JP4549820B2 - モールドプレス成形型及びその製造方法、並びに光学素子の製造方法 - Google Patents
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Description
さらに、携帯端末用の小型撮像機器などに用いられる光学素子は、小型化の傾向が顕著であり、直径5mm以下、場合によっては2mm以下の小径レンズにおいて、上記の精度を達成しなければならない。
しかしながら、さらに精度の高い光学素子とするためには、上型と胴型のクリアランスをさらに小さくするとともに、上型と胴型の摺動長を十分にとらなければ、ティルトが抑止できない。このため上型の摺動部を、レンズに必要とされる偏心精度にあわせて長くする必要があるが、数mm以内の細径に形成されている上型や下型を長くすると折れやすくなってしまい、プレス時の摺動の繰り返しによって破損してしまう。
特許文献2に開示された成形型においても、上型の破損や胴型の加工性については同様の問題がある。
実際、このような構造を用いると、胴型の径の小さな部分では、一対の金型との接触がない状態でプレス成形が行えるため、一対の金型の破損が少なくなると思われる。
このとき、チャック保持の精度を高く維持したとしても、胴型をチャックし直したときに内周面の一端側と他端側との同軸性が損なわれることは避けられず、これが数μm程度のずれであったとしても、この胴型を用いたプレス成形では、一対の成形面の中心軸のずれが、光学素子の偏心精度に悪影響を及ぼしてしまう。
このように、特許文献3に記載された金型には、高度の同軸性を確保する上で避けられない問題がある。
しかしながら、この成形型では、枠型と摺動型が接触すると成形面が破損するため、枠型と摺動型の間に隙間が設けられているが、隙間にはみ出したガラスが枠型を噛みこみ、レンズと枠型の分離が困難になるという問題がある。また、上型にレンズが貼りつく現象(特に、上型の成形面が凸面の場合に、成形体と型材の熱膨張率の差により生じやすい)を防止することも困難である。
しかも、胴型は、外胴型と内胴型とを備え、外胴型の内周面の加工は、外胴型を形成する型素材の保持を維持したまま連続的に加工できるので、胴型の加工誤差に起因する偏心精度の低下を回避し、偏心精度をさらに高めることができる。
さらに、前記特許文献4に記載の発明に潜在するレンズと枠型との分離困難という問題も生じない。
さらに、成形される成形体の側面を成形する面を内胴型の内周面に設けているので、プレス成形後に芯取り加工などの後加工を行うことなく、プレス成形のみで得ようとする光学素子の最終形状とできることから、芯取り加工の困難な小径レンズに極めて適し、生産性を飛躍的に向上させることができることに加え、内胴部の内周小径部に段部を形成することで、プレス成形を行った後、成形体の外縁部を、内周小径部の段部に当接させることにより、成形面に付着した成形体を強制的に離型させることができる。
このように構成すれば、胴型に摺動型を挿入したとき、まず、摺動型の大径部が胴型に摺動ガイドされてから、摺動型の小径部が胴型に接触するので、摺動型の小径部が胴型内に不意に接触して傷つくことが抑制できる。
このような方法にすれば、型破損を抑止しつつ、偏心精度の高い光学素子を成形することができる。
このような方法にすれば、成形面に対する成形体の貼り付きを防止し、生産性や面精度を向上させることができる。また、プレス成形された成形体を光学素子の最終形状とし、成形体の後加工を省く方法とすれば、芯取り加工などの後加工を不要にし、生産性を高めることができる。このような方法とすることは、特に、後加工のハンドリング性が悪い小径レンズにおいて有利である。
しかも、胴型は、外胴型と内胴型とを備え、外胴型の内周面が外胴型を形成する型素材の保持を解除せずに連続的に、すなわち、型素材の保持を維持したままの状態で一方向に除去加工されるので、胴型の加工誤差に起因する偏心精度の低下を回避し、偏心精度をさらに高めることができる。
その上、外径が異なる光学素子を成形する場合には、内胴型、摺動型、静止型のみを変更し、外胴型はそのまま使用することができる。これは、型素材が高価であることや、極めて高い加工精度が要求されることを考慮すると、量産上のメリットはきわめて絶大である。
このような本発明は、例えば、開口数(NA)0.7以上の光ピックアップにおける対物レンズや、携帯端末用の小型撮像機器における撮像レンズなどに代表される精密光学素子の主要な要求精度の全てに対し、十分に応えることができるものである。
本実施形態における具体的な実施例を図1〜図3に示す。図1は、本発明の第一実施例に係るモールドプレス成形型の断面図、図2は、本発明の第二実施例に係るモールドプレス成形型の断面図、図3は、本発明の第三実施例に係るモールドプレス成形型の断面図である。
上型10及び下型20は、上型10と下型20の間で成形素材(プリフォーム)40をプレス成形するために、あるいは、成形素材40の供給や成型品の取り出しに際して成形型を開放するために、上下動可能となっている。
なお、本実施形態の成形型では、プレス成形時において、上型10が摺動し、下型20が静止しているので、上型10が摺動型、下型20が静止型である。
なお、内周大径部31の内径はD1、内周小径部32の内径はD2である(特記しないかぎり、径の値は摺動クリアランス分を含めずに表記する)。
また、小径部12及びその先端の破損をより確実に防ぐためには、D2/D1≧0.25であることが好ましい。
したがって、上型10と下型20とのシフトやティルトは、実質的に上型10の大径部11及び下型20の大径部22と、外胴型33の内周大径部31との間のクリアランスのみによって発生し、このクリアランスを制御することで、シフトやティルトの発生を抑制することができるようになる。
このとき、内胴型34と外胴型33の間のクリアランスは、1〜5μmとし、外胴型33内における内胴型34の水平方向のずれを防止するのが好ましい。
下型20の大径部22の径はD1であり、外胴型33が形成する内周大径部31に収容される。このとき、内周大径部31に対し、外胴型33の下側から、狭いクリアランスC4(10μm以下、好ましくは5μm以下)で嵌合することが好ましい。
また、フランジ部21の上面は、成形面24の中心軸と垂直で、かつ、平滑に平面加工されており、外胴型33の下面(外胴型33の軸心と垂直で、かつ、平滑に平面加工されている)と密着する。
したがって、外胴型33の下端部開口から下型20を挿入した状態で、両者の上記平滑面を密着させることによって、外胴型33と下型20の相互位置が精度高く規定される。そして、プレス成形時は、下型20がこの状態で静止しているため、胴型30と下型20の間のティルトは実質的にゼロとなる。
L1≧C1/sinθ (θ≦3min)
なお、外胴型33には、上記隙間Gの高さ付近及び上下成形面13、24の高さ付近には、外胴型33を肉厚を貫通する通気孔33bが形成されている。
このとき、下型20の小径部23と、内胴型34の内周小径部32とのクリアランスC3は、50μm以下が好ましいが、この部分では、摺動ガイドによる胴型30と下型20の倒れの規制は行なわない。このため、下型20の成形面24の破損を避ける上で、クリアランスC3は、10μm以上が好ましい。
また、下型20の大径部22の高さL4は、胴型30との垂直精度を出すために必要な高さであり、下型20における小径部23の軸方向の長さL3との関係では、下型20の成形面24の破損防止のために、L3<L4とするのが好ましい。
つぎに、図1の成形型を用いた光学素子の製造方法について、図4を参照して説明する。
図4は、本発明の実施形態に係る光学素子の製造方法を示す説明図である。
ここで、いったんプレス成形温度における成形素材の肉厚が再現性よく決定される。このとき、上型10の上面と外胴型33の上面が同一平面を形成するため、上型10の外胴型33に対する倒れ(ティルト)が抑止される(図4(d))。また、上型10の摺動ガイド長L1を十分に大きくすれば、偏心精度を確保することができる。
所定温度、例えば転移点付近、又はそれ以下の温度まで降温したのち、下型20を胴型30から取り除き(図4(f))、下型20の成形面24上から成形体(ガラスレンズなど)40を取り出す(図4(g))。
図1に示す本実施例に係る成形型では、外胴型33の内周を一定径とし、外周の下部には、外方へ突出する段部33cを設けている。また、外胴型33には、通気孔33bとピン挿入孔33d(例えば4箇所)を貫通孔として設けている。内胴型34は内径を段付きとし、上部の内径(径D2)は、下部の内径(径D3)より小さくなるようにして、その境に段部34aが形成されるようになっている。ここで、内胴型34の内周下部は、成形されるレンズの外径を形成する部分である。内胴型34の外周には、溝34bを設けており、外胴型33のピン挿入孔33dに通したピン35が挿入される。これにより、外胴型33と下型20を分離したときに、内胴型34が落下しないように支持される。リング36は、ピン35が抜け落ちないように外胴型33を包囲するものである。
例えば、摺動部各部分の寸法は
上型(大径部)外径:φ9mm(公差:−1〜0μm)
下型(大径部)外径:φ9mm(公差:−1〜0μm)
外胴型(内周大径部)内径:φ9mm(公差:0〜+1μm)
で仕上げ、外胴型33内における上下型10、20の最大シフトを2μmとすることができる。
外径:φ9mm(公差:−1〜0μm)
上部内径:φ3.06mm(公差:0〜+3μm)
下部内径:φ3.1mm(公差:−2〜+2μm)
とすることができる。ここで下部内径(D3)は、プレスされたレンズの外径を成形する部分である。また、上部内径(D2)と下部内径(D3)の境界に形成される段部34aは、プレス成形後、上型10の上昇に伴って成形体40の外縁部に当接し、上型10の成形面13に貼りついた成形体40を強制的に離型させるためのものである。
この図に示される成形型は、外胴型33と内胴型34とが一体に加工されたものに相当する胴型30を備える。胴型30の内周は、外径を基準として位置決めした上で、除去加工されたものであるが、一度のチャック保持で連続的に加工することが不可能であるため、胴型素材の一端からの加工を行った後に保持を解除して胴型素材の保持姿勢を変え、再び他端から加工されている。このとき、胴型30の内周加工精度には、4μmの同軸度公差が必要となる。したがって、図1に示した本実施例における型構造の最大シフトは2μmであるのに対して、図5に示す比較例の型構造では最大シフトは6μmとなる。
図1に示す第一実施例に係る成形型では、内胴型34をピン35で保持するとともに、ピン35が抜け落ちないように、外胴型33の外周側にリング36を配置し、さらには、リング36を係止するために、外胴型33の外周部に段部33cを設けていた。しかしながら、このような型構造では、外径が大きくなるため、多数個の成形型を用いてプレスする成形装置に用いると、プレス成形装置が大型化する問題点がある。
図3に示す本実施例に係る成形型では、外胴型33の内径を段付きに加工し、段部33aで内胴型34を係止するようにしてある。このようにすると、外胴型33の内径が一定径ではなくなるが、その加工は1回のチャック保持で連続的に行うことができた。これにより、第5図の成形型(比較例)のように、胴型30の内径をチャック保持の解除を伴って加工したときよりも、優れた同軸度(同軸度1μm)で加工できた。
11 大径部
12 小径部
13 成形面
20 下型
21 フランジ部
22 大径部
23 小径部
24 成形面
30 胴型
31 内周大径部
32 内周小径部
33 外胴型
33a 段部
33b 通気孔
33c 段部
33d ピン挿入孔
34 内胴型
34a 段部
34b 溝
35 ピン
36 リング
37 ピン
40 成形素材
50 プレス荷重印加手段
Claims (6)
- 対向する成形面が形成された摺動型及び静止型と、前記摺動型及び前記静止型をそれぞれ両端側から挿入可能とする胴型とを備えたモールドプレス成形型であって、
前記摺動型は、前記胴型に収容されて摺動ガイドされる大径部と、先端に成形面が形成された小径部とを備え、
前記静止型は、前記胴型に収容される大径部と、先端に成形面が形成された小径部とを備え、
前記胴型は、内周面が一定径となるように、又は内周面が一端から他端に向かって縮径するように除去加工された内周大径部を形成する外胴型と、前記外胴型内に収容され、内周小径部を形成する内胴型とを備え、
前記外胴型の内周大径部は、前記摺動型の大径部を収容して摺動ガイドするとともに、前記静止型の大径部を収容可能に形成され、
前記内胴型の内周小径部は、前記摺動型の小径部、及び前記静止型の小径部を、それぞれ収容可能に形成されているとともに、前記摺動型の小径部を収容可能に形成された部分と、前記静止型の小径部を収容可能に形成された部分の直径を異ならせることによって、これらの部分の境界に段部が形成され、かつ、これらの部分のうち直径が大きい側の内周面が、当該モールドプレス成形型によって成形される成形体の側面を成形する面であることを特徴とするモールドプレス成形型。 - 前記摺動型における大径部の軸方向の長さをL1とし、前記摺動型における小径部の軸方向の長さをL2とするとき、L1>L2が成り立つことを特徴とする請求項1記載のモールドプレス成形型。
- 前記外胴型にピン挿通孔を設け、前記ピン挿通孔に通したピンにより前記内胴型を係止したことを特徴とする請求項1又は2記載のモールドプレス成形型。
- 前記外胴型の内径を段付きに加工し、当該段で前記内胴型を係止したことを特徴とする請求項1又は2記載のモールドプレス成形型。
- 成形素材を軟化した状態でプレス成形する光学素子の製造方法において、
請求項1〜4のいずれかに記載のモールドプレス成形型を用いることを特徴とする光学素子の製造方法。 - 成形素材が軟化した状態でプレス成形を行った後、成形体の外縁部を、前記内胴型の内周小径部に設けられた段部に当接させることにより、成形面に付着した成形体を強制的に離型させることを特徴とする請求項5に記載の光学素子の製造方法。
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