JP3799224B2 - 液体組成物、インクセット、記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、多色画像の形成方法、インクジェット装置、インクの記録媒体への定着促進方法、及び多色画像の品質向上方法 - Google Patents

液体組成物、インクセット、記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、多色画像の形成方法、インクジェット装置、インクの記録媒体への定着促進方法、及び多色画像の品質向上方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体組成物、インクセット、インクカートリッジ、記録ユニット、記録方法、インクジェット装置、インクの記録媒体への定着促進方法および多色画像の品質向上方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より筆記具(万年筆、サインペン、水性ボールペン等)用の黒色インクおよびインクジェット用の黒色インクとして、印字物の濃度が高く、また堅牢性等に優れた黒色着色剤であるカーボンブラックを用いたインクが提案されている。
【0003】
特に近年はオフィスで一般に使用されているコピー用紙、レポート用紙、ノート、便箋、ボンド紙及び連続伝票用紙等の普通紙に対しても良好な記録を行うことが出来る様に、インクの組成および物性等の多様な面から詳細な研究開発が為されている。例えば、特開昭61−283875号および特開昭64−6074号公報にはカーボンブラックと分散剤とを含む水性顔料インクが開示されている。また特開平8−3498号公報はカーボンブラックを分散剤とともに含むインクをインクジェットプリンタ用のインクとして用いた場合、吐出が不安定になったり、十分な印字濃度を得られないとの技術課題を挙げ、そのような課題を解決し得るインクとして、分散剤を用いない自己分散型のカーボンブラックを用いた水性顔料インクを開示している。
【0004】
また、カラーインクには色材として染料が利用されてきている。染料は優れた発色性や安定性等の点で長所を有しているものの耐水性、耐光性等の点でより一層の改善が要求されている。近年、これらの問題点を改良するために、染料のかわりに有機顔料を用いた水性インクが数多く提案されている。例えば、特開平9-40898には有機顔料表面に親水性の高い低分子化合物を吸着させ、保存安定性と印字品質を両立させるアイディアが開示されている。また、従来より数多く提案されている分散剤を用いずに水に安定して分散/溶解可能なカーボンブラックと同様に、顔料表面に官能基を直接結合させる有機顔料分散体等がUSP5837045等に開示されている。しかしながら、本発明者らは、カーボンブラックおよび有機顔料等の色材を含むインクをインクジェット記録に用いた場合について種々の検討を行なった結果、画像濃度および発色性を向上させるために、極力記録媒体に浸透させないような組成にして、画像濃度および発色性を向上させようとすると、浸透性を低くするための新たな問題として、浸透せずに記録媒体上に残るために色間境界で異なる色同士のにじみ(以降、ブリードと表現する)が発生した。
【0005】
また、色間境界で異なる色同士のにじみの発生を抑える為、例えば特開平06−228478では、無色の液体とインクとからなるインクセットを用い、この両者が混合した際にイオン反応によって反応し、インクを増粘させ、あるいはインク中の色材を凝集もしくは析出させて、記録媒体上でのインクの固体(色材等)と液体との分離(固液分)を促進させる技術が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記した技術を用いることによって色間境界で異なる色のインク同士のにじみは極めて有効に抑えることができる。しかしイオン反応を利用している為、上記のインクと液体組成物とは混合されると即座に反応してしまう。従って例えばインクジェット用のインクセットとしてこの様な組み合わせを用いた場合には、インク及び液体組成物のインクジェットヘッドの回復系を完全に分離する必要がある。即ちインクと液体組成物の回復系を共通化した場合、その回復系においてインクと液体組成物とが反応してインク成分が固化する。その結果、インクジェットヘッドの回復系の機能が徐々に低下してしまうことがある。その一方で、回復系をインクジェット装置に複数設けることは装置の小型化を妨げ、また製品コストの上昇を招くことがある。
【0007】
本発明はこのような技術的背景に鑑みなされたものであり、その目的は、高い品質の画像を低コストで実現することのできる液体組成物を提供する点にある。
【0008】
また本発明は、高品位な画像を形成することのできるインクセットを提供する事を他の目的とする。
【0009】
また本発明は、高品位な画像の形成を可能とする記録方法を提供することを他の目的とする。
【0010】
また本発明は、ブリーディングを抑えた、高い品質の多色画像を形成する方法を提供することを他の目的とする。
【0011】
また本発明は、高品位な画像の形成に用いることのできる記録ユニットおよびインクカートリッジを提供することを目的とする。
【0012】
また本発明は、高品位な画像を形成できるインクジェット記録装置を提供することを他の目的とする。
【0013】
また本発明は、高い品質の画像を形成する為のインクの記録媒体への定着促進方法を提供することを目的とする。
【0014】
更に本発明は、ブリーディングを抑え、多色画像の品質を改善する方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成することのできる本発明の一実施態様にかかる液体組成物は、アニオン性基の作用によって水性媒体中に分散させられている色材を含んでいるインクと共にインクジェット画像の形成に用いられ、且つ、インクと液体組成物の回復系が共通であるインクジェット記録装置に用いられる液体組成物であって、
塩として、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩のみを含むことを特徴とする(但し、M1はアルカリ金属、またはアンモニウムを表し、またPhはフェニル基を表す)。
【0016】
また上記の目的を達成することのできる本発明の一実施態様にかかるインクセットは、例えば水性媒体中および該水性媒体にアニオン性基の作用によって分散させられている色材を含むインクと上記の液体組成物との組み合わせを含むことを特徴とする。
【0017】
また上記の目的を達成することのできる本発明の一実施態様にかかる記録方法は、インクと液体組成物の回復系が共通であるインクジェット記録装置を用いて、(i)水性媒体及び該水性媒体にアニオン性基の作用によって分散させられている色材を含むインクを記録媒体に付与する工程;及び(ii)塩として、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩のみを含む液体組成物(但し、M1はアルカリ金属、またはアンモニウムを表し、またPhはフェニル基を表す)を該記録媒体の少なくとも該インクが付与される領域に付与する工程、を有することを特徴とする。
【0018】
また上記の目的を達成することのできる本発明の一実施態様にかかる多色画像の形成方法は、インクと液体組成物の回復系が共通であるインクジェット記録装置を用いて、記録媒体に異なる色調の画像を含み、該色調の異なる画像は互いに隣接する部分を有する多色画像を形成する方法であって、互いに色調の異なる複数のインクを各々記録媒体に付与して該多色画像を形成する工程を有し、該複数のインクの少なくとも1つは、水性媒体および該水性媒体にアニオン性基の作用によって分散させられている色材を含む色材分散インクであって、更に、該記録媒体の少なくとも該色材分散インクが付与される領域に塩として、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩のみを含む液体組成物を、該色材分散インクの記録媒体への付与に先立って、もしくは該色材分散インクの記録媒体への付与後に付与する工程を有する事を特徴とする(但し、M1はアルカリ金属、またはアンモニウムを表し、またPhはフェニル基を表す)。
【0019】
また上記の目的を達成することのできる本発明の一実施態様にかかる記録ユニットは、例えば(M1)2SO4、CH3COO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO3、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)2SO3および(M1)2CO3から選ばれる少なくとも一つの塩を含む液体組成物(但し、M1はアルカリ金属、またはアンモニウムを表し、またPhはフェニル基を表す)を収容した液体組成物収容部と該液体組成物を吐出させるインクジェットヘッドとを備えていることを特徴とするものである。
【0020】
また上記の目的を達成することのできる本発明の他の実施態様にかかる記録ユニットは、塩として、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩のみを含む液体組成物(但し、M1はアルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表し、またPhはフェニル基を表す)を収容した液体組成物収容部、該液体組成物を吐出させるインクジェットヘッド、水性媒体と該水性媒体にアニオン性基の作用によって分散させられている色材とを含むインクを収容したインク収容部および該インクを吐出させるインクジェットヘッドを備えていることを特徴とする。
【0021】
また上記の目的を達成することのできる本発明の一実施態様にかかるインクカートリッジは、例えば(M1)2SO4、CH3COO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO3、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)2SO3および(M1)2CO3から選ばれる少なくとも一つの塩を含む液体組成物(但し、M1はアルカリ金属、またはアンモニウムを表し、またPhはフェニル基を表す)を収容し、該液体組成物を吐出させるインクジェットヘッドに着脱可能であることを特徴とする。
【0022】
また上記の目的を達成することのできる本発明の一実施態様にかかるインクジェット装置は、塩として、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩のみを含む液体組成物(但し、M1はアルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表し、またPhはフェニル基を表す)を収容した液体組成物収容部、水性媒体と該水性媒体にアニオン性基の作用によって分散させられている色材とを含むインクを収容したインク収容部、および該液体組成物収容部に収容された液体組成物ならびに該インク収容部に収容されたインクの各々を独立して吐出させるインクジェットヘッドを備えていることを特徴とする。
【0023】
また上記の目的を達成することのできる本発明の他の実施態様にかかるインクジェット装置は、塩として、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩のみを含む液体組成物(但し、M1はアルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表し、またPhはフェニル基を表す)を収容した液体組成物収容部と該液体組成物を吐出させるインクジェットヘッドを備えた第1の記録ユニット;および水性媒体と該水性媒体にアニオン性基の作用によって分散させられている色材を含むインクを収容したインク収容部と該インクを吐出させるインクジェットヘッドを備えた第2の記録ユニットを備えていることを特徴とする。
【0024】
また上記の目的を達成することのできる本発明の一実施態様にかかるインクの記録媒体への定着促進方法は、水性媒体と該水性媒体にアニオン性基の作用によって分散させられている色材を含むインクを、インクと液体組成物の回復系が共通であるインクジェット装置を用いて記録媒体に付与したときの該インクの記録媒体への定着促進方法であって、塩として、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩のみを含む液体組成物(但し、M1はアルカリ金属、またはアンモニウムを表し、またPhはフェニル基を表す)を該記録媒体の少なくとも該インクが付与される部位に付与することを特徴とする。
【0025】
また上記の目的を達成することのできる本発明の一実施態様にかかる多色画像の品質改善方法は、インクと液体組成物の回復系が共通であるインクジェット記録装置を用いて、記録媒体上の多色画像の品質を改善する方法であって、該多色画像は少なくとも色調の異なる第1の領域と第2の領域を含み、該第1の領域と第2の領域とは少なくとも一部が互いに隣接しているものであり、該第1の領域は第1の色調を有する第1のインクを該記録媒体に付与する工程;及び該記録媒体上の少なくとも該第1のインクが付与される部位に液体組成物を付与する工程を含む方法によって形成されるものであり、該第2の領域は第2の色調を有する第2のインクを該記録媒体に付与する工程を有する方法によって形成されるものであり、該第1のインクは水性媒体と該水性媒体にアニオン性基の作用によって分散させられている色材を含むインクであり、該液体組成物は塩として、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩のみを含むことを特徴とする(但し、M1はアルカリ金属、またはアンモニウムを表し、またPhはフェニル基を表す)。
【0026】
そして上記した本発明にかかる各種の実施態様によれば、例えば画像品位を改善できる。具体的には、例えば文字のシャープネスが損なわれたり、画像濃度および発色性の低下が生じる事のある浸透性の大きな紙に印字した場合にも高品位な画像を形成する事が可能であり、更に紙への定着性も良好にすることが可能である。
【0027】
また上記した本発明にかかる各種の実施態様によれば、上記した効果に加え、多色画像におけるブリーディングを極めて有効に防止でき、高品質の多色画像を得ることができる。
【0028】
なおこのような実施態様によって上記した様々な効果を得られる理由は明らかでないが、以下の様に推察される。
【0029】
即ち、液体組成物が記録媒体に付与されると、液体組成物中の溶媒が記録媒体中に浸透し、あるいは空気中に蒸発して、記録媒体表面の液体組成物の塩濃度が急激に上昇する。このような現象を生じる液体組成物と顔料等の色材がアニオン性基の作用によって安定に分散させられているインクとを記録媒体表面で接触する様に付与した場合、記録媒体上での該液体組成物の塩濃度の上昇によって、該インク中の色材の分散安定性が崩れ、色材が凝集、析出する様になる。つまりインクを構成する色材と水性媒体との分離が促進されることとなる。その結果、色材の記録媒体中への浸透が抑制され、輪郭のシャープネスさ等に優れた画像を形成できる。またインクは固液分離が速やかに起こる為に、比較的浸透性が高い紙であっても前述のような現象は起こりづらいと考えられる。つまり浸透性の大小等の紙種による要因を受けづらくなると考えられる。また、本発明にかかる液体組成物とインクとは上記した様に混合によって即座に反応するものではないので、例えばインクジェット用のインクセットとして用いた場合も、インクジェットヘッドの回復系を共通化することができるというメリットもある。
【0030】
【発明の実施の形態】
(液体組成物)
水性媒体中にアニオン性基の作用によって水性媒体に分散させられている色材の分散安定性を被記録媒体上で破壊することのできる液体組成物としては、塩および水性媒体を含んでいることが好ましい。
【0031】
(塩について)
ここで、塩として、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つのみを用いる。ここでM1はアルカリ金属、またはアンモニウムを表わし、Phはフェニル基を表す。そしてアルカリ金属の具体例としては例えばLi、Na、K、Rb、Cs等が挙げられる。又液体組成物中の上記塩の含有量は、本発明にかかる効果を考慮すると1〜20wt%が好ましい。又液体組成物は、必ずしも可視域に吸収を示さないものである必要はない。
【0032】
(水性媒体)
本実施態様に係る液体組成物に用いられる水性媒体の例としては例えば水、或いは水と水溶性有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒としては、液体組成物の乾燥防止効果を有するものが特に好ましい。具体的には例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、nープロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオ−ル、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。上記のごとき水溶性有機溶剤は、単独でもあるいは混合物としても使用することができる。
【0033】
又、水としては脱イオン水を使用することが望ましい。
【0034】
本実施態様に関わる液体組成物中に含有される水溶性有機溶剤の含有量は特に限定されないが、液体組成物全重量に対して、好ましくは3〜50wt%の範囲が好適である。又、液体組成物に含有される水の含有量は液体組成物全重量に対して好ましくは50〜95重量%の範囲である。
【0035】
更に上記の成分のほかに必要に応じて所望の物性値を持つ液体組成物とするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤等を添加することができ、さらに、市販の水溶性染料などの色材を添加しても良い。
【0036】
(インク)
上記した液体組成物は、色材がイオン性基によって水性媒体に分散させられているインクと組合せて記録に用いることで高品質の画像を形成等の好ましい効果を得られる。
【0037】
かかるインクに用いることのできる色材としては、例えば顔料、マイクロカプセル化顔料更には着色樹脂等が挙げられる。以下これらの色材について詳述する。
【0038】
(顔料)
用い得る顔料としては、例えばカーボンブラックや有機顔料等が挙げられる。
【0039】
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料で、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA−II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上コロンビア社製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、ヴァルカン(Valcan)XC−72R(以上キャボット社製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(Special Black)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学社製)等を使用することができるが、これらに限定されるものではなく従来公知のカーボンブラックを使用することが可能である。また、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子やチタンブラック等を黒色顔料として用いても良い。
【0040】
(有機顔料)
有機顔料として具体的には,トルイジンレッド,トルイジンマルーン,ハンザエロー,ベンジジンエロー,ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料,リトールレッド,ヘリオボルドー,ピグメントスカーレット,パーマネントレッド2Bなどの溶性アゾ顔料,アリザリン,インダントロン,チオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体,フタロシアニンブルー,フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料,キナクリドンレッド,キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系顔料,ペリレンレッド,ペリレンスカーレットなどのペリレン系顔料,イソインドリノンエロー,イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系顔料,ベンズイミダゾロンエロー,ベンズイミダゾロンオレンジ,ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料,ピランスロンレッド,ピランスロンオレンジなどのピランスロン系顔料,チオインジゴ系顔料,縮合アゾ系顔料,チオインジゴ系顔料,フラバンスロンエロー,アシルアミドエロー,キノフタロンエロー,ニッケルアゾエロー,銅アゾメチンエロー,ペリノンオレンジ,アンスロンオレンジ,ジアンスラキノニルレッド,ジオキサジンバイオレット等のその他の顔料が例示できる。
【0041】
また,有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと,C.I.ピグメントエロー12,13,14,17,20、24、74,83,86 93、109、110、117、120,125、137、138、147、148、151,153、154、166、168、C.I.ピグメントオレンジ16,36、43、51、55、59、61、C.I.ピグメントレッド9、48,49,52,53,57,97、122、123、149、168、175,176,177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228,238、240、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15,15:1,15:4,15:6,22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が例示できる。勿論上記以外でも従来公知の有機顔料が使用可能である。
【0042】
(分散剤)
上記したカーボンブラックや有機顔料を用いる場合には分散剤を併用することが好ましい。分散剤としては、アニオン性基の作用によって上記の顔料を水性媒体に安定に分散させることのできるものが好適に用いられる。分散剤の具体例は、例えばスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸−マレイン酸ハーフエステル共重合体あるいはこれらの塩等が含まれる。またこれらの分散剤は、重量平均分子量が1000〜30000の範囲のものが好ましく、特には3000〜15000の範囲のものが好ましい。
【0043】
(自己分散型顔料)
色材として、顔料表面にイオン性基(アニオン性基)を結合させることによって分散剤なしで水性媒体に分散させることのできる顔料、所謂自己分散型顔料を用いることもでき、このような顔料の一例として例えば、自己分散型カーボンブラックを挙げることができる。
【0044】
自己分散型カーボンブラックとしては、例えばアニオン性基がカーボンブラック表面に結合したものを挙げることができる。
【0045】
(アニオン性CB)
アニオン性カーボンブラックとしては、カーボンブラックの表面に例えば−COO(M2)、−SO3(M2)、−PO3H(M2)、−PO3(M2)2から選ばれる少なくとも1つのアニオン性基を結合させたものが挙げられる。
【0046】
上記式中、M2は水素原子、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表わす。これらの中で特に−COO(M2)や−SO(M2)をカーボンブラック表面に結合してアニオン性に帯電せしめたカーボンブラックはインク中の分散性が良好なため本実施態様に特に好適に用い得るものである。ところで上記親水性基中「M2」として表したもののうち、アルカリ金属の具体例としては例えばLi、Na、K、RbおよびCs等が挙げられ、また有機アンモニウムの具体例としては例えばメチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、メタノールアンモニウム、ジメタノールアンモニウム、トリメタノールアンモニウム等が挙げられる。そしてM2をアンモニウム或いは有機アンモニウムとした自己分散型カーボンブラックを含む本実施態様のインクは、記録画像の耐水性をより向上させることができ、この点において特に好適に用いることのできるものである。これは当該インクが記録媒体上に付与されると、アンモニウムが分解し、アンモニアが蒸発する影響によるものと考えられる。ここでM2をアンモニウムとした自己分散型カーボンブラックは、例えばM2がアルカリ金属である自己分散型カーボンブラックをイオン交換法を用いてM2をアンモニウムに置換する方法や酸を加えてH型とした後に水酸化アンモニウムを添加してM2をアンモニウムにする方法等が挙げられる。
【0047】
アニオン性に帯電している自己分散型カーボンブラックの製造方法としては、例えばカーボンブラックを次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法が挙げられ、この方法によってカーボンブラック表面に−COONa基を化学結合させることができる。
【0048】
ところで上記した様な種々の親水性基は、カーボンブラックの表面に直接結合させてもよい。或いは他の原子団をカーボンブラック表面と該親水性基との間に介在させ、該親水性基をカーボンブラック表面に間接的に結合させても良い。ここで他の原子団の具体例としては例えば炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、置換もしくは未置換のフェニレン基、置換もしくは未置換のナフチレン基が挙げられる。ここでフェニレン基およびナフチレン基の置換基としては例えば炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。また他の原子団と親水性基の組合わせの具体例としては、例えば−C24COO(M2)、−Ph−SO3(M2)、−Ph−COO(M2)等(但し、Phはフェニル基を表す)が挙げられる。
【0049】
ところで本実施態様において上記した自己分散型カーボンブラックの中から2種若しくはそれ以上を適宜選択したインクの色材に用いてもよい。またインク中の自己分散型カーボンブラックの添加量としてはインク全重量に対して、0.1〜15重量%、特には1〜10重量%の範囲とすることが好ましい。この範囲とすることで自己分散型カーボンブラックはインク中で十分な分散状態を維持することができる。更にインクの色調の調製等を目的として、自己分散型カーボンブラックに加えて染料を色材として添加してもよい。
【0050】
(自己分散型CBと塩との相性)
上記した種々の自己分散型カーボンブラックのうち、カーボンブラックの表面の親水性基として例えば−COO(M2)、−SO(M2)、−POH(M2)、−PO(M2)を用いる場合、M2としてアンモニウムや有機アンモニウムが好適に用い得ることは上記した通りであるが、このときに組合わせる塩としては、M1とM2と一致させることが好ましい
【0051】
そしてM1とM2との双方をアンモニウム或いは有機アンモニウムとした場合には、インク特性の安定化効果に加えて、記録画像の耐水性のより一層の向上を図ることができる。またこのときインク中の塩としてPh−COO(NH4)(安息香酸アンモニウム)を用いると、インクジェット記録を一時休止させたあとのヘッドノズルからのインクの再吐出性においても極めて優れた結果を得ることができる。
【0052】
(着色微粒子/マイクロカプセル化顔料)
色材として上記したものの他に、ポリマー等でマイクロカプセル化した顔料や樹脂粒子の周囲を色材で被覆した着色微粒子等も用いることができる。
【0053】
マイクロカプセルに関しては、本来的に水性媒体に対する分散性を有すが、分散安定性を高める為に上記したような分散剤を更にインク中に共存させてもよい。また着色微粒子を色材として用いる場合には、上記したアニオン系分散剤等を用いることが好ましい。
【0054】
(水性媒体)
上記した様な色材を分散させる水性媒体は、特に限定されるものでなく、液体組成物に用いる水性媒体として前記したものと同様のものを用いることができる。また該カラーインクをインクジェット法(例えばバブルジェット法等)で記録媒体に付着せしめる場合には、前述したように優れたインクジェット吐出特性を有するようにインク所望の粘度、表面張力を有するように調製する事が好ましい。
【0055】
(インクセット)
該液体組成物と組み合わせてインクセットを構成するインクに色調は特に限定されず、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、レッド、グリーン、ブルーおよびブラックから選ばれる1つの色調を示すインクとすればよい。具体的には、所望の色調のインクとなるように適宜前記した色材のなかから選択して用いることができる。
【0056】
また該液体組成物と組み合わせるインクは、1種類に限定されるものでなく、異なる色調のインクを2つ以上組み合わせて多色画像の形成に適したインクセットとしてもよい。この場合2つ以上のインクのうち、少なくとも1つのインクが該液体組成物との相互作用によって加速された固液分離を示す、水性媒体に色材がアニオン性基の作用によって分散させられているインクであれば、他のインクを染料を色材として含むインクとしてもよく、もちろん全てのインクを水性媒体に色材がアニオン性基の作用によって分散させられているインクとしてもよい。このようなインクセットによれば、多色画像をインクジェット装置で形成する場合に問題とされる、異なる色調のインクが記録媒体上で隣接して付与されたときのブリーディングを抑えることができる。より具体的には、インクジェット多色画像において問題とされるブリーディングは、黒色インクと他のカラーインク(例えばイエローインク、マゼンタインク、シアンインク、レッドインク、グリーンインクおよびブルーインクから選ばれる少なくとも1つのインク)との間が特に顕著になり易い為、本態様においても液体組成物と相互作用するように水性媒体にアニオン性基の作用によって色材を分散させた構成とするインクとしては黒色インクを組み合わせることが好ましい。そして他のカラーインクについては、染料を水性媒体に溶解したインクとしてもよく、もちろん黒色インクと同様に色材をアニオン性基の作用によって水性媒体に分散させたインクとしてもよい。
【0057】
(カラーインク)
インクの色材として用いる染料としては従来から公知の物を用いることができ、例えば、酸性染料、直接染料、分散染料等を用いる事ができる。例えばアニオン性染料としては、既存のものでも、新規に合成したものでも適度な色調と濃度とを有するものであれば、大抵のものを用いることができる。又、これらのうちのいずれかを混合して用いることも可能である。アニオン性染料の具体例を以下に挙げる。
【0058】
(イエロー用の色材)
C.I.ダイレクトイエロー 8、11、12、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、100、110、132
C.I.アシッドイエロー 1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、76、98、99
C.I.リィアクティブイエロー 2、3、17、25、37、42
C.I.フードイエロー 3
【0059】
(レッド用の色材)
C.I.ダイレクトレッド 2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230
C.I.アシッドレッド 6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、42、51、52、80、83、87、89、92、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289
C.I.リィアクティブレッド 7、12、13、15、17、20、23、24、31、42、45、46、59
C.I.フードレッド 87、92、94
【0060】
(ブルー用の色材)
C.I.ダイレクトブルー 1、15、22、25、41、76、77、80、86、90、98、106、108、120、158、163、168、199、226
C.I.アシッドブルー 1、7、9、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、100、102、104、117、127、138、158、161
C.I.リィアクティブブルー 4、5、7、13、14、15、18、19、21、26、27、29、32、38、40、44、100
【0061】
(ブラック用色材)
C.I.ダイレクトブラック 17、19、22、31、32、51、62、71、74、112、113、154、168、195
C.I.アシッドブラック 2、48、51、52、110、115、156
C.I.フードブラック1、2
【0062】
ここで各カラーインク中の色材の含有量は、例えばインクジェット記録に用いる場合には該インクが優れたインクジェット吐出特性を備え、また所望の色調や濃度を有するように適時選択すれば良いが、目安としては例えばインク全重量に対して3〜50wt%の範囲が好ましい。またインクに含有される水の量はインク全重量に対して50〜95wt%の範囲が好ましい。
【0063】
(記録方法)
該液体組成物は、色材がアニオン性基の作用によって水性媒体に分散させられているインクと組み合わせて、(i)該インクを記録媒体に付与する工程;および(ii)該液体組成物を該記録媒体の少なくとも該インクが付与される領域に付与する工程、を有する記録方法を採用することによって高画像濃度および高発色で印字品位が良好な画像を得ることができるインクセットを提供することができる。なおこのようなインクセットが高画像濃度および高発色で印字品位を良好にできる理由は明らかではないが、例えば該液体組成物と該インクをインクジェット法によって紙面上に飛翔させ、両者を付着させた場合、インク中では顔料等の色材は安定に分散および溶解しているが、紙面に付着後の固液分離が速やかに起こる為であると考えられる。即ち固液分離が遅いと浸透性の大きな紙ではインクが紙中に拡散する。その結果、文字のシャープネス(文字品位)が損なわれると同時に紙の奥までインクが浸透する為に当然画像濃度も低下する。しかし本実施態様のインクは固液分離が速やかに起こる為に、比較的浸透性が高い紙であっても前述のような現象は起こりづらいと考えられる。つまり浸透性の大小等の紙種による要因を受けづらくなると考えられる。更にこの固液分離の速さが、記録媒体への定着性を速くしていることも当然考えられる。
【0064】
上記インクと液体組成物とのインクセットをインクジェット等で用いた場合、
a:液体組成物を印字した後にインクを印字する場合、b:インクを印字した後に液体組成物を印字する場合、c:インクを印字した後に液体組成物を印字させ更にインクを印字させる場合等様々な印字方法が考えられる。そしてインクと液体組成物との打ち方は、例えば必要とする印刷の品位等に応じて適宜選択すればよい。例えばaの印刷方法においては、特に印字品位を良好なものとすることができる。その理由は、これまでの発明者らの検討によれば以下の様に考えられる。即ち、aの印刷方法においては、先ず液体組成物91が記録媒体25に付与され(図8(a)参照)、ついで液体組成物が付与された部位にインク92が付与される(図8(b)参照)。そのためインク中の色材は、記録媒体25に付与された直後から被記録材表面に存在する液体組成物中の塩との相互作用により固液分離が生じる。その結果、インク中の色材をより多く記録媒体25の表面に留めることができる結果、にじみの極めて少なく、且つ高濃度の優れた印刷結果を得られると考えられる。
【0065】
また、上記液体組成物とカラーインクとのインクセットを複数、もしくは上記液体組成物とカラーインクとのインクセットと他のカラーインクを組み合わせる事によってカラー画像の形成に好適に用い得るインクセットを提供する事ができる。そしてこのようなインクセットを用いて、例えばブラックインクに上記インクセットを用いて黒色画像部およびカラー画像部と隣接するような記録を行った場合、ブリーディングの発生を極めて有効に抑える事ができる。なおこのようなインクセットがブリーディングを有効に抑制できる理由は明らかではないが、該ブラックインクのインクセットが記録媒体に付着した後の固液分離とそれに引き続く着色剤の固化が速やかに起こる結果、カラー画像の境界部において黒色インクがカラーインク側に滲み出にくくなっている為と考えられる。
【0066】
(インク特性;インクジェット吐出特性、記録媒体への浸透性について)
上記各実施態様にかかるインクセットは、インクジェット記録用のインクセットとして好適に用いる事ができる。インクジェット記録方法としては、インクに力学的エネルギーを作用させ、液滴を吐出する記録法法、およびインクに熱エネルギーを加えてインクの発泡により液滴を吐出する記録法法があり、それらの記録方法に本発明の液体組成物およびインクは特に好適である。ところで上記各実施態様にかかる液体組成物およびインクをインクジェット記録用に用いる場合には、該液体組成物およびインクはインクジェットヘッドから吐出可能である特性を有する事が好ましい。インクジェットヘッドからの吐出性という観点からは、該液体の特性としては、例えばその粘度を1〜15cps、表面張力が25mN/m(dyne/cm)以上、特には粘度を1〜5cps、表面張力が25〜50mN/m(dyne/cm)とする事が好ましい。
【0067】
(インクジェット記録技術)
次に本実施態様の各々の液体組成物およびインクを好適に用い得るインクジェット記録技術について説明する。
【0068】
インクジェット記録装置として、第一に熱エネルギ−を利用した装置の主要部であるヘッド構成例を図1及び図2に示す。
【0069】
図1は、インク流路に沿ったヘッド13の断面図であり、図2は図1のA−B線での切断面図である。ヘッド13はインクを通す流路(ノズル)14を有するガラス、セラミック、シリコン又はプラスチック板等と発熱素子基板15とを接着して得られる。発熱素子基板15は酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン等で形成される保護層16、アルミニウム、金、アルミニウム−銅合金等で形成される電極17−1、17−2、HfB2、TaN、TaAl等の高融点材料から形成される発熱抵抗体層18、熱酸化シリコン、酸化アルミニウム等で形成される畜熱層19、シリコン、アルミニウム、窒化アルミニウム等の放熱性の良い材料で形成される基板20より成り立っている。
【0070】
上記ヘッドの電極17−1及び17−2にパルス状の電気信号が印加されると、発熱素子基板15のnで示される領域が急速に発熱し、この表面に接しているインクに気泡が発生し、その発生する圧力でメニスカス23が突出し、インクがヘッドのノズル14を通して吐出し、吐出オリフィス22よりインク小滴24となり、被記録材25に向かって飛翔する。
【0071】
図3には図1に示したヘッドを多数並べたマルチヘッドの外観図を示す。このマルチヘッドはマルチノズル26を有するガラス板27と、図1に説明したものと同じ様な発熱ヘッド28を接着して作られている。
【0072】
(インクジェット記録装置)
図4に、このヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の一例を示す。図4において、61はワイピング部材としてのブレ−ドであり、その一端はブレ−ド保持部材によって保持固定されており、カンチレバ−の形態をなす。ブレ−ド61は記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、又、本例の場合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。
【0073】
62は記録ヘッド65の突出口面のキャップであり、ブレ−ド61に隣接するホ−ムポジションに配置され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。更に、63はブレ−ド61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレ−ド61と同様、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレ−ド61、キャップ62及びインク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレ−ド61及びインク吸収体63によって吐出口面の水分、塵埃等の除去が行われる。またキヤップを介して不図示のポンプによって記録へッドの各インク、更には液体組成物の吐出口の位置しているインクなどを吸引して、記録ヘッド本来のインク、あるいはインクおよび液体組成物の本来の吐出性能を回復させる回復系ユニットを構成している。そして本発明のようなインクセットを用い、該液体組成物とインクの双方をインクジェット装置で吐出させる構成とした場合にもインクと液体組成物とで回復系を各々分けて設ける必要がない。なぜなら前記した様に該液体組成物と色材をアニオン性基を用いて水性媒体に分散させたインクとは単に混合しただけで反応するわけではないため、該液体組成物と該インクとの回復系を共通化しても、該回復系の機能が経時的に損なわれることは無い為である。
【0074】
65は、吐出エネルギ−発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する被記録材にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に系合し、キャリッジ66の一部はモ−タ−68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。51は被記録材を挿入するための紙給部、52は不図示のモ−タ−により駆動される紙送りロ−ラ−である。
【0075】
これらの構成により記録ヘッドの65吐出口面と対向する位置へ被記録材が給紙され、記録が進行につれて排紙ロ−ラ−53を配した排紙部へ排紙される。以上の構成において記録ヘッド65が記録終了してホ−ムポジションへ戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレ−ド61は移動経路中に突出している。その結果、記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。記録ヘッド65がホ−ムポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレ−ド61は上記したワイピングの時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。
【0076】
上述の記録ヘッドのホ−ムポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホ−ムポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
【0077】
(インクカートリッジ)
図5は、記録ヘッドにインクもしくは液体組成物を供給する部材、例えば、チュ−ブを介して供給されるインクもしくは該液体組成物を収容したカ−トリッジ45の一例を示す図である。ここで40は供給用のインクまたは液体組成物を収納した収容部、例えば、袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、袋40中のインクまたは液体組成物をヘッドに供給可能にする。44は廃インクまたは廃液体組成物を受容する吸収体である。収容部40としてはインクまたは液体組成物との接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。このようなカートリッジは、例えば図9に示したようにインクまたは液体組成物を吐出せしめる記録ヘッド901に着脱可能に構成されてなるとともに、該カートリッジ45を記録ヘッドに装着した状態ではインクまたは液体組成物が記録ヘッド901に供給される様に構成されている。
【0078】
また本発明にかかるカートリッジの他の態様として、該液体組成物と該インクとを各々個別に収容した2つの収容部を有し、該インクおよび該液体組成物を吐出させるためのヘッドに対して着脱可能に構成され、かつ該インク及び該液体組成物が該記録ヘッドに供給可能に構成されているカートリッジを挙げることができる。
【0079】
図10はそのようなカートリッジ1001の一例を示すものであり、1003は液体組成物の収容部、1005がインクの収容部であり、該カートリッジは図11に示す様に該インクおよび該液体組成物の各々を吐出せしめる記録ヘッド1101に着脱可能に構成されてなると共に、該カートリッジ1001を記録ヘッド1101に装着した状態では該液体組成物及び該インクが記録ヘッド1101に供給される様に構成されているものである。
【0080】
また本発明のインクセットは、図10に示した様に該液体組成物と該インクとが物理的に一体化されているものばかりでなく、例えば図12に示す様に、液体組成物を収納したカートリッジ1201と該インクを収納したカートリッジ1203とを該液体組成物および該インクの各々を吐出させる共通の記録ヘッド1205に装着し、該液体組成物および該インクとを用いてインクジェット画像の記録を行なうことのできる様に構成されているものもまた本発明の範囲内のものである。
【0081】
(記録ユニット)
本発明で使用されるインクジェット装置としては、上述の様にヘッドとカ−トリッジとが別体となったものに限らず、図6に示すようなそれらが一体になったものにも好適に用いられる。図6において、70は記録ユニットであり、この中にはインクまたは液体組成物を収容した収容部である。例えばインクを収容する場合には、インク吸収体を収納し、かかるインク吸収体中のインクが複数オリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。インク吸収体の材料としてはポリウレタンを用いることが本発明にとって好ましい。
【0082】
又、吸収体を用いず、収容部が内部にバネ等を仕込んだ袋であるような構造でもよい。72はカ−トリッジ内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニット70は図4に示す記録ヘッド65に換えて用いられるものであって、キャリッジ66に対して着脱自在になっている。
【0083】
更に本発明にかかる記録ユニットの他の実施態様として、該液体組成物と黒、イエロー、マゼンタ、シアン、レッド、グリーン、ブルー及びブラックの色相を有する該カラーインクから選ばれる少なくとも1つのインクとを、1個のインクタンク内の各々のインク収納部に収納し、且つ各々のインクを吐出させる為の記録ヘッドを一体的に備えた記録ユニット、具体的には例えば図13に示す様に該液体組成物を収容部1301Lに、アニオン性基によって水性媒体に分散させられている黒インクを収納部1301Bkに、またイエロー、シアン及びマゼンタのカラーインクを各々カラーインク収納部1301Y、1301Cおよび1301Mに収納し、更に該液体組成物と他の4つの色調の異なるインクを各々個別に吐出させることができる様にインク流路を分けて構成した記録ヘッド1303を備えている様な記録ユニット1301挙げられる。
【0084】
次に、第二の力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置の形態として、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させるオンデマンドインクジェット記録ヘッドを挙げることができる。その記録装置の主要部である記録ヘッドの構成例を図7に示す。
【0085】
ヘッドは、インク室(不図示)に連通したインク流路80と、所望の体積のインク滴を吐出するためのオリフィスプレート81と、インクに直接圧力を作用させる振動板82と、この振動板82に接合され、電気信号により変位する圧伝素子83と、オリフィスプレート81、振動板等を指示固定するための基板84とから構成されている。
【0086】
図7において、インク流路80は、感光性樹脂等で形成され、オリフィスプレート81は、ステンレス、ニッケル等の金属を電鋳やプレス加工による穴あけ等により吐出口85が形成され、振動板82はステンレス、ニッケル、チタン等の金属フィルム及び高弾性樹脂フィルム等で形成され、圧電素子83は、チタン酸バリウム、PZT等の誘電体材料で形成される。以上のような構成の記録ヘッドは、圧電素子83にパルス状の電圧を与え、ひずみ応力を発生させ、そのエネルギーが圧電素子83に接合された振動板を変形させ、インク流路80内のインクを垂直に加圧しインク滴(不図示)をオリフィスプレートの吐出口85より吐出して記録を行うように動作する。この様な記録ヘッドは図4に示したものと同様な記録装置に組み込んで使用される。記録装置の細部の動作は先述と同様に行うもので差しつかえない。
【0087】
(インクセットを用いた記録装置、記録方法)
次にインクセットを用いてカラー画像を記録する場合には、例えば前記図3にしめした記録ヘッドを5つキャリッジ1401上にならべた記録装置を用いる事ができる。図14はその一実施例であり、1401L、1401Bk、1401Y、1401Mおよび1401Cはそれぞれ、該液体組成物、アニオン性基の作用によって水性媒体に分散させられてなるカーボンブラックを含む黒色インク、およびシアン、マゼンタ、イエロー各色のインクを吐出する為の記録ユニットである。該記録ユニットは前記した記録装置のキャリッジ上に配置され、記録信号に応じて各色のインクを吐出する。また、液体組成物は、各色の或いは各色の中の少なくとも1色の記録インクが記録紙に付着する部分に、先立ってあるいはインク付着後に付着させる。また図14では記録ユニットを5つ使用した例を示したが、これに限定されず例えば図15に示した様に1つの記録ヘッドで上記の液体組成物、アニオン性基の作用によって水性媒体に分散させられてなるカーボンブラックを含む黒色インクおよびYMCの3色のインクを各々含むインクカートリッジ1501L、1501Bk、1501Y、1501Mおよび1501Cから供給される各色のインクを各々個別に吐出させる事ができるようにインク流路を分けて構成した記録ヘッド1501に取り付けて記録を行う態様も挙げられる。
【0088】
次に本発明に好適に使用できる記録装置および記録ヘッドの他の具体例を説明する。図16は、本発明にかかるインクセットを構成する液体組成物やインクの吐出時に気泡が大気と連通する吐出方式の液体吐出ヘッドおよびこのヘッドを用いた液体吐出装置としてのインクジェットプリンタの一例の要部を示す概略斜視図である。
【0089】
図16においては、インクジェットプリンタは、ケーシング 1008 内に長手方向に沿って設けられる記録媒体としての用紙 1028 を図16に示す矢印Pで示す方向に間欠的に搬送する搬送装置 1030 と、搬送装置 1030 による用紙 1028 の搬送方向Pに略直交する方向Sに略平行に往復運動せしめられる記録部 1010 と、記録部 1010 を往復運動させる駆動手段としての移動駆動部 1006 とを含んで構成されている。
【0090】
移動駆動部 1006 は、所定の間隔をもって対向配置される回転軸に配されるプーリ 1026a および 1026b に巻きかけられるベルト 1016 と、ローラユニット 1022a および 1022b に略平行に配置され記録部 1010 のキャリッジ部材 1010a に連結されるベルト 1016 を順方向および逆方向に駆動させるモータ 1018 とを含んで構成されている。
【0091】
モータ 1018 が作動状態とされてベルト 1016 が図16の矢印R方向に回転したき、記録部 1010 のキャリッジ部材 1010a は図16の矢印S方向に所定の移動量だけ移動される。また、モータ 1018 が作動状態とされてベルト 1016 が図16の矢印R方向とは逆方向に回転したとき、記録部 1010 のキャリッジ部材 1010a は図16の矢印S方向とは反対の方向に所定の移動量だけ移動されることとなる。さらに、移動駆動部 1006 の一端部には、キャリッジ部材 1010a のホームポジションとなる位置に、記録部 1010 の吐出回復処理を行うための回復ユニット 1026 が記録部 1010 のインク吐出口配列に対向して設けられている。
【0092】
記録部 1010 は、インクジェットカートリッジ(以下、単にカートリッジと記述する場合がある)1012Y、1012M、1012Cおよび 1012Bが各色、例えばイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックごとにそれぞれ、キャリッジ部材 1010a に対して着脱自在に備えられる。
【0093】
図17は上述のインクジェット記録装置に搭載可能なインクジェットカートリッジの一例を示す。本例におけるカートリッジ 1012 は、シリアルタイプのものであり、インクジェット記録ヘッド100と、インクなどの液体を収容する液体タンク 1002 とで主要部が構成されている。
【0094】
インクジェット記録ヘッド100は液体を吐出するための多数の吐出口832が形成されており、インクなどの液体は、液体タンク 1002 から図示しない液体供給通路を介して液体吐出ヘッド100の共通液室(図18参照)へと導かれるようになっている。カートリッジ 1012 は、インクジェット記録ヘッド100と液体タンク 1001 とを一体的に形成し、必要に応じて液体タンク 1001 内に液体を補給できるようにしたものであるが、この液体吐出ヘッド100に対し、液体タンク 1001 を交換可能に連結した構造を採用するようにしてもよい。
【0095】
このような構成のインクジェットプリンタに搭載され得る上述の液体吐出ヘッドの具体例を以下にさらに詳しく説明する。
【0096】
図18は本発明の基本的な形態を示す液体吐出ヘッドの要部を模式的に示す概略斜視図であり、図19〜図22は図18に示した液体吐出ヘッドの吐出口形状を示す正面図である。なお、電気熱変換素子を駆動するための電気的な配線などは省略している。
【0097】
本例の液体吐出ヘッドにおいては、例えば図18に示されるような、ガラス,セラミックス,プラスチックあるいは金属などからなる基板934が用いられる。このような基板の材質は、本発明の本質ではなく、流路構成部材の一部として機能し、インク吐出エネルギー発生素子、および後述する液流路,吐出口を形成する材料層の支持体として、機能し得るものであれば、特に限定されるものではない。そこで、本例では、Si基板(ウエハ)を用いた場合で説明する。吐出口は、レーザー光による形成方法の他、例えば後述するオリフィスプレート(吐出口プレート)935を感光性樹脂として、MPA(Mirror Projection Aliner)などの露光装置により形成することもできる。
【0098】
図18において934は電気熱変換素子(以下、ヒータと記述する場合がある)931および共通液室部としての長溝状の貫通口からなるインク供給口933を備える基板であり、インク供給口933の長手方向の両側に熱エネルギ発生手段であるヒータ931がそれぞれ1列ずつ千鳥状に電気熱変換素子の間隔が、例えば300dpiで配列されている。この基板934上にはインク流路を形成するためのインク流路壁936が設けられている。このインク流路壁936には、さらに吐出口832を備える吐出口プレート935が設けられている。
【0099】
ここで、図18においてはインク流路壁936と吐出口プレート935とは、別部材として示されているが、このインク流路壁936を例えばスピンコートなどの手法によって基板934上に形成することによりインク流路壁936と吐出口プレート935とを同一部材として同時に形成することも可能である。本例では、さらに、吐出口面(上面)935a側は撥水処理が施されている。
【0100】
本例では、図16の矢印S方向に走査しながら記録を行うシリアルタイプのヘッドを用い、例えば、1200 dpiで記録を行う。駆動周波数は10kHzであり、一つの吐出口では最短時間間隔100μsごとに吐出を行うことになる。
【0101】
また、ヘッドの実例寸法の一例としては、例えば、図19に示すように、隣接するノズルを流体的に隔離する隔壁936aは、幅w=14μmである。図22に示すように、インク流路壁936により形成される発泡室 1337 は、N1(発泡室の幅寸法)=33μm,N2(発泡室の長さ寸法)=35μmである。ヒータ931のサイズは30μmでヒータ抵抗値は53Ωであり、駆動電圧は 10.3Vである。また、インク流路壁936および隔壁936aの高さは12μmで、吐出口プレート厚は11μmのものが使用できる。
【0102】
吐出口832を含む吐出口プレートに設けられた吐出口部940の断面のうち、インクの吐出方向(オリフィスプレート935の厚み方向)に交差する方向で切断してみた断面の形状は概略星形となっており、鈍角の角を有する6つの起部832aと、これら起部832aの間に交互に配されかつ鋭角の角を有する6つの伏部832bとから概略構成されている。すなわち、吐出口の中心Oから局所的に離れた領域としての伏部832bをその頂部、この領域に隣接する吐出口の中心Oから局所的に近い領域としての起部832aをその基部として、図18に示すオリフィスプレートの厚み方向(液体の吐出方向)に6つの溝が形成されている。
【0103】
(溝部の位置については図23の 1141a 参照)
本例においては、吐出口部940は、例えばその厚み方向に交差する方向で切断した断面が一辺27μmの二つの正三角形を60度回転させた状態で組み合わせた形状となっており、図20に示すT1は8μmである。起部832aの角度はすべて120度であり、伏部832bの角度はすべて60度である。
【0104】
従って、吐出口の中心Oと、互いに隣接する溝の中心部(溝の頂部と、この頂部に隣接する2つの基部とを結んでできる図形の中心(重心))を結んで形成される多角形の重心Gとが一致するようになっている。本例の吐出口832の開口面積は400μm2であり、溝部の開口面積(溝の頂部と、この頂部に隣接する2つの基部とを結んでできる図形の面積)は1つあたり約33μm2となっている。
【0105】
図21は図20に示した吐出口の部分のインク付着状態を示す模式図である。
【0106】
次に、上述の構成のインクジェット記録ヘッドによる液体の吐出動作について図23〜図30を用いて説明する。
【0107】
図23〜図30は、図18〜図22に記載の液体吐出ヘッドの液体吐出動作を説明するための断面図であり、図2215に示す発泡室 1337 のX-X断面図である。この断面において吐出口部940のオリフィスプレート厚み方向の端部は、溝 1141 の頂部 1141a となっている。
【0108】
図23はヒータ上に膜状の気泡が生成した状態を示し、図24は図23の約1μs後、図25は図23の約2μs後、図26は図23の約3μs後、図27は図23の約4μs後、図28は図23の約5μs後、図29は図23の約6μs後、図30は図23の約7μs後の状態をそれぞれ示している。なお、以下の説明において、「落下」または「落とし込み」、「落ち込み」とは、いわゆる重力方向への落下という意味ではなく、ヘッドの取り付け方向によらず、電気熱変換素子の方向への移動をいう。
【0109】
まず、図23に示すように、記録信号などに基づいたヒータ931への通電に伴いヒータ931上の液流路 1338 内に気泡101が生成されると、約2μs間に図24および図25に示すように急激に体積膨張して成長する。気泡101の最大体積時における高さは吐出口面935aを上回るが、このとき、気泡の圧力は大気圧の数分の1から10数分の1にまで減少している。
【0110】
次に、気泡101の生成から約2μs後の時点で気泡101は上述のように最大体積から体積減少に転じるが、これとほぼ同時にメニスカス102の形成も始まる。このメニスカス102も図26に示すようにヒータ931側への方向に後退、すなわち落下してゆく。
【0111】
ここで、本例においては、吐出口部に複数の溝 1141 を分散させて有していることにより、メニスカス102が後退する際に、溝 1141 の部分ではメニスカス後退方向FMとは反対方向FCに毛管力が作用する。その結果、仮に何らかの原因により気泡101の状態に多少のバラツキが認められたとしても、メニスカスの後退時のメニスカスおよび主液滴(以下、液体またはインクと記述する場合がある)Iaの形状が、吐出口中心に対して略対称形状となるように補正される。
【0112】
そして、本例では、このメニスカス102の落下速度が気泡101の収縮速度よりも速いために、図27に示すように気泡の生成から約4μs後の時点で気泡101が吐出口832の下面近傍で大気に連通する。このとき、吐出口832の中心軸近傍の液体(インク)はヒータ931に向かって落ち込んでゆく。これは、大気に連通する前の気泡101の負圧によってヒータ931側に引き戻された液体(インク)Iaが、気泡101の大気連通後も慣性でヒータ931面方向の速度を保持しているからである。
【0113】
ヒータ931側に向かって落ち込んでいった液体(インク)は、図28に示すように気泡101の生成から約5μs後の時点でヒータ931の表面に到達し、図29に示すようにヒータ931の表面を覆うように拡がってゆく。このようにヒータ931の表面を覆うように拡がった液体はヒータ931の表面に沿った水平方向のベクトルを有するが、ヒータ931の表面に交差する、例えば垂直方向のベクトルは消滅し、ヒータ931の表面上に留まろうとし、それよりも上側の液体、すなわち吐出方向の速度ベクトルを保つ液体を下方向に引っ張ることになる。
【0114】
その後、ヒータ931の表面に拡がった液体と上側の液体(主液滴)との間の液体部分Ibが細くなってゆき、気泡101の生成から約7μs後の時点で図30に示すようにヒータ1の表面の中央で液体部分Ibが切断され、吐出方向の速度ベクトルを保つ主液滴Iaとヒータ931の表面上に拡がった液体Icとに分離される。このように分離の位置は液流路 1338 内部、より好ましくは吐出口832よりも電気熱変換素子931側が望ましい。
【0115】
主液滴Iaは吐出方向に偏りがなく、吐出ヨレすることなく、吐出口832の中央部分から吐出され、記録媒体の被記録面の所定位置に着弾される。また、ヒータ931の表面上に拡がった液体Icは、従来であれば主液滴の後続としてサテライト滴となって飛翔するものであるが、ヒータ931の表面上に留まり、吐出されない。
【0116】
このようにサテライト滴の吐出を抑制することができるため、サテライト滴の吐出により発生し易いスプラッシュを防止することができ、霧状に浮遊するミストにより記録媒体の被記録面が汚れるのを確実に防止することができる。なお図27〜29において、Idは溝部に付着したインク(溝内のインク)を、またIeは液流路内に残存しているインクを表している。
【0117】
このように、本例の液体吐出ヘッドでは、気泡が最大体積に成長した後の体積減少段階で液体を吐出する際に、吐出口の中心に対して分散した複数の溝により、吐出時の主液滴の方向を安定化させることができる。その結果、吐出方向のヨレのない、着弾精度の高い液体吐出ヘッドを提供することができる。また、高い駆動周波数での発泡ばらつきに対しても吐出を安定して行うことができることによる、高速高精細印字を実現することができる。
【0118】
特に、気泡の体積減少段階でこの気泡を始めて大気と連通させることで液体を吐出することにより、気泡を大気に連通させて液滴を吐出する際に発生するミストを防止できるので、所謂、突然不吐の要因となる、吐出口面に液滴が付着する状態を抑制することもできる。
【0119】
また本発明に好適に使用できる、吐出時に気泡を大気と連通する吐出方式の記録ヘッドの他の実施態様として、例えば日本特許登録第2783647号公報に記載のように、いわゆるエッジシュータータイプが挙げられる。
【0120】
本発明は、特にインクジェット記録方式の中でも熱エネルギーを利用して飛翔的液滴を形成し、記録を行うインクジェット方式の記録ヘッド、記録装置において、優れた効果をもたらすものである。
【0121】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4 740 796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式はいわゆるオンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を越える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも一つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行なわれるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。
【0122】
このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、更に優れた記録を行なうことができる。
【0123】
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体の組み合わせ構成(直線状液流路または直角液流路)の他に、熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書、米国特許第4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものである。
【0124】
加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59-123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59-138461号公報に基づいた構成としても本発明は有効である。
【0125】
さらに、記録装置が記録できる最大記録媒体の幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドとしては、上述した明細書に開示されているような複数記録ヘッドの組み合わせによってその長さを満たす構成や、一体的に形成された1個の記録ヘッドとしての構成のいずれでもよいが、本発明は、上述した効果を一層有効に発揮することができる。
【0126】
加えて、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッド、あるいは記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。
【0127】
また、本発明の記録装置の構成として設けられる、記録ヘッドに対しての回復手段、予備的な補助手段等を付加することは本発明の効果を一層安定できるので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧あるいは吸引手段、電気熱変換体あるいはこれとは別の加熱素子あるいはこれらの組み合わせによる予備加熱手段、記録とは別の吐出を行う予備吐出モードを行うことも安定した記録を行うために有効である。
【0128】
さらに、記録装置の記録モードとしては黒色等の主流色のみの記録モードだけではなく、記録ヘッドを一体的に構成するか複数個の組み合わせによってでもよいが、異なる色の複色カラー、または混色によるフルカラーの少なくとも一つを備えた装置にも本発明は極めて有効である。
【0129】
以上説明した本発明の実施例においては、インクを液体として説明しているが、室温やそれ以下で固化するインクであって、室温で軟化するもの、もしくは液体であるもの、あるいは上述のインクジェット方式ではインク自体を30℃以上70℃以下の範囲内で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあるように温度制御するものが一般的であるから、使用記録信号付与時にインクが液状をなすものであれば良い。
【0130】
加えて、積極的に熱エネルギーによる昇温をインクの固形状態から液体状態への状態変化のエネルギーとして使用せしめることで防止するか、またはインクの蒸発防止を目的として放置状態で固化するインクを用いるかして、いずれにしても熱エネルギーの記録信号に応じた付与によってインクが液化し、液状インクとして吐出するものや、記録媒体に到達する時点では既に固化し始めるもの等のような、熱エネルギーによって初めて液化する性質のインクの使用も本発明には適用可能である。このような場合インクは、特開昭54-56847号公報あるいは特開昭60-71260号公報に記載されるような、多孔質シート凹部または貫通孔に液状または固形物として保持された状態で、電気熱変換体に対して対向するような形態としても良い。本発明においては、上述した各インクに対して最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
【0131】
さらに加えて、本発明に係る記録装置の形態としては、ワードプロセッサやコンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として一体または別体に設けられるものの他、リーダと組み合せた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を採るものであってもよい。
【0132】
次に、上述した液体吐出ヘッドを搭載する液体吐出装置の概略について説明する。
【0133】
図31は、本発明の液体吐出ヘッドを装着して適用することのできる液体吐出装置の一例であるインクジェット記録装置600の概略斜視図である。
【0134】
図31において、インクジェットヘッドカートリッジ601は、上述した液体吐出ヘッドとこの液体吐出ヘッドに供給するインクを保持するインクタンクとが一体となったものである。このインクジェットヘッドカートリッジ601は、駆動モータ602の正逆回転に連動して駆動力伝達ギア603、604を介して回転するリードスクリュ605の螺旋溝606に対して係合するキャリッジ607上に搭載されており、駆動モータ602の動力によってキャリッジ607とともにガイド608に沿って矢印a,b方向に往復移動される。被記録材Pは、図示しない被記録材搬送手段によってプラテンローラ609上を搬送され、紙押え板610によりキャリッジ607の移動方向にわたってプラテンローラ609に対して押圧される。
【0135】
リードスクリュ605の一端の近傍には、フォトカプラ611、612が配設されている。これらはキャリッジ607のレバー607aのこの域での存在を確認して駆動モータ602の回転方向切り換え等を行うためのホームポジション検知手段である。
【0136】
支持部材613は、上述のインクジェットヘッドカートリッジ601の吐出口のある前面(吐出口面)を覆うキャップ部材614を支持するものである。また、インク吸引手段615は、キャップ部材614の内部にインクジェットヘッドカートリッジ601から空吐出等されて溜まったインクを吸引するものである。このインク吸引手段615によりキャップ内開口部(不図示)を介してインクジェットヘッドカートリッジ601の吸引回復が行われる。インクジェットヘッドカートリッジ601の吐出口面を払拭するためのクリーニングブレード617は、移動部材618により前後方向(上記キャリッジ607の移動方向に直交する方向)に移動可能に設けられている。これらクリーニングブレード617及び移動部材618は、本体支持体619に支持されている。クリーニングブレード617は、この形態に限らず、他の周知のクリーニングブレードであってもよい。
【0137】
液体吐出ヘッドの吸引回復操作にあたって、吸引を開始させるためのレバー620は、キャリッジ607と係合するカム621の移動に伴って移動し、駆動モータ602からの駆動力がクラッチ切り換え等の公知の伝達手段で移動制御される。インクジェットヘッドカートリッジ601の液体吐出ヘッドに設けられた発熱体に信号を付与したり、前述した各機構の駆動制御を司ったりするインクジェット記録制御部は装置本体側に設けられており、ここには図示しない。
【0138】
上述の構成を有するインクジェット記録装置600は、図示しない被記録材搬送手段によりプラテンローラ609上を搬送される被記録材P'に対し、インクジェットヘッドカートリッジ601は被記録材P'の全幅にわたって往復移動しながら記録を行う。
【0139】
【実施例】
以下、実施例および比較例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、下記実施例により限定されるものではない。尚以下の記載で、部、%とあるものは特に断らない限り重量基準である。
【0140】
液体組成物
以下の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ0.2μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過し、液体組成物を調製した。
塩化ナトリウム 10部
トリメチロ−ルプロパン 6部
グリセリン 5部
ジエチレングリコ−ル 5部
アセチレングリコ−ルエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノ−ルEH) 0.15部
水 73.85部
【0141】
顔料分散体
比表面積が220m2/gでDBP吸油量が112ml/100gのカーボンブラック10gとp−アミノ−N−安息香酸0.55gを水72gに良く混合した後、これに硝酸1.62gを滴下して、70℃で攪拌した。ここに更に数分後、5gの水に1.07gの亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を加え、更に1時間攪拌した。得られたスラリーを濾紙(商品名:東洋濾紙No.2;アドバンティス社製)で濾過し、濾取した顔料粒子を十分に水洗し、90℃のオーブンで乾燥させ、更に、この顔料に水を足して顔料濃度10重量%の顔料水溶液を作製した。以上の方法によりカーボンブラックの表面に下記化学式に示される基を導入した。
【0142】
【外1】
Figure 0003799224
【0143】
次に上記の顔料分散体を用いてブラックインクを下記の方法にて調整した。
【0144】
(ブラックインク)
以下の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過し、ブラックインクを調製した。
上記の顔料分散液 30部
トリメチロ−ルプロパン 6部
グリセリン 5部
ジエチレングリコ−ル 5部
アセチレングリコ−ルエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノ−ルEH) 0.15部
水 53.85部
【0145】
実施例1
上記で調製した液体組成物およびブラックインクを下記のように組み合わせて、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置(商品名:BJC600;キヤノン(株)社製)を用いて、液体組成物をブラックインクが付与される部位およびその周囲に、ブラックインクの付与前に付与することによって印字を行なった。液体組成物とインクの付与の時間的な間隔は約30ミリ秒とした。
【0146】
実施例2
上記で調製した液体組成物およびブラックインクを下記のように組み合わせて、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置(商品名:BJC600;キヤノン(株)社製)を用いて、ブラックインクの付与後に、該ブラックインク付与部に液体組成物を付与することによって印字を行なった。液体組成物とインクの付与の時間的な間隔は約30ミリ秒とした。
【0147】
比較例1
実施例1において、液体組成物を用いない以外は実施例1と同様にして印字を行なった。
【0148】
上記の実施例1、2及び比較例1について下記評価を行った。その結果を表1に示す。
【0149】
1)印字濃度
上記各インクを上記インクジェット記録装置を用い、下記のコピー用普通紙A,B,C,D,Eに印字を行いその時の印字濃度を、マクベス製印字濃度測定器を用い測定し、下記の基準で評価した。そして得られた結果を下記の基準で評価した。
A:キヤノン (株) 社製PPC用紙 NSK
B:キヤノン (株) 社製PPC用紙 NDK
C:ゼロックス (株) 社製PPC用紙 4024
D:フォックスリバー社製PPC用紙プローバーボンド
E:ノイジドラ社製 キヤノン用PPC用紙
(以下におけるコピー用普通紙A,B,C,D,Eは全てこのコピー用普通紙A,B,C,D,Eに対応するものとする。)
−印字濃度の評価基準
a;コピー用普通紙A,B,C,D,E の印字濃度の差が最高と最低で0.1未満。
b;コピー用普通紙A,B,C,D,E の印字濃度の差が最高と最低で0.1以上。
【0150】
2)文字品位
上記各インクを上記インクジェット記録装置を用い、インクの浸透性が各々異なる、上記コピー用普通紙A,B,C,D,Eに文字印字を行い、その時の文字のにじみを下記の基準で評価した。また、実施例1においては液体組成物をブラックインク印字部にブラックインクの印字前に、実施例2においては液体組成物をブラックインク印字部にブラックインクの印字後に印字させた。得られた結果を下記の基準で評価した。
−文字品位の評価基準
a;5紙とも滲みがほとんどない。
b;多少滲む紙がみられる。
c;5紙とも滲む。
【0151】
3)定着性
上記各インクを上記インクジェット記録装置を用い、インクの浸透性の異なる上記コピー用普通紙A,B,C,D,Eに印字を行い、その時の印字物を手でこすり印字の流れが生じなくなる時間を測定し、下記の基準で評価した。また、実施例1においては液体組成物をブラックインク印字部にブラックインクの印字前に、実施例2においては液体組成物をブラックインク印字部にブラックインクの印字後に印字させた。得られた結果を下記の基準で評価した。
−定着性の評価基準
a;5紙とも30秒後印字の流れがほとんどない。
b;30秒後多少印字の流れる紙がみられる。
c;40秒後多少印字の流れる紙がみられる。
【0152】
【表1】
Figure 0003799224
【0153】
上記表1の結果から分かる様に、本発明の実施態様にかかるインクは、例えばインクジェット記録方法によって記録を行った場合の文字品位および印字濃度が高い。
【0154】
実施例3
(液体組成物)
上記実施例1の液体組成物と同様にして液体組成物を調製した。
【0155】
(ブラックインク)
上記実施例1のブラックインクと同様にして調整されたブラックインクを用意した。
【0156】
保存性
100ml容のガラス容器(ショット社製)を2つ用意し、その各々に上記実施例3の液体組成物およびブラックインクを100mlづつ入れ、放置前後でのインクもしくは液体組成物の粘度変化の有無を観察した。なお、評価基準は以下の通りである。また、ここで実施例3は液体組成物とブラックインクのうちどちらか片方でも粘度変化が大きければbとすることにした。その結果を下記表2に示す。
−保存性の評価基準
a;放置前後でインクもしくは液体組成物の粘度の変化が殆ど無い。
b;放置前後でインクもしくは液体組成物の粘度の変化が大きい。
【0157】
【表2】
Figure 0003799224
【0158】
実施例4
(液体組成物)
上記実施例1の液体組成物と同様にして液体組成物を調製した。
【0159】
(ブラックインク)
上記実施例1のブラックインクと同様にして調整されたブラックインクを用意した。
【0160】
(イエローインク1)
以下の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ0.2μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過し、イエローインク1を調製した。
アセチレングリコ−ルエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノ−ルEH) 1部
ジエチレングリコ−ル 10部
グリセリン 5部
CIダイレクトイエロー86 3部
水 81部
【0161】
(マゼンタインク1)
以下の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ0.2μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過し、マゼンタインク1を調製した。
アセチレングリコ−ルエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノ−ルEH) 1部
ジエチレングリコ−ル 10部
グリセリン 5部
CIアシッドレッド35 3部
水 81部
【0162】
(シアンインク1)
以下の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ0.2μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過し、シアンインク1を調製した。
アセチレングリコ−ルエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノ−ルEH) 1部
ジエチレングリコ−ル 10部
グリセリン 5部
CIアシッドブルー9 3部
水 81部
【0163】
上記で調整したインクを下記のように組み合わせてインクセットを作製した。
・ 液体組成物
・ ブラックインク
・ イエローインク
・ マゼンタインク
・ シアンインク
【0164】
比較例2
(ブラックインク)
上記実施例1のブラックインクと同様にして調整されたブラックインクを用意した。
【0165】
(イエローインク)
上記実施例4のイエローインクと同様にして調整されたイエローインクを用意した。
【0166】
(マゼンタインク)
上記実施例4のマゼンタインクと同様にして調整されたマゼンタインクを用意した。
【0167】
(シアンインク)
上記実施例4のシアンインクと同様にして調整されたシアンインクを用意した。
【0168】
上記で調整したインクを下記のように組み合わせてインクセットを作製した。
【0169】
・ブラックインク
・イエローインク
・マゼンタインク
・シアンインク
【0170】
上記の実施例4及び比較例2のインクを用いて、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置BJF-800(キヤノン製)を用いて下記の様にしてブリーディングの評価を行った。その結果を表3に示す。
【0171】
・ ブリーディング
印字画像は10cm四方の正方形内を、5X5のマス目(1マスのサイズ:2cmX2cm)で仕切り、ブラックインクと各カラーインクで交互にベタ印字したものにより、ブラック印字部とカラー印字部との境界のブリーディングを以下の基準にて評価した。
【0172】
また、実施例4においては液体組成物をブラックインク印字部に、ブラックインクの印字前にベタ印字させた。
−ブリーディングの評価基準
a;2色間の境界線が鮮明で、境界部に滲みや混色が見られない。
b;2色間の境界線が存在する事は明らかであるが、一部の紙で境界部に多少の滲みや混色が見られる。
c;2色間の境界線の識別不能である。
【0173】
【表3】
Figure 0003799224
【0174】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の各実施態様によれば、インクジェット記録を行う際にブラックインクによる印字において、長期保存による安定性の心配がなく、印字物の影響を緩和し文字品位が良く印字濃度も高いインクセットであり、カラーインクと組み合わせた場合にブリーディングを有効に抑える事ができ、更に該インクを用いたインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェット記録装置のヘッドの一例を示す縦断面図である。
【図2】インクジェット記録装置のヘッドの一例を示す横断面図である。
【図3】図1に示したヘッドをマルチ化したヘッドの外観斜視図である。
【図4】インクジェット記録装置の一例を示す概略斜視図である。
【図5】インクカートリッジの一例を示す縦断面図である。
【図6】記録ユニットの一例を示す斜視図である。
【図7】インクジェット記録ヘッドの別の構成例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の一実施態様にかかる記録方法の概略説明図である。
【図9】本発明の一実施態様にかかるインクカートリッジが記録ヘッドに装着された状態を示す概略平面図である。
【図10】本発明の一実施態様にかかるインクカートリッジの他の実施態様を示す概略平面図である。
【図11】図10のインクカートリッジが記録ヘッドに装着された状態を示す概略平面図である。
【図12】本発明にかかるインクセットの他の実施態様を示す概略平面図である。
【図13】本発明にかかる記録ユニットの他の実施態様を示す概略斜視図である。
【図14】本発明のインクセットの一実施態様にかかる、液体組成物を収納した記録ユニット、イオン性基の作用によって水性媒体に分散されている色材を含む黒色インクを収納した記録ユニット、及びCMYの各カラーインクを収納した記録ユニットが同一キヤリッジ上に装着された状態を示す該略図である。
【図15】図4のインクジェット装置の記録ヘッド部の一態様のオリフィス部の拡大図である。
【図16】液体吐出ヘッドを搭載可能なインクジェットプリンタの一例の要部を示す概略斜視図である。
【図17】液体吐出ヘッドを備えたインクジェトカートリッジの一例を示す概略斜視図である。
【図18】液体吐出ヘッドの一例の要部を模式的に示す概略斜視図である。
【図19】液体吐出ヘッドの一例の一部を抽出した概念図である。
【図20】図19に示した吐出口の部分の拡大図である。
【図21】図20に示した吐出口の部分のインク付着状態を示す模式図である。
【図22】図19における主要部の模式図である。
【図23】図22中のX―Y斜視断面形状に対応し図24〜図30と共に液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図である。
【図24】図22中のX―Y斜視断面形状に対応し図23及び図25〜図30と共に液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図である。
【図25】図22中のX―Y斜視断面形状に対応し図23、図24及び図26〜図30と共に液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図である。
【図26】図22中のX―Y斜視断面形状に対応し図23〜図25及び図27〜図30と共に液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図である。
【図27】図22中のX―Y斜視断面形状に対応し図23〜図26及び図28〜図30と共に液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図である。
【図28】図22中のX―Y斜視断面形状に対応し図23〜図27及び図29、図30と共に液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図である。
【図29】図22中のX―Y斜視断面形状に対応し図23〜図28及び図30と共に液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図である。
【図30】図22中のX―Y斜視断面形状に対応し図23〜図29と共に液体吐出ヘッドの液体吐出動作を経時的に説明するための概略断面図である。
【図31】本発明の液体吐出ヘッドを装着して適用することのできる液体吐出装置の一例であるインクジェット記録装置600の概略斜視図である。
【符号の説明】
13 ヘッド
14 インク溝
15 発熱ヘッド
16 保護膜
17−1、17−2 電極
18 発熱抵抗体層
19 蓄熱層
20 基板
21 インク
22 吐出オリフィス(微細孔)
23 メニスカス
24 インク小滴
25 被記録材
26 マルチ溝
27 ガラス板
28 発熱ヘッド
40 インク袋
42 栓
44 インク吸収体
45 インクカートリッジ
51 給紙部
52 紙送りローラー
53 排紙ローラー
61 ブレード
62 キャップ
63 インク吸収体
64 吐出回復部
65 記録ヘッド
66 キャリッジ
67 ガイド軸
68 モーター
69 ベルト
70 記録ユニット
71 ヘッド部
72 大気連通口
80 インク流路
81 オリフィスプレート
82 振動板
83 圧電素子
84 基板
85 吐出口
91 液体組成物
92 インク
600 インクジェット記録装置
601 インクジェットヘッドカートリッジ
602 駆動モータ
603、604 駆動力伝達ギア
605 リードスクリュ
606 螺旋溝
607 キャリッジ
607a レバー
608 ガイド
609 プラテンローラ
610 紙押え板
611、612 フォトカプラ
613 支持部材
614 キャップ部材
615 インク吸引手段
616 キャップ内開口部
617 クリーニングブレード
618 移動部材
619 本体支持体
620 (吸引開始)レバー
621 カム
832 吐出口
832a 起部
832b 伏部
901 記録ヘッド
931 電気熱変換素子(ヒータ,インク吐出エネルギ発生素子)
933 インク供給口(開口部)
934 基板
935 オリフィスプレート(吐出口プレート)
935a 吐出口面
936 インク流路壁
936a 隔壁
940 吐出口部
1001 カートリッジ
1003 液体組成物の収容部
1005 インクの収容部
1101 記録ヘッド
1201、1203 カートリッジ
1205 記録ヘッド
1301 記録ユニット
1303 記録ヘッド
1401 キャリッジ
1501 記録ヘッド
1337 発泡室
1338 液流路
1141 溝
1141a 頂部
100 インクジェット記録ヘッド
101 気泡
102 メニスカス
1002 液体タンク
1006 移動駆動部
1008 ケーシング
1010 記録部
1010a キャリッジ部材
1012 カートリッジ
1012Y,M,C,B インクジェットカートリッジ
1016 ベルト
1018 モータ
1020 駆動部
1022a、1022b ローラユニット
1024a、1024b ローラユニット
1026 回復ユニット
1026a、1026b プーリ
1028 用紙
1030 搬送装置
2701 カーボンブラック
2703 水分子
2705 カウンターイオン
2707 カリウムイオン
2709 ナトリウムイオン
C 濡れインク
M メニスカス後退方向
C メニスカス後退方向と反対方向
G 重心
I インク
Ia 主液滴(液体,インク)
Ib,Ic 液体(インク)
Id 溝部に付着したインク(溝内のインク)
Ie 液流路内に残存しているインク
L 液室(インク供給口)から吐出口に向かう線
1 発泡室の幅寸法
2 発泡室の長さ寸法
O 吐出口の中心
P’ 被記録材
P 用紙の搬送方向
R ベルトの回転方向
S 用紙の搬送方向と略直交する方向
1 吐出口伏部寸法
w 隔壁の幅寸法

Claims (19)

  1. アニオン性基の作用によって水性媒体中に分散させられている色材を含んでいるインクと共にインクジェット画像の形成に用いられ、且つ、インクと液体組成物の回復系が共通であるインクジェット記録装置に用いられる液体組成物であって、
    塩として、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩のみを含むことを特徴とする液体組成物(但し、M1はアルカリ金属、またはアンモニウムを表し、またPhはフェニル基を表す)。
  2. 該液体組成物がインクジェット法によって吐出されるものである請求項1に記載の液体組成物。
  3. 水性媒体および該水性媒体にアニオン性基の作用によって分散させられている色材を含むインクと請求項1または2に記載の液体組成物との組み合わせを含むことを特徴とするインクセット。
  4. 上記色材がカーボンブラックであり、該カーボンブラックが、該アニオン性基を有する分散剤によって分散している請求項3記載のインクセット。
  5. 上記色材がカーボンブラックであって、かつ該アニオン性基が該カーボンブラックの表面に結合しているものである請求項3記載のインクセット。
  6. 上記色材が有機顔料であり、該有機顔料が、(i)該アニオン性基を有する分散剤によって分散しているか、又は(ii)該アニオン性基が該有機顔料の表面に結合している、請求項3記載のインクセット。
  7. 上記色材が分散染料であり、かつ該分散染料が、該アニオン性基を有する分散剤によって分散している請求項4記載のインクセット。
  8. 上記アニオン性基が−COO(M2)、−SO(M2)、−POH(M2)、−PO(M2)から選ばれる少なくとも1つである請求項記載のインクセット(但し、M2は水素原子、アルカリ金属、アンモニウムおよび有機アンモニウムを表わす)。
  9. 上記M1および上記M2が同一である請求項に記載のインクセット。
  10. 該インクが、イエロー、マゼンタ、シアン、レッド、グリーン、ブルーおよびブラックから選ばれる1つの色調を示すインクである請求項3記載のインクセット。
  11. インクと液体組成物の回復系が共通であるインクジェット記録装置を用いて、(i)水性媒体及び該水性媒体にアニオン性基の作用によって分散させられている色材を含むインクを記録媒体に付与する工程;及び(ii)塩として、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩のみを含む液体組成物(但し、M1はアルカリ金属、またはアンモニウムを表し、またPhはフェニル基を表す)を該記録媒体の少なくとも該インクが付与される領域に付与する工程、を有することを特徴とする記録方法。
  12. インクと液体組成物の回復系が共通であるインクジェット記録装置を用いて、記録媒体に異なる色調の画像を含み、該色調の異なる画像は互いに隣接する部分を有する多色画像を形成する方法であって、
    互いに色調の異なる複数のインクを各々記録媒体に付与して該多色画像を形成する工程を有し、該複数のインクの少なくとも1つは、水性媒体および該水性媒体にアニオン性基の作用によって分散させられている色材を含む色材分散インクであって、
    更に、該記録媒体の少なくとも該色材分散インクが付与される領域に請求項1〜3の何れかに記載の液体組成物を、該色材分散インクの記録媒体への付与に先立って、もしくは該色材分散インクの記録媒体への付与後に付与する工程を有することを特徴とする多色画像の形成方法。
  13. 請求項2に記載の液体組成物を収容した液体組成物収容部と該液体組成物を吐出させるインクジェットヘッドを備えていることを特徴とする記録ユニット。
  14. 請求項2に記載の液体組成物を収容し、該液体組成物を吐出させるインクジェットヘッドに着脱可能であることを特徴とするインクカートリッジ。
  15. 請求項2に記載の液体組成物を収容した液体組成物収容部、水性媒体と該水性媒体にアニオン性基の作用によって分散させられている色材とを含むインクを収容したインク収容部、および該液体組成物収容部に収容された液体組成物ならびに該インク収容部に収容されたインクの各々を独立して吐出させるインクジェットヘッドを備えていることを特徴とするインクジェット装置。
  16. 水性媒体と該水性媒体にアニオン性基の作用によって分散させられている色材を含むインクを、インクと液体組成物の回復系が共通であるインクジェット装置を用いて記録媒体に付与したときの該インクの記録媒体への定着促進方法であって、塩として、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩のみを含む液体組成物(但し、M1はアルカリ金属、またはアンモニウムを表し、またPhはフェニル基を表す)を該記録媒体の少なくとも該インクが付与される部位に付与することを特徴とするインクの記録媒体への定着促進方法。
  17. インクと液体組成物の回復系が共通であるインクジェット記録装置を用いて、記録媒体上の多色画像の品質を改善する方法であって、該多色画像は少なくとも色調の異なる第1の領域と第2の領域を含み、該第1の領域と第2の領域とは少なくとも一部が互いに隣接しているものであり、
    該第1の領域は第1の色調を有する第1のインクを該記録媒体に付与する工程、及び記録媒体上の少なくとも該第1のインクが付与される部位に液体組成物を付与する工程を含む方法によって形成されるものであり、
    該第2の領域は第2の色調を有する第2のインクを該記録媒体に付与する工程を有する方法によって形成されるものであり、
    該第1のインクは水性媒体と該水性媒体にアニオン性基の作用によって分散させられている色材を含むインクであり、該液体組成物は塩として、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩のみを含むことを特徴とする多色画像の品質向上方法(但し、M1はアルカリ金属、またはアンモニウムを表し、またPhはフェニル基を表す)。
  18. 該第2の領域が該第2のインクを該記録媒体に付与する工程、及び該記録媒体上の少なくとも該第2のインクが付与される部位に液体組成物を付与する工程を含む方法によって形成されるものであり、該第2のインクが水性媒体と該水性媒体にアニオン性基の作用によって分散させられている色材を含み、該液体組成物は塩として、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩のみを含む(但し、M1はアルカリ金属、またはアンモニウムを表し、またPhはフェニル基を表す)請求項17記載の多色画像の品質向上方法。
  19. 該第2のインクが水性媒体および染料を含む請求項17または18記載の多色画像の品質向上方法。
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