JP7000097B2 - 油性インクジェットインク - Google Patents
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Description
特許文献1では、透明ファイルを膨潤させたり、大きく変形させることなく、高い吐出安定性を有するインクジェット用非水系インク組成物として、顔料と分散剤と非水系溶媒とを含有し、非水系溶媒の全重量の50%以上は、炭素数24以上36以下のエステル系溶媒であるインクを提案している。
特許文献3では、少なくとも沸点が100℃~250℃のシリコーン系溶媒を2~95wt(%)と、該溶媒に不溶な着色材を含有するインクジェット記録用インクによって、紙質によらず良好な印字品質が得られ、また印字後数秒で十分な耐刷性が得られ、カラー画像において混色の無い鮮明な画像が得られることを提案している。
また、シリコーン系溶剤はインクジェットのノズルプレートに対して親和性が高く、シリコーン系溶剤を用いたインクは、ノズルプレートに付着しやすく、ノズルヘッドプレートに付着したインクが印刷物に液だれしたり、ノズルヘッド付近でインクが固化してノズル不吐出の原因となったりすることがある。
この問題は、特許文献1に開示される高炭素数のエステル系溶剤、特許文献2~5に開示されるシリコーン系溶剤においても解消されていない。
さらに、特許文献1~7では、いずれもインクジェットのノズルプレートにインクが付着する問題については検討されていない。また、特許文献3~7では、いずれもクリアファイルの変形について検討されていない。
一実施形態による油性インクジェットインク(以下、単にインクと称することがある。)としては、色材と、シリコーンオイル(a)と、エチレン性不飽和二重結合を有するカルボン酸エステル系溶剤(b)、エチレン性不飽和二重結合を有するアルコール系溶剤(c1)、及びエチレン性不飽和二重結合を有する固体アルコール(c2)からなる群から選択される1種以上とを含み、シリコーンオイル(a)、カルボン酸エステル系溶剤(b)、及びアルコール系溶剤(c1)を含む非水系溶剤と固体アルコール(c2)との合計量Aに対し、シリコーンオイル(a)は、15質量%以上であり、カルボン酸エステル系溶剤(b)は、85質量%以下であり、アルコール系溶剤(c1)及び固体アルコール(c2)の合計量は、20質量%以下であることを特徴とする。
これによれば、ノズルプレートへのインクの付着を防止し、ノズルからのインクの吐出性能を改善し、印刷物によるクリアファイルの変形を防止することができる。
また、シリコーンオイル(a)、カルボン酸エステル系溶剤(b)、及びアルコール系溶剤(c1)を含む非水系溶剤と固体アルコール系溶剤(c2)との合計量を単に合計量Aとも記す。非水系溶剤に、(a)、(b)、及び(c1)以外のその他の非水系溶剤が含まれる場合には、その他の非水系溶剤も合計量Aに含まれる。
シリコーンオイルは比較的に低粘度でありながら、クリアファイルの変形を防止することができる。しかし、シリコーンオイルは、表面張力が低く接触角が低いため、ノズルプレートに対して濡れ性が高く、色材とノズルプレートの親和性を高めるように作用することがあり、ノズルプレートにインクが付着しやすい問題がある。
低粘度の不飽和化合物とともにシリコーンオイル(a)を合わせて用いることで、シリコーンオイル(a)はクリアファイルの原料の樹脂と構造が異なるため、クリアファイルの変形を防止することができる。
顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料;及び、カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの顔料は単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
顔料は、インク全量に対し、通常0.01~20質量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から、1~15質量%であることが好ましく、5~10質量%であることが一層好ましい。
顔料分散剤としては、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、ビニルピロリドンと長鎖アルケンとの共重合体、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリエステルポリアミン等が好ましく用いられる。
油性インクには、顔料分散剤を含む樹脂成分は、インク全量に対し10質量%以下で配合することができ、より好ましくは7質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。これによって、インク粘度の上昇を防止し、吐出性能をより改善することができる。
油溶性染料としては、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料等を挙げることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用してもよい。
染料は、インク全量に対し、通常0.01~20質量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から、1~15質量%であることが好ましく、5~10質量%であることが一層好ましい。
シリコーンオイルは、合計量Aに対し、98質量%以下で含ませてよく、好ましくは95質量%以下である。シリコーンオイルは、ノズルプレートの材質によってはノズルプレートに親和性があるため、その配合量をある程度制限することで、ノズルプレートに対するインクの濡れ性を改善することができる。
一方、カルボン酸エステル系溶剤(b)は、合計量Aに対し1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上、さらには20質量%以上であってもよい。これによって、カルボン酸エステル系溶剤(b)による色材の分散性ないし溶解性の効果が高まり、ノズルプレートへのインクの付着を防止することができる。
一方、アルコール系溶剤(c1)及び固体アルコール(c2)の合計量は、合計量Aに対し1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上である。これによって、アルコール系溶剤(c1)及び固体アルコール(c2)による色材の分散性ないし溶解性の効果が高まり、ノズルプレートへのインクの付着を防止することができる。
吐出性能とクリアファイルの変形防止とを両立するために、アルコール系溶剤(c1)及び固体アルコール(c2)の合計量は、シリコーンオイル(a)100質量部に対し、50質量部以下にすることが好ましい。
カルボン酸エステル系溶剤(b)、アルコール系溶剤(c1)及び固体アルコール(c2)の合計量は、合計量Aに対し、好ましくは3~85質量%である。
カルボン酸エステル系溶剤(b)、アルコール系溶剤(c1)及び固体アルコール(c2)の合計量は、インク全量に対し1~80質量%であってよい。シリコーンオイル(a)は、インク全量に対し10~97質量%であってよい。
低炭素数のカルボン酸エステル系溶剤(b)を用いる場合は、クリアファイル変形を防止するために、その配合量が制限される。この場合、炭素数8以上、好ましくは炭素数19以上の高炭素数の飽和脂肪酸エステルをさらに用いることができる。飽和脂肪酸エステルとしては、例えば、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソオクチル、イソステアリン酸イソプロピル等が挙げられる。
この場合、炭素数8以上、好ましくは炭素数8~22の飽和アルコールをさらに用いることができる。飽和アルコールとしては、イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、イソエイコシルアルコール、デシルテトラデカノール等が挙げられる。
シリコーンオイル(a)としては、シリル基を有する化合物、シリルオキシ基を有する化合物、シロキサン結合を有する化合物等を用いることができ、特にポリシロキサン化合物を好ましく用いることができる。
鎖状シリコーンオイルは、ケイ素数が2~30の鎖状ポリシロキサンであることが好ましく、2~20がより好ましく、3~10が一層好ましい。鎖状シリコーンオイルとしては、例えば、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ヘキサデカメチルヘプタシロキサン等の直鎖ジメチルシリコーンオイル、メチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、テトラキス(トリメチルシロキシ)シラン等の分岐ジメチルシリコーンオイルが挙げられる。
環状シリコーンオイルとしては、ケイ素数が5~9の環状ポリシロキサンであることが好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン、オクタデカメチルシクロノナシロキサン等の環状ジメチルシリコーンオイルを好ましく用いることができる。
また、変性シリコーンオイルとしては、例えば、鎖状又は環状のジメチルシリコーンオイルに含まれる少なくとも1つのケイ素原子に、アルキレン基を介してさらに別の鎖状又は環状のジメチルシリコーンオイルのケイ素原子が結合する化合物を用いることができる。この場合、アルキレン基を介して結合する鎖状又は環状のジメチルシリコーンオイルに含まれる少なくとも1つのメチル基は、アルキル基、カルボン酸エステル結合含有基、芳香環含有基、及びエーテル結合含有基からなる群から選択される1種以上によって置換されていてもよい。
変性シリコーンオイルとしては、ケイ素数が2~20であることが好ましく、2~10がより好ましく、2~6がさらに好ましく、3~6が一層好ましい。
カルボン酸エステル系溶剤(b)は、1分子中にエチレン性不飽和二重結合を1個又は2個以上有してもよいが、インクを低粘度化することができるため、1分子中のエチレン性不飽和二重結合は1個又は2個であることが好ましい。
カルボン酸エステル系溶剤(b)は、1分子中にエチレン性不飽和二重結合が2個以上ある場合は、カルボン酸部分及びアルコール部分の一方に2個以上のエチレン性不飽和二重結合を有してもよく、あるいは、両方にそれぞれ1個又は2個以上のエチレン性不飽和二重結合を有してもよい。
一方、カルボン酸エステル系溶剤(b)は、1分子中の炭素数が40以下であることが好ましく、より好ましくは35以下であり、さらに好ましくは30以下である。これによって、カルボン酸エステル系溶剤(b)が低粘度となって、インク全体を低粘度化して、吐出性能を改善することができる。また、カルボン酸エステル系溶剤(b)が低粘度であることで、インクへの配合量を多くすることができ、ノズルプレートに対するインクの濡れ性を改善する効果を高めることができる。
印刷物によるクリアファイルの変形防止、吐出性能の改善、及びノズルプレートに対するインクの濡れ性の改善の観点から、1分子中の炭素数が5~35であるカルボン酸エステル系溶剤(b)が好ましく、特に、1分子中のエチレン性不飽和二重結合が1個又は2個であり、炭素数が18~35であるカルボン酸エステル系溶剤(b)が好ましい。
1分子中の炭素数の合計が20以上である場合では、カルボン酸エステル系溶剤(b)は、合計量Aに対し20質量%以上であることが好ましく、より好ましくは25質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上であり、50質量%以上、さらに70質量%以上で配合してもよい。
例えば、飽和又は不飽和の脂肪族又は芳香族のモノカルボン酸と、飽和又は不飽和の脂肪族又は芳香族のアルコールとを、一方又は両方にエチレン性不飽和二重結合が含まれるように組み合わせて、反応させることができる。
R1-COO-R2 (b1)
R1及びR2で表される飽和の炭化水素基は、それぞれ独立的に、炭素数が1~22であることが好ましい。
R1及びR2で表されるエチレン性不飽和二重結合を有する炭化水素基は、それぞれ独立的に、炭素数が5~22であることが好ましい。
R1及びR2で表されるエチレン性不飽和二重結合を有する炭化水素基は、それぞれ独立的に、直鎖又は分岐鎖を有してもよく、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であってもよく、炭素数2~22が好ましく、炭素数5~22がより好ましい。
中でも、オレイン酸ノニル、オレイン酸デシル、オレイン酸ウンデシル、オクタン酸オレイル、ノナン酸オレイル、デカン酸オレイル、ウンデカン酸オレイルが好ましい。
例えば、飽和又は不飽和の脂肪族又は芳香族のモノカルボン酸、ジカルボン酸、又はトリカルボン酸と、飽和又は不飽和の脂肪族又は芳香族の一価アルコール、二価アルコール又は三価アルコールとを、一方又は両方にエチレン性不飽和二重結合が含まれるように組み合わせて、反応させることができる。
飽和トリカルボン酸としては、炭素数5~25が好ましく、炭素数5~20がより好ましく、炭素数5~18がさらに好ましく、例えば、トリカルバリル酸、エタントリカルボン酸等の脂肪族トリカルボン酸;トリメリット酸等の芳香族トリカルボン酸等が挙げられる。
飽和モノカルボン酸には、上記モノカルボン酸エステル(b1)で説明したものを用いることができる。
不飽和トリカルボン酸としては、炭素数6~26が好ましく、炭素数6~21がより好ましく、炭素数6~16がさらに好ましく、例えば、1-プロペン-1,2,3トリカルボン酸等が挙げられる。
不飽和モノカルボン酸には、上記モノカルボン酸エステル(b1)で説明したものを用いることができる。
飽和三価アルコールとしては、炭素数2~25が好ましく、炭素数2~22がより好ましく、炭素数2~20がさらに好ましく、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,1,1-エタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-シクロヘキサンとトリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,8-オクタントリオール、1,2,9-ノナントリオール等が挙げられる。
飽和一価アルコールには、上記モノカルボン酸エステル(b1)で説明したものを用いることができる。
不飽和三価アルコールとしては、炭素数3~25が好ましく、炭素数3~22がより好ましく、炭素数2~20がさらに好ましく、例えば、1,2,3-プロペントリオール、2-メチル-3-ブテン-1,2,3-トリオール、1-デセン-3,4,6-トリオール等が挙げられる。
不飽和一価アルコールには、上記モノカルボン酸エステル(b1)で説明したものを用いることができる。
トリカルボン酸エステル(b3)は、例えば、トリメリット酸トリプレニル、1-プロペン-1,2,3トリカルボン酸トリオクチル等が挙げられる。
二塩基酸エステル(b4)は、例えば、エチレングリコールジオレート、プロピレングリコールジオレート、1,2-プロパンジオールジオレート等が挙げられる。
三塩基酸エステル(b5)は、例えば、グリセリントリオレート、トリメチロールプロパントリオレート、トリメチロールエタントリオレート等が挙げられる。
上記したカルボン酸エステル系溶剤(b)は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
固体アルコール(c2)は、エチレン性不飽和二重結合を有する固体アルコールであって、23℃において固体状の化合物である。固体アルコール(c2)は、併用する非水系溶剤に可溶な化合物であることが好ましい。
アルコール系溶剤(c1)及び固体アルコール(c2)は、それぞれ1分子中にエチレン性不飽和二重結合を1個又は2個以上有してもよいが、インクを低粘度化することができるため、エチレン性不飽和二重結合は1個であることが好ましい。
アルコール系溶剤(c1)及び固体アルコール(c2)は、それぞれ水酸基を1個、2個又は3個以上有してもよいが、インクを低粘度化することができるため、1個の水酸基を有する1価アルコールであることが好ましい。
一方、アルコール系溶剤(c1)及び固体アルコール(c2)は、それぞれ1分子中の炭素数が35以下であることが好ましく、より好ましくは22以下であり、さらに好ましくは20以下である。これによって、アルコール系溶剤(c1)が低粘度となって、インク全体を低粘度化して、吐出性能を改善することができる。また、固体アルコール(c2)が溶解した非水系溶剤が低粘度となり、インク全体を低粘度化することができる。インク全体を低粘度化できるため、インクへのアルコール成分の配合量を多くすることができ、ノズルプレートに対するインクの濡れ性を改善する効果を高めることができる。
アルコール系溶剤(c1)及び固体アルコール(c2)は、印刷物によるクリアファイルの変形防止、吐出性能の改善、ノズルプレートに対するインクの濡れ性の改善の観点から、1分子中の炭素数が16~18であるアルコールが好ましく、特に、1分子中のエチレン性不飽和二重結合が1個であり、炭素数が16~18であるアルコールが好ましい。
固体アルコール(c2)は、例えば、シンナミルアルコール、エライジルアルコール、エルシルアルコール等が挙げられる。
その他の非水系溶剤としては、非極性有機溶剤及び極性有機溶剤のいずれも使用できる。なお、本実施形態において、非水系溶剤には、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合しない非水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
脂肪族炭化水素溶剤及び脂環式炭化水素溶剤としては、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系等の非水系溶剤を挙げることができる。市販品としては、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、カクタスノルマルパラフィンN-10、カクタスノルマルパラフィンN-11、カクタスノルマルパラフィンN-12、カクタスノルマルパラフィンN-13、カクタスノルマルパラフィンN-14、カクタスノルマルパラフィンN-15H、カクタスノルマルパラフィンYHNP、カクタスノルマルパラフィンSHNP、アイソゾール300、アイソゾール400、テクリーンN-16、テクリーンN-20、テクリーンN-22、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号、ナフテゾール160、ナフテゾール200、ナフテゾール220(いずれもJXTGエネルギー株式会社製);アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、エクソールD40、エクソールD60、エクソールD80、エクソールD95、エクソールD110、エクソールD130(いずれもエクソンモービル社製);モレスコホワイトP-40、モレスコホワイトP-60、モレスコホワイトP-70、モレスコホワイトP-80、モレスコホワイトP-100、モレスコホワイトP-120、モレスコホワイトP-150、モレスコホワイトP-200、モレスコホワイトP-260、モレスコホワイトP-350P(いずれも株式会社MORESCO製)等を好ましく挙げることができる。
芳香族炭化水素溶剤としては、グレードアルケンL、グレードアルケン200P(いずれもJXTGエネルギー株式会社製)、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200、ソルベッソ200ND(いずれもエクソンモービル社製)等を好ましく挙げることができる。
石油系炭化水素溶剤の蒸留初留点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがいっそう好ましい。蒸留初留点はJIS K0066「化学製品の蒸留試験方法」に従って測定することができる。
例えば、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル(炭素数22)、ラウリン酸メチル、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソオクチル、イソステアリン酸イソプロピル等の1分子中の炭素数が13以上、好ましくは16~30の脂肪酸エステル系溶剤;イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、イソエイコシルアルコール、デシルテトラデカノール等の1分子中の炭素数が6以上、好ましくは12~20の高級アルコール系溶剤;ラウリン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、α-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、イソステアリン酸等の1分子中の炭素数が12以上、好ましくは14~20の高級脂肪酸系溶剤等が挙げられる。
脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等の極性有機溶剤の沸点は、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましい。なお、沸点が250℃以上の非水系溶剤には、沸点を示さない非水系溶剤も含まれる。
「インクの作製」
表1から表4にインク処方を示し、各表の下段に溶剤構成を示す。各表において、溶剤bのR1,R2のC数は、一般式(b1)におけるR1,R2の炭素数を示す。
溶剤構成の合計量である「非水系溶剤+成分c2の合計」は、溶剤a、溶剤b、溶剤c1及びその他溶剤と、成分c2との質量の合計である。
実施例21及び23では、表中の下段に溶剤aとともに成分c2の配合を示し、溶剤aとともに成分c2を混合した他は、上記と同様にしてインクを作製した。
その他の原材料の詳細は以下の通りである。
カーボンブラック:三菱ケミカル株式会社製「#1000、カーボンブラック」。
銅フタロシアニンブルー:DIC株式会社製「FASTGEN Blue LA5380」。
ソルスパース16000:日本ルーブリゾール社製「ソルスパース16000」、アミン系分散剤、有効成分100質量%。
ソルスパース13940:日本ルーブリゾール社製「ソルスパース13940」、アミン系分散剤、有効成分40質量%。
表5に示すカルボン酸エステル系溶剤(b)のうち合成品の合成方法を説明する。
カルボン酸エステル系溶剤(b)の合成処方を表6に示す。
表に示すモノカルボン酸とアルコールとを表に示す配合割合にしたがって、四つ口フラスコに入れて混合撹拌し均一な溶液を得た。四つ口フラスコにディーンスターク装置を装着し、仕込んだ原材料が反応して水が発生したら取り除けるようにした。均一な溶液が入っている四つ口フラスコにさらに触媒を適量加え、系全体を加熱した。加熱温度は80℃~230℃に設定した。反応が進み、発生した水はディーンスターク装置に溜まるため、溜まった水はあふれないよう取り除いた。加熱反応時間は1h~48hに設定した。未反応の原材料や不純物を取り除くため、得られた溶液を減圧蒸留した。減圧蒸留後、ろ過して得られた溶液をガスクロマトグラフを用いて測定し、単一成分であることを確認した。
実施例及び比較例のインクについて、以下の方法により評価を行った。これらの評価結果を各表に示す。
クリアファイルの波打ち評価は、1枚の印刷物をPP(ポリプロピレン)製クリアファイルに挟み、室温で放置し、1週間放置後に、クリアファイルの変形量を確認して評価した。クリアファイルの1枚のシートの厚さは0.2mmであった。
印刷物は、ライン式インクジェットプリンタ「オルフィスEX9050」(理想科学工業株式会社製)にインクを装填し、普通紙「理想用紙薄口」(理想科学工業株式会社製)に、主走査方向約51mm(ノズル600本)×副走査方向260mmのベタ画像を片面印刷することにより作製した。
S:クリアファイルの変形量が1cm未満である。
A:クリアファイルの変形量が1cm以上5cm未満である。
B:クリアファイルの変形量が5cm以上である。
各インクを30mlのガラス容器に入れ、インクジェットプリンタ「オルフィスEX9050」(商品名:理想科学工業株式会社製)に使用されるノズルプレート(長さ5cm、幅5mm)の一辺をピンセットでつまみ、反対側の一辺から2cmを5秒間インクに浸漬させた。その後、ノズルプレートを素早く引き上げ、ノズルプレート上に残ったインク膜がインク滴になるまでの時間tを測定した。同じノズルプレートを用いて同様の操作を10回繰り返し、それぞれ時間tを測定した。その平均値を算出し、撥インク時間とした。撥インク時間から、ノズルプレートに対するインクの濡れ性を以下の基準で評価した。
SS:撥インク時間が3秒未満である。
S:撥インク時間が3秒以上5秒未満である。
A:撥インク時間が5秒以上10秒未満である。
B:撥インク時間が10秒以上である。
吐出性能の評価は、ライン式インクジェットプリンタ「オルフィスEX9050」(理想科学工業株式会社製)を用いて、普通紙「理想用紙薄口」(理想科学工業株式会社製)に、100枚連続してベタ画像を片面印刷し、印刷物を観察して評価した。
印刷条件は、上記クリアファイルの波打ちの評価と同じである。
インクジェットノズルからのインクの不吐出は、印刷物に白いスジとなって非印字部分が発生することで確認することができる。100枚の印刷物の中に、この白いスジが発生するか、または発生した本数を観察した。100枚の印刷物に観察された白いスジの合計数から吐出性能を評価した。評価基準を以下に示す。
S:白いスジが2本以下である。
A:白いスジが3~4本である。
B:白いスジが5本以上である。
実施例5及び6では、カルボン酸エステル系溶剤(b)の1分子中の炭素数が18以上であり、インクの濡れ性をより改善することができた。
実施例6では、シリコーンオイル(a)の配合量が少なく、カルボン酸エステル系溶剤(b)の配合量が多いことからも、インクの濡れ性をより改善することができた。
実施例7では、顔料として銅フタロシアニンブルーを用いる構成で、シリコーンオイル(a)とともにカルボン酸エステル系溶剤(b)を組み合わせており、実施例1~6の顔料インクと同様に効果を得ることができた。
実施例10~19では、カルボン酸エステル系溶剤(b)の炭素数が26以上と高く単体の粘度が高いが、シリコーンオイル(a)を併用しているためインク全体の粘度上昇を抑制し、吐出安定性を確保しながら、クリアファイル変形及びインクの濡れ性を改善することができた。
実施例10~19を通して、カルボン酸エステル系溶剤(b)の配合量が多いことからインクの濡れ性をより改善することがわかる。また、カルボン酸エステル系溶剤(b)が高粘度で配合量が多い実施例19では吐出性能が若干低下した。
実施例20~23を通して、アルコール系溶剤(c1)又は固体アルコール(c2)の炭素数が高い方が、クリアファイル変形をより改善することができた。
比較例2では、高炭素数のカルボン酸エステル系溶剤(b)が、非水系溶剤+成分c2の合計に対し90質量%と多く配合され、吐出性能が低下した。
比較例3では、低炭素数のカルボン酸エステル系溶剤(b)が、非水系溶剤+成分c2の合計に対し90質量%と多く配合され、クリアファイル変形が悪化した。
比較例4では、アルコール系溶剤(c1)が、非水系溶剤+成分c2の合計に対し30質量%と多く配合され、吐出性能が低下した。
Claims (7)
- 色材と、シリコーンオイル(a)と、エチレン性不飽和二重結合を有するカルボン酸エステル系溶剤(b)、エチレン性不飽和二重結合を有するアルコール系溶剤(c1)、及びエチレン性不飽和二重結合を有する固体アルコール(c2)からなる群から選択される1種以上とを含み、
前記シリコーンオイル(a)、前記カルボン酸エステル系溶剤(b)、及び前記アルコール系溶剤(c1)を含む非水系溶剤と前記固体アルコール(c2)との合計量Aに対し、前記シリコーンオイル(a)は、15質量%以上であり、前記カルボン酸エステル系溶剤(b)は、85質量%以下であり、前記アルコール系溶剤(c1)及び前記固体アルコール(c2)の合計量は、20質量%以下であり、
前記カルボン酸エステル系溶剤(b)は、エチレン性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸エステル(b1)、エチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸エステル(b2)、エチレン性不飽和二重結合を有するトリカルボン酸エステル(b3)、及びエチレン性不飽和二重結合を有する二塩基酸エステル(b4)からなる群から選択される少なくとも1種である、油性インクジェットインク。 - 前記カルボン酸エステル系溶剤(b)は、下記一般式(b1)で表されるカルボン酸エステル系溶剤を含む、請求項1に記載の油性インクジェットインク。
R1-COO-R2 (b1)
(一般式(b1)において、R1及びR2は、それぞれ独立的に炭素数が1~22である飽和又は不飽和の炭化水素基であり、R1及びR2のうち少なくとも一方は、炭素数が5~22でありエチレン性不飽和二重結合を有する炭化水素基である。) - 前記カルボン酸エステル系溶剤(b)は、1分子中の炭素数が18以上である、請求項1又は2に記載の油性インクジェットインク。
- 前記カルボン酸エステル系溶剤(b)は、1分子中の炭素数が20以上であり、前記合計量Aに対し25質量%以上で含まれる、請求項3に記載の油性インクジェットインク。
- 前記アルコール系溶剤(c1)及び前記固体アルコール(c2)は、それぞれ1分子中の炭素数が5~22である、請求項1から4のいずれか1項に記載の油性インクジェットインク。
- 前記アルコール系溶剤(c1)及び前記固体アルコール(c2)の合計量は、前記合計量Aに対し3質量%以上で含まれる、請求項1から5のいずれか1項に記載の油性インクジェットインク。
- 色材と、シリコーンオイル(a)と、エチレン性不飽和二重結合を有するカルボン酸エステル系溶剤(b)、エチレン性不飽和二重結合を有するアルコール系溶剤(c1)、及びエチレン性不飽和二重結合を有する固体アルコール(c2)からなる群から選択される1種以上とを含み、
前記シリコーンオイル(a)、前記カルボン酸エステル系溶剤(b)、及び前記アルコール系溶剤(c1)を含む非水系溶剤と前記固体アルコール(c2)との合計量Aに対し、前記シリコーンオイル(a)は、15質量%以上であり、前記カルボン酸エステル系溶剤(b)は、85質量%以下であり、前記アルコール系溶剤(c1)及び前記固体アルコール(c2)の合計量は、20質量%以下であり、
前記シリコーンオイル(a)は、鎖状シリコーンオイル、環状シリコーンオイル、及び非反応性の変性シリコーンオイルからなる群から選択される少なくとも1種である、油性インクジェットインク。
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