JP2004097156A - 無菌玄米入りごはんの製造法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】発芽した玄米に任意の割合で白米を加えて洗米後、浸漬水に浸漬し、次いで浸漬水から取り出し、炊飯直前に炊き水を添加して炊飯後、必要に応じて蒸らした後、無菌設備中でガスバリヤー性耐熱容器中に充填し、完全に密封して無菌玄米入りごはんを製造する際に、炊飯後の玄米入りごはんのpHが4〜4.8となるように調整することにより課題を解決できる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は無菌玄米入りごはんの製造法に関するものであり、さらに詳しくは、安全性および長期保存性に優れる上、栄養豊かで、均一で食べ易く、炊きたての美味さが維持される無菌玄米入りごはんの製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
玄米は、精米した米に比べて栄養素を豊富に含んでおり、それ自体で人間が必要とする栄養分の殆どを含んでおり、特に玄米には食物繊維やビタミンB群、ビタミンEなどが多く含まれている。しかし、玄米は、その表面が油脂成分と繊維質成分に富む堅牢な外層部により覆われているため、常圧による炊飯では熱の浸透や吸水が妨げられるため、玄米を常圧で炊飯して得た玄米ごはんは、硬くて粘りが少なく、精白米の米飯に比べて食味が著しく劣っている。
【0003】
このため、従来、玄米を加圧下で炊飯することが行われてきたが、この方法によると、高温高圧条件に弱いビタミンなどの栄養素が一部分解するほか、玄米外層部が軟らかくなるまで加熱すると、他の部分が糊化により糊状になり、美味しい玄米ごはんを製造することは極めて困難であった。
【0004】
また、玄米を10〜40℃、好ましくは25〜35℃の温水に適当な時間浸漬することにより発芽させ、この発芽した玄米を常圧下で炊飯することにより、軟らかな玄米ごはんが得られることが知られている。しかし、玄米の発芽過程において、玄米自身の代謝作用の他、玄米の外周部や水に含まれている雑菌の繁殖などにより、発酵状態となり、玄米に発酵臭や異臭が残留したり、月日を経るにつれて澱粉などの分解が過度に進行し、食品素材としての品質が低下するという問題があった。
【0005】
このような問題点を解決するため、玄米を発芽させるにあたり、殺菌剤を溶解させた温水や希釈した電解食塩水を用いる方法、流水を用いる方法、温水を定期的に交換する方法などが試みられている。しかしながら、殺菌剤などの薬品を用いる方法は、残留成分の影響や薬品臭が残るなどの問題があり、温水を交換したり流水のもとで発芽させる方法は、水やエネルギーの無駄が多く、製造管理が煩雑になるなどの問題がある。
【0006】
そこで発芽させた玄米を熱水処理または蒸気処理するか、あるいはさらにエチルアルコールを加えることにより微生物汚染がなく安全で、発酵臭や異臭のない発芽玄米を作り、その発芽玄米を常圧下で炊飯することにより、品質の劣化が少なく、軟らかくて美味しい玄米ごはんを得る方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
一方、粉砕された玄米を温水に混合し、玄米の澱粉を酸化させる酵素が培養された種を添加し、これを容器に密封してpHが2.5〜6.5に3日以上保存して玄米を処理し、玄米が美味しく食べられるようにする方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−217520公報
【特許文献2】
特開昭62−166855号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の方法は、安全性、長期保存性、美味しさの長期維持性などにいまだ改良の余地があった。
本発明の目的は、安全性および長期保存性により一層優れる上、栄養豊かで、均一で食べ易く、炊きたての美味しさがより一層長期にわたり維持される無菌玄米入りごはんの製造法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記問題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、発芽玄米に白米を加えて洗米後、浸漬水に浸漬し、次いで浸漬水から取り出し、炊飯直前に炊き水を添加して炊飯して炊飯後の玄米入りごはんのpHを特定の範囲とした後、無菌設備中でガスバリヤー性耐熱容器中に充填し、完全に密封することにより課題を解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、上記課題を解決するための本発明の請求項1の無菌玄米入りごはんの製造法は、発芽した玄米に白米を任意の割合で加えて洗米後、浸漬水に浸漬し、次いで浸漬水から取り出し、炊飯直前に炊き水を添加して炊飯後、必要に応じて蒸らした後、無菌設備中でガスバリヤー性耐熱容器中に充填し、完全に密封する無菌玄米入りごはんの製造法であって、炊飯後の玄米入りごはんのpHが4〜4.8となるように調整することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項2の無菌玄米入りごはんの製造法は、請求項1記載の製造法において、pHが2〜5の条件下で発芽処理して発芽した玄米を用いることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項3の無菌玄米入りごはんの製造法は、請求項1あるいは請求項2記載の製造法において、発芽した玄米を熱水洗浄した後、乳酸菌発酵処理することを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項4の無菌玄米入りごはんの製造法は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の製造法において、玄米に加える白米の割合が、玄米:白米(質量比)=99:1〜1:99の範囲であることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項5の無菌玄米入りごはんの製造法は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の製造法において、グルコノデルタラクトン、食用有機酸またはその塩あるいはこれらの2つ以上の混合物から選択される少なくとも1つを含有する浸漬水および/または炊き水を用いることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項6の無菌玄米入りごはんの製造法は、請求項5記載の製造法において、食用有機酸がクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、グルコン酸、乳酸、酢酸、アジピン酸、フィチン酸、アスコルビン酸あるいはこれらの2つ以上の混合物から選択される少なくとも1つの食用有機酸であることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項7の無菌玄米入りごはんの製造法は、請求項5あるいは請求項6に記載の製造法において、有機酸の塩がカリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩およびこれらの2つ以上の混合物から選択される少なくとも1つの有機酸の塩であることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項8の無菌玄米入りごはんの製造法は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の製造法において、ガスバリヤー性耐熱容器中に充填する際、脱酸素剤と共に充填することを特徴とする。
【0019】
本発明において、発芽した玄米を用いると、水分や食用有機酸などが玄米内部まで容易に浸透し、組織を破壊することなく、栄養豊かで、かつ均一で美味しい炊き上がりの玄米入りごはんを製造できる。
水切り後乾燥させた玄米に白米を加えて洗米後、浸漬水に浸漬し、次いで、浸漬水から取り出し、炊飯直前に炊き水を添加して炊飯して炊飯後の玄米入りごはんのpHが4〜4.8の範囲となるようにすると、残りの各種雑菌をさらに殺菌できる。その後、無菌設備中でガスバリヤー性耐熱容器中に充填し、完全に密封することにより、雑菌による汚染がなく、無菌状態を長期にわたり維持できる無菌玄米入りごはんが得られる。この無菌玄米入りごはんは安全性および長期保存性に優れる上、栄養豊かで、均一で食べ易く、炊きたての美味しさが長期にわたり維持される。ガスバリヤー性耐熱容器中に充填する際、脱酸素剤と共に充填すると好気性微生物に対する殺菌効果が一層よくなる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる発芽した玄米は、特に限定されるものではなく、常法により発芽させた公知の発芽玄米を用いることができる。本発明で用いる発芽した玄米に精白米を適宜混合することも可能である。
しかし、発芽玄米の特に外周面には、大腸菌、枯草菌などの一般細菌類、ストレプトミセス属などの放線菌類、ペニシリウム属などの真菌類、セレウス菌などの雑菌が付着している恐れがあるので、玄米を発芽させる場合、次に示す発芽条件で発芽させることが好ましい。
すなわち、先ず玄米を水で洗米後、好気条件下で温度10〜40℃、好ましくは25〜35℃、pH2〜5の条件で、好ましくはpH2.5〜3.5、約0.5〜3日、好ましくは1〜2日発芽処理する。温度10〜40℃、pH2〜5の条件で、約0.5〜3日発芽処理すると適度に発芽させることができ、玄米の外周面に適度な割れ目ができ、グルコノデルタラクトンや食用有機酸が玄米の内部まで均一に入り易くなるとともに雑菌を殺菌できる。
温度が10℃未満では発芽が遅くなる恐れがあり、温度が40℃を超えると発芽率が急速に低下する。また、pH2未満では雑菌の増殖は防げるが発芽が損なわれる恐れがあり、pH5を超えると発芽は順調であるが殺菌が増殖する恐れがある。また、0.5日未満では雑菌の殺菌および発芽が不十分となる恐れがあり、3日を超えると雑菌の殺菌には好適となるが、玄米が発芽後成長し風味や栄養分が大幅に低下する恐れがあり好ましくない。
【0021】
本発明で用いる発芽した玄米は、発芽処理後、熱水洗浄して発芽した玄米の外周面に付着した雑菌を殺菌することが好ましい。熱水洗浄の処理条件は特に限定されるものではないが、次に示す熱水洗浄条件で行うことが好ましい。
【0022】
すなわち、温度65〜95℃、好ましくは75〜85℃の熱水を用いて、約10〜40分、好ましくは20〜30分処理する。温度が65℃未満では雑菌の殺菌が不十分となる恐れがあり、40分を超えると雑菌の殺菌はよいが玄米の品質が不良となり好ましくない。
【0023】
玄米に白米を任意の割合で加えて洗米後、浸漬水に浸漬し、次いで浸漬水から取り出し、炊飯直前に炊き水を添加して炊飯する。本発明においては、炊飯後の玄米入りごはんのpHが4〜4.8、好ましくはpHが4.3〜4.7となるように調整することが雑菌の殺菌および食味、食感などの観点から重要である。炊飯後の玄米入りごはんのpHを4〜4.8に調整することにより食中毒菌などの増殖を防止できるとともに、均一で食べ易く、炊きたての美味しさを有する無菌玄米入りごはんを製造できる。炊飯後、蒸らすと、より均一な食べ易い無菌玄米入りごはんを製造できる。
【0024】
玄米に加える白米の割合は任意でよく特に限定されるものではない。しかし、通常玄米:白米(質量比)=99:1〜1:99から選択される範囲内で玄米に白米を加えることが好ましい。玄米と白米の合計量中におよそ20質量%程度あるいはそれ以上の白米が加えられると食べ易さ、食感、美味しさなどの観点からさらに好ましい。白米の割合が1未満では食べ易さ、食感、美味しさなどに劣る恐れがあり、白米の割合が99を超えると食べ易さ、食感、美味しさなどに優れるが、玄米の栄養効果などが発揮されない恐れがある。
【0025】
本発明においては、pH値を低く調整するほど、食中毒菌などの増殖防止効果は高まるが、食味に悪影響がでるので好ましくなく、逆にpH値を高く調整すると、長期保存性が悪化するので、長期保存食品として商品化するためには、常温で最低でも約6ヶ月間は保存できる保存性が要求されることを考えて、炊飯後の玄米入りごはんのpHを4〜4.8の範囲に制御する。
【0026】
炊飯後の玄米入りごはんのpHが4.0未満では雑菌の殺菌はよいが食味、食感、美味しさなどが悪化する恐れがあり、pHが4.8を超えると雑菌の殺菌が不十分で長期保存性が悪化する恐れがあり好ましくない。
【0027】
水切り後乾燥させた玄米に白米を加えて洗米後、浸漬水に浸漬する。浸漬は、通常、白米を加えた玄米の水分含量が約20〜50%となるように水に浸漬したり、水を噴射したりすることが知られているが、これらの方法や範囲に限定されるものではない。
白米を加えた玄米を浸漬水から取り出し、引き続き炊飯直前に白米を加えた玄米に対して例えば、1.0〜1.5倍量の炊き水を添加し、定法に従いガス、電気、蒸気などの熱源を用いて常圧炊飯を行う。
【0028】
このようにして炊飯し、必要に応じて蒸らした後、玄米入りごはんをおよそ55℃以上のうちに、無菌設備中でバリヤー性耐熱容器中に充填し、例えばヒートシール機で完全に密封する。バリヤー性耐熱容器中に充填する際、脱酸素剤と共に充填することが好ましい。
例えば、米国航空宇宙局(NASA)の規格でクラス100〜クラス10000のクリーンルームやクリーンブース内などで無菌充填を行なう。無菌充填を行なう際には使用する設備・包材・容器・脱酸素剤などは充分に滅菌されたものを使用する。
【0029】
好ましいガスバリヤー性耐熱容器包装体は、耐熱性合成樹脂のトレー容器か、耐熱性合成樹脂フィルム及び/又は金属箔のラミネート材からなるプラスチック袋である。
例えば、トレー容器は、エチレン酢酸ビニル共重合体などのバリアー性樹脂を中間層とし、上下層には、ポリプロピレンを積層しこれをトレー状の成形したものとトレー容器上蓋フィルム(PET/ナイロン/ポリエチレン系シーラント)などが使用できる。
【0030】
本発明の製造法により、好気性菌や嫌気性菌などの増殖や活動を抑えることができるので、長期保存しても炊きたての味と香りが維持できるような長期保存性に優れた無菌玄米入りごはんを提供できる。
【0031】
上記のような無菌玄米入りごはんの製造において、本発明においてはグルコノデルタラクトンや食用有機酸あるいはその塩あるいはこれらの2つ以上の混合物から選択される少なくとも1つを含有する浸漬水および/または炊き水を用いると、炊飯後の玄米入りごはんのpHを4.0〜4.8となるように調整することが容易になり、かつ長期保存性をより向上させることができるので好ましい。
【0032】
本発明に用いるグルコノデルタラクトンは食品添加物であり、本発明において好ましく用いることができる。
本発明に用いる上記の食用有機酸は、食品添加物として認められている有機酸であり、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、グルコン酸、乳酸、酢酸、アジピン酸、フィチン酸、アスコルビン酸あるいはこれらの混合物などを挙げることができるが、長期保存と食味とを同時に満足させるためにはクエン酸、グルコン酸あるいはこれらの混合物は好ましく使用することができる。
本発明に用いる上記の食用有機酸の塩としては、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩およびこれらの2つ以上の混合物などを挙げることができる。
またグルコノデルタラクトンとこれらの食用有機酸やその塩との混合物も使用することができる。
【0033】
本発明において、グルコノデルタラクトンや食用有機酸などを浸漬水や炊き水に添加して上記範囲内のpH値に制御された玄米入りごはんを製造するための具体的方法としては、
▲1▼水切り後乾燥させた玄米に白米を加えて洗米後、一定時間水に浸漬後、炊飯直前に炊き水にグルコノデルタラクトンや食用有機酸あるいはその塩を添加し、炊飯する方法、
▲2▼同様にして洗米後、グルコノデルタラクトンや食用有機酸あるいはその塩を含む溶液中に一定時間浸漬し、pHを低下させ、そのまま炊飯する方法、
▲3▼同様にして洗米後、グルコノデルタラクトンや食用有機酸あるいはその塩を含む溶液中に一定時間浸漬し、pHをある程度低下させ、さらに炊飯直前に炊き水にグルコノデルタラクトンや食用有機酸あるいはその塩を添加し、炊飯する方法、があるが、最終pH値の安定性と品質の観点などより、▲3▼の方法によるものが最も現実的であり好ましい方法である。
【0034】
以上のように調整された無菌玄米入りごはんは、電子レンジあるいは加熱水溶液中で再加熱を行ない食に供することができる。
【0035】
本発明おいて、本発明の主旨を逸脱しない範囲で無菌玄米入りごはんや水に、さらに調味料、着色料、油脂、乳化剤などを添加してもよい。
【0036】
【実施例】
次に実施例および比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
(グルコノデルタラクトンや各食用有機酸の玄米入りごはんの味覚への影響)
玄米を洗米後、30℃、pH3にて2日間発芽処理を行った後、熱水洗浄(80℃、20分間)し、同質量の白米を加えた後、表2に示したグルコノデルタラクトンや各食用有機酸を含有する水溶液中に一定時間(60〜90分間)浸漬してpHを低下させ、さらに炊飯直前に炊き水に食用有機酸を添加し、炊飯後の玄米入りごはんのpHが4.7および5.7となるように、表1に示した炊飯条件で炊飯する方法により玄米入りごはんを作り、グルコノデルタラクトンや各食用有機酸の玄米入りごはんの味覚への影響などを調べた。
pH測定は以下の方法によった。
▲1▼玄米入りごはん20gに対して、50mlの蒸留水を加え、ホモゲナイザーにて処理する。
▲2▼5分間放置後、pHメーター[東亜電波工業(株)製HM−30S]にてPHを測定する。
玄米入りごはんの食味は訓練された味覚審査員により、下記の食味評価基準に従って官能評価し、結果を表2にまとめて示した。
(食味評価基準)
◎:風味良好
○:風味良好だが、少し酸味を感じる
△:風味は良好だが、酸味が気になる
×:風味不良
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
以上の結果、表2より、酸味などによる玄米入りごはんの商品価値の低下を最小限に抑えて、本発明の長期保存可能な玄米入りごはんの製造法に使用することができる有効な添加剤としては上記のグルコノデルタラクトンおよび各食用有機酸のいずれも使用できる。
しかしこれらの中でも、グルコノデルタラクトンおよび食用有機酸としては、クエン酸、グルコン酸、乳酸およびこれらの組合わせが好ましいことが判る。
【0040】
(実施例1)
玄米を洗米後、30℃、pH3にて2日間発芽処理を行った後熱水洗浄(80℃、20分間)し、発芽した玄米に同質量の白米を加えて洗米後、浸漬水として水を用い、それに60分間浸漬して含水率32%とし、炊飯直前に表1に示した炊き水としてグルコノデルタラクトンを添加した炊き水を用い、表1に示した炊飯条件下で、炊飯後の玄米入りごはんのpH値を4.6〜4.8に制御して玄米入りごはんを製造した。玄米入りごはんが約60℃の状態で、クラス100のバイオクリーンルーム内で、バリヤー性耐熱容器として、PP/EVOH/PPからなるドライラミネート材を袋状に製袋し、一部ヒートシールしていない未溶着部を設けたプラスチック袋を用い、それに脱酸素剤と共に充填し、ヒートシール機でヒートシールして完全に密封した。
【0041】
これを常温で6ケ月間保存した後、電子レンジで2分間あたためて食し、玄米入りごはんの食味を前記の食味評価基準により評価するとともに、保存性を下記の保存性評価基準により評価した。電子レンジで2分間あたためたところふっくらとしたボリューム感のある玄米入りごはんが得られ、また米粒の結着や潰れは生じなかった。結果を表3に示す。
(保存性評価基準)
優:6ケ月保存後の品質良好
不可:6ケ月保存後の品質不良(変敗)
【0042】
(実施例2〜8)
浸漬水としてグルコノデルタラクトンや各種食用有機酸を表3に示した量だけ添加した浸漬水溶液を用い、炊き水として水を用いるか、あるいはグルコン酸50%水溶液を表3に示した量だけ添加した炊き水を用い、炊飯後の玄米入りごはんのpH値を表3に示した範囲内になるようにそれぞれ制御して、玄米入りごはんを製造した以外は、実施例1と同様にして玄米入りごはんの食味と保存性を評価した結果をまとめて表3に示す。
【0043】
(比較例1)
浸漬水としてクエン酸を添加した浸漬水溶液を用い、グルコン酸50%水溶液を添加した炊き水を用い、炊飯後の玄米入りごはんのpH値を本発明の範囲外の5.0〜5.2になるように制御して、玄米入りごはんを製造した以外は、実施例1と同様にして玄米入りごはんの食味と保存性を評価した結果を表3に示す。
【0044】
(比較例2)
浸漬水としてグルコノデルタラクトンを添加した浸漬水溶液を用い、グルコン酸50%水溶液を添加した炊き水を用い、炊飯後の玄米入りごはんのpH値を本発明の範囲外の3.6〜3.8になるように制御して、玄米入りごはんを製造した以外は、実施例1と同様にして玄米入りごはんの食味と保存性を評価した結果を表3に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
(評価結果)
実施例1は、浸漬水として水を用い、グルコノデルタラクトンを添加した炊き水を使用した場合であり、常温で6ケ月間保存した後、電子レンジで2分間あたためた玄米入りごはんは異味異臭もなく、かすかに酸味を有しており、たきたての食感を有していた。
【0047】
実施例2は、浸漬水としてグルコン酸を添加した浸漬水溶液を用い、水を炊き水として使用した場合であり、常温で6ケ月間保存した後、電子レンジで2分間あたためた玄米入りごはんは異味異臭もなく、かすかに酸味を有しており、たきたての食感を有していた。
【0048】
実施例3は、浸漬水としてクエン酸を添加した浸漬水溶液を用い、水を炊き水として使用した場合であり、常温で6ケ月間保存した後、電子レンジで2分間あたためた玄米入りごはんは異味異臭もなく、穏やかな酸味を有しており、たきたての食感を有していた。
【0049】
実施例4は、浸漬水として乳酸を添加した浸漬水溶液を用い、グルコン酸を添加した水溶液を炊き水として使用した場合であり、常温で6ケ月間保存した後、電子レンジで2分間あたためた玄米入りごはんは異味異臭もなく、穏やかな酸味を有しており、たきたての食感を有していた。
【0050】
実施例5は、浸漬水としてクエン酸を添加した浸漬水溶液を用い、グルコン酸を添加した水溶液を炊き水として使用した場合であり、常温で6ケ月間保存した後、電子レンジで2分間あたためた玄米入りごはんは異味異臭もなく、穏やかな酸味を有しており、たきたての食感を有していた。
【0051】
実施例6は、浸漬水としてグルコノデルタラクトンを添加した浸漬水溶液を用い、グルコン酸を添加した水溶液を炊き水として使用した場合であり、常温で6ケ月間保存した後、電子レンジで2分間あたためた玄米入りごはんは異味異臭もなく、かすかに酸味を有しており、たきたての食感を有していた。
【0052】
実施例7は、浸漬水としてを添加した浸漬水溶液を用い、グルコン酸を添加した水溶液を炊き水として使用した場合であり、常温で6ケ月間保存した後、電子レンジで2分間あたためた玄米入りごはんは異味異臭もなく、保存性に優れており、穏やかな酸味があり、たきたての食感を有していた。
【0053】
実施例8は、浸漬水としてリンゴ酸を添加した浸漬水溶液を用い、グルコン酸を添加した水溶液を炊き水として使用した場合であり、常温で6ケ月間保存した後、電子レンジで2分間あたためた玄米入りごはんは異味異臭もなく、かすかに酸味を有しており、たきたての食感を有していた。
【0054】
比較例1は、浸漬水としてクエン酸を添加した浸漬水溶液を用い、グルコン酸を添加した水溶液を炊き水として使用した場合であり、炊飯後のpHが本発明のpHの範囲より大きいので、保存性に問題があり、常温で6ケ月間保存したものは、酸味が後を引き、保存性が不良であり、たきたての食感がなく、実用に適さない。
【0055】
比較例2は、浸漬水としてグルコノデルタラクトンを添加した浸漬水溶液を用い、グルコン酸を添加した水溶液を炊き水として使用した場合であり、炊飯後のpHが本発明のpHの範囲より小さいので、常温で6ケ月間保存した後、電子レンジで2分間あたためた玄米入りごはんは異味異臭もなく、保存性に優れているが、酸味が後を引き、たきたての食感はなかった。
【0056】
次に、[上記玄米に同質量の白米を加えて炊飯し、耐熱容器に充填、密封、保存して1〜10ケ月にわたり長期保存性を試験した]
(実施例9)
玄米を洗米後、30℃、pH3にて2日間発芽処理を行った後熱水洗浄(80℃、20分間)し、発芽した玄米に同質量の白米を加えて洗米後、浸漬水としてクエン酸150gを水100リットルに添加した水溶液を用い、それに60分間浸漬して含水率32%の浸漬米を作った。
この浸漬米を炊飯直前に水を炊き水として用い前記表1に示した炊飯条件下で、炊飯後の玄米入りごはんのpH値を4.8になるように制御して玄米入りごはんを製造した。
玄米入りごはんが約60℃の状態で、クラス100のクリーンルーム内で無菌的にガスバリヤー性の包材に充填して封入し、25℃の恒温槽に保存し、1,3,6,9,12ヶ月後に外観、風味、食味について試験した。試験は訓練された味覚審査員により官能評価し、結果を表4にまとめて示した。
なお、1,3,6,10ヶ月後のそれぞれにつき、20検体ずつ試験した。
【0057】
(実施例10)
炊飯後の玄米入りごはんのpH値を4.5になるように制御して玄米入りごはんを製造した以外は実施例9と同様にして1,3,6,10ヶ月後の外観、風味、食味について試験した。結果を表4に示す。
【0058】
(実施例11)
炊飯後の玄米入りごはんのpH値を4.0になるように制御して玄米入りごはんを製造した以外は実施例9と同様にして1,3,6,10ヶ月後の外観、風味、食味について試験した。結果を表4に示す。
【0059】
(比較例3)
浸漬水として水を用いて、玄米入りごはん(炊飯後のpH6.8)を製造した以外は実施例9と同様にして1,3,6,10ヶ月後の外観、風味、食味について試験した。結果を表4に示す。
【0060】
(比較例4)
炊飯後の玄米入りごはんのpH値が5.5になるように制御して玄米入りごはんを製造した以外は実施例9と同様にして1,3,6,10ヶ月後の外観、風味、食味について試験した。結果を表4に示す。
【0061】
(比較例5)
炊飯後の玄米入りごはんのpH値が5.0になるように制御して玄米入りごはんを製造した以外は実施例9と同様にして1,3,6,10ヶ月後の外観、風味、食味について試験した。結果を表4に示す。
【0062】
【表4】
【0063】
表4から、実施例9〜11のように炊飯後の玄米入りごはんのpHを4.0〜4.8となるように調整することにより食中毒菌の増殖を防止することが可能であることが判る。
それに対して、比較例3は、グルコノデルタラクトンや食用有機酸などを使用せずに作った玄米入りごはんの場合であり、この玄米入りごはんは風味や食味は優れているが、長期保存性に劣り、比較例4および比較例5は、浸漬水としてクエン酸を水に添加した水溶液を用いても、炊飯後の玄米入りごはんのpHが5.5や5.0と本発明の規定するpH範囲外であると食中毒菌の増殖を防止できず、長期保存性に劣ることが判る。
【0064】
また、上記実施例9〜11について、玄米入りごはんをガスバリヤー性の包材に充填する際、合わせて脱酸素剤を封入したものについて外観、風味、食味について試験したところ、25℃にて12ケ月保存したものについても、異味異臭もなく保存性にすぐれ、たきたての食感を有していた。
【0065】
【発明の効果】
本発明の請求項1の無菌玄米入りごはんの製造法によれば、発芽した玄米に白米を任意の割合で加えて洗米後、浸漬水に浸漬し、次いで浸漬水から取り出し、炊飯直前に炊き水を添加して炊飯後、必要に応じて蒸らした後、無菌設備中でガスバリヤー性耐熱容器中に充填し、完全に密封して無菌玄米入りごはんを製造する際に、炊飯後の玄米入りごはんのpHが4〜4.8となるように調整するので、水分や食用有機酸が発芽した玄米内部まで容易に浸透し、組織を破壊することなく、栄養豊かで、かつ均一で美味しい炊き上がりの玄米入りごはんを製造できるという顕著な効果を奏する。
水切り後乾燥させた玄米に白米を加えて洗米後、浸漬水に浸漬し、次いで浸漬水から取り出し、炊飯直前に炊き水を添加して炊飯して炊飯後の玄米入りごはんのpHが4〜4.8の範囲となるようにすると、残りの各種雑菌をさらに殺菌できる。その後無菌設備中でガスバリヤー性耐熱容器中に充填し、完全に密封することにより、雑菌による汚染がなく、無菌状態を長期にわたり維持できる玄米入りごはんが得られる。この無菌ごはんは安全性および長期保存性に優れる上、栄養豊かで、均一で食べ易く、炊きたての美味しさが長期にわたり維持される。
【0066】
本発明の請求項2の無菌玄米入りごはんの製造法によれば、請求項1記載の製造法において、pHが2〜5の条件下で発芽処理して発芽した玄米を用いるので、請求項1記載の製造法と同じ効果を奏するとともに、発芽処理工程で玄米に付着した雑菌を殺菌できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0067】
本発明の請求項3の無菌玄米入りごはんの製造法によれば、請求項1あるいは請求項2記載の製造法において、発芽した玄米を熱水洗浄した後、乳酸菌発酵処理するので、請求項1記載の製造法と同じ効果を奏するとともに、熱水洗浄工程で発芽した玄米に付着した雑菌を殺菌できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0068】
本発明の請求項4の無菌玄米入りごはんの製造法によれば、請求項1から請求項3のいずれかに記載の製造法において、玄米に加える白米の割合が、玄米:白米(質量比)=99:1〜1:99の範囲であるので、請求項1記載の製造法と同じ効果を奏するとともに、白米の食感、美味しさなどとともに玄米の栄養効果などが発揮されるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0069】
本発明の請求項5の無菌玄米入りごはんの製造法によれば、請求項1から請求項4のいずれかに記載の製造法において、グルコノデルタラクトン、食用有機酸またはその塩あるいはこれらの2つ以上の混合物から選択される少なくとも1つを含有する浸漬水および/または炊き水を用いるので、請求項1記載の製造法と同じ効果を奏するとともに、安全性が高く、炊飯後の玄米入りごはんのpHを4〜4.8となるように調整することが容易になり、かつ長期保存性をより向上できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0070】
本発明の請求項6の無菌玄米入りごはんの製造法によれば、請求項5記載の製造法において、食用有機酸がクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、グルコン酸、乳酸、酢酸、アジピン酸、フィチン酸、アスコルビン酸あるいはこれらの2つ以上の混合物から選択される少なくとも1つの食用有機酸であるので、請求項4記載の製造法と同じ効果を奏するとともに、いずれも市販されており安価で入手し易いというさらなる顕著な効果を奏する。
【0071】
本発明の請求項7の無菌玄米入りごはんの製造法によれば、請求項5あるいは請求項6に記載の製造法において、有機酸の塩がカリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩およびこれらの2つ以上の混合物から選択される少なくとも1つの有機酸の塩であるので、請求項4記載の製造法と同じ効果を奏するとともに、いずれも市販されており安価で入手し易いというさらなる顕著な効果を奏する。
【0072】
本発明の請求項8の無菌玄米入りごはんの製造法によれば、請求項1から請求項7のいずれかに記載の製造法において、ガスバリヤー性耐熱容器中に充填する際、脱酸素剤と共に充填するので、好気性微生物に対する殺菌効果が一層よくなるというさらなる顕著な効果を奏する。
Claims (8)
- 発芽した玄米に白米を任意の割合で加えて洗米後、浸漬水に浸漬し、次いで浸漬水から取り出し、炊飯直前に炊き水を添加して炊飯後、必要に応じて蒸らした後、無菌設備中でガスバリヤー性耐熱容器中に充填し、完全に密封する無菌玄米入りごはんの製造法であって、炊飯後の玄米入りごはんのpHが4〜4.8となるように調整することを特徴とする無菌玄米入りごはんの製造法。
- pHが2〜5の条件下で発芽処理して発芽した玄米を用いることを特徴とする請求項1記載の無菌玄米入りごはんの製造法。
- 発芽した玄米を熱水洗浄することを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の無菌玄米入りごはんの製造法。
- 玄米に加える白米の割合が、玄米:白米(質量比)=99:1〜1:99の範囲であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の無菌玄米入りごはんの製造法。
- グルコノデルタラクトン、食用有機酸またはその塩あるいはこれらの2つ以上の混合物から選択される少なくとも1つを含有する浸漬水および/または炊き水を用いることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の無菌玄米入りごはんの製造法。
- 食用有機酸がクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、グルコン酸、乳酸、酢酸、アジピン酸、フィチン酸、アスコルビン酸あるいはこれらの2つ以上の混合物から選択される少なくとも1つの食用有機酸であることを特徴とする請求項5記載の無菌玄米入りごはんの製造法。
- 有機酸の塩がカリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩およびこれらの2つ以上の混合物から選択される少なくとも1つの有機酸の塩であることを特徴とする請求項5あるいは請求項6記載の無菌玄米入りごはんの製造法。
- ガスバリヤー性耐熱容器中に充填する際、脱酸素剤と共に充填することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の無菌玄米入りごはんの製造法。
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JP2013141414A (ja) * | 2012-01-06 | 2013-07-22 | S & B Foods Inc | 容器入りワカメご飯およびその製法 |
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JP2014239661A (ja) * | 2013-06-11 | 2014-12-25 | テーブルマーク株式会社 | 包装米飯 |
JP2017055776A (ja) * | 2017-01-04 | 2017-03-23 | テーブルマーク株式会社 | 密封食品の製造方法 |
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- 2002-09-12 JP JP2002267132A patent/JP2004097156A/ja active Pending
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