JP2019166446A - 流動接触分解触媒用マトリックス、及び流動接触分解用触媒、並びに、流動接触分解触媒用マトリックス、及び流動接触分解用触媒の製造方法 - Google Patents

流動接触分解触媒用マトリックス、及び流動接触分解用触媒、並びに、流動接触分解触媒用マトリックス、及び流動接触分解用触媒の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】重質炭化水素油留分の分解能力が高く、コークの生成量を抑えることが可能な流動接触分解触媒用マトリックス、該マトリックスを含む流動接触分解用触媒などを提供する。【解決手段】流動接触分解触媒用マトリックスは、チタン含有成分、及び第3の金属含有成分を担持したアルミナ粒子からなる。流動接触分解用触媒は、ゼオライト粒子と、流動接触分解触媒用マトリックスを含有するマトリックス成分と、増量剤とを含む。【選択図】 なし

Description

本発明は、炭化水素油の流動接触分解に用いる流動接触分解用触媒の技術分野に関する。
製油所における残油処理比率の増加を背景として、より効率的に残油処理を行うことが可能な流動接触分解(RFCC:Residual Fluid Catalyst Cracking)用触媒(「RFCC触媒」ともいう)の改良は急務の課題である。数ある課題の中でも、常圧蒸留残油などの重質炭化水素油留分(「ボトム留分」ともいう)の転化率向上は、付加価値の低い重質留分を、例えばガソリンやオレフィンといった付加価値の高い軽質留分に転化させるという目的において非常に重要度が高い。
このようなボトム留分の転化率向上に加えて、接触分解反応におけるコーク生成量の低減も重要な課題であり、コーク生成量を抑えたうえで、最大限のボトム留分の分解能力が求められている。
一方、RFCC触媒は、固体酸であるゼオライトを含み、流動状態で用いる際の耐摩耗性を持たせるためなど、種々の目的でマトリックスが添加される。一般的なマトリックスとしては、炭化水素油の分解活性を持つアルミナや、ゼオライトと他のマトリックスを結合させるバインダーなどが挙げられる。
RFCC触媒におけるボトム留分の転化率向上や、コーク生成量の低減には、マトリックスの活性向上も重要な観点となる。
これらの要求に応えるべく、従来、様々な技術が提案されている。(たとえば、特許文献1〜3)。
ここで特許文献4には、ゼオライト、カオリンなどの粘土、アルミナやバインダー物質を含むFCC触媒の触媒前駆体混合物に、添加剤としてジルコニウム(Zr)の化合物を添加する技術が記載されている。しかしながら特許文献4には、マトリックスに着目してその活性を向上させる技術は記載されていない。
特開2014−80326号公報 特開2014−231034号公報 特開2017−87204号公報 特開2004−528180号公報
本発明は、重質炭化水素油留分の分解能力が高く、コークの生成量抑えることが可能な流動接触分解触媒用マトリックス、及び流動接触分解用触媒、並びに、流動接触分解触媒用マトリックス、及び流動接触分解用触媒の製造方法を提供する。
第1の発明は、チタン含有成分、及び第3の金属含有成分を担持したアルミナ粒子からなる流動接触分解触媒用マトリックである。
前記第1の発明は、以下の特徴を備えていてもよい。
(i)前記第3の金属含有成分は、ジルコニウム、イットリウムおよびニオブからなる金属群から選択された少なくとも1つの金属を含有すること。
(ii)前記マトリックス中のチタン含有成分、及び第3の金属含有成分の総含有量が、チタニア換算、及び第3の金属成分の酸化物換算で1.0〜20質量%の範囲内にあること。前記チタン含有成分と、前記第3の金属含有成分との含有量比が、チタニア/第3の金属成分酸化物換算比で、100〜0.1の範囲内であること。
(iii)前記アルミナ粒子は、表面にチタニア、及び第3の金属成分の酸化物が担持されていること。前記アルミナ粒子は、アルミニウムの水酸化物、酸化物、オキシ水酸化物からなる前駆体群から選択された少なくとも1つの前駆体物質から得られたものであること。前記アルミナ粒子の酸量が0.40〜0.85mmol/gの範囲内にあること。前記アルミナ粒子の比表面積が200〜450m/gの範囲内にあること。
第2の発明は、第1の発明に係る流動接触分解触媒用マトリックスを含有するマトリックス成分と、増量剤とを含むことを特徴とする流動接触分解用触媒である。
前記第2の発明は、以下の特徴を備えていてもよい。
(iv)前記流動接触分解用触媒は、前記流動接触分解触媒用マトリックス以外のマトリックス成分としてシリカ系またはアルミナ系のバインダーを含むこと。前記流動接触分解用触媒は、前記ゼオライト粒子の含有量が15〜50質量%の範囲内、前記流動接触分解触媒用マトリックスの含有量が0.1〜20質量%の範囲内であること。前記チタン含有成分、及び第3の金属含有成分の総含有量が、チタニア換算、及び第3の金属成分の酸化物換算で0.01〜10.0質量%の範囲内にあること。
(v)水銀圧入法にて測定した細孔容積が0.25〜0.45ml/gの範囲内にあること。比表面積が180〜320m/gの範囲内にあること。見掛けかさ密度が0.68g/ml以上であること。
第3の発明は、アルミナ粒子の前駆体物質を含むスラリーに、チタン含有溶液、及び第3の金属成分含有溶液を混合して、アルミナマトリックススラリーを調製する調製工程と、
前記アルミナマトリックススラリー中で、前記前駆体物質の表面にチタン含有成分、及び第3の金属成分含有成分を担持させる担持工程と、を含むことを特徴とする流動接触分解触媒用マトリックスの製造方法である。
前記第3の発明は、以下の特徴を備えていてもよい。
(vi)前記第3の金属含有溶液は、ジルコニウム、イットリウムおよびニオブからなる金属群から選択された少なくとも1つの金属を含有すること。
(vii)前記担持工程では、前記アルミナマトリックススラリーを60〜120℃の範囲内の温度に0.5〜7時間の範囲内に保持すること。
(viii)前記担持工程後のアルミナマトリックススラリーを、さらに乾燥する乾燥工程を含むこと。
第4の発明は、ゼオライト粒子と、前記流動接触分解触媒用マトリックスの製造方法にて得られたアルミナマトリックススラリーまたは前駆体物質の粒子を含むマトリックスと、増量剤と、を混合して、触媒スラリーを調製する触媒調製工程と、
前記触媒スラリーを乾燥・加熱する乾燥・加熱工程と、を含むことを特徴とする流動接触分解用触媒の製造方法である。
前記第4の発明は、以下の特徴を備えていてもよい。
(ix)前記乾燥・加熱工程は、150〜600℃の範囲内の温度に調整された酸化雰囲気下での触媒の焼成を含むこと。
本発明によれば、流動接触分解触媒用マトリックスは、アルミナ粒子にチタン含有成分、及び第3の金属含有成分が担持されているので、流動接触分解のマトリックス成分として用いたとき、重質炭化水素油留分の転化率が高く、コークの生成量を抑えた流動接触分解反応を進行させることができる。
本発明の実施の形態は、流動接触分解触媒用マトリックス、及びこれを含有する流動接触分解用触媒(以下「本例触媒」という)であり、以下に本例触媒及びその製造方法の実施の形態について詳述する。
[流動接触分解触媒用マトリックス]
本例触媒にはマトリックスとしてアルミナ(Al)粒子が含まれ、活性を付与する。アルミナは、接触分解反応における炭化水素油の粗分解に寄与していると考えられている。
マトリックスとして用いられるアルミナ粒子としては、酸点を有する固体酸である活性アルミナを例示することができる。固体酸は、触媒が使用される温度領域において固体酸性を示すものであり、酸量の確認は、アンモニアを用いた昇温脱離(NH−TPD:Temperature Programmed Desorption)法や、アンモニア又はピリジンを用いるin situ FTIR(フーリエ変換赤外線吸収スペクトル)法などにより確認できる。
例えばNH−TPD法は、測定対象の試料を真空雰囲気下で加熱保持し、所定時間経過後にアンモニアガスを吸着させ、その際に発生する吸着熱を測定し、その吸着熱からアンモニア吸着量を測定することにより、固体酸量を算出する手法である。より、詳細には特許第3784852号の実施例1の手法に準じて吸着熱を測定する場合を例示することができる。
本例のアルミナ粒子は、活性を向上させる成分としてチタンを含有する成分、及び第3の金属を含有する成分が担持されている。好適なチタン含有成分の担持例として、アルミナ粒子の表面に、担持法によりチタニア(TiO)が担持されている。また、アルミナ粒子の表面に、アルミニウムとチタンとを含む複合酸化物が担持されていてもよい。
チタン含有成分が担持されたアルミナ粒子は、単一粒子であってもよいし、複数の単一粒子の凝集体であってもよい。
また、前記第3の金属含有成分は、ジルコニウム、イットリウムおよびニオブからなる金属群から選択された少なくとも1つの金属を含有する。
例えば第3の金属含有成分がジルコニウム含有成分の場合、ジルコニウム含有成分の担持例として、アルミナ粒子の表面に、既述のチタン含有成分(例えばチタニア)と共に、担持法によりジルコニア(ZrO)が担持されている。また、アルミナ粒子の表面に、既述のチタン含有成分と共に、アルミニウムとジルコニウムとを含む複合酸化物が担持されていてもよい。
例えばアルミナとチタニア、既述の金属群に挙げたジルコニウム、イットリウムおよびニオブの酸化物(第3の金属成分の酸化物)とを比較すると、チタニアや第3の金属成分の酸化物の方が単位質量あたりの酸量は多い。一方で、アルミナ粒子と比較して、チタニア粒子や第3の金属成分の酸化物の粒子は比表面積が小さいため、チタニアや第3の金属成分の酸化物単体を活性マトリックスとして添加しても、炭化水素油の粗分解活性を十分に得ることが困難となるおそれがある。
そこで、単体のチタニアや第3の金属成分の酸化物と比較して比表面積が大きく、且つ、それ自体も固体酸としての活性を有するアルミナ粒子の表面に、チタニアなどのジルコニウム含有成分、第3の金属成分の酸化物などの第3の金属含有成分を分散担持することにより、活性マトリックスとしてのアルミナ粒子の活性を向上させることができる。
アルミナ粒子中のチタン含有成分、及び第3の金属含有成分の総含有量は、TiO換算、及び第3の金属成分の酸化物換算で1〜20質量%の範囲内、好ましくは5〜15質量%の範囲内である。また、チタン含有成分と、第3の金属含有成分との含有量比が、チタニア/第3の金属成分酸化物換算比で、100〜0.1、好ましくは50〜0.5の範囲内である。さらに、既述のNH−TPD法を用いた場合において、チタン含有成分、及び第3の金属含有成分を担持したアルミナ粒子の酸量は0.40〜0.85mmol/gの範囲内、好ましくは0.45〜0.80mmol/gの範囲内である。さらに、チタン含有成分、及び第3の金属含有成分を担持したアルミナ粒子の比表面積(SA:Specific surface Area)は、真空排気しながら500℃で1時間熱処理したアルミナ粒子(ジルコニウム含有成分を担持したもの)に対して、窒素ガスを吸着させ、BET法により比表面積(m2/g)を算出したものであり、200〜450m/gの範囲内、好ましくは250〜400m/gの範囲内である。
アルミナ粒子に対して、直接、チタン含有成分、及び第3の金属含有成分を担持する手法を採用し、その担持量を変化させることにより、活性マトリックスであるアルミニウム粒子の酸量、比表面積などを調整することが可能となる。
本発明に係る流動接触分解触媒用マトリックスは、流動接触分解触媒の中に添加されると、すなわち後述するように流動接触分解触媒のマトリックス成分として使用すると、流動接触分解において、ボトム分解能を高め、コークの析出量を低減させることができる。
本発明に係る流動接触分解触媒用マトリックスには、少量のアンモニウム塩、アルカリ金属(たとえばナトリウム)またはその塩などが含まれていてもよい。
[接触分解触媒の組成]
本例触媒は、マトリックスとしてのアルミナ粒子の他、ゼオライト粒子、増量剤及びその他の組成物を含む。
<ゼオライト>
本例触媒にはゼオライト(結晶性アルミナシリケート)粒子が含まれる。ゼオライトは、接触分解プロセス、特に流動接触分解プロセスにて炭化水素油に対する接触分解活性を持つゼオライトであれば、特段の限定はない。例えば、フォージャサイトゼオライト、ZSMゼオライト、βゼオライト、モルデナイトゼオライト、天然ゼオライトから選択された1種、または2種以上のゼオライトを含むことができる。好適には流動接触分解用触媒は、合成フォージャサイトゼオライトであるUSY型(Ultra-Stable Y-type)ゼオライトを含むことが望ましい。ゼオライトに含まれるカチオンは部分的に多価のカチオンであるランタンイオン(La3+)、カルシウムイオン(Ca2+)などとイオン交換されたものであってもよい。例えばNaUSY型ゼオライト中にカチオンとして含まれるナトリウムイオンを希土類元素であるランタンイオンとイオン交換し、ソーダレベルを低減したREUSY型(Rare Earth Ultra-Stable Y-type)ゼオライトを挙げることもできる。
<バインダー>
さらに本例触媒は、マトリックス成分としてバインダー(結合剤)を含んでいてもよい。バインダーは、マトリックス成分の一部を構成すると共に、ゼオライトと他のマトリックス成分とを結合する機能を有する。
バインダーとしては、アルミナ系バインダー及びシリカ系バインダーのいずれを用いることもできる。
アルミナ系バインダーは、マトリックス成分中のアルミナとして検出される。アルミナ系バインダーには、塩基性塩化アルミニウム([Al(OH)Cl6-n(但し、0<n<6、m≦10)))、ジブサイト、バイアライト、ベーマイト、ベントナイト、結晶性アルミナなどを酸溶液中に溶解させた粒子、ベーマイトゲル、無定形のアルミナゲルを水溶液中に分散させた粒子、アルミナゾルから少なくとも1種選択したアルミナ系バインダーを用いることができる。
一方、シリカ系バインダーは、マトリックス成分中のシリカとして検出される。シリカ系バインダーには、シリカヒドロゾル、水ガラス(ケイ酸ナトリウム)、ケイ酸液から少なくとも1種選択したシリカ系バインダーを用いることができる。
ここでシリカヒドロゾルは水ガラスから作製することができる。例えば、SiO濃度が10〜15質量%のシリカゾルは、SiO濃度が12〜23質量%の水ガラスに対し、濃度20〜30質量%の硫酸を連続的に加えて調製することができる。
<増量剤>
前記増量剤としては、たとえばカオリン、ベントナイト、カオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイトなどの粘土または粘土鉱物が挙げられ、好ましくはカオリンが挙げられる。
<添加物>
前述のゼオライト粒子、チタン含有成分、及び第3の金属含有成分を担持したアルミナ粒子、アルミナ系またはシリカ系バインダー、増量剤に加え、本例触媒は、他のマトリックス成分として、種々の添加物を添加することができる。添加物としては、活性マトリックス成分、メタルトラップ剤を例示することができる。活性マトリックス成分としては、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、アルミナ−マグネシア、シリカ−マグネシア−アルミナなどの固体酸を有する物質が挙げられる。メタルトラップ剤としては、アルミナ粒子、リン−アルミナ粒子、結晶性カルシウムアルミネート、セピオライト、チタン酸バリウム、スズ酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化マンガン、マグネシア、マグネシア−アルミナなどが例示される。
<組成比>
本例触媒は、以上に説明した、ゼオライト粒子、チタン含有成分、及び第3の金属含有成分を担持したアルミナ粒子に加え、アルミナ系またはシリカ系のバインダー、増量剤や各種の添加物由来の物質を含み、その組成を一概に特定することは困難である。以下、本例触媒の典型的な組成例を挙げておく。
上述の各物質のうち、結晶性の物質であるゼオライトは、他のマトリックス成分から区別して検出することができる。本例触媒中には、15〜50質量%ゼオライトが含まれる。好ましくは15〜45質量%の範囲である。ゼオライトの含有量が15質量%よりも少ないと、十分な接触分解活性を発揮することができない。一方、ゼオライトの含有量が50質量%よりも多いと、接触分解活性が高くなりすぎてコークの析出量が多くなり、また結晶質のゼオライトの含有割合が多くなることに伴った耐摩耗性が低下の要因ともなる。
また本例触媒には、チタン含有成分、及び第3の金属含有成分を担持したアルミナ粒子が、アルミナ換算で0.1〜20質量%含まれる。好ましくは2〜20質量%の範囲である。この結果、当該アルミナ粒子に担持されたチタン含有成分、及び第3の金属含有成分は、チタニア換算、及び第3の金属成分の酸化物換算の総含有量として0.01〜10.0質量%の範囲内、好ましくは0.05〜8.0質量%の範囲内の組成比で本例触媒中に含有される。チタン含有成分、及び第3の金属含有成分を担持したアルミナ粒子が0.1質量%よりも少ないと、マトリックスとしての触媒性能が十分得られない可能性がある。一方、前記アルミナ粒子の含有量が20質量%よりも多いと、主要な活性成分であるゼオライトの含有量が低くなり、分解活性が不十分になる事や、かさ密度が低下する可能性がある。
これらに加え、他のマトリックス成分であるバインダーとしてアルミナ系またはシリカ系のバインダーを採用した場合は、当該バインダー由来のアルミナまたはシリカが8.0〜25質量%、さらにその他のマトリックス成分である添加物として添加される粘土鉱物は28〜45質量%含まれる。
また増量剤は、10〜50質量%、好ましくは15〜40質量%の範囲である。さらに、添加剤としてメタルトラップ剤としてアルミナ粒子以外の成分を添加した場合は、メタルトラップ剤は2質量%を上限として含まれる。
また、前記バインダーに活性アルミナが含まれる場合、流動接触分解触媒中の活性アルミナの量はたとえば1〜30質量%、好ましくは5〜25質量%である。
本例触媒は、さらに希土類金属を含んでいてもよい。
そして合計として100重量%となるように各組成物の含有量が調節される。
そして、本例触媒の、後述する実施例で採用された方法で測定される平均粒子径は、たとえば40〜90μm、好ましくは50〜80μmである。
[細孔容積]
例えば、以下の説明における細孔容積は、水銀の表面張力480dyne/cm、接触角150°の条件を用いて水銀圧入法により測定した各細孔直径範囲における細孔容積の積算値である。
本例触媒は、細孔容積が0.25〜0.45ml/g、好適には0.26〜0.35ml/gの範囲内にある。細孔容積が0.25ml/gを下回ると、十分な接触分解活性が得られないおそれがある。また、細孔容積が0.45ml/gを超える流動接触分解用触媒を製造することは困難である。
[比表面積、見掛けかさ密度]
さらに、本例触媒の比表面積(SA)は、180〜320m/gの範囲内、好ましくは200〜300m/gの範囲内である。比表面積が180m/gよりも小さいと、短い接触時間で接触分解反応を十分に進行させることができないおそれがある。
また、本例触媒の見掛けかさ密度(ABD:Apparatus Bulk Density)は、0.68g/ml以上が好ましい。この範囲よりかさ密度が小さいと、耐摩耗性が不十分となり、流動触媒として使用した場合、容易に粉化して触媒が飛散する要因とる事や流動性が不十分となるおそれが生じる。
[流動接触分解触媒用マトリックスの製造方法]
<工程(1):調製工程>
工程(1)では、チタン含有成分、及び第3の金属含有成分が担持されるアルミナマトリックススラリーを調製する。
本例では、酸化雰囲気で焼成することによりアルミナ粒子となる前駆体物質である、例えばベーマイト(AlOOH)の微粒子を含むスラリー(前駆体物質スラリー)に、チタン含有成分、及び第3の金属含有成分となる溶液(チタン含有溶液、及び第3の金属成分含有溶液)を添加してアルミナマトリックススラリーを得る(本例では、「アルミナ」となっていない前駆体物質を含むスラリーについても「アルミナマトリックススラリー」という)。
アルミナ粒子の前駆体物質としては、アルミニウムを含む水酸化物、酸化物、オキシ水酸化物からなる前駆体群から少なくとも1つ選択されたものが好ましく、ベーマイトのほか、擬ベーマイトを用いることがより好ましい。該アルミニウムを含む水酸化物、酸化物、オキシ水酸化物は、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム,ポリ塩化アルミニウム、酸化アルミニウムや水酸化アルミニウムを溶解させた溶液から調製することができる。なお、本例では、チタン含有成分、及び第3の金属含有成分が担持される前の酸化アルミニウム(アルミナ)についても「前駆体物質」に含む。
また、チタン含有溶液としては、チタン硫酸塩、チタン硝酸塩、チタン酢酸塩、チタン炭酸塩、チタン水酸化物塩、チタン塩化物塩などの各種チタン塩、酸化チタンを溶解させた溶液を例示することができる。
一方、第3の金属成分含有溶液としては、ジルコニウム、イットリウムおよびニオブからなる金属群から選択された少なくとも1つの金属の塩などを溶解させた溶液が用いられる。例えば第3の金属成分含有溶液としてジルコニウム含有溶液を用いる場合は、ジルコニウム硫酸塩、ジルコニウム硝酸塩、ジルコニウム酢酸塩、ジルコニウム炭酸塩、ジルコニウム水酸化物塩、ジルコニウム塩化物塩などの各種ジルコニウム塩、酸化ジルコニウムを溶解させた溶液を例示することができる。
また、第3の金属成分含有溶液としてイットリウム含有溶液を用いる場合としては、イットリウム硫酸塩、イットリウム硝酸塩、イットリウム酢酸塩、イットリウム炭酸塩、イットリウム水酸化物塩、イットリウム塩化物塩などの各種イットリウム塩、酸化イットリウムを溶解させた溶液を例示することができる。
さらに、第3の金属成分含有溶液としてニオブ含有溶液を用いる場合としては、ニオブ硫酸塩、ニオブ硝酸塩、ニオブ酢酸塩、ニオブ炭酸塩、ニオブ水酸化物塩、ニオブ塩化物塩などの各種ニオブ塩、酸化ニオブを溶解させた溶液を例示することができる。
第3の金属成分含有溶液の各好適例としては、硫酸ジルコニウム、硫酸イットリウム、塩化ニオブを溶解させた溶液が好ましい。
アルミナマトリックススラリー中の前駆体物質やチタン含有成分、及び第3の金属含有成分の総濃度は、焼成後のアルミナ粒子に担持されるチタン含有成分、及び第3の金属含有成分の総含有量が、TiO換算、及び第3の金属成分の酸化物換算で既述の1〜20質量%の範囲内の所望の含有量となるように調整される。
スラリーは、ホモジナイザーなどを用いて分散処理される。スラリーに対しては、酸溶液やアルカリ溶液を添加してpH調整を行ってもよい。
<工程(2):担持工程>
工程(2)では、工程(1)で得られたアルミナマトリックススラリーを60〜120℃の範囲内の温度で0.5〜7時間の範囲で保持する工程を含んでもよい。
この工程の後に、得られるスラリーを必要に応じて150〜600℃の範囲内の温度で乾燥・加熱を行い、チタン含有成分、及び第3の金属成分含有成分を担持したパウダー状態の前駆体物質の粒子を得てもよい(乾燥工程)。また、例えば酸化雰囲気下にて前記乾燥工程を実施することにより、チタン含有成分、及び第3の金属成分含有成分を担持したパウダー状態のアルミナ粒子を得てもよい。以下の説明では、当該アルミナ粒子も含めて「前駆体物質の粒子」と呼ぶ。
[流動接触分解用触媒の製造方法]
次に、本例の流動接触分解用触媒の好適な製造方法について説明する。
<工程(3):触媒調製工程>
工程(3)では、工程(2)で得られた熟成後のアルミナマトリックススラリーに必要量のゼオライト粒子を添加し、流動接触分解用触媒となる触媒スラリーを調製する。触媒スラリーの調製は、アルミナマトリックススラリーとゼオライト粒子を含むスラリーとを混合してもよいし、アルミナマトリックススラリーに粉粒体状のゼオライト粒子を投入してもよい。また、工程(2)にて、チタン含有成分、及び第3の金属成分含有成分を担持した前駆体粒子を得ている場合には、ゼオライト粒子を含むスラリーに、当該前駆体粒子を投入してもよい。
またこのとき、他のマトリックス成分として、既述のアルミナ系またはシリカ系のバインダーや、他の活性マトリックス成分、粘土鉱物、メタルトラップ剤が必要量添加される。
<工程(4):乾燥・加熱工程>
工程(3)で得られた触媒スラリーを、200℃〜600℃の温度範囲で乾燥・加熱を行う。空気雰囲気などの酸化雰囲気下で加熱する場合は焼成に相当する。触媒スラリーにアルミナ粒子の前駆体物質である水酸化物、オキシ水酸化物は、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム,ポリ塩化アルミニウム、酸化アルミニウムや水酸化アルミニウムなどが含まれている場合には、この焼成により前駆体物質がアルミナ粒子となる。さらに必要に応じて、得られた乾燥粒子の純水洗浄や洗浄後の粒子に含まれるゼオライトのイオン交換や乾燥などを行い、チタン含有成分、及び第3の金属成分含有成分を担持したアルミナ粒子をマトリックスとして含有する本例触媒を得る。
また、アルミナ系またはシリカ系のバインダーにより、ゼオライトと他のマトリックス成分とを結合させるなどの目的で、必要に応じて乾燥粒子の焼成(例えば空気雰囲気下で300〜700℃の焼成温度)を行ってもよい。
本例の流動接触分解用触媒によれば、担持法にて調製したチタン、及び第3の金属成分導入マトリックスを構成成分として含むので、重質炭化水素油留分の分解能力が高く、コークの生成量を抑えた流動接触分解反応を進行させることができる。
以下に実施例を示し、本例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
<各元素の含有量の測定>
各元素の質量分析は、Naは原子吸光光度計、Na以外は誘導結合プラズマ分光分析装置にて化学分析を行った。具体的には、チタン含有成分、及び第3の金属成分含有成分を担持したアルミナ粒子(アルミナ試料)に硫酸とフッ化水素酸を加え加熱し、乾固させ、乾固物を濃塩酸に溶解し、水で濃度10〜100質量ppmに希釈した溶液に調製し、株式会社日立ハイテクサイエンス社製の原子吸光光度計(Z−2310)、株式会社島津製作所製の誘導結合プラズマ分光分析装置(ICPS−8100)にて分析した。波長は、Na:589.6nm、Al:396.2nm、Zr:349.6nmである。
[実験1]
担持法によりチタニア、及び第3の金属含有成分としてジルコニアを担持したアルミナ粒子を調製し、当該アルミナ粒子の物性(比表面積(SA)、酸量)を測定した。
(実施例1−1)チタン含有成分として、9.8質量%のチタニア、第3の金属含有成分として0.2質量%のジルコニアを担持したアルミナ粒子(TiO/ZrO/Al=9.8/0.2/90)を調製した。TiO/ZrO=49である。
チタニアの原料となるチタン含有溶液として、33質量%の硫酸チタニル結晶161.7gを純水328.3gで希釈した。加えて、ジルコニアの原料となるジルコニウム含有溶液(第3の金属含有溶液)として、10質量%の硫酸ジルコニウム水溶液10gを調製し、硫酸チタニル水溶液と混合した。また、アルミナ試料の前駆体物質として、10質量%のベーマイトゲルスラリー4500gに、15質量%のアンモニア水を281.9g加えたベーマイトゲルスラリーを調製した。次いで、アンモニア添加後のベーマイトゲルスラリーに対し、前記硫酸チタニル−硫酸ジルコニウム水溶液を約10分間で全量添加する条件で混合を行った。得られた硫酸チタニル−硫酸ジルコニウム−ベーマイトゲル混合スラリーを95℃にて5時間熟成を行い、アルミナマトリックススラリー(1)を得た。
得られたアルミナマトリックススラリー(1)を600℃の空気雰囲気下で2時間焼成し、チタニア−ジルコニア担持アルミナ粒子(1)を得た。
<比表面積測定>
真空排気しながら500℃で1時間熱処理したチタニア−ジルコニア担持アルミナ粒子(1)について、窒素の吸着等温線を得た(日本ベル製ベルソープmini−II型 ver2.5.6)。得られた吸着側の等温線からVa−tプロットによりチタニア−ジルコニア担持アルミナ粒子(1)の比表面積を求めた。チタニア−ジルコニア担持アルミナ粒子(1)の比表面積は342m/gであった。
<酸量測定>
該当試料のアンモニア吸着量をアンモニア昇温脱離法(NH−TPD法)により測定した。即ち、マイクロトラックベル社製BELCAT-B(登録商標)を使用し、測定セル中に試料0.2gを入れ、500℃で1時間排気処理を行い、その後温度を100℃に落とし、100℃にて0.5時間アンモニアガスを導入して吸着させる。次いで、100℃にて0.5時間再度排気処理を行なった後、毎分50mlのHeガス流通下、100℃から毎分10℃で700℃まで昇温しながら温度上昇にともなって脱離するアンモニアの量を計測する。昇温は700℃まで行い、その間脱離したアンモニアの総量をアンモニア吸着量(即ちチタニア−ジルコニア担持アルミナ粒子の酸量)とした。チタニア−ジルコニア担持アルミナ粒子(1)の酸量は0.721mmol/gであった。
(実施例1−2)チタン含有成分として、9.6質量%のチタニア、第3の金属含有成分として0.4質量%のジルコニアを担持したアルミナ粒子TiO/ZrO/Al=9.6/0.4/90)を調製した。TiO/ZrO=24である。
チタニアの原料となるチタン含有溶液として、33質量%の硫酸チタニル結晶158.4gを純水321.6gで希釈した。加えて、ジルコニアの原料となるジルコニウム含有溶液(第3の金属含有溶液)として、10質量%の硫酸ジルコニウム水溶液20gを調製し、硫酸チタニル水溶液と混合した。また、アルミナ試料の前駆体物質として、10質量%のベーマイトゲルスラリー4500gに、15質量%のアンモニア水を279.9g加えたベーマイトゲルスラリーを調製した。次いで、アンモニア添加後のベーマイトゲルスラリーに対し、前記硫酸チタニル−硫酸ジルコニウム水溶液を約10分間で全量添加する条件で混合を行った。得られた硫酸ジルコニウム−ベーマイトゲル混合スラリーを95℃にて5時間熟成を行い、アルミナマトリックススラリー(2)を得た。
得られたアルミナマトリックススラリー(2)を600℃の空気雰囲気下で2時間焼成し、チタニア−ジルコニア担持アルミナ粒子(2)を得た。
<比表面積測定>
実施例1−1と同様の手法により、チタニア−ジルコニア担持アルミナ粒子(2)の比表面積を求めた結果、当該比表面積は335m/gであった。
<酸量測定>
実施例1−1と同様の手法により、チタニア−ジルコニア担持アルミナ粒子(2)の酸量の測定を行った結果、酸量は0.715mmol/gであった。
(実施例1−3)チタン含有成分として、9.0質量%のチタニア、第3の金属含有成分として1.0質量%のジルコニアを担持したアルミナ粒子(TiO/ZrO/Al=9.0/1.0/90)を調製した。TiO/ZrO=9である。
チタニアの原料となるチタン含有溶液として、33質量%の硫酸チタニル結晶148.5gを純水301.5gで希釈した。加えて、ジルコニアの原料となるジルコニウム含有溶液(第3の金属含有溶液)として、10質量%の硫酸ジルコニウム水溶液50gを調製し、硫酸チタニル水溶液と混合した。また、アルミナ試料の前駆体物質として、10質量%のベーマイトゲルスラリー4500gに、15質量%のアンモニア水を273.9g加えたベーマイトゲルスラリーを調製した。次いで、アンモニア添加後のベーマイトゲルスラリーに対し、前記硫酸チタニル−硫酸ジルコニウム水溶液を約10分間で全量添加する条件で混合を行った。得られた硫酸チタニル−硫酸ジルコニウム−ベーマイトゲル混合スラリーを95℃にて5時間熟成を行い、アルミナマトリックススラリー(3)を得た。
得られたアルミナマトリックススラリー(3)を600℃の空気雰囲気下で2時間焼成し、チタニア−ジルコニア担持アルミナ粒子(3)を得た。
<比表面積測定>
実施例1−1と同様の手法により、チタニア−ジルコニア担持アルミナ粒子(3)の比表面積を求めた結果、当該比表面積は325m/gであった。
<酸量測定>
実施例1−1と同様の手法により、チタニア−ジルコニア担持アルミナ粒子(2)の酸量の測定を行った結果、酸量は0.714mmol/gであった。
(実施例1−4)チタン含有成分として、5.0質量%のチタニア、第3の金属含有成分として5.0質量%のジルコニアを担持したアルミナ粒子(TiO/ZrO/Al=5.0/5.0/90)を調製した。TiO/ZrO=1である。
チタニアの原料となるチタン含有溶液として、33質量%の硫酸チタニル結晶82.5gを純水167.5gで希釈した。加えて、ジルコニアの原料となるジルコニウム含有溶液(第3の金属含有溶液)として、10質量%の硫酸ジルコニウム水溶液250gを調製し、硫酸チタニル水溶液と混合した。また、アルミナ試料の前駆体物質として、10質量%のベーマイトゲルスラリー4500gに、15質量%のアンモニア水を551.9g加えたベーマイトゲルスラリーを調製した。次いで、アンモニア添加後のベーマイトゲルスラリーに対し、前記硫酸チタニル−硫酸ジルコニウム水溶液を約10分間で全量添加する条件で混合を行った。得られた硫酸チタニル−硫酸ジルコニウム−ベーマイトゲル混合スラリーを95℃にて5時間熟成を行い、アルミナマトリックススラリー(4)を得た。
得られたアルミナマトリックススラリー(4)を600℃の空気雰囲気下で2時間焼成し、チタニア−ジルコニア担持アルミナ粒子(4)を得た。
<比表面積測定>
実施例1−1と同様の手法により、チタニア−ジルコニア担持アルミナ粒子(4)の比表面積を求めた結果、当該比表面積は315m/gであった。
<酸量測定>
実施例1−1と同様の手法により、チタニア−ジルコニア担持アルミナ粒子(4)の酸量の測定を行った結果、全固体酸量は0.705mmol/gであった。
(比較例1−1)チタン含有成分、第3の金属含有成分を担持していないアルミナ粒子(TiO/ZrO/Al=0/0/100)を調製した。
アルミナの前駆体物質として、10質量%のベーマイトゲルスラリーをアルミナマトリックススラリー(5)とした。
前記アルミナマトリックススラリー(5)を600℃の空気雰囲気下で2時間焼成し、アルミナ粒子(5)を得た。
<比表面積測定>
実施例1−1と同様の手法により、アルミナ粒子(5)の比表面積を求めた結果、比表面積は353m/gであった。
<酸量測定>
実施例1−1と同様の手法により、アルミナ粒子(5)の酸量の測定を行った結果、酸量は0.573mmol/gであった。
実施例1−1〜1−4、比較例1−1に係るアルミナ粒子の組成比、及び物性を表1にまとめて示す。
(表1)
Figure 2019166446
表1にまとめた実験結果によれば、チタニア、ジルコニアを担持した実施例1−1〜1−4に係るアルミナ粒子は、チタニア、ジルコニアの担持を行っていない比較例1−1に係るアルミナ粒子と比較して、いずれも比表面積が低下した。一方で、酸量の測定を行った実施例1−1〜1−3のいずれにおいても、チタニア、ジルコニアの添加に伴って酸量は、増加することが確認できた。
従って、比表面積の低下に起因する粗分解活性の低下の影響が大きくない範囲であれば、ジルコニアの担持は、活性マトリックスとして流動接触分解用触媒に添加されるアルミナ粒子の活性を向上させる効果を奏すると考えられる。
[実験2]
実施例1−2に係るアルミナマトリックススラリーを用いてチタン含有成分、及び第3の金属含有成分(ジルコニア)を担持したアルミナ粒子からなるマトリックスを含有する流動接触分解用触媒(FCC触媒)を調製し、物性(平均粒径、かさ密度、細孔容積、比表面積)の測定、及び活性評価試験を行った。
(実施例2−1)チタニア−ジルコニア担持アルミナ粒子を5重量%含むFCC触媒の調製
水ガラス(SiO換算で17.5質量%に調整した3号水ガラス、以下同じ)1257.1gに、硫酸(濃度25質量%に調整したもの、以下同じ)502.9gを加え、12.5質量%のSiOを含むシリカヒドロゾルを調製した。当該シリカヒドロゾル1760g(SiOとして220g)に、カオリンクレー330.1g(固形分として275g)、固形分濃度として11.5質量%のアルミナマトリックススラリー(2)446.8g(固形分として50g)、活性アルミナ164.8g(Al2O3として60g)、USYゼオライトスラリー1121.2g(固形分として370g)、メタルトラップ剤(Mn;二酸化マンガン(東ソー社製)の650℃で焼成物)25.1g(固形分として25g)を加え、触媒スラリーを調製した。
この触媒スラリーを液滴として入口温度が250℃,出口温度が150℃の噴霧乾燥機で噴霧乾燥を行い、平均粒子径が65μmの乾燥粒子を得た。この乾燥粒子を温水で洗浄し、次いで硫酸アンモニウム水溶液によるイオン交換と温水洗浄とを2回繰り返した後、RE換算で2.5質量%となる様に希土類元素(RE、本例ではLa3+)を添加してREを担持させた。次に、RE担持後の粉体を乾燥させ、空気雰囲気下600℃で焼成してベーマイトをアルミナ粒子に変化させ、ジルコニア担持アルミナ粒子を含む炭化水素油の流動接触分解用触媒(FCC触媒(A))を得た。
FCC触媒(A)の組成を表2に示す。
<平均粒子径>
実施例などの触媒の粒度分布を、堀場製作所(株)製レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA−300)により測定した。具体的には、光線透過率が70〜95%の範囲となるように試料を溶媒(水)に投入し、循環速度:2.8L/分、超音波照射:3分間、反復回数:30回の条件で測定した。メジアン径(D50)を平均粒子径として採用した。当該FCC触媒(A)の平均粒子径は66μmであった。
<見掛けかさ密度測定(ABD)>
内容積200mlの円筒型シリンダーに、シリンダーの上端から高さ10cmの位置からFCC触媒(A)を落下させてシリンダーに充填し、上面を平坦化したときの触媒の重量W[g]を計測した。この重量から計算した「W/100[g/ml]」の値を見掛けかさ密度とした。FCC触媒Aの見掛けかさ密度は、0.77g/mlであった。
<細孔容積測定>
FCC触媒(A)について、測定前に空気雰囲気下、600℃で1時間焼成し吸着した水分を除去した試料0.4gを水銀圧入法による細孔径分布測定(装置:Pore Master-60GT、Quanta chrome社製)で20から55000psi(pound per square inch)の範囲で水銀を圧入して測定を行った結果から、細孔容積を求めた。FCC触媒(A)の細孔容積は0.24ml/gであった(表2)。
<比表面積測定>
実施例1−1に記載のチタニア−ジルコニア担持アルミナ粒子(1)の比表面積測定と同様の手法にて、FCC触媒(A)の比表面積を測定した。FCC触媒(A)の比表面積は、296m/gであった(表2)。
<活性評価試験>
FCC触媒Aについて、ACE−MAT(Advanced Cracking Evaluation-Micro Activity Test)試験機を用い、同一原油、同一反応条件下で触媒の活性評価試験を行った。性能評価試験における運転条件は以下の通りである。
原料油:原油の脱硫常圧残渣油(DSAR)+脱硫減圧軽油(DSVGO)(50+50)
触媒/通油量の質量比:5.0
反応温度:520℃
1)転化率=100−(LCO+HCO)
2)ガソリンの沸点範囲:30〜216℃
3)LCOの沸点範囲:216〜343℃(LCO:Light Cycle Oil)
4)HCO(Heavy Cycle Oil)の沸点範囲:343℃
活性評価試験の結果を表2に示す。
(実施例2−2)チタニア−ジルコニア担持アルミナ粒子を10重量%含むFCC触媒の調製
触媒スラリーにおけるシリカヒドロゾルに対するカオリンクレーの混合量を270.5g、アルミナマトリックススラリー(2)の混合量を892.6gとした点以外は、実施例2−1と同様の手順でFCC触媒(B)を得た。
FCC触媒(B)の組成を表2に示す。当該FCC触媒(B)の平均粒子径は65μmであった(表2)。
<見掛けかさ密度測定>
実施例2−1と同様の手法により、FCC触媒(B)の見掛けかさ密度を測定した結果、見掛けかさ密度は0.74g/mlであった(表2)。
<細孔容積測定>
実施例2−1と同様の手法により、FCC触媒(B)の細孔容積を測定した結果、細孔容積は0.26ml/gであった(表2)。
<比表面積測定>
実施例2−1と同様の手法により、FCC触媒(B)の比表面積を測定した結果、比表面積は304m/gであった(表2)。
<活性評価試験>
実施例2−1と同様の手法により、FCC触媒(B)の活性評価試験を行った。活性評価試験の結果を表2に示す。
(実施例2−3)チタニア−ジルコニア担持アルミナ粒子を20重量%含むFCC触媒の調製
触媒スラリーにおけるシリカヒドロゾルに対するカオリンクレーの混合量を150.3g、アルミナマトリックススラリー(2)の混合量を1785.7gとした点以外は、実施例2−1と同様の手順でFCC触媒(C)を得た。
FCC触媒(C)の組成を表2に示す。当該FCC触媒(C)の平均粒子径は67μmであった(表2)。
<見掛けかさ密度測定>
実施例2−1と同様の手法により、FCC触媒(C)の見掛けかさ密度を測定した結果、見掛けかさ密度は0.70g/mlであった(表2)。
<細孔容積測定>
実施例2−1と同様の手法により、FCC触媒(C)の細孔容積を測定した結果、細孔容積は0.30ml/gであった(表2)。
<比表面積測定>
実施例2−1と同様の手法により、FCC触媒(C)の比表面積を測定した結果、比表面積は312m/gであった(表2)。
<活性評価試験>
実施例2−1と同様の手法により、FCC触媒(C)の活性評価試験を行った。活性評価試験の結果を表2に示す。
(比較例2−1)ジルコニア担持アルミナ粒子を含まないFCC触媒の調製
触媒スラリーにおけるシリカヒドロゾルに対するカオリンクレーの混合量を330.6g、アルミナマトリックススラリー(2)の混合量を0g、活性アルミナの混合量を302.2gとした点以外は、実施例2−1と同様の手順でFCC触媒(D)を得た。
FCC触媒(D)の組成を表2に示す。当該FCC触媒(D)の平均粒子径は64μmであった。
<見掛けかさ密度測定>
実施例2−1と同様の手法により、FCC触媒(D)の見掛けかさ密度を測定した結果、見掛けかさ密度は0.76g/mlであった(表2)。
<細孔容積測定>
実施例2−1と同様の手法により、FCC触媒(D)の細孔容積を測定した結果、細孔容積は0.24ml/gであった(表2)。
<比表面積測定>
実施例2−1と同様の手法により、FCC触媒(D)の比表面積を測定した結果、比表面積は293m/gであった(表2)。
<活性評価試験>
実施例2−1と同様の手法により、FCC触媒(D)の活性評価試験を行った。活性評価試験の結果を表2に示す。
実施例2−1〜2−3、比較例2−1に係るFCC触媒の組成比、物性、及び活性試験の結果を表2にまとめて示す。
(表2)
Figure 2019166446
表2にまとめたマトリックス成分としてチタニア−ジルコニア担持アルミナ粒子を含むFCC触媒(A)〜(C)を用いた実施例2−1〜2−3の活性評価試験の結果によれば、ジルコニア担持アルミナ粒子を含まないFCC触媒(D)を用いた比較例2−1と比べて、転化率、ガソリン収率が高く、コーク収率の低い活性を有する。この活性評価試験に用いた原料油は、DSARを含んでいるので、各実施例に係るFCC触媒は、RFCC触媒として利用するにあたっての良好な特性を有することを確認できた。

Claims (21)

  1. チタン含有成分、及び第3の金属含有成分を担持したアルミナ粒子からなる流動接触分解触媒用マトリックス。
  2. 前記第3の金属含有成分は、ジルコニウム、イットリウムおよびニオブからなる金属群から選択された少なくとも1つの金属を含有することを特徴とする請求項1に記載の流動接触分解触媒用マトリックス。
  3. 前記マトリックス中のチタン含有成分、及び第3の金属含有成分の総含有量が、チタニア換算、及び第3の金属成分の酸化物換算で1.0〜20質量%の範囲内にあることを特徴とする請求項1または2に記載の流動接触分解触媒用マトリックス。
  4. 前記チタン含有成分と、前記第3の金属含有成分との含有量比が、チタニア/第3の金属成分酸化物換算比で、100〜0.1の範囲内であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の流動接触分解触媒用マトリックス。
  5. 前記アルミナ粒子は、表面にチタニア、及び第3の金属成分の酸化物が担持されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の流動接触分解触媒用マトリックス。
  6. 前記アルミナ粒子は、アルミニウムの水酸化物、酸化物、オキシ水酸化物からなる前駆体群から選択された少なくとも1つの前駆体物質から得られたものであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の流動接触分解触媒用マトリックス。
  7. 前記アルミナ粒子の酸量が0.40〜0.85mmol/gの範囲内にあることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の流動接触分解触媒用マトリックス。
  8. 前記アルミナ粒子の比表面積が200〜450m/gの範囲内にあることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一つに記載の流動接触分解触媒用マトリックス。
  9. ゼオライト粒子と、請求項1ないし8のいずれか一つに記載の流動接触分解触媒用マトリックスを含有するマトリックス成分と、増量剤とを含むことを特徴とする流動接触分解用触媒。
  10. 前記流動接触分解用触媒は、前記流動接触分解触媒用マトリックス以外のマトリックス成分としてシリカ系またはアルミナ系のバインダーを含むことを特徴とする請求項9に記載の流動接触分解用触媒。
  11. 前記流動接触分解用触媒は、前記ゼオライト粒子の含有量が15〜50質量%の範囲内、前記流動接触分解触媒用マトリックスの含有量が0.1〜20質量%の範囲内であることを特徴とする請求項9または10に記載の流動接触分解用触媒。
  12. 前記チタン含有成分、及び第3の金属含有成分の総含有量が、チタニア換算、及び第3の金属成分の酸化物換算で0.01〜10.0質量%の範囲内にあることを特徴とする請求項9ないし11のいずれか一つに記載の流動接触分解用触媒。
  13. 水銀圧入法にて測定した細孔容積が0.25〜0.45ml/gの範囲内にあることを特徴とする請求項9ないし12のいずれか一つに記載の流動接触分解用触媒。
  14. 比表面積が180〜320m/gの範囲内にあることを特徴とする請求項9ないし13のいずれか一つに記載の流動接触分解用触媒。
  15. 見掛けかさ密度が0.68g/ml以上であることを特徴とする請求項9ないし14のいずれか一つに記載の流動接触分解用触媒。
  16. アルミナ粒子の前駆体物質を含むスラリーに、チタン含有溶液、及び第3の金属成分含有溶液を混合して、アルミナマトリックススラリーを調製する調製工程と、
    前記アルミナマトリックススラリー中で、前記前駆体物質の表面にチタン含有成分、及び第3の金属成分含有成分を担持させる担持工程と、を含むことを特徴とする流動接触分解触媒用マトリックスの製造方法。
  17. 前記第3の金属含有溶液は、ジルコニウム、イットリウムおよびニオブからなる金属群から選択された少なくとも1つの金属を含有することを特徴とする請求項16に記載の流動接触分解触媒用マトリックスの製造方法。
  18. 前記担持工程では、前記アルミナマトリックススラリーを60〜120℃の範囲内の温度に0.5〜7時間の範囲内に保持することを特徴とする流請求項16または17に記載の流動接触分解触媒用マトリックスの製造方法。
  19. 前記担持工程後のアルミナマトリックススラリーを、さらに乾燥する乾燥工程を含むことを特徴とする請求項16ないし18のいずれか一つに記載の流動接触分解触媒用マトリックスの製造方法。
  20. ゼオライト粒子と、請求項16ないし19のいずれか一つに記載の流動接触分解触媒用マトリックスの製造方法にて得られたアルミナマトリックススラリーまたは前駆体物質の粒子を含むマトリックスと、増量剤と、を混合して、触媒スラリーを調製する触媒調製工程と、
    前記触媒スラリーを乾燥・加熱する乾燥・加熱工程と、を含むことを特徴とする流動接触分解用触媒の製造方法。
  21. 前記乾燥・加熱工程は、150〜600℃の範囲内の温度に調整された酸化雰囲気下での触媒の焼成を含むことを特徴とする請求項20に記載の流動接触分解用触媒の製造方法。
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