JP7152671B2 - エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、Niに対する接着力に優れたエポキシ樹脂組成物に関する。
従来、エポキシ樹脂組成物は、電気・電子機器部品、自動車部品、航空部品、建材等に広範囲に使用されている。特開2009-213146号公報などの様に、CMOSセンサーなどのカメラモジュールの組み立てには加熱硬化型または室温硬化型のエポキシ樹脂組成物が汎用されている。このようなカメラモジュールなどの電子部品においては、携帯に伴う衝撃や振動に耐えうる接着力を有したエポキシ樹脂組成物が求められる。またこれらの部材は導通性の観点からNi部材が頻繁に用いられるが、従来のエポキシ樹脂組成物では接着が困難であるという課題があった。
特開2016-021033号公報には(1)シロキサン変性エポキシ樹脂、(2)フェノール樹脂、(3)潜在性硬化剤、(4)平均粒径0.01~1μmのゴムフィラー、(5)平均粒径4~6μmのゴムフィラー、(6)平均粒径0.01~10μmの無機フィラーを含む耐衝撃性を有するカメラモジュール用接着剤が開示されている。
しかしながら、特許文献2に開示されたエポキシ樹脂組成物はNiに対しての接着力を満足するものではなかった。
本発明は、上記の状況に鑑みてされたものであり、Niに対し高い接着強度を有するエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明は以下の要旨を有するものである。
本発明の第一の実施態様は、下記の(A)~(C)成分を含有する電子部品接着のためのエポキシ樹脂組成物である:
(A)成分:エポキシ基を有する化合物
(B)成分:ガラス転移点が50℃以上のポリスチレン系フィラー
(C)成分:(A)成分を硬化させる成分。
本発明の第二の実施態様は前記(B)成分がスチレン-ジビニルベンゼン共重合体のポリスチレン系フィラーである、第一の実施態様に記載のエポキシ樹脂組成物である。
本発明の第三の実施態様は前記電子部品がカメラモジュールである、第一または第二の実施態様の何れか一つに記載のエポキシ樹脂組成物である。
本発明の第四の実施態様は前記(A)成分100質量部に対して、(B)成分1.5~120質量部含有する、第一~第三の実施態様の何れか一つに記載のエポキシ樹脂組成物である。
本発明の第五の実施態様は第一~第四の実施態様の何れか一つに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物である。
本発明の第六の実施態様は第一~第四の実施態様の何れか一つに記載のエポキシ樹脂組成物により貼り合わせてなるカメラモジュールである。
本発明の電子部品接着のためのエポキシ樹脂組成物は、
(A)成分:エポキシ基を有する化合物、
(B)成分:ガラス転移点が50℃以上のポリスチレン系フィラー、および
(C)成分:(A)成分を硬化させる成分、
を含有することを特徴とするものである。かかる構成を有することにより、本発明は、Niに対する高い接着強度を有するエポキシ樹脂組成物を提供することができる。
以下に発明の詳細を説明する。
<(A)成分>
本発明の(A)成分はエポキシ基を有する化合物であり、1分子中にエポキシ基を1以上有する化合物であれば特に限定されない。また、(A)成分は、エピクロルヒドリンとビスフェノール類などのフェノール類やアルコールとの縮合によって得られるものである。
(A)成分としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。その他エピクロルヒドリンとフタル酸誘導体や脂肪酸などのカルボン酸との縮合によって得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、さらには様々な方法で変性したエポキシ樹脂を挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独あるいは混合で使用してもよい。これらの(A)成分の中でも樹脂の入手が容易であるという観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。
前記(A)成分の市販品としては、例えばjER828、1001、806、807、152、604、630、871、YX8000、YX8034、YX4000(三菱化学株式会社製)、エピクロン830、EXA-830LVP、EXA-850CRP、EXA-835LV、HP4032D、HP4700、HP820(DIC株式会社製)、EP4100、EP4000、EP4000G、EP4000E、EP4000TX、EP4400、EP4520S、EP4530、EP4901、EP4080、EP4085、EP4088、EPU7N、EPR4023、EPR2007、EP49-10N(株式会社ADEKA製)、デナコールEX-121、EX146、EX411、EX314、EX201、EX212、EX216、EX252(ナガセケムテックス株式会社製)、TEPIC、TEPIC-S、TEPIC-VL(日産化学工業株式会社製)、SY-35M、SR-NPG、SR-TMP(坂本薬品工業株式会社製)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは、それぞれ単独で用いることも、また二種以上を混合して用いても良い。
<(B)成分>
本発明の(B)成分はガラス転移点(Tg)が50℃以上のポリスチレン系フィラーであり、少なくとも一種のスチレン誘導体を重合または共重合させたポリスチレン系フィラーである。これらスチレン誘導体としては、スチレンを含み、その他ハロゲンやアルキル基やエステルやスルホン酸塩等をスチレンに付加させた化合物が挙げられ、例えばメタクロロスチレン、パラクロロスチレン、パラフロロスチレン、パラメトキシスチレン、メタターシャリーブトキシスチレン、パラビニル安息香酸、パラメチル-α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。またスチレン誘導体と共重合できるモノマーは、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸等の不飽和カルボン酸類、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸-n-ブチル等のアクリル酸エステル類またはメタクリル酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のアクリル酸ニトリル類またはメタクリル酸ニトリル類、アクロレイン、メタクロレイン等のアクリル酸アルデヒド類またはメタクリル酸アルデヒド類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロール-アクリルアミド、N-メチロール-メタクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド等のアクリル酸アミド類またはメタクリル酸アミド類、イソプレン等の共役ジエン類、酢酸ビニル、ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等のビニル単量体等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは単独あるいは混合で使用してもよい。これらの(B)成分の中でもNiに対する接着強度が高いという観点から、スチレン誘導体同士の共重合体のポリスチレン系フィラーが好ましく、さらに好ましくはスチレンとジビニルベンゼンの共重合体のポリスチレン系フィラーである。
前記(B)成分のガラス転移点(Tg)は50℃以上であればよく、さらに好ましくは60℃以上であり、特に好ましくは70℃以上である。(B)成分のガラス転移点が50℃以上であることで、Niに対する高い接着力を有するエポキシ樹脂組成物を得ることができる。さらに(B)成分のガラス転移点が高いことで、エポキシ樹脂組成物の硬化物自体のガラス転移点が低くなりづらいため、使用環境下での温度変化による接着力の低下が起こりづらい。一方、(B)成分のガラス転移点の上限値としては、特に制限されるものではないが、概ね120℃以下であればよい。(B)成分のガラス転移点が120℃以下であれば、ガラス転移点(Tg)が高すぎることで脆くなることもなく、良好に剥離することができるため好ましい。一般的に物質が非晶質の固体である場合、低温では結晶なみに堅く(剛性率が大きく)流動性がなかった固体が、加熱によりある狭い温度範囲で急速に剛性と粘度が低下し流動性が増す。このような温度がガラス転移点である。ガラス転移点の測定方法としては、試料の温度を一定の速度で変化させながら力学的物性の変化を測定するTMA法やDMA法(tanδピーク)、試料の温度を一定の速度で変化させながら吸熱や発熱を測定するDSCなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。中でも試料の形状を選ばないことからDSCでの測定方法が好ましい。
前記(B)成分の形状は球状であることが好ましく、その平均粒径は0.01μm~30μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは0.03μm~20μmの範囲であり、特に好ましくは0.05μm~10μmの範囲である。(B)成分の平均粒径が0.01μm以上であることで高粘度化せず優れた作業性を得る事ができ、30μm以下であることでNiに対する高い接着力を有するエポキシ樹脂組成物が得られる。ここでの平均粒径とは、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定した個数積算分布における50%粒径(D50値)である。
前記(B)成分の市販品としては、例えばファインパールPB-3006E;スチレン-ジビニルベンゼン共重合体のポリスチレン系フィラー、Tg=90~110℃(松浦株式会社製)、マープルーフG-1005S;メタクリル酸グリシジルとスチレンの共重合体のポリスチレン系フィラー、Tg=96℃(日油株式会社製)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
前記(B)成分の含有量は、特に限定されないが、(A)成分100質量部に対して、1.5~120質量部含み、より好ましくは、2~110質量部含めることができ、さらに好ましくは2.5~100質量部含めることができ、特に好ましくは3~95質量部含めることができる。(B)成分の含有量が1.5質量部以上であることでNiに対し高い接着力を有するエポキシ樹脂組成物を得る事ができ、一方、(B)成分の含有量が120質量部以下であることで高粘度化せず優れた作業性が得られる。さらに、上記(B)成分の含有量が上記範囲であれば、T型剥離接着強さと引張せん断接着強さの両方に強い樹脂組成物を提供できる。特に、引張せん断接着強さ10MPa以上とT型剥離接着強さ400N/m以上の両方満たすことができ、最適である(実施例の表1-1~表1-2参照)。
<(C)成分>
本発明の(C)成分は前記(A)を硬化させる成分である。前記(C)成分としては、硬化剤、潜在性硬化剤、光カチオン重合開始剤、光塩基発生剤等が挙げられる。前記硬化剤は一般的に25℃で液体から半固体であり、前記潜在性硬化剤は25℃で固体であり、これらは加熱の刺激により活性化して、前記(A)成分を硬化させられる物質であれば特段の制限はない。また前記光カチオン重合開始剤や前記光塩基発生剤は暗所では安定だが、光の刺激により活性化して前記(A)成分を硬化させられる物質であれば特段の制限はない。これらは従来公知の材料を利用することができ、それぞれ単独で用いてもよく、また2種類以上を混合して用いてもよい。前記硬化剤の具体例としては例えば、脂肪族及び芳香族アミン化合物、ケチミン化合物、脂肪族及び芳香族チオール化合物、イミダゾール及びその誘導体、酸無水物化合物、ポリアミド化合物、ヒドラジド化合物、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック樹脂が挙げられる。潜在性硬化剤の具体例としては例えば、アミンアダクト化合物、尿素アダクト化合物、イミダゾールアダクト化合物、ジシアンジアミド及びその誘導体等が挙げられる。光カチオン重合開始剤としては例えば、鉄-アレン錯体化合物、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、オニウム塩、ピリジニウム塩、アルミニウム錯体/シラノール塩、トリクロロメチルトリアジン誘導体等が挙げられる。光塩基発生剤としては例えば、α-アミノケトン化合物、ピペリジン誘導体、ホスホニウムカチオンボレート塩、アルカリ金属カチオンボレート塩、アンモニウムカチオンボレート塩、シクロヘキシルカーバメート誘導体、アミンイミド化合物等が挙げられる。
これらの材料の中でも、光が当たらない部位も接着できる点から硬化剤や潜在性硬化剤が好ましく、さらには常温で安定であり、比較的低温の加熱により速やかに硬化反応を開始する物質であるという観点から、脂肪族及び芳香族チオール化合物、アミンアダクト化合物、尿素アダクト化合物、イミダゾールアダクト化合物のいずれか1種以上が含まれることが好ましい。
前記(C)成分の市販品としては、硬化剤としては、脂肪族及び芳香族チオール化合物としてPEMP、TMMP、DPMP、TEMPIC、PEMP2-20P(SC有機化学株式会社製)、カレンズMT(商標登録)シリーズのPE1、BD1、NR1等(昭和電工株式会社製)が挙げられ、潜在性硬化剤としては、アミンアダクト化合物及び尿素アダクト化合物として、アミキュアPN-23、アミキュアPN-31J、アミキュアMY-24、アミキュアMY-D、アミキュアMY-H等(味の素ファインテクノ株式会社製)、EH-5011S、EH4357S等(株式会社ADEKA製)、ノバキュアHX-3921HP、ノバキュアHX-3088等(旭化成イーマテリアル株式会社製)、SunmideLH-210、Ancamine2014FG等(エアープロダクツジャパン株式会社製)、フジキュアーFXE-1000、FXR-1030、FXR-1081、FXR-1121、FXR-1110(株式会社T&K TOKA製)、が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは、それぞれ単独で用いることも、また二種以上を混合して用いても良い。
前記(C)成分の含有量は、特に限定されないが、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.3~95質量部含み、より好ましくは1~80質量部含めることができ、さらに好ましくは3~75質量部含めることができる。(C)成分の含有量が0.3質量部以上であることで優れた硬化物の物性を得る事ができ、一方、(C)成分の含有量が95質量部以下であることで貯蔵安定性が優れる。
<任意成分>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、保存安定剤、充填剤、導電性フィラー、酸化防止剤、光安定剤、重金属不活性剤、シランカップリング剤、タッキファイヤー、可塑剤、消泡剤、顔料、防錆剤、レベリング剤、分散剤、レオロジー調整剤、難燃剤、(メタ)アクリル基を有する化合物、光照射によりラジカルを発生する化合物及び界面活性剤等の添加剤を使用することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、保存安定剤を含有(添加)してもよい。保存安定剤としては、保存安定性を向上させるものであれば特に限定されないが、ホウ酸エステル化合物、燐酸、アルキルリン酸エステル、p-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸メチル等を配合してもよい。ホウ酸エステル化合物としては、例えば、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリ-n-プロピルボレート、トリイソプロピルボレート、トリ-n-ブチルボレート、トリス(2-エチルヘキシロキシ)ボラン、トリフェニルボレート、トリメトキシボロキシン等が挙げられる。また、ホウ酸エステル化合物の市販品としては、例えば、「キュアダクトL-07N」(四国化成工業株式会社製)等が挙げられる。アルキルリン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリブチルなどを使用することができるが、これらに限定されるものではない。保存安定剤は単独でも複数を混合して使用しても良い。保存安定性を考慮すると、燐酸、ホウ酸トリブチル(トリ-n-ブチルボレート)、トリメトキシボロキシン、p-トルエンスルホン酸メチルであることが好ましい。
(A)成分100質量部に対して、保存安定剤の含有量は0.01~5.0質量部が好ましい。保存安定剤の含有量が0.01質量部以上である場合は保存安定性を発現し、5.0質量部以下である場合は硬化性を維持することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化物の弾性率、流動性などの改良を目的として、保存安定性を阻害しない程度の充填剤を含有(添加)してもよい。具体的には(B)成分以外の有機質粉体、無機質粉体等が挙げられる。
前記無機質粉体の充填剤としては、ガラス、フュームドシリカ、アルミナ、マイカ、セラミックス、シリコーンゴム粉体、炭酸カルシウム、窒化アルミ、カーボン粉、カオリンクレー、乾燥粘土鉱物、乾燥珪藻土等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは、それぞれ単独で用いることも、また二種以上を混合して用いても良い。無機質粉体の充填剤の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.1~200質量部程度が好ましい。前記無機質粉体の充填剤の含有量が0.1質量部以上である場合は樹脂強度が向上し、200質量部以下である場合は塗布時の取扱性を確保できる。前記無機質粉体の充填剤の形状は球状であることが好ましく、その平均粒径は0.1~100μmの範囲のものが好ましい。前記無機質粉体の充填剤の平均粒径が0.1μm以上であることで低粘度化せず優れた作業性(塗布性、塗膜の引き伸ばし性、均一で凹凸の無い引き伸ばし塗膜の形成性など)を得る事ができ、100μm以下であることで高粘度化せず優れた作業性(塗布性、塗膜の引き伸ばし性、均一で凹凸の無い引き伸ばし塗膜の形成性など)が得られる。ここでの平均粒径とは、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定した個数積算分布における50%粒径(D50値;50%平均粒径ともいう)である。また、高粘度化せず優れた作業性(塗布性、塗膜の引き伸ばし性、均一で凹凸の無い引き伸ばし塗膜の形成性など)を得る観点から、前記無機質粉体の充填剤の最大粒径は100μm以下が好ましい。
前記フュームドシリカは、エポキシ樹脂組成物の粘度調整又は硬化物の機械的強度を向上させる目的で配合される。好ましくは、ジメチルシラン、トリメチルシラン、アルキルシラン、メタクリロキシシラン、オルガノクロロシラン、ポリジメチルシロキサン、ヘキサメチルジシラザンなどで表面処理したヒュームドシリカなどが用いられる。フュームドシリカの市販品としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R972CF、R974、R976、R976S、R9200、RX50、NAX50,NX90、RX200、RX300、R812、R812S、R8200、RY50、NY50、RY200S、RY200、RY300、R104、R106、R202、R805、R816、T805、R711、RM50、R7200等(日本アエロジル株式会社製)が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは、それぞれ単独で用いることも、また二種以上を混合して用いても良い。
(B)成分以外の有機質粉体の充填剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、架橋アクリル、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネートが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは、それぞれ単独で用いることも、また二種以上を混合して用いても良い。有機質粉体の充填剤の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.1~200質量部程度が好ましい。前記有機質粉体の充填剤の含有量が0.1質量部以上である場合は樹脂強度が向上し、200質量部以下である場合は塗布時の取扱性を確保できる。前記有機質粉体の充填剤の形状は球状であることが好ましく、その平均粒径は0.1~100μmの範囲のものが好ましい。前記有機質粉体の充填剤の平均粒径が0.1μm以上であることで低粘度化せず優れた作業性(塗布性、塗膜の引き伸ばし性、均一で凹凸の無い引き伸ばし塗膜の形成性など)を得る事ができ、100μm以下であることで高粘度化せず優れた作業性(塗布性、塗膜の引き伸ばし性、均一で凹凸の無い引き伸ばし塗膜の形成性など)が得られる。ここでの平均粒径とは、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定した個数積算分布における50%粒径(D50値;50%平均粒径ともいう)である。また、高粘度化せず優れた作業性(塗布性、塗膜の引き伸ばし性、均一で凹凸の無い引き伸ばし塗膜の形成性など)を得る観点から、前記有機質粉体の充填剤の最大粒径は100μm以下が好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、導電性フィラーを含有(添加)してもよい。例えば金、銀、白金、ニッケル、パラジウム及び有機ポリマー粒子に金属薄膜を被覆したメッキ粒子が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは、それぞれ単独で用いることも、また二種以上を混合して用いても良い。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、酸化防止剤を含有(添加)してもよい。酸化防止剤としては、例えば、β-ナフトキノン、2-メトキシ-1,4-ナフトキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノ-tert-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノン等のキノン系化合物;フェノチアジン、2,2-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、カテコール、tert-ブチルカテコール、2-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-〔1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル〕-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、3,9-ビス〔2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニロキシ〕-1,1-ジメチルエチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、チオジエチレンビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′-ヘキサン-1,6-ジイルビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド〕、ベンゼンプロパン酸,3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ,C7-C9側鎖アルキルエステル、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル〕フォスフォネート、3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a”-(メシチレン-2,4,6-トリル)トリ-p-クレゾール、カルシウムジエチルビス〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル〕フォスフォネート、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕、ヘキサメチレンビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス〔(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル〕-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、N-フェニルベンゼンアミンと2,4,6-トリメチルペンテンとの反応生成物、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、ピクリン酸、クエン酸等のフェノール類;トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、トリス〔2-〔〔2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサフォスフェフィン-6-イル〕オキシ〕エチル〕アミン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリートールジフォスファイト、ビス〔2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル〕エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)〔1,1-ビスフェニル〕-4,4’-ジイルビスホスフォナイト、6-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ〕-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンズ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサフォスフェフィン等のリン系化合物;ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、2-メルカプトベンズイミダゾール等のイオウ系化合物;フェノチアジン等のアミン系化合物;ラクトン系化合物;ビタミンE系化合物等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは、それぞれ単独で用いることも、また二種以上を混合して用いても良い。中でもフェノール系化合物が好適である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有(添加)してもよい。シランカップリング剤としては、例えばγ-クロロプロピルトリメトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-ユレイドプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは、それぞれ単独で用いることも、また二種以上を混合して用いても良い。シランカップリング剤(密着性付与剤)の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.05~30質量部が好ましく、更に好ましくは0.2~10質量部である。シランカップリング剤の含有量が0.05質量部以上である場合は被着体に対する密着性が向上し、30質量部以下である場合はアウトガス発生量を抑制することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(メタ)アクリル基を有する化合物を含有(添加)してもよい。(メタ)アクリル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化グリセリントリメタクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリグリセリンモノエチレンオキサイドポリアクリレート、ポリグリセリンポリエチレングリコールポリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは、それぞれ単独で用いることも、また二種以上を混合して用いても良い。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、光照射によりラジカルを発生する化合物を含有(添加)してもよい。光照射によりラジカルを発生する化合物としては、例えばベンゾイン、ベンゾインエーテルなどのベンゾイン誘導体、アントラキノンなどのキノン類、ジフエニルジスルフイドなどのスルフイド系化合物、ミヒラーケトンなどのケトン類、四臭化炭素などのハロゲン化物等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは、それぞれ単独で用いることも、また二種以上を混合して用いても良い。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、(A)成分~(C)成分の所定量を配合して、3本ロール、プラネタリーミキサー等の混合手段を使用して、好ましくは10~50℃の温度で好ましくは0.1~5時間混合することにより製造することができる。
本発明の電子部品接着のためのエポキシ樹脂組成物が好適に用いられる用途としては、電子部品接着のための、被覆剤、注型用樹脂、シール剤、ポッティング剤、接着剤、コーティング剤、ライニング剤、インキ等が挙げられる。本発明の電子部品接着のためのエポキシ樹脂組成物は、Niに対する接着力が高いことから、Ni部材が使用される電子部品の接着などに適している。例えばカメラモジュール部品等の電子部品接着に使用でき、中でもアクチュエータの電子部品接着や筐体と基板の電子部品接着等に使用することができるがこれらに限定されるものではない。
本発明の電子部品接着のためのエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物を提供するものである。かかる硬化物は、Ni部材に対する高い接着強度により、導通性の観点からNi部材(Niメッキ部材を含む。以下同様)が用いられるカメラモジュールの各構成部品を強固に接合し得ることで、携帯に伴う衝撃や振動に耐えうるカメラモジュールを提供できる。また上記硬化物は、Ni部材に対する高い接着強度により、導通性の観点からNiメッキ部材が用いられるアクチュエータの各構成部材を強固に接合し得ることで、アクチュエータの複雑な動作に伴う衝撃や振動や摩擦や荷重に耐えうるアクチュエータを提供できる。また上記硬化物は、Ni部材に対する高い接着強度により、導通性の観点からNiメッキ部材が用いられる筐体と基板を強固に接合し得ることで、電子部品が受ける搬送時や取扱の際に生じ得る各種の衝撃や振動や摩擦や荷重に耐えうる基板内臓の電子部品を提供できる。
本発明の電子部品接着のためのエポキシ樹脂組成物により(各構成部品を)貼り合せてなるカメラモジュールを提供するものである。当該エポキシ樹脂組成物によるNi部材に対する高い接着強度により、導通性の観点からNi部材(Niメッキ部材を含む。以下同様)が用いられるカメラモジュールにおいて、携帯に伴う衝撃や振動に耐えうることができる。また本発明の電子部品接着のためのエポキシ樹脂組成物により(各構成部品を)貼り合せてなるアクチュエータを提供できる。当該エポキシ樹脂組成物によるNi部材に対する高い接着強度により、導通性の観点からNi部材が用いられるアクチュエータの複雑な動作に伴う衝撃や振動や摩擦や荷重に耐えうることができる。また本発明の電子部品接着のためのエポキシ樹脂組成物により筐体と基板を貼り合せてなる基板内臓の電子部品を提供できる。当該エポキシ樹脂組成物によるNi部材に対する高い接着強度により、導通性の観点からNi部材が用いられる当該電子部品に対して搬送時や取扱の際に生じ得る各種の衝撃や振動や摩擦や荷重に耐えうることができる。
以下に実施例を挙げて本発明の詳細を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<エポキシ樹脂組成物の調製>
各成分を表1に示す重量部で採取し、25℃環境下でプラネタリーミキサーで60分混合し、エポキシ樹脂組成物を調製し、各種物性に関して次のようにして測定した。
<(A)成分>
a1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂50質量%、ビスフェノールF型エポキシ樹脂50質量%からなるエポキシ樹脂組成物(EXA-835LV、エポキシ当量160~170g/eq、DIC株式会社製)
a2:ポリブタジエンゴム分散ビスフェノールF型エポキシ樹脂のエポキシ樹脂成分(MX-139、エポキシ樹脂成分67質量%、株式会社カネカ製)。
<(B)成分>
b1:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体のスチレン系フィラー(ファインパールPB-3006E、平均粒径0.6μm球状フィラー、Tg=90~110℃、松浦株式会社製)。
<(B)成分の比較例>
b’1:ポリブタジエンゴム分散ビスフェノールF型エポキシ樹脂のゴム成分(MX-139、ゴム成分33質量%、平均粒径0.1μm球状フィラー、Tg=-105~-75℃、株式会社カネカ製)
b’2:スチレンブタジエンゴム(平均粒径0.05~0.15μm球状フィラー、Tg=-75~-44℃)
b’3:スチレンブタジエンゴム(平均粒径0.1~0.3μm球状フィラー、Tg=-75~-44℃)
b’4:アクリルゴム(平均粒径0.5μm球状フィラー、Tg=-20~-10℃)
b’5:アクリルゴム(平均粒径0.3~0.4μm球状フィラー、Tg=-20~-10℃)
b’6:シリコーンゴム(平均粒径0.4μm球状フィラー、Tg=-125~-112℃)
b’7:アクリル系コアシェルゴム(F-351、平均粒径0.3μm球状フィラー、Tg=70℃、アイカ工業株式会社製)。
<(C)成分>
c1:アミンアダクト系潜在性硬化剤(FXR-1081、株式会社T&K TOKA製)
c2:イミダゾールアダクト系潜在性硬化剤(PN-31J、味の素ファインテクノ株式会社製)
c3:1級4官能脂肪族チオール硬化剤(PEMP2-20P、SC有機化学株式会社製)。
<無機質粉体の充填剤>
d1:50%平均粒径:3.5μm、最大粒径:32μmのアルミナ粉(AX3-32、マイクロン社製)
d2:50%平均粒径:0.55μm、比表面積:6.0m/gのシリカ粉(SO-C2、株式会社アドマテックス製)。
表1-1には、実施例、比較例において使用したエポキシ樹脂組成物の各成分(原料)の含有量(質量部)を示す。また、表1-2の実施例、比較例において使用した試験方法は下記の通りである。得られた試験結果を表1-2に示す。
<粘度測定>
0.5mlのエポキシ樹脂組成物を採取して、測定用カップに吐出した。以下の条件で、EHD型粘度計(東機産業株式会社製)にて粘度[Pa・s]を測定した。
[測定条件]
コーンローター:3°×R14
回転速度:1rpm
測定時間:3分
測定温度:25℃。
<ガラス転移点測定>
エポキシ樹脂組成物を80℃雰囲気で30分硬化させ、直径5mmの円筒形硬化物を作製し、長さ10mmに切断した。TMA(熱機械分析装置)により昇温速度10℃/minで昇温して測定を行った。「線膨張率(α1)(ppm/℃)」、「線膨張率(α2)(ppm/℃)」を測定し、α1とα2の接線の交点により「ガラス転移点(℃)」を測定した。
<引張せん断接着強さ測定>
試験片(Niメッキ板:25mm×100mm×1.6mm、SPCC-SD(冷間圧延鋼板の表面を通常仕上げ(ダル仕上げ)したもの) Niメッキ5μm 株式会社テストピース製)同士を以下の手順で接着した。エポキシ樹脂組成物を一方の試験片の端部に塗布して均一に延ばした後、幅方向に25mm、長さ方向に10mmの接着面になるようにもう一方の試験片を貼り合わせ、治具で固定した状態で熱風乾燥炉により80℃にて30分間加熱を行い、硬化させた。試験片の温度が室温に戻った後、準備した試験片を引張り試験機により引張速度10mm/minにて測定し、「引張せん断接着強さ」(MPa)とした。試験の詳細についてはJISK6850に従う。
[評価基準]
13MPa以上:優れている、13MPa未満10MPa以上:やや優れている、10MPa未満:劣っている。
<T型剥離接着強さ測定>
L字型に曲げた試験片同士(Niメッキ板:25mm×150mm×0.5mm、ただし長さ100mmの地点でL字型に曲げたもの、SPCC-SD Niメッキ5μm 株式会社テストピース製)を以下の手順で接着した。エポキシ樹脂組成物を一方の試験片の長さ100mmの面に塗布して均一に延ばした後、もう一方の試験片をT字型になるように貼り合わせ、治具で固定した状態で、熱風乾燥炉により80℃にて30分間加熱を行い、硬化させた。試験片の温度が室温に戻った後、準備した試験片を引張り試験機により引張速度50mm/minにて測定し「T型剥離接着強さ」(N/m)とした。試験の詳細についてはJISK6854-3に従う。
[評価基準]
500N/m以上:優れている、500N/m未満400N/m以上:やや優れている、400N/m未満:劣っている。
Figure 0007152671000001
Figure 0007152671000002
表1-1~表1-2の結果から、実施例1~6によれば、本発明は、Ni部材に対し高い接着強度を有するエポキシ樹脂組成物であることがわかる。通常、T型剥離接着強さが強い樹脂は引張せん断接着強さが弱いという一般的な傾向がある。しかるに、本発明では、T型剥離接着強さと引張せん断接着強さの両方に強いエポキシ樹脂組成物を提供できる点で優れていることがわかる。詳しくは、本発明の実施例1~6では、Ni部材に対し、いずれも引張せん断接着強さ10MPa以上とT型剥離接着強さ400N/m以上の両方満たすことができる点で最適である(優れている)ことがわかる。
表1-2の試験結果から、比較例1、2は、本発明の(B)成分が含まれていないが、比較例1ではT型剥離接着強さが劣り、比較例2では引張りせん断接着強さとT型剥離接着強さが劣る結果となった。また比較例3~9では量一定(15質量部)として、本発明の(B)成分(b1成分)ではないフィラーb’1~b’7成分を使用しているが、何れもb1成分を使用した実施例1と比較して、引張りせん断接着強さ、T型剥離接着強さが劣ることが分かった。詳しくは、本発明の要件を満足しない比較例1~9では、Ni部材に対し、いずれも引張せん断接着強さ10MPa以上とT型剥離接着強さ400N/m以上の両方満たすことができないことがわかる。
また表1-1~表1-2の結果から、実施例1~3と比較例2~9は、いずれもアミンアダクト系の硬化剤(c1成分)を用いているが、硬化物のガラス転移点は、(B)成分が含まれていない比較例2よりも(B)成分が含まれている実施例1~3の方が高い結果となり、(B)成分が含まれていない比較例2よりも(B)成分以外のフィラーが含まれている比較例3~9の方が低い結果となった。同様に、実施例4~6と比較例1は、いずれもイミダゾールアダクト系の硬化剤(c2成分)とチオール系の硬化剤(c3成分)を同じ配合比率で使用しいているが、硬化物のガラス転移点は、(B)成分が含まれていない比較例1よりも(B)成分が含まれている実施例4~6の方が高い結果となった。
なお、エポキシ樹脂組成物の粘度に関しては、上記したガラス転移点測定、引張せん断接着強さ測定、T型剥離接着強さ測定及び下記のLCP引張せん断接着強さ測定において、各実施例及び比較例のエポキシ樹脂組成物を使用して、一方の試験片の長さ100mmの面に塗布して均一に延ばすといったような実際の使用形態に近い操作を行っても影響がなかった。そのため、エポキシ樹脂組成物の粘度測定に関しては、実施例1~6と比較例1の測定を行うにとどめた。表1-1~表1-2の結果から、エポキシ樹脂組成物の粘度は、(B)成分以外の無機質粉体の充填剤d1とd2成分の種類とその含有量の違いにより、含有量の大きいd1成分を使用した方が、粘度が高くなることがわかった。更に(B)成分も充填剤なので、その含有量の増加に伴い粘度が高まることもわかった。
さらに、実施例4~6と比較例1については、追加で以下のLCP引張せん断試験を実施した。表2の実施例、比較例において使用した試験方法は下記の通りである。得られた試験結果を表2に示す。
<LCP引張せん断接着強さ測定>
試験片にLCP(LCP(液晶ポリマー)板:25mm×100mm×3mm、VECTRA E130i ポリプラスチック株式会社製)を用いて上記引張りせん断接着強さ測定と同様に実施した。
Figure 0007152671000003
表1-1のエポキシ樹脂組成物の成分構成および表2の試験結果から、実施例4~6と比較例1のエポキシ樹脂組成物は、いずれもイミダゾールアダクト系の硬化剤(c2成分)とチオール系の硬化剤(c3成分)を同じ配合比率で使用しているが、実施例4~6の硬化物では、(B)成分が含まれることにより、(B)成分が含まれていない比較例1の硬化物よりもLCP(液晶ポリマー)部材に対して高い接着力(2倍程度)を有することが分かった。
本発明の電子部品接着のためのエポキシ樹脂組成物は、Niに対し高い接着力を有するエポキシ樹脂組成物であるので、Ni部材が用いられる用途に好適に用いられる。例えばカメラモジュール部品等の電子部品接着に使用でき、中でもアクチュエータの電子部品接着や筐体と基板の電子部品接着等に使用することができる。その他にも被覆剤、注型用樹脂、シール剤、ポッティング剤、接着剤、コーティング剤等として極めて有効であり、広い分野に適用可能であることから産業上有用である。

Claims (6)

  1. 下記の(A)~(C)成分を含有する電子部品接着のためのエポキシ樹脂組成物:
    (A)成分:エポキシ基を有する化合物
    (B)成分:ガラス転移点が50℃以上のポリスチレン系フィラー
    (C)成分:硬化剤または潜在性硬化剤として、脂肪族チオール化合物およびイミダゾールアダクト化合物
  2. 前記(B)成分がスチレン-ジビニルベンゼン共重合体のポリスチレン系フィラーである、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. 前記電子部品がカメラモジュールである、請求項1または2の何れか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 前記(A)成分100質量部に対して、(B)成分1.5~120質量部含有し、(C)成分0.3~95質量部含有する、請求項1~の何れか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 請求項1~の何れか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
  6. 請求項1~の何れか1項に記載のエポキシ樹脂組成物により貼り合わせてなるカメラモジュール。
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