乗客コンベアの代表例としてのエスカレータは、エスカレータの自重及び乗客などの荷重を支える躯体としてのトラス内に、踏段チェーンにより無端状に連結された複数の踏段を備えている。各踏段は、前輪ローラ及び後輪ローラを有し、この前輪ローラと接続する踏段チェーンに駆動装置からの駆動力が伝達されて、各踏段が、この前輪ローラ及び後輪ローラがトラスに設けられたガイドレールに案内されながらトラス内を循環移動することにより、この踏段上の乗客を一方の乗降口から他方の乗降口まで運搬する。また、トラスの上側には、踏段の両端部に近接して欄干が立設され、この欄干に前記踏段と同じ方向に同じ速度で同期して循環移動する移動手すりが設けられている。
エスカレータは一般に、大型、長尺なものであるから、工場で完成させたエスカレータを、その完成させた態様で据付現場まで搬送するのは困難である。そのため、エスカレータの躯体としてのトラスは、例えば上階部、下階部及び中間部のように、分割可能な構造を有していて、工場から据付現場まで分割して搬送される。
図12は、エスカレータの分割可能なトラスの一例の正面図であり、トラス110は、上階部トラス111、下階部トラス112及び中間部トラス113を有し、これらの上階部トラス111、下階部トラス112及び中間部トラス113が互いに長手方向端部で結合されて一つのトラス110を構成している。上階部トラス111の内部空間には、踏段チェーンを駆動するための駆動輪114が設けられ、下階部トラス112の内部空間には、踏段チェーンの進行方向を反転させるための従動輪115が設けられている。また、上階部トラス111、下階部トラス112及び中間部トラス113の内部空間には、踏段の前輪ローラ及び後輪ローラを案内するためのガイドレール116a、116b、116cが踏段の移動軌跡に沿って設けられている。
このような分割されたトラス構造を有するエスカレータを製造するにあたっては、まず、工場において上階部トラス、下階部トラス及び中間部トラスを個別に作製し、次いでこれらのトラスを一体的に結合させるとともに、全ての部品を取り付けてエスカレータを一旦完成させ、踏段及び移動手すりなどの動作確認をする。動作確認後に、取り付けた各種部品のうち欄干や踏段や駆動装置等を取り外し、上階部トラス、下階部トラス及び中間部トラスを分割する。
分割された各トラス及び取り外した欄干や踏段等の部品は、工場から出荷され、据付現場へ輸送される。据え付け現場においては、分割された上階部トラス、下階部トラス及び中間部トラスが施工業者により結合され、欄干や踏段や駆動装置等が取り付けられてエスカレータが完成する。
エスカレータを工場で組立てるときには、据付現場において完成させるエスカレータに十分な精度が確保できるように、高い精度で組立てることが求められる。このような要求に応えるために、上階部トラス、下階部トラス及び中間部トラスのそれぞれは、中間部トラスと上階部トラスとの接合部、中間部トラスと下階部トラスとの接合部の精度に十分な注意を払ったうえで作製される。
また、組立て時の作業性を向上させることも求められる。そのため、作製された上階部トラス、下階部トラス及び中間部トラスは、それぞれ、組立治具に前記接合部を合わせて取り付けられ、この接合部を基準にして、トラスに取り付ける各部品の位置、寸法が決められ、各部品が取り付けられる。このようなエスカレータの製造方法は、例えば特許文献1に記載されている。
この特許文献1に記載されているような従来のエスカレータの組立方法を、図面を用いつつ説明する。図13〜15は、従来の組立方法の説明図であり、図13は、分割されたトラスの一例として、上階部トラスを示す正面図、図14は上階部トラスの部分斜視図、図15は図12の側面図である。
まず、上階部トラス111があらかじめ作製される。この作製された上階部トラス111は、図13に示すように、組立治具120に取り付けられる。このとき、組立治具120は、上階部トラス111と結合する中間トラス113の接続面と同じ条件を有する基準面120aを有しているので、この基準面120aに対して前記上階部トラス111が据付現場と同じ勾配となるように取り付けられる。
次に、図14及び図15に示すように、組立治具120に取り付けられた上階部トラス111に対して、各部品、図示した例ではガイドレール支え117を取り付ける。このとき、まず、上階部トラス111の上方に、トラスの幅方向中央に沿ってピアノ線121が張られ、このピアノ線121から下げ振り122が吊り下げられる。次に、この鉛直方向に吊り下げられた下げ振り122を基準として、スケール123(鋼尺)を用いてガイドレール支え117などの各部品の取り付け位置までの寸法を測定し、寸法が基準値になるように各部品の取り付け位置を調整してから固定する。
図示したガイドレール支え117以外の他の部品についても同様に、上階部トラス111の幅方向中央部に吊り下げられている下げ振り122を基準としてスケールを用いて取り付け位置の寸法を測定し、寸法が基準値になるように各部品の取り付け位置を調整してから固定される。
このように従来のエスカレータの組立方法においては、予め作製されたトラスが組立治具に取り付けられ、このトラスの幅方向中央に張られたピアノ線から吊り下げられた下げ振りを基準として部品が取り付けられるので、踏段を案内するガイドレールなどの部品は、トラスの幅方向を中心に踏段の進行方向で左右対象に取り付けられ、踏段の走行移動などに必要な精度が得られることになる。
特公昭61−270号公報
本発明に従う組立方法を、エスカレータの上階部トラスに適用した例について、図面を用いて具体的に説明する。図1は、本発明の組立方法の一例を用いて組立てられる上階部トラス11及びこの上階部トラス11が取り付けられる組立治具20を示す正面図である。なお、図1においては、上階部トラス11の組立の過程として、トラスの一方の側面部12及び他方の側面部13との間に、往路側の前輪ガイドレール14a、往路側の後輪ガイドレール14b、帰路側の前輪ガイドレール14c、帰路側の後輪ガイドレール14dが取り付けられるとともに、駆動輪15が取り付けられた状態を示している。
図1において、上階部トラス11が取り付けられて組立てられる組立治具20は、工場の床面などに設けられる作業台21と、この作業台21の上面に、組立てようとする上階部トラス11を挟むように間隔を空けて立設された複数の基準柱22を備えている。
作業台21は、組立てる上階部トラス11の形状に合わせた上面部21a、21bを有している。図1に示した例では、上階部トラス11が、上階部端部の水平部と、図示しない中間部トラスと接続する傾斜部とを有する形状になるから、このような形状に合わせて、作業台21は、前記上階部トラス11の水平部と平行な上面部21aと、前記上階部トラス11の傾斜部と平行な上面部21bとを有している。この水平な上面部21aは、上階部トラス11を取り付けるときの高さ方向の基準面となる。また、傾斜している上面部21bの傾斜角は、この上面部21bと前記水平な上面部21aとが、ヒンジ21cを介して接続されることで、調整することができるようになっている。
作業台21は、上階部トラス11に結合される中間部トラスと同じ構造を有する結合部21cを有していて、上階部トラス11は、この作業台21の結合部21cに結合されるようにして組立てられることになる。なお、このこの作業台21の結合部21cの構造については、従来と同様である。
基準柱22は、上階部トラス11を組立てるときのトラス幅寸法の基準となるものであり、また、トラスの上端部の高さ位置の基準となるものであり、更には、ガイドレールを支持するガイドレール支えなどの部品を取り付けるときの部品の位置寸法の基準となるものである。
図2は、図1に示す組立治具20の右側面図である。なお、図2では、組立作業の過程として、トラスの側面部12及び13が取り付けられた状態を示していて、説明を分かりやすくするために、図1に示されたガイドレールや駆動輪については図示されていない。
図2に示すように、基準柱22及び基準柱23は、取り付けようとする上階部トラス11の幅と同一の間隔を空けて作業台21上にそれぞれ設けられている。これらの基準柱22及び23に、トラスの側面部12及び13を当接させて組立治具20に取り付け固定することにより、上階部トラス11の幅寸法が、これらの基準柱22、23の間隔で規制され、所望のトラス幅寸法が定められることになる。
トラスの側面部12が当接される基準柱22は、少なくとも一本が設けられる必要があり、トラス11の長手方向でトラス幅が変動するのをできるだけ抑制するために、ニ本以上が設けられることが好ましい。図1に示した例では、トラス11の水平部に二本、傾斜部に二本の合計四本が設けられている。基準柱22の数は、トラス11の長手方向の長さに応じて、本数増大による作業性の低下を招かない範囲で適宜決められる。
また、トラスの側面部13が当接される基準柱23は、基準柱22と同様に、少なくとも一本が設けられる必要があり、トラス11の長手方向でトラス幅が変動するのをできるだけ抑制するために、ニ本以上が設けられることが好ましい。基準柱23の数は、トラス11の長手方向の長さに応じて、本数増大による作業性の低下を招かない範囲で適宜決められる。
組立てられるトラスは、トラスに取り付ける踏段の幅寸法が例えば600mm、800mm及び1000mm等と規格されていることに応じて、複数の幅寸法が定められる。そのため、基準柱22及び23のうち少なくとも一方は、基準柱22と基準柱23との間隔を変化する方向に移動することができるようになっており、これにより、基準柱22及び23にトラスの側面部12及び13を当接させるだけで、所望のトラス幅にすることができるようになっている。図示した例では、基準柱23がトラス幅方向に移動できるようになっている。他の基準柱22は、トラスの幅方向の移動はしないが、この基準柱22をトラスの幅方向に移動可能な構成にすることもできる。
図3は基準柱23の斜視図である。図3に示すように、この基準柱23は、基準柱本体23aと、この基準柱本体23aの下端部に設けられ、トラスの幅方向に延びる長尺のベース板23bとを備え、この基準柱本体23aが、ベース板23bに対して図示しない締結手段などによって着脱可能に固定されるようになっている。そして、基準柱本体23aの下端面とベース板23bとの上面に、それぞれ位置決めのための孔が形成されていて、所定のトラス幅寸法になるように基準柱本体23aをベース板23b上でトラス幅方向に移動させ、垂直方向に孔が一致するように位置合わせした後、ピン24を孔に挿入することで、所定のトラス幅寸法で容易に位置決めできるようになっている。なお、基準柱本体23aをトラスの幅方向に移動させるための移動手段については、特に限定されず、例えば、摺動手段、あるいは手動で移動させることができる。
図2及び図3に示されるように、基準柱22、23のトラスに向かう面には、トラスの幅寸法の基準となる基準板22c及び基準板23cがそれぞれ設けられていて、この基準板22c及び基準板23cの表面を基準として、組立てるトラスの幅方向の寸法サイズが規定される。この基準板22c及び23cは、例えば、基準柱本体23aに対して、図示しないボルト等により締結固定されることで取り付けられる。
これらの基準板22c、23cの上端部近傍には、組立てるトラスを高さ方向の位置を決めるための位置決めピン22d、23dが、あらかじめ定められた高さの位置にそれぞれ設けられている。図4は、基準柱23の上端部近傍の拡大斜視図である。なお、基準柱22の上端部近傍についても、図4と同様の構成になる。同図に示すように、基準柱23の上端近傍には、位置決めピン23dが、基準板23cの表面から突設されている。この位置決めピン23dに前記横梁部材13aを当接させることにより、トラスの側面部13の上端部の高さ方向の位置を位置決めすることができる。この位置決めピン23dは、例えば、基準柱本体23a及び基準板23cを貫通する孔を形成し、この孔に位置決めピン23dを通して図示しない締結手段により締結することにより着脱可能に取り付け固定されている。
基準柱23の側面には、ガイドレールを支持するガイドレール支えを取り付けるときの位置決めの基準となる取り付け基準板23eが、ベース板23fを介して設けられ、このベース板23fに形成された溝23gに基準板23eの背面に形成された突起が嵌め合わされて水平方向に移動可能に取り付けられている。同様に、基準柱22の側面には、図2に示すように取り付け基準板22eが、ベース板23fを介して水平方向に移動可能に取り付けられている。
基準柱22及び基準柱23は、トラスの側面部12及び13の位置決めに用いられるばかりでなく、トラス内でトラスの側面部13の長手方向に沿って取り付けられる各種部品の位置寸法の基準としても用いられる。そのため、図5に示すトラスの側面部12、13及び基準柱23の斜視図のように、基準柱22及び基準柱23は、前記各種部品の位置決めをすることができるように、トラスの側面部12、13の長手方向(図中の矢印方向)に沿って移動可能に構成されている。この基準柱22及び23の移動手段の一例については、図6に示すものがある。
図6は、基準柱23の下端部近傍の要部を示す斜視図である。基準柱23のベース板23bは、作業台21の上面部に設けられた直線運動案内手段(例えば、LMガイド)25により、トラス側面部13の長手方向に移動可能になっている。また、前記作業台21の上面部には、前記直線運動案内手段25に平行に所定のピッチを有するラック26が設けられるとともに、このラック26に噛み合うピニオン27(図2参照)がベース板23bに取り付け固定されている。このピニオン27の回転軸に取り付けられたハンドル28を回動させることにより、基準柱23が直線運動案内手段25に案内されつつ、トラス側面部13の長手方向に移動できるようになっている。なお、基準柱22についても同様である。
また、ラック26の近傍には、トラスの長手方向に沿ってスケールが設けられ、このスケールの目盛を基準として基準柱を移動させることにより、手動で移動させた場合であっても、基準柱23を正確に所定の位置に配設させることができるようになっている。
以上述べた構成を備える組立治具20を用いて上階部トラス11を組み立てるときには、まず、上階部トラス11の側面部12及び側面部13を、あらかじめ作製する。従来のトラスの組立方法では、組立治具に取り付ける前に、上階部トラスの組立を終え、トラス構造を完成させていたのに対して、本発明のトラス組立方法では、組立治具20に取り付けるのは、トラスの両側面部12、13であって、トラスの両側面部を接続固定するトラスの横梁部材は、まだ取り付けられていない。そして、組立治具20上において、トラス構造の完成とトラスへの部品の取り付けとを、一括して行う。
このように組立治具20上において、トラス構造の完成とトラスへの部品の取り付けとを、一括して行うことにより、次のような効果が得られる。従来のトラスの組立方法では、組立治具に取り付けられるトラスは既に完成しているため、組立治具に取り付けるトラスを作製する時には、トラス全体を精度よく作製する必要があり、所定の精度を確保するために歪取りなどの作業に手間を要する。これに対して、本発明の組立方法によれば、組立治具20に取り付けるのはトラスの両側面部12、13であり、これらの側面部12、13のみを予め精度良く作製すればいいのであるから、作業工数が減り、また、所定の精度を容易に得ることができ、組立の作業性が全体として向上する。さらに、基準柱22、23によりトラス幅を規制することにより、トラス構造における溶接歪などの影響を軽減することができる。
次に、トラスの両側面部12、13を組立治具20に取り付ける。このとき、基準柱22と基準柱23との間隔を、あらかじめトラスの幅寸法に一致させておく。このような基準柱22に対して、トラスの側面部12を、この基準柱22の基準板22cにトラスの側面部12を当接させ、かつ、トラスの側面部12の上端部を基準柱22の位置決めピン22dに当接させて位置決めし、さらに、トラスの側面部12を構成する縦梁部材を、基準柱22の取り付け基準板22eに当接させてトラスの側面部12のトラス長手方向の位置決めをし、その位置決めされた状態でトラスの側面部12を作業台21の結合部21cに取り付け固定する。
また、基準柱23に対しても同様に、トラスの側面部13を、この基準柱23の基準板23cにトラスの側面部13を当接させ、かつ、基準柱23の位置決めピン23dにトラスの側面部12の上端部を当接させて位置決めし、さらに、トラスの側面部13を構成する縦梁部材を、基準柱23の取り付け基準板23eに当接させてトラスの側面部13のトラス長手方向の位置決めをし、その位置合わされた状態でトラスの側面部13を作業台21の結合部21cに取り付け固定する。なお、トラスの側面部12、13の水平部は、この水平部の下端部と作業台21の上面部21aとの間に設けられる図示しない支持棒により支持される。
このようにして、本発明の方法では、トラスの側面部12、13を単に基準柱22、23に当接する作業のみで、トラスの幅寸法を決めることができるので、作業が容易であり、また寸法精度のばらつきも少なく、安定した精度でトラスの幅方向の寸法を決めて組立てることができる。
また、トラスの高さ方向の位置あわせも、基準柱22、23の上端部近傍に設けられた位置決めピン22d、23dにそれぞれ、トラスの側面部12、13の上端部を当接させることのみで、位置決めすることができる。したがって、作業が容易であり、また寸法精度のばらつきも少なく、安定した精度でトラスの高さ方向の寸法を決めて組立てることができる。
次に、組立治具に取り付けられた前記トラスの両側面部に対して、一個以上の部品を取り付ける。その後、この部品が取り付けられたトラスの両側面部に横梁部材を掛け渡し固定してトラスの立体構造を作製する。
このような方法によれば、部品を取り付けるときには、基準柱22、23を基準として部品の位置寸法を決めることができるので、従来技術のようにトラスの幅方向中央に張られたピアノ線から垂下された下げ振りを用いる必要がなく、部品の取り付け精度にばらつきが生じることを抑制できる。また、下げ振りから各部品までの距離をスケールで計測する時間が不要であるので、その分だけ作業時間を短縮することができ、作業性が向上する。
また、必要な部品が取り付けられた後で、トラスの横梁部材を横梁部材を掛け渡し固定してトラスの立体構造を作製することにより、トラスの組み立てと、部品の取り付けを組立治具における一体的な作業で行うことができるので、作業性が向上し、ひいては据え付け費用を軽減させることができる。また、トラスを精度良く、かつ、信頼性、加工性良く組立てることができる。
上述した部品の取り付け方法の例として、トラスの縦梁に取り付けられ、ガイドレールを支持するガイドレール支えの取り付け作業について、図面を用いて説明する。図7は、ガイドレール支えの取り付け法を説明する斜視図である。なお、図7では、説明を容易にするために基準柱23側にガイドレール支え16を位置決め固定するところを示しているが、基準柱22側にもガイドレール支えは取り付けられるのは言うまでもない。
ガイドレール支え16は、踏段ロールを案内するガイドレールを支持するものであるから、ガイドレール支え16の取り付け精度は、踏段の移動に重要な影響を及ぼす。すなわち、ガイドレール支え16の取り付け精度が悪い場合には、踏段の循環移動時に踏段が振動し、乗客に不快感を与えるおそれがある。したがって、乗客コンベアのガイドレール支えの取り付けには、踏段を滑らかに走行させるために高い精度が求められるのであり、ガイドレール支え16は、精度良くかつ、精度のばらつきなく取り付けられる必要がある。このため、本発明では、ガイドレール支え16の位置決め治具として、基準柱23の側面に設けられた取り付け基準板23eを用い、この取り付け基準板23eに設けられた位置決め孔23hと、ガイドレール支え16に設けられた位置決め孔16aとを同じ位置に位置合わせして、これらの位置決め孔23h、及び位置決め孔16aを貫通するピンにより固定することにより、ガイドレール支え16を、トラスの縦梁に対して所定の位置に位置させる。
図8は、ガイドレール支え16が取り付けられる基準柱23の上端部近傍の側面図である。前述したように取り付け基準板23eは、基準柱本体23aに取り付け固定されたベース板23fに対して、水平方向に移動可能に取り付けられている。この取り付け基準板23eのトラス内側に向かう端部近傍には、ガイドレール支え16を位置決めするための位置決め孔23hが上下方向に2個設けられている。また、取り付け基準板23をガイドレール支え16取り付け時の基準位置に固定し水平移動を抑止するための固定手段23iが設けられている。この固定手段23iは、例えば取り付け基準板23e及びベース板23fの両方に設けられた貫通孔に挿入されるピンを用いることができるが、この他に取り付け基準板23eに螺着され、先端部がベース板23fの表面に向かう雄ネジを用いることもできる。
そして、ガイドレール支え16を図示しないトラスの縦梁に取り付けるときには、取り付け基準板23eを基準位置まで位置させ、次いでガイドレール支え16を、この取り付け基準板23eに重ねて、取り付け基準板23eの位置決め孔23hと、ガイドレール支え16の位置決め孔16aとを同じ位置に位置合わせして、図示しない挿脱可能なピンをこれらの孔へに挿入する。このようにして、従来技術のように下げ振りやスケールを用いることなく、単に取り付け基準板23eとガイドレール支え16とを位置合わせしてピンで固定するだけで、ガイドレール支え16を所定の位置寸法に位置決めすることができる。
なお、後工程においてトラスの横梁部材がトラスの側面部に掛け渡され固定され、トラスの組立作業を終えた後に、完成したトラスを組立治具から取り外すときには、前記取り付け基準板23eが干渉しないように、取り付け基準板23eは退避位置へと水平移動される。
図9は、上述した方法に従い、トラスの縦梁12cに、ガイドレール支え17が取り付けられたところを示す側面図である。すなわち、図9に示すガイドレール支え17は、図8に示したガイドレール支え16とは、トラスの幅方向中央からみて反対側のガイドレール支えを示している。ガイドレール支え17は、図8に示したガイドレール支え16と同様に、このガイドレール支え17に設けられた位置決め孔17aと、取り付け基準板22e(図示せず)の位置決め孔とガイドレール支え17の位置決め孔17aとを同じ位置に位置合わせして、図示しない挿脱可能なピンをこれらの孔へに挿入することにより所定の位置に設けられ、トラスの縦梁12cに対して締結手段により取り付け固定される。
縦梁12cに取り付け固定されたガイドレール支え17には、踏段31の往路側の前輪ローラ31aを案内するガイドレール14aや、踏段31の往路側の後輪ローラ31bを案内するガイドレール14bや、踏段31の帰路側の前輪ローラ31aを案内するガイドレール14cや、踏段31の帰路側の後輪ローラ31bを案内するガイドレール14dが設けられる。また、帰路側の移動手すり32を案内するための案内部材33や、往路側の踏段31に近接配置されたスカートガードパネル34を支持固定する取付金具35もまた、このガイドレール支え17に取り付けられる。なお、図9中、符号36は、複数の踏段31を連結する踏段チェーンである。
図示されたガイドレール14a〜14dの取り付け精度は、ガイドレール支え16の取り付け精度と同様に、循環移動する踏段の走行の影響を及ぼす。したがって、乗客コンベアのガイドレールの取り付けには、踏段を滑らかに走行させるために高い精度が求められるのであり、そのため、踏段の振動や乗客の不快感を防止するために、これらのガイドレール14a〜14dを、ガイドレール支え16に精度よく取り付ける必要がある。このようなガイドレール14a〜14dの取り付け方法を、ガイドレール14aの取り付けを代表例として図10及び図11を用いて説明する。
図10は、ガイドレール14aの位置決め方法を説明する斜視図であり、図11(a)は、ガイドレール14a近傍の拡大斜視図、図11(b)は、同図(a)の側面図である。図10に示すように、ガイドレール14aをガイドレール支え16に取り付けるに当たり、ガイドレール14aの位置決めをするために、位置決め治具29を用いる。この位置決め治具29は、図11(a)に示すように概略平板状であり、一方の端部にガイドレール14のロール転動溝に当接される突起部29aを有し、他方の端部に基準柱の基準板23cに当接される切欠き部29bを有していて、この切欠き部29bから突起部29aの最端部までの長さは、ガイドレール14aを取り付けるためにあらかじめ定められた基準長さになっている。そして、ガイドレール14aをガイドレール支え16に取り付けるときには、この位置決め治具29の切り欠き部29bを基準柱23の基準板23aに当接させるとともに、位置決め治具29の突起部29aをガイドレール14aのロール転動溝の側面部に当接させることで、ガイドレール14aが基準柱23を基準として位置決め治具29の寸法により位置決めされる。また、ガイドレール14aの垂直方向の位置決めは、別の位置決め治具を用いて位置決めされる。ガイドレール14aは位置決めされた後、ガイドレール支え16に固定される。
このようにして、従来技術において、ガイドレール14をガイドレール支え16に取り付ける際には下げ振りとスケールを用いて、トラスの幅方向中央からの距離を測定してガイドレールを位置決めしていたのに対し、上記の方法によれば、位置決め治具29を用いて、この位置決め治具29を単に基準柱23とガイドレール14にそれぞれ当接させるだけで、基準柱を基準としてガイドレールが所定の位置に位置決めされるので、ガイドレール14aの取り付けの作業性が向上し、また、取り付け精度を向上させることも可能となり、さらに、取り付け精度のばらつきを抑制することができる。
前記ガイドレール支え16及び上記ガイドレール14以外の部品、例えば、駆動輪15についても、同様にして、基準柱23を基準として、又は基準柱23を基準に取り付けられた部品を基準として、位置決め治具を用いて位置決めをし、取り付け固定することができる。このように位置決め治具を用いた位置決めを行って部品を取り付けることにより、従来技術で用いられてきた下げ振りやスケールが不要となり、よって取り付け精度のばらつきを抑制することができ、また、単に位置決め治具を部品に当接するだけで位置決めすることができるので、作業性が向上する。
組立治具20に取り付けられたトラス側面部12、13の間に、所要の部品が取り付けられた後に、これらのトラス側面部12、13の間に横梁部材を掛け渡し、横梁部材の一方の端部をトラス側面部12に取り付け固定し、他方の端部をトラス側面部13に取り付け固定して、上階部トラス11を完成させる。作業治具20に取り付けられた状態でトラスを完成させることにより、トラス全体の信頼性を向上させることができる。
この後、上階部トラス11を組立治具20から取り外す。組立治具20から取り外された上階部トラス11は、中間部トラス及び下階側トラスと結合されて、全体のトラスが組立てられる。
以上、図面を用いて説明した実施形態においては、上階部トラスの組立ての例を説明したが、本発明の乗客コンベアの組立方法は、上階部トラスの組立に限定されるものではなく、中間部トラス及び下階側トラスもまた、本発明の方法に従って、トラスの立体的な組立てと部品の取り付けとを一括して行うことができる。
また、図面を用いて説明した実施形態においては、エスカレータ用のトラスの組立てについて説明したが、本発明の乗客コンベアの組立方法は、動く歩道用のトラスの組立に適用することもできる。