以下の可能性などが考えられる。まず、ユーザがカバー22を開け、開口21Aを通してフィルムユニットFUを筐体本体21に対して着脱し、古いフィルムユニットFUから新品のフィルムユニットFUに交換し、カバー22を閉じた可能性が考えられる。ここで、古いフィルムユニットFUとは、多層フィルムFの残量がエンプティ状態となったフィルムユニットFUである。新品のフィルムユニットFUとは、多層フィルムFが未使用のフィルムユニットFUである。一方、カバー22を開けたにもかかわらず、筐体本体21に装着されている古いフィルムユニットFUを新品のフィルムユニットFUと交換しないまま、ユーザがカバー22を閉じた可能性が考えられる。しかしながら、制御部300は、この時点ではいずれの可能性であるかまで判断できない。いずれの可能性であるかを考慮せずに、制御部300が層転写指令を受けてシートSの供給を開始した場合、古いフィルムユニットFUが筐体本体21に装着されていると、シートSを多層フィルムFで搬送できない状況が生じ得る。本実施形態では、ステップS62以降の処理によって、このような状況が生じるのを抑制している。
ステップS62においてFe=1でないと判断した場合には(No)、制御部300は、後述する初期検出処理(S64)を実行せずに、本処理を終了する。Fe=1でない場合、多層フィルムFの残量が少なくともエンプティ状態でないので、シートSを多層フィルムFで搬送できない状況が生じにくい。ステップS62においてFe=1であると判断した場合には(Yes)、制御部300は、巻取リール35を所定回転だけ回転させて、多層フィルムFを所定量だけ搬送する(S63)。Fe=1である場合、古いフィルムユニットFUが新品のフィルムユニットFUと交換されずに装着されたままで、エンプティ状態のままである可能性がある。
ステップS63の後、制御部300は、ロータリエンコーダREによって供給リール31に残っている多層フィルムFの巻き付き量を検出する初期検出処理を実行して、パルス信号を取得する(S64)。ステップS64の後、制御部300は、パルス信号の数Npが、第1閾値TH1以上であり、かつ、第3閾値TH3以下であるか否かを判断する(S65)。つまり、ステップS65において、制御部300は、パルス信号の数Npがエンプティに相当する値であるかを判断することで、フィルムユニットFUが新品に交換されずにエンプティ状態のままであるかを判断している。
ステップS65においてTH1≦Np≦TH3であると判断した場合には(Yes)、制御部300は、フラグFeを0にして(S66)、本処理を終了する。ステップS65においてTH1≦Np≦TH3でないと判断した場合には(No)、制御部300は、エンプティを報知して(S67)、本処理を終了する。
次に、ユーザが使い切りモードを選択して層転写を実行した際に、多層フィルムFが供給軸部31Aから分離した場合における、制御部300の動作について説明する。
ユーザがタッチパネルTPにおいて使い切りモードを実行するための第2ボタンB2を選択すると、タッチパネルTPから使い切りモードで層転写を行うための層転写開始指令が制御部300に出力される。制御部300は、ステップS4においてシートSの供給を開始し、ステップS5において多層フィルムFの搬送を開始する。この際、多層フィルムFが供給軸部31Aから分離すると、制御部300は、ステップS6においてNp=0を検出し、図9のステップS21においてNp<TH1であると判断する。なお、供給軸部31Aから分離した多層フィルムFの後端は、図7に示すように、第1案内軸41に向けて進んでいくが、L1<L2となるように各部材が配置されることで、現在搬送中のシートSが、第1案内軸41および上流ガイドGD1で支持された多層フィルムFによって必ず支持されることになる。
その後、制御部300は、エンプティを報知するとともに、次のシートSの搬送を禁止する(S22)。その後、制御部300は、フラグFeを立て(S23)、シートSの長さLsが所定値Lthであるかを判断する(S24)。ステップS24でLs>Lthであると判断した場合には、加圧ローラ51を利用しなくても、シートSを第1搬送ローラ11Cから第2搬送ローラ12Aまで搬送できるため、制御部300は、加熱ローラ61を離間させる(S25)。一方、ステップS24でLs>Lthでないと判断した場合には、加圧ローラ51でシートSを搬送する必要があるため、制御部300は、シートSが第2搬送ローラ12Aに到達した後に加熱ローラ61を離間させる。
これにより、現在搬送中のシートSは、多層フィルムFで支持されながら搬送されていき、筐体2の外に良好に排出される。なお、通常モードにおいては、供給軸部31Aから分離していない多層フィルムFでシートSが支持される点で使い切りモードとは異なるが、その他の点は、略同様であるため、この通常モードにおいても、搬送中のシートSが筐体2の外に良好に排出される。
次に、エンプティと判断された後に、ユーザがカバー22を開閉したが、フィルムユニットFUが交換されなかった場合の、制御部300の動作について説明する。
エンプティと判断された場合にはフラグFeが立っているので、制御部300は、図11に示すステップS62においてYesと判断する。その後、制御部300は、多層フィルムFを所定量搬送した後(S63)、パルス信号の数Npを取得する(S64)。
フィルムユニットFUの交換がされなかった場合には、パルス信号の数Npは、エンプティと判断されたときの数(0、または、第3閾値TH3より大きな数)であるため、制御部300は、ステップS65でNoと判断して、エンプティを報知する(S67)。なお、新品のフィルムユニットFUに交換された場合には、制御部300は、ステップS65でYesと判断して、フラグFeを0にする。
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
供給軸部31Aへの多層フィルムFの巻き付き量が所定量以下であるか否かを判断することで、供給軸部31Aに残った多層フィルムFによってシートSを搬送できるかを判断することができる。そのため、供給軸部31Aへの多層フィルムFの巻き付き量が所定量以下であると判断した場合に、次のシートSの搬送を禁止して、搬送中のシートSを筐体2の外に排出するシート排出処理を実行することで、層転写装置1の内部にシートSが残ってしまうのを抑制することができる。
供給軸部31Aから多層フィルムFが分離した場合であっても、シート排出処理を実行することで、供給軸部31Aから分離した多層フィルムFによって、搬送中のシートSを筐体2の外に排出することができる。
L1<L2となる構成では、第1搬送ローラ11CによってシートSが搬送されている際に、多層フィルムFが供給軸部31Aから分離しても、第1案内軸41および上流ガイドGD1で支持された多層フィルムFによってシートSを受けることができるので、多層フィルムFの後端が切れた状態であっても、多層フィルムFとともにシートSを搬送することができ、シートSが搬送経路から脱落するのを抑えることができる。
使い切りモードを選択した場合には、多層フィルムFが切れて供給リール31の回転が止まった際に、搬送中のシートSを筐体2の外に排出する処理を行うので、層転写の失敗の可能性はあるが多層フィルムFを最後まで使い切ることができる。また、使い切りモードを選択しない場合には、供給リール31に多層フィルムFが若干残っている際に、搬送中のシートSを筐体2の外に排出する処理を行うので、層転写を良好に行うことができる。
エンプティと判断された後、カバー22を開閉したのにも関わらず、ユーザがフィルムユニットFUを交換しなかった場合には、層転写時にシートSが多層フィルムFで支えられず、筐体2内で詰まるおそれがある。これに対し、本実施形態の構成では、エンプティと判断された後、カバー22を開閉したのにも関わらず、ユーザがフィルムユニットFUを交換しなかった場合であっても、フラグFeが1である限り、初期検出処理を実行することで、多層フィルムFの残量を知ることができるので、エンプティを報知して、ユーザに交換を促すことができる。
シート排出処理において、供給軸部31Aから分離した多層フィルムFをシートSとともに搬送する場合には、加熱ローラ61および加圧ローラ51を圧接状態にしておくと、ニップ部において多層フィルムFがシートSに貼り付いてしまい、多層フィルムFがシートSとともに筐体2の外に排出されてしまうおそれがある。これに対し、本実施形態の構成では、Ls>Lthの場合、つまり、加熱ローラ61と加圧ローラ51とでシートSの搬送を中継しなくてもよい場合には、加熱ローラ61を離間させるので、多層フィルムFがシートSに貼り付くことが抑制され、多層フィルムFがシートSとともに筐体2の外に排出されるのを抑制することができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態においては、単位時間当たりに受けるパルス信号の数Npが所定数以上であるかを判断することで、巻き付き量が所定量以下であるかを判断したが、本発明はこれに限定されず、例えば、1つのパルス信号のパルス幅が所定値以下であるかを判断することで、巻き付き量が所定量以下であるかを判断してもよい。
ここで、単位時間当たりに受けるパルス信号の数Npが所定数以上であるかを判断することは、実質、単位時間当たりに取得した所定数のパルス信号の平均のパルス幅が所定値以下であるかを判断していることにもなる。そのため、前記実施形態のようなパルス信号の数Npで判断する方法では、例えば1つのパルス信号のパルス幅を利用して巻き付き量を判断する方法に比べ、供給リールの回転のバラツキの影響を受けることを抑制することができるので、前記実施形態の判断方法で行うのが好ましい。
前記実施形態では、上流側案内部材として第1案内軸41および上流ガイドGD1を例示したが、本発明はこれに限定されず、上流側案内部材は、例えば、第1案内軸41のみであってもよい。
前記実施形態では、検出手段としてロータリエンコーダREを例示したが、本発明はこれに限定されず、多層フィルムFの有無を検知する光センサであってもよい。この場合であっても、多層フィルムFが供給軸部31Aから分離したこと、つまり、多層フィルムの巻き付き状態に対応した第1情報を良好に検知することができる。
前記実施形態では、加熱部材として円筒状の加熱ローラ61を例示したが、本発明はこれに限定されず、加熱部材は、例えば、ヒータによって加熱される板状の部材であってもよい。また、加圧部材としては、加圧ローラ51に限らず、例えば、無端状のベルトなどであってもよい。
前記実施形態では、箔を含む転写層F22を例示したが、本発明はこれに限定されず、転写層は、例えば、箔や着色材料を含まず、熱可塑性樹脂から形成されていてもよい。
前記実施形態では、多層フィルムFを4層で構成したが、本発明はこれに限定されず、多層フィルムは、転写層と支持層を有していれば、層の数はいくつであってもよい。
前記実施形態では、レーザプリンタ等の画像形成装置とは別の装置として層転写装置1を構成したが、本発明はこれに限定されず、層転写装置は画像形成装置と一体に構成されていてもよい。
前記実施形態では、フィルムカートリッジ200がホルダ100に装着された状態で筐体本体21に着脱可能としたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ホルダ100が層転写装置の筐体本体と一体となっている構成で、フィルムカートリッジ200のみ筐体本体に着脱可能な構成であってもよい。
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。