JP5021196B2 - モールドプレス成形型、光学素子の製造方法、及び凹メニスカスレンズ - Google Patents
モールドプレス成形型、光学素子の製造方法、及び凹メニスカスレンズInfo
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Description
しかしながら、特許文献1の位置決め装置は、ガラス素材を供給して位置決めした後に、そのままの位置でプレス成形が行われることを前提としたものであり、ガラス素材が供給された成形型を、他の位置に移動してからプレス成形を行う場合には、そのまま適用することができない。
そして、この成形型を加熱部に移行させて、ガラス素材を軟化乃至溶融させて、上型と下型との間でプレスすることによって、レンズの成形が行われ、このとき、ガラス素材は、この成形型に対して正確に調芯された状態にセットされているから、成形精度が著しく良好となり、高精度なプレス成形が可能となるとされている。
例えば、下型成形面が曲率半径の大きい凹面である場合には、ガラス素材は搬送時の振動などによって位置ずれしやすく、特に、ガラス素材が球などの凸曲面を有する場合にこの傾向が顕著である。
また、得ようとするレンズの形状に起因して、上型成形面に凸面があるような場合には、ガラス素材が上型と下型に挟持されたときに、加熱軟化前のガラス素材が上型の凸部に当接し、図5に示すように、ガラス素材が下型中心から逃げて移動してしまうことがある。そして、このような位置ずれが生じてしまうと、ガラス素材がもとの位置に戻らなくなってしまう。
これらの用途に求められるレンズは、例えば、レンズ径が1〜5mm程度であり、最も薄い部分の薄肉も0.1〜1mm程度となっている。こうしたレンズを、精密モールドプレスによって成形する場合、プレス成形後に芯取り加工などの後加工を行わないことを前提にし、プレス成形によって、光学機能面を形成するとともに、外周部も胴型等の型部材によって成形し、外径を画定する方法が有利に適用される。
例えば、この方法により、外径ばらつきは5μm以内とすることが可能であり、さらに、光軸と外径中心との一致性も数μm以内の高い形状精度のレンズを得ることができる。
例えば、ガラス素材を下型成形面に配置する際、たとえ十分な位置精度をもって凹面を有する下型成形面の中央位置に配置したとしても、上記したように上下型の形状や、上下型とガラス素材の形状の相互関係によって、位置ずれが生じやすい。
したがって、プレス成形による形状不良や、形状不均一は、たとえ、それが光学有効径の外側の領域であっても、レンズの装着精度を損ねてしまい、機器としての光学性能に悪影響を与えてしまう。このため、レンズ外周が、360度にわたって、胴型などの型部材の転写面として形成されることが求められるものの、上記用途の小径、小体積のレンズは、ガラス素材の体積が小さく、わずかな位置ずれであっても、外周面の欠損、装着精度の劣化が生じやすく、影響が深刻である。
このような方法とすれば、プレス荷重が印加されたときには、上型の成形面の成形素材への接触を許容して、成形素材に上下型の成形面形状を転写することができる。
まず、本発明に係るモールドプレス成形型(以下、単に「成形型」という)の実施形態について説明する。
ここで、図1は、成形型の概略断面図であり、成形型内に成形素材50を配置した状態を示している。
本実施形態において、下型20の成形面24は、少なくとも中心位置に凹面を有していれば、全体として凹面と平面とを組み合わせたものとなっていても、凹面と凸面とを組み合わせたものとなっていてもよく、その凹面形状も、球面でも非球面でもよい。
一方、上型10の成形面14の具体的な形状は特に限定されず、凸面、凹面、平面、又はそれらの組み合わせであってもよいが、後述するように、成形面14の中心位置に凸部のある非球面などのように、凸面を有している場合に、本実施形態の効果が顕著となる。
このため、上下型10,20と胴型30とのクリアランスは、要求される光学素子の偏心精度を考慮すると10μm以下、特に、5μm以下とすることが好ましく、成形しようとする光学素子に要求される光学性能に応じて、さらに小さくすることもできる。
また、成形素材50に対する成形面14,24の滑り性や、転がり性を確保するために、成形面14,24は、平滑な平面、球面、又は非球面などに加工されていることが好ましく、さらに、成形面14,24の表面には、例えば、炭素や、炭化水素を主成分として含有する膜を、蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、プラズマCVDなどの公知の手段を用いて、所定の膜厚で成膜しておくのが好ましい。
次に、本発明に係る光学素子の製造方法を実施するのに好適なモールドプレス成形装置(以下、単に「成形装置」という)について説明する。
ここで、図2は、このような成形装置の一例として示す回転移送式の成形装置の概略平面図である。
取出・挿入室P1では、成形を終えた成形型の取り出し作業と、新たに成形に供される成形素材を収容した成形型の挿入作業が行われる。取出・挿入室P1から挿入された成形型は、図中矢印方向に回転する回転テーブルに取り付けられた支持台に支持されるなどして、成形素材50(又は成形体51)を収容した様態で、周方向に並べて配置された、常時非酸化性ガスの雰囲気(不活性ガス雰囲気)下にある処理室P2〜P8の中を順次通過するようになっている。回転テーブルは、一定時間ごとに間歇的に回転し、この間歇的な回転により、隣設された処理室間を成形型が移動する。そして、この一定時間が、成形サイクルタイムとなる。
すなわち、プレス成形に適した温度への成形型の加熱、プレス荷重の印加、その後の冷却処理が、装置全体の昇温、降温を行うことなく、二次元的に配置された各処理室を成形型が通過することによって行われるため、個々の成形に必要な実質時間(成形サイクルタイム)が短縮される。
しかも、個々の成形素材50に与える熱環境を常に一定にできるため、量産上の安定性が高い。
次に、本発明に係る光学素子の製造方法の実施形態について、図1に示す成形型を、図2に示す成型装置に適用して実施する例に基づき、図3、図4を参照して説明する。
ここで、図3は、本実施形態に係る光学素子の製造方法における工程(1)〜(3)を示す説明図、図4は、同工程(4),(5)を示す説明図である。
支持手段80により上型10が組み込まれた胴型30の位置を固定しておくとともに、載置台70の開口部71から雰囲気ガスを吸引することにより、載置台70上に下型20が密着、固定されて、下型20と上型10とが離間した状態で待機している成形型に対し、図示しない吸着パッド付の搬送アームによって、予備成形(図示する例では球形状に成形)した成形素材50を供給する。そして、搬送アームの吸着パッドが、所定範囲内の精度で下型20の成形面21上に到達したときに、その吸着を解除し、搬送アームを直ちに退避させる。
これにより、成形素材50は、下型20の成形面24上に載置される(図3(1)参照)。
具体的には、ブロック状の光学ガラスから所定の大きさに切り出し、研磨によって球形などに冷間加工したり、溶融ガラスを受け型に滴下、又は流下しつつ適切な手段で分離し、受け型内で固化して予備成形(熱間成形)し、必要に応じて表面に研磨などの加工を施したりして作製することができる。後者の場合、加工を伴う場合であっても加工による除去量が小さいため、除去されるガラス廃棄量を減少し、短時間の加工で所望の球形状が得られるため有利である。
本実施形態においては、上記熱間成形によって成形されたガラス球に対し、表面を研磨して上記の真球度としたものが特に好適である。
載置台70を上昇させ、胴型30内に下型20を組み込む(図3(2)参照)。このとき、下型20が胴型30の下面及び内周面に当接するとともに、上型10の外周面が胴型30の内周面に摺接することにより、上下型10,20の中心軸Cに直交する方向の相互位置が規制されるようにしているが、胴型30と下型20のクリアランスは、5μm以下とするのが好ましく、予め組み立てられた上型10と胴型30も同様のクリアランスとするのが好ましい。
そして、上型10は、その成形面14が成形素材50と接触しないように、上型保持手段40によって成形素材50上に保持されており、下型20の成形面24の中心位置への成形素材50の移動を許容した状態のまま、胴型30の下面が下型20に当接して、成形型の組み立てが完了する。
成形素材50が収容された成形型を、図示しない把持具などにより、回転テーブル上の成形型支持部75に配置し、加熱室P2〜P4に順次移送しつつ、加熱する(図3(3)参照)。
これによって、上型10が、成形素材50上の、上型10の成形面15と成形素材50との非接触が維持される位置に保持された状態で、成形型ごと成形素材50をプレス成形に適した温度に昇温させる。
なお、加熱室P2〜P4が備える加熱手段には特に制限はない。例えば、抵抗加熱によるヒータ、高周波誘導コイル等を用いることができる。
適温になった成形型は、プレス室P5に移送される(図4(4)参照)。
プレス室P5では、成形型の上方からプレスヘッド90により、所定圧力(例えば、30〜200kgf)、所定時間(例えば、数十秒)で、成形型にプレス荷重を印加する(図4(5)参照)。
図4(4)に示すように、上型10の上端面が胴型30の上面より上方に位置した状態でプレスヘッド90を押し下げて、プレスヘッド90の下面が上型10の上端面に当接し、さらに押し下げられたプレスヘッド90の下面が、図4(5)に示すように、胴型30の上面に当接し、胴型30の上面と、上型10の上面とが同一平面となった時点で、成形体51の肉厚が規定され、その後、プレスヘッド90を上昇させて、プレス荷重を解除することにより、プレス工程を終了する。
プレス工程を終えた成形型には冷却処理を施すが、まず、成形型を第一徐冷室P6、第二徐冷室P7に順次移送して、少なくとも成形素材50(成形体51)のガラス転移点よりも低い温度まで冷却する。
次に、成形型を急冷室P8に移送して冷却工程を続行するが、急冷室P8では、冷却用ガスによる急冷を行うことができ、成形体51が大気開放に支障のない温度となるまで冷却する。
冷却工程を終えて、成形型が取出・挿入室P1に戻ってくると、成形型は、支持部75から取り外され、載置台70に移送される。そして、保持手段80により、胴型30の位置を固定するとともに、載置台70を垂直に下降させ、胴型30から下型20を抜き出す。次いで、下型20の成形面24上から成形体51を取り出す。
このようにして成形型から取り出された成形体51は、そのまま、又は光学素子の外径中心と、その光学中心とを一致させるために、必要に応じて芯取り加工を施して、所望の光学素子とすることができる。
特に、成形型を、加熱室、プレス室、冷却室などの各処理室に移送しながらプレス成形する場合には、成形素材50に与える熱履歴が極めて安定し、エネルギー効率の点でも優れているが、このような場合には、従来は、成形素材50が軟化する前に成形型内に供給し、成形型を組上げてから移送していたため、組上げた成形型内での成形素材50の位置ずれが生じる可能性を排除しきれなかった。
図1に示す成形型の内部に、ホウ酸塩光学ガラスからなる成形素材を配置し、上型成形面と成形素材とを非接触としたまま、図2の成形装置によって、プレス温度を620℃、プレス荷重を80kgfとして、下記のプリフォームA、プリフォームBについて、それぞれ100個のレンズを成形した。得られたレンズは、外径8mm、外縁の平坦部厚さが1mmの、両凸レンズ(但し、第一面の中心に凹部を有する)であり、上型成形面は、レンズ第一面を形成する面、下型成形面はレンズ第二面を形成する面とした。
図1に示す成形型から、ばねを取り外した以外は実施例と同様にして、プリフォームAについて、100個のレンズを得た。得られたレンズについて、実施例と同様に歩留まり率を求め、その結果を表1に併せて示した。
14 成形面
20 下型
24 成形面
30 胴型
40 上型保持手段
50 成形素材
51 成形体
Claims (13)
- 互いに対向する成形面を有する上型と下型と、前記上型及び前記下型の中心軸に直交する方向の相互位置を規制する胴型とを備え、プレス成形に必要な処理が施される加熱室、プレス室、及び冷却室を含む複数の処理室に順次移送されて、加熱により軟化した球形状の成形素材をプレス成形するモールドプレス成形型であって、
前記下型の成形面が、少なくとも中心位置に凹面を有しているとともに、
前記下型の成形面上に供給された前記成形素材に、前記上型の成形面が接触しないように前記上型を保持し、かつ、プレス荷重が印加されたときには、前記上型の成形面の前記成形素材への接触を許容する、弾性部材を用いて形成された上型保持手段を備え、
前記上型及び前記下型のそれぞれに、前記成形面が先端に形成された小径部を設けておくとともに、当該小径部が前記胴型の内周小径部に挿入されるようにして、前記内周小径部の内周面により前記成形素材をプレス成形して得られる成形体の外周形状を規定することを特徴とするモールドプレス成形型。 - 前記上型保持手段の弾性力に抗して、前記上型が、前記胴型に対して摺動可能とされたことを特徴とする請求項2に記載のモールドプレス成形型。
- 前記胴型の内周面に段部を設けるとともに、前記上型の側面に段部を設けておき、
前記上型保持手段の上端側が前記上型の側面に設けられた前記段部を支持しつつ、前記上型保持手段の下端側が前記胴型の内周面に設けられた前記段部に支承されていることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載のモールドプレス成形型。 - 前記上型成形面が凸面を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のモールドプレス成形型。
- 前記胴型に前記上型及び前記下型を収容したときに、前記下型が前記胴型の下面及び内周面に当接するとともに、前記上型の外周面が前記胴型の内周面に摺接することにより、前記上型及び前記下型の中心軸に直交する方向の相互位置が規制されるようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のモールドプレス成形型。
- 互いに対向する成形面を有する上型と下型と、前記上型及び前記下型の中心軸に直交する方向の相互位置を規制する胴型とを備えた成形型を用いて、加熱により軟化した成形素材をプレス成形する光学素子の製造方法であって、
球形状とした前記成形素材を、凹面を有する前記下型の成形面上に供給し、
前記上型の成形面が前記成形素材と接触しないように、前記上型を、弾性部材を用いて形成されている上型保持手段によって前記成形素材上に保持させて、前記下型の成形面の中心位置への前記成形素材の移動を許容した状態で、前記成形型をプレス成形に必要な処理を施す加熱室、プレス室、及び冷却室を含む複数の処理室に順次移送して、
前記成形素材が加熱により軟化した状態でプレス荷重を印加することによって、前記上型と前記下型とを接近させてプレス成形を行うに際して、
前記上型及び前記下型のそれぞれに、前記成形面が先端に形成された小径部を設けておくとともに、当該小径部が前記胴型の内周小径部に挿入されるようにして、前記内周小径部の内周面により前記成形素材をプレス成形して得られる成形体の外周形状を規定することを特徴とする光学素子の製造方法。 - 前記成形型にプレス荷重を印加するに際し、前記上型と前記下型とを、前記上型保持手段の弾性力に抗して接近させることを特徴とする請求項6に記載の光学素子の製造方法。
- 前記胴型の内周面に段部を設けるとともに、前記上型の側面に段部を設けておき、
前記上型の側面に設けられた前記段部を前記上型保持手段の上端側で支持しつつ、前記胴型の内周面に設けられた前記段部に前記上型保持手段の下端側を支承することを特徴とする請求項6〜7のいずれか1項に記載のモールドプレス成形型。 - 前記上型の上端面が前記胴型の上面より上方に位置した状態でプレスヘッドを押し下げて、前記プレスヘッドの下面を前記上型の上端面に当接させ、さらに押し下げられた前記プレスヘッドの下面を前記胴型の上面に当接させてプレス成形することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法。
- 前記胴型に前記上型及び前記下型を組み込んだときに、前記下型が前記胴型の下面及び内周面に当接するとともに、前記上型の外周面が前記胴型の内周面に摺接することにより、前記上型及び前記下型の中心軸に直交する方向の相互位置を規制することを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載のモールドプレス成形型。
- 前記上型の成形面が凸面を有することを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法。
- 前記成形素材が、溶融状態から受け型に滴下し、実質的に浮上状態で予備成形したガラス塊を、長短径差が5μm以下となるように球形に研磨加工したプリフォームである請求項6〜11のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法。
- 凹メニスカスレンズを製造する請求項6〜12のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法。
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