図1は、本発明を適用した成形装置全体の概略構造を示している。本実施形態の成形装置1は、成形前のガラス材料であるガラスプリフォーム95(図2、図8参照)をプレス成形して、ガラス製光学素子であるガラスレンズ90(図2、図8参照)を製造するものである。図1に示すように、成形装置1は、分解組立装置10、供給部11、第1加熱部12、第2加熱部13、プレス部14、徐冷部15、取出部16を備えており、成形型17を順次移送しながら加工を行う。供給部11から取出部16までは、組立状態の成形型17(図2参照)を一連の移送ラインで移送する。分解組立装置10では、成形型17の分解と組み立てを行う。分解組立装置10で組み立てられた成形型17は、図示を省略する移送経路を通って供給部11に戻される。すなわち、成形装置1は、分解組立装置10、供給部11、第1加熱部12、第2加熱部13、プレス部14、徐冷部15、取出部16の間で成形型17を循環して移送する。
より詳しくは、供給部11は、分解組立装置10で組み立てられた成形型17を受け取って加工用の移送ライン上に供給する部分である。第1加熱部12と第2加熱部13は、ガラスプリフォーム95をガラス転移点よりも高い温度まで加熱して軟化させる部分である。プレス部14は、軟化したガラスプリフォーム95を後述する上型30と下型40(図2参照)によってプレス成形する部分である。徐冷部15は、成形後のガラスレンズ90を含む成形型17の温度を、ガラスレンズ90が硬化する温度(ガラス転移点)を下回るようにさせる部分である。徐冷部15での成形型17の温度低下は、ガラス転移点に近い値(例えば、521℃のガラス転移点に対して470℃程度)までに留められ、成形型17は高温な状態のまま取出部16に送られる。取出部16は、成形型17を加工用の移送ラインから取り出す部分である。分解組立装置10は、成形型17を部分的に分解して成形後のガラスレンズ90を取り出すと共に、次に成形するガラスプリフォーム95を上型30と下型40の間にセットして成形型17を組み立てる部分である。
第1加熱部12から取出部16はそれぞれ、下部ステージ100と上部ステージ101を有している。上部ステージ101はピストン102から延びるピストンロッド103の下端に支持されており、ピストン102を駆動して上部ステージ101を上下に移動させることができる。下部ステージ100と上部ステージ101には加熱用のヒータ104が設けられている。第1加熱部12と第2加熱部13ではヒータ104によって成形型17の加熱が行われる。プレス部14でのプレス加工は、上部ステージ101を下降させ、上部ステージ101に設けられた押圧部材105で上型30を押し込むことにより行われる。
供給部11から取出部16までの加工用の移送ラインや分解組立装置10は全て、チャンバー18内に設置されている。図示を省略しているが、分解組立装置10から供給部11まで成形型17を搬送する移送経路もチャンバー18内に設置されている。つまり、成形型17の分解と組み立てを含む成形に関する全ての工程をチャンバー18内で完結できる。チャンバー18内は気密に保たれており、外部との空気流通が遮断されている。チャンバー18にはガス流入口18aが設けられており、ガス流入口18aから流入する不活性ガスでチャンバー18内を満たして酸素濃度を所定値以下にした状態で成形加工を行うことができる。
図2を参照して成形型17の詳細を説明する。成形型17は、胴型20と上型30と下型40により構成される。図2に示す基準軸Xは、成形型17により成形されるガラスレンズ90の光軸に一致するものである。上型30と下型40は、それぞれの中心軸が基準軸Xと一致するように胴型20に支持された状態で、ガラスプリフォーム95を間に挟んでプレスしてガラスレンズ90を製造する。ガラスレンズ90は非球面レンズであり、図2(B)に示すように、レンズ面として凹面91と凸面92を表裏に有する負メニスカスレンズである。
成形装置1における供給部11から取出部16までの移送ラインと分解組立装置10では、基準軸Xが上下方向に向くようにして成形型17が設置される。以下の説明では、基準軸Xに沿う方向を上下方向とし、基準軸Xに対して垂直な方向を径方向とする。
成形型17を構成する胴型20と上型30と下型40はそれぞれ、高温下でのプレス加工における破損や劣化が生じにくいように、耐熱性及び耐久性に優れる材質で形成されている。具体的には、炭化ケイ素(SiC)や窒化ケイ素(Si3N4)のようなセラミックス、あるいは超硬合金のような金属で形成されている。
胴型20は、基準軸Xを囲む円筒状体であり、外径サイズが一定の円筒状の外面を有している。胴型20の内部には上下方向に貫通する型ガイド孔21が形成されている。型ガイド孔21は、上方から順に、上側孔部22、小径孔部23、下側孔部24が同軸上に並んで構成されている。上側孔部22と下側孔部24は、小径孔部23よりも内径が大きい。上側孔部22と小径孔部23の境界部分には、環状で上向きの上型規制面25が形成されている。胴型20の上端には、上側孔部22の開口部分の周囲に、胴型20の径方向に延びる環状の上端面26が形成されている。胴型20の下端には、下側孔部24の開口部分の周囲に、胴型20の径方向に延びる環状の下端面27が形成されている。
上型30は、上下方向に伸びる軸部31と、軸部31の上部に位置する鍔状の大径部32を有する。軸部31は基準軸Xを中心とする円柱形状をなし、下方を向く先端に成形面33が形成されている。大径部32は、軸部31と同軸上に位置し、軸部31よりも大径で、胴型20の外径よりも小径の円柱形状である。成形面33は、ガラスレンズ90の凹面91に対応する形状の凸面である。軸部31と大径部32の境界部分には、上型30の径方向に延びる、環状で下向きの被規制面34が形成されている。大径部32の上端には、上向きの平面である上端面35が形成されている。
上型30の軸部31は、胴型20の小径孔部23に対して上方から挿入され、この挿入状態で上下方向へ摺動可能に案内される。軸部31の外径が小径孔部23の内径に対応し、大径部32の外径が上側孔部22の内径に対応する。軸部31と小径孔部23の間の径方向のクリアランスは極めて小さく(例えば数μm)、胴型20に対する上型30の径方向位置及び角度(基準軸Xとの平行度)が精密に決められる。成形型17内にガラスレンズ90やガラスプリフォーム95が配置されていない状態において、胴型20に対して上型30は、被規制面34が上型規制面25に当接する位置まで挿入することができ、当該位置よりも下方への上型30の移動(胴型20からの脱落)は規制される。
図2(A)は、上型30の上端面35が胴型20の上端面26よりも上方に突出したプレス前の状態を示し、図2(B)は、上型30の上端面35が胴型20の上端面26と面一になるまで上型30を胴型20内に押し込んだプレス後の状態を示している。図2(B)の状態では、上型規制面25と被規制面34との間に僅かな隙間がある。また、図2(B)の状態では、成形面33が形成されている軸部31の先端部分が、小径孔部23よりも下方の下側孔部24まで達している。
下型40は、上下方向に伸びる軸部41と、軸部41の下部に位置する鍔状の大径部42とを有する。軸部41は基準軸Xを中心とする円柱形状をなし、上方を向く先端側に成形面43が形成されている。大径部42は、軸部41と同軸上に位置し、軸部41よりも大径で、胴型20の外径よりも小径の円柱形状である。成形面43は、ガラスレンズ90の凸面92に対応する形状の凹面である。軸部41と大径部42の境界部分には、下型40の径方向に延びる、環状で上向きの被規制面44が形成されている。大径部42の下端には、下向きの平面である下端面45が形成されている。
下型40の軸部41は、胴型20の下側孔部24に対して下方から挿入され、この挿入状態で上下方向へ摺動可能に案内される。軸部41の外径が下側孔部24の内径に対応する。軸部41と下側孔部24の間の径方向のクリアランスは極めて小さく(例えば数μm)、胴型20に対する下型40の径方向位置及び角度(基準軸Xとの平行度)が精密に決められる。胴型20に対して下型40は、被規制面44が下端面27に当接する位置まで挿入することができ、当該位置よりも上方への下型40の移動は規制される。この状態で、大径部42が胴型20から下方に突出する。大径部42の外径は胴型20の外径よりも所定量小さく、被規制面44が下端面27に当接する状態で、下端面27の外径側の周縁部には、被規制面44が当接しない環状の領域が存在する。
型ガイド孔21の上側孔部22から小径孔部23に向けて上方から軸部31を挿入し、下側孔部24に対して下方から軸部41を挿入することにより、胴型20に対して上型30と下型40が組み付けられて成形型17が構成される。型ガイド孔21内で成形面33と成形面43が上下方向に対向する。成形面33上と成形面43上にはそれぞれ、図示を省略するコーティング層が形成されている。コーティング層は炭素膜等からなり、上型30や下型40に対するガラスレンズ90の融着を抑制する。
成形装置1においてプレス部14でプレス加工を行う前の段階(供給部11から第2加熱部13)では、下型40の成形面43上にガラスプリフォーム95を載せ、上型30の上端面35が胴型20の上端面26よりも上方に突出する形態で成形型17が移送される(図1、図2(A)参照)。プレス部14でプレス成形する際に、上部ステージ101に設けた押圧部材105(図1参照)によって上型30を押圧する。押圧部材105は、上型30の上端面35よりも広い面で押圧するため、押圧部材105が胴型20の上端面26に当接すると、上型30がそれ以上押し込まれなくなる。その結果、上型30の上端面35が胴型20の上端面26と面一になる状態で、プレス部14におけるプレスが完了する(図1、図2(B)参照)。これにより、ガラスプリフォーム95が成形面33と成形面43の間で変形してガラスレンズ90が成形される。成形後の胴型20の上型規制面25と上型30の被規制面34との間には、上下方向に隙間があり(図2(B)参照)、この状態で成形型17が分解組立装置10まで搬送される。
続いて、図3から図8を参照して、分解組立装置10について説明する。分解組立装置10は、アウタスリーブ50と上スライド部材60と下スライド部材70を備えている。アウタスリーブ50と上スライド部材60と下スライド部材70はそれぞれ、成形型17を構成する各部と同様に、耐熱性及び耐久性に優れる材質で形成されている。具体的には、炭化ケイ素(SiC)や窒化ケイ素(Si3N4)のようなセラミックス、あるいは超硬合金のような金属で形成されている。
アウタスリーブ50は上下方向に長い円筒状の概略形状を有しており、上下方向に貫通する挿入空間51を内部に有する。挿入空間51は、アウタスリーブ50の上端面に開口する大径孔部52と、アウタスリーブ50の下端面に開口する小径孔部53とにより構成され、大径孔部52と小径孔部53の境界部分に、上方を向く環状の規制面54が形成されている。大径孔部52と小径孔部53はそれぞれ円筒状の内面を有しており、大径孔部52の内径よりも小径孔部53の内径の方が小さい。大径孔部52の内径は、胴型20の外径よりも大きい。小径孔部53の内径は、胴型20の外径よりも小さく、下型40の大径部42の外径よりも大きい。
アウタスリーブ50には、径方向に貫通して挿入空間51の内外を通じさせる複数の孔が形成されている。具体的には、大径孔部52と外部を径方向に連通させる上部挿脱孔55及び押出用孔56と、小径孔部53と外部を径方向に連通させる下部挿脱孔57及び下部挿脱孔58とが形成されている。上部挿脱孔55と下部挿脱孔57は同じ向きに開口している。押出用孔56と下部挿脱孔58は、同じ向きに開口しており、上部挿脱孔55及び下部挿脱孔57とは反対側に向けて開口している。
側面視(上下方向)での成形型17の高さよりも上部挿脱孔55の高さが大きく(図3参照)、上面視(径方向)での胴型20の外径よりも上部挿脱孔55の開口幅が大きい(図4参照)。すなわち、上部挿脱孔55を通して成形型17を挿入空間51の大径孔部52内に挿脱させることができる。なお、上部挿脱孔55は、上型30を押し込んだプレス後の状態の成形型17(図2(B))だけでなく、上型30が胴型20から上方に突出しているプレス前の成形型17(図2(A))も通過可能な高さを有する。上部挿脱孔55の下端部分は、上下方向で規制面54と同じ位置にあり、規制面54と径方向に連続する関係にある。
押出用孔56は、アウタスリーブ50の径方向において上部挿脱孔55と並ぶ位置に設けられている。側面視(上下方向)での成形型17の高さよりも押出用孔56の高さが小さく(図3参照)、上面視(径方向)での胴型20の外径よりも押出用孔56の開口幅が小さい(図4参照)。すなわち、成形型17は押出用孔56を通過することはできない。
図4に示すように、アウタスリーブ50の側方から上部挿脱孔55に向けて進退移動可能な挿入操作部材80と、挿入操作部材80とは反対側から押出用孔56に向けて進退移動可能な取出操作部材81とを備える。挿入操作部材80と取出操作部材81はそれぞれ、上下方向に一様なV字状の先端形状を有しており、円筒状の胴型20の外面に複数箇所で当接して、安定した当接状態で径方向に押圧することができる。挿入操作部材80と取出操作部材81は、高温状態の胴型20に接触しても変形や発火しない(アウタスリーブ50等と同等の耐熱性を有する)金属やセラミックス等で形成されている。挿入操作部材80と取出操作部材81は、駆動機構82と駆動機構83によってそれぞれの延設方向(水平方向)に移動される。
上部挿脱孔55及び押出用孔56よりも下方に、アウタスリーブ50の径方向に並ぶ位置関係で下部挿脱孔57及び下部挿脱孔58が配置されている。下部挿脱孔57は上部挿脱孔55の下方に位置し、下部挿脱孔58は押出用孔56の下方に位置する。下部挿脱孔57と下部挿脱孔58はいずれも、上部挿脱孔55や押出用孔56よりも上下方向の高さが小さい(図3参照)。
図8に示すように、下部挿脱孔57と下部挿脱孔58に対して搬入出アーム84を挿脱可能である。搬入出アーム84は、アウタスリーブ50の径方向に延設されており、駆動機構85によって当該延設方向(水平方向)と上下方向とに移動させることができる。搬入出アーム84は、下部挿脱孔57側から挿入空間51の小径孔部53内に挿入され、小径孔部53及び下部挿脱孔58を貫通して先端がアウタスリーブ50の外部に出るまで挿入方向に移動させることができる。
搬入出アーム84には、挿入方向の先端近くにレンズ保持部86が設けられ、レンズ保持部86よりも基端側にプリフォーム保持部87が設けられている。レンズ保持部86とプリフォーム保持部87はいずれも下向きに配置されており、レンズ保持部86は成形後のガラスレンズ90を保持することができ、プリフォーム保持部87は成形前のガラスプリフォーム95を保持することができる。搬入出アーム84は、ガラスレンズ90やガラスプリフォーム95をレンズ保持部86やプリフォーム保持部87に吸引保持する吸引構造(図示略)を備えている。
上スライド部材60は、アウタスリーブ50の挿入空間51のうち大径孔部52に対して上方から上下方向へ摺動可能に挿入される円柱状の部材である。上スライド部材60は、大径孔部52の内面に対応する円筒状の外面形状を有する。大径孔部52と上スライド部材60の間の径方向のクリアランスは、成形型17における胴型20の型ガイド孔21と上型30及び下型40との径方向のクリアランスと同程度の小ささ(例えば数μm)である。
上スライド部材60の下端部分には、円筒状の内面を有して下方に向けて開口する下端凹部61と、下端凹部61を囲む環状の押圧部62とが形成されている。下端凹部61の底部には、下端凹部61よりも開口面積の小さい吸引凹部63が形成されている。吸引凹部63の底面中央に吸引通路64の端部が開口している。吸引通路64は、上スライド部材60内を通って、真空ポンプからなる吸引源65に接続している。吸引源65を駆動すると、吸引通路64を経由して下端凹部61と吸引凹部63に吸引力を作用させることができる。すなわち、下端凹部61と吸引凹部63と吸引通路64と吸引源65により、上スライド部材60側の吸引手段が構成されている。
下スライド部材70は、アウタスリーブ50の挿入空間51のうち小径孔部53に対して下方から上下方向へ摺動可能に挿入される円柱状の部材である。下スライド部材70は、小径孔部53の内面に対応する円筒状の外面形状を有する。小径孔部53と下スライド部材70の間の径方向のクリアランスは、成形型17における胴型20の型ガイド孔21と上型30及び下型40との径方向のクリアランスと同程度の小ささ(例えば数μm)である。
下スライド部材70の上端部分には、上方に向けて開口する吸引凹部71と、吸引凹部71の周囲に位置する下型支持部(支持部)72とが形成されている。図4に示すように、吸引凹部71は、周方向に等間隔で配置された4つの扇状の凹部を中央で接続した形状を有している。下型支持部72は、吸引凹部71を構成する4つの扇状の凹部の外側を囲む環状部72aと、該環状部72aから内径方向に突出する4つの内径突出部72bとを有している。
吸引凹部71の底面中央(吸引凹部71における4つの扇状の凹部が接続する中央部分)に吸引通路73の端部が開口している。吸引通路73は、下スライド部材70内を通って、真空ポンプからなる吸引源74に接続している。吸引源74を駆動すると、吸引通路73を経由して吸引凹部71に吸引力を作用させることができる。すなわち、吸引凹部71と吸引通路73と吸引源74により、下スライド部材70側の吸引手段が構成されている。
下型支持部72の上面には、位置決めフランジ(位置決め部)75が突設されている。図4に示すように、位置決めフランジ75の形状は、上下方向に延びる下スライド部材70の中心軸を中心とする円筒の一部分であり、成形型17を構成する下型40の大径部42の外面に対応する曲率で湾曲した壁部となっている。位置決めフランジ75は、上部挿脱孔55を通してアウタスリーブ50に挿入される成形型17の挿入方向の奥側(押出用孔56や下部挿脱孔58寄りの位置)に設けられている。
アウタスリーブ50の下端には外径方向に突出するフランジ59が形成されている。分解組立装置10は、アウタスリーブ50の下端面を支持する固定台座88と、固定台座88上に固定されてフランジ59に係合するクランプ89を有している。固定台座88とクランプ89によってアウタスリーブ50を固定的に保持することができる。固定台座88には上下方向に貫通する貫通部88aが形成されている。貫通部88aの内径は、下スライド部材70の外径よりも大きく、アウタスリーブ50(特にフランジ59)の外径よりも小さい。
上スライド部材60は、昇降機構66によって上下に移動させることができる。下スライド部材70は、昇降機構76によって上下に移動させることができる。固定台座88とクランプ89によりアウタスリーブ50を保持した状態で、アウタスリーブ50の下端から下方に突出する下スライド部材70が貫通部88aに挿通され、固定台座88による制限を受けずに下スライド部材70がアウタスリーブ50に対して上下方向に移動可能となる。
分解組立装置10と成形型17を構成する各部の径方向の寸法関係は以下のようになっている。成形型17における胴型20の外径は、アウタスリーブ50の大径孔部52の内径や上スライド部材60の外径よりも小さく、アウタスリーブ50の小径孔部53の内径よりも大きい。従って、胴型20は、アウタスリーブ50の挿入空間51のうち大径孔部52に挿入可能であり、小径孔部53には挿入できない。大径孔部52から小径孔部53への胴型20の移動は、下端面27と規制面54の当接によって規制される。
胴型20における上側孔部22の内径と上型30における大径部32の外径はいずれも、上スライド部材60における下端凹部61の内径よりも小さく、吸引凹部63の内径よりも大きい。従って、上型30の大径部32は下端凹部61内に進入可能であり、該進入状態では、上型30(大径部32)の上端面35によって吸引凹部63を覆うことができる(図7参照)。大径部32が下端凹部61に進入可能な径方向の位置関係にあるときに、上スライド部材60の押圧部62の下面と胴型20の上端面26が上下方向に対向し、押圧部62の下面は上型30には対向しない(押圧部62の内径側に上型30が位置する)。
下型40における大径部42の外径は、アウタスリーブ50における小径孔部53の内径や下スライド部材70の外径よりも小さく、吸引凹部71の最大径部分(図4において吸引通路73を挟んで配された対をなす扇状の凹部の外縁を結ぶ距離)よりも大きい。従って、下型40は、大径孔部52内に位置する状態から下方に移動して小径孔部53内への進入が可能である。また、下スライド部材70の下型支持部72に対して下型40の下端面45が当接可能であり、下端面45によって吸引凹部71を覆うことができる。
成形装置1は、全体的な制御を統括する制御回路(図示略)を備える。制御回路は、供給部11から取出部16までの各部の動作制御に加えて、分解組立装置10における、昇降機構66、76や駆動機構82、83及び85や吸引源65、74等の動作を制御する。昇降機構66、76と駆動機構82、83、85はそれぞれ、周知のピストンやシリンダやアクチュエータ等(図示略)で構成されており、制御回路を構成する駆動制御部が各アクチュエータの動作を制御する。以下の分解組立装置10における各動作は、制御回路の制御によって実行される。
図3から図8を参照して、分解組立装置10の動作を説明する。図3と図4は、ガラスレンズ90のプレス成形が完了した成形型17を分解組立装置10に入れる直前の状態を示している。この段階で成形型17は、徐冷部15を経て、ガラスレンズ90付近がガラス転移点以下の温度まで下げられており、ガラスレンズ90は成形後の形状を維持するようになっている。しかし、一般的なガラス製光学素子用の成形装置における冷却工程とは異なり、徐冷部15では成形型17を常温状態まで冷却させておらず、成形型17はガラス転移点に近い比較的高温の状態を保ったまま分解組立装置10に搬送される。例えば、従来は、手動で分解する場合には50℃以下、既存の分解組立装置を用いて分解する場合には200℃以下まで、成形型の温度を下げる必要があった。これに対し、本実施形態の分解組立装置10では、ガラス転移点に近い値(一例として、上述したように521℃のガラス転移点に対して470℃程度、すなわちガラス転移点に対して10%程度下げた温度)で成形型17の分解を実施できる。
成形型17の搬入前の分解組立装置10は、下型支持部72の上面が、アウタスリーブ50の規制面54及び上部挿脱孔55の下端と同じ高さになるように下スライド部材70を位置させている。また、挿入空間51内への成形型17の挿入を妨げない上方への退避位置に上スライド部材60を保持している。アウタスリーブ50は、固定台座88とクランプ89によって固定されている。
成形型17は、搬送テーブル19上に支持されてアウタスリーブ50の上部挿脱孔55の近傍まで搬送される。搬送テーブル19の上面側には、下型40の大径部42を径方向に移動案内する溝状のガイド部19aが形成されており、ガイド部19aの底面に下型40の下端面45が支持されている。搬送テーブル19は、アウタスリーブ50の規制面54及び下型支持部72の上面と同じ高さにガイド部19aの底面が並ぶように上下方向の位置が定められる。図4に示すように、搬送テーブル19の一端はアウタスリーブ50の外面に沿う円弧形状になっており、この搬送テーブル19の先端部分が上部挿脱孔55の開口部分に隣接するように配置される。
この状態で、駆動機構82を駆動して挿入操作部材80を図4の矢印F1方向に移動させる。挿入操作部材80は先端のV字状部によって胴型20の外面を側方から押圧して、上部挿脱孔55を通して成形型17を挿入空間51の大径孔部52内へ移動させる。すると成形型17は、下型40の下端面45が、アウタスリーブ50の規制面54上を通って下スライド部材70の下型支持部72の上面に支持されるようになる。下型支持部72は、環状部72aの内径側に突出する4つの内径突出部72bを有するため(図4参照)、下型40を傾かせることなく、成形型17を安定して大径孔部52内に挿入させることができる。
アウタスリーブ50の大径孔部52内には、挿入される成形型17の進行方向の奥側に、下スライド部材70の位置決めフランジ75が突出している。挿入操作部材80により押圧される成形型17は、下型40の大径部42の外面が位置決めフランジ75に当接する位置まで挿入される(図5参照)。この状態で、成形型17における基準軸Xが、アウタスリーブ50、上スライド部材60及び下スライド部材70の中心軸と一致する。そして、下型40の下端面45が下型支持部72上に載置されて吸引凹部71を覆う。下型支持部72は、周縁の環状部72aに加えて内径方向に延びる4つの内径突出部72bを有するため(図4参照)、下型40を安定して支持することができる。また、位置決めフランジ75は大径部42の外面に沿う円筒形状であるため、成形型17を精度良く位置決めすることができる。
大径孔部52に成形型17を挿入した図5の状態では、胴型20の下端面27は、アウタスリーブ50の規制面54に対して上方に離間して位置する。また、上スライド部材60の押圧部62の下面が胴型20の上端面26に対して上方に離間して対向する。胴型20の外面と大径孔部52の内面との間には径方向のクリアランスがあり、このクリアランスは、アウタスリーブ50に対する上スライド部材60及び下スライド部材70の径方向のクリアランスよりも大きい。
成形型17を図5に示す状態にセットしたら、昇降機構66を駆動して上スライド部材60を下方に移動させる。上スライド部材60が下降すると押圧部62の下面が胴型20の上端面26に当接し、胴型20を下方へ押し下げる(図6参照)。上型30における大径部32の外径は上スライド部材60の下端凹部61の内径よりも小さいので、押圧部62は、上型30に対しては当接せずに、その周縁に位置する胴型20の上端面26のみに当接する。
上スライド部材60によって胴型20が下方へ押圧移動されると、下端面27から被規制面44に力が伝わって下型40が胴型20と共に下方へ移動する。さらに、下型支持部72上に下型40を支持している下スライド部材70が、胴型20及び下型40と共に下方へ移動する。上型30は、胴型20との間に作用する摺動抵抗やガラスレンズ90への成形面33の密着等によって、胴型20及び下型40に追随して下方へ移動する。なお、仮に上型30が胴型20及び下型40に追随して移動しない場合でも、上スライド部材60が所定量下方へ移動すると、下端凹部61の底面が上型30の上端面35に当接して、上型30が上スライド部材60と共に下方へ移動される。
胴型20が下方へ所定量移動すると、図6に示すように、下端面27(より詳しくは、下型40の被規制面44が当接していない径方向外側の周縁部)が、アウタスリーブ50の規制面54に当接して、胴型20はそれ以上の下方への移動が規制される移動規制位置に達する。この段階で、下型40の大径部42が小径孔部53内に進入している。胴型20が移動規制位置に達したら、昇降機構66の動作を停止させる。昇降機構66の停止制御は任意の手法で行うことができる。例えば、昇降機構66に予め所定の駆動量を設定しておき、駆動量が規定値に達したら昇降機構66を停止させる。別の制御態様として、上スライド部材60の位置を検知する位置センサを備え、上スライド部材60が移動規制位置に達したことが検知されたら昇降機構66を停止させてもよい。さらに別の制御態様として、制御回路により昇降機構66の動作負荷を継続的に検知し、胴型20が規制面54に当接して移動規制を受けた結果として負荷変動が閾値を超えたら、昇降機構66を停止させてもよい。
続いて、吸引源65を駆動して、上スライド部材60の下端凹部61及び吸引凹部63に吸引力を作用させる。図7に示すように、この吸引力によって、上型30が胴型20に対して上方に引き上げられる。このとき、成形面33に対する凹面91の密着によって、ガラスレンズ90が上型30と共に上方へ移動しようとした場合、胴型20内の小径孔部23と下側孔部24の境界の段差部分にガラスレンズ90の周縁部(凹面91よりも外径側の部分)が当接する。すると、上方へのガラスレンズ90の移動が規制され、小径孔部23内まで引き上げられた上型30の成形面33からガラスレンズ90が離れて、ガラスレンズ90は下型40の成形面43上に保持される。上型30は、大径部32が下端凹部61内に進入して下端凹部61の底面に当接する位置で上方への移動が規制され、この状態で上型30の上端面35が吸引凹部63を塞ぐ。吸引源65を駆動させている間は、上型30が上スライド部材60側に吸引保持される状態が維持される。
上型30に対する吸引保持を解除するタイミングは任意に設定できる。例えば、本実施形態では胴型20に対する上型30の摺動抵抗が大きく、吸引保持を解除しても上型30が急速に落下しにくいため、上型30からガラスレンズ90が外れた直後に吸引保持を解除しても、下降する上型30がガラスレンズ90にダメージを与えるおそれが少ない。仮に、吸引保持を解除すると上型30が自重で胴型20内を高速で落下する場合には、後述する下スライド部材70の下方移動の開始後まで上型30を吸引保持しておけば、下方に移動する上型30がガラスレンズ90に衝突してダメージを与えることを防止できる。
本実施形態における上型30の成形面33とガラスレンズ90の凹面91は成形後に密着しやすい形状であるため、吸引源65の駆動による上型30の引き上げ動作を行ってガラスレンズ90を上型30から積極的に外すようにしている。但し、成形面やレンズ面の形状等の条件によっては、上型30に対するガラスレンズ90の密着が生じない、あるいは生じにくい場合もある。このような場合には、図7に示す上型30の引き上げ動作を省略することも可能である。すなわち、上スライド部材60側の吸引手段を設けない構成を選択してもよい。
続いて、吸引源74を駆動して吸引凹部71に吸引力を作用させて、下型40を下スライド部材70の下型支持部72上に吸引保持する。そして、下型40の吸引保持を続けながら、昇降機構76を駆動して下スライド部材70を下方へ移動させる。すると、下型40は、成形面43上にガラスレンズ90を載せた状態で、下スライド部材70と共に下方へ移動して、胴型20の下側孔部24から軸部41が離脱する。すなわち、成形型17から下型40が分離される。上型規制面25と被規制面34の関係によって、上型30は胴型20に対する下方への移動が規制される(図8参照)。そのため、下型40が下方へ分離したときに、上型30は脱落することなく胴型20に保持される。
下型40の軸部41と胴型20の下側孔部24との間のクリアランスが極めて小さいが、下型40を吸引しながら下スライド部材70を移動させることによって、下型40を下スライド部材70に確実に追随させて型ガイド孔21から離脱させることができる。
下スライド部材70を下降させる際に、何らかの原因で下型40が下スライド部材70に伴って下方に移動しない場合、下型40の下端面45が下型支持部72から離れて吸引凹部71に外気が流入する。すると、下型40で塞がれていた吸引状態に比べて、吸引凹部71や吸引通路73内の圧力が上昇する(外気圧に近づく)。従って、この吸引経路の圧力変化に基づいて、下型40が下スライド部材70に伴って適切に下方に移動しているか否かを確認することができる。吸引凹部71から吸引源74までの吸引経路上には、このような圧力変化を検知可能な圧力センサが備えられている。仮に吸引経路で所定値以上の圧力上昇が検知された場合、胴型20からの下型40の引き抜き動作に何らかのエラーが生じたものとみなして、下スライド部材70の下降を停止したり、警報で報知させたりすることができる。
なお、胴型20と下型40の間の摺動抵抗が小さく、下スライド部材70を下方に移動させる際に、下型40が自重で下スライド部材70に追従して移動できる場合には、吸引源74を駆動しての吸引を行わないことも可能である。すなわち、下スライド部材70側の吸引手段を設けない構成を選択してもよい。
下スライド部材70は、アウタスリーブ50の下部挿脱孔57及び下部挿脱孔58に対応する上下方向位置に下型40上のガラスレンズ90が達するまで下降されて停止する(図8参照)。昇降機構76の停止制御は任意の手法で行うことができる。例えば、昇降機構76に予め下降用の駆動量を設定しておき、駆動量が規定値に達したら昇降機構76を停止させる。別の制御態様として、下スライド部材70の位置を検知する位置センサを備え、下スライド部材70が所定の移動位置に達したことが検知されたら昇降機構76を停止させてもよい。
続いて、駆動機構85を動作させ、搬入出アーム84を下部挿脱孔57からアウタスリーブ50の小径孔部53内に挿入し、レンズ保持部86をガラスレンズ90の上方に位置させる。そして、駆動機構85により搬入出アーム84を下降させ、成形済みのガラスレンズ90をレンズ保持部86に吸着保持させてから、搬入出アーム84を引き上げる。
成形型17を用いた成形を引き続き行う場合には、図8に示すように、プリフォーム保持部87に新たなガラスプリフォーム95を吸着保持させておき、駆動機構85を動作させて、プリフォーム保持部87が下型40の成形面43の上方に位置するまで搬入出アーム84をさらに挿入する。そして、駆動機構85により搬入出アーム84を下降させ、プリフォーム保持部87から下型40へガラスプリフォーム95を受け渡して成形面43上に載せる。この段階で、レンズ保持部86は下部挿脱孔58を通してアウタスリーブ50の外側に突出しており、成形済みのガラスレンズ90をアウタスリーブ50の外部(図8におけるアウタスリーブ50の左側空間)でレンズ保持部86から取り外して回収することができる。あるいは、この段階ではガラスレンズ90を回収せず、さらに駆動機構85を動作させて、下部挿脱孔57を通して搬入出アーム84をアウタスリーブ50の外側(図8におけるアウタスリーブ50の右側空間)に引き戻してから、成形済みのガラスレンズ90の回収を行ってもよい。搬入出アーム84を用いて回収されたガラスレンズ90は、チャンバー18内の保管部(図示略)に保管され、成形装置1での一連の成形加工の完了後にチャンバー18外へ搬出される。
搬入出アーム84を用いての、下型40からのガラスレンズ90の回収や下型40へのガラスプリフォーム95の設置が完了したら、昇降機構76を駆動して図8の下降位置から下スライド部材70及び下型40を上方へ移動させる。下型40が所定量上方へ移動すると、軸部41が胴型20の下側孔部24内に挿入され、さらに被規制面44が胴型20の下端面27に当接して、胴型20が上型30と共に上方へ押し上げられる。この移動により、アウタスリーブ50の規制面54から胴型20の下端面27が離れる。
下型支持部72の上面が上下方向で規制面54と同じ位置に達したら、昇降機構76を停止して、下スライド部材70の上昇動作を完了する。また、昇降機構66を駆動して、押圧部62が胴型20の上端面26から上方へ離間する退避位置(図3及び図5参照)まで上スライド部材60を上昇移動させる。
この段階で、分解組立装置10は図5に示す状態に戻る。成形型17は、下型40の軸部41が胴型20の下側孔部24に挿入された組み立て状態に復帰している。より詳しくは、上型30と下型40の間に成形後のガラスレンズ90が保持されていない点が図5とは異なる。引き続き成形を行うべく成形型17内にガラスプリフォーム95をセッティングしている場合は、図2(A)に示すように、ガラスプリフォーム95上に成形面33を載せた上型30の上端面35が、胴型20の上端面26よりも上方へ突出する。
続いて、アウタスリーブ50内から成形型17を取り出す。成形型17の取り出しは、駆動機構83を動作させて取出操作部材81を図4の矢印F2方向に移動させて行う。取出操作部材81は、押出用孔56を通してアウタスリーブ50の大径孔部52内に入り、先端のV字状部によって胴型20の外面を押圧する。これにより、成形型17が上部挿脱孔55を通してアウタスリーブ50の外側に押し出されて、搬送テーブル19上に載せられる。上部挿脱孔55は、上型30の大径部32が胴型20の上端面26から突出している状態でも、成形型17を通過させることができる上下方向の高さを有している。
分解組立装置10でガラスプリフォーム95を内部に配置して組み立てられた成形型17は、チャンバー18内の移送経路(図示略)を経て供給部11まで運ばれ、上述した一連の工程で成形加工が行われる。この移送経路は不活性ガス雰囲気のチャンバー18内にあるため、分解及び組み立てを行った後の成形型17周りで酸素濃度の急激な変化が生じない。また、成形加工を行っている間はチャンバー18内が高温に保たれており、成形型17周りで急激な温度変化(温度低下)が生じない。仮に、既存の分解組立装置において、200℃程度の温度で分解及び組み立てを行った成形型を、そのまま常温の大気中(チャンバー外)に出すと、上型や下型に設けた離型用のコーティング層が損傷してしまう。これに対して、分解組立装置10にて高温での分解及び組み立てを行い、引き続いてチャンバー18内で成形型17を循環移動させる本実施形態の成形装置1では、上型30や下型40のコーティング層へのダメージを抑制でき、成形型17の耐久性を向上させることができる。
以上の分解組立装置10によれば、プレス成形後にガラスレンズ90が硬化する最小限の冷却に留めた高温状態のまま成形型17を分解してガラスレンズ90を取り出すことができる。従って、十分に低温になるまで冷却してから成形型の分解を行うタイプの分解組立装置に比して短時間で1サイクルの成形を完了することができ、生産性が向上する。また、分解組立装置10で再度組み立てた成形型17を迅速に供給部11へ搬送すれば、成形型17がある程度高温を保ったまま次の成形サイクルに進むことができるので、第1加熱部12や第2加熱部13での加熱時間やエネルギー消費を低減できる。
分解組立装置10では、いずれも耐熱性の高い金属やセラミックスで形成されたアウタスリーブ50と上スライド部材60と下スライド部材70を用いることによって、高温状態での分解及び組み立てを可能としている。アウタスリーブ50は挿入空間51内に規制面54を有する筒状体であり、上スライド部材60と下スライド部材70は挿入空間51内にスライド可能に挿入される柱状(軸状)体であり、上スライド部材60と下スライド部材70の上下動によって成形型17の分解及び組み立てを行うシンプルな構造である。別言すれば、成形型17の各部を精密に把持しながら型抜き方向に移動させるような高価で複雑な機構を要さず、耐熱性の低い動作部分が高熱の成形型17に接触することもない。また、アウタスリーブ50への成形型17やガラスレンズ90及びガラスプリフォーム95の挿脱は、アウタスリーブ50の径方向側部の開口部分(上部挿脱孔55や下部挿脱孔57)を通して行われ、これらの開口部分に挿脱される挿入操作部材80や取出操作部材81や搬入出アーム84はいずれも棒状のシンプルな構造である。従って、分解組立装置10の各部を、耐熱性に優れる金属やセラミックスで無理なく形成することができる。
アウタスリーブ50に対して、径方向側部の開口部分(上部挿脱孔55や下部挿脱孔57)を通して成形型17やガラスレンズ90及びガラスプリフォーム95を挿脱させる構成は、分解組立装置10全体の構造簡略化や小型化の点でも優れている。すなわち、上スライド部材60や下スライド部材70は、胴型20から下型40を離脱させるための所定の可動量を有していれば良く、アウタスリーブ50に対して上スライド部材60や下スライド部材70の全体を上下方向に引き抜く必要がない。従って、上下方向における分解組立装置10の設置スペースが少なくて済むと共に、駆動量が小さいコンパクトな昇降機構66や昇降機構76を用いることができる。また、挿入操作部材80、取出操作部材81及び搬入出アーム84は、アウタスリーブ50の径方向に移動して成形型17やガラスレンズ90及びガラスプリフォーム95を挿脱するので、これらを駆動する駆動機構82、83及び85も駆動量が小さいコンパクトなものを使用できる。
例えば、本実施形態とは異なり、アウタスリーブ50の上端や下端から上下方向に成形型17等の挿脱を行わせる構造にする場合、アウタスリーブ50から上スライド部材60や下スライド部材70を引き抜く必要がある。上述のように、成形型17の精密な分解及び組み立てを行うために、アウタスリーブ50に対する上スライド部材60や下スライド部材70のクリアランスは極小に設定されているので、アウタスリーブ50に対して上スライド部材60や下スライド部材70を上下方向に引き抜くための装置は、長い距離に亘って非常に高い動作精度が求められる高コストなものになる。さらに、アウタスリーブ50に対して上スライド部材60や下スライド部材70を上下方向に引き抜くための動作量が大きく、装置の大型化も避けられない。
また、本実施形態の分解組立装置10では、下スライド部材70の下型支持部72への吸引によって下型40の引き抜きを補助することで、胴型20と下型40の間のクリアランスが極小であるガラスレンズ成形用の成形型17でも確実に分解することができる。吸引による下型40の保持は、下スライド部材70に吸引凹部71や吸引通路73を形成することで実現でき、これらの吸引経路によって下スライド部材70の耐熱性が損なわれることはない。
また、本実施形態の成形装置1では、分解組立装置10が気密性の高いチャンバー18内に設置されており、チャンバー18内の酸素濃度の低い環境で成形型17の分解と組み立てを行う。さらに、分解組立装置10から供給部11までの移送経路を含む成形装置1の全体がチャンバー18内に配置されており、成形型17を常温の外気中に出すことなく成形加工を繰り返して実行できる。これにより、上型30の成形面33上や下型40の成形面43上に形成された炭素膜等のコーティング層の劣化を抑制し、成形型17の耐久性向上を図ることができる。
以上のように、本実施形態の成形型の分解組立装置10及び成形装置1は、高温状態で成形型の分解及び組み立てを確実に行うことができ、ガラスレンズ90等のガラス製光学素子の生産効率を向上させることができる。但し、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨内において様々な変更を行うことが可能である。
例えば、上記実施形態のアウタスリーブ50は円筒状であり、上スライド部材60と下スライド部材70はアウタスリーブ50の内面形状に対応する円柱状である。分解組立装置10における当該形状は、円筒状の外面形状を有する成形型17をアウタスリーブ50内に効率良く収められると共に、強度的にも優れている。しかし、成形型の外面形状が上記実施形態とは異なる場合、これに応じてアウタスリーブ50、上スライド部材60、下スライド部材70をそれぞれ、円筒や円柱以外の形状(例えば角筒状や角柱状)に設定することも可能である。すなわち、アウタスリーブ50に対して上スライド部材60や下スライド部材70が上述した上下動を行える関係であればよく、具体的な形状を上記実施形態に限定するものではない。
上述したように、成形型17の分解途中での図7に示す上型30の引き上げ動作は、上型30の成形面33へのガラスレンズ90の貼り付きが生じにくい場合には省略することも可能である。これに応じて、上スライド部材60側に吸引手段(下端凹部61、吸引凹部63、吸引通路64、吸引源65)を設けない構成を選択してもよい。
上述したように、下スライド部材70が下方に移動するときに、下型40が自重で追随してスムーズに移動可能である場合は、下スライド部材70への下型40の吸引を省略することも可能である。これに応じて、下スライド部材70側に吸引手段(吸引凹部71、吸引通路73、吸引源74)を設けない構成を選択してもよい。
成形型を構成する上型と下型については、胴型の外径よりも小径であると共に、所定の挿入位置で胴型の型ガイド孔への挿入を規制されるという条件を満たしていれば、その形状等は任意に選択可能である。
例えば、上記実施形態では、胴型20の下端面27に対して被規制面44が当接して下型40の上方への移動が規制される。これとは異なり、胴型20の下側孔部24内に大径部42の一部を進入可能にさせる拡径部を備え、この拡径部の底面に下型40の被規制面44が当接して挿入規制されるように構成することも可能である。
例えば、上記実施形態では、胴型20内の上型規制面25に対して被規制面34が当接して上型30の下方への移動が規制される。これとは異なり、上側孔部22を設けずに胴型20の上端まで小径孔部23が続くようにした上で、胴型20の上端面26のうち内径側の一部領域に対して上型30の被規制面34が当接して下方への移動規制を受けるように構成することも可能である。
上記実施形態の成形装置1はガラスレンズ90を製造するものであるが、レンズ以外のガラス製光学素子(例えばプリズム等)を製造する成形装置に本発明を適用することも可能である。