図1は、本発明を適用したプレス成形装置全体の概略構造を示している。本実施形態のプレス成形装置10は、ガラスプリフォーム95(図3参照)をプレス成形してガラス製の光学素子であるガラスレンズ90(図9参照)を製造するものである。図1に示すように、プレス成形装置10は、供給部11、加熱部12、1次プレス部13、徐冷部14、2次プレス部15、分解組立装置(分解組立部)16を備えており、成形型ユニット17を順次移送しながら加工を行う。供給部11から2次プレス部15までは、組立状態の成形型ユニット17(図3、図4参照)を一連の移送ラインで移送する。分解組立装置16では、成形型ユニット17の分解と組み立てを行う(図6から図9参照)。
より詳しくは、供給部11は、分解組立装置16で組み立てられた成形型ユニット17を受け取って移送ライン上に供給する部分である。加熱部12は、成形対象であるガラスプリフォーム95を加熱して軟化させる部分である。1次プレス部13は、軟化したガラスプリフォーム95を後述する上型30と下型40(図2以降参照)によってプレス成形する部分である。徐冷部14は、1次プレス部13でのプレス成形後のガラスレンズ90を含む成形型ユニット17を冷却する部分である。2次プレス部15は、徐冷部14を経て成形型ユニット17の内部が所定以下の温度になった状態で、上型30と下型40によってガラスレンズ90に追加のプレス加工を行う部分である。分解組立装置16は、成形型ユニット17を部分的に分解して成形後のガラスレンズ90を取り出すと共に、次に成形するガラスプリフォーム95を上型30と下型40の間にセットして成形型ユニット17を組み立てる部分である。供給部11から2次プレス部15までの移送ラインや分解組立装置16は、図示を省略するチャンバー内に設置されており、チャンバー内を不活性ガスで満たして酸素濃度を所定値以下にした状態で成形加工を行うことができる。
図3、図4、図6から図9に示すように、成形型ユニット17は、各々が胴型20と上型30と下型40で構成される成形型18を複数備え、この複数個の成形型18を成形型ホルダ50によって保持したものである。本実施形態では、1つの成形型ホルダ50が3つの成形型18を保持する(図1参照)。すなわち、成形型ユニット17は、1つの成形型ホルダ50と3つの成形型18により構成されている。
1つの成形型18で1つのガラスレンズ90が成形される。図1及び図2に示す基準軸Xは、成形型18により成形されるガラスレンズ90の光軸に一致するものである。上型30と下型40は、それぞれの中心軸が基準軸Xと一致するように胴型20に支持された状態で、ガラスプリフォーム95を間に挟んでプレスしてガラスレンズ90を製造する。ガラスレンズ90は非球面レンズであり、図9に示すように、レンズ面として凹面91と凸面92を表裏に有する。
プレス成形装置10における供給部11から2次プレス部15までの移送ラインと分解組立装置16では、各成形型18における基準軸Xが上下方向に向くようにして、成形型ユニット17が設置される。以下の説明では、基準軸Xに沿う方向を上下方向とし、基準軸Xに対して垂直な方向を径方向とする。
図2を参照して各成形型18の詳細を説明する。図2では1つの成形型18を示しているが、他の成形型18も同じ構造になっている。
成形型18を構成する上型30と下型40は、高温下でのプレス加工における破損や劣化が生じにくいように、耐熱性及び耐久性に優れる材質で形成されている。具体的には、炭化ケイ素(SiC)や窒化ケイ素(Si3N4)のようなセラミックス、あるいは超硬合金のような金属で形成されている。また、成形型ホルダ50も同様に、耐熱性及び耐久性に優れる材質で形成されている。
胴型20は、基準軸Xを囲む筒状の外胴型(第1胴型)21と、外胴型21の内側に位置する筒状の内胴型(第2胴型)22とで構成された二重筒構造である。上型30及び下型40と同様に、胴型20も耐熱性及び耐久性に優れる材質で形成されている。特に、外胴型21と内胴型22は互いに熱膨張係数が異なる材質からなり、外胴型21を構成する材質の熱膨張係数は、内胴型22を構成する材質の熱膨張係数よりも大きい。一例として、外胴型21はアルミナ(Al2O3)で形成され、内胴型22は炭化ケイ素(SiC)で形成される。
外胴型21は、外径の大きさが一定の円筒面である外周面21aと、内径の大きさが一定の円筒面である内周面21bとを有している。外周面21aと内周面21bはそれぞれ、基準軸Xを中心とする円筒状の面である。外胴型21の上端と下端には、基準軸Xに対して垂直な環状の上端面21Uと下端面21Dが形成されている。
内胴型22は、部分的に径を異ならせている。内胴型22の上端と下端には、基準軸Xに対して垂直な環状の上端面22Uと下端面22Dが形成されている。上端面22Uの外縁から下方に向けて、外径の大きさが一定の円筒面である外周面22aが形成されている。外周面22aの形成領域の下方に、外周面22aから外径方向に突出する鍔状の下端フランジ(ストッパ)23が設けられている。
内胴型22の外周面22aの外径は、外胴型21の内周面21bの内径に対応している。下端フランジ23の外径は、外胴型21の外周面21aの外径とほぼ等しい。そのため、内胴型22の外周面22aの外側に外胴型21が同心状に支持される。内周面21bと外周面22aの間には所定のクリアランスが設けられており、外胴型21と内胴型22は、内周面21bと外周面22aを摺接させて上下方向へ相対移動可能である。外胴型21は、下端面21Dが下端フランジ23の上面に当接することで、内胴型22に対する上下方向位置が定められる。
上述のように、外胴型21と内胴型22のそれぞれの材質は熱膨張係数が異なっている。そして、外胴型21における上端面21Uから下端面21Dまでの上下方向の長さH1(図2)と、内胴型22における上端面22Uから下端フランジ23の上面までの上下方向の長さH2(図2)は、成形型18の加熱状態によって寸法関係が変化する。成形型18を加熱していない常温の状態では、熱膨張係数の小さい内胴型22における長さH2の方が、熱膨張係数の大きい外胴型21における長さH1よりも僅かに大きい(H1<H2)。外胴型21の下端面21Dの位置は内胴型22の下端フランジ23によって定められるので、H1<H2の場合は、外胴型21の上端面21Uよりも、内胴型22の上端面22Uの方が、僅かに上方に突出した状態になる(図5(B)、図5(C)参照)。
成形型18を加熱すると、胴型20に熱膨張が生じる。このとき、熱膨張係数の大きい外胴型21の方が、熱膨張係数の小さい内胴型22よりも熱変形量が大きい。そして、ガラスレンズ90を形成するガラス材料のガラス転移温度(転移点)を超えてガラス材料が軟化する高温域では、長さH1が長さH2よりも僅かに大きい(H1>H2)関係になる。すなわち、内胴型22の上端面22Uよりも、外胴型21の上端面21Uの方が、僅かに上方に突出する(図5(A))。
この高温域から成形型18を冷却すると、胴型20に熱収縮が生じる。熱膨張係数の大きい外胴型21の方が熱変形量が大きく、ガラスレンズ90を形成するガラス材料が半硬化する降下温度域(ガラス材料の転移点近傍の温度。例えば500℃程度)で、長さH2が長さH1よりも大きい(H1<H2)関係になる。これに伴い、上端面21Uよりも上端面22Uの方が僅かに上方に突出する状態に戻る(図5(B)、図5(C)参照)。
内胴型22の内側には型ガイド孔24が形成されている。型ガイド孔24は、内胴型22を上下方向に貫通して上下に開口している。型ガイド孔24は、上方から順に、上型制限部25、上型ガイド部26、下型ガイド部27を有している。上型制限部25と上型ガイド部26と下型ガイド部27のそれぞれの内周面は、互いに内径の大きさが異なっている。上型ガイド部26の内径が最も小さく、上型制限部25の内径が最も大きく、下型ガイド部27の内径は上型ガイド部26の内径と上型制限部25の内径の間の大きさである。上型制限部25の下端部分(上型ガイド部26との境界部分)には、内胴型22の径方向に延びる上向きの上型規制面25aが形成されている。下型ガイド部27の上端部分(上型ガイド部26との境界部分)には、内胴型22の径方向に延びる下向きのレンズ規制面27aが形成されている。
内胴型22の上端面22Uは、上型制限部25の上端開口部分の周囲に形成された環状の面である。内胴型22の下端面22Dは、下型ガイド部27の下端開口部分の周囲に形成された環状の面であり、下端面22Dの一部が下端フランジ23の下面を構成している。また、下型ガイド部27の下端側の一部には、下端面22Dから離れて上方に進むにつれて内径を小さくする円錐状のテーパ面27bが形成されている。
上型30は、上下方向に伸びる軸部31と、軸部31の上部に位置する鍔状の大径部32と、大径部32から上方に突出する突出部33とを有する。軸部31は基準軸Xを中心とする円柱形状をなし、下方を向く先端に成形面34が形成されている。大径部32は、軸部31と同軸上に位置し、軸部31よりも大径の円柱形状である。突出部33は、軸部31及び大径部32と同軸上に位置し、軸部31よりも大径で大径部32よりも小径の円柱形状である。成形面34は、ガラスレンズ90の凹面91に対応する形状の凸状の面である。軸部31と大径部32の境界部分には、上型30の径方向に延びる、環状で下向きの規制面35が形成されている。
上型30の軸部31は、内胴型22の型ガイド孔24に対して上方から挿入され、この挿入状態で上下方向へ摺動可能に案内される。軸部31の外径が上型ガイド部26の内径に対応し、大径部32の外径が上型制限部25の内径に対応する。軸部31と上型ガイド部26の間の径方向のクリアランスは極めて小さく(例えば数μm)、内胴型22によって上型30の径方向位置及び角度(基準軸Xとの平行度)が精密に決められる。内胴型22に対して上型30は、規制面35が上型規制面25aに当接する位置まで挿入することができ、当該位置よりも下方への上型30の移動は規制される(図8、図9参照)。この状態で、突出部33が内胴型22の上端面22Uから上方に突出する。
下型40は、上下方向に伸びる軸部41と、軸部41の下部に位置する鍔状の大径部42とを有する。軸部41は基準軸Xを中心とする円柱形状をなし、上方を向く先端側に成形面43が形成されている。大径部42は、軸部41と同軸上に位置し、軸部41よりも大径で、内胴型22の外周面22aよりも小径の円柱形状である。成形面43は、ガラスレンズ90の凸面92に対応する形状の凹状の面である。軸部41と大径部42の境界部分には、下型40の径方向に延びる、環状で上向きの規制面44が形成されている。
下型40の軸部41は、胴型20の型ガイド孔24に対して下方から挿入され、この挿入状態で上下方向へ摺動可能に案内される。軸部41の外径が下型ガイド部27(テーパ面27bを除く部分)の内径に対応する。軸部41と下型ガイド部27の間の径方向のクリアランスは極めて小さく(例えば数μm)、内胴型22によって下型40の径方向位置及び角度(基準軸Xとの平行度)が精密に決められる。内胴型22に対して下型40は、規制面44が下端面22Dに当接する位置まで挿入することができ、当該位置よりも上方への下型40の移動は規制される(図3、図4、図6、図7参照)。この状態で、大径部42が内胴型22の下端面22Dから下方に突出する。大径部42の外径は内胴型22における下端フランジ23の外径よりも所定量小さく、規制面44が下端面22Dに当接する状態で、下端面22Dの外径側の周縁部(下端フランジ23の下面)には、規制面44が当接しない環状の領域が存在する。
型ガイド孔24に対して上方から軸部31を挿入し、型ガイド孔24に対して下方から軸部41を挿入することにより、胴型20に対して上型30と下型40が組み合わされて成形型18が構成される。型ガイド孔24内に軸部31と軸部41を挿入した状態で、成形面34と成形面43が上下方向に対向する。
続いて、各成形型18を保持する成形型ホルダ50について説明する。図1に示すように、成形型ホルダ50は、外周部分に8つの平面部55を有する多角柱形状の胴体内に、上下方向へ貫通する3つの収容孔51を有しており、各収容孔51内に1つの成形型18を挿入保持可能である。成形型ホルダ50を図1のように上面視すると、3つの収容孔51は互いに等間隔に配置されている。すなわち、3つの収容孔51は、上面視で正三角形の各頂点と中心に各々の中心軸(成形型18における基準軸X)が位置するように配置されている。3つの収容孔51は全て同じ形状及び寸法である。収容孔51の下端側には、内径方向へ環状に突設されて開口径を小さくした胴型規制部52が形成されている(図2参照)。
成形型ホルダ50には、胴型規制部52よりも上方に通気孔54が形成されている。通気孔54は、各収容孔51の内面に開口し、成形型ホルダ50の外面に連通している。収容孔51の内面には、通気孔54の開口部分の周囲に環状溝54aが形成されている(図2参照)。成形型ホルダ50内に胴型20を保持した状態で、外胴型21に形成した通気孔21cと、内胴型22に形成した通気孔22bとが、通気孔54に通じる(図3、図4、図6から図9参照)。通気孔54、通気孔21c、通気孔22bはそれぞれ、基準軸Xを中心とする周方向に位置を異ならせて複数設けられている。環状溝54aは周方向に連続して環状に形成されており、外胴型21の周方向位置に関わらず、通気孔54と通気孔21cが常に通じるようになっている。また、通気孔22bの外径側には周方向に連続する環状溝22cが形成されており、外胴型21と内胴型22の周方向の相対位置に関わらず、通気孔21cと通気孔22bが常に通じるようになっている。
収容孔51は、胴型規制部52と環状溝54aの形成箇所を除いて、内径サイズが一定の円筒状の内面を有している。胴型規制部52の上面として、成形型ホルダ50の径方向に延びる胴型対向面53が形成されている。胴型対向面53は、上方を向く環状の面である。
それぞれの成形型18における胴型20は、成形型ホルダ50の収容孔51に対して上方から上下方向へ摺動可能に挿入される。収容孔51と胴型20(外胴型21の外周面21aと内胴型22の下端フランジ23)の間の径方向のクリアランスは、胴型20(内胴型22の型ガイド孔24)に対する上型30(軸部31)及び下型40(軸部41)の径方向のクリアランスよりも大きい(例えば数十μm)。胴型20は、内胴型22の下端面22D(下型40の規制面44が当接しない外径側の周縁領域)が胴型対向面53に当接する位置まで収容孔51に挿入することができ、当該位置よりも下方への胴型20の移動は規制される(図7から図9参照)。下端面22Dが胴型対向面53に当接する状態で、胴型20の上端(外胴型21の上端面21U、内胴型22の上端面22U)が収容孔51から上方へ突出する。
成形型ホルダ50の胴型規制部52は、下方への胴型20の通過を許さず、且つ上下方向への下型40の大径部42の通過を許す内径を備えている。すなわち、胴型20における外胴型21や下端フランジ23の外径は胴型規制部52の内径よりも大きく、大径部42の外径は胴型規制部52の内径よりも小さい。胴型規制部52と大径部42の間の径方向のクリアランスは、下型ガイド部27と軸部41の間のクリアランスよりも大きい(例えば数十μm)。従って、下型40は、軸部41が型ガイド孔24の下型ガイド部27に挿入された状態で、大径部42の外面と胴型規制部52の内面の当接による干渉を受けることなく、胴型20によって径方向に位置決めすることができる。
大径部42は胴型規制部52よりも上下方向の厚みが大きい。そのため、図3、図4及び図6のように、下型40(大径部42)の下面位置が成形型ホルダ50(胴型規制部52)の下面位置と一致する(面一になる)状態では、規制面44が胴型対向面53よりも上方に位置する。
プレス成形装置10は、全体的な制御を統括する制御回路(図示略)を備える。図3から図5を参照して、制御回路の制御下でのプレス成形装置10による加工を説明する。
供給部11から2次プレス部15までの移送ライン上では、成形型ユニット17の各成形型18は、上型30の軸部31と下型40の軸部41をそれぞれ胴型20(内胴型22)の型ガイド孔24内に挿入させている。より詳しくは、成形型ユニット17は、複数の下型40の下面と成形型ホルダ50の下面とが略面一になるように型受け台80上に載置されており、胴型20と下型40と成形型ホルダ50は、図3及び図4に示す位置関係になっている。すなわち、大径部42と胴型規制部52の上下方向の厚みの差によって、下型40の規制面44が成形型ホルダ50の胴型対向面53よりも上方に位置している。これに応じて、胴型20における内胴型22の下端面22Dは、規制面44に当接し、胴型対向面53から上方に離間している。また、胴型20は内胴型22の外側に外胴型21を支持した状態にあり、下端面21Dが下端フランジ23の上面に当接して外胴型21と内胴型22の上下方向の相対位置が定まっている。
供給部11から2次プレス部15までの移送ライン上では、搬送装置が成形型ホルダ50を保持して、成形型ユニット17の搬送や位置決めを行う。成形型ホルダ50のうち平面部55を保持することで、搬送装置は成形型ホルダ50の安定した搬送や高精度な位置決めを行うことができる。
成形型ユニット17が供給部11に搬送された段階では、各成形型18において、上型30の成形面34と下型40の成形面43の間にガラスプリフォーム95が配置されている(図3参照)。ガラスプリフォーム95の厚みに応じて、後述するプレス後の状態(図4)よりも、上型30が胴型20に対して上方に突出している。また、供給部11での成形型ユニット17は、外胴型21における上下方向の長さH1(図2)と内胴型22における上下方向の長さH2(図2)の関係がH1<H2である。よって、内胴型22の上端面22Uが、外胴型21の上端面21Uよりも上方に突出している。
加熱部12では、ガラスプリフォーム95のガラス転移温度よりも高い温度まで加熱して、ガラスプリフォーム95を軟化させる。この加熱に伴う外胴型21の熱膨張により、外胴型21における上下方向の長さH1(図2)と内胴型22における上下方向の長さH2(図2)の関係がH1>H2になる。すなわち、外胴型21の上端面21Uが内胴型22の上端面22Uよりも僅かに上方に突出する(図5(A)参照)。
続いて、ガラスプリフォーム95が軟化した高温状態で、1次プレス部13において1次プレス加工を行う。図3は1次プレス部13での1次プレス加工前、図4は1次プレス加工後を示しており、図5(A)は図4の一部を拡大したものである。プレス加工の際には、固定機構81によって成形型ホルダ50を側方から保持して固定する。固定機構81は、成形型ホルダ50の側部を挟むクランプ部(図3及び図4に表れている部分)と、クランプ部を成形型ホルダ50に押し付ける力を付与するクランプ駆動部(図示略)とを備えている。クランプ部は平面部55に当接しており、成形型ホルダ50を安定して保持することができる。
図3及び図4に示すように、1次プレス部13には、型受け台80の上方にプレス板(押圧部)82が設けられている。3つの成形型18に対応する3つのプレス板82が設けられており、各プレス板82には、各成形型18に対応する位置に貫通孔82aが形成されている。貫通孔82aの内径は、上型30の突出部33の外径よりも大きく、大径部32の外径よりも小さい。そのため、貫通孔82a内に突出部33を進入させて、プレス板82の下面を大径部32に当接させることができる。さらに、プレス板82の下面は、各胴型20を構成する外胴型21の上端面21Uと内胴型22の上端面22Uの両方に対向する面積を有する。3つのプレス板82は、不図示のプレス部材を介して、昇降機構83によってまとめて上下方向へ移動される。昇降機構83は、周知のピストンやシリンダやアクチュエータ等で構成されており、詳細の図示及び説明を省略する。制御回路が昇降機構83の動作を制御することによって、プレス板82によるプレス速度やプレス圧やプレス量等が適宜調整される。プレス時に、成形型18内のガス等が、胴型20の通気孔21c、22bと成形型ホルダ50の通気孔54を通して、外部に排出される。
図3は、加熱部12で加熱された成形型ユニット17が、加熱による高温状態を保ったまま1次プレス部13に移送された状態を示している。この状態で制御回路により1次プレス開始が指示されると、昇降機構83が駆動されてプレス板82を下方に移動させる。すると、プレス板82の下面が、各上型30の大径部32の上面に当接する。プレス板82の下方への移動を継続すると、プレス板82の下動が大径部32を介して上型30に伝達されて、上型30が下方に押圧移動される。図4に示すように、上型30の軸部31が下方に移動すると、成形面34が下型40の成形面43に接近して、ガラスプリフォーム95をプレスする。これにより、加熱で軟化した状態のガラスプリフォーム95が変形され、上型30の成形面34と下型40の成形面43によってガラスレンズ90の凹面91と凸面92が形成される。
このとき、下型40の規制面44と胴型20(内胴型22)の下端面22Dが当接し、下端面22Dは成形型ホルダ50の胴型対向面53から離間している。つまり、型受け台80により支持される下型40が胴型20の上下方向位置を定めており、各成形型18の上下方向の位置管理に成形型ホルダ50が関与しない。これにより、複数の成形型18がそれぞれ、他の成形型18や成形型ホルダ50の干渉を受けずに、個別に高い精度でプレス加工を行うことができる。
プレス板82が上型30を押圧しながら下方へ所定量移動すると、プレス板82が胴型20に当接して移動が規制される。より詳しくは、図5(A)に示すように、加熱による熱膨張によって内胴型22の上端面22Uよりも上方に突出している外胴型21の上端面21Uに対して、プレス板82の下面が当接する。外胴型21は、下端面21Dが下端フランジ23の上面に当接して、内胴型22に対する下方への移動が規制されている。内胴型22は、下端面22Dと規制面44との当接によって、下型40に対する下方への移動が規制されている。下型40は、型受け台80上に載置されていて下方への移動が規制されている。従って、図4及び図5(A)の状態になると、外胴型21と下型40と型受け台80を介して、プレス板82による上型30のそれ以上の押し込みが規制される。プレス板82が外胴型21の上端面21Uによる移動制限を受ける状態になったら、制御回路が昇降機構83の駆動を停止させる。1次プレス部13での昇降機構83の駆動停止制御は、プレス板82の移動量(昇降機構83の駆動量)や、昇降機構83における負荷変動等を参照して行うことができる。
以上で1次プレス部13での1次プレス加工が完了する。1次プレス加工で、ガラスレンズ90の凹面91及び凸面92の形状はほぼ完成している。図5(A)に示すように、1次プレス加工の完了時点で、上型30の大径部32は内胴型22の上型制限部25に進入しているが、上型規制面25aと規制面35の間には上下方向の隙間があり、上型30は内胴型22に対して下方に移動する余地がある。また、内胴型22の上端面22Uとプレス板82の下面との間にも隙間がある。
1次プレス部13での加工後の成形型ユニット17を徐冷部14で冷却する。ガラス転移温度よりも所定以上温度が低くガラスレンズ90が半硬化する降下温度域(ガラス材料の転移点近傍の温度。例えば500℃程度)になると、冷却に伴う外胴型21と内胴型22の熱変形量(外胴型21と内胴型22を構成する材質の熱膨張係数)の差によって、外胴型21における上下方向の長さH1(図2)と上下方向の内胴型22における長さH2(図2)の関係がH1<H2に変化する。外胴型21の下端面21Dの上下方向位置は内胴型22の下端フランジ23によって定まっている。従って、H1<H2になると、図5(B)に示すように、外胴型21の上端面21Uが、内胴型22の上端面22Uよりも僅かに下方に位置するようになる。なお、徐冷部14にはプレス板82が設けられていないが、図5(B)には、上型30の大径部32に当接する位置のプレス板82を一点鎖線で仮想的に示している。
徐冷部14での冷却の際に、上型30は、胴型20の熱収縮に追随した下方への移動を行わずに、半硬化状態のガラスレンズ90によって下方から支持されて図5(B)に示す位置を維持する。そのため、ガラスレンズ90の半硬化状態では、外胴型21の上端面21Uが上型30の大径部32の上面よりも下方まで下がり、外胴型21によるプレス板82の移動(下動)制限が解除される。また、内胴型22の上端面22Uは、上型30の大径部32の上面よりも下方、且つ外胴型21の上端面21Uよりも上方に位置する。
続いて、成形型ユニット17を2次プレス部15に移送して、2次プレス加工を行う。2次プレス加工では、図5(B)の状態から図5(C)の状態にさせる。2次プレス部15の全体構造の図示は省略しているが、2次プレス部15は、1次プレス部13と同様の構成(図3及び図4に示す型受け台80、固定機構81、プレス板82、昇降機構83等)を有している。よって、以下の2次プレス部15の説明では、1次プレス部13と同様に機能する部位を同じ名称及び符号で示す。
上述したように、徐冷部14で成形型18を所定温度以下にした状態(図5(B))では、上型30の大径部32の上面が、胴型20の上端(上端面21U及び上端面22U)よりも上方に位置している。また、胴型20内の上型規制面25aに対して、上型30の規制面35が離間している。従って、プレス板82及び上型30は、胴型20に対して下方へ移動可能である。成形型ユニット17の成形型ホルダ50を固定機構81で固定した上で、制御回路が2次プレス部15の昇降機構83を駆動させて、プレス板82を下方へ移動させる。すると、プレス板82の下面が各上型30の大径部32を押し込んで、上型30が下方へ移動する。
図5(C)に示すように、プレス板82の下面が内胴型22の上端面22Uに当接すると、それ以上の下方へのプレス板82の移動が規制される。より詳しくは、内胴型22は、下端面22Dと規制面44との当接によって、下型40に対する下方への移動が規制されており、下型40は、型受け台80によって下方への移動が規制されている。プレス板82が内胴型22の上端面22Uによる移動制限を受ける状態になったら、制御回路が昇降機構83の駆動を停止させる。2次プレス部15での昇降機構83の駆動停止制御は、プレス板82の移動量(昇降機構83の駆動量)や、昇降機構83における負荷変動等を参照して行うことができる。
2次プレス部15での2次プレス加工により、ガラスレンズ90のレンズ面の形状が仕上げられる。特に、2次プレス加工は、成形後のガラスレンズ90の面精度を確保する効果がある。
具体的には、1次プレス部13においてガラス転移温度を超える高温状態で上型30を押し込んでプレス加工を行うと、ガラスの収縮が均等でないことによる面形状不良が生じやすい。そこで、2次プレス加工として、ガラスレンズ90がある程度冷却された硬化直前の状態で上型30による押圧を僅かに行うことで、凹面91の形状不良を解消させる効果が得られる。なお、1次プレス加工時の外胴型21と内胴型22の上下方向寸法の差(H1>H2)から、2次プレス加工時の外胴型21と内胴型22の上下方向寸法の差(H1<H2)への変化量は、極めて小さい。すなわち、2次プレス加工での上型30の押し込み量は極めて小さい(例えば、1μm以下)。従って、2次プレス加工では、ガラスレンズ90や成形型18に過大な負荷をかけずに、所望の効果を得ることができる。
以上で2次プレス部15での2次プレス加工が完了する。1次プレス加工と同様に、2次プレス加工では、下型40の規制面44と胴型20(内胴型22)の下端面22Dが当接し、下端面22Dは成形型ホルダ50の胴型対向面53から離間しているので、各成形型18の上下方向の位置管理に成形型ホルダ50が関与しない。また、2次プレス加工の完了状態で、上型規制面25aと規制面35の間には上下方向の隙間があり(図5(C)参照)、プレス板82の最終的な停止位置(上型30に対する押し切り量)は、内胴型22の上端面22Uの上下方向位置によって高精度に定められる。
ところで、凹面を有するレンズの場合、凸状の成形面34に対する凹面91の食い付きが生じやすく、プレス後にガラスレンズ90が上型30に貼り付いている場合がある。図4に示すように、成形されたガラスレンズ90の外径は、内胴型22内に設けたレンズ規制面27aの内径よりも大きい。そのため、ガラスレンズ90が貼り付いた状態で上型30を上方に引き上げると、ガラスレンズ90の周縁部がレンズ規制面27aに当接して上方への移動が規制され、上型30の成形面34からガラスレンズ90を分離させることができる。上型30の引き上げによる成形面34からガラスレンズ90の分離は、後述する分解組立装置16によって行う。
2次プレス部15での2次プレス加工が完了したら、移送ラインから成形型ユニット17を取り出して分解組立装置16に移す。分解組立装置16で各成形型18を分解する段階では、ガラスレンズ90の硬化が完了している。図6から図9を参照して、分解組立装置16における成形型18の分解と組み立ての詳細を説明する。
分解組立装置16は、可動台座60と、可動台座60の上方に位置するプランジャ70と、固定機構85を備えている。可動台座60の外側には支持台86が配置されている。可動台座60は昇降機構65によって上下に移動させることができる。支持台86は、固定されていて移動しない。プランジャ70は、昇降機構75によって上下に移動させることが可能な上方昇降部74に対して、複数の圧縮バネ76を介して吊り下げて支持されている。昇降機構65と昇降機構75は、周知のピストンやシリンダやアクチュエータ等で構成されており、詳細の図示及び説明を省略する。固定機構85は、成形型ホルダ50を側方から保持して固定的に支持する。
可動台座60は、成形型ユニット17を構成する全ての下型40を同時に載置可能な載置面61を有する。載置面61の大きさは、成形型ホルダ50の外形形状よりも小さく、成形型ホルダ50の周縁部分は支持台86によって支持される。載置面61上には、各下型40に対応する位置関係で複数の吸引凹部62が形成されている。図6から図9には2つの吸引凹部62が図示されているが、各成形型ユニット17の3つの下型40に対応して、3つの吸引凹部62を備える。載置面61は、各吸引凹部62の形成箇所を除いて、水平方向に延びる平面形状になっている。
各吸引凹部62の開口の大きさは、下型40における大径部42の下面よりも小さく、載置面61上の所定位置に下型40を載置した状態では、各吸引凹部62が下型40によって覆われる。各吸引凹部62には個別に吸引通路63が接続している。各吸引通路63は真空ポンプからなる吸引源64に個別に接続している。吸引通路63と吸引源64は、3つの吸引凹部62に対応してそれぞれ3つ設けられている。各吸引源64を駆動すると、各吸引通路63を経由して各吸引凹部62に吸引力を作用させることができる。すなわち、それぞれの吸引凹部62と吸引通路63と吸引源64により、複数の下型40の下面を可動台座60の載置面61上に吸引保持する吸引手段が構成されている。
プランジャ70は、成形型ユニット17を構成する全ての胴型20に対応する数と配置の上下動部71を有する。図6から図9には2つの上下動部71が図示されているが、各成形型ユニット17の3つの胴型20に対応して、3つの上下動部71を備える。各上下動部71は、胴型20の上端面21U、22Uに当接可能な下向きの環状の当接面72を下端に有する。当接面72に囲まれる内側に、下方に向けて開口する凹部73が形成されている。
当接面72の外径は、内胴型22の上端面22Uの外径よりも大きく、当接面72の内径は、上端面22Uの内径よりも大きい。そのため、上端面22Uに当接した状態(図7から図9)で、当接面72は上型制限部25の内面よりも内径側には突出せず、且つ当接面72の外径側の一部が内胴型22の外周面22aよりも外径側に位置する。従って、プランジャ70の当接面72は、内胴型22の上端面22Uだけでなく、外胴型21の上端面21Uにも対向する。一方、当接面72は、上型30の大径部32には対向しない。
凹部73内に上型30の突出部33及び大径部32が進入可能である。図7から図9には、凹部73内に突出部33のみが進入している状態を示しているが、上型30の引き上げによって大径部32も凹部73内に進入する。凹部73と突出部33の間には径方向及び上下方向に大きなクリアランスが確保されており、突出部33は凹部73の内面に当接することなく進入する。
プランジャ70から上方へ複数のガイド軸77が突出している。各ガイド軸77は、上方昇降部74に形成したガイド孔に対して上下方向に摺動可能に挿入されている。ガイド軸77がガイド孔の案内を受けることにより、プランジャ70は、上下方向に直進移動するように支持される。各ガイド軸77は圧縮バネ76に挿通されている。各圧縮バネ76は、上端が上方昇降部74に接続し、下端がプランジャ70に接続している。昇降機構75によって上方昇降部74が上下に移動すると、複数の圧縮バネ76を介して吊り下げられたプランジャ70が、ガイド軸77で直進案内されながら上下に移動する。
各上下動部71と各ガイド軸77の内部には、吸引通路78が形成されている。各吸引通路78は真空ポンプからなる吸引源79に接続しており、各吸引通路78の端部が凹部73内に開口している。各吸引源79を駆動すると、各吸引通路78を経由して各凹部73に吸引力を作用させることができる。
固定機構85は、成形型ホルダ50の外周部を挟むクランプ部(図6から図9に表れている部分)と、クランプ部を成形型ホルダ50に押し付ける力を付与するクランプ駆動部(図示略)とを備えている。クランプ部は、成形型ホルダ50を挟持した状態で、各成形型18の基準軸Xが上下方向(鉛直方向)に向くように、成形型ユニット17の向きを高精度に定めて固定することができる。クランプ部は平面部55に当接し、成形型ホルダ50を安定して保持することができる。
プレス成形装置10の制御回路は、上述した供給部11から2次プレス部15までの各部の動作制御に加えて、分解組立装置16における、吸引源64、79や昇降機構65、75等の動作を制御する。以下の分解組立装置16における各動作は、制御回路の制御によって実行される。
2次プレス部15までの加工が完了して分解組立装置16に搬送された成形型ユニット17は、図6に示すように可動台座60及び支持台86とプランジャ70の間に配置される。可動台座60の載置面61上に成形型ユニット17が載置される。載置面61は、支持台86の上面とほぼ面一であり、成形型ホルダ50の周縁部分の下面が支持台86の上面に対向する。固定機構85が成形型ホルダ50を側方から保持して、成形型ホルダ50の位置を固定させる。
成形型ユニット17は、複数の下型40が載置面61上の複数の吸引凹部62を塞ぐように位置が定められる。図6の状態では、先に述べた1次プレス部13や2次プレス部15での工程と同様に、載置面61上に支持されている下型40の下面と成形型ホルダ50の下面とが略面一の関係になっている。そして、大径部42と胴型規制部52の上下方向への厚みの差によって、各成形型18の胴型20は、内胴型22の下端面22Dを規制面44に当接させ、下端面22Dを胴型対向面53に対して上方へ離間させている。プランジャ70は、成形型ユニット17から上方に離れた退避位置にあり、複数の上下動部71が複数の成形型18と上下に対向する位置関係にある。特に、各上下動部71の当接面72が、各胴型20の上端面22U及び上端面21Uに対向している。
図6に示すように成形型ユニット17の設置が完了したら、昇降機構75を駆動して上方昇降部74を下降させる。上方昇降部74の下降に伴って、圧縮バネ76で吊り下げられたプランジャ70が下降して成形型ユニット17に接近し、各上下動部71の当接面72が、対向関係にある各胴型20の上端面に当接する。特に、先の2次プレス部15での加工に引き続いて、内胴型22の上端面22Uが外胴型21の上端面21Uよりも僅かに上方に位置しているため、当接面72は上端面22Uに当接する。プランジャ70は、ガイド軸77が上方昇降部74のガイド孔により直進案内されるため、成形型ユニット17に対する位置ずれを生じることなく、確実に各当接面72が各胴型20における上端面22Uに当接する。
上方昇降部74がさらに下降すると、上方昇降部74とプランジャ70の間で圧縮バネ76が圧縮され、圧縮された圧縮バネ76が復元しようとして、プランジャ70を下方へ押圧する付勢力が生じる。なお、各圧縮バネ76の中心にガイド軸77が通されているため、各圧縮バネ76が圧縮する際に座屈が生じない。この圧縮バネ76からの付勢力によってプランジャ70の各上下動部71が各胴型20を下方に押し込む。すると、固定機構85によって固定されている成形型ホルダ50に対して、各成形型18が下方に移動される。より詳しくは、胴型20が成形型ホルダ50の収容孔51内を下方に移動する。このとき、上端面22Uが当接面72に当接している内胴型22が、プランジャ70からの直接の押し込みを受ける。外胴型21は、内胴型22との間の摩擦や自重によって、内胴型22に伴って下方に移動する。なお、プランジャ70による押し込みの初期段階で外胴型21が内胴型22に追随移動しない場合でも、当接面72の外縁近くの部分が上端面21Uに当接して外胴型21を押し込むため、最終的には胴型20全体が下方に移動する。胴型20は、内胴型22の下端面22Dが胴型対向面53に当接する規制位置(図7)まで成形型ホルダ50に対して下方に移動可能であり、規制位置よりも下方への移動は胴型規制部52によって規制される。外胴型21は、下端面21Dが下端フランジ23の上面に当接することで、内胴型22に対する下方への移動が規制される。
プランジャ70による各胴型20の押圧を圧縮バネ76の付勢力を用いて行っているため、複数の胴型20の位置や移動のばらつきを吸収しながら適度な負荷で確実に動作させることができる。仮に、プランジャ70と上方昇降部74を剛体で直結して一体的に移動させると、このようなばらつき吸収機能をプランジャ70が有さずに、特定の成形型18に過大な負荷が作用してしまうおそれがある。
各収容孔51内で各胴型20が下方に移動すると、内胴型22の下端面22Dが規制面44を押圧して、各下型40も成形型ホルダ50に対して下方へ移動される。成形型ホルダ50は、支持台86上に支持されていて、下方には移動しない。各下型40を介して可動台座60も下方へ押し込まれて、載置面61が成形型ホルダ50の下面から僅かに離間する(図7参照)。
各胴型20の下端面22Dが胴型対向面53に当接するまでの間は、プランジャ70側からの押圧力(付勢力)によって各成形型18及び可動台座60が下方へ移動する。下端面22Dが胴型対向面53に当接した段階で、各胴型20は成形型ホルダ50に対して下方へそれ以上移動できなくなる。各上型30は、胴型20の上型規制面25aに対する規制面35の当接によって、成形型ホルダ50に対するそれ以上の下方への移動が規制される。
プランジャ70により胴型20を押さえ付けた状態で、吸引源79を駆動して、上下動部71の凹部73内に負圧をかける。上下動部71の当接面72の内径が上型30の大径部32よりも大きいため、凹部73内に負圧がかかると、当接面72に妨げられずに上型30が上方に引き上げられる。このとき、上型30の成形面34にガラスレンズ90の凹面91が貼り付いた状態であると、上型30の上方移動によって、ガラスレンズ90のうち凹面91の外側の周縁部が、内胴型22のレンズ規制面27aに当接する。すると、上型30が上方へ移動するのに対して、ガラスレンズ90のそれ以上の上方への移動が規制され、上型30の成形面34からガラスレンズ90が分離される。従って、凸状の成形面34に対する凹面91の食い付きが生じやすくても、ガラスレンズ90を確実に上型30から取り外すことができる。
続いて、昇降機構65を駆動して可動台座60を下方へ移動させる。このとき、吸引源64を駆動して各下型40を可動台座60上に吸引保持する。胴型20及び上型30とは異なり、下型40は、大径部42が胴型規制部52の内側を上下方向に通過可能であり、成形型ホルダ50による下方への移動制限を受けない形状である。そのため、可動台座60が下方へ移動すると、載置面61に載置されている各下型40が可動台座60に追随して、成形型ホルダ50及び胴型20に対して下方へ移動する(図8参照)。この段階までに、上型30からのガラスレンズ90の分離(レンズ規制面27aを用いたガラスレンズ90の振り落とし等)が完了しており、ガラスレンズ90は、各下型40と共に下方へ移動する。図8は、各下型40の軸部41が対応する胴型20の型ガイド孔24(下型ガイド部27)から下方に離脱した直後の状態を示している。このとき、大径部42は胴型規制部52内で下方に移動して、胴型20の下端面22Dから規制面44を離間させている。
各下型40における軸部41と各胴型20における型ガイド孔24の下型ガイド部27との間のクリアランスが極めて小さいため、摺動抵抗の大きさによって、各下型40がその自重だけでは胴型20に対して下方に移動しにくい場合がある。各吸引源64を駆動して各吸引凹部62から各下型40への吸引力を作用させることにより、摺動抵抗が大きい場合でも確実に、各下型40を可動台座60に伴って下方に移動させて型ガイド孔24から離脱させることができる。
なお、可動台座60を下降させる際に、何らかの原因で下型40が可動台座60に伴って下方に移動しなかったり、下型40が載置面61上で径方向に大きく位置ずれしてしまったりした場合、当該下型40が対応する吸引凹部62を完全には塞がなくなり、吸引凹部62に外気が流入する。すると、当該吸引凹部62が下型40で完全に塞がれていた吸引状態に比べて、吸引凹部62や吸引通路63内の圧力が上昇する(外気圧に近づく)。従って、この吸引経路の圧力変化に基づいて、各下型40が可動台座60に伴って適切に下方に移動しているか否かを確認することができる。吸引凹部62から吸引源64までの複数の吸引経路上にはそれぞれ、このような圧力変化を検知可能な圧力センサが備えられている。仮にいずれかの吸引経路で所定値以上の圧力上昇が検知された場合、各胴型20及び成形型ホルダ50からの各下型40の引き抜き動作に何らかのエラーが生じたものとみなして、可動台座60の下降を停止したり、警報で報知させたりすることができる。特に、複数の下型40を個別に吸引するように吸引凹部62から吸引源64までの吸引手段が構成されているため、特定の下型40における引き抜き動作のエラーを確実に検出できる。
図8の位置から可動台座60がさらに下方に移動すると、図9に示すように、各下型40が胴型20及び成形型ホルダ50から完全に下方へ離脱する。これにより、各下型40上に載っている成形済みのガラスレンズ90が露出するので、ガラスレンズ90を取り出して搬出する。以上でプレス成形装置10における1サイクルの加工が完了する。
ガラスレンズ90の取り出し後に引き続き成形を行う場合、次の成形対象となるガラスプリフォーム95を各下型40上に載せる。そして、昇降機構65により可動台座60を上方へ移動させる。また、昇降機構75を駆動して、プランジャ70を図6に示す退避位置へ移動(上昇)させる。
可動台座60の上昇に伴い、各下型40が胴型20及び成形型ホルダ50内に進入する。このとき、型ガイド孔24の下型ガイド部27に対する軸部41の径方向位置が完全に一致していなくても、軸部41の先端がテーパ面27bに当接し、テーパ面27bがガイド面として軸部41を案内して型ガイド孔24内に確実に導くことができる。言い換えれば、テーパ面27bによって、胴型20に対して下型40を調芯させることができる。上述したように、軸部41と下型ガイド部27の間の径方向のクリアランスは極めて小さいが、当該構造により各下型40をスムーズに組み付けることができる。また、軸部41の先端側の周縁部にも、テーパ面27bに対応する面取り形状が設定されており(図2参照)、この面取り形状も各下型40のスムーズな組み付けに寄与する。
可動台座60は、各下型40の下面が成形型ホルダ50の下面と面一になる位置まで上昇される。この状態で、各下型40の軸部41が型ガイド孔24の下型ガイド部27に進入し、規制面44が胴型20の下端面22Dに当接して、各成形型18の組み立てが完了する。胴型20と上型30と下型40と成形型ホルダ50は図3に示す位置関係となる。上型30は、下型40との間にガラスプリフォーム95を挟むことにより、胴型20に対して上方に押し上げられ、上型規制面25aからの規制面35の離間量が大きくなる。このガラスプリフォーム95による上型30の押し上げ分は、上述した1次プレス部13及び2次プレス部15におけるプレス成形時に、上型30の下方への移動量となる。
こうして、分解組立装置16において成形型ユニット17が組立完了状態になる。組立完了状態の成形型ユニット17は供給部11へ搬送され、上述した一連の工程で成形加工が行われる。
以上のように、本実施形態のプレス成形装置10では、各成形型18の胴型20を外胴型21と内胴型22で構成して、外胴型21により上型30のプレス量を制限する1次プレスと、内胴型22により上型30のプレス量を制限する2次プレスとを順次行って、ガラスレンズ90を成形する。異なる温度域での2段階でプレス成形することにより、ガラスレンズ90を高精度に製造することができる。そして、熱膨張係数が異なる外胴型21と内胴型22を組み合わせるというシンプルな構成によって、胴型20による上型30のプレス量制限を段階的に変化させている。そのため、高価で複雑な構造を要さずに、2段階のプレス成形を実現できる。
特に、外胴型21と内胴型22はそれぞれ同心状に配された円筒状の部品である。外胴型21については、径方向への凹凸を有さない最もシンプルな円筒形状である。内胴型22は、外径側に突出する下端フランジ23や、内径側に突出する上型ガイド部26を有するが、いずれも基準軸X方向への型割りや切削等によって形成しやすい形状である。従って、胴型20における個々の部品形状がシンプルで製造コストが抑えられ、且つ個々の部品の強度や精度にも優れている。
内胴型22は、型ガイド孔24の内面によって上型30及び下型40を支持及び案内すると共に、下端面22Dが胴型20全体の上下方向の位置基準となっている。そのため、内胴型22は、温度変化による寸法変化を極力生じずに精度を確保することが望ましい。本実施形態では、内胴型22ではなく外胴型21を熱膨張係数が大きい設定にしている。また、内胴型22の方が外胴型21よりも径方向の肉厚が大きい。具体的には、図2に示すように、内胴型22のうち最も肉厚が小さい上型制限部25の形成部分で、外胴型21と同等の肉厚であり、内胴型22のそれ以外の部分は外胴型21よりも肉厚が大きい。従って、内胴型22の精度を確保しつつ、外胴型21の熱変形を利用して、胴型20の微量な高さ調整を実現することができる。
また、外胴型21は、内胴型22の外周面22aと下端フランジ23によって内径側と下方の位置が定められ、成形型ホルダ50の収容孔51の内面によって外径側への膨出が制限される。そのため、熱変形による外胴型21の寸法変化は、上端面21U側の上下方向位置の変化として現出しやすくなっており、上端面21Uの高さ位置を高精度に変化させることができる。
また、プレス成形装置10における分解組立装置16では、複数の成形型18の分解と組み立てを手作業によらずに機械的にまとめて行うことができ、作業効率に優れている。固定機構85により成形型ホルダ50を固定した状態で、可動台座60とプランジャ70の上下動のみで分解と組み立てが行われるため、機械的な構造が簡単で安価に得ることができる。特に、可動台座60の下降に伴って各下型40が自重で下方に移動することで各成形型18の分解が行われるので、型を精密に把持しながら型抜き方向に移動させるような高価で複雑な機構を要さない。
また、可動台座60の載置面61への吸引によって各下型40の引き抜きを補助することで、胴型20と下型40の間のクリアランスが極小であるガラスレンズ成形用の成形型18でも確実に分解することができる。吸引による各下型40の保持は、低コスト且つシンプルな構造で実現でき、各下型40の安定性向上にも寄与する。
また、内胴型22の型ガイド孔24内にレンズ規制面27aを設けている。成形後のガラスレンズ90が上型30に貼り付いている場合に、分解組立装置16の吸引源79を駆動して上型30を引き上げることで、ガラスレンズ90がレンズ規制面27aに当接して移動規制を受け、上型30からガラスレンズ90を確実に分離させることができる。なお、機械的な駆動構造によって上型30の引き上げを行わせることも可能であるが、上型30と胴型20の間のクリアランスが極めて小さいため、上型30を精密に保持しながら引き上げる保持機構が必要になる。これに対して、本実施形態の負圧による引き上げは、上型30に対する精密な保持機構を用いることなく、簡単且つ確実に上型30に引き上げ方向の力を付与できる点で優れている。
成形型ユニット17の構成としては、成形型ホルダ50の各収容孔51内に胴型規制部52を備えている。胴型規制部52は、各成形型18のうち下型40を上下方向に通過可能とさせ、下方への胴型20の通過を規制するものである。この胴型規制部52によって、各胴型20及び各上型30を成形型ホルダ50側に残した上で、可動台座60の下降に伴って各下型40を下方に離脱させるという態様の分割を実現できる。例えば、本実施形態とは異なるものとして、各成形型18の分解時に、成形型ホルダ50から取り外した複数の胴型20を個別に保持する形態では、成形型18の数だけ固定機構が必要になると共に、成形型ホルダ50から各胴型20を取り外す手間もかかる。これに対して本実施形態のように、各胴型20を移動規制する胴型規制部52を予め成形型ホルダ50に設けた上で、この成形型ホルダ50を1つの固定機構85で保持する方が、構造を簡略にできると共に手間もかからない。胴型規制部52自体は、成形型ホルダ50の製造に際して、基準軸X方向に分割する型構造による成形や、成形型ホルダ50に設けた下孔の内径を部分的に異ならせる切削加工等によって、低コストに得ることが可能な形状である。
以上のように、本実施形態のプレス成形装置は、安価な構成で効率良く確実に複数の成形型の分解組立を行うことができる。但し、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨内において様々な変更を行うことが可能である。
例えば、上記実施形態のプレス成形装置10では、移送経路上の異なる位置に設けた1次プレス部13と2次プレス部15に成形型ユニット17を順送して2段階のプレス加工を行っている。これにより効率良く加工作業を行うことができる。しかし、2段階のプレス加工を同一のプレス部で行うことも可能である。具体的には、プレス部で1次プレス加工を行った後、成形型ユニット17を徐冷部に移送して冷却する。所定温度以下まで冷却されたら、成形型ユニット17をプレス部に戻して2次プレス加工を行う。あるいは、プレス部で1次プレス加工を行った後、そのまま当該プレス部で成形型ユニット17を所定温度以下まで徐冷させ、続いて2次プレス加工を行う。上記実施形態のような順送タイプのプレス成形装置10に比して効率は低下するが、このような変形例でも成立する。すなわち、本発明の1次プレス部と2次プレス部は、異なる位置に配置された別構造である形態と、同一構造で2つのプレス部を兼用する形態のいずれも含むものである。
上記実施形態の胴型20のように、互いに円筒状をなす外胴型21と内胴型22を径方向に重ねて構成すると、製造コスト、部品強度、精度確保等の点で有利である。しかし、外胴型21や内胴型22とは異なる形態の構成部品を組み合わせて胴型を形成してもよい。
上記実施形態の成形型ユニット17は、3つの成形型18を備えているが、1つの成形型ユニットが含む成形型の数は3つに限定されず任意に選択できる。
また、上記実施形態では、3つの成形型18が、成形型ホルダ50上に均等間隔で配置されている。この構成は、プレス加工時や成形型の分解組立時に複数の成形型の間で負荷の偏りが生じにくく、重量バランス等にも優れている。しかし、複数の成形型を不均等間隔で配置した構成を選択することも可能である。
上記実施形態の成形型ホルダ50は多角柱状であるが、多角柱状以外の形状の成形型ホルダを採用することも可能である。
成形型を構成する下型については、胴型の型ガイド孔への挿入を規制されると共に、成形型ホルダの胴型規制部の内側を通過可能な大径部を有するという条件を満たしていれば、その形状等は任意に選択可能である。例えば、上記実施形態では、下型40の大径部42の規制面44が胴型20の下端面22Dに当接する関係である。これとは異なり、下型ガイド部27の下端側の一部に、内径を拡大した拡径部を追加し、この拡径部に設けた下向きの環状面(レンズ規制面27aを拡径させたような面)に対して大径部42の規制面44が当接するように構成することも可能である。
成形型を構成する上型については、胴型に対して所定位置よりも下方への移動が規制されることと、プレス成形時や成形型分解時に上方からの押圧を妨げないように胴型の上端面の少なくとも一部を露出させるという条件を満たしていれば、その形状等は任意に選択可能である。例えば、上記実施形態では、胴型20に対する上型30の下方への移動を規制する部分として、型ガイド孔24内に上型規制面25aを形成している。これとは異なり、上型制限部25を設けずに、内胴型22の上端面22Uまで上型ガイド部26と同じ内径サイズで型ガイド孔24が続くようにした上で、上端面22Uのうち内径側の一部領域に対して大径部32の規制面35が当接して下方への移動規制を受けるように構成することも可能である。この場合、常に大径部32が胴型20の上方に露出するので、これに対応して、プレス板82の下面側の構成変更や、プランジャ70の凹部73の内径拡大等を適宜行う。
上記実施形態のプレス成形装置10はガラスレンズ90を製造するものであるが、レンズ以外のガラス製光学素子(例えばプリズム等)を製造する成形装置に本発明を適用することも可能である。