JP2010215700A - 油性インクジェットインク - Google Patents
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Abstract
【解決手段】油性インクジェットインクは、顔料、顔料分散剤および溶剤を含んでなる油性インクジェットインクであって、前記溶剤は飽和脂肪酸エステル系溶剤と炭化水素系溶剤とを含有し、飽和脂肪酸エステル系溶剤は飽和脂肪酸モノエステルを含有し、飽和脂肪酸エステル系溶剤全量のうちの飽和脂肪酸モノエステルの占める割合が30重量%以上であることを特徴とするものである。この油性インクジェットインクKは保存安定性試験器の容器2に入れて酸素導入による保存安定性試験に供される。
【選択図】図1
Description
例えば、特許文献1には、ソルビタン系の溶剤を主成分とするインクが記載されているが、顔料の分散安定性や高解像度の望まれるプリンタへの適性については十分考慮されていない点があった。
また、特許文献2には、脂肪族炭化水素系溶剤とオレイルアルコールとを併用して顔料を分散させるインクが記載されている。しかしながら、このインクは顔料の分散安定性を保持することがなかなか困難であり、経時にて顔料の凝集や沈殿を生じやすく、あるいはプリンタ内のインク流路で詰まりの発生などがあってプリンタでの印字安定性に問題があった。
特許文献4には、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルのような極性溶剤と、オレイルアルコールと、非極性炭化水素系溶剤とを使用するインクが示されている。しかしながら、このような溶剤配合のインクは、顔料分散性の維持がなかなか困難であり、十分に満足できるインクにはなり得ていない。
さらに、特許文献7には、不飽和脂肪酸エステルと炭化水素系溶剤とを含んでなるインクが記載されている。しかしながら、このインクに用いられる不飽和脂肪酸エステルは、分子を構成する不飽和脂肪酸の酸化によるインクの変質を生じやすく、やはり経時での安定性が不足するという難点があった。すなわち、このインクは密閉した容器中での保存安定性に関しては優れているが、プリンタに投入された後など、空気に触れやすい環境下においては、インクの酸化劣化が促進され、インクノズルからの吐出不良を生じるなど、インク保管容器の開封後やプリンタ内での安定性が十分に満足できると言えるものでない。
すなわち、本発明は、顔料、顔料分散剤および溶剤を含んでなる油性インクジェットインクであって、前記溶剤は飽和脂肪酸エステル系溶剤と炭化水素系溶剤とを含有し、飽和脂肪酸エステル系溶剤は飽和脂肪酸モノエステルを含有し、飽和脂肪酸エステル系溶剤全量のうちの飽和脂肪酸モノエステルの占める割合が30重量%以上であることを特徴とする油性インクジェットインクを提供する。
本発明に用いる顔料は、有機顔料、無機顔料を問わず、印刷および塗料としての技術分野で一般に用いられるものを使用できる。上記の無機顔料としては、例えば酸化チタン、ベンガラ、コバルトブルー、群青、紺青、カーボンブラック、カオリン、シリカなどが挙げられる。また、有機顔料としては、例えば不溶性アゾ顔料、油溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、縮合多環顔料、銅フタロシアニン顔料などが挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、適宜組み合わせて使用できる。また、これら顔料の粒子径はインクジェットインクへの適性から、例えば0.01〜0.3μmが好ましいが、そのなかでも微細なものが好ましい。顔料の微細化については、公知の技術を利用することができる。また、顔料はインク全量に対して0.1〜20重量%の範囲で含まれることが好ましい。
エステル構造を有する顔料分散剤の具体例としては、例えばルーブリゾール社製「ソルスパース9000、13940、17000、18000、28000」、楠本化成社製「DA−703−50、DA−7300、DA234」、BykCemie社製「Disperbyk−101」、川研ファインケミカル社製「KFI−M、ヒノアクト」(いずれも商品名)などが挙げられる。このようなエステル構造を有する顔料分散剤は、エステル系溶剤と組み合わせて用いることにより、顔料分散剤と溶剤とが同種の分子構造を含んでいるため両者の間で適度な溶解性が得られ、これにより顔料の分散安定性に優れた油性インクジェットインクが得られる。
かかる飽和脂肪酸モノエステルの具体例としては、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸イソブチル、ミリスチン酸イソプロピル(沸点304℃)、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル(沸点332℃)、パルミチン酸オクチル、エチルヘキサン酸セチルなどが挙げられる。これらの飽和脂肪酸モノエステルの沸点はいずれも240℃以上である。このなかでも、特にラウリン酸イソブチル、ミリスチン酸イソプロピルはプリンタヘッド温度変化に対する追随性が良好である。
かかる飽和脂肪酸ジエステルの具体例としては、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル(沸点344℃)、セバシン酸ジオクチル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニルなどが挙げられる。これらの飽和脂肪酸ジエステルの沸点はいずれも240℃以上である。このように飽和脂肪酸モノエステルと組み合わせて用いる飽和脂肪酸ジエステルとしては、比較的低粘度かつ高沸点であり、エステル価が高く分散剤への溶解安定性も高いといった理由から、特にセバシン酸ジブチルが好ましい。
これらの飽和脂肪酸モノエステルと飽和脂肪酸ジエステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。また、これらは化学的に不安定な不飽和結合を分子内に含まないので、インクの保存安定性向上にも貢献できる利点がある。
脂肪族炭化水素系溶剤の具体例としては、例えば新日本石油社製「日石ナフテゾールH、0号ソルベントH 、アイソゾール300、アイソゾール400、AF−5、AF−6、AF−7」(いずれも商品名)、エクソンモービル社製「Exxol D80、Exxol D110、Exxol D130、Exxol D140」(いずれも商品名)などが挙げられる。
環状炭化水素系溶剤の具体例としては、例えば新日本石油社製「日石クリーンソルG」(アルキルベンゼン:商品名)、日本サン石油社製「サンセン310、サンセン410、サンセン415、サンセン420、サンセン430、サンセン450、サンセン480」(いずれも商品名)などが挙げられる。これらの炭化水素系溶剤のうちでも、沸点の高い環状炭化水素系溶剤を多用することが、溶剤揮散抑制のための配合バランスを確保するうえで好ましい。
炭化水素系溶剤の配合割合は、インク全量に対し10重量%以上30重量%以下とすることが望ましい。炭化水素系溶剤の配合割合が10重量%未満では自己潤滑性が不足することでヘッド温度変化追随性に劣ることとなり、炭化水素系溶剤の配合割合が30重量%を超えると潤滑性が高くなりすぎるために印字ドットの滲みを生じやすくなる。
調製容器に、極性溶剤としての飽和脂肪酸モノエステルであるミリスチン酸イソプロピル50重量部、および飽和脂肪酸ジエステルであるセバシン酸ジブチル20重量部と、非極性溶剤としての環状炭化水素溶剤のサンセン430(日本サン石油社製)20重量部とを収容し、これに顔料分散剤としてのソルスパース13940(ルーブリゾール社製)2.0重量部およびハリフタール7250(ハリマ化成社製)3.0重量部と、顔料としてのMA8(三菱化学製カーボンブラック)5.0重量部とを添加して、汎用撹拌機で予備混合した。その後、ジルコニアビーズを収用したビーズミル(浅田鉄工製ナノグレンミル:NM−L)を用いて、常温常圧下で約1時間分散させることにより、油性インクジェットインクを調製した。この実施例1の油性インクジェットインクの組成および配合割合を、下記の表1に示す。
実施例2〜実施例10は、表1に示す組成および配合割合で、前記実施例1と同様の方法により混合、分散させることにより、それぞれの油性インクジェットインクを調製した。
比較例1〜比較例11は、下記の表2に示す組成および配合割合で、前記実施例1と同様の方法により混合、分散させることにより、それぞれの油性インクジェットインクを調製した。
また、プリンタヘッドを連続的に高速で稼動させ、プリンタヘッドでの温度変化を加速させた状態での印字テストを実施し、温度変化に対する油性インクジェットインクの吐出安定性の追随性を確認した。
油性インクジェットインク調整後の粘度を測定した。インクジェットノズルからの高速吐出のため、20℃のおける粘度は16mPa・s未満が望ましい。粘度測定には、回転ディスク式粘度計(東機産業製RE−80L)を使用した。
(2)油性インクジェットインクの保存安定性(密閉状態).
油性インクジェットインクをポリエチレン製の容器に入れてフタで密閉し、40℃の環境下で6ヵ月放置した後の粘度を測定した。
(3)油性インクジェットインクの保存安定性(酸素導入).
図1に示すように、ポリエチレン製の容器2に、表1に示した実施例1〜10、表2に示した比較例1〜11の油性インクジェットインクKをそれぞれ10mlずつ入れてフタで密閉した。容器2の壁面2箇所に穴を開けて2本のチューブを差し込み、一方の酸素導入側チューブ3から酸素を100ml/分の流量で流し込んで他方の酸素排出側チューブ4から容器外に酸素を排出する。このテストを40℃に調整した恒温槽1内に1ヶ月保持して行った後に、油性インクジェットインクKの粘度を測定した。
粘度増加率(%)=放置後粘度/初期粘度 ・・・(I)
この粘度増加率を以下の基準で評価した。
○ ・・・初期粘度が16mPa・s以下、かつ(2)、(3)の評価で粘度増加率がいずれも5%未満の場合である。
× ・・・上記以外の場合である。
(4)プリンタへッド温度変化追随性.
シェアーモード式の500チャンネルのプリンタヘッド(例えば70mmの直線上に500個のノズルを列設したもの)を用い、周波数8kHzのピエゾ素子を駆動源として高速連続印字を30分間継続し、吐出の安定性(印字ドット抜けの状況)を測定した。30分経過時点での印字ドットの抜けが500個中の5個以下であった場合は合格として○印を表中に付し、更に印字ドットの抜けが0〜1個の場合は◎を併記し、6個以上あった場合は不合格として×印を表中に付した。このプリンタヘッドは高速印字時の発熱により、前記条件において最大20degreeの温度上昇が見られた。
(5)ダンボール箱印字テスト.
前記のプリンタヘッドを用いて段ボール箱の外面に印字し、印字画像の解像度、すなわち印字ドットの大きさ、経時による広がりの度合いおよび濃度変化、並びに滲みを確認した。
比較例2、8は、もともと粘度の高いエチルヘキサン酸セチル(14mPa・s(20℃))を多く用いているので、調製時の粘度が高くなりすぎて実用的なインクとならなかった。
また、比較例3、5、8、10は、粘度の低いラウリン酸イソブチルやミリスチン酸イソプロピルを含んでいないのでインクの初期粘度が高く、そのためにプリンタヘッド温度変化追随性に劣る結果となっている。
更に、比較例6、7は、ラウリン酸イソブチルやミリスチン酸イソプロピルの代替として、粘度の低い不飽和脂肪酸エステルを含むため、初期粘度、プリンタヘッド温度追随性、滲み性、および画像視認性はクリアしている。しかしながら、不飽和脂肪酸エステルは脂肪鎖に二重結合を有しているために、酸素導入による粘度上昇が著しく実用的な油性インクジェットインクとはなり得ない。
2 容器
3 酸素導入側チューブ
4 酸素排出側チューブ
K 油性インクジェットインク
Claims (6)
- 顔料、顔料分散剤および溶剤を含んでなる油性インクジェットインクであって、前記溶剤は飽和脂肪酸エステル系溶剤と炭化水素系溶剤とを含有し、飽和脂肪酸エステル系溶剤は飽和脂肪酸モノエステルを含有し、飽和脂肪酸エステル系溶剤全量のうちの飽和脂肪酸モノエステルの占める割合が30重量%以上であることを特徴とする油性インクジェットインク。
- 飽和脂肪酸エステル系溶剤と炭化水素系溶剤との配合割合が、70〜90重量%:10〜30重量%であることを特徴とする請求項1に記載の油性インクジェットインク。
- 飽和脂肪酸モノエステルが、ミリスチン酸イソプロピルである請求項1または請求項2に記載の油性インクジェットインク。
- 飽和脂肪酸エステル系溶剤は飽和脂肪酸ジエステルを含有し、飽和脂肪酸エステル系溶剤全量のうちの飽和脂肪酸ジエステルの占める割合が、25重量%以上70重量%以下である請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の油性インクジェットインク。
- 飽和脂肪酸エステル系溶剤および炭化水素系溶剤の沸点がいずれも240℃以上である請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の油性インクジェットインク。
- インク全体の20℃における粘度が、5mPa・s以上16mPa・s以下である請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の油性インクジェットインク。
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