JP7232753B2 - 油性インクジェットインク - Google Patents
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Description
特許文献1では、透明ファイルを膨潤させたり、大きく変形させることなく、高い吐出安定性を有するインクジェット用非水系インク組成物として、顔料と分散剤と非水系溶媒とを含有し、非水系溶媒の全重量の50%以上は、炭素数24以上36以下のエステル系溶媒であるインクを提案している。
特許文献1では、非水系溶媒の全重量の50%以上を高炭素数の脂肪酸エステル系溶剤にしており、インクが高粘度になって吐出性能が低下する問題がある。そのため、特許文献1の実施例では、インクを加熱して粘度を低減させて、インクジェットノズルから吐出させている。
特許文献1の比較例11~18では、非水系溶媒の全重量に対し、60%の低炭素数のイソステアリン酸エチル又はイソノナン酸-2-エチルヘキシルと、40%の高炭素数の脂肪酸エステル系溶剤とを組み合わせている。2種以上の脂肪酸エステル系溶剤を用いる場合では、それらの配合割合だけでは、吐出性能を確保しながら透明ファイルの変形を十分に防止できない問題がある。
油性インクジェットインクでは、印刷後に印刷物を複数枚重ねて保管する際に、保管後の印刷物に濃度ムラが発生する問題がある。この濃度ムラは、印刷物上のインク成分、特に溶剤成分が、他の印刷物に揮発して移ることで発生すると考えられる。印刷物上に取り込んだ溶剤成分は、より高揮発性のものが揮発して他の印刷物に移り、低揮発性のものは印刷物の内部に留まる傾向がある。さらには、インク中に高揮発性の溶剤が存在しても、低揮発性の溶剤がともに存在することで、印刷物を重ねた際に、他の印刷物への溶剤成分の揮発を効果的に低減することができる。
クリアファイルの内側の面が印刷物と接触すると、インク成分がクリアファイルに作用して、クリアファイルの内側の面が体積変化し、クリアファイルが反り返るような変形をする場合がある。これは、クリアファイル表面の微小孔に、インク成分、特に溶剤成分が入り込み、クリアファイルを膨潤させることで顕著になると考えられる。特に、低極性溶剤ではクリアファイルの膨潤が起きやすいため、脂肪酸エステル系溶剤を使用することでクリアファイルの膨潤についても改善が見込める。
顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料;及び、カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、銅フタロシアニン顔料等の金属フタロシアニン顔料、及び無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの顔料は単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
顔料は、インク全量に対し、通常0.01~20質量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から、1~15質量%であることが好ましく、4~10質量%であることが一層好ましい。
顔料分散剤としては、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、ビニルピロリドンと長鎖アルケンとの共重合体、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリエステルポリアミン等が好ましく用いられる。
油溶性染料としては、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料等を挙げることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用してもよい。
染料は、インク全量に対し、通常0.01~20質量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から、1~15質量%であることが好ましく、4~10質量%であることが一層好ましい。
インクの40℃大気圧下における10時間後の揮発量に対する、インクの90℃大気圧下における10時間後の揮発量の比が10~30であることが好ましい。この揮発量の比を、90℃/40℃の揮発量の比と称する場合がある。
第1の脂肪酸エステル系溶剤及び第2の脂肪酸エステル系溶剤の合計質量は、インク全量に対し、60質量%以上であることが好ましい。
第2の脂肪酸エステル系溶剤は、インク全量に対し、35質量%以下であることが好ましい。
第1の脂肪酸エステル系溶剤の沸点は330℃以下であってもよく、320℃以下であってもよい。より低沸点の脂肪酸エステル系溶剤であっても、第2の脂肪酸エステル系溶剤との組み合わせによって、クリアファイルの変形を防止でき、印刷物を重ねる際の濃度ムラを防止できる。
第1の脂肪酸エステル系溶剤の沸点は、これに限定されないが、200℃以上であってよく、280℃以上が好ましく、300℃以上がさらに好ましい。これによって、クリアファイルの変形をより防止でき、印刷物を重ねる際の濃度ムラをより防止できる。
第2の脂肪酸エステル系溶剤の沸点は、これに限定されないが、550℃以下であってよく、480℃以下が好ましく、450℃以下がさらに好ましく、420℃以下が一層好ましい。これによって、インクを低粘度化して吐出性能をより改善することができる。
ここで、沸点は、JISK2254「石油製品-蒸留試験方法」の(1)初留点の方法に準拠にて測定することができる。
この揮発量の比は、下記式より求めることができる。
90℃/40℃の揮発量の比={1-(90℃大気圧下における10時間後のインクの質量)/(初期のインクの質量)}/{1-(40℃大気圧下における10時間後のインクの質量)/(初期のインクの質量)}
この揮発量の比は、10以上が好ましく、12以上がより好ましく、15以上がさらに好ましい。これによって、クリアファイルの変形をより防止でき、印刷物を重ねる際の濃度ムラをより防止できる。印刷物が重ねられた状態で、重なり合う印刷物の間で、インクの溶剤成分の移動を制限するためには、この範囲で揮発量の比を制限することが特に好ましい。
上記の揮発量の比によって、第1の脂肪酸エステル系溶剤と第2の脂肪酸エステル系溶剤とを組み合わせて、低沸点と高沸点の2種の脂肪酸エステル系溶剤を用いる際に、クリアファイルの変形及び印刷物を重ねる際の濃度ムラと、吐出性能とを両立して改善することができる。
このように、脂肪酸エステル系溶剤の合計質量の割合を高めることで、クリアファイルの変形及び印刷物を重ねる際の濃度ムラと、吐出性能とを両立して改善することができる。また、この範囲で脂肪酸エステル系溶剤が含まれることで、上記した揮発量の比をより好ましい範囲にすることができる。
インクに含まれるその他の成分によっても異なるが、第1の脂肪酸エステル系溶剤及び第2の脂肪酸エステル系溶剤の合計質量は、インク全量に対し、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよい。
第1の脂肪酸エステル系溶剤及び第2の脂肪酸エステル系溶剤の合計質量は、これに限定されないが、インク全量に対し、98質量%以下が好ましく、その他の成分の配合量によっては、95質量%以下であってもよく、90質量%以下であってもよい。
第1の脂肪酸エステル系溶剤及び第2の脂肪酸エステル系溶剤の合計質量は、これに限定されないが、非水系溶剤全量に対し、100質量%で含まれてもよく、95質量%以下で含まれてもよい。
吐出性能の改善の観点から、第2の脂肪酸エステル系溶剤は、インク全量に対し、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。この場合では、第2の脂肪酸エステル系溶剤を第1の脂肪酸エステル系溶剤と組み合わせ、インクの90℃/40℃の揮発量の比をより好ましい範囲にすることで、クリアファイルの変形及び印刷物を重ねる際の濃度ムラと、吐出性能とを両立して改善することができる。
第2の脂肪酸エステル系溶剤は、これに限定されないが、インク全量に対し、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。
吐出性能の改善の観点から、第1の脂肪酸エステル系溶剤は、インク全量に対し、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。この場合では、第1の脂肪酸エステル系溶剤を第2の脂肪酸エステル系溶剤と組み合わせ、インクの揮発量の比をより好ましい範囲にすることで、クリアファイルの変形及び印刷物を重ねる際の濃度ムラと、吐出性能とを両立して改善することができる。
第1の脂肪酸エステル系溶剤は、これに限定されないが、インク全量に対し、90質量%以下であってよく、85質量%以下であってもよい。
この範囲で、インクの揮発量の比をより好ましい範囲にし、クリアファイルの変形及び印刷物を重ねる際の濃度ムラと、吐出性能とを両立してより改善することができる。
一般式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立的に、直鎖又は分岐の飽和又は不飽和の鎖式又は環式のアルキル基であることが好ましく、直鎖又は分岐の飽和の鎖式アルキル基であることがより好ましい。
また、R1及びR2において、それぞれエステル結合部に結合する炭素原子から数えて最も炭素数が多くなる炭素鎖が複数存在する場合、側鎖の炭素数が最も多くなるものを主鎖とする。
また、R1及びR2において、それぞれエステル結合部に結合する炭素原子から数えて最も炭素数が多くなる炭素鎖が複数存在し、複数の炭素鎖に含まれる側鎖の炭素数が同じである場合、側鎖の数が最も少なくなるものを主鎖とする。
第1の脂肪酸エステル系溶剤は、上記一般式(1)において、R1及びR2がそれぞれ独立的に、直鎖又は分岐の飽和又は不飽和の鎖式又は環式の炭化水素基である化合物であることが好ましい。R1及びR2はそれぞれ独立的に、直鎖又は分岐の鎖式アルキル基であることがより好ましい。また、R1及びR2のうち少なくとも一方は分岐アルキル基であることが好ましい。
第1の脂肪酸エステル系溶剤のR1及びR2は、全体の炭素数が1~20が好ましく、3~15がより好ましい。
第1の脂肪酸エステル系溶剤は、R1及びR2のうち少なくとも一方に、少なくとも1個又は2個以上の側鎖を有することが好ましい。これによって、脂肪酸エステル系溶剤の分子構造が嵩高くなって、脂肪酸エステル系溶剤がクリアファイル表面に侵入することを防止し、クリアファイルの変形をより防止することができる。
第1の脂肪酸エステル系溶剤に含まれる分岐アルキル基は、側鎖の炭素数が1~8が好ましく、1~3がより好ましい。
第1の脂肪酸エステル系溶剤に含まれる側鎖は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等を挙げることができる。
第2の脂肪酸エステル系溶剤は、上記一般式(1)において、R1及びR2がそれぞれ独立的に、直鎖又は分岐の飽和又は不飽和の鎖式又は環式の炭化水素基である化合物であることが好ましい。R1及びR2はそれぞれ独立的に、直鎖又は分岐の鎖式アルキル基であることがより好ましい。また、R1及びR2のうち少なくとも一方は分岐アルキル基であることが好ましい。
第2の脂肪酸エステル系溶剤のR1及びR2は、全体の炭素数が1~23が好ましく、3~18がより好ましい。
第2の脂肪酸エステル系溶剤は、R1及びR2のうち少なくとも一方に、少なくとも1個又は2個以上の側鎖を有することが好ましい。これによって、脂肪酸エステル系溶剤の分子構造が嵩高くなって、脂肪酸エステル系溶剤がクリアファイル表面に侵入することを防止し、クリアファイルの変形をより防止することができる。
第2の脂肪酸エステル系溶剤に含まれる分岐アルキル基は、側鎖の炭素数が1~8が好ましく、1~3がより好ましい。
第2の脂肪酸エステル系溶剤に含まれる側鎖は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等を挙げることができる。
脂肪酸エステル系溶剤は、脂肪酸とアルコールとを反応させて得ることができる。例えば、脂肪酸エステル系溶剤の原料となる脂肪酸、アルコールの組み合わせは、上記した脂肪酸エステル系溶剤の例から選択することができる。
反応温度は、脂肪酸及びアルコールの種類に応じて80~230℃の範囲で調節することができる。反応時間は、脂肪酸及びアルコールの種類や、原料の使用量に応じて1~48時間の範囲で調節することができる。エステル化反応に際して生成する水分を除去することが好ましい。脂肪酸とアルコールとは、モル比で1:1で反応させることが好ましい。反応に際して、濃硫酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の触媒を適量で用いてもよい。
その他の非水系溶剤としては、非極性有機溶剤及び極性有機溶剤のいずれも使用できる。なお、一実施形態において、非水系溶剤には、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合しない非水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
脂肪族炭化水素溶剤及び脂環式炭化水素溶剤としては、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系等の非水系溶剤を挙げることができる。市販品としては、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、カクタスノルマルパラフィンN-10、カクタスノルマルパラフィンN-11、カクタスノルマルパラフィンN-12、カクタスノルマルパラフィンN-13、カクタスノルマルパラフィンN-14、カクタスノルマルパラフィンN-15H、カクタスノルマルパラフィンYHNP、カクタスノルマルパラフィンSHNP、アイソゾール300、アイソゾール400、テクリーンN-16、テクリーンN-20、テクリーンN-22、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号、ナフテゾール160、ナフテゾール200、ナフテゾール220(いずれもJXTGエネルギー株式会社製);アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、エクソールD40、エクソールD60、エクソールD80、エクソールD95、エクソールD110、エクソールD130(いずれもエクソンモービル社製);モレスコホワイトP-40、モレスコホワイトP-60、モレスコホワイトP-70、モレスコホワイトP-80、モレスコホワイトP-100、モレスコホワイトP-120、モレスコホワイトP-150、モレスコホワイトP-200、モレスコホワイトP-260、モレスコホワイトP-350P(いずれも株式会社MORESCO製)等を好ましく挙げることができる。
芳香族炭化水素溶剤としては、グレードアルケンL、グレードアルケン200P(いずれもJXTGエネルギー株式会社製)、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200、ソルベッソ200ND(いずれもエクソンモービル社製)等を好ましく挙げることができる。
石油系炭化水素溶剤の蒸留初留点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることが一層好ましい。蒸留初留点はJIS K0066「化学製品の蒸留試験方法」に従って測定することができる。
アルコール系溶剤としては、直鎖又は分岐の飽和又は不飽和の鎖式又は環式のアルコール系溶剤を用いることができ、好ましくは直鎖又は分岐の飽和の鎖式のアルコール系溶剤である。
また、アルコール系溶剤は、1級アルコール、2級アルコール、3級アルコールのいずれであってもよいが、1級アルコールを好ましく用いることができる。また、アルコール系溶剤は、1価アルコール、2価アルコール、3価アルコール、ポリアルコールのいずれであってもよいが、1価アルコールを好ましく用いることができる。
アルコール系溶剤の1分子中の炭素数は6以上が好ましく、8以上がより好ましく、12以上がさらに好ましい。また、アルコール系溶剤の1分子中の炭素数は24以下が好ましく、20以下がより好ましく、18以下がさらに好ましい。
高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等の極性有機溶剤の沸点は、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましい。なお、沸点が250℃以上の非水系溶剤には、沸点を示さない非水系溶剤も含まれる。
一般式(1)で表される脂肪酸エステル系溶剤の他に、その他の非水系溶剤を用いる場合は、高沸点溶剤を用いることが好ましい。高沸点溶剤としては、蒸留初留点が200℃以上である非極性溶剤、沸点が250℃以上の極性溶剤、またはこれらの組み合わせを用いることが好ましい。
一実施形態によるインクは、クリアファイルの変形を防止しながら、低粘性でインクジェットノズルからの吐出に適するため、常温(23℃)付近で適性に吐出することが可能である。
インクの処方を表2、表3に示す。脂肪酸エステルの沸点及び側鎖の有無を各表にそれぞれ示す。
各表に示す配合量にしたがって、顔料、顔料分散剤、及び溶剤を混合し、ビーズミル「ダイノーミルKDL-A」(株式会社シンマルエンタープライゼス製)により滞留時間15分間の条件で、十分に顔料を分散した。続いて、メンブレンフィルターで粗大粒子を除去し、インクを得た。
その他の用いた成分は、以下の通りである。
(顔料)
カーボンブラック:三菱ケミカル株式会社製「MA77」。
(顔料分散剤)
ソルスパース13940:日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース13940」、有効成分40質量%。表中に有効成分量をカッコ内に示す。
(溶剤)
アルコール溶剤「テトラデカノール」:東京化成工業株式会社製。
炭化水素溶剤「モレスコホワイトP-60」:株式会社MORESCO製。
上記実施例及び比較例のインクについて、以下の方法により評価を行った。これらの評価結果を表2、表3に示す。
インクの40℃大気圧下における10時間後の揮発量に対する、90℃大気圧下における10時間後の揮発量の比(90℃/40℃の揮発量の比)を以下の手順で求めた。
熱分析(TG)装置において、23℃から10℃/分で昇温させ、40℃又は90℃で10時間保持し、昇温前の初期のインクの質量と10時間後のインクの質量を測定し、下記式よりインクの揮発量の比を求めた。
熱分析装置として「THERMO PLUS EVO2 差動型示差熱天秤 TG8121」(株式会社リガク製)を用い、セルとして、アルミニウム製液体試料パンおよび試料蓋(株式会社リガク製Item No.8580)を用いた。測定サンプルは、試料パンにサンプルを約10mg入れて作製した。また、測定は窒素ガスを200mL/分の流量下で行った。
90℃/40℃の揮発量の比={1-(90℃大気圧下における10時間後のインクの質量)/(初期のインクの質量)}/{1-(40℃大気圧下における10時間後のインクの質量)/(初期のインクの質量)}
厚さ約0.2mmのポリプロピレン(PP)製のクリアファイルを5cm×1cmに切り取り試験片を作製した。まず、この試験片の質量aを測定した。次いで、この試験片をインクに漬け込み、室温で1週間放置した。1週間放置後の試験片の質量bを測定した。
試験片の質量変化から質量変化率「[(b-a)/a]×100」を求め、以下の基準で、ポリプロピレンの膨潤性を評価した。
S:+0.5%未満。
A:+0.5%以上、+1%未満。
B:+1%以上。
各インクを、インクジェットプリンタ「オルフィス EX9050」(理想科学工業株式会社製)に導入し、普通紙「理想用紙薄口A4」(理想科学工業株式会社製)に、主走査方向約51mm×副走査方向260mmのベタ画像を片面印刷し印刷物を2枚得た。印刷直後の印刷物に濃度ムラがないことを目視で確認した。
この印刷物を印刷面を表にし、印刷面を副走査方向に3cmずらして2枚重ねて実験机に置き、印刷部が重なる部分と重ならない部分を作った。室温で2時間放置した後に、上から1枚目の印刷物を剥がし、2枚目の印刷物を目視で観察した。
印刷物の濃度ムラは、上から1枚目の印刷物から2枚目の印刷物に溶剤が移り、2枚目の印刷物が溶剤で濡れ、濃度にムラやにじみができたように観察される。
S:2枚目の印刷物のムラ・にじみがわからない。
A:2枚目の印刷物のムラ・にじみがわずかにわかる程度。
B:2枚目の印刷物のムラ・にじみがはっきりわかる。
吐出性能の評価は、インクジェットプリンタ「オルフィスEX9050」(理想科学工業株式会社製)を用いて、普通紙「理想用紙薄口」(理想科学工業株式会社製)に、主走査方向約51mm×副走査方向260mmのベタ画像を100枚連続して片面印刷し、印刷物を観察して評価した。
インクジェットノズルからのインクの不吐出は、印刷物に白いスジとなって非印字部分が発生することで確認することができる。100枚の印刷物の中に、この白いスジが発生するか、または発生した本数を観察した。100枚の印刷物に観察された白いスジの合計数から吐出性能を評価した。評価基準を以下に示す。
S:白いスジが0本。
A:白いスジが1~9本。
B:白いスジが10本以上。
各インクを密閉容器に入れ、ノズルプレート(長さ5cm、幅5mm)を浸し、50℃環境下で4週間保存した。その後、インクからノズルプレートをゆっくり引き出し、ノズルプレート表面のインクの付着状態を目視で観察した。ノズルプレートに対するインクの濡れ性を以下の基準で評価した。
S:ノズルプレート上でインクが液滴状となって弾かれていた。
A:ノズルプレート上でインクが弾かれていない箇所があった。
B:ノズルプレート上でインクが弾かれていない箇所が、弾かれている箇所より多かった。
実施例を通して、90℃/40℃の揮発量の比が10以上であることで、ポリプロピレンの膨潤とともに印刷物を重ねる際の濃度ムラが改善されることがわかる。また、90℃/40℃の揮発量の比が30以下であることで、吐出性能が改善されることがわかる。
さらに、90℃/40℃の揮発量の比が15以上25以下であることで、印刷物を重ねる際の濃度ムラがより改善されることがわかる。
また、第2の脂肪酸エステル系溶剤がインク全量に対し35質量%以下であることで、ポリプロピレンの膨潤性及び印刷物を重ねる際の濃度ムラとともに、吐出性能が両立して改善されることがわかる。
実施例11、12では、アルコール系溶剤をさらに添加しており、ポリプロピレンの膨潤性、印刷物を重ねる際の濃度ムラ、吐出性能を改善しながら、さらにノズルプレートに対するインクの濡れ性を改善することができた。
比較例2は、第1の脂肪酸エステル系溶剤が配合されない例であり、吐出性能が低下した。
比較例3は、90℃/40℃の揮発量の比が10未満の例であり、印刷物を重ねる際の濃度ムラが発生した。
比較例4は、第2の脂肪酸エステル系溶剤の配合量が多い例であり、90℃/40℃の揮発量の比が36となり、吐出性能が低下した。
比較例5は、第2の脂肪酸エステル系溶剤が配合されない例であり、90℃/40℃の揮発量の比が3となり、ポリプロピレンが膨潤し、印刷物を重ねる際の濃度ムラが発生した。
比較例6は、第1の脂肪酸エステル系溶剤が配合されない例であり、90℃/40℃の揮発量の比が30超過となり、吐出性能が低下した。
比較例7は、炭化水素系溶剤のみを用いた例であり、ポリプロピレンが膨潤し、ノズルプレートに対するインクの濡れ性も悪化した。
Claims (7)
- 沸点が350℃未満である第1の脂肪酸エステル系溶剤、
沸点が350℃以上である第2の脂肪酸エステル系溶剤、及び
色材を含み、
前記第1の脂肪酸エステル系溶剤は、
オクタン酸イソブチル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソデシル、デカン酸ヘキシル、3,5,5-トリメチルヘキサン酸8-メチルノニル、ミリスチン酸イソプロピル、テトラデカン酸2-メチルプロピル、ヘキサン酸ドデシル、パルミチン酸イソプロピル、及びイソステアリン酸メチルからなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記第2の脂肪酸エステル系溶剤は、
2,2-ジメチルプロパン酸16-メチルヘプタデシル、3,5,5-トリメチルヘキサン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、オクタン酸2-ヘキシルデシル、2-エチルヘキサン酸イソセチル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシル、ドデカン酸テトラデシル、ドデカン酸オクタデシル、テトラデカン酸8-メチルノニル、ミリスチン酸イソセチル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸ヘプチル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸2-メチルブチル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソオクチル、ステアリン酸ドデシル、ステアリン酸2-ヘキシルデシル、イソステアリン酸ブチル、イソステアリン酸2-ヘキシルデシル、ノナデカン酸ブチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸イソブチル、リノール酸イソプロピル、大豆油メチル、大豆油イソプロピル、大豆油イソブチル、トール油メチル、及びトール油イソブチルからなる群から選択される少なくとも1種を含み、
インクの40℃大気圧下における10時間後の揮発量に対する、90℃大気圧下における10時間後の揮発量の比が10~30であり、
前記第1の脂肪酸エステル系溶剤及び前記第2の脂肪酸エステル系溶剤の合計質量は、インク全量に対し、60質量%以上であり、
前記第1の脂肪酸エステル系溶剤は、インク全量に対し30質量%以上90質量%以下であり、
前記第2の脂肪酸エステル系溶剤は、インク全量に対し3質量%以上35質量%以下である、油性インクジェットインク。 - インクの40℃大気圧下における10時間後の揮発量に対する、90℃大気圧下における10時間後の揮発量の比が15~25である、請求項1に記載の油性インクジェットインク。
- 前記第1の脂肪酸エステル系溶剤の沸点は280℃以上350℃未満であり、前記第2の脂肪酸エステル系溶剤の沸点は350℃以上420℃以下である、請求項1又は2に記載の油性インクジェットインク。
- 前記第1の脂肪酸エステル系溶剤及び前記第2の脂肪酸エステル系溶剤は、それぞれ独立的に、脂肪酸部分及びアルコール部分の少なくとも一方が側鎖を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の油性インクジェットインク。
- 炭素数が6~24のアルコール系溶剤をさらに含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の油性インクジェットインク。
- 前記第1の脂肪酸エステル系溶剤は、沸点が200℃以上345℃以下であり、前記第2の脂肪酸エステル系溶剤は、沸点が360℃以上550℃以下である、請求項1又は2に記載の油性インクジェットインク。
- 前記第1の脂肪酸エステル系溶剤は、インク全量に対し30~80質量%であり、前記第2の脂肪酸エステル系溶剤は、インク全量に対し10~35質量%である、請求項1から6のいずれか1項に記載の油性インクジェットインク。
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