JP7251046B2 - 焼成用チョコレートおよびその組み合わせ焼成食品 - Google Patents
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Description
このチョコレート風味が失われ、チョコレートとは異なる風味が付与された状態に特徴的な臭気としてチョコレートが蒸れたような臭いと風味が上げられる。この特徴的な風味を以下ムレ臭という。
チョコレートのムレ臭が発生する問題に対して、焼成チョコレートに関して、乳清ミネラルを焼成チョコレート生地基準で0.001~5質量%(固形分)含有することで、乳タンパク質等を含む配合であっても、焼成後に粉っぽさや異味・雑味を感じることなく、カカオ風味が良好な焼成チョコレート(特許文献1)が開示されている。
ここでいう、乳清ミネラルとは、乳又はホエー(乳清)から、可能な限りタンパク質や乳糖を除去したものであり、そのため、高濃度に乳の灰分(ミネラル)を含有し、且つ、固形分に占める灰分の割合が極めて高く、そのミネラル組成は、原料となる乳やホエー中のミネラル組成に近い比率となるが、あくまでも効果はミネラル分によるものであり、乳蛋白、特に乳清蛋白に関する効果は記載されていない。
ただ、特許文献2は水分を主成分とするガナッシュであり、また特許文献3の調整乳清タンパク質加工品はゲル状にて用いる事が明らかであり、またその製法と物性上、乾燥状態にて用いることが出来ず、含水チョコレート生地を焼成する場合に限られる。
しかし、本願に限らず特に異風味を抑制する効果等についても、また乳蛋白、特に乳清蛋白に関する効果は記載されていない。
また、焼成チョコレートは、水分含量が高いものが多い。その為、製造工程において、粘度が上昇して高粘度となりその工程が複雑となるという問題や、水相が多くなると焼成時に生地中の水を蒸散させるのに大きなエネルギーが必要となり、加熱により風味の劣化や焦げ臭が発生するという問題がある。また、水を含まないチョコレートより日持ちが劣るため、低温で流通、保存する必要性が生じ、輸送や納入先において作業性が悪くなるとういう問題もある。
その移ってきた異風味を打ち消すべく鋭意検討した結果、特定の乳蛋白を含有するチョコレートを組み合わせ焼成用チョコレートとすることによって前記課題を解決するに至った。
本発明において、チョコレートとは、油脂が連続相をなす油脂加工食品であり、全国チョコレート業公正取引協議会で規定されたチョコレート生地および準チョコレート生地を含むが、これらに限定されるものではなく、カカオマス、ココア、カカオバター、カカオバター代用脂、ハードバター等を利用した油脂加工食品をも包含するものである。
なお、本発明において定義されるチョコレートは焼成用途に適した機能を提供する為のチョコレートである。特に記載が煩雑なため、以降もチョコレートと称するが、焼成用チョコレートである。
用いられる原料は通常のチョコレートに使用できるものでよく、乳成分の他にはカカオマスおよび/またはココア、砂糖等の糖類、および油脂類を主成分とすることができる。これらをロール掛け、コンチング処理したチョコレートが使用できる。
本発明において、カカオ由来の成分はカカオ豆から得られる成分で油脂以外のものである。カカオバター、カカオマスおよびココアパウダーの油脂以外の部分が例示できる。ただし、チョコレートの規定でも触れたが、本発明においては全国チョコレート業公正取引協議会の規定に限定されないし、特にカカオ固形分は必須ではない。いわゆるホワイトチョコレート様食品(カカオバターすら入っていないものもあり、それはチョコレート規格には入らない)やカラーチョコレート様食品(同左)においても、本発明の効果は得られる。
チョコレートに用いられる油脂は、物性改良や製造コストの節約等の目的にて、ココアバターの一部または全部に代えて他の油脂(CBEと称される1,3位飽和、2位不飽和のトリグリセリド型油脂に富むものと、CBSと称されるラウリン系タイプ、CBRと称される高エライジン酸タイプ及び低トランス非ラウリンタイプのハードバター、さらには菓子類、パン類、冷菓類のコーチング用には用途に合わせて高融点~低融点の各種油脂や液状油の混合油)を使用したものが挙げられる。限定はされないが、具体的に使用することができる油脂類としては、カカオ脂の他に大豆油、綿実油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、菜種油、米ぬか油、ごま油、カポック油、ヤシ油、パーム核油、ババス油、乳脂、ラード、魚油、鯨油等の各種の動植物油脂およびそれらの硬化油、分別油、エステル交換油、さらにこれらの混合油脂等が例示できる。
本発明においては、目的にあわせ適宜油脂の物性を調整してもかまわないし、用いる油脂に関しては特に限定はされない。ただ、本発明の効果であるところの異風味の抑制は、ハードタイプ(室温では固形脂含量(SFC)が高く、スナップ性(応力を加えると「パキッ」と折れる物性)があり、体温付近で急激にSFCが低下し、口溶けがよいタイプのチョコレート)の方がそれ自体に異風味を感じにくくする効果があるため、本発明を合わせ用いることで、異風味を抑制する効果が増大する。一方ソフトタイプ(室温においても可塑性を有し、外部からの応力でたやすく形状を変えるタイプのチョコレート)といった融点の低いタイプのチョコレートはそれ自身が異風味を感じ難くする効果がやや小さいのではあるが、本発明を用いることでその抑制効果が元の状態より顕著に感じることが出来るため、有意に用いることが出来る。
本発明のチョコレートにおいては、油脂量は本発明の求める異風味を低減させる効果とは直接関係がないのではあるが、焼成生地自体の物性などの為、油脂類を25重量%~45重量%程度、望ましくは25重量%~40重量%、さらに望ましくは28重量%~38重量%含んでいる事が好ましい。油脂量が多すぎると焼成時に流れてしまい、意図する形状を保持できない。逆に少なすぎると硬く、作業性が悪い。また、口当たりも悪くなる。
さらには、組み合わせる食品に応じて商品設計上必要な物性が必要となる場合もあり、他の組成も油分もそれに応じて適宜調節する。
本発明におけるチョコレートに含まれてもよい更なる成分は、以下に示す乳蛋白や水分としての規定こそあるが、それら条件を満たした上でなら、従来チョコレートとして用いられる原料を適宜用いる事が出来る。一例としてはカカオマス、ココアパウダー、大豆粉、豆乳粉末、濃縮大豆蛋白、分離大豆蛋白、大豆ホエーなどが、また、ナッツ、シリアル、コーヒー、バニラ、キャラメル、フルーツ及びナッツなどとそれらを粉砕したパウダー状のもの、香料、着色料などが挙げられる。
本発明のチョコレートにおける糖類としては、従来の焼成用途のチョコレートには場合によっては特定の糖類の種類や配合量等に規定がある場合もあり、それらを適宜用いる事が出来るが、本願においては特に規定されず、また本発明の効果には直接関係がない。また、乳由来の蛋白質(後述)には特定の用件が必要であるが、それにともない乳糖の量も増減するが、これも糖類として規定され、そして特にその量は限定されない。
乳化剤は特に限定されないが、チョコレートと広く組み合わせられる乳化剤としてレシチン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリソルベート、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルが例示できる。これらは2以上を組み合わせて使用してもよい。
チョコレートの水分含有量が4.0重量%以下とは、焼成前のチョコレートの水分含有量を示している。望ましくは0.5~3.0重量%、更に望ましくは0.5~2.5重量%、もっとも望ましくは0.6~2.0重量%であることが好ましい。水分含有量が4.0重量%以上の場合、焼成後の風味が悪くなりがちである。なお、水分3重量%以下というのは、前出の全国チョコレート業公正取引協議会の規格において、チョコレートとしての水分量の規定でもあり、いわゆるチョコレートと称するものはこの3重量%以下となる。これ以上となると、ボテと呼ばれる流動性が損なわれた状態になる為、作業性が悪くなる。
特にその供給源は限定されないが、含水原料を用いる場合はチョコレートとしての水分量は上記の通り規定がある為、低水分の原料が望ましく、さらに以下の規定を満たす必要がある。
更には、上記原料に含まれる乳蛋白には、その組成により乳清蛋白質とカゼインに大別され、それぞれに風味への影響があるが、ムレ臭と呼ばれる焼成時に発生する臭気を押さえる為には、チョコレート全重量に対して乳蛋白総含有量として4.0重量%以上である事が望ましい。
また、天然の牛乳、あるいはその乳を単に濃縮したような乳製品において、全乳蛋白における乳清蛋白質含有比率が19重量%程度(天然物なので変動があるので概算としては±1%とする)と決まっているが、天然の乳と同程度の全乳蛋白における乳清蛋白質含有比率と同程度、すなわち18重量%、あるいはこれ以上である必要がある。すなわち20重量%を超えることが望ましい。さらに好ましくは比率が40重量%、より好ましくは55重量%を超えることが望ましい。
全乳蛋白における乳清蛋白質含有比率が18重量%未満の状態においてもムレ臭防止効果があるものの、カゼイン比率が高くなるとカゼイン独特の塩味的な異風味が焼成時に発生し、商品価値を低下させかねない。またいかに全乳蛋白における乳清蛋白質含有比率が18重量%以上であっても、カゼインの絶対量が大きくなりすぎるとカゼインの異風味が顕著になるため、乳蛋白中のカゼイン含有量が6.0重量%以下、好ましくは5.0重量%以下、さらに好ましくは4.5重量%以下であることが望ましい。
なお、一般的にはホエー(乳清)といった場合は、普通は乳清蛋白質(ホエープロテイン)、炭水化物、脂質、ミネラル、水を含有するものである。本発明において乳清蛋白質は蛋白質の部分だけを指すものとする。
本発明においては乳蛋白にはホエーの蛋白質を濃縮し、たんぱく質含量を高めた乳清蛋白質濃縮物(Whey protein concentration:WPC)が好適に用いられる。現行のWPCにはそのたんぱく質含量に応じて約35重量%、約50重量%、約65重量%、70~90重量%の4種類がある。
本明細書における「焼成用チョコレート」とは、焼成前のチョコレートであり、チョコレート自体を成型し、それ単独で焼成するか、または別の可食物と組み合わせて焼成することが可能なチョコレートであり、かつ当該用途に特に適したチョコレートである。組み合わせる対象となる可食物としてはクッキー、マフィン、バターケーキ、スポンジケーキ、ビスケット、ウエハース等の焼き菓子およびパン類が例示できる。
特に本発明の効果を得やすい可食物とは、発酵工程を有するものが挙げられる。発酵する菌類としては、特に限定されないが、納豆菌、乳酸菌、酵母などが挙げられる。特に酵母によるものは利用用途が広く、本発明の効果が得られやすい。酵母による発酵工程がある食品としては、パン類が挙げられる。また、発酵工程を持たなくとも、原料に発酵工程を経ているもの、一例では発酵バターやチーズなどを含むものも好適に用いられる。
一方で、チョコレートの原料に用いられるカカオマスがカカオ豆を醗酵させる工程を有している為、別の可食物と組み合わせずに焼成用チョコレート単独でこのあとの焼成工程に供される場合においても、ムレ臭を抑制し、風味を向上させることが可能である。
組み合わせ対象の可食物は先に記載の通り、発酵工程のあるものが望ましい。その工程は既存の可食物の製造工程を適宜用いる事が出来る。例えばパン類の場合は小麦粉や米粉などといった穀粉類、イースト、食塩及び水を主原料とし、糖類、乳製品、卵製品、食用油脂類などの副原料を添加し、混捏したしたのちは、製品の種類にもよるが、発酵、成形し、焼成工程に供される。
焼成用チョコレートの形状は特に限定はされないが、固形なら粒状、板状、球状、チャンク状、チップ状、ダイス状などが、他には液状、ペースト状などが挙げられる。可食物と焼成用チョコレートを組み合わせる際の態様としては、商品設計に応じ適宜その形状にあわせ用いる事が出来る。一例としては固形の場合は可食物の中に分散させたり、上部に載置したり、また液状、ペースト状の場合は、生地中に練り込んだり、ある程度成形した生地表面に塗布したり、内部に注入、包餡したりといった組み合わせ方法が選択出来る。
また、組み合わせるタイミングについても、特に限定はされないが、発酵工程より前の工程ですでに組み合わされていることが望ましい。
なお、本明細書における「焼成チョコレート」とは焼成用チョコレートを単独で焼成した場合は焼成後のチョコレートのことを指し、また、他の可食物と組み合わせて焼成した場合、チョコレートと可食物全体の焼成されたものは組み合わせ焼成品と称し、ここで焼成チョコレートといった場合は、その組み合わせ焼成品中のチョコレート部分を指す。
また焼成チョコレートの水分量は、焼成直後の時点で加熱によって、焼成前の生地の状態よりも減少していることが多い。一般的な焼成条件によると0.5~1.5重量%程度である。しかしながら、別の可食物と組み合わせて焼成する場合は、その後保存をするに従い、今度は吸湿により水分量は増加する。一般的な保存条件によると、例えばパン生地と組み合わせて焼成し2日間保存することでチョコレートの水分量が12重量%程度にまでなる。
また、焼成用チョコレートを単独焼成した場合においても、空気中の水蒸気、あるいは焼成後に組み合わせられた他の可食物からの水分の移行により水分量は増加する。
その双方の場合においても焼成前の生地が上記規定を満たした上で、焼成・保存時の焼成チョコレート様食品の水分以外の成分が、本発明の乳蛋白、あるいは乳清蛋白質、カゼイン含有量の焼成前のチョコレートとしての規定を満たすものは、本発明の効果を用いていると見なせる。すなわち、焼成チョコレート中の乳清蛋白質含有量0.3重量%以上であり且つ、全乳蛋白における乳清蛋白質含有比率が18%以上であるものであり、望ましくは、カゼイン含有量が6.0重量%以下、同じく、望ましくは乳蛋白の含有量が4.0重量%以上であるものは、本発明の構成を用いて、効果を得られたものである。
なお、水分の測定は、カールフィッシャー法、又は海砂法により行う。
表1の配合にて、ロール掛け、コンチング処理してチョコレートを調製し、縦2cm、横6cm、厚さ1cmの形状にカット成型した。
なお、実施例・比較例ごとの配合の違いは表2において記載の検討乳原料配合量、すなわち、検討乳原料が添加していない(Control)・5%・10%の各原料配合を示し、また表2~表4までにその検討乳原料の種類と、その用いた配合(5%か10%か)を示した。また2種類の検討乳原料を用いている場合、例えば双方とも2.5%というのは和の合量(2.5%の場合は5%)の配合に従い、その該当する検討乳製品を半量ずつ用いることで作成した。
なお、使用した乳原料の詳細は以下に示すとおり。
全脂粉乳:国産全粉乳(よつ葉乳業製)
脱脂粉乳:国産脱脂粉乳(よつ葉乳業製)
乳蛋白濃縮物(MPC) :PROMILK85(Ingredia 製)
乳清蛋白質濃縮物(WPC) : WPC80、(Warnambool Cheese&Butter 製)
カゼイン Na:SodiumCaseinate180(Fonterra 製)
(1)食感評価方法 焼成後に20℃で72時間保存した際のチョコレートを、下記基準により評価した。
◎:非常に良好
〇:良好
△:許容範囲内
×:不良
なお、総合評価の(ビター…)はビターチョコレートとしての評価を記載した。
なお、官能評価以外の数値は(乳清蛋白質/乳蛋白)は乳蛋白に対する乳清蛋白質の、それ以外のものはチョコレート全体に対する各重量%を示す。
また、チョコレートと組み合わせ食品の形状を示す為、一例として実施例1の断面図を図1として示す。
官能評価で総合的に最も良好なのは WPCを10重量%配合した実施例7であった。
MPCはムレ臭を感じにくいが、乳味と塩味がチョコ感やビター感をやや阻害している。
乳原料中の乳たんぱくがムレ臭の軽減に良い効果を示していることが、明確になった。また、それはカゼインよりも乳清蛋白質の方が有効である。
WPCは 10%が良く、MPC は 5%が良いという結果から、ムレ臭軽減の効果は確認されるもののカゼイン部分にビター感をマスキングし、カゼイン単体ではミネラルによるとみられる塩味やえぐ味など悪影響があった。
Claims (5)
- 乳清蛋白質含有量0.30重量%以上であり且つ、
カゼインの含有量が6.0重量%以下であり且つ、
乳蛋白の含有量が4.0重量%以上であり且つ、
全乳蛋白における乳清蛋白質含有比率が55重量%を超える、
水分の含有量が4重量%以下である、パン生地と組み合わせる、焼成用チョコレート
(ただし、HLBが10以上のショ糖脂肪酸エステルを含有する焼成用チョコレートの態様を除く)。 - 組み合わせるパン生地が酵母及び/又は乳酸菌を含むパン生地である、請求項1に記載の焼成用チョコレート。
- 請求項1又は請求項2に記載の焼成用チョコレートと、パン生地と組み合わせた後焼成する、複合食品の製造方法。
- 請求項1又は請求項2に記載の焼成用チョコレートと、パン生地を組み合わせて、発酵工程後に焼成する、複合食品の製造方法。
- 請求項1又は請求項2に記載の焼成用チョコレートとパン生地を組み合わせて発酵後に焼成することで、パン生地から移る異風味によるチョコレートの風味変化を抑制し、焼成後も焼成前のチョコレートらしい風味を維持する方法。
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