JP2017055776A - 密封食品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】食品として許容される酸性水溶液を準備し、当該水溶液で食品原料を処理して、前記水溶液が表面に付着した食品原料を得る処理工程;並びに前記処理された食品原料を殺菌する殺菌工程を含む、密封食品の製造方法。
【選択図】なし
Description
包装米飯は、レトルト殺菌工程を経るものと、無菌的に製造された後に無菌的に包装される、無菌包装米飯(例えば特許文献1及び2)とに大別できる。無菌包装米飯の殺菌工程においては、Bacillus属など、芽胞を形成する耐熱性細菌を確実に死滅させる条件での殺菌が特に重要であると考えられてきたが、そのためには、過剰な条件で処理することとなり、食味が劣る傾向にあった。そこで、食味が低下する過加熱を避け、かつ芽胞に有効な高い殺菌効果を得るための技術として、制菌作用のある製剤に接触させる方法や、制菌可能な低いpHに調整する方法が提案されてきた(特許文献3〜7)。
以上を鑑み、本発明は耐熱性細菌の生育を抑制した密封食品を提供することを課題とする。
[1]食品として許容される酸性水溶液を準備し、当該水溶液で食品原料を処理して、前記水溶液が表面に付着した食品原料を得る処理工程;並びに前記処理された食品原料を殺菌する殺菌工程を含む、密封食品の製造方法。
[2]無菌包装米飯の製造方法であって、
米を水に浸漬することにより吸水させる吸水工程;食品として許容される酸性水溶液を調製し、当該水溶液で前記吸水させた米を処理して、前記水溶液が表面に付着した米を得る処理工程;前記処理された米を加圧加熱殺菌する加圧加熱殺菌工程;加圧加熱殺菌された米を加熱炊飯する炊飯工程;並びに得られた炊飯米を無菌的に包装する包装工程、
を含む、前記方法。
1.処理工程
本工程では、食品として許容される酸性水溶液を準備し、当該水溶液で食品原料を処理して、前記水溶液が表面に付着した食品を得る。
食品として許容される酸性水溶液とは、通常、食品分野で使用される有機酸、無機酸、及びこれらの塩を含む酸性水溶液である。本工程で用いる水は、食品の原料として通常用いられる水である。
本発明においては、入手が容易であることから有機酸又はその塩を含む酸性水溶液を用いることが好ましい。当該水溶液は、前記有機酸、無機酸、及びこれらの塩を水に溶解させて調製できる。これらの有機酸等は、合成物、天然物、発酵により生産された物のいずれを用いてもよい。
グルコン酸((2R,3S,4R,5R)-2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキサン酸)は、天然物(蜂蜜、果物、米)の中に微量存在する成分である。クエン酸(2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸又は3-ヒドロキシペンタン二酸-3-カルボン酸ということもある。)及びアスコルビン酸((R)-3,4-ジヒドロキシ-5-((S)- 1,2-ジヒドロキシエチル)フラン-2(5H)-オン)は、天然物では、かんきつ類等の中に比較的多く含有されている成分である。
食品原料とは密封食品の原料となる食品である。特に本発明においては、原料として、長期保存後の喫食時に微生物汚染によって、その安全が危惧される密封食品用の原料を用いる場合に効果が顕著となる。
本発明に用いられる食品原料の典型的な例は、米である。本発明で「米」というときは、特に記載した場合を除き、調理されていないものをいい、「米」は、玄米、分づき米、金芽米、白米(精白米ということもある。)、これらの混合物を含む。本発明では、水(各種成分を含むことがある。)に充分な時間に浸漬し、吸水させた米を、「吸水米」、炊飯工程を経た米を「炊飯米」又は「米飯」という。本発明においては、米は、ジャポニカ種(日本型、短粒種)、インディカ種(インド型、長粒種)、ジャバニカ種(ジャワ型、大粒種)であってもよく、うるち米であってももち米であってもよく、品種も限定されないが、食味に優れた品種を特に好適に用いることができる。好ましい品種の例には、コシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、キヌヒカリ、きらら、はえぬき、ほしのゆめ、つがるロマン、めんこいな、こしいぶきがある。複数の品種を混合したブレンド米を用いることもできる。
食品原料は、前記酸性水溶液により処理され、当該水溶液が表面に付着した食品原料とされる。当該水溶液は、食品原料表面の一部に付着していればよいが、本発明の効果をより良く奏するためには、食品原料のほぼ全表面が当該水溶液により被覆されていることが好ましい。
食品原料を200秒以上処理することが好ましく、250秒以上処理することがより好ましく、300秒以上処理することがさらに好ましい。200秒以上処理するとは、例えば、食品原料を酸性水溶液に浸漬する場合は、浸漬時間を200秒以上とすることである。処理時間の上限は、作業性等を特に考慮して決定されるが、1500秒以下が好ましく、1200秒以下がより好ましく、1000秒以下がさらに好ましい。
食品原料を15秒以上処理することが好ましく、20秒以上処理することがより好ましく、50秒以上処理することがさらに好ましく、60秒以上処理することが特に好ましい。処理時間の上限は、特に食味の低下を考慮して決定されるが、1200秒以下が好ましく、500秒以下がより好ましく、300秒以下がさらに好ましく、100秒以下が特に好ましい。当該pHの範囲において酸性水溶液は、グルコン酸、又は食品として許容されるそれらの塩を含む水溶液であることが特に好ましい。
食品原料を8秒以上処理することが好ましく、10秒以上処理することがより好ましく、50秒以上処理することがさらに好ましい。処理時間の上限は、特に食味の低下を考慮して決定されるが、100秒以下が好ましく、80秒以下がより好ましく、60秒以下がさらに好ましい。当該pHの範囲において酸性水溶液は、クエン酸、又は食品として許容されるそれらの塩を含む水溶液、或いはグルコン酸、又は食品として許容されるそれらの塩を含む水溶液であることが特に好ましい。
本工程では、前工程で得た水溶液が表面に付着した食品原料を殺菌する。殺菌の具体的方法は、食品分野で通常採用されている方法を用いてよい。このような方法としては、加圧加熱殺菌、放射線殺菌、又は電磁波殺菌等が挙げられる。これらのうち複数の方法を併用してもよい。
本発明の製造方法は、処理工程の前に、食品原料を吸水させる吸水工程を有していてもよい。酸性水溶液による処理時間が長い場合、食品原料が酸性水溶液を吸収し、最終的に得られる食品の食味及び食感において好ましくない影響を与えることがある。しかしながら、このような不都合は、予め食品原料を充分に吸水させておくことにより、防止することができる。吸水工程は、食品原料を水に有効時間浸漬することにより実施できる。例えば、食品原料が米である場合、原料米が充分に浸る量の水に、原料米を5〜240分、好ましくは20分〜120分、より好ましくは40分〜90分、浸漬すればよい。吸水工程の水温は10〜20℃程度であれば特に問題はないが、通常、温度が低ければ吸水が遅く、温度が高ければ吸水は速い。細菌学的に清浄に保つためには低い温度が適しているといえる。吸水のための温度及び時間は、当業者であれば適宜設計できる。
本発明の製造方法は、調理工程を含んでもよい。調理工程は、好ましくは、トレー内で加圧加熱殺菌された食品原料に、必要に応じ加水し、一食分毎に行う。食品原料として米を用いる場合、調理工程は炊飯工程である。炊飯のために要される水量は、当業者であれば、適宜設計できる。炊飯調理上有効な条件は、例えば100〜105℃程度の蒸気で、数十分間加熱することである。
このような工程により製造された食品は、常温保存で無菌状態を充分に長く(例えば、6か月を超えて)保つことができ、電子レンジ等で加熱後、直ちに喫食可能である。
本発明で得られた密封食品は、長期保存しても細菌による汚染が少ない。本発明で得られた密封食品は、一般的な食中毒菌の生育最低水分活性である0.94Aw以上の高水分活性を有していても、細菌による汚染が少ないという特徴を有する。
グルコン酸緩衝液:グルコノデルタラクトン(フジグルコン、扶桑化学工業株式会社製。以下「GDL」という。)を混合した水を30〜40分間加熱しながら溶解した。GDLは、この条件で加水分解してほぼすべてグルコン酸になる。得られたグルコン酸溶液と別に調整したグルコン酸ナトリウム(ヘルシャスA、扶桑化学工業株式会社製)を水に溶解して得たグルコン酸ナトリウム溶液とを混合することにより、所定のpH及び濃度のグルコン酸溶−グルコン酸ナトリウム緩衝液(以下、単に、「グルコン酸緩衝液」という。)を得た。緩衝作用は酸/共役塩基のモル濃度比が1に近づくほど大きくなる。
植菌米を洗米した。洗米後の米の耐熱菌数を確認したところ、約104cfu/mlであった。洗米した米を水に1時間浸漬し吸水米を得た。
当該吸水米を表2に示すグルコン酸緩衝液に10〜300秒間浸漬して処理した。具体的には、ザルに入れた吸水米をグルコン酸緩衝液に浸した後、ザルを引き上げ、米表面が乾燥しない程度にザルを揺さぶり水切りし、処理を行なった。前述の方法で殺菌及び調理して包装米飯を得た。得られた包装米飯について、食味、食感、及び殺菌効果の評価を行った。
1)5g以上の米飯に9倍量の蒸留水を添加し、20℃で30分以上放置した。
2)指で米粒が潰れることを確認した後、ストマッカーで3分ホモジナイズした。
3)その上清を採取し、pH測定した。
水に浸漬した後の米をグルコン酸緩衝液に浸す工程を経ない以外は、実施例1と同様にして比較用の包装米飯を製造し、評価した。結果を表2中に比較例として示した。
pH5.2以上のグルコン酸緩衝液を用いた場合、食味や食感が好ましい場合があるが、いずれも4日以内に変敗が起こった。
表3に示す条件で、実施例1と同様にして包装米飯を製造し、評価した。結果を表3に示す。
pH4.4のグルコン酸緩衝液を用いた場合、処理時間が60秒であると5日で変敗が生じた。
pH2.5のグルコン酸緩衝液を用いた場合は食味が低下する傾向が見られた。
グルコン酸緩衝液の効果をさらに確認するために、表4−1および表4−2に示す条件で、実施例1と同様にして包装米飯を製造し、殺菌効果を評価した。
表4−1および表4−2に示すとおり、優れた殺菌効果が確認できた。
クエン酸(和光純薬株式会社製)およびクエン酸ナトリウム(和光純薬株式会社製)を用い、表4に示すpH及び濃度のクエン酸溶−クエン酸ナトリウム緩衝液(以下、単に、「クエン酸緩衝液」という。)を得た。
このクエン酸緩衝液を用いて、表5に示す条件で、実施例1と同様にして包装米飯を製造し、評価した。結果を表5に示す。
実施例1の各包装米飯の殺菌状態を確認するための検討を行なった。実施例1で得た包装米飯のうち、pH3.8、0.2mol/lのグルコン酸緩衝液を用いて10〜120秒処理する工程を経て得た包装米飯の一般生菌数を、標準寒天平板菌数測定法にて測定した。0日目の測定は、炊飯後、密封、蒸らし、冷却して得た包装米飯について直ちに行った。14日目は、14日間35℃に放置した後に測定を行った。表5に示すとおり、生菌は検出されなかった。
前述の原料米を準備し、洗米後、水に1時間浸漬して吸水米とした。テーブルマーク株式会社から市販されている冷凍グリーンピース(グリーン・ジャイアント)を30分間水に浸漬して解凍した後、吸水米と混合した。混合比は、吸水米:解凍グリーンピース=9:1(重量比)とした。
吸水米と解凍グリーンピースとの混合物をグルコン酸緩衝液で処理せず、かつ、炊き水として特許文献2に記載のグルコン酸液を使用した以外は、実施例5と同様にして包装具飯を得て、評価した。特許文献2に記載のグルコン酸液は、グルコノデルタラクトンを、水に対して0.4重量%の割合で添加して調製した。結果を表7に示す。
前述の原料米を準備し、洗米後、水に1時間浸漬して吸水米とした。国内産大麦を加工して得た米粒麦(株式会社はくばく製)を洗浄後、水に1時間浸漬して吸水米粒麦とした。吸水米と吸水米粒麦を70:30(重量比)の割合で混合した。
当該混合物を、pH3.2の0.1Mグルコン酸緩衝液(酸と塩の配合比が8:2)に60秒間浸漬して処理した。処理された混合物を前述の方法で殺菌及び調理して包装麦飯を得て評価した。炊き水の配合比は、混合物:炊き水=110:85(重量比)とした。ただし、常法により麦茶を作成し、その麦茶を炊き水として用いた。結果を表7に示す。
吸水米と吸水米粒麦との混合物をグルコン酸緩衝液で処理せず、かつ、炊き水として以下のグルコン酸液を使用した以外は、実施例6と同様にして包装麦飯を得て評価した。グルコン酸液は、グルコノデルタラクトンを、水に対して0.4重量%の割合で添加して調整した。結果を表7に示す。
Claims (15)
- 食品として許容される酸性水溶液を準備し、当該水溶液で食品原料を処理して、前記水溶液が表面に付着した食品原料を得る処理工程;並びに
前記処理された食品原料を殺菌する殺菌工程
を含む、密封食品の製造方法。 - 前記酸性水溶液が、有機酸又は有機酸塩を含む水溶液である、請求項1に記載の方法。
- 前記処理工程が、グルコン酸、グルコノデルタラクトン、クエン酸、フマル酸、アスコルビン酸、アジピン酸、コハク酸、酢酸、氷酢酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、リン酸、フィチン酸、イタコン酸、及びα−ケトグルタル酸、食品として許容されるそれらの塩、及びこれらのいずれかの混合物からなる群より選択される酸成分を水に溶解して、喫食時に食品原料が溶解しない程度に低い値から4.4の範囲のpHを有する酸性水溶液を調製し、当該水溶液で食品原料を処理して、前記水溶液が表面に付着した食品原料を得る工程である、
請求項1に記載の方法。 - 前記処理工程が、
(A)前記酸性水溶液のpHが4.0を超え4.4以下である場合、前記食品原料を200秒以上処理する工程であり、
(B)前記酸性水溶液のpHが3.3〜4.0である場合、前記食品原料を15秒以上処理する工程であり、
(C)前記酸性水溶液のpHが2.1以上3.3未満である場合、前記食品原料を8〜100秒間処理する工程である、
請求項1〜3のいずれかに記載の方法。 - 前記殺菌された食品原料を調理する調理工程をさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 前記食品原料が、穀類又は豆類である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- 前記食品原料が、米であり、前記処理工程の前に、米を水に浸漬することにより吸水させる吸水工程を含む、請求項6に記載の方法。
- 前記酸性水溶液が、グルコン酸、クエン酸、又は食品として許容されるそれらの塩を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
- 前記酸性水溶液が、グルコン酸、又は食品として許容されるそれらの塩を含み、pHが3.3〜4.0であり、
前記処理工程において、食品原料を15秒以上処理する、請求項8に記載の方法。 - 前記酸性水溶液が、グルコン酸、又は食品として許容されるそれらの塩を含み、pHが2.1以上3.3未満であり、
前記処理工程において、食品原料を8〜100秒間処理する、請求項8に記載の方法。 - 前記酸性水溶液が、クエン酸、又は食品として許容されるそれらの塩を含み、pHが2.1以上3.3未満であり、
前記処理工程において、食品原料を8〜100秒間処理する、請求項8に記載の方法。 - 無菌包装米飯の製造方法であって、
米を水に浸漬することにより吸水させる吸水工程;
食品として許容される酸性水溶液を調製し、当該水溶液で前記吸水させた米を処理して、前記水溶液が表面に付着した米を得る処理工程;
前記処理された米を加圧加熱殺菌する加圧加熱殺菌工程;
加圧加熱殺菌された米を加熱炊飯する炊飯工程;並びに
得られた炊飯米を無菌的に包装する包装工程、
を含む、前記方法。 - 前記処理工程が、グルコン酸又は食品として許容されるグルコン酸塩を含み、グルコン酸及び塩の合計のモル濃度が0.05〜0.2mol/lであって、pH3.3〜4.0である酸性水溶液に、吸水させた米を15〜500秒間浸漬させる工程である、請求項12に記載の製造方法。
- 前記処理工程が、グルコン酸又は食品として許容されるグルコン酸塩を含み、グルコン酸及び塩の合計のモル濃度が0.05〜0.2mol/lであって、pH2.1以上3.3未満である酸性水溶液に、吸水させた米を8〜100秒間浸漬させる工程である、請求項12に記載の製造方法。
- 前記処理工程が、クエン酸又は食品として許容されるクエン酸塩を含み、クエン酸及び塩の合計のモル濃度が0.02〜0.2mol/lであって、pHが2.1以上3.3未満である酸性水溶液に、吸水させた米を8〜100秒間浸漬させる工程である、請求項12に記載の製造方法。
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