JP7012450B2 - 流動接触分解触媒の製造方法 - Google Patents
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前記混合スラリーを噴霧乾燥することにより流動接触分解触媒の前駆体を得る工程と、
前記前駆体を焼成し、前記金属塩の金属を酸化物とする工程と、を含み、
前記混合スラリーを得る工程は、前記活性成分が触媒の表面に析出する添加量で添加され、
前記混合スラリーを得る工程における前記金属塩の添加量は、混合スラリー中の固形分(分散媒を除いた量)100質量%に対して、金属塩を構成する金属の酸化物換算で3.0質量%~8.0質量%であり、
触媒中には有効成分として亜鉛が含まれない流動接触分解触媒を製造することを特徴とする。
[流動接触分解触媒]
先ず、本発明の流動接触分解触媒(以下単に「触媒」という場合がある)の製造方法により製造された流動接触分解触媒について述べておくと、触媒は、一例としてゼオライト(結晶性アルミナシリケート)が例えば10~50質量%、アルミナバインダーが例えば5~50質量%、粘土鉱物が例えば10~40質量%、金属捕捉用の活性成分である金属の酸化物が例えば2~8質量%含まれる。
触媒中には、粘土鉱物が含まれていなくてもよい。また触媒は、活性アルミナなどの活性マトリックス成分が含まれていてもよい。
金属捕捉用の活性成分である金属の酸化物の含有量については、高い金属の捕捉能を得ること、含有量が多すぎるとゼオライトに対して被毒作用が働く懸念があること、の観点から好ましい含有量の一例を示している。
該触媒を使用した接触分解処理は、固定床反応装置に触媒を充填して水素雰囲気下、高温高圧条件で行なわれる。
<第1工程>
本発明の実施形態に係る触媒の製造方法では、先ずゼオライトの粉体と、アルミナバインダーの原料である溶液と、粘土鉱物と、活性マトリックス成分と、金属捕捉用の活性成分の原料である金属塩の溶液と、が混合された混合スラリー(調合スラリー)を得る第1工程を行う。
この工程のより具体的な一例においては、アルミナバインダーの原料である溶液に、粘土鉱物と、活性マトリックス成分と、ゼオライトの粉体とを添加し、撹拌した後、金属捕捉用の活性成分の原料である金属塩の溶液を添加し、撹拌することにより混合スラリーを得る。この工程は例えば室温で行われる 。
アルミナバインダーの原料としては、例えば塩基性塩化アルミニウム([Al2(OH)nCl6-n]m(但し、0<n<6、m≦10))が用いられる。
粘土鉱物としては、カオリン、ハロイサイトなどが使用され、好適にはカオリンが選択される。
活性マトリックス成分としては、活性アルミナ、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、アルミナ-マグネシア、シリカ-マグネシア-アルミナなどの固体酸を有する物質が挙げられる。
また金属塩の溶液の添加量は、混合スラリー100質量%に対して、金属塩を構成する金属(活性成分)の酸化物換算で0.5質量%~8.0質量%であることが既述の観点から好ましい。
次いで、第1工程で得られた混合スラリーを噴霧乾燥することにより流動接触分解触媒の前駆体を得る。具体的には混合スラリーを噴霧乾燥機のスラリー貯槽に充填し、150~450℃の範囲の例えば230℃に調整された気流(例えば空気)が流れる乾燥チャンバー内にスラリーを噴霧することにより、噴霧乾燥粒子である流動接触分解触媒の前駆体が得られる。スラリーの噴霧乾燥によって前記気流の温度は低下するが、乾燥チャンバーの出口の温度は、ヒーターなどを用いて110~350℃の範囲の例えば130℃に維持される。
しかる後、電気炉にて例えば300~700℃の範囲の例えば600℃に調整された空気雰囲気下で前記噴霧乾燥粒子の焼成を行う。焼成温度が300℃より過度に低いと、残存水分による操作性が悪くなり、また金属担持状態が均一になりにくいおそれがあり、700℃を過度に超えると、金属が凝集を起こし、分散維持効果が期待できなくなるおそれがあるので好ましくない。
洗浄工程は、例えば次のようにして行われる。純水に焼成粒子を添加して撹拌し、得られたスラリーを吸引濾過した後、濾過残渣を純水で洗浄し、洗浄粒子ケーキを得る。この洗浄粒子ケーキと純水とを混合し、再懸濁した後、硫酸アンモニウムを添加する。得られたスラリーを撹拌した後、吸引濾過した後、濾過残渣を純水で洗浄し、洗浄粒子ケーキを得る。
なお、一連の工程で使用される純水は例えば加温されて使用される。
<調合工程>
23.5質量%の塩基性塩化アルミニウム水溶液531.9gと純水1117.3gを混合した。次いで、この撹拌混合溶液に、カオリン341.6g、活性アルミナ227.7g、超安定化Y型ゼオライト粉末466.8gを順次添加し、よく撹拌した後、塩化ランタン溶液(La2O3濃度:29.1質量%)を171.8g添加した。その後、このスラリーをよく撹拌し調合スラリー(混合スラリー)を得た。得られた調合スラリーは、ホモジナイザーを用いて分散処理を行い、固形分濃度が35質量%、pHが3.8だった。
<噴霧乾燥および焼成工程>
調合スラリーを液滴として、入口温度が230℃、出口温度が130℃の噴霧乾燥機で噴霧乾燥を行い、平均粒子径が70μmの球状粒子を得た。この乾燥粉末は電気炉にて空気雰囲気下、600℃で1時間焼成し、流動接触分解触媒1を得た。
23.5質量%の塩基性アルミニウム水溶液531.9gと純水1099.8gを混合した。次いで、この撹拌混合溶液に、カオリン403.7g、活性アルミナ227.7g、超安定化Y型ゼオライト粉末408.5gを順次添加し、よく撹拌した後、塩化ランタン溶液(La2O3濃度:29.1質量%)を110.0g添加した。次いでこのスラリーに塩化マグネシウム溶液(MgO濃度:23.8質量%)を75.6g添加した後、よく撹拌し調合スラリー(混合スラリー)を得た。得られた調合スラリーは、ホモジナイザーを用いて分散処理を行い、固形分濃度35質量%、pH3.9だった。その他の工程は実施例1と同様に行い、流動接触分解触媒2を得た。
23.5質量%の塩基性アルミニウム水溶液531.9gと純水1194.9gを混合した。次いで、この撹拌混合溶液に、カオリン490.7g、活性アルミナ227.7g、超安定化Y型ゼオライト粉末350.1gを順次添加し、よく撹拌した後、塩化ランタン溶液(La2O3濃度:29.1質量%)を61.9g添加した。次いでこのスラリーに塩化カルシウム溶液(CaO濃度:38.0質量%)を31.6g添加した後、よく撹拌し調合スラリー(混合スラリー)を得た。得られた調合スラリーは、ホモジナイザーを用いて分散処理を行い、固形分濃度35質量%、pH3.8だった。その他の工程は実施例1と同様に行い、流動接触分解触媒3を得た。
23.5質量%の塩基性アルミニウム水溶液638.3gと純水1135.7gを混合した。次いで、この撹拌混合溶液に、カオリン488.2g、活性アルミナ227.7g、超安定化Y型ゼオライト粉末350.1gを順次添加し、よく撹拌した後、塩化ランタン溶液(La2O3濃度:29.1質量%)を17.2g添加した。次いでこのスラリーに塩化マグネシウム溶液(MgO濃度:23.8質量%)を8.4g添加した後、よく撹拌し調合スラリー(混合スラリー)を得た。得られた調合スラリーは、ホモジナイザーを用いて分散処理を行い、固形分濃度35質量%、pH4.2だった。その他の工程は実施例1と同様に行い、流動接触分解触媒4を得た。
23.5重量%の塩基性塩化アルミニウム水溶液531.9gと純水1132.5gを混合した。次いで、この撹拌混合溶液に、カオリン378.9g、活性アルミナ227.7g、超安定化Y型ゼオライト粉末350.1gを順次添加し、よく撹拌した後、塩化ランタン溶液(La2O3濃度:29.1質量%)を81.6g添加した。ついでこのスラリーに塩化マグネシウム溶液(MgO濃度:23.8質量%)を168.1g添加した後、よく撹拌し調合スラリー(混合スラリー)を得た。よく撹拌し調合スラリーを得た。得られた調合スラリーは、ホモジナイザーを用いて分散処理を行い、固形分濃度が35重量%。pHが4.0だった。
その他の工程は、実施例1と同様に行い流動接触分解触媒5を得た。
23.5重量%の塩基性塩化アルミニウム水溶液531.9gと純水1238.1gを混合した。次いで、この撹拌混合溶液に、カオリン341.6g、活性アルミナ227.7g、超安定化Y型ゼオライト粉末466.8gを順次添加し、よく撹拌し、さらに、酸化ランタン粒子(一次粒子径約10μm)を51g添加した後、よく撹拌し調合スラリーを得た。得られた調合スラリーは、ホモジナイザーを用いて分散処理を行い、固形分濃度が35重量%。pHが4.8だった。
その他の工程は、実施例1と同様に行い流動接触分解触媒R1を得た。
23.5重量%の塩基性塩化アルミニウム水溶液531.9gと純水1143.9gを混合した。次いで、この撹拌混合溶液に、カオリン465.8g、活性アルミナ227.7g、超安定化Y型ゼオライト粉末408.5gを順次添加し、よく撹拌し調合スラリーを得た。得られた調合スラリーは、ホモジナイザーを用いて分散処理を行い、固形分濃度が35重量%。pHが4.5だった。
その他の工程は、実施例1と同様に行い流動接触分解触媒R2を得た。
[金属捕捉剤、触媒の組成及び物性値]
上述の実施例及び比較例の流動接触分解触媒の組成(触媒全体に対する各成分の質量%)を表1に示す。
[触媒の性能評価試験]
各実施例、比較例の触媒について、ACE-MAT(Advanced Cracking Evaluation-Micro Activity Test)を用い、同一原油、同一反応条件下で触媒の性能評価試験を行った。ただし、これらの性能評価試験を行う前に、各触媒の表面に、予めニッケルおよびバナジウムをそれぞれ1000質量ppm(ニッケルの質量を触媒の質量で除算している)および2000質量ppm(バナジウムの質量を触媒の質量で除算している)沈着させ、次いでスチーミングして擬平衡化処理を行った。この触媒を擬平衡化触媒(Ni/V=1000ppm/2000ppm)と表示する。
これら擬平衡化処理は、具体的には、各触媒を予め600℃で2時間焼成した後、所定量のナフテン酸ニッケル、およびナフテン酸バナジウムのトルエン溶液を吸収させ、次いで110℃で乾燥後、600℃で1.5時間焼成し、次いで780℃で13時間スチーム処理を行うことにより実施される。
比表面積の測定結果は表2に示すとおりである。
原料油:原油の脱硫常圧残渣油(DSAR)+脱硫減圧軽油(DSVGO)(50+50)
触媒/通油量の質量比(C/O):3.75
反応温度:520℃
1)転化率=100-(LCO+HCO+CLO)
2)触媒/油の質量比を3.75にて測定し、同一転化率(=73質量%)での各収率を内挿して求めた。
3)ガソリンの沸点範囲:30~216℃
4)LCOの沸点範囲:216~343℃(LCO:Light Cycle Oil)
5)HCOおよびCLOの沸点範囲:343℃+(HCO:Heavy Cycle Oil、CLO:Clarified Oil)
表2から、実施例及び比較例のいずれの触媒についても、擬平衡化処理を行うことにより、比表面積は減少しているが、ニッケル及びバナジウムが存在したときの比表面積の保持率は実施例の方が高く、実施例の触媒は、これらの金属に対する被毒に強い、即ち耐金属性が大きいということが分かる。
活性評価結果によれば、比較例1および2の試料に比べ、実施例1~3及び参考例4の試料の方が、ニッケルおよびバナジウムを沈着させても転化率の低下幅が小さく、HCOおよびCLO分解性の低下が抑制されている。また、Coke生成に関しても抑制されている。参考例5は、実施例1~3及び参考例4と比較すると、ニッケルおよびバナジウムを沈着させたことによるHCOおよびCLOの分解性の低下の程度が大きく、また、ドライガスの収率が低くなっている。このため触媒の性能という観点からは、金属捕捉用の活性成分の原料である金属塩の含有割合は、例えば8質量%未満であることがよい。
Claims (3)
- ゼオライトの粉体と、塩基性塩化アルミニウムからなるアルミナバインダーの原料である溶液と、金属捕捉用の活性成分の原料である、塩化ランタン、塩化セリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、酢酸ランタン、酢酸セリウム、酢酸マグネシウム、硫酸ランタン、硫酸セリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硝酸ランタン、硝酸セリウム、硝酸マグネシウム及び硝酸カルシウムからなる群から選ばれる金属塩の溶液と、が混合されている混合スラリーを得る工程と、
前記混合スラリーを噴霧乾燥することにより流動接触分解触媒の前駆体を得る工程と、
前記前駆体を焼成し、前記金属塩の金属を酸化物とする工程と、を含み、
前記混合スラリーを得る工程は、前記活性成分が触媒の表面に析出する添加量で添加され、
前記混合スラリーを得る工程における前記金属塩の添加量は、混合スラリー中の固形分(分散媒を除いた量)100質量%に対して、金属塩を構成する金属の酸化物換算で3.0質量%~8.0質量%であり、
触媒中には有効成分として亜鉛が含まれない流動接触分解触媒を製造することを特徴とする流動接触分解触媒の製造方法。 - 前記混合スラリーは、粘土鉱物を含むことを特徴とする請求項1に記載の流動接触分解触媒の製造方法。
- 前記混合スラリーは、活性マトリックス成分を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の流動接触分解触媒の製造方法。
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