JP7210258B2 - 塗料、タービンが有するブレード、航空機の翼 - Google Patents
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Description
特許文献1には、水酸基価が110~250mgKOH/gの樹脂である含フッ素重合体(A)、水酸基価が100~300mgKOH/gの樹脂であるポリエステル重合体(B)、非ブロック化ポリイソシアネート系硬化剤(C)、及び溶剤(D)を含有する、風力発電機のブレードの表面塗布用塗料組成物が開示されている。
そこで、本発明は、耐浸食性に優れる塗膜を形成できる塗料、タービンが有するブレード、及び、航空機の翼の提供を課題とする。
〔2〕 上記含フッ素重合体及び上記ポリエステルが、いずれも1~250mgKOH/gの水酸基価を有する、〔1〕に記載の塗料。
〔3〕 上記ポリエステルが、1~10mgKOH/gの酸価を有する、〔1〕又は〔2〕に記載の塗料。
〔4〕 上記ポリエステルの含有量に対する、上記含フッ素重合体の含有量の質量比が、0.1~9である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の塗料。
〔5〕 ガラス転移温度の差の絶対値が5℃以上20℃未満である、2種以上の上記含フッ素重合体を含む、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の塗料。
〔6〕 上記無機粒子が、珪灰石である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の塗料。
〔7〕 上記無機粒子のアスペクト比が1.5~4.5である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の塗料。
〔8〕 上記無機粒子の平均長径が1~50μmである、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の塗料。
〔9〕 グラインドゲージによる粒状法で測定される分散度が40μm以下である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の塗料。
〔10〕 風力発電用タービンが有するブレードに塗布して用いられる、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の塗料。
〔11〕 〔1〕~〔9〕のいずれかの塗料から形成された、膜厚が20~100μmである塗膜を有する、タービンが有するブレード。
〔12〕 〔1〕~〔9〕のいずれかの塗料から形成された、膜厚が20~100μmである塗膜を有する、航空機の翼。
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの総称であり、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの総称である。
単位とは、単量体が重合して直接形成された、上記単量体1分子に基づく原子団と、上記原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。なお、重合体が含む全単位に対する、それぞれの単位の含有量(モル%)は、重合体を核磁気共鳴スペクトル(NMR)法により分析して求められる。
酸価及び水酸基価は、それぞれ、JIS K 0070-3(1992)の方法に準じて測定される値である。
ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定される、重合体の中間点ガラス転移温度である。ガラス転移温度はTgともいう。
数平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される値である。数平均分子量はMnともいう。
塗膜の膜厚は、渦電流式膜厚計(商品名「EDY-5000」、サンコウ電子社製)を用いて測定される値である。
塗料の固形分質量とは、塗料が溶媒を含む場合に、塗料から溶媒を除去した質量である。なお、溶媒以外の組成物の固形分を構成する成分に関して、その性状が液体状であっても、固形分とみなす。塗料の固形分質量は、塗料1gを130℃で20分加熱した後に残存する質量として求められる。
分散度は、グラインドゲージによる粒状法で測定した、塗料等に含まれる粒子の分散性を評価した値であり、具体的には、JIS K 5600-2-5に記載の方法に従って測定できる。
上記無機粒子の含有量は、含フッ素重合体とポリエステルとの合計100質量部に対して、20~60質量部である。
このような構成によって本発明の課題が解決されるメカニズムは必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。
すなわち、本塗料にモース硬度が3.0~5.0の無機粒子が含まれることによる、本塗料を用いて形成される塗膜(以下、本塗膜ともいう。)の強固さと、本塗料にポリエステルが含まれていることによる、本塗膜の適度な柔軟さとがバランスし、本塗膜の良好な耐浸食性を実現している、と考えられる。
フルオロオレフィンは、水素原子の1個以上がフッ素原子で置換されたオレフィンである。フルオロオレフィンは、フッ素原子で置換されていない水素原子の1個以上が塩素原子で置換されていてもよい。
フルオロオレフィンは、2種以上を併用してもよい。
単位1は、フッ素原子を有さない単位が好ましい。
単位1は、水酸基及びカルボキシ基の一方又は両方を有する単量体(以下、単量体1ともいう。)に基づく単位であってもよい。
また、単位1は、水酸基又はカルボキシ基に変換可能な基を有する単位を含む含フッ素重合体において、該基を水酸基及びカルボキシ基の一方又は両方に変換させて得られる単位であってもよい。このような単位の具体例としては、含フッ素重合体中の水酸基を有する単位に、ポリカルボン酸やその酸無水物等を反応させて、水酸基の一部又は全部をカルボキシ基に変換させて得られる単位が挙げられる。
単位1は、本塗料の貯蔵安定性の点からは、水酸基を有する単位が好ましい。
つまり、含フッ素重合体は、フルオロオレフィンに基づく単位及び水酸基を有するのが好ましい。
水酸基を有する単量体1の具体例としては、CH2=CHO-CH2-cycloC6H10-CH2OH、CH2=CHCH2O-CH2-cycloC6H10-CH2OH、CH2=CHO-CH2-cycloC6H10-CH2-(OCH2CH2)15OH、CH2=CHOCH2CH2OH、CH2=CHCH2OCH2CH2OH、CH2=CHOCH2CH2CH2CH2OH、CH2=CHCH2OCH2CH2CH2CH2OHが挙げられ、フルオロオレフィンとの共重合性の点から、CH2=CHCH2OCH2CH2OH又はCH2=CHOCH2CH2CH2CH2OHが好ましい。
なお、「-cycloC6H10-」はシクロへキシレン基を表し、「-cycloC6H10-」の結合部位は、通常1,4-である。
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、CH2=CHCOOH、CH(CH3)=CHCOOH、CH2=C(CH3)COOH、HOOCCH=CHCOOH、CH2=CH(CH2)n11COOHで表される単量体(ただし、n11は1~10の整数を示す。)、CH2=CHO(CH2)n12OC(O)CH2CH2COOHで表される単量体(ただし、n12は1~10の整数を示す。)が挙げられ、フルオロオレフィンとの共重合性の点から、CH2=CH(CH2)n11COOHで表される単量体又はCH2=CHO(CH2)n12OC(O)CH2CH2COOHで表される単量体が好ましい。
単位1の含有量は、本塗料が硬化剤を含む場合に、本塗膜の架橋密度が高くなり本塗膜の耐久性(耐水性、耐薬品性等)に優れる点から、含フッ素重合体の全単位に対して、0.5~40モル%が好ましく、10~35モル%がより好ましく、15~30モル%が特に好ましい。
単位2は、水酸基及びカルボキシ基以外の架橋性基等を有していてもよい。このような基としては、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、加水分解性シリル基等が挙げられる。
単量体2は架橋性基を有さないのも好ましい。
単量体2は、2種以上を併用してもよい。
含フッ素重合体が単量体2を含む場合、単位2の含有量は、含フッ素重合体の全単位に対して、5~60モル%が好ましく、10~50モル%が特に好ましい。
含フッ素重合体のMnが上記範囲内にあると、本塗膜の耐久性(耐水性、耐薬品性等)及び含フッ素重合体の流動性が向上する。
本塗料が含フッ素重合体を異なる2種以上を含む場合、1種以上の含フッ素重合体が上記範囲内であるのが好ましく、2種以上の含フッ素重合体が上記範囲内であるのがより好ましく、全種の含フッ素重合体が上記範囲内であるのが更に好ましい。
含フッ素重合体が酸価を有する場合、含フッ素重合体の酸価は、1~250mgKOH/gが好ましい。
含フッ素重合体は、酸価及び水酸基価の一方のみを有してもよく、両方を有してもよい。
含フッ素重合体の酸価及び水酸基価の一方又は両方が上記範囲内にあると、特に本塗料が硬化剤を含む場合に本塗膜の架橋密度が好適になり、本塗膜の耐久性が優れる。
含フッ素重合体は、本塗料の安定性の点からは、水酸基価を有するのが好ましい。
本塗料が含フッ素重合体を異なる2種以上を含む場合、上記異なる2種以上の含フッ素重合体のTgの差の絶対値が、0℃超50℃以下であるのが好ましく、5℃以上20℃未満であるのが特に好ましい。
例えば、本塗料が含フッ素重合体を2種含む場合、上記2種の含フッ素重合体のTgの差の絶対値が上記範囲内であるのが好ましい。
また、本塗料が含フッ素重合体を3種以上含む場合、上記3種以上のうちの2種の含フッ素重合体を選んだ組み合わせのうち、少なくとも1つの組み合わせにおいて、Tgの差の絶対値が上記範囲内であるのが好ましい。
この場合、本塗料中、Tgの差の絶対値が上記範囲内にある2種の含フッ素重合体の含有量は、本塗料の固形分質量に対して、それぞれ、1~45質量%が好ましく、5~40質量%が特に好ましい。また、本塗料中、上記差の絶対値が上記範囲内にある2種の含フッ素重合体における、相対的にTgが高い含フッ素重合体の含有量に対する、相対的にTgが低い含フッ素重合体の含有量の質量比(Tgが低い含フッ素重合体/Tgが高い含フッ素重合体)は、0.1~9が好ましく、1~9がより好ましく、1.5~5が特に好ましい。
なお、本塗料が2種以上の含フッ素重合体を含む場合、その合計含有量が上記範囲内であるのが好ましい。以下、本塗料が同種成分を2種以上含む場合において同様とする。
ポリエステルは優れた柔軟性を有しているため、本塗膜の柔軟性が向上し、基材への優れた追従性を得られる。そのため、基材が大きく撓んでも剥離し難い塗膜が形成される。また、柔軟性に富んだ塗膜が形成されるため、基材及びその表面上に形成された塗膜が高速で運動して、雨滴や塵等と高速で衝突しても、衝撃を吸収するので塗膜に傷が付き難いと考えられている。
中でも、本塗料が含むポリエステルは、水酸基を有し、水酸基価を有するのが好ましい。ポリエステルが水酸基価を有する場合、ポリエステルの水酸基価は、1~250mgKOH/gが好ましく、100~240mgKOH/gがより好ましく、200~220mgKOH/gが特に好ましい。
本塗料が含むポリエステルは、酸価を有するのも好ましい。ポリエステルが酸価を有する場合、ポリエステルの酸価は、1~250mgKOH/gが好ましく、1~10mgKOH/gが特に好ましい。酸価を有するポリエステルは、例えば、カルボキシ基を有する。
ポリエステルの酸価及び水酸基価の一方又は両方が上記範囲内にあると、特に本塗料が硬化剤を含む場合に本塗膜の架橋密度が高くなり、本塗膜の耐久性が優れる。
中でも、含フッ素重合体及びポリエステルが、いずれも1~250mgKOH/gの水酸基価を有すると、特に本塗料が硬化剤を含む場合に含フッ素重合体とポリエステルとが架橋され、本塗膜の耐久性がより優れる。
ポリエステルが1分子中に有する平均の水酸基数は、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましく、4~40個が特に好ましい。
中でも、ポリエステルは、水酸基を1分子中に平均3個以上有し、かつ、Mnが500~5,000であるのが好ましい。
ポリエステルの製造に用いられる多価カルボン酸の具体例としては、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2-ヘキサヒドロフタル酸、メチル-1,2-ヘキサヒドロフタル酸、1,2-テトラヒドロキシフタル酸、メチルテトラヒドロキシフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、メチルテレフタル酸、メチルイソフタル酸、フマル酸、セバシン酸、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,3-ヘキサヒドロフタル酸、メチル-1,3-ヘキサヒドロフタル酸、1,3-テトラヒドロキシフタル酸、1,4-ヘキサヒドロフタル酸、メチル-1,4-ヘキサヒドロフタル酸、1,4-テトラヒドロキシフタル酸、それらの酸無水物が挙げられる。
多価カルボン酸は、2種以上を併用してもよい。
多価アルコールは、2種以上を併用してもよい。
これらの官能基を導入する方法の具体例としては、これらの官能基及び重合性の二重結合を有する単量体を共重合させる方法、ポリエステル中の水酸基及びカルボキシ基の一方又は両方に、これらの官能基を有する化合物を反応させる方法が挙げられる。
より具体的には、例えば、ポリエステルの製造中もしくは製造後に、水酸基及びカルボキシ基の一方又は両方と反応する反応性基と、アミノ基、アセトアセチル基、及び、エポキシ基のうちの少なくとも1つとを有する化合物を反応させることにより行える。
ポリエステルは、2種以上を併用してもよい。
ポリエステルの含有量が上記範囲の下限値以上であれば、塗膜の基材への追従性が向上する。ポリエステルの含有量が上記範囲の上限値以下であれば、塗膜の耐候性及び密着性が向上する。
上記無機粒子は、モース硬度が上記範囲内であれば、着色剤として使用される無機粒子を含んでもよい。
上記無機粒子の具体例としては、珪灰石(ウォラストナイト)、炭酸カルシウム、ゼオライトが挙げられ、本塗膜の耐浸食性に優れる点から、珪灰石が好ましい。
無機粒子(好ましくは珪灰石)のアスペクト比は、1.2~30が好ましく、1.5~4.5が特に好ましい。
無機粒子のアスペクト比が上記範囲の下限値以上であると、本塗膜の耐浸食性がより優れる。無機粒子のアスペクト比が上記範囲の上限値以下であると、本塗膜の美観が優れる。
なお、上記アスペクト比は、無機粒子の平均長径/平均短径の値である。ここでいう平均短径及び平均長径とは、電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の一次粒子について短径及び長径を測長し、それぞれ平均して求めた値である。
無機粒子(好ましくは珪灰石)の平均長径は、1~50μmが好ましく、1~30μmが特に好ましい。
本塗料中、無機粒子の含有量は、本塗料の固形分質量に対して、10~70質量%が好ましく、15~60質量%が特に好ましい。
上述の通り、無機粒子は少なくとも珪灰石を含むのが好ましく、本塗料中、珪灰石の含有量は、本塗料の固形分質量に対して、5~50質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましく、13~25質量%が特に好ましい。
具体的には、本塗料の分散度が、100μm以下であるのが好ましく、40μm以下であるのが特に好ましい。下限は、通常、1μm以上である。
このような成分の具体例としては、含フッ素重合体及びポリエステル以外の樹脂、添加剤が挙げられる。
含フッ素重合体及びポリエステル以外の樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。
添加剤の具体例としては、硬化剤、硬化触媒、溶媒、上述の無機粒子以外のフィラー(モース硬度が3.0未満又は5.0超の無機粒子、樹脂ビーズ等の有機フィラー等。顔料(無機顔料)であってもよい)、着色剤(染料、有機顔料等)、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、つや消し剤、レベリング剤、表面調整剤、脱ガス剤、熱安定剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、防錆剤、シランカップリング剤、防汚剤、低汚染化処理剤、可塑剤、接着剤が挙げられる。
特に、含フッ素重合体やポリエステルが、水酸基やカルボキシ基を含む場合、含フッ素重合体やポリエステルが硬化剤によって架橋され、本塗膜の耐久性(耐水性、耐薬品性等)が優れる。
硬化剤としては、イソシアネート基、エポキシ基、オキサゾリン基、β-ヒドロキシアルキルアミド基等を1分子中に2以上有する化合物が挙げられる。
含フッ素重合体が水酸基を有する場合、硬化剤としては、イソシアネート基を1分子中に2以上有する化合物であるポリイソシアネートが好ましい。
含フッ素重合体がカルボキシ基を有する場合、硬化剤としては、エポキシ基、オキサゾリン基、又は、β-ヒドロキシアルキルアミド基等を1分子中に2以上有する化合物が好ましい。
ポリイソシアネートとしては、ポリイソシアネート単量体、又は、ポリイソシアネート誘導体が好ましい。
ポリイソシアネート単量体としては、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、又は、芳香族ポリイソシアネートが好ましい。ポリイソシアネート誘導体としては、ポリイソシアネート単量体の多量体又は変性体(アダクト体、アロファネート体、ビウレット体、イソシアヌレート体等)が好ましい。
脂環族ポリイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
ブロック化剤は、活性水素を有する化合物であり、具体例としては、アルコール、フェノール、活性メチレン、アミン、イミン、酸アミド、ラクタム、オキシム、ピラゾール、イミダゾール、イミダゾリン、ピリミジン、グアニジンが挙げられる。
本塗料が硬化剤を含む場合、硬化剤の含有量は、本塗料が含む含フッ素重合体とポリエステルとの合計質量に対して、10~200質量%が好ましく、30~80質量%が特に好ましい。
本塗料が上述の無機粒子以外のフィラーを含む場合、上述の無機粒子以外のフィラーの含有量は、本塗料の固形分質量に対して、5~50質量%が好ましく、10~40質量%が特に好ましい。
有機溶剤の具体例としては、アルコール、ケトン、エステル、炭化水素が挙げられる。
本塗料が溶媒(好ましくは有機溶剤)を含む場合、本塗料における溶媒(好ましくは有機溶剤)の含有量は、本塗料の全質量に対して、10~90質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましく、15~35質量%が特に好ましい。つまり、本塗料における固形分の含有量は、本塗料の全質量に対して、10~90質量%が好ましく、60~90質量%がより好ましく、65~85質量%が特に好ましい。
つまり、本塗料は、タービンが有するブレード又は航空機の翼である基材に塗布して用いられ、基材(タービンが有するブレード又は航空機の翼)上に本塗膜を形成する。また、このように基材上に本塗膜を形成して、塗膜を有する基材である、塗膜付き基材(塗膜付きブレード又は塗膜付き翼)が得られる。
図1、2は本塗膜を有する風力発電機のブレード(塗膜付きブレード)の一例を示した図であり、図1は部分断面図、図2は正面図である。
本例の風力発電機101は、塔体110と、塔体110の上部に設けられた塔頂回動部120と、塔頂回動部120に回動支持部を介して取り付けられた塗膜付きブレード130とを有する。塗膜付きブレード130はブレード11の表面に本塗料を用いて形成された塗膜12(本塗膜)が設けられている。
図3、4は集風体を備えた風力発電機の一例を示したものであり、図3は斜視図、図4は側面図である。本例の風力発電機は、塔体140と、塔体140の上部に設けられた塔頂回動部150と、塔頂回動部150に回動支持部を介して取り付けられた塗膜付きブレード160と、塗膜付きブレード160の周囲に設けられた略円環状の集風体170を有する。
集風体170は集風体の表面に本塗料を用いて形成された本塗膜(図示略)が設けられていてもよい。
まず、図1に示すように、風力発電機のブレード11表面に、本塗料を塗布して塗布層12Aを形成する。
本塗料の塗布方法の具体例としては、刷毛、ローラ、スプレー、フローコータ、アプリケータ等を使用する方法が挙げられる。本塗料の塗布量は、目的とする乾燥膜厚に応じて適宜選定すればよい。
次いで、本塗料が溶媒を含む場合は塗布層12Aから溶媒を除去し、また、本塗料が硬化剤を含む場合は塗布層12Aを硬化させて、塗膜12(本塗膜)を形成でき、塗膜付きブレード130が得られる。
溶媒を除去する際の温度は、常温(25℃程度)~100℃が好ましく、常温~80℃が特に好ましい。上記温度が上記範囲の下限値以上であれば、溶媒が除去されやすい。上記温度が上記範囲の上限値以下であれば、塗膜12(本塗膜)に発泡跡が生じにくい。
硬化剤として非ブロック化ポリイソシアネートを用いる場合、塗布層12Aを硬化させる方法は、室温で養生する方法でもよい。また、密封系乾燥炉や、連続乾燥が可能なトンネル炉等で、熱風循環、赤外線加熱、高周波加熱等により熱硬化させる方法でもよい。中でも、連続生産性の点ではトンネル炉を使用する方法が好ましく、熱の伝わり方の均一性に優れ、均一な硬化塗膜が得られやすい点からは、熱風循環又は赤外線加熱により熱硬化させる方法が好ましい。
硬化剤としてブロック化ポリイソシアネートを用いる場合、塗布層12Aを硬化させる方法は、密封系乾燥炉や、連続乾燥が可能なトンネル炉等で、熱風循環、赤外線加熱、又は、高周波加熱等により熱硬化させる方法が好ましい。中でも、連続生産性の点ではトンネル炉を使用する方法が好ましく、熱の伝わり方の均一性に優れ、均一な硬化塗膜が得られやすい点からは、熱風循環又は赤外線加熱により熱硬化させる方法が好ましい。
形成される塗膜12(本塗膜)の膜厚は、20~100μmが好ましく、20~80μmが特に好ましい。
ブレードの基体11又は集風体は公知の方法で製造できる。ブレードの基体11又は集風体の基体の形状は図1~4に示した例に限らず、適宜変更可能である。
なお、ブレード11と塗膜12(本塗膜)の間に、別の層を形成してもよい。
具体的には、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を使用して樹脂層を形成した後に、樹脂層上に本塗料により本塗膜を形成する方法、本塗膜の密着性を向上させるためのシランカップリング剤からなる層を形成した後に、上記層上に本塗料を塗布して本塗膜を形成する方法等であってもよい。
例えば、本塗料を、航空機の翼に塗布して本塗膜を形成する場合における本塗膜の形成方法の具体例としては、上述の本塗膜の形成方法において、本塗料が塗布される風力発電機のブレードを航空機の翼に置き換えた方法が挙げられる。
また、上述の本塗膜の形成方法は、風力発電用タービン以外の他のタービンが有するブレードにも適用されてもよい。
風力発電用タービンが有するブレード以外の基材に塗膜を塗布して、塗膜を形成して得られる塗膜付き基材においても、本塗膜の膜厚は、20~100μmが好ましく、20~80μmが特に好ましい。
したがって、例えば、上記ブレードや翼が高速で運動して基体が大きく撓んでも、塗膜の剥離が生じ難い。また、上記ブレードや翼に対して雨滴や塵等が高速で衝突しても、十分な強固さと柔軟さを有するため、塗膜に傷が付き難く、浸食されにくい。
含フッ素重合体溶液1:ルミフロンLF9716(水酸基価162mgKOH/g、Tg40℃の含フッ素重合体を含む、固形分濃度70%のキシレン溶液、AGC社商品)
含フッ素重合体溶液2:ルミフロンLF9721(水酸基価170mgKOH/g、Tg30℃の含フッ素重合体を含む、固形分濃度70%のキシレン溶液、AGC社商品)
ポリエステル樹脂1:ニッポラン1100(水酸基価213mgKOH/g、酸価4mgKOH/g、東ソー社商品)
ポリエステル樹脂2:FLEXOREZ148(水酸基価235mgKOH/g、KING INDUSTRIES社製社商品)
ポリエステル樹脂3:FLEXOREZ188(水酸基価230mgKOH/g、KING INDUSTRIES社製社商品)
無機粒子:NYAD 400(アスペクト比3、平均長径27μm、モース硬度4.5であるウォラストナイト、NYCO社商品)
分散剤:DisperBYK-110(ビックケミー・ジャパン社商品)
EEP:エトキシエチルプロピオネート
消泡剤:ディスパロン1993(楠本化成社商品)
顔料:タイペーク PFC105(石原産業社商品)
硬化触媒:ジブチルスズジラウレート
紫外線吸収剤:TINUVIN 384-2(BASF社商品)
光安定剤:TINUVIN 123(BASF社商品)
増粘剤:フローノンSP-1000(共栄社化学社商品)
なお、含フッ素重合体溶液1及び2に記載した水酸基価、Tgは、それぞれの溶液が含む含フッ素重合体の水酸基価、Tgである。
また、表中のEEPと酢酸ブチルとは溶剤として使用した。
表1の組成物1欄に記載の成分をビーズミルにて混合した後、表1の組成物2欄に記載の成分を添加し、ディスパーにて混合した。得られた混合溶液の全質量に対して20質量%の硬化剤(デュラネートTPA-100、HDI系イソシアネート、旭化成社製)を添加して混合し、各例の塗料を得た。
各例の塗料を、100mm×200mmのFRP(Fiber Reinforced Plastics)基材にエアースプレーを用いて2回塗布した後、23℃にて7日間乾燥させて、乾燥膜厚80μmの塗膜を形成して、各例の塗料からなる塗膜を有する塗膜付き基材を得て試験片Aとし、後述の通り評価した。
また、各例の塗料を、140mm×250mmのアート紙に6milのアプリケータを用いて塗布した後、120℃にて10分乾燥させて乾燥膜厚80μmの塗膜を形成して、各例の塗料からなる塗膜を有する塗膜付き基材を得て試験片Bとし、後述の通り評価した。
各例の塗料について、JIS K 5600-2-5に記載の方法に従ったグラインドゲージによる粒状法で、分散度を測定した。顕著なはん点が現れ始める点を、各例の塗料の分散度(μm)とした。
[耐浸食性]
試験片Aに対し、ブラスト処理装置を用いて、研削材としてアルミナ A46を圧力0.45MPaにて射出して、塗膜の耐浸食性を以下の基準によって評価した。
試験片Aは、投入口からコンベア上に投入された後、コンベア速度10cm/分で一定方向にブラスト機内を通過させた。この際に、コンベアの進行方向に対して直列に配置した6本の射出ノズルから塗膜に向けて研削剤を射出した。これにより、研削材が塗膜に衝突して生じる塗膜の浸食の有無を目視により確認した。なお、ブラスト機を通過し終わるまでを1サイクルとした。
A:2サイクル実施後にも塗膜に異常はない(基材の露出が見られなかった)。
B:1サイクル実施後には塗膜に異常がなく、2サイクル実施後には基材の一部が露出している。
C:1サイクル実施後に基材の一部が露出している。
試験片Bの塗膜外観を、目視により以下の基準によって評価した。
A:塗膜が平滑でブツ等の異常がない。
B:塗膜が平滑でないか、ブツ等が認められる
試験片Aに対し、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機社製)を用いて、JIS B 7753:2007に準拠し、4,000時間の促進耐候性試験を行った。
試験開始前の塗膜の60度鏡面光沢値の初期値を100%としたときの試験後の塗膜の60度鏡面光沢値の保持率(光沢保持率)(%)を、光沢計(商品名「UGV-6P」、スガ試験機社商品)を用いて測定した。また、試験後の塗膜と試験前の塗膜との色差を、分光測色計(商品名「CM-5」、コニカミノルタ社商品)を用いて測定した。
なお、上記色差は下記計算式によって求めた。
色差(ΔE*ab)=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2
ΔL*=試験後の塗膜のL*値-試験前の塗膜のL*値
Δa*=試験後の塗膜のa*値-試験前の塗膜のa*値
Δb*=試験後の塗膜のb*値-試験前の塗膜のb*値
A:塗膜の光沢保持率が80%以上である。
B:塗膜の光沢保持率が80%未満60%以上である。
C:塗膜の光沢保持率が60%未満である。
A:塗膜のΔE*abが3.00以下である。
B:塗膜のΔE*abが3.00超5.00以下である。
C:塗膜のΔE*abが5.00超である。
表1中、「無機粒子含有量(質量部)」の欄は、塗料中における、含フッ素重合体とポリエステルとの合計質量100質量部に対する、モース硬度が3.0~5.0の無機粒子の含有量(質量部)を意味する。
12 塗膜
12A 塗布層
101 風力発電機
110、140 塔体
120、150 塔頂回動部
130、160 風力発電機の塗膜付きブレード
170 風力発電機の集風体
Claims (10)
- 含フッ素重合体と、ポリエステルと、モース硬度が3.0~5.0の無機粒子とを含む塗料であって、
前記無機粒子の含有量が、前記含フッ素重合体と前記ポリエステルとの合計100質量部に対して、20~60質量部であり、
前記無機粒子のアスペクト比が1.5~4.5であり、
タービンが有するブレード又は航空機の翼に塗布して用いられることを特徴とする、塗料。 - 前記含フッ素重合体及び前記ポリエステルが、いずれも1~250mgKOH/gの水酸基価を有する、請求項1に記載の塗料。
- 前記ポリエステルが、1~10mgKOH/gの酸価を有する、請求項1又は2に記載の塗料。
- 前記ポリエステルの含有量に対する、前記含フッ素重合体の含有量の質量比が、0.1~9である、請求項1~3のいずれか1項に記載の塗料。
- 前記無機粒子が、珪灰石である、請求項1~4のいずれか1項に記載の塗料。
- 前記無機粒子の平均長径が1~50μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の塗料。
- グラインドゲージによる粒状法で測定される分散度が40μm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の塗料。
- 風力発電用タービンが有するブレードに塗布して用いられる、請求項1~7のいずれか1項に記載の塗料。
- 請求項1~7のいずれか1項に記載の塗料から形成された、膜厚が20~100μmである塗膜を有する、タービンが有するブレード。
- 請求項1~7のいずれか1項に記載の塗料から形成された、膜厚が20~100μmである塗膜を有する、航空機の翼。
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