JP3915472B2 - インクジェット用インクとそれを用いたインクジェットカートリッジ、インクジェット画像記録方法及びインクジェット記録画像 - Google Patents

インクジェット用インクとそれを用いたインクジェットカートリッジ、インクジェット画像記録方法及びインクジェット記録画像 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット用インクとそれを用いたインクジェットカートリッジ、インクジェット画像記録方法及びインクジェット記録画像に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて記録媒体に付着させ、画像、文字等の記録を行うものであるが、比較的高速、低騒音、多色化が容易であるという利点を有している。
【0003】
また、近年の技術進歩により、染料インクによるインクジェットプリントが、その銀塩写真に迫る高画質や装置の低価格化に伴い、その普及を加速させている。
【0004】
染料は溶媒に可溶であり、色素分子は分子状態もしくはクラスター状態で着色している。従って、各分子の環境が似通っているために、その吸収スペクトルはシャープであり高純度で鮮明な発色を呈する。更に、粒子に起因する粒状パターンがなく、また、散乱光や反射光が発生しないため、透明性が高く色相も鮮明なインクジェット画像を得ることができる。
【0005】
しかしその一方で、光化学反応等により分子が破壊された場合には、分子数の減少がそのまま着色濃度に反映するために、耐光性が悪いという欠点を有している。染料インクを用いたインクジェット記録画像は、高画質であるが、経時保存による画像品質の低下が大きく、画像保存性の観点で銀塩写真を凌駕する技術が未だ現れていないのが現状である。
【0006】
染料インクに対して、光による退色に強い画像を必要とする用途向けのインクとして、耐光性が良好である顔料を着色剤として用いる顔料インクが使用されている。しかしながら、顔料は染料と比べて顔料粒子として存在するため、光の散乱を受けやすく、透明感のない画像を与えるので、色再現性の点で染料には及ばない欠点があった。
【0007】
上述のように、染料インクは、粒状性、光沢性、色再現性に優れた点を有しているものの、耐光性に劣り、逆に、顔料インクは、耐光性に優れているものの粒状性、光沢性、色再現性に劣るという相反する特性である。
【0008】
以上述べたような水溶性染料を用いた水性インクの問題点を解決する方策として、エマルジョン、ラテックス等の樹脂微粒子を添加することが古くから検討されている。特開昭55−18418号には、「ゴム、樹脂等の成分を乳化剤により微細粒子の形で水中に分散せしめた一種のコロイド溶液」であるラテックスを添加したインクジェット記録用の記録剤に関する提案がある。該特許提案のようにラテックスを添加して耐光堅牢性を改善したり、滲み防止効果を持たせるためには、染料の使用量以上のラテックスが必要となり分散安定性、吐出安定性を確保することは非常に困難で、更に得られる画像として、粒状性や光沢性の点で写真画像に匹敵する画像を得るには至っていないのが現状である。
【0009】
前記の水溶性染料を用いた水性インクの耐水性、耐光堅牢性の低い問題を解決するため、油溶性染料、疎水性染料等により水分散性樹脂を着色する方法の提案がインクジェット記録用インクとしてなされている。例えば、特開昭55−139471号、同58−45272号、特開平3−250069号、同8−253720号、同8−92513号、同8−183920号、特開2001−11347等には油溶性染料によって染色された乳化重合粒子または分散した重合粒子を用いたインクが提案されている。このような着色微粒子を用いた水性インクにおいては、粒子表面や粒子外に染料が存在すると、耐光性効果が減じられ、分散安定性、吐出安定性、耐光堅牢性等の諸性能を高めることは困難であり、更に得られる画像として、粒状性や光沢性の点で写真画像に匹敵する画像を得るには至っていないのが現状である。
【0010】
更に、特開2001−19880では、キレート染料を含浸させた着色微粒子が、また、特開2001−139607では、キレート染料を含浸したコアシェル型の二重構造からなる着色微粒子が提案されているが、いずれも写真画像に匹敵する画像を得るには満足のいくレベルではない。
【0011】
また、染料インクを樹脂に溶解し、微粒子上にインク中に分散させているインクが知られているが、染料を着色微粒子とすることで、通常の染料インクに比較すると常温高湿下での滲みや耐水性は改良することができるが、これらのインクを高温高湿下で長期間保存することにより画像が滲む欠点を有していた。
【0012】
以上述べてきたように、染料を用いた着色微粒子含有水性インクは、従来の水溶性染料、顔料分散体を用いた水性インクの問題点を克服し、高い記録品位を実現する可能性を秘めたものではあるが、各種の問題を残しており更なる改良が求められている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を鑑みなされたのであり、その目的は、インクジェット記録画像の粒状性、光沢性及び耐光性に優れたインクジェット用インクとそれを用いたインクジェットカートリッジ、インクジェット画像記録方法及びインクジェット記録画像を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成された。
【0015】
1.染料を含有した樹脂の表面を更に樹脂で被覆した着色微粒子と、顔料粒子とを含有するインクジェット用インクであり、該インクジェット用インクの前記式(1)で表される再分散係数が0.5〜5であり、かつ該顔料粒子の表面が水不溶性でかつ水分散性の高分子層で被覆されていることを特徴とするインクジェット用インク。
【0016】
2.pHが、7.0以上であることを特徴とする前記1項に記載のインクジェット用インク。
【0017】
3.表面張力が、25〜45mN/mであることを特徴とする前記1又は2項に記載のインクジェット用インク。
【0018】
4.前記着色微粒子の二次体積平均粒子径が、10〜150nmであることを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【0019】
5.前記顔料粒子の二次体積平均粒子径が、10〜150nmであることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【0020】
6.多価金属イオン含有量が、5ppm以下であることを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【0021】
7.インク溶剤含有量が、5〜70質量%であることを特徴とする前記1〜6項のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【0022】
8.アニオン界面活性剤を含有することを特徴とする前記1〜7項のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【0023】
9.ノニオン界面活性剤を含有することを特徴とする前記1〜7項のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【0024】
10.カチオン界面活性剤を含有することを特徴とする前記1〜7項のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【0025】
11.アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤とを含有することを特徴とする前記1〜7項のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【0026】
12.水溶性高分子または水不溶性高分子分散液を含有することを特徴とする前記1〜11項のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【0027】
13.前記1〜12項のいずれか1項に記載のインクジェット用インクを少なくとも1つ収容したインク収容部を有することを特徴とするインクジェットカートリッジ。
【0028】
14.前記1〜12項のいずれか1項に記載のインクジェット用インクを少なくとも1つ用いて画像形成することを特徴とするインクジェット画像記録方法。
【0029】
15.前記1〜12項のいずれか1項に記載のインクジェット用インクを少なくとも1つ用いて、インクジェット画像記録を行うことにより形成されたことを特徴とするインクジェット記録画像。
【0030】
本発明者らは、染料インク及び顔料インクによる出力画像の粒状性、光沢性と耐光性の改良に関し鋭意検討を重ねた結果、染料を含有した樹脂からなる着色微粒子、染料を被覆した樹脂からなる着色微粒子及び染料を含有した樹脂の表面を更に樹脂で被覆した着色微粒子から選ばれる少なくとも1種の着色微粒子と、表面を水不溶性でかつ水分散性の高分子層で被覆された顔料粒子とを含有するインクジェット用インク(以下、単にインクともいう)を用い、かつインクの前記式(1)で表される再分散係数を0.5〜5の範囲とすることにより、画像特性である粒状性、光沢性と耐光性を両立できることを見いだし、本発明に至った次第である。
【0031】
従来より、染料インクを樹脂に溶解し、微粒子状でインク中に分散させているインクが知られているが、染料を着色微粒子とすることで、通常の染料インクに比較すると常温高湿下での滲みや耐水性は改良することができるが、これらのインクを高温高湿下で長期間保存することにより画像がにじむ欠点を有していたが、本発明者らが鋭意検討を行った結果、特定の再分散性を有する着色微粒子と顔料粒子とを共存させることにより、画像保存性(耐光性)と画質(粒状性、光沢性)を両立できることを見いだしたものである。
【0032】
具体的には、着色微粒子を含有したインクにより形成した画像は、高温高湿下で長期間保存することにより、着色微粒子同士が融着を起こす。また、粒子分散状態が破壊されると、周囲に残存するインク溶剤、空気中の水分等と混ざり合い、液状化を起こし、色材が移動することにより滲みを生ずるものと考えられる。この現象に対し、特定の再分散性を有する着色微粒子と顔料粒子とを共存させることで、改善できることが判明した。
【0033】
本発明の構成による滲み改良のプロセスは、明らかではないが、優れた再分散性を有する着色微粒子は、基本特性として高温高湿下で融着しにくいが、さらに顔料粒子と併用することにより、顔料粒子は着色微粒子間に介在し、着色微粒子の融着をより一層防止することにより、上記特性が改良されたものと推測している。
【0034】
更に、インクのpH、表面張力、多価金属イオン量、インク溶剤量を特定の範囲に設定すること、界面活性剤を用いることにより、本発明の目的、効果がより一層発揮されることを見いだしたものである。
【0035】
以下、本発明の詳細について説明する。
請求項1に係るインクジェット用インクでは、染料を含有した樹脂からなる着色微粒子、染料を被覆した樹脂からなる着色微粒子及び染料を含有した樹脂の表面を更に樹脂で被覆した着色微粒子から選ばれる少なくとも1種の着色微粒子と、顔料粒子とを含有するインクジェット用インクであり、該インクジェット用インクの前記式(1)で表される再分散係数が0.5〜5であり、かつ該顔料粒子の表面が水不溶性でかつ水分散性の高分子層で被覆されていることが特徴である。
【0036】
はじめに、染料と樹脂からなる着色微粒子について説明する。
本発明に係る着色微粒子は、各種の方法で調製することができる。例えば、モノマー中に油溶性染料を溶解させ、水中で乳化後、重合によりポリマー中に染料を封入する方法、ポリマーと染料を有機溶剤中に溶解し、水中で乳化した後有機溶剤を除去する方法、染料溶液に多孔質のポリマー微粒子を添加し、染料を微粒子に吸着、含浸させる方法等が挙げられ、更に、それらの着色微粒子をポリマーで被覆するシェル化法も用いることができる。
【0037】
ポリマーシェルを設ける方法としては、コアの水系サスペンションに水溶性のポリマー分散剤を添加し吸着させる方法、モノマーを徐々に滴下し、重合と同時にコア表面に沈着させる方法、あるいは、有機溶剤に溶解したポリマーを徐々に滴下し、析出と同時にコア表面に吸着させる方法などがある。更に一段階でコアシェル形成する方法も考えられる。例えば、コアとなるポリマーと染料をシェルとなるポリマーに溶解または分散し、水中で懸濁後重合する方法や、その液を活性剤ミセルを含有する水中に徐々に滴下しながら乳化重合していく方法などがある。あるいは、重合後にコアとなりうるモノマーとシェルとなりうるモノマーに染料を溶解または分散し、懸濁重合あるいは乳化重合する方法がある。
【0038】
本発明に係る着色微粒子は、シェル化したものでなくても、シェル化したものでも、特に制限はないが、発明の効果から考えて好ましくはシェル化したものである。その場合、シェルに用いられるポリマー量が、総ポリマー量の5質量%以上95質量%以下であることが好ましい。5質量%より少ないとシェルの厚みが不十分で、染料を多く含有するコアの一部が粒子表面に現れ易くなる。また、シェルのポリマーが多すぎると、コアの染料保護機能の低下を起こし易い。さらに好ましくは10質量%以上90質量%以下である。
【0039】
染料は、総ポリマー量に対して20質量%以上1000質量%以下であることが好ましい。染料がポリマーに比して少なすぎると、吐出後の画像濃度が上がらず、また、染料の比率が高いとポリマーの保護能が十分に得られない。
【0040】
(コアシェル化の評価)
本発明においては、実際にコアシェル化されているかの評価が重要である。本発明においては、個々の粒子径が150nm以下と非常に微小であるため、分析方法は分解能の観点から限られる。このような目的に沿う分析方法としては、透過型電子顕微鏡(TEM)や飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)などが適用できる。TEMによりコアシェル化した着色微粒子を観察する場合、カーボン支持膜上に分散液を塗布、乾燥させ観察することができる。TEMの観察像は、通常モノクロであるため、コアシェル化されているかどうかを評価するために、着色微粒子を染色する必要がある。コアだけの着色微粒子を染色しそのTEM観察を行い、シェルを設けたものと比較する。さらに、シェルを設けた微粒子と設けていない微粒子を混合し、染色し、染色度合いの異なる微粒子の割合がシェルの有無に一致しているかの確認を行う。TOF−SIMSでは、粒子表面にシェルを設けることで表面近傍の染料がコアだけの時よりも減少していることを確認する。染料にコアシェルのポリマーに含有されていない元素がある場合、その元素をプローブとして色材含有量の少ないシェルが設けられたかを確認することができる。そのような元素がない場合、適当な染色剤を用いてシェル中の染料含有量がシェルを設けていないものと比較することができる。コアシェル粒子をエポキシ樹脂内に包埋し、ミクロトームで超薄切片を作製、染色を行うことでコアシェル化はより明瞭に観察できる。ポリマーや、染料にプローブとなりうる元素がある場合、TEMによってコアシェルの組成、染料のコアとシェルへの分布量を見積もることもできる。
【0041】
必要な粒子径を得るには、構成条件の最適化と、適当な乳化法の選定が重要である。構成条件は用いる染料、ポリマーによって異なるが、水中のサスペンションであるので、コアポリマーよりシェルポリマーの方が一般的に親水性が高いことが必要である。また、シェルポリマーに含有される染料は、コアポリマー中より少ないことが好ましく、染料もシェルポリマーよりも親水性の低いことが必要である。親水性や疎水性は、例えば、溶解性パラメータ(SP)を用いて見積もることができる。溶解性パラメータは、その値や、測定、計算法がPOLYMER HANDBOOK 第4版(JOHN WILEY & SONS,INC.)675ページからの記載が参考になる。
【0042】
また、着色微粒子に用いられるポリマーは、その数平均分子量が500〜100000、特に1000〜30000であることが、印字後の塗膜強度、その耐久性及びサスペンションの形成性の点から好ましい。
【0043】
該ポリマーのTgは、各種用いることが可能であるが、用いるポリマーのうち、少なくとも1種以上はTgが10℃以上であるものを用いる方が好ましい。
【0044】
本発明において、一般に知られているすべてのポリマーを使用可能であるが、特に好ましいポリマーは、主な官能基としてアセタール基を含有するポリマー、炭酸エステル基を含有するポリマー、水酸基を含有するポリマー、および、エステル基を有するポリマーであり、特に最表部のシェル部分を構成するポリマーは、水酸基を有していることが好ましい。上記のポリマーは、置換基を有していてもよく、その置換基は直鎖状、分岐、あるいは環状構造をとっていてもよい。また、上記の官能基を有するポリマーは、各種のものが市販されているが、常法によって合成することもできる。また、これらの共重合体は、例えば1つのポリマー分子中にエポキシ基を導入しておき、後に他のポリマーと縮重合させたり、光や放射線を用いてグラフト重合を行っても得られる。
【0045】
主な官能基としてアセタールを含有するポリマーとしては、ポリビニルブチラール樹脂などが挙げられる。例えば、電気化学工業株式会社製の#2000−L、#3000−1、#3000−2、#3000−4、#3000−K、#4000−1、#4000−2、#5000−A、#6000−C、#6000−EP、あるいは積水化学工業製のBL−1、BL−1H、BL−2、BL−2H、BL−5、BL−10、BL−S、BL−SH、BX−10、BX−L、BM−1、BM−2、BM−5、BM−S、BM−SH、BH−3、BH−6、BH−S、BX−1、BX−3、BX−5、KS−10、KS−1、KS−3、KS−5などがある。
【0046】
ポリビニルブチラール樹脂は、PVA(ポリビニルアルコール)の誘導体として得られるが、もとのPVAの水酸基のアセタール化は最大でも80mol%程度であり、通常は50mol%から、80mol%程度である。なお、ここで言うアセタールは狭義の1,1−ジエトキシエタン基を指すのではなく、オルトアルデヒドとの化合物一般を指す。水酸基については、特に規定はないが、最表部のシェル部分を構成するポリマーでは、水酸基を含有モノマーを5〜50mol%であることが好ましく、さらに好ましくは10〜30mol%である。また、アセチル基の含有率に特に規定はないが、10mol%以下であることが好ましい。主な官能基としてアセタールを含有するポリマーとは、ポリマー中に含まれる酸素原子のうち、少なくとも30mol%以上がアセタール基を形成していることをいう。
【0047】
他に主な官能基としてアセタールを含有するポリマーとして、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製のユピタールシリーズなども使用可能である。
【0048】
主な官能基として炭酸エステルを含有するポリマーとしては、ポリカーボネート樹脂が挙げられる。たとえば、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製のユーピロンシリーズ、ノバレックスシリーズがある。ユーピロンシリーズはビスフェノールAを原料として作られており、測定法によってその値は異なるが各種の分子量のものを用いることができる。ノバレックスシリーズでは分子量が2〜3万、ガラス転移点150℃付近のものを用いることができるが、これらに限るものではない。
【0049】
主な官能基として炭酸エステル基を含有するポリマーとは、ポリマー中に含まれる酸素原子のうち、少なくとも30mol%以上が炭酸エステル基の形成に寄与していることをいう。
【0050】
主な官能基として水酸基を含有するポリマーとしては、たとえば、PVAがあげられる。PVAの有機溶剤への溶解度は小さいものが多いが、けん化価の小さいPVAであれば、有機溶剤への溶解度は上昇する。水溶性が高いPVAは水相中に添加しておき有機溶剤除去後に、ポリマーのサスペンションに吸着させるようにして使用することもできる。
【0051】
PVAとしては市販のものを用いることができ、たとえば、クラレのポバールPVA−102、PVA−117、PVA−CSA、PVA−617、PVA−505などのほか、特殊銘柄のサイズ剤用PVA、熱溶融成形用PVA、その他機能性ポリマーとして、KL−506、C−118、R−1130、M−205、MP−203、HL−12E、SK−5102、などを用いることができる。けん化度は50mol%以上のものが一般的であるが、LM−10HDのように40mol%程度であっても、これを用いることは可能である。このようなPVA以外でも主な官能基として水酸基を有するものが使用可能であるが、ポリマー中に含まれる酸素原子のうち少なくとも20mol%以上が水酸基を形成しているものが使用可能である。
【0052】
主な官能基としてエステル基を含有するポリマーとしては、たとえばメタクリル樹脂が挙げられる。旭化成製デルペットシリーズの560F、60N、80N、LP−1、SR8500、SR6500などを用いることができる。主な官能基としてエステル基を含有するポリマーとは、ポリマー中に含まれる酸素原子のうち、少なくとも30mol%以上がエステル基を形成していることをいう。
【0053】
これらのポリマーをそれぞれ1種ないし2種以上を混合して用いてもよい。また、これらのポリマーが質量比で50%以上含まれていれば、他のポリマーや無機物のフィラーが含有されていてもよい。
【0054】
これらのポリマーの共重合体を用いることも好ましいが、たとえば水酸基を含有するポリマーと、各種のポリマーを共重合させる方法として、水酸基をグリシジルメタクリレートのようなエポキシ基を有するモノマーと反応させ、その後、懸濁重合でメタクリル酸エステルモノマーと共重合させ、得ることができる。
【0055】
本発明の染料インクにおいては、着色微粒子に用いられるポリマーは、該インク中に0.5〜50質量%配合されることが好ましく、0.5〜30質量%配合されることが更に好ましい。上記ポリマーの配合量が0.5質量%に満たないと、色材の保護能が十分でなく、50質量%を超えると、サスペンションのインクとしての保存安定性が低下したり、ノズル先端部でのインク蒸発に伴うインクの増粘やサスペンションの凝集が起こることによってプリンタヘッドの目詰りが起こる場合があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
【0056】
一方、染料は、染料インク中に1〜30質量%配合されることが好ましく、1.5〜25質量%配合されることが更に好ましい。上記染料の配合量が1質量%に満たないと印字濃度が不十分であり、30質量%を超えるとサスペンションの経時安定性が低下し、凝集等による粒径増大の傾向があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
【0057】
本発明の染料インクは、水を媒体とし、上記色材を封入したポリマーのサスペンションからなり、該サスペンションには、従来公知の各種添加剤、例えば多価アルコール類のような湿潤剤、分散剤、シリコーン系等の消泡剤、クロロメチルフェノール系等の防黴剤及び/又はEDTA等のキレート剤、又、亜硫酸塩等の酸素吸収剤等が含有されていてもよい。
【0058】
ここで、上記湿潤剤としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ジエチルカルビトール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール及びそのエーテル、アセテート類、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、トリエタノールアミン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物類、ジメチルサルフォキサイドの一種又は二種以上を使用することができる。これらの湿潤剤の配合量に特に制限はないが、上記インク中に好ましくは0.1〜50質量%配合することができ、更に好ましくは0.1〜30質量%配合することができる。
【0059】
また、上記分散剤としては、特に制限されるものではないが、そのHLB値が8〜18であることが、分散剤としての効果が発現し、サスペンションの粒子径の増大抑制効果がある点から好ましい。
【0060】
分散剤として市販品も使用することができる。そのような市販品としては、例えば花王(株)製の分散剤デモールSNB,MS,N,SSL,ST,P(商品名)が挙げられる。
【0061】
分散剤の配合量に特に制限はないが、本発明のインク中に、0.01〜10質量%配合されることが好ましい。該化合物の配合量が0.01質量%に満たないとサスペンションの小粒径化が困難であり、10質量%を超えるとサスペンションの粒径が増大したりサスペンション安定性が低下し、ゲル化するおそれがあるので、上記範囲内とすることが好ましい。
【0062】
また、上記消泡剤としては、特に制限なく、市販品を使用することができる。そのような市販品としては、例えば信越シリコーン製のKF96、66、69、KS68、604、607A、602、603、KM73、73A、73E、72、72A、72C、72F、82F、70、71、75、80、83A、85、89、90、68−1F、68−2F(商品名)等が挙げられる。これら化合物の配合量に特に制限はないが、本発明の着色微粒子含有水性インク中に、0.001〜2質量%配合されることが好ましい。該化合物の配合量が0.001質量%に満たないとインク調製時に泡が発生し易く、又、インク内での小泡の除去が難しく、2質量%を超えると泡の発生は抑えられるものの、印字の際、インク内でハジキが発生し印字品質の低下が起こる場合があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
【0063】
次に、本発明の染料インクの製造方法について説明する。本発明の染料インクは、各種の乳化法で製造することができる。
【0064】
乳化法としては、各種の方法を用いることができる。それらの例は、例えば、「機能性乳化剤・乳化技術の進歩と応用展開 シー エム シー」の86ページの記載にまとめられている。本発明においては、特に、超音波、高速回転せん断、高圧による乳化分散装置を使用することが好ましい。
【0065】
超音波による乳化分散では、いわゆるバッチ式と連続式の2通りが使用可能である。バッチ式は、比較的少量のサンプル作製に適し、連続式は大量のサンプル作製に適する。連続式では、たとえば、UH−600SR(株式会社エスエムテー製)のような装置を用いることが可能である。このような連続式の場合、超音波の照射時間は、分散室容積/流速×循環回数で求めることができる。超音波照射装置が複数ある場合は、それぞれの照射時間の合計としてもとめられる。超音波の照射時間は実際上に3秒以上必要であり、それ以内で乳化が完了するのであれば、超音波乳化分散装置を必要としない。また、10000秒以上必要であると、工程の負荷が大きく、実際上は乳化剤の再選択などにより乳化分散時間を短くする必要がある。そのため10000秒以上は必要でない。さらに好ましくは、10秒以上、2000秒以内である。
【0066】
高速回転せん断による乳化分散装置としては、「機能性乳化剤・乳化技術の進歩と応用展開 シー エム シー」の255〜256ページに記載されているような、ディスパーミキサーや、251ページに記載されているようなホモミキサー、256ページに記載されているようなウルトラミキサーなどが使用できる。これらの型式は、乳化分散時の液粘度によって使い分けることができる。これらの高速回転せん断による乳化分散機では、攪拌翼の回転数が重要である。ステーターとのクリアランスは通常0.5mm程度で、極端に狭くはできないので、せん断力は主として攪拌翼の周速に依存する。周速が5m/sec以上150m/sec以内であれば本発明の乳化・分散に使用できる。周速が遅い場合、乳化時間を延ばしても小粒径化が達成できない場合が多く、150m/secにするにはモーターの性能を極端に上げる必要があるからである。さらに好ましくは、20〜100m/secである。
【0067】
高圧による乳化分散では、LAB2000(エスエムテー製)などが使用できるが、その乳化・分散能力は、試料にかけられる圧力に依存する。圧力は、10MPa以上500MPa以下が好ましい。また、必要に応じて数回にわたり乳化・分散を行い、目的の粒径を得ることができる。圧力が低すぎる場合、何度乳化分散を行っても目的の粒径は達成できない場合が多く、また、圧力を500MPaにするためには、装置に大きな負荷がかかり実用的ではない。さらに好ましくは、50MPa以上200MPa以下である。
【0068】
これらの乳化・分散装置は単独で用いてもよいが、必要に応じて組み合わせて使用することが可能である。コロイドミルや、フロージェットミキサなども単独では本発明の目的を達成できないが、上述した装置との組み合わせにより、単時間で乳化・分散を可能にするなど本発明の効果を高めることが可能である。
【0069】
また、本発明のインクは、上記の装置を用いるほか、いわゆる転相乳化によっても製造することができる。
【0070】
ここで、転相乳化は、上記ポリマーを、上記染料と共にエステル、ケトンなどの有機溶剤に溶解させ、必要に応じて中和剤を加えて該ポリマー中のカルボキシル基をイオン化し、次いで水相を加えた後、上記有機溶剤を留去して水系に転相することからなる。
【0071】
転相が完了した後、系を減圧下に加熱することにより、上記エステル、ケトン系溶剤を除去すると共に、所定量の水を除去して、所望の濃度を有する本発明の着色微粒子含有水性インクが得られる。
【0072】
本発明で用いることのできる染料として、特に制限はなく、油性染料、分散染料、直接染料、酸性染料及び塩基性染料等の例を挙げることができるが、本発明においては、油性染料を用いることが好ましい。色相としてはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、ブルー、グリーン、レッドが好ましく用いられ、特に好ましくは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各染料である。油溶性染料の中には、水溶性染料を長鎖の塩基と造塩することにより油溶性を示す染料も含まれる。油性染料としては、以下に限定されるものではないが、特に好ましい具体例としては、例えば、
オリエント化学工業株式会社製 Valifast Yellow 4120、Valifast Yellow 3150、Valifast Yellow 3108、Valifast Yellow 2310N、Valifast Yellow 1101、Valifast Red 3320、Valifast Red 3304、Valifast Red 1306、Valifast Blue 2610、Valifast Blue 2606、Valifast Blue 1603、Oil Yellow GG−S、OilYellow 3G、Oil Yellow 129、Oil Yellow107、Oil Yellow 105、Oil Scarlet 308、Oil Red RR、Oil Red OG、Oil Red 5B、OilPink 312、Oil Blue BOS、Oil Blue 613、Oil Blue 2N、Oil Black BY、Oil Black BS、Oil Black 860、Oil Black 5970、Oil Black 5906、Oil Black 5905、
日本化薬株式会社製 Kayaset Yellow SF−G、Kayaset Yellow K−CL、Kayaset Yellow GN、Kayaset Yellow A−G、Kayaset Yellow 2G、Kayaset Red SF−4G、Kayaset Red K−BL、Kayaset Red A−BR、KayasetMagenta312、Kayaset Blue K−FL、
有本化学工業株式会社製 FS Yellow 1015、FS Magenta 1404、FS Cyan 1522、FS Blue 1504、C.I.Solvent Yellow 88、Solvent Yellow 83、Solvent Yellow 82、Solvent Yellow 79、Solvent Yellow 56、Solvent Yellow 29、Solvent Yellow 19、Solvent Yellow 16、Solvent Yellow 14、Solvent Yellow 04、Solvent Yellow 03、Solvent Yellow 02、Solvent Yellow 01、C.I.Solvent Red 84:1、C.I.Solvent Red 84、C.I.Solvent Red 218、C.I.Solvent Red 132、C.I.Solvent Red 73、C.I.Solvent Red 72、C.I.Solvent Red 51、C.I.Solvent Red 43、C.I.Solvent Red 27、C.I.Solvent Red 24、Solvent Red 18、Solvent Red 01、Solvent Blue 70、Solvent Blue 67、Solvent Blue44、Solvent Blue 40、Solvent Blue 35、Solvent Blue 11、 Solvent Blue 02、Solvent Blue 01、Solvent Black 43、C.I.Solvent Black 70、C.I.Solvent Black 34、C.I.Solvent Black 29、C.I.Solvent Black 27、C.I.Solvent Black 22、C.I.Solvent Black 7、C.I.Solvent Black 3、C.I. Solvent Violet 3、C.I. Solvent Green 3及び7等が挙げられる。
【0073】
また、特開平9−277693号、同10−20559号、同10−30061号に示されるような、金属錯体色素も好ましく用いられ、好ましい構造としては下記一般式(1)で表されるものである。
【0074】
一般式(1) M(Dye)l(A)m
式中、Mは金属イオンを表し、Dyeは金属と配位結合可能な色素を表す。Aは色素以外の配位子を表し、lは1ないし3、mは0、1、2、3を表す。mが0のときlは2または3を表し、その場合Dyeは同種でも異なっていてもよい。Mで表される金属イオンとしては、例えばAl、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Mo、Ni、Sn、Ti、Pt、Pd、Zr及びZnのイオンが挙げられる。色調、各種耐久性からNi、Cu、Cr、Co、Zn、Feのイオンが特に好ましい。更に好ましくはNiイオンである。
【0075】
Dyeで表される金属と配位結合可能な色素としては種々の色素構造が考えられるが、共役メチン色素、アゾメチン色素、アゾ色素骨格に配位基を有するものが好ましい。
【0076】
分散染料としては、以下に限定されるものではないが、特に好ましい具体例としては、C.I.ディスパーズイエロー5、42、54、64、79、82、83、93、99、100、119、122、124、126、160、184:1、186、198、199、204、224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ13、29、31:1、33、49、54、55、66、73、118、119及び163;C.I.ディスパーズレッド54、60、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、239、240、258、277、278、283、311、323、343、348、356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット33;C.I.ディスパーズブルー56、60、73、87、113、128、143、148、154、158、165、165:1、165:2、176、183、185、197、198、201、214、224、225、257、266、267、287、354、358、365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン6:1及び9等が挙げられる。
【0077】
また、本発明では、上記着色微粒子と共に表面を水不溶性でかつ水分散性の高分子層で被覆された顔料粒子を用いることが一つの特徴である。
【0078】
本発明で用いることのできる顔料として、公知の有色有機あるいは有色無機顔料を用いることができる。例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料や、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
具体的な有機顔料を以下に例示する。
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0080】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0081】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0082】
また、ブラック用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
【0083】
本発明でいう粒子表面を水不溶性でかつ水分散性の高分子層で被覆した顔料粒子とは、例えば、顔料粒子をコアとし、その表面をシェルとして高分子化合物(ポリマーともいう)で被覆された粒子、あるいは、顔料粒子を含有した高分子化合物粒子をコアとし、その表面をシェルとして高分子化合物で被覆された粒子等を挙げることができる。
【0084】
本発明に係る高分子化合物で表面を被覆した顔料粒子は、以下に記載の各種方法により調製することができる。
【0085】
例えば、特開平8−71405号公報に記載の顔料粒子を高分子化合物で分散させ、高分子化合物を有機溶剤で溶解した後水中で転相乳化する方法、色材協会誌、70、503(1997)に記載の顔料粒子表面にモノマーを吸着させた後、重合させる方法、色材協会誌、69、743(1996)及び同72、748(1999)に記載の顔料粒子表面に重合開始剤を導入した後、モノマーと共に重合させる方法等を挙げることができる。
【0086】
上記記載の各方法において、顔料を分散させた高分子化合物を有機溶剤で溶解した後、水中に転相乳化する方法で用いることのできる高分子化合物は、樹脂中に酸性基(例えば、−COOH、−SO3H)を有し、酸型で有機溶剤に可溶で、アルカリまたはアミン等の塩基性物質により中和され親水性が増加する高分子化合物である。具体的には、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、またはポリウレタン樹脂等が挙げられ、好ましくはアクリル系樹脂及びスチレン系樹脂である。
【0087】
また、顔料粒子表面にモノマーを吸着させた後、重合させる方法としては、含水液体中に顔料と極性基含有ポリマーと疎水性モノマーを加え、一定時間モノマーを吸着させた後、重合開始剤を加えて、一定時間重合させる方法で得ることができる。
【0088】
上記方法で用いることのできる極性基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0089】
疎水性モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、t−ブチルスチレンもしくはクロルスチレンの如き、各種のスチレン系単量体(芳香族ビニルモノマー)類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシルもしくはアクリル酸ドデシルの如き、各種のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸デシルもしくはメタクリル酸ドデシルの如き、各種のメタクリル酸エステル類;アクリル酸ヒドロキシエチルもしくはメタクリル酸ヒドロキシプロピルの如き、各種のヒドロキシル基(水酸基)含有モノマー類;またはN−メチロール(メタ)アクリルアミドもしくはN−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドの如き、各種のN−置換(メタ)アクリル系単量体類などが挙げられる。
【0090】
用いることのできる重合開始剤としては、特に制限はなく、例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシドもしくは2−エチルヘキサノエートの如き、各種の過酸化物;またはアゾビスイソブチロニトリルもしくはアゾビスイソバレロニトリルの如き、各種のアゾ化合物などを挙げることができる。
【0091】
また、顔料粒子表面に重合開始剤を導入した後、モノマーと共に重合させる方法としては、顔料の官能基(例えば、アミノ基、水酸基)に、化学反応によりペルオキシカルボニル基等の過酸化基を導入する方法、次亜塩素酸等の酸化剤によって顔料表面にカルボキシル基を生じさせ、そのカルボキシル基より重合を開始する基を導入する方法等が挙げられる。これらの方法によって得られた重合開始基を表面に有する顔料に、上記の疎水性モノマーと極性基含有モノマーとを重合することにより、高分子被覆顔料を得ることができる。
【0092】
本発明において、顔料に対する高分子化合物の被覆量は、1%以上100%以下であり、好ましくは5%以上50%以下である。
【0093】
請求項1に係る発明では、インクジェット用インクが、水性溶媒中での着色微粒子と顔料粒子の前記式(1)で表される再分散係数が0.5〜5であることが特徴の一つである。
【0094】
本発明でいう再分散係数とは、着色微粒子と顔料粒子との分散安定性、凝集性を表す尺度であり、前記式(1)で表されるように、着色微粒子と顔料粒子との再分散前の体積平均粒子径に対する再分散後の着色微粒子と顔料粒子との体積平均粒子径の比で表す。なお、本発明における体積平均粒子径は、二次粒子径で測定した値である。
【0095】
詳しくは、再分散前の着色微粒子と顔料粒子との体積平均粒子径は、調製したインクの二次粒子径を表し、再分散後の着色微粒子と顔料粒子との体積平均粒子径とは、インクを乾燥した後、水、あるいは有機溶剤等のインク媒体中に乾燥した着色微粒子と顔料粒子とを添加、解膠した後の着色微粒子と顔料粒子との二次粒子径であり、前記式(1)で表される再分散係数が小さいほど、解膠性、分散性に優れ、凝集体の発生が少ないことを表し、再分散係数1は再分散前後で二次粒子径の変化がないことを意味する。
【0096】
具体的な測定方法としては、インクを1ml採取し、これを洗浄済みのシャーレ上に均一に広げた後、常温、常湿下で1週間放置して、乾燥する。次いで、乾燥物に1mlの水を添加し、ガラス棒を用いて、2分間攪拌して再分散させて、乾燥前及び再分散後の着色微粒子と顔料粒子との体積平均粒子径を下記の方法で測定する。
【0097】
体積平均粒子径の測定は、例えば、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができ、具体的粒径測定装置としては、例えば、島津製作所製のレーザー回折式粒径測定装置SLAD1100、粒径測定機(HORIBA LA−920)、マルバーン社製ゼータサイザー1000等を挙げることができる。
【0098】
本発明では、再分散係数が0.5〜5であることが特徴であるが、好ましくは0.7〜3、更に好ましくは0.8〜2である。
【0099】
本発明において、再分散係数を上記で規定した範囲にする手段として、特に制限はないが、例えば、本発明に係る表面を高分子化合物で被覆した顔料粒子を用いること、本発明に係る着色微粒子又は顔料粒子表面を高分子化合物で被覆すること、界面活性剤の種類及び添加量を最適化すること、顔料粒子の二次粒径分布をコントロールすること、顔料分散手段とその分散条件を最適化すること等の各手段を適宜選択、あるいは組み合わせることにより、所望の再分散度を得ることができる。
【0100】
本発明で用いることのできる分散装置としては、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各種分散機を挙げることができる。
【0101】
請求項2に係る発明では、請求項1で規定するインクジェット用インクのpHが、7.0以上であることが特徴であるが、好ましくは8.0〜10.0である。本発明の顔料インクに使用される水性媒体で用いられるpH調整剤としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸物等の無機アルカリ剤、有機酸や、鉱酸が挙げられる。
【0102】
また、請求項3に係る発明では、請求項1又は2で規定するインクジェット用インクの表面張力が、25〜45mN/mであることが特徴であり、好ましくは30〜40mN/mである。本発明の顔料インクの表面張力の調整手段としては、後述の各種界面活性剤を用いて、種類及び添加量を適宜調整することが好ましい。
【0103】
請求項4に係る発明では、着色微粒子の二次体積平均粒子径が、10〜150nmであることが特徴であり、好ましくは20〜120nm、更に好ましくは20〜80nmであり、また、請求項5に係る発明では、顔料粒子の二次体積平均粒子径が、10〜150nmであることが特徴であり、好ましくは10〜100nm、更に好ましくは20〜70nmであり、特に好ましくは20〜50nmであり、各粒子を本発明で規定する体積平均粒子径とすることにより、本発明の効果をいかんなく発揮することができ好ましい。
【0104】
着色微粒子及び顔料粒子の二次体積平均粒子径は、前述の再分散係数で記載したのと同様の方法で求めることができる。
【0105】
また、請求項6に係る発明では、インクの多価金属イオン含有量が、5ppm以下であることが特徴であり、好ましくは0.1〜3ppm、特に好ましくは0.1〜1ppmである。インク中の多価金属イオンの含有量を、上記で規定した量とすることにより、高い分散安定性を有するインクを得ることができる。
【0106】
本発明でいう多価金属イオンとは、例えば、Fe3+、Sr2+、Mg2+、Ca2+、Zn2+、Zr2+、Ni2+、Al3+などを挙げることができ、それらは硫酸塩、塩化物、硝酸塩、酢酸塩、有機アンモニウム塩、EDTA塩等で含有されている。
【0107】
請求項7に係る発明では、インク溶剤含有量が、5〜70質量%であることが特徴であり、好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは20〜50質量%である。
【0108】
本発明でいうインク溶剤とは、特に制限はないが、下記一般式(1)で表される化合物を用いることが好ましい。
一般式(1)
A−B
式中、Aは親水性置換基を含む基を表し、Bは疎水性基を表す。
【0109】
ここでAで表される基は、親水性置換基を含む基であり、親水性置換基としてはヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸基、2−ケト−1−ピロリジニル基等が挙げられる。中でもヒドロキシ基が好ましい。
【0110】
Bは疎水性基を表し、好ましくは炭素原子数3〜10の脂肪族あるいは芳香族炭化水素基である。さらにBは炭素原子数4〜8の脂肪族基であることが好ましい。
【0111】
前記一般式(1)で表される化合物は一般的な界面活性剤と類似の構造を有している。一般的な界面活性剤は水溶液中で、低濃度でミセルを形成する特徴を示す。
【0112】
一般式(1)で表される化合物は、このようなミセル形成能力を有していないことが好ましい。これはミセル形成能を有する場合、分子間の相互作用が強いため、1%を超え濃度が上昇すると、インクの粘度を著しく増加させてしまう欠点があるためである。
【0113】
前記一般式(1)で示される化合物のうち、好ましい例としては、例えば多価アルコールエーテル誘導体および炭素原子数4〜8の脂肪族1,2−ジオールが挙げられ、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、1,2−ヘキサンジオール、あるいは1,2−ペンタンジオールから選ばれる化合物であることがより好ましい。さらに好ましくはトリエチレングリコールモノブチルエーテルあるいは1,2−ヘキサンジオールである。
【0114】
本発明で用いることのできるその他のインク溶剤としては、水溶性の有機溶媒が好ましく、具体的にはアルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、スルホン酸塩類(例えば1−ブタンスルホン酸ナトリウム塩等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0115】
本発明のインクにおいて、請求項8に係る発明ではアニオン界面活性剤を、また請求項9に係る発明ではノニオン界面活性剤を、また請求項10に係る発明ではカチオン界面活性剤を、また請求項11に係る発明ではアニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤とを含有していることが特徴である。
【0116】
本発明で用いることのできる各界面活性剤として、特に制限はないが、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。特にアニオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0117】
また、本発明においては、高分子界面活性剤も用いることができ、例えば、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体等を挙げることができる。
【0118】
請求項12に係る発明では、インクが水溶性高分子または水不溶性高分子分散液を含有していることが特徴である。
【0119】
水溶性高分子としての好ましい例としては天然高分子が挙げられ、その具体例としては、にかわ、ゼラチン、ガゼイン、若しくはアルブミンなどのたんぱく質類、アラビアゴム、若しくはトラガントゴムなどの天然ゴム類、サボニンなどのグルコシド類、アルギン酸及びアルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、若しくはアルギン酸アンモニウムなどのアルギン酸誘導体、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、若しくはエチルヒドロキシルセルロースなどのセルロース誘導体が挙げられる。
【0120】
更に、水溶性高分子の好ましい例として合成高分子が挙げられ、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、及び酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に好ましい例としては、ポリビニルピロリドン類が挙げられる。
【0121】
水溶性高分子の分子量は、1,000以上200,000以下が好ましい。更には、3,000以上20,000以下がより好ましい。1,000未満では顔料粒子の成長及び凝集を抑制する効果が少なくなり、200,000を越えると粘度上昇、溶解不良等の問題が発生し易くなる。
【0122】
水溶性高分子の添加量は、顔料に対して10質量%以上1,000質量%以下が好ましい。更には、50質量%以上200質量%以下がより好ましい。10質量%未満では顔料粒子の成長及び凝集を抑制する効果が少なくなり、1000質量%を越えると粘度上昇、溶解不良等の問題が発生し易くなる。
【0123】
また、本発明で用いることのできる水不溶性高分子分散液(以下、ラテックスともいう)として、特に制限はないが、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン、シリコン−アクリル共重合体およびアクリル変性フッ素授脂等のラテックスが挙げられる。ラテックスは、乳化剤を用いてポリマー粒子を分散させたものであっても、また乳化剤を用いないで分散させたものであってもよい。乳化剤としては界面活性剤が多く用いられるが、スルホン酸基、カルボン酸基等の水に可溶な基を有するポリマー(例えば、可溶化基がグラフト結合しているポリマー、可溶化基を持つ単量体と不溶性の部分を持つ単量体とから得られるポリマー)を用いることも好ましい。
【0124】
また本発明のインクでは、ソープフリーラテックスを用いることが特に好ましい。ソープフリーラテックスとは、乳化剤を使用していないラテックス、およびスルホン酸基、カルボン酸基等の水に可溶な基を有するポリマー(例えば、可溶化基がグラフト結合しているポリマー、可溶化基を持つ単量体と不溶性の部分を持つ単量体とから得られるポリマー)を乳化剤として用いたラテックスのことを指す。
【0125】
近年ラテックスのポリマー粒子として、粒子全体が均一であるポリマー粒子を分散したラテックス以外に、粒子の中心部と外縁部で組成を異にしたコア・シェルタイプのポリマー粒子を分散したラテックスも存在するが、このタイプのラテックスも好ましく用いることができる。
【0126】
本発明のインクにおいて、ラテックス中のポリマー粒子の平均粒径は10nm以上、300nm以下であり、10nm以上、100nm以下であることがより好ましい。ラテックスの平均粒径が300nmを越えると、画像の光沢感の劣化が起こり、10nm未満であると耐水性、耐擦過性が不十分となる。ラテックス中のポリマー粒子の平均粒子径は、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法を用いた市販の粒径測定機器により求めることができる。
【0127】
本発明のインクにおいて、ラテックスは固形分添加量としてインクの全質量に対して0.1質量%以上、20質量%以下となるように添加されるが、ラテックスの固形分添加量を0.5質量%以上、10質量%以下とすることが特に好ましい。ラテックスの固形分添加量が0.1質量%未満では、耐水性に関して十分な効果を発揮させることが難しく、また20質量%を越えると、経時でインク粘度の上昇が起こったり、顔料分散粒径の増大が起こりやすくなる等インク保存性の点で問題が生じることが多い。
【0128】
本発明のインクでは、上記説明した以外に、必要に応じて、出射安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができ、例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等の油滴微粒子、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号および特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤等を挙げることができる。
【0129】
本発明で用いられる記録媒体としては、普通紙、コート紙、インク液を吸収して膨潤するインク受容層を設けた膨潤型インクジェット用記録紙、多孔質のインク受容層を持った空隙型インクジェット用記録紙、また基紙の代わりにポリエチレンテレフタレートフィルムなどの樹脂支持体を用いたものも用いることができるが、記録媒体としては、多孔質インクジェット記録媒体を用いることが好ましく、この組み合わせにより本発明の効果を最も発揮することができる。
【0130】
多孔質インクジェット記録媒体としては、具体的には、空隙型インクジェット用記録紙又は空隙型インクジェット用フィルムを挙げることができ、これらはインク吸収能を有する空隙層が設けられている記録媒体であり、空隙層は、主に親水性バインダーと無機微粒子の軟凝集により形成されるものである。
【0131】
空隙層の設け方は、皮膜中に空隙を形成する方法として種々知られており、例えば、二種以上のポリマーを含有する均一な塗布液を支持体上に塗布し、乾燥過程でこれらのポリマーを互いに相分離させて空隙を形成する方法、固体微粒子及び親水性又は疎水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、乾燥後に、インクジェット記録用紙を水或いは適当な有機溶媒を含有する液に浸漬して固体微粒子を溶解させて空隙を作製する方法、皮膜形成時に発泡する性質を有する化合物を含有する塗布液を塗布後、乾燥過程でこの化合物を発泡させて皮膜中に空隙を形成する方法、多孔質固体微粒子と親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、多孔質微粒子中や微粒子間に空隙を形成する方法、親水性バインダーに対して概ね等量以上の容積を有する固体微粒子及び/又は微粒子油滴と親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布して固体微粒子の間に空隙を作製する方法などが挙げられるが、本発明のインクを用いる上では、いずれも方法で設けられても、良い結果を与える。
【0132】
本発明のインクジェット画像記録方法で用いることのできるインクジェットヘッドとしては、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
【0133】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0134】
実施例1
《着色微粒子(染料)の調製》
表1に記載のマゼンタ着色微粒子1〜7を調製した。下記に、調製の一例を示す。
【0135】
(調製例1:マゼンタ着色微粒子6の調製)
5.0gのポリビニルブチラール(積水化学製BL−10、平均重合度250)、5.0gのマゼンタの染料2及び100gの酢酸エチルをセパラブルフラスコに入れ、フラスコ内を窒素ガスで置換した後、攪拌して上記ポリビニルブチラール及びマゼンタ染料を完全に溶解させた。次いで、ラウリル硫酸ナトリウム1.0gを含む水溶液90gを滴下、撹拌した後、超音波分散機(UH−150型、株式会社エスエムテー製)を用いて、300秒間乳化した。その後、減圧下で酢酸エチルを除去し、マゼンタ染料を含浸するコア型着色微粒子分散液を得た。
【0136】
これに0.1gの過硫酸カリウムを加えて溶解し、ヒーターを付して70℃に加温後、更に、2.50gのスチレン、1.25gの2−エチルヘキシルアクリレート及び1.25gの2−ヒドロキシエチルメタクリレートの混合液を滴下しながら7時間反応させてマゼンタのコアシェル型着色微粒子6の分散液を得た。着色微粒子6の平均粒径は64nmであった。なお、本発明でいう平均粒径は、大塚電子製レーザー粒径解析システムを用いて行った体積平均粒子径である。
【0137】
(その他の着色微粒子の調製)
上記記載した以外のマゼンタ着色微粒子についても、表1に示す組成で上記調製例に準じて調製した。なお、着色微粒子1及び2の調製に用いたコアポリマーは、それぞれ特開2001−19880公報および同2001−139607公報に記載の方法に準じて調製した。
【0138】
以上により得られた各着色微粒子の特性を表1に示す。
なお、表1に記載の着色微粒子の二次体積平均粒子径は、下記の方法により測定した。
【0139】
〈着色微粒子の平均粒径の測定〉
各着色微粒子分散液を、SA−5(ペレックスOT−P)の0.1%水溶液で1000倍に希釈した後、マルバーン製ゼータサイザー1000を用いて測定した。
【0140】
また、表1中に記載の化合物略称の詳細は、以下の通りである。
【0141】
【化1】
Figure 0003915472
【0142】
染料4:オラゾールレッドG(チバガイギー製、赤色アゾ染料の金属錯体)
P−1:スチレン/ラウリルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート/ポリエチレングリコールメタクリレート/メタクリル酸/シリコーンマクロマー/エチルメルカプタン=30/25/15/10/10/10/1
(染料溶解後にメタクリル酸を水酸化カリウムで中和した)
P−2:n−ブトキシメチルアクリルアミド/エチレングリコールジメタクリレート=99/1
PVB:ポリビニルブチラール
PMMA:ポリメタクリル酸メチル
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
P−3:スチレン/2−ヒドロキシエチルメタクリレート=75/25
P−4:スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート=50/25/25
P−5:メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート=50/25/25
SA−1:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
SA−2:ニューフロンティアS510(第1工業製薬製)
SA−3:エマルゲンLS−110(花王製、ノニオン界面活性剤)
【0143】
【表1】
Figure 0003915472
【0144】
《高分子層被覆顔料粒子の調製》
(顔料粒子分散液101の調製:顔料分散方法A)
顔料としてファストゲン・スーパー・マゼンタ・RTS(大日本インキ化学工業製)を用い、特開平10−120065号公報に記載の製造例3に準じ、顔料粒子表面を高分子化合物で被覆されたマゼンタの顔料粒子分散液101を調製した。
【0145】
(顔料粒子分散液102の調製:顔料分散方法B)
顔料としてファストゲン・スーパー・マゼンタ・RTS(大日本インキ化学工業製)を用い、特開平10−120065号公報に記載の製造例4に準じ、顔料粒子表面を高分子化合物で被覆されたマゼンタの顔料粒子分散液102を調製した。
【0146】
(顔料粒子分散液103の調製:顔料分散方法C)
C.I.ピグメントレッド122(PV FastPink EB−Trans、クラリアント製)を15g、ピリジン10ml及びアジピン酸ジクロリド10mlを、500mlのテトラヒドロフラン中に分散し、窒素気流下、60℃で2時間反応させた。反応終了後、顔料反応物を濾過により濾別し、テトラヒドロフランにより洗浄をした後、これを100mlのt−ブチルヒドロペルオキシド水溶液(70質量%)中に分散し、更に2gの水酸化ナトリウムを加え、窒素気流下、室温で24時間反応させた。次いで、反応物を濾別し、テトラヒドロフランで洗浄した後、反応物を150mlのテトラヒドロフラン中に分散させた。この分散物に、下記モノマー混合物1を7.5g添加し、80℃で6時間反応させた。反応終了後、重合反応物にイオン交換水を適量添加し、ジエタノールアミンでpHを7.0に調整した後、限外濾過による濃縮及び加水を繰り返し、次いで遠心分離操作を行って目的とするマゼンタの顔料粒子分散液103を得た。
【0147】
〈モノマー混合物1〉
組成比:スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/n−ブチルアクリレート/アクリル酸/スチレンスルホン酸ナトリウム=64/15/15/15/1
(顔料粒子分散液104の調製:顔料分散方法D)
スルホ琥珀酸ジオクチルナトリウムを用いて分散したPV FastPinkEB−Trans(クラリアント製)の10質量%水分散液を100gとり、これに下記組成のモノマー混合物2を20g、エタノールを50g、過硫酸カリを0.1g加え、80℃で6時間重合反応をさせた。重合反応後、限外濾過による濃縮、加水を繰り返した後、遠心分離操作を行って、マゼンタの顔料粒子分散液104を調製した。
【0148】
〈モノマー混合物2〉
組成比:スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸=64/16/15
以上により得られた各顔料粒子の特性を表2に示す。
【0149】
なお、表2に記載の顔料粒子の二次体積平均粒子径は、下記の方法により測定した。
【0150】
〈顔料粒子の平均粒径の測定〉
各顔料粒子分散液を、SA−5(ペレックスOT−P)の0.1%水溶液で1000倍に希釈した後、マルバーン製ゼータサイザー1000を用いて測定した。
【0151】
また、表2中に記載の化合物略称の詳細は、以下の通りである。
顔料a:ファストゲン・スーパー・マゼンタ・RTS(大日本インキ化学工業製)
顔料b:PV FastPink EB−Trans(クラリアント製)
P−6:n−ブチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/メタクリル酸=175/10.7/37.5/26.8
P−7:n−ブチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=171.4/6.3/37.5/34.8
P−8:スチレン/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート/アクリル酸/スチレンスルホン酸ナトリウム=64/15/15/15/1
P−9:スチレン/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/メタクリル酸=64/16/15
【0152】
【表2】
Figure 0003915472
【0153】
《インクの調製》
上記で調製した各着色微粒子及び顔料粒子の分散液を用い、マゼンタインク1〜26を調製した。各マゼンタインクの調製においては、各着色微粒子及び顔料粒子の分散液に、純水および表3、表4に記載のインク溶媒、多価金属イオン水溶液、界面活性剤、高分子化合物を、表3、表4に記載の濃度となるように加えて調製した。なお、各着色微粒子及び顔料粒子の分散液は、インク中の各色材濃度が1:1となるようにその添加量を適宜調整した。また、分散液中の色材濃度が不足し、インク中の色材濃度を目標値に調整できない場合には、着色微粒子及び顔料粒子の分散液を減圧下で、水を除去、濃縮して再調整した。
【0154】
ここで、多価金属イオン水溶液として鉄イオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオンを用いる場合には、それぞれ塩化第二鉄、塩化アルミニウム、塩化カルシウムの0.1%水溶液で添加し、表3、表4に記載の多価金属イオン濃度となるように調整した。また、pHは0.1モル/Lの硝酸水溶液および水酸化ナトリウム水溶液を用い、後述の表5に記載の値となるように調整した。
【0155】
なお、表3、表4中に記載の化合物略称の詳細は、以下の通りである。
EG:エチレングリコール
gly:グリセリン
TEGBE:トリエチレングリコールモノブチルエーテル
DEG:ジエチレングリコール
HDO:1,2−ヘキサンジオール
TEG:テトラエチレングリコール
PG:プロピレングリコール
PYR:2−ピロリジノン
SA−4:オルフィンE1010(日信化学製、ノニオン界面活性剤)
SA−5:ペレックスOT−P(花王製、アニオン界面活性剤)
SA−6:エマルゲン920(花王製、アニオン界面活性剤)
SA−7:レベノールWX(花王製、アニオン界面活性剤)
P−10:タケラックW−605(武田薬品製、ウレタン系ソープフリーラテックス)
P−11:Nipol LX844B(日本ゼオン製、アクリル系ラテックス)
P−12:タケラックW−6060(武田薬品製、ウレタン系ソープフリーラテックス)
P−13:Nipol SX1105(日本ゼオン製、スチレン−ブタジエン系ソープフリーラテックス)
P−14:ジョンクリル61J(ジョンソンポリマー製、水溶性アクリル系ポリマー)
P−15:PVA203(クラレ製、ポリビニルアルコール)
【0156】
【表3】
Figure 0003915472
【0157】
【表4】
Figure 0003915472
【0158】
《各インクの特性値の測定》
以上のようにして調製した各マゼンタインクについて、下記に記載の方法に従って、マゼンタインク及びインク中の各着色微粒子の各特性について測定を行った。
【0159】
〈再分散係数の測定〉
各インクを1ml採取し、これを洗浄済みのシャーレ上に均一に広げた後、常温、常湿下で1週間放置して、乾燥する。次いで、乾燥物に1mlの水を添加し、ガラス棒を用いて、2分間攪拌して再分散させて、乾燥前及び再分散後のインク中の着色微粒子及び顔料粒子の体積平均粒子径を下記の方法で測定した。
【0160】
体積平均粒子径の測定は、乾燥前後の各インクを1000倍に希釈した後、マルバーン社製ゼータサイザー1000を用いて測定し、前記式(1)に従い再分散係数を求めた。
【0161】
〈pH及び表面張力の測定〉
pH及び表面張力は、常法に従い測定した。
【0162】
以上により得られた結果を、表5に示す。
《マゼンタ画像の形成及び評価》
(画像形成)
上記調製した各マゼンタインクをインクジェットカートリッジに収納した後、カラーインクジェットプリンターPM820C(エプソン製)を用いて画像を出力した。出力画像としては、出力濃度を0%から100%の間を16段階に分割したウェッジ画像(各濃度について3cm×3cmのパッチ状に出力)を用いた。同時に同じデータを、デジタルミニラボQD−21 PLUS(コニカ製)を用い、コニカカラーQAペーパータイプA7上に出力し、現像処理して比較用のカラー銀塩写真画像を得た。
【0163】
(粒状性の評価)
粒状性については、銀塩写真同等の粒状性が得られたか否かを判定するため、上記で作成したウェッジ画像を、同時に作成した比較用のカラー銀塩写真画像と比較評価した。評価は20人の一般評価者による目視評価を行い、以下の基準に則り判定した。
【0164】
4:銀塩写真と同等と評価した人が16人以上
3:銀塩写真と同等と評価した人が12〜15人
2:銀塩写真と同等と評価した人が8〜11人
1:銀塩写真と同等と評価した人が7人以下
(光沢性の評価)
光沢性は、銀塩写真同等の光沢が得られたか否かを判定するため、上記で作成したウェッジ画像を、同時に作成した比較用のカラー銀塩写真画像と比較評価した。評価は20人の一般評価者による目視評価を行い、以下の基準に則り判定した。
【0165】
a:銀塩写真と同等と評価した人が16人以上
b:銀塩写真と同等と評価した人が12〜15人
c:銀塩写真と同等と評価した人が8〜11人
d:銀塩写真と同等と評価した人が7人以下
(耐光性の評価)
耐光性については、上記作成した画像のうち、反射濃度が約1.0のパッチを用い、キセノン・フェードメーター中にて70,000luxのキセノン光を240時間照射した後、反射濃度の残存率{(キセノン光照射後の反射濃度)÷(キセノン光照射前の反射濃度)×100(%)}を算出した。この残存率から、以下の基準に則り評価した。
【0166】
A:反射濃度残存率が85%以上
B:反射濃度残存率が70%以上、85%未満
C:反射濃度残存率が50%以上、70%未満
D:反射濃度残存率が50%未満
以上により得られた各評価結果を表5に示す。
【0167】
【表5】
Figure 0003915472
【0168】
表5から明らかなように、比較例においては粒状性、光沢性及び耐光性の全てを満足できる試料を得ることができなかった。
【0169】
一方、本発明の各試料は、いずれの試料においても優れた耐光性を示し、粒状性と光沢性においても、比較として用いたカラー銀塩写真画像と同等以上の画像特性を有していることを確認できた。
【0170】
実施例2
《カラー画像の作成及び評価》
(各色着色微粒子及び顔料粒子分散液の調製)
実施例1に記載のマゼンタ着色微粒子の調製例1に準じ、イエロー・シアン・ブラック各色の着色微粒子の分散液を調製した。ここで、イエロー染料としてはFS Yellow 1015(有本化学製)を、シアン染料としてはFS Blue 1504(有本化学製)を、ブラック染料としてはOil Black860(オリエント化学製)を用いた。また、マゼンタ着色微粒子としては、前述の表1に記載の着色微粒子6を用いた。
【0171】
また、実施例1に記載の顔料粒子分散液104の調製方法に準じて、イエロー・シアン・ブラック各色の顔料粒子の分散液を調製した。ここで、イエロー顔料としてはPigment Yellow 128、シアン顔料としてPigment Blue 15:3、ブラック顔料としてカーボンブラックを用いた。また、マゼンタ顔料粒子としては前述の表2に記載のマゼンタ顔料分散液104を用いた。
【0172】
(各色インクの調製)
以上のようにして得られた各色着色微粒子及び顔料粒子の分散液を用い、表3に記載のインク6の構成に準じ、各色のインクを調製した。ここで、色材濃度としては、ラージフォーマットインクジェットプリンター・イグアス1044SD(コニカ製)用の純正の吸光度と同じとなるよう、それぞれ濃度を適宜調整して、各色共に濃淡二色ずつのインクを調製し、インクジェットカートリッジに収納した。
【0173】
得られた各色インクジェットカートリッジを、吐出ノズル数が512、ノズル径が25μm、吐出周波数が30kHzであるピエゾ方式インクジェットヘッドを8機搭載したインクジェット試験機を用い、コニカインクジェットペーパーPhotolike QP上に、1440×720dpi(dpiとは2.54cm当たりのドットの数を表す)の画素密度で、画像データを出力した。
【0174】
なお、上記ノズルの駆動電圧を変化させ、液滴速度が8m/secとなるように調整した。この時、吐出されたインク液滴の量を測定したところ、7plであった。また、低〜中濃度部域では低濃度インクジェット画像記録液を中心に、高濃度部域では高濃度のインクジェット画像記録液を中心に出力するよう、駆動条件を適宜設定した。
【0175】
なお、上記ピエゾ方式インクジェット試験機のヘッド11の構成は、図1(a)のようになっている。また、ヘッド11のA−Aでの断面図を図1(b)に示す。
【0176】
図1(a)では、説明のために5本の吐出ノズルを有するヘッド11を例示しているが、実施例2では128本のノズルを有するヘッドを用いた。ピエゾ素子の変位によりインク液滴の吐出を行わせるピエゾ素子12が各吐出ノズルに対応してヘッド上に設けられている。また、ピエゾ素子に対して駆動信号や加熱用信号を供給するドライバIC13がインク流路(インク溜まり)上に配置されている。
【0177】
また、ピエゾ素子近傍の吐出ノズル上にサーミスタ14が設けられていて、測温手段を備えている。
【0178】
出力画像データとしては、実施例1で用いたウェッジ画像と、財団法人・日本規格協会発行の、高精細カラーデジタル標準画像データ「N5・自転車」(1995年12月発行)を用いた。
【0179】
また、実施例1と同様に、同一画像データをデジタルミニラボQD−21 PLUS(コニカ製)を用い、コニカカラーQAペーパータイプA7上に出力し、現像処理して比較用のカラー銀塩写真画像を得た。
【0180】
以上のようにして得られた各画像について、実施例1に記載の方法により、耐光性、粒状性及び光沢性の評価を行った結果、実施例1の結果と同様に、各色とも良好な結果を示した。また、粒状性および光沢についても、比較のカラー銀塩写真画像と同等以上の良好な結果を示した。
【0181】
【発明の効果】
本発明により、インクジェット記録画像の粒状性、光沢性及び耐光性に優れたインクジェット用インクとそれを用いたインクジェットカートリッジ、インクジェット画像記録方法及びインクジェット記録画像を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用されるピエゾ方式インクジェット試験機のヘッドの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
11 ヘッド
12 ピエゾ素子
13 ドライバIC
14 サーミスタ

Claims (15)

  1. 染料を含有した樹脂の表面を更に樹脂で被覆した着色微粒子と、顔料粒子とを含有するインクジェット用インクであり、該インクジェット用インクの下記式(1)で表される再分散係数が0.5〜5であり、かつ該顔料粒子の表面が水不溶性でかつ水分散性の高分子層で被覆されていることを特徴とするインクジェット用インク。
    式(1)
    再分散係数=再分散後の着色微粒子及び顔料粒子の二次体積平均粒子径/再分散前の着色微粒子及び顔料粒子の二次体積平均粒子径
  2. pHが、7.0以上であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用インク。
  3. 表面張力が、25〜45mN/mであることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット用インク。
  4. 前記着色微粒子の二次体積平均粒子径が、10〜150nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
  5. 前記顔料粒子の二次体積平均粒子径が、10〜150nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
  6. 多価金属イオン含有量が、5ppm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
  7. インク溶剤含有量が、5〜70質量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
  8. アニオン界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
  9. ノニオン界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
  10. カチオン界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
  11. アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤とを含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
  12. 水溶性高分子または水不溶性高分子分散液を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載のインクジェット用インクを少なくとも1つ収容したインク収容部を有することを特徴とするインクジェットカートリッジ。
  14. 請求項1〜12のいずれか1項に記載のインクジェット用インクを少なくとも1つ用いて画像形成することを特徴とするインクジェット画像記録方法。
  15. 請求項1〜12のいずれか1項に記載のインクジェット用インクを少なくとも1つ用いて、インクジェット画像記録を行うことにより形成されたことを特徴とするインクジェット記録画像。
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