JP2020152801A - 油性インクジェットインク、及び油性インクジェットインク用基剤 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1(特開2007−154149号公報)では、透明ファイルを大きく変形させることなく、高い吐出安定性を有するインクジェット用非水系インク組成物として、顔料と分散剤と非水系溶媒とを含有し、非水系溶媒の全重量の50%以上は、炭素数24以上36以下のエステル系溶媒であるインクを提案している。
また、高炭素数のエステル化合物であっても、エステル結合に結合する炭素鎖が直鎖であると、クリアファイルの変形防止の効果を十分に得られない傾向がある。また、エステル結合に結合する炭素鎖が炭素数1の側鎖を有する場合にも、同じような傾向がある。
さらに、クリアファイル等の樹脂製品の変形を防止する観点、及びインクジェットノズルからの吐出性能を改善する観点から、インクにより好ましく配合するための溶剤が検討されている。
R1−CO−O−R2 一般式(1)
(一般式(1)において、R1は、炭素数9〜17の脂肪族炭化水素基であり、R2は、炭素数が2又は3である側鎖を有し、炭素数9〜18の脂肪族炭化水素基である。)
本発明の他の実施形態としては、上記に記載の油性インクジェットインク用の基剤である。
R1−CO−O−R2 一般式(1)
(一般式(1)において、R1は、炭素数9〜17の脂肪族炭化水素基であり、R2は、炭素数が2又は3である側鎖を有し、炭素数9〜18の脂肪族炭化水素基である。)
クリアファイルの内側の面が印刷物と接触すると、インク成分がクリアファイルに作用して、クリアファイルの内側の面が体積変化し、クリアファイルが反り返るような変形をする場合がある。これは、クリアファイル表面の微小孔に、インク成分、特に溶剤成分が入り込み、クリアファイルを膨潤させることで顕著になると考えられる。
このエステル化合物では、アルコール側の炭素鎖R2が炭素数2又は3の側鎖を有する分岐構造を有することで、側鎖部分が立体構造となって、クリアファイル表面の微小孔に、このエステル化合物が入り込むことを防止することができる。
また、このエステル化合物は、アルコール側の炭素鎖R2において、側鎖の炭素数が2又は3であることで、比較的に低粘性でありながら高沸点であるため、インクジェットプリンタにインクを装填する場合に、インクジェットノズルからのインクの吐出性能を改善することができる。また、このエステル化合物は、比較的に高沸点であるため、インクジェットノズルからのインクの揮発を防止して、長期にわたり吐出性能の低下を防止することができる。
基剤は、主に溶剤を含む。基剤は、溶剤以外の成分を含んでもよいが、各種のインクに適用でき、また、長期の保管に適するように、溶剤を主成分として含むことが好ましく、溶剤のみからなることがより好ましい。
R1−CO−O−R2 一般式(1)
一般式(1)において、R1は、炭素数9〜17の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
R1は、飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素基であってよく、具体的には、直鎖又は分岐のアルキル基、又は直鎖又は分岐の不飽和炭化水素基であってよく、好ましくは、直鎖のアルキル基、又は直鎖の不飽和炭化水素基である。R1が分岐のアルキル基、又は分岐の不飽和炭化水素基である場合は、側鎖の炭素数は3以下が好ましく、2又は3がより好ましい。
R1の炭素数は、17以下が好ましく、15以下がより好ましく、13以下がさらに好ましい。これによって、アルコール側の炭素鎖R2がある程度の長さであることから、脂肪酸側の炭素数R1の炭素数がこの範囲であることで、溶剤が高粘度化することを防止し、インクの吐出性能をより改善することができる。
例えば、R1の炭素数は、9〜17が好ましく、10〜15がより好ましく、11〜13であってよい。
R1で表される不飽和炭化水素基としては、例えば、1個の炭素−炭素二重結合を有する一価の不飽和鎖式炭化水素基(アルケニル基)、2個の炭素−炭素二重結合を有する二価の不飽和鎖式炭化水素基、3個の炭素−炭素二重結合を有する三価の不飽和鎖式炭化水素基等が挙げられる。例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸等に由来して導入される官能基である。
R2は、飽和又は不飽和の分岐の脂肪族炭化水素基であってよく、具体的には、分岐アルキル基、又は分岐の不飽和炭化水素基であり、好ましくは、分岐アルキル基である。
R2は、炭素数が2又は3である側鎖を有することが好ましく、具体的には、側鎖としてエチル基、プロピル基、イソプロピル基を有することが好ましい。これによって、樹脂製品の変質を防止することができる。
R2は、炭素数が3である側鎖を有することがより好ましく、なかでも側鎖がプロピル基であることが好ましい。これによって、エステル化合物の分子構造が嵩高くなって、樹脂製品の変質をより防止することができる。
R2の炭素数は、18以下が好ましく、16以下がより好ましく、14以下がさらに好ましい。これによって、R2が高炭素数となって溶剤粘度が上昇することを防止し、インクの吐出性能をより改善することができる。
例えば、R2の炭素数は、9〜18が好ましく、10〜16がより好ましく、10〜14であってよい。
一般式(1)で表されるエステル化合物において、1分子中の炭素数は36以下が好ましく、30以下がより好ましく、28以下がより好ましい。高炭素数になると高粘度となることがあるため、エステル化合物の炭素数がこの範囲であることで、インクを低粘度化して、吐出性能を改善することができる。吐出性能の観点から、エステル化合物の炭素数は23以下が好ましく、22以下がより好ましい。
例えば、一般式(1)で表されるエステル化合物において、1分子中の炭素数は、19〜36が好ましく、20〜30がより好ましく、20〜28であってよい。
より具体的には、デカン酸2−プロピルヘプチル、ドデカン酸2−プロピルヘプチル、テトラデカン酸2−プロピルヘプチル、オレイン酸2−プロピルヘプチル等を好ましく用いることができる。
また、基剤は、2種以上の溶剤を含む混合溶剤であってもよく、2種以上の溶剤のうち1種以上は一般式(1)で表されるエステル化合物であることが好ましい。
基剤が2種以上の溶剤を含む混合溶剤である場合、全ての溶剤が上記した一般式(1)で表されるエステル化合物の中から選択される溶剤であってよく、又は、上記した一般式(1)で表されるエステル化合物とその他の溶剤との組み合わせであってよい。
一般式(1)で表されるエステル化合物と組み合わせるその他の溶剤としては、その他のエステル化合物、石油系炭化水素溶剤、アルコール系溶剤、脂肪酸系溶剤等、又はこれらの組み合わせであってよい。
混合溶剤として、一般式(1)で表されるエステル化合物以外のその他のエステル化合物を用いる場合では、その他のエステル化合物としては、アルコール側及び脂肪酸側の炭素鎖がいずれも直鎖状である直鎖の脂肪酸エステルであってもよく、又は、アルコール側及び脂肪酸側の炭素鎖の少なくとも一方に側鎖を有する分岐の脂肪酸エステルであってもよい。
2種以上のエステル化合物を用いる場合に、互いに異なるエステル化合物において、それぞれ側鎖の炭素数が2又は3であることで、分子構造が似ていることから、混合溶剤の粘度が低下する傾向があり、インクにおいて吐出性能の改善により役立つことができる。
2種以上のエステル化合物を用いる場合において、一般式(1)で表されるエステル化合物として、一般式(1)で表されるエステル化合物においてR2の側鎖の炭素数が3であるエステル化合物を1種以上含むことが好ましく、2種以上含むことがより好ましい。
さらに、2種以上のエステル化合物を用いる場合において、全てのエステル化合物が一般式(1)で表されるエステル化合物であることが好ましく、なかでも、全てのエステル化合物が一般式(1)で表されるエステル化合物においてR2の側鎖の炭素数が3であるエステル化合物であることが好ましい。
2種以上のエステル化合物を用いる場合に、2種以上のエステル化合物は、それぞれ1分子の炭素数が36以下が好ましく、30以下がより好ましく、28以下がさらに好ましい。これによって、エステル化合物の高粘度化を抑制して、インクにおいて吐出性能をより改善することができる。
例えば、2種以上のエステル化合物を用いる場合に、2種以上のエステル化合物は、それぞれ1分子の炭素数が19〜36が好ましく、20〜30がより好ましく、20〜28であってよい。
クリアファイル変形を防止する観点から、その他の溶剤による影響を排除するために、一般式(1)で表されるエステル化合物は、基剤全量に対し、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、例えば、90質量%以上であってもよく、さらに100質量%であってもよい。
また、その他のエステル化合物は、基剤全量に対し、60質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。この範囲で、一般式(1)で表されるエステル化合物との配合割合がより好ましい範囲となって、樹脂製品の変質防止と吐出性能とをよりバランスよく改善することができる。
一般式(1)で表されるエステル化合物は、インク全量に対し、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。これによって、樹脂製品の変質をより防止することができる。
一般式(1)で表されるエステル化合物は、アルコールと脂肪酸とを反応させて得ることができる。原料のアルコールに炭素数2又は3の側鎖を有し、炭素数が9以上であるアルコール等を用いることができる。また、ヒドロキシ基が3位に位置し、炭素数が9以上である2級アルコール、ヒドロキシ基が4位に位置し、炭素数が9以上である2級アルコール等を用いることができる。
反応温度は、脂肪酸及びアルコールの種類に応じて80〜230℃の範囲で調節することができる。反応時間は、脂肪酸及びアルコールの種類や、原料の使用量に応じて1〜48時間の範囲で調節することができる。エステル化反応に際して生成する水分を除去することが好ましい。
脂肪酸とアルコールとは、モル比で1:1で反応させることが好ましい。
反応に際して、触媒を適量で用いてもよい。触媒としては、例えば、濃硫酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の酸触媒;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ触媒、アルミニウムテトライソプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド等のルイス酸触媒等が挙げられる。
また、1種のアルコールと1種の脂肪酸とを用いてエステル化合物を合成し、合成後に、2種以上のエステル化合物を混合することで、2種以上のエステル化合物を含む混合溶剤である基剤を作製することも可能である。
その他の非水系溶剤としては、非極性有機溶剤及び極性有機溶剤のいずれも使用できる。なお、一実施形態において、非水系溶剤には、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合しない非水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
その他の非水系溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤等の石油系炭化水素溶剤等の非極性有機溶剤;高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等の極性有機溶剤等が挙げられる。
その他の非水系溶剤の中で高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等の極性有機溶剤の沸点は、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましい。なお、沸点が250℃以上の非水系溶剤には、沸点を示さない非水系溶剤も含まれる。
顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料;及び、カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、銅フタロシアニン顔料等の金属フタロシアニン顔料、及び無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの顔料は単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
顔料は、インク全量に対し、通常0.01〜20質量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から、1〜15質量%であることが好ましく、4〜10質量%であることが一層好ましい。
顔料分散剤としては、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、ビニルピロリドンと長鎖アルケンとの共重合体、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリエステルポリアミン等が好ましく用いられる。
油溶性染料としては、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料等を挙げることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用してもよい。
染料は、インク全量に対し、通常0.01〜20質量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から、1〜15質量%であることが好ましく、4〜10質量%であることが一層好ましい。
一実施形態によるインクは、クリアファイルの変形を防止しながら、低粘性でインクジェットノズルからの吐出に適するため、常温(23℃)付近で適性に吐出することが可能である。
以下の手順にしたがって、基剤1〜13としてエステル化合物を用意した。基剤1〜13のエステル化合物の詳細について表1に示す。基剤のエステル化合物(R1−CO−O−R2)において、R1の炭素数、R2の炭素数、R2の側鎖の炭素数を表中に示す。また、2種類のエステル化合物を含む基剤について、エステル化合物の質量比を表中に示す。
以下の説明において、特に説明のない成分については、花王株式会社又は東京化成工業株式会社から入手することができる。
攪拌翼、ディーンスタークトラップ、窒素導入管及び流量計を備えた3Lの四つ口フラスコ中に、デカン酸を700g(4.07モル)、2−プロピル−1−ヘプタノールを770g(4.87モル)、パラトルエンスルホン酸を5g、トルエンを800mlで仕込み、窒素雰囲気下、13時間還流させたところ、73mlの水が流出した。室温まで冷却後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、さらに水洗、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、エバポレーターでトルエンを留去し、さらに未反応アルコールを留去後、40Pa以下の減圧下、単蒸留により180〜210℃の留分を集め、1200gの無色透明オイルとしてデカン酸2−プロピルへプチルを得た。収率は95%であった。ガスクロマトグラフ分析により純度は99.6%であった。
デカン酸の代わりにドデカン酸を用いた他は、上記基剤1と同様にして、ドデカン酸2−プロピルヘプチルを得た。なお、脂肪酸とアルコールのモル比は、上記基剤1と同様になるようにした。
上記基剤1のデカン酸2−プロピルヘプチルと、上記基剤2のドデカン酸2−プロピルヘプチルとを質量比で1:1で混合し、基剤3を得た。
攪拌翼、ディーンスタークトラップ、窒素導入管及び流量計を備えた1Lの四つ口フラスコ中に、デカン酸を191g(1.115モル)、ドデカン酸を68g(0.34モル)及び2−プロピル−1−ヘプタノールを275g(1.74モル)、チタンテトライソプロポキシドを0.26gで仕込み、100℃に昇温させ、溶解させた。その後、2時間かけて200℃まで昇温、さらに水に流出が無くなるまで2時間反応を続けた。留出した水量は26mlとなった。次いで反応溶液を70℃まで冷却した、水10mlを加えて30分攪拌したところ、白色固体が析出した。再度170℃まで昇温し、系中に窒素及び蒸気を吹き込みながら1kPaの減圧下、過剰の未反応アルコールを留去した。アルコールの留出が無くなってからさらに2時間を保ち、その後70℃まで冷却した。吸着剤(キョ―ワード)及び濾過助剤(ラジオライト)をそれぞれ10gで加えて30分攪拌した後、メンブランフィルター濾過(目開き0.2μm)により吸着剤及び濾過助剤を除去し、480gの混合脂肪酸エステルを無色透明オイルとして得た。ガスクロマトグラフ分析により純度は99.9%以上であった。
得られた混合脂肪酸エステルは、デカン酸2−プロピルヘプチルとドデカン酸2−プロピルヘプチルとを質量比で約3:1で含んだ(表中では質量比3:1と示す)。
デカン酸の代わりにオレイン酸を用いた他は、上記基剤1と同様にして、ドデカン酸2−プロピルヘプチルを得た。なお、脂肪酸とアルコールのモル比は、上記基剤1と同様になるようにした。
(基剤6:デカン酸2−プロピルヘプチルとドデカン酸2−エチルヘキシル(3:1))
上記基剤1のデカン酸2−プロピルヘプチルと、後述する基剤13のドデカン酸2−エチルヘキシルとを質量比で3:1で混合し、基剤6を得た。
(基剤7:ドデカン酸2−エチルヘキシルとオレイン酸2−プロピルヘプチル(6:4))
後述する基剤13のドデカン酸2−エチルヘキシルと、上記基剤5のオレイン酸2−プロピルヘプチルとを質量比で6:4で混合し、基剤7を得た。
(基剤8:ドデカン酸オクチルとオレイン酸2−プロピルヘプチル(6:4))
ドデカン酸オクチルと、上記基剤5のオレイン酸2−プロピルヘプチルとを質量比で6:4で混合し、基剤7を得た。
ドデカン酸オクチルは、デカン酸の代わりにドデカン酸を用い、また、2−プロピル−1−ヘプタノールの代わりにn−オクタノールを用いた他は、上記基剤1と同様にして、ドデカン酸オクチルを得た。
攪拌翼、ディーンスタークトラップ、窒素導入管及び流量計を備えた1Lの四つ口フラスコ中に、ベヘン酸(花王株式会社製「ルナックBA」)を80g(0.25モル)、2‐プロピル−1−ヘプタノールを60g(0.38モル)、パラトルエンスルホン酸を2g、トルエンを500mlで仕込み、窒素雰囲気下、6時間還流させたところ、約5mlの水が流出した。室温まで冷却後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。さらに水洗、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、トルエン及び未反応アルコールを留去し、ベヘン酸2‐プロピルへプチルを粘ちょうな淡黄色透明オイルとして得た。これをさらに50℃に加温し、攪拌しながら同質量のイソノナン酸イソトリデシルで希釈混合し、基剤9とした。
イソノナン酸イソトリデシルは、基剤10と同様のものを用いた。
イソノナン酸イソトリデシルは、高級アルコール工業株式会社より入手した。
(基剤11:デカン酸2−エチルヘキシル)
2−プロピル−1−ヘプタノールの代わりに2−エチル−1−ヘキサノールを用いた他は、上記基剤1と同様にして、デカン酸2−エチルヘキシルを得た。なお、脂肪酸とアルコールのモル比は、上記基剤1と同様になるようにした。
(基剤12:ノナン酸2−プロピルヘプチル)
デカン酸の代わりにノナン酸を用いた他は、上記基剤1と同様にして、ノナン酸2−プロピルヘプチルを得た。なお、脂肪酸とアルコールのモル比は、上記基剤1と同様になるようにした。
(基剤13:ドデカン酸2−エチルヘキシル)
デカン酸の代わりにドデカン酸を用い、また、2−プロピル−1−ヘプタノールの代わりに2−エチル−1−ヘキサノールを用いた他は、上記基剤1と同様にして、ドデカン酸2−エチルヘキシルを得た。なお、脂肪酸とアルコールのモル比は、上記基剤1と同様になるようにした。
インクの処方を表2〜表4に示す。基剤のエステル化合物について、R1−CO−O−R2において、R1の炭素数、R2の炭素数、R2の側鎖の炭素数を各表に示す。また、2種類のエステル化合物を含む基剤について、エステル化合物の質量比を各表に示す。
各表に示す配合量にしたがって、顔料、顔料分散剤、及び基剤を混合し、ビーズミル「ダイノーミルKDL−A」(株式会社シンマルエンタープライゼス製)により滞留時間15分間の条件で、十分に顔料を分散した。続いて、メンブレンフィルターで粗大粒子を除去し、インクを得た。
カーボンブラック「MA77」:三菱ケミカル株式会社製「MA77」。
カーボンブラック「NEROX500」:エボニックジャパン株式会社製「NEROX500」。
ソルスパース18000(有効成分100%):日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース18000」、有効成分100質量%。
ソルスパース13940(有効成分40%):日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース13940」、有効成分40質量%。
上記実施例及び比較例のインクについて、以下の方法により評価を行った。これらの評価結果を表2〜表4に示す。
上記した各インクをライン式インクジェットプリンタ「オルフィスFW5230」(理想科学工業株式会社製)に装填し、普通紙「理想用紙マルチ」(理想科学工業株式会社製)に、ベタ画像を印刷した。
なお、「オルフィスFW5230」は、ライン型インクジェットヘッドを使用し、主走査方向(ノズルが並んでいる方向)に直交する副走査方向に用紙を搬送して印刷を行うシステムである。
得られた印刷物10枚をプラス株式会社製クリアファイル「FL−183HO 88−149」に挟み、室温にて3日間放置した。その後、クリアファイルの変形防止を以下の基準で評価した。
A:クリアファイルの変形がわずかに観察された。
B:クリアファイルの変形が観察されたが許容範囲であった。
C:クリアファイルの大きな変形が観察された。
上記した各インクを用いて、上記クリアファイルの変形防止と同様に印刷を行って、その後にインクを装填した状態でインクジェットプリンタを1ヵ月間放置した。1ヵ月放置後に、上記クリアファイルの変形防止と同様に印刷を行って、1枚目の印刷物を観察し、白スジの発生状態から以下の基準で吐出性能を評価した。
A:白スジが1本以下。
B:白スジが2本〜4本。
C:白スジが5本以上。
実施例1、2、5では、1種類のエステル化合物のみを含む基剤1、2、5を用いている。基剤1、2、5は、それぞれアルコール側の炭素鎖に炭素数3の側鎖を有しており、良好な結果が得られた。実施例1、2、5から、脂肪酸側の炭素鎖の炭素数が11以上でよりよい結果となることがわかる。また、脂肪酸側の炭素鎖の炭素数が多くなるとエステル化合物の粘度が高くなり、吐出性能が低下する傾向があることがわかる。
実施例4では、2種類の脂肪酸とアルコールとを混合して合成して、実施例3の基剤3と同じ組み合わせとなる基剤4を用いており、実施例3と同様に良好な結果が得られた。
実施例7では、基剤5のアルコール側に炭素数3の側鎖を有するエステル化合物と、アルコール側の炭素鎖において側鎖の炭素数が2であるが炭素数が少ない基剤13のエステル化合物とを組み合わせており、良好な結果が得られた。
実施例8では、基剤5のアルコール側に炭素数3の側鎖を有するエステル化合物と、アルコール側及び脂肪酸側ともに直鎖の炭素鎖であるエステル化合物とを組み合わせており、良好な結果が得られた。
各実施例を通して、2種以上のエステル化合物を用いる場合は、炭素数が2又は3である側鎖を有する化合物を組みわせることで、吐出性能が良好になることがわかる。
実施例1、9から、顔料及び顔料分散剤の種類に影響されないで、良好な結果が得られることがわかる。
比較例2は、アルコール側の炭素鎖において側鎖の炭素数が1である比較エステル化合物を用いており、クリアファイルの変形が発生した。
比較例3、5は、アルコール側の炭素鎖において側鎖の炭素数が2であるが全体の炭素数が少ない比較エステル化合物を用いており、揮発しやすくなって、クリアファイルの変形が発生した。さらに、比較例3の比較エステル化合物は、脂肪酸側の炭素鎖の炭素数が少なく、吐出性能が低下した。
比較例4は、脂肪酸側の炭素鎖の炭素数が少ない比較エステル化合物を用いており、揮発しやすくなって、クリアファイルの変形が発生した。
Claims (8)
- 下記一般式(1)で表されるエステル化合物を油性インクジェットインク用基剤として含む、油性インクジェットインク。
R1−CO−O−R2 一般式(1)
(一般式(1)において、
R1は、炭素数9〜17の脂肪族炭化水素基であり、
R2は、炭素数が2又は3である側鎖を有し、炭素数9〜18の脂肪族炭化水素基である。) - 前記一般式(1)においてR2の側鎖の炭素数が3であるエステル化合物を含む、請求項1に記載の油性インクジェットインク。
- 1分子の炭素数が19〜36であり、炭素数が2又は3である側鎖を有するエステル化合物を2種以上含み、前記2種以上の1分子の炭素数が19〜36であり、炭素数が2又は3である側鎖を有するエステル化合物のうち1種以上は、前記一般式(1)で表されるエステル化合物である、請求項1又は2に記載の油性インクジェットインク。
- 前記2種以上の1分子の炭素数が19〜36であり、炭素数が2又は3である側鎖を有するエステル化合物のうち1種以上は、前記一般式(1)においてR2の側鎖の炭素数が3であるエステル化合物である、請求項3に記載の油性インクジェットインク。
- 前記2種以上の1分子の炭素数が19〜36であり、炭素数が2又は3である側鎖を有するエステル化合物のうち2種以上は、前記一般式(1)においてR2の側鎖の炭素数が3であるエステル化合物である、請求項3に記載の油性インクジェットインク。
- 前記一般式(1)において、R2の炭素数が9〜14であるエステル化合物を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の油性インクジェットインク。
- 前記一般式(1)で表されるエステル化合物を基剤全量に対して40質量%以上含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の油性インクジェットインク。
- 請求項1から7のいずれか1項に記載の油性インクジェットインク用の基剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019052120A JP7285666B2 (ja) | 2019-03-20 | 2019-03-20 | 油性インクジェットインク、及び油性インクジェットインク用基剤 |
Applications Claiming Priority (1)
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