JP6707849B2 - インクジェット記録方法 - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット記録方法に関する。
従来より、インクジェット記録方式を利用した記録に用いるインクジェットインク(以下、「インク」ともいう。)を吐出するためのプリントヘッドとして、様々な形態のプリントヘッドが開発され、使用されている。また、インク低吸収性または非吸収性の記録媒体に記録するための、さまざまな溶剤構成による溶剤系インクが開発されている。
例えば、特許文献1には、塩化ビニル系樹脂の表面に、耐水性、耐光性、耐摩擦性等に優れた画像や文字を印刷することができる溶剤系インクを提供するために、着色剤と、樹脂と、非プロトン性極性有機溶媒と、グリコールエーテル系溶剤とを併用する溶剤系インクが開示されている。また、特許文献2には、印刷濃度を高く、裏抜けを抑制して画像性を向上させ、さらに、吐出安定性の良好な非水系インクジェットインクを提供することを目的とした、顔料と炭化水素系溶剤とを含む非水系インクが開示されている。さらに、特許文献3には、構造を簡略化し、製造コストを低減したインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置が開示されている。
特開2008−208171号公報 特開2013−71978号公報 特開2003−231254号公報
しかしながら、上記した溶剤系インクおよび非水系インクは低沸点で乾燥しやすい傾向にあるため、特許文献3に記載されたような、ノズルと圧力室とが直接接続された構造のヘッドを用いてインクを吐出させると、ノズル面からインクの乾燥が進みやすく、目詰まり等が発生して吐出安定性に劣る場合がある。
このため、吐出安定性に優れたインクジェット記録方法を得るためにインク組成物中の固形分量を減らすと、得られた画像の画質が劣ったり、耐擦性や表面乾燥性等の印刷特性が劣る場合がある。
そこで、本発明に係る幾つかの態様は、上述の課題の少なくとも一部を解決することで、インクジェット方式で記録媒体に溶剤系インクが付与される際に、吐出安定性に優れると共に、耐擦性や表面乾燥性等の印刷特性に優れた記録物が得られるインクジェット記録方法を提供するものである。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明に係るインクジェット記録方法の一態様は、
インク組成物を吐出するノズルと、前記インク組成物に圧力を付与して前記ノズルから
吐出させる圧力室と、前記圧力室と前記ノズルとを接続する接続部と、を備え、前記圧力室の圧力室からノズル側へインクが流出する部分から前記ノズルまでの接続部の距離が500μm以上であるプリントヘッドを用いて、前記インク組成物を吐出して記録媒体に付着させるインク付着工程を備え、
前記インク組成物は、色材と、下記一般式(1)で表される溶剤をインク組成物の全質量に対し30質量%以上と、を含む溶剤系インクジェットインク組成物であることを特徴とする。
O−(RO)−R・・・・・(1)
(一般式(1)中、R及びRは、各々独立して水素又は炭素数1以上5以下のアルキル基を表す。ただし、R及びRの少なくとも何れかは、炭素数1以上5以下のアルキル基である。Rは炭素数2以上4以下のアルキレン基を表す。nは1〜6の整数を表す。)
適用例1のインクジェット記録方法によれば、インクジェット方式で記録媒体に溶剤系インクが付与される際に、ノズル面からインクの乾燥が進むことを防止することにより吐出安定性に優れるインクジェット記録方法を提供することができる。また、インク付着の際の吐出安定性が確保できるため、インク組成物中の固形分量を増やすことが可能であり、耐擦性や表面乾燥性等の印刷特性に優れた記録物が得られるインクジェット記録方法を提供することができる。
[適用例2]
上記適用例において、
前記インク組成物が、前記一般式(1)で表される溶剤を50質量%以上含むことができる。
[適用例3]
上記適用例において、
前記インク組成物が、さらに、溶剤としてラクトンを含むことができる。
[適用例4]
上記適用例において、
前記インク組成物が、さらに、定着樹脂を含むことができる。
[適用例5]
上記適用例において、
前記インク組成物が、さらに、前記一般式(1)で表される溶剤として、R及びRのいずれか一方が水素であるアルキレングリコールモノエーテル化合物を含むことができる。
[適用例6]
上記適用例において、
前記インク組成物が、前記一般式(1)で表される化合物である溶剤として、引火点が70℃以下の化合物を1種以上含むことができる。
[適用例7]
上記適用例において、
前記プリントヘッドは前記インク組成物を吐出する複数のノズルを列状に備え、列方向におけるノズル密度が200dpi以上であることができる。
[適用例8]
上記適用例において、
1回の吐出あたりのインク吐出量が、30ng以下であることができる。
[適用例9]
上記適用例において、
前記インク付着工程の際に、前記記録媒体の表面温度が30℃以上となるように前記記録媒体を加熱する加熱工程を備えることができる。
実施形態に係るインクジェット記録装置の概略斜視図。 実施形態に係るヘッドを模式的に示す分解斜視図。 実施形態に係るヘッドの要部の断面の模式図。 比較例で用いたヘッドの要部の断面の模式図。
以下に本発明の幾つかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
1.インクジェット記録方法
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法は、インク組成物を吐出するノズルと、前記インク組成物に圧力を付与して前記ノズルから吐出させる圧力室と、前記圧力室と前記ノズルとを接続する接続部と、を備え、前記圧力室の圧力室からノズル側へインクが流出する部分から前記ノズルまでの接続部の距離が500μm以上であるプリントヘッドを用いて、前記インク組成物を吐出して記録媒体に付着させるインク付着工程を備え、前記インク組成物は、色材と、下記一般式(1)で表される溶剤をインク組成物の全質量に対し30質量%以上と、を含む溶剤系インクジェットインク組成物である。
O−(RO)−R・・・・・(1)
(一般式(1)中、R及びRは、各々独立して水素又は炭素数1以上5以下のアルキル基を表す。ただし、R及びRの少なくとも何れかは、炭素数1以上5以下のアルキル基である。Rは炭素数2以上4以下のアルキレン基を表す。nは1〜6の整数を表す。)
以下、本実施形態に係るインクジェット記録方法について、これを実施可能なインクジェット記録装置の構成、インク組成物の順に説明した上で、その工程を詳細に説明する。
1.1.装置構成
本実施形態に用いるインクジェット記録装置は、上述のように、インク組成物を吐出するノズルと、前記インク組成物に圧力を付与して前記ノズルから吐出させる圧力室と、前記圧力室と前記ノズルとを接続する接続部と、を備え、前記圧力室の圧力室からノズル側へインクが流出する部分から前記ノズルまでの接続部の距離が500μm以上であるプリントヘッドを備えている。
以下、本実施形態に用いるインクジェット記録装置について、インクカートリッジがキャリッジに搭載されたオンキャリッジタイプのプリンターを例に挙げて説明するが、本実施形態に用いるインクジェット記録装置は、オンキャリッジタイプのプリンターであることに限定されるものではなく、インクカートリッジがキャリッジに搭載されないで外部に固定された、オフキャリッジタイプのプリンターであってもよい。
また、以下の説明に用いるプリンターは、所定の方向に移動するキャリッジにプリントヘッドが搭載されており、キャリッジの移動に伴ってヘッドが移動することにより記録媒体上に液滴を吐出するシリアルプリンターであるが、シリアルプリンターに限定されるものではなく、ヘッドが記録媒体の幅よりも広く形成され、プリントヘッドが移動せずに記録媒体上に液滴を吐出するラインプリンターであってもよい。
以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本実施形態に用いるインクジェット記録装置の一例であるプリンター200を示す概略斜視図であり、プリンター200は記録媒体Pにインクジェット記録する。
図1に示すように、プリンター200は、プリントヘッド100と、プリントヘッド100を搭載するとともにインクカートリッジ231を着脱可能に装着するキャリッジ232と、キャリッジ232を媒体幅方向に往復移動させる主走査機構235と、記録媒体Pを媒体送り方向に移送するプラテンローラー236と、を有する。プリンター200は、当該プリンター200全体の動作を制御する制御部(図示せず)を更に有する。ここにおいて、媒体幅方向とは、主走査方向(ヘッド走査方向)であり、媒体送り方向とは、副走査方向(主走査方向に直交する方向)である。
主走査機構235は、キャリッジ232に接続されたタイミングベルト238と、タイミングベルト238を駆動するモーター239と、主走査方向に架設された支持部材であるガイド軸240と、を備える。キャリッジ232は、タイミングベルト238を介してモーター239によって駆動され、ガイド軸240に沿って主走査方向に往復移動するものである。この往復移動の際に、プリントヘッド100から所定のタイミングでインクが吐出され、記録媒体Pへの印刷が行われる。
ヘッドユニット230は、プリントヘッド100から構成されるインクジェット式記録ヘッド(以下単に「ヘッド」あるいは「プリントヘッド」ともいう)を有する。ヘッドユニット230は、さらに、プリントヘッド100にインクを供給するインクカートリッジ231と、プリントヘッド100及びインクカートリッジ231を搭載した運搬部(キャリッジ)232とを備える。
本実施形態では、プリントヘッド100及び記録媒体Pがいずれも移動しながら印刷が行われる例を示しているが、プリンター200は、プリントヘッド100及び記録媒体Pが互いに相対的に位置を変えて記録媒体Pに印刷される機構であればよい。
なお、例示しているプリンター200は、1つのプリントヘッド100を有し、このプリントヘッド100によって、記録媒体Pに印刷を行うことができるものであるが、複数のプリントヘッドを有してもよい。プリンター200が複数のプリントヘッドを有する場合には、複数のプリントヘッドは、それぞれ独立して上述のように動作されてもよいし、複数のプリントヘッドが互いに連結されて、1つの集合したヘッドとなっていてもよい。このような集合となったヘッドとしては、例えば、複数のヘッドのそれぞれのノズル孔が全体として均一な間隔を有するような、ライン型のヘッドを挙げることができる。
1.1.1.プリントヘッド
図2は、プリンター200におけるプリントヘッド100を模式的に示す分解斜視図であり、図1に示したプリンター200に搭載される状態とは上下を逆に示したものである。図3は、プリントヘッド100の要部の断面の模式図であり、インクの吐出動作の際のインク供給室40からノズル孔12までのインクの流れを、破線矢印で模式的に示してあ
る。
なお、図2及び図3では、圧電素子32は簡略化して図示されている。また、本実施形態ではプリントヘッド100は連通板110とカバー150を備える構成であるが、図2では省略されている。
図2に示すように、プリントヘッド100は、記録媒体Pと対向する面に複数のノズル孔12を有するノズルプレート10と、ノズルプレート10に形成された複数のノズル孔12のそれぞれに連通する複数の圧力室20と、複数の圧力室20のそれぞれの容積を変化させる振動板30と、複数の圧力室20にインクを供給するインク供給室40と、筐体130を備える。
ノズルプレート10は、インクを吐出するための複数のノズル孔12を有し、これらの複数のノズル孔12は列状に配列されており、ノズルプレート10表面にノズル面13が形成されている。ノズルプレート10に設けられるノズル孔12の数は、特に限定されない。本実施形態で用いられるプリントヘッド100では、ノズル孔12の列方向におけるノズル密度は、200dpi以上であることが好ましい。すなわち、配列されたノズル孔12の隣り合うノズル孔12の間隔は、127μm以下であることが好ましい。ノズル密度を200dpi以上とすることにより、液滴を微小化した場合であっても、総インク打ち込み量を維持することができ、画像の隠蔽性を維持することができる。より好ましくは、ノズル密度は240dpi以上であり、さらに好ましくは250dpi以上、より好ましくは300dpi以上、さらに好ましくは400dpi以上、もっとも好ましくは500dpi以上である。ノズル密度の上限値は、好ましくは2000dpi以下であり、より好ましくは1000dpi以下である。
ノズルプレート10の材質としては、例えば、シリコン、ステンレス鋼(SUS)等を挙げることができる。また、ノズルプレート10の材質としては、鉄(Fe)を主成分(50%以上)として、クロム(Cr)を10.5%以上含む合金であると、剛性や錆び難さを両立できるためより好ましい。ノズルプレート10の厚みは特に限定されないが、例えば、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは1μm以上10μm以下である。
プリントヘッド100は、圧力室20を形成するための圧力室基板120を備え、圧力室基板120の材質としては、例えば、シリコン等が挙げられる。図3に示すように、圧力室基板120は、ノズルプレート10との間に流路形成基板としての連通板110を備える。連通板110がノズルプレート10と圧力室基板120との間の空間を区画することにより、インク供給室40(液体貯留部)と、インク供給室40と連通する供給口126と、供給口126と連通する圧力室20と、が形成される。すなわち、インク供給室40、供給口126及び圧力室20は、ノズルプレート10、連通板110、圧力室基板120及び振動板30とによって区画されている。
連通板110は、圧力室20からノズル孔12に連通する連通孔127を有する。連通板110がノズルプレート10と接触する面に形成された連通孔127の端部には、インクの吐出口128が形成されている。吐出口128は、ノズルプレート10に形成されたノズル孔12と連通している。
振動板30は圧力室基板120に接して設けられ、振動板30に接して圧電素子32が形成されている。圧電素子32は、圧電素子駆動回路(図示せず)に電気的に接続され、圧電素子駆動回路の信号に基づいて動作(振動、変形)することができる。振動板30は、圧電素子32の動作によって変形し、圧力室20の容積を変化させることで圧力室20
の内部圧力を変化させることができる。圧電素子32としては、特に限定されないが、例えば、電圧を印加することによって変形を生じる種の素子(電気機械変換素子)を挙げることができる。このように、本実施形態では、圧電素子32と振動板30とによって圧電アクチュエーター34が構成されている。
なお、この例では、圧力室20は、連通板110、圧力室基板120及び振動板30によって区画されているが、圧力室20は、振動板30の振動によって容積が変化され得る限り、適宜の部材によって形成されることができ、そのための部材の数、形状、材質等は任意である。また、振動板30は、圧電素子32を構成する電極(例えば、Pt等で形成される。)と一体的であってもよい。
本実施形態で用いられるプリントヘッド100は、ノズル孔12間の間隔が127μm以下であるため、圧電素子32としては、2つの電極の間に圧電材料が配置された構成であることが好ましい。すなわち、圧電アクチュエーター34は、例えば、振動板30に対して、一方の電極、圧電材料(例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛))の層、及び他方の電極が順次積層された全体として薄膜状の態様であることが好ましい。
振動板30の材質についても特に限定されないが、例えば、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、酸化窒化シリコン(SiON)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO)、炭化ケイ素(SiC)、及びそれらの材質からなる層の積層体等を挙げることができる。振動板30の材質としては、ヤング率が250Gpa以下のものが、変位を大きくできる点、及び破損を生じにくい点でより好ましく、例えば、ZrO(150GPa)、SiO(75GPa)、Si(130GPa)、SUS(199GPa)、Cr(248GPa)を含んで形成されることがより好ましい(括弧内はヤング率)。また、圧電素子32の電極がPtで形成され、振動板30と一体的に積層されている場合には、ヤング率はPtが168GPa、ZrOが150GPaであるため、組み合わせても250GPa以下となるためそのように構成してもよい。
なお、本明細書において、ヤング率とは、静的試験(JIS G0567J等、機械的試験)で測定されるヤング率を指し、例えば、II−6号試験片を用いて測定される。
更に、プリントヘッド100は、インク流路の一部を形成する部材として、コンプライアンスシート140と、圧電素子32を収容するカバー150を備える。コンプライアンスシート140は、連通板110との間に、インク供給室40と連通する供給口126を形成する。また、コンプライアンスシート140は可撓性の弾性膜であり、インクの吐出や流通のためのダンパーとしての機能や、インクの体積が膨張した場合に、変形することによってプリントヘッド100の破損を抑制する機能を有している。
コンプライアンスシート140は、弾性を有する膜であれば特に限定されないが、例えば、高分子膜、薄膜にした金属、ガラスファイバー、カーボンファイバー等が用いられる。高分子膜の材質としては、特に限定されないが、ポリイミド、ナイロン、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイト等が挙げられ、ポリフェニレンスルファイトで形成されることがより好ましい。また、金属としては、例えば、鉄やアルミニウムを含む材料が挙げられる。
コンプライアンスシート140の厚みは、特に限定されないが、例えば、50μm以下が好ましく、より好ましく20μm以下、さらに好ましくは1μm以上10μm以下である。コンプライアンスシート140は、薄膜にしすぎるとインク吐出時に振動が大きくなり、残留振動が多く発生する場合がある。
本実施形態では、インク供給室40、供給口126、圧力室20および連通孔127を区別して説明しているが、これらはいずれも液体の流路であって、圧力室20が形成される限り、流路はどのように設計されても構わない。例えば、図示の例では供給口126として、流路の一部が狭窄された形状を有しているが、そのような流路の拡大縮小は、設計にしたがって任意に形成することができ、また必ずしも必須の構成ではない。
上記構成によって形成される圧力室20は、連通板110と、圧力室基板120と、振動板30とによって区画される空間であり、供給口126、連通孔127、吐出口128及びノズル孔12を含まない空間のことをいう。つまり、振動板30、圧力室基板120、連通板110等のインクに圧力を付与する部分(圧力室20の壁の変形や発熱する部分)と対向する空間、および、該空間に隣接し、インクが移動する方向に対する断面の断面積が該空間と等しい空間を圧力室20とし、圧力室20の容積はこの容積である。このように、圧力室20は、振動板30の変位によって容積が変化する空間であり、係る空間に連通する狭窄された流路等を含まない空間と定義する。
上記したように、連通孔127は圧力室20からノズル孔12に連通している。本実施形態においては、圧力室からノズル側へインクが流出する部分からノズルまでの部分、すなわち、図3の例では、連通孔127、ノズル孔12、及びこれらを接続する全ての部分、を接続部132と定義する。したがって、接続部132の距離とは、図3の例では、接続部132が連通板110の厚み方向と平行に貫通するように設けられているので、連通板110の厚み方向の長さd1とノズルプレート10の厚み方向の長さd2の和に等しくなる。
本実施形態では、連通板110の厚み方向の長さd1とノズルプレート10の厚み方向の長さd2の長さの和、つまり、d1+d2が500μm以上である。このように、接続部132の距離が長い構成とすることにより、ノズル面13からインクの乾燥が進むことを防止でき、吐出安定性を確保することができる。これにより、インク組成物中の固形分の含有量を増加することが可能となり、発色性に優れると共に、耐擦性や表面乾燥性等の印刷特性に優れた記録物が得られる。
なお、図3に示す例では、ノズルプレート10と連通板110が積層され、ノズル孔12及び連通孔127が異なる部材により形成されているが、ノズルプレートと連通板が単一の部材で形成されていてもよい。ノズルプレートと連通板が単一の部材で形成されている場合においても、接続部132は、圧力室からノズル側へインクが流出する部分からノズルまでの部分となる。この場合においても、接続部の距離が500μm以上であることにより、ノズル面からインクの乾燥が進むことを防止できる。
接続部132の距離は、500μm以上3000μm以下であることが好ましく、700μm以上2500μm以下であることがより好ましく、更には900μm以上1500μm以下であることが好ましい。なお、連通孔がノズルプレート10に対して斜めに伸びている場合にも、連通孔の長さは連通孔に沿った長さであり、この場合には連通板110の厚み方向の長さd1よりも長くなる。つまり、圧力室20と連通孔の境界から連通孔の中を通ってノズル孔12までに到る最短の距離が連通孔の長さとなり、接続部の距離は、この連通孔の長さに、ノズル孔12及びこれらを接続する全ての部分の長さを足した長さとなる。
圧力室の1つ当たりの圧力室および接続部の容積の合計、つまり、本実施形態において、圧力室20と連通孔127とノズル孔12の容積の合計は、4200pl以上6200pl以下であることが好ましく、4500pl以上5500pl以下であることがより好ましい。この場合には、よりノズル面13からインクの乾燥が進むことを防止することが
できる。
この場合において、圧力室20の1つ当たりの容積が3700pl以下であることが好ましく、3500pl以下であることがより好ましい。更に好ましくは3300pl以下であり、より好ましくは3000pl以下である。圧力室20の1つ当たりの容積の下限値は、好ましくは1500pl以上であり、より好ましくは2000pl以上である。圧力室20の容積が3700pl以下であることにより、連通孔127の容積を充分に確保することができるため、ノズル面13からインクの乾燥が進むことを効果的に防止することができる。
インク供給室40は、外部(例えばインクカートリッジ)から、振動板30に設けられた貫通孔129を通じて供給されるインクを一時貯留することができる。インク供給室40内のインクは、供給口126を介して、圧力室20に供給されることができる。圧力室20は、振動板30の変形により容積が変化する。圧力室20は連通孔127を介してノズル孔12と連通しており、圧力室20の容積が変化することによって、ノズル孔12からインクが吐出されたり、インク供給室40から圧力室20にインクが導入されたりすることができる。ここで、ノズル孔12のノズル径は、画質を優れたものにする点や、間欠性の確保の点で、好ましくは5μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上60μm以下であり、さらに好ましくは10μm以上40μm以下である。
筐体130は、図2に示すように、ノズルプレート10、圧力室基板120及び圧電素子32を収納することができる。筐体130の材質としては、例えば、樹脂、金属等を挙げることができる。筐体130は、圧電素子32を外部環境から隔てる機能を有してもよい。また、筐体130には、不活性ガス等が封入されたり、筐体130内が減圧されてもよく、これにより、圧電材料の劣化等を抑制することができる。
カバー150は、筐体130とは別部材として構成されている。カバー150は、振動板30に接して設けられ、圧電素子32を収容する空間を形成し、圧電素子32を当該空間に収納している。カバー150の材質は、上述の筐体130の材質と同様である。上記筐体130は圧電素子32を覆うカバーとなっているが、カバー150は圧電素子32を外部環境から隔てる機能を有し、カバー150によって形成される空間に不活性ガス等が封入されたり、当該空間が減圧されてもよい。これにより、圧電素子32の圧電材料の劣化等を抑制することができる。この場合に、筐体130は、プリントヘッド100の支持体として機能してもよい。
以上例示した本実施形態で用いるプリントヘッド100は、プリンター200に搭載された場合に、ノズルプレート10が記録媒体Pに向かって配置され、ノズルプレート10が大気(外気)と直接に接することになる。また、本実施形態で用いるプリントヘッド100は、筐体130およびカバー150を有するため、圧電素子32及び振動板30が実質的に外気と接触しない構造である。
ここで、本実施形態で用いるインクジェット記録装置は、以下に説明するインク組成物(以下、「インク」ともいう。)を用いてインクジェット記録方法を行う。
1.2.インク組成物
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法に用いられるインク組成物は、色材と、下記一般式(1)で表される溶剤をインク組成物の全質量に対し30質量%以上と、を含む溶剤系インクジェットインク組成物であることを特徴とする。
O−(RO)−R・・・・・(1)
(一般式(1)中、R及びRは、各々独立して水素又は炭素数1以上5以下のアルキ
ル基を表す。ただし、R及びRの少なくとも何れかは、炭素数1以上5以下のアルキル基である。Rは炭素数2以上4以下のアルキレン基を表す。nは1〜6の整数を表す。)
以下、本実施形態に係るインクジェット記録方法に用いるインク組成物(以下、単に「インク」ともいう。)に含まれる成分について詳細に説明する。
1.2.1.一般式(1)で表される化合物
インク組成物において、主溶剤(第1の溶剤)として上記一般式(1)で表される化合物を含む。上記一般式(1)において、R及びRにおける「炭素数1以上5以下のアルキル基」としては、直鎖状または分岐状のアルキル基であることができ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、tert−ペンチル基が挙げられる。また、Rにおける「炭素数2以上4以下のアルキレン基」としては、例えば、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
上記一般式(1)に示す化合物は、アルキレングリコールアルキルエーテルであり、記録媒体上での乾燥性等の点で優れている。上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、アルキレングリコールモノエーテルや、アルキレングリコールジエーテル等のグリコールエーテル類が挙げられる。グリコールエーテル類は、1種単独又は2種以上を混合して使用することができる。
なお、上記一般式(1)で表される化合物において、R及びRが、各々独立して前記のアルキル基であるものをアルキレングリコールジエーテルとし、R及びRが、一方のみ前記のアルキル基であるものをアルキレングリコールモノエーテルとする。このうち、インクの乾燥性等の点で、上記一般式(1)に示す化合物はアルキレングリコールジエーテルであることが好ましい。
アルキレングリコールモノエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノメチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノエチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
アルキレングリコールジエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエー
テル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
インク組成物に含まれる上記一般式(1)に示す化合物である溶剤の含有量は、溶剤系インクジェットインク組成物の全質量(100質量%)に対して、その下限値が30質量%以上であり、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。また、上限値は、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがより一層好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましく、75質量%以下であることが特に好ましい。含有量が30質量%以上であることで、耐擦性や表面乾燥性等の印刷特性に優れた記録物が得られる。また、含有量が95質量%以下であることで、ミストの発生等により画像が汚れることを抑制する。
また、耐擦性や表面乾燥性等の印刷特性と印刷画質をより向上させる観点から、上記一般式(1)で表される化合物である溶剤として、引火点が70℃以下の化合物を1種以上含むことが好ましく、引火点が65℃以下であることが好ましく、引火点が60℃以下であることがより好ましい。引火点が70℃以下の化合物のインク組成物の全量に対する含有量(複数種を使用する場合にはその合計量)は、好ましくは10質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上80質量%以下、特に好ましくは40質量%以上70質量%以下である。なお、引火点の下限は限られるものではないが、50℃以上であることが好ましい。
1.2.2.ラクトン(環状エステル)
本実施形態で用いられるインク組成物は、溶剤としてラクトン(環状エステル)を含有してもよい。インク組成物がラクトンを含むことにより、記録媒体の記録面(例えば塩化ビニル系樹脂を含む記録面)の一部を溶解して記録媒体の内部にインク組成物を浸透させることができる。このように記録媒体の内部にインクが浸透することで、記録媒体上に記録した画像の耐擦性(摩擦堅牢性)を向上させることができる。換言すると、ラクトンは、塩化ビニル系樹脂との親和性が高いため、溶剤系のインク組成物の成分を記録面に浸潤させやすい(食い付かせやすい)。ラクトンがこのような作用を有する結果、これを配合したインク組成物が、屋外環境等の厳しい条件下であっても、耐擦性に優れた画像を形成できるものと考えられる。
ラクトンとは、ヒドロキシル基とカルボキシル基とを有する1つの分子において、当該分子内で、該ヒドロキシル基と該カルボキシル基とが脱水縮合した構造を有する化合物である。環状エステルは、炭素原子を2個以上、酸素原子を1個含む複素環を有し、当該複素環を形成する酸素原子に隣接してカルボニル基が配置された構造を有する化合物である。
ラクトンのうち、単純な構造を有するものとしては、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、σ−バレロラクトン、およびε−カプロラクトン等を例示することができる。なお、ラクトンの複素環の環員数には特に制限が無く、さらに、例えば、複素環の環員には任意の側鎖が結合していてもよい。ラクトンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
本実施形態で用いられるインク組成物によって形成される画像の耐擦性をより高める観点からは、上記例示したラクトンのうち、3員環以上7員環以下のラクトンが好ましく、5員環または6員環のラクトンを用いることがより好ましく、いずれの場合でも側鎖を有
さないことがより好ましい。このようなラクトンの具体例としては、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンが挙げられる。また、このようなラクトンは、特にポリ塩化ビニルとの親和性が高いので、ポリ塩化ビニルが含有される記録媒体に付着された場合に、耐擦性を高める効果を極めて顕著に得ることができる。
ラクトンを配合する場合における、溶剤系インクジェットインク組成物の全量に対する含有量(複数種を使用する場合にはその合計量)は、5質量%以上50質量%以下であり、好ましくは7質量%以上30質量%以下、より好ましくは10質量%以上20質量%以下である。
1.2.3.その他の溶剤
本実施形態で用いられるインク組成物は、溶剤として、上記一般式(1)で表される化合物やラクトンの他に、以下のような化合物を用いることができる。
そのような溶剤としては、例えば、主溶剤(第1の溶剤)としての上記一般式(1)で表される溶剤の他に、第2の溶剤として、下記一般式(2)で表される化合物である溶剤を含んでもよい。
O−(RO)−R・・・・・(2)
(一般式(2)中、R及びRは、各々独立して水素又は炭素数1以上6以下のアルキル基を表す。ただし、R及びRの少なくとも何れかは、炭素数1以上6以下のアルキル基である。Rは炭素数2以上4以下のアルキレン基を表す。nは1〜10の整数を表す。)
第2の溶剤として、上記一般式(2)で表される化合物である溶剤を含むことにより、インク組成物の吸湿速度や乾燥性を調整することが可能となる。
ここで、R及びRにおける「炭素数1以上6以下のアルキル基」としては、直鎖状または分岐状のアルキル基であることができ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル、ペンチル基またはヘキシル基等が挙げられるが、R又はRの一方が水素であり、もう一方が炭素数1以上6以下のアルキル基であることが好ましい。
また、上記一般式(2)において、Rにおける「炭素数2以上4以下のアルキレン基」としては、例えば、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、またはブチレン基等が挙げられる。さらに、上記一般式(2)において、3以上6以下の整数であることが好ましい。
上記一般式(2)で表される化合物である溶剤の具体例としては、アルキレングリコールモノエーテルや、アルキレングリコールジエーテル等のグリコールエーテル類が挙げられる。これらの化合物は、1種単独又は2種以上を混合して使用することができる。
アルキレングリコールモノエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレ
ングリコールモノブチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノメチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノエチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
アルキレングリコールジエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
上記一般式(2)で表される化合物である溶剤としては、アルキレングリコールモノエーテル化合物であることが好ましい。また、インク組成物の乾燥性と、耐擦性の向上と印刷画質をより向上させる観点から、上記一般式(2)で表される化合物である溶剤として、引火点が180℃以下のものを少なくとも含有することが好ましい。引火点が180℃以下の化合物のインク組成物の全量に対する含有量(複数種を使用する場合にはその合計量)は、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上15質量%以下、特に好ましくは5質量%以上10質量%以下である。また、上記一般式(2)で表される化合物である溶剤として、引火点は75℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。
なお、上記一般式(2)で表される化合物において、R及びRが、各々独立して前記のアルキル基であるものをアルキレングリコールジエーテルとし、R及びRが、一方のみ前記のアルキル基であるものをアルキレングリコールモノエーテルとする。
本実施形態において、インク組成物は、上記一般式(2)で表される化合物である溶剤としてアルキレングリコールモノエーテルを含むことが、濡れ拡がりや印刷特性等の点で一層優れるため好ましい。また、インク組成物の全量に対するアルキレングリコールモノエーテルの含有量は、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上15質量%以下、特に好ましくは5質量%以上10質量%以下である。
また、その他の溶剤としては、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、フッ化アルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、多価アルコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等)等が挙げられる。
また、その他の溶剤として、(多価)アルコール類を含有してもよい。(多価)アルコ
ール類としては、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールや、2−メチルペンタン−2,4−ジオール等が挙げられる。
インク組成物に、(多価)アルコール類等を含有させる場合の合計の含有量は、記録媒体上での濡れ拡がり性及び浸透性を向上させて濃淡むらを低減させる効果や、保存安定性及び吐出信頼性を確保する観点から、インク組成物の全質量に対して、0.05質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。(多価)アルコール類の含有量が上記範囲内にあることで、インクの濡れ性、浸透性、乾燥性が良好となり、良好な印刷濃度(発色性)を備えた画像が得られる場合がある。また、(多価)アルコール類等の含有量が上記範囲内にあることで、インクの粘度を適正にすることができ、ノズルの目詰まり等の発生を低減できる場合がある。
また、インク組成物にはアミン類を配合してもよく、例えば、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、N,N−ジメチル−2−アミノエタノール、N,N−ジエチル−2−アミノエタノール等のヒドロキシルアミンが挙げられ、1種または複数種を用いることができる。アミン類を含有させる場合の合計の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.05質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。
また、溶剤として、ラウリン酸メチル、ヘキサデカン酸イソプロピル(パルミチン酸イソプロピル)、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル等の高級脂肪酸エステル、炭素数2〜8の脂肪族炭化水素のジカルボン酸(炭素数はカルボキシル基の炭素を除く)を炭素数1〜5のアルキル基でジエステル化した二塩基酸ジエステル、並びに、炭素数6〜10の脂肪族炭化水素のモノカルボン酸(炭素数はカルボキシル基の炭素を除く)をアミド化した(アミド窒素原子を置換している置換基がそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基である)アルキルアミド(N,N−ジメチルデカンアミド等)等が挙げられる。
ここで例示したその他の溶剤は、一種又は複数種を、インク組成物に対して、適宜の配合量で添加することができる。
1.2.4.色材
本実施形態で用いられるインク組成物は、色材を含む。色材としては、従来の溶剤系インクに通常用いられている無機顔料又は有機顔料等の顔料または染料を、単独または混合して用いることができる。有機顔料としては、例えば、アゾ顔料(例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等)、多環式顔料(フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等)、染料レーキ(例えば、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等が挙げられる。また、無機顔料としては、カーボンブラック、二酸化チタン、シリカ、アルミナ等が挙げられる。染料としては、例えばアゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンチン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン粟料、フタロシアニン染料、又は金属フタロシアニン染料を用いることができ、特に油溶性染料が好ましい。これらの顔料又は染料を単独で用いるか、あるいはそれらの2種又はそれ以上の組み合わせで使用することも
できるが、耐候性の観点からは顔料が好ましい。顔料一次粒子の体積平均粒径は、50〜500nm、好ましくは50〜200nmである。
色材の含有量は、所望に応じて適宜設定でき、特に限定されるものではないが、通常、インク組成物の全質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上8質量%以下、より好ましくは1質量%以上6質量%以下である。色材の含有量が上記範囲にあることで、発色性に優れ、このインク組成物によって形成された画像は、耐候性が良好となる。
また、色材として顔料を使用する場合には、顔料分散剤を含有してもよく、通常の溶剤系インク、特には、インクジェット記録用溶剤系インクにおいて用いられている任意の分散剤を用いることができる。分散剤としては、有機溶媒の溶解度パラメーターが8〜11であるときに有効に作用する分散剤を用いるのが好ましい。こうした分散剤としては市販品を利用することが可能であり、その具体例としては例えば、ヒノアクトKF1−M、T−6000、T−7000、T−8000、T−8350P、T−8000E(いずれも武生ファインケミカル株式会社製)等のポリエステル系高分子化合物、ソルスパース20000、24000、32000、32500、33500、34000、35200、37500(いずれもLUBRIZOL社製)、Disperbyk−161、162、163、164、166、180、190、191、192、2091、2095(いずれもビックケミー・ジャパン社製)、フローレンDOPA−17、22、33、G−700(いずれも共栄社化学株式会社製)、アジスパーPB821、PB711(いずれも味の素株式会社製)、LP4010、LP4050、LP4055、POLYMER400、401、402、403、450、451、453(いずれもEFKAケミカルズ社製)等が挙げられる。顔料分散剤を使用する場合の含有量は、含有される顔料に応じて適宜選択することができるが、インク組成物中の顔料の含有量100質量部に対して、好ましくは5質量部以上200質量部以下、より好ましくは30質量部以上120質量部以下である。
1.2.5.定着樹脂
本実施形態で用いられるインク組成物は、上述の色材を記録媒体に定着させるための定着樹脂を含有してもよい。
定着樹脂としては、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ロジン変性樹脂、フェノール樹脂、テルペン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロースアセテートブチレート等の繊維系樹脂、ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体樹脂等が挙げられる。これらの中でも、アクリル樹脂及び塩化ビニル樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂であることが好ましく、塩化ビニル樹脂がより好ましい。これらの定着樹脂を含有することにより、記録媒体への定着性を向上でき、また耐擦性も向上する。
本実施形態で用いられるインク組成物中における定着樹脂の固形分含有量は、好ましくは0.05質量%以上15質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上5質量%以下である。定着樹脂の含有量が前記範囲であると、記録媒体に対して優れた定着性が得られる。
<アクリル樹脂>
アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、スチレン−(メタ)アクリル共重合樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、エチレンアルキル(メタ)アクリレート樹脂、エチレン−(メタ)アクリル
酸エステル共重合樹脂等の(メタ)アクリル系モノマー、または、これと他のモノマーとの共重合体樹脂が挙げられる。これらは、単独または複数組み合わせて用いることができる。
上記のアクリル樹脂としては、市販品を用いてもよく、例えばアクリペットMF(商品名、三菱レイヨン社製、アクリル樹脂)、スミペックスLG(商品名、住友化学社製、アクリル樹脂)、パラロイドBシリーズ(商品名、ローム・アンド・ハース社製、アクリル樹脂)、パラペットG−1000P(商品名、クラレ社製、アクリル樹脂)等が挙げられる。なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味するものとし、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの両方を意味するものとする。
<塩化ビニル樹脂>
塩化ビニル樹脂としては、例えば、塩化ビニルと、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸、マレイン酸、ビニルアルコール等の他のモノマーとの共重合体が挙げられるが、これらの中でも塩化ビニル及び酢酸ビニルに由来する構成単位を含む共重合体(以下、「塩酢ビ共重合体」ともいう。)が好ましく、ガラス転移温度が60〜80℃である塩酢ビ共重合体がより好ましい。
塩酢ビ共重合体は、常法によって得ることができ、例えば懸濁重合によって得ることができる。具体的には、重合器内に水と分散剤と重合開始剤を仕込み、脱気した後、塩化ビニル及び酢酸ビニルを圧入し懸濁重合を行うか、塩化ビニルの一部と酢酸ビニルを圧入して反応をスタートさせ、残りの塩化ビニルを反応中に圧入しながら懸濁重合を行うことができる。
塩酢ビ共重合体は、その構成として、塩化ビニル単位を70〜90質量%含有することが好ましい。上記範囲であれば、インク組成物中に安定して溶解するため長期の保存安定性に優れる。さらには、吐出安定性に優れ、記録媒体に対して優れた定着性を得ることができる。
また、塩酢ビ共重合体は、塩化ビニル単位及び酢酸ビニル単位とともに必要に応じて、その他の構成単位を備えていても良く、例えばカルボン酸単位、ビニルアルコール単位、ヒドロキシアルキルアクリレート単位が挙げられ、とりわけビニルアルコール単位が好ましく挙げられる。前述の各単位に対応する単量体を用いることで得ることができる。カルボン酸単位を与える単量体の具体例としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。ヒドロキシアルキルアクリレート単位を与える単量体の具体例としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル等が挙げられる。これらの単量体の含有量は、本発明の効果を損なわない限り限定されないが、例えば単量体全量の15質量%以下の範囲で共重合させることができる。
また、塩酢ビ共重合体は市販されているものを用いてもよく、例えば、ソルバインCN、ソルバインCNL、ソルバインC5R、ソルバインTA5R、ソルバインCL、ソルバインCLL(以上、日信化学工業株式会社製)、カネビニールHM515(株式会社カネカ製)等が挙げられる。
これらの樹脂の平均重合度は、特に限定されないが、好ましくは150〜1100、より好ましくは200〜750である。これらの樹脂の平均重合度が上記範囲である場合、本実施形態で用いられるインク組成物中に安定して溶解するため、長期の保存安定性に優れる。さらには、吐出安定性に優れ、記録媒体に対して優れた定着性を得ることができる
。なお、これらの樹脂の平均重合度は、比粘度を測定し、これから算出されるものであり、「JIS K6720−2」に記載の平均重合度算出方法に準じて求めることができる。
また、これらの樹脂の数平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは10000〜50000、より好ましくは12000〜42000である。なお、数平均分子量は、GPCによって測定することが可能であり、ポリスチレン換算とした相対値として求めることができる。
1.2.6.界面活性剤
本実施形態で用いられるインク組成物には、表面張力を低下させて記録媒体との濡れ性を向上させる観点から、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、または非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン誘導体を添加してもよい。
シリコン系界面活性剤としては、ポリエステル変性シリコンやポリエーテル変性シリコンを用いることが好ましい。具体例としては、BYK−315、315N、347、348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(いずれもビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK−340(ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
また、ポリオキシエチレン誘導体としては、アセチレングリコール系界面活性剤を用いることが好ましい。具体例としては、サーフィノール82、104、465、485、TG(いずれもエアープロダクツジャパン社製)、オルフィンSTG、E1010(いずれも日信化学株式会社製)、ニッサンノニオンA−10R、A−13R(いずれも日油株式会社製)、フローレンTG−740W、D−90(共栄社化学株式会社製)、ノイゲンCX−100(第一工業製薬株式会社製)等が挙げられる。
本実施形態で用いられるインク組成物中における界面活性剤の含有量は、好ましくは0.05質量%以上3質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上1.5質量%以下である。
1.2.7.その他の成分
本実施形態で用いられるインク組成物には、必要に応じて、pH調整剤、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)等のキレート化剤、防腐剤・防かび剤、及び防錆剤等、所定の性能を付与するための物質を添加することができる。
1.2.8.インク組成物の調製方法
本実施形態で用いられるインク組成物は、前述した成分を任意な順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過等を必要に応じて行うことができる。
1.2.9.インク組成物の物性
本実施形態で用いられるインク組成物は、記録品質とインクジェット記録用のインクとしての信頼性とのバランスの観点から、20℃における表面張力が20mN/m以上50mN/mであることが好ましく、25mN/m以上40mN/m以下であることがより好ましい。なお、表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP−Z(協和界面科学株式会社
製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
また、同様の観点から、インク組成物の20℃における粘度は、2mPa・s以上15mPa・s以下であることが好ましく、2mPa・s以上10mPa・s以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定は、粘弾性試験機MCR−300(Pysica社製)を用いて、20℃の環境下で、Shear Rateを10〜1000に上げていき、Shear Rate200時の粘度を読み取ることにより測定することができる。
1.2.10.記録媒体
本実施形態に係るインク組成物は、上記一般式(1)で表される化合物である溶剤を含む溶剤インクであることにより、インク低吸収性または非吸収性の記録媒体、例えば、塩化ビニル系記録媒体等のフィルムメディアに記録した時の画質が優れるため、屋外で展示するサイン用途等に特に好適となる。
ここで、本明細書における「インク低吸収性または非吸収性の記録媒体」とは、インク組成物を全く吸収しない、またはほとんど吸収しない性質を有する記録媒体を指す。定量的には、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体とは、「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である記録媒体」を指す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。これに対して、インク吸収性の記録媒体とは、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体に該当しない記録媒体のことを指す。
インク非吸収性の記録媒体としては、例えば、インク吸収層を有していないプラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。塩化ビニル系記録媒体としては、塩化ビニル系樹脂を含有するものであれば特に限定されない。例えば、サイン用途等に用いられる塩化ビニル系樹脂を含有する記録媒体としては、硬質もしくは軟質の塩化ビニル系フィルム又はシート等が挙げられる。
インク低吸収性の記録媒体としては、表面にインクを受容するための塗工層が設けられた記録媒体が挙げられ、例えば、基材が紙であるものとしては、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙が挙げられ、基材がプラスチックフィルムである場合には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の表面に、親水性ポリマーが塗工されたもの、シリカ、チタン等の粒子がバインダーとともに塗工されたものが挙げられる。これらの記録媒体は、透明な記録媒体であってもよい。
1.2.11.効果
本実施形態で用いられるインク組成物は、上記一般式(1)で表される化合物である溶剤を30質量%以上含む溶剤インクであることにより、インク組成物中の固形分量を増やすことが可能であり、塩化ビニル系記録媒体等のフィルムメディアに記録した時の画質が優れ、また、耐擦性や表面乾燥性等の印刷特性に優れた記録物が得られるため、屋外で展示するサイン用途等に特に好適となる。また、本実施形態で用いられるインク組成物は比較的乾燥しやすいインクであるが、接続部の距離が500μm以上であるプリントヘッド
を用いて吐出させることにより、ノズル面からインクの乾燥が進むことが防止され、このインクを用いたインクジェット記録方法において、長期にわたり、吐出安定性に優れる。
次に、本実施形態に係るインクジェット記録方法における、インク付着工程および加熱工程について説明する。
1.3.インク付着工程
本実施形態に係るインク付着工程は、上述したインク組成物を吐出するノズルと、前記インク組成物に圧力を付与して前記ノズルから吐出させる圧力室と、前記圧力室の圧力室からノズル側へインクが流出する部分から前記ノズルまでの接続部の距離が500μm以上であるプリントヘッドを用いて、前記インク組成物を記録媒体に付着させる工程である。
インク組成物を付着させる記録媒体としては、特に限定されないが、上述したインク組成物を用いる場合には、上記の塩化ビニル系記録媒体等のフィルムメディアに記録した時に、インク付着の際に吐出安定性に優れると共に、印刷特性に優れた記録物が得られるインクジェット記録方法を提供する。
インク吐出工程において、記録解像度は300×300dpi以上であることが好ましく、5000×5000dpi以下であることが好ましい。また、インクの吐出の1インク滴当たりの最大の質量が30ng以下であることが好ましい。ここで、吐出の1滴のインク量は、1回(1発)の吐出の質量であって、数発の合計ではない。本実施形態に係るインク付着工程において、インクの吐出の1インク滴当たりの最大の質量が30ng以下であることにより、液滴が微小化され、印刷特性に優れた記録物を得ることができる。1インク滴当たりの最大の質量は、好ましくは25ng以下であり、より好ましくは20ng以下であり、さらに好ましくは15ng以下であり、もっとも好ましくは10ng以下である。1インク滴当たりの最大の質量の下限値は、好ましくは1ng以上であり、より好ましくは3ng以上であり、さらに好ましくは5ng以上である。なお、記録解像度が高い場合には、インク吐出量が小さい方が印刷特性に優れた記録物が得られるため好ましい。
また、インク付着工程において、記録媒体への最大のインクの塗布量が30ng/inch以下であることが好ましい。記録媒体への最大の塗布量が30ng/inch以下であることにより、印刷特性に優れた記録物が得られる。記録媒体への最大のインク塗布量は、より好ましくは20ng/inch以下であり、さらに好ましくは10ng/inch以下である。また、記録媒体への最大のインク塗布量の下限値は、好ましくは1ng/inch以上であり、より好ましくは5ng/inch以上である。
上述したように、圧力室の圧力室からノズル側へインクが流出する部分からノズルまでの接続部の距離が500μm以上であるプリントヘッドを用いていることにより、インクジェット方式で記録媒体に溶剤系インクが付与される際に、ノズル面からインクの乾燥が進むことを防止することにより吐出安定性に優れるインクジェット記録方法を提供することができる。また、インク付着の際の吐出安定性が確保できるため、インク組成物中の固形分量を増やすことが可能であり、耐擦性や表面乾燥性等の印刷特性に優れた記録物が得られるインクジェット記録方法を提供することができる。
1.4.加熱工程
本実施形態に係るインクジェット記録方法では、インク付着工程の際に、記録媒体の表面温度が30℃以上となるように記録媒体を加熱する加熱工程を備えることが好ましい。加熱工程を備えることにより、記録媒体に付着したインクの溶剤を速やかに蒸発飛散させ
て、記録画像等を速やかに形成することができる。記録媒体を加熱する手段は、インクに含まれる溶剤の蒸発飛散を促進させる構成を備えていれば、特に制限されない。記録媒体を加熱する手段としては、例えば赤外線(ランプ)が挙げられる。加熱された記録媒体の温度は、40℃以上70℃以下であることが好ましく、50℃以上60℃以下であることがより好ましい。
2.実施例
以下、本発明を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
2.1.溶剤系インク組成物の調製
表1に記載の色材と、分散剤を用い、当該顔料100質量部に対して67〜200質量%の範囲で分散剤の添加量を変えて顔料を分散させて分散液を調製した。分散媒としては、各インク組成例毎に溶剤として最も含有量の多い溶剤を分散媒として用い、顔料分散液とした。上記にて作製した顔料分散液と、表1に記載の成分を混合し、マグネチックスターラーで2時間混合攪拌した後、さらに孔径5μmのメンブレンフィルターを用いてろ過し、組成1〜組成10の溶剤系インク組成物を得た。なお、表1中の数値は溶剤系インク組成物中の含有量(質量基準%)を表す。
Figure 0006707849
表1中で使用したインク組成物の主な材料は、以下の通りである。
<色材>
・C.I.ピグメントブルー15:3
<分散剤>
・ソルスパース37500:商品名、ルーブリゾール社製、ポリエステルポリアミド樹脂<ラクトン>
・γ−ブチロラクトン:商品名、関東化学株式会社製
・σ−バレロラクトン:商品名、キシダ化学株式会社製
<溶剤>
・DEGMEE:ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、商品名「ハイソルブEDM」、東邦化学工業株式会社製、引火点64℃
・DEGdME:ジエチレングリコールジメチルエーテル、商品名「ジエチレングリコールジメチルエーテル」、東京化成工業株式会社製、引火点56℃
・DEGdEE:ジエチレングリコールジエチルエーテル、商品名「ジエチレングリコールジエチルエーテル」、東京化成工業株式会社製、引火点70.8℃
・DEGBME:ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、商品名「ハイソルブBDM」、東邦化学工業株式会社製、引火点94℃
・TetraEGmBE:テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、商品名「ブチセノール40」、KHネオケム株式会社製、引火点156℃
・TriEGdME:トリエチレングリコールジメチルエーテル、商品名「トリエチレングリコールジメチルエーテル」、キシダ化学株式会社製、引火点111℃
・DPGmME:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、商品名「メチルプロピレンジグリコール」、日本乳化剤株式会社製、引火点76.5℃
・エクアミドM100:商品名、出光興産株式会社製、アミド系溶剤、引火点93℃
・AFソルベント7号:商品名、JX日鉱日石エネルギー株式会社、ナフテン系炭化水素溶剤、引火点128℃
・パルミチン酸イソオクチル:商品名「IOP」、日本精化株式会社製、エステル系溶剤、引火点203℃
・サラコス99:商品名、日清オイリオグループ株式会社製、イソノナン酸イソノニル(エステル系溶剤)、引火点148℃
<界面活性剤>
・BYK340(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、フッ素系界面活性剤)
<定着樹脂>
・ソルバインCL:商品名、日信化学工業株式会社製、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体
2.2.インクジェット記録装置の準備
上記で説明した図2〜図4に記載されているプリントヘッドを備えるインクジェット記録装置として、SC−S30650(セイコーエプソン株式会社製)の改造機を用意した。プリントヘッドとしては、表2に示すH1〜H4の4種類のヘッドを用いた。なお、用いたインクジェット記録装置はプラテンヒーターを備えており、実施例12以外の例では、インク吐出時にプラテンヒーターが作動して、記録媒体の表面温度が40℃となるまで加熱するように設定した。
Figure 0006707849
ここで、ヘッドH1は、図3に示す構造を有しており、圧力室20の底面からノズル面
13までの長さ、つまり、接続部132の距離(d1+d2)が1000μmであり、ノズルピッチ(ノズル密度)は300dpiである。なお、圧力室20の容積は2900plであり、連通孔127、ノズル孔12および圧力室20の容積の合計は4200plである。
ヘッドH2は、図4に示す構造を有している。つまり、図4に示すプリントヘッドH2は連通孔を備えておらず、圧力室20は、ノズルプレート10と、連通板110と、振動板30とによって区画される空間のことを指し、ノズル孔12及び供給口126を含まない空間のことをいう。ヘッドH2において、圧力室20の底面からノズル面13までの長さ、つまり、接続部132の距離はノズル孔12の長さであり、ノズルプレート10の厚みと等しく100μmであり、ノズルピッチは360dpiである。なお、圧力室20の容積は2900pl、ノズル孔12および圧力室20の容積の合計は3100plである。
ヘッドH3はヘッドH1と似た構造のヘッドであり、ヘッドH1と比較して圧力室容積をより大きく、ノズル密度をより低いものとしたものである。つまり、接続部132の距離は1000μmであり、ノズルピッチは180dpi、圧力室20の容積は3700pl、連通孔127、ノズル孔12および圧力室20の容積の合計は5000plである。
ヘッドH4はヘッドH1と似た構造のヘッドであり、接続部132の距離がヘッドH1よりも短い500μmであるが、ノズルピッチと圧力室20の容積はヘッドH1と同様である。つまり、ノズルピッチは300dpi、圧力室20の容積は2900plであり、連通孔127、ノズル孔12および圧力室20の容積の合計は、接続部132の距離がヘッドH1よりも短いため3600plである。なお、いずれのヘッドにおいても、ノズル孔12のノズル径は20μmである。
2.3.評価試験
2.3.1.間欠性の評価
H1〜H4のいずれかのヘッドを備えたインクジェット記録装置に組成1〜組成10の各インク組成物を用いて、長時間使用を想定した間欠性の評価試験を行った。評価試験は、ヘッドからプラテン側方に設けたインク受けにインクの吐出を5分間連続して行い、100分間ヘッドを放置した後、再び5分間連続吐出と100分間放置を5セット行った。終了後、ノズルの不吐出検査を行い、使用した全ノズル数に対する不吐出ノズル数を算出し、以下の基準で評価した。なお、インク滴あたりのインク量は、実施例11では15ngとし、それ以外は全て7ngとした。
(評価基準)
○:吐出不良が1%未満
△:吐出不良が3%以上5%未満
×:吐出不良が5%以上
2.3.2.記録物の耐擦性の評価
H1〜H4のいずれかのヘッドを備えたインクジェット記録装置を用い、各インク組成物を用いて、記録媒体である塩ビメディア(商品名「IMAJIN JT 5829R」、Mactac社製)上に、塗布量10ng/inch、記録解像度1440×1440ddpiでベタ印刷をして記録物を作製した。得られた記録物を、25℃65%RH(相対湿度)にて1日間乾燥させた。その後、学振型摩擦堅牢試験機AB−301(テスター産業株式会社製)を用いて、荷重1kg、摩擦回数30回の条件で、摩擦用白綿布(カナキン3号)を取り付けた摩擦子と、画像とを擦り合わせ、画像の表面状態を目視にて観察し、以下の基準で評価した。評価基準は以下の通りである。
(評価基準)
○:表面に傷が確認されない。
△:表面に若干の傷が確認される。
×:表面にかなりの傷が確認される。
2.3.3.記録物の表面乾燥性の評価
上記「2.3.2.」と同様の条件で得られた記録物を5分間乾燥させた。次いで、巻き取り装置を用いて塩ビメディアを巻き取った後の記録面のスリ痕を観察した。スリ痕の観察には、形状測定レーザーマイクロスコープ(キーエンス製、「VK−8700」)を用い、表面粗さを測定することでスリ痕のある面積の割合を算出した。評価基準は、以下の通りである。
(評価基準)
○:スリ痕面積が10%未満
△:スリ痕面積が10%以上20%未満
×:スリ痕面積が20%以上
2.3.4.記録物の線幅の評価
ヘッドの副走査方向に延びる、10μmのp線幅の線を記録した以外は、上記「2.3.2.」と同様にして記録物を作製した。得られた記録物の印刷部をルーペ(5倍)にて観察し、以下の評価基準にしたがって線幅の評価を行った。
(評価基準)
◎:線の輪郭が一定の形状で連続して形成されており、直線である。
○:線の輪郭が一定の形状で連続して形成されているが、直線に近い形状ではない。
△:線の輪郭が一定の形状になっていないが、途切れは見られない。
×:線が途切れている部分が見られる。
2.4.評価結果
各実施例及び比較例の評価結果を表3に示す。
Figure 0006707849
表3の結果から明らかなように、実施例1〜12では、いずれも間欠性に優れた結果となった。記録物の評価については、実施例1〜実施例5ではいずれの評価も満足するものであった。実施例5では、組成5のインクがラクトンを含まないことにより、得られた記録物の印刷特性が多少劣る結果となった。実施例6では、用いた組成6のインクが定着樹脂を含まないため、得られた記録物は耐擦性に劣る結果となった。実施例7、8では、用いたヘッドH3のノズルピッチがH1よりも低く、間を埋めるためにパス数を増やして埋めて記録したことにより、インクの着弾位置ずれが発生し、実施例2、3と比較して線幅が悪化する結果となった。また、実施例9では、用いたヘッドH4の圧力室からノズル面
までの長さがヘッドH1よりも短いため、実施例1と比較して間欠性が劣る結果となった。実施例10では、他の実施例と比較して、インク中のグリコールエーテル類の含有量が低く、引火点の高い溶剤を多く含む。このためインクが乾燥しにくく、吐出の際の間欠性は良いが、その一方で表面乾燥性に劣るため、耐擦性も劣る結果となった。実施例11では、間欠性の評価をインク滴あたりのインク量15ngで行ったため、高解像度(高画質)の画素記録に向かず、記録物の評価を行うことができなかった。実施例12では、プラテンヒーターをオフにし、加熱無しで記録したため、記録時の記録媒体の温度は25℃であった。このため、吐出の際の間欠性は向上したが、記録物の耐擦性と表面乾燥性が劣る結果となった。
これに対し、連通孔を備えておらず、圧力室からノズル面までの長さが短いヘッドH2を用いた比較例1、2では、ノズル面からインクの乾燥が進み、間欠性に劣る結果となった。比較例3、6では、プリントヘッドH1を用いているが、グリコールエーテル類を含まず、用いたインク組成物の主溶剤の引火点が高いため、実施例1、2と比較して間欠性と記録物の耐擦性と表面乾燥性が劣る結果となった。比較例4、5では、ヘッドH2を用いているが、用いたインク組成物の主溶剤の引火点が高いため、比較例1、2と比較して間欠性は優れていたが、記録物の耐擦性と表面乾燥性が劣る結果となった。
このように、本発明の範囲に含まれるヘッドとインクを組み合わせることにより、ノズル面からインクの乾燥を防ぎ、インク付着の際に間欠性に優れると共に、印刷特性に優れた記録物が得られることが明らかとなった。このように、固形分量と間欠性は相反するのが一般的であるが、本発明に係る間欠性に優れたインクジェット記録方法によれば、インク中の固形分量を増やすことが可能であり、記録物の耐擦性と表面乾燥性等の印刷特性を向上させることができることが明らかとなった。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
10…ノズルプレート、12…ノズル孔、13…ノズル面、20…圧力室、30…振動板、32…圧電素子、34…圧電アクチュエーター、40…インク供給室、100…プリントヘッド、110…連通板、120…圧力室基板、126…供給口、127…連通孔、128…吐出口、130…筐体、132…接続部、140…コンプライアンスシート、150…カバー、200…プリンター、230…ヘッドユニット、231…インクカートリッジ、232…キャリッジ、235…主走査機構、236…プラテンローラー、238…タイミングベルト、240…ガイド軸、P…記録媒体

Claims (12)

  1. インク組成物を吐出するノズルと、前記インク組成物に圧力を付与して前記ノズルから吐出させる圧力室と、前記圧力室と前記ノズルとを接続する接続部と、を備え、前記圧力室の圧力室からノズル側へインクが流出する部分から前記ノズルの記録媒体側の端部までの接続部の距離が500μm以上であるプリントヘッドを用いて、前記インク組成物を吐出して記録媒体に付着させるインク付着工程を備え、
    前記インク組成物は、色材と、下記一般式(1)で表される溶剤をインク組成物の全質量に対し30質量%以上と、を含み、下記一般式(1)で表される溶剤として、引火点が70℃以下の化合物を1種以上含溶剤系インクジェットインク組成物である、インクジェット記録方法。
    O−(RO)−R・・・・・(1)
    (一般式(1)中、R及びRは、各々独立して水素又は炭素数1以上5以下のアルキル基を表す。ただし、R及びRの少なくとも何れかは、炭素数1以上5以下のアルキル基である。Rは炭素数2以上4以下のアルキレン基を表す。nは1〜6の整数を表す。)
  2. 前記インク組成物が、前記一般式(1)で表される溶剤を50質量%以上含む、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記インク組成物が、さらに、溶剤としてラクトンを含む、請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記インク組成物が、さらに、定着樹脂を含む、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記インク組成物が、さらに、前記一般式(1)で表される溶剤として、R及びRのいずれか一方が水素であるアルキレングリコールモノエーテル化合物を含む、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記インク組成物が、前記一般式(1)で表される化合物である溶剤として、引火点が56℃以上70℃以下の化合物を1種以上含む、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  7. 前記プリントヘッドは前記インク組成物を吐出する複数のノズルを列状に備え、列方向におけるノズル密度が200dpi以上である、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  8. 1回の吐出あたりのインク吐出量が、30ng以下である、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  9. 前記インク付着工程の際に、前記記録媒体の表面温度が30℃以上となるように前記記録媒体を加熱する加熱工程を備える、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  10. 前記プリントヘッドにおいて、前記圧力室の圧力室からノズル側へインクが流出する部分から前記ノズルの記録媒体側の端部までの接続部の距離が500〜3000μmである、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  11. 前記溶剤系インクジェットインク組成物において、前記一般式(1)で表される溶剤としての引火点が70℃以下の化合物の含有量が、インク組成物の全質量に対し40〜90質量%である、請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  12. 前記一般式(1)で表される溶剤としての引火点が70℃以下の化合物が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル及びジエチレングリコールジメチルエーテルの何れかを少なくとも含む、請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
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