JP5314853B2 - インクジェット用インクおよびインクジェット記録システム - Google Patents
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Description
上記のような構成からなるインクジェットヘッドにおいて、例えば特許文献1に示されているような、インクと圧電素子が直接接する構成で、かつ粒子状着色剤で着色したインクを用いる場合、時間とともに圧電素子に着色粒子が付着し、それを起点として凝集体が形成されることがわかった。これにより圧電素子の変形が阻害され、発生する圧力波が弱くなる。また発生した圧力はインクに十分伝わらず、インクの飛翔曲がり、吐出速度低下、あるいは不吐出といった吐出不良が発生し、安定した印字ができないといった問題があった。
(1)少なくとも着色剤と溶剤を含有したインクジェット用インクであって、前記着色剤は銅フタロシアニンの着色粒子からなり、該着色粒子の少なくともその表面は、銅フタロシアニンの高結晶着色粒子を所定波長のレーザー光で照射し、少なくとも該高結晶着色粒子の表面を溶融させ、ついで急冷することにより、JIS K0131に準拠した粉末X線回折計による測定から得られる結晶化度が、30%以上、95%以下に調整されたものであることを特徴とするインクジェット用インク。
(2)ノズルが設けられた加圧室の壁面の一部が圧電素子で形成され、前記圧電素子を作動・変形させて前記加圧室の中のインクに圧力波を作用させて、前記ノズルからインク滴を吐出させるインクジェット記録ヘッドを備えたインクジェット記録システムであって、前記インクは(1)に記載のインクを用いたことを特徴とするインクジェット記録システム。
(3)前記インクジェット記録ヘッドは、前記ノズル数を1インチ当り660個以上有し、駆動周波数が15kHz以上であることを特徴とする(2)に記載のインクジェット記録システム。
(4)前記インクジェット記録ヘッドを、記録媒体の搬送方向に対して直交する水平方向に2個以上配置してなることを特徴とする(2)または(3)に記載のインクジェット記録システム。
本発明におけるインクは、少なくとも、水、着色剤、界面活性剤を含む有機溶剤からなり、その他に必要に応じてpH調整剤、防腐防カビ剤等を添加することができる。
本発明の着色剤は、上記したように、着色粒子からなり、該着色粒子の結晶化度が30%以上、95%以下であり、好ましくは60%以上、85%以下である。前記着色粒子の結晶化度を前記範囲とすることにより、前記着色粒子が圧電素子へ固着しにくくなり、従って前記着色粒子による凝集体が形成されないので、長期に亘りインクの吐出が良好となる。
また、圧電素子の他にインク流路、インクの接する壁面あるいはノズルなどへの付着も低減され、目詰まりなどを防止できる。
なお、結晶化度は前記着色粒子の表面のみが前記範囲内にあってもよい。
まず、フィーダー24よりArガス中に供給された高結晶着色粒子29は、レーザー加熱装置25から例えば3秒間隔で2秒間発振されたレーザーにより加熱され、表面から溶融する。同時にレーザーの光子から推進力を受け、液体窒素22を満たした冷却器28に接触する。冷却器28に接触した高結晶着色粒子29はただちに冷却され、溶融した表面が非結晶状態で固まる。レーザーが発振されていない1秒間に加震装置23により冷却器28表面を震動させ、処理をした着色粒子20が処理済着色粒子回収皿27に落下し、回収される。レーザー加熱装置25のレーザー出力(W)と照射時間(秒)を変化させて高結晶着色粒子29を処理することにより、結晶化度の異なる着色粒子20を得ることができる。一方、レーザーで処理されなかった高結着色粒子29は未処理着色粒子回収皿26で回収され、フィーダー24に戻され、再利用される。
前記レーザー加熱装置25としては、例えば松下溶接システム株式会社製レーザーダイオード加熱装置YB−60FL3を用いることができる。また、前記加震装置23としては、例えばピエゾ振動子を用いた振動装置が挙げられる。
得られた着色粒子20の結晶化度は、JIS K0131に準拠し、粉末X線回折装置を用いて測定することができる。粉末X線回折装置としては、例えば株式会社リガク製RINT−1200を用いることができる。
通常、着色粒子は高結晶着色粒子が用いられるが、本発明では、これを上記したように結晶化度を所定の範囲に調整処理した上で使用する。
着色粒子の成分は、有機着色粒子として、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、金属錯体系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ベリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラック、アゾメチン系の各顔料粒子が挙げられる。無機着色粒子としては、ローダミンBレーキ顔料粒子、カーボンブラック等が挙げられる。例えば、三菱化学株式会社製のカーボンブラックとして、♯20B、♯40、MA100などが挙げられる。デグサ社製のカーボンブラックとして、カラーブラックFW18、カラーブラックS170、スペシャルブラック250等が挙げられる。コロンビアカーボン社製のカーボンブラックとして、コンダクテックスSC、ラーベン1255などが挙げられる。キャボット社製のカーボンブラックとして、モナーク700、モナーク880、エルフテックス12などが挙げられる。
アルカリ可溶性樹脂の中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物やエタノールアミン、プロパノールアミン、メチルエタノールアミン等のアルコールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、各種の脂肪族アミンなどが挙げられる。
本発明の着色粒子分散体は、分散時での異物やゴミ、粗大粒子等を除去するために遠心分離装置を使用したり、フィルターをして濾過することも好ましく行われる。
次に、記録用インクの調製法について説明する。本発明のインクは、水性媒体中に少なくとも着色粒子と着色粒子分散剤を分散させ、得られた分散液を水性媒体で希釈することにより得られる。
分散処理及び希釈は従来公知の方法に従って行うことが出来る。上記の分散処理で使用する分散機としては、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル等の分散機が挙げられる。これらの中では、高速度のサンドミルが好ましく、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、ビーズミル、アジテータミル、グレンミル、ダイノミル、パールミル、コボルミル(何れも商品名)等が好適に使用される。得られた高濃度の分散液は、通常2〜10重量倍に希釈されて所望の濃度の記録用インクとされる。
本発明の記録ヘッド21の一例において、図1に積層圧電素子8と個別電極9とを含む圧電アクチュエータを取り付ける前の状態を示す。
図の例における記録ヘッドは、1枚の基板1上に、加圧室2とそれに連通するノズル3とを含むドット形成部を複数個、配列したものである。
また図2(a)は、上記例のインクジェット記録ヘッドにおいて、圧電アクチュエータを取り付けた状態での、1つのドット形成部を拡大して示す断面図、図2(b)は1つのドット形成部を構成する各部の重なり状態を示す透視図である。図3は図2(a)のノズル3付近の拡大図である。
各ドット形成部は、基板1の、図2(a)において上面側に形成した、矩形部の幅方向の中央部に中心を有し、径が幅長さと等しく、かつ水平断面形状が半円形である端部を前記矩形部の長手方向の両端に備えた、平板形状を有する加圧室2と、上記基板1の下面側の、加圧室2の一端側の端部の半円と中心が同じで円錐台形のノズル3とを、前記端部の半円と中心が同じで同径の円柱形のノズル流路4を介して連通させると共に、上記加圧室2の他端側の端部の半円と中心が同じである円柱形の供給口5を介して、加圧室2を、基板1内に、各ドット形成部と連通させるように形成した共通流路6に繋ぐ構成となっている。
またノズル3は、図3に示すように、インク滴吐出側の先端の開口30を、基板1の下面側である第4基板1dの下側の表面1eに円形に形成してある。それと共にノズル3は、この先端側の開口30が、加圧室2側の開口31よりも小さくなるように、テーパー状(円錐状)に形成してある。
インクジェット記録ヘッドへのインクの初期充填においては、図1に示すように、インクは、インクカートリッジ(図示しない)からの配管とこの配管を接続するためのジョイント部11との間に、ポンプ(図示しない)を配置しジョイント部11を介して、前記記録ヘッドに供給が行われる。ポンプは、チューブポンプやギヤポンプ、電磁ポンプなど目的に合わせて使用することができる。
着色粒子1は、β型銅フタロシアニンであるクロモファインブルー4920(大日精化社製の顔料)の結晶化度の調整処理をしないもので、結晶化度は97%であった。着色粒子2〜4は、着色粒子1を図1に示す着色粒子処理装置を用いて、表1に示す処理条件により結晶化度の調整処理をした。また、着色粒子5は、α型銅フタロシアニンであるクロモファインブルー5208(大日精化社製)の結晶化度の調整処理をしないもので、結晶化度は96%であった。着色粒子6〜8は、着色粒子4を図1に示す着色粒子処理装置を用いて、表1に示す処理条件により結晶化度の調整処理をした。結晶化度の調整処理により得られた結晶化度はそれぞれ表1に示すとおりである。
なお、結晶化度は、JIS K0131に準拠して、リガク社製X線回折装置(RINT−1200)を用いて測定した。
表1に示す着色粒子3を用いて、下記の組成で混合してサンドミルにて3時間分散し、着色粒子分散液を作製した。
着色粒子3 15.0部
分散剤(花王社製エマルゲン420) 1.0部
グリセリン 6.0部
水 残部
次に、得られた着色粒子分散液を下記の組成で混合した。混合した後、5μmのメンブランフィルターにてろ過し、続いて0.5μmのメンブランフィルターにてろ過し、実施例1のインクを作製した。
上記着色粒子分散液 13.5部
分散剤(花王製エマルゲン420) 0.2部
グリセリン 10.0部
オルフィンE1010(日信化学工業製) 0.15部
水 残部
表2に示した着色粒子を用いた以外は、実施例1のインクと同様にして、実施例2〜4、比較例1〜4のインクを作製した。
図1および図2(a)、(b)に示す構造を有し、その各寸法は、加圧室2の面積が0.2mm2、幅が2200μm、深さが100μm、ノズル流路4の直径が200μm、長さが800μm、供給口5の直径が30μm、長さが40μm、ノズル3の長さが30μm、インク吐出側の開口30および加圧室2側の開口31の形状がそれぞれ半径10μmおよび20μmの円形であると共に、この各部位から構成されるドット形成部が1列あたり166個、全体(4列)で664個のドット形成部が基板1上に配列された記録ヘッドを用いた。
同一列内のドット形成部間のピッチは150dpiとし、また隣り合う各列を1/2ピッチずつずらすことで、全体として600dpiとした。
前記で得られたインクおよび記録ヘッド21を使用して、各インクを記録ヘッド21に充填し、吐出率により評価した。吐出率は、664個のノズル中、印字できたノズル数の割合である。その吐出率をインクの充填から70時間後で評価した。また、充填時に1cm×1cmのベタ画像をコピー紙(Xerox社製CC90)にプリントし、得られた画像をGretag Machbeth社製RD−19Iにて測定し、彩度を評価した。
評価結果を表2に示す。
表2に示すように、結晶化度が95%で70時間後の吐出率が95%であり(実施例2)、結晶化度が85%以下では吐出率が100%となり(実施例1,3,4)、安定した吐出を示した。また、彩度は結晶化度が30%で良好な彩度が得られ(実施例3)、結晶化度が60%以上であればより良好な結果を示した(実施例1,2,4)。
これに対して、結晶化度が95%を超えると吐出率は92〜94%と悪くなり(比較例1,3)、また結晶化度が30%未満であると彩度が低下した(比較例2,4)。
2 加圧室
3 ノズル
4 インク流路
5 供給口
6 共通流路
7 共通電極
8 圧電素子
9 個別電極
11 ジョイント部
12 撥水層
20 着色粒子
21 記録ヘッド
22 液体窒素
23 加震装置
24 着色粒子フィーダー
25 レーザー加熱装置
26 未処理着色粒子回収皿
27 処理済着色粒子回収皿
28 冷却器
29 高結晶着色粒子
Claims (4)
- 少なくとも着色剤と溶剤を含有したインクジェット用インクであって、前記着色剤は銅フタロシアニンの着色粒子からなり、該着色粒子の少なくとも表面は、銅フタロシアニンの高結晶着色粒子を所定波長のレーザー光で照射し、少なくとも該高結晶着色粒子の表面を溶融させ、ついで急冷することにより、JIS K0131に準拠した粉末X線回折計による測定から得られる結晶化度が、30%以上、95%以下に調整されたものであることを特徴とするインクジェット用インク。
- ノズルが設けられた加圧室の壁面の一部が圧電素子で形成され、前記圧電素子を作動・変形させて前記加圧室の中のインクに圧力波を作用させて、前記ノズルからインク滴を吐出させるインクジェット記録ヘッドを備えたインクジェット記録システムであって、前記インクは請求項1記載のインクを用いたことを特徴とするインクジェット記録システム。
- 前記インクジェット記録ヘッドは、前記ノズル数を1インチ当り660個以上有し、駆動周波数が15kHz以上であることを特徴とする請求項2記載のインクジェット記録システム。
- 前記インクジェット記録ヘッドを、記録媒体の搬送方向に対して直交する水平方向に2個以上配置してなることを特徴とする請求項2または3記載のインクジェット記録システム。
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