JP7184030B2 - 積層コイル部品 - Google Patents

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Description

本開示は、積層コイル部品およびその製造方法に関する。
従来の積層コイル部品として、例えば、素体および当該素体内に設けられたコイルを備えた積層コイル部品が知られている(特許文献1)。特許文献1に開示される積層コイル部品は、素体を構成する磁性体層上に、厚さ30μm程度のコイル導体層を形成し、さらに、上記磁性体層上に段差吸収用の別の磁性体層を形成して、コイル導体印刷シートを形成し、かかるシートを複数枚圧着して未焼成積層体を得、これを焼成することを含む製造方法により製造されている。
特開2019-47015号公報
近年の電子機器の大電流化の傾向により、積層コイル部品は、直流抵抗が低いことが要求されるようになってきている。直流抵抗を低くするためには、一般的にコイルを構成する導体の断面積を大きくするために、厚みを厚くすることが求められる。このような場合、コイル導体層と外部電極を接続するための引出部の厚みも厚くなり、応力が大きくなって、クラックが生じる可能性が増大する。
本開示の目的は、コイル導体層が厚く、クラックが生じにくい積層コイル部品およびその製造方法を提供することにある。
本開示は、以下の態様を含む。
[1] 絶縁体部と、
前記絶縁体部に埋設され、複数のコイル導体層が電気的に接続されたコイルと、
前記絶縁体部の表面に設けられ、前記コイルと電気的に接続された外部電極と
を含む積層コイル部品であって、
前記コイル導体層の一の主面と前記絶縁体部との境界に空隙部が設けられ、
前記コイル導体層の少なくとも一つは、前記引出部および巻き線部を含み、該引出部により該コイル導体層は外部電極に接続されており、
積層コイル部品を積層方向から平面視したとき、前記引出部における空隙部の、該引出部が接続する外部電極側の端は、引出部が積層方向に隣接するコイル導体層における空隙部の前記外部電極側の端よりも、前記外部電極側に位置する、
積層コイル部品。
[2] 前記引出部における空隙部の端と、前記積層方向に隣接するコイル導体層における空隙部の端との間の距離は、50μm以上150μm以下である、上記[1]に記載の積層コイル部品。
[3] 前記コイル導体層の巻き線部における厚みは、25μm以上50μm以下である、上記[1]または[2]に記載の積層コイル部品。
[4] 前記引出部は、肉厚部および肉薄部を有し、該引出部が接続する前記外部電極側に前記肉厚部が位置する、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の積層コイル部品。
[5] 前記肉薄部の厚みに対する前記肉厚部の厚みの比は、1.05以上2.00以下である、上記[4]に記載の積層コイル部品。
[6] 前記肉薄部の厚みは、15μm以上45μm以下である、上記[4]または[5]に記載の積層コイル部品。
本開示は、コイル導体層が厚く、クラックが生じにくい積層コイル部品を提供することができる。即ち、本開示は、大電流の用途に用いることができ、信頼性の高い積層コイル部品を提供することができる。
図1は、本開示の積層コイル部品1を模式的に示す斜視図である。 図2は、図1に示す積層コイル部品1のx-xに沿った切断面を示す断面図である。 図3は、図1に示す積層コイル部品1のy-yに沿った切断面を示す断面図である。 図4は、積層コイル部品1のコイル導体層15aが存在する層を積層方向からみた平面図である。 図5(a)~(q)は、図1に示す積層コイル部品1の製造方法を説明するための図である。 図6は、図5(e)のコイル導体部分の断面の拡大図である。
以下、本開示について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本実施形態の積層コイル部品および各構成要素の形状および配置等は、図示する例に限定されない。
本実施形態の積層コイル部品1の斜視図を図1に、x-x断面図を図2に、y-y断面図を図3に示す。但し、下記実施形態の積層コイル部品および各構成要素の形状および配置等は、図示する例に限定されない。
図1~図3に示されるように、本実施形態の積層コイル部品1は、略直方体形状を有する積層コイル部品である。積層コイル部品1において、図1のL軸に垂直な面を「端面」と称し、W軸に垂直な面を「側面」と称し、T軸に垂直な面を「上面」および「下面」と称する。積層コイル部品1は、概略的には、素体2と、該素体2の両端面に設けられた外部電極4,5とを含む。素体2は、絶縁体部6と該絶縁体部6に埋設されたコイル7を含む。該絶縁体部6は、第1絶縁体層11および第2絶縁体層12を有する。上記コイル7は、コイル導体層15が、第1絶縁体層11を貫通する接続導体16によりコイル状に接続されることにより構成される。コイル導体層15のうち最下層および最上層に位置するコイル導体層15a,15fは、それぞれ、引出部18a,18fを有する。コイル7は、上記引出部18a,18fで、外部電極4,5に接続される。上記絶縁体部6と上記コイル導体層15の主面(図2および図3では下方主面)との間、即ち第1絶縁体層11とコイル導体層15との間に空隙部21が設けられている。積層コイル部品を積層方向から平面視したとき、上記引出部18aにおける空隙部の外部電極4側の端は、該引出部が隣接するコイル導体層15bにおける空隙部の外部電極4側の端よりも、外部電極4側に位置する。同様に、上記引出部18fにおける空隙部の外部電極5側の端は、該引出部が隣接するコイル導体層15eにおける空隙部の外部電極5側の端よりも、外部電極5側に位置する。
上記した本実施形態の積層コイル部品1を以下に説明する。本実施形態では、絶縁体部6がフェライト材料から形成される態様について説明する。
本実施形態の積層コイル部品1において、素体2は、絶縁体部6とコイル7から構成される。
上記絶縁体部6は、第1絶縁体層11および第2絶縁体層12を含み得る。
上記第1絶縁体層11は、積層方向に隣接するコイル導体層15の間、およびコイル導体層15と素体の上面または下面との間に設けられる。
上記第2絶縁体層12は、コイル導体層15の周囲に、コイル導体層15の上面(図2および図3で上側の主面)が露出するように設けられる。換言すれば、第2絶縁体層12は、コイル導体層15と積層方向に同じ高さにある層を形成する。例えば、図2において、第2絶縁体層12aは、コイル導体層15aと積層方向に同じ高さに位置する。
即ち、本開示の積層コイル部品において、上記絶縁体部は、第1絶縁体層および第2絶縁体層が積層された積層体であり、上記コイル導体層は、上記第1絶縁体層上に設けられ、上記第2絶縁体層は、上記第1絶縁体層上に上記コイル導体層に隣接して設けられていると言える。
上記コイル導体層15間の第1絶縁体層11の厚み、特に引出部18とこれに積層方向に隣接するコイル導体層15の間の第1絶縁体層11の厚みは、好ましくは5μm以上100μm以下、より好ましくは10μm以上50μm以下、さらに好ましくは10μm以上30μm以下であり得る。かかる厚みを5μm以上とすることにより、コイル導体層間の絶縁性をより確実に確保できる。また、かかる厚みを100μm以下とすることにより、より優れた電気特性を得ることができる。
一の態様において、第2絶縁体層12は、その一部がコイル導体層15の外縁部分に乗り上げるように設けてもよい。換言すれば、第2絶縁体層12は、コイル導体層15の外縁部分を覆うように設けてもよい。即ち、第2絶縁体層12は、互いに隣接するコイル導体層15および第2絶縁体層12を上面側から平面視した場合に、コイル導体層15の外縁よりも内側にまで存在し得る。
上記第1絶縁体層11および第2絶縁体層12は、素体2において、一体化していてもよい。この場合、第1絶縁体層11は、コイル導体層間に存在し、第2絶縁体層12は、コイル導体層15と同じ高さに存在すると考えることができる。
上記絶縁体部6は、好ましくは磁性体、さらに好ましくは焼結フェライトから構成される。上記焼結フェライトは、主成分として、少なくともFe、Ni、およびZnを含む。焼結フェライトは、さらにCuを含んでいてもよい。
上記第1絶縁体層11および上記第2絶縁体層12は、同じ組成であっても、異なる組成であってもよい。好ましい態様において、上記第1絶縁体層11および上記第2絶縁体層12は、同じ組成である。
一の態様において、上記焼結フェライトは、主成分として、少なくともFe、Ni、ZnおよびCuを含む。
上記焼結フェライトにおいて、Fe含有量は、Feに換算して、好ましくは40.0モル%以上49.5モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは45.0モル%以上49.5モル%以下であり得る。
上記焼結フェライトにおいて、Zn含有量は、ZnOに換算して、好ましくは5.0モル%以上35.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは10.0モル%以上30.0モル%以下であり得る。
上記焼結フェライトにおいて、Cu含有量は、CuOに換算して、好ましくは4.0モル%以上12.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは7.0モル%以上10.0モル%以下である。
上記焼結フェライトにおいて、Ni含有量は、特に限定されず、上記した他の主成分であるFe、ZnおよびCuの残部とし得る。
一の態様において、上記焼結フェライトは、Feは、Feに換算して40.0モル%以上49.5モル%以下、Znは、ZnOに換算して5.0モル%以上35.0モル%以下、Cuは、CuOに換算して4.0モル%以上12.0モル%以下、NiOは残部である。
本開示において、上記焼結フェライトは、さらに添加成分を含んでいてもよい。焼結フェライトにおける添加成分としては、例えばMn、Co、Sn、Bi、Si等が挙げられるが、これに限定されるものではない。Mn、Co、Sn、BiおよびSiの含有量(添加量)は、主成分(Fe(Fe換算)、Zn(ZnO換算)、Cu(CuO換算)およびNi(NiO換算))の合計100重量部に対して、それぞれ、Mn、Co、SnO、Bi、およびSiOに換算して、0.1重量部以上1重量部以下であることが好ましい。また、上記焼結フェライトは、さらに製造上不可避な不純物を含んでいてもよい。
上記したように、上記コイル7は、コイル導体層15がコイル状に相互に電気的に接続されることにより構成されている。積層方向に互いに隣接するコイル導体層15は、絶縁体部6(具体的には、第1絶縁体層11)を貫通する接続導体16により接続されている。本実施形態において、コイル導体層15は、下面側から順に、コイル導体層15a~15fとする。
上記コイル導体層15a,15fは、それぞれ、巻き線部および引出部を有する。例えば、図4に示すように、上記コイル導体層15aは、それぞれ、巻き線部17aおよび引出部18aを有する。ここに、引出部は、コイル導体層の末端に位置し、コイル導体と外部電極とを接続する部分である。
コイル導体層15を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、Au、Ag、Cu、Pd、Ni等が挙げられる。上記コイル導体層15を構成する材料は、好ましくはAgまたはCu、より好ましくはAgである。導電性材料は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
上記コイル導体層15の巻き線部における厚み(即ち、引出部以外の部分における厚み)は、好ましくは15μm以上70μm以下、より好ましくは20μm以上60μm以下であり、さらに好ましくは25μm以上50μm以下であり得る。コイル導体層の厚みを大きくすることにより、積層コイル部品の抵抗値がより小さくなる。ここに厚みとは、積層方向に沿ったコイル導体層の厚みをいう。
上記コイル導体層15の引出部は、厚みが厚い領域(以下、「肉厚部」という)と、厚みが薄い領域(以下、「肉薄部」という)を有する。該引出部が接続する外部電極側に上記の厚い領域が位置する。即ち、コイル導体層15aの引出部18aは、肉厚部18a2および肉薄部18a1を有し、該肉厚部18a2は、肉薄部18a1よりも外部電極4側に位置する。また、コイル導体層15fの引出部18fは、肉厚部18f2および肉薄部18f1を有し、該肉厚部18f2は、肉薄部18f1よりも外部電極5側に位置する。このような構成とすることにより、外部電極と引出部の接続部において封止性が向上する。
上記肉薄部の厚みは、好ましくは15μm以上70μm以下、より好ましくは20μm以上60μm以下であり、さらに好ましくは25μm以上50μm以下であり得る。肉薄部の厚みを大きくすることにより、コイルの抵抗値がより小さくなる。
上記肉薄部の厚みに対する上記肉厚部の厚みの比(肉厚部の厚み/肉薄部の厚み)は、好ましくは1.05以上2.00以下、より好ましくは1.10以上1.80以下、さらに好ましくは1.20以上1.70以下である。肉薄部の厚みに対する上記肉厚部の厚みの比を上記の範囲とすることにより、引出部のコイル導体と絶縁体部間に隙間が生じにくくなり、引出部のコイル導体と絶縁体部間の密着性が向上する。
上記コイル導体層の厚みは、以下のようにして測定することができる。
チップのLT面を研磨紙に向けた状態で研磨を行い、コイル導体層のW寸中央部で研磨を停止する。その後、マイクロスコープで観察を行う。コイル導体層のL寸中央部の厚みを、マイクロスコープに付属している測定機能にて測定する。
上記接続導体16は、第1絶縁体層11を貫通するように設けられる。接続導体を構成する材料は、上記コイル導体層15に関して記載した材料であり得る。接続導体を構成する材料は、コイル導体層15を構成する材料と同じであっても異なっていてもよい。好ましい態様において、接続導体を構成する材料は、コイル導体層15を構成する材料と同じである。好ましい態様において、接続導体を構成する材料は、Agである。
上記空隙部21は、いわゆる応力緩和空間として機能する。
本開示において、積層コイル部品を積層方向から平面視したとき、上記引出部における空隙部の、該引出部が接続する外部電極側の端は、引出部が積層方向に隣接するコイル導体層における空隙部の上記外部電極側の端よりも、上記外部電極側に位置する。換言すれば、積層方向に平行かつ外部電極が設けられた端面に垂直な断面において、上記引出部における空隙部の該引出部が接続する外部電極側の端は、引出部が積層方向に隣接するコイル導体層における空隙部の上記外部電極側の端よりも、上記外部電極側に位置する。図3においては、引出部18aにおける空隙部21aの外部電極4側の端は、引出部18aが積層方向に隣接するコイル導体層15bにおける空隙部21bの外部電極4側の端よりも、外部電極4側に位置する。同様に、引出部18fにおける空隙部21fの外部電極5側の端は、引出部18fが積層方向に隣接するコイル導体層15eにおける空隙部21eの外部電極5側の端よりも、外部電極5側に位置する。上記のような構成とすることにより、厚みが大きな引出部の収縮による応力に起因するクラックの発生を抑制することができる。
上記引出部における空隙部の端と、上記隣接するコイル導体層における空隙部の端との間の距離(図3におけるt)は、好ましくは50μm以上150μm以下、より好ましくは60μm以上140μm以下、さらに好ましくは70μm以上130μm以下である。上記距離tを50μm以上にすることにより、クラックの発生をより抑制することができる。また、上記距離tを150μm以下にすることにより、外部電極と引出部の接続部において封止性がより向上する。
空隙部21の厚みは、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは5μm以上15μm以下である。空隙部21の厚みを上記の範囲とすることにより、内部応力をより緩和することがで、クラックの発生をより抑制することができる。
上記空隙部の厚みおよび上記距離tは、以下のようにして測定することができる。
チップのLT面を研磨紙に向けた状態で研磨を行い、コイル導体層のW寸中央部で研磨を停止する。その後、マイクロスコープで観察を行う。コイル導体層のL寸中央部に位置する空隙の厚みを、マイクロスコープに付属している測定機能にて測定する。同様に距離tを測定する。
好ましい態様において、図2および図3に示されるように、積層コイル部品を積層方向から平面視したとき、引出部と積層方向に隣接するコイル導体部分における空隙部は、上記コイル導体層の内側に位置する。上記の部分以外の空隙部21は、コイルの巻き線方向に垂直な断面において、幅がコイル導体層15の幅よりも大きい。即ち、コイル導体層の両端から、コイル導体層から離れる方向に延伸するように設けられる。
外部電極4,5は、素体2の両端面を覆うように設けられる。上記外部電極は、導電性材料、好ましくはAu、Ag、Pd、Ni、SnおよびCuから選択される1種またはそれ以上の金属材料から構成される。
上記外部電極は、単層であっても、多層であってもよい。一の態様において、上記外部電極は、多層、好ましくは2層以上4層以下、例えば3層であり得る。
一の態様において、外部電極は多層であり、AgまたはPdを含む層、Niを含む層、またはSnを含む層を含み得る。好ましい態様において、上記外部電極は、AgまたはPdを含む層、Niを含む層、およびSnを含む層からなる。好ましくは、上記の各層は、コイル導体層側から、AgまたはPd、好ましくはAgを含む層、Niを含む層、Snを含む層の順で設けられる。好ましくは、上記AgまたはPdを含む層はAgペーストまたはPdペーストを焼き付けた層であり、上記Niを含む層およびSnを含む層は、めっき層であり得る。
本開示の積層コイル部品は、好ましくは、長さが0.4mm以上3.2mm以下であり、幅が0.2mm以上2.5mm以下であり、高さが0.2mm以上2.0mm以下であり、より好ましくは長さが0.6mm以上2.0mm以下であり、幅が0.3mm以上1.3mm以下であり、高さが0.3mm以上1.0mm以下である。
上記した本実施形態の積層コイル部品1の製造方法を以下に説明する。本実施形態では、絶縁体部6がフェライト材料から形成される態様について説明する。
(1)フェライトペーストの調製
まず、フェライト材料を準備する。フェライト材料は、主成分としてFe、Zn、およびNiを含み、所望によりさらにCuを含む。通常、上記フェライト材料の主成分は、実質的にFe、Zn、NiおよびCuの酸化物(理想的には、Fe、ZnO、NiOおよびCuO)から成る。
フェライト材料として、Fe、ZnO、CuO、NiO、および必要に応じて添加成分を所定の組成になるように秤量し、混合および粉砕する。粉砕したフェライト材料を乾燥し、仮焼し、仮焼粉末を得る。この仮焼粉末に、所定量の溶剤(ケトン系溶剤など)、樹脂(ポリビニルアセタールなど)、および可塑剤(アルキド系可塑剤など)を加え、プラネタリーミキサー等で混錬した後、さらに3本ロールミル等で分散することでフェライトペーストを作製することができる。
上記フェライト材料において、Fe含有量は、Feに換算して、好ましくは40.0モル%以上49.5モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは45.0モル%以上49.5モル%以下であり得る。
上記フェライト材料において、Zn含有量は、ZnOに換算して、好ましくは5.0モル%以上35.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは10.0モル%以上30.0モル%以下であり得る。
上記フェライト材料において、Cu含有量は、CuOに換算して、好ましくは4.0モル%以上12.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは7.0モル%以上10.0モル%以下である。
上記フェライト材料において、Ni含有量は、特に限定されず、上記した他の主成分であるFe、ZnおよびCuの残部とし得る。
一の態様において、上記フェライト材料は、Feは、Feに換算して40.0モル%以上49.5モル%以下、Znは、ZnOに換算して5.0モル%以上35.0モル%以下、Cuは、CuOに換算して4.0モル%以上12.0モル%以下、NiOは残部である。
本開示において、上記フェライト材料は、さらに添加成分を含んでいてもよい。フェライト材料における添加成分としては、例えばMn、Co、Sn、Bi、Si等が挙げられるが、これに限定されるものではない。Mn、Co、Sn、BiおよびSiの含有量(添加量)は、主成分(Fe(Fe換算)、Zn(ZnO換算)、Cu(CuO換算)およびNi(NiO換算))の合計100重量部に対して、それぞれ、Mn、Co、SnO、Bi、およびSiOに換算して、0.1重量部以上1重量部以下であることが好ましい。また、上記フェライト材料は、さらに製造上不可避な不純物を含んでいてもよい。
なお、焼結フェライトにおけるFe含有量(Fe換算)、Mn含有量(Mn換算)、Cu含有量(CuO換算)、Zn含有量(ZnO換算)およびNi含有量(NiO換算)は、焼成前のフェライト材料におけるFe含有量(Fe換算)、Mn含有量(Mn換算)、Cu含有量(CuO換算)、Zn含有量(ZnO換算)およびNi含有量(NiO換算)と実質的に相違ないと考えて差し支えない。
(2)コイル導体用導電性ペーストの調製
まず、導電性材料を準備する。導電性材料としては、例えば、Au、Ag、Cu、Pd、Ni等が挙げられ、好ましくはAgまたはCu、より好ましくはAgである。所定量の導電性材料の粉末を秤量し、所定量の溶剤(オイゲノールなど)、樹脂(エチルセルロースなど)、および分散剤と、プラネタリーミキサー等で混錬した後、3本ロールミル等で分散することで、コイル導体用導電性ペーストを作製することができる。
(3)樹脂ペーストの調製
上記積層コイル部品1の空隙部を作製するための樹脂ペーストを調製する。かかる樹脂ペーストは、溶剤(イソホロンなど)に、焼成時に消失する樹脂(アクリル樹脂など)を含有させることにより作製することができる。
(4)積層コイル部品の作製
(4-1)素体の作製
まず、金属プレートの上に熱剥離シートおよびPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを積み重ね(図示していない)、フェライトペーストを所定回数印刷し、外層となる第1フェライトペースト層31を形成する(図5(a))。この層は第1絶縁体層11に対応する。
次に、空隙部21aを形成する箇所に、上記樹脂ペーストを印刷し、樹脂ペースト層32を形成する(図5(b))。
次に、コイル導体層15aを形成する箇所に、上記導電性ペーストを印刷し、導電性ペースト層33を形成する(図5(c))。
次に、引出部18を形成する箇所であって、上記樹脂ペースト層32と端面の間に、上記導電性ペーストを印刷し、引出導体付加層37を形成する(図5(c))。かかる引出導体付加層37を形成した箇所では、引出部が肉厚となる。
次に、導電性ペースト層33が形成されていない領域に、上記フェライトペーストを印刷し、第2フェライトペースト層34を形成する(図5(e))。第2フェライトペースト層34は、好ましくは上記導電性ペースト層33の外縁部を覆うように設けられる(図6)。この層は第2絶縁体層12に対応する。
次に、積層方向に隣接するコイル導体層を接続する接続導体を形成する箇所以外の領域に、フェライトペーストを印刷し、第1フェライトペースト層41を形成する(図5(f))。この層は第1絶縁体層11に対応する。上記接続導体を形成する箇所は、ホール42となる。
次に、上記のホール42中に導電性ペーストを印刷して接続導体ペースト層43を形成する(図5(g))。
次いで、上記の工程(b)~(g)と同様の工程を適宜繰り返して図2および図3に示す各層を形成し(図5(h)~(p)等)、最後に、フェライトペーストを所定回数印刷し、外層となる第1フェライトペースト層71を形成する(図5(q))。この層は第1絶縁体層11に対応する。
次に、金属プレートにとりつけたまま圧着した後、冷却を行い金属プレート、PETフィルムの順番で剥離することにより、素子の集合体(未焼成積層体ブロック)が得られる。この未焼成積層体ブロックをダイサーなどで切断して、各素体に個片化する。
得られた未焼成の素体をバレル処理することにより、素体の角を削り、丸みを形成する。なお、バレル処理は、未焼成の積層体に対して行ってもよく、焼成後の積層体に対して行ってもよい。また、バレル処理は、乾式または湿式のどちらであってもよい。バレル処理は、素子同士を共擦する方法であってもよく、メディアと一緒にバレル処理する方法であってもよい。
バレル処理後、例えば910℃以上935℃以下の温度で未焼成素体を焼成し、積層コイル部品1の素体2を得る。焼成により、樹脂ペースト層が消失し、空隙部21が形成される。
(4-2)外部電極の形成
次に、素体2の端面にAgおよびガラスを含む外部電極形成用Agペーストを塗布し、焼き付けすることで下地電極を形成する。次に、電解めっきで下地電極の上に、Ni被膜、Sn被膜を順次形成することにより、外部電極を形成し、図1に示すような積層コイル部品1が得られる。
以上、本発明の1つの実施形態について説明したが、本実施形態は種々の改変が可能である。
例えば、上記では、各絶縁層に対応するフェライトシートを準備し、このシートに印刷をしてコイルパターンを形成し、これらを圧着して素子を得てもよい。
上記した本開示の方法により製造された積層コイル部品は、コイル導体の抵抗値が低く、また、クラックの発生が抑制される。
実施例
・フェライトペーストの調製
Fe、ZnO、CuO、およびNiOの粉末を、これらの合計に対してそれぞれ、49.0モル%、25.0モル%、8.0モル%、および残部となるように秤量した。これらの粉末を、混合および粉砕し、乾燥し、700℃で仮焼して、仮焼粉末を得た。この仮焼粉末に、所定量のケトン系溶剤、ポリビニルアセタール、およびアルキド系可塑剤を加え、プラネタリーミキサーで混錬した後、さらに3本ロールミルで分散することでフェライトペーストを作製した。
・コイル導体用導電性ペーストの調製
導電性材料として、所定量の銀粉末を準備し、オイゲノール、エチルセルロース、および分散剤と、プラネタリーミキサーで混錬した後、3本ロールミルで分散することで、コイル導体用導電性ペーストを作製した。
・樹脂ペーストの調製
イソホロンに、アクリル樹脂を混合することにより、樹脂ペーストを作製した。
・積層コイル部品の作製
上記のフェライトペースト、導電性ペースト、および樹脂ペーストを用いて、図5に示す手順により、未焼成の積層体ブロックを作製した。導電性ペースト層の厚みは70μmとした。また、図3に示す距離tが-50μm、0μm、50μm、100μm、または150μmとなるように空隙部を形成した。なお、マイナスは、積層方向から平面視した場合に空隙部が重なっていることを示し、-50μmおよび0μmは比較例に相当する。
次に、積層体ブロックをダイサー等で切断し、素子に個片化した。得られた素子をバレル処理することにより、素子の角を削り、丸みを形成した。バレル処理後、920℃の温度で素子を焼成し、素体を得た。
次に、素体の端面にAgおよびガラスを含む外部電極形成用Agペーストを塗布し、焼き付けすることで下地電極を形成した。次に、電解めっきで下地電極の上に、Ni被膜、Sn被膜を順次形成することにより、外部電極を形成して、積層コイル部品を得た。
上記で得られた積層コイル部品は、いずれもL(長さ)=1.6mm、W(幅)=0.8mm、T(高さ)=0.8mmであった。
評価
上記で得られた積層コイル部品の各30個について、ひびの発生の有無を評価した。ひびが発生した積層コイル部品の数を、下記表1に示す。
Figure 0007184030000001
上記の結果から、距離tが0より大きい積層コイル部品は、焼成後もひびが生じなかった。
本開示の積層コイル部品は、インダクタなどとして幅広く様々な用途に使用され得る。
1…積層コイル部品
2…素体
4,5…外部電極
6…絶縁体部
7…コイル
11…第1絶縁体層
12…第2絶縁体層
15…コイル導体層
16…接続導体
17…巻き線部
18…引出部
18a1,18f1…肉厚部
18a2,18f2…肉薄部
21…空隙部
31…第1フェライトペースト層
32…樹脂ペースト層
33…導電性ペースト層
34…第2フェライトペースト層
37…引出導体付加層
41…第1フェライトペースト層
42…ホール
43…接続導体ペースト層
44…樹脂ペースト層
45…導電性ペースト層
46…第2フェライトペースト層
55…導電性ペースト層
56…第2フェライトペースト層
61…第1フェライトペースト層
63…接続導体ペースト層
64…樹脂ペースト層
65…導電性ペースト層
67…引出導体付加層
71…第1フェライトペースト層

Claims (6)

  1. 絶縁体部と、
    前記絶縁体部に埋設され、複数のコイル導体層が電気的に接続されたコイルと、
    前記絶縁体部の表面に設けられ、前記コイルと電気的に接続された外部電極と
    を含む積層コイル部品であって、
    前記コイル導体層の一の主面と前記絶縁体部との境界に空隙部が設けられ、
    前記コイル導体層の少なくとも一つは、引出部および巻き線部を含み、該引出部により該コイル導体層は外部電極に接続されており、
    積層コイル部品を積層方向から平面視したとき、前記引出部における空隙部の、該引出部が接続する外部電極側の端は、引出部が積層方向に隣接するコイル導体層における空隙部の前記外部電極側の端よりも、前記外部電極側に位置し、
    前記引出部における空隙部は、前記絶縁体部から露出しておらず、
    積層コイル部品を積層方向から平面視したとき、引出部が積層方向に隣接するコイル導体部分における空隙部は、前記コイル導体層の内側に位置する、
    積層コイル部品。
  2. 前記引出部における空隙部の端と、前記積層方向に隣接するコイル導体層における空隙部の端との間の距離は、50μm以上150μm以下である、請求項1に記載の積層コイル部品。
  3. 前記コイル導体層の巻き線部における厚みは、25μm以上50μm以下である、請求項1または2に記載の積層コイル部品。
  4. 前記引出部は、肉厚部および肉薄部を有し、該引出部が接続する前記外部電極側に前記肉厚部が位置する、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層コイル部品。
  5. 前記肉薄部の厚みに対する前記肉厚部の厚みの比は、1.05以上2.00以下である、請求項4に記載の積層コイル部品。
  6. 前記肉薄部の厚みは、15μm以上45μm以下である、請求項4または5に記載の積層コイル部品。
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