JP4510256B2 - インク、インクセット、インクカートリッジ、カラー画像記録装置および画像記録方法 - Google Patents

インク、インクセット、インクカートリッジ、カラー画像記録装置および画像記録方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インク、インクセット、インクカートリッジ、カラー画像記録装置、画像記録方法、カラー画像の形成方法およびインクジェット記録画像の濃度向上方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より筆記具(万年筆、サインペン、水性ボールペンなど)用の黒色インクおよびインクジェット用の黒色インクとして、印字物の濃度が高く、また、堅牢性などに優れた黒色着色剤であるカーボンブラックを用いたインクが提案されている。
【0003】
また、近年は、特に家庭やオフィスなどで一般に使用されているコピー用紙、レポート用紙、ノート、便箋、ボンド紙および連続伝票用紙などの普通紙に対しても良好な記録を行うことができるように、インクの組成および物性などの多様な面から詳細な研究開発がなされている。例えば、特開昭61−283875号公報および特開昭64−6074号公報には、カーボンブラックと分散剤とを含む水性顔料インクが開示されている。さらに、特開平8−3498号公報には、カーボンブラックを分散剤と共に含むインクをインクジェットプリンタ用のインクとして用いた場合に、吐出が不安定になったり、十分な印字濃度が得られないとする技術課題を挙げ、そのような課題を解決し得るインクとして、分散剤を用いない自己分散型のカーボンブラックを用いた水性顔料インクを開示している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
普通紙のような浸透性の大きい紙に従来の水性インクを用いて印字した場合に、文字のシャープネスが損なわれたり、画像濃度の低下が生じて画像品位が損なわれることがあった。これに対し、インクを極力記録媒体に浸透させないようにすることで、インクの発色性を向上させる手法が考えられるが、この場合には、インクの浸透性を低くしたことによる別の問題が発生する。すなわち、この場合にはインクが記録媒体に浸透せずに記録媒体上に残ることになるため、カラー画像を形成した場合に、色間境界での異なる色同士の滲み(以降、ブリードと表現する)が発生するという問題を生じる。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、記録媒体の種類による影響を抑制し、画像品位に優れ、且つカラー画像の形成の際のブリードの発生が有効に抑制され、しかも、インクの長期保存安定に優れ、高品位の画像が安定して得られるインク、インクセット、インクカートリッジ、カラー画像記録装置、画像記録方法、カラー画像の形成方法およびインクジェット記録画像の濃度向上方法を提供することにある。
【0006】
また、本発明は、極めて高い濃度の画像を得ることができ、また、その濃度の記録媒体への依存性が少なく、且つインクとしての安定性にも優れ、さらにカラー記録に用いた場合にも記録媒体上における他のカラーインクとのブリードが起こり難いインクジェット用水性インクを提供することを他の目的とする。
さらに、本発明は、自己分散型カーボンブラックを含んでいるインクを用いるインクジェット記録方法によって得られる画像の濃度をより一層向上させる方法を提供することを他の目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成することのできる本発明の一実施形態にかかるインクは、(M12SO4、CH3COO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO3、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M12SO3および(M12CO3(但し、M1はアルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表わし、Phはフェニル基を表わす)から選ばれる少なくとも1種の塩と、表面官能基密度が1.8(μmol/m2)以上の自己分散型アニオンカーボンブラックとを含むことを特徴とするものである。
【0009】
また、上記の目的を達成することのできる本発明の一実施形態にかかるインクセットは、シアン用、マゼンタ用、イエロー用、レッド用、グリーン用およびブルー用の色材から選ばれる少なくとも1つの色材を含む水性のカラーインクと、上記した本発明に係るインクとが組み合わされていることを特徴とするものである。
また、上記の目的を達成することのできる本発明の一実施形態にかかるインクカートリッジは、上記の本発明に係るインクとを収容しているインクタンクを備えていることを特徴とするものである。
【0011】
また、上記の目的を達成することのできる本発明の一実施形態にかかる画像記録装置は、例えば、(M12SO4、CH3COO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO3、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M12SO3および(M12CO3(但し、M1はアルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表わし、Phはフェニル基を表わす。)から選ばれる少なくとも1種の塩と、表面官能基密度が1.8(μmol/m2)以上の自己分散型アニオンカーボンブラックとを含むインクジェット用インクおよび該インクの吐出用記録ヘッドとを備えていることを特徴とするものである。
【0012】
また、上記の目的を達成することのできる本発明の一実施形態にかかるカラー画像記録装置は、例えば、(M12SO4、CH3COO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO3、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M12SO3および(M12CO3(但し、M1はアルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表わし、Phはフェニル基を表わす。)から選ばれる少なくとも1種の塩と、表面官能基密度が1.8(μmol/m2)以上の自己分散型アニオンカーボンブラックとを含むインクジェット用インクを収容しているインク収容部、シアン用、マゼンタ用、イエロー用、レッド用、グリーン用およびブルー用の色材から選ばれる少なくとも1つの色材を含む水性インクジェット用カラーインクを収容しているインク収容部、および各々のインク収容部に収容されているインクを各々吐出させるための記録ヘッド部を具備していることを特徴とするものである。
【0013】
また、上記の目的を達成することのできる本発明の一実施形態にかかる画像記録方法は、例えば、(M12SO4、CH3COO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO3、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M12SO3および(M12CO3(但し、M1はアルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表わし、Phはフェニル基を表わす。)から選ばれる少なくとも1種の塩と、表面官能基密度が1.8(μmol/m2)以上の自己分散型アニオンカーボンブラックとを含むインクジェット用インクを記録媒体表面に向けて飛翔させて該表面に付着させることにより画像を記録する工程を有することを特徴とするものである。
【0014】
また、上記の目的を達成することのできる本発明の一実施形態に係るカラー画像の形成方法は、例えば、シアン用、マゼンタ用、イエロー用、レッド用、グリーン用およびブルー用の色材から選ばれる少なくとも1つの色材を含む水性の第1のインクジェット用インクを記録媒体表面に向けて吐出させ、該表面に付着させる工程、および(M12SO4、CH3COO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO3、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M12SO3および(M12CO3(但し、M1はアルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表わし、Phはフェニル基を表わす。)から選ばれる少なくとも1種の塩と、表面官能基密度が1.8(μmol/m2)以上の自己分散型アニオンカーボンブラックとを含む第2のインクジェット用インクを該記録媒体表面に向けて吐出させ、該表面に付着させる工程を含むことを特徴とするものである。
【0015】
このような構成を採用した場合、表面官能基を1.8(μmol/m2)もしくは0.45(mmol/g)以上という高いレベルにすることで、自己分散型カーボンブラックのインク中における分散性をより一層安定させることができる。その一方で、塩をインク中に含ませることで、当該インクが記録媒体に付着した後のインク中の固体と液体との分離を迅速に生じさせることができ、これまで両立が困難であると考えられていた自己分散型カーボンブラックのインク中での安定性と当該インクによる画像の濃度の双方を極めて高いレベルで両立させることができる。そして、固液分離の迅速化によって、当該インクをカラー画像記録に用いた際の記録媒体上での他のカラーインクとのブリードも十分に抑制することができるものである。
【0016】
また、上記の目的を達成することのできる本発明の一実施形態にかかるインクジェット用水性インクの一実施形態は、平均粒径が90nm以上の自己分散型カーボンブラックが水性媒体中に安定に分散しており、且つ塩を含んでいるインクジェット用水性インクであって、上記塩が入っていない場合には、当該インクによって得られる画像の濃度が、塩が入っている場合に比較して低下するものであることを特徴とするものである。
【0017】
また、上記の目的を達成することのできる本発明の一実施形態にかかるインクジェット記録画像の濃度向上方法は、平均粒径が90nm以上の自己分散型カーボンブラックが水性媒体に安定に分散しているインクを用いて形成されたインクジェット記録画像の画像濃度の向上方法であって、該インクに、該自己分散型カーボンブラックの被記録媒体内部への浸透防止剤としての塩を含有せしめることを特徴とするものである。そしてこのような形態を採用することによって、単に粒径の大きい自己分散型カーボンブラックを用いることでは得られないような高い濃度の画像を得ることができるものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
本発明に係るインクは、着色剤の一つとして、表面官能基密度が1.8(μmol/m2)以上の、分散剤を用いない自己分散型アニオンカーボンブラックを含み、さらにこれに加えて、特定の塩を含んでなることを特徴とする。さらに、別の形態の本発明に係るインクは、特定の塩と、表面官能基密度が0.45(mmol/g)以上の自己分散型アニオンカーボンブラックとを含み、且つ60℃の環境下に1ケ月間保存したときにも実質的な粘度変化を生じないことを特徴とする。本発明に係るインクは、通常、これらの成分が水性媒体に分散乃至溶解されることで構成されている。そして上記したような表面官能基密度を有する自己分散型カーボンブラックを選択することによって、自己分散型カーボンブラックのインク中における分散安定性のより一層の向上を図ることができるものである。
【0019】
以下に、本発明に係るインクの各構成要素を順に説明する。
(塩)
まず、本発明で使用する特定の塩について詳述する。本発明で使用する塩は、(M12SO4、CH3COO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO3、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M12SO3および(M12CO3から選ばれる少なくとも1種である。ここでM1は、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表わし、Phはフェニル基を表わす。上記M1で表されるアルカリ金属としては、例えば、Li、Na、K、Rb、Csなどが挙げられる。また、有機アンモニウムとしては、例えば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリヒドロキシメチルアミン、ジヒドロキシメチルアミン、モノヒドロキシメチルアミン、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウムなどが挙げられる。これらのアンモニウムは夫々に相当する有機アミンから誘導される。
【0020】
本発明に係るインクは、上記したような塩を、後述する表面官能基密度が1.8(μmol/m2)以上の自己分散型アニオンカーボンブラックを着色剤として含むインク中に含有させる構成とすることによって、通常の水性インクを使用した場合に高品位画像が得られ難かった浸透性の大きな紙、例えば、普通紙に印字した場合にも、高品位な画像の形成が可能となる。例えば、浸透性の大きな紙に従来の水性インクで印字した場合には、文字のシャープネスが損なわれたり、画像濃度の低下が生じるなどの場合があったが、本発明に係るインクによれば、かかる点が改良される。本発明に係るインクによって、上記した優れた効果を得られる理由は明らかでないが、本発明者らは、下記のように考えている。
【0021】
例えば、本発明に係るインクをインクジェット記録方法によって記録媒体である紙面上に飛翔させ、付着させた場合に、インク中では着色剤であるカーボンブラック顔料は安定に分散しているが、紙面に付着後に、インクの固液分離が速やかに起こるため(この固液分離を起こす要因としては、毛管現象、水分蒸発などが考えられる)、上記したシャープネスや画像濃度が損なわれるといった現象が起こり難くなるものと考えている。すなわち、記録媒体上でのインクの固液分離が遅いと、記録媒体として浸透性の大きな紙を用いた場合には、インク全体が紙中に拡散する結果、文字のシャープネス(文字品位)が損なわれると同時に、紙の奥までインクが浸透するために当然に画像濃度の低下が生じるのに対し、本発明に係るインクのように、記録媒体上でインクの固液分離が速やかに起こると、着色剤が紙内部へと浸透しづらくなり、紙などの記録媒体中深くまで着色剤が浸透することが生じない。このため、本発明の記録媒体上での固液分離が速いインクを用いれば、比較的浸透性が高い紙に印字した場合であっても、記録媒体の種類にかかわらず(つまり、浸透性の大小などといった紙種による要因を受けづらくなり)、発色性に優れ、シャープネスさなどが損なわれることのない高品位画像が得られる。また、本発明に係るインクを用いた場合には、上記した現象に起因して、塩を添加する前のインクと比較し、同一の紙に印字した場合の画像濃度(反射濃度)が高まるといった効果も得られる。
【0022】
さらに、本発明者らは、本発明に係るインクが速やかな固液分離を引き起こす最大の要因は、吐出後の水分蒸発にあると考えている。勿論、インク着弾後の紙上の毛管現象も、固液分離を引き起こす要因の一つではあるが、本発明者らは、以下の事実に基づき、本発明に係るインクにおいて、記録媒体上での固液分離が速やかに引き起こされる最大の要因は、吐出後の水分蒸発にあると考えている。本発明者らが検討した結果、本発明に係るインクは、清浄なガラス面上においても、塩を添加しないインクと比較して固液分離が早く起こることが分かった。すなわち、このことは、本発明に係るインクでは、毛管現象が起こらない状態においてでも、インクの固液分離が起こっていることを如実に示している。従って、本発明者らは、本発明に係るインクの固液分離を起こす最大の要因は、吐出後の水分蒸発であると考えるに至ったものである。
【0023】
さらに、本発明に係るインクは、カラー画像の形成に使用した場合において、色間境界での異なる色同士の滲み(以降、ブリードと表現する)の発生を有効に抑制できるという別の効果が得られる。かかる効果も、記録媒体上でインクの固液分離が速やかに起こることによると考えられる。すなわち、インクの固液分離が速いと、記録媒体上にインクが付着した場合に、直ちにインク中の溶剤が着色剤と分かれて紙中深くまで浸透するので、着色剤の固化が速やかに起こる。この結果、カラー画像を形成する際に、異なる色彩のインクが重ね打ちされた場合においても、インク中の着色剤が隣接する他の色のインク側に滲み出すことが生じにくくなり、色間境界で生じる異なる色同士の滲みの発生が有効に抑制される。加えて、本発明に係るインクは、着色剤として、特定の表面官能基密度を有する自己分散型アニオンカーボンブラックを着色剤として用いているので、長期保存によってインクが増粘してしまうといったことが防止される結果、さらに長期保存安定性に優れたインクとなる。このことも、本発明に係るインクが、高品位画像の安定した形成を可能とすることに寄与しているものと考えられる。
【0024】
(自己分散型カーボンブラック)
次に、本発明に係るインクに、着色剤として含有させる自己分散型アニオンカーボンブラックについて詳述する。本発明に係るインクを構成する自己分散型カーボンブラックとしては、例えば、少なくとも1つの親水性基がカーボンブラック表面に直接、もしくは他の原子団を介して結合しているアニオン性に帯電したカーボンブラックが挙げられる。このような構造を有するカーボンブラックを用いれば、従来のインクのように、カーボンブラックを分散させるための分散剤をインクに添加することが不要となる。
【0025】
本発明に係るインクに用いることのできるアニオン性に帯電した自己分散型カーボンブラックとしては、カーボンブラックの表面に、例えば、以下に示したような親水性基を結合させたものが挙げられる。
−COO(M2)、−SO3(M22、−PO3H(M2)、−PO3(M22(但し、式中のM2は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表わす。)
【0026】
これらの中でも特に、−COO(M2)や−SO3(M22の親水性基をカーボンブラック表面に結合してアニオン性に帯電せしめたカーボンブラックは、インク中での分散性が良好なため、本発明に係るインクの着色剤として特に好適に用いることができる。ところで、上記親水性基中「M2」として表したもののうち、アルカリ金属の具体例としては、例えば、Li、Na、K、RbおよびCsなどが挙げられ、また、有機アンモニウムの具体例としては、例えば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、モノヒドロキシメチルアミン、ジヒドロキシメチルアミン、トリヒドロキシメチルアミンなどが挙げられる。
【0027】
上記M2が、アンモニウムである自己分散型カーボンブラックを着色剤として含む本発明に係るインクは、形成された記録画像の耐水性をより向上させることができる。従って、かかるカーボンブラックは、この点において特に好適に用いることができる。これは当該インクが記録媒体上に付与されると、このアンモニウムが分解し、アンモニアが蒸発してカーボンブラック表面に結合している親水性基がH型(酸型)となり、親水性が低下することによるものと考えられる。ここでM2がアンモニウムである自己分散型カーボンブラックは、例えば、M2がアルカリ金属である自己分散型カーボンブラックを用い、これをイオン交換法を用いてM2をアンモニウムに置換する方法や、酸を加えてH型とした後に、水酸化アンモニウムを添加してM2をアンモニウムにする方法などが挙げられる。
【0028】
アニオン性に帯電している自己分散型カーボンブラックの製造方法としては、例えば、カーボンブラックを次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法などが挙げられる。この方法によれば、カーボンブラック表面に、親水性基である−COONa基を化学結合させることができる。
【0029】
ところで、上記したような種々の親水性基は、カーボンブラックの表面に直接結合させてもよいし、あるいは他の原子団をカーボンブラック表面と上記したような親水性基との間に介在させ、親水性基をカーボンブラック表面に間接的に結合させてもよい。ここで他の原子団の具体例としては、例えば、炭素原子数1〜12の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、置換もしくは未置換のフェニレン基、置換もしくは未置換のナフチレン基が挙げられる。ここでフェニレン基およびナフチレン基の置換基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。また、他の原子団と親水性基の組合わせの具体例としては、例えば、−C24−COO(M2)、−Ph−SO3(M22、−Ph−COO(M2)(但し、Phはフェニル基を表す)などが挙げられる。
【0030】
ところで、本発明においては、上記に挙げた自己分散型カーボンブラックの中から2種もしくはそれ以上を適宜選択してインクの着色剤としてもよい。インク中に含有させるこれらの自己分散型カーボンブラックの添加量としては、インク全重量に対して、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%の範囲内とする。この範囲内で含有させれば、上記のような自己分散型カーボンブラックは、インク中において十分な分散状態を維持することができる。本発明に係るインクを作製する場合には、インクの調色などを目的として、上記自己分散型カーボンブラックに加えて公知の染料を着色剤としてさらに添加してもよい。
【0031】
上記した種々の自己分散型カーボンブラックのうち、カーボンブラックの表面に結合させる下記の親水性基としては、特に、M2がアンモニウムや有機アンモニウムである場合が好ましいことについては上記した通りである。
−COO(M2)、−SO3(M22、−PO3H(M2)、−PO3(M22(但し、式中のM2は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表わす。)
【0032】
本発明者らの検討によれば、本発明に係るインクにおいては、さらにこれに加えて、上記自己分散型カーボンブラックに組み合わせる下記に挙げる塩の中でも、下記式中のM1が、上記のM2と一致しているものを使用することが好ましいことが分かった。
(M12SO4、CH3COO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO3、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M12SO3、および(M12CO3(但し、M1はアルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表わし、Phはフェニル基を表わす。)
【0033】
すなわち、本発明者らは、自己分散型カーボンブラックを含むインクに対して塩を加えることの効果の検討過程において、自己分散型カーボンブラックの親水性基のM2(カウンターイオン)とM1とを同一とした時に、インクの安定性が特に向上するという知見を得た。M1とM2とを一致させることでこのような効果が得られる理由は明らかではないが、このように構成すると、インク中において、併存する自己分散型カーボンブラックの親水性基のカウンターイオンと塩との間で塩交換が生じないため、自己分散型カーボンブラックの分散安定性がより安定に維持されるためではないかと推測している。
【0034】
そして、特に、上記のM1とM2との双方を、アンモニウムとした場合には、インク特性の安定化効果に加えて、記録画像の耐水性をより一層の向上させることができることが分かった。さらに、インクに含有させる塩として、Ph−COO(NH4)(安息香酸アンモニウム)を用いると、インクジェット記録を一時休止させた後のヘッドノズルからのインクの再吐出性においても、極めて優れた結果が得られることが分かった。
【0035】
さらに、本発明者らが鋭意検討した結果、上記したようなアニオン性に帯電した自己分散型カーボンブラックの中でも、表面官能基密度が1.8(μmol/m2)以上のカーボンブラックを用いると、先に説明したブリーディングを効果的に抑制するために必要な塩をインクに添加させた場合でも、長期保存によってインクが増粘してしまうといったことが発生せず、分散剤や分散助剤を添加することがなく、長期保存安定性にさらに優れたインクが得られることが分かった。
【0036】
この際の表面官能基密度の測定方法としては、例えば、カーボンブラックの分散液を精製し、カウンターイオンを全てナトリウムイオンとし、このナトリウムイオンをプローブ式ナトリウムイオン電極で測定し、分散体濃度から固形分当たりのppm換算するという方法がある。なお、カルボキシル基などの親水性基をカウンターイオンであるナトリウムイオンと同モル数だけ存在すると仮定して換算する。
【0037】
なお、本発明において表面官能基密度は、高すぎると自己分散型カーボンブラックがインク中で二次粒子を形成しにくくなり、多くの自己分散型カーボンブラックがインク中に一次粒子として存在するようになると考えられる。インク中で自己分散型カーボンブラックの多くが一次粒子として存在するようになると、本発明の一形態における画像濃度の向上効果が多少制限される場合があることが予想される。そのため、自己分散型カーボンブラックの表面官能基は、当該カーボンブラックがインク中で二次粒子を形成しにくくなるほどにまでは高めないことが最良の効果を得るうえでは好ましい。
【0038】
また、先に説明したように、塩が添加されている本発明に係るインクで画像を形成した場合、塩が添加される前のインクを使用した場合と比較して反射濃度(画像濃度)が増大するという効果が得られる。そして本発明者らによるさらなる詳細検討によれば、本発明に係るインクへの塩の添加効果は、平均粒径の大きな自己分散型カーボンブラックを色材として用いたインクにおいて顕著に発揮される。
【0039】
図12において、横軸はインク中の色材としての自己分散型カーボンブラックの平均粒径を表わし、縦軸は当該インクによって得られる画像の光学濃度(OD)を表わしている。そして図12は、色材として自己分散型カーボンブラックを含んでいるインクが塩を含んでいる場合と含んでいない場合とで、自己分散型カーボンブラックの平均粒径の変化が、各々のインクを用いて得られる画像の濃度にどのような影響を与えるかを示したものである。塩を添加したインク(実線a)と塩を添加しなかったインク(実線b)とで、得られる画像のODを対比すると、自己分散型カーボンブラックの平均粒径が大きくなるにつれて、塩を添加したインクによるODの向上効果が大きくなることが分かる。言い換えれば、図12に示した知見は、単にカーボンブラックの平均粒径を大きくすることが、ODの大幅な向上に直接的に結びつかない場合があることを示しているのである。
【0040】
このような現象が生じる理由は明らかでないが、自己分散型カーボンブラックが、表面の官能基によってインク中に安定に分散させられている点にひとつの理由があると考えられる。つまり、自己分散型カーボンブラックは、図13に示すように、表面の官能基密度を高めた場合、ODが低下する傾向にある。これは、表面官能基密度を高めたことで、カーボンブラックの分散性が向上したことによるものと考えられる。分散性の向上自体は、自己分散型カーボンブラックをインクジェット用インクに適用する上で好ましいことであるが、インクとして被記録媒体に付与されたときには、溶剤と共に被記録媒体中に浸透し易くなっているためであると考えられる。
【0041】
ここで、図12において、所定の平均粒径(x1)を有するカーボンブラックAを含むインクaと、それよりも相対的に大きな平均粒径(x2)を有するカーボンブラックBを含むインクと比較して、カーボンブラックAが塩を含むことで、それよりも相対的に大きな平均粒径(x2)を有するカーボンブラックBを含むインクでほぼ同程度のODが達成可能となるのは、カーボンブラックBが被記録媒体中に浸透してしまっているのに対し、カーボンブラックAは、塩の作用によって被記録媒体表面での迅速な固液分離が生じ、カーボンブラックBよりも粒径が小さいにも関わらず、被記録媒体中に浸透しづらくなるためにカーボンブラックBと同程度のODが得られたと考えられるものである。
【0042】
そしてカーボンブラックBと塩とを含むインクが、図12に示したように非常に高いODを示す理由は、先に述べたように塩の作用による迅速な固液分離によって、被記録媒体の内部にカーボンブラックが浸透してしまうことが効果的に抑制され、粒径の大きなカーボンブラックを用いたことの効果が最大限に発揮された結果であると考えられる。
【0043】
粒径の大きな自己分散型カーボンブラックと塩とを併用することによって高いODが獲得できることの効果は、ある特定の粒径から急に享受できるようになるような臨界的なものではないが、例えば、自己分散型カーボンブラックとして平均粒径を90nm以上のものを用いた場合に、塩の添加によるOD向上の効果が視覚的にも明確に認識し易くなる。これば、インク中の自己分散型アニオンカーボンブラックの平均粒径が小さいと、カーボン自身の反射濃度が低いために、塩の添加による反射濃度の増大効果はあまり大きくない。一方、自己分散型アニオンカーボンブラックの平均粒径が大きくなると、カーボン自身の反射濃度が高まるために、塩の添加による反射濃度の増大効果がより顕著となる。以上の観点から、本発明に用いる自己分散型アニオンカーボンブラックの平均粒径は、90nm以上であることが、塩の添加による効果を最大限に享受できるという点で、最も好ましい。
【0044】
また、本発明における自己分散型アニオンカーボンブラックの平均粒径は、以下に定義する。平均粒径は、動的散乱法の原理に基づき求めたキュムラント平均とする。この平均粒径を測定するためには、例えば、ELS−800(大塚電子製)などの市販の装置を用いれば容易に測定することが可能である。
【0045】
本発明に係るインクは、上記で説明したような表面官能基密度が特定の値を有する自己分散型アニオンカーボンブラックを着色剤とし、これに先に説明したような塩を共存させることによって、記録媒体の種類によって(特に、記録媒体のインクの浸透性に拘らず)画像品質が大きく変化することがなく、高品位の画像を安定して形成することができるという優れた特性を有するインクとなる。このようなインクが上記したような特性を発揮する詳細なメカニズムは現時点においては明らかでない。
【0046】
しかし、インクの記録媒体への浸透性を表す尺度として知られているブリストウ法によって求められるKa値に関して、本発明に係るインクは、塩を添加しない以外は同一の組成を有するインクと比較して、大きなKa値を示すとの知見を本発明者らは得ている。Ka値の増大は、インクの記録媒体への浸透性が向上したことを示すものであり、これまでの当業者の常識としては、インクの浸透性の向上は、画像濃度の低下を意味するものであった。すなわち、インクの浸透と共に着色剤も記録媒体内部に深く浸透してしまい、結果として画像濃度の低下が生じるというのがこれまでの当業者の認識であり、この認識からすると、塩を添加しない以外は同一の組成を有するインクと比較して大きなKa値を示す本発明に係るインクは、高画像濃度および高品位画像が得られないということになる。
【0047】
以上のような本発明に係るインクに関する種々の知見から総合的に判断すると、当該インク中に含まれる上記特定の塩は、記録媒体(例えば、紙)上に付与された後のインク中の液媒体と固形分との分離(固液分離)を極めて速やかに引き起こすという特異的な作用を生じさせていると考えられる。つまり、インクが記録媒体に付与された際に固液分離が遅ければ、Kaの値の大きいインク、あるいはインク浸透性の大きな記録媒体上では、インクは色材と共に等方的に記録媒体中に拡散し、その結果、文字のシャープネス(文字品位)が損なわれると同時に、記録媒体の奥深くまでインクが浸透するために画像濃度も低下することが予測される。しかし、本発明に係るインクでは、そのような現象が観察されないことから、記録媒体に付与された際に、インクの固液分離が速やかに起こり、その結果、インクのKa値が増加したものであるにも関わらず、高画像濃度、高発色および高品位な画像を与えるものと推察される。また、浸透性が比較的高い記録媒体であっても、本発明に係るインクの場合には、文字品位の低下や画像濃度の低下といった現象が起こり難い理由もこれと同じと考えられる。
【0048】
以下、この点について、図10および図11に基づきさらに説明する。
図10(A)〜(C)および図11(A)〜(C)は、各々、上記特定の塩を含むインクおよび含まないインクを、各々インクジェット記録方式によってオリフィスから吐出させ、浸透性の高い記録媒体に付与した際に、そこで生じる固液分離の様子を、模式的且つ概念的に示した説明図である。
【0049】
すなわち、インクが記録媒体に着弾した直後には、双方のインク共に、図10(A)および図11(A)に示すように、塩の添加の有無に関わらずインク1001または1101が記録媒体表面に乗った状態である。時間T1経過後、塩を添加したインク1001は、図10(B)に示すように、固液分離が速やかに起こり、インク中の固体成分の殆どが豊富に含まれる領域1005と、インク中の液媒体とが分離し、分離した液媒体の浸透先端1007が記録媒体1003内部へと進んでいく。一方、塩を添加しないインク1101では、図11(B)に示すように、塩を添加したインク程には固液分離が速やかに起こらないために、固液分離されない状態1105で記録媒体1103内部へと浸透していく。
【0050】
時間T2経過後、塩を添加したインク1001は、図10(C)に示すように液媒体の浸透先端1007がさらに紙内部へと浸透していくが、領域1005は記録媒体の表面とその近傍に留まったままで維持される。一方、塩を添加していないインク1101では、図11(C)に示すように、この時点において漸く固液分離が始まり、インク中の固形分の浸透先端1107と液媒体の浸透先端1109との間に差が生じてくるものの、インク中の固形分含有領域1111は記録媒体の深部にまで到達してしまっている。なお、上記説明における時間T1およびT2は、塩の有無による固液分離の相違を概念的に捉えるための目安の時間である。
【0051】
以上の説明から明らかなように、インクに特定の塩を添加することで、記録媒体表面においてインクの固液分離が速やかに起こるため、インク着弾後、比較的速い段階で固液分離が始まると共に顔料などが記録媒体上に残り、液媒体などが記録媒体内部へと浸透するようになるために、上記効果を生じるものであると推察している。すなわち、特定の塩を添加することにより、形成される画像の画像濃度および画像品位が、記録媒体の浸透性の大小などによって影響され難くなっていると考えられる。そして、上記した特定の塩の中でも、前記したように、安息香酸塩(例えば、安息香酸アンモニウムなど)は、自己分散型カーボンブラックとの相性がよく、具体的には、記録媒体に付与したときの固液分離効果が特に優れるため、かかるインクは種々の記録媒体に特に優れた品質の記録画像を形成することができる。
【0052】
本発明に係るインクは、塩を添加したことのさらなる他の効果として、間欠吐出性に優れているという点が挙げられる。ここで、間欠吐出性とは、記録ヘッドの所定のノズルに着目し、そのノズルからインクを吐出し、その後のインクの予備吐出やノズル内のインクの吸引を行うこと無しに所定の時間放置し、その後、再びそのノズルからインクを吐出した時に、再吐出の最初から正常にインクが吐出するか否かを評価するものである。
【0053】
本発明者らの検討によれば、上記に挙げた種々の優れた効果は、前述した塩を、インク全量に対して0.05〜10重量%の範囲内で、特には、0.1〜5重量%の範囲内で含有させた場合に最も良好に得られることが分かった。さらに、着色剤として含有させる自己分散型カーボンブラックの含有量としては、インク全重量に対して、0.1〜15重量%の範囲とすることが好ましく、本発明に係るインク中の自己分散型カーボンブラックおよび塩の含有量を、いずれも上記範囲内として調整することで、より一層優れた効果が得られる。
(媒体)
【0054】
次に、本発明に係るインクの媒体について説明する。本発明に係るインクは、上述した塩および自己分散型カーボンブラックとを含有してなるが、これらは、通常、水性媒体に溶解乃至分散されて水性インクを構成する。水性媒体としては、例えば、水、あるいは水と水溶性有機溶媒との混合溶媒が挙げられるが、本発明においては、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を使用することが好ましい。水溶性有機溶媒としては、インクの乾燥防止効果を有するものが特に好ましい。
【0055】
水溶性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトンまたはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むポリオール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの低級アルキルエーテルアセテート;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。上記のような水溶性有機溶媒は、単独でもあるいは混合物としても使用することができる。また、水としては脱イオン水を用いることが望ましい。
【0056】
本発明に係るインク中に含有される水溶性有機溶媒の量は特に限定されないが、インク全重量に対して3〜50重量%の範囲が好適である。また、インクに含有される水の量は、インク全重量に対して50〜95重量%の範囲が好適である。
【0057】
本発明に係るインクは、筆記具用インクやインクジェット記録用インクに用いることができる。本発明に係るインクは、特に、インクジェット記録用インクとして用いることが好ましい。インクジェット記録方法としては、インクに力学的エネルギーを作用させ、インク液滴を吐出する記録方法およびインクに熱エネルギーを加えてインクの発泡によりインク液滴を吐出する記録方法があるが、本発明に係るインクは、これらの何れの記録方法にも好適である。
【0058】
ところで、本発明に係るインクをインクジェット記録用に用いる場合には、インクジェット記録ヘッドから吐出可能である特性を有するように調整することが好ましい。インクジェット記録ヘッドからの吐出性という観点からは、インクの特性としては、例えば、その粘度が1〜15cPs、表面張力が25mN/m(dyn/cm)以上とすることが好ましく、特には、粘度が1〜5cPs、表面張力が25〜50mN/m(dyn/cm)とすることがより好ましい。
【0059】
また、インクの記録媒体への浸透性を表わす尺度として、ブリストウ法によって求められるKa値があるが、本発明に係るインクにおいては、この値が特定値を示すように調整することが好ましい。すなわち、インクの浸透性を1m2あたりのインク量をVで表わすと、インク滴を吐出してから所定時間tが経過した後におけるインクの記録媒体への浸透量V(mL/m2=μm)は、下記に示すブリストウの式によって示される。
V=Vr+Ka(t−tw)1/2
【0060】
ここでインク滴が記録媒体表面に付着した直後には、インクは記録媒体表面の凹凸部分(記録媒体の表面の荒さの部分)において吸収されるのが殆どで、記録媒体内部へは殆ど浸透していない。その間の時間がコンタクトタイム(tw)であり、このコンタクトタイムに記録媒体の凹凸部に吸収されたインク量がVrである。そしてインクが付着した後、コンタクトタイムを超えると、該コンタクトタイムを超えた時間、すなわち、(t−tw)の1/2乗べきに比例した分だけ記録媒体への浸透量が増加する。Kaはこの増加分の比例係数であり、浸透速度に応じた値を示す。そして、Ka値はブリストウ法による液体の動的浸透性試験装置(例えば、商品名:動的浸透性試験装置S;東洋精機製作所製など)などを用いて測定可能である。
【0061】
本発明に係るインクにおいては、このKa値が1.5未満となるように調整することが記録画像の品質をより一層向上させる上で好ましい。さらには、Ka値が0.2以上1.5未満となるように本発明に係るインクを調整することがより好ましい。すなわち、Ka値が1.5未満であると、本発明に係るインクは、記録媒体への浸透過程のより早い段階で固液分離を起こすようになるため、フェザリングが極めて少ない高品質な画像を形成することができるものと思われる。
【0062】
なお、上記したブリストウ法によるKa値は、普通紙(例えば、キヤノン株式会社製の電子写真方式を用いた複写機やページプリンタ(レーザビームプリンタ)やインクジェット記録方式を用いたプリンタ用として用いられるPB紙や、電子写真方式を用いた複写機用の紙であるPPC用紙など)を記録媒体として用いて測定した値である。また、測定環境としては、通常のオフィス環境、例えば、温度20〜25℃、湿度40〜60%を想定している。
【0063】
そして、本発明に係るインクに上記したような特性を担持させられる好ましい水性媒体の組成としては、前述のものの中でも、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、チオジグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソプロピルアルコール、およびアセチレンアルコールなどを含むものが挙げられる。特に、上記したように、Ka値を1.5未満とする場合には、アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物(商品名:アセチレノール、川研ファインケミカル製)などの界面活性剤や浸透性溶剤などを、適宜所定量添加することによって達成できる。
【0064】
さらに上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインクとするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、酸化防止剤などを添加することができ、さらに、調色などを目的として、市販の水溶性染料などを添加してもよい。
【0065】
(インクセット)
次に、本発明に係るインクセットについて説明する。本発明に係るインクセットは、上記で説明した構成を有する本発明に係るインク(黒色インク)と、シアン用、マゼンタ用、イエロー用、レッド用、グリーン用およびブルー用の色材から選ばれる少なくとも1つの色材を含む水性のカラーインクとが少なくとも組み合わされて構成されていることを特徴とする。すなわち、本発明に係るインクセットは、本発明に係るブラックインクを、イエロー用の色材を含むカラーインク、マゼンタ用の色材を含むカラーインク、シアン用の色材を含むカラーインク、レッド用の色材を含むカラーインク、ブルー用の色材を含むカラーインクおよびグリーン用の色材を含むカラーインクから選ばれる少なくとも1つのカラーインクと組み合わせることによってカラー画像の形成に好適に用い得るインクセットとすることができる。そしてこのようなインクセットを用いて黒色画像部およびカラー画像部と隣接するような記録を行った場合、カーボンブラックを含む本発明に係るインクによって形成された画像と、他の色材を含むインクによって形成された画像との境界領域におけるブリーディングを極めて有効に抑えることができる。
【0066】
このようなインクセットがブリーディングを有効に抑制できる理由は明らかではないが、記録媒体表面における本発明に係るインクの固液分離の速さが関与しているものと考えられる。本発明に係るブラックインクに、自己分散型カーボンブラックに塩を共存させたことの効果として、該ブラックインクが記録媒体に付着した後の固液分離と、それに引き続く着色剤の固化が速やかに起こる結果、カラー画像の境界部において黒色インクがカラーインク側に滲み出にくくなっているためと考えられる。
【0067】
本発明に係るインクと組み合わせてインクセットを構成する場合のカラーインクを調製する場合に用いる着色剤としては、下記に挙げるような公知の染料や顔料を用いることができる。他のインク中に含有させる着色剤の含有量としては、インク全重量に対して、0.1〜15重量%、特には1〜10重量%の範囲とすることが好ましい。
【0068】
まず、他のインク中に含有させる染料としては、例えば、酸性染料、反応染料、直接染料、食用染料などを用いることができる。これらのアニオン性染料としては既存のものでも、新規に合成したものでもよく、画像を形成した場合に、適度な色調と濃度を有する画像が得られるものであれば大抵のものを用いることができる。また、これらのうちのいずれかを混合して用いることも可能である。
【0069】
下記に、他のインクに用いることのできるアニオン性染料の具体例について、インクの色調別に例示する。
(イエロー用の色材)
C.I.ダイレクトイエロー:8、11、12、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、100、110
C.I.アシッドイエロー:1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、76、98、99
C.I.リィアクティブイエロー:2、3、17、25、37、42
C.I.フードイエロー:3
【0070】
(レッド用の色材)
C.I.ダイレクトレッド:2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230
C.I.アシッドレッド:6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、42、51、52、80、83、87、89、92、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289
C.I.リィアクティブレッド:7、12、13、15、17、20、23、24、31、42、45、46、59
C.I.フードレッド:87、92、94
【0071】
(ブルー用の色材)
C.I.ダイレクトブルー:1、15、22、25、41、76、77、80、86、90、98、106、108、120、158、163、168、199、226
C.I.アシッドブルー:1、7、9、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、100、102、104、117、127、138、158、161
C.I.リィアクティブブルー:4、5、7、13、14、15、18、19、21、26、27、29、32、38、40、44、100
【0072】
(ブラック用色材)
C.I.ダイレクトブラック:17、19、22、31、32、51、62、71、74、112、113、154、168、195
C.I.アシッドブラック:2、48、51、52、110、115、156
C.I.フードブラック1、2
【0073】
さらに、カラーインクを調製する際に用いる溶媒または分散媒としては、例えば、水、あるいは水と水溶性有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒としては、前記した本発明に係るインクに使用するものと同様のものが使用できる。また、上記のカラーインクをインクジェット記録方法(例えば、バブルジェット法など)で記録媒体に付着させる場合には、本発明に係るインクの場合と同様に、優れたインクジェット吐出特性を有するように、カラーインクが、前述した所望の粘度、表面張力を有するように調製することが好ましい。
【0074】
カラーインク中に含有させる水溶性有機溶媒の含有量は、例えば、インクジェット記録に用いる場合には、該インクが優れたインクジェット吐出特性を備え、また、所望の色調や濃度を有するように適宜選択すればよいが、目安としては、インク全重量に対して3〜50重量%の範囲が好ましい。また、インクに含有される水の量は、インク全重量に対して50〜95重量%の範囲が好ましい。
【0075】
上記カラーインクに関しては、先に説明したインクの記録媒体への浸透性を表す尺度として知られているブリストウ法によって求められるKa値が、例えば、5以上のインクになるように調製すれば、本発明に係るブラックインクと組み合わせて使用した場合に、記録媒体上により高品質なカラー画像を形成することができるので好ましい。すなわち、このようなKa値を有するインクは記録媒体への浸透性が高いため、例えば、イエロー、マゼンタおよびシアンから選ばれる少なくとも2つの色の画像を隣接して記録するような場合においても、隣接する画像間で色の滲み(ブリーディング)を抑えることができ、また、これらのインクを重ね打ちして2次色の画像を形成する場合でも、各々のインクの浸透性が高いため、隣接する異なる色の画像との間でのブリーディングの発生を有効に抑えることができる。カラーインクのKa値をこのような値に調製する方法としては、例えば、インク中への界面活性剤の添加、あるいはグリコールエーテルなどの浸透性溶剤の添加などの従来公知の方法が適用できる。勿論、添加量は、上記Ka値との兼ね合いにおいて適宜に調節すればよい。
【0076】
次に、上記した構成の本発明に係るインクまたはインクセットを好適に用いることができるインクジェット記録装置について説明する。インクジェット記録装置として、インクの吐出に熱エネルギーを利用する装置の主要部であるヘッド構成例を、図1および図2に示した。
【0077】
図1は、インク流路に沿ったヘッド13の断面図であり、図2は、図1のA−B線での切断面図である。ヘッド13は、インクを通す流路(ノズル)14を有するガラス、セラミック、シリコンまたはプラスチック板などと、発熱素子基板15とを接着して得られる。発熱素子基板15は、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコンなどで形成される保護層16、アルミニウム、金、アルミニウム−銅合金などで形成される電極17−1および17−2、HfB2、TaN、TaAlなどの高融点材料から形成される発熱抵抗体層18、熱酸化シリコン、酸化アルミニウムなどで形成される蓄熱層19、シリコン、アルミニウム、窒化アルミニウムなどの放熱性のよい材料で形成される基板20より成り立っている。
【0078】
上記ヘッド13の電極17−1および17−2にパルス状の電気信号が印加されると、発熱素子基板15のnで示される領域が急速に発熱し、この表面に接しているインクに気泡が発生し、その発生する圧力でメニスカス23が突出し、インクがヘッド13のノズル14を通して吐出し、吐出オリフィス22よりインク小滴24となり、記録媒体25に向かって飛翔する。
【0079】
図3に、図1に示したヘッドを多数並べたマルチヘッドの外観図を示した。このマルチヘッドは、マルチノズル26を有するガラス板27と、図1に説明したものと同じような発熱ヘッド28を接着して作られている。
図4に、このヘッド13を組み込んだインクジェット記録装置の一例を示す。図4において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブレード保持部材によって保持固定されており、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、また、本例の場合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。
【0080】
62は、記録ヘッド65の突出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配置され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。さらに、63は、ブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様に記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62およびインク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61およびインク吸収体63によって吐出口面に水分や塵埃などの除去が行われる。
【0081】
65は、吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は、記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66は、ガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモーター68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域およびその隣接した領域の移動が可能となる。51は、記録媒体を挿入するための給紙部、52は、不図示のモーターにより駆動される紙送りローラーである。
【0082】
これらの構成により、記録ヘッド65の吐出口面と対向する位置へ記録媒体が給紙され、記録が進行につれて排紙ローラー53を配した排紙部へ排紙される。以上の構成において、記録ヘッド65が記録終了してホームポジションへ戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。その結果、記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。
【0083】
なお、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62およびブレード61は上記したワイピングの時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。
上述の記録ヘッド65のホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
【0084】
図5は、記録ヘッドにインク供給部材、例えば、チューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジ45の一例を示す図である。ここで40は、供給用インクを収納したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能にする。44は、廃インクを受容するインク吸収体である。インク収容部としてはインクとの接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。
【0085】
本発明に係るインクまたはインクセットを好適に用いることができるインクジェット記録装置としては、上述のようにヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、図6に示すようなそれらが一体になったものにも好適に用いられる。図6において、70は記録ユニットであり、この中にはインクを収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中のインクが複数オリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。インク吸収体の材料としてはポリウレタンを用いることが好ましい。
【0086】
また、インク吸収体を用いず、インク収容部が内部にバネなどを仕込んだインク袋であるような構造でもよい。72は、カートリッジ内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニット70は、図4に示す記録ヘッド65に代えて用いられるものであって、キャリッジ66に対して着脱自在になっている。
【0087】
次に、力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置の形態として、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させるオンデマンドインクジェット記録ヘッドを挙げる。その記録装置の主要部である記録ヘッドの構成例を図7に示す。
ヘッドは、インク室(不図示)に連通したインク流路80と、所望の体積のインク滴を吐出するためのオリフィスプレート81と、インクに直接圧力を作用させる振動板82と、この振動板82に接合され、電気信号により変位する圧電素子83と、オリフィスプレート81と、振動板などを指示固定するための基板84とから構成されている。
【0088】
図7において、インク流路80は、感光性樹脂などで形成され、オリフィスプレート81は、ステンレス、ニッケルなどの金属を電鋳やプレス加工による穴あけなどにより吐出口85が形成され、振動板82は、ステンレス、ニッケル、チタンなどの金属フィルムおよび高弾性樹脂フィルムなどで形成され、圧電素子83は、チタン酸バリウム、PZTなどの誘電体材料で形成される。
【0089】
以上のような構成の記録ヘッドは、圧電素子83にパルス状の電圧を与え、ひずみ応力を発生させ、そのエネルギーが圧電素子83に接合された振動板を変形させ、インク流路80内のインクを垂直に加圧しインク滴(不図示)をオリフィスプレートの吐出口85より吐出して記録を行うように動作する。このような記録ヘッドは、図4に示したものと同様な記録装置に組み込んで使用される。記録装置の細部の動作は先述と同様に行うもので差し支えない。
【0090】
本発明に係るインクセットを用いてカラー画像を記録する場合には、例えば、前記図3に示した記録ヘッドを4つキャリッジ上に並べた記録装置を好適に用いることができる。図9はその一例であり、91、92、93および94は、各々イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのインクを吐出するための記録ユニットである。該記録ユニットは、前記した記録装置のキャリッジ上に配置され、記録信号に応じて各色のインクを吐出する。
【0091】
また、図9では記録ユニットを4つ使用した例を示したが、これに限定されず、例えば、図8に示したように、1つの記録ヘッドで上記の4色のインクを各々含むインクカートリッジ86〜89から供給される各色のインクを、各々個別に吐出させることができるようにインク流路を分けて構成した記録ヘッド90に取付けて記録を行なうこともできる。
【0092】
次に本発明に好適に使用できる記録装置および記録ヘッドの他の具体例を説明する。図14は、吐出時に気泡を大気と連通する吐出方式の液体吐出ヘッドとしての液体吐出ヘッドおよびこのヘッドを用いる液体吐出装置としての本発明に係るインクジェットプリンタの一例の要部を示す概略斜視図である。
【0093】
図14においては、インクジェットプリンタは、ケーシング1008内に長手方向に沿って設けられる記録媒体としての用紙1028を、図14に示す矢印Pで示す方向に間欠的に搬送する搬送装置1030と、搬送装置1030による用紙1028の搬送方向Pに略直交する方向Sに略平行に往復運動せしめられる記録部1010と、記録部1010を往復運動させる駆動手段としての移動駆動部1006とを含んで構成されている。
【0094】
移動駆動部1006は、所定の間隔をもって対向配置される回転軸に配されるプーリ1026aおよび1026bに巻きかけられるベルト1016と、ローラユニット1022aおよび1022bに略平行に配置され記録部1010のキャリッジ部材1010aに連結されるベルト1016を順方向および逆方向に駆動させるモータ1018とを含んで構成されている。
【0095】
モータ1018が作動状態とされてベルト1016が図14の矢印R方向に回転したとき、記録部1010のキャリッジ部材1010aは図14の矢印S方向に所定の移動量だけ移動される。また、モータ1018が作動状態とされてベルト1016が図14の矢印R方向とは逆方向に回転したとき、記録部1010のキャリッジ部材1010aは図14の矢印S方向とは反対の方向に所定の移動量だけ移動されることとなる。さらに、移動駆動部1006の一端部には、キャリッジ部材1010aのホームポジションとなる位置に、記録部1010の吐出回復処理を行うための回復ユニット1026が記録部1010のインク吐出口配列に対向して設けられている。
【0096】
記録部1010は、インクジェットカートリッジ(以下、単にカートリッジと記述する場合がある)1012Y、1012M、1012Cおよび1012Bが各色、例えば、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックごとにそれぞれ、キャリッジ部材1010aに対して着脱自在に備えられる。
【0097】
図15は上述のインクジェット記録装置に搭載可能なインクジェットカートリッジの一例を示す。本例におけるカートリッジ1012は、シリアルタイプのものであり、インクジェット記録ヘッド100と、インクなどの液体を収容する液体タンク1002とで主要部が構成されている。
【0098】
インクジェット記録ヘッド100は液体を吐出するための多数の吐出口832が形成されており、インクなどの液体は、液体タンク1002から図示しない液体供給通路を介して液体吐出ヘッド100の共通液室(図16参照)へと導かれるようになっている。カートリッジ1012は、インクジェット記録ヘッド100と液体タンク1002とを一体的に形成し、必要に応じて液体タンク1002内に液体を補給できるようにしたものであるが、この液体吐出ヘッド100に対し、液体タンク1002を交換可能に連結した構造を採用するようにしてもよい。
【0099】
このような構成のインクジェットプリンタに搭載され得る上述の液体吐出ヘッドの具体例を以下にさらに詳しく説明する。図16は本発明の基本的な形態を示す液体吐出ヘッドの要部を模式的に示す概略斜視図であり、図17〜図20は図11に示した液体吐出ヘッドの吐出口形状を示す正面図である。なお、電気熱変換素子を駆動するための電気的な配線などは省略している。
【0100】
本例の液体吐出ヘッドにおいては、例えば、図16に示されるような、ガラス、セラミックス、プラスチックあるいは金属などからなる基板934が用いられる。このような基板の材質は、本発明の本質ではなく、流路構成部材の一部として機能し、インク吐出エネルギー発生素子、および後述する液流路、吐出口を形成する材料層の支持体として、機能し得るものであれば、特に限定されるものではない。そこで、本例では、Si基板(ウエハ)を用いた場合で説明する。吐出口は、レーザー光による形成方法の他、例えば、後述するオリフィスプレート(吐出口プレート)935を感光性樹脂として、MPA(Mirror Projection Aliner)などの露光装置により形成することもできる。
【0101】
図16において934は電気熱変換素子(以下、ヒータと記述する場合がある)931および共通液室部としての長溝状の貫通口からなるインク供給口933を備える基板であり、インク供給口933の長手方向の両側に熱エネルギ発生手段であるヒータ931がそれぞれ1列ずつ千鳥状に電気熱変換素子の間隔が、例えば、300dpiで配列されている。この基板934上にはインク流路を形成するためのインク流路壁936が設けられている。このインク流路壁936には、さらに吐出口832を備える吐出口プレート935が設けられている。
【0102】
ここで、図16においてはインク流路壁936と吐出口プレート935とは、別部材として示されているが、このインク流路壁936を、例えば、スピンコートなどの手法によって基板934上に形成することによりインク流路壁936と吐出口プレート935とを同一部材として同時に形成することも可能である。本例では、さらに、吐出口面(上面)935a側は撥水処理が施されている。
本例では、図14の矢印S方向に走査しながら記録を行うシリアルタイプのヘッドを用い、例えば、1200dpiで記録を行う。駆動周波数は10kHzであり、一つの吐出口では最短時間間隔100μsごとに吐出を行うことになる。
【0103】
また、ヘッドの実例寸法の一例としては、例えば、図17に示すように、隣接するノズルを流体的に隔離する隔壁936aは、幅w=14μmである。図20に示すように、インク流路壁936により形成される発泡室1337は、N1(発泡室の幅寸法)=33μm、N2(発泡室の長さ寸法)=35μmである。ヒータ931のサイズは30μm30μmでヒータ抵抗値は53Ωであり、駆動電圧は 10.3Vである。また、インク流路壁936および隔壁936aの高さは12μmで、吐出口プレート厚は11μmのものが使用できる。
【0104】
吐出口832を含む吐出口プレートに設けられた吐出口部940の断面のうち、インクの吐出方向(オリフィスプレート935の厚み方向)に交差する方向で切断してみた断面の形状は概略星形となっており、鈍角の角を有する6つの起部832aと、これら起部832aの間に交互に配されかつ鋭角の角を有する6つの伏部832bとから概略構成されている。すなわち、吐出口の中心Oから局所的に離れた領域としての伏部832bをその頂部、この領域に隣接する吐出口の中心Oから局所的に近い領域としての起部832aをその基部として、図16に示すオリフィスプレートの厚み方向(液体の吐出方向)に6つの溝が形成されている。(溝部の位置については図21の1141a参照)
【0105】
本例においては、吐出口部940は、例えば、その厚み方向に交差する方向で切断した断面が一辺27μmの二つの正三角形を60度回転させた状態で組み合わせた形状となっており、図18に示すT1は8μmである。起部832aの角度はすべて120度であり、伏部832bの角度はすべて60度である。
【0106】
従って、吐出口の中心Oと、互いに隣接する溝の中心部(溝の頂部と、この頂部に隣接する2つの基部とを結んでできる図形の中心(重心))を結んで形成される多角形の重心Gとが一致するようになっている。本例の吐出口832の開口面積は400μm2であり、溝部の開口面積(溝の頂部と、この頂部に隣接する2つの基部とを結んでできる図形の面積)は1つあたり約33μm2となっている。図19は図18に示した吐出口の部分のインク付着状態を示す模式図である。
【0107】
次に、上述の構成のインクジェット記録ヘッドによる液体の吐出動作について図21〜図28を用いて説明する。図21〜図28は、図16〜図20に記載の液体吐出ヘッドの液体吐出動作を説明するための断面図であり、図20に示す発泡室1337のX−X断面図である。この断面において吐出口部940のオリフィスプレート厚み方向の端部は、溝1141の頂部1141aとなっている。
【0108】
図21はヒータ上に膜状の気泡が生成した状態を示し、図22は図21の約1μs後、図23は図21の約2μs後、図24は図21の約3μs後、図25は図21の約4μs後、図26は図21の約5μs後、図27は図21の約6μs後、図28は図21の約7μs後の状態をそれぞれ示している。なお、以下の説明において、「落下」または「落とし込み」、「落ち込み」とは、いわゆる重力方向への落下という意味ではなく、ヘッドの取り付け方向によらず、電気熱変換素子の方向への移動をいう。
【0109】
まず、図21に示すように、記録信号などに基づいたヒータ931への通電に伴いヒータ931上の液流路1338内に気泡101が生成されると、約2μs間に図22および図23に示すように急激に体積膨張して成長する。気泡101の最大体積時における高さは吐出口面935aを上回るが、このとき、気泡の圧力は大気圧の数分の1から10数分の1にまで減少している。
【0110】
次に、気泡101の生成から約2μs後の時点で気泡101は上述のように最大体積から体積減少に転じるが、これとほぼ同時にメニスカス102の形成も始まる。このメニスカス102も図24に示すようにヒータ931側への方向に後退、すなわち落下してゆく。
ここで、本例においては、吐出口部に複数の溝1141を分散させて有していることにより、メニスカス102が後退する際に、溝1141の部分ではメニスカス後退方向FMとは反対方向FCに毛管力が作用する。その結果、仮に何らかの原因により気泡101の状態に多少のバラツキが認められたとしても、メニスカスの後退時のメニスカスおよび主液滴(以下、液体またはインクと記述する場合がある)Iaの形状が、吐出口中心に対して略対称形状となるように補正される。
【0111】
そして、本例では、このメニスカス102の落下速度が気泡101の収縮速度よりも速いために、図25に示すように気泡の生成から約4μs後の時点で気泡101が吐出口832の下面近傍で大気に連通する。このとき、吐出口832の中心軸近傍の液体(インク)はヒータ931に向かって落ち込んでゆく。これは、大気に連通する前の気泡101の負圧によってヒータ931側に引き戻された液体(インク)Iaが、気泡101の大気連通後も慣性でヒータ931面方向の速度を保持しているからである。
【0112】
ヒータ931側に向かって落ち込んでいった液体(インク)は、図26に示すように気泡101の生成から約5μs後の時点でヒータ931の表面に到達し、図27に示すようにヒータ931の表面を覆うように拡がってゆく。このようにヒータ931の表面を覆うように拡がった液体はヒータ931の表面に沿った水平方向のベクトルを有するが、ヒータ931の表面に交差する、例えば、垂直方向のベクトルは消滅し、ヒータ931の表面上に留まろうとし、それよりも上側の液体、すなわち吐出方向の速度ベクトルを保つ液体を下方向に引っ張ることになる。
【0113】
その後、ヒータ931の表面に拡がった液体と上側の液体(主液滴)との間の液体部分Ibが細くなってゆき、気泡101の生成から約7μs後の時点で図28に示すようにヒータ1の表面の中央で液体部分Ibが切断され、吐出方向の速度ベクトルを保つ主液滴Iaとヒータ931の表面上に拡がった液体Icとに分離される。このように分離の位置は液流路1338内部、より好ましくは吐出口832よりも電気熱変換素子931側が望ましい。
【0114】
主液滴Iaは吐出方向に偏りがなく、吐出ヨレすることなく、吐出口832の中央部分から吐出され、記録媒体の被記録面の所定位置に着弾される。また、ヒータ931の表面上に拡がった液体Icは、従来であれば主液滴の後続としてサテライト滴となって飛翔するものであるが、ヒータ931の表面上に留まり、吐出されない。
【0115】
このようにサテライト滴の吐出を抑制することができるため、サテライト滴の吐出により発生し易いスプラッシュを防止することができ、霧状に浮遊するミストにより記録媒体の被記録面が汚れるのを確実に防止することができる。なお、図25〜28において、Idは溝部に付着したインク(溝内のインク)を、また、Ieは液流路内に残存しているインクを表している。
【0116】
このように、本例の液体吐出ヘッドでは、気泡が最大体積に成長した後の体積減少段階で液体を吐出する際に、吐出口の中心に対して分散した複数の溝により、吐出時の主液滴の方向を安定化させることができる。その結果、吐出方向のヨレのない、着弾精度の高い液体吐出ヘッドを提供することができる。また、高い駆動周波数での発泡ばらつきに対しても吐出を安定して行うことができることによる、高速高精細印字を実現することができる。
【0117】
特に、気泡の体積減少段階でこの気泡を始めて大気と連通させることで液体を吐出することにより、気泡を大気に連通させて液滴を吐出する際に発生するミストを防止できるので、所謂、突然不吐の要因となる、吐出口面に液滴が付着する状態を抑制することもできる。
【0118】
また、本発明に好適に使用できる、吐出時に気泡を大気と連通する吐出方式の記録ヘッドの他の実施形態として、例えば、日本特許登録第2783647号公報に記載のように、いわゆるエッジシュータータイプが挙げられる。
【0119】
本発明は、特にインクジェット記録方式の中でも熱エネルギーを利用して飛翔的液滴を形成し、記録を行うインクジェット方式の記録ヘッドおよび記録装置において優れた効果をもたらすものである。
【0120】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式はいわゆるオンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を越える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも一つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行なわれるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。
【0121】
このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行なうことができる。
【0122】
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体の組み合わせ構成(直線状液流路または直角液流路)の他に、熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書、米国特許第4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものである。
【0123】
加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138 461号公報に基づいた構成としても本発明は有効である。
【0124】
さらに、記録装置が記録できる最大記録媒体の幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドとしては、上述した明細書に開示されているような複数記録ヘッドの組み合わせによってその長さを満たす構成や、一体的に形成された1個の記録ヘッドとしての構成のいずれでもよいが、本発明は、上述した効果を一層有効に発揮することができる。
【0125】
加えて、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッド、あるいは記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。
【0126】
また、本発明の記録装置の構成として設けられる、記録ヘッドに対しての回復手段、予備的な補助手段などを付加することは本発明の効果を一層安定できるので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧あるいは吸引手段、電気熱変換体あるいはこれとは別の加熱素子あるいはこれらの組み合わせによる予備加熱手段、記録とは別の吐出を行う予備吐出モードを行うことも安定した記録を行うために有効である。
【0127】
さらに、記録装置の記録モードとしては黒色などの主流色のみの記録モードだけではなく、記録ヘッドを一体的に構成するか複数個の組み合わせによってでもよいが、異なる色の複色カラー、または混色によるフルカラーの少なくとも一つを備えた装置にも本発明は極めて有効である。
【0128】
以上説明した本発明の実施形態においては、インクを液体として説明しているが、室温やそれ以下で固化するインクであって、室温で軟化するもの、もしくは液体であるもの、あるいは上述のインクジェット方式ではインク自体を30℃以上70℃以下の範囲内で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあるように温度制御するものが一般的であるから、使用記録信号付与時にインクが液状をなすものであればよい。
【0129】
加えて、積極的に熱エネルギーによる昇温をインクの固形状態から液体状態への状態変化のエネルギーとして使用せしめることで防止するか、またはインクの蒸発防止を目的として放置状態で固化するインクを用いるかして、いずれにしても熱エネルギーの記録信号に応じた付与によってインクが液化し、液状インクとして吐出するものや、記録媒体に到達する時点では既に固化し始めるものなどのような、熱エネルギーによって初めて液化する性質のインクの使用も本発明には適用可能である。このような場合インクは、特開昭54−56847号公報あるいは特開昭60−71260号公報に記載されるような、多孔質シート凹部または貫通孔に液状または固形物として保持された状態で、電気熱変換体に対して対向するような形態としてもよい。本発明においては、上述した各インクに対して最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
【0130】
さらに加えて、本発明に係る記録装置の形態としては、ワードプロセッサやコンピュータなどの情報処理機器の画像出力端末として一体または別体に設けられるものの他、リーダと組み合せた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を採るものであってもよい。
【0131】
次に、上述した液体吐出ヘッドを搭載する液体吐出装置の概略について説明する。図29は、本発明の液体吐出ヘッドを装着して適用することのできる液体吐出装置の一例であるインクジェット記録装置600の概略斜視図である。
【0132】
図29において、インクジェットヘッドカートリッジ601は、上述した液体吐出ヘッドとこの液体吐出ヘッドに供給するインクを保持するインクタンクとが一体となったものである。このインクジェットヘッドカートリッジ601は、駆動モータ602の正逆回転に連動して駆動力伝達ギア603、604を介して回転するリードスクリュ605の螺旋溝606に対して係合するキャリッジ607上に搭載されており、駆動モータ602の動力によってキャリッジ607とともにガイド608に沿って矢印a、b方向に往復移動される。被記録材Pは、図示しない被記録材搬送手段によってプラテンローラ609上を搬送され、紙押え板610によりキャリッジ607の移動方向にわたってプラテンローラ609に対して押圧される。
【0133】
リードスクリュ605の一端の近傍には、フォトカプラ611、612が配設されている。これらはキャリッジ607のレバー607aのこの域での存在を確認して駆動モータ602の回転方向切り換えなどを行うためのホームポジション検知手段である。
【0134】
支持部材613は、上述のインクジェットヘッドカートリッジ601の吐出口のある前面(吐出口面)を覆うキャップ部材614を支持するものである。また、インク吸引手段615は、キャップ部材614の内部にインクジェットヘッドカートリッジ601から空吐出などされて溜まったインクを吸引するものである。このインク吸引手段615によりキャップ内開口部(不図示)を介してインクジェットヘッドカートリッジ601の吸引回復が行われる。インクジェットヘッドカートリッジ601の吐出口面を払拭するためのクリーニングブレード617は、移動部材618により前後方向(上記キャリッジ607の移動方向に直交する方向)に移動可能に設けられている。これらクリーニングブレード617および移動部材618は、本体支持体619に支持されている。クリーニングブレード617は、この形態に限らず、他の周知のクリーニングブレードであってもよい。
【0135】
液体吐出ヘッドの吸引回復操作にあたって、吸引を開始させるためのレバー620は、キャリッジ607と係合するカム621の移動に伴って移動し、駆動モータ602からの駆動力がクラッチ切り換えなどの公知の伝達手段で移動制御される。インクジェットヘッドカートリッジ601の液体吐出ヘッドに設けられた発熱体に信号を付与したり、前述した各機構の駆動制御を司ったりするインクジェット記録制御部は装置本体側に設けられており、ここには図示しない。
【0136】
上述の構成を有するインクジェット記録装置600は、図示しない被記録材搬送手段によりプラテンローラ609上を搬送される被記録材P’に対し、インクジェットヘッドカートリッジ601は被記録材P’の全幅にわたって往復移動しながら記録を行う。
【0137】
【実施例】
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、下記実施例により限定されるものではない。なお、以下の記載で、「部」および「%」とあるものは特に断らない限り重量基準である。
【0138】
<顔料分散体1>
比表面積が260m2/gでDBP吸油量が115ml/100gのカーボンブラック10gと、p−アミノ安息香酸2.5gとを水72gによく混合した後、これに硝酸1.62gを滴下して70℃で攪拌した。ここにさらに数分後、5gの水に1.07gの亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を加え、さらに1時間攪拌した。得られたスラリーを濾紙(商品名:東洋濾紙No.2;アドバンティス社製)で濾過し、濾取した顔料粒子を十分に水洗し、90℃のオーブンで乾燥させた。さらに、この顔料に水を足して顔料濃度10重量%の顔料分散体を作製した。以上の方法によりカーボンブラックの表面に下記化学式に示される基を導入した。
【0139】
【化1】
Figure 0004510256
【0140】
なお、上記で作製した自己分散型カーボンブラックの表面官能基密度を下記のようにして測定したところ、2.31μmol/m2であった。測定方式としては、イオンメーター(DKK製)を用いナトリウムイオン濃度を測定し、その値から表面官能基密度を換算した。
また、上記で作製した自己分散型カーボンブラックの平均粒径を下記のようにして測定したところ、94nmであった。測定方式としては、粒径測定機ELS−800(大塚電子製)を用い、上記顔料分散体を2000倍希釈して測定し、動的散乱法の原理に基づき求めたキュムラント平均とした。
【0141】
<顔料分散体2>
比表面積が260m2/gでDBP吸油量が115ml/100gのカーボンブラック10gと、p−アミノ安息香酸0.5gとを水72gによく混合した後、これに硝酸1.62gを滴下して70℃で攪拌した。ここにさらに数分後、5gの水に1.07gの亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を加え、さらに1時間攪拌した。得られたスラリーを濾紙(商品名:東洋濾紙No.2;アドバンティス社製)で濾過し、濾取した顔料粒子を十分に水洗し、90℃のオーブンで乾燥させた。さらに、この顔料に水を足して顔料濃度10重量%の顔料分散体を作製した。以上の方法によりカーボンブラックの表面に下記化学式に示される基を導入した。
【0142】
【化2】
Figure 0004510256
【0143】
上記で作製した自己分散型カーボンブラックの表面官能基密度および平均粒径を上記方法と同様に測定したところ、表面官能基密度が0.96μmol/m2、平均粒径が94nmであった。
【0144】
<顔料分散体3>
比表面積が240m2/gでDBP吸油量が65ml/100gのカーボンブラック10gと、p−アミノ安息香酸1.2gとを水72gによく混合した後、これに硝酸1.62gを滴下して70℃で攪拌した。ここにさらに数分後、5gの水に1.07gの亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を加え、さらに1時間攪拌した。得られたスラリーを濾紙(商品名:東洋濾紙No.2;アドバンティス社製)で濾過し、濾取した顔料粒子を十分に水洗し、90℃のオーブンで乾燥させた。さらに、この顔料に水を足して顔料濃度10重量%の顔料分散体を作製した。以上の方法によりカーボンブラックの表面に下記化学式に示される基を導入した。
【0145】
【化3】
Figure 0004510256
【0146】
上記で作製した自己分散型カーボンブラックの表面官能基密度および平均粒径を上記方法と同様に測定したところ、表面官能基密度が2.26μmol/m2、平均粒径が85nmであった。
【0147】
次に、上記の各顔料分散体を用いてブラックインク1〜3を下記の方法にて調整した。
<実施例1>
(ブラックインク1)
以下の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過してブラックインク1を調製した。
・上記の顔料分散体1 30部
・安息香酸アンモニウム 1部
・トリメチロールプロパン 6部
・グリセリン 5部
・ジエチレングリコール 5部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加
物(商品名:アセチレノールEH) 0.15部
・水 52.85部
【0148】
<実施例2>
(ブラックインク2)
以下の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過してブラックインク2を調製した。
・上記の顔料分散体3 30部
・安息香酸アンモニウム 1部
・トリメチロールプロパン 6部
・グリセリン 5部
・ジエチレングリコール 5部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加
物(商品名:アセチレノールEH) 0.15部
・水 52.85部
【0149】
<比較例1>
(ブラックインク3)
以下の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過し、ブラックインク3を調製した。
・上記の顔料分散体2 30部
・安息香酸アンモニウム 1部
・トリメチロールプロパン 6部
・グリセリン 5部
・ジエチレングリコール 5部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加
物(商品名:アセチレノールEH) 0.15部
・水 52.85部
【0150】
このようにして得た実施例1、2および比較例1のブラックインクの主な特徴を下記第1表にまとめて示した。
【表1】
Figure 0004510256
【0151】
<評価>
上記の実施例1、2および比較例1の各ブラックインクを用いて、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置BJF−600(キヤノン製)を用いて下記の評価を行った。その結果を表2に示した。
【0152】
1)間欠吐出性
上記各インクを上記インクジェット記録装置を、15℃/10%の恒温恒湿槽に1時間放置し、その後、各ノズルから1ドットずつ吐出させて、5秒後、また、各ノズルから1ドットずつ吐出させる印字サイクルを10回繰り返した。その各1ドットの印字を下記の基準で評価した。
a:10回の印字サイクルの全てで全ノズルの印字の乱れが全くない。
b:10回の印字サイクルの全てで全ノズルの印字の乱れが殆どない。
c:10回の印字サイクルで実際の使用上では問題ないレベルの印字の乱れがある。
d:10回の印字サイクルで印字の乱れがある。
【0153】
評価に用いた記録媒体としてのコピー用普通紙A〜Eには、下記のものを使用した。以下におけるコピー用普通紙A、B、C、D、Eは全てこのコピー用普通紙A、B、C、D、Eに対応するものとする。
A:キヤノン(株)社製 PPC用紙NSK
B:キヤノン(株)社製 PPC用紙NDK
C:ゼロックス(株)社製 PPC用紙4024
D:フォックスリバー社製 PPC用紙プローバーボンド
E:ノイジドラ社製 キヤノン用PPC用紙
【0154】
2)印字濃度
上記の各記録媒体に印字を行い、その時の印字濃度を、マクベス製印字濃度測定器を用い測定し、下記の基準で評価した。
a:コピー用普通紙A、B、C、D、Eの印字濃度の差が最高と最低で0.1未満。
b:コピー用普通紙A、B、C、D、Eの印字濃度の差が最高と最低で0.1以上。
【0155】
3)文字品位
上記各ブラックインクを上記インクジェット記録装置を用い、インクの浸透性の異なる上記コピー用普通紙A、B、C、D、Eに文字印字を行い、その時の文字の滲みを下記の基準で評価した。
a:5紙とも滲みが殆どない。
b:多少滲む紙が見られる。
c:5紙とも滲む。
【0156】
4)耐水性
上記各ブラックインクを上記インクジェット記録装置を用い、上記コピー用普通紙A、B、C、D、Eに文字印字を行い、印字から所定の時間経過した後に、印字した記録媒体を流水につけ地汚れの状態を目視にて観察し、その結果を下記の基準で評価した。
a:コピー用普通紙A、B、C、D、Eともに、印字後1時間以内で地汚れが目立たなくなる。
b:コピー用普通紙A、B、C、D、Eともに、印字後1日以内で地汚れが目立たなくなる。
c:印字後1日以上経過した後にも地汚れが目立つ紙がある。
【0157】
5)保存安定性
上記各ブラックインクの保存安定性について評価した。すなわち、100ml容のガラス容器(ショット社製)を2つ用意し、その各々に上記各ブラックインクを100mlずつ入れ、60℃の環境に1ケ月間放置し、その前後でのインクの粘度変化の有無を観察した。その結果を下記の基準で評価した。
a:放置前後でインクの粘度の変化が殆どない。
b:放置前後でインクの粘度の変化があるが、実使用上問題にならないレベルである。
c:放置前後でインクの粘度の変化が大きい。
【0158】
【表2】
Figure 0004510256
【0159】
上記表2の結果から、本発明の実施例にかかるインクは、例えば、インクジェット記録方法によって記録を行った場合の文字品位および印字濃度が高く、これらの結果において紙種依存が少ないことが分かった。さらに、保存安定性の点でも優れていた。
【0160】
さらに、追加実験として、実施例1のインク組成において安息香酸アンモニウムを除き、その分、水を加えた組成のブラックインクをブラックインク1−A、同様に実施例2のインク組成において安息香酸アンモニウムを除き、その分、水を加えた組成のブラックインクをブラックインク2−Aとし、各々上記印字濃度評価をした時と同様の印字を上記インクジェット記録装置、上記コピー用普通紙A、B、C、D、Eに行い、そのときの印字濃度を、マクベス製印字濃度測定器を用い測定したところ、下記のような結果となった。
【0161】
(結果)
ブラックインク1の5紙平均の印字濃度は、塩を加えないブラックインク1−Aの5紙平均の印字濃度に比べて0.2以上高かった。
ブラックインク2の5紙平均の印字濃度は、塩を加えないブラックインク2−Aの5紙平均の印字濃度に比べて0.1程度高かった。
これより、本発明の実施例にかかるインクにおいて、平均粒径が90nm以上の自己分散型アニオンカーボンブラックを用いることにより、塩を含有させたときの、より効果的な印字濃度の向上を達成させることができることが分かった。
【0162】
<実施例3>
下記のようにして夫々調製した、ブラックインク1、イエローインク1、マゼンタインク1およびシアンインク1の各インクを組み合わせて本実施例のインクセットとした。
(ブラックインク1)
実施例1のブラックインク1と同様にして調製したブラックインクを用意した。
【0163】
(イエローインク1)
以下の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ0.2μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過し、イエローインク1を調製した。
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加
物(商品名:アセチレノールEH) 1部
・ジエチレングリコール 10部
・グリセリン 5部
・C.I.ダイレクトイエロー86 3部
・水 81部
【0164】
(マゼンタインク1)
以下の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ0.2μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過し、マゼンタインク1を調製した。
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加
物(商品名:アセチレノールEH) 1部
・ジエチレングリコール 10部
・グリセリン 5部
・C.I.アシッドレッド35 3部
・水 81部
【0165】
(シアンインク1)
以下の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ0.2μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過し、シアンインク1を調製した。
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加
物(商品名:アセチレノールEH) 1部
・ジエチレングリコール 10部
・グリセリン 5部
・C.I.アシッドブルー9 3部
・水 81部
【0166】
<比較例2>
比較例1で調製したブラックインク3と、実施例3で調製したイエローインク1、マゼンタインク1およびシアンインク1の各インクを組み合わせて本比較例のインクセットとした。
【0167】
上記の実施例3および比較例2のインクセットを用いて、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置BJF−600(キヤノン製)を用いて下記評価を行った。その結果を表3に示す。
【0168】
(ブリーディング)
ブリーディングを評価するための印字画像は、上記した各普通紙の10cm四方の正方形内に5×5のマス目で仕切り、ブラックインクと各カラーインクで交互にベタ印字したものを用いた。そして、ブラックインクの印字部とカラーインクの印字部との境界のブリーデイングを下記の基準で評価し、結果を表3に示した。
a:2色間の境界線が鮮明で、境界部に滲みや混色が認められない。
b:2色間の境界線が存在することが明らかであるが、一部の紙で境界部に多少の滲みや混色が認められる。
c:2色間の境界線が識別不能である。
【0169】
【表3】
Figure 0004510256
【0170】
上記表3の結果から明らかなように、比較例2のインクセットを使用した場合は、ブリーディングの点で満足のいくものではなかった。これに対し、実施例3のインクセットを用いた場合は、いずれの記録媒体においても、ブリーディングが抑制された良好なカラーインクジェット記録画像が安定して得られた。
【0171】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、インクジェット記録を行う際にブラックインクによる印字において、長期保存による安定性に優れ、印字物の影響を緩和し、文字品位がよく印字濃度も高く、耐水性に優れ、該インクが発一性に優れ、さらに、カラーインクと組み合わせてインクセットとした場合にブリーディングを有効に抑えることができる水性顔料インク、該インクを用いたインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置などが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 インクジェット記録装置のヘッドの一実施形態を示す縦断面図。
【図2】 図1のA−B線断面図。
【図3】 マルチヘッドの概略説明図。
【図4】 インクジェット記録装置の一実施形態を示す概略斜視図。
【図5】 インクカートリッジの一実施形態を示す縦断面図。
【図6】 記録ユニットの一例を示す斜視図。
【図7】 インクジェット記録ヘッドの別の構成例を示す概略斜視図。
【図8】 4つのインクカートリッジが取り付けられた記録ヘッドの概略説明図。
【図9】 4つの記録ヘッドがキャリッジ上に並べられている構成を示す概略説明図。
【図10】 塩を含む顔料インクを記録媒体に付与した時の固液分離の過程を示す概略図。
【図11】 塩を含まない顔料インクを記録媒体に付与した時の固液分離の過程を示す概略図。
【図12】 塩を含むインクおよび塩を含まないインク各々が含んでいる自己分散型カーボンブラックの平均粒径を変化させたときの、各々のインクによって得られる画像の濃度を変化の傾向を説明するグラフ。
【図13】 自己分散型カーボンブラックの表面官能基密度と該カーボンブラックを含むインクによって得られる画像の濃度との関係の概略説明図。
【図14】 液体吐出ヘッドを搭載可能なインクジェットプリンタの一例の要部を示す概略斜視図。
【図15】 液体吐出ヘッドを備えたインクジェトカートリッジの一例を示す概略斜視図。
【図16】 液体吐出ヘッドの一例の要部を模式的に示す概略斜視図。
【図17】 液体吐出ヘッドの一例の一部を抽出した概念図。
【図18】 図17に示した吐出口の部分の拡大図。
【図19】 図18に示した吐出口の部分のインク付着状態を示す模式図。
【図20】 図17における主要部の模式図。
【図21】 図20中のX−X斜視断面形状に対応し図22〜図28と共に液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図。
【図22】 図20中のX−X斜視断面形状に対応し図21および図23〜図28と共に液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図。
【図23】 図20中のX−X斜視断面形状に対応し図21、図22および図24〜図28と共に液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図。
【図24】 図20中のX−X斜視断面形状に対応し図21〜図23および図25〜図28と共に液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図。
【図25】 図20中のX−X斜視断面形状に対応し図21〜図24および図26〜図28と共に液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図。
【図26】 図20中のX−X斜視断面形状に対応し図21〜図25および図27、図28と共に液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図。
【図27】 図20中のX−X斜視断面形状に対応し図21〜図26および図28と共に液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図。
【図28】 図20中のX−X斜視断面形状に対応し図21〜図27と共に液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図。
【図29】 本発明の液体吐出ヘッドを装着して適用することのできる液体吐出装置の一例であるインクジェット記録装置600の概略斜視図。
【符号の説明】
13:ヘッド
14:流路(ノズル)
15:発熱素子基板
16:保護層
17−1、17−2:電極
18:発熱抵抗体層
19:蓄熱層
20:基板
21:インク
22:吐出オリフィス(微細孔)
23:メニスカス
24:インク小滴
25:記録媒体
26:マルチノズル
27:ガラス板
28:発熱ヘッド
40:インク収容部
42:栓
44:インク吸収体
45:インクカートリッジ
51:給紙部
52:紙送りローラー
53:排紙ローラー
61:ブレード
62:キャップ
63:インク吸収体
64:吐出回復部
65:記録ヘッド
66:キャリッジ
67:ガイド軸
68:モーター
69:ベルト
70:記録ユニット
71:ヘッド部
72:大気連通口
80:インク流路
81:オリフィスプレート
82:振動板
83:圧電素子
84:基板
85:吐出口
86、87、88、89:インクカートリッジ
90:記録ヘッド
91、92、93、94:記録ユニット
600:インクジェット記録装置
601:インクジェットヘッドカートリッジ
602:駆動モータ
603、604:駆動力伝達ギア
605:リードスクリュ
606:螺旋溝
607:キャリッジ
607a:レバー
608:ガイド
609:プラテンローラ
610:紙押え板
611、612:フォトカプラ
613:支持部材
614:キャップ部材
615:インク吸引手段
616:キャップ内開口部
617:クリーニングブレード
618:移動部材
619:本体支持体
620:(吸引開始)レバー
621:カム
832:吐出口
832a:起部
832b:伏部
931:電気熱変換素子(ヒータ、インク吐出エネルギ発生素子)
933:インク供給口(開口部)934:基板
935:オリフィスプレート(吐出口プレート)
935a:吐出口面
936:インク流路壁
936a:隔壁
940:吐出口部
1001:塩を含む顔料インク
1003:記録媒体
1005:インク中の固体成分の殆どが豊富に含まれる領域
1007:溶剤の浸透先端
1101:塩を含まない顔料インク
1103:記録媒体
1105:固液分離しない状態の顔料インク
1107:インク中の固形分の浸透先端
1109:溶剤の浸透先端
1111:インク中の固形分含有領域
1337:発泡室
1338:液流路
1141:溝
1141a:頂部
100:インクジェット記録ヘッド
101:気泡
102:メニスカス
1002:液体タンク
1006:移動駆動部
1008:ケーシング
1010:記録部
1010a:キャリッジ部材
1012:カートリッジ
1012Y、M、C、B:インクジェットカートリッジ
1014:
1016:ベルト
1018:モータ
1020:駆動部
1022a、1022b:ローラユニット
1024a、1024b:ローラユニット
1026:回復ユニット
1026a、1026b:プーリ
1028:用紙
1030:搬送装置
2701:カーボンブラック
2703:水分子
2705:カウンターイオン
2707:カリウムイオン
2709:ナトリウムイオン
C:濡れインク
FM:メニスカス後退方向
FC:メニスカス後退方向と反対方向
G:重心
I:インク
Ia:主液滴(液体、インク)
Ib、Ic:液体(インク)
Id:溝部に付着したインク(溝内のインク)
Ie:液流路内に残存しているインク
L:液室(インク供給口)から吐出口に向かう線
N1:発泡室の幅寸法
N2:発泡室の長さ寸法
O:吐出口の中心
P’:被記録材
P:用紙の搬送方向
R:ベルトの回転方向
S:用紙の搬送方向と略直交する方向
T1:吐出口伏部寸法
w:隔壁の幅寸法

Claims (19)

  1. (M1)2SO4、CH3COO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO3、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)2SO3および(M1)2CO3(但し、M1はアルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表わし、Phはフェニル基を表わす。)から選ばれる少なくとも1種の塩と、表面官能基密度が1.8(μmol/m2)以上の自己分散型アニオンカーボンブラックとを含むことを特徴とするインク。
  2. 前記塩を、インク全重量に対して0.05〜10重量%含む請求項1に記載のインク。
  3. 前記塩を、インク全重量に対して0.1〜5重量%含む請求項に記載のインク。
  4. 前記自己分散型アニオンカーボンブラックが、表面に少なくとも1種の親水性基が直接もしくは他の原子団を介して結合しているものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のインク。
  5. 前記親水性基が、下記に列記した中から選択される請求項4に記載のインク。
    −COO(M2)、−SO3(M22、−PO3H(M2)、−PO3(M2)2(但し、式中のM2は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表わす。)
  6. 前記他の原子団が、炭素原子数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基で置換されているか、もしくは未置換のフェニレン基又はナフチレン基である請求項4または5に記載のインク。
  7. 前記親水性基が、下記に列記した中から選択され、且つ下記式中のM2が請求項1〜6のいずれか1項に記載の塩を示す式中のM1と同一である請求項4に記載のインク。
    −COO(M2)、−SO3(M2)2、−PO3(M2)2
  8. 前記M 1 がアンモニウムである請求項1〜7のいずれか1項に記載のインク。
  9. 前記塩が安息香酸アンモニウムである請求項1〜8のいずれか1項に記載のインク。
  10. 前記自己分散型アニオンカーボンブラックの平均粒径が、90nm以上である請求項1〜のいずれか1項に記載のインク。
  11. 前記インクが、インクジェット用インクである請求項1〜10のいずれか1項に記載のインク。
  12. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の黒色のインクと、シアン用、マゼンタ用、イエロー用、レッド用、グリーン用およびブルー用の色材から選ばれる少なくとも1つの色材を含む水性のカラーインクとが組み合わされていることを特徴とするインクセット。
  13. 前記カラーインクの色材が酸性染料または直接染料である請求項1に記載のインクセット。
  14. 前記カラーインクの色材が顔料である請求項1に記載のインクセット。
  15. 前記インクセットが、インクジェット用である請求項1〜1のいずれか1項に記載のインクセット
  16. 請求項1〜1のいずれか1項に記載のインクを収容しているインクタンクを備えていることを特徴とするインクカートリッジ。
  17. 請求項1に記載のインクを収容しているインク収容部および該インクの吐出用記録ヘッドとを備えていることを特徴とする画像記録装置。
  18. 請求項1に記載のインクを収容しているインク収容部、シアン用、マゼンタ用、イエロー用、レッド用、グリーン用およびブルー用の色材から選ばれる少なくとも1つの色材を含む水性のカラーインクを収容しているインク収容部、および各々のインク収容部に収容されているインクを各々吐出させるための記録ヘッド部を具備していることを特徴とするカラー画像記録装置。
  19. 請求項1に記載のインクを記録媒体表面に向けて飛翔させて該表面に付着させることにより画像を記録する工程を有することを特徴とする画像記録方法。
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