JP7068878B2 - 油性インクジェットインク - Google Patents
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Description
特許文献1では、透明ファイルを膨潤させたり、大きく変形させることなく、高い吐出安定性を有するインクジェット用非水系インク組成物として、顔料と分散剤と非水系溶媒とを含有し、非水系溶媒の全重量の50%以上は、炭素数24以上36以下のエステル系溶媒であるインクを提案している。
さらに、高炭素数のエステル系溶媒であっても、アルキル基が直鎖であったり側鎖が短いと、クリアファイルの変形を十分に防ぐことができないことがある。
例えば、特許文献1で用いられているイソステアリン酸2-ヘキシルデシルは、炭素数が34であり、また、脂肪酸側の側鎖の炭素数も不明である。そのため、吐出性能の低下の可能性がある。
また、特許文献1の比較例1~7のインクは、エステル系溶剤の炭素数が23以下であるエステル系溶剤を用いているが、分岐構造が特定できていないため、透明フィルムの変形が発生している。低炭素数のエステル系溶剤は、比較的に低粘性であり吐出性能の改善に役立つが、クリアファイルの変形が発生する問題がある。
特に、このインクによれば、印刷物をポリプロピレン(PP)製等のクリアファイルで挟み込む場合に、クリアファイルの変形を防止することができる。クリアファイルは透明から半透明の樹脂製シートであり、また、着色された不透明の樹脂製シートであってもよい。
クリアファイルの内側の面が印刷物と接触すると、インク成分がクリアファイルに作用して、クリアファイルの内側の面が体積変化し、クリアファイルが反り返るような変形をする場合がある。これは、クリアファイル表面の微小孔に、インク成分、特に溶剤成分が入り込み、クリアファイルを膨潤させることで顕著になると考えられる。
炭素数4以上の側鎖を含まない脂肪酸エステル系溶剤は、立体障害が小さくなって、クリアファイル表面の微小孔に入り込みやすく、クリアファイルを膨潤させる傾向がある。一般的に市販されている脂肪酸エステル系溶剤は、直鎖、または側鎖の炭素数が3以下と短い脂肪酸とアルコールとのエステル化物であるため、従来のインクではクリアファイル変形が問題となる。
また、脂肪酸エステル系溶剤は、1分子中の炭素数が12以上で、R1及びR2の少なくとも一方のアルキル基が炭素数4以上の側鎖を有することで、沸点の低下を抑制することができ、よりクリアファイル変形を防止することができる。低沸点の溶剤は、印刷物から揮発して、クリアファイル表面と接触しやすくなる。
また、この脂肪酸エステル系溶剤は、比較的に低粘性でありながら高沸点であるため、インクジェットプリンタにインクを装填する場合に、インクジェットノズルからのインクの吐出性を改善することができる。また、この脂肪酸エステル系溶剤は、比較的に高沸点であるため、インクジェットノズルからのインクの揮発を防止して、長期にわたり吐出性能の低下を防止することができる。
顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料;及び、カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、銅フタロシアニン顔料等の金属フタロシアニン顔料、及び無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの顔料は単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
顔料は、インク全量に対し、通常0.01~20質量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から、1~15質量%であることが好ましく、4~10質量%であることが一層好ましい。
顔料分散剤としては、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、ビニルピロリドンと長鎖アルケンとの共重合体、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリエステルポリアミン等が好ましく用いられる。
油溶性染料としては、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料等を挙げることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用してもよい。
染料は、インク全量に対し、通常0.01~20質量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から、1~15質量%であることが好ましく、4~10質量%であることが一層好ましい。
R1及びR2のうち一方が直鎖アルキル基であり、R1及びR2のうち他方が炭素数が4以上の側鎖を有してもよい。また、R1及びR2の両方が炭素数が4以上の側鎖を有してもよい。なお、R1及びR2のうち一方が炭素数4以上の側鎖を有する分岐アルキル基であるならば、R1及びR2のうち他方が炭素数が3以下の側鎖を有してもよい。
また、R1及びR2は、それぞれ独立的に、炭素数4以上の側鎖を1つだけ有していることが好ましいが、2つ以上有してもよい。
また、R1及びR2において、それぞれエステル結合部に結合する炭素原子から数えて最も炭素数が多くなる炭素鎖が複数存在し、複数の炭素鎖に含まれる側鎖の炭素数が同じである場合、側鎖の数が最も少なくなるものを主鎖とする。
また、R1及びR2のうち少なくとも一方に含まれる側鎖は、特に制限されず、炭素数10以下であってよく、炭素数8以下が好ましく、炭素数6以下がより好ましい。
好ましくは、n-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基であり、より好ましくはn-ブチル基、ヘキシル基である。
アルキル基であるR1及びR2の主鎖の炭素数は、それぞれ独立的に、13以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。
R1及びR2の側鎖の炭素数及び主鎖の炭素数は、互いの主鎖の長さ、側鎖の炭素数、脂肪酸エステル系溶剤全体の炭素数に応じて調節されるものである。
アルキル基であるR1及びR2の全体の炭素数は、それぞれ独立的に、6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、9以上であることがより好ましい。
また、アルキル基であるR1及びR2の全体の炭素数は、それぞれ独立的に、18以下であることが好ましく、14以下であることがより好ましく、13以下であることがより好ましい。
R1及びR2の全体の炭素数は、互いの主鎖の長さ、側鎖の炭素数、脂肪酸エステル系溶剤全体の炭素数に応じて調節されるものである。
また、脂肪酸エステル系溶剤の1分子中の炭素数は、23以下であることが好ましく、22以下であることがより好ましい。高炭素数になると高粘度となることがあるため、脂肪酸エステル系溶剤の炭素数がこの範囲であることで、インクを低粘度化して、吐出性能を改善することができる。吐出性の観点から、脂肪酸エステル系溶剤の炭素数は22以下であることが一層好ましい。
これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
クリアファイル変形を防止する観点から、その他の溶剤による影響を排除するために、一般式(1)で表される脂肪酸エステル系溶剤は、非水系溶剤全量に対し、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは55質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、例えば、90質量%以上であってもよく、さらに100質量%であってもよい。
一般式(1)で表される脂肪酸エステル系溶剤は、インク全量に対し、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、55質量%以上が一層好ましい。これによって、クリアファイルの変形をより防止することができる。
さらに、インクに炭素数24以上の脂肪酸エステル系溶剤が含まれる場合は、一般式(1)で表される脂肪酸エステル系溶剤は、インク全量に対し、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が一層好ましい。
脂肪酸エステル系溶剤は、脂肪酸とアルコールとを反応させて得ることができる。原料の脂肪酸及びアルコールのうち少なくとも一方に炭素数4以上の側鎖を有するものを用いる。また、R2に炭素数4以上の側鎖を導入するために、炭素数10以上の2級アルコールのうちヒドロキシ基が5位以上に位置するものを用いることができる。
反応温度は、脂肪酸及びアルコールの種類に応じて80~230℃の範囲で調節することができる。反応時間は、脂肪酸及びアルコールの種類や、原料の使用量に応じて1~48時間の範囲で調節することができる。エステル化反応に際して生成する水分を除去することが好ましい。
脂肪酸とアルコールとは、モル比で1:1で反応させることが好ましい。
反応に際して、濃硫酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の触媒を適量で用いてもよい。
その他の非水系溶剤としては、非極性有機溶剤及び極性有機溶剤のいずれも使用できる。なお、一実施形態において、非水系溶剤には、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合しない非水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
脂肪族炭化水素溶剤及び脂環式炭化水素溶剤としては、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系等の非水系溶剤を挙げることができる。市販品としては、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、カクタスノルマルパラフィンN-10、カクタスノルマルパラフィンN-11、カクタスノルマルパラフィンN-12、カクタスノルマルパラフィンN-13、カクタスノルマルパラフィンN-14、カクタスノルマルパラフィンN-15H、カクタスノルマルパラフィンYHNP、カクタスノルマルパラフィンSHNP、アイソゾール300、アイソゾール400、テクリーンN-16、テクリーンN-20、テクリーンN-22、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号、ナフテゾール160、ナフテゾール200、ナフテゾール220(いずれもJXTGエネルギー株式会社製);アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、エクソールD40、エクソールD60、エクソールD80、エクソールD95、エクソールD110、エクソールD130(いずれもエクソンモービル社製);モレスコホワイトP-40、モレスコホワイトP-60、モレスコホワイトP-70、モレスコホワイトP-80、モレスコホワイトP-100、モレスコホワイトP-120、モレスコホワイトP-150、モレスコホワイトP-200、モレスコホワイトP-260、モレスコホワイトP-350P(いずれも株式会社MORESCO製)等を好ましく挙げることができる。
芳香族炭化水素溶剤としては、グレードアルケンL、グレードアルケン200P(いずれもJXTGエネルギー株式会社製)、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200、ソルベッソ200ND(いずれもエクソンモービル社製)等を好ましく挙げることができる。
石油系炭化水素溶剤の蒸留初留点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることが一層好ましい。蒸留初留点はJIS K0066「化学製品の蒸留試験方法」に従って測定することができる。
脂肪酸エステル系溶剤としては、例えば、全体の炭素数が12以上、好ましくは16~30であって、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、パルミチン酸ヘキシル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシル、大豆油メチル、トール油メチル等の直鎖アルキル基を有する溶剤;
イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、ラウリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソオクチル、オレイン酸イソプロピル、リノール酸イソブチル、ステアリン酸イソオクチル、大豆油イソブチル、トール油イソブチル等の側鎖の炭素数が3以下のアルキル基を有する溶剤;
パルミチン酸イソステアリル(炭素数34)等の炭素数が31以上の溶剤等が挙げられる。
また、一般的に市販されている脂肪酸エステル系溶剤の中で、イソノナン酸イソデシル(炭素数19)、イソノナン酸イソトリデシル(炭素数22)、イソステアリン酸イソプロピル(炭素数21)等は、側鎖の炭素数が1のアルキル基を有する脂肪酸エステル系溶剤である。
高級脂肪酸系溶剤としては、例えば、ラウリン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、α-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、イソステアリン酸等の1分子中の炭素数が12以上、好ましくは14~20の高級脂肪酸系溶剤等が挙げられる。
脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等の極性有機溶剤の沸点は、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましい。なお、沸点が250℃以上の非水系溶剤には、沸点を示さない非水系溶剤も含まれる。
一般式(1)で表される脂肪酸エステル系溶剤の他に、その他の非水系溶剤を用いる場合は、クリアファイル変形を防止するために、その他の非水系溶剤として、高沸点溶剤を用いることが好ましい。高沸点溶剤としては、蒸留初留点が200℃以上である非極性溶剤、沸点が250℃以上の極性溶剤、またはこれらの組み合わせを用いることが好ましい。このような非水系溶剤としては、例えば、モレスコホワイトP-60等のパラフィン系溶剤、イソノナン酸イソトリデシル等の1分子中の炭素数が20以上の脂肪酸エステル系溶剤等を好ましく用いることができる。
一実施形態によるインクは、クリアファイルの変形を防止しながら、低粘性でインクジェットノズルからの吐出に適するため、常温(23℃)付近で適性に吐出することが可能である。
脂肪酸エステルの処方を表1に示す。
表1に示す処方にしたがって、脂肪酸とアルコールを四つ口フラスコに入れて混合撹拌し均一な溶液を得た。四つ口フラスコにディーンスターク装置を装着し、仕込んだ原材料が反応して水が発生したら取り除けるようにした。均一な溶液が入っている四つ口フラスコにさらに触媒として硫酸を適量加え、系全体を加熱した。加熱温度は脂肪酸及びアルコールの種類に応じて80℃~230℃に設定した。加熱反応時間は1~48時間に設定した。反応後、未反応の原材料や不純物を取り除くため、得られた溶液を減圧蒸留し、脂肪酸エステルを得た。
脂肪酸とアルコールとは、モル比で1:1となるように混合した。
脂肪酸及びアルコールは、東京化成工業株式会社及びsasol社から入手することができる。
市販品の脂肪酸エステルを用いた場合は、表1に入手元を示す。
インクの処方を表2、表3、表4に示す。脂肪酸エステルの1分子中の炭素数(C数)、R1及びR2の炭素数(C数)、側鎖数、側鎖の炭素数(C数)を各表にそれぞれ示す。
各表に示す配合量にしたがって、顔料、顔料分散剤、及び溶剤を混合し、ビーズミル「ダイノーミルKDL-A」(株式会社シンマルエンタープライゼス製)により滞留時間15分間の条件で、十分に顔料を分散した。続いて、メンブレンフィルターで粗大粒子を除去し、インクを得た。
(顔料)
カーボンブラック:三菱ケミカル株式会社製「MA77」。
銅フタロシアニンブルー:DIC株式会社製「FASTOGEN Blue LA5380」。
(顔料分散剤)
ソルスパース13940:日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース13940」、不揮発分40質量%。
ソルスパース18000:日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース18000」、不揮発分100質量%。
(炭化水素溶剤)
石油系炭化水素溶剤「モレスコホワイト P-60」:ナフテン系溶剤、株式会社MORESCO製「モレスコホワイト P-60」。
上記実施例及び比較例のインクについて、以下の方法により評価を行った。これらの評価結果を表2、表3、表4に示す。
厚さ約0.2mmのポリプロピレン(PP)製のクリアファイルを5cm×1cmに切り取り試験片を作製した。まず、この試験片の質量aを測定した。次いで、この試験片をインクに漬け込み、室温で1週間放置した。1週間放置後の試験片の質量bを測定した。
試験片の質量変化から質量変化率「[(b-a)/a]×100」を求め、以下の基準で、ポリプロピレンの膨潤性を評価した。
A:+0.8%未満。
B:+0.8%以上、+1.2%未満。
C:+1.2%以上。
直径3.5cmのガラス瓶に、各インクを5g入れ、大気開放下で70℃で1週間放置し、放置前後のインクの質量を測定した。インクの質量変化率を下記式より求め、インクの揮発性を以下の基準で評価した。
インクの質量変化率={1-(放置後のインク質量)/(放置前のインク質量)}×100(%)
A:5.0%未満。
C:5.0%以上。
吐出性能の評価は、ライン式インクジェットプリンタ「オルフィスEX9050」(理想科学工業株式会社製)を用いて、普通紙「理想用紙薄口」(理想科学工業株式会社製)に、主走査方向約51mm×副走査方向260mmのベタ画像を100枚連続して片面印刷し、印刷物を観察して評価した。
インクジェットノズルからのインクの不吐出は、印刷物に白いスジとなって非印字部分が発生することで確認することができる。100枚の印刷物の中に、この白いスジが発生するか、または発生した本数を観察した。100枚の印刷物に観察された白いスジの合計数から吐出性能を評価した。評価基準を以下に示す。
A:白いスジが0本。
B:白いスジが1~4本。
C1:白いスジが5~9本。
C2:白いスジが10本以上。
上記吐出性能の評価結果と同様にして印刷物を作製した。この印刷物をPET製フィルムで密閉し、温度30℃、湿度85%の環境で1週間放置した後の臭気を評価した。臭気の評価は、10人のパネルに印刷物を嗅いでもらい、下記基準によって官能評価した。評価結果は10人のパネルの評価結果を平均化したものである。
A:臭気をほとんど感じないレベル。
B:臭気を感じるレベル。
インクによるPPの膨潤が防止されることで、PP製クリアファイルに印刷物を挟み込む場合に、印刷面と接触するクリアファイルの内側の面がインク成分、特に溶剤によって膨潤しないようにすることができる。そうすると、クリアファイルの内側の面と外側の面での体積変化を防ぐことができ、クリアファイルの変形を防止することができる。
実施例1~7では、各種脂肪酸エステルを用いており、PPの膨潤を防止し、吐出性を改善することができた。実施例1~7を通して、脂肪酸エステルの1分子中の炭素数が22以下でより吐出性が改善することがわかる。
実施例1~7から、脂肪酸エステルの2つのアルキル基の炭素数がいずれも9以上で、インクの臭気がより改善することがわかる。
実施例9は、2種類の脂肪酸エステルを用いたものであり、各評価が良好であった。
実施例10及び11は、脂肪酸エステルと炭化水素溶剤を組み合わせて用いたものであり、比較例6は、脂肪酸エステルを用いずに炭化水素溶剤のみを用いたものである。これらの例から、脂肪酸エステル量が少なくなると吐出性が低下し、さらに脂肪酸エステル量が少なくなるとPPが膨潤することがわかる。
比較例5では、1分子中の炭素数が24である脂肪酸エステルを用いており、インクの吐出性が低下した。
さらに、比較例1~5では、脂肪酸エステルの1分子中の炭素数が小さくなるとインクがより揮発し、脂肪酸エステルのアルキル基の炭素数が小さくなるとインクの臭気が発生した。
比較例7~11では、脂肪酸エステルの1分子中の炭素数が24以上であり、インクの吐出性能が低下した。
Claims (7)
- 前記一般式(1)が(i)を満たし、前記一般式(1)で表される脂肪酸エステル系溶剤の1分子中の炭素数が18~22である、請求項1に記載の油性インクジェットインク。
- 前記一般式(1)が(ii)を満たし、前記一般式(1)で表される脂肪酸エステル系溶剤の1分子中の炭素数が20~22である、請求項1又は2記載の油性インクジェットインク。
- 前記一般式(1)が(i)を満たし、R1及びR2の一方が炭素数が4以上の側鎖を有する分岐アルキル基であり、R1及びR2の他方が直鎖アルキル基である、請求項1又は2に記載の油性インクジェットインク。
- R1及びR2はそれぞれ独立的に炭素数が9以上のアルキル基である、請求項1から4のいずれか1項に記載の油性インクジェットインク。
- 前記一般式(1)が(ii)を満たす、請求項1に記載の油性インクジェットインク。
- 前記一般式(1)で表される脂肪酸エステル系溶剤は、インク全量に対し50質量%以上である、請求項1から6のいずれか1項に記載の油性インクジェットインク。
Priority Applications (3)
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---|---|---|---|
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