(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態について、図1乃至図9を参照して説明する。なお、本明細書においては基本的に、鉛直上方を上方向、鉛直下方を下方向と定義する。また、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称でも特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によっても説明され得る。
図1は、第1の実施形態に係る乗客コンベア1を概略的に示す断面図である。図1に示すように、本実施形態における乗客コンベア1は、エスカレータである。なお、乗客コンベア1は、エスカレータに限らず、動く歩道(moving walkway)であっても良い。
乗客コンベア1は、建造物2の上階3と下階4との間に亘って設けられる。建造物2は、屋根のある建物であっても良いし、野外に設けられた他の工作物であっても良い。上階3は、下階4よりも上方に位置する。
乗客コンベア1は、トラス11と、複数の踏段12と、乗降板13,14と、支持部材15,16と、中間支持構造17とを有する。トラス11は、フレームとも称され得る。踏段12は、ステップ、パレット、足場、又は踏台とも称され得る。支持部材15,16は、支持アングルとも称され得る。
トラス11の内部に、複数の踏段12が配置される。踏段12は、乗客を乗せる部材である。複数の踏段12は、駆動輪と従動輪との間に掛け渡された踏段チェーンを介して無端状に連結される。モータのような動力源が上記駆動輪を回転駆動することで、複数の踏段12がトラス11に沿って循環(周回)する。
トラス11の内部には、上階3又は上階3の近傍において上階機械室3aが設けられ、下階4又は下階4の近傍において下階機械室4aが設けられる。例えば、上階機械室3aに上記駆動輪が配置され、下階機械室4aに上記従動輪が配置される。このため、複数の踏段12は、上階機械室3aと下階機械室4aとの間で循環する。なお、上階機械室3a及び下階機械室4aに配置される部品及び装置はこの例に限られない。
乗降板13は、上階機械室3aを覆い、上階3における乗降口に設けられる。乗降板13は、上階3の床面3bと略同一平面上に配置される。乗降板14は、下階機械室4aを覆い、下階4における乗降口に設けられる。乗降板14は、下階4の床面4bと略同一平面上に配置される。
エスカレータとしての乗客コンベア1が下降方向に稼動する場合、複数の踏段12は、上階3の乗降口において進行方向に向けて隣接する踏段12同士が水平状でトラス11内から進出され、上部遷移カーブにおいて隣接する踏段12の間の段差を拡大しながら階段状に遷移され、中間傾倒部において階段状で下降され、下部遷移カーブにおいて隣接する踏段12の間の段差を縮小しながら水平状に遷移され、下階4の乗降口において再び水平状となってトラス11内に進入する。そして、複数の踏段12は、トラス11内に進入された後に上方に反転され、帰路側を水平状で上昇され、再度反転されて上階3の乗降口においてトラス11内から進出される。上昇方向に稼動する乗客コンベア1では上記の逆の動作となる。
踏段12の進行方向は、踏段12の移動に応じて変化する。すなわち、踏段12の進行方向は、上階3及び下階4の乗降口の近傍においては略水平方向であり、上部遷移カーブ、中間傾斜部、及び下部遷移カーブにおいては斜め上方向又は斜め下方向となる。一般的に水平方向における踏段12の進行方向は所定の一方向又はその反対方向(図1における左右方向)であるが、乗客コンベア1がカーブする場合、水平方向における踏段12の進行方向も当該乗客コンベア1の移動に応じて変化する。水平方向における踏段12の進行方向は、前後方向とも称され得る。
支持部材15は、踏段12の進行方向におけるトラス11の一方の端部11aに設けられる。端部11aは、前後方向におけるトラス11の一方の端部でもある。端部11aは、略水平方向に所定の間隔を介して上階3に向く。
支持部材15は、例えば、略L字に曲がった板状に形成された、いわゆるL型アングル材である。支持部材15は、取付部15aと、支持部15bとを有する。取付部15aは、トラス11の端部11aに、例えばボルトにより取り付けられる。支持部15bは、取付部15aの上方向の端から、踏段12の進行方向に延びている。
支持部15bは、上階3に設けられた第1の受面3cに支持される。第1の受面3cは、上方に向く略水平な平面である。第1の受面3cは、上階3の床面3bから窪んでいる。支持部15bは、第1の受面3cに、当該第1の受面3cに沿う摺動方向Dsに摺動可能に支持される。本実施形態において、摺動方向Dsは、前後方向である。摺動方向Dsは、略水平な一方向Ds1と、当該一方向の反対方向Ds2とを含む。方向Ds1,Ds2が摺動方向と称されても良い。
支持部材16は、踏段12の進行方向におけるトラス11の他方の端部11bに設けられる。端部11bは、前後方向におけるトラス11の他方の端部でもある。端部11bは、略水平方向に所定の間隔を介して下階4に向く。
支持部材16は、例えば、略L字に曲がった板状に形成された、いわゆるL型アングル材である。支持部材16は、取付部16aと、支持部16bとを有する。取付部16aは、トラス11の端部11bに、例えばボルトにより取り付けられる。支持部16bは、取付部16aの上方向の端から、踏段12の進行方向に延びている。
支持部16bは、下階4に設けられた第1の受面4cに支持される。第1の受面4cは、上方に向く略水平な平面である。第1の受面4cは、下階4の床面4bから窪んでいる。支持部16bは、第1の受面4cに、摺動方向Dsに摺動可能に支持される。このため、支持部材15,16とトラス11とは、例えば地震が発生したときに、建造物2に対して一体的に摺動方向Dsに移動することができる。
図2は、第1の実施形態の既設の中間支持構造17Aを示す斜視図である。図3は、第1の実施形態の耐震化された中間支持構造17Bを示す斜視図である。本実施形態では、既設の中間支持構造17Aが、耐震化された中間支持構造17Bに改修される。なお、以下の説明において、中間支持構造17は、既設の中間支持構造17Aと、耐震化された中間支持構造17Bと、耐震化作業中の中間支持構造17とを含む。
図1に示すように、中間支持構造17は、乗客コンベア1における上階3と下階4との間に設けられる。中間支持構造17は、例えば、トラス11に設けられる下弦材21と、建造物2に設けられる受梁22と、の間に介在し、上階3と下階4との間においてトラス11を支持する。なお、中間支持構造17は、例えば、トラス11と、下階4の床面4bとの間に介在しても良い。
下弦材21は、トラス11の下部を形成する。図2に示すように、トラス11において、二つの下弦材21が、幅方向Dwに間隔を介して並べられる。幅方向Dwは、進行方向と直交し且つ水平な方向である。別の表現によれば、幅方向Dwは、第1の受面3c,4cに沿う方向であって、摺動方向Dsと直交する方向である。トラス11は、例えば、下弦材21に連結される上弦材及び他の骨組みをさらに有し、下弦材21を含むフレーム状に形成される。
下弦材21はそれぞれ、傾斜壁25を有する。傾斜壁25は、乗客コンベア1の中間傾倒部に設けられ、上階3と下階4との間で斜め方向に延びている。別の表現によれば、傾斜壁25は、上階3から下階4に斜めに近づくように延びている。
傾斜壁25は、下面25aを有する。下面25aは、斜め下方に向く略平坦な面である。下弦材21は、幅方向Dwにおける傾斜壁25の端から上方向に延びる立壁26をさらに有し、略L字の板状に形成される。
受梁22は、例えば、幅方向Dwに延びる梁である。受梁22は、鉛直方向において上階3と下階4との間に位置する。なお、受梁22は、下階4と略同一平面上に配置されても良い。受梁22は、上面22aを有する。上面22aは、上方に向く略水平な平面である。上面22aは、間隔を介して傾斜壁25の下面25aに向く。
中間支持構造17Aは、二つの第1の支持台41と、二つの第1の中間支持体42と、二つの第1の振れ止め部材43と、第1の連結梁44と、を有する。第1の中間支持体42は、既設中間支持体とも称される。なお、中間支持構造17Aは、他の部品を有しても良いし、第1の振れ止め部材43及び第1の連結梁44が省略されても良い。
図4は、第1の実施形態の既設の中間支持構造17Aを示す断面図である。図5は、第1の実施形態の既設の中間支持構造17Aを示す正面図である。図5に示すように、二つの第1の支持台41は、幅方向Dwに間隔を介して建造物2の受梁22に取り付けられる。第1の支持台41はそれぞれ、既設支持台51と、少なくとも一つの調整部材52とを有する。なお、第1の支持台41は、この例に限られず、例えば単一の部材であっても良い。
既設支持台51は、受梁22の上面22aから上方向に突出するように、上面22aに取り付けられる。既設支持台51は、例えば、複数のボルト53によって受梁22に取り付けられる。なお、既設支持台51は、溶接のような他の手段によって受梁22に取り付けられても良い。既設支持台51は、上面51aを有する。上面51aは、上方に向く略水平な平面である。上面51aは、間隔を介して傾斜壁25の下面25aに向く。
調整部材52は、例えば、略平坦な板状に形成される。なお、調整部材52は、他の形状に形成されても良い。調整部材52は、既設支持台51の上面51a上に配置される。第1の支持台41が複数の調整部材52を有する場合、複数の調整部材52が上面51a上に積載される。
少なくとも一つの調整部材52は、第2の受面52aを有する。第2の受面52aは、上方に向く略水平な平面である。第2の受面52aは、間隔を介して傾斜壁25の下面25aに向く。
第1の支持台41が一つの調整部材52を有する場合、第2の受面52aは当該調整部材52の上面である。第1の支持台41が複数の調整部材52を有する場合、第2の受面52aは、複数の調整部材52のうち最も上方に位置する調整部材52の上面である。このため、調整部材52の数によって、鉛直方向における第2の受面52aの位置が調整される。
図4に示すように、二つの第1の中間支持体42はそれぞれ、トラス11の下弦材21から下方に突出するように、二つの下弦材21に取り付けられる。例えば、第1の中間支持体42は、傾斜壁25の下面25aに溶接によって取り付けられる。なお、第1の中間支持体42は、例えばボルトのような他の手段により傾斜壁25に取り付けられても良い。
第1の中間支持体42は、下壁55と、立壁56とを有する。下壁55は、傾斜壁25の下面25aのうち、第1の中間支持体42が取り付けられた部分の下方に離間している。立壁56は、例えば幅方向Dwの内側に開放された略U字型に形成され、下壁55から上方に延びている。幅方向Dwの内側は、幅方向Dwにおいて、トラス11の中央に向かう方向である。立壁56の上方の端が傾斜壁25の下面25aに溶接されている。
下壁55は、底面55aを有する。底面55aは、下方に向く略水平な平面である。底面55aは、調整部材52の第2の受面52aに略鉛直方向に支持される。本実施形態において、底面55aは第2の受面52aに当接する。しかし、底面55aは、他の部品を介して第2の受面52aに支持されても良い。
図5に示すように、二つの第1の振れ止め部材43はそれぞれ、対応する第1の支持台41に取り付けられる。例えば、第1の振れ止め部材43は、上面51aから上方に突出するように、既設支持台51に取り付けられる。
第1の振れ止め部材43は、幅方向Dwの内側における下壁55の縁55bに当接し、又は縁55bの近傍に位置する。第1の振れ止め部材43は、縁55bに当接することで、トラス11が建造物2に対して幅方向Dwに移動することを制限する。
第1の連結梁44は、幅方向Dwに延びている。第1の連結梁44の一方の端部は、一方の第1の中間支持体42の立壁56に取り付けられる。第1の連結梁44の他方の端部は、他方の第1の中間支持体42の立壁56に取り付けられる。これにより、第1の連結梁44は、二つの第1の中間支持体42を連結する。
図3に示すように、耐震化された中間支持構造17Bは、二つの第1の中間支持体42と、二つの第2の支持台61と、二つの耐震化部品62と、第2の振れ止め部材63と、第2の連結梁64とを有する。なお、図3は、二つの第1の中間支持体42のうち一つを示す。第2の支持台61は、支持台とも称され得る。なお、中間支持構造17Bは、他の部品を有しても良いし、第2の振れ止め部材63及び第2の連結梁64が省略されても良い。
図6は、第1の実施形態の耐震化された中間支持構造17Bを示す断面図である。図7は、第1の実施形態の耐震化された中間支持構造17Bを示す正面図である。図7に示すように、二つの第2の支持台61は、第1の支持台41の代わりに、幅方向Dwに間隔を介して建造物2の受梁22に取り付けられる。
第2の支持台61は、受梁22の上面22aから上方向に突出するように、上面22aに取り付けられる。第2の支持台61は、例えば、アンカーボルト又はスプリングピンによって受梁22に取り付けられる。なお、第2の支持台61は、溶接のような他の手段によって受梁22に取り付けられても良い。
第2の支持台61はそれぞれ、第3の受面61aを有する。第3の受面61aは、上方に向く略水平な平面である。第3の受面61aは、間隔を介して傾斜壁25の下面25aに向く。本実施形態において、第2の支持台61の第3の受面61aは、第1の支持台41の第2の受面52aよりも下方に位置する。なお、第3の受面61a及び第2の受面52aの位置はこの例に限られない。
図6に示すように、二つの耐震化部品62はそれぞれ、第2の中間支持体71と、摺動部材72と、少なくとも一つの第1の調整部材73と、少なくとも一つの第2の調整部材74と、ジャッキボルト75とを有する。なお、耐震化部品62はこの例に限られない。
第2の中間支持体71は、トラス11の下弦材21から下方に突出するように、二つの下弦材21に取り付けられる。第2の中間支持体71は、傾斜支持壁81と、下壁82と、外立壁83と、支持壁84と、内立壁85とを有する。なお、第2の中間支持体71は、この例に限られない。
傾斜支持壁81は、傾斜壁25の下面25aに沿って斜めに延びている。傾斜支持壁81は、第1の支持面81aを有する。第1の支持面81aは、斜め上方に向く略平坦な面である。第1の支持面81aは、傾斜壁25の下面25aと略平行に配置され、下面25aに向く。第1の支持面81aは、トラス11の傾斜壁25を斜め方向に支持する。
図8は、第1の実施形態の耐震化部品62を示す斜視図である。図9は、第1の実施形態の耐震化部品62を示す側面図である。図8に示すように、傾斜支持壁81に、開口81bが設けられる。開口81bは、第1の支持面81aに開口するように、傾斜支持壁81を貫通する。開口81bが設けられることで、第1の支持面81aに、第1の領域81aaと、第2の領域81abとが設けられる。
第1の領域81aaと第2の領域81abとは、摺動方向Dsにおいて互いに離間している。開口81bは、第1の領域81aaと第2の領域81abとの間に設けられる。図8における開口81bは、傾斜支持壁81を二つの部分に分離させる空隙である。このため、傾斜支持壁81は、第1の領域81aaを有する一つの部材と、第2の領域81abを有する他の部材と、を含む。なお、開口81bは、幅方向Dwの内側に開放された切り欠きであっても良いし、孔であっても良い。
図6に示すように、第1の中間支持体42が、開口81bを通る。言い換えると、傾斜支持壁81に、第1の中間支持体42を避けるように開口81bが設けられる。摺動方向Dsにおいて、第1の中間支持体42は、第1の領域81aaと第2の領域81abとの間に位置する。
傾斜支持壁81は、例えば、複数のボルト87によって傾斜壁25に取り付けられる。ボルト87は、例えば、第1の領域81aaと第2の領域81abとに開口する複数の孔81cを通り、傾斜壁25に設けられたネジ穴25bに挿入される。このため、第1の中間支持体42は、摺動方向Dsにおいて二つのボルト87の間に位置する。なお、傾斜支持壁81は、例えば、溶接のような他の手段によって傾斜壁25の下面25aに取り付けられても良い。
下壁82は、傾斜支持壁81から下方に離間している。下壁82は、下面82aを有する。下面82aは、下方に向く略水平な平面である。下面82aは、摺動方向Dsにおいて第1の中間支持体42の底面55aよりも長い。下面82aは、第2の支持台61から上方に離間し、間隔を介して第2の支持台61の第3の受面61aに向く。
外立壁83は、例えば幅方向Dwの内側に開放された略U字型に形成され、下壁82から上方に延びている。外立壁83の上方の端が傾斜支持壁81に溶接されている。外立壁83は、傾斜支持壁81の孔81cを囲む。
支持壁84は、傾斜壁25の下面25aのうち、第1の中間支持体42が取り付けられた部分から下方に離間している。本実施形態において、支持壁84は、第1の中間支持体42の底面55aと、下壁82との間に位置する。鉛直方向において、支持壁84は、傾斜支持壁81と下壁82との間に位置する。
支持壁84は、第2の支持面84aを有する。第2の支持面84aは、上方に向く略水平な平面である。第2の支持面84aは、第1の中間支持体42の底面55aと略平行に配置され、底面55aに向く。第2の支持面84aは、第1の中間支持体42の底面55aを略鉛直方向に支持する。
第2の支持面84aは、摺動方向Dsにおいて底面55aと略同じ長さを有する。なお、第2の支持面84aは、摺動方向Dsにおいて底面55aより長くても短くても良い。第2の支持面84aは、摺動方向Dsにおいて、下壁82の下面82aよりも短い。
支持壁84は、例えば、複数のボルト88によって第1の中間支持体42の下壁55に取り付けられる。ボルト88は、例えば、下壁55に設けられた複数の孔55cを通り、支持壁84に設けられたネジ穴84bに挿入される。なお、支持壁84は、例えば、溶接のような他の手段によって下壁55の底面55aに取り付けられても良い。
内立壁85は、例えば幅方向Dwの内側に開放された略U字型に形成され、下壁82から上方に延びている。内立壁85の上方の端が支持壁84に溶接されている。内立壁85は、外立壁83に囲まれる。
摺動部材72は、第2の中間支持体71の下壁82の下面82aと、第2の支持台61の第3の受面61aとの間に位置する。摺動部材72は、摺動面72aと上面72bとを有する。
摺動面72aは、下方に向く略水平な平面である。摺動面72aは、摺動方向Dsにおいて第1の中間支持体42の底面55aよりも長い。また、摺動面72aは、摺動方向Ds(一方向Ds1)において第2の中間支持体71の第2の支持面84aよりも長い。さらに、摺動面72aは、摺動方向Dsにおいて、第2の支持台61の第3の受面61aよりも長い。
摺動面72aは、第2の支持台61の第3の受面61aと略平行に配置され、第3の受面61aに向く。摺動面72aは、摺動方向Ds(一方向Ds1及び反対方向Ds2)に摺動可能に第3の受面61aに略鉛直方向に支持される。本実施形態において、摺動面72aは第3の受面61aに当接する。しかし、摺動面72aは、他の部品を介して第3の受面61aに支持されても良い。
上面72bは、摺動面72aの反対側に位置し、上方に向く略水平な面である。上面72bは、第2の中間支持体71の下面82aと略平行に配置され、間隔を介して下面82aに向く。
第1の調整部材73は、例えば、略平坦な板状に形成される。なお、第1の調整部材73は、他の形状に形成されても良い。少なくとも一つの第1の調整部材73は、第2の中間支持体71の下面82aと摺動部材72の上面72bとの間に介在する。耐震化部品62が複数の第1の調整部材73を有する場合、複数の第1の調整部材73が第2の中間支持体71と摺動部材72との間で積層する。
摺動部材72は、少なくとも一つの第1の調整部材73を介して、第2の中間支持体71を支持する。第1の調整部材73の数によって、第2の中間支持体71の下面82aと摺動部材72の上面72bとの間の距離が調整される。
図9に示すように、耐震化部品62において、第2の中間支持体71の第2の支持面84aと、摺動部材72の摺動面72aとは、支持壁84、内立壁85、下壁82、少なくとも一つの第1の調整部材73、及び摺動部材72を介して、互いに反対側に位置する。このため、第1の調整部材73の数によって、第2の中間支持体71の第2の支持面84aと摺動部材72の摺動面72aとの間の距離も調整される。
耐震化部品62は、第2の中間支持体71の第2の支持面84aと摺動部材72の摺動面72aとの間の距離を調整可能な調整部62aを有する。本実施形態における調整部62aは、少なくとも一つの第1の調整部材73である。なお、調整部62aはこの例に限られず、例えば、ジャッキボルト、ジャッキ、楔、充填材、又は第2の支持面84aと摺動面72aとの間の距離を調整可能な他の手段を有しても良い。
第1の調整部材73の数は、鉛直方向における摺動部材72の摺動面72aの位置を、当該摺動面72aが第2の支持台61の第3の受面61aに当接する位置に配置するために設定される。これにより、トラス11と受梁22との間で中間支持構造17が圧縮されたり、トラス11が歪んだりすることが抑制される。
第2の中間支持体71、摺動部材72、及び少なくとも一つの第1の調整部材73は、例えば、複数のボルト89によって互いに取り付けられる。ボルト89は、例えば、下壁82に設けられた孔82bと、第1の調整部材73に設けられた切欠き73aとを通り、摺動部材72の上面72bに開口するネジ穴72cに挿入される。なお、第2の中間支持体71、摺動部材72、及び少なくとも一つの第1の調整部材73は、例えば、溶接のような他の手段によって互いに取り付けられても良い。
図6に示すように、第2の調整部材74は、例えば、シムであり、切欠きが設けられた略平坦な板状に形成される。なお、第2の調整部材74は、他の形状に形成されても良い。また、第2の調整部材74は、スペーサとも称され得る。
少なくとも一つの第2の調整部材74は、第2の中間支持体71の第1の支持面81aとトラス11の下面25aとの間、及び第2の中間支持体71の第2の支持面84aと第1の中間支持体42の底面55aとの間、のうち少なくとも一方に介在する。耐震化部品62が複数の第2の調整部材74を有する場合、複数の第2の調整部材74が第2の中間支持体71とトラス11との間、及び第2の中間支持体71と第1の中間支持体42との間、のうち少なくとも一方で積層する。
第2の調整部材74の数及び位置は、第2の中間支持体71の下面82a及び摺動部材72の摺動面72aを略水平にするために設定される。このため、第2の中間支持体71の第1の支持面81aとトラス11の下面25aとは、第2の調整部材74を介さずに互いに直接接触する部分を有しても良い。また、第2の中間支持体71の第2の支持面84aと第1の中間支持体42の底面55aとは、第2の調整部材74を介さずに互いに直接接触する部分を有しても良い。
第1の調整部材73と第2の調整部材74とのうち少なくとも一方は、省略されても良い。例えば、第1の調整部材73を設けること無しに、摺動部材72の摺動面72aが第2の支持台61の第3の受面61aに当接する場合、第1の調整部材73が省略されても良い。また、第2の調整部材74を設けること無しに、第2の中間支持体71の下面82a及び摺動部材72の摺動面72aが略水平に配置される場合、第2の調整部材74が省略されても良い。
ジャッキボルト75は、第2の中間支持体71の下壁82に設けられたネジ穴82cに取り付けられる。ジャッキボルト75は、下壁82の下面82aから突出し、摺動部材72及び第1の調整部材73に設けられた切欠き72d,73bを通り、第2の支持台61の第3の受面61aに当接する。なお、ジャッキボルト75は省略されても良い。
図7に示すように、第2の振れ止め部材63は二つの第2の支持台61に取り付けられる。例えば、第2の振れ止め部材63は、第3の受面61aから上方に突出するように、第2の支持台61に取り付けられる。図6に示すように、第2の振れ止め部材63と第2の支持台61とは、例えばスプリングピンに91より互いに取り付けられる。
図7に示すように、第2の振れ止め部材63は、幅方向Dwの内側における摺動部材72の縁72eに当接し、又は縁72eの近傍に位置する。第2の振れ止め部材63は、縁72eに当接することで、トラス11が建造物2に対して幅方向Dwに移動することを制限する。
第2の連結梁64は、幅方向Dwに延びている。第2の連結梁64の一方の端部は、一方の第2の中間支持体71の外立壁83に、例えばボルト92により取り付けられる。第2の連結梁64の他方の端部は、他方の第2の中間支持体71の外立壁83に、例えばボルト92により取り付けられる。これにより、第2の連結梁64は、二つの第2の中間支持体71を連結する。
以下、乗客コンベア1の耐震化方法の一部について例示する。なお、乗客コンベア1の耐震化方法は以下の方法に限らず、他の方法を用いても良い。乗客コンベア1は、例えば、建造物2が増改築される際に、耐震化される。以下の耐震化方法では、例えば、既設の中間支持構造17Aが、日本国における平成25年国土交通省告示 第1046号に定められたいわゆる「14耐震」の基準に適合する中間支持構造17Bに改修される。なお、中間支持構造17Bが適合する耐震基準は「14耐震」に限られない。
まず、図2の第1の支持台41、第1の振れ止め部材43、及び第1の連結梁44が撤去される。第1の支持台41、第1の振れ止め部材43、及び第1の連結梁44のうち少なくとも一つが溶接されていた場合、溶接痕が平坦に均される。
次に、トラス11の傾斜壁25に、例えばタップにより複数のネジ穴25bが形成される。さらに、第1の中間支持体42の下壁55に、例えばキリ又はドリルにより複数の孔55cが形成される。
次に、図6の第2の中間支持体71が、第1の中間支持体42に取り付けられる。例えば、第2の中間支持体71の支持壁84と第1の中間支持体42の下壁55とが、ボルト88によって互いに取り付けられる。
次に、第2の中間支持体71が、トラス11に取り付けられる。例えば、第2の中間支持体71の傾斜支持壁81とトラス11の傾斜壁25とが、ボルト87によって互いに取り付けられる。
次に、少なくとも一つの第2の調整部材74が、第2の中間支持体71とトラス11との間、及び第2の中間支持体71と第1の中間支持体42との間、のうち少なくとも一方に介在させられる。例えば、少なくとも一つの第2の調整部材74が、第2の中間支持体71とトラス11との間の隙間、及び第2の中間支持体71と第1の中間支持体42との間の隙間に挿入される。
第2の調整部材74は、当該第2の調整部材74に設けられた切り欠きにボルト87,88が入るように、上記隙間に挿入される。これにより、第2の調整部材74がボルト87,88を避けることができ、第2の調整部材74がボルト87,88に干渉することを抑制される。
第2の中間支持体71とトラス11との間、及び第2の中間支持体71と第1の中間支持体42との間における第2の調整部材74の数及び位置が調整されることで、第2の中間支持体71の下面82aが略水平に調整される。下面82aが略水平に調整された後、ボルト87,88により、第2の中間支持体71が、トラス11及び第1の中間支持体42に固定される。
次に、第2の支持台61が建造物2の受梁22に取り付けられる。例えば、第2の支持台61と受梁22とが、アンカーボルト又はスプリングピンによって互いに取り付けられる。なお、第2の支持台61は、第2の中間支持体71がトラス11及び第1の中間支持体42に取り付けられる前に、受梁22に取り付けられても良い。
次に、摺動部材72が第2の中間支持体71に取り付けられる。例えば、ジャッキボルト75が第2の中間支持体71の下壁82と第2の支持台61との間の間隔を保持した状態で、摺動部材72が第2の支持台61の第3の受面61aに載置される。さらに、少なくとも一つの第1の調整部材73が、下壁82と摺動部材72との間に介在させられる。
例えば、摺動部材72及び少なくとも一つの第1の調整部材73が、下壁82と第2の支持台61との間の隙間に挿入される。摺動部材72及び第1の調整部材73は、切り欠き72d,73bにジャッキボルト75が入るように、上記隙間に挿入される。これにより、摺動部材72及び第1の調整部材73がジャッキボルト75を避けることができ、摺動部材72及び第1の調整部材73がジャッキボルト75に干渉することを抑制される。
第2の中間支持体71と摺動部材72との間における第1の調整部材73の数が調整されることで、鉛直方向における摺動部材72の摺動面72aの位置が、摺動部材72が適切に第2の支持台61の第3の受面61a上で摺動可能なように調整される。摺動面72aの位置が調整された後、ボルト89により、第2の中間支持体71、摺動部材72、及び第1の調整部材73が互いに固定される。
次に、第2の振れ止め部材63が、第2の支持台61に取り付けられる。例えば、第2の振れ止め部材63と第2の支持台61とが、スプリングピン91により互いに取り付けられる。
次に、第2の連結梁64が、二つの第2の中間支持体71を連結する。例えば、第2の連結梁64の両端部が、二つの第2の中間支持体71に、ボルト92によって取り付けられる。なお、第2の連結梁64は、第2の振れ止め部材63が第2の支持台61に取り付けられる前に、第2の中間支持体71に取り付けられても良い。
以上により、既設の中間支持構造17Aが耐震化された中間支持構造17Bに改修される。以上の乗客コンベア1の耐震化方法は、溶接を行うことなく実施可能であり、建造物2で溶接による火花、熱、及び騒音が生じることが抑制される。
例えば、地震が発生した場合、摺動部材72は、第2の支持台61の第3の受面61a上を、摺動方向Dsに摺動することができる。摺動方向Dsにおいて、摺動部材72の摺動面72aは、例えば、第1の中間支持体42の底面55aよりも長い。このため、摺動部材72が第3の受面61a上で摺動しても、摺動部材72が第3の受面61aに支持される摺動方向Dsにおける長さ(かかり代)が十分確保され、摺動部材72が第2の支持台61から脱落することが抑制される。
以上説明された第1の実施形態に係る乗客コンベア1の耐震化方法において、既設の第1の支持台41が撤去され、第2の中間支持体71がトラス11に取り付けられ、さらに第3の受面61aを有する第2の支持台61が建造物2に取り付けられる。そして、下方に向き、摺動方向Dsにおいて第1の中間支持体42の底面55aよりも長く、摺動方向Dsに摺動可能に第3の受面61aに支持される摺動面72a、を有する摺動部材72が、第2の中間支持体71に取り付けられる。これにより、例えば地震が発生した場合、トラス11、第2の中間支持体71、及び摺動部材72が、摺動面72aと第3の受面61aとの摺動を伴いながら、摺動方向Dsに移動することができる。摺動部材72の摺動面72aは、既設の第1の中間支持体42の底面55aよりも摺動方向Dsにおいて長いため、摺動方向Dsにおいて十分なかかり代を確保することができ、第3の受面61aから脱落することが抑制される。
第2の中間支持体71と摺動部材72との間に、少なくとも一つの第1の調整部材73が介在する。これにより、乗客コンベア1の耐震化作業が行われる現場において、第1の調整部材73の数を調整することで、摺動面72aの位置が調整可能となる。従って、摺動面72aと第3の受面61aとが互いに適切な位置で接触することができる。
第2の中間支持体71は、底面55aを支持する第2の支持面84aを有する。当該第2の中間支持体71が、第1の中間支持体42に取り付けられる。これにより、トラス11から第1の中間支持体42を撤去する必要が無くなり、現場における作業時間やコストが低減され得る。さらに、第2の中間支持体71が第1の中間支持体42に取り付けられることで、乗客コンベア1の中間支持構造17の強度が向上する。
第2の中間支持体71とトラス11との間、及び第2の中間支持体71と第1の中間支持体42との間、のうち少なくとも一方に少なくとも一つの第2の調整部材74が介在する。これにより、現場において、第2の調整部材74の数及び位置を調整することで、摺動面72aの位置及び水平度が調整可能となる。従って、摺動面72aと第3の受面61aとが互いに平行且つ略水平に接触することができる。
耐震化部品62において、第1の支持面81aはトラス11を支持し、第2の支持面84aはトラス11から突出する第1の中間支持体42の底面55aを支持する。さらに、摺動面72aは、第2の支持面84aの反対側に位置するとともに、第2の支持面84aに沿う一方向Ds1(摺動方向Ds)において第2の支持面84aよりも長く、一方向Ds1に摺動可能に第2の支持台61に支持される。すなわち、耐震化部品62は、第2の支持台61に摺動可能に支持されることが可能な底面55aを、当該底面55aよりも一方向Ds1において長く形成可能な摺動面72aに代替する。従って、摺動面72aは、底面55aの代わりに一方向Ds1において十分なかかり代を確保することができ、第2の支持台61から脱落することが抑制される。耐震化部品62は、このかかり代を長くする耐震化工事を、第1の中間支持体42を撤去することなく行うことを可能にし、現場における作業時間やコストが低減することができる。さらに、調整部62aは、第2の支持面84aと摺動面72aとの間の距離を調整可能である。これにより、現場で摺動面72aの位置が調整可能となり、摺動面72aと第2の支持台61とが互いに適切な位置で接触することができる。
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態における乗客コンベア1の耐震化方法の一部について説明する。なお、以下の実施形態の説明において、既に説明された構成要素と同様の機能を持つ構成要素は、当該既述の構成要素と同じ符号が付され、さらに説明が省略される場合がある。また、同じ符号が付された複数の構成要素は、全ての機能及び性質が共通するとは限らず、各実施形態に応じた異なる機能及び性質を有していても良い。
第2の実施形態では、既設の中間支持構造17Aが溶接を伴って耐震化された中間支持構造17Bに改修される。さらに、第2の実施形態の中間支持構造17Bは、二つの第2の支持台61と、二つの耐震化部品62と、第2の振れ止め部材63と、第2の連結梁64とを有し、第1の中間支持体42を有さない。
まず、第1の支持台41、第1の中間支持体42、第1の振れ止め部材43、及び第1の連結梁44が撤去される。第1の支持台41、第1の中間支持体42、第1の振れ止め部材43、及び第1の連結梁44のうち少なくとも一つが溶接されていた場合、溶接痕が平坦に均される。
次に、第2の中間支持体71が、トラス11に取り付けられる。例えば、第2の中間支持体71の傾斜支持壁81とトラス11の傾斜壁25とが、溶接によって互いに取り付けられる。
次に、第2の支持台61が建造物2の受梁22に取り付けられる。例えば、第2の支持台61と受梁22とが、溶接によって互いに取り付けられる。なお、第2の支持台61は、第2の中間支持体71がトラス11に取り付けられる前に、受梁22に取り付けられても良い。
次に、摺動部材72が第2の中間支持体71に取り付けられる。例えば、ジャッキボルト75が第2の中間支持体71の下壁82と第2の支持台61との間の間隔を保持した状態で、摺動部材72が第2の支持台61の第3の受面61aに載置される。さらに、少なくとも一つの第1の調整部材73が、下壁82と摺動部材72との間に介在させられる。そして、ボルト89により、第2の中間支持体71、摺動部材72、及び第1の調整部材73が互いに固定される。
次に、第2の振れ止め部材63が、第2の支持台61に取り付けられる。例えば、第2の振れ止め部材63と第2の支持台61とが、溶接により互いに取り付けられる。
次に、第2の連結梁64が、二つの第3の受面61aを連結する。例えば、第2の連結梁64の両端部が、二つの第3の受面61aに、溶接によって取り付けられる。なお、第2の連結梁64は、第2の振れ止め部材63が第2の支持台61に取り付けられる前に、第3の受面61aに取り付けられても良い。
以上により、既設の中間支持構造17Aが耐震化された中間支持構造17Bに改修される。以上の乗客コンベア1の耐震化方法は、溶接を用いることで、中間支持構造17の強度をより高くすることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。