JP7072951B1 - 発芽穀物の製造方法及び発芽穀物飯の製造方法、並びに発芽穀物用調理装置及びプログラム - Google Patents

発芽穀物の製造方法及び発芽穀物飯の製造方法、並びに発芽穀物用調理装置及びプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】水に添加物を加えることなく雑菌の増殖を抑えることができ、かつ、穀物が発芽する際に増加するGABA等の有用成分を活用することのできる発芽穀物飯の製造方法を提供する。【解決手段】容器内で穀物を浸漬水に浸漬し、所定の温度に保持して穀物を発芽させる発芽工程と、前記発芽工程の後に、前記容器を、浸漬水を交換することなく、前記発芽工程の温度より高温であって穀物の酵素が失活しない温度に保持し雑菌を減少させる雑菌減少工程と、前記雑菌減少工程の後に、前記容器を、浸漬水を交換することなく、雑菌減少工程の温度より低温に保持し、穀物の発芽をさらに促進しつつ、発芽穀物を熟成させる発芽熟成工程と、得られた発芽穀物を、前記容器内で加熱し炊飯する炊飯工程と、を有する発芽穀物飯の製造方法。穀物としては、玄米や大豆が好適に使用できる。【選択図】図3

Description

本発明は、玄米や大豆などの穀物を原料とした、発芽穀物の製造方法及び発芽穀物飯の製造方法、並びに発芽穀物用調理装置及びこれに用いるプログラムに関する。
近年、穀物を発芽させた発芽穀物は、栄養価が高く、有用な効果が期待される食材として注目されている。
例えば、玄米を発芽させた発芽玄米は、発芽していない玄米よりも栄養価が高く、特にGABA(γ-アミノ酪酸)においては、玄米の数倍に増加することから健康食品の一つと注目されている。玄米の発芽を行うためには、水に漬けた玄米を、20~40℃の温水に浸漬する方法がとられるが、この温度帯は雑菌が繁殖し易いものでもあるため、得られる発芽玄米に腐敗臭が残留するという課題があった。また、使用した浸漬水を交換すると、発芽で生産されたγ-アミノ酪酸(GABA)をはじめ、水溶性の有用成分(水溶性ビタミンやミネラル成分等)が溶出して失われるという課題があった。
このような課題に対し、発芽玄米に対して雑菌の繁殖を抑制する添加物を加える方法がある。例えば、玄米を浸漬する水に塩分を含有させる方法が広く知られている。また、特許文献1には殺菌作用を有する玉葱等の葱類を含有させることによって雑菌の繁殖を抑制する方法が報告されている。しかしながら、これらの方法では、雑菌の繁殖を抑制することはできるが、炊飯後の米飯に塩分や葱類由来の成分が付与されるため、日常的に食するご飯としては必ずしも適するものではなかった。
また、発芽玄米を家庭で製造できる装置として、玄米を発芽させる容器を抗菌性金属で構成する装置が報告されている。例えば、特許文献2の発芽玄米製造用電気加熱器は、抗菌性金属で構成された内釜と、底部及び側面外周にヒータを備えて内釜が着脱される加熱釜とを設け、内釜に玄米と水を入れた状態で蓋をして加熱釜のヒータで32~38℃に加熱し18~24時間保温することで発芽玄米を得ることができ、得られた発芽玄米を白米と所定の割合で混合した後に汎用の炊飯器で炊くことによって発芽玄米混合ご飯を得ることができる。
また、特許文献3には、発芽槽に種子と発芽用水を投入し、種子の発芽を促して発芽種子を製造する方法において、前記発芽用水を発芽槽と外部との間で循環させるものであり、発芽槽の外部に取り出された発芽用水を、加熱殺菌し、冷却し、更に種子の発芽に適した温度に調温した後、発芽槽に戻すことを特徴とする発芽種子の製造方法が報告されている。
また、発芽穀物として、発芽玄米以外にも、発芽大豆(例えば、特許文献4)、発芽小麦(例えば、特許文献5)等も注目されている。
特開2011-24472号公報 特開平10-117713号公報 特開2013-70667号公報 特開2010‐213637号公報 特開2005‐130754号公報
特許文献2の装置は、抗菌性金属で構成された内釜によって雑菌を殺菌するものであるが、内釜から離れた部分では雑菌を殺菌することができない。また、特許文献3の装置は、添加剤や抗菌性部材等を使用せずに発芽玄米を得ることができるが、大掛かりで家庭用として使用するのは困難である。また、いずれの装置も製造した発芽玄米を汎用の炊飯器に移して炊飯する必要があるため、手間がかかるという問題があった。
また、一般家庭においては、例えば、就寝前に玄米を仕込み、朝食として発芽玄米米飯を食す等、炊飯器にタイマーをセットし、目的の時間に発芽玄米米飯が炊き上がるように炊飯するというニーズがある。この場合においても、得られる発芽玄米に雑菌の繁殖によって腐敗臭が残留するという課題があった。雑菌の繁殖は、発芽玄米以外の発芽穀物についても同様に問題になっていた。
かかる状況下、本発明の目的は、穀物発芽用の水に添加物を加えることなく雑菌の増殖を抑えることができ、かつ、穀物が発芽する際に増加するGABA等を有効活用することのできる発芽穀物の製造方法、及び発芽穀物飯の製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、発芽穀物飯に適した発芽穀物用調理装置及び当該調理装置のプログラムを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、穀物を水(浸漬水)に浸漬し、発芽させた後に、55℃以上65℃以下の温度域にすることによって、穀物を変性させずに、雑菌の繁殖を抑制することが可能であることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 容器内で穀物を浸漬水に浸漬し、所定の温度に保持して穀物を発芽させる発芽工程と、前記発芽工程の後に、前記容器を、浸漬水を交換することなく、前記発芽工程の温度より高温であって穀物の酵素が失活しない温度に保持し雑菌を減少させる雑菌減少工程と、前記雑菌減少工程の後に、前記容器を、浸漬水を交換することなく、雑菌減少工程の温度より低温に保持し、穀物の発芽をさらに促進しつつ、発芽穀物を熟成させる発芽熟成工程と、を有し、
前記雑菌減少工程と前記発芽熟成工程とを浸漬水を交換することなく繰り返すことを特徴とする発芽穀物の製造方法。
<2> 前記穀物が、玄米及び/又は大豆である<1>に記載の発芽穀物の製造方法。
<3> 前記発芽工程の温度が30℃以上45℃以下であり、浸漬時間が2時間以上6時間以下である<1>または<2>に記載の発芽穀物の製造方法。
<4> 前記雑菌減少工程の温度が50℃以上65℃以下であり、処理時間が1分以上30分以内である<1>から<3>のいずれかに記載の発芽穀物の製造方法。
<5> 前記発芽熟成工程の温度が30℃以上45℃以下であり、浸漬時間が2時間以上6時間以下である<1>から<4>のいずれかに記載の発芽穀物の製造方法。
<6> <1>から<5>のいずれかに記載の製造方法で得られた発芽穀物を、前記容器内で加熱し炊飯する炊飯工程を有することを特徴とする発芽穀物飯の製造方法。
<7> 炊飯工程において、発芽穀物の製造に用いた浸漬水を交換せず、そのまま炊飯水として使用する<6>に記載の発芽穀物飯の製造方法。
<8> <1>から<5>のいずれかに記載の発芽穀物の製造方法、又は<6>若しくは<7>に記載の発芽穀物飯の製造方法に用いる発芽穀物用調理装置であって、
穀物と浸漬水とを収容可能な容器と、前記容器の温度を制御する温度制御手段と、発芽穀物用調理装置の機能の少なくとも一部をコンピュータに実行させるためのプログラムと、を備えた発芽穀物用調理装置。
<9> <8>に記載の発芽穀物用調理装置のプログラムであって、
前記容器内で穀物を浸漬水に浸漬し、所定の温度に保持して穀物を発芽させる発芽工程を実行する手順と、前記発芽工程の後に、前記容器を、浸漬水を交換することなく、前記発芽工程の温度より高温であって穀物の酵素が失活しない温度に保持し雑菌を減少させる雑菌減少工程を実行する手順と、前記雑菌減少工程の後に、前記容器を、浸漬水を交換することなく、雑菌減少工程の温度より低温に保持し、穀物の発芽をさらに促進しつつ、発芽穀物を熟成させる発芽熟成工程を実行する手順と、前記容器内で加熱し炊飯する炊飯工程を実行する手順と、をコンピュータに実行させるためのプログラム。
本発明によれば、穀物発芽用の浸漬水に、塩分や抗菌性添加物を加えることなく雑菌の増殖を抑えることができ、かつ、穀物が発芽する際に増加するGABA等を有効活用することのできる発芽穀物の製造方法及び発芽穀物飯の製造方法、並びにこれらに使用する発芽穀物用調理装置及びプログラムが提供される。
本発明の実施形態の発芽穀物用調理装置の模式図(斜視図)である。 本発明の実施形態の発芽穀物用調理装置の温度制御手段に係る制御ブロック図である。 本発明の実施形態のプログラムによる発芽穀物用調理装置10の動作の一例を示すフローチャートである。 図3に示すフローチャートのS1~S5に対応する本実施形態の発芽玄米の製造方法の温度―時間プロファイルである。
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、本明細書において、「~」とはその前後の数値又は物理量を含む表現として用いるものとする。
本発明の発芽穀物の製造方法は、容器内で穀物を浸漬水に浸漬し、所定の温度に保持して穀物を発芽させる発芽工程と、前記発芽工程の後に、前記容器を、浸漬水を交換することなく、前記発芽工程の温度より高温であって穀物の酵素が失活しない温度に保持し雑菌を減少させる雑菌減少工程と、前記雑菌減少工程の後に、前記容器を、浸漬水を交換することなく、雑菌減少工程の温度より低温に保持し、穀物の発芽をさらに促進しつつ、発芽穀物を熟成させる発芽熟成工程と、を有する。
本発明で使用される「穀物」は、発芽した際に食するものであれば任意であり、米類、麦類、豆類、ゴマ類及び雑穀類から選択することができる。これらは1種でもいいし、2種以上を混合して使用してもよい。
また、本発明において「発芽穀物」は、穀物を吸水させることによって、胚芽部分が伸長し始めた段階のものを意味する。伸長した幼芽は通常の長さが約0.5mm前後であることが好ましい。
本発明で使用される「米類」は、うるち米、もち米、玄米、赤米、黒米などが挙げられる。「麦類」は、もち麦、はだか麦、はと麦、押し麦、丸麦などが挙げられる。「豆類」は、大豆、小豆、青大豆、黒大豆、はだか豆などが挙げられる。「ゴマ類」は、黒ゴマ、白ゴマ、金ゴマ、えごまなどが挙げられる。「雑穀類」は、粟、ヒエ、キビ、キヌア、そば、とうもろこしなどが挙げられる。これらを単独で用いてもよく、複数種類を混合してもよい。
本発明において「発芽穀物飯」は、発芽させた穀物を炊飯し、得られたもののことを意味し、例えば、発芽玄米を炊飯した場合は発芽玄米米飯と称し、発芽大豆を炊飯した場合は発芽大豆飯と称する。
以下、本発明の好適例として、原料の穀物として玄米を使用した、発芽玄米の製造方法及び発芽玄米米飯の製造方法について説明するが、玄米に代えて上述した穀物についても同様の製造方法で発芽穀物、発芽穀物飯を製造することができる。この場合、穀物の種類に応じて、それぞれの穀物に適した製造条件を採用することができる。
以下、発芽玄米の製造方法及び発芽玄米米飯の製造方法についての各工程を説明する。
なお、大豆は以下に説明する玄米と同じ製造条件で製造することが好適である(特に雑菌減少工程)。そのため、発芽玄米の製造方法及び発芽玄米米飯の製造方法において、玄米に代えて大豆を好適に使用できる。また、玄米と大豆の混合物を使用してもよい。
発芽工程は、容器内で玄米を浸漬水に浸漬し、所定の温度に保持して玄米を発芽させる工程である。
「浸漬水」は、玄米を浸漬し発芽を促すための水であり、飲食用に適した水であれば特に限定されず、例えば、水道水、井戸水、温泉水等が挙げられる。また、市販のミネラルウォーターも好適に使用することができる。浸漬水は軟水でも硬水でもよく、それらを熱処理、濾過等の処理に付したものも使用できる。また、浸漬水は、玄米の発芽を阻害しない範囲でミネラル等の成分を添加されていてもよい。
なお、浸漬水は、後述する本発明の発芽玄米米飯の製造方法においては、炊飯水として使用される。
本発明において使用される「容器」は、玄米及び浸漬水を入れることができ、少なくとも雑菌減少工程の温度(55℃~65℃)、炊飯工程の温度(約100℃~120℃程度)まで加熱可能であるものが使用され、通常、金属製であるが、セラミック製、炭素製等の金属以外の素材のものを使用することができる。
容器の形状は特に制限はないが、後述する発芽玄米用調理装置に適した形状であることが好ましい。
容器に入れる浸漬水は、玄米が十分に水分を吸収できる量であればよく、通常、玄米全体を浸漬水で浸される量である。また、上述の通り、本発明の発芽玄米米飯の製造方法においては、浸漬水は炊飯水としても使用されるため、浸漬水の量は炊飯後の発芽玄米米飯の含水量を考慮して適宜決定すればよい。
発芽工程は、容器内で玄米を浸漬水に浸漬し、所定の温度に保持して玄米を発芽させる工程である。発芽工程の温度は、玄米の発芽に適した温度で設定され、5℃以上50℃未満であり、好ましくは30℃以上45℃以下である。
発芽工程の浸漬時間は、玄米の発芽に適した時間で設定される。浸漬時間が短すぎると玄米の発芽が不十分となり(特に初回の浸漬)、GABA等の有用成分の生成が不足するため、1時間以上、好ましくは2時間以上であり、浸漬時間が長すぎると雑菌が増加するため、10時間以下、好ましくは6時間以下である。
発芽工程の好適な一例としては、温度が30℃以上45℃以下であり、浸漬時間が2時間以上6時間以下である。このような温度域及び浸漬時間であれば、玄米の発芽促進を良好に行うことが可能である。
雑菌減少工程は、前記容器を、浸漬水を交換することなく、前記発芽工程の温度より高温であって玄米の酵素が失活しない温度に保持し雑菌を減少させる工程である。
発芽玄米は、発芽の際、玄米に存在する種々の酵素等(加水分解酵素、植物ホルモン等)の働きによって、GABA等の有用成分が生成される。玄米の発芽に適した温度(40℃前後)は雑菌が繁殖しやすい温度であるが、これを高温(例えば、55℃以上)にすることで雑菌が減少する。一方で温度が高すぎると(例えば、65℃超)、酵素が失活するため、有用成分が生成されなくなる。また、酵素が失活しない温度域であれば、玄米が有する植物ホルモンの働きを阻害されずに、玄米の発芽自体も進行する。
本発明の発芽玄米の製造方法では、容器内で浸漬水に浸漬され発芽した玄米を、雑菌を減少する温度であって玄米の酵素が失活しない温度に保持して消毒するため、塩分や抗菌性添加物を加えることなく雑菌の増殖を抑えることができ、かつ、後段の発芽熟成工程において、玄米の発芽がさらに促進し、発芽玄米を熟成させることができる。
雑菌減少工程の温度は、55℃以上65℃以下であり、好ましくは55℃以上63℃以下であり、より好ましくは55℃以上60℃以下である。この温度域であれば、酵素の失活が抑制されると共に、玄米が有する植物ホルモンの働きを阻害することが抑制される。
また、雑菌減少工程の処理時間は、短すぎると雑菌の繁殖を抑えることができないため、1分以上、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上である。また、雑菌減少工程の処理時間が長すぎると炊飯前に玄米が変質して味が劣化する場合があるため、30分以内、より好ましくは20分以内である。
雑菌減少工程の好適な一例としては、温度が55℃以上65℃以下であり、処理時間が1分以上30分以内である。このような温度範囲及び処理時間であれば、雑菌の繁殖を抑制でき、かつ、酵素が失活せず、玄米の変質が進行することを回避できる。
発芽熟成工程は、前記容器を、浸漬水を交換することなく、雑菌減少工程の温度より低温に保持し、玄米の発芽をさらに促進しつつ、発芽玄米を熟成させる工程である。発芽玄米は、熟成(エイジング)することによって、GABA等の有用成分量を増加させ、食味が改善する。
発芽熟成工程は、玄米の発芽、発芽玄米の熟成に適した温度及び時間で設定され、好ましくは30℃以上45℃以下であり、時間が2時間以上6時間以下である。このような温度域及び浸漬時間であれば、発芽玄米の熟成(食味の改善、GABA等の有用成分量の増加)を行うことが可能である。
本発明の発芽玄米の製造方法では、発芽工程、雑菌減少工程及び発芽熟成工程は浸漬水を交換することなく行われるため、玄米が発芽する際に増加するGABAや水溶性ビタミン、ミネラル等の水溶性成分が失われることなく、GABA等の有用成分が発芽玄米(発芽玄米米飯)に残存して有効活用することができる。
また、本発明の発芽玄米の製造方法の特徴のひとつは、雑菌減少工程と発芽熟成工程とを浸漬水を交換することなく繰り返し行うことにある。浸漬水を交換することなく、雑菌減少工程及び発芽熟成工程を繰り返し行うことにより、発芽熟成工程においても雑菌の繁殖を抑制しつつ、生成するGABA等の有用成分量を増加させることができる。
雑菌減少工程と発芽熟成工程との繰り返し回数の制限はなく、雑菌減少工程と発芽熟成工程における温度及び時間(炊飯工程を有する場合は炊飯完了迄の時間)等を考慮して適宜決定されるが、2回以上、好ましくは3回以上である。また、繰り返し回数が多すぎると炊飯前に発芽玄米の味が劣化する場合があるため、8回以下、好ましくは6回以下である。
本発明の発芽玄米の製造方法で得られた発芽玄米は、雑菌に由来する特有の腐敗臭が少なく、白米に比べタンパク質、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、食物繊維、γ-アミノ酪酸等の有用成分が多く含まれている。
得られた発芽玄米は、通常、直ぐに炊飯工程に供されるが、炊飯工程まで保存することもできる。発芽玄米は常温では雑菌が繁殖するおそれがあるため、保存する場合には水分を留去させて乾燥したり、冷蔵又は冷凍処理したりすることが好ましい。
また、本発明の発芽玄米の製造方法は、発芽工程、雑菌減少工程及び発芽熟成工程を同じの容器内で行うため、使用する装置をコンパクトにすることができる。
本発明の発芽玄米米飯の製造方法は、上記本発明の発芽玄米の製造方法で得られた発芽玄米を、前記容器内で加熱し炊飯する工程を有する。すなわち、本発明の発芽玄米米飯の製造方法では、発芽玄米の製造と、発芽玄米の炊飯を一つの容器内で行うことができるため、コンパクトな炊飯用調理装置を使用して炊飯することが可能である。本発明の発芽玄米の製造方法に適した温度コントロールができるものであれば、家庭用の炊飯用調理装置を転用することもできる。
炊飯工程において、発芽玄米の製造に用いた浸漬水を交換せず、そのまま炊飯水として使用することが好ましい。発芽玄米の製造に用いた浸漬水を交換せず、そのまま炊飯水として使用することによって、玄米の発芽によって生成するGABA等の有用成分や、玄米又は発芽玄米が含有するビタミンB群やミネラルなどの水溶性成分の有用成分の含有量が高いものとなる。
なお、本発明における発芽玄米米飯の製造は、上記発芽促進処理と炊飯を行うのに必要な温度制御が可能な炊飯装置や調理装置を用いて行うことができる。これによって、1種類の炊飯装置を用いて、浸漬液を交換することなく、そのまま直接炊飯して迅速に発芽玄米米飯を得ることができる。
炊飯工程における炊飯条件は、一般的な白米や玄米などの炊飯条件と同様であり、製造しようとする発芽玄米米飯の固さ、水分量等に応じて適宜変更される。炊飯工程では、容器を加熱することによって炊飯水を沸騰させ、容器内の温度が100℃程度(圧力釜の場合は約120℃程度)まで上昇する。
本発明の発芽玄米米飯の製造方法によって得られる発芽玄米米飯は、雑菌に由来する特有の腐敗臭がなく、良好な風味を有する。
上述した本発明の発芽玄米の製造方法及び本発明の発芽玄米米飯の製造方法に用いる調理装置は特に限定されず、市販の炊飯器をそのまま利用したり、一部改造して使用したりしてもよい。好適には、玄米と浸漬水とを収容可能な容器と、前記容器の温度を制御する温度制御手段と、発芽玄米用調理装置の機能の少なくとも一部をコンピュータに実行させるためのプログラムと、を備えた発芽玄米用調理装置(以下、「本発明の発芽玄米用調理装置」と称す。)を使用することができる。
また、本発明の発芽玄米用調理装置は、前記温度制御手段をプログラムによって制御し、本発明の発芽玄米の製造方法及び本発明の発芽玄米米飯の製造方法を実行させることが好ましい。
すなわち、本発明のプログラムは、発芽玄米用調理装置のプログラムであって、前記容器内で玄米を浸漬水に浸漬し、所定の温度に保持して玄米を発芽させる発芽工程を実行する手順と、前記発芽工程の後に、前記容器を、浸漬水を交換することなく、前記発芽工程の温度より高温であって玄米の酵素が失活しない温度に保持し雑菌を減少させる雑菌減少工程を実行する手順と、前記雑菌減少工程の後に、前記容器を、浸漬水を交換することなく、雑菌減少工程の温度より低温に保持し、玄米の発芽をさらに促進しつつ、発芽玄米を熟成させる発芽熟成工程を実行する手順と、前記容器内で加熱し炊飯する炊飯工程を実行する手順と、をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
また、本発明のプログラムは、前記雑菌減少工程と前記発芽熟成工程とを浸漬水を交換することなく繰り返して実行させることが好ましい。
また、本発明のプログラムは前記発芽工程を、温度30℃以上45℃以下、2時間以上6時間以下で実行させることが好ましい。
また、本発明のプログラムは前記雑菌減少工程を、温度55℃以上65℃以下、1分以上30分以内で実行させることが好ましい。
また、本発明のプログラムは前記発芽熟成工程を、温度30℃以上45℃以下、2時間以上6時間以下で実行させることが好ましい。
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を説明する。
図1に、本発明の実施形態の発芽穀物用調理装置10の模式図を示す。発芽穀物用調理装置10は、市販の炊飯器を一部改造したものであり、本発明の発芽玄米及び発芽玄米米飯の製造に使用できる。
発芽穀物用調理装置10は、金属製の容器21を収納する本体20と、本体20や容器21を上方から覆う蓋体30とを主要部として構成され、商用電力で駆動して発芽玄米の製造、発芽玄米の炊飯や保温を行う。なお、図1においては、発芽穀物用調理装置10は、蓋体30を開いた状態であるが、運転時に蓋体30を閉じて使用される。
蓋体30の内側の中央位置には蓋体30を閉じた際に容器21の蓋となる金属製の放熱板31が設けられている。放熱板31の中央には蒸気孔32が設けられ、蒸気が閉じた姿勢の蓋体30の外部と容器21の内部とを連通可能に構成されており、外部に蒸気を排出することができる。
本体2の正面には、操作パネル22を備えられ、表示画面や利用者の操作に供される各種のキースイッチを有する。
図1には図示していないが、本体2の内部には容器21の温度制御手段を備える。温度制御手段は、図2にブロック図を示すように、制御基板40と、容器21の加熱する加熱部51と、容器21の温度を測定する温度測定部52を主要部として構成される。制御基板40は、記憶部41、制御部42、加熱時間を計測するタイマー43を備えている。
加熱部51及び温度測定部52は、本体2に内蔵された制御基板40に電気的に接続されており、操作パネル22を介して制御基板40を操作することにより、加熱部51(ヒータ)は、容器21を発芽工程及び雑菌減少工程(並びに好適には炊飯工程)に適した温度条件にコントロールすることができる。
記憶部41は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等を有し、発芽玄米の製造及び発芽玄米米飯の炊飯に伴う各種の設定データやプログラム(本発明のプログラム及びそれ以外のプログラム)を格納している。操作パネル22の操作内容に基づいて、記憶部41のプログラムが適宜読み出されており、記憶部41は、温度測定部52の測定結果から、加熱部51をはじめとした機能を当該プログラムに沿って実行する。
以下、発芽玄米用調理装置10の動作の一例を図3に示すフローチャートに基づいて説明する。また、図4には、図3に示すフローチャートのS1~S5に対応する本実施形態の発芽玄米の製造方法の温度―時間プロファイルを示す。
まず、原材料である玄米と水を入れた容器21を本体2にセットし、蓋体30を閉じる。次いで、操作パネル22を操作し、目的とするプログラムを選択する。
図3のステップS1では、プログラムに基づいて記憶部41が駆動信号を加熱部51に出力し、温度40℃の条件で保持する(発芽工程)。容器21の温度は温度測定部52で測定される(以下の工程においても同様)。発芽工程で玄米は水を吸収し、発芽して発芽玄米となる。本実施形態では発芽工程は温度40℃の条件で、4時間保持しているが、本発明の目的を損なわない限り、適宜変更可能である(好適には温度30~45℃、浸漬時間2~6時間)。
次いで、ステップS2に進み、プログラムに基づいて記憶部41が駆動信号を加熱部51に出力し、温度60℃の条件で保持する(雑菌減少工程)。この工程で容器21内に発生した雑菌を減少させる。本実施形態ではステップS2では温度60℃の条件で、15分保持しているが、本発明の目的を損なわない限り、適宜変更可能である(好適には温度55~63℃、処理時間5~30分)。
次いで、ステップS3に進み、プログラムに基づいて記憶部41が駆動信号を加熱部51に出力して容器21の加熱を止め、温度40℃になったのちにその温度で保持する(発芽熟成工程)。この工程で発芽玄米の食味がより改善すると共に生成するGABA量が増加する。本実施形態ではステップS3では温度40℃の条件で、4時間保持しているが、本発明の目的を損なわない限り、適宜変更可能である(好適には温度30~45℃、浸漬時間2~6時間)。
次いで、ステップS2と同条件のステップS4(雑菌減少工程)に進み、容器21内に発生した雑菌を減少させ、次いで、ステップS3と同条件のステップS5(発芽熟成工程)に進み、玄米の発芽を促進させ、発芽玄米を熟成させる。この雑菌減少工程及び発芽熟成工程を炊飯工程に供されるまで繰り返すことにより、容器21内に雑菌を増加させることなく、食味が改善し、生成するGABA等の有用成分量が増加した発芽玄米を製造する。
なお、本実施形態では雑菌減少工程(ステップS2,S4)及び発芽熟成工程(ステップS3,S5)はそれぞれ2回であるが、本発明の目的を損なわない限り、2回以上であってもよい。また、本実施形態では雑菌減少工程(ステップS2,S4)の同一の温度及び時間であるが、異なる温度(好適には55~63℃の範囲)、時間(好適には5~30分)で行ってもよい。また、本実施形態では発芽熟成工程(ステップS3,S5)の同一の温度及び時間であるが、異なる温度(好適には30~45℃の範囲)、時間(好適には2~6時間の範囲)で行ってもよい。
次いで、ステップS6に進み、プログラムに基づいて記憶部41が駆動信号を加熱部51に出力して容器21の加熱を行い、炊飯を行う(炊飯工程)。本実施形態の炊飯工程は、一般的な炊飯の条件を採用しており、容器21内の温度は8~15分で約100℃に上昇し、20分以上、約100℃を維持させ、約95℃で蒸らすことで炊飯して、発芽玄米米飯を製造する。製造された発芽玄米米飯は、容器21内で65~80℃程度の温度で保温される。
本実施形態の発芽穀物用調理装置10は容器21が圧力釜構造を採用しているため、約120℃まで温度上げることができ、必要に応じてより柔らかい発芽玄米米飯を得ることができる。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用することができ、制限的なものではない。
例えば、本発明の実施形態の発芽穀物用調理装置10においては、プログラムは内臓の記憶部41に格納されているが、プログラムを外部のコンピュータが読み取り可能な記録媒体に格納し、外部のコンピュータを介して、発芽穀物用調理装置を操作するように構成してもよい。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(発芽玄米米飯の製造)
市販の炊飯器(ミニライスクッカーLRC-T106、アルファックス・コイズミ株式会社製)を転用し、上記本発明の発芽玄米用調理装置10に準じた構成の装置を使用した。以下の通り、図4に準じる条件で発芽玄米の製造を行い、得られた発芽玄米を炊飯した。
<炊飯例1>(比較例)
まず、玄米100g(ゆめぴりか・北海道産)及び水200mLを容器に入れ(初期温度22℃)、40℃で240分保持し(発芽工程S1)、発芽玄米(A)を得た。次いで、水を交換することなく炊飯し(炊飯時間:約40分)、発芽玄米米飯(A)を得た。
<炊飯例2>(実施例)
まず、玄米100g(ゆめぴりか・北海道産)及び水200mLを容器に入れ(初期温度22℃)、40℃で240分保持した(発芽工程S1)。次いで、60℃に昇温し15分保持した(雑菌減少工程S2)。その後、徐冷して40℃で240分保持し(発芽熟成工程S3)、発芽玄米(B)を得た。次いで、水を交換することなく炊飯し(炊飯時間:約40分)、発芽玄米米飯(B)を得た。
<炊飯例3>(実施例)
まず、玄米100g(ゆめぴりか・北海道産)及び水200mLを容器に入れ(初期温度22℃)、40℃で240分保持し(発芽工程S1)、次いで、60℃に昇温し15分保持した(雑菌減少工程S2)。次いで、徐冷して40℃で240分保持し(発芽熟成工程S3)、再度60℃に昇温し15分保持した(雑菌減少工程S4)。その後、徐冷して40℃で240分保持し(発芽熟成工程S5)、発芽玄米(C)を得た。次いで、水を交換することなく炊飯し(炊飯時間:約40分)、発芽玄米米飯(C)を得た。
表1に発芽玄米米飯(A),(B)及び(C)のGABA含有量、食味評価の結果をまとめて示す。また、表1には参考例として未処理の生玄米(ゆめぴりか・北海道産)のGABA含有量も併せて示す。なお、表1において、GABA含有量は、測定対象の水分を常圧加熱乾燥法で十分に除去した乾燥物基準の値である。
Figure 0007072951000002
表1の通り、発芽玄米米飯(A)は生玄米よりGABA含有量が増加していることから、発芽工程S1における玄米の発芽で生成したGABAが炊飯後も残存していることが認められた。さらに、雑菌減少工程及び発芽熟成工程を有する発芽玄米米飯(B)及び(C)ではGABA含有量がさらに増加し、食味が改良し、発芽玄米米飯(A)で若干認められた腐敗臭が発芽玄米米飯(B)及び(C)では認められなかった。特に雑菌減少工程及び発芽熟成工程を2回繰り返した発芽玄米米飯(C)ではGABA含有量が最も多く、食味よく、良い香りであった。
これらの結果から玄米の発芽工程の後に雑菌減少工程及び発芽熟成工程を有することによって(特には雑菌減少工程及び発芽熟成工程の繰り返し)、炊飯後の発芽玄米米飯のGABA含有量、食味、香りの全ての面で改善することが明らかとなった。
(発芽玄米の微生物検査)
雑菌減少工程後の発芽玄米についての微生物検査を実施し、55℃以上65℃以下の温度処理で雑菌の減少が認められるかを確認した。
以下の通り、発芽玄米の製造を行い、発芽玄米(a)~(e)について、微生物検査を行った。発芽玄米の製造には、市販の炊飯器(ミニライスクッカーLRC-T106、アルファックス・コイズミ株式会社製)を転用し、上記本発明の発芽玄米用調理装置10に準じた構成の装置を使用した。
<発芽玄米(a)>(比較例)
玄米500g(ゆめぴりか・北海道産)及び水1000mLを容器に入れ(初期温度22℃)、40℃で240分保持し(発芽工程S1)、発芽玄米(a)を得た。
<発芽玄米(b)>(実施例)
得られた発芽玄米(a)を用いて、水を交換することなく、55℃に昇温させ30分保持し(雑菌減少工程S2)、発芽玄米(b)を得た。
<発芽玄米(c)>(実施例)
得られた発芽玄米(a)を用いて、水を交換することなく、55℃に昇温させ60分保持し(雑菌減少工程S2)、発芽玄米(c)を得た。
<発芽玄米(d)>(実施例)
得られた発芽玄米(a)を用いて、水を交換することなく、55℃に昇温させ120分保持し(雑菌減少工程S2)、発芽玄米(d)を得た。
<発芽玄米(e)>(実施例)
得られた発芽玄米(a)を用いて、水を交換することなく、65℃に昇温させ10分保持し(雑菌減少工程S2)、発芽玄米(e)を得た。
微生物検査の検査項目として、一般生菌、大腸菌群、大腸菌の3項目について、検査を行った。
検体は10mgまたは10mL秤量し、生理食塩水で10倍希釈することにより、試料原料を得た。得られた試料原料は段階希釈を行い、希釈段階ごとの試料と標準寒天培地またはXM-G寒天培地を用い、混釈平板培養法にて培養を行った(35±1℃、20±2時間)。培養後、培地上に出現した定型的集落(コロニー)の測定をし、生菌数を算出した。
表2に発芽玄米(a)から(e)の一般生菌、大腸菌群及び大腸菌の微生物検査の結果をまとめて示す。なお、表2において、「CFU」とは、Colony Forming Unitの略で、培養でできたコロニー数を表す単位である。また、「陰性」とは、菌の培養(24時間)後、培地内に菌の発育が見られなかったことを意味する。
Figure 0007072951000003
表2の通り、雑菌減少工程を有する発芽玄米(b)、(c)、(d)及び(e)は、雑菌減少工程として実施したどの温度、時間においても、発芽工程のみを有する発芽玄米(a)の菌数に比べて、一般生菌及び大腸菌群の菌数が減少しており、一般生菌は300(CFU/g)未満であり、大腸菌群は陰性であった。また、(a)から(e)のどの発芽玄米においても、大腸菌は陰性であった。
これらの結果から、玄米の発芽工程の後に、55℃以上65℃以下の雑菌減少工程を有することによって、雑菌が大幅に減少することが明らかになった。
(発芽大豆飯の製造)
市販の炊飯器(ミニライスクッカーLRC-T106、アルファックス・コイズミ株式会社製)を転用し、上記本発明の発芽穀物用調理装置10に準じた構成の装置を使用した。以下の通り、図4に準じる条件で発芽大豆の製造を行い、得られた発芽大豆を炊飯した。
<炊飯例4>
大豆100g(無農薬大豆・熊本県産)及び水200mLを容器に入れ(初期温度10℃)、40℃で240分保持し(発芽工程S1)、発芽大豆を得た。次いで、水を交換することなく炊飯し(炊飯時間:約40分)、発芽大豆飯(A)を得た。
<炊飯例5>
大豆100g(無農薬大豆・熊本県産)及び水200mLを容器に入れ(初期温度10℃)、40℃で240分保持した(発芽工程S1)。次いで、60℃に昇温し30分保持した(雑菌減少工程S2)。その後、徐冷して40℃で240分保持し(発芽熟成工程S3)、発芽大豆を得た。次いで、水を交換することなく炊飯し(炊飯時間:約40分)、発芽大豆飯(B)を得た。
<炊飯例6>
大豆100g(ゆめぴりか・北海道産)及び水200mLを容器に入れ(初期温度10℃)、40℃で240分保持し(発芽工程S1)、次いで、60℃に昇温し30分保持した(雑菌減少工程S2)。次いで、徐冷して40℃で240分保持し(発芽熟成工程S3)、再度60℃に昇温し30分保持した(雑菌減少工程S4)。その後、徐冷して40℃で240分保持し(発芽熟成工程S5)、発芽大豆を得た。次いで、水を交換することなく炊飯し(炊飯時間:約40分)、発芽大豆飯(C)を得た。
表3に発芽大豆飯(A),(B)及び(C)のGABA含有量、食味評価の結果をまとめて示す。また、表3には参考例として未処理の生大豆(無農薬大豆・熊本県産)のGABA含有量も併せて示す。なお、表3において、GABA含有量は、測定対象の水分を常圧加熱乾燥法で十分に除去した乾燥物基準の値である。
Figure 0007072951000004
表3の通り、発芽大豆飯(A)は生大豆よりGABA含有量が増加していることから、発芽工程S1における大豆の発芽で生成したGABAが炊飯後も残存していることが認められた。さらに、雑菌減少工程及び発芽熟成工程を有する発芽大豆飯(B)及び(C)ではGABA含有量がさらに増加した。特に雑菌減少工程及び発芽熟成工程を2回繰り返した発芽大豆飯(C)ではGABA含有量が最も多く、食味がよかった。
これらの結果から大豆の発芽工程の後に雑菌減少工程及び発芽熟成工程を有することによって(特には雑菌減少工程及び発芽熟成工程の繰り返し)、炊飯後の発芽大豆飯のGABA含有量、食味の面で改善することが明らかとなった。
(発芽大豆の微生物検査)
雑菌減少工程後の発芽大豆についての微生物検査を実施し、雑菌減少工程後の発芽大豆に雑菌の減少が認められるかを確認した。
以下の通り、発芽大豆の製造を行い、発芽大豆(a)~(c)について、微生物検査を行った。発芽大豆の製造には、市販の炊飯器(ミニライスクッカーLRC-T106、アルファックス・コイズミ株式会社製)を転用し、上記本発明の発芽玄米用調理装置10に準じた構成の装置を使用した。
<発芽大豆(a)>
大豆100g(無農薬大豆・熊本県産)及び水200mLを容器に入れ(初期温度10℃)、40℃で240分保持し(発芽工程)、60℃に昇温し30分保持し(雑菌減少工程)、発芽大豆(a)を得た。
<発芽大豆(b)>
大豆100g(無農薬大豆・熊本県産)及び水200mLを容器に入れ(初期温度10℃)、40℃で240分保持し(発芽工程)、60℃に昇温し30分保持した(雑菌減少工程)。その後、徐冷して40℃で240分保持した(発芽熟成工程)。さらに、60℃に昇温し30分保持し(雑菌減少工程)、発芽大豆(b)を得た。
<発芽大豆(c)>
大豆100g(無農薬大豆・熊本県産)及び水200mLを容器に入れ(初期温度10℃)、40℃で240分保持し(発芽工程)、60℃に昇温し30分保持した(雑菌減少工程)。その後、徐冷して40℃で240分保持した(発芽熟成工程)。さらに、60℃に昇温し30分保持した(雑菌減少工程)。その後、再度徐冷して40℃で240分保持した(発芽熟成工程)。再度、60℃に昇温し30分保持し(雑菌減少工程)、発芽大豆(c)を得た。
微生物検査の検査項目として、一般生菌、大腸菌群、大腸菌の3項目について、検査を行った。検体の検査方法は、上記(発芽玄米の微生物検査)の方法と同様である。
表4に発芽大豆(a)から(c)の一般生菌、大腸菌群及び大腸菌の微生物検査の結果をまとめて示す。なお、表4において、「CFU」とは、Colony Forming Unitの略で、培養でできたコロニー数を表す単位である。また、「陰性」とは、菌の培養(24時間)後、培地内に菌の発育が見られなかったことを意味する。
Figure 0007072951000005
表4の通り、発芽熟成工程を繰り返したとしても、雑菌減少工程を有する発芽大豆は、雑菌の増殖は認められず、一般生菌は300(CFU/g)未満であり、大腸菌群及び大腸菌は陰性であった。
10 発芽穀物用調理装置
20 本体
21 容器
22 操作パネル
30 蓋体
31 放熱板
32 蒸気孔
40 制御基板
41 記憶部
42 制御部
43 タイマー
51 加熱部
52 温度測定部

Claims (7)

  1. 容器内で穀物を浸漬水に浸漬し、30℃以上45℃以下に保持して穀物を発芽させる発芽工程と、
    前記発芽工程の後に、前記容器を、浸漬水を交換することなく、55℃以上65℃以下に保持し雑菌を減少させる雑菌減少工程と、
    前記雑菌減少工程の後に、前記容器を、浸漬水を交換することなく、30℃以上45℃以下に保持し、穀物の発芽をさらに促進しつつ、発芽穀物を熟成させる発芽熟成工程と、を有し、
    前記穀物が、大豆であり、
    前記雑菌減少工程と前記発芽熟成工程とを浸漬水を交換することなく繰り返すことを特徴とする発芽穀物の製造方法。
  2. 前記発芽工程の浸漬時間が2時間以上6時間以下である請求項1に記載の発芽穀物の製造方法。
  3. 前記雑菌減少工程の処理時間が1分以上30分以内である請求項1または2に記載の発芽穀物の製造方法。
  4. 前記発芽熟成工程の浸漬時間が2時間以上6時間以下である請求項1からのいずれかに記載の発芽穀物の製造方法。
  5. 請求項1からのいずれかに記載の製造方法で得られた発芽穀物を、発芽穀物の製造に用いた浸漬水を交換せず、そのまま炊飯水として使用して、前記容器内で加熱し炊飯する炊飯工程を有することを特徴とする発芽穀物飯の製造方法。
  6. 請求項1からのいずれかに記載の発芽穀物の製造方法、又は請求項に記載の発芽穀物飯の製造方法に用いる発芽穀物用調理装置であって、
    穀物と浸漬水とを収容可能な容器と、前記容器の温度を制御する温度制御手段と、発芽穀物用調理装置の機能の少なくとも一部をコンピュータに実行させるためのプログラムと、を備えた発芽穀物用調理装置。
  7. 請求項に記載の発芽穀物用調理装置のプログラムであって、
    前記容器内で穀物を浸漬水に浸漬し、30℃以上45℃以下に保持して穀物を発芽させる発芽工程を実行する手順と、
    前記発芽工程の後に、前記容器を、浸漬水を交換することなく、55℃以上65℃以下に保持し雑菌を減少させる雑菌減少工程を実行する手順と、
    前記雑菌減少工程の後に、前記容器を、浸漬水を交換することなく、30℃以上45℃以下に保持し、穀物の発芽をさらに促進しつつ、発芽穀物を熟成させる発芽熟成工程を実行する手順と、
    前記容器内で加熱し炊飯する炊飯工程を実行する手順と、
    をコンピュータに実行させるためのプログラム。
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