JP4668657B2 - モールドプレス成形装置、及び成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
両非球面レンズを高精度に成形するには、上下型の成形面のそれぞれひとつしかない中心軸をいかに一致させるか(上下型のシフトとティルトをどう抑制するか)が課題となるが、特許文献1の成形型は、上型の倒れを積極的に許容する構造であり、上記課題については何ら検討されていない。
したがって、プレスヘッドの押圧面が押し板との間に角度をもって押し付けられると、プレスヘッドの押圧面に影響されて、押し板、及び成形型が傾いてしまう。
この成形型によれば、押圧により介在部材40の下面が、上型10の上面と、胴型30の上面とを一致させることによって、成形体50の正確な肉厚精度と、偏心精度とを達成することができるだけでなく、介在部材40と、プレスヘッドとを実質的に点で接触させることにより、プレス装置の駆動精度や、プレスヘッドの倒れが生じた場合にも、それが成形型に与える影響を抑止し、成形偏心精度を高くすることができる。
また、前記荷重伝達部材が、前記押圧部材に形成された挿通孔に遊嵌状に挿通されたピンにより、前記押圧部材の先端側に取り付けられている構成とすることで、成形型を押圧したときに反作用として受ける抗力によって、ピンを回動軸として荷重伝達部材が回動する動きと、挿通孔とピンとの遊びの範囲で荷重伝達部材が回動する動きとが組み合わされて、荷重伝達部材が押圧部材に対して揺動するようになる。
このような構成とすれば、簡易な構成により、成形型を押圧したときの抗力が作用する方向に応じて、プレス荷重を印加する方向が変化するように荷重伝達部材を揺動させながら、押圧部材が与えるプレス荷重を伝達することができる。
このような構成とすれば、押圧部材に荷重伝達部材が揺動しながら接触することによって、押圧部材の先端が摩耗・変形してしまうのを避けることができる。
このような方法とすることにより、プレス荷重が印加されて上型が押し下げられる際に胴型の倒れが生じたとしても、プレス荷重を印可する方向を適宜修正し、介在部材の姿勢を成形型に対して水平に維持することによって胴型の倒れを解消し、成形体を形状再現性よく高精度に製造することができる。
このような構成とすれば、簡易な構成により、成形型を押圧したときの抗力が作用する方向に応じて、プレス荷重を印加する方向を変化させることができ、より確実に、介在部材の姿勢を水平にして、胴型の倒れを解消することができる。
このような方法とすれば、荷重伝達部材と介在部材との接点、すなわち、介在部材へのプレス荷重の印加点を移動させることで、介在部材にプレス荷重が印加される方向を修正することができる。
このような方法とすれば、荷重伝達部材と、介在部材との相対角度を変化させることにより、その相対角度の変化に応じて、介在部材にプレス荷重が印加される方向を修正することができる。
このような方法とすれば、介在部材の押圧平面を、上型の上面と、胴型の上面とが同一平面を形成するように密着した状態で当接させるだけで、上型と胴型との相互位置を画定することができる。
このような方法とすれば、プレス荷重の印加によるタイトな圧着により、上下型のティルトを高度に抑制することができる。
その結果、上下型の同軸性が高度に確保され、偏心精度、肉厚精度、面精度などが高いレベルで要求される光学素子(例えば、ガラスレンズ)などの成形体を、形状再現性よく高精度に製造することができる。
ここで、図1は、本実施形態において、モールドプレス成形装置(以下、単に「成型装置」という)によりプレス成形を行うに際し、成形型を押し切った状態を示す概略断面図である。
成形型M(上型10、下型20、及び胴型30)は、例えば、炭化ケイ素、ケイ素、窒化ケイ素、炭化タングステン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化チタンなどのサーメット、又はこれらの表面にダイヤモンド、耐熱金属、貴金属合金、炭化物、窒化物、硼化物、酸化物などを被覆したものなどの硬質素材を用いて、所定の形状に形成することができる。
小径部23は、大径部22と軸心が一致するように、大径部22の上面中央から上方に突出して形成され、大径部22の外周面と、小径部23の外周面は、軸心に対して平行としてある。また、小径部23の上型10と対向する上面には、成形面24が形成されており、成形面24の中心は、少なくとも大径部22及び小径部23の軸心と一致するように形成される。
胴型30は、成形型Mを組み立てる際や、プレス成形の際に、上下型10,20の水平方向の相対位置を規制するためのものであり、胴型30と上下型10,20とのクリアランスは、要求される光学素子の偏心精度を考慮すると10μm以下、特に、5μm以下とすることが好ましいが、成形しようとするレンズなどの光学素子に要求される光学性能に応じて、さらに小さくすることもできる。
介在部材40は、平滑に平面加工された下面を有している。前述したように、上型10の少なくとも胴型30の上面と隣接する外縁部分と胴型30上面は、同一平面を形成するように平滑に平面加工されており、介在部材40の下面が、型10の上面と、胴型30の上面との両方に密着した状態で当接したとき、すなわち、成形型Mを押し切ったときに、上型10の上面と、胴型30の上面とを同一平面とする。このように、介在部材40の下面は、成形型Mを押圧する押圧平面として機能する。
なお、介在部材40に設ける通気孔42は、介在部材40の下面の押圧平面としての機能を損なわない範囲で、介在部材40の下面に溝や切り欠きなどを形成することによって設けることもできる。
すなわち、本実施形態において、成型装置は、プレス荷重を与える押圧部材1と、この押圧部材1に押圧されて、押圧部材1が与えるプレス荷重を伝達する荷重伝達部材2とを備えており、図1に示すように、荷重伝達部材2が介在部材40の上面に形成された突起43に実質的に点で接触した状態で、介在部材40にプレス荷重が伝達され、このときの接点がプレス荷重の印加点となる。
図1に示す例において、押圧部材1は、図示しないエアシリンダー、又は油圧シリンダーなどの駆動手段に連結されており、鉛直方向に沿って上下動可能とされた棒状の部材として構成されている。また、荷重伝達部材2は、押圧部材1が荷重伝達部材2を押圧するときに、押圧部材1に対して揺動可能に接触するように構成されており、成形型Mを押圧したときの抗力によって押圧部材1に対する姿勢を揺動させながら、押圧部材1が与えるプレス荷重を伝達できるようにされている。
また、押圧部材1の先端面、すなわち、荷重伝達部材2との対向面は、球面状に形成されており、成形型Mを押圧する際に、荷重伝達部材2に対して実質的に一点で接触しながら、押圧部材1が荷重伝達部材2を押圧するようにしてある。
例えば、押圧部材1と、荷重伝達部材2との間には、図3に示す変形例のように、球面を有するコマ状の硬質部材5を配置することもできる。この硬質部材5は、押圧部材1の硬度と同等以上の硬度を有し、押圧部材1の先端に一体に設けてもよく、図示するように別体としてもよい。また、硬質部材5は押圧部材1と面接触するとともに荷重伝達部材2と点接触する。このような硬質部材5を、押圧部材1と、荷重伝達部材2との間に設けておけば、通常、ステンレスなどで形成される押圧部材1に、荷重伝達部材2が揺動しながら接触することによって、押圧部材1の先端が摩耗・変形してしまうのを避けることができる。
図4に示す変形例において、荷重伝達部材2は、ほぼ円柱状に形成されている。そして、押圧部材1の下端側に形成した収容部1aに、荷重伝達部材2の一部(上端側)を収容した状態で、荷重伝達部材2を押圧部材1に取り付けるようにしてある。このとき、図1に示す例と同様に、荷重伝達部材2は、挿通孔4a,4bにピン3を遊嵌状に挿通することによって、押圧部材1に取り付けることができる。また、押圧部材1と荷重伝達部材2とが、実質的に一点で接触するように、押圧部材1と接触する荷重伝達部材2の上端は球面状に加工してもよく、図示するように、球面を有する硬質部材5を、押圧部材1と荷重伝達部材2との間に配置してもよい。
以下、本実施形態において、プレス成形を行う際の具体的な手順の一例を示しつつ、このような本実施形態の動作について説明する。
ここで、図5〜図6は、本実施形態において、プレス成形を行う際の具体的な手順の一例を示す説明図であり、図7は、本実施形態の動作を概念的に示す説明図である。
このとき、載置台70に設けられた開口部71から雰囲気ガスを吸引することにより、載置台70上に下型20を密着、固定し、下型20が位置ずれを起こさないようにしておくのが好ましい。また、成形素材50は室温で供給してもよく、所定温度に加熱してから供給してもよい。
なお、図示する例では、成形型Mを支持する面が水平に維持された支持台75に成形型Mを移送して、その後の処理を施す例を挙げている。
プレス荷重が印可されると、介在部材40に押圧された上型10は、胴型30に摺動ガイドされて押し下げられながら、加熱工程における加熱処理によって十分軟化した状態にある成形素材50を加圧する。そして、成形型Mを押し切ったところで(介在部材40の下面が胴型30の上面に当接したところで)、上型10による成形素材50への加圧は実質的に停止され、これにより、いったん成形素材50(成形体51)の肉厚が決定される(図5(4)参照)。
なお、後述するように、成形素材50(成形体51)は、その後の冷却工程において体積が収縮し、そのときの肉厚が最終的な肉厚となる。
その結果、プレス荷重の印加によるタイトな圧着が、上型10と胴型30との相互位置、及び下型20と胴型30との相互位置を画定することになり、これによって、上下型10,20のティルトを抑制することができる。
したがって、上下型10,20のティルトを抑制し、その同軸性を高めて成形体51を高精度に成形するには、上型10を押し下げている途中で胴型30に倒れが生じたとしても、そのような倒れが、少なくとも成形型Mを押し切った時点で解消されている必要がある。
このとき、水平面に対して傾いている介在部材40の姿勢を、水平に修正できれば、これに伴って胴型30の倒れも解消することができ、このためには、介在部材40へのプレス荷重の印加点を、介在部材40の姿勢を修正する位置に移動させればよい。
これにより、図7(b)に示すように、荷重伝達部材2と介在部材40との接触点、すなわち、介在部材40へのプレス荷重の印加点がスムーズに移動し、このようなプレス荷重の印加点の移動によって、図中矢印方向の成分が生じるように、プレス荷重が印加される方向が変化して、介在部材40の姿勢が修正される。そして、これに伴って、胴型30の傾きも解消される。
このとき、成形素材50(成形体51)は冷却されて、その体積が収縮するが、前述したように、上型10の大径部12の下面と、内周小径部32の上面との間に、所定寸法以上の隙間Gを形成するとともに、胴型30には、隙間Gが形成される位置に通気孔34を設けておき、隙間G内の雰囲気ガスの導通が行われるようにしておけば、成形体51の熱収縮に追従して上型10が下降し、成形素材50(成形体51)と、上下型10,20の成形面14,24との密着を維持した状態で冷却することができる(図6(5)参照)。
これにより、成形素材50(成形体51)と成形面14,24との密着が解かれることによる面精度の悪化を防止することができ、成形素材50(成形体51)の面精度を良好に維持することができる。
なお、図示する例では、成形型Mを載置台70に移送して分解する例を挙げている。
成形体51が取り出された成形型Mには、前述したようにして、新たな成形素材50を配置して、同様の手順を繰り返すことにより、プレス成形を連続的に行うことができる。
光学ガラス(屈折率nd:1.69350、アッベ数νd:53.2、ガラス転移温度Tg:520℃)を溶融状態から滴下して予備成形し、球形状のガラスプリフォームを用意した。
一方、図1に示す成形型を用いて、この成形型に上記ガラスプリフォームを収容し、図1に示すようにして、荷重伝達部材と介在部材とを介して、押圧部材により成形型を押圧してプレス成形を行うことにより、光記録用ピックアップ対物レンズを成形した。
次いで、成形型を冷却部に移送し、ガラス転移温度以下まで降温させた。このとき、ガラスの熱収縮に追従して上型が自重で下降し、成形面とガラスとの密着が保たれていた。その後、成形型を分解して、成形体を取り出した。
このような連続成形により、二十個のレンズを得た。これらのレンズにつて波面透過収差の測定を行い、得られた測定データに基づいて、それぞれのレンズについて第1面と第2面の傾き偏心(ティルト)を求めたところ、図8に示す結果となった。すなわち、本実施例により得られた対物レンズはいずれもティルトが1.25min以下であり、所定の規定値を満たすものであった。
本発明に係る荷重伝達部材2を備えていない円柱状のプレスヘッドを用いた以外は、実施例と同様の成形を行って二十個のレンズを得、それぞれのレンズについてティルトを求めたところ、図9に示す結果となった。
図9から明らかなように、上記実施例では現れなかったティルト1.5min以上のレンズが3割以上含まれ、ティルトが悪化したことが判る。
また、このとき、荷重伝達部材2と介在部材40とは、実質的に一点で接触してれば、介在部材40に対してプレス荷重が印可される方向をスムーズに変えることができるため好ましいが、介在部材40の姿勢を水平に修正するように、プレス荷重が印加される方向を変えることができれば、荷重伝達部材2と介在部材40とが一点で接触するものには限られない。
2 荷重伝達部材
10 上型
20 下型
30 胴型
40 介在部材
50 成形素材
51 成形体
M 成形型
Claims (9)
- 成形型を押圧することにより、前記成形型の内部に配置した成形素材をプレス成形するモールドプレス成形装置であって、
駆動手段に連結されて、プレス荷重を与える押圧部材と、
前記押圧部材に形成された挿通孔に遊嵌状に挿通されたピンにより、前記押圧部材の先端側に取り付けられ、前記押圧部材に対して揺動可能に接触するとともに、前記押圧部材に押圧されてプレス荷重を伝達する荷重伝達部材と
を備えることを特徴とするモールドプレス成形装置。 - 前記押圧部材が、前記荷重伝達部材に対して実質的に一点で接触することにより、前記荷重伝達部材が、前記押圧部材に対して揺動することを特徴とする請求項1に記載のモールドプレス成形装置。
- 前記押圧部材と前記荷重伝達部材との間に球面を有する硬質部材が設けられ、前記成形型を押圧する際に、前記硬質部材は前記押圧部材と面接触するとともに前記荷重伝達部材と点接触することを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載のモールドプレス成形装置。
- 対向する成形面を有する上型及び下型と、前記上型と前記下型とを収容し、前記上型と前記下型との水平方向の相互位置を規制する胴型とを備えた成形型の内部に成形素材を配置して、プレス成形する成形体の製造方法であって、
駆動手段に連結されて前記成形型にプレス荷重を与える押圧部材と、
前記押圧部材に形成された挿通孔に遊嵌状に挿通されたピンにより、前記押圧部材の先端側に取り付けられ、前記押圧部材に対して揺動可能に接触するとともに、前記押圧部材に押圧されてプレス荷重を伝達する荷重伝達部材と、
前記荷重伝達部材との接触を維持しつつ、前記成形型を押圧する介在部材とを用い、
前記押圧部材により、前記荷重伝達部材と前記介在部材とを介して、前記成形型を押圧することを特徴とする成形体の製造方法。 - 前記押圧部材と、前記荷重伝達部材とが、実質的に一点で接触していることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
- 前記成形型を押圧するに際して、前記荷重伝達部材と、前記介在部材との接点を移動させることを特徴とする請求項4〜5のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
- 前記成形型を押圧するに際して、前記荷重伝達部材と、前記介在部材との相対角度を変化させることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
- 前記介在部材が、前記成形型を押圧する押圧平面を有しており、前記成形型を押圧するに際して、前記押圧平面が、前記胴型の上面と、前記上型の上面とを同一平面とすることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
- 前記成形型を押圧するに際して、前記胴型の上面と、前記上型の上面とが同一平面となった後に、さらに、前記成形型を押圧することを特徴とする請求項8に記載の成形体の製造方法。
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