JP2020152801A - 油性インクジェットインク、及び油性インクジェットインク用基剤 - Google Patents

油性インクジェットインク、及び油性インクジェットインク用基剤 Download PDF

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Abstract

【課題】印刷物による樹脂製品の変質を防止し、また、インクジェットノズルからの吐出性能を改善する油性インクジェットインクを提供することである。【解決手段】下記一般式(1)で表されるエステル化合物を油性インクジェットインク用基剤として含む、油性インクジェットインクである。R1−CO−O−R2一般式(1)(一般式(1)において、R1は、炭素数9〜17の脂肪族炭化水素基であり、R2は、炭素数が2又は3である側鎖を有し、炭素数9〜18の脂肪族炭化水素基である。)【選択図】なし

Description

本発明は、油性インクジェットインク、及び油性インクジェットインク用基剤に関する。
インクジェット記録方式は、流動性の高いインクジェットインクを微細なノズルから液滴として噴射し、ノズルに対向して置かれた記録媒体に画像を記録するものであり、低騒音で高速印字が可能であることから、近年急速に普及している。このようなインクジェット記録方式に用いられるインクとして、水を主溶媒として含有する水性インク、重合性モノマーを主成分として高い含有量で含有する紫外線硬化型インク(UVインク)、ワックスを主成分として高い含有量で含有するホットメルトインク(固体インク)とともに、非水系溶剤を主溶媒として含有する、いわゆる非水系インクが知られている。非水系インクは、主溶媒が揮発性有機溶剤であるソルベントインク(溶剤系インク)と、主溶媒が低揮発性あるいは不揮発性の有機溶剤である油性インク(オイル系インク)に分類できる。ソルベントインクは主に有機溶剤の蒸発によって記録媒体上で乾燥するのに対して、油性インクは記録媒体への浸透が主となって乾燥する。
油性インクジェットインクによって画像形成された印刷物を、ポリプロピレン(PP)製等のクリアファイルに挟み込み保管すると、クリアファイルが変形する問題がある。この一因としては、クリアファイルが印刷面と接すると、インク成分によってクリアファイルの片面が変質して膨潤するためである。
特許文献1(特開2007−154149号公報)では、透明ファイルを大きく変形させることなく、高い吐出安定性を有するインクジェット用非水系インク組成物として、顔料と分散剤と非水系溶媒とを含有し、非水系溶媒の全重量の50%以上は、炭素数24以上36以下のエステル系溶媒であるインクを提案している。
特許文献2(特開2018−172657号公報)では、クリアファイル等の樹脂製品の変質、変形を防止し、インクジェットノズルからのインクの吐出性を改善するために、油性インクジェットインクにおいて、1分子の炭素数が12〜23であり、炭素数4以上の側鎖を有する分岐アルキル基がエステル結合に結合する脂肪酸エステル系溶剤を用いることが提案されている。
特開2007−154149号公報 特開2018−172657号公報
高炭素数のエステル化合物は、比較的に高粘度となる傾向がある。高粘度のエステル化合物を用いたインクでは、インクジェットノズルからの吐出性能が十分に得られない問題がある。特許文献1では、高炭素数のエステル系溶媒を用いているため、インクを加熱して粘度を低下させて吐出させている。
また、高炭素数のエステル化合物であっても、エステル結合に結合する炭素鎖が直鎖であると、クリアファイルの変形防止の効果を十分に得られない傾向がある。また、エステル結合に結合する炭素鎖が炭素数1の側鎖を有する場合にも、同じような傾向がある。
特許文献2では、脂肪酸エステル系溶剤の分岐構造を検討し、脂肪酸エステル系溶剤が炭素数4以上の側鎖を有する分岐アルキル基を有することで、側鎖部分が立体障害となって、クリアファイル表面に溶剤が入り込むことを防止しようとしている。
さらに、クリアファイル等の樹脂製品の変形を防止する観点、及びインクジェットノズルからの吐出性能を改善する観点から、インクにより好ましく配合するための溶剤が検討されている。
本発明の一目的としては、印刷物による樹脂製品の変質を防止し、また、インクジェットノズルからの吐出性能を改善する油性インクジェットインクを提供することである。
本発明の一実施形態としては、下記一般式(1)で表されるエステル化合物を油性インクジェットインク用基剤として含む、油性インクジェットインクである。
−CO−O−R 一般式(1)
(一般式(1)において、Rは、炭素数9〜17の脂肪族炭化水素基であり、Rは、炭素数が2又は3である側鎖を有し、炭素数9〜18の脂肪族炭化水素基である。)
本発明の他の実施形態としては、上記に記載の油性インクジェットインク用の基剤である。
本発明の一実施形態によれば、印刷物による樹脂製品の変質を防止し、また、インクジェットノズルからの吐出性能を改善する油性インクジェットインクを提供することができる。
以下、本発明を一実施形態を用いて説明する。以下の実施形態における例示が本発明を限定することはない。
一実施形態による油性インクジェットインク(以下、単にインクと称することがある。)としては、下記一般式(1)で表されるエステル化合物を油性インクジェットインク用基剤として含むことを特徴とする。
−CO−O−R 一般式(1)
(一般式(1)において、Rは、炭素数9〜17の脂肪族炭化水素基であり、Rは、炭素数が2又は3である側鎖を有し、炭素数9〜18の脂肪族炭化水素基である。)
この油性インクジェットインクに用いることで、印刷物による樹脂製品の変質を防止することができ、また、インクジェットノズルからの吐出性能を改善することができる。
特に、この一般式(1)で表されるエステル化合物を基剤として用いるインクによれば、印刷物をポリプロピレン(PP)製等のクリアファイルで挟み込む場合に、クリアファイルの変形を防止することができる。クリアファイルは透明から半透明の樹脂製シートであり、また、着色された不透明の樹脂製シートであってもよい。
クリアファイルの内側の面が印刷物と接触すると、インク成分がクリアファイルに作用して、クリアファイルの内側の面が体積変化し、クリアファイルが反り返るような変形をする場合がある。これは、クリアファイル表面の微小孔に、インク成分、特に溶剤成分が入り込み、クリアファイルを膨潤させることで顕著になると考えられる。
また、一般式(1)で表されるエステル化合物を用いることで、側鎖部分が立体障害となって、クリアファイル表面の微小孔に、このエステル化合物が入り込むことを防止することができる。このエステル化合物を用いることで、印刷物によるクリアファイルの変形を防止することができる。
このエステル化合物では、アルコール側の炭素鎖Rが炭素数2又は3の側鎖を有する分岐構造を有することで、側鎖部分が立体構造となって、クリアファイル表面の微小孔に、このエステル化合物が入り込むことを防止することができる。
また、このエステル化合物は、アルコール側の炭素鎖Rにおいて、側鎖の炭素数が2又は3であることで、比較的に低粘性でありながら高沸点であるため、インクジェットプリンタにインクを装填する場合に、インクジェットノズルからのインクの吐出性能を改善することができる。また、このエステル化合物は、比較的に高沸点であるため、インクジェットノズルからのインクの揮発を防止して、長期にわたり吐出性能の低下を防止することができる。
油性インクジェットインク用の基剤は、複数種類のインクに共通して用いることができる成分を含む組成物である。この基剤に色材等を添加することで、インクを提供することができる。例えば、基剤を予め一括して作製しておき、小分けにした複数の基剤に、それぞれ異なる色材を添加することで、多色のインクを提供することができる。
基剤は、主に溶剤を含む。基剤は、溶剤以外の成分を含んでもよいが、各種のインクに適用でき、また、長期の保管に適するように、溶剤を主成分として含むことが好ましく、溶剤のみからなることがより好ましい。
油性インクジェットインクは、下記一般式(1)で表されるエステル化合物を油性インクジェットインク用基剤として含むことが好ましい。
−CO−O−R 一般式(1)
一般式(1)において、Rは、炭素数9〜17の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
は、飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素基であってよく、具体的には、直鎖又は分岐のアルキル基、又は直鎖又は分岐の不飽和炭化水素基であってよく、好ましくは、直鎖のアルキル基、又は直鎖の不飽和炭化水素基である。Rが分岐のアルキル基、又は分岐の不飽和炭化水素基である場合は、側鎖の炭素数は3以下が好ましく、2又は3がより好ましい。
の炭素数は、9以上が好ましく、10以上がより好ましく、11以上がさらに好ましい。これによって、エステル結合を介して、RとともにRがある程度の長さの炭素鎖となるため、溶剤の揮発を抑えることができる。
の炭素数は、17以下が好ましく、15以下がより好ましく、13以下がさらに好ましい。これによって、アルコール側の炭素鎖Rがある程度の長さであることから、脂肪酸側の炭素数Rの炭素数がこの範囲であることで、溶剤が高粘度化することを防止し、インクの吐出性能をより改善することができる。
例えば、Rの炭素数は、9〜17が好ましく、10〜15がより好ましく、11〜13であってよい。
で表されるアルキル基としては、例えば、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、イソノニル基、イソウンデシル基等が挙げられる。
で表される不飽和炭化水素基としては、例えば、1個の炭素−炭素二重結合を有する一価の不飽和鎖式炭化水素基(アルケニル基)、2個の炭素−炭素二重結合を有する二価の不飽和鎖式炭化水素基、3個の炭素−炭素二重結合を有する三価の不飽和鎖式炭化水素基等が挙げられる。例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸等に由来して導入される官能基である。
一般式(1)において、Rは、炭素数が2又は3である側鎖を有し、炭素数9〜18の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
は、飽和又は不飽和の分岐の脂肪族炭化水素基であってよく、具体的には、分岐アルキル基、又は分岐の不飽和炭化水素基であり、好ましくは、分岐アルキル基である。
は、炭素数が2又は3である側鎖を有することが好ましく、具体的には、側鎖としてエチル基、プロピル基、イソプロピル基を有することが好ましい。これによって、樹脂製品の変質を防止することができる。
は、炭素数が3である側鎖を有することがより好ましく、なかでも側鎖がプロピル基であることが好ましい。これによって、エステル化合物の分子構造が嵩高くなって、樹脂製品の変質をより防止することができる。
は、炭素数が2又は3である側鎖を1個、又は2個以上有してもよい。Rは、炭素数が1であるメチル基を側鎖としてさらに有してもよい。また、Rは、炭素数が4以上の側鎖をさらに有してもよい。一方で、Rは、炭素数が2又は3である側鎖を有し、全体の炭素数が9〜18であることで、分子構造を十分に嵩高くし、低粘性とすることができることから、Rにおいて、全ての側鎖は、炭素数が2又は3であることが好ましい。さらに、Rにおいて、側鎖数は1個であり、かつ、側鎖の炭素数が2又は3であることが好ましい。
の炭素数は、9以上が好ましく、10以上がより好ましい。これによって、エステル結合を介して、RとともにRがある程度の長さの炭素鎖となるため、溶剤の揮発を抑えることができる。
の炭素数は、18以下が好ましく、16以下がより好ましく、14以下がさらに好ましい。これによって、Rが高炭素数となって溶剤粘度が上昇することを防止し、インクの吐出性能をより改善することができる。
例えば、Rの炭素数は、9〜18が好ましく、10〜16がより好ましく、10〜14であってよい。
で表される分岐アルキル基としては、例えば、2−プロピルヘキシル基、2−エチルへプチル基、2−プロピルへプチル基、2−エチルオクチル基、2−プロピルノニル基、2−プロピルウンデシル基、2−プロピルドデシル基、2-プロピルトリデシル基、1−エチルヘプチル基、1−プロピルヘキシル基、1−プロピルへプチル基、1−エチルノニル基、1−プロピルオクチル基、1−エチルデシル基、1−エチルヘキサデシル基等が挙げられる。
一般式(1)で表されるエステル化合物において、1分子中の炭素数は19以上が好ましく、20以上がより好ましい。これによって、R及びRのそれぞれの炭素数を十分に確保して、エステル化合物の分子構造を嵩高くし、樹脂製品表面への溶剤の入り込みを防止し、樹脂製品の変質を防止することができる。また、この範囲では、エステル化合物の揮発性を抑制して、揮発成分によって樹脂製品が変質することをより防止することができる。また、インクジェットノズルに収容されたインクから揮発成分が揮発することを抑制して、長期に渡って、吐出性能の低下を防止することができる。
一般式(1)で表されるエステル化合物において、1分子中の炭素数は36以下が好ましく、30以下がより好ましく、28以下がより好ましい。高炭素数になると高粘度となることがあるため、エステル化合物の炭素数がこの範囲であることで、インクを低粘度化して、吐出性能を改善することができる。吐出性能の観点から、エステル化合物の炭素数は23以下が好ましく、22以下がより好ましい。
例えば、一般式(1)で表されるエステル化合物において、1分子中の炭素数は、19〜36が好ましく、20〜30がより好ましく、20〜28であってよい。
一般式(1)で表されるエステル化合物の好ましい具体例としては、2−プロピル−1−ヘプタノールと、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、オレイン酸等の脂肪酸とのエステル化合物等を挙げることができる。
より具体的には、デカン酸2−プロピルヘプチル、ドデカン酸2−プロピルヘプチル、テトラデカン酸2−プロピルヘプチル、オレイン酸2−プロピルヘプチル等を好ましく用いることができる。
油性インクジェットインクにおいて、基剤は、上記した一般式(1)で表されるエステル化合物の中から1種を単独で含む単一成分の溶剤であってよい。
また、基剤は、2種以上の溶剤を含む混合溶剤であってもよく、2種以上の溶剤のうち1種以上は一般式(1)で表されるエステル化合物であることが好ましい。
基剤が2種以上の溶剤を含む混合溶剤である場合、全ての溶剤が上記した一般式(1)で表されるエステル化合物の中から選択される溶剤であってよく、又は、上記した一般式(1)で表されるエステル化合物とその他の溶剤との組み合わせであってよい。
一般式(1)で表されるエステル化合物と組み合わせるその他の溶剤としては、その他のエステル化合物、石油系炭化水素溶剤、アルコール系溶剤、脂肪酸系溶剤等、又はこれらの組み合わせであってよい。
好ましくは、基剤は、2種以上のエステル化合物を含み、2種以上のエステル化合物のうち1種以上は一般式(1)で表されるエステル化合物である。
混合溶剤として、一般式(1)で表されるエステル化合物以外のその他のエステル化合物を用いる場合では、その他のエステル化合物としては、アルコール側及び脂肪酸側の炭素鎖がいずれも直鎖状である直鎖の脂肪酸エステルであってもよく、又は、アルコール側及び脂肪酸側の炭素鎖の少なくとも一方に側鎖を有する分岐の脂肪酸エステルであってもよい。
より好ましくは、基剤は、1分子の炭素数が19〜36であり、炭素数が2又は3である側鎖を有するエステル化合物を2種以上含み、2種以上の1分子の炭素数が19〜36であり、炭素数が2又は3である側鎖を有するエステル化合物のうち1種以上は、一般式(1)で表されるエステル化合物である。
2種以上のエステル化合物を用いる場合に、互いに異なるエステル化合物において、それぞれ側鎖の炭素数が2又は3であることで、分子構造が似ていることから、混合溶剤の粘度が低下する傾向があり、インクにおいて吐出性能の改善により役立つことができる。
2種以上のエステル化合物を用いる場合において、一般式(1)で表されるエステル化合物として、一般式(1)で表されるエステル化合物においてRの側鎖の炭素数が3であるエステル化合物を1種以上含むことが好ましく、2種以上含むことがより好ましい。
さらに、2種以上のエステル化合物を用いる場合において、全てのエステル化合物が一般式(1)で表されるエステル化合物であることが好ましく、なかでも、全てのエステル化合物が一般式(1)で表されるエステル化合物においてRの側鎖の炭素数が3であるエステル化合物であることが好ましい。
また、2種以上のエステル化合物を用いる場合に、2種以上のエステル化合物は、それぞれ1分子の炭素数が19以上が好ましく、20以上がより好ましい。これによって、エステル化合物の揮発性を抑制して、樹脂製品表面への入り込みをより抑制することができ、また、インクにおいて吐出性能をより改善することができる。
2種以上のエステル化合物を用いる場合に、2種以上のエステル化合物は、それぞれ1分子の炭素数が36以下が好ましく、30以下がより好ましく、28以下がさらに好ましい。これによって、エステル化合物の高粘度化を抑制して、インクにおいて吐出性能をより改善することができる。
例えば、2種以上のエステル化合物を用いる場合に、2種以上のエステル化合物は、それぞれ1分子の炭素数が19〜36が好ましく、20〜30がより好ましく、20〜28であってよい。
その他のエステル化合物の中で、1分子の炭素数が19〜36であり、炭素数が2又は3である側鎖を有するエステル化合物としては、例えば、ドデカン酸2−エチルヘキシル、2−エチルヘキサン酸ドデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸イソセチル等が挙げられる。
さらに、その他のエステル化合物としては、例えば、1分子の炭素数が19〜36、好ましくは20〜34、より好ましくは22〜30であるエステル化合物を好ましく用いることができ、具体的には、ドデカン酸オクチル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸オクチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシル、大豆油メチル、トール油メチル等の直鎖状の脂肪酸エステル;イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、パルミチン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソオクチル、オレイン酸イソプロピル、リノール酸イソブチル、ステアリン酸イソオクチル、大豆油イソブチル、トール油イソブチル等の側鎖の炭素数が1のアルキル基を有する脂肪酸エステル等が挙げられる。
一般式(1)で表されるエステル化合物は、基剤全量に対し、特に制限されないが、10質量%以上で含まれてよい。
クリアファイル変形を防止する観点から、その他の溶剤による影響を排除するために、一般式(1)で表されるエステル化合物は、基剤全量に対し、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、例えば、90質量%以上であってもよく、さらに100質量%であってもよい。
基剤にその他のエステル化合物が含まれる場合、その他のエステル化合物は、基剤全量に対し、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。この範囲でその他のエステル化合物が含まれることで、混合溶剤を低粘度化することができる。特に、その他のエステル化合物として、1分子の炭素数が19〜36であり、炭素数が2又は3である側鎖を有するエステル化合物を用いる場合に、一般式(1)で表されるエステル化合物を単独で用いる場合に比べて、混合溶剤をより低粘度化することができる。
また、その他のエステル化合物は、基剤全量に対し、60質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。この範囲で、一般式(1)で表されるエステル化合物との配合割合がより好ましい範囲となって、樹脂製品の変質防止と吐出性能とをよりバランスよく改善することができる。
基剤に色材等を添加したインクの状態において、インク全量に対する一般式(1)で表されるエステル化合物の配合量は、基剤全体の使用量に応じて異なるが、10〜98質量%で含まれてよく、20〜90質量%で含まれてもよい。
一般式(1)で表されるエステル化合物は、インク全量に対し、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。これによって、樹脂製品の変質をより防止することができる。
基剤にその他のエステル化合物が含まれる場合、基剤に色材等を添加したインクの状態において、インク全量に対するその他のエステル化合物の配合量は、基剤全体の使用量に応じて異なるが、5〜60質量%で含まれてよく、10〜30質量%で含まれてもよい。
上記した一般式(1)で表されるエステル化合物は、これに限定されないが、以下の方法によって合成することができる。
一般式(1)で表されるエステル化合物は、アルコールと脂肪酸とを反応させて得ることができる。原料のアルコールに炭素数2又は3の側鎖を有し、炭素数が9以上であるアルコール等を用いることができる。また、ヒドロキシ基が3位に位置し、炭素数が9以上である2級アルコール、ヒドロキシ基が4位に位置し、炭素数が9以上である2級アルコール等を用いることができる。
反応温度は、脂肪酸及びアルコールの種類に応じて80〜230℃の範囲で調節することができる。反応時間は、脂肪酸及びアルコールの種類や、原料の使用量に応じて1〜48時間の範囲で調節することができる。エステル化反応に際して生成する水分を除去することが好ましい。
脂肪酸とアルコールとは、モル比で1:1で反応させることが好ましい。
反応に際して、触媒を適量で用いてもよい。触媒としては、例えば、濃硫酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の酸触媒;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ触媒、アルミニウムテトライソプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド等のルイス酸触媒等が挙げられる。
また、2種以上のエステル化合物を含む混合溶剤である基剤を作製する一方法として、アルコール及び脂肪酸のうち少なくとも一方を2種以上として、アルコールと脂肪酸との混合物を用意し、この混合物をエステル化することで、2種以上のエステル化合物を得ることができる。
また、1種のアルコールと1種の脂肪酸とを用いてエステル化合物を合成し、合成後に、2種以上のエステル化合物を混合することで、2種以上のエステル化合物を含む混合溶剤である基剤を作製することも可能である。
原料となる炭素数2又は3の側鎖を有するアルコールとしては、例えば、2−プロピル−1−ヘキサノール、2−エチル−1−ヘプタノール、2−プロピル−1−ヘプタノール、2−エチル−1−オクタノール、2−プロピル−1−ノナノール、2−プロピル−1−ウンデカノール、2−プロピル−1−ドデカノール、2-プロピル−1−トリデカノール等を挙げることができる。
原料となる2級アルコールとしては、例えば、3−ノナノール、4−ノナノール、4−デカノール、3−ウンデカノール、4−ウンデカノール、3−ドデカノール、3−オクタデカノール等を挙げることができる。
原料となる脂肪酸としては、直鎖の飽和又は不飽和の直鎖脂肪酸を用いることが好ましく、例えば、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、イソウンデカン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、エライジン酸等を挙げることができる。
油性インクジェットインクには、基剤として、上記したエステル化合物以外に、その他の非水系溶剤が含まれてもよい。
その他の非水系溶剤としては、非極性有機溶剤及び極性有機溶剤のいずれも使用できる。なお、一実施形態において、非水系溶剤には、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合しない非水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
その他の非水系溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤等の石油系炭化水素溶剤等の非極性有機溶剤;高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等の極性有機溶剤等が挙げられる。
その他の非水系溶剤の中で石油系炭化水素溶剤等の非極性有機溶剤の蒸留初留点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることが一層好ましい。蒸留初留点はJIS K0066「化学製品の蒸留試験方法」に従って測定することができる。
その他の非水系溶剤の中で高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等の極性有機溶剤の沸点は、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましい。なお、沸点が250℃以上の非水系溶剤には、沸点を示さない非水系溶剤も含まれる。
一般式(1)で表されるエステル化合物と組み合わせて、上記したその他の非水系溶剤を用いる場合は、クリアファイルの変形を防止するために、その他の非水系溶剤として、高沸点溶剤を用いることが好ましい。高沸点溶剤としては、蒸留初留点が200℃以上である非極性有機溶剤、沸点が250℃以上の極性有機溶剤、又はこれらの組み合わせを用いることが好ましい。
一実施形態による油性インクジェットインクは、上記した一般式(1)で表されるエステル化合物を基剤として含むとともに、色材をさらに含むことができる。
インクは、色材として顔料、染料、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料;及び、カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、銅フタロシアニン顔料等の金属フタロシアニン顔料、及び無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの顔料は単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
顔料の平均粒子径としては、吐出安定性と保存安定性の観点から、300nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以下であり、さらに好ましくは150nm以下であり、一層好ましくは100nm以下である。
顔料は、インク全量に対し、通常0.01〜20質量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から、1〜15質量%であることが好ましく、4〜10質量%であることが一層好ましい。
インク中で顔料を安定して分散させるために、顔料とともに顔料分散剤を用いることができる。
顔料分散剤としては、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、ビニルピロリドンと長鎖アルケンとの共重合体、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリエステルポリアミン等が好ましく用いられる。
顔料分散剤の市販品例としては、例えば、アイ・エス・ピー・ジャパン株式会社製「アンタロンV216(ビニルピロリドン・ヘキサデセン共重合体)、V220(ビニルピロリドン・エイコセン共重合体)」(いずれも商品名);日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース13940(ポリエステルアミン系)、16000、17000、18000(脂肪酸アミン系)、11200、24000、28000」(いずれも商品名);BASFジャパン株式会社製「エフカ400、401、402、403、450、451、453(変性ポリアクリレート)、46、47、48、49、4010、4055(変性ポリウレタン)」(いずれも商品名);楠本化成株式会社製「ディスパロンKS−860、KS−873N4(ポリエステルのアミン塩)」(いずれも商品名);第一工業製薬株式会社製「ディスコール202、206、OA−202、OA−600(多鎖型高分子非イオン系)」(いずれも商品名);ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK2155、9077」(いずれも商品名);クローダジャパン株式会社製「HypermerKD2、KD3、KD11、KD12」(いずれも商品名)等が挙げられる。
顔料分散剤は、上記顔料を十分にインク中に分散可能な量であれば足り、適宜設定できる。例えば、質量比で、顔料1に対し顔料分散剤を0.1〜5で配合することができ、好ましくは0.1〜1である。また、顔料分散剤は、インク全量に対し、0.01〜10質量%で配合することができ、好ましくは0.01〜8質量%であり、より好ましくは0.1〜6質量%である。
染料としては、当該技術分野で一般に用いられているものを任意に使用することができる。油性インクでは、染料は、インクの非水系溶剤に親和性を示すことで、貯蔵安定性がより良好となるため、油溶性染料を用いることが好ましい。
油溶性染料としては、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料等を挙げることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用してもよい。
染料は、インク全量に対し、通常0.01〜20質量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から、1〜15質量%であることが好ましく、4〜10質量%であることが一層好ましい。
上記各成分に加えて、油性インクには、本発明の効果を損なわない限り、各種添加剤が含まれていてよい。添加剤としては、ノズルの目詰まり防止剤、酸化防止剤、導電率調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤等を適宜添加することができる。これらの種類は、特に限定されることはなく、当該分野で使用されているものを用いることができる。
インクは、色材及び基剤を含む各成分を混合することで作製することができる。好ましくは、各成分を一括ないし分割して混合及び撹拌してインクを作製することができる。具体的には、ビーズミル等の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等のろ過機を通すことにより調製できる。
油性インクジェットインクとしての粘度は、インクジェット記録システムの吐出ヘッドのノズル径や吐出環境等によってその適性範囲は異なるが、一般に、23℃において5〜30mPa・sであることが好ましく、5〜15mPa・sであることがより好ましく、8〜13mPa・sであることが、一層好ましい。
インクジェットインクを用いた印刷方法としては、特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式など、いずれの方式のものであってもよい。インクジェット記録装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから一実施形態によるインクを吐出させ、吐出されたインク液滴を記録媒体に付着させるようにすることが好ましい。
一実施形態によるインクは、クリアファイルの変形を防止しながら、低粘性でインクジェットノズルからの吐出に適するため、常温(23℃)付近で適性に吐出することが可能である。
一実施形態において、記録媒体は、特に限定されるものではなく、普通紙、コート紙、特殊紙等の印刷用紙、布、無機質シート、フィルム、OHPシート等、これらを基材として裏面に粘着層を設けた粘着シート等を用いることができる。これらの中でも、インクの浸透性の観点から、普通紙、コート紙等の印刷用紙を好ましく用いることができる。
ここで、普通紙とは、通常の紙の上にインクの受容層やフィルム層等が形成されていない紙である。普通紙の一例としては、上質紙、中質紙、PPC用紙、更紙、再生紙等を挙げることができる。普通紙は、数μm〜数十μmの太さの紙繊維が数十から数百μmの空隙を形成しているため、インクが浸透しやすい紙となっている。
また、コート紙としては、マット紙、光沢紙、半光沢紙等のインクジェット用コート紙や、いわゆる塗工印刷用紙を好ましく用いることができる。ここで、塗工印刷用紙とは、従来から凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等で使用されている印刷用紙であって、上質紙や中質紙の表面にクレーや炭酸カルシウム等の無機顔料と、澱粉等のバインダーを含む塗料により塗工層を設けた印刷用紙である。塗工印刷用紙は、塗料の塗工量や塗工方法により、微塗工紙、上質軽量コート紙、中質軽量コート紙、上質コート紙、中質コート紙、アート紙、キャストコート紙等に分類される。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。
「エステル化合物の用意」
以下の手順にしたがって、基剤1〜13としてエステル化合物を用意した。基剤1〜13のエステル化合物の詳細について表1に示す。基剤のエステル化合物(R−CO−O−R)において、Rの炭素数、Rの炭素数、Rの側鎖の炭素数を表中に示す。また、2種類のエステル化合物を含む基剤について、エステル化合物の質量比を表中に示す。
以下の説明において、特に説明のない成分については、花王株式会社又は東京化成工業株式会社から入手することができる。
(基剤1:デカン酸2−プロピルへプチル)
攪拌翼、ディーンスタークトラップ、窒素導入管及び流量計を備えた3Lの四つ口フラスコ中に、デカン酸を700g(4.07モル)、2−プロピル−1−ヘプタノールを770g(4.87モル)、パラトルエンスルホン酸を5g、トルエンを800mlで仕込み、窒素雰囲気下、13時間還流させたところ、73mlの水が流出した。室温まで冷却後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、さらに水洗、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、エバポレーターでトルエンを留去し、さらに未反応アルコールを留去後、40Pa以下の減圧下、単蒸留により180〜210℃の留分を集め、1200gの無色透明オイルとしてデカン酸2−プロピルへプチルを得た。収率は95%であった。ガスクロマトグラフ分析により純度は99.6%であった。
(基剤2:ドデカン酸2−プロピルヘプチル)
デカン酸の代わりにドデカン酸を用いた他は、上記基剤1と同様にして、ドデカン酸2−プロピルヘプチルを得た。なお、脂肪酸とアルコールのモル比は、上記基剤1と同様になるようにした。
(基剤3:デカン酸2−プロピルヘプチルとドデカン酸2−プロピルヘプチル(1:1))
上記基剤1のデカン酸2−プロピルヘプチルと、上記基剤2のドデカン酸2−プロピルヘプチルとを質量比で1:1で混合し、基剤3を得た。
(基剤4:デカン酸2−プロピルヘプチルとドデカン酸2−プロピルヘプチル(約3:1))
攪拌翼、ディーンスタークトラップ、窒素導入管及び流量計を備えた1Lの四つ口フラスコ中に、デカン酸を191g(1.115モル)、ドデカン酸を68g(0.34モル)及び2−プロピル−1−ヘプタノールを275g(1.74モル)、チタンテトライソプロポキシドを0.26gで仕込み、100℃に昇温させ、溶解させた。その後、2時間かけて200℃まで昇温、さらに水に流出が無くなるまで2時間反応を続けた。留出した水量は26mlとなった。次いで反応溶液を70℃まで冷却した、水10mlを加えて30分攪拌したところ、白色固体が析出した。再度170℃まで昇温し、系中に窒素及び蒸気を吹き込みながら1kPaの減圧下、過剰の未反応アルコールを留去した。アルコールの留出が無くなってからさらに2時間を保ち、その後70℃まで冷却した。吸着剤(キョ―ワード)及び濾過助剤(ラジオライト)をそれぞれ10gで加えて30分攪拌した後、メンブランフィルター濾過(目開き0.2μm)により吸着剤及び濾過助剤を除去し、480gの混合脂肪酸エステルを無色透明オイルとして得た。ガスクロマトグラフ分析により純度は99.9%以上であった。
得られた混合脂肪酸エステルは、デカン酸2−プロピルヘプチルとドデカン酸2−プロピルヘプチルとを質量比で約3:1で含んだ(表中では質量比3:1と示す)。
(基剤5:オレイン酸2−プロピルヘプチル)
デカン酸の代わりにオレイン酸を用いた他は、上記基剤1と同様にして、ドデカン酸2−プロピルヘプチルを得た。なお、脂肪酸とアルコールのモル比は、上記基剤1と同様になるようにした。
(基剤6:デカン酸2−プロピルヘプチルとドデカン酸2−エチルヘキシル(3:1))
上記基剤1のデカン酸2−プロピルヘプチルと、後述する基剤13のドデカン酸2−エチルヘキシルとを質量比で3:1で混合し、基剤6を得た。
(基剤7:ドデカン酸2−エチルヘキシルとオレイン酸2−プロピルヘプチル(6:4))
後述する基剤13のドデカン酸2−エチルヘキシルと、上記基剤5のオレイン酸2−プロピルヘプチルとを質量比で6:4で混合し、基剤7を得た。
(基剤8:ドデカン酸オクチルとオレイン酸2−プロピルヘプチル(6:4))
ドデカン酸オクチルと、上記基剤5のオレイン酸2−プロピルヘプチルとを質量比で6:4で混合し、基剤7を得た。
ドデカン酸オクチルは、デカン酸の代わりにドデカン酸を用い、また、2−プロピル−1−ヘプタノールの代わりにn−オクタノールを用いた他は、上記基剤1と同様にして、ドデカン酸オクチルを得た。
(基剤9:イソノナン酸イソトリデシルとベヘン酸2−プロピルヘプチル(1:1))
攪拌翼、ディーンスタークトラップ、窒素導入管及び流量計を備えた1Lの四つ口フラスコ中に、ベヘン酸(花王株式会社製「ルナックBA」)を80g(0.25モル)、2‐プロピル−1−ヘプタノールを60g(0.38モル)、パラトルエンスルホン酸を2g、トルエンを500mlで仕込み、窒素雰囲気下、6時間還流させたところ、約5mlの水が流出した。室温まで冷却後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。さらに水洗、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、トルエン及び未反応アルコールを留去し、ベヘン酸2‐プロピルへプチルを粘ちょうな淡黄色透明オイルとして得た。これをさらに50℃に加温し、攪拌しながら同質量のイソノナン酸イソトリデシルで希釈混合し、基剤9とした。
イソノナン酸イソトリデシルは、基剤10と同様のものを用いた。
(基剤10:イソノナン酸イソトリデシル)
イソノナン酸イソトリデシルは、高級アルコール工業株式会社より入手した。
(基剤11:デカン酸2−エチルヘキシル)
2−プロピル−1−ヘプタノールの代わりに2−エチル−1−ヘキサノールを用いた他は、上記基剤1と同様にして、デカン酸2−エチルヘキシルを得た。なお、脂肪酸とアルコールのモル比は、上記基剤1と同様になるようにした。
(基剤12:ノナン酸2−プロピルヘプチル)
デカン酸の代わりにノナン酸を用いた他は、上記基剤1と同様にして、ノナン酸2−プロピルヘプチルを得た。なお、脂肪酸とアルコールのモル比は、上記基剤1と同様になるようにした。
(基剤13:ドデカン酸2−エチルヘキシル)
デカン酸の代わりにドデカン酸を用い、また、2−プロピル−1−ヘプタノールの代わりに2−エチル−1−ヘキサノールを用いた他は、上記基剤1と同様にして、ドデカン酸2−エチルヘキシルを得た。なお、脂肪酸とアルコールのモル比は、上記基剤1と同様になるようにした。
Figure 2020152801
「インクの作製」
インクの処方を表2〜表4に示す。基剤のエステル化合物について、R−CO−O−Rにおいて、Rの炭素数、Rの炭素数、Rの側鎖の炭素数を各表に示す。また、2種類のエステル化合物を含む基剤について、エステル化合物の質量比を各表に示す。
各表に示す配合量にしたがって、顔料、顔料分散剤、及び基剤を混合し、ビーズミル「ダイノーミルKDL−A」(株式会社シンマルエンタープライゼス製)により滞留時間15分間の条件で、十分に顔料を分散した。続いて、メンブレンフィルターで粗大粒子を除去し、インクを得た。
用いた成分は、以下の通りである。
カーボンブラック「MA77」:三菱ケミカル株式会社製「MA77」。
カーボンブラック「NEROX500」:エボニックジャパン株式会社製「NEROX500」。
ソルスパース18000(有効成分100%):日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース18000」、有効成分100質量%。
ソルスパース13940(有効成分40%):日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース13940」、有効成分40質量%。
「評価」
上記実施例及び比較例のインクについて、以下の方法により評価を行った。これらの評価結果を表2〜表4に示す。
(クリアファイルの変形防止)
上記した各インクをライン式インクジェットプリンタ「オルフィスFW5230」(理想科学工業株式会社製)に装填し、普通紙「理想用紙マルチ」(理想科学工業株式会社製)に、ベタ画像を印刷した。
なお、「オルフィスFW5230」は、ライン型インクジェットヘッドを使用し、主走査方向(ノズルが並んでいる方向)に直交する副走査方向に用紙を搬送して印刷を行うシステムである。
得られた印刷物10枚をプラス株式会社製クリアファイル「FL−183HO 88−149」に挟み、室温にて3日間放置した。その後、クリアファイルの変形防止を以下の基準で評価した。
A:クリアファイルの変形がわずかに観察された。
B:クリアファイルの変形が観察されたが許容範囲であった。
C:クリアファイルの大きな変形が観察された。
(吐出性能)
上記した各インクを用いて、上記クリアファイルの変形防止と同様に印刷を行って、その後にインクを装填した状態でインクジェットプリンタを1ヵ月間放置した。1ヵ月放置後に、上記クリアファイルの変形防止と同様に印刷を行って、1枚目の印刷物を観察し、白スジの発生状態から以下の基準で吐出性能を評価した。
A:白スジが1本以下。
B:白スジが2本〜4本。
C:白スジが5本以上。
Figure 2020152801
Figure 2020152801
Figure 2020152801
表中に示す通り、各実施例のインクでは、クリアファイルの変形を防止することができ、また、インクジェット印刷において吐出性能が良好であった。
実施例1、2、5では、1種類のエステル化合物のみを含む基剤1、2、5を用いている。基剤1、2、5は、それぞれアルコール側の炭素鎖に炭素数3の側鎖を有しており、良好な結果が得られた。実施例1、2、5から、脂肪酸側の炭素鎖の炭素数が11以上でよりよい結果となることがわかる。また、脂肪酸側の炭素鎖の炭素数が多くなるとエステル化合物の粘度が高くなり、吐出性能が低下する傾向があることがわかる。
実施例3では、実施例1の基剤1と実施例2の基剤2とを組み合わせた基剤3を用いており、良好な結果が得られた。
実施例4では、2種類の脂肪酸とアルコールとを混合して合成して、実施例3の基剤3と同じ組み合わせとなる基剤4を用いており、実施例3と同様に良好な結果が得られた。
実施例6では、基剤1のアルコール側に炭素数3の側鎖を有するエステル化合物と、アルコール側の炭素鎖において側鎖の炭素数が2であるが炭素数が少ない基剤13のエステル化合物とを組み合わせており、良好な結果が得られた。
実施例7では、基剤5のアルコール側に炭素数3の側鎖を有するエステル化合物と、アルコール側の炭素鎖において側鎖の炭素数が2であるが炭素数が少ない基剤13のエステル化合物とを組み合わせており、良好な結果が得られた。
実施例8では、基剤5のアルコール側に炭素数3の側鎖を有するエステル化合物と、アルコール側及び脂肪酸側ともに直鎖の炭素鎖であるエステル化合物とを組み合わせており、良好な結果が得られた。
各実施例を通して、2種以上のエステル化合物を用いる場合は、炭素数が2又は3である側鎖を有する化合物を組みわせることで、吐出性能が良好になることがわかる。
実施例1、9から、顔料及び顔料分散剤の種類に影響されないで、良好な結果が得られることがわかる。
比較例1は、アルコール側の炭素鎖において側鎖の炭素数が3であるが脂肪酸側の炭素鎖が21と多いエステル化合物を、比較エステル化合物と組み合わせた基剤9を用いており、基剤9が高粘度化して、吐出性能が低下した。
比較例2は、アルコール側の炭素鎖において側鎖の炭素数が1である比較エステル化合物を用いており、クリアファイルの変形が発生した。
比較例3、5は、アルコール側の炭素鎖において側鎖の炭素数が2であるが全体の炭素数が少ない比較エステル化合物を用いており、揮発しやすくなって、クリアファイルの変形が発生した。さらに、比較例3の比較エステル化合物は、脂肪酸側の炭素鎖の炭素数が少なく、吐出性能が低下した。
比較例4は、脂肪酸側の炭素鎖の炭素数が少ない比較エステル化合物を用いており、揮発しやすくなって、クリアファイルの変形が発生した。

Claims (8)

  1. 下記一般式(1)で表されるエステル化合物を油性インクジェットインク用基剤として含む、油性インクジェットインク。
    −CO−O−R 一般式(1)
    (一般式(1)において、
    は、炭素数9〜17の脂肪族炭化水素基であり、
    は、炭素数が2又は3である側鎖を有し、炭素数9〜18の脂肪族炭化水素基である。)
  2. 前記一般式(1)においてRの側鎖の炭素数が3であるエステル化合物を含む、請求項1に記載の油性インクジェットインク。
  3. 1分子の炭素数が19〜36であり、炭素数が2又は3である側鎖を有するエステル化合物を2種以上含み、前記2種以上の1分子の炭素数が19〜36であり、炭素数が2又は3である側鎖を有するエステル化合物のうち1種以上は、前記一般式(1)で表されるエステル化合物である、請求項1又は2に記載の油性インクジェットインク。
  4. 前記2種以上の1分子の炭素数が19〜36であり、炭素数が2又は3である側鎖を有するエステル化合物のうち1種以上は、前記一般式(1)においてRの側鎖の炭素数が3であるエステル化合物である、請求項3に記載の油性インクジェットインク。
  5. 前記2種以上の1分子の炭素数が19〜36であり、炭素数が2又は3である側鎖を有するエステル化合物のうち2種以上は、前記一般式(1)においてRの側鎖の炭素数が3であるエステル化合物である、請求項3に記載の油性インクジェットインク。
  6. 前記一般式(1)において、Rの炭素数が9〜14であるエステル化合物を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の油性インクジェットインク。
  7. 前記一般式(1)で表されるエステル化合物を基剤全量に対して40質量%以上含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の油性インクジェットインク。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載の油性インクジェットインク用の基剤。
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